(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】高分子紫外線吸収剤およびその製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20230118BHJP
C08G 65/328 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C09K3/00 104Z
C08G65/328
(21)【出願番号】P 2021525011
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(86)【国際出願番号】 CN2018115723
(87)【国際公開番号】W WO2020097880
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジアチェン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,ダンファ
(72)【発明者】
【氏名】スー,ユンペン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,チョンミン
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-322317(JP,A)
【文献】特開2008-133319(JP,A)
【文献】特開2010-111715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08G 65/328
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子紫外線吸収剤であって、前記高分子紫外線吸収剤の化学式に、式Iで表される構
成単位を含み、
式I
【化1】
式中、m=1~20である、ことを特徴とする高分子紫外線吸収剤。
【請求項2】
ポリエチレングリコール、チタン酸エステルおよびケイ酸エステルを含む混合物をエステル交換反応させて前記高分子紫外線吸収剤を調製する、ことを特徴とする請求項1に記載の高分子紫外線吸収剤の製造方法。
【請求項3】
前記チタン酸エステルは、式IIで表される化学式を有する化合物のうちの少なくとも1
つから選ばれ、
式II
【化2】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4が独立して、C
1~C
8のアルキル基のうちの1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記チタン酸エステルは、オルトチタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトラブチル、オルトチタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラヘキシル、チタン(IV)テトラオクチルオキシドのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ケイ酸エステルは、式IIIで表される化学式を有する化合物のうちの少なくとも1つ
から選ばれ、
式III
【化3】
式中、R
5、R
6、R
7、R
8が独立して、C
1~C
4のアルキル基のうちの1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ケイ酸エステルは、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル、テトラプロポキシシラン、オルトケイ酸テトライソブチルのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコール、チタン酸エステル及びケイ酸エステルのモル比は、(チタン酸エステル+ケイ酸エステル):ポリエチレングリコール=(0.8~1.2)x/4、チタン酸エステル:ケイ酸エステル=0.01~1を満たし、
式中、xは1モル当たりのポリエチレングリコールに含まれている水酸基のモル数であり、
前記チタン酸エステル、ケイ酸エステル、ポリエチレングリコールのモル数は、いずれも物質自身のモル数に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記エステル交換反応の条件は、不活性雰囲気下で、80~180℃で2~10時間反応させることである、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記反応時間が、2~6時間とする、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エステル交換条件は、反応後、減圧蒸留を行うことをさらに含む、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記減圧蒸留の条件は、真空度が0.01~5KPaである条件下で、170~230℃で0.5~5時間反応させることである、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記真空度が、1~5KPaとする、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、ポリエチレングリコール、チタン酸エステルおよびケイ酸エステルを混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、保護用不活性雰囲気を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程a)と、
工程a)反応後、減圧蒸留し、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、前記高分子紫外線吸収剤を調製する工程b)とを含む、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項14】
請求項2~13のいずれか一項に記載の方法により製造された高分子紫外線吸収剤の少なくとも1つは、化粧品分野、織物分野に用いることができる、請求項1に記載の高分子紫外線吸収剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、日用化学工業技術分野に属し、高分子紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
工業化の継続的な発展に伴い、オゾン層破壊の問題がますます深刻化しつつある。オゾン層の減少による地上に照射される紫外線が著しく増加した。過剰な紫外線を浴びると、ヒトの健康を深刻に脅かし、同時に多くの材料が、長期的に紫外光に暴露すると、変色、脆化、性能低下を招く可能性がある。紫外線とは、波長が短く、エネルギーが高い電磁波であり、その波長範囲は、100~400nmである。そのうち、波長の長い紫外線(UV-A)、その波長範囲は、320-400nmであり、波長の短い紫外線(UV-B)、その波長範囲は、280-320nmである。ここで、UV-Bは、日焼けを引き起こす主な原因であり、それは人体に対して紅斑作用があり、皮膚が黒くなり、赤くさせ炎症、脱皮を引き起こす。紫外線吸収剤は、高エネルギーの紫外光を選択的に吸収し、エネルギー変換を行い、熱エネルギーや無害な低エネルギー放射によりエネルギーを放出することができる。現在の日焼け止め剤が、主に、例えば、ベンゾフェノン-3(BP3)、メトキシケイヒ酸オクチル(OMC)、オクトクリレン(Octocrylene)などの芳香族化合物を採用するが、そのうちの比較的に多くの芳香族化合物は、潜在的な発癌と感作リスクを有し、そのうちのベンゾフェノン-3(BP3)に関してかなり論争があり、エストロゲン類の作用を有し、内分泌障害を引き起こす可能性があり、アメリカのFDAによるベンゾフェノン-3の濃度が、最高で6%を超えてはならないと規定している。中国の場合、10%を超えてはならない。スウェーデンでは、すでに当該成分の使用を禁止した。そのため、新規の紫外線吸収剤の開発は重大な応用可能性がある。
【0003】
ポリエチレングリコールは毒性がなく、且つ良好な生体相容性を有する。ポリエチレングリコールには、皮膚への刺激を緩和でき、皮膚表面の保湿度を向上させ、さらに製品の快適性を向上させるのに有効である親水性の水酸基を複数有する。ポリエチレングリコールがFDAによって承認され、体内注射薬用のポリマーとすることができる。ポリエチレングリコールを構成単位として用いて形成された高分子紫外線吸収剤は、優れた水溶性および生物安全性を有する。現在、このような紫外線吸収剤についての研究はまだ報告されていない。
【0004】
高分子重合状の有機ケイ素化合物は、シロキサンを介して結合し、光学的に透明で、かつ不活性、無毒という特徴を有する。ポリマーが多様化特質を有するため、約4割以上の化粧・養生品において有機シラン成分を含有する。ケイ素の添加によりスキンケア用品をより滑らかにし、延性がより良くなり、また、肌のキメがより滑らかになり、肌がより細くなる。独特の水溶性配合成分を通じて、もともと落としにくい日焼け止めをより安全にし、付着しにくく洗浄しやすい。
【発明の概要】
【0005】
本出願の一態様によれば、水溶性が良く、使用が便利で、完全無毒且つ紫外線吸収効果が優れた高分子紫外線吸収剤が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記高分子紫外線吸収剤は、前記高分子紫外線吸収剤の化学式における式Iで表される
構成単位を含むことを特徴とする。
【0007】
【0008】
オプションとして、前記高分子紫外線吸収剤における構成単位の重合度は、12~20である。
【0009】
オプションとして、式I中m=4である。
【0010】
オプションとして、式I中のmは、原料中のポリエチレングリコールの重合度に依存す
る。
【0011】
オプションとして、前記高分子紫外線吸収剤は、短波紫外線を比較的強く吸収できるように0.7重量%以上の水溶液に調製される。
【0012】
本出願の別の態様によれば、ポリエチレングリコール、チタン酸エステルおよびケイ酸エステルを含む混合物をエステル交換反応させて前記高分子紫外線吸収剤を調製する、ことを特徴とする高分子紫外線吸収剤の製造方法が提供される。
【0013】
オプションとして、前記チタン酸エステルは、式IIで表される化学式を有する化合物のうちの少なくとも1つから選ばれる。
式II
【化2】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4が独立して、C
1~C
8のアルキル基のうちの1つから選ばれる。
【0014】
オプションとして、前記チタン酸エステルは、オルトチタン酸テトラエチル、チタン酸テトラブチル、オルトチタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラヘキシル、チタン(IV)テトラオクチルオキシドのうちの少なくとも1つを含む。
【0015】
オプションとして、前記ケイ酸エステルは、式IIIで表される化学式を有する化合物のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0016】
式III
【化3】
式中、R
5、R
6、R
7、R
8が独立して、C
1~C
4のアルキル基のうちの1つから選ばれる。
【0017】
オプションとして、前記ケイ酸エステルは、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル、テトラプロポキシシラン、オルトケイ酸テトライソブチルのうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
オプションとして、前記ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800のうちの1つまたは任意の複数種の混合物であってもよい。
【0019】
オプションとして、前記ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
オプションとして、前記ポリエチレングリコール、チタン酸エステルとケイ酸エステルのモル比は、(チタン酸エステル+ケイ酸エステル):ポリエチレングリコール=(0.8~1.2)x/4、
チタン酸エステル:ケイ酸エステル=0.01~1を満たす。
式中、xは1モル当たりのポリエチレングリコールに含まれている水酸基のモル数である。
【0021】
前記チタン酸エステル、ケイ酸エステル、ポリエチレングリコールのモル数は、いずれも物質自身のモル数に基づいて計算される。
【0022】
オプションとして、前記(チタン酸エステル+ケイ酸エステル)とポリエチレングリコールとのモル比の上限は、0.85x/4、0.9x/4、0.95x/4、1.0x/4、1.1x/4、1.15x/4または1.2x/4から選ばれ、下限は、0.8x/4、0.85x/4、0.9x/4、0.95x/4、1.0x/4、1.1x/4または1.15x/4から選ばれる。
【0023】
オプションとして、前記チタン酸エステルとケイ酸エステルとのモル比の上限は、0.02、0.05、0.08、0.1、0.2、0.5、0.8または1から選ばれ、下限は、0.01、0.02、0.05、0.08、0.1、0.2、0.5または0.8から選ばれる。オプションとして、前記エステル交換反応の条件は、不活性雰囲気下で、80~180℃で2~10時間反応させることである。
【0024】
オプションとして、前記不活性雰囲気は、窒素、不活性ガスのうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
オプションとして、前記エステル交換反応は、撹拌条件下で行われる。
【0026】
オプションとして、前記反応温度の上限は、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃または180℃から選ばれ、下限は、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃または170℃から選ばれる。
【0027】
オプションとして、前記反応時間の上限は、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間または10時間から選ばれ、下限は、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間または9時間から選ばれる。
【0028】
オプションとして、前記反応時間が、2~6時間とする。
【0029】
オプションとして、前記エステル交換反応の転化率は60%~80%である。
【0030】
オプションとして、前記エステル交換条件は、反応後、減圧蒸留を行うことをさらに含む。
【0031】
オプションとして、前記減圧蒸留の条件は、真空度が0.01~5KPaである条件下で、170~230℃で0.5~5時間反応させることである。
【0032】
オプションとして、前記減圧蒸留過程において、真空度の上限は、0.02KPa、0.05KPa、0.1KPa、0.5KPa、1KPa、2KPa、3KPa、4KPaまたは5KPaから選ばれ、下限は、0.01KPa、0.02KPa、0.05KPa、0.1KPa、0.5KPa、1KPa、2KPa、3KPaまたは4KPaから選ばれる。
【0033】
オプションとして、前記減圧蒸留過程において、反応温度の上限は、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃または230℃から選ばれ、下限は、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃または220℃から選ばれる。
【0034】
オプションとして、前記減圧蒸留過程において、反応時間の上限は、1時間、2時間、3時間、4時間または5時間から選ばれ、下限は、0.5時間、1時間、2時間、3時間または4時間から選ばれる。
【0035】
オプションとして、前記真空度が、1~5KPaとする。
【0036】
オプションとして、前記エステル交換の転化率は90%以上である。
【0037】
オプションとして、前記方法は、ポリエチレングリコール、チタン酸エステルおよびケイ酸エステルを混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、保護用不活性雰囲気を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程a)と、工程a)反応後、減圧蒸留し、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、前記高分子ポリマー紫外線吸収剤を調製する工程b)とを含む。
【0038】
具体的な実施形態として、前記方法は、ポリエチレングリコール、チタン酸エステルとケイ酸エステルを三つ口フラスコ中で均一に混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、蒸留装置に接続され、保護用窒素を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、60%~80%である工程1)と、工程1)反応後の装置をポンプまたはオイルポンプに接続して減圧蒸留することにより、エステル交換反応をより完全にし、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、90%以上である工程2)とを含む。
【0039】
本出願のさらに別の態様によれば、上記いずれか1項に記載の高分子紫外線吸収剤が提供され、上記いずれか1項に記載の方法により製造された高分子紫外線吸収剤の少なくとも1つは、化粧品分野、織物分野に用いることができる。
【0040】
本出願の高分子紫外線吸収剤は、防腐剤/酸化防止剤、水、有機溶媒、増ちょう剤、軟化剤、乳化剤、泡消し剤、保湿剤、香料、表面活性剤、充填材、キレート剤、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、非イオン性ポリマーまたは両性ポリマーおよびそれらの混合物、噴射剤、酸・塩基触媒、染料、着色剤などの化粧品の他の成分を配合することもできる。特に、UV‐B保護を追加的に提供する必要がある配合成分に適用する。
【0041】
本出願の紫外線吸収剤は、織物の日焼け止めに対しても適用可能である。
【0042】
当該紫外線吸収剤は、優れた親水性と紫外線吸収性能を有し、日焼け止め化粧品に適用可能であり、日用化学工業技術の分野に属する。
【0043】
本明細書では、「C1~C8、C1~C4」などとは、基に含まれている炭素原子の数を示す。
【0044】
本明細書では、「アルキル基」とは、アルカン化合物分子の上で任意の水素原子を失って形成された基である。
【発明の効果】
【0045】
本出願は、以下のような有益な効果を有する:
1)本出願の高分子紫外線吸収剤は、UV‐Bバンドにて比較的高い吸収率を有し、皮膚や関連する材料の紫外線照射による発赤と老化を効果的に防止することが出来る。
2)本出願における高分子紫外線吸収剤の合成過程において、追加の有機溶媒を必要とせず、反応副産物も高純度のエタノールであり、巨大な経済性を持ち、グリーンで効率的で環境に優しく、安全無毒である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】実施例2における高分子紫外線吸収剤6#の熱重量分析グラフである。
【
図2】実施例1における高分子紫外線吸収剤1#の紫外線吸収スペクトルである。
【
図3】実施例1における高分子紫外線吸収剤5#のケイ素核磁気共鳴スペクトルである。
【
図4】実施例1における高分子紫外線吸収剤5#の炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本出願について、実施例を用いて詳述するが、本出願は、これらの実施例に限定されるものではない。
別途指摘されない限り、本出願の実施例における原料は、全部商業ルートによって購入される。
【0048】
本出願の実施例における分析方法は、以下のとおりである:
TA Instruments社製、型番がTA Q‐600である熱重量分析計を用いて熱重分析を行った。
VARIAN社製、型番がCARY‐5000である紫外可視分光光度計を用いて紫外線吸収スペクトル分析を行った。
Bruker社製、型番がBruker Avancelllである固体核磁気共鳴装置を用いて、合成された高分子紫外線吸収剤に対してケイ素と炭素の核磁気共鳴特性評価を行った。
【0049】
本出願の実施例では、エステル交換反応の転化率は以下の方法によって計算される。
反応過程で留出された副産物アルコール類のモル数nに基づいて、エステル交換反応に関与するものでの反応に関与する基数をnに決定し、反応原料におけるチタン酸エステルとケイ酸エステルとのモル数の総数をmに決定すると、エステル交換反応の転化率は、n/4mである。
【0050】
本出願の一実施形態によれば、高分子紫外線吸収剤は、以下の一般式で表される重合単位からなる。
【化4】
m=2以上、ポリエチレングリコールの重合度に依存する。
【0051】
オプションとして、前記方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
工程a):ポリエチレングリコール、チタン酸エステルとケイ酸エステルを三つ口フラスコ中で均一に混合し、攪拌状態でエステル交換反応を行い、蒸留装置に接続され、保護用窒素を注入し、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から10時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、60%~80%である。
工程b):工程a)反応後の装置をポンプまたはオイルポンプに接続して減圧蒸留することにより、エステル交換反応をより完全にし、体系の真空度を0.01~5KPaに制御し、反応温度を170℃から230℃までの範囲内とし、反応時間を0.5時間から5時間までの範囲内とする工程であって、エステル交換反応の転化率が、90%以上である。
【0052】
オプションとして、前記工程a)におけるチタン酸エステルとケイ酸エステルの一般式は、M(OR)nであり、式中、MはTiとSiであり、Rは、オルトチタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトラブチル、オルトチタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラヘキシル、チタン(IV)テトラオクチルオキシド、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル、テトラプロポキシシラン、オルトケイ酸テトライソブチルのうちの少なくとも1つを含むアルキル基の群である。
【0053】
オプションとして、前記工程a)におけるポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800のうちの1つまたは任意の複数種の混合物であってもよい。
【0054】
オプションとして、前記工程a)で、ケイ酸エステルと、チタン酸エステルとポリエチレングリコールとは、以下のモル比を有する。
M(OR)n/R-(OH)x=(0.8~1.2)x/n
【0055】
オプションとして、前記工程a)での反応は、窒素保護条件下で行われ、反応温度を80℃から180℃までの範囲内とし、反応時間を2時間から6時間までの範囲内とする。
【0056】
オプションとして、前記工程b)は、減圧蒸留の条件下で行われ、体系の真空度を1~5KPaに制御する。
【0057】
実施例1:
実施例1では、具体的な原料を配合する過程は、以下のとおりである:
80.76gのPEG-200、オルトケイ酸テトラエチル38.4g、およびオルトチタン酸テトラエチル1.76gを三つ口フラスコに加えて、蒸留装置に接続され、攪拌状態で、窒素保護条件下で175℃まで昇温し、反応時間を4時間とし、この過程で大量のエチルアルコールが蒸留され、エステル交換反応の転化率は75%であった。次に、真空引き装置に接続され、減圧蒸留条件下で反応を行い、体系の真空度を1KPaに制御して200℃まで昇温し、1時間反応後、反応を停止し、室温まで自然降温させた後、サンプルを取り出し、1#と符号が付けられ、エステル交換反応の転化率は93%であった。
【0058】
2#サンプルの製造
1#サンプルの製造と同様であり、異なるところは、窒素保護下で180℃まで昇温し、反応時間を2時間とすることである。
【0059】
3#サンプルの製造
1#サンプルの製造と同様であり、異なるところは、窒素保護下で80℃まで昇温し、反応時間を10時間とすることである。
【0060】
4#サンプルの製造
1#サンプルの製造と同様であり、異なるところは、体系の真空度を0.01KPaに制御し、230℃まで昇温し、反応時間を0.5時間とすることである。
【0061】
5#サンプルの製造
1#サンプルの製造と同様であり、異なるところは、体系の真空度を0.5KPaに制御し、170℃まで昇温し、反応時間を5時間とすることである。
【0062】
2#~5#サンプルの製造過程において、減圧蒸留の前のエステル交換反応の転化率は、60%~80%であるが、減圧蒸留の後のエステル交換反応の転化率は、90%以上になった。
【0063】
実施例2:
実施例2では、具体的な原料を配合する過程は、以下のとおりである:
80.76gのPEG-200、オルトケイ酸テトラエチル38.4g、およびオルトチタン酸テトラエチル3.52gを三つ口フラスコに加えて、蒸留装置に接続され、攪拌状態で、窒素保護条件下で150℃まで昇温し、反応時間を6時間とし、この過程で大量のエチルアルコールが蒸留され、エステル交換反応の転化率は77%であった。次に、真空引き装置に接続され、減圧蒸留条件下で反応を行い、体系の真空度を2KPaに制御して180℃まで昇温し、1時間反応後、反応を停止し、室温まで自然降温させた後、サンプルを取り出し、6#と符号が付けられ、エステル交換反応の転化率は92%であった。
【0064】
7#サンプルの製造
6#サンプルの製造と同様であり、異なるところは、PEG-200をPEG-400に置き換え、添加量を161.52gとし、オルトケイ酸テトラエチルをオルトケイ酸テトラメチルに置き換え、添加量を28.1gとし、オルトチタン酸テトラエチルをオルトチタン酸テトラブチルに置き換え、添加量を5.2gとすることである。
【0065】
8#サンプルの製造
6#サンプルの製造と同様であり、異なるところは、PEG-200をPEG-600に置き換え、添加量を242.3gとし、オルトケイ酸テトラエチルをテトラプロポキシシランに置き換え、添加量を48.7gとし、オルトチタン酸テトラエチルをオルトチタン酸テトライソプロピルに置き換え、添加量を4.38gとすることである。
【0066】
9#サンプルの製造
6#サンプルの製造と同様であり、異なるところは、PEG-200をPEG-800に置き換え、添加量を162gとし、オルトケイ酸テトラエチルをオルトケイ酸テトライソブチルに置き換え、添加量を29.5gとし、オルトチタン酸テトラエチルをチタン酸テトラヘキシルに置き換え、添加量を6.2gとすることである。
【0067】
10#サンプルの製造
6#サンプルの製造と同様であり、異なるところは、オルトチタン酸テトラエチルをチタン(IV)テトラオクチルオキシドに置き換え、添加量を8.3gとすることである。
【0068】
実施例3:
実施例3では、具体的な原料を配合する過程は、以下のとおりである:
80.76gのPEG-200、オルトケイ酸テトラエチル38.4g、およびオルトチタン酸テトラエチル1.76gを三つ口フラスコに加えて、蒸留装置に接続され、攪拌状態で、窒素保護条件下で120℃まで昇温し、反応時間を8時間とし、この過程で大量のエチルアルコールが蒸留され、エステル交換反応の転化率は73%であった。次に、真空引き装置に接続され、減圧蒸留条件下で反応を行い、体系の真空度を1KPaに制御して220℃まで昇温し、1時間反応後、反応を停止し、室温まで自然降温させた後、サンプルを取り出し、エステル交換反応の転化率は96%であった。
【0069】
実施例4:紫外線吸収テスト
典型的に、
図2に示すように、実施例1~実施例3で調製したサンプルに対して紫外線吸収テストを行った。
図2は、実施例1におけるサンプル1#に対応する紫外線吸収スペクトルである。
【0070】
水溶性高分子紫外線吸収剤の紫外線吸収テスト:
異なる重量の高分子紫外線吸収剤を脱イオン水に溶解し、完全に溶解した後、異なる質量分率の紫外線吸収剤溶液(0.7重量%、1.5重量%、3.0重量%、4.0重量%、9.0重量%、15重量%、30重量%)を調製した。脱イオン水を用いてブランク補正を行い、Varian Cary 5000型紫外可視分光光度計を用いて200~600nmの範囲で走査した。テスト結果から、濃度が0.7重量%である場合、UVBバンドの紫外光に対して比較的強い吸収能力が認められ、添加量の増大に伴い紫外吸収能力が有意に向上した。
【0071】
他のサンプルのテスト結果は、上述と同様である。
【0072】
実施例5:熱重量分析
実施例1~実施例3で調製したサンプルに対して熱重量分析を行い、10℃/分の昇温速度を採用して700℃まで昇温し、窒素流速100ml/分の分析条件下で分析すると、典型的に、結果は
図1に示すとおりである。
図1は、実施例2におけるサンプル6#に対応する熱重量曲線である。
【0073】
図を参照すれば、実施例2ではサンプル6#が500℃のときに分解開始し、合成された高分子紫外線吸収剤が500℃の比較的高い熱分解温度を有することがわかるとともに、原料がエステル交換反応により重合成功され、熱安定性の良い高分子紫外線吸収剤を形成することを示した。
【0074】
他のサンプルのテスト結果は、上述と同様である。
【0075】
実施例6:核磁気共鳴分析
実施例1~実施例3で調製したサンプルに対して核磁気共鳴分析を行い、
13Cおよび
29Si核磁気共鳴スペクトルを用いてサンプルを特徴付けると、典型的に、結果は
図3および
図4に示すとおりである。
図3は、実施例1における高分子紫外線吸収剤5#に対応するケイ素核磁気共鳴スペクトルであり、
図4は、実施例1における高分子紫外線吸収剤5#に対応する炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【0076】
図3を参照すれば、実施例1における高分子紫外線吸収剤5#中のケイ素周辺の化学環境は、主にケイ素酸素四配位であり、原料中のケイ素の化学シフトに比べて著しく遷移が発生したことがわかり、高重合体の形成、ケイ素がポリエチレングリコールと結合したことを示した。
【0077】
図4を参照すれば、実施例1における高分子紫外線吸収剤5#中の炭素周辺の化学環境は、主にポリエチレングリコール中の炭素であることがわかるとともに、原料中のケイ酸エステル類とチタン酸エステル類中のアルキル側鎖上の炭素の核磁気共鳴強度が著しく低下した。これらのことから、十分に、原料中のケイ酸エステル類とチタン酸エステル類中のアルキル側鎖で切断除去されたことを説明し、ポリエチレングリコールを結合とするチタン/ケイ素高分子ポリマーの形成を証明した。
【0078】
他のサンプルのテスト結果は、上述と同様である。
【0079】
上記の説明では本出願のいくつかの実施形態だけが示されているが、これらの実施形態は例示を目的とする非制限的なものであり、当業者であれば、本出願の原理と主旨から逸脱することなく、本出願の技術手段範囲内でこれらの実施例に対して若干の修正、改善を行うことができ、本出願の範囲は特許請求の範囲とその等価物により限定されることを理解できる。