(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】集積化プラズモフォトニックバイオセンサおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/45 20060101AFI20230119BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20230119BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20230119BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20230119BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G01N21/45 A
G01N21/41 101
G02B6/122 301
G02B6/125 301
G02B6/12 361
G02B6/12 371
G02B6/12 301
G02B6/125
(21)【出願番号】P 2019565992
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(86)【国際出願番号】 GR2018000007
(87)【国際公開番号】W WO2018150205
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】2017/0100088
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(73)【特許権者】
【識別番号】509079455
【氏名又は名称】アリストトル ユニバーシティ オブ テッサロニキ-リサーチ コミッティー、イー エル ケー イー
(73)【特許権者】
【識別番号】519299234
【氏名又は名称】アーエムオー ゲーエムベーハー ゲゼルシャフト フュア アンゲヴァンテ ミクロ ウント オプトエレクトロニック ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレロス、ニコラオス
(72)【発明者】
【氏名】チオコス、ディミトリオス
(72)【発明者】
【氏名】エヌタンポス、ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】ケッザキ、ディミトラ
(72)【発明者】
【氏名】ギセック、アンナ レナ
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-197451(JP,A)
【文献】特開平10-020348(JP,A)
【文献】特開2015-135386(JP,A)
【文献】特表2012-503216(JP,A)
【文献】特開2005-009944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0018949(US,A1)
【文献】特表2001-500959(JP,A)
【文献】ALAM, M. Z. et al.,Analysis and Optimization of Hybrid Plasmonic Waveguide as a Platform for Biosensing,IEEE Photonics journal,2014年08月,Vol.6, No4,p.3700110
【文献】CLARK, S. A. et al.,Thermo-Optic Phase Modulators in SIMOX Material,Proceedings of SPIE,2000年,Vol.3936,P.16-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G02B 6/12 - G02B 6/14
G02F 1/00 - G02F 1/125
G02F 1/21 - G02F 7/00
H04B 10/00 - H04B 10/90
H04J 14/00 - H04J 14/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光干渉センサである、チップ上に形成された、10ナノメートル~数100ナノメートルの大きいFSRを有する第1のマッハツェンダ型干渉計(112)を備える装置であって、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)は、
それぞれがフォトニック導波路により形成される上方ブランチおよび下方ブランチと、
それぞれが光入力/出力のそれぞれとして機能する、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の両端部(101、110)の光結合構造と、
前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の第1のジャンクション(102)における光分割のための光スプリッタ、および前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の第2のジャンクション(109)における光結合のための光コンバイナと、
前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記上方ブランチ内に配置されるプラズモニック導波路(107)であって、前記プラズモニック導波路(107)が、前記フォトニック導波路上で平面集積されるプラズモン変換素子として組み込まれ、前記プラズモニック導波路(107)が、金属と分析物との界面における表面プラズモンポラリトンへの結合により光伝播を閉じ込めるように構成される、プラズモニック導波路(107)と、
前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記下方ブランチ内に配置される第2のマッハツェンダ型干渉計(111)であって、前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)は、上方ブランチおよび下方ブランチを備え、前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)が、前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の第1のジャンクションにおける光分割のための光スプリッタ(105)、および前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の第2のジャンクションにおける光結合のための光コンバイナ(108)を備える、第2のマッハツェンダ型干渉計(111)と
を備え、
前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)および前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の両方は、前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)が可変光減衰器として機能するように、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記下方ブランチおよび前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の前記下方ブランチに、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)および前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)に最適にバイアスをかけるための熱光学移相器(104、106)を備え、
前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記熱光学移相器(104)および前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の前記熱光学移相器(106)はそれぞれ、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記下方ブランチ内および前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の前記下方ブランチ内で光学信号の位相を調整するように構成され、前記熱光学移相器(104、106)はそれぞれ、互いに対し平行である2つの金属ストライプを、前記フォトニック導波路の一部分の上部の上に、および光の伝播の方向に沿って堆積させることにより形成される、
装置。
【請求項2】
前記フォトニック導波路は、SiO
2などの低屈折率酸化物基板と、LTOなどの低屈折率酸化物上板との間に挟まれる高屈折率窒化ケイ素ストリップ(303、603)を有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記プラズモニック導波路は、貴金属で作製される、または、
前記プラズモニック導波路は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、または窒化チタン(TiN)で作製される、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記プラズモニック導波路は、金(Au)または銀(Ag)で作製される、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記プラズモニック導波路(107)は、薄膜またはハイブリッドスロットを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記プラズモニック導波路は、前記フォトニック導波路の上部酸化物クラッドおよび窒化ケイ素コアをその部分のみでエッチングすることにより形成される空洞を用いて酸化物基板上に直接堆積される薄い金属ストライプを備えるいわゆる薄膜導波路(TFW)により構成される導波路で作製される、または、
前記プラズモニック導波路は、空洞または追加の処理ステップの必要性なしに、前記フォトニック導波路の所定の部分の上部の上に直接堆積される2つの平行な金属ワイヤ(202、305)を備えるいわゆるハイブリッドプラズモフォトニックスロット導波路(HPPSW)で作製され、前記金属ワイヤ(202、305)の下の前記フォトニック導波路は、追加のマスクまたは処理ステップなしで、リソグラフィ中に中断され、前記金属ワイヤ(202、305)は、前記フォトニック導波路の上部の上に直接、および前記フォトニック導波路のエッチングのない単一のステップにて、および単一金属層堆積ステップで堆積される、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記プラズモニック導波路が、前記ハイブリッドプラズモフォトニックスロット導波路で作製される場合、前記熱光学移相器(104、106)は、前記金属ワイヤ(202、305)と同様に、前記フォトニック導波路の上部の上に直接、および前記フォトニック導波路のエッチングのない単一のステップにて、および単一金属層堆積ステップで堆積され、前記ハイブリッドプラズモフォトニックスロット導波路および前記熱光学移相器(104、106)の両方が単一のマスクを用いて形成されるように、前記金属ワイヤ(202、305)の間の間隔W
slotならびに前記金属ワイヤ(202、305)の長さおよび幅が、前記単一のマスクにより画定される、
請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記装置が、Si、シリコンオンインシュレーター(SOI)、またはTiO
2で作製される、または、
前記装置が、Al、Cu、もしくはTiN、またはこれらの材料の化合物で作製される、
請求項
1記載の装置。
【請求項9】
前記プラズモニック導波路(107)と同一寸法の非官能化プラズモニック導波路が、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記下方ブランチ上に設けられ、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)は、前記プラズモニック導波路(107)および前記非官能化プラズモニック導波路の両方を標的分析物が流動するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
同一のチップ上で複数の物質を同時に検出するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置を備える機器であって、前記機器は、複数の第1のマッハツェンダ型干渉計を備え、前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計のそれぞれが、プラズモニック導波路を有する上方ブランチと、熱光学移相器、および可変光減衰器として機能する第2のマッハツェンダ型干渉計を有する下方ブランチとを備え、共通の光スプリッタおよび共通のコンバイナが、すべての前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計に対し、すべての前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計の入力および出力においてそれぞれ配置され、前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計のそれぞれは、前記光スプリッタにより前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計に同時に注入される入力光学信号のうち、前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計の別の第1のマッハツェンダ型干渉計で使用される光学信号の波長とは別個の波長を有する光学信号を使用し、前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計のそれぞれは、前記入力光学信号から、前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計のそれぞれのための波長を有する光学信号を選択するために、前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計のそれぞれの前記上方ブランチおよび前記下方ブランチの入力において、および前記光スプリッタの後に光フィルタを備える、機器。
【請求項11】
集積化された光源および光学光検出器が、前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計のすべての入力および出力にそれぞれ配置される、請求項10記載の機器。
【請求項12】
集積化された光源および光学検出器のアレイは、前記複数の第1のマッハツェンダ型干渉計のすべての入力および出力に配置される、請求項10記載の機器。
【請求項13】
前記熱光学移相器に接続され、前記同一のチップ上に三次元集積化される電子回路により前記熱光学移相器を電気的に制御する、TSVとしても知られる垂直電気ビアを備える、請求項10~12のいずれか1項に記載の機器。
【請求項14】
プラズモン変換素子上で所定の溶液/分析物を流動させるために、前記プラズモニック導波路の表面上に取り付けられる追加の流体チャネルを備える、請求項10~13のいずれか1項に記載の機器。
【請求項15】
特定の生体および/もしくは化学物質、ならびに/または特定の生体および/もしくは化学分子の検出のための追加の捕獲層が、プラズモン変換素子の表面に生成される、請求項10~14のいずれか1項に記載の機器。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置の使用方法であって、前記使用方法は、以下の
前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)および前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の両方に備えられる前記熱光学移相器(104、106)により、前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)が可変光減衰器として機能するように、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)および前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)に最適にバイアスをかけるステップと、
前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記光スプリッタにより、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)に入力される光学信号を前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記上方ブランチおよび前記下方ブランチに分割し、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記光コンバイナにより、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記上方ブランチおよび前記下方ブランチから出力される光学信号を結合するステップと、
前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の前記光スプリッタ(105)により、前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)に入力される光学信号を前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の前記上方ブランチおよび前記下方ブランチに分割し、前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の前記光コンバイナ(108)により、前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の前記上方ブランチおよび前記下方ブランチから出力される光学信号を結合するステップと、
前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記下方ブランチ内および前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の前記下方ブランチ内の光学信号の位相を、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記熱光学移相器(104)および前記第2のマッハツェンダ型干渉計(111)の前記熱光学移相器(106)により調整するステップと
を含み、
前記可変光減衰器は、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記下方ブランチ内の光学信号の強度を制御するが、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記下方ブランチ内の前記熱光学移相器(104)は、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記下方ブランチ内の光学信号の位相を制御することを可能にし、したがって、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)が、所望の作業点において電気信号により釣り合わされ、およびバイアスをかけられ得るように、前記第1のマッハツェンダ型干渉計(112)の前記下方ブランチ内の光学場の振幅および位相の制御を可能にする、
使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面集積化フォトニックバイオセンサの低コストの大量生産のための装置に関し、より具体的には、センサの感度を、低製造コストで、先例のないレベルへと上昇させる手段として、最適にバイアスをかけられたMZI干渉計内へのCMOSフォトニクスおよびプラズモニック構成要素のモノリシック共集積化に関連する。
【背景技術】
【0002】
高感度バイオセンシングの技術的課題に対処するために、いくつかの解決策が提案されてきた。しかし、幅広い商業的利用は、依然として、大型のフットプリントのシステムまたは中程度の感度を必要とする、複雑かつ高価な製造方法によって妨害されている。これが市場に達する前に、これらのすべての特性は、感知装置内で同時に対処される必要がある。
【0003】
金属表面における強い光学場による屈折率の変化に対する表面プラズモン共鳴(SPR)の感度が、非特許文献1により参照される生物由来物質の検出のためのSPR感知システムの開発につながっている。これらは、典型的に、光を平坦な金膜上の表面プラズモンモード内へと結合させるために、光学プリズムを使用する。しかし、これらのシステムの大きなサイズが、ポイントオブケアおよび他のポータブルアプリケーションにおいてのそれらの使用および低コストの製造のための平面モノリシックチップにおける小型化の大きな障害である。
【0004】
ナノ加工における近年の進展を利用して、伝播表面プラズモンポラリトンを提供するプラズモニック導波路装置が、バイオセンサとして集積化されたが、感度の点から、依然として低い感知性能を有している。プラズモニックセンサの性能を高めるために、プラズモニック導波路は、「MZI」として設計されるマッハツェンダ干渉計、および試験下の分析物の屈折率の変化に対する、プラズモニック導波路における光学場の位相依存を利用する他の干渉構成内で集積化された。非特許文献2中の論文が、シリコン上で集積化された金ベースのスロット導波路を備えるマッハツェンダ干渉計を明示する。しかし、MZIの小さなFSRと組み合わされて、上方ブランチと下方ブランチとの間の長さの差、および電力不均衡を最適化するための最適なバイアス構成要素の欠如が、1061/nm/RIUのオーダーの光感度につながっている。本明細書に参照される非特許文献3の論文中に類似のアプローチが提案され、ハイブリッドプラズモニックスロット導波路を使用するが、設計は、MZIバランス構成要素および関連の性能指示器を欠くプラズモニック導波路に焦点を当てている。
【0005】
特許文献1は、マイクロメートルスケールの寸法(2~20μm)のみで適用され、それ以上ではなく、したがって、単にマイクロメートルスケールの集積化を可能にし、それ以上ではないプラズモニックを使用するMZIセンサを開示している。さらに、前述の文献において、プラズモニック導波路とフォトニック導波路との結合の効率は、開示されていないが、これは、低効率であることが予想され、プラズモニック導波路が集積化されるMZIのブランチにおいて、非常に大きな損失を導入する。これは、MZIの下方ブランチにバイアス構成要素が存在しないことと並行して、前述の文献には開示されていないが、感知計測中に低分解能をもたらし、したがってセンサ感度および検出限界を制限することが予想される。
【0006】
特許文献2は、エバネッセント光学場に依存するが、MZI感知ブランチ内に非常に長い相互作用アームを必要とする特別に設計されたフォトニックMZIを使用する。これは、ポリマーのようのCMOS非互換性材料の使用と組み合わされて、この機器の、マイクロスケールまたはナノスケールでのさらなる小型化、およびCMOSプラント内での大量生産を妨げる。上記の機器と同様に、このセンサは、また、MZIセンサを完璧に釣り合わせるために必要とされるバランス構成要素を使用していないが、それは、感度要件を満たすために、大量生産を制限し、したがって感知チップ製造のコスト削減を制限する大型のセンサ構成を必要とする。
【0007】
BiModal干渉計と呼称される新型の干渉計が、非特許文献4および非特許文献5により本明細書に参照され、熱安定性の向上および/または理想的な50対50の分割比からの逸脱を目標とするフォトニック構造およびプラズモニック構造の両方を使用して調査されている。それらは小型の解決策を提供するが、二峰性動作の要件が、感知領域の延長、および最適化された分解能のための2つのMZIブランチの正確な釣り合いを妨げる。
【0008】
MZI構成を使用するマイクロファイバベースの屈折率センサは、本明細書に参照される非特許文献6の論文に報告された。提案されたレイアウトは、MZIセンサ動作および6cm光学マイクロファイバを最適化するために、光ファイバ、手動で制御される既製の光遅延ライン、および減衰器構成要素を利用する。この論文には、提案されたレイアウトを平面集積チップ内で配置し、集積化の形式で減衰器および遅延ラインを実現する方法は開示されていない。さらに、センサ減衰器として6cm長のマイクロファイバを使用することは、(ミリメートルまたはマイクロメートルスケールの)さらなる小型化および大量生産を可能にしない。
【0009】
本明細書で参照される非特許文献7の論文の著者たちは、MZI構成内の位相変調要素として、平面の、電気的に制御される熱光学移相を利用する方法を開示している。入れ子状のMZI構成内に電気制御位相変調器を組み合わせる類似のアプローチが、また、特許文献3(JDS UNIPHASE CORP [US];McBrien Gregory J [US];Kissa Karl M [US];Hal、 7 December 2000(2000-12-07))に開示された。しかし、感知要素も感知機能も、いずれの案にも提案されていない。
【0010】
特許文献3、特に
図3において、干渉計のアーム内の場の位相および釣り合いを制御する電極を備える入れ子状のマッハツェンダ構成を開示している。しかし、開示された装置は、変調器であり、センサではなく、さらに、熱光学移相器を含まない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2005/0018949号明細書
【文献】欧州特許第2214049号明細書
【文献】国際公開第00/73848号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Jiri Homola, Sinclair S. Yeea, Gaunter Gauglitzb, “Surface plasmon resonance sensors: review”, Sensors and Actuators B: Chemical Volume 54, Issues 1-2, 25 January 1999, Pages 3-15.
【文献】OSA-Optics Express, Vol. 23, Issue 20, pp. 25688-25699 (2015), doi.org/10.1364/OE.23.025688 [Wosinski]
【文献】M.Z. Alam, F. Bahrami, J.S. Aitchison and M. Mojamedi, 'Analysis and Optimization of Hybrid Plasmonic Waveguide as a Platfrom for Biosensing, IEEE-Photonics Journal, Volume: 6, Issue: 4, Aug. 2014, DOI: 10.1109/JPHOT.2014.2331232.
【文献】Yongkang Gao, Qiaoqiang Gan, Zheming Xin, Xuanhong Cheng, Filbert J Bartoli, “Plasmonic Mach-Zehnder Interferometer for Ultrasesnitive on-chip Biosesning”, ACS Nano 2011 Dec 18;5(12):9836-44. Epub 2011 Nov 18.
【文献】Kirill E. Zinoviev; Ana Belen Gonzalez-Guerrero; Carlos Dominguez; Laura M. Lechuga, “Integrated Bimodal Waveguide Interferometric Biosensor for Label-Free Analysis”, Journal of Lightwave Technology Year: 2011, Volume: 29, Issue: 13, Pages: 1926-1930, DOI: 10.1109/JLT.2011.2150734.
【文献】Jianghai Wo et al, “Refractive index sensor using microfiber-based Mach-Zehnder interferometer”, OSA-Optics Letters, Vol. 37, Issue 1, pp. 67-69 (2012), doi.org/10.1364/OL.37.000067.
【文献】Stewart A. Clark, Brian Culshaw, Emma J.C. Dawnay, Ian E. Day, “Thermo-optic phase modulators in SIMOX material”, Proc. SPIE 3936, Integrated Optics Devices IV, (24 March 2000); doi: 10.1117/12.379940.
【発明の概要】
【0013】
本発明は、簡易で低コストの製造方法を用いることによりマイクロメートルスケールのチップベースの構成内に集積化され得る超高感度バイオセンサ装置を提案することにより、上記の各種問題に同時に対処することを目的とする。
【0014】
分子レベルに至るまで標的物質をリアルタイムで正確に読み取ることが可能となる感知技術は、早期診断および疾患の予防、ポイントオブケアの適用および正確な環境監視を促進する。プラズモニクスは、ナノメートルスケールの寸法で光を閉じ込め、優れた感度対相互作用長の関係をもたらすその能力のため、感知に適用される場合、計り知れない可能性を有する技術である。プラズモニクスの単位長さ当たりの先例のない感度は、低損失フォトニクス、エレクトロニクス-nmスケールかつ金属の性質-、および生化学的機構(生体適合性)と調和的に共存する能力と共に、性能、多機能性、およびコンパクト性に関して、バイオセンサシステムにおける新たな可能性を開くことになる。
【0015】
並行して、プラズモニック導波路をSi3N4ベースのフォトニクスと選択的に組み合わせることは、電子IC工場のCMOSバックエンド製造プロセスを利用して、集積化フォトニックセンサを低コストの大量生産に近づけることができる。プラズモニクスの付加価値は実際に認められているが、集積化プラズモニックセンサを、高損失性かつ孤立した技術から、価値の高い実践的なCMOS互換性装置へと変換するための組織的努力は、未だなされていない。簡潔に言うと、集積平面チップ内でのCMOS互換性プラズモニクスとフォトニクスとの調和かつ釣り合いのとれた混合が、プラズモフォトニックセンサを、高価で複雑な技術から、フォトニック集積回路(PlC)ベースのセンサにおける、大規模の、かつさまざまな産業上の必要性に亘る、先例のない性能および機能を提供する、真の技術革命へと変換することが期待される。
【0016】
したがって、本発明は、CMOS製造業者、特に、典型的に電子集積回路に使用されるモノリシック集積化を用いて、低コストかつ大量生産で製造され得る、特に10ナノメートルから数100ナノメートルまでの範囲の大きい波長FSRを有する、最適に釣り合いのとれたフォトニックMZ干渉計内において、プラズモニック導波路を使用する、先例のない、仮におよそ150000nm/RIUの光感度を有する、集積化された、すなわちコンパクトな感知装置(チップ)の必要性に対処することを目的とする。この観点から、センサ設計、構成要素製造方法、それぞれの装置および感知方法が、本発明に従い提案される。
【0017】
さらに、本発明は、CMOSチップ上で平面集積されるナノメートルスケールのSi3N4フォトニック導波路およびナノメートルスケールのプラズモニック導波路を利用する光マッハツェンダ干渉MZIバイオセンサを提案する。本発明は、試験下の分析物または気体がプラズモニック導波路を覆う際に干渉計のプラズモニック導波路部分において生じる公知の屈折率の変化を利用することにより、化学量および/または物理量の検出を目標とする。追加の、すなわち第2のマッハツェンダ干渉MZIが、可変光減衰器VOAとして光移相器とともに使用され、独立型の移相器が、センサを最適に釣り合わせ、最新技術を用いて達成可能なものをかなり下回る測定感度を達成するために、干渉計の1つのブランチ、それにより下方ブランチに含まれる。センサ設計は、低コスト材料、および大量生産を可能にする製造プロセスと組み合わされる。
【0018】
本発明は、液体または気体中に存在する化学、生化学または他の物理量の検出のために使用される超高感度バイオセンサチップの低コストの大量生産に対処する。
【0019】
本発明により、低コストかつ大量生産プラントにおいて製造され得る、特別に設計されるMZI構成内に配置されるフォトニック導波路およびプラズモニック導波路を用いる超高感度バイオセンサ機器が提案される。特に、本発明により、ナノメートルスケールの集積化のためのフォトニック構成要素および新しいプラズモニック構成要素を備える機器が提案される。
【0020】
本発明による装置の主要な実施形態によると、装置は、数10ナノメートル~数100ナノメートルの大きな波長FSRを有するマッハツェンダ干渉MZIセンサである光干渉センサを備え、プラズモニック導波路、特に、薄膜またはハイブリッドスロットは、Si3N4フォトニック導波路上で平面集積される変換素子として組み込まれ、装置は、
-低屈折率酸化物基板(substrate)SiO2と低屈折率酸化物上板(superstrate)LTOとの間に挟まれる高屈折率窒化ケイ素ストリップを備えるフォトニック導波路のセットと、
-光I/Oとして機能する、センサの両端部の光結合構造と、
-MZIセンサの第1のジャンクションにおける光分割のため、および第1のMZIセンサの第2のジャンクション、特にYジャンクション、方向性カプラまたは多モード干渉カプラ(MMI)における光結合のための光スプリッタおよび光コンバイナと、
-金属と分析物との界面における表面プラズモンポラリトン(SPP)への結合により光伝播を閉じ込める、センサの上方ブランチ内に配置されるプラズモニック導波路と
を備え、
装置は、MZIセンサの基準アーム内に配置されるマッハツェンダ型の追加の光学的に顕著な干渉要素を顕著に備え、MZI要素の両方は、干渉計の両方に最適にバイアスをかけるための熱光学加熱器を備え、全体チップをさらに備え、追加のMZIを備える可変光減衰器VOAは、追加のMZIの第1のジャンクションにおける光分割のため、および追加のMZIの第2のジャンクションにおける光結合のための光スプリッタおよび光コンバイナを配置し、
-各MZIの基準アーム内の光学信号の位相を調整するための熱光学移相器のセットであって、熱光学移相器は、互いに対し平行である2つの金属ストライプを、フォトニック導波路の一部分の上部の上に、および光の伝播の方向に沿って堆積させることにより形成される、熱光学移相器のセットをさらに備える。
【0021】
したがって、本発明による装置は、上記のこれらのいくつかの特徴、特に、追加のマッハツェンダ型光干渉計を顕著なものとして備え、共に、可変光減衰器として、干渉計のバイアスユニットとしての熱光学加熱器と、MZI1センサ内に入れ子状になっている追加のMZI2を有するVOAと、熱光学移相器のセットを含むという点で、最も近い先行技術と異なる。
【0022】
これらの特徴は、第1のセンサ内に入れ子状に配置される干渉計MZI2が、その基準アーム内に熱光学移相器を有し、MZI2が、熱光学移相器の駆動信号により制御される可変光減衰器VOAとして機能することを含む技術的効果を含む。このVOAは、第1の干渉センサの基準アーム内の信号の強度を制御する。第1の干渉センサの基準アーム内の追加の熱光学移相器は、基準アーム内のビームの位相を制御することを可能にする。したがって、MZI1が、所望の作業点において電気信号により釣り合わされ、およびバイアスをかけられ得るように、干渉計MZI1の基準アーム内の場の位相および振幅の制御が可能である。
【0023】
最も近い先行技術XP011552586に対して解決すべき課題は、干渉計センサの釣り合いおよびバイアスの点を制御することである。本発明により提案される装置により提供される解決策は、干渉センサのバイアス点を制御するための基準アーム内のVOAおよび移相器が、
図1および関連文書において「調整可能ODL」および減衰器と本明細書で参照されて、JIANGHAI WOらのXP001572448によりまだ開示されているという点で注目すべきである。しかし、後者の文献は、熱光学移相器を含むものとしての調整可能ODLも、追加の熱光学要素を含むマッハツェンダ干渉計により作成される減衰器も開示していない。したがって、この文献は技術的課題の解決策をまだ開示しているが、本発明の主要の実施形態に欠けている特長を含んでいない。実際には、XP001572448の干渉計と呼称される、最も近い先行技術XP011552586の平面技術とは異なり、光ファイバに基づいている。したがって、そこには、このさらなる文献の調整可能な遅延および減衰器を、参照される最も近い先行技術の平面導波路センサ中に実装する方法は、示唆されていない。熱光学要素を含む平面導波路技術における移相器の実装が、熱光学要素含むマッハツェンダ構成中の可変光減衰器と共に、その引用された部分を参照して、XP55414114により開示される。結論として、本発明に到達するためには、最も近い先行技術XP011552586において、XP55414114の平面導波路技術を用いて取得される、この追加の文献の光ファイバ構成要素の機能を実施する必要がある。
【0024】
本発明の態様は、大きな自由スペクトル領域(FSR)(10ナノメートル~数100ナノメートル)のSPP導波路の強力な光・物質相互作用、および最適にバイアスのかかったMZ干渉構成を利用することにより、既に存在する先行技術装置を超える、プラズモニック導波路の上方の光共鳴シフト対単位屈折率変化などの光感度を提供するその能力である。干渉計の感知および基準アームの間の光路差が小さいほど、FSRは大きくなり、プラズモニック導波路上の試験下の分析物の屈折率に対する干渉計感度が高くなる。本発明により、全体の構成および最適バイアス方法が提案される。
【0025】
本発明の別の態様は、低コストの製造と同時に記録的な感度を達成するために、ナノメートルスケールのSPP導波路(薄膜またはハイブリッドフォトニックスロット)、窒化ケイ素フォトニック導波路、および入れ子状態のMZ干渉構成内で金属加熱器により実装される熱光学移相器のモノリシック集積化のための方法である。
【0026】
本発明のさらに別の態様は、CMOS適合性材料(酸化物、金属、絶縁体)、および低コストでセンサチップの大量生産を可能にする方法を用いるコンパクトなMZI構成内で、ナノメートルスケールのSPP導波路(薄膜またはハイブリッドフォトニックスロット)、ナノメートルスケールの窒化ケイ素フォトニック導波路、および熱光学移相器のモノリシック集積化である。
【0027】
本発明は、また、装置に関し、特に、本発明の別の態様は、特にハイブリッドスロットSPP導波路が配置される場合の、フォトニックおよびプラズモニック導波路の設計であり、その設計は、単一のマスクおよびリフトオフプロセスで、ならびに製造の全体コストをさらに低下させる同じ金属で、プラズモニックスロット導波路および熱光学移相器の金属接点の同時の堆積を可能にする。
【0028】
本発明のさらなる態様は、低コストおよび大量生産プラントで製造され得る特別に設計されるMZI構成のアレイ内に配置されるフォトニック導波路およびプラズモニック導波路ならびに波長分割多重WDM技術を用いて、超高感度バイオセンサアレイ機器を提供することである。アレイは、単一のバイオセンサ機器と同じ感度および製造コストで、試験分析物または気体から複数の物理量を同時に検出することが可能となる。
【0029】
要約すると、本発明により、マイクロメートルスケールの集積化を単に可能にするのみでありそれ以上ではない、既に引用した特許文献1と対照的に、ナノメートルスケールの集積化のためのフォトニック構成要素および新しいプラズモニック構成要素を備える機器が提供される。さらに、前述の文献におけるプラズモニック導波路とフォトニック導波路との結合の効率は開示されていないが、これは、低くなることが予想され、プラズモニック導波路が集積化されるMZIのブランチにおいて、非常に大きな損失を導入する。これは、MZIの下方ブランチにバイアス構成要素が存在しないことと並行して、前述の文献には開示されていないが、本発明により提供される。感知計測中に低分解能がもたらされ、したがってセンサ感度および検出限界を制限することが予想される。上記の問題は、実際においては、小型化された感知チップを低コストで製造することができるように、モノリシック集積化およびナノメートルスケールの幾何学的形状を用いて達成される必要がある。これらの問題は、プラズモニック感知要素および追加のフォトニックMZIを備えるMZIセンサ、ならびに移相器が、モノリシック集積化を使用して低い製造コストで、超高感度感知のためにMZIを完璧に釣り合わせる方法を開示することで、本発明により解決される。
【0030】
MZI1の基準アーム内における追加のMZIと、移相器(金属加熱器)との配置が、消光比および検出限界を最大化する感知計測の前の出力において、完璧に釣り合いのとれた干渉を取得するために使用される。本発明の好ましい実施形態によると、現在および将来の必要性に対処する超高感度および感知性能を達成するための方法として、上記のものは、大きいFSR(10ナノメートル~数100ナノメートルのFSR)のMZI構成と組み合わされる。
【0031】
さらに、本発明の追加の実施形態により、単一のリフトオフステップのプラズモニック導波路と共に単一のエッチングのフォトニック導波路(ストリップ)を含む、エッチングおよびリフトオフステップの減少を伴う、全体の製造コストを低下させる特定の構成要素が提供される。さらに、低コストの製造と組み合される先行技術のものを超えて感度レベルを上昇させ得る集積化MZIプラズモフォトニックセンサの設計方法が提供される。
【0032】
本発明による装置の特定の実施形態によると、プラズモニック導波路は、金(Au)または銀(Ag)などの貴金属で作製され、可能であれば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、窒化チタン(TiΝ)または他のCMOS互換性金属などの低コスト金属でも作製される。
【0033】
本発明による装置の(1つまたは複数の)さらなる実施形態によると、プラズモニック導波路は、以下の2つの導波路のいずれかで作製される。
-フォトニック導波路の上部酸化物クラッド(cladding)および窒化ケイ素コアをその部分のみでエッチングすることにより形成される空洞を用いて、酸化物上板上に直接堆積された薄い金属ストライプにより構成される「薄膜導波路」(TFW)
-「ハイブリッドプラズモフォトニックスロット導波路」(HPPSW)であって、空洞または追加の処理ステップの必要性なしに、導波路の所定の部分の上部の上に直接堆積される2つの平行な金属ワイヤを備え、金属ストライプの下のフォトニック導波路は、追加のマスクまたは処理ステップなしで、リソグラフィ中に中断され、プラズモニックスロットおよび移相器は、フォトニック導波路のエッチングのない単一のステップにて、および単一金属層堆積ステップで、フォトニック導波路の上部の上に直接堆積され、さらに特に、金属ストライプの離間値(距離Wslot)ならびに金属ストライプの長さおよび幅は、HPPSWおよび熱光学移相器(加熱器)の両方を単一のマスク内に設計するために、センサのマスクの設計中に画定され、よりさらに特に、フォトニック導波路からの光を、プラズモニックスロットへと、そしてフォトニック導波路に戻るように結合するために、方向性結合(directional coupling)が含まれ、プラズモニックスロットの前端および後端のプラズモニックテーパもまた、結合効率の向上のために使用される、「ハイブリッドプラズモフォトニックスロット導波路」
【0034】
本発明は、また、上で提案した装置のアレイを備える機器に関し、機器は、同一チップ上の複数の物質の同時検出を可能にし、機器は、プラズモニック導波路を有する複数の上方ブランチと、加熱器およびVOAを有する下方ブランチの同一コピーとを備え、共通の光スプリッタおよび共通のコンバイナは、すべてのMZIに対し、チップの入力および出力においてそれぞれ配置され、各MZIセンサは、光スプリッタによりバイオセンサに同時に注入される同数の波長のうちの別個の波長を使用し、各MZIは、入力光学信号からその動作波長を選択するために、そのブランチの入力において、および入力のスプリッタの後に光フィルタを備え、特に、光フィルタ、またはAWGのような類似の機能を有する他の光フィルタは、リング共振器により構成される。
【0035】
本発明による装置のより特定の実施形態によると、装置は、Siおよびシリコンオンインシュレーター(SOI)、TiO2のような、他のCMOS互換性フォトニック材料で作製され、それぞれ、Al、Cu、TiNのようなさらに他のCMOS互換性金属材料またはそれらの材料の化合物で作製される。
【0036】
本発明による装置の追加の(1つまたは複数の)実施形態によると、装置は、第1のセンサ(MZI1)の垂直I/Oおよびスプリッタコンバイナとして同時に機能するように、第1のMZIセンサ(MZI1)の他の光I/Oおよびスプリッタコンバイナの代わりに配置される双方向性垂直光学格子結合器を含む。
【0037】
本発明による装置の(1つまたは複数の)特定の実施形態によると、集積化された光源、特に、VCSEL、LED、広帯域光源、または他の光源および光学光検出器は、機器の入力および出力にそれぞれ配置され、さらに特に、光源および光検出器は、格子結合器の上方に、またはフォトニック導波路の同レベル上に、フリップチップまたはウェハボンディングまたはダイボンディングまたはエピタキシャル成長法を使用して集積化される。
【0038】
本発明による装置の(1つまたは複数の)さらなる実施形態によると、集積化された光源および光学検出器のアレイは、機器の入力および出力に配置され、特に、光源および光検出器は、格子結合器の上方に、またはフォトニック導波路の同レベル上に、フリップチップまたはウェハボンディングまたはダイボンディングまたはエピタキシャル成長法を使用して集積化される。
【0039】
本発明による装置の顕著な実施形態によると、装置は、熱光学移相器に接続され、同一チップ上に三次元集積化される電子回路により、熱光学移相器を電気的に制御する、TSVとしても知られる垂直電気ビア(via)を備える。
【0040】
本発明による装置のさらなる顕著な実施形態によると、装置は、プラズモン変換素子上で所定の溶液/分析物を流動させるためにプラズモニック導波路の表面上に取り付けられる追加の流体チャネルを備える。
【0041】
本発明による装置のさらに顕著な実施形態によると、特定の生体および/もしくは化学物質、ならびに/または特定の生体および/もしくは化学分子の検出のための追加の捕獲層が、プラズモニック変換器の表面に生成される。
【0042】
本発明は、また、より具体的には、センサの感度を、低製造コストで、先例のないレベルへと上昇させる手段として、最適にバイアスをかけられたMZI干渉計内へのCMOSフォトニックおよびプラズモニック構成要素のモノリシック共集積化に関連する。
【0043】
本発明は、また、上で明記された装置の使用方法に関連し、特に、同一寸法の追加の非官能化プラズモニック導波路は、センサ(MZI1)の下方ブランチ上、またはMZIアレイにおけるそれぞれの同等物上にそれぞれ製造され、特に、標的分析物が、センサの上方ブランチ上の官能化導波路に類似の、この追加の導波路上を流動するように誘導され、不必要な結合またはノイズが除去される。
【0044】
本発明による装置の使用方法の主要実施形態によると、以下のステップを追加で含むという点を特徴とし、使用方法は、
-両方のマッハツェンダ型干渉計に備えられる熱光学加熱器により、可変光減衰器として、干渉計(MZI)に最適にバイアスをかけるステップと、
-第1センサ内に入れ子状に配置される追加の第2の干渉計を有する可変光減衰器(VOA)による、追加の第2の干渉計の第1のジャンクションにおける光分割のため、および第2の干渉計の第2のジャンクションにおける光結合のための光スプリッタおよび光コンバイナを配置するステップと、
-各干渉計(MZI1、MZI2)-(VOA)の基準アーム内の光学信号の位相を、熱光学移相器により調整し、互いに対し平行である2つの金属ストライプを、フォトニック導波路の一部分の上部の上に、および光の伝播の方向に沿って堆積し、それによって熱光学移相器が形成されるステップと
を含み、
-それによって、第1の光干渉センサ内で入れ子状に配置され、その基準アーム内に熱光学移相器を有する追加の光干渉計は、熱光学移相器の駆動信号により制御される可変光減衰器(VOA)として機能し、
-可変光減衰器(VOA)は、第1の干渉センサの基準アーム内の信号の強度を制御するが、第1の干渉センサの基準アーム内の追加の熱光学移相器は、基準アーム内のビームの位相を制御することを可能にし、したがって、干渉計センサが、所望の作業点において電気信号により釣り合わされ、およびバイアスをかけられ得るように、第1の干渉センサの基準アーム内の場の振幅および位相の制御を可能にする。
【0045】
本発明による方法のさらなる実施形態によると、同一寸法の追加の非官能化プラズモニック導波路が、第1のセンサの下方ブランチ上に、またはMZIアレイ内のそれぞれの同等物上に製造され、標的分析物が、第1のセンサの上方ブランチ上の官能化導波路に類似の、この追加の導波路上を流動し、不必要な結合またはノイズが除去される。
【0046】
要するに、本発明により、超高感度のための集積化プラズモフォトニックバイオセンサおよびそのための装置の低コストの大量生産の方法が提供される。
【0047】
本発明のさらなる特徴は、対応する従属請求項にて規定される。
【0048】
添付の図面と併せて、本発明のいくつかの例示的実施形態をより詳細に説明する。本発明の実施形態、および実施形態における特徴は、本出願の範囲内で、互いに組み合わされ得ることに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】プラズモフォトニックMZIベースのバイオセンサ回路の概略図を示す。
【
図2】センサのプラズモニック部分および熱光学移相器(加熱器)に使用されるハイブリッドプラズモフォトニックスロット導波路(HPPSW)の斜視図である。
【
図3】センサのプラズモニック部分および熱光学移相器(加熱器)に使用されるハイブリッドプラズモフォトニックスロット導波路(HPPSW)の断面図である。
【
図4】センサのプラズモニック部分および熱光学移相器(加熱器)に使用されるハイブリッドプラズモフォトニックスロット導波路(HPPSW)の側面図である。
【
図5】フォトニック導波路と、センサのプラズモニック部分に使用される薄膜プラズモニック導波路(TFPW)との間の薄膜界面の斜視図である。
【
図6】フォトニック導波路と、センサのプラズモニック部分に使用される薄膜プラズモニック導波路(TFPW)との間の薄膜界面の概略的な側面図である。
【
図7】FSRが1164nmを有して設計されるセンサMZIの共鳴ピークのスペクトルシフトを示す。
【
図8】バイオセンサの光感度を計測するために使用される数式1の第1項を表す。
【
図9】バイオセンサの光感度を計測するために使用される数式1の第2項を表す。
【
図10】多重MZIセンサ、光フィルタおよび複数の光学信号(波長)の並列化のためのWDMを使用する多チャネルバイオセンサ構成の概略図を示し、各光波長は、単一のMZIセンサにより使用される。
【発明を実施するための形態】
【0050】
最初に、以下において、回路の実施形態をより詳細に説明する。本発明の装置は、特に、CMOSチップ上に平面集積されるナノメートルスケールのSi3N4フォトニック導波路およびナノメートルスケールのプラズモニック導波路を利用するマッハツェンダ型MZIの、光干渉バイオセンサを含む。本発明の方法は、試験下の分析物または気体が干渉計のプラズモニック導波路部分に付着する際に、そこで起こる既知の屈折率の変化を利用することにより、化学量および/または物理量を検出することを含む。追加のMZI、たとえば第2の光干渉マッハツェンダMZI2が、可変光減衰器VOAとして光移相器に加えて使用され、独立型の移相器が、センサを最適に釣り合わせ、測定感度を達成するために、1つのブランチ、特に干渉計の下方ブランチ内に含まれる。センサ設計は、大量生産を可能にする製造プロセスおよび低コストの材料と組み合わされる。
【0051】
図1は、集積センサ回路を示し、集積センサ回路は、
図3に301、302、303、304で、
図6に601、602、603、606で部分的に示すような、低屈折率酸化物基板SiO
2と低屈折率酸化物上板LTOとの間に挟まれる高屈折率窒化ケイ素ストリップを使用するフォトニック導波路を備える。前述の回路は、前述のセンサの両端部101、110に、光I/Oとして機能する光結合構造をさらに備える。回路は、また、前述の第1のMZI(センサ)の第1のジャンクション102において光を分割するため、および前述の第1のMZI(センサ)112の第2のジャンクション109において光を結合するための光スプリッタおよび光コンバイナを備える。それは、Yジャンクションまたは多モード干渉カプラMMIであり得る。
【0052】
前述の回路は、追加の、実際には第2のMZIを使用することによる可変光減衰器(VOA)111をさらに含み、第2のMZIは、第1のMZI内に入れ子状態に配置され、第2のMZIの第1のジャンクションにおける光の分割、および前述の第2のMZIの第2のジャンクションにおける光の結合のための光スプリッタ105および光コンバイナ108を配置する。
【0053】
回路は、さらに、各MZI、すなわち前述の第1のセンサ112および第2のVOA111の基準アーム内の光学信号の位相を調整するための熱光学移相器104、106を含む。熱光学移相器は、フォトニック導波路の一部分の上部の上に、光の伝播方向に沿って、互いに対して平行な2つの金属ストライプを堆積させることにより形成される。
【0054】
その中にはプラズモニック導波路がさらに備えられ、プラズモニック導波路は、前述の第1のMZIの上方ブランチ103内に配置され、プラズモニック導波路は、金属と分析物との界面において表面プラズモンポラリトンSPPと結合することにより光の伝搬を閉じ込める。プラズモニック導波路は、金(Au)または銀(Ag)などの貴金属、および銅(Cu)、アルミニウム(Al)、窒化チタン(TiN)、または他のCMOS互換性金属などの低コスト金属を用いて実装され得る。プラズモニック導波路は、以下の2つの導波路のいずれかを用いて実装され得る。まず、いわゆる薄膜導波路TFWであって、薄膜導波路TFWは、
図5に示すように、フォトニック導波路の上部酸化物クラッドおよび窒化ケイ素コアをその部分のみエッチングすることにより形成される空洞を用いて酸化物上板上に直接堆積された薄い金属ストライプを備える。または、導波路は、いわゆる「ハイブリッドプラズモフォトニックスロット導波路」HPPSWから構成されてもよく、ハイブリッドプラズモフォトニックスロット導波路は、
図2に示すように、空洞または追加の処理ステップの必要性なしに、導波路の所定の部分の上部の上に直接堆積される2つの平行な金属ワイヤを備える。この場合、金属ストライプの下のフォトニック導波路は、追加のマスクまたは処理ステップを必要とせずに、リソグラフィ中に中断される。プラズモニックスロットおよび移相器は、フォトニック導波路の上部の上に直接、および単一のステップにて、堆積され得るため、さらに低コストの種類のセンサを提供し、結果として、フォトニック導波路のエッチングはなく、
図4に示すような単一金属層の堆積ステップをもたらす。距離W
slotで表される金属ストライプの間隔の値と、金属ストライプの長さおよび幅とは、単一のマスク内にHPPSWおよび熱光学移相器(加熱器)の両方を設計するために、センサのマスク設計中に画定され得る。フォトニック導波路からの光を、プラズモニックスロットに結合し、そしてまたフォトニック導波路に戻して結合するために、方向性結合が利用される。
図2のプラズモニックスロットの前端および後端にあるプラズモニックテーパもまた、結合効率の向上のために使用され得る。
【0055】
【0056】
表1は、物質分散が省略される場合に、最適にバイアスされたMZIにおけるTFPWおよびHPPSWに対し測定されるFSRの増加と共に感度がいかに上昇するかを示す。
【0057】
フォトニック導波路およびプラズモニック導波路の構成要素を以下において説明する。ここに展開されるフォトニック導波路は、断面寸法が360×800nmの化学量論組成のSi3N4技術に基づいており、偏光TMおよび偏光TEにて1550nmの光波長で、関心の対象である2つの導波フォトニックモードをサポートする。しかし、プラズモニック導波路への光モードの移行をサポートし得る他の寸法のフォトニック導波路も使用され得る。
【0058】
この導波路構造および前述の2種類のプラズモニック導波路に基づき、本発明の2つ態様において、フォトニックからプラズモニックへの界面が配置される。第1の態様は、
図5および
図6に示す、TM偏光を必要とする薄膜プラズモニック導波路(TFW)のためのバットカップリングシナリオに基づくフォトニックからプラズモニックへのモード遷移に関し、第2の態様は、
図2、3および4に示す、TE偏光を必要とするハイブリッドプラズモニックスロット導波路(HPPSW)のための方向性結合スキームに基づく遷移に関する。両方の場合において、フォトニック構造は、必要な結合機構を提供し、同時に、製造の制限を満足し得るように注意深く選択された寸法を有するSi
3N
4矩形導波路である。
【0059】
ハイブリッドスロット導波路の場合、方向性結合機構が、利用される導波路のハイブリッド特性に従い利用される。このハイブリッド導波路は、特に、そのプラズモニック部分およびそのフォトニック部分の両方における電界分布を有するモードをサポートすることができ、適切に設計されれば準偶または奇対称を示し得る。電力交換は、これら2つのモード間におけるビート(beating)の結果によるものと考えられ得る。
図3は、この導波路構成の断面を示し、導波路構成は、Si
3N
4バス導波路-フォトニック部分-、およびSi
3N
4導波路の上方に位置する金属ベーススロット-プラズモニック部分-により構成される。2つの導波路、すなわちフォトニック導波路およびプラズモニック導波路の間には、フォトニック導波路のクラッドとして、およびスロット導波路におけるスペーサとして機能する低温酸化物(LTO)層が存在する。
【0060】
ハイブリッド導波路は、そのプラズモニック部分およびそのフォトニック部分の両方における界分布を有するモードをサポートすることができる。二次元固有値解析により、偶対称および奇対称を有するハイブリッドモードがサポートされ得るように、すべての起こり得る幾何学パラメータの組合せが与えられる。徹底的な調査の後に、適切な幾何学設定(たとえばWslot=200nm、Si3N4幅:WSiN=700nmおよびLTO厚さ:hLTO=合計660nm)が選択されたが、それによって、関心の対象であるモードが、必要な対称性を示すだけでなく、小さな結合長さをもたらす。この状況では、プラズモニック部分からフォトニック部分へと電力を伝送するために必要なおおよその結合長さは、約7μmと推定されている。寸法は、シミュレーションツールおよびパラメータに応じて変化し得る。
【0061】
三次元FDTD電磁シミュレーションは、結果を検証するために使用され、同時に、ビート長さを、そしてその結果、重なり合う結合領域を最小化し、フォトニック部分からプラズモニック部分への、および逆方向の電力の移行を最大化する幾何学的構成を微調整することを目的とする。この三次元幾何モデルでは、関心の対象であるハイブリッド導波路が、TEフォトニックモードにより励起され、Si
3N
4バス導波路は、7μm(Lc)の長さの後に遮断される。この遮断は、
図4にて平面Aで表され、フォトニック部分への任意の小さな電力漏洩を防止するので、結合効率の点から有益であると証明される。FDTDシミュレーションによると、そのようなハイブリッド構成は、金をその金属として使用する場合、移行ごとに68%に達し得る効率で、光を、フォトニック部分からプラズモニック部分へと、そして逆方向へと効果的に伝達することができる。フォトニックテーパは、光導波路からのフォトニックモードを、プラズモニック導波路のモードに適合させるために配置される。
【0062】
ハイブリッドスロット導波路の構成要素のためにCMOS金属を利用して、同一の設計手順に従うことができる。金属スロットが、この目的のために修正された唯一の部分であるため、既に提示された二段階分析が繰り返されており、
図2に示すものに類似のハイブリッド構造が、二次元固有モード解析を通して解析されている。2つの偶対称モードおよび奇対称モードが検出され、必要な結合長さが計算されている。そして、全体の導波路構造が、フォトニック部分からプラズモニック部分への、および逆方向の結合効率を推定するために、三次元FDTDモデルによりシミュレートされた。期待されたように、関心の対象であるTE偏光Si
3N
4モードを有するこのハイブリッド構造のフォトニック部分を励起することにより、およびLc=6μmの長さの後にSi
3N
4バス導波路を遮断することにより、光は、少なくとも、Alを使用する場合、60%の電力効率で、Cuを使用する場合、74%の電力効率で、フォトニック部分からプラズモニック部分へ効率的に伝達され得る。
【0063】
感知プラズモニック導波路としてHPPSWを用いる本発明の態様では、センサの製造を単純化し、センサの製造コストを低下させる単一金属層において、製造プロセスの最終段階として、センサチップ内の加熱器およびプラズモニック導波路は、チップの材料積層の同一レベル上に同時に堆積され得る。なお、酸化物分離層は、HPPSWおよび加熱器構造に対し同じままである。
【0064】
図5および6に示す薄膜導波路の、このフォトニックからプラズモニックへの界面構成では、フォトニック導波路とプラズモニック導波路との間の結合機構は、関心の対象である2つのモードの空間的適合に基づく。この目的のため、フォトニックSi
3N
4導波路およびプラズモニックAuベース薄膜構造を含む突き合せ結合(butt-coupling)方式が採用されている。2つの導波路構造は、一方の入力レベルが他方の出力に一致するように設置される。設計プロセスは、光がフォトニック部分からプラズモニック部分へ、そしてその逆に効率的に通過できるように、各導波路の正確な幾何学パラメータを検出することを目的とする。この方向に向かって、第1に、2つの導波路は、二次元固有値解析に関して別個に解析されている。TM偏光が必要とされる偏光および界分布に関して、互いに適合させることにより、関心の対象である2つの固有モードを選択した後、この構成の電力結合能力を示す第1の推定を得るために、電力重なり積分の計算に基づくパラメータ解析が利用されている。この推定は、三次元FDTDシミュレーションにより第2ステップにて検証されている。
【0065】
薄膜プラズモニック導波路は、バイオセンシング適用環境を最適に模するために、SiO
2層の上方に設置される金属薄膜と、上部クラッド材料としての水とを備える。調査は、このプラズモニック構成要素の二次元固有値解析で開始した。この構成は、金属ストライプおよびクラッド材料の幾何学的形状に大きく依存するモード特性を備える、大部分が金属とクラッドとの界面上に集中したプラズモニックモードをサポートすることが可能である。
図5および6は、この導波路の幾何学的形状を斜視図および側面図で描いている。
【0066】
フォトニックからプラズモニックへの界面の場合、関心の対象であるフォトニックTMモードの特性、特に偏光、界プロファイルを調査するために、Si
3N
4フォトニック導波路は別個に分析されている。Si
3N
4および薄膜導波路の両方の固有値解析が考慮され、両方の構成要素の幾何学的構成が、空間的に、および偏光に関して、モードの適合性を満たすために慎重に選択されている。さらに、これらの2つの導波路構造は、
図5および6に示されるもののように、突き合せ結合構成で組み合わされている。フォトニック構成要素からプラズモニック構成要素への単一の移行の三次元モデルが、三次元FDTDシミュレーションにより解析されている。2つの導波路の寸法を適切に調節することにより、フォトニックモードからプラズモニックモードへの電力伝達を最大化することができることが示された。より具体的には、電力重なり積分計算に関する徹底的な調査の後に、関心の対象である2つの導波路の断面寸法は、Si
3N
4および金属膜に対し、それぞれ、360nm×7.5μmおよび100nm×7μmに設定されている。そして、
図6において、縦方向のオフセットとしてのh
offsetおよび横方向のオフセットとしてのL
offsetを備える界面構成におけるそれらの正確な場所が、結合効率を最大化させるために調査されている。数値的なシミュレーションは、400nmのオーダーの縦方向のオフセットでは、薄膜金属として金が使用される場合、最大結合効率約64%が達成され得ることを示した。
【0067】
バイオセンサチップの大量生産を容易にするために、CMOS金属が金の代わりに使用されてもよい。フォトニック部分からプラズモニック部分への光伝達比(結合効率)は、AlおよびCuを使用する場合、それぞれ、60%および68%に達し得る。TiNまたは他のCMOS互換性金属化合物も代わりに使用され得る。
【0068】
ハイブリッド導波路に類似して、およびこのフォトニックからプラズモニックへの界面を完成させるために、先行技術を用いるフォトニックテーパも、Si3N4幅を800nm~7.5μmで調節するために設計および使用された。
【0069】
フォトニック導波路の上部クラッドのための酸化物材料の他の例は、LTO、SiO2、SU8、または本発明のすべての態様に対する類似の光学的性質を有する他の酸化物である。
【0070】
上記のすべての構成要素を備える完全なセンサは、破壊的な感度性能を提供しながらも、各センサチップのコストを低減するために、大型のCMOSウェハおよび電子ICファブを使用することによって、単一のチップ上にモノリシックに集積化され得る。代替的に、プラズモニック導波路のために金または銀が使用される本発明の態様では、CMOSプラントの外部に、またはCMOSプラントの特別に作製されたセクション内に、金または銀のための堆積処理を提供し得る追加の金属堆積処理が必要とされる。
【0071】
センサ設計手法に関して、本発明において、プラズモニック導波路の実効屈折率は、既知の表面機能付与方法を用いてプラズモニック導波路に結合する、試験される液体または気体中の標的物質の濃度に依存する。プラズモニック導波路の実効屈折率の変化は、MZIセンサの分光共鳴のシフトをもたらす。液体の屈折率の変化に対する共鳴のシフトが、バイオセンサの感度を決定する。センサのバルク感度が、以下の式を用いて計算される。
【数1】
ここでは、λは、光学信号の波長、n
liqは、適用される液体の屈折率、およびn
effは、プラズモニック導波路内のモード実効屈折率であり、Xu Sunらの、「High Sensitivity liquid refractive index sensor based on a Mach-Zehnder interferometer with a double-slot hybrid plasmonic waveguide」,OSA Optics Express,Vol.3,No20,2015が参照される。
【0072】
光モードの電界の大部分が、プラズモニック導波路の水と金属の界面を移動するが、フォトニック感知導波路内では、光モードのエバネッセント場と試験下の分析物との間の空間的重なりがはるかに小さいため、プラズモニック導波路が、第2項を最大化する。
【0073】
本明細書において既に説明した、上記のすべての構成要素を備える実施形態を使用することにより干渉計に最適にバイアスをかけることで、数式1の第1項が最大化される。具体的には、特定のFSR用にMZブランチ間の光路が設計されると、
図1に示すMZI2、111内の加熱器1および加熱器2、106を使用することにより、開示されるセンサのバイアスの最適化が達成される。
【0074】
図1の加熱器1は、下方ブランチの光路を最適化するために含まれ、それによって、上方ブランチの光および下方ブランチの光の間の相対的な位相変化は、特定の動作波長について2πラジアンの倍数となる。並行して、加熱器1が、製造プロセス中に製造誤差が導入された後に、光路差を再調整するために使用される。これは、加熱器1の場合、電力、すなわち直流電圧を両方の金属ストライプに適用することにより達成される。当業者が理解するように、MZIの上方ブランチと下方ブランチとの間の光路差を監視するためには、光パワーメータが必要とされる。
【0075】
図1の加熱器1は、下方ブランチの光損失が上方ブランチの光損失と同等であるように、下方ブランチにおける光強度を最適化するために、MZI2に含まれる。MZI2は、MZIの2つのブランチにおける光強度を釣り合わせるために使用される可変光減衰器VOAとして動作する。これは、電力(直流電圧)を加熱器2の両方の金属ストライプに適用することにより達成される。両方のブランチにおける同等の損失は、当業者が理解するように、干渉計の最大消光比をもたらし、感知計測の感度(分解能)を効果的に上昇させる。
【0076】
加熱器1および加熱器2内の干渉計を釣り合わせるために主直流電圧が識別されると、次にこれらは、干渉計のバイアスを十分に最適化するために2つの直流電圧間で反復法で微調整される必要がある。これが達成されると、MZI1出力110において波長共鳴701が取得される。そして、試験下の分析物が、先行技術の方法、たとえば流体チャンバにより、または手動で、プラズモニック導波路107上に付着され、干渉計共鳴が、センサの出力において計測され、光スペクトルにおける共鳴シフトが、
図7に示すように計測される。共鳴シフト702~705は、試験下の分析物の屈折率の変化に依存する。そのような計測に対し、数式1の第1および第2項が、
図8および9にプロットされて、センサ装置の全体の感度値がもたらされる。
【0077】
この方法を用いて、および1164nmのFSRのセンサ回路に対し数式1を使用して、TFWを使用して162,000nm/RIUの感度が達成され、数値モデリングツールを使用するHPPSWを使用して11,792nm/RIUの感度が達成される。より小さい、またはさらにより大きいFSR、すなわちより小さいまたはより大きい感度が、光路差をそれに応じて設計することによって、および開示するセンサの同じ最適化方法に従うことによって達成され得る。
【0078】
さらに、センサ計測方法も提供される。3つの異なる照合方法が、開示する装置における屈折率の変化を計測するために使用されてもよい。
【0079】
第1の方法は、波長可変レーザおよびパワーメータを使用して、第1のMZI共鳴のスペクトルシフトを計測することから構成され、波長可変レーザ源が、センサの入力において光源として必要とされ、パワーメータが、センサの出力において必要とされる。プラズモニック導波路上への分析物の適用前後のセンサのスペクトル応答の変化が、当業者が理解するように、共鳴のスペクトルシフトを示す。
【0080】
さらなる方法は、広帯域光源および光スペクトルアナライザを使用して、第1のMZI共鳴のスペクトルシフトを計測することから構成され、白色光源、LEDもしくはLEDのアレイ、または他の任意の種類の広帯域光源のような広帯域光源が、センサの入力において光源として必要とされ、スペクトルアナライザが、センサの出力において必要とされる。プラズモニック導波路上への分析物の適用前後のセンサのスペクトル応答の変化が、当業者が理解するように、共鳴のスペクトルシフトを示す。
【0081】
さらなる方法は、単一波長源を使用して、プラズモニック導波路における位相シフトを計測することから構成され、上記のものと同じFSRの場合、センサ入力において単一波長光を射出し、第1のMZIの出力において、パワーメータを用いて光強度を測定することにより、屈折率の変化を位相シフトに直接関連付けることができる。時間に対する正弦波的な電力変動が、当業者が理解するように、位相シフトをラジアンで提供する。
【0082】
本発明の別の態様は、同一のチップを使用する、多チャンネル感知とも呼称される、複数の物質の同時検出を達成するために、多重MZI構成および波長選択光フィルタから構成される。上記の実施形態は、
図10に示すように、3つの物質の同時検出を扱うために組み合わされる。
【0083】
上記の実施形態を使用する、
図10に示すような入れ子状態の3つのMZIセンサは、前述の実施形態で説明した、プラズモニック導波路1007を備える3つの上方ブランチと、加熱器1005およびVOA1008を備える下方ブランチの3つのコピーとを備える。共通の光スプリッタおよび共通のコンバイナが、チップの入力および出力においてそれぞれ、3つのすべてのMZIに使用される。各MZIセンサは、光スプリッタ1003を通してバイオセンサ内に同時に射出される3つの波長のうちの別個の波長を使用する。各MZIは、また、入力光学信号からその動作波長を選択するために、そのブランチの入力において、および入力スプリッタの後に、光フィルタ1006を備える。先行技術に共通のリング共振器は、光フィルタ、または類似の機能を有する他の光フィルタとして使用され得る。
【0084】
この実施形態の別の態様は、入力共通カプラおよびアレイ導波路格子AWGなどの光フィルタの代わりのWDMマルチプレクサ、ブラッグ格子ベースのマルチプレクサ、または同一の機能を有する他のWDMマルチプレクサの配置である。
【0085】
より多くの感知用チャネルが、ユーザの要求、およびチップのフットプリントに応じて単一チップ上で集積化され得る。