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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20230119BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20230119BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
A01G31/00 601B
A01G31/00 612
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018234094
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020092675
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】521547611
【氏名又は名称】サンパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 久和
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-057965(JP,A)
【文献】特開2013-081422(JP,A)
【文献】特開2012-034686(JP,A)
【文献】特開2009-291185(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001763(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/181417(WO,A1)
【文献】特開2017-042055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 9/00 - 9/26
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレーム内において上下に区切られた複数の栽培空間と、
前記栽培空間の下方に設置される栽培容器と、
前記栽培空間の上方に設置される照明装置と
前記栽培空間に設置される廃液路または廃液槽とを有しており、
前記廃液路または前記廃液槽は、当該栽培空間より上の栽培空間の栽培容器から排出される廃液を貯留し、かつ、当該栽培空間の照明装置と熱交換できるように構成されており、
前記廃液路または前記廃液槽は、前記廃液路内または前記廃液槽内の前記廃液が一定の水面以上となったとき、その増加分だけ排水するオーバーフロー排水機構を有し、
前記照明装置は、前記廃液路または前記廃液槽を介して前記廃液によって冷却される、
植物栽培装置。
【請求項2】
前記栽培空間は、棚板によって区切られており、
前記棚板の下方に前記照明装置および前記廃液路または前記廃液槽が設けられ、前記棚板の上方に前記栽培容器が設けられている、
請求項記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記廃液路または前記廃液槽は、前記照明装置と前記棚板との間に設けられている、
請求項記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記廃液路または前記廃液槽は、前記照明装置の横側に設けられている、
請求項記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記フレームに支持されて上下に配列される複数の栽培ベッドを有しており、
前記栽培空間は、前記栽培ベッドによって区切られており、
前記栽培ベッドは、栽培容器と、その下方に設けられた照明装置と、前記廃液路または前記廃液槽とを備えている、
請求項記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記廃液路または前記廃液槽は、前記栽培容器の横側に設けられており、
前記廃液路または前記廃液槽の底部は、照明装置の横側または上側に設けられている、
請求項記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記廃液路または前記廃液槽が、栽培容器と照明装置との間に設けられている、
請求項記載の植物栽培装置。
【請求項8】
前記廃液路または前記廃液槽が、前記照明装置と隣接している、
請求項1~7のいずれかに記載の植物栽培装置。
【請求項9】
前記栽培空間が密閉されている、
請求項1~8のいずれかに記載の植物栽培装置。
【請求項10】
前記栽培容器は、培養液を供給する供給部と、前記栽培容器内の培養液が一定の水面以上となったとき、その増加分だけ前記廃液槽に前記廃液として送るオーバーフロー排水機構とを有する、
請求項1~9のいずれかに記載の植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培装置は、天気等に左右されることなく安定して野菜等の植物を生産できるものとして多くの研究がなされてきた。
本出願人も、棚フレームと、その棚板に支持される栽培容器と、棚板の下面に配置された多数の発光ダイオードを備えた照明器具とを有し、栽培容器内の培養液によって棚板を介して照明器具を冷却する栽培棚を提案している(特許文献1)。
また本出願人は、断熱作用を奏する遮温壁からなる箱体と、その箱体の上部に配置される発光パネルと、その箱体の天井と発光パネルとの間の上循環路と、その箱体の底面と発光パネルとの間の下循環路と、上循環路内に発光パネルを冷却する空気を供給する冷却装置とを有し、上循環路と下循環路とは一端で連通し、冷却装置の冷却空気が上循環路の他端から供給される植物栽培装置も提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3952220号公報
【文献】特許第5357863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように、栽培容器内の培養液によって照明器具を冷却する場合、逆に培養液が温められることになるため、特に、栽培空間の温度等の環境制御を精密に行うことが求められる場合、好ましくない。また培養液の循環経路によっては培養液の一部で熱がこもってしまったりするおそれがある。
一方、特許文献2のように冷却空気で発光パネルを冷却する場合、冷却空気では十分に照明器具を冷却できない場合がある。
本発明は、栽培空間への影響が小さく、照明装置を確実に冷却することが可能な植物栽培装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の植物栽培装置の第1の態様は、栽培空間と、前記栽培空間の下方に設置される栽培容器と、前記栽培空間の上方に設置される照明装置とを有しており、前記照明装置は、前記栽培容器から排出される廃液によって冷却されることを特徴としている。
本発明において、「廃液」とは、栽培容器から排出された培養液、あるいは、培養液が循環されている場合は、栽培容器に対して下流側にある培養液をいう。
本発明は、廃液によって照明装置を冷却するため、栽培環境への影響を極力小さくでき、栽培条件の制御を正確に行うことができる。
【0006】
本発明の植物栽培装置の第2の態様は、フレームと、前記フレーム内において上下に区切られた複数の栽培空間と、前記栽培空間の下方に設置される栽培容器と、前記栽培空間の上方に設置される照明装置とを有しており、前記照明装置は、当該栽培空間より上の栽培空間の栽培容器から排出される廃液によって冷却されることを特徴としている。
この植物栽培装置も廃液によって照明装置を冷却するため、第1の態様と同様の効果を得ることができる。さらに、廃液を照明装置より上方にある栽培容器から供給するため、ポンプ等の設備を用いることなく簡易な設備で、廃液で照明装置を冷却することができる。
【0007】
本発明の植物栽培装置の第2の態様であって、前記栽培空間が密閉されているものが好ましく、特に、密封されているものが好ましい。ここで「密閉」とは、通常の状態において固形の異物が侵入することを防ぐ状態をいい、「密封」とは、通常の状態において水分や気体が侵入することを防ぐ状態をいう。栽培空間が密閉されている場合、各栽培空間における植物の種類または生長状態に応じて環境を独立して制御することができる。特に、各栽培空間が密封されている場合、各栽培空間の環境を厳密に制御することができる。
【0008】
本発明の植物栽培装置であって、前記排液を流す廃液路または前記廃液を貯留して排出する廃液槽を有しており、前記廃液路または前記廃液槽と、照明装置とが熱交換できるように構成されているものが好ましい。
このように廃液を通す廃液路または廃液槽と、照明装置とが熱交換できるように構成されている場合、簡易な設備で照明装置を冷却できる。
【0009】
第2の態様の植物栽培装置であって、前記栽培空間は棚板によって区切られており、前記棚板の下方に照明装置および前記廃液路または廃液槽が設けられ、前記棚板の上方に栽培容器が設けられているものが好ましい。この場合、前記廃液路または前記廃液槽が、前記照明装置と棚板との間に設けられているものがさらに好ましい。あるいは、前記廃液路または前記廃液槽は、前記照明装置の横側に設けられているものがさらに好ましい。
【0010】
第2の態様の植物栽培装置であって、前記フレームに支持されて上下に配列される複数の栽培ベッドを有しており、前記栽培空間は、前記栽培ベッドによって区切られており、前記栽培ベッドは、栽培容器と、その下方に設けられた照明装置と、前記廃液路または前記廃液槽とを備えているものが好ましい。この場合、前記廃液路または前記廃液槽は、前記栽培容器の横側に設けられており、前記廃液路または前記廃液槽の底部は、照明装置の横側または上側に設けられているものがさらに好ましい。あるいは、前記廃液路または前記廃液槽が、栽培容器と照明装置との間に設けられているものがさらに好ましい。
【0011】
本発明の植物栽培装置であって、前記廃液路または前記廃液槽が、前記照明装置と隣接しているものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の植物栽培装置の第1の実施形態の概略をを示す側面断面図である。
図2図2aは図1のX-X線断面図であり、図2bは図1の植物栽培装置の栽培容器の一例を示す一部側面断面図であり、図2cは図1の植物栽培装置の照明装置を示す平面図である。
図3図3aは図1のY-Y線断面図であり、図3bは廃液槽のオーバーフロー排出機構を示す概略図であり、図3cは廃液槽の断面図であり、図3dは廃液層の他の例を示す断面図であり、図3eは図1のZ-Z線断面図である。
図4図4aは廃液槽の他の例を示す断面図であり、図4bは栽培容器および廃液槽の他の例の概略を示す一部側面断面図であり、図4cは図4bのZ1-Z1線断面図であり、図4dは本発明の植物栽培装置の第2の実施形態の概略を示す側面断面図である。
図5図5aは本発明の植物栽培装置の第2の実施形態の概略を示す側面断面図であり、図5b、図5cはそれぞれX1-X1線断面図、Y1-Y1線断面図である。
図6図6aは本発明の植物栽培装置の第3の実施形態の概略を示す側面断面図であり、図6b、図6cはそれぞれX1-X1線断面図、Y2-Y2線断面図である。
図7図7aは栽培ベッドの他の例を示す一部側面断面図であり、図7bは図7aのX3-X3線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1の植物栽培装置10は、フレーム11と、そのフレーム11内において上下に区切られた複数の栽培空間12と、栽培空間12の下方に設置される栽培容器13と、栽培空間12の上方に設置される照明装置14とを有している。植物栽培装置10の栽培空間12は、フレーム11の棚板21によって区切られている。そして、上側の栽培空間12の栽培容器13から排出される廃液によって、下側の栽培空間12の照明装置14を冷却するものである。
【0014】
フレーム11は、長方形状に四方に配設される柱20と、その柱20に上下方向一定間隔で固定される棚板21とを備えている。また四方の柱20を覆うように、前後(図1の左右)および左右(図1の表裏)に壁(図示せず)が設けられている。そして一番上の栽培空間12は、天井22によって閉じられている。なお、前後壁は各段に応じて開閉または取り外し可能としており、栽培空間12から栽培容器13の取り出しを行う。しかし、左右壁を開閉または取り外し可能としてもよく、前後左右壁いずれも開閉または取り外し可能な構造とすることが好ましい。
栽培空間12は、対応する前後左右の壁および上下の棚板21によって密閉されている。つまり、各栽培空間12は独立している。このように密閉することにより、各栽培空間の温度、湿度を独立して制御することができる。密閉されていれば、後述するようにダクト16を介して所定の温度の空気を循環させており、制御タンク32を介して所定の温度の培養液を循環させているため、密閉状態で十分に栽培空間の温度を制御することができる。しかし、各栽培空間12を密封するのが好ましい。例えば、開閉自在の前後壁の周縁にシール材等を設け、水分または気体の浸入を防ぐようにしてもよい。このように密封することにより、栽培空間の環境を厳密に制御することができる。密閉するか、密封するかは、栽培する植物に応じて適宜決定することができる。
【0015】
フレーム11は、全体として直方体状を呈する。そして、上下に区切られる栽培空間12も直方体状を呈しており、縦長(図1の左右方向)に延びている。また棚板21も長方形状の板からなる。
図1では、栽培空間12を3段設けている。しかし、その段数は特に限定されず、2段であっても、4段以上であってもよい。
このようにフレーム11の構造は、棚板21を上下に一定の間隔で支持できれば、特に限定されるものではない。例えば、フレーム11の強度を上げるべく、柱20同士を梁で連結してもよい。その場合、梁で棚板21を支持させてもよい。さらに、棚板21は、例えば、複数のパイプを並べて長方形状に成形したものでもよい。この場合、後述する栽培容器のオーバーフロー排水機構の排水筒をパイプの間に通すだけでよい。さらに、フレーム11および栽培空間12も直方体とするのが好ましいが、正方体であってもよい。
【0016】
栽培容器13は、棚板21上に載置されるものであり、上側に開口し、棚板21の長手方向に延びている。栽培容器13は、棚板21が上下に区分けする栽培空間12の上側の栽培空間の下方に位置する。
栽培容器13の一端(図1の左側)には、培養液を供給する供給部13aが設けられている。栽培容器13の他端(図1の右側)には、オーバーフロー排水機構13bが設けられている。詳しくは、図2aに示すように、栽培容器13の底面に設けられた排水孔13b1と、その排水孔13b1に挿入される排水筒13b2とからなる。排水筒13b2は、棚板21に設けられる孔21aにも挿入され、後述する廃液槽15に廃液を送る。排水筒13b2の上端は、栽培容器の水面Sに合わせられている。これにより水面Sより培養液が高くなると、培養液は排水筒13b2から流れ、廃液となる。なお、オーバーフロー排水機構として図2aのような構造を挙げたが、一定の水面以上となったとき、その増加分だけ排水するものであれば、その構造は特に限定するものではない。このようにオーバーフロー排水機構とすることにより、常時、培養液を循環させながら、栽培容器13に一定量の培養液を保持させる。よって、植物には一定量の培養液を与え続けることができる。
また栽培容器13の上面には、図2bに示すように、栽培する植物Pを一つ一つ区切る区切板13dを、栽培容器13の開口部を閉じるように設けている。これにより、栽培する植物同士がからまることを防ぐ。しかし、このような区切りを設けなくてもよい。
【0017】
照明装置14は、図1に示すように、棚板21の下方に設置されるものであり、棚板21の長手方向に延びている。つまり、棚板21の下方に、棚板21に沿って設けられている。この照明装置14は、当該棚板21が上下に区分けする栽培空間12の下側の栽培空間の上方に位置し、下側の栽培空間の栽培容器13に向かって光を照射する。
照明装置14は、図2a、図2cに示すように、長方形状の枠体14aと、その枠体14aの開口14a1に固定される導光板14bと、導光板14bの側部に沿って設けられ、導光板14bに光を照射するように、枠体14aの両側縁14a2の内部に挿入される光源14cとを有する。照明装置14は、パネル状のものであり、パネルに対して垂直方向に光を照射するように構成されている。光源14cは、縦長の基板(図示せず)と、基板の長手方向に均等に並べられた複数の発光ダイオード(図示せず)とを備えている。この照明装置14では、光源14cが発熱する。照明装置14は、棚板21の長手方向において、両外側(図2a、図2bにおける左右側)に光源14cが配置するように設置される。棚板21に取り付けられる照明装置14は一枚のパネルからなっても、複数枚のパネルを連結させて構成してもよい。
照明装置14の枠体14aを熱伝導率の高い素材、例えば、アルミニウム等の金属、または、熱伝導率の高いセラミックス等から形成される。しかし、光源14cと廃液槽15との間で熱交換ができるようになっていれば、熱伝導率の高い素材の使用を一部としてもよい。
【0018】
廃液槽15は、図2aに示すように、棚板21の下方であって、棚板21の両側縁に固定されるものであり、上側に開口している。そして、棚板21がその開口を閉じている。つまり、棚板21の下方であって、照明装置14の両側に設けられている。また廃液槽15は、上述の栽培容器13の排水筒13b2の下方に位置する。そのため、廃液槽15の他端(図1の右側)から排水筒13b2を介して廃液が供給される。廃液槽15の一端(図1の左側)には、図3a、図3bに示すように、オーバーフロー排水機構15aが設けられている。詳しくは、廃液槽15の他方端15cの壁に設けられた排水孔15a1と、その排水孔15a1に挿入されるL字形の排水筒15a2とからなる。なお、廃液槽15のオーバーフロー排水機構も、一定の水面以上となったとき、その増加分だけ排水するものであればよく、特に限定するものではない。このようにオーバーフロー排水機構とすることにより廃液槽15の廃液を循環させつつ、一定量貯留させることができる。
【0019】
廃液槽15の底部には、照明装置14を保持する保持部15bが形成されている。詳しくは、保持部15bは、図3cに示すように、上側面15b1と、下側面15b2と、それぞれを繋ぐ縦面15b3とを有し、側面が開口した断面コ字状を呈している。上側面15b1は、廃液槽15の底部を兼ねている。保持部15bは、それぞれの廃液槽15の底部に設けられており、それぞれの開口が相対するように設置されている。そして、それぞれの保持部15bは、図3aに示すように、照明装置14の各側縁14a2、特に照明装置14の光源14cの外側を保持する。そのため、両廃液槽15の保持部15bによって、照明装置14が固定される。つまり、廃液槽15および後述するダクト16は、照明装置14と棚板21との間に設けられている。さらに、詳しくは、廃液槽15は、照明装置14の光源14cに隣接しており、かつ、照明装置14を支持している。なお、廃液槽15は、フレーム11の柱20や棚板21等に固定される。
廃液槽15は、上述した熱伝導率の高い素材で形成されている。しかし、この場合も照明装置14の光源14cと廃液槽15との間で熱交換ができるようになっていれば、熱伝導率の高い素材の使用を一部としてもよい。
【0020】
このように廃液槽15は、照明装置14の光源14cと棚板21との間に設けられているため、廃液槽15と光源14cとの間に熱交換ができ、光源14cを冷却することができる。特に、廃液槽15と光源14cとは隣接しているため、効率よく熱交換できる。
しかし、照明装置14の光源14cと廃液槽15との間で熱交換ができるようになっていれば、その構造も特に限定されるものではない。例えば、図3dのように、廃液槽15を照明装置14の横側に設けてもよい。特に、廃液槽15と照明装置14の横側に隣接させてもよい。
【0021】
図1に戻って、ダクト16は、照明装置14と棚板21との間に設けられた長手方向に延びる空間である。このダクト16には、冷却された空気が流される。これにより、照明装置14を冷却するものである。またこのダクト16を通した空気を栽培空間12に循環させることによって、栽培空間12の環境温度も制御する。冷却された空気を直接植物に当てると、冷害の原因となるため、一度、ダクト16を通した空気で環境温度を制御することにより、健康な植物を栽培することができる。なお、ダクト16に冷却した空気を通さなくてもよい。その場合でも、照明装置14と栽培容器13との間に空気の層を形成することになるため、照明装置14による発熱の影響を最小限に抑えることができる。
【0022】
なお、フレーム11の天井22には、照明装置14が設けられている。この照明装置14は、図3eに示すように、2本の冷却槽25によって保持されており、2本の冷却槽25によって冷却されている。つまり、冷却槽25の下端には、保持部25bが形成されている。この冷却槽25にもオーバーフロー排水機構25aが設けられている。このように植物栽培装置10の一番上の照明装置は、別途冷却機構を必要とするが、その冷却手段は特に限定されない。例えば、当該栽培空間(一番上の栽培空間)12の栽培容器13の廃液を冷却槽25までポンプ等で流しても良い。
図1に戻って、植物栽培装置10は、それぞれの廃液槽15から排出される廃液を、制御タンク32を介することで新たな培養液として供給部13aに供給している。つまり、培養液を循環させている。この植物栽培装置10では、天井22の冷却槽25の廃液、および一番下の栽培空間12の栽培容器13の廃液も、制御タンクに戻している。制御タンク32内では、フィルター等によって廃液のゴミを除去し、ヒートポンプ33等によって設定された温度とする。また培養液の成分が一定となるように制御してもよい。
【0023】
このように構成された植物栽培装置10は、供給部13aから供給された培養液は栽培容器13の一端から他端に流れる。次いで、栽培容器13の他端から排水された廃液槽15に供給される。そして、廃液は、廃液槽15の他端から一端に流れて排出される。ここで廃液槽15には、一定の深さの廃液が貯留されるようになっており、かつ、廃液槽15と照明装置14とは熱交換できるように構成されている。そのため、廃液槽15において、照明装置14を確実に冷却できる。このように植物栽培装置10は、栽培容器13から排出された廃液によって照明装置14を冷却するため、栽培条件等への影響がなく、栽培条件の制御を正確に行うことができる。
【0024】
図1の植物栽培装置10では、廃液槽15を棚板21の両側に設けているが、図4aに示すように、片側のみに設けてもよい。この場合、照明装置14の光源14cを導光板14bの側縁であって、廃液槽15と対応する側縁に設け、廃液槽15と光源14cとを隣接させるのが好ましい。
また図1の植物栽培装置10では、栽培空間12を密閉しているが、外部と開放させてもよい。そのような解放型の植物栽培装置は、例えば、内部の温度が制御されている工場内において、使用することができる。この場合、密閉型より制御は緩くなるが、廃液によって照明装置を冷却しているため、栽培空間内の環境を制御することができる。また栽培容器内において培養液の一部の熱がこもったりすることが防止できる。その場合、ダクト16には、冷却された空気を通さなくても良いが、通す方が栽培空間内の空気を循環でき、環境をより平均化しやすい。
【0025】
また図1の植物栽培装置10では、図2bに示すように、区切板等で植物を区切り、栽培容器13において植物を直接栽培することを前提としている。しかし、図4b、図4cに示すように、植物を栽培する直方体状の樋状の栽培容器26を植物栽培装置10の栽培容器13(第1廃液槽27)の幅方向に係止させ、栽培容器26を栽培容器の長手方向に複数並べてもよい。ここでは栽培容器26のフランジ部26aを第1廃液槽27の縁部に係止させている。そして、各栽培容器26には、供給部13aと、オーバーフロー排水機構13bとが設けられている。また、この場合、図1の植物栽培装置10の栽培容器13が第1廃液槽27として作用し、図1の植物栽培装置10の廃液槽15が第2廃液槽として作用する。他の構成は、図1の植物栽培装置10と実質的に同じである。
このように構成することにより、培養液は、供給部13aから栽培容器26に供給され、オーバーフロー排水機構13bから第1廃液槽27に排水される。排水された廃液は、第1廃液槽27(図1の植物栽培装置の栽培容器13)の排水孔27aから第2廃液槽(図1の植物栽培装置の廃液槽15)に供給される。この場合も、第2廃液槽において、照明装置14を冷却できるため、同様の効果が得られる。なお、排水孔27aの代わりにオーバーフロー排水機構を設けてもよい。
このような樋状の栽培容器26を用いた栽培方法の一例として、第1廃液槽の一端において、苗などの栽培初期の植物を栽培し、成長と共に他端の方に移動させ、第1廃液槽の他端において、収穫直前の植物が栽培する。このように栽培容器26を第1廃液槽において植物の生長状態に応じて移動させることにより、栽培スペースを効率よく用いた栽培を行うことができる。
【0026】
図4dの植物栽培装置40は、一段のみからなる。つまり、栽培空間41と、その下方に設置される栽培容器42と、その上方に設置される照明装置43とを有している。また照明装置43に沿って、廃液槽44が上方に隣接されている。なお、栽培容器42から排出される廃液は、ポンプ45によって、廃液槽44に送られている。廃液槽44から排出された廃液は、例えば、上述した制御タンク32を介して栽培容器42に循環される。なお、廃液槽44には、上述した植物栽培装置10と同様の一定量の廃液を貯留するオーバーフロー排水機構(図示せず)が設けられている。
この植物栽培装置40のように一段からなっても、ポンプ45で廃液を廃液槽44に送ることにより、廃液によって照明装置を冷却させることができる。この植物栽培装置40において、栽培空間41は、密閉されている。しかし、開放させてもよい。
【0027】
図5の植物栽培装置50は、植物栽培装置10のダクト16を備えていないものである。フレーム11、栽培空間12、照明装置14は、図1の植物栽培装置10と実質的に同じものである。また栽培容器13は、廃液槽51が栽培容器13の下方に位置しているため、図5に示すように、オーバーフロー排水機構13bが一つであること以外は、図1の植物栽培装置10の栽培容器13と実質的に同じである。
廃液槽51は、棚板21の下方に固定されるものであり、上側に開口している。廃液槽51は、実質的に棚板21の下方全体に設けられている。そのため、廃液槽51の他端(図6の右側)から排水筒13b2を介して廃液が供給される。一方、廃液槽51の一端(図5の左側)には、図1の植物栽培装置10の廃液槽15と実質的に同じオーバーフロー排水機構15aが設けられており、廃液槽51の一端から廃液が排出される。
また廃液槽51の下面には、照明装置14を保持する保持部51aが形成されており、廃液槽51の下面と当接するように照明装置14が設けられている。つまり、廃液槽51と照明装置14とが熱交換できるように構成されている。
【0028】
このように構成された植物栽培装置50も、図1の植物栽培装置10と同様に、廃液槽51に一定の深さの廃液が貯留されるようになっており、かつ、廃液槽51と照明装置14とは熱交換できるように構成されているため、廃液によって照明装置14を確実に冷却することができる。また植物栽培装置50は、照明装置14の裏面全体と、廃液槽51とが隣接している。そのため、ここでは照明装置14を用いているが、例えば、パネル全体に発光ダイオードが装着されたような照明装置のように、全体で発熱する照明装置を冷却するのに好ましい。
なお、植物栽培装置50は、栽培空間12は密閉されていなくてもよい。上述したように、例えば、工場内において、工場内の温度が制御されていれば、廃液によって照明装置を冷却しているため、栽培空間12の環境を制御することができる。さらに、栽培容器内において培養液の一部の熱がこもったりすることが防止できる。
【0029】
図6aの植物栽培装置60は、フレーム61と、そのフレーム61内において上下に区切られた複数の栽培空間62と、フレーム61に支持されて上下に配列される複数の栽培ベッド63とを有している。栽培空間62は、栽培ベッド63によって区切られている。そして、栽培ベッド63は、栽培ベッド63によって区切った上側の栽培空間の対象植物を栽培させる栽培容器66と、下側の栽培空間の栽培容器66を照射する照明装置67とを備えている。そして、上側の栽培空間62の栽培容器66から排出される廃液によって、下側の栽培空間62の照明装置67を冷却するものである。
【0030】
フレーム61は、長方形状に四方に配設される柱61aと、その柱61aに一定間隔で設けられた複数の固定ツメ61bとを備えている。このフレーム61にも、図1のフレーム11と同様に前後(図6aの左右)および左右(図6aの裏面)に壁(図示せず)が設けられており、各段に応じて開閉または取り外し可能となっている。そして、栽培空間62は密閉、好ましくは密封されている。またフレーム61に、栽培ベッド63を上下させる昇降装置(図示せず)を設けるのが好ましい。これにより栽培方法に応じて自由に栽培ベッドを移動させることができる。フレーム61は、全体として直方体状を呈する。そして、上下に区切られる栽培空間62も直方体状を呈しており、縦長に延びている。植物栽培装置60は、栽培空間62を3段設けているが、その段数は特に限定されず、2段であっても、4段以上であってもよい。
固定ツメ61bは、栽培ベッド63を支持する。なお、フレーム61の強度を上げるべく、柱61a同士を梁で連結してもよい。その場合、固定ツメ61bを省略し、梁で栽培ベッド63を支持するようにしてもよい。また固定ツメ61bは柱ではなく、梁に設けられてもよい。さらに固定ツメ61bは、折り畳み可能としたり、柱または梁内に収納可能としたりしてもよい。これは上述のように昇降装置で栽培ベッドを移動させるとき、固定ツメを折り畳み可能としておくと、効率よく栽培ベッドの移動ができる。しかし、フレーム61の構造は、栽培ベッド63を上下に配列するように支持することができれば、特に限定されるものではない。また栽培空間62も直方体状の縦長とするのが好ましいが、正方体であってもよい。
【0031】
栽培ベッド63は、フレーム61の長方形状の平面の長手方向と平行に設置させる縦長のものである。栽培ベッド63は、図6b及び図6cに示すように、上側に開口した栽培容器66と、その栽培容器66の下方であって下側に向いた照明装置67と、栽培容器66に沿って、栽培容器66の両側に設けられる廃液槽68とを備えている。また栽培容器66の下面と照明装置67との間にはダクト69が設けられている。照明装置67、ダクト69は、図1の植物栽培装置10の照明装置14、ダクト16と実質的に同じものである。
このような栽培ベッド63は、アルミニウムなどの熱伝導率の高い素材で一体に成形することができる。
【0032】
栽培容器66は、上側に開口し、長手方向に延びている。つまり、栽培容器66は、当該栽培ベッド63が上下に区分けする栽培空間62の上側の栽培空間の下方に位置する。その他は、図1の植物栽培装置10の栽培容器13と実質的に同じものであり、培養液を供給する供給部66a(図7の左側)およびオーバーフロー排水機構66bが設けられている。詳しくは、図6bに示すように、栽培容器66の側面に設けられた排水孔66b1と、その排水孔66b1に挿入されるL字形の排水筒66b2とからなる。これにより水面S以上に培養液が供給されると、培養液はオーバーフロー排水機構か排水筒66b2から廃液槽68へと排出され、廃液となる。なお、オーバーフロー排水機構として一例を挙げたが、一定の水面以上となったとき、その増加分だけ排水するものであれば、特に限定するものではない。これにより安定して栽培を行うことができる。
この場合もまた栽培容器66の上面には、栽培する植物を一つ一つ区切る区切板(図示せず)を浮かべたり、樋状の栽培容器26を用いたりしてもよい。
【0033】
この植物栽培装置60は、この栽培ベッド63において、廃液槽68が栽培容器66の横側に設けられており、廃液槽68の底部が照明装置67の上側に設けられている。さらに、廃液槽68の底部が照明装置67と当接している。そのため、図1の植物栽培装置10と同様に、廃液で照明装置14を冷却することができる。なお、栽培ベッド63のようにアルミニウム等の熱伝導率の高い素材で一体成形としている場合でも、照明装置14と栽培容器66との間にダクト69を設けており、かつ、熱源となる照明装置14から栽培容器66へと到達するまでの間に廃液槽65を設けているため、照明装置14の熱源の栽培環境への影響を最小限にすることができる。
なお、この植物栽培装置60も、栽培空間62を密閉しているが、図1の植物栽培装置10と同様に、環境を制御できる範囲で外部と開放させてもよい。
【0034】
図6の植物栽培装置60において、栽培ベッド63を図7a、bの栽培ベッド71としてもよい。栽培ベッド71は、栽培ベッド71によって区切った上側の栽培空間の対象植物を栽培させる樋状の栽培容器72と、下側の栽培空間の栽培容器を照射する照明装置73と、栽培容器72と照明装置73との間に設けられた廃液槽74とを備えている。栽培容器72は、当該栽培ベッド71が上下に区分けする上側の栽培空間の下方に位置し、照明装置73は、当該栽培ベッド71が上下に区分けする下側の栽培空間の上方に位置する。そして、上側の栽培空間の栽培容器72から排出される廃液によって、下側の栽培空間の照明装置73を冷却するものである。照明装置73は、図1の植物栽培装置10の照明装置14と実質的に同じものである。
【0035】
栽培ベッド71は、フレーム61の長方形状の平面の長手方向と平行に設置させる縦長のものであり、長手方向に延びる上側に開口した廃液槽74と、その廃液槽74の幅方向に設けられた複数の樋状の栽培容器72と、廃液槽74の下面に設けられた照明装置73とを備えている。栽培容器72は、長手方向に並べられている。
【0036】
栽培容器72は、前後端(栽培ベッド71の幅方向)にフランジ部72aを設けられた上側が開口した直方体である。フランジ部72aを廃液槽74の縁部に係止させて、栽培容器72は固定される。栽培容器72の一端には、培養液を供給する供給部(図示せず)が設けられ、他端には、オーバーフロー排水機構72bが設けられている。なお、オーバーフロー排水機構としては、上述したように既知ものものが用いられる。樋状の栽培容器72は、樋状の栽培容器26と同様に、栽培している植物の生長状態に応じて移動させることにより、栽培スペースを効率よく用いた栽培を行うことができる。
【0037】
廃液槽74は、栽培ベッド71の上部に設けられた上方に開口した容器である。
廃液槽74の任意に箇所にオーバーフロー排水機構が設けられている。これにより廃液槽74にも一定量の廃液が貯留(水面S1)することができる。
【0038】
この栽培ベッド71を用いた場合でも、図1の植物栽培装置10と同様に、廃液によって照明装置を冷却することができ、同様の効果を奏することができる。またこの栽培ベッド71は、照明装置73の裏面全体と、廃液槽74とが隣接している。そのため、照明装置73のように部分的に発熱するものではなく、例えば、パネル全体に発光ダイオードが装着されたような照明装置のように、全体で発熱する照明装置を冷却するのに好ましい。
【0039】
これまで挙げた植物栽培装置の実施形態では、照明装置の光源として発光ダイオードを挙げたが、光源は特に限定されない。例えば、電球や、蛍光灯等も発熱するため、同様の効果を奏する。
またこれまで挙げた実施形態において、廃液槽を廃液が流れる廃液路としてもよい。この場合、培養液の循環をコントロールすることにより、常時、廃液路に廃液が流れるようにするのが好ましい。しかし、少なくとも廃液が流れるときには、照明装置は冷却されるため、そのような培養液の循環を制御しなくてもよい。
さらに栽培容器(栽培槽)についても、培養液の供給量と排水量とを同じに制御することができれば、オーバーフロー排水機構を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 植物栽培装置
11 フレーム
12 栽培空間
13 栽培容器
13a 供給部
13b オーバーフロー排水機構
13b1 排水孔
13b2 排水筒
13d 区切板
14 照明装置
14a 枠体
14a1 開口
14a2 側縁
14b 導光板
14c 光源
15 廃液槽
15a オーバーフロー排水機構
15a1 排水孔
15a2 排水筒
15b 保持部
15b1 上側面
15b2 下側面
15b3 縦面
15c 他方端
16 ダクト
20 柱
21 棚板
21a 孔
22 天井
25 冷却槽
25a オーバーフロー排水機構
25b 保持部
26 栽培容器
26a フランジ部
27 第1廃液槽
27a 排出孔
32 制御タンク
33 ヒートポンプ
40 植物栽培装置
41 栽培空間
42 栽培容器
43 照明装置
44 廃液槽
45 ポンプ
50 植物栽培装置
51 廃液槽
51a 保持部
60 植物栽培装置
61 フレーム
61a 柱
61b 固定ツメ
62 栽培空間
63 栽培ベッド
65 廃液槽
66 栽培容器
66a 供給部
66b オーバーフロー排水機構
66b1 排水孔
66b2 排水筒
67 照明装置
68 廃液槽
69 ダクト
71 栽培ベッド
72 栽培容器
72a フランジ部
72b オーバーフロー排水機構
73 照明装置
74 廃液槽
S 水面
S1 水面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7