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特許7212859撥水性コーティング用組成物、およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】撥水性コーティング用組成物、およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/08 20060101AFI20230119BHJP
   C09D 185/04 20060101ALI20230119BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230119BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230119BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230119BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C09D183/08
C09D185/04
C09D5/00 Z
C09D7/61
C09D7/63
C09D163/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019035840
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020139066
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 三昌
(72)【発明者】
【氏名】原 麻衣子
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/044521(WO,A1)
【文献】特開平11-286651(JP,A)
【文献】特開2002-348542(JP,A)
【文献】特開平05-005082(JP,A)
【文献】特開2011-190220(JP,A)
【文献】特開2002-88313(JP,A)
【文献】国際公開第2006/129695(WO,A1)
【文献】特表2011-516715(JP,A)
【文献】特開2019-137805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
B05D 1/00- 7/26
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する、撥水性コーティング用組成物であって、(c)成分の化合物の合計質量が、全ケイ素化合物の合計100質量部に対して、0.05~1.67質量部である、上記撥水性コーティング用組成物
(a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4-n-Si-(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす);
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物;
(c)下記(c1)から(c)からなる群から選択される、少なくとも1種のケイ素化合物
(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン、
(c2)1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン((c1)に該当するものを除く。)、
(c3)1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン((c1)又は(c2)に該当するものを除く。)。
【請求項2】
(a)成分と(b)成分とが、高分子構造を有する反応生成物を形成可能である、請求項1に記載の撥水性コーティング用組成物。
【請求項3】
前記高分子構造における、(a)成分から導かれる構成単位と(b)成分から導かれる構成単位との比率が、(a)成分から導かれる構成単位1モルに対して(b)成分から導かれる構成単位0.02モル以上である、請求項2に記載の撥水性コーティング用組成物。
【請求項4】
前記反応生成物が、前記高分子構造が(c)成分のケイ素化合物によって変性された構造を有する、請求項2又は3に記載の撥水性コーティング用組成物。
【請求項5】
更に(d)金属アルコキシド(フッ素含有アルコキシシランに該当するものを除く)を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の撥水性コーティング用組成物。
【請求項6】
更に(e)エポキシ樹脂を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の撥水性コーティング用組成物。
【請求項7】
更に有機溶媒を含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の撥水性コーティング用組成物。
【請求項8】
更に界面活性剤を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の撥水性コーティング用組成物。
【請求項9】
下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を反応させる工程を有する、撥水性コーティング層の製造方法であって、(c)成分の化合物の合計質量が、全ケイ素化合物の合計100質量部に対して、0.05~1.67質量部である、上記撥水性コーティング層の製造方法
(a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4-n-Si-(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす);
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物;
(c)下記(c1)から(c)からなる群から選択される、少なくとも1種の化合物
(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン、
(c2)1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン((c1)に該当するものを除く。)、
(c3)1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びメトキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン((c1)又は(c2)に該当するものを除く。)。
【請求項10】
前記工程において、(a)成分1モルに対して、(b)成分0.02モル以上の比率で反応させる、請求項9に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
【請求項11】
前記工程において、まず(a)成分と(b)成分とを反応させて高分子物質を形成し、次いで該高分子物質を(c)成分と反応させる、請求項9又は10に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
【請求項12】
前記工程において、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分が、更に(d)金属アルコキシド(フッ素含有アルコキシシランに該当するものを除く)とも反応する、請求項9から11のいずれか一項に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
【請求項13】
前記工程において、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分が、更に(e)エポキシ樹脂とも反応する、請求項9から12のいずれか一項に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
【請求項14】
界面活性剤の存在下で実施される、請求項9から13のいずれか一項に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
【請求項15】
有機溶媒中で実施される、請求項9から14のいずれか一項に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
【請求項16】
請求項1から8のいずれか一項に記載の撥水性コーティング用組成物を塗布する工程を有する、撥水性コーティング層の製造方法。
【請求項17】
金属基板、ガラス基板、木材、又はセラミック基板上に撥水性コーティング層を形成する、請求項9から16に記載の、撥水性コーティング層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基を有する有機シラン化合物、ホウ素化合物、及び特定のケイ素化合物を含む、撥水性コーティング用組成物、並びに撥水性コーティング層の製造方法、並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
有機シラン化合物とホウ素化合物とを反応させて得られる高分子物質は、無機材料の長所と有機材料の長所とを両立させることが可能であり、より具体的には高い硬度、割れの防止、透明性、耐熱性、耐薬品性等を用途に応じて適宜具備する設計が可能であるため、コーティング材、塗料、接着剤、ガラス基材、フィラー等の各種用途に応用されている。
【0003】
特に、アミノ基を有する有機シラン化合物と特定のホウ素化合物とを反応させて得られる高分子物質は、ゾル・ゲル法などで必要とされる加水分解などの複雑な工程を要せず、比較的短時間で形成可能であり、一液常温硬化性の材料に適用可能であるなどの優れた性質を有する(例えば、特許文献1参照。)。
また、上記アミノ基を有する有機シラン化合物と特定のホウ素化合物に対して、更に金属アルコキシド及びリチウムを組み合わせることで、常温常湿下での乾燥でも、ハードコート特性が良く、かつ金属への密着性の良い被膜が得られることが報告されており、金属のみならず、ガラス、セラミック、プラスチック等へのコーティング剤としての応用が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
コーティングの具体的な用途によっては、撥水性が重要となる場合がある。例えば、建築外装材や、自動車塗装等の外気に暴露される部材のコーティングにおいては、結露により生じた水滴等が空気中に浮遊する塵埃等を吸着することで生ずる汚れや外観不良を防止するため、硬化後のコーティングにおける撥水性の更なる向上が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2006/129695号
【文献】特開2011-26473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の撥水性に対する強い要求、及び従来技術の限界に鑑み、本発明は、アミノ基を有する有機シラン化合物とホウ素化合物とを含有するコーティング用組成物であって、高い硬度等の優れた諸特性を維持しながら、硬化後のコーティングの撥水性を大幅に向上することができるコーティング用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、アミノ基を有する有機シラン化合物と特定の構造を有するホウ素化合物との組み合わせに対して、更に特定の構造を有するケイ素化合物を組み合わせることで、硬化後のコーティングの高い硬度等を維持しながら、コーティングの撥水性を大幅に向上することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する、撥水性コーティング用組成物、に関する。
(a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4-n-Si-(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす);
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物;
(c)下記(c1)から(c4)からなる群から選択される、少なくとも1種のケイ素化合物
(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン、
(c2)1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン((c1)に該当するものを除く。)、
(c3)1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン((c1)又は(c2)に該当するものを除く。)、
(c4)フッ素含有アルコキシシラン
【0008】
また、下記[2]から[17]は、いずれも本発明の好ましい一態様又は一実施形態である。
[2]
(a)成分と(b)成分とが、高分子構造を有する反応生成物を形成可能である、[1]に記載の撥水性コーティング用組成物。
[3]
前記高分子構造における、(a)成分から導かれる構成単位と(b)成分から導かれる構成単位との比率が、(a)成分から導かれる構成単位1モルに対して(b)成分から導かれる構成単位0.02モル以上である、[2]に記載の撥水性コーティング用組成物。
[4]
前記反応生成物が、前記高分子構造が(c)成分のケイ素化合物によって変性された構造を有する、[2]又は[3]に記載の撥水性コーティング用組成物。
[5]
更に(d)金属アルコキシド((c4)成分に該当するものを除く)を含有する、[1]から[4]のいずれか一項に記載の撥水性コーティング用組成物。
[6]
更に(e)エポキシ樹脂を含有する、[1]から[5]のいずれか一項に記載の撥水性コーティング用組成物。
[7]
更に有機溶媒を含有する、[1]から[6]のいずれか一項に記載の撥水性コーティング用組成物。
[8]
更に界面活性剤を含有する、[1]から[7]のいずれか一項に記載の撥水性コーティング用組成物。
[9]
下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を反応させる工程を有する、撥水性コーティング層の製造方法:
(a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4-n-Si-(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす);
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物;
(c)下記(c1)から(c4)からなる群から選択される、少なくとも1種の化合物
(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン、
(c2)1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン((c1)に該当するものを除く。)、
(c3)1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びメトキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン((c1)又は(c2)に該当するものを除く。)、
(c4)フッ素含有アルコキシシラン。
[10]
前記工程において、(a)成分1モルに対して、(b)成分0.02モル以上の比率で反応させる、[9]に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
[11]
前記工程において、まず(a)成分と(b)成分とを反応させて高分子物質を形成し、次いで該高分子物質を(c)成分と反応させる、[9]又は[10]に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
[12]
前記工程において、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分が、更に(d)金属アルコキシド((c4)成分に該当するものを除く)とも反応する、[9]から[11]のいずれか一項に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
[13]
前記工程において、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分が、更に(e)エポキシ樹脂とも反応する、[9]から[12]のいずれか一項に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
[14]
界面活性剤の存在下で実施される、[9]から[13]のいずれか一項に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
[15]
有機溶媒中で実施される、[9]から[14]のいずれか一項に記載の撥水性コーティング層の製造方法。
[16]
[1]から[8]のいずれか一項に記載の撥水性コーティング用組成物を塗布する工程を有する、撥水性コーティング層の製造方法。
[17]
金属基板、ガラス基板、木材、又はセラミック基板上に撥水性コーティング層を形成する、[16]に記載の、撥水性コーティング層の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い硬度等の優れた諸特性を維持しながら、硬化後のコーティングの撥水性を大幅に向上することができる撥水性コーティング用組成物、及び撥水性コーティング用組成物の製造方法が提供される。
当該コーティング用組成物は、有機シラン化合物とホウ素化合物とを反応させて得られる高分子物質に由来する高い硬度等の優れた特性と、良好な外観の維持等のために重要な高い撥水性とを両立することができるので、建築外装材や、自動車塗装等の外気に暴露される部材のコーティングにおいて、特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する、撥水性コーティング用組成物である。
(a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4-n-Si-(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす)。
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物。
(c)特定の構造を有する、少なくとも1種のケイ素化合物。ここで、少なくとも1種のケイ素化合物(c)は、下記(c1)から(c4)からなる群から選択される。
(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン、
(c2)1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン((c1)に該当するものを除く。)、
(c3)1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン((c1)又は(c2)に該当するものを除く。)
(c4)フッ素含有アルコキシシラン。
【0011】
すなわち本発明の撥水性コーティング用組成物は、上記(a)成分(アミノ基を含むシラン化合物)、(b)成分(ホウ素化合物)、及び(c)(特定の化学構造を有するケイ素化合物)成分を含有する組成物である。本発明の撥水性コーティング組成物を硬化させて得られる撥水性コーティング層は、通常、これら(a)から(c)成分を反応させ得られる化学構造を、その少なくとも一部に含む化合物を含有する。また、本発明の撥水性コーティング用組成物は、硬化前においても(a)から(c)成分が一部反応していてもよく、(a)から(c)成分の反応生成物を一部含有していてもよい。
上述の(a)成分(アミノ基を含むシラン化合物)、(b)成分(ホウ素化合物)、及び(c)成分(特定の化学構造を有するケイ素化合物)を反応させて得られる化学構造は、多くの場合、高分子構造を形成する。典型的には、(b)ホウ素化合物が、(a)アミノ基を含むシラン化合物中のアミノ基を介して架橋剤として働き、これらの成分を高分子化させて、(b)ホウ素化合物から導かれる構成単位と(b)ホウ素化合物から導かれる構成単位とを有する高分子構造が形成される。
すなわち、この好ましい実施形態の撥水性コーティング用組成物は、(a)成分と(b)成分とが、典型的には10~50℃の条件下で、高分子構造を有する反応生成物を形成可能な組み合わせとなっている。すなわち当該反応生成物は、(a)成分から導かれる構成単位、と(b)成分から導かれる構成単位とを有する高分子構造を有するものである。この高分子構造においては、(a)成分から導かれる構成単位と(b)成分から導かれる構成単位との比率が、(a)成分から導かれる構成単位1モルに対して(b)成分から導かれる構成単位0.02モル以上であることが好ましい。
【0012】
またこの実施形態においては、(a)成分から導かれる構成単位、と(b)成分から導かれる構成単位とを有する高分子構造が(c)成分のケイ素化合物によって変性された構造を有することが好ましい。しかし、上記反応生成物がそれ以外の構造、例えば(c)成分のケイ素化合物から導かれる構成単位が、(a)成分から導かれる構成単位、と(b)成分から導かれる構成単位とを有する高分子構造に取り込まれた構造を有していてもよい。
【0013】
(a)アミノ基を含むシラン化合物
(a)成分は、以下の式で表わされる特定の構造を有する、アミノ基を含むシラン化合物である。
4-n-Si-(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす。)
【0014】
ここで、Rはアミノ基含有の有機基を表わすが、たとえば、モノアミノメチル、ジアミノメチル、トリアミノメチル、モノアミノエチル、ジアミノエチル、トリアミノエチル、モノアミノプロピル、ジアミノプロピル、トリアミノプロピル、モノアミノブチル、ジアミノブチル、トリアミノブチル、及びこれらよりも炭素数の多いアルキル基またはアリール基を有する有機基を挙げることができるが、それらに限定されない。γ―アミノプロピルや、アミノエチルアミノプロピルが特に好ましく、γ―アミノプロピルが最も好ましい。
【0015】
(a)成分中のR’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わす。その中でも、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0016】
(a)成分中のnは1~3から選択される整数を表わす。その中でも、nは2~3であるのが好ましく、nは3であるのが特に好ましい。
すなわち、(a)成分としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0017】
(b)ホウ素化合物
(b)成分は、HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物である。(b)成分は、好ましくは、HBOである。
【0018】
(a)成分と(b)成分との反応における両成分の使用量は、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル以上の比率であることが好ましく、より好ましくは、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル~8モルの比率、更に好ましくは、0.02モル~5モルの比率である。
(a)成分1モルに対し、(b)成分が0.02モル以上であることで、固化に要する時間が過度に長くなったり、充分に固化しなかったりする等の問題を効果的に抑制できる。また、(a)成分1モルに対し(b)成分が8モル以下であることで、(b)成分が(a)成分に溶解せず残ってしまう等の問題を効果的に抑制できる。
【0019】
(a)アミノ基を含むシラン化合物と(b)ホウ素化合物とを反応させる際の混合条件(温度、混合時間、混合方法など)は、適宜選択することができる。通常の室温条件では、数分から数十分で透明で粘稠な液体となり、固化する。固化する時間や得られる反応生成物の粘度や剛性はホウ素化合物の割合でも異なるため、得るべき反応生成物の物性や使用目的に応じて、これらの条件を適宜調節することが好ましい。
【0020】
前記ホウ素化合物(b)は、好ましくは、炭素数1~7のアルコールに溶解したホウ素化合物アルコール溶液の形態で用いることができる。炭素数1~7のアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、各種プロピルアルコール、各種ブチルアルコール、及びグリセリンなどが挙げられるが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。当該アルコール溶液を使用することにより、(b)成分を(a)成分に溶解する時間を短縮できる。なお、取り扱い上アルコール中のホウ素化合物の濃度は高いほうが好ましい。
【0021】
前記反応生成物は、水を添加して加水分解する工程を経ないで(a)成分と(b)成分を反応させて得られる反応生成物であることが好ましい。このとき、水を添加して加水分解する工程を要さないため、ゾル・ゲル形成等の複雑な工程を要せず、しかも、長時間を要することなく、上記反応生成物を製造することができる。
【0022】
(c)ケイ素化合物
本発明の撥水性コーティング用組成物が含有する特定のケイ素化合物(c)は、(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン、(c2)1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン、(c3)1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン、及び(c4)フッ素含有アルコキシシランからなる群から選択される、少なくとも1種のケイ素化合物である。
上記特定のケイ素化合物(c)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合は、いずれも上記(c1)、(c2)、(c3)、又は(c4)のうち同一の分類に該当するもの2種以上を使用してもよいし、それぞれ異なる分類に該当するもの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明においては、上記特定のケイ素化合物(c)を、(a)アミノ基を含むシラン化合物及び(b)ホウ素化合物と組み合わせて使用することで、(a)成分と(b)成分との反応生成物が具備する高い硬度等の優れた諸特性を維持しながら、硬化後のコーティングの撥水性を大幅に向上できるという顕著な効果が実現される。
【0024】
(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン
(c1)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個含有するものである。
(c1)成分は、オルガノポリシロキサンであること、すなわちポリシロキサン骨格に有機基が結合した構造を有し、かつ、ケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有していればよく、それ以外の条件は存在しないが、例えば、下記一般式で示される構造を有するものを、好ましく用いることができる。
【化1】

上記一般式中、Rは同一又は異種の、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、Xは同一又は異種の、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基、又はヒドロキシル基であり、Yは、X又は-[O-Si(X)2c-Xで示される同一又は異種の基であり、X及びYのうち少なくとも1個はヒドロキシル基である。aは0~1000の正の数、bは100~10000の正の数、cは1~1,000の正の数である。
【0025】
上記Rの好ましい具体的例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニル、トリル、ナフチル基等が挙げられるが、好ましくはメチル基である。
【0026】
上記Xの好ましい具体的例として、ヒドロキシル基以外に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニル、トリル、ナフチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、テトラデシルオキシ基などが挙げられる。
【0027】
aが1000以下であることで、得られる皮膜の強度を向上させることができるので、aは0~1000の正の数、好ましくは0~200の正の数とすることができる。bが100以上であることで、皮膜の柔軟性を向上させることができ、10000以下であることで、皮膜の引き裂き強度を維持できるので、bは100~10000の正の数、好ましくは1000~5000の正の数とすることができる。
また、X及びYうち少なくとも1個がヒドロキシル基であることから、1分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合するヒドロキシル基(「シラノール基)ともいう)を有することになる。
【0028】
1分子中に1個のシラノール基(上記一般式中のXに位置するもの)を有するとき、化合物(c1)を「片末端シラノール変性オルガノポリシロキサン」とも呼び、1分子中に2個のシラノール基(いずれも上記一般式中のXに位置するもの)を有するとき、化合物(c1)を「両末端シラノール変性オルガノポリシロキサン」とも呼ぶ。
「片末端シラノール変性オルガノポリシロキサン」は、1分子中に1個のシラノール基を有するので、当該シラノール基が、他の成分の反応生成物等の親水性基と反応することで、親水性基を減少させることができる。「両末端シラノール変性オルガノポリシロキサン」は、1分子中に2個のシラノール基を有するので、当該シラノール基が、それぞれ他の成分の反応生成物等の親水性基と反応することで、親水性基を減少させたり、架橋や鎖長延長により該反応生成物の構造や物性を変更したりすることができる。従って、(a)成分及び(b)成分等と化合物(c1)とを反応させる場合には、所望の反応生成物の構造に応じて、「片末端シラノール変性オルガノポリシロキサン」又は「両末端シラノール変性オルガノポリシロキサン」を選択し、あるいは両者を適切な比率で組み合わせて使用することができる。更に、1分子中に3個以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン及び/又は上記一般式中のYに位置するシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(いわゆる「側鎖型」)を適宜選択し、あるいは片末端シラノール変性オルガノポリシロキサン及び/又は両末端シラノール変性オルガノポリシロキサンと適宜組み合わせて、使用することもできる。
【0029】
両末端シラノール変性オルガノポリシロキサンの具体例としては、以下の構造を有するものを挙げることができる。
【化2】
上記式中、a、b、及びcは上記で説明したものと同じである。
【0030】
商業的に入手可能な両末端シラノール変性オルガノポリシロキサンの具体例としては、製品名:KF-9701、X-22-5841等の化合物(いずれも、信越化学工業株式会社製)、製品名:YF3800、XC96-723等の化合物(いずれも、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、製品名:DMS-S15、DMS-S14、DMS-S12、DMS-1615等の化合物(いずれも、ゲレスト社製)などが挙げられる。
【0031】
片末端シラノール変性オルガノポリシロキサンの具体例としては、上記の構造中のヒドロキシル基の一方が、アルキル基、アリール基等で置き換えられた構造を有するものを挙げることができる。
【0032】
このようなオルガノポリシロキサンは、公知の方法によって合成することができる。例えば、金属水酸化物のような触媒存在下にオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンとα,ω-ジヒドロキシシロキサンオリゴマー等を平衡化反応させることにより得られる。また、この(c1)成分はエマルジョンの形態で使用することもできるので、その場合には公知の乳化重合法でエマルジョンとすればよく、従ってこれはあらかじめ環状シロキサンあるいはα,ω-ジヒドロキシシロキサンオリゴマー、α,ω-ジアルコキシシロキサンオリゴマー、アルコキシシラン等をアニオン系界面活性剤あるいはカチオン系界面活性剤を用いて水中に乳化分散させた後、必要に応じて酸、アルカリ性物質等の触媒を添加して重合反応を行うことにより容易に合成することができる。
【0033】
ここで、上記アニオン系界面活性剤あるいはカチオン系界面活性剤としては、特に制限はないが、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキルアミン塩酸塩、アルキルアミン酢酸塩などが例示される。この使用量としては、シロキサン量の0.1~20質量%程度である。
【0034】
また、酸、アルカリ性物質等の触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、ギ酸、乳酸、トリフロロ酢酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアなどが例示され、これらは触媒量とすることができる。なお、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルリン酸などの酸性物質を使用する場合には、触媒を用いる必要はない。
【0035】
(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサンの配合量には特に限定はなく、所望の撥水性、他の諸物性への影響等を考慮して適宜設定することができるが、例えば本発明の撥水性コーティング用組成物中に、0.01~30質量%配合することが好ましく、0.1~20質量%配合することがより好ましく、0.2~5質量%配合することが特に好ましい。
また、本発明の撥水性コーティング用組成物中に配合される全ケイ素化合物の合計質量を基準とするならば、全ケイ素化合物の合計100質量部に対して、(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサンを0.05~50質量部配合することが好ましく、0.5~35質量%配合することがより好ましく、1.0~10質量%配合することが特に好ましい。
(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサンの配合量が上記範囲にあることで、本発明の撥水性コーティング用組成物は、硬度等のコーティングの特性を維持したまま、撥水性の向上を一層効果的に実現することができる。また、同時に撥油性も向上することから、防汚性にも優れたコーティングが得られることが期待される。
【0036】
(c2)1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有する、オルガノポリシロキサン
(c2)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中エポキシ基を少なくとも1個含有するものである。
(c2)成分は、オルガノポリシロキサンであること、すなわちポリシロキサン骨格に有機基が結合した構造を有し、かつ、エポキシ基を少なくとも1個有していればよく、それ以外の条件は存在しないが、例えば、(c1)成分について上記で説明した構造中のヒドロキシル基をエポキシ基又は(エポキシプロポキシプロピル基等の)エポキシ基を有する基で置き換えた構造を、好ましい例として挙げることができる。
1分子中に1個のエポキシ基(上記一般式中のXに位置するもの)を有するとき、化合物(c2)を「片末端エポキシ変性オルガノポリシロキサン」とも呼び、1分子中に2個のエポキシ基(いずれも上記一般式中のXに位置するもの)を有するとき、化合物(c2)を「両末端エポキシ変性オルガノポリシロキサン」とも呼ぶ。
【0037】
「片末端エポキシ変性オルガノポリシロキサン」は、1分子中に1個のエポキシ基を有するので、当該エポキシ基が、他の成分の反応生成物等のアミノ基、ヒドロキシル基等と反応することで、これらの基を減少させることができる。「両末端エポキシ変性オルガノポリシロキサン」は、1分子中に2個のエポキシ基を有するので、当該エポキシ基が、それぞれ他の成分の反応生成物等のアミノ基、ヒドロキシル基等と反応することで、これらの基を減少させたり、架橋や鎖長延長により該反応生成物の構造や物性を変更したりすることができる。従って、(a)成分及び(b)成分と化合物(c2)とを反応させる場合には、所望の反応生成物の構造に応じて、「片末端エポキシ変性オルガノポリシロキサン」又は「両末端エポキシ変性オルガノポリシロキサン」を選択し、あるいは両者を適切な比率で組み合わせて使用することができる。更に、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するオルガノポリシロキサン及び/又は上記一般式中のYに位置するエポキシ基を有するオルガノポリシロキサン(いわゆる「側鎖型」)を適宜選択し、あるいは片末端エポキシ変性オルガノポリシロキサン及び/又は両末端エポキシ変性オルガノポリシロキサンと適宜組み合わせて、使用することもできる。
【0038】
商業的に入手可能なエポキシ変性オルガノポリシロキサンの具体例としては、製品名:BY16-855等の化合物(東レ・ダウコーニング株式会社製)、製品名:X-22-173DX、X-22-173BX、KF-105、X-22-343等の化合物(いずれも、信越化学工業株式会社製)、製品名:TSR194等の化合物(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、製品名:DMS-EX21、DMS-E21等の化合物(いずれも、ゲレスト社製)などが挙げられる。
【0039】
1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン(c2)の配合量には特に限定はなく、所望の撥水性、他の諸物性への影響等を考慮して適宜設定することができるが、例えば本発明の撥水性コーティング用組成物中に、0.01~30質量%配合することが好ましく、0.1~20質量%配合することがより好ましく、0.2~5質量%配合することが特に好ましい。
また、本発明の撥水性コーティング用組成物中に配合される全ケイ素化合物の合計質量を基準とするならば、全ケイ素化合物の合計100質量部に対して、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン(c2)を0.05~50質量部配合することが好ましく、0.5~35質量%配合することがより好ましく、1.0~10質量%配合することが特に好ましい。
1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン(c2)の配合量が上記範囲にあることで、本発明の撥水性コーティング用組成物は、硬度等のコーティングの特性を維持したまま、撥水性の向上を一層効果的に実現することができる。また、同時に撥油性も向上することから、防汚性にも優れたコーティングが得られることが期待される。
【0040】
(c3)1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン
(c3)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有するものである。
上記アルコキし基の好ましい例として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、及びそれ以上の炭素数を有するアルコキシ基を挙げることができる。中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0041】
(c3)成分は、オルガノポリシロキサンであること、すなわちポリシロキサン骨格に有機基が結合した構造を有し、かつ、1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有していればよく、それ以外の条件は存在しないが、例えば、(c1)成分について上記で説明した構造が2個以上のケイ素原子に結合するヒドロキシル基を有する場合において、該ヒドロキシル基の1個以上をアミノ基又は(アミノプロピル基等の)アミノ基を有する有機基で置き換え、該ヒドロキシル基の他の1個以上をアルコキシ基又はアルコキシ基を有する基で置き換えた構造を、好ましい例として挙げることができる。
(C3)成分として特に好ましい構造として、(C1)成分の説明で用いた一般式において、Xのうち少なくとも1個がアルコキシ基又はアルコキシ基を有する基であり、Yのうち少なくとも1個がアミノ基又はアミノ基を有する有機基である構造を挙げることができる。このとき、(C3)成分の化合物を、「側鎖アミノ・末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサン」とも呼ぶ。
(C3)成分として一層好ましい構造として、(C1)成分の説明で用いた一般式において、Xのうち2個がアルコキシ基又はアルコキシ基を有する基であり、Yのうち少なくとも1個がアミノ基又はアミノ基を有する有機基である構造を挙げることができる。このとき、(C3)成分の化合物を、「側鎖アミノ・末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサン」とも呼ぶ。
【0042】
商業的に入手可能なアミノ変性オルガノポリシロキサンの具体例としては、製品名:BY16-853U、BY16-871等の化合物(いずれも、東レ・ダウコーニング株式会社製)、製品名:KF-868、KF-859、X-22-161B、KF-867等の化合物(いずれも、信越化学工業株式会社製)、製品名:DMS-A12、AMS-132等の化合物(いずれも、ゲレスト社製)などが挙げられる。
【0043】
(c3)成分は、(a)成分同様にアミノ基及びアルコキシ基を有するので、(a)成分、及び(b)成分が高分子構造を形成する際に、または、(d)成分との付加反応により、当該高分子構造の一部を構成し、あるいは当該高分子構造を架橋したり、その鎖長延長を延長したりすることにより、当該高分子構造の構造や物性を変更したりすることができる。
【0044】
1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン(c3)の配合量には特に限定はなく、所望の撥水性、他の諸物性への影響等を考慮して適宜設定することができるが、例えば本発明の撥水性コーティング用組成物中に、0.01~30質量%配合することが好ましく、0.1~20質量%配合することがより好ましく、0.2~5質量%配合することが特に好ましい。
また、本発明の撥水性コーティング用組成物中に配合される全ケイ素化合物の合計質量を基準とするならば、全ケイ素化合物の合計100質量部に対して、1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン(c3)を0.05~50質量部配合することが好ましく、0.5~35質量%配合することがより好ましく、1.0~10質量%配合することが特に好ましい。
1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン(c3)の配合量が上記範囲にあることで、本発明の撥水性コーティング用組成物は、硬度等のコーティングの特性を維持したまま、撥水性の向上を一層効果的に実現することができる。また、同時に撥油性も向上することから、防汚性にも優れたコーティングが得られることが期待される。
【0045】
(c4)フッ素含有アルコキシシラン
本発明において使用することができる(c4)フッ素含有アルコキシシランは、ケイ素原子に結合したアルコキシ基及び、フッ素基若しくはフッ素含有有機基を有していればよく、それ以外の限定は存在しないが、例えば下記式で表される構造の化合物を好ましく使用することができる。
【化3】
【0046】
上記式中、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、Rはフッ素原子、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、Rで表される炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基は少なくとも1個のフッ素原子を含有する;nは1~3の整数である。
【0047】
上記式において、Rで表される炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基は、少なくとも1個のフッ素原子を含有するが、好ましくはフッ素化アルキル基、より好ましくは全フッ素化アルキル基である。
【0048】
上記式(4)において、Rで表される炭素数1~4のアルキル基や、Rで表される炭素数1~10のアルキル基および炭素数6~10のアリール基は、置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基およびハロゲン原子などを挙げることができる。
【0049】
フッ素含有アルコキシシラン(c4)の具体例としては、例えば、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(1H、1H、2H、2H-パーフルオロオクチル)トリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、(1H、1H、2H、2H-パーフルオロオクチル)トリエトキシシラン、(1H、1H、2H、2H-パーフルオロデシル)トリエトキシシラン、{3-(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピル}トリエトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシラン、(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)メチルジメトキシシランなどが挙げられる。これらのフッ素含有アルコキシシランは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのフッ素含有アルコキシシランのうち、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシランが特に好適である。
【0050】
フッ素含有アルコキシシラン(c4)の配合量には特に限定はなく、所望の撥水性、他の諸物性への影響等を考慮して適宜設定することができるが、例えば本発明の撥水性コーティング用組成物中に、0.05~60質量%配合することが好ましく、0.1~30質量%配合することがより好ましく、0.5~15質量%配合することが特に好ましい。
また、本発明の撥水性コーティング用組成物中に配合される全ケイ素化合物の合計質量を基準とするならば、全ケイ素化合物の合計100質量部に対して、フッ素含有アルコキシシラン(c4)を0.1~70質量部配合することが好ましく、0.5~50質量%配合することがより好ましく、1.0~30質量%配合することが特に好ましい。
フッ素含有アルコキシシラン(c4)の配合量が上記範囲にあることで、本発明の撥水性コーティング用組成物は、硬度等のコーティングの特性を維持したまま、撥水性の向上を一層効果的に実現することができる。
【0051】
上記(c1)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン、(c2)1分子中にエポキシ基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン、(c3)1分子中にアミノ基を少なくとも1個、及びアルコキシ基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン、並びに(c4)フッ素含有アルコキシシランの2種以上を組み合わせて使用する場合のそれぞれの使用量にも特に限定はないが、それぞれの成分についての上述の好ましい配合量から、按分(比例配分)計算して得られる量を、それぞれ配合することができる。
また、上記(c1)成分、(c2)成分、(c3)成分、及び(c4)成分の化合物の合計質量が、全ケイ素化合物の合計100質量部に対して、合計で0.05~70質量部となるよう使用することが好ましく、0.5~50質量部となるよう使用することがより好ましく、1.0~35質量部となるよう使用することが特に好ましい。
【0052】
(d)金属アルコキシド
本発明の撥水性コーティング用組成物は、好ましくは更に(d)金属アルコキシド((c4)成分に該当するものを除く)を含有する。また、本発明の撥水性コーティング用組成物の反応により形成され得る高分子物質は、上記(a)成分、(b)成分及び(c)成分の反応生成物である高分子構造が、更に(d)金属アルコキシドで変性された構造を有していることが好ましい。
すなわち、前記(a)成分、(b)成分及び(c)成分の反応に際して、あるいは、反応後、金属アルコキシド((d)成分)を添加することができる。(d)成分を添加することにより、得られる反応生成物中の金属塩の含有率を高めることができ、機械特性、化学特性等をより向上させることができるとともに、(d)成分を用いない場合と同様の粘稠な液体の状態とすることができるので、コーティングの性状、物性を用途に応じて適宜調整することができる。
【0053】
(d)成分の金属アルコキシドからは、上記(a)成分に該当する化合物(特定の構造を有する、アミノ基を含むシラン化合物)、及び上記(c4)成分に該当する化合物(フッ素含有アルコキシシラン)は除外される。それ以外の制限は、(d)成分の金属アルコキシドには適用されず、上記(a)成分及び上記(c4)成分のいずれにも該当しない限り、一般に金属アルコキシドとして分類される化合物、すなわち少なくとも1の金属原子と、少なくとも1のアルコキシ基を有する化合物を、(d)成分の金属アルコキシドとして使用することができる。
【0054】
(d)成分の金属アルコキシドの金属としては、Si、Ta、Nb、Ti、Zr、Al、Ge、B、Na、Ga、Ce、V、Ta、P、Sb、などを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは、アルコキシドの形成の容易さなどから、Si、Ti、Zrであり、また、(d)成分は液体であることが好ましいため、Si、Tiが特に好ましい。(d)成分の金属アルコキシドのアルコキシド(アルコキシ基)としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びそれ以上の炭素数を有するアルコキシ基を挙げることができる。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシが好ましく、メトキシ及びエトキシがより好ましい。特に好ましい(d)成分としては、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランなどを挙げることができる。
(d)成分は多量体であってもよく、例えばテトラエトキシシランの5量体等を好適に使用することができる。
【0055】
(d)成分の使用量には特に制限はなく、得られるコーティングの用途、所望の特性等に応じて適宜設定することができるが、例えば(a)成分1モルに対して10モル以下の比率でもちいることが好ましい。より好ましくは、(a)成分1モルに対して0.1モル~5モルの比率である。(a)成分1モルに対し、(d)成分が0.1モル以上とすることで、前述したような(d)成分を添加する効果を十分に発現することができる。
また、(d)成分を5モル以下とすることで、白濁の発生等を効果的に抑制することができる。
【0056】
シリコーンオイル
本発明のコーティング用組成物は、前記(d)成分の代わりにあるいは(d)成分に加えて、(上記(c1)~(c3)成分に該当するもの以外の)シリコーンオイルを更に含むことができる。すなわち、前記(a)成分、(b)成分及び(c)成分の反応に際して、あるいは、反応後、(d)成分の代わりにあるいは(d)成分に加えて、シリコーンオイルを添加することができる。シリコーンオイルを添加することで、得られるコーティングの柔軟性、硬さ等の物性を適宜調整することができる。
また、上記(c1)~(c3)成分の種類、性状、添加量は、主に撥水性の観点から選択、調整されるため、上記(c1)~(c3)成分以外のシリコーンオイルを適切な量用いることで、好ましい撥水性の発現を妨げることなく、コーティングの柔軟性、硬さを適宜調整することができる。
【0057】
上記目的で使用するシリコーンオイルとしては、シロキサン結合を有する高分子物質であり、様々な重合度(分子量)を有する、メチルポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンや、アミン・フェノールで変性したシリコーンを挙げることができ(上記(c1)~(c3)成分に該当するものを除く)、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーン)が好ましい。
【0058】
上記目的で使用するシリコーンオイルの使用量は、(a)成分1モルに対してシリコーンオイルのシロキサン繰返し単位として10モル以下の比率が好ましい。より好ましくは、0.1モル~5モルの比率である。(a)成分1モルに対し、シロキサン繰返し単位が0.1モル以上では、前述したようなシリコーンオイルを添加する効果が得やすく、また、シロキサン繰返し単位が成分が5モル以下では、(a)成分と(b)成分との反応生成物による機能への影響が局限される。
【0059】
本発明の撥水性コーティング用組成物は、前記(d)成分及び/又はシリコーンオイルの代わりにあるいはそれに加えて、合成樹脂を更に含むことができる。すなわち、前記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分の反応に際して、あるいは、反応後、合成樹脂を添加することができる。合成樹脂を加えることで、得られるコーティングにクラック防止性等を付与することができ、本発明のコーティング用組成物を、樹脂ハードコート剤として使用することができる。
【0060】
本発明において使用することができる合成樹脂は、特に限定されないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂を挙げることができ、様々な重合度(分子量)を有する合成樹脂を使用することができる。また、ビニルエステル樹脂、エポキシアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなども好ましく使用することができる。その中でも、強度等の樹脂としての特性や、他の成分との反応性、安定性等の観点から、(e)エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0061】
(e)エポキシ樹脂
本発明において好ましく使用することができる(e)エポキシ樹脂には特に限定はなく、当業界においてエポキシ樹脂に分類される樹脂、すなわち、高分子構造中のエポキシ基で架橋ネットワークを形成することで硬化することが可能な熱硬化性樹脂であればよく、様々な重合度(分子量)を有するエポキシ樹脂を使用することができる。その中でも、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、及び、ポリグリコール型エポキシ樹脂から成る群から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂などを好ましく使用することができる。
【0062】
エポキシ樹脂(e)の添加量には特に制限はないが、前記(a)成分1gに対し、1~30gであるのが好ましく、4~10gであるのが、より好ましい。すなわち、(c)成分の添加量が多すぎる場合には、硬度が低下する傾向があり、逆に、少なすぎる場合には、化学的耐久性が低下する傾向がある。
【0063】
有機溶媒
本発明の撥水性コーティング用組成物は、反応の速度や均一性、コーティング塗工の容易性などの観点から、有機溶媒を含むことが好ましい。
上記有機溶媒には特に制限はなく、常温において液体であり、上記各成分、とりわけ(a)から(c)成分を溶解又は分散することができる有機溶媒を適宜使用することができる。
一部極性基を有する上記各成分との親和性や、コーティングの被塗工物との親和性との観点からは、一定の極性を有し、水と相溶性を有する、水溶性有機溶媒であることが好ましい。
(d)成分の水溶性有機溶媒は、希釈剤として働き、水溶性であれば限定されない。例えば、アルコール類が挙げられる。メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、及び3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールから成る群から選択される少なくとも1種の水溶性有機溶媒であることが好ましく、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを用いることが特に好ましい。
上記各成分間の反応効率や、コーティングの塗工における効率や作業性、得られるコーティングの品質等を考慮しながら適宜設定することができるが、例えば前記(a)成分1gに対し、2~20gであるのが好ましく、4~16gであるのが、より好ましい。
【0064】
界面活性剤
本発明の撥水性コーティング用組成物には、基材との濡れ性の改善やレベリング性の向上を目的として、更に界面活性剤を添加してもよい。
特に本発明においては、撥水性の向上に伴いレベリング性が低下する場合があるため、界面活性剤を添加することが特に有益である。界面活性剤の種類には特に制限はないが、レベリング性等の観点から、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤等を使用することが特に好ましい。好ましい界面活性剤の具体例としては、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロン」シリーズ、DIC株式会社製「メガファック」シリーズ、株式会社ネオス製「フタージェント」シリーズ等のフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0065】
本発明の撥水性コーティング用組成物は、上記各成分の他に、腐食防止剤、無機ナノ粒子、顔料、有機酸及びそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも一つの成分を添加しても良い。腐食防止剤としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、タンニン酸及びそれらの混合物があげられる。
【0066】
撥水性コーティング(層)
本発明の撥水性コーティング用組成物を、基材上に塗布して硬化させることで、撥水性コーティング(層)を製造することができる。硬化にあたり加熱は必須ではないが、加熱することにより硬化時間を短縮することができる。
より具体的には、上記の本発明の撥水性コーティング用組成物をディッピング、スプレー塗布、ロール塗布、刷毛塗り等の方法で基材の表面に塗布することができる。
前記基材は、特に限定されないが、例えば、紙、布、木材、プラスチック、別の塗膜、石材、セラミック、金属、及び金属合金から成る群から選択される少なくとも1種の基材(基板)を挙げることができる。中でも、金属基板、ガラス基板、木材、又はセラミック基板上に、本発明の撥水性コーティング用組成物によるコーティングを形成することが好ましい。
【0067】
本発明の撥水性コーティング用組成物は、硬化後のコーティングの撥水性を大幅に向上することで、良好な外観等を維持する一方で、有機シラン化合物とホウ素化合物とを反応させて得られる高分子物質に由来する高い硬度、割れの防止、透明性、耐熱性、耐薬品性等を適宜具備するコーティングを実現することができるので、例えば家電製品、自動車部品、建築部材等の表面保護剤として有用であり、特に外観保護の観点から撥水性が求められる、屋外で用いられる物品、例えば建築、建設用外装材、自動車等の輸送機械において、特に好適に使用することができる。
【実施例
【0068】
以下、本発明を実施例/比較例を参照しながら更に詳細に説明するが、本発明は、これにより何ら限定されるものではない。
【0069】
以下の実施例/比較例において、物性/特性の評価は下記の方法で行った。
剛性(鉛筆硬度)
各実施例および比較例で得られたコーティング用組成物を、ガラス板にローラで約40g/mの塗布量になるように塗布して、試験片を作製した。室温、5日間の硬化により試験片上に形成されたコーティング皮膜の鉛筆硬度を、JIS K5400 8.4.2に準拠して測定した。
撥水性(接触角)
上記試験片上に形成されたコーティング被膜について、水、及びヘキサデカンの接触角を、JIS R 3257に準拠して測定した。
【0070】
(実施例1)
(a)成分として、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン液40質量部を用い、これに(b)成分として、HBO粉末を10質量部加え、5分間攪拌後、(d)成分として、テトラエトキシシランを70質量部、同じく(d)成分として、テトラエトキシシラン5量体を70質量部、(c1)成分として、両末端シラノール変性ジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製、製品名:X-21-5841)を0.2質量部添加し、更に5分間攪拌し、放置した後、(e)成分としてビスフェノールA樹脂(ナガセケムテック社製、製品名:CY232)を20質量部、溶媒としてMMB(3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール)を200質量部、界面活性剤(DIC社製、製品名:メガファックF-559)を1.2質量部添加し、混合して、実施例1のコーティング用組成物を調製した。
得られたコーティング用組成物をガラス板上に塗布してコーティング被膜を形成し、コーティング被膜の剛性(鉛筆強度)及び撥水性(接触角)を評価した。
結果を表1に示す。
【0071】
(実施例2)
(c1)成分としての両末端シラノール変性ジメチルシリコーンの添加量を0.9重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のコーティング用組成物を調製し、評価した。
結果を表1に示す。
【0072】
(実施例3)
(c1)成分としての両末端シラノール変性ジメチルシリコーンの添加量を2.7重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のコーティング用組成物を調製し、評価した。
結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
(a)成分として、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン液100質量部を用い、これに、(b)成分として、HBO粉末を10質量部加え、5分間攪拌後、(d)成分として、テトラエトキシシランを100質量部、同じく(d)成分として、テトラエトキシシラン5量体を100質量部、(c1)成分として、両末端シラノール変性ジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製、製品名:X-21-5841)を5.1質量部添加し、更に5分間攪拌し、放置した後、(e)成分としてビスフェノールA樹脂(ナガセケムテック社製、製品名:CY232)を60質量部、溶媒としてMMBを400質量部、界面活性剤(DIC社製、製品名:メガファックF-559)を2.4質量部添加し、混合して、実施例4のコーティング用組成物を調製し、評価した。
結果を表1に示す。
【0074】
(実施例5)
(e)成分としてのビスフェノールA樹脂(ナガセケムテック社製、製品名:CY232)の添加量を10質量部に変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例5のコーティング用組成物を調製し、評価した。
結果を表1に示す。
【0075】
(実施例6)
(a)成分として、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン液40質量部を用い、これに、(b)成分として、HBO粉末を10質量部加え、5分間攪拌後、(d)成分として、テトラメトキシシランを140質量部、(c1)成分として、両末端シラノール変性ジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製、製品名:X-21-5841)を2.7質量部添加し、更に5分間攪拌し、放置した後、(e)成分としてビスフェノールA樹脂(ナガセケムテック社製、製品名:CY232)を20質量部、溶媒としてMMBを200質量部、界面活性剤(DIC社製、製品名:メガファックF-559)を1.2質量部添加し、混合して、実施例6のコーティング用組成物を調製し、評価した。
結果を表1に示す。
【0076】
(比較例1)
(c1)成分としての両末端シラノール変性ジメチルシリコーンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のコーティング用組成物を調製し、評価した。
結果を表1に示す。
【0077】
(実施例7)
(c1)成分としての両末端シラノール変性ジメチルシリコーンに代えて、(c2)成分として、両末端エポキシ変性ジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製、製品名:KF-101)を2.7質量部添加した以外は、実施例3と同様にして、実施例7のコーティング用組成物を調製し、評価した。
結果を表1に示す。
【0078】
(実施例8)
(c1)成分としての両末端シラノール変性ジメチルシリコーンに代えて、(c2)成分として、片末端エポキシ変性ジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製、製品名:X-22-173DX)を2.7質量部添加した以外は、実施例3と同様にして、実施例8のコーティング用組成物を調製し、評価した。
結果を表1に示す。
(実施例9)
(c1)成分としての両末端シラノール変性ジメチルシリコーンに代えて、(c3)成分として、側鎖アミノ・両末端メトキシ変性ジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製、製品名:KF-867)を2.7質量部添加した以外は、実施例6と同様にして、実施例9のコーティング用組成物を調製し、評価した。
結果を表1に示す。
【0079】
(実施例10)
(d)成分としてのテトラエトキシシランに代えて、(c4)成分として、フッ素含有アルコキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名:KBM-7103)を70質量部添加した以外は、比較例1と同様にして、実施例10のコーティング用組成物を調製し、評価した。
結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の撥水性コーティング用組成物、及び撥水性コーティング用組成物の製造方法は、硬化後のコーティングの撥水性を大幅に向上することで、良好な外観等を維持する一方で、有機シラン化合物とホウ素化合物とを反応させて得られる高分子物質に由来する高い硬度、割れの防止、透明性、耐熱性、耐薬品性等を適宜具備するコーティングを実現することができるので、建築、建設、自動車等の輸送機械、電気電子機器等の産業の各分野において、高い利用可能性を有する。