(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ワイヤ切断機
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20230119BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20230119BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20230119BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20230119BHJP
B24B 27/00 20060101ALI20230119BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20230119BHJP
B28D 1/08 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B24B27/06 D
E04G23/08 D
E01D22/00 Z
E01D24/00
B24B27/00 L
B24B49/10
B28D1/08
(21)【出願番号】P 2021095173
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2022-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593184363
【氏名又は名称】コンクリートコーリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】梶原 英男
(72)【発明者】
【氏名】崎谷 和也
(72)【発明者】
【氏名】木原 通太郎
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0739853(KR,B1)
【文献】特開2004-066382(JP,A)
【文献】特開2014-073549(JP,A)
【文献】特表2018-503521(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
E04G 23/08
E01D 22/00
E01D 24/00
B24B 27/00
B24B 49/10
B28D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断物を挟んで第1方向に対向し、前記第1方向に交差する第2方向に延びる第1レール及び第2レールと、
前記第1レールに取り付けられており、第1プーリを備える第1移動装置と、
前記第2レールに取り付けられており、第2プーリを備える第2移動装置と、
前記第1プーリ及び前記第2プーリにかけられるワイヤと、
前記第1プーリと前記第2プーリのうち、少なくとも一方に設けられ、動力を供給する機構と、
前記第1プーリと前記第2プーリとの間の距離を検出する検出部と、
前記検出部が、前記距離が所定の距離以上になったことを検出したときに、前記第1移動装置または前記第2移動装置のいずれかを減速または停止させる制御を行なう制御部と
を備え、
前記第1移動装置は前記第1レールに沿って手動によって移動し、前記第2移動装置は前記第2レールに沿って自動で移動することで前記被切断物を切断し、
前記第2移動装置の移動速度は、前記第1移動装置よりも高速度に設定されており、
前記検出部が、前記距離が所定の距離以上になったことを検出したときに、前記制御部は、前記第2移動装置を減速または停止させる制御を行なう
ワイヤ切断機。
【請求項2】
前記第2移動装置が減速または停止したのち、前記検出部が、前記距離が所定の距離未満になったことを検出したときに、前記制御部は、前記第2移動装置を加速または移動再開させる制御を行なう
請求項1に記載のワイヤ切断機。
【請求項3】
前記第2移動装置は、
前記第2移動装置と前記第2プーリとを連結し、前記第2移動装置に対して、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に延びる軸の回りに回転可能なアームを備え、
前記検出部は、前記距離に対応する前記アームの回転角度を検出する
請求項1または
2に記載のワイヤ切断機。
【請求項4】
前記検出部はスイッチであり、
前記スイッチは、前記アームが回転したときに、前記アームに押されて作動し、前記距離が所定の距離以上になったことを検出する
請求項
3に記載のワイヤ切断機。
【請求項5】
前記被切断物は床版であり、
前記第1レールは前記床版の上側、前記第2レールは前記床版の下側に配置され、
前記第2プーリを包囲するプーリカバーを備える
請求項1から
4のいずれかひとつに記載のワイヤ切断機。
【請求項6】
前記プーリカバーの上部が開口しており、
前記プーリカバーの下部に排水口が形成される
請求項
5に記載のワイヤ切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はワイヤによって被切断物、例えば床版を切断するワイヤ切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁のコンクリート製の床版を切断する際にワイヤを使用した切断装置が提案されている。切断装置は駆動プーリ及び従動プーリにワイヤをかけて駆動プーリを回転させることによってワイヤが駆動し、床版を切断する。
【0003】
特許文献1には、被切断物を挟んで両側に配置させたレールと、レール上を往来走行する複数の従動プーリと、従動プーリに動力を伝達する駆動プーリと、プーリ間のワイヤ長を調整する機構とを備え、従動プーリの間にワイヤをかけて回すことによって二つのレールの間にある被切断物を切断する、対向レール式のワイヤ切断機が開示されている。これにより、ワイヤに伸縮方向の負荷をかけることを防ぎつつ、被切断物に対して適切な圧力をかけて切断することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、駆動プーリは、前記従動プーリとは別途の箇所に設けられており、駆動プーリから前記従動プーリに動力が伝達されている。また、プーリ間のワイヤ長を調節する機構も前記従動プーリから別途の箇所に設けられている。これにより機械全体の構成が複雑で大型になり、狭い場所では使用できない。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、対向レール式のワイヤ切断機において機械全体の構成を簡素化及びコンパクト化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のワイヤ切断機は、被切断物を挟んで第1方向に対向し、前記第1方向に交差する第2方向に延びる第1レール及び第2レールと、前記第1レールに取り付けられており、第1プーリを備えた第1移動装置と、前記第2レールに取り付けられており、第2プーリを備えた第2移動装置と、前記第1プーリ及び前記第2プーリにかけられるワイヤと、前記第1プーリと前記第2プーリのうち、少なくとも一方に設けられ、動力を供給する機構とを備え、前記第1移動装置は前記第1レールに沿って移動し、前記第2移動装置は前記第2レールに沿って移動することで前記被切断物を切断する。
【0008】
本開示によれば、ワイヤを駆動させる機構を別途の箇所に設けることなく、レール対向式のワイヤ切断装置によって、被切断物を切断できる。
【0009】
本開示のワイヤ切断機は、第2移動装置は第2レールに沿って自動で移動する。
【0010】
本開示によれば、第1移動装置のみを作業者が制御すればよいので、作業の簡略化、作業人数の削減が可能である。
【0011】
本開示のワイヤ切断機は、前記第1プーリと前記第2プーリとの間の距離を検出する検出部と、前記検出部が、前記距離が所定の距離以上になったことを検出したときに、前記第1移動装置または前記第2移動装置のいずれかを減速または停止させる制御を行なう制御部とを備える。
【0012】
本開示によれば、第1プーリと第2プーリとの間の距離が一定の距離以上になることはなく、ワイヤに過度の負荷をかけることを防止できる。
【0013】
本開示のワイヤ切断機は、前記第2移動装置は前記第1移動装置よりも高速度で移動し、前記検出部が、前記距離が所定の距離以上になったことを検出したときに、前記制御部は、前記第2移動装置を減速または停止させる制御を行なう。
【0014】
本開示によれば、第1プーリと第2プーリとの間の距離が一定の距離以上になることはなく、ワイヤに過度の負荷をかけることを防止できる。
【0015】
本開示のワイヤ切断機は、前記第2移動装置が減速または停止したのち、前記検出部が、前記距離が所定の距離未満になったことを検出したときに、前記制御部は、前記第2移動装置を加速または移動再開させる制御を行なう。
【0016】
本開示によれば、ワイヤにかかる負荷が軽減したのち、作業者が第2移動装置に対して特段の操作をすることなく、被切断物の切断を進めることができる。
【0017】
本開示のワイヤ切断機は、前記第2移動装置は、前記第2移動装置と第2プーリとを連結し、前記第2移動装置に対して、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に延びる軸の回りに回転可能なアームを備え、前記検出部は、前記距離に対応する前記アームの回転角度を検出する。
【0018】
本開示によれば、簡易な構成で第1プーリと第2プーリとの間の距離の長短を検出することができる。
【0019】
本開示のワイヤ切断機は、前記検出部はスイッチであり、前記スイッチは、前記アームが回転したときに、前記アームに押されて作動し、前記距離が所定の距離以上になったことを検出する。
【0020】
本開示によれば、簡易な構成で第1プーリと第2プーリとの間の距離の長短を検出することができる。
【0021】
本開示のワイヤ切断機は、前記被切断物は床版であり、第1レールは前記床版の上側、第2レールは前記床版の下側に配置され、第2プーリを包囲するプーリカバーを備える。
【0022】
本開示によれば、ワイヤ切断時の発熱を抑えるため、または塵の散布を抑えるためにワイヤにかけられる切断水が放散するのを防ぐことができる
【0023】
本開示のワイヤ切断機は、前記プーリカバーの上部が開口しており、前記プーリカバーの下部に排水口が形成される。
【0024】
本開示によれば、切断溝から落下する切断水を回収し、指定の箇所に排水することで、切断水が放散するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、対向レール式のワイヤ切断機において別途の箇所にワイヤを駆動する機構を設けていないので、機械全体の構成を簡素化及びコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】
図1に示すII-II線を切断線とした断面図である。
【
図3】第2移動装置22及び第2レール21等を略示する部分拡大正面図である。
【
図4】第2移動装置22及び第2レール21等を略示する右側面図である。
【
図6】プーリカバーを備えた第2プーリ23及び第2移動装置22等を略示する正面図である。
【
図7】プーリカバーを備えた第2プーリ23及び第2移動装置22等を略示する右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本開示の実施形態に係るワイヤ切断機を、図面に基づいて説明する。
【0028】
(実施形態1)
図1は実施形態1におけるワイヤ切断機を略示する平面図、
図2は
図1に示すII-II線を切断線とした断面図である。なお本実施形態においては橋梁の床版Fを被切断物とするが、被切断物は橋梁の床版に限られるものでなく、例えばコンクリート壁でもよい。
【0029】
本実施形態では、便宜上、各図に示す前後、左右、上下の方向により、ワイヤ切断機の「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」を定義する。なお、請求の範囲にある第1方向、第2方向、第3方向は上下方向、左右方向、前後方向に対応する。以下では、このように定義される上下、左右、前後の各方向を用いて説明する。
【0030】
本実施形態では、床版Fを左から右に切断する場合の構成を説明する。
【0031】
ワイヤ切断機は第1レール11と、第2レール21とを備える。第1レール11と第2レール21は床版Fを挟んで略平行に対向するように配置される。第1レール11は床版Fの上に、左右方向に延設され、第2レール21は、床版Fの下方に複数個並べられた架台Sの上に、左右方向に延びて架設される。また、第1レール11の上部には左右方向に延びる第1ラックギア111が形成され、第2レール21の上部には左右方向に延びる第2ラックギア211が形成される。
【0032】
ワイヤ切断機は第1移動装置12を備える。第1移動装置12は第1移動台150を備える。第1レール11には、第1移動台150が取り付けられ、第1移動台150には、前後方向を回転軸方向として回転する第1プーリ13と、第1プーリ13を回転させる動力を供給する駆動装置14と、第1ラックギア111にかみ合い前後方向を回転軸方向として回転するギア(図示せず)と、前記ギアを回転させる駆動機構(図示せず)とが取り付けられる。前記駆動機構によって前記ギアが回転され、第1移動台150が第1レール11上を左右方向に移動する。従って、第1移動装置12は第1レール11上を左右方向に移動可能である。
ワイヤ切断機は第2移動装置22を備える。第2移動装置22は第2移動台250を備える。第2レール21には、第2移動台250が取り付けられ、第2移動台250には、前後方向を回転軸方向として回転する第2プーリ23が取り付けられる。なお、第2移動装置22に備えられる他の詳細な構成については後述するが、第2移動装置22は第2レール21上を左右方向に移動可能である。
【0033】
ワイヤ切断機による床版Fの切断の準備として、床版FにはワイヤWを上下方向に通すための貫通孔Fhがボーリングなどによって2箇所設けられる。2箇所の貫通孔Fhは第1プーリ13及び第2プーリ23の直径と略同長の間隔で形成される。貫通孔Fhの形状は限定されるものではなく、ワイヤWが通る大きさであればよい。
ワイヤWは2箇所の貫通孔Fhを通り、第1プーリ13及び第2プーリ23にかけられ、ループ状に接続される。駆動装置14が第1プーリ13に動力を供給して回転させると、ワイヤWが駆動する。
この状態で第1移動装置12及び第2移動装置22が右方向に移動する(以下、右移動とする)と、床版FがワイヤWによって切断され、床版Fに切断溝が形成される。
【0034】
本実施形態では、第1移動装置12の右移動は作業員が操作レバー(図示せず)を手動で操作することによって遠隔で制御されるが、第2移動装置22の右移動は自動で制御される。
【0035】
図3は本実施形態における第2移動装置22及び第2レール21等を略示する部分拡大正面図であり、
図4は第2移動装置22及び第2レール21等を略示する右側面図である。
第2移動装置22は、第2レールに取り付けられ、第2レール21上を左右方向に移動可能な第2移動台250を備える。第2移動台250の下部には、右移動を安定して行うためのローラー27が、第2レール21の上部を前後方向に挟むようにして複数取り付けられる。ローラー27の回転軸方向は上下方向である。
【0036】
第2移動装置22は、ギア263と、モーター262とを備える。ギア263は第2移動台250よりも左側に配置され、連結部材260を介して第2移動台250に連結されており、第2レール21上に形成される第2ラックギア211にかみ合っている。モーター262は連結部材260の上に配置されている。モーター262は、ギア263に動力を供給し、ギア263が前後方向を回転軸方向として回転することによって、第2移動装置22は右移動を行なう。
【0037】
第2移動台250の上部において、右端にヒンジ部252が設置される。
また、第2移動装置22は正面視略L字型のアーム251を備える。アーム251の一端部は下端部となり、他端部は上端部となり、アーム角251aが左側を向くようにアーム251は配置される。アーム251の下端部はヒンジ部252に連結される。アーム251は、ヒンジ部252を支点とし、前後方向を回転軸方向として回転可能である。
アーム251の上端部には、後方に突出した第2プーリ回転軸231が取り付けられている。第2プーリ回転軸231は、アーム251の上部に固定されている。第2プーリ回転軸231には、第2プーリ23が取り付けられており、第2プーリ23は前後方向を回転軸方向として回転可能である。
【0038】
第2移動台250の上部と、アーム251のアーム角251aとアーム下端部を結ぶ辺の中間部(以下、アーム251底辺とする)と、の間にはダンパー253が設置されている。ダンパー253は、減衰部253aとロッド253bによって構成されている。減衰部253aは第2移動台250の上部左端から右上方向に突出するように配置され、減衰部253aの下端は第2移動台250に対して、前後方向を回転軸方向として回転可能に取り付けられている。ロッド253bは減衰部からさらに右上方向に突出し、右上端でアーム251底辺に対して、前後方向を回転軸方向として回転可能に連結している。また、ロッド253bは減衰部253aに対して進退可能である。ダンパー253はアーム251が回転する可動角度を制限する。
【0039】
第2移動台250の上部において、ヒンジ部252の左方にスイッチ254が設置される。スイッチ254は、下端を支点とし、前後方向を回転軸方向として回転可能なレバー式のスイッチである。スイッチ254は付勢部材(図示せず)を備え、前記付勢部材はスイッチ254を右方向に付勢する。アーム251が左方向に回転すると、スイッチ254もアームに押されて、前記付勢部材の付勢力に抗して左方向に回転する。スイッチ254は、予め定めた基本位置から所定の角度以上左方向に回転すると作動する。また、スイッチ254が作動している状態から、アーム251が右方向に回転すると、スイッチ254も前記付勢部材の付勢力によって右方向に回転し、スイッチ254の前記基本位置からの回転角度が前記所定角度未満になった場合、スイッチ254の作動は解除される。ただし、スイッチ254は押しボタン式のスイッチでもよく、その場合はアーム251の底辺部に突出部を形成し、アーム251が左方向に所定の角度以上回転し、前記突出部がボタンを押したときに作動するスイッチとしてもよい。
スイッチ254は作動すると、後述の制御部261に、第2移動装置22の右移動速度を減速させる信号を送信する。なお、信号は停止を指示するものでもよく、または二段階に信号を切り替え、一段階目で減速、二段階目で停止を指示するものでもよく、または切り替えの段階を更に細分化し、段階的に減速を指示するものでもよい。
【0040】
第2移動台250の上部において、スイッチ254の左方に制御部261が設置される。
制御部261は、減速または停止を指示する信号を受信したとき、モーター262の動作を弱め、または停止させる制御を行なうことにより、第2移動装置22の右移動速度を減速または停止させる。なお、第2移動装置22の減速制御方法はこれに限られるものではなく、例えばトランスミッションによって右移動を減速してもよい。また、停止方法もこれに限られるものではなく、例えばクラッチ操作や、ギア263を第2ラックギア211から離すことによって横移動を停止してもよい。
【0041】
図5は切断作業中のワイヤ切断機の断面図である。第1移動装置12の右移動は作業員によって遠隔で操作され、第2移動装置22の右移動は自動で制御される。第2移動装置22の通常時の右移動速度は、第1移動装置12よりも高速度に設定される。
【0042】
切断が進むと、
図5に示すように第2移動装置22が第1移動装置12に対して先行する。このとき第1プーリ13と第2プーリ23との間の距離が長くなり、ワイヤWに伸縮方向の負荷がかかる。第1プーリ13と第2プーリ23との間の距離が一定距離以上になると、ワイヤWの張力によって第2プーリ23が左方向に引っ張られる。するとアーム251が左方向に回転し、スイッチ254を押して左方向に回転させる。スイッチ254が前記基本位置から前記所定の角度以上左方向に回転すると、スイッチ254は作動する。
【0043】
スイッチ254が作動すると、制御部261に、第2移動装置22の右移動速度を減速させる、または停止させることを指示する信号が送信される。信号を受信した制御部261は、第2移動装置22の右移動速度を減速または停止させる制御を行なう。
【0044】
第2移動装置22が減速または停止したのち、第1移動装置12の右移動が進行し、2つのプーリ間の距離が一定距離未満になると、ワイヤWにかかる伸縮方向の負荷は軽減する。このときワイヤWが第2プーリ23を引っ張る力は弱まり、アーム251は右方向に回転する。すると、スイッチ254も前記付勢部材の付勢力によって右方向に回転し、スイッチ254の前記基本位置からの回転角度が前記所定角度未満になった場合、スイッチ254の作動は解除される。
【0045】
スイッチ254の作動が解除されると、制御部261に、通常時の速度で第2移動装置22の右移動を再開させる信号が送信される。信号を受信した制御部261は、通常時の右移動速度で第2移動装置22の右移動を再開させる制御を行なう。
【0046】
本実施形態によれば、ワイヤWへの負荷が過度になる前に第2移動装置22が減速または停止し、第2移動装置22が減速または停止している間に第1移動装置12の右移動を進めることによって、第1プーリ13と第2プーリ23との間の距離を短縮し、ワイヤWへの負荷を軽減することができる。また、ワイヤWへの負荷が軽減したのち、第2移動装置22が自動で右移動の速度を回復することにより、作業者は第2移動装置22の操作を行う必要がなく、床版Fの切断にかかる作業者の作業量が軽減できる。
【0047】
以上の構成によるワイヤ切断機では、第1プーリ13に駆動装置14が備えられ、またアーム251と、スイッチ254と、制御部261とによって第1プーリ13と第2プーリ23との間の距離を調整する機能を持つ。このため、本実施形態によるワイヤ切断機は、対向レール式のワイヤ切断機において、別途の箇所にワイヤを駆動する機構と、ワイヤ長とプーリ間の距離を整合させる機構とを設けることなくプーリ間の距離を調整し、機械全体の構成を簡素化及びコンパクト化することができる。
【0048】
(実施形態2)
実施形態2では実施形態1に加え、第2プーリ23にプーリカバー3を備える。
図6はプーリカバーを備えた第2プーリ23及び第2移動装置22等を略示する正面図であり、
図7はプーリカバーを備えた第2プーリ23及び第2移動装置22等を略示する右側面図である。
以下では、実施形態2について実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付し、その構成部の説明を省略する。
【0049】
図6、
図7に示すように、第2プーリ回転軸カバー232が、第2プーリ回転軸231のうち、第2プーリ23とアーム251の間に露出している部分を包囲して取り付けられる。プーリカバー3には、第2プーリ回転軸カバー232が嵌合する孔部が形成されており、前記孔部に第2プーリ回転軸カバー232が嵌合することによって、プーリカバー3は保持され、第2プーリ23を包囲するように第2移動装置22に備えられる。プーリカバー3の保持位置はこれに限られるものではなく、第2プーリ23を包囲しながら、第2移動装置22の右移動に従って一緒に移動し、アーム251が回転しても第2プーリ23及びワイヤWと、プーリカバー3が接触しないように取り付けられれば、どこに保持されてもよい。
【0050】
プーリカバー3の上部は開口しており、切断溝から落下する切断水(ワイヤ切断機使用時に、ワイヤ温度上昇防止および粉塵飛散防止を目的として、ワイヤや切断箇所にかけられる水である。以下において同じ。)を回収することができる。また、プーリカバー3の下部には排水口31が形成され、排水口31に接続されたホースHによって切断水を任意の箇所に排水することができる。プーリカバー3により切断水を回収し、排水口31とホースHにより排水することによって、作業領域が濡れることを防ぎ、他の作業の妨げとなることを防止できる。
【0051】
(変形例)
実施形態1において、被切断物は床版に限られず、例えばコンクリート製の壁や柱等でもよい。また、第1レール11と第2レール21が対抗する方向は上下に限られず、左右や前後でもよい。
【0052】
実施形態1、2において、第2プーリを回転させる駆動装置を第2移動装置に備えてもよい。この場合、第1移動装置に駆動装置14を備えなくてもよい。
【0053】
実施形態1、2において、第1移動装置12は作業員のレバー操作によって左右方向の移動を制御されるが、自動で制御されてもよい。
【0054】
実施形態1、2において、第2移動装置22の右移動速度を第1移動装置12の右移動速度よりも低速度にしてもよい。このとき、第1プーリ13と第2プーリ23との間の距離が一定距離以上の長さになったことを検出部が検出した時、第1移動装置12が右移動できないようにロックがかかる構成にしてもよい。
【0055】
実施形態1、2において、第1プーリ13と第2プーリ23との間の距離を検出する検出部はスイッチ254によるものに限られない。例えば、ヒンジ部252に、アーム251の回転角度によって出力電圧が変化するポテンションメータを備え、前記ポテンションメータの出力電圧によって第1プーリ13と第2プーリ23との間の距離を検出してもよい。
【0056】
開示された実施形態1、2は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
11 第1レール
111 第1ラックギア
12 第1移動装置
13 第1プーリ
14 駆動装置
150 第1移動台
21 第2レール
211 第2ラックギア
22 第2移動装置
23 第2プーリ
231 第2プーリ回転軸
232 第2プーリ回転軸カバー
250 第2移動台
251 アーム
251a アーム角
252 ヒンジ部
253 ダンパー
253a 減衰部
253b ロッド
254 スイッチ
260 連結部材
261 制御部
262 モーター
263 ギア
27 ローラー
3 プーリカバー
31 排水口
S 架台
W ワイヤ
F 床版F
Fh 貫通孔
H ホース