(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/16 20060101AFI20230118BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20230118BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
H05K1/16 B
H05K3/18 G
H05K3/46 Q
(21)【出願番号】P 2021569796
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020046964
(87)【国際公開番号】W WO2021140855
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020003240
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】酒井 将一郎
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】岡 良雄
(72)【発明者】
【氏名】本村 隼一
(72)【発明者】
【氏名】山下 真直
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-113203(JP,A)
【文献】実公昭59-38068(JP,Y2)
【文献】特開2016-9854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/02
C25D 7/00
H01F 17/00
H01F 27/28
H01F 41/04
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールを形成するための孔を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されるコイル状の配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記配線層は、上記孔の内周面及び上記ベースフィルムにおける上記孔の周縁部に配置されるランド部と、このランド部を内側端部又は外側端部として渦巻き状に配置される巻線部とを有しており、
上記巻線部が、最外周である第1巻線部と、上記最外周よりも内側である第2巻線部とを有し、
上記第2巻線部の平均厚みに対する上記ランド部の平均厚みの比率が1.1以上5以下であ
り、
上記ランド部が、導電性下地層と下側ランド層とを有しており、上記導電性下地層と上記下側ランド層とが上記孔の内周面に積層されているフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
上記第2巻線部の平均厚みに対する上記第1巻線部の平均厚みの比率が1.1以上5以下である請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
上記ベースフィルムにおける上記配線層の外側領域に上記配線層と間隔を空けて配置されるダミー配線層をさらに備える請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
上記ベースフィルムにおける上記配線層からその外側に最短距離で2mmまでの間の領域の第1面積に対する上記ダミー配線層の積層領域の第2面積の比率が20%以上50%未満である請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
スルーホールを形成するための孔を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されるコイル状の配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記配線層は、上記孔の内周面及び上記ベースフィルムにおける上記孔の周縁部に配置されるランド部と、このランド部を内側端部又は外側端部として渦巻き状に配置される巻線部とを有しており、
上記巻線部が、最外周である第1巻線部と、上記最外周よりも内側である第2巻線部とを有し、
上記第2巻線部の平均厚みに対する上記ランド部の平均厚みの比率が1.1以上5以下であり、
レジストパターンを用い、スルーホールを形成するための孔を有するベースフィルムであって、少なくとも一方の面側に導電性下地層が積層されたベースフィルムの上記導電性下地層上に第1金属材料を電気めっきすることにより、上記ランド部の下側ランド層及び上記巻線部の下側巻線層を有する第1めっき体を形成する第1めっき工程と、
上記第1めっき工程の後、上記レジストパターン及び上記導電性下地層における上記第1めっき体の非積層領域を除去する除去工程と、
上記除去工程の後、上記第1めっき体に第2金属材料を電気めっきすることにより、上記ランド部の上側ランド層及び上記巻線部の上側巻線層を有する第2めっき体を形成する第2めっき工程とを備え、
上記第1めっき工程では、上記下側ランド層を形成するための第2めっき量が上記下
側巻線層の上記最外周よりも内側を形成するための第1めっき量よりも大きくなるよう上記導電性下地層に上記第1金属材料を電気めっきし、
上記導電性下地層の一部、上記下側ランド層及び上記上側ランド層によって上記ランド部が形成され、
上記導電性下地層の別の一部、上記下側巻線層及び上記上側巻線層によって上記巻線部が形成され
、
上記導電性下地層と上記下側ランド層とが上記孔の内周面に積層されているフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
上記フレキシブルプリント配線板が、上記ベースフィルムにおける上記配線層の外側領域に上記配線層と間隔を空けて配置されるダミー配線層をさらに備え、
上記第1めっき工程にて、上記導電性下地層上に、上記第1めっき体に加えてダミーめっき体を形成し、
上記導電性下地層における上記ランド部及び上記巻線部の非積層領域の一部、及び上記ダミーめっき体によって電気的に孤立した上記ダミー配線層が形成される請求項5に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブルプリント配線板及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2020年1月10日出願の日本出願第2020-003240号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
フレキシブルプリント配線板は、様々な電子機器の回路を構成するために広く利用されている。近年、電子機器の小型化に伴い、フレキシブルプリント配線板の小型化及びその配線密度の増大が著しい。
【0004】
このような小型のフレキシブルプリント配線板として、シート状の絶縁性基材と、この基材の表面にめっきによって積層されるコイル状の配線層とを有するものが提案されている(特開2018-195681号公報参照)。このフレキシブルプリント配線板では、めっき膜厚、すなわち配線層の厚みの均一化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、スルーホールを形成するための孔を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されるコイル状の配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記配線層は、上記孔の内周面及び上記ベースフィルムにおける上記孔の周縁部に配置されるランド部と、このランド部を内側端部又は外側端部として渦巻き状に配置される巻線部とを有しており、上記巻線部が、最外周である第1巻線部と、上記最外周よりも内側である第2巻線部とを有し、上記第2巻線部の平均厚みに対する上記ランド部の平均厚みの比率が1.1以上5以下である。
【0007】
本開示の別の態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、スルーホールを形成するための孔を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されるコイル状の配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記配線層は、上記孔の内周面及び上記ベースフィルムにおける上記孔の周縁部に配置されるランド部と、このランド部を内側端部又は外側端部として渦巻き状に配置される巻線部とを有しており、上記巻線部が、最外周である第1巻線部と、上記最外周よりも内側である第2巻線部とを有し、上記第2巻線部の平均厚みに対する上記ランド部の平均厚みの比率が1.1以上5以下であり、レジストパターンを用い、スルーホールを形成するための孔を有するベースフィルムであって、少なくとも一方の面側に導電性下地層が積層されたベースフィルムの上記導電性下地層上に第1金属材料を電気めっきすることにより、上記ランド部の下側ランド層及び上記巻線部の下側巻線層を有する第1めっき体を形成する第1めっき工程と、上記第1めっき工程の後、上記レジストパターン及び上記導電性下地層における上記第1めっき体の非積層領域を除去する除去工程と、上記除去工程の後、上記第1めっき体に第2金属材料を電気めっきすることにより、上記ランド部の上側ランド層及び上記巻線部の上側巻線層を有する第2めっき体を形成する第2めっき工程とを備え、上記第1めっき工程では、上記下側ランド層を形成するための第2めっき量が上記下側巻線層の上記最外周よりも内側を形成するための第1めっき量よりも大きくなるよう上記導電性下地層に上記第1金属材料を電気めっきし、上記導電性下地層の一部、上記下側ランド層及び上記上側ランド層によって上記ランド部が形成され、上記導電性下地層の別の一部、上記下側巻線層及び上記上側巻線層によって上記巻線部が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第一実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的上面図である。
【
図2】
図2は、
図1のフレキシブルプリント配線板を示す模式的断面図である。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2のフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための模式的断面図であって、
図1のAA矢視方向と同方向に視た模式的断面図である。
【
図4】
図4は、
図1及び
図2のフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための模式的断面図であって、
図1のAA矢視方向と同方向に視た模式的断面図である。
【
図5】
図5は、
図1及び
図2のフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための模式的断面図であって、
図1のAA矢視方向と同方向に視た模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【本開示が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、フレキシブルプリント配線板では、導通不良が生じたり、電気抵抗が大き過ぎたりすると、接続不良が生じるおそれがある。このため、フレキシブルプリント配線板には、接続信頼性に優れることが要望される。
【0010】
そこで、接続信頼性に優れるフレキシブルプリント配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【本開示の効果】
【0011】
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、接続信頼性に優れる。本開示の別の態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、接続信頼性に優れるフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
[本開示の実施形態の説明]
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、スルーホールを形成するための孔を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されるコイル状の配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記配線層は、上記孔の内周面及び上記ベースフィルムにおける上記孔の周縁部に配置されるランド部と、このランド部を内側端部又は外側端部として渦巻き状に配置される巻線部とを有しており、上記巻線部が、最外周である第1巻線部と、上記最外周よりも内側である第2巻線部とを有し、上記第2巻線部の平均厚みに対する上記ランド部の平均厚みの比率が1.1以上5以下である。
【0012】
ここで、コイル状の巻線部を有する配線層を備えるフレキシブルプリント配線板では、配線層におけるランド部の平均厚みが小さい場合、これに伴って上記孔の内周面に積層される金属量が小さくなり、スルーホールにて導通不良が生じ易くなるおそれがある。
【0013】
これに対し、当該フレキシブルプリント配線板では、上記比率が上記範囲内であることで、上記ランド部の平均厚みが十分に大きく、これ伴って上記孔の内周面に積層される金属量を大きくすることができる。よって、スルーホールでの導通不良を低減することができる。従って、当該フレキシブルプリント配線板は、接続信頼性に優れる。
【0014】
上記第2巻線部の平均厚みに対する上記第1巻線部の平均厚みの比率が1.1以上5以下であるとよい。
【0015】
上記比率が上記範囲内であることで、上記最外周の第1巻線部の平均厚みが十分に大きくなり、この第1巻線部の電気抵抗を低減することができる。よって、配線層の電気抵抗を小さくすることができる。
【0016】
当該フレキシブルプリント配線板は、上記ベースフィルムにおける上記配線層の外側領域に上記配線層と間隔を空けて配置される1本又は複数本のダミー配線層をさらに備えるとよい。
【0017】
このように当該フレキシブルプリント配線板がダミー配線層を備えることで、上記最外周の第1巻線部の平均厚みが大きい配線層を形成し易くなる。よって、当該フレキシブルプリント配線板がより接続信頼性に優れるものとなる。
【0018】
上記ベースフィルムにおける上記配線層からその外側に最短距離で2mmまでの間の領域の第1面積に対する上記ダミー配線層の積層領域の第2面積の比率が20%以上50%未満であるとよい。
【0019】
このように、上記第1面積に対する第2面積の比率が上記範囲内であることで、上記最外周の第1巻線部の平均厚みが大きい配線層をより形成し易くなる。よって、当該フレキシブルプリント配線板がより接続信頼性に優れるものとなる。
【0020】
また、本開示の異なる態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、スルーホールを形成するための孔を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されるコイル状の配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記配線層は、上記孔の内周面及び上記ベースフィルムにおける上記孔の周縁部に配置されるランド部と、このランド部を内側端部又は外側端部として渦巻き状に配置される巻線部とを有しており、上記巻線部が、最外周である第1巻線部と、上記最外周よりも内側である第2巻線部とを有し、上記第2巻線部の平均厚みに対する上記ランド部の平均厚みの比率が1.1以上5以下であり、レジストパターンを用い、スルーホールを形成するための孔を有するベースフィルムであって、少なくとも一方の面側に導電性下地層が積層されたベースフィルムの上記導電性下地層上に第1金属材料を電気めっきすることにより、上記ランド部の下側ランド層及び上記巻線部の下側巻線層を有する第1めっき体を形成する第1めっき工程と、上記第1めっき工程の後、上記レジストパターン及び上記導電性下地層における上記第1めっき体の非積層領域を除去する除去工程と、上記除去工程の後、上記第1めっき体に第2金属材料を電気めっきすることにより、上記ランド部の上側ランド層及び上記巻線部の上側巻線層を有する第2めっき体を形成する第2めっき工程とを備え、上記第1めっき工程では、上記下側ランド層を形成するための第2めっき量が上記下側巻線層の上記最外周よりも内側を形成するための第1めっき量よりも大きくなるよう上記導電性下地層に上記第1金属材料を電気めっきし、上記導電性下地層の一部、上記下側ランド層及び上記上側ランド層によって上記ランド部が形成され、上記導電性下地層の別の一部、上記下側巻線層及び上記上側巻線層によって上記巻線部が形成される。
【0021】
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法によれば、上述した当該フレキシブルプリント配線板を製造することができる。すなわち、接続信頼性に優れるフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【0022】
上記フレキシブルプリント配線板が、上記ベースフィルムにおける上記配線層の外側領域に上記配線層と間隔を空けて配置されるダミー配線層をさらに備え、上記第1めっき工程にて、上記導電性下地層上に、上記第1めっき体に加えてダミーめっき体を形成し、上記導電性下地層における上記ランド部及び上記巻線部の非積層領域の一部、及び上記ダミーめっき体によって電気的に孤立した上記ダミー配線層が形成されるとよい。
【0023】
このように第1めっき工程にてダミーめっき体を形成することで、上記最外周の第1巻線部の平均厚みが大きい配線層を形成し易くなる。よって、当該フレキシブルプリント配線板の製造方法によれば、より接続信頼性に優れるフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【0024】
ここで、「巻線部の最外周」とは、内側のみが巻線部の他の部分と対向するような部分を意味する。「平均厚み」とは、ランド、第1巻線部及び第2巻線部ごとにそれぞれ任意の十点において測定した厚みの各平均値を意味する。「厚み」とは、このベースフィルムに垂直な方向におけるベースフィルムと配線層の上端縁との間の距離を意味する。また、以下において、「線幅」とは、巻線部における長手方向(巻き方向)と垂直な方向の寸法を意味する。「間隔」とは、巻線部における対向する隣接面間の距離を意味し、「平均間隔」とは、上記隣接面間の距離を上記長手方向に平均した値を意味する。「平均線幅」とは、上記長手方向と垂直な断面における巻線部の最大幅を上記長手方向に平均した値を意味する。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係るフレキシブルプリント配線板及びその製造方法の実施形態について図面を参照しつつ詳説する。なお、本実施形態において「表面側」とは、ベースフィルムの厚さ方向のうち、配線層が積層される側を指すものであり、本実施形態の表裏がフレキシブルプリント配線板の使用状態における表裏を決定するものではない。
[第一実施形態]
〔フレキシブルプリント配線板〕
図1及び
図2に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線板10は、絶縁性を有するベースフィルム3と、上記ベースフィルム3の一方の面側(表面側)に積層される配線層11とを主に備える。当該フレキシブルプリント配線板10は、上記ベースフィルム3における上記配線層11の外側領域に上記配線層11と間隔を空けて配置されるダミー配線層41をさらに備える。当該フレキシブルプリント配線板10は、ベースフィルム3又は配線層11の表面側にカバーフィルムをさらに備えてもよい。
<ベースフィルム>
ベースフィルム3は、絶縁性を有する合成樹脂製の層である。ベースフィルム3は、可撓性も有する。このベースフィルム3は、配線層11を形成するための基材でもある。ベースフィルム3は、スルーホール20を形成するための孔3aを有する。ベースフィルム3の形成材料としては、絶縁性及び可撓性を有するものであれば特に限定されないが、シート状に形成された低誘電率の合成樹脂フィルムを採用し得る。この合成樹脂フィルムの主成分としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が挙げられる。「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば形成材料中50質量%以上を占める成分を意味する。ベースフィルム3は、ポリイミド等の例示した樹脂以外の他の樹脂、帯電防止剤等を含有してもよい。
【0025】
ベースフィルム3の平均厚さの下限としては、特に限定されないが、3μmが好ましく、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。ベースフィルム3の平均厚さの上限としては、特に限定されないが、200μmが好ましく、150μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。ベースフィルム3の平均厚さが上記下限未満である場合、ベースフィルム3の絶縁強度及び機械的強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム3の平均厚さが上記上限を超える場合、当該フレキシブルプリント配線板10が不要に厚くなるおそれがある。ここで、上述と同様、「平均厚み」とは、任意の十点において測定した厚みの平均値を意味する。
【0026】
スルーホール20は、適宜の場所に適宜の大きさに形成され得る。
<配線層>
配線層11は、ベースフィルム3の表面側に直接又は他の層を介して積層される。配線層11はコイル状である。配線層11は、上記スルーホール20を形成するための孔3aの内周面及び上記ベースフィルム3における上記孔3aの周縁部に配置されるランド部13と、このランド部13を内側端部として渦巻き状に配置される巻線部15とを有している。上記巻線部15は、最外周である第1巻線部15aと、上記最外周よりも内側である第2巻線部15bとを有する。上記第2巻線部15bの平均厚みH1に対する上記ランド部の平均厚みH2の比率が1.1以上5以下である。上記第2巻線部15bの平均厚みH1に対する上記第1巻線部15aの平均厚みH3の比率は特に限定されず、例えば本実施形態では、この比率が1.1以上5以下である。なお、配線層11は、ランド部13を外側端部としてもよい。また、配線層11は、2のランド部をそれぞれ内側端部及び外側端部としてもよい。
【0027】
ランド部13は、ベースフィルム3の表面側に積層される第1導電性下地層23と、第1導電性下地層23のベースフィルム3と反対の側(表面側)に積層される下側ランド層25とによって形成される。第1導電性下地層23は、孔3aの内周面にも積層される。巻線部15は、ベースフィルム3の表面側に積層される第2導電性下地層33と、第2導電性下地層33のベースフィルム3と反対の側(表面側)に積層される下側巻線層35と、下側巻線層35の第2導電性下地層33と反対の側(表面側)に積層される上側巻線層37とによって形成される。上側巻線層37は、この上側巻線層37におけるランド部13の一部を構成する領域の平均厚み及び第1巻線部15aの一部を構成する領域の平均厚みが、この上側巻線層37における第2巻線部15bの一部を構成する領域の平均厚みよりも大きいように形成される。配線層11としては、例えば磁界発生用の電流を送るためのコイル線等が挙げられる。
【0028】
第1導電性下地層23及び第2導電性下地層33の形成材料としては、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、これらの合金、ステンレス鋼等が挙げられる。これら形成材料については、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制する点で、第1導電性下地層23及び第2導電性下地層33が、ベースフィルム3(例えばポリイミド)と接する側に、上記ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含むことが好ましい。さらに、第1導電性下地層23及び第2導電性下地層33が、除去が容易で絶縁性を保つことが容易なニッケル及びクロムから選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含むことがより好ましい。また、第1導電性下地層23及び第2導電性下地層33が、この第1層の上側(ベースフィルム3とは反対の側)に、銅を主成分とする層(第2層)を含むことがより好ましい。この銅を主成分とする層が配置されることにより、電気めっきにより配線層11を形成する際に作業の短時間化が可能となる。
【0029】
例えば、上記第1層の平均厚みの下限としては、1nmが好ましく、2nmがより好ましい。上記第1層の平均厚みの上限としては、15nmが好ましく、8nmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限に満たない場合、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制することが困難になるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超える場合、上記第1層が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第1層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成され得る。
【0030】
例えば、上記第2層の平均厚みの下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。上記第2層の平均厚みの上限としては、2μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限に満たない場合、電気めっきによって配線層11を形成する時間が過度に長くなるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超える場合、上記第2層が容易に除去され難くなり、巻線部15間の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第2層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成されることが好ましく、これらを組み合わせて形成されてもよい。特に、第1導電性下地層23及び第2導電性下地層33の最上面側に無電解銅めっき層が配置されることが好ましく、これにより、それよりも内層がスパッタ法で形成された場合に、このスパッタ法によって生じ得る欠陥等をカバーすることができる。
【0031】
下側ランド層25及び下側巻線層35を形成するための第1金属材料としては、例えば銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、これらの合金等が挙げられる。これらの中で、導電性を良好なものとする観点及びコストを低減する観点から銅又は銅合金が好ましい。例えば下側ランド層25及び下側巻線層35は、ベースフィルム3に垂直な方向に視て、第1導電性下地層23及び第2導電性下地層33と同じ形状に形成される。
【0032】
上側ランド層27及び上側巻線層37を形成するための第2金属材料としては、例えば上記第1金属材料と同様のものが挙げられる。第2金属材料としては、第1金属材料と同種のものが好ましい。例えば上側ランド層27及び上側巻線層37は、ベースフィルム3に垂直な方向に視て、下側ランド層25及び下側巻線層35の線幅よりも大きい線幅を有するように形成される。
(ランド部)
ランド部13の平均厚みH2は、上述した第2巻線部15bの平均厚みH1に対するランド部13の平均厚みH2の比率が1.1以上10以下となるように適宜設定され得る。例えばランド部13の平均厚みH2の下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。ランド部13の平均厚みH2の上限としては、100μmが好ましく、75μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。上記平均厚みH2が上記下限に満たない場合、孔3aの内周面に対して十分な量(被覆量)で上記第1金属材料及び上記第2金属材料を付着させることが困難になるおそれがある。一方、上記平均厚みH2が上記上限を超える場合、孔3aの内周面に対する上記第1金属材料及び上記第2金属材料の付着量が過度に大きくなるおそれがある。平均厚みH2は、当該フレキシブルプリント配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、ランド部13において、任意の十点の断面観察による厚みを測定し、測定結果の平均値を算出することによって得られる。
【0033】
ランド部13の最大線幅、この最大線幅に対する平均厚みH2の比率(アスペクト比)等は、適宜設定し得る。
(巻線部)
巻線部15の平均線幅Lの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましく、15μmがさらに好ましい。巻線部15の平均線幅Lの上限としては、100μmが好ましく、75μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。巻線部15の平均線幅Lが上記下限に満たない場合、巻線部15の電気抵抗が大きくなり過ぎるおそれや、機械的強度が不足するおそれがある。一方、巻線部15の平均線幅Lが上記上限を超える場合、省スペース化を図ることができないおそれがある。「平均線幅」は当該フレキシブルプリント配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、巻線部15における最も幅の大きい部分の長さを測定可能な顕微鏡等によって測定し、それらの平均値として算出される値である。
【0034】
巻線部15の平均間隔Sの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましく、15μmがさらに好ましい。巻線部15の平均間隔Sの上限としては、50μmが好ましく、25μmがさらに好ましい。巻線部15の平均間隔Sが上記下限に満たない場合、短絡が発生するおそれがある。一方、巻線部15の平均間隔Sが上記上限を超える場合、省スペース化を図ることができないおそれがある。「平均間隔」は、当該フレキシブルプリント配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、巻線部15間の隙間における最も間隔の小さい部分の長さを測定可能な顕微鏡等によって測定し、それらの平均値として算出される値である。
【0035】
下側巻線層35及び上側巻線層37は第2導電性下地層33よりも遥かに厚い。このため、巻線部15の厚みは、主に下側巻線層35及び上側巻線層37の厚みによって決定され得る。
・第2巻線部
巻線部15における内側の第2巻線部15bの平均厚みH1は、この第2巻線部15bの平均厚みH1に対するランド部13の平均厚みH2及び最外周の第1巻線部15aの平均厚みH3の比率が1.1以上5以下となるように適宜設定され得る。例えば第2巻線部15bの平均厚みH1の下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。第2巻線部15bの平均厚みH1の上限としては、100μmが好ましく、80μmがより好ましく、60μmがさらに好ましい。上記平均厚みH1が上記下限に満たない場合、第2巻線部15bの電気抵抗が大きくなるおそれがある。一方、上記平均厚みH1が上記上限を超える場合、第2巻線部15bを形成するために線幅を大きくする必要が生じ、省スペース化を図ることができないおそれがある。「平均厚み」は、当該フレキシブルプリント配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、第2巻線部15において、任意の十点の断面観察による厚みを測定し、測定結果の平均値を算出することによって得られる。なお、以下において他の部材等の「平均厚み」も、これと同様に測定される値である。
【0036】
第2巻線部15bの最小線幅(不図示)に対する平均厚みH1の比率(アスペクト比)の下限としては、0.3が好ましく、0.5が好ましく、0.7がより好ましい。上記比率の上限としては、5が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。上記比率が上記下限に満たない場合、省スペース化を図ることができないおそれがある。一方、上記比率が上記上限を超える場合にも、省スペース化を図ることができないおそれがある。「最小線幅」は、第2巻線部15bにおける線幅の最小値を意味する。この「最小線幅」は、当該フレキシブルプリント配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、第2巻線部15bにおける最も幅の小さい部分の長さを測定可能な顕微鏡等によって測定される値である。ただし、この「最小線幅」は、第2巻線部15bの欠陥領域を除いた領域における最も幅の小さい部分の長さである。ここで、測定から除くべき欠陥領域は、上記のように顕微鏡観察を行ったとき、幅方向の少なくとも一方の端縁から内側に凹んだ(欠損した)ような領域である。この欠陥領域は、具体的には、幅方向の最深部が第2巻線部15bの長手方向(巻き方向)における(上記欠陥領域以外の)他の領域の平均線幅に対して1/4以上の長さ(幅を)を有するような領域である。上記平均線幅は、上述した「平均線幅」の測定方法と同様に測定される。なお、以下において他の部材等の「最小線幅」も、これと同様に測定される値である。
・第1巻線部
最外周の第1巻線部15aの平均厚みH3は、上述した第2巻線部15bの平均厚みH1に対する第1巻線部15aの平均厚みH3の比率が1.1以上5以下となるように適宜設定され得る。例えば第1巻線部15aの平均厚みH3の下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。第1巻線部15aの平均厚みH3の上限としては、120μmが好ましく、100μmがより好ましく、80μmがさらに好ましい。上記平均厚みH3が上記下限に満たない場合、第1巻線部15aの電気抵抗が高くなるおそれがある。一方、上記平均厚みH3が上記上限を超える場合、第1巻線部15aを形成するために線幅を大きくする必要が生じ、省スペース化を図ることができないおそれがある。
【0037】
第1巻線部15aの最小線幅(不図示)に対する平均厚みH3の比率(アスペクト比)の下限としては、0.5が好ましく、0.7が好ましく、1がより好ましい。上記比率の上限としては、7が好ましく、5がより好ましく、3がさらに好ましい。上記比率が上記下限に満たない場合、省スペース化を図ることができないおそれがある。一方、上記比率が上記上限を超える場合にも、省スペース化を図ることができないおそれがある。
(第2巻線部の平均厚みに対するランド部の平均厚みの比率)
第2巻線部15bの平均厚みH1に対するランド部13の平均厚みH2の比率の下限としては、上述したように1.1であり、さらに1.3が好ましく、1.5がより好ましく、2がさらに好ましい。上記比率の上限としては、上述したように5であり、さらに4が好ましく、3がより好ましい。上記比率が上記下限に満たない場合、孔3aの内周面に対して十分な量(被覆量)で第1金属材料及び第2金属材料を付着させることが困難になるおそれがある。一方、上記比率が上記上限を超える場合、孔3aの内周面に対する第1金属材料及び第2金属材料の付着量が過度に大きくなり、当該フレキシブルプリント配線板10が不要に厚くなる。
(第2巻線部の平均厚みに対する第1巻線部の平均厚みの比率)
第2巻線部15bの平均厚みH1に対する上記第1巻線部15aの平均厚みH3の比率の下限としては、上述したように1.1であり、さらに1.3が好ましく、1.5がより好ましく、2がさらに好ましい。上記比率の上限としては、上述したように5であり、さらに4が好ましく、3がより好ましい。上記比率が上記下限に満たない場合、配線層11の電気抵抗を十分に小さくすることができないおそれがある。一方、上記比率が上記上限を超える場合、十分な当該フレキシブルプリント配線板10の可撓性が低下するおそれがある。
<ダミー配線層>
ダミー配線層41は、導通されないように電気的に孤立して形成される配線層である。ダミー配線層41は、第3導電性下地層43と、この第3導電性下地層43上に積層されるダミーめっき層45とを有する。
【0038】
このように当該フレキシブルプリント配線板10がダミー配線層41を備えることで、このダミー配線層41の近傍に位置する上記巻線部15における最外周の第1巻線部15aの平均厚みH3を大きくすることが容易になる。具体的には、上記上側巻線層37を形成する際、ダミー配線層41の近傍に位置する最外周のめっき量をその内側よりも大きくすることができる。よって、より接続信頼性に優れる当該フレキシブルプリント配線板10を形成し易くなる。
【0039】
第3導電性下地層43は、後述する導電性下地層M(例えば
図3参照)の一部によって形成される。第3導電性下地層43としては、第1導電性下地層23及び第2導電性下地層33と同様のものが挙げられる。第3導電性下地層43の平均厚みは、第1導電性下地層23及び第2導電性下地層33と同様に設定され得る。
【0040】
ダミーめっき層45の形成材料としては、上述した第1金属材料と同様のものが挙げられる。
【0041】
ダミーめっき層45の厚みは第3導電性下地層43の厚みよりも遥かに大きいため、ダミー配線層41の厚みは、ダミーめっき層45の厚みによって決定され得る。例えばダミー配線層41の平均厚みは、上述した下側ランド層25及び下側巻線層35の平均厚みと同程度に設定され得る。
【0042】
ベースフィルム3におけるダミー配線層41の積層面積は、適宜設定され得る。例えば、ベースフィルム3における配線層11からその外側に最短距離で2mmまでの間の領域の第1面積に対するダミー配線層41の積層領域の第2面積の比率の下限としては、20%が好ましく、25%がより好ましい。上記比率の上限としては、50%未満が好ましく、40%がより好ましい。上記比率が上記下限に満たない場合、配線層11の電気抵抗を十分に小さくすることができないおそれがある。一方、上記比率が上記上限を超える場合にも、配線層11の電気抵抗を十分に小さくすることができないおそれがある。加えて、導通不良を十分に低減することができないおそれがある。
【0043】
ダミー配線層41の形状は、特に限定されず、適宜設定され得る。例えば、ベースフィルム3に垂直な方向に視て、ダミー配線層41を線形状、他の形状等に設定し得る。この形状は、例えば上記面積の比率を満たすような形状に適宜設定し得る。例えば
図1に示す態様では、ダミー配線層41は複数の線状体を有する。
<利点>
当該フレキシブルプリント配線板10は、巻線部15の第2巻線部15bの平均厚みH1に対するランド部13の平均厚みH2の比率が1.1以上5以下である。上記比率が上記範囲内であることで、上記ランド部13の平均厚みH2が十分に大きく、これ伴って孔3aの内周面に積層される金属量を大きくすることができる。よって、スルーホール20での導通不良を低減することができる。従って、当該フレキシブルプリント配線板10は、接続信頼性に優れる。
【0044】
本実施形態では、巻線部15の第2巻線部15bの平均厚みH1に対する第1巻線部15aの平均厚みH3の比率が1.1以上5以下である。上記比率が上記範囲内であることで、上記最外周の第1巻線部15aの平均厚みH3が十分に大きくなり、この第1巻線部15aの電気抵抗を低減することができる。よって、配線層11の電気抵抗を小さくすることができる。
[プリント配線板の製造方法]
次に、本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法について、当該フレキシブルプリント配線板10を用いて説明する。
【0045】
当該フレキシブルプリント配線板10の製造方法は、レジストパターンRを用い、スルーホール20を形成するための孔3aを有するベースフィルム3であって、一方の面側(表面側)に導電性下地層Mが積層されたベースフィルム3の上記導電性下地層M上に第1金属材料を電気めっきすることにより、上記ランド部13の下側ランド層25及び上記巻線部15の下側巻線層35を有する第1めっき体X1を形成する第1めっき工程と、上記第1めっき工程の後、上記レジストパターンR及び上記導電性下地層Mにおける上記第1めっき体X1の非積層領域を除去する除去工程と、上記除去工程の後、上記第1めっき体X1に第2金属材料を電気めっきすることにより、上記ランド部13の上側ランド層27及び上記巻線部15の上側巻線層37を有する第2めっき体X3(不図示)を形成する第2めっき工程とを備える。上記導電性下地層Mの一部、上記下側ランド層25及び上側ランド層27によって上記ランド部13が形成され、上記導電性下地層Mの別の一部、上記下側巻線層35及び上側巻線層37によって上記巻線部15が形成される。
【0046】
本実施形態では、上記第1めっき工程にて、上記下側ランド層25を形成するための第2めっき量が上記下側巻線層の上記最外周よりも内側を形成するための第1めっき量よりも大きくなるよう上記導電性下地層Mに上記第1金属材料を電気めっきする。
【0047】
加えて、本実施形態では、上記第1めっき工程にて、上記導電性下地層M上に、上記第1めっき体X1に加えて、上記ダミーめっき層45に相当するダミーめっき体X2を形成する。上記導電性下地層Mにおける第1めっき体X1の非積層領域の一部、及びダミーめっき体X2によって電気的に孤立した上記ダミー配線層41が形成される。このように第1めっき工程にてダミーめっき体X2を形成することで、上記最外周の第1巻線部15aの平均厚みH3が大きい配線層11を形成し易くなる。よって、より接続信頼性に優れるフレキシブルプリント配線板10を製造することができる。
<導電性下地層>
導電性下地層Mは、ベースフィルム3の表面側に積層される。この導電性下地層Mは、予めベースフィルム3の表面側の全面に積層されたものを用いる。導電性下地層Mの一部が、第1導電性下地層23となり、導電性下地層Mの他の一部が、第2導電性下地層33となる。また、導電性下地層Mのさらに他の一部が、第3導電性下地層43となる。
【0048】
導電性下地層Mの形成材料としては、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、これらの合金、ステンレス鋼等が挙げられる。これら形成材料については、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制する点で、導電性下地層Mが、ベースフィルム3(例えばポリイミド)と接する側に、上記ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含むことが好ましい。さらに、導電性下地層Mが、除去が容易で絶縁性を保つことが容易なニッケル及びクロムから選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含むことがより好ましい。また、導電性下地層Mが、この第1層の上側(ベースフィルム3とは反対の側)に、銅を主成分とする層(第2層)を含むことがより好ましい。この銅を主成分とする層が配置されることにより、電気めっきにより配線層11を形成する際に作業の短時間化が可能となる。
【0049】
例えば、上記第1層の平均厚みの下限としては、1nmが好ましく、2nmがより好ましい。上記第1層の平均厚みの上限としては、15nmが好ましく、8nmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限に満たない場合、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制することが困難になるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超える場合、上記第1層が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第1層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成され得る。
【0050】
例えば、上記第2層の平均厚みの下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。上記第2層の平均厚みの上限としては、2μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限に満たない場合、電気めっきによって配線層11を形成する時間が過度に長くなるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超える場合、上記第2層が容易に除去され難くなり、巻線部15間の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第2層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成されることが好ましく、これらを組み合わせて形成されてもよい。特に、導電性下地層Mの最上面側に無電解銅めっき層が配置されることが好ましく、これにより、それよりも内層がスパッタ法で形成された場合に、このスパッタ法によって生じ得る欠陥等をカバーすることができる。
<第1めっき工程>
本工程は、導電性下地層Mの表面にレジストパターンRを形成するレジストパターン形成工程と、形成されたレジストパターンRを用い、導電性下地層M上に第1金属材料を電気めっきすることにより、ランド部13の下側ランド層25及び巻線部15の下側巻線層35を有する第1めっき体X1と、ダミー配線層41のダミーめっき層45としてのダミーめっき体X2を形成する第1めっき体形成工程とを有する。
(レジストパターン形成工程)
本工程では、
図3に示すようにレジストパターンRを導電性下地層Mの表面に形成する。具体的には導電性下地層Mの表面に感光性フィルム等のレジスト膜を積層し、積層されたレジスト膜を露光及び現像することにより、所定のパターンを有するレジストパターンRを形成する。上記レジスト膜の積層方法としては、例えばレジスト組成物を導電性下地層Mの表面に塗工する方法、ドライフィルムフォトレジストを導電性下地層Mの表面に積層する方法等が挙げられる。レジスト膜の露光及び現像条件は、用いるレジスト組成物等に応じて適宜調節可能である。レジストパターンRの開口部は、形成すべき第1めっき体X1及びダミーめっき体X2、すなわち配線層11の下側ランド層25及び下側巻線層35、並びにダミー配線層41のダミーめっき層45に応じて適宜設定され得る。
(第1めっき体形成工程)
本工程では、導電性下地層Mに通電しつつ上記第1金属材料を電気めっきすることにより、
図4に示すように導電性下地層MにおけるレジストパターンRの非積層領域に第1めっき体X1及びダミーめっき体X2を形成する。第1めっき体X1を形成する際、孔3aの内周面が第1金属材料で被覆される。本工程では、下側ランド層25を形成するための第2めっき量が下側巻線層35の上記最外周よりも内側に対する第1めっき量よりも大きくなるよう、めっき条件を設定する。加えて、本工程では、下側巻線層35の最外周を形成するための第3めっき量が上記第1めっき量よりも大きくなるよう、めっき条件を設定する。
【0051】
例えば、本工程の電気めっきにおいて、電気めっき槽内のめっき液の噴流流量、エアバブリング量等を調整することにより、上記めっき条件を調整し得る。例えば上記噴流流量の下限としては、15L/minが好ましく、20L/minがより好ましい。上記噴流流量の上限としては、50L/min未満が好ましく、40L/minがより好ましい。上記噴流流量が上記下限に満たない場合、配線層11の電気抵抗を十分に小さくすることができないおそれがある。一方、上記噴流流量が上記上限を超える場合にも、配線層11の電気抵抗を十分に小さくすることができないおそれがある。加えて、スルーホール20の導通不良が生じるおそれがある。
【0052】
例えばエアバブリングにおけるエア流量の下限としては、15L/minが好ましく、20L/minがより好ましい。上記エア流量の上限としては、50L/minが好ましく、40L/minがより好ましい。上記エア流量が上記下限に満たない場合、配線層11の電気抵抗を十分に小さくすることができないおそれがある。一方、上記エア流量が上記上限を超える場合にも、配線層11の電気抵抗を十分に小さくすることができないおそれがある。加えて、スルーホール20の導通不良が生じるおそれがある。
【0053】
この第1めっき工程により、
図4に示すように、ベースフィルム3の導電性下地層M上に、内側端部(下側ランド層25に相当する)の平均厚みが最外周よりも内側(下側巻線層35の最外周よりも内側に相当する)の平均厚みよりも大きく、かつ上記最外周(下側巻線層35の最外周に相当する)の平均厚みが上記内側の平均厚みよりも大きい第1めっき体X1が形成される。加えて、ベースフィルム3の導電性下地層M上に、ダミーめっき体X2(ダミーめっき層45に相当する)が形成される。
<除去工程>
本工程は、導電性下地層MからレジストパターンRを剥離する剥離工程と、導電性下地層Mにおける第1めっき体X1及びダミーめっき体X2の非積層領域(不要領域)をエッチングするエッチング工程とを有する。
(剥離工程)
本工程では、導電性下地層MからレジストパターンRを剥離する。この剥離液としては、公知のものを用いることができ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性水溶液、アルキルベンゼンスルホン酸等の有機酸系溶液、エタノールアミン等の有機アミン類と極性溶剤との混合液等が挙げられる。
(エッチング工程)
本工程では、第1めっき体X1及びダミーめっき体X2をマスクとして導電性下地層Mをエッチングする。このエッチングにより、
図5に示すようにベースフィルム3に第1導電性下地層23及び第2導電性下地層33を介して第1めっき体X1が積層された第1積層体が得られる。また、ベースフィルム3に第3導電性下地層43を介してダミーめっき体X2が積層された第2積層体が得られる。上記エッチングには導電性下地層Mを形成する金属を浸食するエッチング液が使用される。当該製造方法においては、このように、いわゆるセミアディティブ法が好適に用いられる。
<第2めっき工程>
本工程では、上述した除去工程の後、第1めっき体X1に導通しつつ上記第2金属材料を電気めっきすることにより、ランド部13の上側ランド層27及び巻線部15の上側巻線層37を有する第3めっき体X3(不図示)を形成する。本工程では、例えば所定の一定のめっき条件で、第1めっき体X1に上記第2金属材料を電気めっきする。これにより、第1めっき体X1に対するめっき量を、全体的に一定量(厚み)とすることができる。 この第2めっき工程により、
図5を参照して
図2に示すように、ベースフィルム3に第1導電性下地層23及び第2導電性下地層33と、下側ランド層25及び下側巻線層35を有する第1めっき体X1と、上側ランド層27及び上側巻線層37を有する第2めっき体X3(不図示)とが積層されて形成される第1積層体(配線層11に相当する)が得られる。また、ベースフィルム3に第3導電性下地層43及びダミーめっき体X2(ダミーめっき層45に相当する)が積層されて形成される第2積層体(ダミー配線層41に相当する)が得られる。
<利点>
当該フレキシブルプリント配線板10の製造方法によれば、上述した当該フレキシブルプリント配線板10を製造することができる。すなわち、接続信頼性に優れるフレキシブルプリント配線板10を製造することができる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0054】
上記実施形態では、単一のベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面に積層された配線層を有するフレキシブルプリント配線板について説明したが、当該フレキシブルプリント配線板は、単一のベースフィルムの両面に配線層が積層されたものであってもよい。また、当該フレキシブルプリント配線板は、複数のベースフィルムを有し、各ベースフィルムが一方の面又は両面に複数の配線層を有する多層プリント配線板であってもよい。この場合、ランド部を介して両面の配線層が導通され得る。
【0055】
上記実施形態では、ベースフィルムに1の配線層が積層される場合について説明したが、ベースフィルムに複数の配線層が互いに間隔を空けて積層されてもよい。
【0056】
上記実施形態では、ダミー配線層を配設する場合について説明したが、ダミー配線層が配設されない態様も採用し得る。
【実施例】
【0057】
以下、実施例によって本開示をさらに具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
<試料の作製>
スルーホールを形成するための孔を有するベースフィルムの一面側(表面側)に導電性下地層が積層されたフィルム(ユーピレックス-S、宇部興産社製)を用いた。このフィルムの導電性下地層上に、上述した
図1及び
図2に示すような所定形状のコイル状の1の配線層と、線状の線条体を有するダミー配線層とを形成した。具体的には、上述したレジストパターンを用い、導電性下地層に導通しつつ導電性下地層上に第1金属材料としての銅材料を電気めっき槽内で電気めっきして、配線層用の第1めっき体、及びダミー配線層用のダミーめっき体を形成した。この電気めっきにおいては、上記電気めっき槽におけるめっき液の噴流流量、エアバブリングのエア量を下記表1に示すように設定すること以外は同じ条件に設定した。次いで、第1めっき体に導通しつつ、上記電気めっき槽内で所定の一定条件で、第2金属材料として第1金属材料と同じ銅材料を第1めっき体に電気めっきして、表1に示すように実験例1~4の試料を作製した。
<評価>
(平均厚み)
実験例1~4の試料について、巻線部における最外周よりも内側の第2巻線部の平均厚みH1、ランド部の平均厚みH2、及び巻線部における最外周の第1巻線部の平均厚みH3を測定した。具体的には、各試料の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、上記第2巻線部、ランド部、及び第1巻線部についてそれぞれ、任意の十点の断面観察による厚みを測定し、測定結果の平均値をそれぞれ算出することによって、第2巻線部の平均厚みH1、ランド部の平均厚みH2、及び第1巻線部の平均厚みH3をそれぞれ得た。この測定後、第2巻線部の平均厚みH1に対するランド部の平均厚みH2の比率、及び第2巻線部の平均厚みH1に対する第1巻線部の平均厚みH3の比率を算出した。結果を表1に示す。
(第1面積に対する第2面積の比率)
実験例1~4の試料について、ベースフィルムにおける配線層からその外側に2mmの領域の第1面積に対するダミー配線層の積層領域の第2面積の比率を測定した。この比率は、ダミー配線層の面積及びレジスト形成後の導電性下地層の露出部分の面積を測定することによって算出した。結果を表1に示す。
(導通性)
実験例1~4の試料について、電気検査を行った。その結果、オープンとなっている箇所を不良と判断した。結果を表1に示す。
(電気抵抗の減少率)
実験例1~4の試料について、電気検査によって、電気抵抗を測定した。得られた実験例4の電気抵抗(基準)に対する実験例1~4の電気抵抗の減少率を算出した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
表1に示すように、第2巻線部の平均厚みH1に対するランド部の平均厚みH2の比率が1.1以上5以下であることで、導通不良を低減し得ることが示された。また、第2巻線部の平均厚みH1に対する第1巻線部の平均厚みH3の比率が1.1以上5以下であることで、電気抵抗を小さくし得ることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板、及びその製造方法によって製造されるフレキシブルプリント配線板は、接続信頼性に優れる。従って、小型の電子機器等に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0060】
10 フレキシブルプリント配線板
3 ベースフィルム
3a 孔
11 配線層
13 ランド部
15 巻線部
20 スルーホール
23 第1導電性下地層
25 下側ランド層
27 上側ランド層
33 第2導電性下地層
35 下側巻線層
37 上側巻線層
41 ダミー配線層
43 第3導電性下地層
45 ダミーめっき層
H1 第2巻線部の平均厚み
H2 ランド部の平均厚み
H3 第1巻線部の平均厚み
L 巻線部の平均線幅
S 巻線部の平均間隔
M 導電性下地層
R レジストパターン
X1 第1めっき体
X2 ダミーめっき体