(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】紫外線硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/48 20060101AFI20230118BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20230118BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230118BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230118BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230118BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230118BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230118BHJP
C08F 2/44 20060101ALN20230118BHJP
【FI】
C08F2/48
C09J4/00
C09J11/06
C09J11/04
C08F290/06
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
H01L21/304 631
C08F2/44 Z
(21)【出願番号】P 2022501153
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2021041724
(87)【国際公開番号】W WO2022137880
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2020213929
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】木元 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】林 泰則
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 水貴
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-001863(JP,A)
【文献】特開2015-209390(JP,A)
【文献】特開昭57-202315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/48
C09J 4/00
C09J 11/06
C09J 11/04
C08F 290/06
H01L 21/683
H01L 21/304
C08F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和二重結合を有するモノマー及び/又はオリゴマーと、
光重合開始剤と、
純水中での
室温(25℃)における酸解離定数(pKa1)が4.0以下である酸
(但し、第一酸価が175~385mgKOH/g、第二酸価が285~765mgKOH/g及び第三酸価が390~955mgKOH/gである重合性リン酸エステルを除き、かつ下記(化1)~(化3)で示される化合物を除く)と、を含
み、
前記モノマーは、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、及び(メタ)アクリルアミド類からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、
半導体加工用の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸の含有量が、前記紫外線硬化型樹脂組成物の全重量に対して、0.005~2.0重量%である、
請求項1に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤が、ラジカル発生型光重合開始剤及び/又はアニオン発生型光重合開始剤を含む、
請求項1又は2に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記オリゴマーが、ウレタンアクリレートオリゴマーを含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記モノマーが、単官能アクリルアミドを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
前記単官能アクリルアミドの表面張力が、30~38mN/mである、
請求項5に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
25℃における粘度が、200~10000mPa・sである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物を紫外線で硬化させてなる、
硬化物。
【請求項9】
紫外線透過性を有する基材と、被着体と、を請求項1~7のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物を介して硬化接着させた、
積層体。
【請求項10】
半導体加工用途に使用される、
請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
半導体ウェハーの凸部が設けられた面に被着体を貼り合わせる貼合工程と、
前記被着体と、紫外線透過性を有する基材と、を請求項1~7のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物を介して、積層する積層工程と、
前記基材側から紫外線照射することにより、前記紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、
前記半導体ウェハーの前記凸部が設けられた前記面と反対側の面を研削する研削工程と、を有する、
半導体ウェハーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型樹脂組成物、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物、積層体、及び半導体ウェハーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程の中で、シリコンウェハーを研削するバックグラインド工程においては、ウェハーを固定したり、電子部品の損傷を防止したりするために、ウェハーの回路面に粘着性フィルム(バックグラインドテープ)が貼り付けられる。
【0003】
このような粘着性フィルムとしては、一般的に、基材フィルムにウェハーとの接触層を積層させた粘着性フィルムが用いられている。
【0004】
近年、回路面に形成されるバンプのサイズが大きくなり、従来の粘着性フィルムではバンプ由来の凹凸が吸収しきれない場合がある。そこで、粘着性フィルムに凹凸吸収性を付与するために、基材フィルムとウェハーとの接触層との間に凹凸吸収層を設けた粘着性フィルムが利用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
しかし、このように凹凸吸収層を設けたバックグラインドテープであってもフィルム形状を有するという点においては従来の粘着性フィルムと相違しないため、凹凸吸収には限界がある。そのため、このようなバックグラインドテープを用いて、特に大きなバンプを有するウェハーをバックグラインドしたときには、ウェハー研削時の研削ムラが発生してしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-065168号公報
【文献】特開2019-065165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、このような問題を解決すべく、凹凸吸収層を予め形成した粘着性フィルムに代えて、紫外線硬化型の液体樹脂組成物を使用した新たな構造を有するバックグラインドテープについて検討した。
【0008】
当該バックグラインドテープは、例えば
図1に示すように、半導体ウェハー20の表面22に被着体11の表面11aを貼り合わせ、液状の樹脂組成物10を介して被着体11と基材12を積層し、液状の樹脂組成物10を硬化させることで、構成されるものである。これにより、半導体ウェハー20が大きなバンプ(凸部21)を有する場合であっても、被着体11の表面11bに生じた凸部11cに対して液状の樹脂組成物10が追従し、凹凸を吸収することができる。
【0009】
このような液状の樹脂組成物10には、使用されるまで液体状態で長期保管することができ、かつ、硬化した時には被着体11と基材12に対する接着力を発揮することが求められる。しかしながら、本発明者らが検討したところ紫外線硬化型の液状の樹脂組成物は液体状態で長期保管した場合に、時間経過により接着剤中のポリマーや粘着付与剤などの分散状態が変動し、硬化させたときに意図した接着力が発現しない場合があることが分かってきた。
【0010】
こうした現象への対策のひとつとして、樹脂組成物の粘度を上昇させることにより、分散状態の変動を抑制することが考えられる。しかしながら、樹脂組成物の粘度を高くすると、配管等を用いて基材上に樹脂組成物を送液することが困難になるなど実使用上の問題が発生する。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、長期保管後であっても高い接着力を発揮することのできる紫外線硬化型樹脂組成物、並びに、該組成物を用いた硬化物、積層体、及び半導体ウェハーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記問題点を解決するために鋭意検討した。その結果、紫外線硬化型樹脂組成物に所定の酸を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
重合性不飽和二重結合を有するモノマー及び/又はオリゴマーと、
光重合開始剤と、
純水中での
室温(25℃)における酸解離定数(pKa1)が4.0以下である酸
(但し、第一酸価が175~385mgKOH/g、第二酸価が285~765mgKOH/g及び第三酸価が390~955mgKOH/gである重合性リン酸エステルを除き、かつ下記(化1)~(化3)で示される化合物を除く)と、を含
み、
前記モノマーは、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、及び(メタ)アクリルアミド類からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、
半導体加工用の紫外線硬化型樹脂組成物。
〔2〕
前記酸の含有量が、前記紫外線硬化型樹脂組成物の全重量に対して、0.005~2.0重量%である、
〔1〕に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
〔3〕
前記光重合開始剤が、ラジカル発生型光重合開始剤及び/又はアニオン発生型光重合開始剤を含む、
〔1〕又は〔2〕に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
〔4〕
前記オリゴマーが、ウレタンアクリレートオリゴマーを含む、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
〔5〕
前記モノマーが、単官能アクリルアミドを含む、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
〔6〕
前記単官能アクリルアミドの表面張力が、30~38mN/mである、
〔5〕に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
〔7〕
25℃における粘度が、200~10000mPa・sである、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
〔8〕
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物を紫外線で硬化させてなる、
硬化物。
〔9〕
紫外線透過性を有する基材と、被着体と、を〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物を介して硬化接着させた、
積層体。
〔10〕
半導体加工用途に使用される、
〔9〕に記載の積層体。
〔11〕
半導体ウェハーの凸部が設けられた面に被着体を貼り合わせる貼合工程と、
前記被着体と、紫外線透過性を有する基材と、を〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物を介して、積層する積層工程と、
前記基材側から紫外線照射することにより、前記紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、
前記半導体ウェハーの前記凸部が設けられた前記面と反対側の面を研削する研削工程と、を有する、
半導体ウェハーの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長期保管後であっても高い接着力を発揮することのできる紫外線硬化型樹脂組成物、並びに、該組成物を用いた硬化物、積層体、及び半導体ウェハーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の樹脂組成物を用いた半導体ウェハーのバックグラインド工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0017】
〔紫外線硬化型樹脂組成物〕
本実施形態の紫外線硬化型樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、重合性不飽和二重結合を有するモノマー及び/又は重合性不飽和二重結合を有するオリゴマーと、光重合開始剤と、純水中での酸解離定数(pKa1)が4.0以下である酸(以下、単に「酸」ともいう)と、を含み、必要に応じて、重合禁止剤、粘着付与剤、その他の添加剤を含んでいてもよい。なお、モノマーとオリゴマーをまとめて重合性化合物ともいう。
【0018】
初めに、本実施形態の樹脂組成物の使用態様の一例について簡単に説明する。
図1に、本実施形態の樹脂組成物を用いた半導体ウェハーのバックグラインド工程の一例を示す。
図1において、半導体ウェハー20は表面22に凸部21を有する。
【0019】
初めに、半導体ウェハー20の表面22と被着体11の表面11aとを貼り合わせ、凸部21を保護する(貼合工程)。この際、凸部21に対応して、被着体11の表面11bには、凸部21が転写されたような凸部11cが生じ得る。次いで、この凸部11cを吸収するために、液状の樹脂組成物10を介して、被着体11と基材12とを積層し(積層工程)、基材12側から紫外線を照射させることで樹脂組成物10を硬化させる(硬化工程)。硬化した樹脂組成物10’は凸部21(凸部11c)を吸収する凹凸吸収層となる。
【0020】
そして、半導体ウェハー20の表面22に被着体11と硬化した樹脂組成物10’と基材12との積層体30が密着した状態で、半導体ウェハー20の裏面23を研削し(研削工程)、研削後に積層体30を剥離する。
【0021】
このようにして、液状の樹脂組成物10を用いて凸部を吸収することにより、凸部21の大きさに関わらず、研削工程において半導体ウェハー20にかかる面内の圧力を均一にすることができる。そのため、凸部21に由来する研削むらを低減することができる。
【0022】
特に、従来のように予め凹凸吸収層を層構造として備えるようなバックグラインドテープでは、凹凸の吸収性能には限界があるが、本実施形態によれば、液状の樹脂組成物により凹凸の段差を吸収させて硬化するため、半導体ウェハーの有する凹凸に応じた適切な凹凸吸収層を構成することができる。
【0023】
さらに、本実施形態においては、上記構成を有することにより、硬化した樹脂組成物10’と、被着体11及び基材12との接着性能をより向上することができる。これにより、積層体30の剥離時において、樹脂組成物10’と被着体11の界面や樹脂組成物10’と基材12の界面において意図しない剥離が生じることを抑制することができる。そのため、上記界面における意図しない剥離に起因して、被着体11の一部が半導体ウェハー20の表面22、例えば、凸部21(バンプ)以外の凹部において糊残りとして残留することなどを抑制することができる。
【0024】
とりわけ、本発明者らの検討により、調製当初の樹脂組成物を用いた場合においては、上記のような接着性能の低下は確認されなくとも、所定期間保管した後の樹脂組成物を用いた場合において被着体や基材に対する樹脂組成物の接着性能が低下することが分かってきた。これに対して、本実施形態の樹脂組成物によれば、特に所定の酸を用いることにより、長期保管後であっても高い接着力を発揮することが可能となる。また、本実施形態の樹脂組成物は、容易に塗布できること(塗布性)や、低い紫外線照射量で硬化すること(硬化性)、調製当初の樹脂組成物の接着力(初期接着力)についても優れるものとなる。
【0025】
なお、本実施形態の紫外線硬化型樹脂組成物は、半導体加工用途に使用される組成物、例えば、半導体ウェハーや半導体パッケージを切断するダイシングテープまたは、バックグラインドテープを貼り合わせる際に凹凸吸収層を形成するために用いる組成物に限られず、異なる複数の部材を接着する層間接着用樹脂組成物としても用いることができる。以下、本実施形態の構成について詳説する。
【0026】
〔重合性化合物〕
本実施形態の樹脂組成物は、光重合開始剤により重合し得る重合性化合物として、重合性不飽和二重結合を有するモノマー及び/又は重合性不飽和二重結合を有するオリゴマーを少なくとも1種類含む。モノマー及びオリゴマーは、それぞれ、1種単独で用いても、2種類以上併用してもよく、また、モノマーとオリゴマーを併用してもよい。
【0027】
(モノマー)
モノマーとしては、重合性不飽和二重結合を有するものであれば、特に制限されないが、例えば、アルケン類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、及び(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートをまとめて記載した標記であり、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルをまとめて記載した標記である。
【0028】
このなかでも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、及び(メタ)アクリルアミド類が好ましく、アクリル酸、アクリル酸エステル類、及びアクリルアミド類がより好ましい。このようなモノマーを用いることにより、硬化性がより向上する傾向にある。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル類;イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート等の脂環族(メタ)アクリル酸エステル類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0030】
このなかでも、脂肪族(メタ)アクリル酸エステル類と脂環族(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく、脂肪族(メタ)アクリル酸エステル類と脂環族(メタ)アクリル酸エステル類を併用することがより好ましい。このようなモノマーを用いることにより、長期保管後の接着力のほか、初期接着力、硬化物の硬度、塗布性、及び硬化性がより向上する傾向にある。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル類の表面張力は、好ましくは5~40mN/mであり、より好ましくは5~35mN/mである。(メタ)アクリル酸エステル類の表面張力が上記範囲にあることにより、塗布性がより向上し、長期保管後の接着力や初期接着力がより向上する傾向にある。表面張力は、懸滴法により測定できる。
【0032】
脂肪族(メタ)アクリル酸エステル類と脂環族(メタ)アクリル酸エステル類の合計含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、好ましくは15~45重量%であり、より好ましくは20~40重量%であり、さらに好ましくは25~35重量%である。
【0033】
脂肪族(メタ)アクリル酸エステル類と脂環族(メタ)アクリル酸エステル類の含有量が、それぞれ上記範囲内であることにより、長期保管後の接着力のほか、初期接着力、硬化物の硬度、塗布性、及び硬化性がより向上する傾向にある。
【0034】
(メタ)アクリルアミド類としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物は、モノマーとして、単官能アクリルアミドを含むことが好ましい。単官能アクリルアミドを含むことにより、光重合開始剤や酸などの相溶性がより向上するほか、樹脂組成物の被着体への濡れ性がより向上し、長期保管後の接着力や初期接着力がより向上する傾向にある。
【0036】
単官能アクリルアミドの表面張力は、好ましくは30~38mN/mである。単官能アクリルアミドの表面張力が上記範囲にあることにより、樹脂組成物の被着体への濡れ性がさらに向上し、長期保管後の接着力や初期接着力がより向上する傾向にある。こうした単官能アクリルアミドとしては、N,N-ジメチルアクリルアミド(表面張力37.12mN/m)、N,N-ジエチルアクリルアミド(表面張力33.13mN/m)などが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリルアミド類の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、好ましくは20~45重量%であり、より好ましくは25~40重量%であり、さらに好ましくは30~35重量%である。(メタ)アクリルアミド類の含有量が上記範囲内であることにより、長期保管後の接着力のほか、初期接着力、硬化物の硬度、塗布性、及び硬化性がより向上する傾向にある。
【0038】
上記各モノマーの有する重合性不飽和二重結合の数は、好ましくは1~3であり、より好ましくは1~2であり、さらに好ましくは1である。このようなモノマーを用いることにより、長期保管後の接着力のほか、初期接着力、硬化物の硬度、塗布性、及び硬化性がより向上する傾向にある。
【0039】
〔オリゴマー〕
オリゴマーとしては、重合性不飽和二重結合を有するものであれば、特に制限されないが、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0040】
このなかでも、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましい。このようなオリゴマーを用いることにより、樹脂組成物の基材や被着体への濡れ性がより向上し、基材及び被着体に対する、硬化後の樹脂組成物の接着力がより向上する傾向にある。
【0041】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、特に限定されないが、例えば、芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーが挙げられる。このなかでも、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましい。このようなオリゴマーを用いることにより、長期保管後の接着力のほか、初期接着力、硬化物の硬度、塗布性、及び硬化性がより向上する傾向にある。
【0042】
オリゴマーの有する重合性不飽和二重結合の数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。このようなオリゴマーを用いることにより、長期保管後の接着力のほか、初期接着力、硬化物の硬度、塗布性、及び硬化性がより向上する傾向にある。
【0043】
また、オリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは100000以下であり、より好ましくは5000~75000であり、さらに好ましくは10000~50000である。オリゴマーの重量平均分子量が上記範囲内であることにより、樹脂組成物の粘度がより低く抑えられ、塗布性がより向上する傾向にある。
【0044】
オリゴマーの含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、好ましくは12.5~37.5重量%であり、より好ましくは17.5~32.5重量%であり、さらに好ましくは22.5~27.5重量%である。オリゴマーの含有量が上記範囲内であることにより、長期保管後の接着力のほか、初期接着力、硬化物の硬度、塗布性、及び硬化性がより向上する傾向にある。
【0045】
〔酸〕
本実施形態の樹脂組成物は、純水中での1段階目の酸解離定数(pKa1)が4.0以下の酸を含む。このような酸を用いることにより、樹脂組成物の基材及び/又は被着体に対する接着性能が低下することが抑制され、長期保管した場合であっても、高い接着力を発揮することができる。なお、酸解離定数としては、化学便覧、丸善株式会社刊に記載の値を採用することができる。
【0046】
本実施形態において、酸により所定期間保管した後であっても接着性能が維持される理由は、特に制限されないが、例えば、樹脂組成物の硬化時に、酸が基材及び/又は被着体に浸透し、樹脂組成物と基材及び/又は被着体との界面での静電相互作用を誘発するほか、酸が被着体に部分的に浸透した状態で硬化して、アンカー効果を発現することで接着力を高めていると考えられる。また、長期保管時には、重合性化合物、粘着付与剤など固形分の分散状態が変化することにより接着力が低下することが考えらえるが、酸の添加により、樹脂組成物中の分散状態の変化が抑制され、接着力が低下し難い状態に保たれると考えられる。
【0047】
酸としては、純水中での1段階目の酸解離定数(pKa1)が4.0以下であれば、2価以上の酸を含めて任意のものを使用できる。こうした酸としては、特に制限されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;ギ酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、ピコリン酸、シュウ酸、マロン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、クエン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、エチレンジアミン四酢酸、マレイン酸、フマル酸、ムコン酸などの有機酸が挙げられる。
【0048】
このうち、pKa1が低い酸ほど基材および被着体に浸透しやすく、接着力向上効果が期待できることから、pKa1が3.2以下であることがより好ましい。こうした酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、ピコリン酸、シュウ酸、フタル酸、クエン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、エチレンジアミン四酢酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。また、重合性化合物との相溶性の観点から、酸は有機酸であることが好ましい。
【0049】
酸の純水中での1段階目の酸解離定数(pKa1)は、4.0以下であり、好ましくは3.2以下であり、より好ましくは-10~3.2であり、さらに好ましくは-2~3.2であり、特に好ましくは0~3.2である。酸の酸解離定数(pKa1)が4.0以下であることにより、酸による接着力向上効果がより向上する。また、酸の酸解離定数(pKa1)が-10以上であることにより、酸により他の成分、例えば樹脂組成物の重合性化合物や、被着体や基材が変性したり、樹脂組成物を供給する装置の部材が浸食されたりすることを抑制することができる。
【0050】
酸は、重合性不飽和二重結合を有しないことが望ましい。これにより、酸が重合性化合物の重合に取り込まれることを回避でき、基材や被着体に浸透する酸の量が減少することを抑制できる。そのため、酸による接着力向上効果がより好適に発揮される傾向にある。
【0051】
酸の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、好ましくは0.005~2.0重量%であり、より好ましくは0.01~1.0重量%であり、さらに好ましくは0.015~0.5重量%である。酸の含有量が0.005重量%以上であることにより、酸による接着力向上効果がより向上する傾向にある。また、酸の含有量が2.0重量%以下であることにより、長期保管時に相溶しきれなくなった酸が分離または析出することが抑制される傾向にある。
【0052】
〔光重合開始剤〕
光重合開始剤としては、可視光線や紫外線の照射によりラジカルまたはアニオンを発生するものであれば特に制限されず、例えば、ラジカル発生型光重合開始剤及び/又はアニオン発生型光重合開始剤が挙げられる。このなかでも、ラジカル発生型光重合開始剤が好ましい。このような光重合開始剤を用いることにより、重合速度がより向上し、速やかに硬化させることができる。
【0053】
ラジカル発生型光重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾフェノン及びその誘導体;ベンジル及びその誘導体;エントラキノン及びその誘導体;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン誘導体;ジエトキシアセトフェノン、4-t-ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;2-ジメチルアミノエチルベンゾエート、p-ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジフェニルジスルフィド、チオキサントン及びその誘導体;カンファーキノン、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸;7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシ-2-ブロモエチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシ-2-メチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等のα-アミノアルキルフェノン誘導体;ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシポスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体;オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル及びオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル等のオキシフェニル酢酸エステル誘導体が挙げられる。
【0054】
これらの中では、硬化性に優れる点で、ベンゾイン誘導体、アシルホスフィンオキサイド誘導体、及びオキシフェニル酢酸エステル誘導体が好ましく、ベンジルジメチルケタール、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルがより好ましい。
【0055】
光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、好ましくは0.01~10.0重量%であり、より好ましくは0.1~5.0重量%であり、さらに好ましくは0.2~3.0重量%である。光重合開始剤の含有量が0.01重量%以上であることにより、硬化反応が好適に進行し、硬化物の硬度や接着力がより向上する傾向にある。また、光重合開始剤の含有量が10.0重量%以下であることにより、保管中に樹脂組成物が意図せずに硬化することを抑制でき、樹脂組成物の保存安定性がより向上する傾向にある。また、光重合開始剤の含有量が10.0重量%以下であることにより、紫外線照射時に樹脂組成物表面のみで硬化が進行し、内部まで硬化が進行せずに、硬化物の接着力が低下することが抑制される傾向にある。
【0056】
〔重合禁止剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、重合禁止剤をさらに含んでいてもよい。重合禁止剤を含むことにより、重合性化合物と光重合開始剤との熱などによる意図しない硬化反応を抑制し、保存安定性を高めることができる。
【0057】
重合禁止剤としては、特に制限されないが、例えば、フェノール系重合禁止剤、キノン系重合禁止剤、アミン系重合禁止剤、ニトロソ系重合禁止剤、遷移金属系重合禁止剤などが挙げられる。
【0058】
このような重合禁止剤としては、特に制限されないが、例えば、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5-ジターシャリーブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジターシャリーブチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジクロロ-p-ベンゾキノン、2,6-ジクロロ-p-ベンゾキノン、ピクリン酸、ターシャリーブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール及び2,6-ジターシャリーブチル-p-クレゾール、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロソジメチルアニリン、フェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、3,7-ジクミルフェノチアジン、ジフェニルアミン、4-オキシジフェニルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-1,4-フェニレンジアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、クペロン、塩化銅(II)、塩化鉄(III)等が挙げられる。
【0059】
重合禁止剤の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、好ましくは0.02~2.0重量%であり、より好ましくは0.05~1.0重量%であり、さらに好ましくは0.1~0.6重量%である。重合禁止剤の含有量が0.02重量%以上であることにより、重合性化合物と光重合開始剤との意図しない反応を十分に抑制することができ、保存安定性がより向上する傾向にある。重合禁止剤の含有量が2.0重量%以下であることにより、重合禁止剤がかえって硬化反応を阻害し、硬化物の硬度や接着力が低下することが抑制される傾向にある。また、重合禁止剤の含有量が2.0重量%以下であることにより、低温保管時に重合禁止剤が析出することがより抑制される傾向にある。
【0060】
〔粘着付与剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、粘着付与剤をさらに含んでいてもよい。粘着付与剤を含むことにより、硬化物の接着性がさらに向上する傾向にある。
【0061】
このような粘着付与剤としては、特に制限されないが、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、ロジンエステル、ロジン、スチレン樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂等を挙げることができる。このなかでも、テルペンフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0062】
テルペン樹脂としては、特に制限されないが、例えば、テルペン単量体の単独重合体又は共重合体が挙げられる。テルペン単量体としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネンなどが挙げられ、これらが単独で用いられていてもよく、併用されていてもよい。
【0063】
テルペンフェノール樹脂としては、特に制限されないが、例えば、テルペン化合物とフェノール類とを従来公知の方法で反応させて製造されたものを挙げることができ、特に限定されないが、テルペン化合物1モルとフェノール類0.1~50モルとを従来公知の方法で反応させて製造されたものを挙げることができる。
【0064】
テルペン化合物としては、特に制限されないが、例えば、ミルセン、アロオシメン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、α-テルピネン、γ-テルピネン、カンフェン、タービノーレン、デルタ-3-カレン等が挙げられる。これらの化合物の中で、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、α-テルピネンが好ましく用いられる。
【0065】
フェノール類としては、特に制限されないが、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられるが、これらに限定はされない。テルペンフェノール樹脂中のフェノール類の比率は、25~50モル%程度であるが、これらに限定はされない。テルペンフェノール樹脂の水酸基価は、50~250程度であるが、これらに限定されない。
【0066】
テルペンフェノール樹脂の軟化点は、100℃以上180以下であることが好ましい。この範囲にすることで、加熱後の剥離性、糊残り性及び質量変化を抑制することができる。
【0067】
脂環族飽和炭化水素樹脂としては、特に制限されないが、例えば、芳香族系(C9系)石油樹脂を部分水素添加または完全水素添加することによって得られる樹脂が挙げられる。
【0068】
ロジンとしては、特に制限されないが、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジンや、天然ロジンを水素化反応させて得られる水素化ロジン等が挙げられる。
【0069】
ロジンエステルとしては、特に制限されないが、例えば、上記ロジンのメチルエステル、トリエチレングリコールエステル、グリセリンエステル等が挙げられる。
【0070】
粘着付与樹脂の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、好ましくは1~20重量%であり、より好ましくは3~15重量%である。粘着付与剤の含有量が上記範囲内であることにより、接着力がより向上し、樹脂組成物の塗布性や硬度がより向上する傾向にある。
【0071】
〔その他の添加剤〕
本実施形態の樹脂組成物には、必要に応じて、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、特に制限されないが、例えば、アクリルゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体等の各種エラストマー、極性有機溶媒、無機フィラー、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤、シランカップリング剤、界面活性剤、発泡剤等の添加剤が挙げられる。
【0072】
〔粘度〕
本実施形態の樹脂組成物は、室温(25℃)において液体状であることが好ましい。樹脂組成物の25℃における粘度は、好ましくは200~10000mPa・sであり、より好ましくは250~5000mPa・sであり、さらに好ましくは300~2500mPa・sである。粘度が200mPa・s以上であることにより、被着体と基材で挟持した樹脂組成物が硬化前に流れ出すことがより抑制され、狙いの厚さの硬化物を作製しやすくなる傾向にある。粘度が10000mPa・s以下であることにより、樹脂組成物の流動性がより向上し、紫外線硬化後に硬化物内部、及び硬化物と基材又は被着体と界面に気泡が残りにくくなる傾向にある。
【0073】
〔紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の紫外線硬化型樹脂組成物の製造方法は、上記各成分を混合する方法であれば特に制限されず、任意の混合機を用いることができる。
【0074】
〔硬化物〕
本実施形態の硬化物は、上記樹脂組成物を紫外線で硬化させてなるものである。上記樹脂組成物は、後述するように、半導体ウェハーの製造方法で用いるバックグラインドテープとして用いるほか、異なる複数の部材を接着する層間接着用樹脂組成物としても用いることができる。
【0075】
〔積層体〕
本実施形態の積層体は、紫外線透過性を有する基材と被着体とを上記樹脂組成物を介して硬化接着させたものである。ここで、「紫外線透過性」とは、波長365nmの紫外線に対し、透過率が50%以上となることを示す。
【0076】
紫外線透過性を有する基材としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、およびポリオレフィン系アイオノマー、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、アイオノマー樹脂を含む基材などが挙げられる。
【0077】
被着体を構成する材質としては、特に制限されないが、例えば、金属、ガラス、樹脂等が挙げられる。
【0078】
積層体は、半導体加工用途に使用されるものであることが好ましい。半導体加工用途としては、特に制限されないが、例えば、上記バックグラインド加工用が挙げられる。この場合、被着体としては、シート状の樹脂が好ましい。そのような樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、軟質ポリプロピレン樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、エチレン-ブタジエン共重合体樹脂、エチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物樹脂、エチレン-1-ブテン共重合体樹脂、軟質アクリル樹脂が挙げられる。このような樹脂シートを用いることにより、バンプへの追従性や剥離性がより向上する傾向にある。
【0079】
上記硬化物及び積層体は、紫外線硬化型樹脂組成物に紫外線を照射することで硬化反応を起こして、作製することができる。特に、積層体の場合には、基材と被着体にて樹脂組成物をはさみ、紫外線透過性を有する基材の方向から樹脂組成物へ紫外線を照射することで、積層体を作製することができる。
【0080】
紫外線の照射条件は、特に制限されない。紫外線の照射エネルギーは、好ましくは200~10000mJ/cm2であり、より好ましくは300~8000mJ/cm2であり、さらに好ましくは500~6000mJ/cm2である。照射エネルギーが200mJ/cm2以上であることにより、樹脂組成物が十分に硬化し、得られる硬化物の硬度と接着力がより向上する傾向にある。また、照射エネルギーが10000mJ/cm2以下であることにより過剰な硬化収縮が抑制され、かえって接着力が低下するような状況が回避される傾向にある。
【0081】
紫外線の照度は、好ましくは15~120mW/cm2であり、より好ましくは30~100mW/cm2である。照度が15mW/cm2以上であることにより、樹脂組成物が十分に硬化し、得られる硬化物の硬度と接着力がより向上する傾向にある。また、照度が120mW/cm2以下であることにより、紫外線照射時に樹脂組成物表面のみで硬化が進行し、内部まで硬化が進行せずに、硬化物の接着力が低くなることが抑制される傾向にある。
【0082】
紫外線照射源としては、特に制限されないが、例えば、重水素ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノン-水銀混成ランプ、ハロゲンランプ、エキシマランプ、インジュームランプ、タリウムランプ、LEDランプ、無電極放電ランプ等公知の紫外線照射源が挙げられる。これらの中では、照射量および照射強度の調整が容易なLEDランプを用いることが好ましい。
【0083】
〔半導体ウェハーの製造方法〕
本実施形態の半導体ウェハーの製造方法は、半導体ウェハーの凸部が設けられた面に被着体を貼り合わせる貼合工程と、被着体と、紫外線透過性を有する基材と、を上記紫外線硬化型樹脂組成物を介して、積層する積層工程と、基材側から紫外線照射することにより、前記紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、前記半導体ウェハーの前記凸部が設けられた前記面と反対側の面を研削する研削工程と、を有する。以下、
図1を参照して、本実施形態の半導体ウェハーの製造方法について説明する。
【0084】
(貼合工程)
貼合工程は、半導体ウェハー20の凸部21が設けられた表面22に被着体11を貼り合わせる工程である。被着体11の貼付方法は特に制限されず、常圧下で半導体ウェハー20の表面22に被着体11を貼り合わせてもよいし、減圧下で貼り合わせてもよい。また、貼合工程においては、被着体11を予め加温した状態で半導体ウェハー20の表面22と貼り合わせてもよいし、被着体11を半導体ウェハー20の表面22と貼り合わせてから、加温してもよい。この際、凸部21に対応して、被着体11の表面11bには、凸部21が転写されたような凸部11cが生じ得る。
【0085】
(積層工程)
積層工程は、被着体11と紫外線透過性を有する基材12とを上記樹脂組成物10を介して積層する工程である。積層工程において、樹脂組成物10を押し広げるように、被着体11と基材12を積層することで、被着体11と基材12の間に樹脂組成物10を任意の形状に充填することができる。これにより、凸部11cが吸収されて平滑な積層体30を得ることができる。
【0086】
(硬化工程)
硬化工程は、基材側から紫外線照射することにより、紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させる工程である。紫外線の照射条件としては特に制限されないが、上述したものと同様の条件を採用することができる。
【0087】
(研削工程)
研削工程は、半導体ウェハー20の凸部21が設けられた表面22と反対側の裏面23を研削する工程である。研削工程においては、半導体ウェハー20の表面22に被着体11と硬化した樹脂組成物10’と基材12との積層体30が密着した状態で、半導体ウェハー20の裏面23が研削される。研削条件は、特に制限されず、従来公知の条件を適用することができる。
【0088】
研削後に積層体30は、半導体ウェハー20の表面22から剥離される。積層体30の剥離は、特に制限されないが、例えば、積層体30が半導体ウェハーから離れる方向に、積層体30を湾曲させることによって行うことができる。この際に、本実施形態の樹脂組成物10を用いた積層体においては、被着体11や基材12と硬化後の樹脂組成物10’との層間剥離が生じにくく、半導体ウェハー20の表面22に残ることを抑制できる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0090】
<実施例1>
(樹脂組成物の調製)
重合性不飽和二重結合を有するオリゴマーとして、ウレタンアクリルオリゴマー(三菱ケミカル社製、「UV3630ID80」、重量平均分子量35000)を固形分換算で23.988重量%、重合性不飽和二重結合を有するモノマーとして、イソデシルアクリレート(大阪有機化学工業社製「IDAA」)5.997重量%、イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製「IBXA」)10.995重量%、ラウリルアクリレート(大阪有機化学工業社製「LA」)12.494重量%、N,N-ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製「DEAA」)31.982重量%、粘着付与剤として、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSポリスターT145」)12.494重量%、酸としてクエン酸(エー・ディー・エム・ジャパン社製「クエン酸無水」、pKa1=3.1)0.050重量%、光重合開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製「Omnirad TPO」)2.000重量%を加え、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR-310」、回転数2000rpm)にて混練し、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。
【0091】
[樹脂組成物の粘度]
調製した樹脂組成物の粘度を25℃においてE型粘度計で測定した。
【0092】
[硬化物の接着力(初期)]
上記のようにして調製した直後の樹脂組成物を、被着体(アイオノマーフィルム)の上に一辺100mmの正方形で厚さ50μmとなるように塗布し、上から紫外線透過性を有する基材(PETフィルム)を樹脂組成物との間に気泡が入らないように載せ、3分間静置した。その後、LEDランプにて、波長365nmの紫外線を基材側から照射強度38mW/cm2、照射量600mJ/cm2で照射し、樹脂組成物を硬化させて、接着力測定用の積層体を作製した。
【0093】
作製した積層体を幅20mmに切断し、被着体側からJIS Z 0237に基づき、温度23℃、相対湿度50%の環境下、速度300mm/分で180度剥離を行い、この時の剥離強度を接着力(初期)とした。なお、得られた剥離強度は、被着体と硬化物の剥離強度、及び、被着体と基材の剥離強度の小さい方の値である。
(評価基準)
A(合格):接着力(初期)が15N/20mm以上
B(合格):接着力(初期)が6N/20mm以上、15N/20mm未満
C(不合格):接着力(初期)が6N/20mm未満
【0094】
[硬化物の接着力(130日保管後)]
上記のようにして調製した樹脂組成物を、ポリエチレン製の黒色遮光容器に、温度23℃、相対湿度50%の環境下で密閉して130日保管した後に、上記硬化物の接着力(初期)と同様の条件により接着力(保管後)の測定を行った。得られた接着力(保管後)に基づいて、下記評価基準で保存安定性を評価した。
(評価基準)
A(合格):接着力(保管後)が15N/20mm以上
B(合格):接着力(保管後)が6N/20mm以上、15N/20mm未満
C(不合格):接着力(保管後)が6N/20mm未満
【0095】
[硬度]
PETフィルムの離型面の上に、一辺25mmの正方形にくり抜いた厚さ2mmのシリコーンシートを乗せ、シリコーンシートのくり抜き部分に調製した樹脂組成物を充填した。その後、離型面が樹脂組成物側を向くように、別のPETフィルムを樹脂組成物との間に気泡が入らないように載せた。次に、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量が、2000mJ/cm2となる条件にて160秒間硬化させ、PETフィルムとシリコーンシートを除去して、厚さ2mmの硬度測定用試験片を作製した。作製した試験片を、JIS K6253に従い、温度23℃、相対湿度50%の環境下、D硬度試験機にて、D硬度を測定し、この値を樹脂組成物の硬度とした。また、得られた硬度に基づいて下記評価基準で硬度を評価した。
(評価基準)
A:硬度が15以上60以下
B:硬度が15未満又は60超過
【0096】
<実施例2>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを23.992重量%、イソデシルアクリレートを5.998重量%、イソボルニルアクリレートを10.996重量%、ラウリルアクリレートを12.496重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.987重量%、テルペンフェノール樹脂を12.496重量%、酸をシュウ酸(富士フィルム和光純薬社製、pKa1=1.3)0.035重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0097】
<実施例3>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを23.993重量%、イソデシルアクリレートを5.998重量%、イソボルニルアクリレートを10.997重量%、ラウリルアクリレートを12.497重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.990重量%、テルペンフェノール樹脂を12.497重量%、酸を塩酸(富士フィルム和光純薬社製、pKa1=-8.0)0.028重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0098】
<実施例4>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを23.991重量%、イソデシルアクリレートを5.998重量%、イソボルニルアクリレートを10.996重量%、ラウリルアクリレートを12.496重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.987重量%、テルペンフェノール樹脂を12.496重量%、酸をギ酸(富士フィルム和光純薬社製、pKa1=3.8)0.036重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0099】
<実施例5>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを23.973重量%、イソデシルアクリレートを5.993重量%、イソボルニルアクリレートを10.988重量%、ラウリルアクリレートを12.486重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.965重量%、テルペンフェノール樹脂を12.486重量%、酸を2-(トリフルオロメチル)アクリル酸(東京化成工業社製、pKa1=2.1)0.109重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0100】
<実施例6>
実施例1のイソデシルアクリレートを5.999重量%、イソボルニルアクリレートを10.999重量%、ラウリルアクリレートを12.499重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.996重量%、テルペンフェノール樹脂を12.499重量%、クエン酸を0.010重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0101】
<実施例7>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを23.881重量%、イソデシルアクリレートを5.970重量%、イソボルニルアクリレートを10.945重量%、ラウリルアクリレートを12.438重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.830重量%、テルペンフェノール樹脂を12.438重量%、クエン酸を0.498重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0102】
<実施例8>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを23.999重量%、イソデシルアクリレートを6.000重量%、イソボルニルアクリレートを11.000重量%、ラウリルアクリレートを12.500重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.998重量%、テルペンフェノール樹脂を12.500重量%、クエン酸を0.003重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0103】
<実施例9>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを23.752重量%、イソデシルアクリレートを5.941重量%、イソボルニルアクリレートを10.891重量%、ラウリルアクリレートを12.376重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.674重量%、テルペンフェノール樹脂を12.376重量%、クエン酸を0.990重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0104】
<比較例1>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを24.000重量%、イソデシルアクリレートを6.000重量%、イソボルニルアクリレートを11.000重量%、ラウリルアクリレートを12.500重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを32.000重量%、テルペンフェノール樹脂を12.500重量%とし、クエン酸を配合しないこと以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0105】
<比較例2>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを23.947重量%、イソデシルアクリレートを5.987重量%、イソボルニルアクリレートを10.976重量%、ラウリルアクリレートを12.473重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.924重量%、テルペンフェノール樹脂を12.473重量%、酸をナフテン酸(富士フィルム和光純薬社製「ナフテン酸」、pKa1=4.8)0.220重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0106】
<比較例3>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを23.987重量%、イソボルニルアクリレートを10.994重量%、ラウリルアクリレートを12.493重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.980重量%、テルペンフェノール樹脂を12.493重量%、酸をアクリル酸(富士フィルム和光純薬社製「アクリル酸」、pKa1=4.4)0.056重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0107】
<比較例4>
実施例1のウレタンアクリルオリゴマーを23.984重量%、イソデシルアクリレートを5.996重量%、イソボルニルアクリレートを10.993重量%、ラウリルアクリレートを12.492重量%、N,N-ジエチルアクリルアミドを31.976重量%、テルペンフェノール樹脂を12.492重量%、酸をメタクリル酸(富士フィルム和光純薬社製「メタクリル酸」、pKa1=4.7)0.067重量%とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0108】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、保存安定性に優れ、低いUV照射量でも十分硬化し、また基材や被着体に対し十分な接着力を発揮する。そのため、紫外線硬化型樹脂組成物及びこれを用いた硬化物や積層体は、半導体バックグラインドテープの凹凸吸収層をはじめ、紫外線による層間接着を行う多くの用途に応用できる。
【符号の説明】
【0110】
10…樹脂組成物、10’…硬化後の樹脂組成物、11…被着体、11a…表面、11b…表面、11c…凸部、12…基材、20…半導体ウェハー、21…凸部、22…表面、23…裏面、30…積層体。