(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】配合剤の混合方法及び混合装置
(51)【国際特許分類】
B29B 7/12 20060101AFI20230118BHJP
B29B 7/88 20060101ALI20230118BHJP
B29B 7/10 20060101ALI20230118BHJP
B29B 7/28 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
B29B7/12
B29B7/88
B29B7/10
B29B7/28
(21)【出願番号】P 2022001959
(22)【出願日】2022-01-07
(62)【分割の表示】P 2020519572の分割
【原出願日】2019-05-07
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2018095526
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305014375
【氏名又は名称】NOKエラストマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】伏貫 実
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-194933(JP,A)
【文献】特開昭57-031934(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101698317(CN,A)
【文献】特開昭50-043161(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125959(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B
B01F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ゴムに
所定の配合比率で配合する複数種類の配合
剤を封入する袋体を受け入れる
開口を一端側に有する円筒状の回転ドラムと、
前記回転ドラムと軸方向を
一致させて平行に配置された回転自在の一対のローラを有し、前記一対のローラに載置した前記回転ドラムを回転自在に支持する支持部と、
前記一対のローラの少なくとも一方を回転駆動して前記回転ドラムを
追従回転させる駆動部と、
前記回転ドラムの内部で軸方向に沿って設けられた係合部と、
を備え、
前記係合部は、前記回転ドラムの回転に伴い前記袋体を引っ掛けて上方に運び、前記回転ドラムがある回転角度に達したときに前記袋体の自重による落下を許容することによって前記袋体を転動させる、
配合剤の混合装置。
【請求項2】
前記支持部は、開口する端部が反対側の端部よりも高い位置になるように軸方向を水平に対して傾斜させた状態で前記回転ドラムを支持する、
請求項
1に記載の配合剤の混合装置。
【請求項3】
前記回転ドラムの回転方向を周期的に切り替える、
請求項
1に記載の配合剤の混合装置。
【請求項4】
前記係合部は、前記回転ドラムの内周面から突出するように設けられた棒状形状を有する突条である、
請求項1に記載の配合剤の混合装置。
【請求項5】
原料ゴムに複数種類の配合剤を所定の配合比率で配合する前に、前記配合比率に沿った量の前記複数種類の配合剤を袋体に封入し、
請求項1に記載の混合装置の前記回転ドラム内に、前記複数種類の配合剤を封入した前記袋体を投入し、
前記回転ドラムを回転駆動して前記回転ドラム内で前記袋体を転動させ、前記袋体に封入した前記複数種類の配合剤を互いに混合する、
配合剤の混合方法。
【請求項6】
原料ゴムに複数種類の配合剤を所定の配合比率で配合する前に、前記配合比率に沿った量の前記複数種類の配合剤を袋体に封入し、
請求項2に記載の混合装置の前記回転ドラム内に、前記複数種類の配合剤を封入した前記袋体を投入し、
前記回転ドラムを回転駆動して前記回転ドラム内で前記袋体を転動させ、前記袋体に封入した前記複数種類の配合剤を互いに混合する、
配合剤の混合方法。
【請求項7】
原料ゴムに複数種類の配合剤を所定の配合比率で配合する前に、前記配合比率に沿った量の前記複数種類の配合剤を袋体に封入し、
請求項3に記載の混合装置の前記回転ドラム内に、前記複数種類の配合剤を封入した前記袋体を投入し、
前記回転ドラムを回転駆動して前記回転ドラム内で前記袋体を転動させ、前記袋体に封入した前記複数種類の配合剤を互いに混合する、
配合剤の混合方法。
【請求項8】
原料ゴムに複数種類の配合剤を所定の配合比率で配合する前に、前記配合比率に沿った量の前記複数種類の配合剤を袋体に封入し、
請求項4に記載の混合装置の前記回転ドラム内に、前記複数種類の配合剤を封入した前記袋体を投入し、
前記回転ドラムを回転駆動して前記回転ドラム内で前記袋体を転動させ、前記袋体に封入した前記複数種類の配合剤を互いに混合する、
配合剤の混合方法。
【請求項9】
前記袋体を計量機に載せ、
前記計量機に載せられた袋体に前記複数種類の配合剤を順に収容し、
個々の種類の前記配合剤を袋体に入れる都度前記計量機によって重量を軽量し、重量に換算された前記配合比率の前記配合剤を前記袋体に封入する、
請求項
5ないし8のいずれか一に記載の配合剤の混合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の配合剤を互いに混合するために用いる配合剤の混合方法および混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にゴムについては、必要な物性や機能を持たせるため、原料ゴムに所定の配合比率で充填剤や添加剤などの配合剤を配合することが行われる。配合作業はニーダーやロールなどの混練機を用いて行われる。
【0003】
原料ゴムには、所定の配合比率で複数種類の配合剤が配合される(例えば特許文献1参照)。配合剤は、例えば次の工程によって原料ゴムに配合される。
(工程1)複数種類の配合剤を計量し、配合比率に沿った量の配合剤を種類ごとに取り分ける。取り分けた複数種類の配合剤を一旦、天面を開口した作業用の箱体に入れる。
(工程2)箱体を混練機の投入口に差し込んで傾け、箱体から混練機へ配合剤を投入する。あるいは箱体内の配合剤をスコップですくい取り、スコップを混練機の投入口に差し込んで傾け、混練機に投入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記工程1では、複数種類の配合剤を種類ごとに計量して順々に箱体に入れることから、複数種類の配合剤は箱体内でほとんど混合されない。
【0006】
このため上記工程2では、複数種類の配合剤は、ほとんど混合されていない状態で混練機へ投入される。その結果、分散性が良くない原料ゴムでは、混練機内で配合剤が均一に混ざらないといった分散不良が発生し、この分散不良を原因として、必要な物性や機能が得られないという現象が生じることがある。フッ素系のゴムなどの分散性が良くない原料ゴムでは、特にこのような現象が生じやすい。
【0007】
このような配合剤の分散不良を防止するために、複数種類の配合剤を箱体内で手作業やスコップを用いて混合する作業が行われる。ところが箱体内で混合すると、先入れした方の配合剤が箱体内の隅部に残ったりして、混合が十分に行われない場合がある。改善が求められる。
【0008】
本発明の課題は、原料ゴムに複数種類の配合剤を所定の配合比率で配合するに先立ち、原料ゴムに複数種類の配合剤を均一に分散させ得るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
配合剤の混合装置は、原料ゴムに所定の配合比率で配合する複数種類の配合剤を封入する袋体を受け入れる開口を一端側に有する円筒状の回転ドラムと、前記回転ドラムと軸方向を一致させて平行に配置された回転自在の一対のローラを有し、前記一対のローラに載置した前記回転ドラムを回転自在に支持する支持部と、前記一対のローラの少なくとも一方を回転駆動して前記回転ドラムを追従回転させる駆動部と、前記回転ドラムの内部で軸方向に沿って設けられた係合部と、を備え、前記係合部は、前記回転ドラムの回転に伴い前記袋体を引っ掛けて上方に運び、前記回転ドラムがある回転角度に達したときに前記袋体の自重による落下を許容することによって前記袋体を転動させる。
配合剤の混合方法は、原料ゴムに複数種類の配合剤を所定の配合比率で配合する前に、前記配合比率に沿った量の前記複数種類の配合剤を袋体に封入し、上記配合剤の混合装置の前記回転ドラム内に、前記複数種類の配合剤を封入した前記袋体を投入し、前記回転ドラムを回転駆動して前記回転ドラム内で前記袋体を転動させ、前記袋体に封入した前記複数種類の配合剤を互いに混合する。
【発明の効果】
【0011】
原料ゴムに複数種類の配合剤を所定の配合比率で配合するに先立ち、原料ゴムに複数種類の配合剤を均一に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】配合剤の混合装置の一実施の形態を示す(A)は正面図、(B)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態の配合剤の混合方法は、原料ゴムに所定の配合比率で配合する複数種類の配合剤を原料ゴムに配合する前に行われる。この混合方法は、以下の手順にて複数種類の配合剤を互いに混合する。
【0014】
複数種類の配合剤としては、例えばホワイトカーボン(シリカ)およびブラックカーボン等の充填剤の組み合わせ、充填剤と添加剤の組み合わせ、複数の添加剤の組み合わせなどが用いられる。ほかにもゴム工業で一般的に用いられている充填剤や添加剤等の各種配合剤、例えばブラックカーボン、ホワイトカーボン(シリカ)、タルク、クレー、グラファイト、けい酸カルシウム等の充填剤、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等の加工助剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の受酸剤、老化防止剤、可塑剤などを適宜組み合わせて用いられる。
【0015】
本実施の形態の配合剤の混合方法は、次の各工程によって実行される。
[第1工程]
配合比率に沿った量の複数種類の配合剤を収容可能な容量を備える袋体を用意する。この袋体の中に、配合比率に沿った量の複数種類の配合剤を順次収容し、袋体の開口部を閉塞する。袋体は、例えば薄膜樹脂製のフレキシブルな袋体であり、市販のいわゆるポリ袋などであっても良い。複数種類の配合剤を袋体内で混合するため、配合剤が袋体内で移動できるよう、袋体の容量は配合剤の量に対し、ゆとりを持たせた量とすることが望ましい。配合剤の計量は、配合剤を袋体に収容する前に予め行っても良く、袋体を計量機(図示せず)に載せて、配合剤を袋体に収容しつつ行っても良い。
【0016】
配合剤を袋体に収容しつつ配合剤の軽量を行う場合、まず袋体を計量機に載せ、計量機に載せられた袋体に複数種類の配合剤を順に収容する。このとき個々の種類の配合剤を袋体に入れる都度、計量機によって重量を軽量する。この計量によって、袋体に入れられた個々の種類の配合剤の重量を知ることができる。より詳しくは、これから袋体に入れようとする配合剤の重量は、予め袋体に収容されている配合剤の重量との差分として知得が可能である。そこで個々の種類の配合剤を袋体に入れていきながら、重量に換算された配合比率で個々の種類の配合剤を袋体に封入することができる。
【0017】
[第2工程]
第1工程で複数種類の配合剤を封入した袋体を、混合装置の回転ドラムの中に投入する。このとき複数の袋体を同時に投入しても良い。混合装置の詳細については後述する。
【0018】
[第3工程]
第2工程で袋体を投入した回転ドラムを回転駆動し、この回転ドラム内で袋体を転動させ、これにより所定時間の経過後、袋体に封入した複数種類の配合剤を互いに混合する。
【0019】
上記第1~第3工程を備える混合方法によれば、袋体に封入した複数種類の配合剤を十分に混合することができ、原料ゴムに配合剤を配合したときに分散不良が発生するのを未然に解消することができる。このとき作業者が行う作業は、配合剤の計量および袋体への封入、袋体の回転ドラムへの投入、及び回転ドラムの駆動を指示する操作のみで良いため、作業者の負担を低減することができる。回転ドラムの作動時間は、配合剤の量などにもよるが、一般的には1~5分間程度である。
【0020】
本実施の形態の混合装置は、以下のように構成されている。この混合装置は、複数種類の配合剤を原料ゴムに配合する前に互いに混合するための装置であって、配合剤を原料ゴムに配合するための装置(混練装置)ではない。
【0021】
図1に示すように、混合装置1は、枠体状の台座部2と、台座部2上に配置された左右一対の駆動ロール3と、駆動ロール3上に配置され駆動ロール3に従動回転する回転ドラム4と、駆動ロール3を回転させるための電動式の駆動源(図示せず)および操作部5とを備えている。
【0022】
左右一対の駆動ロール3は回転自在のローラであり、回転ドラム4を載置して支持する支持部としての役割を果たしている。これらの駆動ロール3は互いに平行に配置されており、軸方向を一致させて回転ドラム4を載置する。このとき回転ドラム4は、一対の駆動ロール3に載置されるだけで、他の構造物に位置を拘束されることはない。
【0023】
図2に示すように、一対の駆動ロール3を回転駆動するための駆動源として、混合装置1はモータMを備えている。混合装置1は、モータMの図示しない回転軸の回転を駆動ロール3に伝達する図示しない伝達機構を備えている。伝達機構は、モータMの回転を一方の駆動ロール3にのみ伝達する構成であっても、両方の駆動ロール3に伝達する構成であってもよい。
【0024】
図2に示すように、混合装置1は制御部11を備えている。モータMはモータ駆動回路12を介して制御部11に接続されている。操作部5も、入出力回路13を介して制御部11に接続されている。制御部11は、操作部5から入力信号を受けてモータMの駆動制御用信号を出力するロジックをシーケンシャルに実行する集積回路である。入出力回路13を介して操作部5からの入力信号を受信した制御部11は、モータMの駆動信号を出力する。モータ駆動回路12は、制御部11から受信した駆動信号に応じて、モータMに接続されている図示しない通電回路を閉じる。モータM及びモータ駆動回路12は、回転ドラム4を回転駆動する駆動部として機能する。
【0025】
制御部11のロジックは、モータMの正逆回転を繰り返すように設定されている。つまりモータMを一方向に回転させる駆動信号と一方向と反対に回転させる駆動信号とを所定の周期で繰り返すロジックである。このロジックにしたがった制御部11は、駆動ロール3およびこれに従動する回転ドラム4が所定の回転速度で正回転(矢印x)し、続いて所定の回転速度で逆回転(矢印y)し、これを所定の周期で繰り返すようにモータMを制御する。所定の回転速度は、例えば75rpmである。
【0026】
左右一対の駆動ロール3は、一方のロール端部(軸方向端部)3aが他方のロール端部(軸方向端部)3bよりも高い位置に位置するように、回転中心軸線(図示せず)を斜めの向きに設定されている。回転中心軸線の傾斜角は、例えば15度程度である。
【0027】
左右一対の駆動ロール3の回転中心軸線が傾斜する結果、駆動ロール3上に載せられた回転ドラム4も、一方のドラム端部(軸方向端部)4aが他方のドラム端部(軸方向端部)4bよりも高い位置に位置するように、回転中心軸線4cが斜めの向きを向くように設定される。言うまでもなく、回転中心軸線4cの傾斜角は、一対の駆動ロール3の回転中心軸線と一致する例えば15度程度である。
【0028】
回転ドラム4は、ドラム端部4aの側を開口し、ドラム端部4bの側を閉鎖している。開口するドラム端部4aには、ドラム開口部4dが設けられている。回転ドラム4の外周面は、駆動ロール3に接触する円筒状の周面部4eである。閉鎖している他方のドラム端部4bには、底面部4fが設けられている。
【0029】
一対の駆動ロール3と回転ドラム4の周面部4eの外周面との間には、駆動ロール3が回転したとき、滑りを生ずることなく回転ドラム4が追従するだけの摩擦抵抗が生じている。このような摩擦抵抗を生じさせるために、駆動ロール3は、例えばゴム状弾性体によって被覆されている。回転ドラム4は全体が金属製である。駆動ロール3の外周面をなすゴム状弾性体は、金属製である回転ドラム4の外周面との間に摩擦抵抗を生じ、滑りを生ずることなく駆動ロール3の回転を回転ドラム4に伝達する。
【0030】
このような構成の回転ドラム4は、ドラム端部4aがドラム端部4bよりも高い位置に位置づけられるように、一対の駆動ロール3に載せられる。これによってドラム開口部4dからの袋体の出し入れが容易になる。このときドラム端部4bよりもドラム端部4aの方が高い位置に位置するがゆえに、ドラム開口部4dから袋体がこぼれ出るおそれがないため、回転ドラム4は開閉蓋を備えない全面開口の構造を有している。もっとも開閉蓋を設けてはいけないわけでなく、別の実施の形態としては、開閉蓋を設けても良い。
【0031】
回転ドラム4の内周面、つまり周面部4eの内周面には、二本の係合部4gが設けられている。これらの係合部4gは棒状形状を有しており、周面部4eの内周面に接した状態で回転ドラム4の軸方向に沿って配置されている。周面部4eの内周面から見たとき、係合部4gは突起状の形状を有している。このような係合部4gは、回転ドラム4の回転中に袋体が引っ掛かり、袋体を転動させ易くする役割を担っている。この点について後で詳しく述べる。
【0032】
図1に示すように、本実施の形態の係合部4gは、回転ドラム4の回転中心軸線4cに沿って延びる等配2本の直線状の突条である。係合部4gの高さ、つまり回転ドラム4の内周面からの突出寸法は、例えば10mm程度である。
【0033】
係合部4gは、回転ドラム4の回転中に袋体が引っ掛かり、袋体の転動を補助する役割を果たすものであれば良い。係合部4gの形状、設置数、配置位置に関しては各種の形態が許容される。この条件を満たす限り、係合部4gの形状や設置数は特に限定されない。設置数は例えば2~6本であっても良い。係合部4gは、回転ドラム4の内周面に対して非接触状態で配置されていてもよい。
【0034】
このような構成において、作業者は、ドラム開口部4dから複数種類の配合剤を封入した袋体を回転ドラム4の中に投入したならば(上記第2工程)、操作部5から上記第3工程の実施を入力指示する。つまり回転ドラム4の回転駆動を指示する。
【0035】
制御部11は、操作部5からの入力指示に応じてモータMを駆動する駆動信号を出力する。これによってモータMの回転軸が回転し、駆動ロール3が回転駆動され、駆動ロール3の回転に追従して回転ドラム4が回転する。
【0036】
回転ドラム4が回転すると、回転ドラム4内に収納されている複数種類の配合剤を封入した袋体は、回転ドラム4の内周面に追従して回転する。このとき袋体は係合部4gに引っ掛かり、回転ドラム4の内周面と袋体との間の滑りが抑制される。
【0037】
制御部11は、所定の周期でモータMの回転方向を切り替えるように駆動信号を出力する。制御部11から回転方向を切り替えるように駆動信号が出力されることで、回転ドラム4は正回転(矢印x)と逆回転(矢印y)とを繰り返し、複数種類の配合剤を封入した袋体も正回転と逆回転とを繰り返す。その結果転動する袋体内で、複数種類の配合剤を一層十分に混合することができる。
【0038】
このとき回転ドラム4の回転に対する袋体の追従状態は、回転ドラム4内に占める袋体の大きさや回転ドラム4と袋体との間の摩擦抵抗などによって変動する。
【0039】
本実施の形態では、回転ドラム4の内径に対して比較的小さな袋体が用いられ、この袋体に複数種類の配合剤を収容している。回転ドラム4が回転すると、袋体は、係合部4gに引っ掛かることによって回転ドラム4に追従し、上方に運ばれる。上方に運ばれた袋体は、係合部4gから脱落することで落下する。袋体に収容されている複数種類の配合剤は、袋体の上昇と落下とによって混合される。
【0040】
このとき回転ドラム4のどの回転角度で袋体が落下するかは、係合部4gに対する袋体の引っ掛かり状態に依存する。袋体に対して係合部4gが比較的大きければ、袋体は係合部4gから脱落しにくくなり、袋体に対して係合部4gが比較的小さくなると、袋体は係合部4gから脱落しやすくなる。袋体の脱落し易さは、係合部4gの形状にも依存する。係合部4gがフック・ネイルのような形状を有していれば、袋体は係合部4gから脱落しにくくなる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態の配合剤の混合方法及び混合装置は、軸方向を横にして、より正確には回転中心軸線4cを水平に対して傾斜させて回転ドラム4を回転させ、回転する回転ドラム4の内周面への追従によって袋体を転動させる。この場合の追従は、回転ドラム4に360度追従するという意味ではなく、係合部4gから脱落して落下するまでの角度範囲の追従を意味する。
【0042】
別の実施の形態としては、回転ドラム4の内周面に密接するような大きさの袋体を用いるようにしてもよい。回転ドラム4の内周面に密接するほど袋体が大きければ、回転ドラム4の内周面に対する袋体の摩擦抵抗が大きくなるため、袋体は滑りを生ずることなく回転ドラム4に追従する。このとき袋体は、回転ドラム4に360度追従する。袋体に収容されている複数種類の配合剤は、袋体の回転によって混合される。
【0043】
回転ドラム4の内径に対して比較的小さな袋体が用いられる場合であっても、袋体の大きさが小さくなるにしたがい、袋体は回転ドラム4の内周面に対して滑りやすくなる。このときには係合部4gがその機能を発揮し、袋体は係合部4gに引っ掛かることで滑りにくくなり、回転ドラム4の回転に追従する。
【0044】
以上説明したように、回転ドラム4の回転に追従して回転ドラム4内で袋体が転動する仕組み及び転動する様子は、回転ドラム4の内径と袋体との大きさ関係、摩擦抵抗の関係などに依存して変動し、一様ではない。
【0045】
回転ドラム4に対して袋体が小さく、回転ドラム4の内周面に対して袋体がある角度範囲だけ追従し、その後は脱落するような場合、袋体の転動は、袋体の上昇と落下とを意味する。前述したように、袋体に収容されている複数種類の配合剤は、袋体の上昇と落下とによって混合される。
【0046】
回転ドラム4に対して袋体が比較的大きく、回転ドラム4の回転に袋体が360度の範囲で追従して回転する場合、袋体の転動は、袋体の回転を意味する。前述したように、袋体に収容されている複数種類の配合剤は、袋体の回転によって混合される。
【0047】
本実施の形態によれば、混合装置1を用いて配合剤を混合することにより、袋体に封入した複数種類の配合剤を十分に混合することができ、こうして混合した配合剤を原料ゴムに配合したときに分散不良が発生するのを未然に解消することができる。回転ドラム4の回転により複数種類の配合剤を混合するため、作業者の負担を低減することができる。
【0048】
本実施の形態の配合剤の混合方法及び混合装置1については、各種の変更や変形が可能である。
【0049】
例えば上記実施の形態では回転ドラム4の軸方向を水平に対して傾斜させる一例を示したが、これは必須ではない。回転ドラム4は軸方向を横に回転すれば、必ずしも回転中心軸線4cが水平に対して傾斜している必要はない。あるいは別の実施の形態としては、回転ドラム4の回転中心軸線4cを横にするのではなく、縦、例えば鉛直方向に向けるようにしてもよい。
【実施例】
【0050】
実施例
下記の組成よりなるゴム(水素化NBR組成物)を製造するに際し、事前に複数種類の配合剤としてホワイトカーボン(補強性シリカ)およびブラックカーボン(FEFカーボンブラック)を上記混合方法および混合装置にて混合した。混合後、ニーダーに投入し、他の組成と共に6分間、混練した。
<組成>
水素化NBR(AN25%、ヨウ素価15、ML1+495)
100重量部
補強性シリカ(比表面積100m2/g) 60重量部
FEFカーボンブラック 10重量部
酸化亜鉛 5重量部
ポリメライズド(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン) 0.5重量部
2-メルカプトベンツイミダゾール 2重量部
ジオクチルセバケート 10重量部
ジクミルパーオキサイド 5重量部
トリアリルイソシアヌレート 5重量部
比較例
上記の組成よりなるゴム(水素化NBR組成物)を製造するに際し、事前にホワイトカーボン(補強性シリカ)およびブラックカーボン(FEFカーボンブラック)を混合することなくニーダーに投入し、他の組成と共に6分間、混練した。
結果
各テストピースによる分散確認の結果として、比較例では、
図2の表図の上段に示すように、断面に「白色物(大)」を生じて「評価:×」であった。実施例では、
図2の表図の下段に示すように、断面に「白色物(大)」を生じることがなく、よって「評価:○」となった。したがって本実施の形態の配合剤の混合方法及び混合装置による分散不良解消の効果を確認することができた。
【符号の説明】
【0051】
1 混合装置
2 台座部
3 駆動ロール
3a 一方のロール端部
3b 他方のロール端部
4 回転ドラム
4a 一方のドラム端部
4b 他方のドラム端部
4c 回転中心軸線
4d ドラム開口部
4e 周面部
4f 底面部
4g 突起状の係合部
5 操作部
M モータ(駆動部)
11 制御部
12 モータ駆動回路(駆動部)
13 入出力回路