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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】コネクタおよびコネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6593 20110101AFI20230119BHJP
【FI】
H01R13/6593
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019147189
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028870
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前岨 宏芳
(72)【発明者】
【氏名】一尾 敏文
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-228207(JP,A)
【文献】特開2009-37826(JP,A)
【文献】特開2015-162375(JP,A)
【文献】実開平5-90856(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/646 - 13/6599
H01R 24/38 - 24/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の外周をシールド体で覆うケーブルに接続された状態で相手方コネクタと嵌合するコネクタであって、
内導体と、外導体とを備え、
前記内導体は、前記電線の芯線に接続された状態で前記相手方コネクタに設けられた相手方内導体に接続可能とされ、
前記外導体は、大径筒部と、小径筒部と、シールド接続部とを有しており、
前記シールド接続部は、前記シールド体に接続され、
前記大径筒部は、前記相手方コネクタに設けられた筒状の相手方外導体が内部に嵌合可能な筒状に形成され、
前記小径筒部は、前記大径筒部よりも小径の筒状に形成されると共に、前記内導体を収容しているコネクタ。
【請求項2】
前記小径筒部と前記相手方外導体とは、同径に形成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記小径筒部は、前記大径筒部における前記相手方コネクタ側とは反対側の端部に連なっている請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記外導体は、第1外導体と、前記第1外導体に組み付けられる第2外導体とによって構成され、
前記第1外導体は、前記大径筒部と、前記小径筒部とを有し、
前記第2外導体は、前記シールド接続部と、前記小径筒部の外周を覆う覆い部とを有し、
前記覆い部と前記大径筒部とは、同径に形成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記小径筒部は、前記大径筒部とは別体に形成され、前記大径筒部内に配置されている請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記小径筒部は、前記大径筒部とは別体に形成され、
前記小径筒部の一部は、前記大径筒部内に嵌合される請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコネクタと、
前記相手方コネクタと、を備えているコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタおよびコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通信用の信号が伝送されるシールド電線の端末に接続されたシールドコネクタとして、特開2018-6183号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。このシールドコネクタは、雄コネクタとされており、雄型内導体と、誘電体を介して雄型内導体を囲む外導体とを有している。また、雄コネクタは、雌コネクタと嵌合可能とされている。雌コネクタは、雌型内導体と、雌型誘電体を介して雌側内導体を囲む雌側外導体を有している。雄コネクタと雌コネクタとが嵌合する際には、外導体が雌側外導体の外側に嵌合され、外導体と雌側外導体とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-6183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の雄コネクタは、外導体が雌側外導体の外側に嵌合する構成となっているため、外導体と雄型内導体との距離が、雌コネクタにおける雌側外導体と雌型内導体との距離に比べて大きくなっている。したがって、雄コネクタにおけるインピーダンスは、雌コネクタにおけるインピーダンスに比べて高くなり、雄コネクタと雌コネクタと間においてインピーダンスの不整合が生じることが懸念される。
【0005】
本明細書では、互いに嵌合可能なコネクタ間においてインピーダンスの不整合が生じることを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、電線の外周をシールド体で覆うケーブルに接続された状態で相手方コネクタと嵌合するコネクタであって、内導体と、外導体とを備え、前記内導体は、前記電線の芯線に接続された状態で前記相手方コネクタに設けられた相手方内導体に接続可能とされ、前記外導体は、大径筒部と、小径筒部と、シールド接続部とを有しており、前記シールド接続部は、前記シールド体に接続され、前記大径筒部は、前記相手方コネクタに設けられた筒状の相手方外導体が内部に嵌合可能な筒状に形成され、前記小径筒部は、前記大径筒部よりも小径の筒状に形成されると共に、前記内導体を収容している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、互いに嵌合可能なコネクタ間においてインピーダンスの不整合が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1にかかる雄コネクタと雌コネクタとの嵌合前の状態を示す断面図である。
図2図2は、雄コネクタと雌コネクタとの嵌合後の状態を示す断面図である。
図3図3は、雄コネクタの斜視図である。
図4図4は、雄コネクタの分解斜視図である。
図5図5は、第1外導体の斜視図である。
図6図6は、第1外導体の平面図である。
図7図7は、第1外導体の側面図である。
図8図8は、実施形態2にかかる雄コネクタの分解斜視図である。
図9図9は、雄コネクタと雌コネクタとの嵌合後の状態を示す断面図である。
図10図10は、実施形態3にかかる雄コネクタの分解斜視図である。
図11図11は、雄コネクタと雌コネクタとの嵌合後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
(1)電線の外周をシールド体で覆うケーブルに接続された状態で相手方コネクタと嵌合するコネクタであって、内導体と、外導体とを備え、前記内導体は、前記電線の芯線に接続された状態で前記相手方コネクタに設けられた相手方内導体に接続可能とされ、前記外導体は、大径筒部と、小径筒部と、シールド接続部とを有しており、前記シールド接続部は、前記シールド体に接続され、前記大径筒部は、前記相手方コネクタに設けられた筒状の相手方外導体が内部に嵌合可能な筒状に形成され、前記小径筒部は、前記大径筒部よりも小径の筒状に形成されると共に、前記内導体を収容している。
【0010】
大径筒部内に相手方外導体が嵌合されるものの、内導体は大径筒部よりも小径に形成された小径筒部内に収容されているから、相手方外導体と嵌合される大径筒部に比べて、内導体と小径筒部との間の距離を小さくできる。つまり、内導体と小径筒部との間の距離を、相手方内導体と相手方外導体との距離に近づけることにより、相手方コネクタとコネクタとの嵌合後に、相手方コネクタとコネクタとの間においてインピーダンスの不整合が生じることを抑制できる。
【0011】
(2)前記小径筒部と前記相手方外導体とは、同径に形成されている。小径筒部と相手方外導体とが同径とは、小径筒部の径寸法と相手方外導体の径寸法が同一の場合と、小径筒部の径寸法と相手方外導体の径寸法が同一でない場合であっても実質的に同一と認定しうる場合を含む。
小径筒部と相手方外導体とが同径となっているから、相手方コネクタとコネクタとの嵌合後に、相手方コネクタとコネクタとの間においてインピーダンスの不整合が生じることをさらに抑制できる。
【0012】
(3)前記小径筒部は、前記大径筒部における前記相手方コネクタ側とは反対側の端部に連なっている。
大径筒部と小径筒部とが連なって一体となっているから、例えば、大径筒部と小径筒部とが別体に構成される場合に比べて、部品点数を低減できる。これにより、コネクタの組み立て作業性を向上させることができる。
【0013】
(4)前記外導体は、第1外導体と、前記第1外導体に組み付けられる第2外導体とによって構成され、前記第1外導体は、前記大径筒部と、前記小径筒部とを有し、前記第2外導体は、前記シールド接続部と、前記小径筒部の外周を覆う覆い部とを有し、前記覆い部と前記大径筒部とは、同径に形成されている。覆い部と大径筒部とが同径とは、覆い部の径寸法と大径筒部の径寸法が同一の場合と、覆い部の径寸法と大径筒部の径寸法が同一でない場合であっても実質的に同一と認定しうる場合を含む。
【0014】
つまり、大径筒部よりも小径な小径筒部を覆う覆い部と大径筒部とが同径となっているから、例えば、小径筒部が設けられておらず覆い部が大径筒部よりも大径になる場合に比べて、外導体の体格、ひいてはコネクタの体格が大型化することを抑制できる。
【0015】
(5)前記小径筒部は、前記大径筒部とは別体に形成され、前記大径筒部内に配置されている。
大径筒部とは別体の小径筒部を大径筒部内に配置するだけで、内導体と小径筒部との間の距離を小さくできる。これにより、相手方コネクタとコネクタとが嵌合後に、相手方コネクタとコネクタとの間においてインピーダンスの不整合が生じることを抑制できる。
【0016】
(6)前記小径筒部は、前記大径筒部とは別体に形成され、前記小径筒部の一部は、前記大径筒部内に嵌合される。
大径筒部内に相手方外導体と小径筒部の一部とが嵌合することにより、小径筒部と相手方外導体とがほぼ同径となるから、相手方コネクタとコネクタとが嵌合後に、相手方コネクタとコネクタとの間においてインピーダンスの不整合が生じることを抑制できる。
【0017】
(7)本開示のコネクタ装置は、前記コネクタと、前記相手方コネクタと、を備えている。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下の図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
<実施形態>
本開示における一実施形態について図1から図7を参照して説明する。
本実施形態は、例えば、自動車等の車両に搭載され、例えば車両内における車載電装品(カーナビゲーションシステム、ETC、モニタ等)と外部機器(カメラ等)との間や、車載電装品間の有線の通信経路に配される通信用のコネクタ装置1を例示している。
【0020】
[コネクタ装置1]
コネクタ装置1は、図1および図2に示されるように、ケーブル11に接続された状態で互いに嵌合する雌コネクタ(「相手方コネクタ」の一例)110と雄コネクタ(「コネクタ」の一例)10とを備えている。以下の説明においては、上下方向とは図1及び図2における上下方向を基準とし、前後方向については雌コネクタ110と雄コネクタ10の嵌合方向を基準として互いに嵌合する側を前側として説明する。
【0021】
[ケーブル11]
ケーブル11は、図1図2および図4に示されるように、2本の被覆電線(「電線」の一例)12と、被覆電線12の外周を一括して覆う編組体からなるシールド体15と、シールド体15のさらに外周を覆う絶縁性の被覆からなるシース部16とを備えて構成されている。
【0022】
ケーブル11の前端部では、シース部16およびシールド体15が皮剥ぎされて、シース部16およびシールド体15の端末から露出した2本の被覆電線12が露出している。
ケーブル11における露出した被覆電線12の後方では、シース部16の端末から露出したシールド体15が、シース部16の端部上に折り返されている。
【0023】
シース部16の端部上に折り返されたシールド体15の内側には、金属製のスリーブ17が配置されている。スリーブ17は、金属板材を加工することによって円筒状に形成されている。
【0024】
[雌コネクタ110]
雌コネクタ110は、図1および図2に示されるように、ケーブル11の前端部において露出した2本の被覆電線12に接続される複数の雌型内導体(「相手方内導体」の一例)120と、複数の雌型内導体120を収容する雌側誘電体130と、雌側誘電体130を覆った状態でケーブル11のシールド体15に接続される雌側外導体(「相手方外導体」の一例)150と、雌側外導体150を収容する雌側ハウジング180とを備えて構成されている。
【0025】
[雌型内導体120]
雌型内導体120は、導電性を有する金属板材を加工することによって形成されている。雌型内導体120は、図1および図2に示されるように、角筒状の端子接続部122と、端子接続部122の後方に連なる電線接続部124とを備えている。
【0026】
端子接続部122は、後述する雄コネクタ10の内導体20と電気的に接続される。電線接続部124は、被覆電線12の前端部において露出した芯線13および絶縁被覆14に圧着されて被覆電線12に電気的に接続されている。
【0027】
[雌側誘電体130]
雌側誘電体130は、図1および図2に示されるように、絶縁性の合成樹脂によって前後方向に長い直方体状に形成されている。雌側誘電体130は、2つの部材を上下方向に互いに組み合わせることによって形成されている。
雌側誘電体130の内部には、図2および図3に示されるように、被覆電線12に接続された2つの雌型内導体120が左右方向に並んだ状態で収容されている。
【0028】
[雌側外導体150]
雌側外導体150は、導電性を有する金属板材を加工し、2つの部材を組み付けることによって形成されている。
【0029】
雌側外導体150は、図1および図2に示されるように、後述する雄コネクタ10の外導体50と嵌合可能な筒状接続部152と、ケーブル11のシールド体15に接続されるシールド接続部153とを備えている。
【0030】
筒状接続部152は、前後方向に長い角筒状に形成されている。筒状接続部152には、雌側誘電体130が後方から内部に収容可能とされている。筒状接続部152内に雌側誘電体130が収容されると、図1および図2に示されるように、雌型内導体120が雌側誘電体130によって筒状接続部152から電気的に絶縁された状態で収容されるようになっている。
【0031】
シールド接続部153は、雌側外導体150の後端部に形成されている。シールド接続部153は、図1および図2に示されるように、ケーブル11において折り返されたシールド体15の外周に圧着される。これにより、雌側外導体150がシールド体15に電気的に接続されている。
【0032】
[雌側ハウジング180]
雌側ハウジング180は、合成樹脂製であって、図1および図2に示されるように、雌側外導体150を後方から収容する外導体収容部182を有している。
外導体収容部182は、前後方向に貫通して形成されている。外導体収容部182内には、雌側外導体150に設けられたランス孔161Aに嵌まり込むランス183が設けられている。
【0033】
ランス183は、雌側外導体150が外導体収容部182の正規収容位置に収容されると、図1および図2に示されるように、ランス孔161Aに嵌まり込む。したがって、ランス183とランス孔161Aの縁部とが係止することによって雌側外導体150が雌側ハウジング180内に保持されている。
【0034】
[雄コネクタ10]
雄コネクタ10は、図1および図2に示されるように、ケーブル11の前端部において露出した2本の被覆電線12に接続される複数の内導体20と、複数の内導体20を収容する誘電体30と、誘電体30を覆った状態でケーブル11に接続される外導体50と、外導体50を収容するハウジング80とを備えて構成されている。
【0035】
[内導体20]
内導体20は、導電性を有する金属板材を加工することによって雄型の内導体として形成されている。内導体20は、図1図2および図4に示されるように、ピン型の雄型接続部22と、雄型接続部22の後端部に連なる前後に長い直方体型の箱部23と、箱部23の後方に連なる電線接続部24とを備えている。
【0036】
雄型接続部22は、図2に示されるように、雌コネクタ110の雌型内導体120における端子接続部122内に前方から進入することにより雌型内導体120と電気的に接続される。
電線接続部24は、被覆電線12の前端部において露出した芯線13および絶縁被覆14に圧着されて被覆電線12に電気的に接続されている。
【0037】
[誘電体30]
誘電体30は、図4に示されるように、絶縁性の合成樹脂によって前後方向に長い直方体状に形成されている。誘電体30は、ロア誘電体31と、アッパ誘電体32とを上下方向に互いに組み合わせることによって形成されている。
【0038】
誘電体30の内部には、図3に示されるように、被覆電線12に接続された2つの内導体20が左右方向に並んだ状態でロア誘電体31とアッパ誘電体32とによって上下方向両側から挟まれるようにして収容されている。誘電体30内に内導体20が収容されると、誘電体30の前壁から雄型接続部22が突出した状態となる。
【0039】
[外導体50]
外導体50は、雌コネクタ110の雌側外導体150と嵌合接続可能とされている。外導体50は、図1図2および図4に示されるように、誘電体30を内部に収容する第1外導体51と、第1外導体51およびケーブル11のシールド体15の外周を覆うように第1外導体51に組み付けられる第2外導体60とによって構成されている。
【0040】
[第1外導体51]
第1外導体51は、導電性を有する金属板材を加工することによって形成されている。第1外導体51は、図4から図7に示されるように、正面視略矩形の角筒型の接続筒部52と、接続筒部52の下側後端縁に設けられた第1シールド接続部56とを備えている。
【0041】
接続筒部52の前部は、図2に示されるように、雌コネクタ110の雌側外導体150における筒状接続部152が内部に嵌合する大径筒部53とされている。大径筒部53の後端縁部は、後方に向かうほど軸心に向かって傾斜する先細り状の先細部55とされている。接続筒部52の先細部55よりも後方は、大径筒部53と同軸に配置されると共に、大径筒部53よりも一回り小さい小径の小径筒部54とされている。
【0042】
小径筒部54は、図1および図2に示されるように、雌側外導体150の筒状接続部152と同径に形成されている。ここで、小径筒部54と筒状接続部152とが同径とは、小径筒部54と筒状接続部152とが同一径である場合と、小径筒部54と筒状接続部152とが同一径でない場合でも実質的に同一径と見なしうる場合を含んでいる。したがって、接続筒部52は、図1図2図4から図7に示されるように、中央部から後部が前部に比べて全体的に細くなっている。
【0043】
接続筒部52内には、誘電体30が後方から内部に収容可能とされている。接続筒部52内に誘電体30が後方から収容されると、図1および図2に示されるように、内導体20の箱部23よりも後部が誘電体30によって小径筒部54から電気的に絶縁された状態で収容される共に、雄型接続部22が誘電体30から突出した状態で大径筒部53内に配置される。
【0044】
また、接続筒部52内に誘電体30が後方から収容されると、図2に示されるように、小径筒部54と箱部23との間の距離L1は、大径筒部53と雄型接続部22との間の距離よりも小さく、かつ雌型内導体120における端子接続部122と雌側外導体150との間の距離L2と同一となっている。ここで、距離L1と距離L2とが同一とは、距離L1と距離L2とが同一である場合と、距離L1と距離L2とが同一でない場合でも実質的に同一と見なしうる場合を含んでいる。
【0045】
第1シールド接続部56は、接続筒部52の下側下端部から後方に向かって延びる板状に形成されている。第1シールド接続部56は、図1および図2に示されるように、ケーブル11におけるシールド体15の下方に配置される。
【0046】
[第2外導体60]
第2外導体60は、導電性を有する金属板材をプレスなどによって加工することによって形成されている。第2外導体60は、図1図2および図4に示されるように、小径筒部54の外周に組み付けられる覆い部61と、シールド体15の外周に圧着あれる第2シールド接続部63と、覆い部61と第2シールド接続部63とを繋ぐ繋ぎ部62とを備えている。
【0047】
覆い部61は、小径筒部54の外周面を囲うように小径筒部54の外周面に巻き付けられている。覆い部61は、小径筒部54の外周面に組み付けられると、図1および図2に示されるように、大径筒部53と同径の大きさに形成される。ここで、覆い部61と大径筒部53とが同径とは、覆い部61と大径筒部53とが同一径の場合と、覆い部61と大径筒部53とが同一径でない場合でも実質的に同一径と見なしうる場合を含んでいる。覆い部61の上部には、後述するハウジング80の端子係止部83が嵌まり込む貫通孔61Aが覆い部61を上下方向に貫通して形成されている。
【0048】
第2シールド接続部63は、図1および図2に示されるように、ケーブル11において折り返されたシールド体15の外周に圧着されることによりシールド体15に電気的に接続固定される。つまり、第2シールド接続部63は、第1シールド接続部56と共に、ケーブル11のシールド体15に接続されるシールド接続部57として構成される。
【0049】
第2シールド接続部63は、シールド体15の上半分を覆う円筒状の上板64と、上板64の左右方向両側の側縁に設けられた複数の圧着片65とを備えている。複数の圧着片65は、第2外導体60が第1外導体51に組み付けられる前の状態では、図4に示されるように、上板64の左右方向両側の側縁から互いに離れるように斜め下方向に向かって真っ直ぐ延出されている。複数の圧着片65は、第2外導体60が第1外導体51に組み付けられると、複数の圧着片65が図1および図2に示されるように、シールド体15の下方に配置された第1シールド接続部56と共にシールド体15に巻き付くように圧着固定される。
【0050】
[ハウジング80]
ハウジング80は、合成樹脂製であって、外導体50を後方から収容する収容部82を有している。
収容部82は、図1から図4に示されるように、前後方向に貫通して形成されている。収容部82内には、覆い部61に設けられた貫通孔61Aに嵌まり込む端子係止部83が設けられている。
【0051】
端子係止部83は、外導体50が収容部82の正規収容位置に収容されると、図1および図2に示されるように、貫通孔61Aに嵌まり込む。したがって、端子係止部83と貫通孔61Aの縁部とが係止することによって外導体50がハウジング80内に保持されている。
【0052】
本実施形態は、以上のような構成であって、続いて、雄コネクタ10の作用および効果について説明する。
例えば、従来型のコネクタ装置において、雌コネクタの雌型内導体を収容する筒状の雌側外導体を、雄コネクタの内導体を収容する筒状の外導体内に嵌合させる場合、外導体が雌側外導体の外側に嵌合する構成となる。したがって、雄コネクタにおける外導体と内導体との距離が、雌コネクタにおける雌側外導体と雌型内導体との距離に比べて大きくなる。
【0053】
すると、雄コネクタと雌コネクタとの嵌合後は、雄型コネクタにおけるインピーダンスが、雌型コネクタにおけるインピーダンスに比べて高くなり、雄型コネクタと雌型コネクタと間においてインピーダンスの不整合が生じることが懸念される。
【0054】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、本実施形態の構成を見出した。すなわち、本実施形態は、被覆電線(電線)12の外周をシールド体15で覆うケーブル11に接続された状態で雌コネクタ(相手方コネクタ)110と嵌合する雄コネクタ(コネクタ)10であって、内導体20と、外導体50とを備えている。内導体20は、被覆電線12の芯線13に接続された状態で雌コネクタに設けられた雌型内導体(相手方内導体)120に接続可能とされている。外導体50は、大径筒部53と、小径筒部54と、シールド接続部57とを有しており、シールド接続部57は、シールド体15に接続される。大径筒部53は、図1および図2に示されるように、雌コネクタ110に設けられた筒状の雌側外導体(相手方外導体)150が内部に嵌合可能な筒状に形成され、小径筒部54は、大径筒部53よりも小径の筒状に形成されると共に、内導体を収容している。
【0055】
大径筒部53内に雌側外導体150が嵌合されるものの、内導体20は大径筒部53よりも小径に形成された小径筒部54内に収容されているから、雌側外導体150が内部に嵌合される大径筒部53に比べて、内導体20と小径筒部54との間の距離を小さくできる。つまり、内導体20と小径筒部54との間の距離を、雌型内導体120と雌側外導体150との間の距離に近づけることができ、雌コネクタ110と雄コネクタ10との嵌合後に、雌コネクタ110と雄コネクタ10との間においてインピーダンスの不整合が生じることを抑制できる。
【0056】
小径筒部54と雌側外導体150とは、同径に形成されている。小径筒部54と雌側外導体150とが同径となっているから、内導体20と小径筒部54との間の距離と、雌型内導体120と雌側外導体150との間の距離とを同じにすることができる。これにより、雌コネクタ110と雄コネクタ10との嵌合後に、雌コネクタ110と雄コネクタ10との間においてインピーダンスの不整合が生じることをさらに抑制できる。
【0057】
小径筒部54は、大径筒部53における雌コネクタ110側とは反対側の後端部に連なっている。大径筒部53と小径筒部54とが連なって一体となっているから、例えば、大径筒部と小径筒部とが別体に構成される場合に比べて、部品点数を低減できる。これにより、雄コネクタの組み立て作業性を向上させることができる。
【0058】
外導体50は、第1外導体51と、第1外導体51に組み付けられる第2外導体60とによって構成され、第1外導体51は、大径筒部53と、小径筒部54とを有し、第2外導体60は、シールド接続部57と、小径筒部54の外周を覆う覆い部61とを有し、覆い部61と大径筒部53とは、同径に形成されている。
【0059】
大径筒部53よりも小径な小径筒部54を覆う覆い部61と大径筒部53とが同径となっているから、例えば、小径筒部が設けられておらず覆い部が大径筒部よりも大径になる場合に比べて、外導体50の体格、ひいては雄コネクタ10の体格が大型化することを抑制できる。
【0060】
<実施形態2>
次に、実施形態2について図8および図9を参照して説明する。
実施形態2における雄コネクタ210の外導体250は、実施形態1における第1外導体51の形状を変更すると共に、第3外導体270を有するものであって、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0061】
実施形態2の外導体250は、図8および図9に示されるように、誘電体30を内部に収容する第1外導体251と、第1外導体251およびケーブル11のシールド体15の外周を覆うように第1外導体251に組み付けられる第2外導体260と、第1外導体251と誘電体30との間に配置される別体の第3外導体270とを備えている。
【0062】
第1外導体251は、角筒型の接続筒部252と、接続筒部252の下側後端縁に設けられた第1シールド接続部56とを備えている。
接続筒部252は、前後方向に全長にわたって同径に形成されている。接続筒部252の前部は、図9に示されるように、雌コネクタ110の雌側外導体150における筒状接続部152が内部に嵌合可能とされている。つまり、外導体250における接続筒部252は、雌側外導体150における筒状接続部152よりも大径の大径筒部253として形成されている。
【0063】
第2外導体260は、覆い部261の形状の一部が、実施形態1の覆い部61とやや異なるものの、構成はほぼ同じであるため、説明を省略する。
【0064】
第3外導体270は、図8に示されるように、導電性を有する金属板材を加工することによって前後方向に貫通する角筒型に形成されている。第3外導体270は、第1外導体251における接続筒部252内に後方から収容可能とされている。第3外導体270は、図9に示されるように、雌側外導体150における筒状接続部152と同径に形成されると共に、内部に誘電体30が後方から収容可能となっている。
【0065】
第3外導体270内に誘電体30が収容されると、図9に示されるように、第3外導体270と内導体20における箱部23との間の距離L21は、接続筒部252と雄型接続部22との間の距離よりも小さく、かつ雌型内導体120における端子接続部122と雌側外導体150との間の距離L2と同一となっている。したがって、実施形態2では、第3外導体270が、外導体250の小径筒部254として形成されている。
【0066】
つまり、実施形態2では、大径筒部353を構成する第1外導体251の接続筒部252内に小径筒部254を構成する第3外導体270を収容しているから、接続筒部252である内に雌側外導体150が嵌合されるものの、内導体20と第3外導体270との間の距離を小さくできるようになっている。これにより、雌コネクタ110と雄コネクタ210との嵌合後に、雌コネクタ110と雄コネクタ210との間においてインピーダンスの不整合が生じることを抑制できるようになっている。
【0067】
<実施形態3>
次に、実施形態3について図10および図11を参照して説明する。
実施形態3における雄コネクタ310の外導体350は、実施形態1における第1外導体51の形状を変更すると共に、第3外導体370を有するものであって、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0068】
実施形態3の外導体350は、図10および図11に示されるように、誘電体30を内部に収容する第1外導体351と、実施形態1における第2外導体60と、第1外導体351の前端部が内部に嵌合される別体の第3外導体370とを備えている。
【0069】
第1外導体351は、角筒型の接続筒部352と、接続筒部352の下側後端縁に設けられた第1シールド接続部56とを備えている。
接続筒部352は、実施形態1のおける接続筒部52によりも短く形成されると共に、前後方向に全長にわたって雌側外導体150における筒状接続部152と同径に形成されている。接続筒部352の内部には、誘電体30が後方から収容可能となっている。誘電体30が接続筒部352内に収容されると、図11に示されるように、接続筒部352と内導体20における箱部23との間の距離L31は、雌型内導体120における端子接続部122と雌側外導体150との間の距離L2と同一となっている。したがって、実施形態3では、第1外導体351の接続筒部352が、外導体350の小径筒部354として形成されている。
【0070】
第2外導体60は、第1外導体351およびケーブル11のシールド体15の外周を覆うように第1外導体351に組み付けられる。
【0071】
第3外導体370は、図10に示されるように、導電性を有する金属板材を加工することによって前後方向に貫通する角筒型に形成されている。第3外導体370における後端部の内側には、図11に示されるように、第1外導体351における接続筒部352の前端部(一部)が後方から嵌合可能とされている。一方、第3外導体370内の接続筒部352よりも前方には、雌側外導体150における筒状接続部152が前方から嵌合可能とされている。つまり、第3外導体370は、外導体350の大径筒部353として形成されている。また、第3外導体370は、図11に示されるように、接続筒部352の外周に配置される第2外導体60の覆い部61と同径に形成されている。
【0072】
したがって、雄コネクタ310と雌コネクタ110とが嵌合されると、図11に示されるように、外導体350における第3外導体370内において接続筒部352と雌側外導体150の筒状接続部152とが前後方向に突き合わされた状態となる。
【0073】
つまり、実施形態3では、大径筒部353を構成する外導体350の第3外導体370内に、内導体20を収容する小径筒部354と雌側外導体150とが嵌合されることにより、小径筒部354と雌側外導体150とがほぼ同径となる。すなわち、内導体20と接続筒部352との間の距離L31と、端子接続部122と雌側外導体150との間の距離L2とをほぼ同一にすることができ、雌コネクタ110と雄コネクタ310との嵌合後に、雌コネクタ110と雄コネクタ310との間においてインピーダンスの不整合が生じることを抑制できるようになっている。
【0074】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、雄コネクタ10,210,310における大径筒部53,253,353内に雌コネクタ110の筒状接続部152が嵌合される構成とした。しかしながら、これに限らず、雌コネクタの雌側外導体が大径筒部と小径筒部とを有し、雄コネクタの外導体が雌側外導体の大径筒部に嵌合される構成してもよい。
【0075】
(2)上記実施形態では、上記実施形態では、雄コネクタ10,210,310は、2本の被覆電線12を有するケーブル11に接続される構成とした。しかしながら、これに限らず、1本の芯線が絶縁樹脂によって覆われた同軸ケーブルにコネクタが接続される構成であってもよい。
【0076】
(3)上記実施形態1および3では、大径筒部53、353と覆い部61とを同径に構成した。しかしながら、これに限らず、覆い部は大径筒部よりも小径や大径に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1: コネクタ装置
10,210,310: 雄コネクタ(「コネクタ」の一例)
11: ケーブル
12: 被覆電線(「電線」の一例)
13: 芯線
14: 絶縁被覆
15: シールド体
16: シース部
17: スリーブ
20: 内導体
22: 雄型接続部
23: 箱部
24: 電線接続部
30: 誘電体
31: ロア誘電体
32: アッパ誘電体
50,250,350: 外導体
51,251,351: 第1外導体
52,252,352: 接続筒部
53,253,353: 大径筒部
54,254,354: 小径筒部
55: 先細部
56: 第1シールド接続部
57: シールド接続部
60,260: 第2外導体
61,261: 覆い部
61A: 貫通孔
62: 繋ぎ部
63: 第2シールド接続部
64: 上板
65: 圧着片
80: ハウジング
82: 収容部
83: 端子係止部
110: 雌コネクタ(「相手方コネクタ」の一例)
120: 雌型内導体(「相手方内導体」の一例)
122: 端子接続部
124: 電線接続部
130: 雌側誘電体
150: 雌側外導体(「相手方外導体」の一例)
152: 筒状接続部
153: シールド接続部
161A: ランス孔
180: 雌側ハウジング
182: 外導体収容部
183: ランス
270,370: 第3外導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11