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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】電動操作装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20230119BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20230119BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20230119BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20230119BHJP
   F16K 31/46 20060101ALI20230119BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
A47K1/14 B
E04H1/12 301
F16K31/46 B
F16K31/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019001034
(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公開番号】P2020111877
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】石垣 征樹
(72)【発明者】
【氏名】谷 匠平
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178459(JP,A)
【文献】特開2017-057693(JP,A)
【文献】特開2001-311196(JP,A)
【文献】特開2018-145653(JP,A)
【文献】実開昭62-172762(JP,U)
【文献】特開2004-211766(JP,A)
【文献】実開昭51-124557(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/22
E03C 1/23
A47K 1/14
E04H 1/12
F16K 31/46
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動により、浴室ユニット内の浴槽に設けられた排水口の開閉用の栓蓋を遠隔操作して前記排水口の開閉状態を切換可能な電動操作装置であって、
通電により動作可能な通電動作部と、
前記通電動作部の動作により回転可能な回転体と、
前記回転体の回転に伴い往復移動可能であり、前記回転体の回転による駆動力を前記栓蓋側へと伝達するための伝達部と、
前記通電動作部が内部に配置される第一構成部、前記回転体が内部に配置される第二構成部、及び、前記伝達部のうちの少なくとも端部が内部に配置される第三構成部を有するとともに、前記第一構成部の内部空間、前記第二構成部の内部空間、及び、前記第三構成部の内部空間がこの順序で連通する状態とされたケースとを備え、
前記排水口を通過する排水の流入し得る管体の一端側部分が前記第三構成部に接続され、前記第三構成部の内部空間と前記管体の内部空間とが通じた状態とされており、
前記第二構成部及び前記回転体間に配置される環状のシール部を具備し、当該シール部によって、前記ケースの内部空間のうち、前記第一構成部側の内部空間と前記第三構成部側の内部空間とが空間的に隔てられた状態とされ、さらに、
前記ケースの内部空間のうち前記管体の内部空間と通じる前記第三構成部側の内部空間と、前記管体の内部空間とからなる空間は、前記管体の他端側開口を除いて密封状態とされることを特徴とする電動操作装置。
【請求項2】
前記ケースは、少なくとも一部が前記浴槽のフランジ部の下方に位置した状態とされることを特徴とする請求項1に記載の電動操作装置。
【請求項3】
前記第一構成部が前記浴室ユニットの外に位置した状態で、前記浴室ユニットの壁に取付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動操作装置。
【請求項4】
前記浴室ユニットの壁に形成された取付孔を通って、前記第一構成部が前記浴室ユニットの外に位置し、前記第三構成部が前記浴室ユニットの内に位置した状態で、前記取付孔を塞ぐようにして前記浴室ユニットの壁に取付けられることを特徴とする請求項3に記載の電動操作装置。
【請求項5】
前記回転体は、
前記第一構成部の内部空間側に位置する大径部と、
前記大径部よりも小径であり、前記第三構成部の内部空間側に位置する小径部とを有し、
前記シール部は、前記第二構成部及び前記小径部間に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動操作装置。
【請求項6】
前記大径部は、円筒状をなしており、
前記大径部の内側には、前記大径部の内側面と接触した状態で前記通電動作部の動作に伴い回転することにより、前記回転体を回転させることが可能な介在部が挿設され、
前記大径部及び前記介在部間で生じる負荷が所定量を超える場合に、前記介在部に対し前記大径部を空回りさせることが可能なクラッチ機構を備えることを特徴とする請求項5に記載の電動操作装置。
【請求項7】
前記伝達部の端部は、当該伝達部の往復移動方向に並ぶ複数の歯を有するラックによって構成されており、
前記回転体は、前記ラックの歯に噛合される歯車部を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電動操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動により、浴槽に設けられた排水口の開閉用の栓蓋を遠隔操作して、排水口の開閉状態を切換えるための電動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽やその近傍に、浴槽の底部に形成された排水口の開閉状態を遠隔操作によって切換えるための操作装置を設けることがある。
【0003】
操作装置としては、電動によって排水口の開閉状態を切換可能な電動操作装置が知られている。このような電動操作装置としては、通電により動作可能な通電動作部(電動機)と、当該通電動作部の動作に伴い回転可能な回転体(ウォームホイル)と、当該回転体の回転に伴い往復移動可能であり、回転体の回転による駆動力を栓蓋側へと伝達するための伝達部(螺子筒、操作軸、伝達軸及びレリースワイヤ)とを備えたものがある(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
この電動操作装置において、通電動作部、回転体及び伝達部の端部(螺子筒、操作軸、及び伝達軸)は、所定のケース(操作筒及び駆動ボックス)の内部に収容された状態となっている。また、ケースの所定部位に対し、所定の管体(ガイド管)が接続され、当該管体の内部空間とケースの内部空間とが通じた状態となっている。尚、前記管体は、ケースに接続される側とは反対側の端部が排水口側に設置され、排水口を通過する排水が流入し得る状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-105824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した電動操作装置のケースにおいては、通電動作部が収容される部位の内部空間と、回転体が収容される部位の内部空間と、伝達部の端部が収容される部位の内部空間とが連通した状態となっている。そのため、排水が管体を通って通電動作部が収容される部位の内部空間へと至ってしまい、通電動作部の故障や安全性の低下を招いてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排水が管体を通って通電動作部が収容される部位の内部空間へと至ってしまうことを極めて効果的に防止でき、通電動作部の故障防止や安全性向上を図ることができる電動操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.電動により、浴室ユニット内の浴槽に設けられた排水口の開閉用の栓蓋を遠隔操作して前記排水口の開閉状態を切換可能な電動操作装置であって、
通電により動作可能な通電動作部と、
前記通電動作部の動作により回転可能な回転体と、
前記回転体の回転に伴い往復移動可能であり、前記回転体の回転による駆動力を前記栓蓋側へと伝達するための伝達部と、
前記通電動作部が内部に配置される第一構成部、前記回転体が内部に配置される第二構成部、及び、前記伝達部のうちの少なくとも端部が内部に配置される第三構成部を有するとともに、前記第一構成部の内部空間、前記第二構成部の内部空間、及び、前記第三構成部の内部空間がこの順序で連通する状態とされたケースとを備え、
前記排水口を通過する排水の流入し得る管体の一端側部分が前記第三構成部に接続され、前記第三構成部の内部空間と前記管体の内部空間とが通じた状態とされており、
前記第二構成部及び前記回転体間に配置される環状のシール部を具備し、当該シール部によって、前記ケースの内部空間のうち、前記第一構成部側の内部空間と前記第三構成部側の内部空間とが空間的に隔てられた状態とされ、さらに、
前記ケースの内部空間のうち前記管体の内部空間と通じる前記第三構成部側の内部空間と、前記管体の内部空間とからなる空間は、前記管体の他端側開口を除いて密封状態とされることを特徴とする電動操作装置。
【0010】
上記手段1によれば、ケースは、第一構成部、第二構成部及び第三構成部を有し、これらの内部空間がこの順序で連通するところ、第三構成部に対し排水口を通過する排水の流入し得る管体が接続され、管体の内部空間と第三構成部の内部空間とが通じた状態とされている。そのため、管体を通った排水が第三構成部の内部空間に浸入し、ひいては通電動作部の配置される第一構成部の内部空間へと至ってしまうおそれがある。
【0011】
この点、上記手段1によれば、ケースの内部空間のうち管体の内部空間と通じる第三構成部側の内部空間と、この内部空間に通じる管体の内部空間とからなる空間は、管体の他端側開口を除いて密封状態とされる。従って、この密封状態とされた空間に存在する空気によって、ケースの内部空間側に対する管体を通った排水の移動を効果的に抑えることができる。これにより、管体を通ったケースの内部空間(第三構成部側の内部空間)に対する排水の浸入を未然に防ぐことができる。
【0012】
さらに、上記手段1によれば、第二構成部及び回転体の間に配置されたシール部によって、ケースの内部空間のうち第一構成部側の内部空間と第三構成部側の内部空間とが空間的に隔てられた状態とされている。そのため、万が一排水が管体を通ってケースの内部空間(第三構成部側の内部空間)へと至ったとしても、その排水が通電動作部の存在する第一構成部の内部空間へと浸入しまうことをより確実に防止できる。
【0013】
以上の作用効果が相俟って、上記手段1によれば、排水が管体を通って第一構成部の内部空間へと至ってしまうことを極めて効果的に防止できる。その結果、通電動作部の故障をより確実に防止することができるとともに、良好な安全性を得ることができる。
【0014】
尚、「管体」としては、伝達部(例えばインナーワイヤ)が内周に配置される筒状のアウターチューブや、伝達部が内部に配置され、当該伝達部を栓蓋側へと案内する等の機能を有するガイドチューブなどを挙げることができる。
【0015】
また、「浴室ユニット」とは、例えば壁パネル、天井、ドア、窓等からなり、浴槽の貯水空間が配置される内部空間と外部空間とを画する箱状の構造体をいう。
【0016】
手段2.前記ケースは、少なくとも一部が前記浴槽のフランジ部の下方に位置した状態とされることを特徴とする手段1に記載の電動操作装置。
【0017】
上記手段2によれば、ケースの少なくとも一部は、浴槽のフランジ部(貯水空間を構成する浴槽の側壁部の上部から外側に延びる部位)の下方に位置する状態とされる。そのため、ケースから栓蓋側へと延びる伝達部を比較的短いものとすることができる。従って、伝達部の取り回しが容易になり、装置の設置等に係る作業性を高めることができる。また、伝達部によって、回転体の回転による駆動力を栓蓋側へとよりロスなく円滑に伝達することが可能となる。
【0018】
一方、上記手段2のように、ケースの少なくとも一部がフランジ部の下方に位置する場合、排水が管体を通ってケースの内部空間側へと至りやすくなるおそれがある。そのため、通電動作部に対する排水の悪影響がより懸念されるが、上記手段1を採用することで、このような懸念を払拭することができる。換言すれば、上記手段1は、ケースの少なくとも一部がフランジ部の下方に位置する場合に特に有効である。
【0019】
手段3.前記第一構成部が前記浴室ユニットの外に位置した状態で、前記浴室ユニットの壁に取付けられることを特徴とする手段1又は2に記載の電動操作装置。
【0020】
上記手段3によれば、電動操作装置は、通電動作部の配置される第一構成部が浴室ユニットの外に位置した状態で、浴室ユニットの壁へと取付けられる。ここで、通常、浴室ユニット外の湿度は浴室ユニット内の湿度よりも低い状態となるため、第一構成部の全体を浴室ユニット内に設置した場合と比較して、通電動作部に対する水分の悪影響をより抑えることができる。これにより、通電動作部の故障防止や安全性向上を一層確実に図ることができる。
【0021】
また、浴室ユニット外は浴室ユニット内と比べて低温になりやすく、気温の増減も少ないため、通電動作部を安定した環境下で動作させることができる。これにより、通電動作部における動作安定性を向上させることができる。
【0022】
尚、通電動作部へと電力を供給するためのケーブルや、通電動作部の動作制御に係る信号を送受信するためのケーブルなどを設けた場合には、このようなケーブルを浴室ユニットの外に配置することができ、水分によるケーブルの異常をより確実に防止することができる。また、水分による悪影響を防ぐためのシール処理をケーブルなどに施す必要がないため、装置の構造や製造コストの面などで都合がよい。
【0023】
手段4.前記浴室ユニットの壁に形成された取付孔を通って、前記第一構成部が前記浴室ユニットの外に位置し、前記第三構成部が前記浴室ユニットの内に位置した状態で、前記取付孔を塞ぐようにして前記浴室ユニットの壁に取付けられることを特徴とする手段3に記載の電動操作装置。
【0024】
上記手段4によれば、電動操作装置は、第一構成部が浴室ユニットの外に位置し、第三構成部が浴室ユニットの内(中)に位置した状態とされる。従って、浴室ユニットの壁から外側に向けた電動操作装置の突出量を少なくすることができる。これにより、浴室ユニットの壁とその外に配置される建造物の壁との間に形成される隙間が比較的小さなものであっても電動操作装置を取付けることが可能となり、良好な取付自由度を得ることができる。
【0025】
さらに、取付孔が塞がれることで、取付孔を通った浴室ユニット内から浴室ユニット外への空気(水分)の移動を抑制することができ、浴室ユニットの外をより確実に湿度の低い状態で維持することができる。そのため、通電動作部などに対する水分の悪影響を一層確実に抑えることができる。また、浴室ユニットの外に位置する建造物への水分(湿気)の悪影響をより確実に防ぐことができる。
【0026】
加えて、電動操作装置は、取付孔を塞ぐようにして浴室ユニットの壁に取付けられるため、電動操作装置を取付ける工程と、取付孔を塞ぐ工程とを同時期に一度に行うことができる。従って、作業性を効果的に高めることができる。
【0027】
手段5.前記回転体は、
前記第一構成部の内部空間側に位置する大径部と、
前記大径部よりも小径であり、前記第三構成部の内部空間側に位置する小径部とを有し、
前記シール部は、前記第二構成部及び前記小径部間に配置されることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の電動操作装置。
【0028】
上記手段5によれば、シール部は、小径部と第二構成部との間に配置されている。従って、シール部を小径とすることができ、シール部と第二構成部等との間で生じる摩擦力をより小さなものとすることができる。その結果、回転体の回転による駆動力を栓蓋側へとより円滑に伝達することができる。
【0029】
また、シール部が小径となるため、第三構成部側の内部空間と管体の内部空間とからなる空間をより確実に密封状態で維持することができる。これにより、排水が管体を通ってケースの内部空間側へと移動してしまうことをより長期に亘ってより確実に防止でき、通電動作部の故障防止などの作用効果を長期間に亘って安定的に発揮させることができる。
【0030】
手段6.前記大径部は、円筒状をなしており、
前記大径部の内側には、前記大径部の内側面と接触した状態で前記通電動作部の動作に伴い回転することにより、前記回転体を回転させることが可能な介在部が挿設され、
前記大径部及び前記介在部間で生じる負荷が所定量を超える場合に、前記介在部に対し前記大径部を空回りさせることが可能なクラッチ機構を備えることを特徴とする手段5に記載の電動操作装置。
【0031】
上記手段6によれば、クラッチ機構によって、大径部及び介在部間で生じる負荷が所定量を超える場合に、介在部に対し大径部を空回りさせることができる。従って、排水口が開状態であるときに、つまり、栓蓋が上動した状態であるときに、仮に停電や通電動作部の故障等により栓蓋の電動操作が不能になったとしても、手動により栓蓋を下動させることができる。これにより、排水口を開状態から閉状態へと手動で切換えることができることとなり、例えば停電時などにおいて浴槽に水を溜めたい等の要望に応えることが可能となる。
【0032】
さらに、排水口を開状態から閉状態へと手動で切換えた場合には、介在部に対し大径部が空回りすることにより、負荷の印加に伴う伝達部や回転体などにおける破損や変形をより確実に防止することができる。また、伝達部等の破損などを防止できることによって、手動により排水口を開状態から閉状態へと切換えたとしても、停電復旧後などにおける通常使用に支障が生じることはない。
【0033】
加えて、排水口が開状態である(つまり、栓蓋が上動した状態である)ときにおいて、栓蓋を踏み付けた場合など、栓蓋に対し下向きの比較的大きな負荷が加わった場合には、介在部に対し大径部が空回りすることによって、伝達部や回転体などの破損や変形を防ぐことができる。
【0034】
手段7.前記伝達部の端部は、当該伝達部の往復移動方向に並ぶ複数の歯を有するラックによって構成されており、
前記回転体は、前記ラックの歯に噛合される歯車部を有することを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の電動操作装置。
【0035】
上記手段7によれば、回転体から伝達部にかけての駆動力の伝達機構を簡素な構成とすることができ、ひいてはケースの内部空間のうち第三構成部側の内部空間を比較的小さなものとすることができる。そのため、第三構成部側の内部空間と管体の内部空間とからなる空間を密封状態とすることが容易に可能となる。また、装置(ケース)の小型化を図ることができ、製造コストの低減や装置の設置等に係る作業性の向上などをより効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】浴室ユニット及び電動式排水栓装置システムなどを示す斜視模式図である。
図2】排水栓装置の一部破断正面図である。
図3】電動操作装置の正面図である。
図4】電動操作装置の側面図である。
図5】電動操作装置の底面図である。
図6図3のJ-J線断面図である。
図7図5のK-K線断面図である。
図8】第二伝達回転部及び回転体の分解斜視図である。
図9】別の実施形態において、管体としてアウターチューブのみを設けた場合における電動操作装置などを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、浴室を構成する浴室ユニット110、及び、浴室ユニット110に対応して設けられる電動式排水栓操作システム1を簡略化して模式的に示す図である。まず、電動式排水栓操作システム1の説明に先立って、浴室ユニット110、及び、当該浴室ユニット110内に配置される浴槽100などの概略構成について説明する。
【0038】
浴室ユニット110は、浴槽100の配置される内部空間と外部空間とを画する箱状の構造体である。浴室ユニット110は、四方を囲む複数の壁(壁パネル)111(図1では、手前側の2枚の壁の図示を省略し、奥側の2枚の壁111を二点鎖線にて簡略化して示す)、各壁111の上部に設けられた天井112、浴槽100の下方に配置された防水パン113、洗い場を構成する洗い場床板114、及び、前記壁111に形成されたドア用の開口や窓(それぞれ不図示)に対応する図示しないドアや窓などを備えており、これらによって浴室が形成されている。
【0039】
尚、複数の前記壁111のうちの所定の1枚における後述するフランジ部103よりも下方位置には、取付孔111Aと当該取付孔111Aの周囲に位置する複数のねじ孔111B(それぞれ図6参照)とがそれぞれ貫通形成されている。また、浴室ユニット110の内部空間をより大きく確保するために、浴室ユニット110の外において、浴室ユニット110の壁111は建造物の壁と近接した状態となっており、壁111及び前記建造物の壁との間に形成される隙間は比較的小さなもの(例えば、30mm以下)とされている。
【0040】
また、天井112には、天井112の裏側に配置された各種部品などを点検するための点検口112Aが設けられている。点検口112Aは、通常、図示しないカバーで塞がれた状態となっているが、当該カバーを上へと押し上げることで、点検口112Aから前記カバーを取外可能である。
【0041】
浴槽100は、浴室ユニット110内に設置されており、その底面を構成する底壁部101と、当該底壁部101の外縁から上方に向けて延びる側壁部102と、側壁部102の上端縁から外側に向けて延びるフランジ部103とを備えている。底壁部101には、排水口104(図2参照)が貫通形成されている。また、浴室ユニット110の洗い場側に位置する側壁部102を覆うようにしてエプロン105(図1では、エプロン105を二点鎖線にて簡略化して示す)が設けられており、当該エプロン105によって常には側壁部102の裏側や後述する電動操作装置5が隠された状態となっている。但し、エプロン105を取外すことで、洗い場側から電動操作装置5を扱うことが可能である。
【0042】
次いで、電動式排水栓操作システム1について説明する。電動式排水栓操作システム1は、排水栓装置2と、電源装置3と、入力装置4と、電動操作装置5とを備えている。
【0043】
まず、排水栓装置2について説明する。排水栓装置2は、図2に示すように、排水口部材21と、配管22と、アタッチメント部材23と、支持軸機構24と、栓蓋25とを備えている。
【0044】
排水口部材21は、円筒状に形成されており、自身の中心軸と排水口104の中心軸とがほぼ一致した状態で排水口104に挿設されている。排水口部材21は、その上端部において径方向外側に突出形成された鍔部21Aと、当該鍔部21Aよりも下方の外周に形成された雄ねじ部21Bとを備えている。
【0045】
配管22は、鉛直方向に沿って延びる円筒状の本体管221と、当該本体管221から枝分かれした状態で水平方向に延びる接続管222とを備えている。
【0046】
本体管221は、排水口104に対応して設けられ、排水口104を通って流れる排水の流路を構成する部位である。本体管221は、その一端部(上端部)内周に前記雄ねじ部21Bを螺合可能な雌ねじ部221Aを備えている。そして、雄ねじ部21Bを雌ねじ部221Aに螺合し、鍔部21A及び配管22の上端面により底壁部101を挟み込んだ状態とすることで、排水口部材21及び配管22が接続されるとともに、両者が浴槽100に取付けられた状態となっている。
【0047】
また、本実施形態においては、浴槽100(底壁部101)の上面と排水口部材21(鍔部21A)との間には、弾性変形可能な材料(例えば、樹脂やゴム等)により形成された環状のシール部材26が配置され、配管22の上端面と浴槽100(底壁部101)の下面との間には、同様に弾性変形可能な材料により形成された環状のシール部材27が配置されている。これらシール部材26,27により、排水口部材21及び配管22と浴槽100との間からの漏水防止が図られている。
【0048】
接続管222は、ガイドチューブ61の被接続部として機能する部位である。ガイドチューブ61は、一端部及び他端部のみが開口した円筒状をなしており、それぞれ後述するインナーワイヤ55B及びアウターチューブ62を電動操作装置5側から排水栓装置2側へと案内するためのものである。ガイドチューブ61は、一端部が電動操作装置5と水密に接続され、他端部が接続管222と水密に接続されている。本実施形態では、排水口104を通過して本体管221に流れ込んだ排水は、接続管222を通ってガイドチューブ61へと流入し得るようになっている。本実施形態では、ガイドチューブ61が管体に相当する。
【0049】
アタッチメント部材23は、排水口部材21及び配管22(本体管221)の内部空間の中心、つまり、排水流路の中心にて支持軸機構24を保持するためのものである。アタッチメント部材23は、内側に位置する筒状の保持部23Aと、当該保持部23Aの外側において当該保持部23Aと同心円状に設けられた筒状の外環部23Bと、保持部23A及び外環部23Bを連結する複数の連結部23Cとを備えている。保持部23Aは、その内周に支持軸機構24が挿通された状態で、支持軸機構24を保持する。また、外環部23Bは、排水口部材21へと取付けられる部位であり、外環部23Bが排水口部材21の内周に固定されることで、保持部23Aひいてはこれに保持される支持軸機構24が排水流路の中心に配置される。連結部23Cは、保持部23Aの周方向に沿って等間隔に複数設けられており、保持部23Aを支持する。本体管221に流れ込んだ排水は、各連結部23C間の隙間を通って流下する。
【0050】
支持軸機構24は、筒状部24A、戻しばね24B及び支持軸24Cを備えており、支持軸24Cの上下動により栓蓋25を上下動させるためのものである。
【0051】
筒状部24Aは、円筒状をなしており、上下動不能な状態で前記保持部23Aにより保持されている。また、筒状部24Aの下端部には、長尺筒状のアウターチューブ62が接続固定されている。アウターチューブ62は、一端部が電動操作装置5と接続され(図7参照)、他端部が筒状部24Aと接続された状態となっている。アウターチューブ62の内周には、後述するインナーワイヤ55Bが往復移動可能な状態で配置されている。
【0052】
戻しばね24Bは、筒状部24A及び支持軸24C間に設けられたばね部材であり、支持軸24Cに対し復動(下動)方向の力を付与する。
【0053】
支持軸24Cは、上部にて栓蓋25を支持するものであって、筒状部24Aの内周に配置されており、筒状部24Aに対し上下動可能な状態とされている。本実施形態における支持軸24Cは、上動した状態の栓蓋25へと下向きの力を加えたときに負荷を吸収するための特別な機構を備えないものとされている。尚、「特別な機構」とあるのは、例えば、ばねを備えたショックアブソーバなど、負荷を吸収するという用途のために専ら設けられた機構をいう。
【0054】
栓蓋25は、円板状をなす栓蓋本体部25Aと、当該栓蓋本体部25Aの裏側の外側寄りに設けられた環状のパッキン部25Bとを備えている。栓蓋25は、栓蓋本体部25Aにおける裏側の中心部に設けられた円筒状部位へと支持軸24Cの先端部が挿通されて係止されることで、支持軸24Cに取付けられている。また、栓蓋25は、前記円筒状部位から支持軸24Cを引抜く方向の力が加えられることで、支持軸24Cから取外可能である。すなわち、栓蓋25は、特段の工具などを用いることなく、支持軸24Cに対し比較的容易に取付及び取外可能となっている。尚、支持軸24Cの先端部へと単に載置されるように栓蓋25を構成してもよい。この場合には、支持軸24Cに対する栓蓋25の取付及び取外を一層容易に行うことが可能となる。
【0055】
本実施形態では、支持軸24C及び栓蓋25が上動し、パッキン部25Bが排水口部材21から離間した状態となることで、排水口104が開状態とされる。一方、この状態で、支持軸24C及び栓蓋25が下動し、パッキン部25Bの外周部分全域が排水口部材21と接触することで、排水口104が閉状態とされる(図2参照)。
【0056】
次いで、電源装置3及び入力装置4について説明する。電源装置3は、電動操作装置5に対し電力を供給するためのものであり、図1に示すように、天井112における点検口112Aの近傍位置に載置されている。電源装置3の設置やメンテナンスなどは、点検口112Aを利用して行われる。
【0057】
また、電源装置3は、所定の通電ケーブル71,72によって所定出力(例えば100V出力)の電源(不図示)と電動操作装置5とにそれぞれ接続されている。電源装置3は、前記電源からの電力を降圧して電動操作装置5へと供給する。尚、通電ケーブル71,72は、浴室ユニット110外であって、壁111や天井112沿いに設置されている。
【0058】
入力装置4は、電動により排水口104の開閉状態を切換える際に、使用者による操作対象となるものである。入力装置4は、所定の信号ケーブル73によって電動操作装置5と接続されており、電動操作装置5に対し各種信号を出力可能となっている。尚、信号ケーブル73は、浴室ユニット110外において、壁111沿いに設置されている。
【0059】
また、本実施形態における入力装置4は、浴室ユニット110内に設けられている。但し、入力装置4の設置場所は、これに限定されるものではなく、入力装置4を、例えば、浴室外における所定の部屋(例えば台所)などに設置してもよい。また、入力装置4を持ち運び可能な装置としてもよいし、入力装置4を複数設けてもよい。さらに、信号ケーブル73を廃して、入力装置4及び電動操作装置5を無線通信可能に構成してもよい。
【0060】
さらに、入力装置4は、例えば複数の押しボタン等からなる情報を入力するための入力部(それぞれ不図示)を備えている。前記入力部として、排水口104を閉状態とする際に操作(例えば、押圧等)される入力部(「閉鎖時入力部」と称す)と、排水口104を開状態とする際に操作される入力部(「開放時入力部」と称す)とが設けられている。閉鎖時入力部は、例えば、「閉」といった文字や排水口104が閉状態となることを示す図形などの付された押しボタン等により構成され、一方、開放時入力部は、例えば、「開」といった文字や排水口104が開状態となることを示す図形などの付された押しボタン等により構成されている。閉鎖時入力部が操作(押圧)されると、入力装置4から電動操作装置5(特に後述する制御基板57)に対し、所定の閉鎖要求信号が出力される。一方、開放時入力部が操作されると、入力装置4から電動操作装置5(特に後述する制御基板57)に対し所定の開放要求信号が出力される。
【0061】
次いで、電動操作装置5について説明する。電動操作装置5は、栓蓋25を遠隔操作して排水口104の開閉状態を切換えるための装置である。電動操作装置5は、図3~5に示すように、浴室ユニット110の壁111に取付けられている。また、電動操作装置5は、図6及び図7に示すように、ケース51、モータ52、減速伝達部53、回転体54、伝達部55、シール部56、及び、制御基板57を備えている。
【0062】
ケース51は、モータ52や回転体54等を収容するとともに、浴室ユニット110の壁111に対する取付部として機能するものである。ケース51は、第一構成部511、第二構成部512及び第三構成部513を有している。各構成部511,512,513は、それぞれ内部空間を備えており、第一構成部511の内部空間、第二構成部512の内部空間、及び、第三構成部513の内部空間がこの順序で連通する状態とされている。
【0063】
第一構成部511は、内部にモータ52や制御基板57等が収容される箱型収容部5111と、当該箱型収容部5111の外面から突出する円形鍔状をなす取付用鍔部5112とを備えている。
【0064】
箱型収容部5111は、複数の部品が組立てられることで構成されている。尚、各部品の合わせ部は、浴室ユニット110外に配置されており、また、水密性確保のためのシール部材を備えない構成となっている。
【0065】
取付用鍔部5112には、板厚方向に貫通するねじ孔5112Aが複数形成されている。そして、前記取付孔111Aに対し第一構成部511を挿通するとともに、前記壁111のねじ孔111Bと前記ねじ孔5112Aとの位置を合わせた状態で、両ねじ孔5112A,111Bを利用したねじ止め固定を行うことで、ケース51ひいては電動操作装置5が壁111に取付けられた状態となっている。
【0066】
本実施形態では、壁111に対し電動操作装置5を取付けた状態において、第一構成部511が浴室ユニット110の外に位置するとともに、第三構成部513が浴室ユニット110の内に位置し、かつ、ケース51によって取付孔111Aが塞がれた状態となっている。また、壁111に対し電動操作装置5を取付けた状態において、ケース51は、少なくとも一部(本実施形態では、ケース51のうち浴室ユニット110内に配置される部位)がフランジ部103の下方に位置した状態となっている(図1参照)。尚、取付孔111Aを通った浴室ユニット110内から浴室ユニット110外への水分の流出をより確実に防止すべく、壁111及び取付用鍔部5112間にシール部材を配置してもよい。また、前記ねじ孔111B,5112Aに挿通されるねじ部品の座面と取付用鍔部51112との間にシール部材(例えばシールワッシャ等)を配置し、浴室ユニット110外への水分の流出を一層確実に防止可能に構成してもよい。
【0067】
第二構成部512は、回転体54が内部に収容される部位である。第二構成部512は、外観上、外径の異なる円筒状部分が2つ積み重なった形状をなしており、第一構成部511から突出している。
【0068】
第三構成部513は、伝達部55のうちの少なくとも端部が内部に配置される部位である。第三構成部513は、外観上、第二構成部512の先端側部分(第一構成部511とは反対側の部分)と立体交差し、かつ、一端部(上端部)が閉塞するとともに他端部(下端部)が開口する筒状をなしている。また、本実施形態において、第三構成部513は、一端側から他端側へと鉛直下方に向けて延び、他端側開口が鉛直下方に開口している。
【0069】
また、第三構成部513には、前記ガイドチューブ61の一端側部分が接続されている。より詳しくは、ガイドチューブ61の一端側部分に第三構成部513が挿通され、第三構成部513にガイドチューブ61の一端側部分が外嵌されることで、ガイドチューブ61の一端側部分が第三構成部513の外周に対し水密に接続されている。その結果、第三構成部513の内部空間とガイドチューブ61の内部空間とが通じた状態となっている。
【0070】
また、第三構成部513内には、ガイド部品514及びチューブ固定部品515が配置されている(図7参照)。
【0071】
ガイド部品514は、後述するインナーワイヤ55Bの一端側部分を直線状に延びた状態で維持したり、アウターチューブ62の端部を固定したりする機能を有するものである。ガイド部品514は、一端部に鍔状部分を有する細円筒状をなしており、他端側部分(細円筒状部分)が第三構成部513の奥側に位置するとともに、前記鍔状部分が第三構成部513の内部に設けられた段部へと係止された状態で配設されている。
【0072】
チューブ固定部品515は、第三構成部513に対しアウターチューブ62の一端側部分を固定するための部品である。チューブ固定部品515は、アウターチューブ62の一端部に設けられた比較的大径のフレア部分を内周にて保持する筒状の保持部分と、当該保持部分に連なり内外方向に沿って弾性変形可能な変形部分とを備えており、当該変形部分の外周には取付用の突起が設けられている。
【0073】
本実施形態では、第三構成部513内にガイド部品514を配置するとともに、チューブ固定部品515の前記保持部分の内周にてアウターチューブ62の一端部を保持した上で、当該チューブ固定部品515を第三構成部513の内周へと挿通し、第三構成部513に貫通形成された孔部分へとチューブ固定部品515の前記突起を嵌合することで、第三構成部513の内周にチューブ固定部品515が固定されるとともに、ガイド部品514及びチューブ固定部品515によりアウターチューブ62の一端側部分が保持された状態となっている。
【0074】
モータ52は、排水口104を電動開閉するための駆動源であり、第一構成部511内に配置されている。モータ52は、通電により動作可能なモータ軸(図示せず)を有しており、当該モータ軸は双方向に回転可能とされている。モータ軸の回転による駆動力は、減速伝達部53へと伝達される。
【0075】
減速伝達部53は、回転数を減じつつ(トルクを増大しつつ)モータ52(モータ軸)から回転体54へと駆動力の伝達するものであり、第一構成部511内に配置されている。減速伝達部53は、モータ52(モータ軸)から力が加わることで回転する複数の歯車からなる減速歯車群(図示せず)と、当該減速歯車群から力が加わることで回転する第一伝達回転部531と、当該第一伝達回転部531から力が加わることで回転する第二伝達回転部532とを備えている。第一伝達回転部531及び第二伝達回転部532は、例えばセレーションを利用することで同軸状に接続されており、モータ52の動作に伴い、第一伝達回転部531及び第二伝達回転部532は同一の回転軸にて回転する。尚、前記減速歯車群を構成する歯車は、前記モータ軸の回転により回転可能である一方、第一伝達回転部531から加わる力によっては回転しないようになっている。
【0076】
また、図8に示すように、第二伝達回転部532は、比較的小径であって第一伝達回転部531と接続される小径接続筒部5321と、当該小径接続筒部5321よりも大径の介在部5322とを備えている。
【0077】
介在部5322は、全体として円筒状をなしており、その軸方向に延びるスリット5322Aを周方向に沿って等間隔に複数具備している。また、スリット5322Aの形成部分を除いた介在部5322の端部側外周には、突状をなす係止部5322Bが介在部5322の周方向に沿って連続的に多数形成されている。本実施形態では、スリット5322Aの存在によって、介在部5322ひいては係止部5322Bが内外方向(介在部5322の径方向)に沿って弾性変形可能である。
【0078】
回転体54は、モータ52の動作により回転するものであって、第二構成部512内において減速伝達部53及び伝達部55間に設けられており(図6,7参照)、減速伝達部53から受けた力を伝達部55へと伝える。回転体54は、第一構成部511の内部空間側(減速伝達部53側)に位置する大径部541と、当該大径部541よりも小径であり、第三構成部513の内部空間側(伝達部55側)に位置する小径部542とを有している。
【0079】
大径部541は、円筒状をなしており、介在部5322が内部に挿設される部位である。大径部541の内側には、突状の被係止部541Aが大径部541の周方向に沿って連続的に多数形成されている。そして、大径部541に挿設された介在部5322の係止部5322Bと被係止部541Aとが回転体54の回転方向に沿って係止された状態となっている。その結果、モータ52の動作に伴い、介在部5322が大径部541の内側面(被係止部541A)と接触した状態で回転することにより、回転体54が回転する。
【0080】
また、本実施形態では、排水口104が開状態である(つまり、栓蓋25が上動した状態である)ときに栓蓋25を下方に向けて押圧した場合など、介在部5322(係止部5322B)及び大径部541(被係止部541A)間で生じる負荷が所定量を超える場合には、介在部5322ひいては係止部5322Bが径方向内側に弾性変形することで、被係止部541Aに対する係止部5322Bの係止状態が不十分となり、介在部5322に対し大径部541が空回りするように構成されている。本実施形態では、弾性変形可能な係止部5322Bと、被係止部541Aとによってクラッチ機構58が構成されている。
【0081】
また、大径部541における最も大径の部分には、磁石配置孔541Bが貫通形成されている。本実施形態において、磁石配置孔541Bは、大径部541の周方向に沿って間隔をあけて2つ設けられており、各磁石配置孔541Bには、図示しない磁石が挿設されている。この磁石は、回転体54の回転角度を検知するために利用される。尚、磁石を1つのみ設けてもよいし、排水流路の開度(栓蓋25の上下方向位置)調整のために3つ以上設けてもよい。
【0082】
小径部542は、円柱状をなしており、大径部541と同軸状に設けられている。小径部542における基端側(大径部541側)の部位の外周には、シール部56を配置するための環状の溝(図6参照)が2つ形成されており、一方、小径部542における先端側の部位には、歯車部542Aが形成されている。
【0083】
図6,7に戻り、伝達部55は、回転体54の回転による駆動力を栓蓋25(排水栓装置2)側へと伝達するためのものである。伝達部55は、回転体54の回転に伴い往復移動可能であり、直列的に配設されたラック55A及びインナーワイヤ55Bを備えている。
【0084】
ラック55Aは、伝達部55の往復移動方向に並ぶ複数の歯を有し、前記歯車部542Aに噛合されている(図7参照)。ラック55Aは、回転体54の回転に伴い、第三構成部513内において当該第三構成部513の内面を摺動しつつ移動する。つまり、ラック55Aは、第三構成部513の内面によってその移動がガイドされる。また、ラック55Aは、その移動方向に沿って延びる穴部を備えており、当該穴部に対しインナーワイヤ55Bの一端側部分が挿通された状態となっている。
【0085】
インナーワイヤ55Bは、例えばコアコイルや撚り線などにより構成されたワイヤ状の部品であり、上述の通り、アウターチューブ62の内周に往復移動可能な状態で配置されている。インナーワイヤ55Bの一端側部分は、アウターチューブ62の一端部開口から突出するとともに、前記ガイド部品514の内周を通って、第三構成部513におけるラック55Aの収容空間に配置されている。また、インナーワイヤ55Bの一端は、ラック55Aの前記穴部に挿通された状態で、ラック55Aの往復移動方向に沿ってラック55Aと接触可能とされている。
【0086】
一方、インナーワイヤ55Bの他端は、前記支持軸24Cの往復移動方向に沿って支持軸24Cと接触可能とされている。インナーワイヤ55Bが往動(電動操作装置5側から排水栓装置2側へと移動)することで、当該インナーワイヤ55Bの他端側部分により支持軸24Cが持ち上げられ、ひいては支持軸24Cや栓蓋25が上動する。
【0087】
シール部56は、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂など)により形成された環状部材であり、本実施形態では、断面X字状をなすXリングにより構成されている。本実施形態において、シール部56は、回転体54の回転軸方向に沿って一定間隔をあけた状態で2つ設けられている。各シール部56は、前記小径部542の溝に配置されており、第二構成部512の内面と回転体54との間において両者に挟み込まれた状態とされている。シール部56によって、ケース51の内部空間のうち、第一構成部511側の内部空間と、第三構成部513側の内部空間とが空間的に隔てられた状態とされている。
【0088】
ここで、本実施形態では、シール部56により第三構成部513の内部空間はその端部開口を除いて密封状態であるとともに、上記の通り、第三構成部513の外周に対しガイドチューブ61が水密に接続され、かつ、第三構成部513の内部空間とガイドチューブ61の内部空間とが通じた状態とされている。そのため、ケース51の内部空間のうちガイドチューブ61の内部空間に通じる第三構成部513側の内部空間と、ガイドチューブ61の内部空間とからなる空間は、ガイドチューブ61の他端側(排水栓装置2側)の開口を除いて密封状態となっている。これにより、密封状態とされた空間に存在する空気によって、ケース51の内部空間側に対するガイドチューブ61を通った排水の移動を抑制可能である。より詳しくは、ガイドチューブ61のうち接続管222側からほぼ水平に延びる部分の内部が排水で満たされたとしても、密封状態とされた空間に存在する空気によって、ガイドチューブ61のうち排水栓装置2側からケース51側に向けて上昇に転じる部分よりも先(ケース51側)へとその排水が入っていく(上がっていく)ことを抑えることができ、ひいてはケース51の内部空間側に対するガイドチューブ61を通った排水の移動を抑制可能である。
【0089】
次いで、制御基板57について説明する。制御基板57は、例えばマイコン等により構成されており、モータ52に対する電力供給を制御するための機器である。制御基板57は、第一構成部511の内部に設置されている。また、制御基板57は、通電ケーブル72によって電源装置3と接続されており、当該電源装置3から電力が供給されている。
【0090】
さらに、制御基板57は、前記磁石配置孔541Bに設置された磁石の磁気を検知するための磁気センサ(図示せず)を備えている。磁気センサは、例えばホール素子等により構成される。制御基板57は、前記磁気センサにより前記磁石で生じている磁気を検知することで、回転体54の回転角度ひいては排水口104の開閉状態を把握可能である。
【0091】
加えて、制御基板57は、信号ケーブル73を介して入力装置4と接続されており、入力装置4から前記開放要求信号又は前記閉鎖要求信号が入力されるように構成されている。制御基板57は、前記開放要求信号又は前記閉鎖要求信号が入力された際に、現在の排水口104の開閉状態に応じてモータ52の動作を制御する。
【0092】
すなわち、制御基板57は、前記開放要求信号が入力された場合に、前記磁気センサによって排水口104が閉状態であると把握したときには、モータ52に対し前記モータ軸を一方側に回転させるための電力を供給する。これにより、回転体54が一方側に回転して伝達部55が往動(電動操作装置5側から排水栓装置2側へと移動)していき、支持軸24C及び栓蓋25が上動していく。そして、制御基板57は、モータ52への給電開始後、前記磁気センサにより排水口104が開状態に切替わったことを把握すると、モータ52に対する給電を停止し、モータ52の動作を停止させる。その結果、栓蓋25が十分に上動した状態となり、排水口104は閉状態から開状態へと切換わることになる。尚、前記減速歯車群によって栓蓋25は上動した状態で維持されるため、モータ52に対し電力を供給せずとも排水口104は閉状態のままで維持される。一方、制御基板57は、前記開放要求信号が入力された場合に、前記磁気センサによって排水口104が既に開状態であると把握したときには、モータ52へと電力を供給することなく、排水口104を開状態のままで維持する。
【0093】
さらに、制御基板57は、前記閉鎖要求信号が入力された場合に、前記磁気センサによって排水口104が開状態であると把握したときには、モータ52に対し前記モータ軸を他方側に回転させるための電力を供給する。これにより、回転体54が他方側に回転してラック55Aが復動していく。また、ラック55Aの復動に伴い、戻しばね24Bからの付勢力により、インナーワイヤ55Bが復動するとともに、支持軸24C及び栓蓋25が下動していく。そして、制御基板57は、モータ52への給電開始後において、前記磁気センサにより排水口104が閉状態に切替わったことを把握すると、モータ52に対する給電を停止し、モータ52の動作を停止させる。その結果、排水口104は開状態から閉状態へと切換わることになる。一方、制御基板57は、前記閉鎖要求信号が入力された場合に、前記磁気センサによって排水口104が既に閉状態であると把握したときには、モータ52へと電力を供給することなく、排水口104を閉状態のままで維持する。
【0094】
尚、上記では、排水口104の開閉状態を切換える際に、磁気センサによる検知に基づき、モータ52に対する給電停止が行われるように構成されているが、給電開始からの経過時間や前記モータ軸の回転数に応じて、モータ52に対する給電停止を行うように構成してもよい。また、上記において、制御基板57は、閉鎖要求信号又は開放要求信号が入力されたときに磁気センサによって排水口104の開閉状態を検知し、検知内容に基づきモータ52の動作を制御するように構成されているが、磁気センサにより検知された排水口104の開閉状態を所定の記憶手段へと予め記憶するように構成し、閉鎖要求信号又は開放要求信号が入力されたときには、その記憶情報に基づきモータ52の動作を制御するようにしてもよい。
【0095】
上記のように構成された電動式排水栓操作システム1では、基本的には入力装置4に対する入力操作を行うことで、電動により排水口104の開閉状態を切換えることができる。また、本実施形態の電動式排水栓操作システム1では、前記クラッチ機構58により、栓蓋25や支持軸24Cが上動して排水口104が開状態であるときに、栓蓋25や支持軸24Cへと下向きの力を加えて大径部541及び介在部5322間で生じる負荷が所定量を超えるようにすることで、介在部5322に対し大径部541を空回りさせて、ひいては栓蓋25や支持軸24Cを下動させることが可能である。そのため、この点を利用することによって、停電時や故障時などの異常発生時には、手動により排水口104を開状態から閉状態へと切換えることが可能である。
【0096】
すなわち、栓蓋25が上動して排水口104が開状態であるときに異常が発生し、電動操作によって排水口104を閉状態とすることが不能となった場合には、支持軸24Cから栓蓋25を取外した上で、支持軸24Cへと比較的大きな下向きの力を加えることで、介在部5322に対し大径部541を空回りさせるとともに、伝達部55を復動させる。その結果、支持軸24Cは、排水口104を閉状態とするときの配置位置まで下動する。尚、支持軸24Cから栓蓋25を予め取外すのは、栓蓋25が排水口部材21へと接触すること等によって支持軸24Cが十分に下動しないといった事態が生じることを防ぐためである。その後、栓蓋25を支持軸24Cへと再度取付けること等により、排水口104を開状態から閉状態に切換えることができる。
【0097】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ケース51の内部空間のうちガイドチューブ61の内部空間と通じる第三構成部513側の内部空間と、この内部空間に通じるガイドチューブ61の内部空間とからなる空間は、ガイドチューブ61の他端側開口を除いて密封状態とされる。従って、この密封状態とされた空間に存在する空気によって、ケース51の内部空間側に対するガイドチューブ61を通った排水の移動を効果的に抑えることができる。これにより、ガイドチューブ61を通ったケース51の内部空間(第三構成部513側の内部空間)に対する排水の浸入を未然に防ぐことができる。
【0098】
さらに、シール部56によって、ケース51の内部空間のうち第一構成部511側の内部空間と第三構成部513側の内部空間とが空間的に隔てられた状態とされている。そのため、万が一排水がガイドチューブ61を通ってケース51の内部空間(第三構成部513側の内部空間)へと至ったとしても、その排水がモータ52の存在する第一構成部511の内部空間へと浸入しまうことをより確実に防止できる。
【0099】
以上の作用効果が相俟って、本実施形態によれば、排水がガイドチューブ61を通って第一構成部511の内部空間へと至ってしまうことを極めて効果的に防止できる。その結果、モータ52の故障をより確実に防止することができるとともに、良好な安全性を得ることができる。
【0100】
また、ケース51の少なくとも一部は、フランジ部103の下方に位置する状態とされる。そのため、ケース51から栓蓋25側へと延びる伝達部55(インナーワイヤ55B)を比較的短いものとすることができる。従って、伝達部55(インナーワイヤ55B)の取り回しが容易になり、装置の設置等に係る作業性を高めることができる。また、伝達部55(インナーワイヤ55B)によって、回転体54の回転による駆動力を栓蓋25側へとよりロスなく円滑に伝達することが可能となる。
【0101】
尚、ケース51の少なくとも一部がフランジ部103の下方に位置する場合、排水がガイドチューブ61を通ってケース51の内部空間側へと至りやすくなることが懸念されるが、本実施形態の構成を採用することで、このような懸念を払拭することができる。
【0102】
さらに、電動操作装置5は、モータ52の配置される第一構成部511が浴室ユニット110の外に位置した状態で、浴室ユニット110の壁111へと取付けられる。ここで、通常、浴室ユニット110外の湿度は浴室ユニット110内の湿度よりも低い状態となるため、第一構成部511の全体を浴室ユニット110内に設置した場合と比較して、モータ52に対する水分の悪影響をより抑えることができる。これにより、モータ52の故障防止や安全性向上を一層確実に図ることができる。加えて、浴室ユニット110外は浴室ユニット110内と比べて低温になりやすく、気温の増減も少ないため、モータ52を安定した環境下で動作させることができる。これにより、モータ52における動作安定性を向上させることができる。
【0103】
また、第一構成部511が浴室ユニット110の外に位置することによって、モータ52へと電力を供給するための通電ケーブル72や、モータ52の動作制御に係る信号を送受信するための信号ケーブル73を浴室ユニット110の外に配置することができ、水分による通電ケーブル72や信号ケーブル73の異常をより確実に防止することができる。さらに、水分による悪影響を防ぐためのシール処理をこれらケーブル72,73などに施す必要がないため、装置の構造や製造コストの面などで都合がよい。さらに、本実施形態では、箱型収容部5111を構成する各部品の合わせ部は、浴室ユニット110外に配置されるため、当該合わせ部に水密性確保のためのシール部材を設ける必要がなく、装置の製造や製造コストの面などでより有利となる。
【0104】
加えて、電動操作装置5は、第一構成部511が浴室ユニット110の外に位置し、第三構成部513が浴室ユニット110の内(中)に位置した状態とされるため、浴室ユニット110の壁111から外側に向けた電動操作装置5の突出量を少なくすることができる。これにより、本実施形態のように、浴室ユニット110の壁111とその外に配置される建造物の壁との間に形成される隙間が比較的小さなものであっても電動操作装置5を取付けることが可能となり、良好な取付自由度を得ることができる。
【0105】
さらに、ケース51によって取付孔111Aが塞がれることで、取付孔111Aを通った浴室ユニット110内から浴室ユニット110外への空気(水分)の移動を抑制することができ、浴室ユニット110の外をより確実に湿度の低い状態で維持することができる。そのため、モータ52などに対する水分の悪影響を一層確実に抑えることができる。また、浴室ユニット110の外に位置する建造物への水分(湿気)の悪影響をより確実に防ぐことができる。
【0106】
さらに、電動操作装置5は、取付孔111Aを塞ぐようにして浴室ユニット110の壁111に取付けられるため、電動操作装置5を取付ける工程と、取付孔111Aを塞ぐ工程とを同時期に一度に行うことができる。従って、作業性を効果的に高めることができる。
【0107】
さらに、シール部56は、小径部542と第二構成部512との間に配置されている。従って、シール部56を小径とすることができ、シール部56と第二構成部512等との間で生じる摩擦力をより小さなものとすることができる。その結果、回転体54の回転による駆動力を栓蓋25側へとより円滑に伝達することができる。
【0108】
併せて、シール部56が小径となるため、第三構成部513側の内部空間とガイドチューブ61の内部空間とからなる空間をより確実に密封状態で維持することができる。これにより、排水がガイドチューブ61を通ってケース51の内部空間側へと移動してしまうことをより長期に亘ってより確実に防止でき、モータ52の故障防止などの作用効果を長期間に亘って安定的に発揮させることができる。
【0109】
また、本実施形態では、クラッチ機構58によって、排水口104が開状態であるとき(つまり、栓蓋25が上動した状態であるとき)に、仮に停電やモータ52の故障等により栓蓋25の電動操作が不能になったとしても、手動により栓蓋25を下動させることができる。これにより、排水口104を開状態から閉状態へと手動で切換えることができることとなり、例えば停電時などにおいて浴槽100に水を溜めたい等の要望に応えることが可能となる。
【0110】
さらに、クラッチ機構58によって介在部5322に対し大径部541が空回り可能であるため、排水口104を開状態から閉状態へと手動で切換えた場合に、負荷の印加に伴う伝達部55や回転体54などにおける破損や変形をより確実に防止することができる。また、伝達部55等の破損などを防止できることによって、手動により排水口104を開状態から閉状態へと切換えたとしても、停電復旧後などにおける通常使用に支障が生じることはない。
【0111】
加えて、排水口104が開状態である(つまり、栓蓋25が上動した状態である)ときにおいて、栓蓋25を踏み付けた場合など、栓蓋25に対し下向きの比較的大きな負荷が加わった場合には、介在部5322に対し大径部541が空回りすることによって、伝達部55や回転体54などの破損や変形を防ぐことができる。
【0112】
また、回転体54の歯車部542Aからこれに噛合された伝達部55のラック55Aへと駆動力が伝達される構成であるため、回転体54から伝達部55にかけての駆動力の伝達機構を簡素な構成とすることができ、ひいてはケース51の内部空間のうち第三構成部513側の内部空間を比較的小さなものとすることができる。そのため、第三構成部513側の内部空間とガイドチューブ61の内部空間とからなる空間を密封状態とすることが容易に可能となる。また、電動操作装置5(特にケース51)の小型化を図ることができ、製造コストの低減や装置の設置等に係る作業性の向上などをより効果的に図ることができる。
【0113】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0114】
(a)上記実施形態では、第三構成部513に対し、排水口104を通過する排水の流入し得る管体として、ガイドチューブ61が接続されている。これに対し、図9に示すように、管体としてのアウターチューブ62が第三構成部513に接続されるようにしてもよい。さらに、アウターチューブ62の一端側部分が第三構成部513の内周に対し水密に接続され、アウターチューブ62の内部空間と第三構成部513の内部空間とが通じた状態となるように構成してもよい。この構成は、例えば、チューブ固定部品515の内周面全周をアウターチューブ62の一端側部分の外周面全周に圧接するとともに、チューブ固定部品515の外周面全周を第三構成部513の内周面全周に圧接した状態とすることで実現可能である。尚、アウターチューブ62の他端部開口は、配管22(本体管221)の内部すなわち排水の流路に配置されるため、アウターチューブ62には排水口104を通過する排水が流入し得る。
【0115】
第三構成部513の内周に対しアウターチューブ62を水密に接続するとともに、アウターチューブ62の内部空間と第三構成部513の内部空間とを通じた状態とし、かつ、上記実施形態と同様に、シール部56により第三構成部513の内部空間をその端部開口を除いて密封状態とすることで、ケース51の内部空間のうちアウターチューブ62の内部空間に通じる第三構成部513側の内部空間と、アウターチューブ62の内部空間とからなる空間を、アウターチューブ62の他端側(排水栓装置2側)の開口を除いて密封状態とすることができる。これにより、密封状態とされた空間に存在する空気によって、ケース51の内部空間側に対するアウターチューブ62を通った排水の移動を抑制可能である。より詳しくは、密封状態とされた空間に存在する空気によって、アウターチューブ62のうち排水栓装置2側からケース51側に向けて上昇に転じる部分よりも先(ケース51側)へと排水が入っていく(上がっていく)ことを抑えることができ、ひいてはケース51の内部空間側に対するアウターチューブ62を通った排水の移動を抑制可能である。このように排水の移動を抑制できることによって、排水がアウターチューブ62を通って第一構成部511の内部空間へと至ってしまうことを極めて効果的に防止でき、ひいてはモータ52の故障防止や良好な安全性の確保を効果的に図ることができる。
【0116】
尚、図9に示す例では、配管22(本体管221)に設けられた貫通孔221Bに弾性変形可能な材料(例えば、ゴム等)からなる筒状のブッシュ部材74が嵌合されるとともに、当該ブッシュ部材74の内周を通してアウターチューブ62が配管22外に出されるように構成されている。ブッシュ部材74によってアウターチューブ62と配管22(特に貫通孔221Bを形成する部位)との間からの漏水が防止される。
【0117】
(b)上記実施形態における電動操作装置5の配設位置はあくまで一例であって、電動操作装置5の配設位置を適宜変更してもよい。従って、例えば、ケース51の全体が浴室ユニット110外に位置するようにして、電動操作装置5を設置することとしてもよい。また、例えば、浴室ユニット110における壁111以外の部位(例えば天井112など)を電動操作装置5の取付対象としてもよい。
【0118】
さらに、電動操作装置5を、浴槽100の喫水面よりも上方に設置してもよい。電動操作装置5を喫水面よりも上方に設置することで、ケース51内に対する水の浸入を一層確実に防ぐことができる。尚、「喫水面」とあるのは、浴槽100に最大限の水を溜めたときにおける水面をいう。上記実施形態のように、浴槽100にオーバーフロー口が設けられていない場合には、「喫水面」は基本的にはフランジ部103と同じ高さの水平面となり、一方、浴槽100にオーバーフロー口が設けられている場合には、「喫水面」はオーバーフロー口と同じ高さの水平面となる。
【0119】
(c)上記実施形態では、停電等の異常時に排水口104を手動で開状態から閉状態へと切換えるときに、支持軸24Cから栓蓋25を取外した上で、支持軸24Cへと力を加える例を示している。これに対し、支持軸24Cから栓蓋25を取外すことなく、栓蓋25へと下向きの力を加えることのみにより、排水口104を手動で閉状態とすることが可能に構成してもよい。この構成は、例えば、栓蓋本体部25Aやパッキン部25Bの形状を調節したり、排水口部材21など栓蓋25の周囲に位置する部材と栓蓋25との相対位置関係を調節したりすること等により、栓蓋25へと下向きの力を加えたときに支持軸24Cが十分に下動するように構成することで実現可能である。
【0120】
この構成によれば、使用者は、栓蓋25を下方に押圧するという、排水口104を閉鎖しようとする際に自然に思いつきやすい行動を単に取ることで、排水口104を開状態から閉状態へと直感的に切換えることができる。また仮に、使用者が栓蓋25を押圧することで排水口104を手動で閉状態へと切換可能であることを知らなかったり、忘れていたりしても、上記のように、自然に思いつきやすい行動を取ることで排水口104を手動で閉状態とすることができるため、使用者にとって大変都合がよい。
【0121】
(d)上記実施形態では、入力装置4から電動操作装置5へと直接的に信号が入力されるように構成されているが、入力装置4及び電動操作装置5間に給湯器などの装置を介在設置する構成とし、入力装置4を入力操作したときに、前記装置(例えば給湯器)から電動操作装置5へと信号が入力されるように構成してもよい。
【0122】
(e)上記実施形態において、浴室ユニット110は、防水パン113を備えているが、防水パンを備えないものであってもよい。この場合、防水パン113に代えて浴槽100が浴室ユニット110の一部を構成することとなる。また、ガイドチューブ61やアウターチューブ62は浴室ユニット110の外に配置された状態となり、ガイドチューブ61等の接続される電動操作装置5についても通常浴室ユニット110の外に配置された状態となる。このとき、電動操作装置5を、例えば、浴槽100の裏側や壁111に設置された取付ブラケットなどに取付けてもよい。
【0123】
(f)上記実施形態において、電源装置3及び入力装置4は別々に設けられているが、両者を一体化した構成としてもよい。また、入力装置4及び電動操作装置5を一体化した構成としてもよい。
【0124】
(g)上記実施形態では、制御基板57によってモータ52に対する電力の供給制御が行われているが、モータ52に対する電力の供給制御機能をその他の装置に設けることとしてもよい。例えば、このような機能を電源装置3などに設けることとしてもよい。
【0125】
(h)上記実施形態では、栓蓋25(パッキン部25B)が排水口部材21に接触することで、排水口104が閉鎖されるように構成されているが、栓蓋25(パッキン部25B)が底壁部101に接触することで、排水口104が閉鎖されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0126】
5…電動操作装置、25…栓蓋、51…ケース、52…モータ(通電動作部)、54…回転体、55…伝達部、55A…ラック、56…シール部、58…クラッチ機構、61…ガイドチューブ(管体)、62…アウターチューブ(管体)、100…浴槽、103…フランジ部、104…排水口、110…浴室ユニット、111…壁、111A…取付孔、511…第一構成部、512…第二構成部、513…第三構成部、541…大径部、542…小径部、542A…歯車部、5322…介在部。
図1
図2
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図9