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特許7212930プロキネチシン2アゴニストおよびアンタゴニストを使用する概日および日周リズムの障害を処置するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】プロキネチシン2アゴニストおよびアンタゴニストを使用する概日および日周リズムの障害を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4025 20060101AFI20230119BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALN20230119BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALN20230119BHJP
   A61K 31/454 20060101ALN20230119BHJP
   A61P 25/18 20060101ALN20230119BHJP
   A61P 25/20 20060101ALN20230119BHJP
   A61P 25/26 20060101ALN20230119BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20230119BHJP
   A61P 25/04 20060101ALN20230119BHJP
   A61K 31/357 20060101ALN20230119BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
A61K31/4025
A61P27/02
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/06
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/5377
A61K31/4184
A61K31/454
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/26
A61P25/00
A61P25/04
A61K31/357
A61K45/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018552675
(86)(22)【出願日】2017-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 US2017026387
(87)【国際公開番号】W WO2017177026
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】62/319,009
(32)【優先日】2016-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, チュン-ヨン
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0035149(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0235535(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0287445(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/357
A61K 31/5377
A61K 31/4184
A61K 31/454
A61K 31/4025
A61P 25/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製剤または医薬組成物を作製するための、化合物、またはその立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、前記化合物が、((3R)-1-(4-フルオロ-3-メトキシベンジル)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミドであり、以下の構造:
【化1】

を含み、前記化合物、またはその立体異性体、またはその薬学的に許容される塩は、プロキネチシン2(PK2)アンタゴニストあるいはPK2の活性を減少するかもしくはそれを脱活性化することができるか、またはPK2受容体アンタゴニストとして作用することができる化合物もしくは組成物として作用し、
前記組成物は、点眼剤または眼軟膏剤として製剤化される、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載される化合物または組成物を含む、製剤であって、任意選択で、半固体、液体、またはエマルション製剤である、製剤。
【請求項3】
請求項1に記載される化合物または組成物を含む、医薬組成物であって、任意選択で、前記化合物が、ナノ粒子またはナノリポ粒子として製剤化される、医薬組成物。
【請求項4】
- 哺乳動物における概日リズム性またはタイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、または
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため
の組成物であって、前記組成物は、((3R)-1-(4-フルオロ-3-メトキシベンジル)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミドであって、以下の構造:
【化2】

を含む、化合物を含み、
前記組成物は、点眼剤または眼軟膏剤として製剤化される、組成物。
【請求項5】
前記概日リズムの調節と関連する神経精神障害が、気分障害;うつ;時差ぼけ;交代労働者症候群;睡眠相前進障害(ASPD);季節性情動障害(SAD);家族性睡眠相前進症候群;睡眠相後退型、不規則睡眠-覚醒型、または非24時間睡眠-覚醒型の概日リズム睡眠障害である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物または組成物が、医薬組成物として製剤化され、任意選択で、前記化合物が、粒子、リポソーム、ナノ粒子、またはナノリポ粒子として製剤化される、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物、請求項2に記載の製剤、または請求項3に記載の医薬組成物を含むキット。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物、請求項2に記載の製剤、または請求項3に記載の医薬組成物を含む、製品であって、
任意選択で、前記製品が、キット、ポンプ、デバイス、ニードル、リザーバ、アンプル、バイアル、シリンジ、カートリッジ、ペン、使い捨てペンまたはジェット式注射器、事前充填ペンまたはシリンジまたはカートリッジ、カートリッジ式または使い捨てペンまたはジェット式注射器、2チャンバ式またはマルチチャンバ式ポンプである、製品。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物、請求項2に記載の製剤、または請求項3に記載の医薬組成物の、医薬の製造における使用であって、
任意選択で、前記使用が、
- 哺乳動物における概日リズム性またはタイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、または
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため
の使用である、使用。
【請求項10】
医薬としての使用のための、製剤、製品または組成物であって、
任意選択で、前記医薬は、
- 哺乳動物における概日タイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、または
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため
に使用され、
前記製剤、製品または組成物は、請求項1に記載の組成物、請求項2に記載の製剤、請求項3に記載の医薬組成物、請求項7に記載のキット、あるいは請求項8に記載の製品
を含む、製剤、製品または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述
本発明は、NIH、DHHSによって授与された認可番号DK91916の下、政府支援でなされた。政府は本発明において特定の権利を有する。
【0002】
技術分野
本発明は、概して、日周リズムに依存する神経生物学および光生物学ならびに哺乳動物挙動に関する。代替的な実施形態では、哺乳動物における概日リズム性もしくはタイミングを修正するため、ヒト概日調節系における変化に起因する精神状態もしくは症状を治療するため、哺乳動物における睡眠問題を治療するため、または睡眠もしくは活性抑制を誘導するため、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすための組成物および方法であって、プロキネチシン2(PK2)の発現もしくは活性ならびに/またはPKR2(PK2受容体)、バソプレシン受容体(VR)、および/もしくはメラトニン受容体(MR)の発現もしくは活性を修飾することができる化合物または組成物を、哺乳動物またはヒトに投与することを含む、組成物および方法が、提供される。代替的な実施形態では、PK2アゴニスト、またはプロキネチシン2(PK2)、PKR2(PK2受容体)、VR活性、および/もしくはMR活性を増加もしくは活性化する化合物もしくは組成物の投与は、哺乳動物による目覚めまたは覚醒の反応を引き起こすかまたはもたらし、PK2アンタゴニスト、またはプロキネチシン2(PK2)、PKR2(PK2受容体)、VR活性および/もしくはMR活性を減少もしくは脱活性化する化合物もしくは組成物の投与は、哺乳動物における活性抑制および睡眠の誘導を引き起こすかまたはもたらす。
【背景技術】
【0003】
背景
約2%の人口が、睡眠または気分症状を伴う何らかの形態の概日リズム障害を患っている。概日リズム睡眠障害の他の例としては、時差ぼけおよび交代労働者症候群が挙げられ、これらは、外部環境に対する内部概日系の調節不全と関連している。概日リズム睡眠障害の別の例は、睡眠相前進障害(ASPD)であり、これは、夜の就寝時刻が早く、朝の覚醒が早い(およそ午前2~5時)ことによって特徴付けられる。睡眠問題は、一般集団、特に老齢者に一般的である。多くの老齢者が、朝の覚醒が早いことを報告しており、一部の症状は、ASPDに類似している。
【0004】
概日リズム性またはタイミングの乱れは、睡眠の症状に加えて、気分に対して顕著な影響を有する。現在、精神障害における概日異常の高い出現率は、精神症状の結果のみならず、概日調節系における変化にも起因することが、認識されている。季節性情動障害の典型的な治療には、抗うつ医薬および光療法が含まれる。季節性情動障害に対する抗うつ薬の有効性の根拠は、限られている。光療法、特に、青色光を用いたものは、季節性情動障害に有効であるとみられる。しかしながら、光療法は、扱いづらく時間がかかり、季節性情動障害などの慢性的または再発する障害を有する大半の対象のための標準的な治療法とはなり得ない。
【0005】
視交叉上核(SCN)には、哺乳動物のすべての種について、主概日時計が存在すると考えられている。そのような主張を裏付ける根拠は、マウスおよびラットなどの夜行性哺乳動物に関して極めて強力である。しかしながら、概日覚醒状態レベル調節のための主時計がSCNに存在するという同じ主張は、実際には、ヒトを含め、昼行性動物の事例においては、裏付けとなる根拠が限られている。リスザルにおけるSCN病変による睡眠の増加に関してよく引用される文献(Edgarら、1993年)は、SCNが昼行性動物の覚醒状態または目覚めを促進すると解釈されるが、これは、網膜視床下部路に同時発生した病変部に起因する可能性がある。したがって、SCN以外の部位に、ヒトを含む霊長類などの昼行性動物の覚醒状態レベルを調節する重要な概日時計が存在する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
代替的な実施形態では、プロキネチシン2アゴニストおよびアンタゴニストを使用して、哺乳動物における概日リズム性またはタイミングを修正するため、ならびに概日および日周リズムの障害を治療、緩和、または予防するための組成物、製品、および方法が、提供される。
【0007】
代替的な実施形態では、表1に記載される構造を有する化合物、またはその同等物、またはその立体異性体、またはその類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはそのバイオアイソスターであって、
プロキネチシン2(PK2)アンタゴニストあるいはPK2の活性を減少するかもしくはそれを脱活性化することができるか、またはPK2受容体アンタゴニストとして作用することができる化合物もしくは組成物として作用する、化合物、またはその同等物、またはその立体異性体、またはその類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはそのバイオアイソスターが提供される。
【0008】
代替的な実施形態では、本明細書に提供される化合物または組成物を含む製剤であって、任意選択で、固体、半固体、液体、エアゾール、粉末、またはエマルション製剤である、製剤が提供される。
【0009】
代替的な実施形態では、本明細書に提供される化合物または組成物を含む医薬組成物であって、任意選択で、前記医薬組成物が、腸内または非経口投与のために製剤化され、任意選択で、前記化合物が、in vivoでの投与のために、または腸内もしくは非経口投与のために、または軟膏剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲル剤、ゲルタブ、液体剤、ローション剤、エアゾール剤、もしくはインプラント剤として、製剤化され、任意選択で、前記化合物が、ナノ粒子またはナノリポ粒子として製剤化される、医薬組成物が提供される。
【0010】
代替的な実施形態では、
- 哺乳動物における概日リズム性またはタイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、
- 羞明を治療または緩和するため、あるいは
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療または緩和するため、
- 急性または慢性疼痛の症状を治療、予防、または緩和するため、
- 任意選択で膠芽腫または膵臓がんである、がんを治療、予防、または緩和するため、
- 任意選択で乾癬または関節炎である、炎症性疾患を治療、予防、または緩和するための方法であって、
(a)(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾するため、
(2)PKR2(PK2受容体)活性を修飾するため、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)が、V1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾するため、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾するため
のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用することができる、化合物または組成物を用意することと、
(b)(a)の化合物または組成物のうちの1つまたは任意の組合せ物を、それを必要とする哺乳動物またはヒトに投与することと、を含み、
任意選択で、前記組合せ物が、PKR2およびVR、PKR2およびMR、PKR2およびPK2、VRおよびPK2、MRおよびPK2、MRおよびVR、またはPKR2、VR、およびMRのアゴニストまたはアンタゴニストを含み、
任意選択で、プロキネチシン(PK2)受容体アンタゴニストが、米国特許第8,722,896号に記載される化合物、または式1に記載される構造を有する化合物、または本明細書に提供される通りの化合物、または米国特許出願公開第2015/0111922号、もしくは米国特許出願公開第2014/0038968号、もしくは米国特許第7,855,201号(またはWO2007067511、PCT/US2006/046330)に記載される化合物であり、
任意選択で、メラトニン受容体(MR)アンタゴニストが、米国特許第8,907,126号またはWO/2014/103998に記載される化合物であり、
任意選択で、バソプレシン受容体(VR)アンタゴニストが、米国特許出願公開2016-0221944A1号、米国特許出願公開2015-0073032A1号、またはWO/2015/036160に記載される化合物であり、
PK2アゴニストまたはプロキネチシン2(PK2)もしくはPKR2(PK2受容体)を増加もしくは活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物による目覚めまたは覚醒の反応を引き起こすかまたはもたらし、
VRアゴニストまたはVR活性を増加もしくは活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物による目覚めまたは覚醒の反応を引き起こすかまたはもたらし、
MRアゴニストまたはMR活性を増加もしくは活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物における目覚めまたは覚醒の反応を引き起こすかまたはもたらし、
PK2アンタゴニストまたはプロキネチシン2(PK2)もしくはPKR2(PK2受容体)を減少もしくは脱活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物における活性抑制および睡眠誘導を引き起こすかまたはもたらし、
VRアンタゴニストまたはVR活性を減少もしくは脱活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物における活性抑制および睡眠誘導を引き起こすかまたはもたらし、
MRアンタゴニストまたはMR活性を減少もしくは脱活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物における活性抑制および睡眠誘導を引き起こすかまたはもたらし、
アンタゴニストまたはプロキネチシン2(PK2)、PKR2(PK2受容体)、VR活性、および/もしくはMR活性を減少もしくは脱活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療もしくは緩和すること、
- 羞明を治療または緩和すること、または
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療もしくは緩和すること、
- 急性もしくは慢性疼痛の症状を治療、予防、もしくは緩和すること、
- 任意選択で膠芽腫もしくは膵臓がんである、がんを治療、予防、もしくは緩和すること、
- 任意選択で乾癬もしくは関節炎である、炎症性疾患を治療、予防、もしくは緩和すること
を引き起こすかまたはもたらす、方法が提供される。
【0011】
代替的な実施形態では、概日リズムの調節と関連する神経精神障害は、気分障害;うつ;時差ぼけ;交代労働者症候群;睡眠相前進障害(ASPD);季節性情動障害(SAD);家族性睡眠相前進症候群;睡眠相後退型、不規則睡眠-覚醒型、または非24時間睡眠-覚醒型の概日リズム睡眠障害である。
【0012】
代替的な実施形態では、化合物または組成物は、医薬組成物として製剤化され、任意選択で、腸内または非経口投与のために製剤化され、任意選択で、in vivoでの投与、または経口、粘膜、もしくは鼻腔内投与のために製剤化され、任意選択で、軟膏剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲル剤、軟膏剤、ゲルタブ、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤、液体剤、ローション剤、エアゾール剤、またはインプラント剤として製剤化され、任意選択で、前記化合物が、粒子、リポソーム、ナノ粒子、またはナノリポ粒子として製剤化される。
【0013】
代替的な実施形態では、化合物または組成物は、任意選択で皮下(IC)、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、および/または皮内注射または注入による、注射のために製剤化される。代替的な実施形態では、化合物または組成物は、局所または粘膜投与のために製剤化され、任意選択で、ゲル剤、局所剤、軟膏剤、スプレー剤、点眼剤または眼軟膏剤として製剤化される。代替的な実施形態では、組成物、化合物、または製剤は、経口、非経口、吸入スプレーにより、鼻内、局所、髄腔内、髄腔内、脳内、硬膜外、頭蓋内、または直腸内に投与される。
【0014】
代替的な実施形態では、アゴニストまたはアンタゴニスト組成物または化合物は、プロキネチシン2(PK2)、PKR2(PK2受容体)、バソプレシン受容体(VR)、もしくはメラトニン受容体(MR)に特異的に結合し、かつPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を阻害するか、またはPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を増加もしくは持続する、抗体である。
【0015】
代替的な実施形態では、アゴニストまたはアンタゴニスト組成物または化合物は、プロキネチシン2(PK2)、PKR2(PK2受容体)、バソプレシン受容体(VR)、もしくはメラトニン受容体(MR)遺伝子もしくは転写産物に特異的に結合し、かつ/またはPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を阻害するか、またはPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を増加もしくは持続する、核酸であり、任意選択で、前記アンタゴニストが、阻害性核酸であり、任意選択で、前記阻害性核酸が、siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0016】
代替的な実施形態では、アゴニストまたはアンタゴニスト組成物または化合物は、プロキネチシン2(PK2)、PKR2(PK2受容体)、バソプレシン受容体(VR)、もしくはメラトニン受容体(MR)遺伝子もしくは転写産物に特異的に結合し、かつ/またはPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を阻害するか、またはPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を増加もしくは持続する、低分子、タンパク質、ペプチド、炭水化物または脂質である。
【0017】
代替的な実施形態では、
- 哺乳動物における概日リズム性またはタイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、
- 羞明を治療または緩和するため、あるいは
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療または緩和するため、
- 急性または慢性疼痛の症状を治療、予防、または緩和するため、
- 任意選択で膠芽腫または膵臓がんである、がんを治療、予防、または緩和するため、
- 任意選択で乾癬または関節炎である、炎症性疾患を治療、予防、または緩和するための治療組合せ物であって、
前記治療組合せ物は2つまたはより多くの化合物または組成物を含み、前記2つまたはより多くの化合物または組成物は、
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾すること、
(2)PKR2(PK2受容体)を修飾すること、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)が、V1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾すること、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾すること
のうちの少なくとも1つを行うことができ、
任意選択で、前記組合せ物が、PKR2およびVR、PKR2およびMR、PKR2およびPK2、VRおよびPK2、MRおよびPK2、またはPKR2、VR、およびMRのアゴニストまたはアンタゴニストを含み、
任意選択で、プロキネチシン(PK2)受容体アンタゴニストが、米国特許第8,722,896号に記載される化合物、または式1に記載される構造を有する化合物、または本明細書に提供される通りの化合物、または米国特許出願公開第2015/0111922号、もしくは米国特許出願公開第2014/0038968号、もしくは米国特許第7,855,201号(またはWO2007067511、PCT/US2006/046330)に記載される化合物であり、
任意選択で、メラトニン受容体(MR)アンタゴニストが、米国特許第8,907,126号またはWO/2014/103998に記載される化合物であり、
任意選択で、バソプレシン受容体(VR)アンタゴニストが、米国特許出願公開2016-0221944A1号、米国特許出願公開2015-0073032A1号、またはWO/2015/036160に記載される化合物である、
治療組合せ物が提供される。
【0018】
代替的な実施形態では、本明細書に提供される通りの組成物、本明細書に提供される通りの製剤、本明細書に提供される通りの医薬組成物、本明細書に提供される通りの治療組合せ物、あるいは
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾すること、
(2)PKR2(PK2受容体)を修飾すること、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)が、V1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾すること、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾すること
のうちの少なくとも1つを行うことができる化合物または組成物
を含むキットであって、
任意選択で、前記組合せ物が、PKR2およびVR、PKR2およびMR、PKR2およびPK2、VRおよびPK2、MRおよびPK2、またはPKR2、VR、およびMRのアゴニストまたはアンタゴニストを含み、
任意選択で、プロキネチシン(PK2)受容体アンタゴニストが、米国特許第8,722,896号に記載される化合物、または式1に記載される構造を有する化合物、または本明細書に提供される通りの化合物、または米国特許出願公開第2015/0111922号、もしくは米国特許出願公開第2014/0038968号、もしくは米国特許第7,855,201号(またはWO2007067511、PCT/US2006/046330)に記載される化合物であり、
任意選択で、メラトニン受容体(MR)アンタゴニストが、米国特許第8,907,126号またはWO/2014/103998に記載される化合物であり、
任意選択で、バソプレシン受容体(VR)アンタゴニストが、米国特許出願公開2016-0221944A1号、米国特許出願公開2015-0073032A1号、またはWO/2015/036160に記載される化合物である、キットが提供される。
【0019】
代替的な実施形態では、本明細書に提供される通りの組成物、本明細書に提供される通りの製剤、本明細書に提供される通りの医薬組成物、本明細書に提供される通りの治療組合せ物、あるいは
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾すること、
(2)PKR2(PK2受容体)を修飾すること、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)がV1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾すること、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾すること
のうちの少なくとも1つを行うことができる化合物または組成物を含む、製品であって、
任意選択で、前記治療組合せ物が、PKR2およびVR、PKR2およびMR、PKR2およびPK2、VRおよびPK2、MRおよびPK2、またはPKR2、VR、およびMRのアゴニストまたはアンタゴニストを含み、
任意選択で、プロキネチシン(PK2)受容体アンタゴニストが、米国特許8,722,896号に記載される化合物、または式1に記載される構造を有する化合物、または本明細書に提供される通りの化合物、または米国特許出願公開第2015/0111922号、もしくは米国特許出願公開第2014/0038968号、もしくは米国特許第7,855,201号(またはWO2007067511、PCT/US2006/046330)に記載される化合物であり、
任意選択で、メラトニン受容体(MR)アンタゴニストが、米国特許第8,907,126号またはWO/2014/103998に記載される化合物であり、
任意選択で、バソプレシン受容体(VR)アンタゴニストが、米国特許出願公開第2016-0221944A1号、米国特許出願公開第2015-0073032A1号、またはWO/2015/036160に記載される化合物であり、
任意選択で、前記製品が、キット、ポンプ、デバイス、皮下注入デバイス、皮下連続注入デバイス、注入ペン、ニードル、リザーバ、アンプル、バイアル、シリンジ、カートリッジ、ペン、使い捨てペンまたはジェット式注射器、事前充填ペンまたはシリンジまたはカートリッジ、カートリッジ式または使い捨てペンまたはジェット式注射器、2チャンバ式またはマルチチャンバ式ポンプである、製品が提供される。
【0020】
代替的な実施形態では、本明細書に提供される通りの組成物、本明細書に提供される通りの製剤、本明細書に提供される通りの医薬組成物、本明細書に提供される通りの治療組合せ物、あるいは
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾すること、
(2)PKR2(PK2受容体)を修飾すること、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)が、V1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾すること、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾すること
のうちの少なくとも1つを行うことができる化合物または組成物
の医薬の製造における使用であって、
任意選択で、前記使用が、
- 哺乳動物における概日リズム性またはタイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、
- 羞明を治療または緩和するため、または
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療または緩和するため、
- 急性もしくは慢性疼痛の症状を治療、予防、もしくは緩和するため、
- 任意選択で膠芽腫もしくは膵臓がんである、がんを治療、予防、もしくは緩和するため、
- 任意選択で乾癬もしくは関節炎である、炎症性疾患を治療、予防、もしくは緩和するため
の使用である、使用が提供される。
【0021】
代替的な実施形態では、医薬としての使用のための、化合物、式、製品または組成物であって、
任意選択で、前記医薬は、
- 哺乳動物における概日タイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、
- 羞明を治療または緩和するため、あるいは
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療または緩和するため、
- 急性または慢性疼痛の症状を治療、予防、または緩和するため、
- 任意選択で膠芽腫または膵臓がんである、がんを治療、予防、または緩和するため、
- 任意選択で乾癬または関節炎である、炎症性疾患を治療、予防、または緩和するために使用され、
前記化合物、式、製品または組成物は、本明細書に提供される通りの組成物、本明細書に提供される通りの製剤、本明細書に提供される通りの医薬組成物、本明細書に提供される通りの治療組合せ物、あるいは
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾すること、
(2)PKR2(PK2受容体)を修飾すること、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)が、V1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾すること、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾すること
のうちの少なくとも1つを行うことができる化合物または組成物、
あるいは本明細書に提供される通りのキット、あるいは本明細書に提供される通りの製品
を含む、化合物、式、製品または組成物が提供される。
【0022】
本発明の1つまたは複数の例示的な実施形態の詳細が、添付の図面および以下の説明に記載されている。本発明の他の特性、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかである。
【0023】
本明細書において引用されるすべての刊行物、特許、特許出願は、あらゆる目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
表1に記載される構造を有する化合物、またはその同等物、またはその立体異性体、またはその類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはそのバイオアイソスターであって、
プロキネチシン2(PK2)アンタゴニストあるいはPK2の活性を減少するかもしくはそれを脱活性化することができるか、またはPK2受容体アンタゴニストとして作用することができる化合物もしくは組成物として作用する、化合物、またはその同等物、またはその立体異性体、またはその類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはそのバイオアイソスター。
(項目2)
項目1に記載される化合物または組成物を含む、製剤であって、任意選択で、固体、半固体、液体、エアゾール、粉末、またはエマルション製剤である、製剤。
(項目3)
項目1に記載される化合物または組成物を含む、医薬組成物であって、
任意選択で、前記医薬組成物が、腸内または非経口投与のために製剤化され、
任意選択で、前記化合物が、in vivoでの投与のために、または腸内もしくは非経口投与のために、または軟膏剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲル剤、ゲルタブ、液体剤、ローション剤、エアゾール剤、もしくはインプラント剤として、製剤化され、
任意選択で、前記化合物が、ナノ粒子またはナノリポ粒子として製剤化される、医薬組成物。
(項目4)
- 哺乳動物における概日リズム性またはタイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、
- 羞明を治療または緩和するため、あるいは
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療または緩和するため、
- 急性または慢性疼痛の症状を治療、予防、または緩和するため、
- 任意選択で膠芽腫または膵臓がんである、がんを治療、予防、または緩和するため、- 任意選択で乾癬または関節炎である、炎症性疾患を治療、予防、または緩和するための方法であって、
(a)(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾するため、
(2)PKR2(PK2受容体)活性を修飾するため、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)が、V1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾するため、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾するため
のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用することができる、化合物または組成物を用意することと、
(b)(a)の化合物または組成物のうちの1つまたは任意の組合せ物を、それを必要とする哺乳動物またはヒトに投与することと、を含み、
任意選択で、前記組合せ物が、PKR2およびVR、PKR2およびMR、PKR2およびPK2、VRおよびPK2、MRおよびPK2、MRおよびVR、またはPKR2、VR、およびMRのアゴニストまたはアンタゴニストを含み、
任意選択で、プロキネチシン(PK2)受容体アンタゴニストが、米国特許第8,722,896号に記載される化合物、または式1に記載される構造を有する化合物、または項目1に記載の化合物、または米国特許出願公開第2015/0111922号、もしくは米国特許出願公開第2014/0038968号、もしくは米国特許第7,855,201号(またはWO2007067511、PCT/US2006/046330)に記載される化合物であり、
任意選択で、メラトニン受容体(MR)アンタゴニストが、米国特許第8,907,126号またはWO/2014/103998に記載される化合物であり、
任意選択で、バソプレシン受容体(VR)アンタゴニストが、米国特許出願公開2016-0221944A1号、米国特許出願公開2015-0073032A1号、またはWO/2015/036160に記載される化合物であり、
PK2アゴニストまたはプロキネチシン2(PK2)もしくはPKR2(PK2受容体)を増加もしくは活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物による目覚めまたは覚醒の反応を引き起こすかまたはもたらし、
VRアゴニストまたはVR活性を増加もしくは活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物による目覚めまたは覚醒の反応を引き起こすかまたはもたらし、
MRアゴニストまたはMR活性を増加もしくは活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物における目覚めまたは覚醒の反応を引き起こすかまたはもたらし、
PK2アンタゴニストまたはプロキネチシン2(PK2)もしくはPKR2(PK2受容体)を減少もしくは脱活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物における活性抑制および睡眠誘導を引き起こすかまたはもたらし、
VRアンタゴニストまたはVR活性を減少もしくは脱活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物における活性抑制および睡眠誘導を引き起こすかまたはもたらし、
MRアンタゴニストまたはMR活性を減少もしくは脱活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、前記ヒトまたは哺乳動物における活性抑制および睡眠誘導を引き起こすかまたはもたらし、
アンタゴニストまたはプロキネチシン2(PK2)、PKR2(PK2受容体)、VR活性、および/もしくはMR活性を減少もしくは脱活性化することができる化合物もしくは組成物の投与が、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療もしくは緩和すること、
- 羞明を治療または緩和すること、または
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療もしくは緩和すること、
- 急性もしくは慢性疼痛の症状を治療、予防、もしくは緩和すること、
- 任意選択で膠芽腫もしくは膵臓がんである、がんを治療、予防、もしくは緩和すること、
- 任意選択で乾癬もしくは関節炎である、炎症性疾患を治療、予防、もしくは緩和すること
を引き起こすかまたはもたらす、方法。
(項目5)
前記概日リズムの調節と関連する神経精神障害が、気分障害;うつ;時差ぼけ;交代労働者症候群;睡眠相前進障害(ASPD);季節性情動障害(SAD);家族性睡眠相前進症候群;睡眠相後退型、不規則睡眠-覚醒型、または非24時間睡眠-覚醒型の概日リズム睡眠障害である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記化合物または組成物が、医薬組成物として製剤化され、任意選択で、腸内または非経口投与のために製剤化され、任意選択で、in vivoでの投与、または経口、粘膜、もしくは鼻腔内投与のために製剤化され、任意選択で、軟膏剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲル剤、軟膏剤、ゲルタブ、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤、液体剤、ローション剤、エアゾール剤、またはインプラント剤として製剤化され、任意選択で、前記化合物が、粒子、リポソーム、ナノ粒子、またはナノリポ粒子として製剤化される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記化合物または組成物が、任意選択で皮下(IC)、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、および/または皮内注射または注入による、注射のために製剤化される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記化合物または組成物が、局所または粘膜投与のために製剤化され、任意選択で、ゲル剤、局所剤、軟膏剤、スプレー剤、点眼剤または眼軟膏剤として製剤化される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
組成物、化合物、または製剤が、経口、非経口、吸入スプレーにより、鼻内、局所、髄腔内、髄腔内、脳内、硬膜外、頭蓋内、または直腸内に投与される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
アゴニストまたはアンタゴニスト組成物または化合物が、プロキネチシン2(PK2)、PKR2(PK2受容体)、バソプレシン受容体(VR)、もしくはメラトニン受容体(MR)に特異的に結合し、かつPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を阻害するか、またはPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を増加もしくは持続する、抗体である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
アゴニストまたはアンタゴニスト組成物または化合物が、プロキネチシン2(PK2)、PKR2(PK2受容体)、バソプレシン受容体(VR)、もしくはメラトニン受容体(MR)遺伝子もしくは転写産物に特異的に結合し、かつ/またはPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を阻害するか、またはPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を増加もしくは持続する、核酸であり、任意選択で、前記アンタゴニストが、阻害性核酸であり、任意選択で、前記阻害性核酸が、siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
アゴニストまたはアンタゴニスト組成物または化合物が、プロキネチシン2(PK2)、PKR2(PK2受容体)、バソプレシン受容体(VR)、もしくはメラトニン受容体(MR)遺伝子もしくは転写産物に特異的に結合し、かつ/またはPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を阻害するか、またはPK2、PKR2、VR、もしくはMRの活性もしくは発現を増加もしくは持続する、低分子、タンパク質、ペプチド、炭水化物または脂質である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
- 哺乳動物における概日リズム性またはタイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、
- 羞明を治療または緩和するため、あるいは
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療または緩和するため、
- 急性または慢性疼痛の症状を治療、予防、または緩和するため、
- 任意選択で膠芽腫または膵臓がんである、がんを治療、予防、または緩和するため、- 任意選択で乾癬または関節炎である、炎症性疾患を治療、予防、または緩和するための治療組合せ物であって、
前記治療組合せ物は2つまたはより多くの化合物または組成物を含み、前記2つまたはより多くの化合物または組成物は、
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾すること、
(2)PKR2(PK2受容体)を修飾すること、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)が、V1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾すること、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾すること
のうちの少なくとも1つを行うことができ、
任意選択で、前記組合せ物が、PKR2およびVR、PKR2およびMR、PKR2およびPK2、VRおよびPK2、MRおよびPK2、またはPKR2、VR、およびMRのアゴニストまたはアンタゴニストを含み、
任意選択で、プロキネチシン(PK2)受容体アンタゴニストが、米国特許第8,722,896号に記載される化合物、または式1に記載される構造を有する化合物、または項目1に記載の化合物、または米国特許出願公開第2015/0111922号、もしくは米国特許出願公開第2014/0038968号、もしくは米国特許第7,855,201号(またはWO2007067511、PCT/US2006/046330)に記載される化合物であり、
任意選択で、メラトニン受容体(MR)アンタゴニストが、米国特許第8,907,126号またはWO/2014/103998に記載される化合物であり、
任意選択で、バソプレシン受容体(VR)アンタゴニストが、米国特許出願公開2016-0221944A1号、米国特許出願公開2015-0073032A1号、またはWO/2015/036160に記載される化合物である、
治療組合せ物。
(項目14)
項目1に記載の組成物、項目2に記載の製剤、項目3に記載の医薬組成物、項目10に記載の治療組合せ物、あるいは
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾すること、
(2)PKR2(PK2受容体)を修飾すること、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)が、V1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾すること、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾すること
のうちの少なくとも1つを行うことができる化合物または組成物
を含むキットであって、
任意選択で、前記組合せ物が、PKR2およびVR、PKR2およびMR、PKR2およびPK2、VRおよびPK2、MRおよびPK2、またはPKR2、VR、およびMRのアゴニストまたはアンタゴニストを含み、
任意選択で、プロキネチシン(PK2)受容体アンタゴニストが、米国特許第8,722,896号に記載される化合物、または式1に記載される構造を有する化合物、または項目1に記載の化合物、または米国特許出願公開第2015/0111922号、もしくは米国特許出願公開第2014/0038968号、もしくは米国特許第7,855,201号(またはWO2007067511、PCT/US2006/046330)に記載される化合物であり、
任意選択で、メラトニン受容体(MR)アンタゴニストが、米国特許第8,907,126号またはWO/2014/103998に記載される化合物であり、
任意選択で、バソプレシン受容体(VR)アンタゴニストが、米国特許出願公開2016-0221944A1号、米国特許出願公開2015-0073032A1号、またはWO/2015/036160に記載される化合物である、キット。
(項目15)
項目1に記載の組成物、項目2に記載の製剤、項目3に記載の医薬組成物、項目10に記載の治療組合せ物、あるいは
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾すること、
(2)PKR2(PK2受容体)を修飾すること、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)がV1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾すること、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾すること
のうちの少なくとも1つを行うことができる化合物または組成物を含む、製品であって、任意選択で、前記治療組合せ物が、PKR2およびVR、PKR2およびMR、PKR2およびPK2、VRおよびPK2、MRおよびPK2、またはPKR2、VR、およびMRのアゴニストまたはアンタゴニストを含み、
任意選択で、プロキネチシン(PK2)受容体アンタゴニストが、米国特許8,722,896号に記載される化合物、または式1に記載される構造を有する化合物、または項目1に記載の化合物、または米国特許出願公開第2015/0111922号、もしくは米国特許出願公開第2014/0038968号、もしくは米国特許第7,855,201号(またはWO2007067511、PCT/US2006/046330)に記載される化合物であり、
任意選択で、メラトニン受容体(MR)アンタゴニストが、米国特許第8,907,126号またはWO/2014/103998に記載される化合物であり、
任意選択で、バソプレシン受容体(VR)アンタゴニストが、米国特許出願公開第2016-0221944A1号、米国特許出願公開第2015-0073032A1号、またはWO/2015/036160に記載される化合物であり、
任意選択で、前記製品が、キット、ポンプ、デバイス、皮下注入デバイス、皮下連続注入デバイス、注入ペン、ニードル、リザーバ、アンプル、バイアル、シリンジ、カートリッジ、ペン、使い捨てペンまたはジェット式注射器、事前充填ペンまたはシリンジまたはカートリッジ、カートリッジ式または使い捨てペンまたはジェット式注射器、2チャンバ式またはマルチチャンバ式ポンプである、製品。
(項目16)
項目1に記載の組成物、項目2に記載の製剤、項目3に記載の医薬組成物、項目10に記載の治療組合せ物、あるいは
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾すること、
(2)PKR2(PK2受容体)を修飾すること、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)が、V1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾すること、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾すること
のうちの少なくとも1つを行うことができる化合物または組成物
の医薬の製造における使用であって、
任意選択で、前記使用が、
- 哺乳動物における概日リズム性またはタイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、
- 羞明を治療または緩和するため、または
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療または緩和するため、
- 急性もしくは慢性疼痛の症状を治療、予防、もしくは緩和するため、
- 任意選択で膠芽腫もしくは膵臓がんである、がんを治療、予防、もしくは緩和するため、
- 任意選択で乾癬もしくは関節炎である、炎症性疾患を治療、予防、もしくは緩和するため
の使用である、使用。
(項目17)
医薬としての使用のための、化合物、式、製品または組成物であって、
任意選択で、前記医薬は、
- 哺乳動物における概日タイミングを修正するため、
- ヒト概日調節系における変化に起因するか、あるいはその機能不全もしくは遺伝的欠陥またはその非野生型パターンもしくはバイオフィードバック機序によって引き起こされる、精神状態または症状を治療または緩和するため、
- 概日リズムの調節と関連する神経精神障害を治療または緩和するため、
- 哺乳動物における睡眠問題または睡眠障害を治療または緩和するため、
- 睡眠もしくは活性抑制を誘導するか、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、
- 羞明を治療または緩和するため、あるいは
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療または緩和するため、
- 急性または慢性疼痛の症状を治療、予防、または緩和するため、
- 任意選択で膠芽腫または膵臓がんである、がんを治療、予防、または緩和するため、- 任意選択で乾癬または関節炎である、炎症性疾患を治療、予防、または緩和するために使用され、
前記化合物、式、製品または組成物は、項目1に記載の組成物、項目2に記載の製剤、項目3に記載の医薬組成物、項目10に記載の治療組合せ物、あるいは
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾すること、
(2)PKR2(PK2受容体)を修飾すること、
(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)が、V1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾すること、または
(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾すること
のうちの少なくとも1つを行うことができる化合物または組成物、
あるいは項目10に記載のキット、あるいは項目12に記載の製品
を含む、化合物、式、製品または組成物。
【0024】
本明細書に記載される図面は、本明細書において提供される例示的な実施形態の例証であり、特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲を制限することを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A図1A~Bは、PK2-/-マウスにおける自発運動活性および目覚めのレベルに対する光パルスの抑制作用を試験した研究からのデータをグラフで示す。以下の実施例1に詳述されるように、図1Aは、明または暗曝露の関数としての活性計数を示し、光パルス(150ルクス)を、暗期間の半ば(ZT16~ZT18.5として示される)に野生型マウスに与えた場合、自発運動活性が有意に抑制され、対照的に、PK2-/-マウスについては、光パルスによって自発運動活性のわずかな抑制のみが観察され、図1Bは、明または暗曝露の関数として分単位での覚醒時間を示し、EEG/EMG記録により、光パルスが、野生型マウスまたはPK2-/-マウスにおいて覚醒状態を抑制したことが判明した。
図1B図1A~Bは、PK2-/-マウスにおける自発運動活性および目覚めのレベルに対する光パルスの抑制作用を試験した研究からのデータをグラフで示す。以下の実施例1に詳述されるように、図1Aは、明または暗曝露の関数としての活性計数を示し、光パルス(150ルクス)を、暗期間の半ば(ZT16~ZT18.5として示される)に野生型マウスに与えた場合、自発運動活性が有意に抑制され、対照的に、PK2-/-マウスについては、光パルスによって自発運動活性のわずかな抑制のみが観察され、図1Bは、明または暗曝露の関数として分単位での覚醒時間を示し、EEG/EMG記録により、光パルスが、野生型マウスまたはPK2-/-マウスにおいて覚醒状態を抑制したことが判明した。
【0026】
図2A図2A~Bは、暗状態および薄明かりの曝露の関数として、活性計数および覚醒状態の時間を比較する研究からのデータをグラフで示す。PK2-/-マウスについては、以下の実施例1に詳述されるように、薄明かり下および暗状態下における覚醒状態の時間は、非常に類似しており、PK2シグナル伝達の不在下における薄明かりによるわずかな目覚めの阻害のみを示した。野生型マウスについては、以下の実施例1に詳述されるように、薄明かりのこの4時間の間、活性計数および覚醒が維持された時間は、暗状態下よりも大いに低減され、薄明かりの強力な睡眠誘導作用が明らかとなった。
図2B図2A~Bは、暗状態および薄明かりの曝露の関数として、活性計数および覚醒状態の時間を比較する研究からのデータをグラフで示す。PK2-/-マウスについては、以下の実施例1に詳述されるように、薄明かり下および暗状態下における覚醒状態の時間は、非常に類似しており、PK2シグナル伝達の不在下における薄明かりによるわずかな目覚めの阻害のみを示した。野生型マウスについては、以下の実施例1に詳述されるように、薄明かりのこの4時間の間、活性計数および覚醒が維持された時間は、暗状態下よりも大いに低減され、薄明かりの強力な睡眠誘導作用が明らかとなった。
【0027】
図3図3A~Dは、PK2を発現する網膜神経節細胞の画像を示し、ipRGCにおけるPK2の発現を試験した。以下の実施例1に詳述されるように、図3Aは、PK2が、一部の網膜神経節細胞において強力に発現されることを示し、さらなる共免疫染色研究により、すべてのOPN4陽性網膜神経節細胞が、PK2を発現することが示され(図3B)、図3Cは、Hoeschst染色(DNAを染色する)の画像を示し、図3Dは、図3A~Cの統合画像である。
【0028】
図4図4A~Dは、昼行性サルの網膜神経節細胞の画像を示す。以下の実施例1に詳述されるように、図4Aは、サルipRGCにおけるPK2染色を示し、図4Bは、同じ網膜神経節細胞におけるOPN4染色を示し、図4Cは、網膜神経節細胞におけるHoeschst染色を示し、図4Dは、PK2が、サルipRGCにおいてOPN4と共発現されることを示す、図4A~Cの統合画像である。
【0029】
図5図5A~Dは、マウスの脳およびサルの脳におけるPKR2発現の画像を示す。以下の実施例1に詳述されるように、図5Aは、PKR2が、サルの脳の背側SCNにおいてのみ発現され、腹側SCNにおいては検出されないことを示す、PKR2染色を示し、図5Bは、PKR2が、マウスの脳のSCNの腹側および背側の両方のコンパートメントを含め、SCN全体に発現されることを示す、PKR2染色を示し、図5Cは、PKR2が、サルの脳においてSCの浅層に強く発現したことを示す、PKR2染色を示し、図5Dは、PKR2発現が、マウスの脳のSCにおいて検出されなかったことを示す、PKR2染色を示す。
【0030】
図6A図6A~Cは、マウスおよびサルにおける目覚めのレベルに対する合成PK2アンタゴニストであるPKRA83の作用を試験した研究からのデータをグラフで示す。以下の実施例1に詳述されるように、図6Aおよび図6Bは、PKRA83の投与により、マウスにおける自発運動活性(図6A)および覚醒状態(図6B)が有意に増加したことを示すデータを示し、図6Cは、サルにおけるPK2アンタゴニストの投与により、睡眠時間の有意な増加がもたらされたことを示す、データを示す。
図6B図6A~Cは、マウスおよびサルにおける目覚めのレベルに対する合成PK2アンタゴニストであるPKRA83の作用を試験した研究からのデータをグラフで示す。以下の実施例1に詳述されるように、図6Aおよび図6Bは、PKRA83の投与により、マウスにおける自発運動活性(図6A)および覚醒状態(図6B)が有意に増加したことを示すデータを示し、図6Cは、サルにおけるPK2アンタゴニストの投与により、睡眠時間の有意な増加がもたらされたことを示す、データを示す。
図6C図6A~Cは、マウスおよびサルにおける目覚めのレベルに対する合成PK2アンタゴニストであるPKRA83の作用を試験した研究からのデータをグラフで示す。以下の実施例1に詳述されるように、図6Aおよび図6Bは、PKRA83の投与により、マウスにおける自発運動活性(図6A)および覚醒状態(図6B)が有意に増加したことを示すデータを示し、図6Cは、サルにおけるPK2アンタゴニストの投与により、睡眠時間の有意な増加がもたらされたことを示す、データを示す。
【0031】
図7図7A~Bは、マウスの網膜の網膜神経節細胞におけるPK2の発現を示す画像を示す。以下の実施例1に詳述されるように、図7Aは、2つのPK2陽性網膜神経節細胞の例であり、1つが変位しておらず、1つが変位しているPK2陽性網膜神経節細胞が、矢印で示されており、図7Bは、2つのPK2陽性網膜神経節細胞の例であり、1つが強力に染色され、1つがより中等度に染色されたものが、矢印で示されている。
【0032】
図8図8は、以下の実施例1に詳述されるように、脳内標的に対するipRGCのPK2シグナル伝達による差次的な目覚めの調節を示す図を示す。
【0033】
図9図9A~Bは、継続的な暗状態の間に増加することが見出された網膜の外顆粒層におけるPK2発現を示す画像を示す。以下の実施例1に詳述されるように、画像は、ZT4(図9A)と比較して、CT4(図9B)では網膜の外顆粒層におけるPK2の上方調節を示し、PK2免疫染色が示されており、枠内の領域は、マウスの網膜の外節を示し、核の対比染色は、青色として示される。
【0034】
図10図10A~Bは、ipRGCにおけるPK2の時計依存性の発振性発現をグラフで示す。以下の実施例1に詳述されるように、図10Aは、定量化され、平均±標準誤差として示される、PK2の免疫蛍光強度のデータおよび対応する画像を示し、図10Bは、Bmal1欠損マウス(BMAL KO)のipRGCにおけるPK2レベルが、一貫して低く、明らかな発振を示さなかったことを示す、データおよび対応する画像を示し、カラムの上の挿入図は、ipRGCのPK2免疫染色(緑色)の代表的な画像を示し、核の対比染色は、青色として示される。
【0035】
図11図11A~Dは、PK2受容体であるPKR2が、ある特定の網膜神経節細胞において発現されることを示す、in situハイブリダイゼーションの画像を示す。以下の実施例2に詳述されるように、図11Aは、網膜神経節細胞層におけるPKR2シグナルを示し、図11Bは、図11Aの枠内の領域のより高倍率の画像を示し、図11Bにおいて、PKR2陽性である個々の網膜神経節細胞が、明らかであり、図11Cおよび図11Dは、それぞれ、図11Aおよび図11Bに対応する眼切片のNissl染色を示す。
【0036】
図12図12は、目覚めのレベルが、PK2欠損(PK2-/-)マウスにおいては、深夜の間に増加したことを示すデータをグラフで示し、これは、以下の実施例2に詳述されるように、深夜の期間(ZT20~ZT24)に、PK2-/-マウスにおいて覚醒状態の増加を示す。
【0037】
図13図13は、以下の実施例2に詳述されるように、PK2アンタゴニスト(PKRA)の局所的な眼送達により、PKRAを投与したマウスの自発運動活性が、対照マウス(アンタゴニストを与えていない)と比較して、増加したことを示すデータをグラフで示す。
【0038】
図14図14は、以下の実施例2に詳述されるように、対照マウス(アンタゴニストを与えていない)と比較した、マウスの目覚めのレベルに対するPK2アンタゴニスト(PKRA)の作用を示すデータをグラフで示す。
【0039】
図15図15は、以下の実施例2に詳述されるように、対照(アンタゴニストを与えていない)と比較した、サルの睡眠のレベルに対するPK2アンタゴニスト(PKRA83)の作用を示すデータをグラフで示す。
【0040】
図16図16は、以下の実施例2に詳述されるように、ipRGCの分子装置、連結、および戦略的な位置、ならびに夜行性および昼行性哺乳動物における目覚めのレベルの制御のための極めて重要な脳中枢との関係性を示す図を示す。
【0041】
図17図17は、以下の実施例2に詳述されるように、CT4において網膜の外顆粒層におけるバソプレシン(AVP)の上方調節を示す画像を示し、左上のパネルは、PK2染色を示し、右上のパネルは、AVP染色を示し、左下のパネルは、Hoeschst染色を示し、右下の画像は、他の3つのパネルの統合画像である。
【0042】
図18図18は、以下の実施例2に詳述されるように、バソプレシン(AVP)が、ipRGCにおいても発現されることを示し、左上のパネルは、PK2染色を示し、右上のパネルは、AVP染色を示し、左下のパネルは、Hoeschst染色を示し、右下の画像は、他の3つのパネルの統合画像である。
【0043】
図19図19は、以下の実施例2に詳述されるように、PKRAを投与したサルと対照(アンタゴニストなし)とを対比した、睡眠時間のデータをグラフで示し、PK2受容体アンタゴニストの鼻腔内適用により、サルにおいて睡眠が促進されたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
様々な図面における同様の参照記号は、同様の要素を示す。
【0045】
詳細な説明
代替的な実施形態では、哺乳動物における概日リズム性もしくはタイミングを修正するため、ヒト概日調節系における変化に起因する精神状態もしくは症状を治療するため、哺乳動物における睡眠問題を治療するため、または睡眠もしくは活性抑制を誘導するため、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすための組成物および方法であって、プロキネチシン2(PK2)の活性を修飾することができる化合物または組成物を、哺乳動物またはヒトに投与することを含む、組成物および方法が、提供される。本発明は、任意の特定の作用機序によって制限されるものではないが、例えば、ある特定の中枢神経障害、例えば、睡眠(seep)、気分障害、および概日リズムの調節と関連する他の神経精神障害の治療のための、内因性光感受性網膜神経節細胞に発現される受容体の活性もしくは活性化、または受容体シグナル伝達の阻害もしくは活性化の結果を標的とし、それを修飾する、組成物および方法が、提供される。
【0046】
PK2が、内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)に連結し、さらに、目覚めのレベルおよび睡眠/覚醒サイクルの調節のためにipRGCの脳内標的にシグナル伝達を行うことが、本明細書において初めて記載される。ipRGCの分子装置および戦略的な位置により、ipRGCは、概日時計情報および環境的明/暗条件を統合することが可能である。ipRGCは、特に、ヒトを含めた昼行性哺乳動物に関して、目覚めのレベルおよび睡眠覚醒サイクルの調節に極めて重要である、上丘などの脳中枢に投射する。本明細書において提供されるように、ipRGC、特に、ipRGCに発現される受容体を薬理学的に標的とすることは、関連する中枢神経障害、特に、睡眠および気分障害、例えば、季節性情動障害および双極性障害を治療するための手段を提供する。
【0047】
本明細書に記載されるように、活性がプロキネチシン2(PK2)シグナル伝達のモジュレーションによって修飾され得る内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)が、覚醒状態および睡眠の調節に関して、昼行性哺乳動物における概日リズムの調節に極めて重要であることを示すデータが、本明細書において初めて記載される。覚醒状態および睡眠の調節のためにipRGCのPK2シグナル伝達をモジュレートするための方法が、本明細書において提供される。
【0048】
本発明者らは、内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)に、周囲明暗条件下において昼行性動物の主概日時計のうちの1つが存在することを発見した。特に、時計出力分子であるプロキネチシン2(PK2)が、マウス(図3)およびサル(図4)のipRGCに発現されることを示した。ipRGCは、光マスキング(light masking)および光同調(light entrainment)を媒介する光チャネルである。ipRGCは、それ自体の感光色素を介して直接的に光を感知し、網膜の外節における古典的な光受容体を介して間接的に光を感知する。ipRGCからのPK2シグナル伝達は、視交叉上核(腹側SCN)の網膜受容(retinorecipient)コンパートメントに到達し、さらには、中脳の上丘(SC)に到達する。マウスの脳において、PKR2(PK2受容体)は、網膜受容SCNに強く発現されるが、SCには本質的に不在であり、したがって、PK2シグナル伝達は、主として、ipRGC-SCN経路を通じて送られる。対照的に、PKR2は、サルの脳の網膜受容腹側SCNには発現されないが、SCの網膜受容浅層に強力に発現される。したがって、サルにおけるipRGCのPK2シグナル伝達は、ipRGC-SC経路を介して送られる。全体として、PK2シグナル伝達は、昼行性サルの目覚めのレベルにとっては刺激性であり、夜行性マウスにとっては阻害性である(図8、以下の実施例1を参照されたい)。
【0049】
ipRGC-SC経路は、後外側/視床枕を通じた経路を通る皮質野への投射を介して、または脳幹における網様体賦活系を介して、目覚めのレベルをモジュレートする。ipRGC-SC経路のPK2シグナル伝達は、夜行性マウスおよび昼行性サルの両方の目覚めのレベルにとって刺激性である可能性が高い。光によるipRGC-SC経路の目覚め刺激は、ラットおよびマウスなどの夜行性動物においては、比較的小さい(短時間であり、持続するものではない)可能性が高い。これは、マウスの脳のSCにおけるPKR2(PK2受容体)発現の不在と一致している。SCの全体的なサイズ、視床の外側陽性/視床枕複合体、および関連する皮質は、すべてが、霊長類などの昼行性哺乳動物において、マウスなどの夜行性哺乳動物と比較して、有意に拡大および拡張されていることに、留意されたい。SCN(腹側および背側の両方)におけるPK2経路は、覚醒中枢、例えば、視床下部の腹外側視索前核、外側視床下部、および青斑核に、直接的または間接的に、投射する可能性が高い。ipRGC-SCN経路のPK2シグナル伝達経路は、PKR2(PK2受容体)を含め、夜行性マウスの目覚めのレベルにとっては、明らかに阻害性である。本発明者らの発見により、哺乳動物の昼行性/夜行性の決定が、脳内標的へのipRGCの差次的シグナル伝達によって媒介されることが明らかとなった。サルのSCNにおけるPK2は、マウスのものと同じ相で発振することが公知である(Burtonら、2016年)。
【0050】
製品およびキット
(1)プロキネチシン2(PK2)活性を修飾するため、(2)PKR2(PK2受容体)を修飾するため、(3)任意選択でバソプレシン受容体(VR)がV1aもしくはV1b型のVRである、VR活性を修飾するため、または(4)メラトニン受容体(MR)活性を修飾するための、本明細書において提供される治療組合せ物、または本明細書において提供される化合物もしくは組成物、例えば、医薬組成物を含む、製品およびキットであって、任意選択で、この組合せ物が、PKR2およびVR、PKR2およびMR、PKR2およびPK2、VRおよびPK2、MRおよびPK2、またはPKR2、VR、およびMRのアゴニストまたはアンタゴニストを含む、製品およびキットが提供される。
【0051】
代替的な実施形態では、キットは、本明細書に提供される方法を実施するための説明書をさらに含む。
【0052】
本発明は、本明細書に記載される実施例を参照してさらに説明されるが、しかしながら、本発明は、そのような実施例に制限されないことを理解されたい。
【実施例
【0053】
(実施例1)
哺乳動物の昼行性および夜行性の決定のための新規な神経および分子機序
本実施例は、本明細書に提供される通りの方法が、哺乳動物における概日リズム性もしくはタイミングを修正するため、ヒト概日調節系における変化に起因する精神状態もしくは症状を治療するため、哺乳動物における睡眠問題を治療するため、または睡眠もしくは活性抑制を誘導するため、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすために有効であることを実証する。哺乳動物の昼行性および夜行性の決定のための新規な神経および分子装置が、本明細書において初めて記載される。本明細書において、これまでは視交叉上核の概日時計の出力分子として示されていたプロキネチシン2(PK2)が、内因性光感受性網膜神経節細胞において発現されること、ならびにPK2シグナル伝達が、マウスにおいて光による活性および目覚めの抑制に必要とされることを、実証する。夜行性マウスと昼行性サルとの間で、PK2のシグナル伝達受容体は、内因性光感受性網膜神経節細胞の脳内投射標的である網膜受容視交叉上核および上丘において差次的に発現されることが示されている。選択的アンタゴニストによる遮断により、夜行性マウスおよび昼行性サルの目覚めのレベルに対して、それぞれ、阻害性および刺激性のPK2シグナル伝達の作用が明らかとなる。したがって、哺乳動物の昼行性または夜行性は、内因性光感受性網膜神経節細胞からの網膜受容脳内標的へのPK2の差次的なシグナル伝達によって、決定される。
【0054】
この実施例において、これまでは重要なSCN出力シグナルとして示されていた分子であるPK2が、内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)において、メラノプシン(OPN4)と共発現されることを示す。さらに、PK2シグナル伝達が、マウスにおける持続的な光誘導性の活性抑制および睡眠誘導に必要とされることを示す。PK2アンタゴニストによる遮断は、夜行性マウスおよび昼行性サルにおける目覚めのレベルに対して、対照的なPK2シグナル伝達作用を示した。夜行性マウスと昼行性サルとの間で観察されたipRGCの網膜受容脳内標的におけるPK2シグナル伝達受容体の差次的発現と合わせると、哺乳動物の昼行性/夜行性の決定は、SCN時計の上流にある網膜-脳入力経路間に存在する可能性が高い。
【0055】
結果
1.PK2シグナル伝達は、マウスにおける自発運動活性および目覚めの持続的な光誘導性抑制に必要とされる。
PK2(PK2-/-)またはその受容体(PKR2)のいずれかの遺伝子が欠損したマウスは、恒暗条件下において、低減された自発運動活性の概日リズムを有した29、30。PK2-/-マウスが、明/暗(LD)サイクル下において、日中の自発運動活性の増加も示したことを観察したが、これは、これまでの明期間中のPK2-/-マウスにおける覚醒状態の増加の観察と一致する31。これらの観察により、光の抑制作用が、PK2シグナル伝達の不在下において異常となることが示唆された。したがって、PK2-/-マウスにおける自発運動活性および目覚めのレベルに対する光パルスの抑制作用を試験した。光パルス(150ルクス)を、暗期間の半ば(ZT16~ZT18.5)に野生型マウスに与えた場合、自発運動活性が、有意に抑制された(図1A)。対照的に、PK2-/-マウスについては、光パルスによって自発運動活性のわずかな抑制のみが観察された(図1Aおよび挿入図)。予測したとおり、EEG/EMG記録により、光パルスが、野生型マウスにおいては覚醒状態を抑制したことが判明した(図1Bおよび挿入図)。PK2-/-マウスについては、光による覚醒状態の抑制は、最初の30分間のみ有意であった(図1B)。したがって、光は、依然としてPK2-/-マウスにおいて覚醒状態を抑制することができたが、抑制作用は維持されなかった。
【0056】
薄明かりを用いた自発運動活性および目覚めのレベルに対する光の抑制作用を、さらに調査した。通常のおよそ150ルクスの照明条件がZT12において終了する直前に、光の強度を、ZT12~ZT16に対応する4時間の間、約30ルクスに弱めた。この低減された照明は、野生型マウスの自発運動活性を継続的に抑制した(図2Aおよび挿入図)。対照的に、PK2-/-マウスは、光強度の低減に応答して極めて強い自発運動活性を示し、暗状態下のものにほぼ匹敵する活性レベルを達成した(図2A)。この観察は、1日の後半における活性の高い恒常性作動性では、薄明かりは、もはやPK2-/-マウスにおける自発運動活性を顕著に抑制することができなかったことを示した。EEG/EMG記録により、この薄明かり処置により、対応する目覚めのレベルが影響を受けることが確認された。野生型マウスについては、薄明かりのこの4時間の間、覚醒が維持された時間は、暗状態下よりも大いに低減され、薄明かりの強力な睡眠誘導作用が明らかとなった(図2A)。PK2-/-マウスについては、薄明かり下および暗状態下における覚醒状態の時間は、非常に類似しており、PK2シグナル伝達の不在下における薄明かりによるわずかな目覚めの阻害のみが示された(図2B)。
【0057】
2.内因性光感受性網膜神経節細胞におけるPK2の発現
PK2-/-マウスにおける目覚めのレベルおよび自発運動活性の光による抑制作用の減少は、PK2シグナル伝達が、ipRGC-脳神経経路に関与する可能性が高いことに関係することを示すが、これは、ipRGCが、自発運動活性の抑制および睡眠の誘導を含む、非視覚的な光の機能の中枢的な伝達のための光チャネルとして示されていたためである22、23、24、25、32、33。したがって、ipRGCにおけるPK2の発現の可能性について試験した。図3Aおよび図7)に示されるように、PK2は、一部の網膜神経節細胞において強力に発現される。さらなる共免疫染色研究により、すべてのOPN4陽性網膜神経節細胞が、PK2を発現することが示された(28/28細胞、図3)。ipRGCにおけるPK2およびOPN4のおよそ100%の共発現は、ipRGCのPK2が、SCNおよび脳の他の非視覚的な光の機能領域、例えば、上丘に投射することを示した34、35、36
【0058】
3.夜行性マウスと昼行性サルとの間における、内因性光感受性網膜神経節細胞の脳内標的におけるPK2受容体の差次的発現
夜行性マウスにあるように、PK2の発現は、昼行性サルの網膜神経節細胞においても検出された(図4A)。また、マウスのものと一致して、PK2は、サルipRGCにおいてOPN4と共発現される(図4B/D)。重要なことに、SCNコンパートメントにおける、脳内PK2受容体であるPKR2の差次的発現が、夜行性マウスおよび昼行性サルで観察された。マウスの脳において、PKR2は、SCNの腹側および背側の両方のコンパートメントを含め、SCN全体に発現される(図5B6、37。腹側SCNは、網膜受容である、すなわち、光マスキングおよび概日時計同調に関する網膜入力を受けることが、示されている9、38。マウスにおける網膜受容SCNにおけるPKR2の発現は、マウスの腹側SCNが、ipRGCからのPK2シグナルに応答する可能性が高いことを示す。本発明者らのこれまでの電気生理学研究では、PK2が、PKR2を発現するニューロンの電気活性を増加することが示されている39、40。サルの脳において、PKR2は、背側SCNにおいてのみ発現され、腹側SCNにおいては検出されない(図5A)。夜行性動物にあるように、腹側SCNは、SCN時計の網膜受容コンパートメントとして示されている38、41。腹側SCNにおけるPKR2発現の不在は、サルのSCNが、ipRGCからのPK2シグナルに応答することができないことを示す。マウスの脳とサルの脳との間で異なるPKR2の発現はまた、別の重要な非視覚的なipRGCの脳内標的である上丘(SC)においても観察された34、35、36図5Cに示されるように、PKR2は、サルの脳において、SCの浅層に強く発現された。SCの浅層は、ipRGCを含め、網膜神経節細胞からの入力を受けることが公知である34、35、36。対照的に、PKR2発現は、マウスの脳のSCにおいては検出されておらず(図5D)、マウスにおいてはipRGC-SCを介したPK2シグナル伝達が不在であることを示した。
【0059】
4.夜行性マウスおよび昼行性サルにおける目覚めのレベルに対するPK2遮断の対照的な作用
次に、マウスおよびサルにおける目覚めのレベルに対する合成PK2アンタゴニストであるPKRA83の作用を試験した。図6Aおよび6Bに示されるように、PKRA83の投与により、マウスにおける自発運動活性および覚醒状態が有意に増加した。これらの結果は、これまでのPK2-/-マウスにおける覚醒状態の増加の観察と一致している31。したがって、PK2シグナルは、夜行性マウスの目覚めのレベルにとって、全般的に阻害性である。対照的に、サルにおけるPK2アンタゴニストの投与は、睡眠時間の有意な増加(70分を上回る)をもたらし(図6C)、PK2シグナルが、昼行性サルにおける目覚めのレベルにとっては、刺激性であることが示された。
【0060】
結論
PK2が、中枢的に投射するipRGCにおいて発現されることを示した。ipRGCは、非視覚的な光の機能の中枢的な伝達のための唯一の光チャネルであるため、PK2-/-マウスにおける持続的な光誘導性の活性抑制および睡眠誘導の不在は、ipRGCのPK2シグナル伝達が、夜行性マウスにおける目覚めの調節に対する光の作用を伝達することに極めて重要であることを示す。PK2アンタゴニストの投与を介したPK2シグナル伝達の遮断は、目覚めのレベルに対するPK2シグナルの対照的な作用を示した:夜行性マウスにとっては阻害性であり、昼行性サルにとっては刺激性である。まとめると、これらの結果は、夜行性および昼行性の分岐の機序が、脳内標的への差次的なipRGCのPK2シグナル伝達にあることを示す(図8)。
【0061】
ipRGCのPK2シグナル伝達は、ipRGCの脳内標的、特に、SCNおよびSCへの到達を介して、目覚めのレベルを調節する可能性が高い。SCNの網膜受容コンパートメントおよびSCの網膜受容浅層におけるPK2受容体(PKR2)の差次的発現は、したがって、夜行性マウスと昼行性サルとの間で対照的な目覚めのレベルに対する光の作用の基礎となっている可能性がある。マウスの脳において、PKR2は、網膜受容SCNには強く発現されるが、SCには不在であり、ipRGCのPK2シグナル伝達は、したがって、夜行性マウスにおいて、目覚めを阻害するipRGC-SCN経路を通じて送られる。対照的に、PKR2は、サルの脳の網膜受容腹側SCNには発現されないが、SCの網膜受容浅層においては強力に発現され、したがって、ipRGC-SC経路が、昼行性サルでは優勢である。
【0062】
ipRGC-SC経路のPK2シグナル伝達は、目覚めのレベルにとって刺激性である可能性が高い。SCは、これまでに、光誘導性の目覚めまたは目覚めの増加と緊密に関係する他のより高次な脳の機能、例えば、注意の極めて重要な中核として示されている42、43、44、45。SCは、視床の後外側/視床枕複合体を通じた経路を通る皮質への上行性投射を介して、光作動性の目覚めを媒介し得る46、47。あるいは、SCは、上行性賦活系の重要な構成要素である中脳網様体への下行性投射を介して目覚めを促進し得る42、43、44、45。サルにおいて、SCの両側病変部は、光に対する応答を含め、目覚めのレベルに劇的に影響を及ぼすことが見出されている42。ラットにおける病変部研究により、SCが、光フラッシュに応答したEEG脱同調(目覚め)に重要であることが判明している43。このラット病変部研究は、ipRGC-SC経路が、光フラッシュに応答して少なくとも一時的に、夜行性動物の目覚めのレベルにとって刺激性となり得ることを示唆する。全体として、阻害性ipRGC-SCN経路が優勢となるため、光は、夜行性動物の目覚めのレベルにとっては阻害性である。夜行性動物と比較して、SCの全体的なサイズ、視床の後外側/視床枕複合体、および関連する皮質は、すべてが、霊長類などの昼行性哺乳動物種において、有意に拡大および拡張されていることが、周知である48、49。哺乳動物種は、夜行性から始まったと考えられるため50、哺乳動物の昼行性は、目覚めを刺激する網膜-SC経路の増強および同時に発生する目覚めを阻害する網膜-SCN経路の減少によって進化する可能性がある。このモデルは、夜行性/昼行性の決定が、SCN概日時計の上流に存在し、したがって、SCN時計の下流の多様なシグナル伝達は、必要でない可能性があることを示す。
【0063】
方法
動物:混合した遺伝的バックグラウンドのPK2-/-マウスおよびその同腹の野生型対照を、記載されるように生成した29、31。マウスは不断食餌し、午前7:00(ツァイトゲーバー時間ZT0、明期間ZT0~ZT12)に点灯し、午後7:00(ZT12、暗期間ZT12~ZT0)に消灯する、光(およそ150ルクスの白色光)を用いた規則的な明/暗サイクルで、収容した。すべての動物の手順は、適切な動物実験委員会(institutional animal use committee)によって承認を受けた。
【0064】
マウスにおける自発運動活性の測定および分析:自発運動活性のモニタリングを、記載されるように行った29。簡単に述べると、マウスを、自発運動活性のモニタリングのために、赤外光線を備えるケージに個別に収容した(AccuScan Instrument Inc、Columbus、OH)。マウスを、規則的な12時間の明(およそ150ルクスの白色光):12時間の暗サイクルで収容した。自発運動活性を、10分間隔当たりの計数として記録し、30分または60分のピン(pin)で分析した。光パルスまたは薄明かりを、示された強度で与えた。
【0065】
マウスにおける目覚めのレベルの測定および分析:脳波記録法(EEG)および筋電図(EMG)のシグナルを記録するための電極を、記載されるように埋め込んだ29、31。マウスを、EEG/EMGシグナルの収集のために、テザー/整流器システムのスイベルシステム(Plastics One、Roanoke、VA)に接続した。EEG/EMGシグナルを、Grass Model78(商標)(Grass Instruments、West Warwick、RI)を使用して増幅させ、フィルタリング(EEG:0.3~100Hz、EMG:30~300Hz)した後、128Hzのサンプリング速度でデジタル化し、コンピュータに記憶した。睡眠データを収集した後、EEG/EMG記録を、SleepSign(商標)ソフトウェアの睡眠スコアリングシステム(Kissei Comtec America、Irvine、CA)を記載されるように用いて、スコアリングした31。マウスを、規則的な12時間の明/12時間の暗サイクルで収容した。光パルスまたは薄明かりを、示された強度で与えた。
【0066】
in situハイブリダイゼーション:in situハイブリダイゼーションの手順は、記載されるのと同様に行った6、7。組織切片を、-20℃で切断した後、4%パラホルムアルデヒドで固定し、続いて、0.1Mリン酸緩衝液で3回洗浄し、空気乾燥させ、使用するまで-20℃で保管した。in situハイブリダイゼーションのために、切片を、室温で乾燥させた後、プロテイナーゼK(1μg/ml)の予備処置を行った。切片を、次いで、空気乾燥させ、60℃で18時間インキュベートすることによって、S35標識したリボプローブとハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションの後に、組織切片を、RNase(20μg/ml)(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)で処置し、塩濃度を減少させるための洗浄およびハイストリンジェンシー(68℃)洗浄を行った。脱水および空気乾燥の後、組織切片を、Kodak Biomax(商標)フィルムに曝露した。画像分析システム(MCID、Imaging Research、Ontario、Canada)を用いて、画像を捕捉した。
【0067】
免疫組織化学検査:これまでの刊行物に従って、免疫組織化学検査を行った51、52。網膜切片を、コーティングされたガラススライドに載置した。切片を、PBS中で20分間再水和した後、2%BSA、0.5%Tween-20、および0.05%Triton-X100を含有するブロッキング緩衝液中に1時間浸漬させた。PK2に対する一次抗体(ハムスターモノクローナル、1:200、Roche Inc.)またはOPN4に対する一次抗体(親和性精製したウサギポリクローナル、1:200、Millipore Inc.)を、4℃で一晩、切片に添加した。スライドを、0.5%Tween-20を含有するPBSで、5分間ずつ5回洗浄した。次いで、抗ウサギまたは抗ハムスター二次抗体(Alexa Fluor488または555、1:2000、Invitrogen Inc.)を適用した後、10μg/mlのHoechst33342(商標)(Invitrogen Inc)とともに、室温で5分間インキュベートして、核を染色した。切片を、Nikon倒立蛍光顕微鏡(Model TE-2000U(商標)、株式会社ニコン、東京、日本)下で確認した。画像を、SPOTデジタルカメラ(Diagnostic Instruments,Inc、Sterling Heights、MI)で捕捉した。DAB(3,3’-ジアミノベンジジン)免疫染色のために、切片を、抗PK2抗体(ハムスターモノクローナル、1:500希釈)抗体とともにインキュベートした後、ビオチン化抗ハムスター二次抗体とともにインキュベートした。DAB免疫染色の発色現像を、標準的なABC方法を用いて行った52
【0068】
マウスおよびサルにおける活性または目覚めのレベルに対するPK2アンタゴニストの作用を試験する薬理学的実験:
PK2アンタゴニスト(PKRA83)を、記載されるのと同様に調製した53。PKRA83(40mg/kg)を、ZT6においてマウスに腹腔内投与した。PKRA83(10mg/kg)を、ZT10においてサルに筋肉内投与した。薬理学的実験のために、動物を、ビヒクルまたはアンタゴニストのいずれかで処置した後、1週間後に逆の処置によりクロスオーバーを行って、対応する対照を形成した。
【0069】
PK2アンタゴニストまたは対照で処置したマウスの睡眠および活性のデータを、PK2-/-マウスについて記載されるように取得し、分析した。サルの睡眠研究については、若齢成体サル(Macaca fascicularis)を、標準的な明(白色光、約250ルクス)および暗のサイクル下で収容した。サルにおける目覚めのレベルの測定および分析を、以下のように行った。これまでにヒト対象54、55、56、57および非ヒト霊長類58に関して記載されているものに類似の着用可能な無線睡眠トラッカーを、使用した。この無線システムにより、サルに対する妨害を最小限に抑えながら長時間外来環境のサルの睡眠/覚醒の状態を遠隔でモニタリングすることが可能となった。無線睡眠トラッカーから得られた睡眠データを、赤外線ビデオカメラの同時記録とともに検証した。睡眠トラッカーの睡眠データを、動物ケージから約10メートル離れて設置した携帯電話を用いて、サルと物理的に接触することなく毎日取り出した。これまでの研究は、睡眠トラッカーによって得られた睡眠データ、ビデオカメラ、EEG/EMG方法によって得られた古典的な睡眠/覚醒データの優れた一致を示している54、57、59
【0070】
統計学:超概日リズム(ultradian rhythm)に起因するデータ変動の影響を低減するために、マウスの自発運動活性およびEEG/EMGの測定を、2回行い、これらの2回の測定の平均値を、統計学的分析に使用した。統計学的分析を、GraphPad Prism Software Version5.0(商標)(San Diego、CA)を使用した一方向または二方向ANOVAによって行った後、適切な事後検定を行った。
【0071】
図の凡例
図1A.自発運動活性および目覚めのレベルに対する光パルスの作用。白色のバーは、ZT16~ZT18.5(2.5時間)の間に、野生型(N=6匹)およびPK2-/-マウス(N=7匹)に与えた光パルス(150ルクス)を示す。分析ビンのサイズは、30分であり、値は、平均±標準誤差である。A.光パルスにより、野生型マウスにおいて自発運動活性が有意に阻害された(P<0.01、二方向ANOVA、*P<0.05、**P<0.01、ボンフェローニの事後検定による)。PK2-/-マウスの自発運動活性に対する光パルスの作用は、有意ではなかった(P>0.05、二方向ANOVA)。挿入図は、2.5時間全体における自発運動活性を示す(*P<0.05、対応のあるt検定)。
【0072】
図1B.光パルスにより、野生型マウスにおいて覚醒時間が有意に減少した(P<0.0001、二方向ANOVA、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、ボンフェローニの事後検定による)。PK2-/-マウスの目覚めのレベルに対する光パルスの阻害性作用は、最初の30分間のみ有意であった(P<0.05、二方向ANOVA、**P<0.01、ボンフェローニの事後検定による)。挿入図は、2.5時間全体の覚醒分数を示す(***P<0.001、対応のあるt検定)。2.5時間全体における目覚めのレベルに対する光パルスの阻害性作用は、PK2-/-マウスでは有意でなかった(P>0.05、対応のあるt検定)。
【0073】
図2A.自発運動活性および目覚めのレベルに対する薄明かりの作用。灰色のバーは、ZT12~ZT16の間に、野生型(N=6匹)およびPK2-/-マウス(N=7匹)に与えた4時間の薄明かり(30ルクス)を示す。A.暗状態と比較して、薄明かりにより、野生型マウスにおいて自発運動活性が有意に減少した(P<0.0001、二方向ANOVA、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、ボンフェローニの事後検定による)。自発運動活性に対する薄明かりの阻害性作用は、PK2-/-マウスでは有意ではなかった(P>0.05、二方向ANOVA)。挿入図は、4時間全体における自発運動活性を示す(**P<0.01、対応のあるt検定)。
【0074】
図2B.暗状態と比較して、薄明かりにより、野生型マウスにおいて目覚めのレベルが有意に減少した(P<0.0001、二方向ANOVA、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、ボンフェローニの事後検定による)。PK2-/-マウスの目覚めのレベルに対する薄明かりの阻害性作用は、最初の30分間のみ有意であった(P<0.05、二方向ANOVA、**P<0.01、ボンフェローニの事後検定による)。
【0075】
図3.マウス網膜の網膜神経節細胞におけるPK2およびOPN4の共発現。PK2免疫染色は、緑色として示し(A)、一方でOPN4蛍光免疫標識は、赤色で示す(B)。核対比染色は、青色として示す(C)。網膜神経節細胞におけるPK2およびOPN4の共発現が、明らかである(D)。PK2およびOPN4によって強力に免疫染色された2つの細胞を、示す。スケールバー、40μm。
【0076】
図4.サル網膜の網膜神経節細胞におけるPK2およびOPN4の共発現。PK2免疫標識は、緑色として示し(A)、一方でOPN4蛍光免疫標識は、赤色として示す(B)。核対比染色は、青色として示す(C)。網膜神経節細胞におけるPK2およびOPN4の共発現が、明らかである(D)。挿入図は、代表的な陽性細胞のより高倍率の画像を示す。スケールバー、20μm。
【0077】
図5.マウスおよびサルの脳の網膜受容標的におけるPKR2 mRNAの差次的発現。A.サルの脳の視交叉上核(SCN)の背側コンパートメントにおけるPKR2 mRNAの検出。腹側SCNには検出されない。B.マウスの脳におけるSCN全体、腹側および背側の両方のコンパートメントにおけるPKR2 mRNAの検出。C.サルの脳の上丘(SC)の浅層におけるPKR2 mRNAの検出。D.マウスの脳のSCにおけるPKR2 mRNAの不在。マウスおよびサルの両方の脳の背側縫線核(DR)におけるPKR2の発現に留意されたい。スケールバー、1mm。
【0078】
図6.マウスおよびサルにおける自発運動活性および目覚めのレベルに対するPK2アンタゴニストPKRA83の差次的作用。A.PKRA83により、マウスの自発運動活性が有意に増加した(N=16匹、P<0.05、二方向ANOVA、*P<0.05、ボンフェローニの事後検定による)。B.PKRA83により、マウスの覚醒時間が有意に増加した(N=6匹、二方向ANOVA、*P<0.05、ボンフェローニの事後検定による)。AおよびBの挿入図は、PKRA83により、それぞれ、6時間の日中の期間の間に、自発運動活性および覚醒分数が増加したことを示す(**P<0.01、対応のあるt検定)。C.PKRA83により、サルの睡眠時間が有意に増加した(N=9匹、*P<0.05、対応のあるt検定)。
【0079】
図7.マウス網膜の網膜神経節細胞におけるPK2の発現。PK2免疫標識は、DAB(3,3’-ジアミノベンジジン)によって現像した。A.1つが変位しておらず、1つが変位している、2つのPK2陽性網膜神経節細胞の例を、矢印で示す。B.ヘマトキシリン対比染色によるPK2 DAB免疫染色。1つが強力に染色され、1つがより中等度に染色された、2つのPK2陽性網膜神経節細胞の例を、矢印で示す。スケールバー、20μm。
【0080】
図8.脳内標的に対するipRGCのPK2シグナル伝達の差次的な目覚め調節を示す図。PK2は、中枢的な非視覚の光の機能を伝達する唯一の光チャネルであるipRGCにおいて発現される。全体として、PK2シグナル伝達は、アンタゴニスト遮断およびPK2欠損性によって示されるように、昼行性サルにとっては刺激性であり、夜行性マウスにとっては阻害性である。網膜受容腹側SCNおよびSCの浅層におけるPKR2の差次的発現は、ipRGCのPK2シグナル伝達が、マウスおよびサルについて、それぞれ、ipRGC-SCNおよびipRGC-SCを通じて送られることを示す。夜行性動物については、ipRGC-SC経路を介した光による目覚めの刺激は、わずかであり(一過的であり、持続するものではない)、マウスの脳のSCにおけるPKR2の不在と一致する。ipRGCSCN経路のPK2シグナル伝達は、夜行性マウスにとっては明らかに阻害性であるが、昼行性動物にとって阻害性であるか刺激性であるかははっきりしない。実際に、主概日時計としてのSCNを裏付ける根拠は、夜行性動物では極めて強力であるが、そのような主張は、実際には、昼行性動物の事例では裏付ける根拠が限られている。リスザルにおけるSCN病変による睡眠の増加に関してよく引用される文献は、SCNが昼行性動物の目覚めを促進すると解釈されるが、これは、網膜視床下部路に同時発生した病変部によって説明することができる。本発明者らのモデルは、哺乳動物の昼行性/夜行性の決定が、脳内標的に対するipRGCの差次的なシグナル伝達によって媒介され、したがって、SCNの下流の多様なシグナル伝達機序は、必要でない可能性があることを示す。
【0081】
(実施例2)
PK2は、ipRGCの脳への接続のためのシグナル分子としての機能を果たす
この実施例では、PK2が、哺乳動物の覚醒状態および睡眠を調節するipRGCにおける概日時計の出力分子としての機能を果たすこと、ならびにPK2アンタゴニストが、睡眠を誘導または促進することを示す研究について記載する。
【0082】
網膜における概日時計は、大部分が、局所的な生理学および機能、例えば、網膜電図増幅および視細胞外節盤(photoreceptor outer segment disk)のファゴサイトーシスを調節すると考えられている。本発明者らの発見により、PK2が、哺乳動物の覚醒状態および睡眠を調節するipRGCにおける概日時計の出力分子としての機能を果たすことが判明した。
【0083】
網膜の外顆粒層におけるPK2の発現は、継続的な暗状態の間に増加することが見出された。図9に示されるように、網膜の外顆粒層におけるPK2の発現は、CT4において、ZT4よりもはるかに高い。細胞計数により、ZT4において、PK2陽性であった光受容器の割合が、およそ0.1%であったことが判明した。CT4において、PK2陽性光受容器の割合は、およそ2%に増加し、PK2陽性細胞が、錐体である可能性が高いことを示した。図9は、ZT4(パネルA)と比較して、CT4(パネルB)において、網膜の外顆粒層におけるPK2の上方調節を示す画像を示す。図9において、ZT4(パネルA)と比較して、CT4(パネルB)において、網膜の外顆粒層におけるPK2の上方調節が示されている。PK2の免疫染色が示されており、枠内の領域は、マウス網膜の外節を示す。核の対比染色が、青色として示されおり、ZT4(パネルA)と比較して、CT423(パネルB)におけるPK2の上方調節が、明らかである。哺乳動物の網膜の外顆粒層におけるPK2の上方調節は、暗状態の間の光受容器の神経活性の増加と関連している可能性がある。
【0084】
ipRGCにおけるPK2発現は、明暗条件下において、Bmal1依存性様式で、発振することがさらに示された(図10)。野生型マウスにおいて、ipRGCにおけるピークおよびトラフPK2レベルは、それぞれ、およそZT4およびZT20であった。対照的に、Bmal1欠損マウスのipRGCにおけるPK2レベルは、一定して低く、明らかなPK2の発振は観察されなかった。それぞれおよそZT4およびおよそZT20におけるピークおよびトラフのタイミングを含む、ipRGCにおけるPK2レベルの発振相は、SCN時計において観察されたPK2の発振に非常に類似であり、同じ分子発振体による調節を示す。合わせると、これらの結果は、ipRGCにおけるPK2の発振性発現が、時計依存性プロセスであることを示す。
【0085】
in situハイブリダイゼーションは、PK2受容体であるPKR2が、ある特定の網膜神経節細胞において発現されることを示す(図11)。PKR2発現は、網膜神経節細胞においてのみ検出され、双極細胞においては検出されない。網膜神経節細胞の層におけるこれらのPKR2陽性細胞の存在度および直径の特性は、これらのPKR2陽性細胞が、ipRGCであることを示す。図11は、ある特定の網膜神経節細胞においてPKR2の発現を示す画像を示す。図11において、ある特定の網膜神経節細胞におけるPKR2の発現を示す。PKR2 mRNAは、in situハイブリダイゼーションによって検出される。パネルAは、網膜神経節細胞層におけるPKR2シグナルを示し、枠内の領域のより高倍率の画像を、パネルBに示す。パネルBにおいて、PKR2陽性である個々の網膜神経節細胞が、明らかである。パネルCおよびDは、それぞれ、パネルAおよびBに対応する眼切片のNissl染色を示す。
【0086】
図12に示されるように、目覚めのレベルは、深夜の間、特に、ZT20~ZT24(光点灯前の4時間の期間)の間に、PK2欠損(PK2-/-)マウスにおいて、増加した。したがって、PK2シグナルは、この期間の間に、マウスにおいて、目覚めのレベルを阻害する。図12は、深夜の期間(ZT20~ZT24)に、PK2-/-マウスにおいて覚醒状態の増加を示すデータをグラフで示す。
【0087】
自発運動活性に対するPK2アンタゴニストの作用を、野生型マウスにおいて試験した。図13に示されるように、局所的な眼適用により深夜の間に送達されたPK2アンタゴニストにより、マウスにおいて、自発運動活性が増加し、したがって、覚醒状態レベルが増加した。図13は、PK2アンタゴニストの局所的な眼送達により、マウスの自発運動活性が増加したことを示すデータをグラフで示す。
【0088】
図14は、マウスの目覚めのレベルに対するPK2アンタゴニスト(PKRA)の作用を示すデータをグラフで示す。日中におけるPK2アンタゴニストの局所的な眼適用により、マウスの覚醒時間が有意に増加した(*P<0.05、対応のあるt検定)。
【0089】
目覚めのレベルに対するPK2シグナル伝達の作用は、昼行性哺乳動物では、夜行性哺乳動物と比較して逆転するため、PK2シグナル伝達は、サルまたはヒトなどの昼行性対象において覚醒状態を刺激することである。PK2アンタゴニストは、マウスにおいて覚醒状態を増加させることが示されているため(図14)、同じPK2アンタゴニストは、サルなどの昼行性対象においては、覚醒状態を阻害する、すなわち、睡眠を促進することが予測される。図14は、マウスの目覚めのレベルに対するPK2アンタゴニスト((3R)-1-(4-フルオロ-3-メトキシベンジル)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミド、いわゆる「PKRA83」)の作用をグラフで示す。PK2アンタゴニストの局所的な眼適用により、マウスの覚醒時間が有意に増加した(*P<0.05、対応のあるt検定)。
【0090】
局所的な眼送達により、サルにおける目覚めのレベルに対するPK2アンタゴニストの作用を試験した。図15に示されるように、PK2アンタゴニストの局所適用により、サルにおいて睡眠が促進される。図15は、サルの睡眠に対するPK2アンタゴニスト(PKRA83)の作用を示すデータをグラフで示す。PK2アンタゴニストの局所的な眼適用により、サルの睡眠が有意に増加した(*P<0.05、対応のあるt検定)。
【0091】
ipRGCは、深夜からおよび日中全体の期間に、PKR2を発現し、さらにはPK2も発現するため、PK2はまた、ipRGCの樹状突起または軸索側枝から放出されて、隣接するipRGCにおいてPKR2受容体を活性化する可能性が高い、すなわち、PK2は、ipRGCの神経活性を連結する。したがって、本明細書において提供されるように、網膜におけるPK2シグナル伝達を遮断する方法は、PK2シグナルの相の前進を有することが予測される睡眠相前進障害などの疾患状態については睡眠を促進するであろう。
【0092】
本明細書において初めて提供されるデータは、PK2シグナル伝達が、図16に概略的に示されるように、目覚めのレベルの調節のために、ipRGCの概日時計に連結し、続いてipRGCの脳内標的に連結することを示す。図16は、ipRGCの戦略的な位置を、図として、概略的に示す。ipRGCは、明/暗および時計の情報を統合する。PK2は、夜行性および昼行性の哺乳動物における目覚めのレベルの制御のために、極めて重要な脳中枢に、ipRGCおよびipRGCの神経投射の連結のためシグナルを伝達する。
【0093】
ipRGCの分子装置および戦略的な位置により、ipRGCは、概日時計情報および環境的明/暗条件を統合することが可能である。さらに、ipRGCは、目覚めのレベルおよび睡眠覚醒サイクルの調節に極めて重要である、上丘などの脳中枢に投射する。したがって、ipRGCおよび代替的な実施形態ではipRGCに発現される受容体を薬理学的に標的とする、本明細書において提供される方法を使用して、羞明、睡眠および気分障害、季節性情動障害、ならびに双極性障害を含む、ipRGCにより調節されるおよびそれに関連する中枢神経障害を治療、緩和、または予防することができる。
【0094】
羞明は、網膜における光受容器の過剰刺激、または視神経に対する過剰な電気インパルス、または脳における過剰な応答によって引き起こされ得る。PK2は、非視覚の光の機能を脳に通信することに関与するため、PK2アンタゴニストを介したPK2シグナルの軽減により、脳への光シグナルを弱めることになる。したがって、PK2アンタゴニストの投与は、羞明の症状を緩和、治療、または予防するのに有用である可能性が高い。
【0095】
網膜の外顆粒層におけるバソプレシン(AVP)もまた、図17の画像に示されるように、継続的な暗状態の間に上方調節されることを示した。この図は、CT4において、PK2と同様に、網膜の外顆粒層におけるバソプレシン(AVP)の上方調節を示す。図18の画像に示されるように、PK2と同様に、バソプレシンもまた、ipRGCに発現される。この図は、ipRGCにおけるPK2とバソプレシン(AVP)との共局在化を示す。したがって、ipRGC、および続いてipRGCから極めて重要な脳内標的への連結のための、PK2およびバソプレシンの並行したシグナル伝達が存在すると考えられる。したがって、ipRGCに発現されるバソプレシン受容体の薬理学的操作もまた、関連する中枢神経障害、特に、睡眠および気分障害(季節性情動障害および双極性障害)を治療するのに有用であろう。
【0096】
PK2受容体アンタゴニストの鼻腔内適用によってもサルにおける睡眠が促進されたことを、示した(図19)。この局所経路で送達されるPK2受容体アンタゴニストは、脳内に入り、ipRGCからのPK2投射によって支配されている上丘などの重要な核においてPK2受容体を遮断することができる可能性が高い)。図19は、サルの睡眠に対するPK2アンタゴニスト(PKRA)の作用を示すデータをグラフで示す。PK2受容体アンタゴニストの局所的な鼻内適用により、サルの睡眠時間が有意に増加した(*P<0.05、対応のあるt検定)。
【0097】
(実施例3)
昼行性および夜行性哺乳動物の疾患ならびに関連する状態を治療するため、ならびに他の重要なヒト障害、例えば、疼痛、がん、乾癬、および関節炎を治療するための組成物
この実施例では、本明細書において提供される方法および組成物を実践するために使用することができるプロキネチシンアンタゴニストの合成および製剤化について記載する。
【0098】
代替的な実施形態では、本明細書において提供される方法を実践するために使用される化合物は、興味深い可溶性および薬理学的プロファイルを有するアミド誘導体である。特に、プロキネチシンアンタゴニストまたはそれらのプロドラッグが、それらを含む脂質製剤および注射用デポー製剤を含めて、本明細書において提供される。これらの誘導体およびその長時間作用型製剤は、例えば、哺乳動物における概日リズム性タイミングを修正するため、ヒト概日調節系における変化に起因する精神状態もしくは症状を治療するため、哺乳動物における睡眠問題を治療するため、または睡眠もしくは活性抑制を誘導するため、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすために、そして任意選択で、ある特定のヒト疾患、例えば、がんを処置するためにも好適であり、本明細書に提供される通りの方法および組成物を実施するために使用することができる。
【0099】
代替的な実施形態では、本明細書において提供される方法を実践するために使用される化合物、特に、PK2(プロキネチシン)受容体アンタゴニストは、式1による構造を有するアミド誘導体および化合物であり(例えば、米国特許第8,722,896号を参照されたい):
【化1】
【0100】
式中、R1は、任意選択で置換されるアリール、任意選択で置換されるヘテロアリール、または縮合複素環を有する任意選択で置換されるアリールであり、XおよびYは、独立して、低級アルキルであり、Qは、NHもしくはNR6であり、R6は、低級アルキルであり、Zは、CH2またはCHR7であり、R7は、低級アルキルであるか、またはQおよびZは、互いに共有連結して、QがNであり、ZがCHである複素環式4~6員環を形成し、R2は、低級アルキレンであり、R3は、H、低級アルキル、またはアルカリルであり、Aは、NまたはCであり、Wは、Hもしくはハロゲンであるか、またはWは、AがNの場合にはヌルであり、R4およびR5は、独立して、アルコキシであるか、または互いに共有連結して、少なくとも1つの酸素原子を有する任意選択で置換される複素環式6もしくは7員環を形成する。
【0101】
代替的な実施形態では、R1は、任意選択で置換されるフェニル、任意選択で置換されるインドリル、もしくは任意選択で置換されるインドリニルであり、かつ/またはXおよびYは、CH2である。任意選択で、XおよびYは、互いに共有連結してピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、チオモルホリン環、またはモルホリン環を形成する。本発明の主題を限定するものではないが、任意選択で、R3は、任意選択で分岐される低級アルキルであり、かつ/またはそのR4、R5、W、ならびにR4、R5、およびWが共有連結するフェニル環は、任意選択でハロゲン化されたベンゾジオキセピン環を形成する。最も典型的には、R2は、CH2であり、かつ/またはWは、ClもしくはFである。
【0102】
プロキネチシンアンタゴニストの多数の可能性のある臨床適応症は、慢性疾患であるため、長期間のPK受容体の阻害の延長が、非常に望ましい。したがって、長時間作用型プロキネチシンアンタゴニストが、そのようなヒト障害の治療に有用であり得る。長時間作用型プロドラッグまたは長時間作用型剤形の医薬が、代替的な解決策であり得る。長時間作用型アンタゴニスト、または持続放出製剤は、1回で数日間または数週間の間、患者の系において治療レベルを保つことができる。
【0103】
代替的な実施形態では、下記の式Iまたは表1による化合物および薬学的に許容される担体を含む、哺乳動物における概日リズム性もしくはタイミングを修正するため、ヒト概日調節系における変化に起因する精神状態もしくは症状を治療するため、哺乳動物における睡眠問題を治療するため、または睡眠もしくは活性抑制を誘導するため、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、および任意選択で、また、がんを処置するための医薬組成物が提供される。代替的な実施形態では、化合物は、がん、例えば、腫瘍と関連する異常性を治療または予防するのに有効な量で、経口投与のための投薬単位で存在する。代替的な実施形態では、哺乳動物における概日リズム性もしくはタイミングを修正するため、ヒト概日調節系における変化に起因する精神状態もしくは症状を治療するため、哺乳動物における睡眠問題を治療するため、または睡眠もしくは活性抑制を誘導するため、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、および任意選択で、また、がんを処置するための医薬の製造における、式Iによる化合物の使用である。
【0104】
代替的な実施形態では、慢性ヒト疾患を治療するために理想的な薬物動態パラメーターである、長い半減期および/または分布容積の増大を有するアミド誘導体が、提供される。代替的な実施形態では、ヒト疾患の治療に効果的な濃度である持続時間にわたって薬物を送達するアミドPKアンタゴニストおよび製剤が、提供される。
【0105】
代替的な実施形態では、プロキネチシンアンタゴニストのデポー送達のための組成物および方法が、提供される。
【0106】
代替的な実施形態では、(3R)-1-(ベンゾイミダゾール-4-イルメチル)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミドが、提供される。
【化2】
【0107】
代替的な実施形態では、合成は、以下を含む。
ステップ1. 1H-ベンゾイミダゾール-4-カルボン酸。2,3-ジアミノ安息香酸(7g)を、オルトギ酸トリエチル(100ml)中に懸濁し、撹拌しながら130℃に一晩加熱した。室温に冷却した後、ジエチルエーテル(300ml)を、次いで、添加し、結果として得られた沈殿物を濾過した。7.3gの1H-ベンゾイミダゾール-4-カルボン酸の固体粉末が、乾燥後に得られた。M+1=163.1。
ステップ2. (1H-ベンゾイミダゾール-4-イル)メタノール。1H-ベンゾイミダゾール-4-カルボン酸(7.3g)を、350mlのテトラヒドロフラン中に懸濁し、ドライアイス-アセトン浴で冷却した。水素化アルミニウムリチウム(4M、21ml)を、緩徐に添加した。反応物を撹拌し、一晩室温に温めた。反応を、5mlのメタノールで停止させ、800mlの20%メタノールおよび80%酢酸エチルで抽出した。濾過した後、固体を廃棄した。減圧下での濾液の蒸発により、7gの粗製(1H-ベンゾイミダゾール-4-イル)メタノール(M+1=149.1)が得られ、次のステップで使用した。
ステップ3. 1H-ベンゾイミダゾール-4-カルバルデヒド。7gの(1H-ベンゾイミダゾール-4-イル)メタノールを、350mlのジメチルスルホキシド中に溶解した。36mlのジイソプロピルエチルアミンおよび33gの三酸化硫黄ピリジン錯体を、添加した。反応物を、一晩撹拌した。800mlの水を添加し、混合物を、400mlの酢酸エチルで5回抽出した。有機層を、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(100%酢酸エチル)により、黄色っぽい粉末の1H-ベンゾイミダゾール-4-カルバルデヒドを得た(M+1=147.1)。
ステップ4. (3R)-1-(ベンゾイミダゾール-4-イルメチル)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミド。(3R)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミドを、記載されるように調製した。(3R)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミド(3800mg、WO/2010/077976に記載されるように調製)、1H-ベンゾイミダゾール-4-カルバルデヒド(1550mg)、氷酢酸(4.7ml)、およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(3.0g)のジクロロメタン(150ml)中の混合物を、一晩撹拌した。K2CO3水溶液(2N、1200mL)の添加後に、混合物を、100mlの酢酸エチルで3回抽出した。有機層を合わせ、ブライン(500ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残渣を、シリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中100%酢酸エチル)により精製し、(3R)-1-(ベンゾイミダゾール-4-イルメチル)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミドを、樹脂として得た。MS (m+1) = 497.2; H NMR (500 MHz, CDCl3) 0.95 (m, 6H), 2.00 (m, 1H),2.09 (s, 1H),2.12 (m, 1H), 2.25 (m, 2H), 2.39 (m, 1H), 2.45 (m, 1H), 2.53 (m, 1H), 2.60 (m, 1H), 2.70 (m, 1H), 3.14 (m, 1H), 3.23 (m, 1H), 3.30(m, 1H), 3.38 (q, 1H), 4.20 (m, 2H), 4.30 (m, 2H), 4.45 (m, 2H),4.66 (d, 1H), 6.6-8.0 (m, 6H).
【0108】
代替的な実施形態では、(3R)-1-(ベンゾイミダゾール-4-イルメチル)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミド塩酸塩が、提供される。
【化3】
【0109】
代替的な実施形態では、合成は、以下を含む。
ステップ1. 1,77gの(3R)-1-(ベンゾイミダゾール-4-イルメチル)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミドを、20mlのジクロロメタン中に溶解した。1,4-ジオキサン中の4M塩酸塩を添加し、室温で4時間撹拌した。混合物を、減圧下で蒸発させて、(3R)-1-(ベンゾイミダゾール-4-イルメチル)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルピロリジン-3-カルボキサミド塩酸塩を得た。融解点、120~122℃。
【0110】
代替的な実施形態では、(-)-(2R)-2-メチル-3-(ベンゾイミダゾール-4-イルメチルアミノ)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルプロパンアミドが、提供される。
【化4】
【0111】
記載されるように(WO/2010/077976)調製した(-)-(2R)-2-メチル-3-アミノ-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルプロパンアミドを利用して、(-)-(2R)-2-メチル-3-(ベンゾイミダゾール-4-イルメチルアミノ)-N-(9-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イルメチル)-N-イソブチルプロパンアミドを、上述のように調製した。
【0112】
選択された生物学的実験の実施例
in vitroでのCa2+動員アッセイ
カルシウム動員についてのエクオリンに基づく発光アッセイを使用して、細胞内Ca2+の動員を測定した(Bullockら、Mol Pharmacol、65巻、582~588頁、2004年)。発光タンパク質エクオリンおよび組換えPKR1またはPKR2を安定に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、この方法によって試験した。簡単に述べると、細胞を、37℃で2時間、8μMセレンテラジンcpを含有するOpti-MEM(商標)(Invitrogen)に充填した。細胞を、短時間のトリプシン処理によって分離させ、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に10mM HEPES(pH7.5)および0.1%BSAを加えたものに、約5×10個の細胞/mlで、維持した。発光測定を、Bertholdルミノメーターを使用して行った。
【0113】
すべての化合物を、HBSSに10mM HEPES(pH7.5)および0.1%BSAを加えたものに、希釈した。アゴニスト活性を試験するために、100μlの細胞を、20μlの化合物とともにチューブに注射した。アンタゴニストアッセイについては、80μlの細胞を、20μlの異なる濃度のアンタゴニストとともにチューブにおいて室温で20分間インキュベートした後、100μlの組換えPK2を注射した。アッセイから得られたIC50を、次いで、以下の式を使用して、Ki値に変換した:IC50/(1+[PK2]/EC50PK2)。
【0114】
一部の実施形態では、本明細書において提供されるある特定の実施形態を説明し、特許請求するために使用される成分の量、特性、例えば濃度、反応条件などを表す数は、一部の事例では、「約」という用語によって、修飾されているものとして理解されたい。したがって、一部の実施形態では、書面による説明および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、近似値であり、特定の実施形態によって得ようとする所望される特性に応じて、多様であり得る。一部の実施形態では、数値パラメーターは、報告された有効桁の数を考慮し、通常の端数処理技法を適用することによって、解釈されるべきである。本明細書において提供される一部の実施形態の広範な範囲について記載する数値範囲およびパラメーターは、近似値ではあるが、特定の実施例において記載される数値は、実用可能な限り正確なものとして報告されている。本明細書において提供される一部の実施形態で提示されている数値は、それらのそれぞれの試験測定において見出された標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を含み得る。
【0115】
本明細書の説明およびそれに続く特許請求の範囲全体において使用されるとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」の意味には、文脈により別途明確に指示されない限り、複数形の参照物が含まれる。また、本明細書の説明において使用されるとき、「中に(in)」の意味には、文脈により別途明確に指示されない限り、「中に」および「上に(on)」が含まれる。
【0116】
本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に含まれるそれぞれの別個の値に個別に言及する簡略的な方法の機能を果たすことが意図される。本明細書において別途示されない限り、それぞれの個別の値は、それが、本明細書において個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書において別途示されるか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書においてある特定の実施形態に関して提供されるありとあらゆる例または例示的な語法(例えば、「など」)の使用は、単に、本明細書において提供される実施形態を良好に示すことを意図するものであり、別途特許請求される本発明の範囲に対して制限を課すものではない。本明細書におけるいずれの語法も、本発明の実施に必須の任意の特許請求されていない要素を示すとして解釈されるべきではない。
【0117】
本明細書に開示される代替的な要素または実施形態の群分けは、制限として解釈されるものではない。各群のメンバーは、個別または群の他のメンバーもしくは本明細書に見出される他の要素との任意の組合せで、参照され、特許請求され得る。群の1つまたは複数のメンバーは、便宜上および/または特許性の理由で、ある群に含まれ得るか、またはそこから削除され得る。任意のそのような包含または削除が生じる場合、本明細書は、添付の特許請求の範囲に使用されるすべてのマーカッシュ群の書面による説明を満たすように修飾された群を包含することが、本明細書において想定される。
【0118】
本明細書において使用されるとき、かつ文脈により別途指示されない限り、「に連結した」という用語は、直接的な連結(2つの要素が、互いに接触して連結している)および間接的な連結(少なくとも1つの追加の要素が、2つの要素の間に位置している)の両方を含むことが意図される。したがって、「に連結した」および「と連結した」という用語は、同義的に使用される。
表1
【0119】
代替的な実施形態では、本明細書において提供される新規な化合物が、表1に列挙され、そのそれぞれを、本明細書において提供される方法を実施するために使用することができる。これらの化合物を、使用される出発材料、試薬、または条件を変化させることによって、前述の手法を使用して調製した。必須の試薬は、市販入手可能であったか、または文献に記載されているかもしくは当業者によって容易に合成されたかのいずれかであった。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【0120】
企図される化合物の生物学的活性の本発明者らの発見に基づいて、本明細書において提供される化合物が、哺乳動物における概日リズム性もしくはタイミングを修正するため、ヒト概日調節系における変化に起因する精神状態もしくは症状を治療するため、哺乳動物における睡眠の問題を治療するため、または睡眠もしくは活性抑制を誘導するため、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、およびさらには任意選択で様々ながんを治療するために、製剤化され得ることが概して企図される。代替的な実施形態では、本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物であって、これらの化合物が、哺乳動物における概日リズム性タイミングを修正するため、ヒト概日調節系における変化に起因する精神状態もしくは症状を治療するため、哺乳動物における睡眠問題を治療するため、または睡眠もしくは活性抑制を誘導するため、または目覚めもしくは覚醒の反応を引き起こすため、および任意選択で、多様な種類のがんを処置または予防するためにも有効であり、企図される医薬組成物は、治療有効量の企図される化合物(またはその薬学的に許容される塩、水和物またはプロドラッグ)および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物が提供される。例えば、一態様では、組成物は、神経膠腫、膵臓がん、または他の腫瘍の治療のために製剤化される。
【0121】
代替的な実施形態では、1つまたは複数の非毒性の薬学的に許容される担体とともに製剤化される組成物が、提供される。代替的な実施形態では、固体、半固体、もしくは液体形態での経口投与のため、または非経口注射のために製剤化される医薬組成物が、提供される。代替的な実施形態では、これらの医薬組成物は、経口、直腸、非経口、腹腔内、膣内、または局所を含む様々な経路を使用して、ヒトおよび他の動物に投与され得る。
【0122】
代替的な実施形態では、例えば、薬学的に許容される滅菌の水性または非水性の溶液、分散液、エマルション、または懸濁液、ならびに使用前に滅菌の注射溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含む、注射用医薬組成物が、提供される。好適な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、油、ならびに注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。代替的な実施形態では、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および/または分散剤を含む、様々な不活性成分を含むかまたは含有する組成物が、提供される。滅菌性は、抗細菌剤および/または抗真菌剤(例えば、パラベン、フェノールソルビン酸、クロロブタノールなど)の包含によって確保することができる。適切な場合には、浸透圧活性剤が、含まれてもよい(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)。
【0123】
代替的な実施形態では、経口投与のために固体または半固体の剤形に製剤化された組成物が、提供され、したがって、軟膏剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、および顆粒剤であり得る。代替的な実施形態では、固体または半固体の剤形の企図される化合物は、薬学的に許容される賦形剤または担体(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)、充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、またはケイ酸)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースなど)、保湿剤(例えば、グリセロール)、崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、または炭酸ナトリウム)、溶解遅延剤(solution retarding agent)(例えば、パラフィン)、吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート)、および吸収剤(例えば、カオリン、またはベントナイト粘土)、および滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)のうちの少なくとも1つと混合される。
【0124】
代替的な実施形態では、類似の種類の固体または半固体の組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟および硬充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として用いることもできる。固体または半固体剤形の錠剤、ドラジェ剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶コーティングおよび医薬製剤の分野において周知の他のコーティングを用いて調製することができる。代替的な実施形態では、任意選択で遅延様式で、活性成分のみを放出するか、または代替として腸管のある特定の部分に放出するように、製剤化される組成物が、提供される。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。代替的な実施形態では、適切であれば、上述の賦形剤のうちの1つまたは複数を有する、マイクロカプセル封入形態の化合物が、提供される。
【0125】
代替的な実施形態では、薬学的に許容されるエマルション剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含む、経口投与のための液体剤形が、提供される。活性化合物に加えて、液体剤形は、当該技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤(例えば、水、または他の溶媒、可溶化剤)、乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド)、油(ならびに特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含有し得る。不活性希釈剤の他に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、ならびに芳香剤などのアジュバントも含み得る。
【0126】
代替的な実施形態では、本明細書において提供される化合物を、好適な非刺激性賦形剤または担体、例えば、室温では固体または半固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔で溶けて活性化合物を放出するカカオバター、ポリエチレングリコール、または坐剤用ワックス(suppository wax)と混合することによって調製することができる、直腸または膣内投与のための組成物、例えば、坐剤が、提供される。
【0127】
代替的な実施形態では、単層、多層、または複数層であり得る、リポソームの形態で投与される化合物が、提供される。企図されるリポソーム形態の組成物は、安定剤、保存剤、賦形剤などをさらに含有し得る。代替的な実施形態では、天然および合成の両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)を含む、リポソーム製剤のための脂質が、提供される。リポソームを形成する方法は、当該技術分野において公知である。例えば、Prescott編、Methods in Cell Biology、第XIV巻、Academic Press、New York、N.Y.(1976年)、33頁以下を参照されたい。
【0128】
本明細書において提供される医薬組成物での化合物の実際の投薬レベルは、特定の患者、組成物、および投与様式に所望される治療応答を達成するのに有効な量の企図される化合物が得られるように、変動し得る。したがって、選択される投薬レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、治療されている状態の重症度、ならびに治療されている患者の状態およびこれまでの病歴を含む、様々な要因に依存するであろう。しかしながら、所望される治療効果を達成するために必要とされるものよりも低いレベルの化合物の用量で開始し、所望される効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることは、当業者の技能の範囲内である。代替的な実施形態では、1日につき体重1キログラム当たり約0.01mg~約500mg、または約0.5mg~約50mgの企図される化合物の投薬レベルが、提供され、哺乳動物患者に経口で投与される。所望される場合、有効な1日用量は、投与目的で、複数の用量、例えば、1日当たり2~4回の別個の用量に、分割されてもよい。
【0129】
代替的な実施形態では、追加の薬学的に活性な化合物を含む医薬組成物が、提供される。代替的な実施形態では、追加の薬学的に活性な化合物は、同じ医薬組成物中に含まれてもよく、または別個で投与されてもよい。当業者であれば、追加の薬学的に活性な化合物の好適な共投与のスケジュールおよび経路を、容易に決定することができる。代替的な実施形態では、企図される化合物の代謝産物および/またはプロドラッグ形態も含み得る組成物が、提供され、そのすべての化合物は、ラセミ混合物または立体化学的に純粋な(または部分的に精製された)形態で存在し得る。
【0130】
参考文献-実施例1
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【0131】
すでに記載されたもの以外にさらに多くの修正形が、本明細書における本発明の概念から逸脱することなく可能であることが、当業者には明らかなはずである。本発明の主題は、したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨以外において、制限されるものではない。さらに、本明細書および特許請求の範囲の両方を解釈する際、すべての用語は、文脈に一致する可能な限り広範な様式で解釈されるべきである。「含む(comprise)」および「含むこと(comprising)」という用語は、非排他的な様式で要素、構成要素、またはステップに言及すると解釈されるべきであり、参照される要素、構成要素、またはステップは、明示的に参照されていない他の要素、構成要素、またはステップとともに存在し得るか、または利用され得るか、または組み合わされ得ることが示される。本明細書の主張が、A、B、C....、およびNからなる群から選択される何らかのもののうちの少なくとも1つに言及する場合、この文言は、Aに加えてNまたはBに加えてNなどではなく、群のうちの1つの要素のみを必要とすると解釈されるべきである。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態が、記載されている。いずれにせよ、様々な修正形が、本明細書に記載される実施形態の趣旨および範囲から逸脱することなく作製され得ることを、理解することができる。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19