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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】非破壊検査システム及び非破壊検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/204 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
G01N23/204
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018182814
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020051946
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】永野 繁憲
(72)【発明者】
【氏名】愛甲 華子
(72)【発明者】
【氏名】大竹 淑恵
(72)【発明者】
【氏名】吉村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】須長 秀行
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043581(WO,A1)
【文献】特開2011-185722(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108709(WO,A1)
【文献】特開2013-174587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0046274(US,A1)
【文献】特開2014-81209(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139456(WO,A1)
【文献】特開平3-85403(JP,A)
【文献】特開2017-9558(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035151(WO,A1)
【文献】特開2000-171564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 -G01N 23/2276
G01T 1/00 -G01T 1/16
G01T 1/167-G01T 7/12
E04G 23/00 -E04G 23/08
G21G 4/00
H05H 3/00 -H05H 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子を用いて被検査物の状態を検査するための非破壊検査システムであって、
高速中性子の照射方向を変えることが可能であり、前記高速中性子を被検査物に向けて照射可能な照射部と、
前記被検査物に対して相対的に移動可能であって、前記照射部から照射された高速中性子が前記被検査物を介して生ずる熱中性子を検出する検出ユニットと、
GNSSおよび慣性航法装置を含み、当該GNSSの座標位置から前記検出ユニットのグローバル座標を検出可能及び当該慣性航法装置から前記検出ユニットの姿勢を検出可能な位置姿勢検出部と、
前記検出ユニットで検出された情報から前記被検査物の情報を生成する演算部と、
前記照射部と前記検出ユニットを直接又は間接に連結する支持部と、前記支持部を駆動する駆動部と、
を備え、
前記検出ユニットは、貫通路を形成する壁材が、高速中性子を透過し前記被検査物を介して生ずる熱中性子を吸収する素材からなるコリメータと、前記コリメータを通過した熱中性子を検出可能な検出面を有する中性子検出部とが、前記コリメータの前記貫通路が前記中性子検出部の前記検出面に対して略垂直をなすように当該検出面に当接して一体に構成され、
前記検出ユニットは、前記支持部における前記駆動部の駆動により前記被検査物の検査対象物部分近傍に移動し、前記検出面が検査対象部分と正対する向きで、前記検出ユニットの先端が前記被検査物に当接または一定の間隔を有して位置決めをされ、
前記位置姿勢検出部は、前記駆動部の状態情報から、前記検出ユニットの位置情報及び姿勢情報を検出し、
前記演算部は、前記検出面が前記被検査物の検査対象部分と正対する向きで、前記検出ユニットの先端が前記被検査物に当接または一定の間隔を有して位置決めをされているときに前記中性子検出部が検出した熱中性子の情報と、当該位置決めをされているときに前記位置姿勢検出部が検出した前記検出ユニットのグローバル座標を示す位置情報と姿勢を示す姿勢情報と、から、前記被検査物のグローバル座標に対する前記被検査物の組成に関する情報を生成する非破壊検査システム。
【請求項2】
前記位置姿勢検出部は、前記検出ユニットの前記姿勢情報を、前記コリメータの前記貫通路の軸方向に応じて生成する請求項1に記載の非破壊検査システム。
【請求項3】
前記検出ユニットは、測距光を反射可能な反射体を更に備え、
前記位置姿勢検出部は、測距光を用いて前記反射体の位置を測量する測量装置からの情報により、前記検出ユニットの前記位置情報及び/又は前記姿勢情報を生成する請求項1又は2に記載の非破壊検査システム。
【請求項4】
前記中性子検出部は、前記被検査物の内部にて後方散乱した熱中性子を検出する請求項1からのいずれか一項に記載の非破壊検査システム。
【請求項5】
前記演算部は、前記被検査物の組成に関する情報を、組成の種類に応じた色情報として生成する請求項1からのいずれか一項に記載の非破壊検査システム。
【請求項6】
高速中性子の照射方向を変えることが可能であり、前記高速中性子を被検査物に向けて照射可能な照射部と、
貫通路を形成する壁材が、高速中性子を透過し被検査物を介して生ずる熱中性子を吸収する素材からなるコリメータと前記コリメータを通過した熱中性子を検出可能な検出面を有する中性子検出部と、が前記コリメータの前記貫通路が前記中性子検出部の前記検出面に対して略垂直をなすように当該検出面に当接して一体に構成される検出ユニットと、
前記照射部と前記検出ユニットを直接又は間接に連結する支持部と、前記支持部を駆動する駆動部と、
を用いて被検査物の状態を検査するための非破壊検査方法であって、
前記照射部が、被検査物に向けて高速中性子を照射するステップと、
前記検出ユニットが、前記支持部における前記駆動部の駆動により前記被検査物の検査対象物部分近傍に移動し、前記検出面が検査対象部分と正対する向きで、前記検出ユニットの先端が前記被検査物に当接または一定の間隔を有して位置決めをされるステップと、
位置姿勢検出部が、前記駆動部の状態情報から、前記検出ユニットの位置情報及び姿勢情報を検出するステップと、
GNSSおよび慣性航法装置を含む前記位置姿勢検出部が、当該GNSSの座標位置から前記検出ユニットのグローバル座標を検出し、及び当該慣性航法装置から前記検出ユニットの姿勢を検出するステップと、
記検出ユニットが、前記照射部から照射された前記高速中性子が前記被検査物を介して生ずる熱中性子を検出するステップと、
演算部が、前記検出面が前記被検査物の検査対象部分と正対する向きで、前記検出ユニットの先端が前記被検査物に当接または一定の間隔を有して位置決めをされているときに前記中性子検出部が検出した前記熱中性子の情報と、当該位置決めをされているときに前記位置姿勢検出部が検出した前記検出ユニットのグローバル座標を示す位置情報と、姿勢を示す姿勢情報と、から、前記被検査物のグローバル座標に対する前記被検査物の組成に関する情報を生成するステップと、
を備える非破壊検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中性子を用いて被検査物の非破壊検査を行う非破壊検査システム及び非破壊検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路、橋梁、トンネル、建築物等のインフラストラクチャー(以下、インフラ構造物という)の老朽化に対して、適切な維持管理、補修、更新が望まれている。
【0003】
このようなインフラ構造物の検査においては、物体に対して透過性を有するX線等の放射線を用いることで、被検査物を破壊することなく内部構造を解析することが可能な非破壊検査が行われている。
【0004】
特に近年においては、X線よりも透過性の高い中性子を用いた非破壊検査装置も検討されている。例えば、特許文献1には、車両に可搬型の中性子発生源を搭載して、橋梁の上を走行しつつ、当中性子を用いて当該橋梁内部に対する非破壊検査を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開番号WO2016/035151
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような中性子を用いた非破壊検査装置では、被対象物を透過した中性子を検出部により検出するために、中性子の照射部と中性子の検出部とで被対象物を挟み、中性子の照射方向上に検出部を設けなければならない。つまり、照射部に対して被検査物より奥側に検出部を設けることができない被検査物の場合(例えばトンネルの壁)には適用できないため、検査対象が限られている。
【0007】
これに対し、被対象物に中性子を照射し、後方散乱した中性子を検出部により検出する手法があり、この手法によれば照射部に対して被検査物より手前側に検出部を設ければよいため、トンネルの壁のような被検査物にも適用が可能である。
【0008】
ただし、この手法においては、中性子は目に見えないため照射されている位置を正確に特定できないため、被対象物のどの位置から後方散乱した中性子であるか特定できない。
【0009】
特に、インフラ構造物の解析では、被検査物をグローバル座標(ワールド座標)に対応付けるために正確に検査位置を検出する必要がある。つまり、検査位置を特定できなければ、被検査物の内部構造の解析の精度が下がり、不具合のある位置を誤認する可能性も生じてくる。
【0010】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、中性子を用いて行う非破壊検査において、検査位置を正確に特定することができ、それにより被検査物の内部構造を高精度に解析することのできる非破壊検査システム、非破壊検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明に係る非破壊検査システムは、中性子を用いて被検査物の状態を検査するための非破壊検査システムであって、高速中性子の照射方向を変えることが可能であり、前記高速中性子を被検査物に向けて照射可能な照射部と、前記被検査物に対して相対的に移動可能であって、前記照射部から照射された高速中性子が前記被検査物を介して生ずる熱中性子を検出する検出ユニットと、GNSSおよび慣性航法装置を含み、当該GNSSの座標位置から前記検出ユニットのグローバル座標を検出可能及び当該慣性航法装置から前記検出ユニットの姿勢を検出可能な位置姿勢検出部と、前記検出ユニットで検出された情報から前記被検査物の情報を生成する演算部と、前記照射部と前記検出ユニットを直接又は間接に連結する支持部と、前記支持部を駆動する駆動部と、を備え、前記検出ユニットは、貫通路を形成する壁材が、高速中性子を透過し前記被検査物を介して生ずる熱中性子を吸収する素材からなるコリメータと、前記コリメータを通過した熱中性子を検出可能な検出面を有する中性子検出部とが、前記コリメータの前記貫通路が前記中性子検出部の前記検出面に対して略垂直をなすように当該検出面に当接して一体に構成され、前記検出ユニットは、前記支持部における前記駆動部の駆動により前記被検査物の検査対象物部分近傍に移動し、前記検出面が検査対象部分と正対する向きで、前記検出ユニットの先端が前記被検査物に当接または一定の間隔を有して位置決めをされ、前記位置姿勢検出部は、前記駆動部の状態情報から、前記検出ユニットの位置情報及び姿勢情報を検出し、前記演算部は、前記検出面が前記被検査物の検査対象部分と正対する向きで、前記検出ユニットの先端が前記被検査物に当接または一定の間隔を有して位置決めをされているときに前記中性子検出部が検出した熱中性子の情報と、当該位置決めをされているときに前記位置姿勢検出部が検出した前記検出ユニットのグローバル座標を示す位置情報と姿勢を示す姿勢情報と、から、前記被検査物のグローバル座標に対する前記被検査物の組成に関する情報を生成する
【0012】
また、上述の前記位置姿勢検出部は、前記検出ユニットの前記姿勢情報を、前記コリメータの前記貫通路の軸方向に応じて生成してもよい。
【0014】
また、上述の非破壊検査システムにおいて、前記検出ユニットは、測距光を反射可能な反射体を更に備え、前記位置姿勢検出部は、測距光を用いて前記反射体との位置を測量する測量装置からの情報により、前記検出ユニットの前記位置情報及び/又は前記姿勢情報を生成してもよい。
【0016】
また、上述の非破壊検査システムは、前記中性子検出部は、前記被検査物の内部にて後方散乱した中性子を検出してもよい。
【0019】
また、上述の非破壊検査システムは、前記演算部は、前記被検査物の組成に関する情報を、組成の種類に応じた色情報として生成してもよい。
【0020】
また、上述の非破壊検査方法は、高速中性子の照射方向を変えることが可能であり、前記高速中性子を被検査物に向けて照射可能な照射部と、貫通路を形成する壁材が、高速中性子を透過し被検査物を介して生ずる熱中性子を吸収する素材からなるコリメータと前記コリメータを通過した熱中性子を検出可能な検出面を有する中性子検出部と、が前記コリメータの前記貫通路が前記中性子検出部の前記検出面に対して略垂直をなすように当該検出面に当接して一体に構成される検出ユニットと、前記照射部と前記検出ユニットを直接又は間接に連結する支持部と、前記支持部を駆動する駆動部と、用いて被検査物の状態を検査するための非破壊検査方法であって、前記照射部が、被検査物に向けて高速中性子を照射するステップと、前記検出ユニットが、前記支持部における前記駆動部の駆動により前記被検査物の検査対象物部分近傍に移動し、前記検出面が検査対象部分と正対する向きで、前記検出ユニットの先端が前記被検査物に当接または一定の間隔を有して位置決めをされるステップと、位置姿勢検出部が、前記駆動部の状態情報から、前記検出ユニットの位置情報及び姿勢情報を検出するステップと、GNSSおよび慣性航法装置を含む前記位置姿勢検出部が、当該GNSSの座標位置から前記検出ユニットのグローバル座標を検出し、及び当該慣性航法装置から前記検出ユニットの姿勢を検出するステップと、記検出ユニットが、前記照射部から照射された前記高速中性子が前記被検査物を介して生ずる熱中性子を検出するステップと、演算部が、前記検出面が前記被検査物の検査対象部分と正対する向きで、前記検出ユニットの先端が前記被検査物に当接または一定の間隔を有して位置決めをされているときに前記中性子検出部が検出した前記熱中性子の情報と、当該位置決めをされているときに前記位置姿勢検出部が検出した前記検出ユニットのグローバル座標を示す位置情報と、姿勢を示す姿勢情報と、から、前記被検査物のグローバル座標に対する前記被検査物の組成に関する情報を生成するステップと、を備える
【発明の効果】
【0021】
上記手段を用いる本発明によれば、被検査物に対して中性子を用いて行う非破壊検査において、検査した位置を正確に特定することができ、それにより被検査物の内部構造を高精度に解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る非破壊検査システム全体を示す概略側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る中性子検出ユニットの分解斜視図である。
図3】中性子検出ユニット部分の拡大図である。
図4】本発明に係る非破壊検査装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図5】解析装置の出力部に出力される解析結果の画面例である。
図6】本発明の第2実施形態に係る非破壊検査システム全体を示す概略側面図である。
図7】(a)本発明の第2実施形態に係る中性子検出ユニット部分の拡大図、及び(b)本発明の第2実施形態に係る中性子検出ユニットの背面から見た斜視図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る非破壊検査システム全体を示す概略側面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る非破壊検査システム全体を示す概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る非破壊検査システム全体を示す概略側面図であり、図2は、本発明の第1実施形態に係る中性子検出ユニット(検出ユニット)の分解斜視図である。また、図3は、中性子検出ユニット部分の拡大図であり、図4は、本発明に係る非破壊検査装置の制御系の構成を示すブロック図である。以下、これらの図に基づき本実施形態の非破壊検査装置の構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、第1実施形態の非破壊検査システム1は、移動体である車両2に可搬型の中性子源ユニット3、中性子検出ユニット4、支持ユニット5、位置姿勢検出ユニット6、解析装置7を搭載し、構成されている。車両2は例えばトラックであり、荷台2aに可搬型中性子源ユニット3、中性子検出ユニット4、支持ユニット5、位置姿勢検出ユニット6、を搭載し、運転席2bに解析装置7を搭載している。本実施形態では、コンクリートからなるブロックBを被検査物とした非破壊検査を行う。
【0026】
可搬型の中性子源ユニット3は、中性子を発生させるための中性子源となる、電源部10、線形加速器11、及びターゲットステーション12と、当該ターゲットステーション12の保持部13、生成された中性子を所定の方向に照射する照射部14を有している。
【0027】
詳しくは、電源部10は、各部に電力を供給する発電機である。電源部10の発電機は、少なくとも陽子を発生可能な発電性能を備え、電圧変動が少なく、高調波電流に耐えられるものが好ましい。また、電源部10は、発電機が発電した電力を蓄電可能なバッテリを有していてもよい。
【0028】
線形加速器11は、車両2の前側に陽子を発生させるイオン源11aを有し、当該イオン源11aから円筒状の加速器11bを介してターゲットステーション12に接続される。加速器11bは、イオン源11aで発生した陽子を加速し、陽子ビームとしてターゲットステーション12に照射する。
【0029】
ターゲットステーション12は、略球体状の遮蔽体により覆われており、内部には図示しない中性子発生用のターゲットが設けられている。遮蔽体は中性子やガンマ線を遮蔽する素材からなり、例えばホウ素入りポリエチレンや鉛等を用いて形成されている。ターゲットは陽子と衝突して中性子(高速中性子)を生じさせるものであり、例えばベリリウム(Be)が挙げられる。また、ターゲットステーション12は保持部13により保持される。
【0030】
詳細には、保持部13は荷台2aの上に立設した四角柱状をなし、加速器11bとターゲットステーション12との接続部分が内部を貫通している。そして、ターゲットステーション12の先端部分が外部に露出している。
【0031】
照射部14は、ターゲットステーション12に形成された開口孔であり、ターゲットステーション12内で生じた高速中性子のうち所定の方向に指向する高速中性子を選択的照射可能である。当該照射部14は、ターゲットステーション12上で開口位置を変更可能であり、開口位置を変えることで高速中性子の照射方向を変えることが可能である。
【0032】
中性子検出ユニット4は、所定の方向に指向する熱中性子を検出可能であり、熱中性子を検出可能な中性子検出部20と、中性子検出部20に入射する熱中性子の指向性を高めるためのコリメータ32とを含んで構成される。
【0033】
詳細には、図2に示すように、中性子検出部20は、直方体の検出部本体21の一面に正方形の検出モジュール22の4つが配置され一つの検出器アレイ23として構成されている。このように検出器アレイ23により中性子検出ユニット4の検出面は形成されており、当該検出面の大きさに関する情報は既知である。
【0034】
検出モジュール22は、正方形をなす検出素子が検出面上の縦横に複数隙間なく配列されて形成されている。当該検出素子は、高速中性子に対する感度は有さず、熱中性子に対する感度を有している。検出部本体21内には、電源や、検出素子の露出時間や露出タイミングを制御する制御部、各検出素子の検出信号を受信して検出面内座標や中性子強度を算出する信号処理部が設けられている。つまり、中性子検出部20は、各検出素子が検出した熱中性子の情報を生成可能である。なお、本実施形態における中性子検出部は4つ検出モジュールから検出器アレイを構成しているが、中性子検出部を構成する検出モジュールの数これに限られず、例えば一つでもよい。
【0035】
コリメータ30は、筐体31内に同一方向に延びる複数の貫通路Pが形成されている。詳しくは、筐体31は立方体をなし、貫通路Pは壁材により断面が円形の管状をなしている。図2に示す本実施形態のコリメータ30は、貫通路Pの開口が並んでいる開口面において一列8個の貫通路Pが縦横に配列されている。
【0036】
図3で示すように、コリメータ30を構成する筐体及び貫通路Pを形成する壁材は高速中性子Nfを透過し、熱中性子Nsを吸収する素材により構成される。そのため、貫通路Pを通過する欠陥部Dで生じた熱中性子Nsは、壁材により吸収されることなく通過したコリメータ30の軸方向すなわち貫通路Pの軸方向に指向性を有するものとなる。具体的に当該壁材の素材としては、例えばカドミウム(Cd)またはボロン(B)を用いることができる。
【0037】
図2に戻り、貫通路Pは、少なくとも開口径R(直径)が通路長さLよりも短く、中性子検出部20の検出面への入射角(受容角)が略垂直とするためには、開口径Rと通路長さとの比(R:L)が1:50程度であることが好ましい。
【0038】
そして、コリメータ30は、貫通路Pが中性子検出部20の検出面に対して略垂直をなすように当該検出面に当接して中性子検出部20に一体として取り付けられている。
【0039】
図1に戻り、支持ユニット5は、支持台40と、3つのアーム41a、41b、41c、41dと、各アーム間を回動自在に接続する3つのリンク42a、42b、42cを含んで構成されている。
【0040】
詳細には、支持ユニット5は、支持台40が中性子源ユニット3の保持部13上に載置されている。当該支持台40には水平方向に回動可能な第1のアーム41aが立設している。当該第1のアーム41aの先端は第1のリンク42aを介して第2のアーム41bの一端と接続されている。また第2のアーム41bは第2のリンク42dを介して第3のアーム41cと接続され、第3のアーム41cは第3のリンク42cを介して第4のアーム41dに接続されている。そして、第4のアーム41dの先端に中性子検出ユニット4が接続されている。
【0041】
各リンク42a、42b、42cは鉛直方向の回動自在である。このように、支持ユニット5は、第1のアーム41aにより水平方向の向きを規定し、各リンクに42a、42b、42cによって鉛直方向の向きを規定することで、中性子検出ユニット4の位置及び姿勢を自在に変動可能である。
【0042】
さらに、支持ユニット5の各駆動部分には図示しない複数のエンコーダが搭載されており、例えば、支持台40と第1のアーム41aの間には水平方向の回動角度を検出する図示しない水平角検出部(水平エンコーダ)が搭載されている。また、各リンク42a、42b、42cには鉛直方向の回動角度を検出する図示しない鉛直角検出部(鉛直エンコーダ)が設けられている。また、各アーム41a、41b、41c、41dの長さ、各リンク42a、42b、42cの半径、第4のアーム41dの中性子検出ユニット4に対する取付角度は仕様として決められており既知である。
【0043】
位置姿勢検出ユニット6は、GNSS50(Global Navigation Satellite System)、GNSS50(Inertial Measurement Unit)を含んで構成されている。
【0044】
GNSS50は、例えばGPS(Global Positioning System)であり、支持ユニット5の支持台40上に設けられている。GNSS50は、衛星からの情報を受信して自己の位置座標、つまり支持台40の位置情報を検出可能である。また、GNSS50は、第1のアーム41aとの間隔が既知であり、GNSS50の座標位置が特定されることで第1のアーム41aの位置座標も特定することが可能である。
【0045】
IMU51は、慣性航法装置であり、例えばジャイロや、方位磁針を含んで構成される装置である。IMU51は、GNSS50と同じく支持台40に設けられており、支持台40の傾き(姿勢情報)、つまりは車両2の姿勢情報を検出可能である。
【0046】
上述した、中性子検出ユニット4、支持ユニット5、位置姿勢検出ユニット6は、それぞれ解析装置7と有線又は無線により通信可能に接続されている。
【0047】
解析装置7は、例えばパーソナルコンピュータであり、図4に示すように、CPU等からなる演算処理部(演算部)60、キーボードやマウスからなる入力部61、ディスプレイ等からなる出力部62、ハードディスク、メモリ等からなる記憶部63を有している。例えば、記憶部63には上述した既知の情報が記憶されている。
【0048】
さらに、演算処理部60は、非破壊検査のための解析ソフトウェアのプログラムを実行するための中性子情報生成部70、位置情報算出部71、姿勢情報算出部72、解析部73を有している。
【0049】
中性子情報生成部70は、中性子検出ユニット4から中性子検出部20により検出された熱中性子の情報を取得し、中性子情報を生成する。例えば中性子検出部20の検出面内における熱中性子の強度分布等の情報を生成する。
【0050】
位置情報算出部71は、GNSS50により検出される位置座標の情報及び支持ユニット5の各エンコーダの情報、即ち第1のアーム41aの水平方向の回動角度、各リンク42a、42b、42cの鉛直方向の回動角度を取得する。さらに、記憶部63に記憶されている既知の情報、即ちGNSS50と第1のアーム41aまでの距離、各アーム41a、41b、41c、41dの長さ、各リンク42a、42b、42cの半径、第4のアーム41dと中性子検出ユニット4の取付角度、検出面の大きさ、等の情報を取得する。これらの各情報に基づき中性子検出ユニット4の位置情報を算出する。この中性子検出ユニット4の位置情報は例えばグローバル座標として算出される。
【0051】
姿勢情報算出部72は、IMU51により検出される姿勢情報と、上述した支持ユニット5の各エンコーダの情報から、中性子検出ユニット4の姿勢情報を算出する。具体的には、姿勢情報算出部72はコリメータの軸方向、即ち中性子検出ユニット4の検出面の向きを算出する。
【0052】
解析部73は、中性子情報生成部70にて生成した中性子情報、位置情報算出部71にて算出した中性子検出ユニット4の位置を示す位置情報、及び姿勢情報算出部72にて算出した中性子検出ユニット4の姿勢を示す姿勢情報を取得する。そして、解析部73はこれらの情報から、被検査物であるブロックBの位置及び組成に関する情報を生成し、例えば解析結果として出力部62や記憶部63に出力可能である。
【0053】
次に、このように構成された非破壊検査システム1における非破壊検査手法について上述した図に基づき説明する。
【0054】
まず、非破壊検査を行う前に、車両2の走行ルートや被検査物の検査位置等の計画を設定する。そして、その計画に沿って車両2を走行させ、計画された所定の位置にて車両2を停止又は走行させながら、中性子源ユニット3により被検査物に中性子を照射しつつ、支持ユニット5を駆動して中性子検出ユニット4を検査対象位置に移動させる。
【0055】
具体的には、中性子の照射は、まず電源部10から線形加速器11のイオン源11aへ電力を供給することで陽子を発生させ、当該陽子を加速器11bを通して加速させてターゲットステーション12内のターゲットに衝突させることで高速中性子を生じさせる。そしてターゲットから拡散される高速中性子のうち所定の方向に向かう高速中性子Nfのみが照射部14から被検査物(本実施形態ではブロックB)に向けて照射される。
【0056】
その一方で、中性子検出ユニット4は、支持ユニット5における各アクチュエータの駆動により被検査物の検査対象部分近傍に移動し、検出面が検査対象部分と正対する向き、即ちコリメータ30の貫通路Pの軸方向の延長上に検査対象部分が位置する姿勢で位置決めされる。このとき、コリメータ30の先端が被検査物であるブロックBに当接してもよいし、一定の間隔を有していてもよい。コリメータ30の先端がブロックBに当接している場合は、後述する解析装置7における解析において、中性子検出ユニット4と被検査物との間の距離を考慮する必要はなくなる。一方、コリメータ30の先端がブロックBと間隔を有している場合は、当該間隔が予め定めた距離となるように支持ユニット5によって中性子検出ユニット4の位置を定めたり、図示しない距離センサ等を用いて当該間隔を計測してもよい。
【0057】
そして、図3に示すように、ブロックBに照射された高速中性子Nfのうちの一部はそのまま透過し、残りの一部はブロックB内部で熱中性子Nsとなって散乱する。特にブロックB内の欠陥部Dが水等のコンクリートよりも軽元素が存在する場合は、高速中性子Nfが軽元素にエネルギーを奪われてブロックBの他の部分よりも相対的に多くの熱中性子が生じる。一方、欠陥部Dが空隙である場合は、その部分では熱中性子Nsは生じないため熱中性子Nsの散乱は生じず、ブロックBの他の部分よりも相対的に熱中性子の量(強度)が少なくなる。
【0058】
中性子検出ユニット4は、コリメータ30が散乱してきた熱中性子Nsを規制し、中性子検出部20の検出面に略垂直に指向する熱中性子線Nsのみを選択的に通過させる。例えば図3に示すように欠陥部Dから後方散乱した熱中性子Nsのうち検出面に対して略垂直に入射する熱中性子Nsのみが貫通路Pを通過する。一方、貫通路Pの軸方向に対して角度を持ってコリメータ30に入射する熱中性子Nsは壁材により吸収される。
【0059】
中性子検出部20は、入射した熱中性子Nsを検出して熱中性子の情報(例えば、入射した熱中性子Nsの数)を、解析装置7の中性子情報生成部70に出力する。
【0060】
また、位置情報算出部71はGNSS50、支持ユニット5から、この時の位置座標の情報、各エンコーダの情報を取得して、中性子検出ユニット4の位置情報を算出する。また、姿勢情報算出部72は、支持ユニット5からの各エンコーダの情報と、IMU51からの姿勢情報を取得し、中性子検出ユニット4の姿勢情報を算出する。
【0061】
そして、解析部73は、中性子情報、中性子検出ユニット4の位置情報及び姿勢情報を取得して、被検査物であるブロックBの位置及び組成に関する情報を生成して、解析結果として出力部62や記憶部63に出力する。
【0062】
詳細には、中性子検出ユニット4により検出される中性子情報は、コリメータ30により検出面に対して垂直方向に指向した熱中性子Nsに限定された熱中性子Nsの情報に基づくため、貫通路Pの軸方向延長上にあるブロックBの内部構造と特定できる。そして、中性子検出ユニット4の位置情報及び姿勢情報から算出した中性子検出ユニット4のグローバル座標から、ブロックBの内部構造におけるグローバル座標を算出できる。
【0063】
例えば、図5を参照すると、出力部62に出力される解析結果の画面例が示されている。
図5に示す画面例では、画面80内の上枠81にブロックの概略全体像、左下枠82に断面画像、右下枠83に各種情報が記載されている。詳しくは、上枠81では、ブロックBの側面図が示され、内部構造を解析済みの範囲が矩形の枠で示されている。入力部61を介して、この中で一つの矩形枠を選択することで、選択箇所の断面画像が左下枠82に表示される。なお、図5では、選択した矩形枠が斜線で示されている。
【0064】
左下枠52に表示される断面画像により、内部構造を目視でき、水、空隙、錆等の欠陥部分の存在を確認できる。特に、水は水色、空隙は灰色、錆は赤色、等のように、被検査物の組成に関する情報を、組成の種類に応じた色情報として表示する。
【0065】
例えば、当該断面画像内にカーソルを移動させると、カーソルで指し示した箇所の位置情報が右下枠83内に表示される。これにより、欠陥部分の位置をカーソルで指し示すことで、不具合箇所の位置情報を取得できる。なお、図5では3次元画像として表示されているが、2次元画像でもよい。
【0066】
このように、本実施形態の非破壊検査システム1によれば、中性子検出ユニット4がコリメータ30により中性子検出部20に入射する熱中性子Nsを規制することで、中性子検出部20により検出される熱中性子Nsの情報が被検査物のどの部分の情報であるかを特定することができる。つまり、コリメータ30の貫通路Pの軸方向を特定することで、中性子検出部20により検出される被検査物の位置が特定されるため、中性子検出ユニット4の姿勢情報はコリメータ30の貫通路Pの軸方向に応じて生成している。
【0067】
そして、支持ユニット5、位置姿勢検出ユニット6により、中性子検出ユニット4の位置及び姿勢を特定し、中性子検出ユニット4と被検査物との位置を対応付けることで、被検査物内部の検査位置を正確に特定することができる。これにより、被検査物の内部構造を高精度に解析することができる。
【0068】
特に本実施形態では、GNSS50と支持ユニット5のエンコーダを用いて中性子検出ユニット4の位置情報を算出し、IMUと支持ユニットのエンコーダを用いて中性子検出ユニット4の姿勢情報を算出しており、これにより、容易に中性子検出ユニット4の位置及び姿勢を特定することができる。
【0069】
また、中性子検出ユニット4は、被検査物の内部にて後方散乱した熱中性子を検出することで、中性子源に対して被検査物の手前側に中性子検出ユニット4を配置でき、中性子検出ユニット4を容易に設置できる。
【0070】
また、解析装置7の解析部73は、水は水色、空隙は灰色、錆は赤色当、被検査物の組成に関する情報を組成の種類に応じた色情報として生成することで、作業者は結果から容易に欠陥箇所を把握することができる。
【0071】
なお、非破壊検査システム1は、位置姿勢検出ユニット6を、支持ユニット5の支持台40ではなく、中性子検出ユニット4に設けても構わない。この場合、位置情報算出部71及び姿勢情報算出部72は、支持ユニット5の情報によらず、中性子検出ユニット4の位置情報及び姿勢情報を算出することができる。
【0072】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について、図6、7に基づき説明する。図6は本発明の第2実施形態に係る非破壊検査システムを示す全体構成図、図7は(a)第2実施形態における中性子検出ユニットの側面図、(b)中性子検出ユニットの背面から見た斜視図である。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し詳しい説明は省略する。
【0073】
第2実施形態の非破壊検査システム1’は、第1実施形態の非破壊検査システム1におけるGNSS50及びIMU51からなる位置姿勢ユニット50に代えて、図6に示すように、測量装置TSと反射体Trとを含んで構成された位置姿勢ユニットを備えている。
【0074】
測量装置TSは例えばトータルステーションであり、車両2の外部にて測量可能な位置、例えば既知点に設置されている。測量装置TSは測距光をターゲットである反射体Trに照射し、反射した反射光を受光して反射体Trまでの距離及び方位を測量可能である。また追尾光を照射して反射体Trを追尾することも可能である。また、当該測量装置TSは、解析装置7と通信可能であり、測量結果を解析装置7に送信可能であることが好ましい。又は検査終了後に記憶媒体等を介して解析装置7に測量結果を移行してもよい。
【0075】
反射体Trは、図7に示すように、中性子検出ユニット4に3つ取り付けられている。詳細には、第1の反射体Tr1、第2の反射体Tr2、第3の反射体Tr3は、検出部本体21の背面の四隅のうちの三か所に設置されている。これらの三か所の位置は中性子検出ユニット4において既知であり、この位置情報は記憶部63に記憶されている。つまり、測量装置TSにより、これら三点の測量情報を取得することで中性子検出ユニット4の位置情報及び姿勢情報が算出可能である。なお、少なくとも三点の位置情報が取得できれば、中性子検出ユニット4の位置情報及び姿勢情報が算出可能であるが、反射体を4つ以上設けてもよい。
【0076】
本実施形態における解析装置7は、構成自体は第1実施形態と同様であるが、位置情報算出部71及び姿勢情報算出部72は、測量装置TSから取得した測量情報を用いて、中性子検出ユニット4の位置情報及び姿勢情報を算出する。
【0077】
それ以外の構成及び非破壊検査手法については第1実施形態と同じであり、第2の実施形態における非破壊検査システム1は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、測量装置TS及び反射体Trを用いて中性子検出ユニット4の位置情報及び姿勢情報を生成することで、例えばトンネルや建物、橋の下等のような衛星情報を取得できない被検査物に対しても検査可能という利点がある。
【0079】
(第3実施形態)
次に第3実施形態について、図8、9に基づき説明する。図8は本発明の第3実施形態に係る非破壊検査システムを示す全体構成図であり、図9は当該非破壊検査システムの拡大上面図である。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し詳しい説明は省略する。
【0080】
第3実施形態の非破壊検査システム1''は、第1実施形態及び第2実施形態の非破壊検査システム1、1’の中性子検出ユニット4及び支持ユニット5に代えて、図8、9に示すように、車両2に追従しつつ幅方向に移動可能な中性子検出ユニット4''及び支持ユニット90を含んで構成されており、主に橋の床版や道路等を被検査物とした非破壊検査システムである。また、第3実施形態の位置姿勢検出ユニット6''はGNSS50''及びGNSS50''を含んで構成されており、中性子検出ユニット4''に取り付けられている。
【0081】
詳細には、図8、9に示すように、第3実施形態の中性子検出ユニット4''は、中性子検出部20''及びコリメータ30''を含んでおり、構成自体は上記実施形態と同様であるが、被検査物が橋の床版や道路等であるためコリメータ30''の貫通路の軸方向が下方に指向している。つまり、中性子検出部20''の検出面が路面と平行をなしている。
【0082】
第3実施形態の支持ユニット90は、第1の回動軸91、アーム92、第2の回動軸93、支持ブラケット94、支持車輪95を含んで構成され、中性子検出ユニット4''を車両2に追従移動可能に支持している。
【0083】
第1の回動軸91は車両2の荷台2aの後部に設けられ、アーム92の前端を水平方向に回動自在に支持している。アーム92の後端は第2の回動軸93を介して支持ブラケット94と接続され、支持ブラケット94はアーム92に対して水平方向に回動自在である。支持ブラケット94は中性子検出ユニット4''に一体に取り付けられているとともに、支持車輪95を回転可能に軸支している。
【0084】
第1の回動軸91及び第2の回動軸93には、水平方向に回動駆動可能なアクチュエータが搭載されているとともに、水平方向の回動角度を検出する水平角検出部(水平エンコーダ)が搭載されている。アーム92の長さ、支持ブラケット94の大きさ、支持車輪の半径等は仕様として決められており既知であり、これらの情報は解析装置7の記憶部63に記憶されている。
【0085】
第3実施形態の中性子源ユニット3は、照射部14が路面の方向に指向し、当該路面に向けて高速中性子Nfが照射される。そして、中性子検出ユニット4''は路面から散乱してきた熱中性子Nsを検出する。
【0086】
図9に示すように支持ユニット90は、第1の回動軸及び第2の回動軸を駆動して中性子検出ユニット4''を車幅方向に移動可能である。中性子源ユニット3の照射部14からの高速中性子Nfの照射方向と中性子検出ユニット4''の位置は互いに対応させてもよいし、照射部14から広域に高速中性子Nfを照射して、その範囲内で中性子検出ユニット4''を移動させることで、検出範囲を変更してもよい。
【0087】
これ以外の構成及び非破壊検査手法については第1実施形態と同じであり、第3の実施形態における非破壊検査システム1は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
なお、位置姿勢検出ユニット5''を、第2実施形態のように測量装置及び反射体に代えて中性子検出ユニット4''の位置を特定してもよい。
【0089】
以上で本発明の各実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0090】
上記各実施形態の非破壊検査システム1、1’、1''はいずれも、中性子検出ユニット4、4''が、中性子源ユニット3と被検査物との間に位置して、被検査物から後方散乱した熱中性子Nsを検出しているが、このような構成に限られるものではない。例えば、中性子検出ユニットを中性子源ユニットに対して被検査物より奥側に配置し、被検査物から散乱した熱中性子を検出するような構成にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1、1’、1'' 非破壊検査システム
2 車両
3 中性子源ユニット
4 中性子検出ユニット
5 支持ユニット
6 位置姿勢検出ユニット
7 解析装置
12 ターゲットステーション
13 保持部
14 照射部
20 中性子検出部
30 コリメータ
21a. 支持台
41a~41d アーム
42a~42c リンク
50 GNSS
51 IMU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9