(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】プラズマ装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/00 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
H05H1/00 A
(21)【出願番号】P 2021566422
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050549
(87)【国際公開番号】W WO2021130846
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 慎二
(72)【発明者】
【氏名】神藤 高広
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127933(JP,A)
【文献】特開2007-220586(JP,A)
【文献】国際公開第2018/185834(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電によりプラズマを発生させる電極と、
前記電極へ供給する電力を生成する電源装置と、
前記電源装置から前記電極へ前記電力を供給する電力ケーブルと、
前記電力ケーブルの漏電電流を検出する漏電検出装置と、
前記漏電検出装置により検出した前記漏電電流と第1閾値を比較した結果に基づいて第1報知を実行し、前記漏電電流と第2閾値を比較した結果に基づいて第2報知を実行する制御装置と、
を備える、プラズマ装置。
【請求項2】
前記第1閾値は、
正常にプラズマを発生させている状態で前記漏電検出装置により検出される前記漏電電流の電流値よりも大きい上限閾値を含み、
前記第2閾値は、
前記上限閾値よりも大きい最大閾値を含み、
前記制御装置は、
前記漏電電流の電流値が前記上限閾値以上となった場合に、前記電力ケーブルの漏電の可能性を前記第1報知として報知し、前記漏電電流の電流値が前記最大閾値以上となった場合に、前記電力ケーブルの切断を前記第2報知として報知する、請求項1に記載のプラズマ装置。
【請求項3】
プラズマの照射に用いる処理ガスを供給するガス供給装置と、
前記ガス供給装置から供給する前記処理ガスの圧力を検出する圧力検出装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記圧力検出装置により検出した前記処理ガスの圧力値と、前記漏電電流の電流値に基づいて、前記第1報知及び前記第2報知を実行する、請求項1又は請求項2に記載のプラズマ装置。
【請求項4】
前記第1閾値は、
正常にプラズマを発生させている状態で前記漏電検出装置により検出される前記漏電電流の電流値よりも小さい下限閾値を含み、
前記第2閾値は、
前記下限閾値よりも小さい最低閾値を含み、
前記制御装置は、
前記電極に電力の供給を開始した際に、前記漏電電流の電流値が前記最低閾値以下となり、且つ前記圧力検出装置により検出した前記処理ガスの圧力値が所定の圧力値まで上昇しない場合、プラズマが照射されていない異常を前記第2報知として報知し、
前記電極に電力の供給を開始した際に、前記漏電電流の電流値が前記最低閾値以下となり、且つ前記圧力検出装置により検出した前記処理ガスの圧力値が所定の圧力値まで上昇した場合、前記漏電検出装置に係わる異常を前記第2報知として報知する、請求項3に記載のプラズマ装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
プラズマの照射を開始した後のプラズマ照射中に、前記漏電電流の電流値が前記下限閾値以下となり、且つ前記圧力検出装置により検出した前記処理ガスの圧力値が所定の圧力値まで低下した場合、プラズマが照射されていない異常を前記第1報知として報知し、
プラズマの照射を開始した後のプラズマ照射中に、前記漏電電流の電流値が前記下限閾値以下となり、且つ前記圧力検出装置により検出した前記処理ガスの圧力値が所定の圧力値まで低下しない場合、前記漏電検出装置に係わる異常を前記第1報知として報知する、請求項4に記載のプラズマ装置。
【請求項6】
前記電力ケーブルをシールドする導電性のシールド部材と、
前記シールド部材を地絡させるアースケーブルと、
を備え、
前記漏電検出装置は、
前記アースケーブルに流れる前記漏電電流を検出する、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のプラズマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電極に電力を供給し放電を発生させ、発生させた放電によりプラズマを発生させるプラズマ装置が種々提案されている。特許文献1のプラズマ装置は、プラズマを発生させる処理室内の圧力を検出する真空計を備えている。プラズマ装置は、真空計の検出結果に基づいて、処理室に供給するプラズマ発生用ガスの流量を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のプラズマ装置では、電極に電力を供給する電力ケーブルからアースに流れる漏電電流を漏電検出装置で検出すれば、漏電による電力異常を検出できる。一方で、例えば、プラズマを発生させるために高電圧の電力を電力ケーブルで供給すると、正常なプラズマ発生時でもノイズが発生し漏電電流を漏電検出装置が検出してしまう虞がある。
【0005】
本願は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、漏電電流の発生状況に応じた報知を行うことができるプラズマ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、放電によりプラズマを発生させる電極と、前記電極へ供給する電力を生成する電源装置と、前記電源装置から前記電極へ前記電力を供給する電力ケーブルと、前記電力ケーブルの漏電電流を検出する漏電検出装置と、前記漏電検出装置により検出した前記漏電電流と第1閾値を比較した結果に基づいて第1報知を実行し、前記漏電電流と第2閾値を比較した結果に基づいて第2報知を実行する制御装置と、を備える、プラズマ装置を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、制御装置は、漏電電流と第1閾値を比較した結果と、漏電電流と第2閾値を比較した結果とで異なる報知を実行する。これにより、漏電電流の発生状況に応じた報知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】電極及び本体側プラズマ通路の位置においてX方向及びZ方向にプラズマヘッドを切断した断面図である。
【
図5】プラズマ装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】漏電検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】電流センサ111及びガス供給部15Bの構成を示すブロック図である。
【
図8】異常を検出する条件と、検出した場合の報知処理の内容を示す図である。
【
図9】正常時の漏電検出値と、各閾値との関係を示すグラフである。
【
図10】異常時の漏電検出値と、各閾値との関係を示すグラフである。
【
図11】異常時の漏電検出値と、各閾値との関係を示すグラフである。
【
図12】処理ガスの圧力値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための一形態について、図を参照しつつ詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態のプラズマ装置10は、プラズマヘッド11、ロボット13、制御ボックス15を備えている。プラズマヘッド11は、ロボット13の先端部に着脱可能に取り付けられている。ロボット13は、例えば、シリアルリンク型ロボット(多関節型ロボットと呼ぶこともできる)である。プラズマヘッド11は、ロボット13の先端に取り付けられた状態でプラズマガスを照射可能となっている。プラズマヘッド11は、ロボット13の駆動に応じて移動させられ、向きを変更させられる等し、3次元的に移動可能となっている。
【0010】
制御ボックス15は、コンピュータを主体として構成され、プラズマ装置10を統括的に制御する。制御ボックス15は、プラズマヘッド11に電力を供給する電源部15A及びプラズマヘッド11に処理ガスを供給するガス供給部15Bを有している。電源部15Aは、電力ケーブル16や制御ケーブル18を介してプラズマヘッド11と接続されている。電源部15Aは、制御ボックス15の制御に基づいて、プラズマヘッド11の電極33(
図3参照)に供給する電力を生成し、電極33に印加する電圧を変更する制御や後述するヒータ43(
図4参照)の温度を制御する。
【0011】
また、ガス供給部15Bは、複数(本実施形態では4本)のガス供給チューブ19を介してプラズマヘッド11と接続されている。ガス供給部15Bは、制御ボックス15の制御に基づいて、後述する反応ガス(処理ガスの一例)、キャリアガス(処理ガスの一例)、ヒートガス(処理ガスの一例)をプラズマヘッド11へ供給する。制御ボックス15は、ガス供給部15Bを制御し、ガス供給部15Bからプラズマヘッド11へ供給するガスの量などを制御する。そして、プラズマ装置10は、制御ボックス15の制御に基づいてロボット13を動作させ、テーブル17の上に載置された被処理物Wに対してプラズマヘッド11からプラズマガスを照射する。
【0012】
また、制御ボックス15は、タッチパネルや各種スイッチを有する操作部15Cを備えている。制御ボックス15は、各種の設定画面や動作状態(例えば、ガス供給状態など)等を操作部15Cのタッチパネルに表示する。また、制御ボックス15は、操作部15Cに対する操作入力により各種の情報を受け付ける。
【0013】
プラズマヘッド11は、ロボット13の先端に設けられた取付板13Aに対して着脱可能に設けられている。これにより、プラズマヘッド11は、種類の異なるプラズマヘッド11に交換可能となっている。
図2に示すように、プラズマヘッド11は、プラズマ生成部21、ヒートガス供給部23、ノズル35等を備えている。プラズマ生成部21は、制御ボックス15のガス供給部15B(
図1参照)から供給された処理ガスをプラズマ化して、プラズマガスを生成する。また、プラズマヘッド11は、内部に設けられたヒータ43(
図4参照)によってガス供給部15Bから供給された処理ガスを加熱してヒートガスを生成する。ヒートガスの温度は、例えば、600℃から800℃である。本実施形態のプラズマヘッド11は、プラズマ生成部21において生成したプラズマガスを、加熱したヒートガスとともに、
図1に示す被処理物Wへ噴出する。プラズマヘッド11には、
図2に示す矢印の方向に上流側から下流側へと処理ガスが供給される。なお、プラズマヘッド11は、ヒートガスを加熱するヒータ43を備えない構成でも良い。即ち、本開示のプラズマ装置は、ヒートガスを用いない構成でも良い。
【0014】
図2に示すように、プラズマヘッド11の接続面11Aには、電力ケーブル16を取り付ける取付部11Bが略中央部に設けられている。また、接続面11Aの一端には、制御ケーブル18を取り付ける取付部11Cが設けられている。また、取付部11Bを間に挟んで取付部11Cとは反対側には、ガス供給チューブ19を取り付ける取付部11Dが設けられている。取付部11Dは、例えば、ガス供給チューブ19の先端に設けられた取付部材25を接続される。取付部11D及び取付部材25は、例えば、所謂ワンタッチ継手であり、ガス供給チューブ19をプラズマヘッド11に対して着脱可能に装着する。
【0015】
図3及び
図4に示すように、プラズマ生成部21は、ヘッド本体部31、一対の電極33、ノズル35等を含む。尚、
図3は、一対の電極33及び後述する複数の本体側プラズマ通路71の位置に合わせて切断した断面図であり、
図4は、
図3のA-A線における断面図である。ヘッド本体部31は、耐熱性の高いセラミックにより成形されており、そのヘッド本体部31の内部には、プラズマガスを発生させる反応室37が形成されている。一対の電極33の各々は、例えば、円柱形状をなしており、その先端部を反応室37に突出させた状態で固定されている。以下の説明では、一対の電極33を、単に電極33と称する場合がある。また、一対の電極33が並ぶ方向をX方向、円柱形状の電極33の軸方向をZ方向、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向と称して説明する。
【0016】
ヒートガス供給部23は、ガス管41、ヒータ43、連結部45等を備えている。ガス管41及びヒータ43は、ヘッド本体部31の外周面に取り付けられ、
図4に示すカバー47によって覆われている。ガス管41は、ガス供給チューブ19(
図1参照)を介して、制御ボックス15のガス供給部15Bに接続されている。ガス管41には、ガス供給部15Bから加熱用ガス(例えば、空気)が供給される。ヒータ43は、ガス管41の途中に取り付けられている。ヒータ43は、ガス管41を流れる加熱用ガスを温めてヒートガスを生成する。また、ヒータ43には、ヒータ43の加熱温度を検出するための熱電対92(
図5参照)が設けられている。
【0017】
図4に示すように、連結部45は、ガス管41をノズル35に連結するものである。ノズル35がヘッド本体部31に取り付けられた状態では、連結部45は、一端部をガス管41に接続され、他端部をノズル35に形成されたヒートガス通路51に接続される。ヒートガス通路51には、ガス管41を介してヒートガスが供給される。
【0018】
図3及び
図4に示すように、電極33の一部の外周部は、セラミックス等の絶縁体で製造された電極カバー53によって覆われている。電極カバー53は、略中空筒状をなし、長手方向の両端部に開口が形成されている。電極カバー53の内周面と電極33の外周面との間の隙間は、ガス通路55として機能する。電極カバー53の下流側の開口は、反応室37に接続されている。電極33の下端は、電極カバー53の下流側の開口から突出している。
【0019】
また、ヘッド本体部31の内部には、反応ガス流路61と、一対のキャリアガス流路63とが形成されている。反応ガス流路61は、ヘッド本体部31の略中央部に設けられ、ガス供給チューブ19(
図1参照)を介してガス供給部15Bと接続され、ガス供給部15Bから供給される反応ガスを反応室37へ流入させる。また、一対のキャリアガス流路63は、X方向において反応ガス流路61を間に挟んだ位置に配置されている。一対のキャリアガス流路63の各々は、一対のガス供給チューブ19(
図1参照)の各々を介してガス供給部15Bと接続され、ガス供給部15Bからキャリアガスが供給される。キャリアガス流路63は、ガス通路55を介してキャリアガスを反応室37へ流入させる。
図1及び
図2に示す4本のガス供給チューブ19は、例えば、一対のキャリアガス流路63のそれぞれにキャリアガスを供給する2本のガス供給チューブ19と、反応ガスを供給する1本のガス供給チューブ19と、ヒートガス(加熱する前の加熱用ガス)を供給するガス供給チューブ19である。
【0020】
反応ガス(種ガス)としては、酸素(O2)を採用できる。ガス供給部15Bは、例えば、反応ガス流路61を介して、酸素と窒素(N2)との混合気体(例えば、乾燥空気(Air))を、反応室37の電極33の間に流入させる。以下、この混合気体を、便宜的に反応ガスと呼び、酸素を種ガスと呼ぶ場合がある。キャリアガスとしては、窒素を採用できる。ガス供給部15Bは、ガス通路55の各々から、一対の電極33の各々を取り巻くようにキャリアガスを流入させる。
【0021】
一対の電極33には、制御ボックス15の電源部15Aから交流の電圧が印加される。電圧を印加することによって、例えば、
図3に示すように、反応室37内において、一対の電極33の下端の間に、擬似アークAが発生する。擬似アークAとは、例えば、通常のアーク放電のように大電流が流れないように、電源部15Aで電流を制限しながら放電させる方式のものである。この擬似アークAを反応ガスが通過する際に、反応ガスは、プラズマ化される。従って、一対の電極33は、擬似アークAの放電を発生させ、反応ガスをプラズマ化し、プラズマガスを発生させる。
【0022】
また、ヘッド本体部31における反応室37の下流側の部分には、複数(本実施例においては、6本)の本体側プラズマ通路71が形成されている。複数の本体側プラズマ通路71の上流側の端部は、反応室37に開口しており、複数の本体側プラズマ通路71の下流側の端部は、ヘッド本体部31の下端面に開口している。
【0023】
ノズル35は、例えば、耐熱性の高いセラミックにより成形されている。ノズル35は、ボルト80により、ヘッド本体部31の下面に固定されている。このため、ノズル35は、ヘッド本体部31に着脱可能とされており、種類の異なるノズルに変更することができる。ノズル35には、上端面に開口する一対の溝81が形成されている。一対の溝81の各々は、例えば、ヘッド本体部31の下端面に開口する3本の本体側プラズマ通路71が連通している。また、ノズル35には、Z方向に貫通する複数(本実施例においては、10本)のノズル側プラズマ通路82が形成されている。ノズル側プラズマ通路82の上端には、溝81(例えば、5本ずつ)が接続されている。尚、
図3及び
図4に示すノズル35の形状・構造は、一例である。
【0024】
また、ノズル35には、ノズル側プラズマ通路82を取り囲むように、ヒートガス用通路95が形成されている。ヒートガス用通路95の上部は、ヒートガス通路51を介して、ヒートガス供給部23の連結部45に連結されている。ヒートガス用通路95の下端は、ノズル35の下面において開口している。
【0025】
このような構造により、反応室37で発生したプラズマガスは、キャリアガスとともに、本体側プラズマ通路71を経由して溝81の内部に噴出される。そして、プラズマガスは、溝81の内部において拡散し、複数のノズル側プラズマ通路82の各々を経由して、ノズル側プラズマ通路82の下端の開口82Aから噴出される。また、ガス管41からヒートガス通路51へ供給されたヒートガスは、ヒートガス用通路95を流れる。このヒートガスは、プラズマガスを保護するシールドガスとして機能するものである。ヒートガスは、ヒートガス用通路95を流れ、ヒートガス用通路95の下端の開口95Aからプラズマガスの噴出方向に沿って噴出される。この際、ヒートガスは、ノズル側プラズマ通路82の開口82Aから噴出されるプラズマガスの周囲を取り巻くように噴出される。このように、加熱したヒートガスをプラズマガスの周囲に噴出することで、プラズマガスの効能(濡れ性など)を高めることができる。
【0026】
次に、制御ボックス15の詳細な構成について説明する。
図5に示すように、制御ボックス15は、上記した電源部15A、ガス供給部15B、操作部15Cの他に、コントローラ100、駆動回路105、制御回路106、通信部107、漏電検出装置110、電流センサ111、記憶装置116などを備えている。コントローラ100は、不図示のCPU,ROM,RAM等を備えるコンピュータを主体として構成されている。コントローラ100は、CPUでプログラムを実行し、電源部15A、駆動回路105、ガス供給部15Bなどを制御することにより、プラズマヘッド11、ヒートガス供給部23などを制御する。尚、プログラムをCPUで実行するコントローラ100のことを、単に装置名で記載する場合がある。例えば、「コントローラ100が」という記載は、「プログラムをCPUで実行するコントローラ100が」ということを意味する場合がある。
【0027】
また、コントローラ100は、制御回路106を介して、操作部15Cに接続されている。コントローラ100は、制御回路106を介して操作部15Cのタッチパネルの表示を変更する。また、コントローラ100は、制御回路106を介して操作部15Cに対する操作入力を受け付ける。また、記憶装置116は、例えば、ハードディスクドライブ、RAM、ROM等を組み合わせて構成されている。記憶装置116には、状態情報118が記憶されている。コントローラ100は、例えば、プラズマ装置10の状態に係わる情報、異常を検出した際の情報、プラズマ装置10の設定情報、各機器の稼働時間などを、状態情報118として記憶する。
【0028】
また、通信部107は、不図示のネットワークに接続する通信機器と通信を行う。通信の形態は特に限定されず、例えば、LAN、シリアル通信などである。尚、コントローラ100は、状態情報118を制御ボックス15内の記憶装置116に記憶せずに、通信部107を介してネットワーク上のサーバ装置等へ記憶しても良い。
【0029】
漏電検出装置110は、電源部15Aとプラズマヘッド11(電極33)を接続する電力ケーブル16の漏電電流を検出する装置である。
図6は、漏電検出装置110の構成を示している。
図6に示すように、本実施形態の電力ケーブル16は、例えば、第1ケーブル16A、第2ケーブル16B、アースケーブル16Cを有している。第1ケーブル16A及び第2ケーブル16Bの先端は、プラズマヘッド11が備える一対の電極33(
図3参照)の各々に電気的に接続されている。電力ケーブル16は、
図1に示すように、ロボット13に取り付けられている。このため、ロボット13の動きに応じて、電力ケーブル16には、屈曲、回転、引っ張りなどの負荷がかかり、損傷を受ける虞がある。そこで、本実施形態のプラズマ装置10は、漏電検出装置110により、電力ケーブル16が損傷するなどして生じる異常電流を検出する。
【0030】
図6に示すように、漏電検出装置110は、検出モジュール120と、カレントトランスCTとを有している。検出モジュール120は、比較回路121及び電源回路122を有する。電力ケーブル16の第1ケーブル16A、第2ケーブル16B及びアースケーブル16Cの各々は、例えば、電線に絶縁体が被覆されているものである。第1ケーブル16A、第2ケーブル16B及びアースケーブル16Cは、メッシュ状の導電性のシールド部材145でシールドされている。シールド部材145はアースケーブル16Cを介して接地されている。
【0031】
また、電源部15Aは、AC電源141,142を有する。AC電源141は、商用電源(不図示)から給電される電力に基づいて、所定の電圧値や電流値の交流電力を生成する。AC電源141は、第1ケーブル16A及び第2ケーブル16Bを介して、一対の電極33の各々へ生成した交流電力を供給する。
【0032】
漏電検出装置110のカレントトランスCTは、アースケーブル16Cに取り付けられている。カレントトランスCTは、アースケーブル16Cに流れる漏電電流の電流値に応じた検出電圧を比較回路121へ出力する。AC電源142は、例えば、AC電源141から供給される交流電力から電源回路122へ供給する交流電力(例えば、AC200V)を生成する。電源回路122は、AC電源142から供給される交流電力から比較回路121へ供給する駆動電圧及び閾値電圧を生成し、生成した駆動電圧及び閾値電圧を比較回路121へ供給する。閾値電圧は、本開示の第1閾値、第2閾値の一例である。
【0033】
比較回路121は、カレントトランスCTの検出電圧と、閾値電圧とを比較し、比較結果を示す検出情報SIをコントローラ100に出力する。ここで、第1ケーブル16A又は第2ケーブル16Bと、アースケーブル16Cとの間で短絡や放電が発生した場合、AC電源141からアースへ漏電電流が流れる。このため、カレントトランスCTの検出電圧は、変動する。比較回路121は、変動するカレントトランスCTの検出電圧と閾値とを比較した結果を、検出情報SIとしてコントローラ100に出力する。
【0034】
また、第1ケーブル16Aと、第2ケーブル16Bとの間で短絡や放電が発生した場合、電磁誘導等により、シールド部材145に漏電電流が流れる。この場合にも、比較回路121は、変動するカレントトランスCTの検出電圧と閾値とを比較した結果を、検出情報SIとしてコントローラ100に出力する。このように、漏電検出装置110は、第1ケーブル16A又は第2ケーブル16Bの地絡だけでなく、第1ケーブル16A及び第2ケーブル16B間の短絡や放電を検出することができる。
【0035】
また、上記した短絡や放電が発生していない電力供給時、即ち、電力ケーブル16の損傷や切断が発生せず、プラズマ発生制御に必要な電力を電力ケーブル16で供給している正常な状態でも、電磁誘導等により、シールド部材145に漏電電流が流れる。また、シールド部材145に何らかのノイズが入力された場合にも漏電電流が生じる可能性がある。このような正常時やプラズマ装置10の異常以外の場合でも、漏電検出装置110は、閾値を用いた比較結果を、検出情報SIとしてコントローラ100に出力する。
【0036】
尚、漏電検出装置110の構成は、特に限定されない。例えば、漏電検出装置110は、アースケーブル16Cに流れる漏電電流の電流値を、閾値と比較する構成でも良い。例えば、漏電検出装置110は、カレントトランスにより検出された第1ケーブル16Aや第2ケーブル16Bに流れる電流値に応じた検出電圧をAD変換し、電流値を示すデジタル値をコントローラ100へ出力する。コントローラ100は、入力した電流値と閾値とを比較しても良い。即ち、本開示の漏電検出装置は、電流値で比較する構成でも良い。この場合、本開示の第1閾値、及び第2閾値として、所定の電流値を設定することができる。また、検出した電圧値や電流値と、閾値の比較処理を、コントローラ100が実行しても良い。この場合、コントローラ100は、本開示の漏電検出装置の一例である。
【0037】
また、本実施形態のコントローラ100は、漏電電流を検出した検出情報SIに加え、処理ガスの圧力値に基づいて、装置の異常を判断する。
図7に示すように、ガス供給部15Bは、ガス発生装置109、複数のマスフローコントローラ112(
図7中のF1~F5)、複数の圧力センサ113(図中の白色の四角)などを備えている。ガス発生装置109は、反応ガス、キャリアガス、加熱用ガスの各々を供給する供給源の装置である。ガス発生装置109は、例えば、窒素(N2)、酸素(O2)、空気(Air、乾燥空気など)を供給する。ガス発生装置109は、空気の供給源となるコンプレッサ、コンプレッサから供給される空気の湿気を取り除くためのドライヤ、乾燥空気から窒素や酸素を分離する分離装置等を備えている。尚、ガス発生装置109は、反応ガスの種ガスの酸素として、酸素を含む空気や乾燥空気を用いても良い。
【0038】
ガス発生装置109は、反応ガス(酸素、窒素)、キャリアガス(窒素)、加熱用ガス(空気)のそれぞれを処理ガスとして供給する。複数のマスフローコントローラ112は、例えば、各処理ガスの各々に対応して設けられ、各処理ガスの流量を、コントローラ100の制御に基づいて制御する。各マスフローコントローラ112は、調整した後の実際に供給する流量の値(測定値)をコントローラ100に出力する。
【0039】
また、複数の圧力センサ113は、各マスフローコントローラ112によって流量を調整された処理ガスの圧力値を検出する。また、圧力センサ113は、反応ガス(酸素、窒素)を混合器115で混合した混合気体の圧力値を検出する。従って、圧力センサ113は、反応ガス(種ガス)である酸素(O2)、酸素に混合する窒素(N2)、混合した後の混合気体(乾燥空気)のそれぞれの圧力を検出する。また、圧力センサ113は、一対のキャリアガス流路63の各々に接続されたガス供給チューブ19を流れるキャリアガスの圧力を、個別に検出する。また、圧力センサ113は、ガス管41へ供給する加熱用ガス(加熱する前の空気)の圧力値を検出する。各圧力センサ113は、検出した圧力値をコントローラ100に出力する。そして、本実施形態のコントローラ100は、漏電電流(検出電圧)、処理ガスの圧力値に基づいて、装置の異常を判断する。判断処理の内容については、後述する。
【0040】
また、電源部15Aは、商用電源から電極33へ給電する高周波の交流電力を生成し、生成した交流電力を電極33へ給電する。電流センサ111は、電源部15Aから電極33へ電力を供給するための第1ケーブル16Aや第2ケーブル16Bに流れる電流を検出する。電流センサ111は、例えばカレントトランスを備え、カレントトランスにより検出された第1ケーブル16Aや第2ケーブル16Bに流れる電流値に応じた検出電圧をAD変換し、電流値に応じたデジタル値をコントローラ100へ出力する。
【0041】
また、
図5に示すように、駆動回路105には、ヒータ43、及びヒータ43付近に取り付けられた熱電対92が電気的に接続されている。駆動回路105は、熱電対92の出力値に応じた温度をコントローラ100へ出力する。駆動回路105は、コントローラ100に指示された目標温度となるように、熱電対92の出力値に基づき、ヒータ43の加熱温度を制御する。温度センサ114は、例えば、プラズマヘッド11内に設けられている。温度センサ114は、例えば熱電対を有し、プラズマガスの温度を検出し、検出した温度をコントローラ100へ出力する。
【0042】
次に、本実施形態のコントローラ100が実行する報知処理について説明する。コントローラ100は、例えば、操作部15Cのタッチパネルを介してプラズマ処理の開始の指示を受け付けると、プラズマ発生制御を開始する。プラズマ発生制御において、コントローラ100は、所定の電力を電極33に供給する制御を電源部15Aに開始させる。以下の説明では、電源部15Aから電極33へ電力の供給を開始することを「プラズマON」と称して説明する。
【0043】
また、コントローラ100は、プラズマON時において、ガス供給部15Bに処理ガス(キャリアガス、反応ガス、加熱用ガス)の供給を開始させる。ガス供給部15Bは、予め設定された所定のガス流量及び圧力値で、処理ガスの供給を開始する。また、コントローラ100は、駆動回路105を制御して、所定の温度になるようにヒータ43の加熱温度を制御する。
【0044】
また、コントローラ100は、プラズマONすると、プラズマ装置10の状態に係わる状態情報118を記憶装置116に記憶する。また、コントローラ100は、装置の異常の発生を判定する。コントローラ100は、装置の異常を検出すると、例えば、電極33への電力の供給を停止し、処理ガスの供給を停止し、ヒートガス供給部23の動作を停止させ、プラズマ発生制御を終了する。これにより、プラズマ装置10のプラズマ発生は停止される。コントローラ100は、異常を検出しプラズマ発生制御を終了すると、操作部15Cの画面に検出した異常の情報を表示させる。
【0045】
図8は、コントローラ100が異常と判断する条件と、その異常を検出した場合の報知処理の内容を示している。以下の説明では、漏電検出装置110によって検出した検出電圧値を、漏電検出値と称して説明する。まず、一番上のNO1は、漏電検出装置110で検出した漏電検出値が最大閾値TH1以上となる場合である。2番目のNO2は、漏電検出装置110で検出した漏電検出値が上限閾値TH2以上となる場合である。
図9は、正常時の漏電検出値と、各閾値との関係を示している。本実施形態のコントローラ100は、最大閾値TH1、上限閾値TH2、下限閾値TH3、最低閾値TH4を用いて、漏電検出値の異常を判断する。
【0046】
最大閾値TH1は、例えば、電力ケーブル16の切断や損傷が発生し、第1ケーブル16A又は第2ケーブル16Bと、アースケーブル16Cとの間で短絡や放電が発生した場合に検出される漏電検出値(漏電電流に応じた検出電圧値)を判断可能な値である。最大閾値TH1は、例えば、放電時に電極33に印加する電圧値、又はその電圧値から電力ケーブル16やアースケーブル16Cの電力損失を減算した値である。また、上限閾値TH2は、最大閾値TH1よりも小さい値である。例えば、第1ケーブル16Aと第2ケーブル16Bとの間で短絡や放電が発生した場合や、電力ケーブル16の僅かな切断等が発生した場合に、電磁誘導等により、シールド部材145に漏電電流が流れる。上限閾値TH2は、このような最大閾値TH1まで増大しない漏電検出値の増大(異常)を検出可能な値である。
図9の実線の波形150で示すように、電力ケーブル16の損傷や切断が発生せず正常に電力供給できている場合、漏電検出値は、例えば、プラズマON時から徐々に増大し、基準値Vs付近で安定する。この基準値Vsは、正常な電力供給時における電磁誘導やノイズ等により生じる漏電検出値である。
【0047】
一方、
図10は、異常時の漏電検出値と、各閾値との関係を示している。破線の波形151は、漏電検出値が上限閾値TH2以上となった場合であり、漏電検出値が基準値Vsで安定している状態から、何らかの異常の発生により増大した場合を示している。波形151に示すように、漏電検出値が基準値Vsの状態で(例えば、プラズマ照射中に)第1及び第2ケーブル16A,16B間の放電等が発生すると、漏電検出値は、基準値Vsから増大し、上限閾値TH2以上となる。第1及び第2ケーブル16A,16Bが完全に切断等されていない場合、例えば、電源部15Aから供給した電力の一部しかアースケーブル16Cに流れず、漏電検出値は、最大閾値TH1まで増大せず、最大閾値TH1未満となる。また、プラズマON後に異常が発生した場合と同様に、例えば、プラズマONする前から電力ケーブル16の損傷等があった場合、プラズマON時以降に、漏電検出値が、上限閾値TH2以上まで増大する。
【0048】
コントローラ100は、上記した漏電検出値が上限閾値TH2以上となったことを検出すると、
図8に示すように、電力ケーブル16が切断している可能性がある旨を操作部15Cのタッチパネルに表示する。上記したように、上限閾値TH2は、電力ケーブル16が確実に切断しているか不明であるが、何らかの原因で漏電検出値の増大を検出した場合に警告を行なうための閾値である。このため、コントローラ100は、例えば、「電力ケーブル16のどこかで損傷が発生している可能性があるため、確認して下さい」などの確認メッセージを操作部15Cに表示する。そして、例えば、ユーザは、プラズマ装置10の状態を確認し、確認を終了した旨の操作入力を操作部15Cに対して行なう。コントローラ100は、操作部15Cに対する操作入力を受け付けると、プラズマ発生制御を再開しても良い。
【0049】
一方、
図10の実線の波形153は、漏電検出値が最大閾値TH1以上となった場合を示している。波形153に示すように、漏電検出値が基準値Vsの状態で電力ケーブル16の切断等が発生すると、漏電検出値は、基準値Vsから増大し、上限閾値TH2を超えて最大閾値TH1以上となる。例えば、第1ケーブル16Aと、アースケーブル16Cとの間で短絡が発生した場合、AC電源141から第1ケーブル16Aに供給した電力の大部分がアースケーブル16Cを介してアースへ漏電電流として流れる。このため、漏電検出値は、最大閾値TH1まで増大する可能性が高くなる。同様に、例えば、プラズマONする前から電力ケーブル16が切断していた場合も、プラズマON時以降に、漏電検出値が最大閾値TH1まで増大する。
【0050】
コントローラ100は、漏電検出値が最大閾値TH1以上となったことを検出すると、
図8に示すように、電力ケーブル16が切断している旨を操作部15Cのタッチパネルに表示する。上記したように漏電検出値が最大閾値TH1以上となる場合、電力ケーブル16の切断等が発生している可能性が極めて高い。このため、コントローラ100は、例えば、「電力ケーブル16のどこかで損傷が発生しているため、緊急停止しました」などの警告メッセージを操作部15Cに表示する。この場合、コントローラ100は、例えば、電力ケーブル16の交換を検出した場合、メンテナンス業者による作業確認の操作入力が操作部15Cで行なわれた場合など、漏電異常の原因が確実に解決するまでの間、電源部15Aによる電力供給を停止する。
【0051】
従って、本実施形態では、第1閾値として、正常にプラズマを発生させている状態で漏電検出装置110により検出される漏電検出値(漏電電流の電流値、基準値Vsに相当する電流値)よりも大きい上限閾値TH2を含む。また、第2閾値として、上限閾値TH2よりも大きい最大閾値TH1を含む。コントローラ100は、漏電検出値が上限閾値TH2以上となった場合に、電力ケーブル16の漏電の可能性を報知する(第1報知の一例)。また、コントローラ100は、漏電電流の電流値が最大閾値TH1以上となった場合に、電力ケーブル16の切断を報知する(第2報知の一例)。
【0052】
正常にプラズマを発生させている状態で電力供給により発生するノイズ(誘導電流)などを基準の漏電電流(基準値Vs)とし、その漏電電流よりも大きい上限閾値TH2を設定する。これにより電力ケーブル16の短絡などの漏電の可能性を報知できる。また、上限閾値TH2よりも大きい最大閾値TH1を設定することで、電力ケーブル16が完全に切断され電力ケーブル16の途中で異常放電が発生した場合など、漏電異常の発生が極めて高い状態を検出し報知することができる。従って、上限閾値TH2と最大閾値TH1とによって、漏電の可能性や確実な漏電の報知を実行できる。
【0053】
また、
図8のNO3、NO4は、漏電検出値が最低閾値TH4以下となる場合を示している。本実施形態のコントローラ100は、最低閾値TH4による漏電異常の判定を、プラズマON時に実行する。最低閾値TH4は、例えば、漏電電流が流れない(漏電検出値が増大しない)又は、漏電電流が極めて小さい異常を検出する閾値である。例えば、アースケーブル16Cをプラズマ装置10のアースに付け忘れた場合、アースケーブル16Cが切断された場合、アースケーブル16Cが取れかけている場合など、漏電検出装置110に係わる故障が発生すると、漏電検出値が増大しない又は極めて小さい可能性がある。最低閾値TH4は、このような漏電検出値が増大しない状態などを検出可能な値であり、例えば、0V(電流であれば0A)、又は0Vに近い値である。
【0054】
図11の波形155は、漏電検出値が最低閾値TH4以下となった場合であり、プラズマON時の状態を示している。波形155に示すように、アースケーブル16Cの付け忘れなどが発生していた場合、漏電検出値は、プラズマON時から増大せず、最低閾値TH4を下回る、又は後述する下限閾値TH3よりも小さく最低閾値TH4付近となる。
【0055】
一方で、仮にアースケーブル16Cが正常に接続されている場合でも、例えば、処理ガスが供給されず、電極33の放電が発生しない場合、あるいは何らかの原因で放電が発生しない場合などにも、漏電検出値が、増大しない可能性がある。具体的には、ガス供給チューブ19の損傷、ガス供給部15Bの故障、電極33の劣化、反応室37の損傷など、様々な原因で、漏電検出値が低減する可能性がある。
【0056】
図12は、プラズマON時からプラズマ照射時にかけての処理ガスの圧力値の変化を示している。ここで、例えば、圧力センサ113で検出した処理ガスの圧力値は、擬似アークAの発生状態等に異常が発生していない限り、キャリアガス、反応ガス、ヒートガスの種類に係わらずプラズマON時からプラズマが点火してプラズマ照射を開始して以降までの間、互いに同様に増大する。このため、以下の説明では、特段の区別を要しない場合、各種ガスを処理ガスと総称して説明する。
図12の波形157に示すように、マスフローコントローラ112の調整によって流量や流速を調整された処理ガスの圧力を圧力センサ113で検出した圧力値は、プラズマON時から徐々に増大する。プラズマON時から各処理ガスの供給が開始されるため、圧力値は、徐々に増大する。圧力値は、例えば、基準圧力値Psにおいて飽和する。その後、電極33間に擬似アークAが発生し、プラズマヘッド11の温度は、上昇する。また、ヒートガスの加熱によっても、プラズマヘッド11の温度は、上昇する。圧力値は、時間の経過とともに、基準圧力値Psから徐々に増大する。
【0057】
そして、ガス供給チューブ19の損傷、ガス供給部15Bの故障が発生すると、
図12の破線の波形159に示すように、圧力値の低下が発生する。圧力値がどの程度まで低下するのかは、異常の発生タイミング、発生した異常の種類、規模等に依存する。例えば、圧力値は、プラズマ点火前に低下すると、基準圧力値Psまで上昇しない可能性がある(下側の波形159参照)。あるいは、圧力値は、プラズマ点火後に低下すると、所定の閾値圧力値Pthまで上昇しない可能性がある(上側の波形159参照)。この閾値圧力値Pthは、例えば、基準圧力値Psと、プラズマ照射時の最大圧力値との間に設定される閾値である。このため、このような基準圧力値Psや閾値圧力値Pthを設定しておくことで、圧力値が上昇しない異常を検出することができる。
【0058】
そこで、
図8のNO3に示すように、コントローラ100は、プラズマON時に、漏電検出値が最低閾値TH4以下で、且つ圧力値が例えば基準圧力値Psまで上昇しないことを検出すると、プラズマが照射されていない旨の表示を操作部15Cに行なう。ここでいうプラズマON時とは、例えば、プラズマONからプラズマ点火までの期間をいう。あるいは、プラズマON時とは、プラズマONから、プラズマガスが安定的に照射されるまでの期間でも良い。また、ここでいうプラズマが照射されていない旨とは、プラズマが発生していない異常を報知する旨だけでなく、上記したガス供給チューブ19の損傷、ガス供給部15Bの故障、電極33の劣化、反応室37の損傷など、漏電検出装置110に係わる異常以外の異常を報知するための表示例である。一方、
図8のNO4に示すように、コントローラ100は、プラズマON時に、漏電検出値が最低閾値TH4以下で、且つ圧力値が基準圧力値Ps以上まで上昇した(正常な値まで上昇した)ことを検出すると、アースケーブル16Cやシールド部材145に異常(漏電検出装置110に係わる異常の一例)がある旨の表示を操作部15Cに行なう。
【0059】
また、
図8のNO5、NO6は、漏電検出値が下限閾値TH3以下となる場合を示している。本実施形態のコントローラ100は、下限閾値TH3による漏電異常の判定を、プラズマの照射を開始した後に実行する。ここでいうプラズマの照射を開始した後とは、例えば、プラズマ点火以降の期間をいう。あるいは、プラズマの照射を開始した後とは、プラズマガスが安定的に照射された状態以降の期間でも良い。下限閾値TH3は、上記した各種の異常が発生しておらず、正常なプラズマ照射を実行できている基準値Vsよりも小さい値で、最低閾値TH4よりも大きな値である。例えば、上記した上限閾値TH2は、基準値Vsに+X[V]した値である。そして、下限閾値TH3は、基準値Vsに-X[V]した値である。即ち、上限閾値TH2及び下限閾値TH3は、例えば、基準値Vsを中央値として、所定の値(X[V])だけプラス又はマイナスした値である。
【0060】
上記した最低閾値TH4と同様に、プラズマの照射を開始した後に、漏電異常が発生した場合、漏電検出値が低下する虞がある。また、プラズマの照射を開始した後に、ガス供給チューブ19の損傷が発生し、処理ガスの供給等が停止した場合にも、漏電検出値が低下する虞がある(
図9の破線の波形161参照)。そこで、
図8のNO5に示すように、コントローラ100は、プラズマの照射を開始した後に、例えば、漏電検出値が下限閾値TH3以下まで低下し、且つ圧力値が閾値圧力値Pth(
図12参照)まで低下したことを検出すると、プラズマが照射されていない旨の表示を操作部15Cに行なう。これにより、プラズマ照射中に、プラズマの消灯、ガス供給チューブ19の損傷、ガス供給部15Bの故障、電極33の劣化、反応室37の損傷などの異常が発生した場合に、プラズマの照射異常として報知を行なうことができる。尚、コントローラ100は、圧力値の低下を基準圧力値Ps(
図12参照)によって判断しても良い。一方、
図8のNO6に示すように、コントローラ100は、プラズマの照射を開始した後に、漏電検出値が下限閾値TH3以下まで低下し、且つ圧力値が閾値圧力値Pth以上の正常な値で維持されていることを検出すると、アースケーブル16Cやシールド部材145に異常(漏電検出装置110に係わる異常の一例)がある旨の表示を操作部15Cに行なう。
【0061】
従って、本実施形態では、第1閾値として、正常にプラズマを発生させている状態で漏電検出装置110により検出される基準値Vs(漏電電流の電流値に応じた電圧値)よりも小さい下限閾値TH3を含む(
図9参照)。また、第2閾値として、下限閾値TH3よりも小さい最低閾値TH4を含む。コントローラ100は、電極33に電力の供給を開始した際(プラズマON時)に、漏電検出値が最低閾値TH4以下となり、且つ圧力センサ113により検出した処理ガスの圧力値が所定の圧力値(閾値圧力値Pthや基準圧力値Ps)まで上昇しない場合、プラズマが照射されていない異常を報知する(第2報知の一例)。また、コントローラ100は、電極33に電力の供給を開始した際に、漏電検出値が最低閾値TH4以下となり、且つ圧力センサ113により検出した処理ガスの圧力値が所定の圧力値まで上昇した場合、漏電検出装置110に係わる異常を報知する(第2報知の一例)。
【0062】
電極33に電力の供給を開始した際には(プラズマON以降には)、漏電電流の電流値は、例えば、ゼロである状態から最低閾値TH4を超え、さらに下限閾値TH3を超えて、正常な電流値となる(
図9の波形150参照)。換言すれば、電力の供給開始時は、最低閾値TH4を用いることで、下限閾値TH3を用いた場合よりもより早く異常を検出することができる。そこで、コントローラ100は、電力の供給開始時に、漏電検出値が最低閾値TH4以下となり、且つ圧力値が上昇しない場合、プラズマが照射されていない異常を報知する。これにより、プラズマが点火されていない異常や処理ガスが供給されていない異常時に、異常を報知できる。また、コントローラ100は、電力の供給開始時に、漏電検出値が最低閾値TH4以下となり、且つ圧力値が上昇した場合、漏電検出装置110に係わる異常を報知する。これにより、漏電検出装置110の接続ミス、アースケーブル16Cの切断などの異常時に、異常を報知できる。
【0063】
また、コントローラ100は、プラズマの照射を開始した後のプラズマ照射中に、漏電検出値が下限閾値TH3以下となり、且つ圧力センサ113により検出した処理ガスの圧力値が所定の圧力値(閾値圧力値Pthや基準圧力値Ps)まで低下した場合、プラズマが照射されていない異常を報知する(第1報知の一例、
図8のNO5)。また、コントローラ100は、プラズマ照射中に、漏電検出値が下限閾値TH3以下となり、且つ圧力センサ113により検出した処理ガスの圧力値が所定の圧力値まで低下しない場合、漏電検出装置110に係わる異常を報知する(第1報知の一例、
図8のNO6)。
【0064】
プラズマの照射が一度開始されると、漏電電流の電流値や圧力値は、一定の範囲内の値となる。そして、異常が発生すると、電流値や電圧値は、下限閾値TH3を下回り、さらに最低閾値TH4を下回る。換言すれば、プラズマの照射を開始した後は、下限閾値TH3を用いることで、最低閾値TH4を用いた場合よりもより早く異常を検出することができる。そこで、コントローラ100は、プラズマ照射中に、漏電検出値が下限閾値TH3以下となり、且つ圧力値が低下した場合、プラズマが照射されていない異常を報知する。これにより、プラズマが切れた異常や処理ガスの供給が停止した異常時に、異常を報知できる。また、コントローラ100は、プラズマ照射中に、漏電検出値が下限閾値TH3以下となり、且つ圧力値が低下しない場合、漏電検出装置110に係わる異常を報知する。これにより、漏電検出装置110の故障、アースケーブル16Cの切断などの異常時に、異常を報知できる。
【0065】
また、本実施形態のコントローラ100は、圧力センサ113により検出した処理ガスの圧力値と、漏電検出値(漏電電流の電圧値や電流値)に基づいて、NO5、NO6の報知(第1報知の一例)及びNO3、NO4の報知(第2報知の一例)を実行する。圧力センサ113により検出される圧力値は、処理ガスの供給開始、プラズマの点火などのタイミングで上昇する。このため、コントローラ100は、処理ガスの圧力値と、漏電電流の電圧値や電流値を組み合わせて漏電電流の発生状況を判断することで、発生状況をより詳細に場合分けして報知内容を変更できる。
【0066】
また、本実施形態のプラズマ装置10は、電力ケーブル16をシールドする導電性のシールド部材145と、シールド部材145を地絡させるアースケーブル16Cと、を備える。漏電検出装置110は、アースケーブル16Cに流れる漏電電流を検出する。これによれば、漏電検出装置110は、電力ケーブル16をシールドするシールド部材145からアースへ流れる漏電電流を検出できる。シールド部材145には、様々なノイズによって漏電電流が流れる可能性がある。そこで、コントローラ100は、検出した漏電電流と第1及び第2閾値(最大閾値TH1、上限閾値TH2、下限閾値TH3、最低閾値TH4)を比較することで、漏電電流の発生状況に応じた報知を行うことができる。
【0067】
尚、
図8は、漏電電流に基づく検出電圧値と、処理ガスの圧力値に基づいて異常を報知する処理の一例を示している。コントローラ100は、その他の情報(マスフローコントローラ112の流量や電流センサ111で検出した電流値)に基づいて異常を報知しても良い。また、コントローラ100は、漏電電流に基づく検出電圧値、処理ガスの圧力値に加え、その他の情報を組み合わせて異常を判断し、報知内容を変更しても良い。また、コントローラ100は、漏電電流の電圧値と同様に、漏電電流の電流値についても、各閾値を設定して異常を判断できる。
【0068】
因みに、上記実施形態において、電源部15Aは、電源装置の一例である。ガス供給部15Bは、ガス供給装置の一例である。キャリアガス、反応ガス、ヒートガスは、処理ガスの一例である。コントローラ100は、制御装置の一例である。圧力センサ113は、圧力検出装置の一例である。上限閾値TH2、下限閾値TH3は、第1閾値の一例である。最大閾値TH1、最低閾値TH4は、第2閾値の一例である。
【0069】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施例の一態様では、プラズマ装置10のコントローラ100は、漏電検出装置110により検出した漏電検出値と第1閾値(上限閾値TH2、下限閾値TH3)を比較した結果に基づいて
図8に示すNO2、5、6の報知(第1報知の一例)を実行する。また、コントローラ100は、漏電検出値と第2閾値(最大閾値TH1、最低閾値TH4)を比較した結果に基づいてNO1、3、4の報知(第2報知の一例)を実行する。
【0070】
これによれば、電極33に電力を供給する電力ケーブル16の漏電電流を漏電検出装置110により監視する。コントローラ100は、漏電電流と第1閾値を比較した結果と、漏電電流と第2閾値を比較した結果とで異なる報知を実行する。これにより、正常な電力供給時のノイズにより発生する漏電電流、電力ケーブル16の短絡や切断により発生する漏電電流、漏電検出装置110に係わる故障により検出される漏電電流など、漏電電流の発生状況を第1及び第2閾値を用いて判断し、異なる報知を実行できる。従って、漏電電流の発生状況に応じた報知を行うことができる。
【0071】
また、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、コントローラ100は、最大閾値TH1、上限閾値TH2、下限閾値TH3、最低閾値TH4を用いて漏電異常を判断いたが、これに限らない。例えば、コントローラ100は、最大閾値TH1と上限閾値TH2の組み合わせのみや、下限閾値TH3と最低閾値TH4の組み合わせのみで漏電異常を判断しても良い。
また、コントローラ100は、処理ガスの圧力値を用いずに、第1閾値や第2閾値のみで漏電異常を判断しても良い。
また、上記実施形態では、コントローラ100は、本開示の第1及び第2報知として、操作部15Cに表示する処理を実行したが、これに限らない。例えば、コントローラ100は、LEDなどの表示灯の点灯、スピーカからの警告音の放音等により、第1報知や第2報知を実行しても良い。
また、電源部15A、ガス供給部15Bは、制御ボックス15とは別の装置でも良い。
また、電力ケーブル16は難燃性の材料で覆われることが望ましい。
【符号の説明】
【0072】
10 プラズマ装置、15A 電源部(電源装置)、15B ガス供給部(ガス供給装置)、16 電力ケーブル、16C アースケーブル、33 電極、100 コントローラ(制御装置)、110 漏電検出装置、113 圧力センサ(圧力検出装置)、145 シールド部材、TH1 最大閾値(第2閾値)、TH2 上限閾値(第1閾値)、TH3 下限閾値(第1閾値)、TH4 最低閾値(第2閾値)。