IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォーディー ファーマ リサーチ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-細菌株を含む組成物 図1a
  • 特許-細菌株を含む組成物 図1b
  • 特許-細菌株を含む組成物 図2
  • 特許-細菌株を含む組成物 図3
  • 特許-細菌株を含む組成物 図4
  • 特許-細菌株を含む組成物 図5
  • 特許-細菌株を含む組成物 図6
  • 特許-細菌株を含む組成物 図7
  • 特許-細菌株を含む組成物 図8
  • 特許-細菌株を含む組成物 図9
  • 特許-細菌株を含む組成物 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】細菌株を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20230119BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A61K35/74 A ZNA
A61P25/00
A61P37/06
A61K9/19
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019563363
(86)(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 GB2018051391
(87)【国際公開番号】W WO2018215760
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】1708176.1
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1714305.8
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1714309.0
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1714298.5
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1716493.0
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1718551.3
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 14294
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB 42486
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB 42381
(73)【特許権者】
【識別番号】514079985
【氏名又は名称】フォーディー ファーマ リサーチ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】4D PHARMA RESEARCH LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】サヴィニャック ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ムルダー イムケ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンソン アレキサンダー ジェームス
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-501095(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再発寛解型多発性硬化症を処置または予防する方法における使用のための、Blautia hydrogenotrophica種の細菌株を含む組成物。
【請求項2】
細菌株が、配列番号1と少なくとも97%、98%、99%、99.5%もしくは99.9%同一である16s rRNA配列を有する、または、配列番号1の16s rRNA配列を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
細菌株が、受託番号DSM14294で寄託されている細菌である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
経口投与用である、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
1または2以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
細菌株が、凍結乾燥されている、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
細菌株が、生存している、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
Blautia属の単一株を含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
微生物コンソーシアムの一部としてBlautia hydrogenotrophica細菌株を含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の、別の種からの細菌を含む、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、哺乳動物の消化管から単離された細菌株を含む組成物、及び疾患の処置におけるかかる組成物の使用の分野にある。
【背景技術】
【0002】
ヒトの腸は、子宮内では無菌と考えられているが、出生直後に様々な母体及び環境微生物に曝される。その後、微生物の定着及び遷移の動的期間が生じ、これは、分娩様式、環境、食事及び宿主遺伝子型などの因子によって影響され、これらの因子の全てが、特に若年期において、腸内微生物叢の組成に影響を及ぼす。その後、微生物叢は安定して成人様になる[1]。ヒト腸内微生物叢は、2つの主要な細菌分類(門):Bacteroidetes及びFirmicutes;が存在度レベルにおいて多数派を占める1500を超える種々のファイロタイプを含有する[2~3]。ヒト腸の細菌定着から生じる成功裏の共生関係は、広範な代謝的、構造的、保護的及び他の有益な機能を生じさせてきた。定着した腸の代謝活性の向上は、さもなければ難消化性の食事成分が副生成物の放出と共に分解されて宿主に重要な栄養源及びさらなる健康効果をもたらすということを確実にする。同様に、腸内微生物叢の免疫学的重要性は、よく認識されており、共生細菌の導入後に機能的に再構成される損なわれた免疫系を有する無菌動物において実証されている[4~6]。
【0003】
ヒト微生物叢の大きさ及び複雑さの発見は、現在進行中の多くの健康及び疾患の概念の評価を結果として生じている。確実には、微生物叢組成の劇的な変化は、胃腸障害、例えば、炎症性腸疾患(IBD)において記録されてきた[7~10]。より最近では、ヒト脳疾患において病態生理的役割を果し得る腸内微生物叢における変化に関しての当該分野での関心が高まっている[11]。前臨床的及び臨床的証拠により、脳の発達と微生物叢との間の関連が強く示唆されている[12]。
【0004】
ある特定の細菌株が動物の腸に及ぼし得る可能性のある陽性結果の認識において、種々の株が種々の疾患の処置における使用のために提案されている(例えば、[13~16]を参照されたい)。大部分のLactobacillus及びBifidobacterium株を含めた多くの株が、種々の腸障害を処置する際の使用のために提案されてきた(レビューについては[17]を参照されたい)。Blautia属の株もまた、消化生態系の微生物バランスを調節する際の使用のために提案されており(WO01/85187)、特定の種が、腸から遠ざかった全身性疾患を処置する際の使用のために提案されている(WO2016/203218)。しかし、種々の細菌株と種々の疾患との間の関係、ならびに、特定の細菌株の、腸に対する、全身レベルでの、及びいずれか特定のタイプの疾患に対しての正確な効果は、あまり特徴付けられていない。
【0005】
中枢神経系の自己免疫障害または炎症性障害を処置または予防するBlautia hydrogenotrophicaの効能は、未だ実証されていない。Blautia種のBlautia producta[19]を含めた広範なクラスの共生微生物が、自己免疫及び炎症性疾患に対して効果を発揮することが提案されている[18]。しかし、[18]に開示されている多数の種と、これらが処置することが提案されている様々な疾患との間の関係は、実証されていない。
【0006】
腸細菌を使用した新規の治療を開発することができるように特徴付けられる腸細菌の潜在的効果が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、中枢神経系の自己免疫疾患及び炎症性疾患を処置及び予防するための新規の治療を開発した。特に、本発明者らは、Blautia hydrogenotrophica種からの細菌株が、中枢神経系の自己免疫疾患及び炎症性疾患を処置または予防するのに有用であり得るということを確認した。実施例において記載されているように、Blautia hydrogenotrophicaを含む組成物の投与は、CNS炎症及び多発性硬化症(MS)のマウスモデルにおける症状の重篤度及び発生を低減し得る。そのため、第1実施形態において、本発明は、中枢神経系の自己免疫障害または炎症性障害を処置または予防する方法における使用のための、Blautia hydrogenotrophica種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0008】
組成物における細菌株は、Blautia hydrogenotrophicaのものである。近縁の株、例えば、Blautia hydrogenotrophicaの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する細菌株が使用されてもよい。好ましくは、細菌株は、配列番号1と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。最も好ましくは、組成物における細菌株は、受託番号DSM14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株である。
【0009】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、脱髄性自己免疫疾患または炎症性脱髄疾患を処置または予防する際の使用のためのものである。特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、多発性硬化症を処置または予防する際の使用のためのものである。実施例において研究されているEAEモデルは、これらの疾患及び特にMSに特に関係する。
【0010】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、疾患の発生または疾患の重篤度を低減する方法における使用のためのものである。さらに好ましい実施形態において、当該組成物は、運動機能の低下を予防する際の使用のための、または運動機能を改善する際の使用のためのものである。実施例において得られる結果は、本発明の組成物が、疾患の発生及び重篤度を低減し、また、運動機能を改善するのに有用であり得ることを実証している。
【0011】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、経口投与用である。本発明の株の経口投与は、中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患を処置するのに有効であり得る。また、経口投与は、患者及び施術者にとって便利であり、腸への送達及び/または腸への部分もしくは全体定着を可能にする。
【0012】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、1または2以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を含む。
【0013】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌株を含む。凍結乾燥は、細菌の送達を可能にする安定な組成物を調製するのに有効かつ便利な技術である。
【0014】
ある特定の実施形態において、本発明は、上記に記載されている組成物を含む食品を提供する。
【0015】
ある特定の実施形態において、本発明は、上記に記載されている組成物を含むワクチン組成物を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、中枢神経系の免疫または炎症性障害を処置または予防する方法であって、Blautia hydrogenotrophica種の細菌株を含む組成物を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0017】
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1a】0日目~30日目のEAE臨床スコア。
図1b】0日目~35日目のEAE臨床スコア。
図2a】0日目~30日目のEAE臨床スコアの濃度曲線下面積(AUC)分析。
図2b】0日目~35日目のEAE臨床スコアの濃度曲線下面積(AUC)分析。
図3】脊髄及び脳の組織病理学的スコア分析。データは、平均±SEMを示す。ビヒクル(PBS)群に対して*p<0.05及び***p<0.001。
図4】ヘマトキシリン及びエオシンで染色した脊髄切片の代表的な写真。
図5】ヘマトキシリン及びエオシンで染色した脳切片の代表的な写真。
図6】健常なHIMラットの盲腸内容物における短鎖脂肪酸産生(RMN H)に対するBlautia hydrogenotrophica(1010/日で14日間)の効果。
図7】B.hydrogenotrophica(BlautiX)を含む組成物によって28日間処置したまたは処置していないIBS-HMAラットの糞便サンプルにおけるB.hydrogenotrophica集団のqPCR評価。
図8】B.hydrogenotrophica(Blautix)によって28日間処置したまたは処置していないIBS-HMAラットの盲腸サンプルにおける短鎖脂肪酸(SCFA)濃度。図8Aは、全SCFAの濃度を示す。図8Bは、酢酸、プロピオン酸及び酪酸の濃度を示す。
図9】-14日目の血清(図9a)及び35日目の血清(図9b)におけるMOG35-55ペプチドに対するIgG抗体反応のレベル。バーは、中央値を表す(動物を35日目のエンドポイントよりも前に終了させない限りn=12)。*p<0.05。
図10】MOG35-55ペプチドに対する脾細胞増殖のレベル。データは、平均±SEMを示す(動物を35日目のエンドポイントよりも前に終了させない限りn=12)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
細菌株
本発明の組成物は、Blautia hydrogenotrophica種の細菌株を含む。実施例は、この種の細菌が、中枢神経系の自己免疫障害または炎症性障害、例えば、多発性硬化症を処置または予防するのに有用であることを実証している。Blautia種は、球形または楕円形のいずれであってもよいグラム反応陽性の非運動性細菌であり、全てが、グルコース発酵の主な最終産物として酢酸を産生する偏性嫌気性菌である[20]。Blautiaは、ヒト腸から単離されてよいが、B.productaは、敗血症サンプルから単離されたものである。Blautia hydrogenotrophica(Ruminococcus hydrogenotrophicusとしてこれまでに知られている)は、哺乳動物の腸から単離されており、偏性嫌気性であり、また、H/COを、ヒトの栄養に重要であり得る酢酸塩に代謝する。Blautia hydrogenotrophicaのタイプの株は、S5a33=JCM14656である。Blautia hydrogenotrophica株S5a36の16S rRNA遺伝子配列のGenBank受託番号は、X95624.1である(配列番号1として本明細書に開示されている)。この例示的なBlautia hydrogenotrophica株は、[20]及び[21]に記載されている。S5a33株及びS5a36株は、健常な対象の糞便サンプルから単離した株の2つのサブクローンに相当する。これらは、同一の形態、生理機能及び代謝を示し、同一の16S rRNA配列を有している。そのため、いくつかの実施形態において、本発明における使用のためのBlautia hydrogenotrophicaは、配列番号1の16S rRNA配列を有する。
【0020】
受託番号DSM14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica細菌を実施例において試験した。該細菌は、本明細書において株BHまたはBlautixとも称される。該株は、本発明の好ましい株である。株BHを、2001年5月10日に受託DSM14294で「S5a33」として、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen [German Microorganism Collection](Mascheroder Weg lb,38124 Braunschweig,Germany)に寄託した。寄託者は、INRA Laboratoire de Microbiologie CR de Clermont-Ferrand/Theix 63122 Saint Genes Champanelle,Franceであった。寄託物の所有権は、譲渡により、4D Pharma Picに渡った。4D Pharma Picは、合意により、4D Pharma Research Limitedが、適用において、当該寄託した生物材料に関わることを許可しており、また、公衆が利用できるようになっている当該寄託した材料に対してその無条件かつ取消不能な承認を付与している。
【0021】
実施例において試験されている株と近縁の細菌株もまた、中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患を処置または予防するのに有効であると期待される。ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、Blautia hydrogenotrophicaの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。好ましくは、本発明における使用のための細菌株は、配列番号1と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。
【0022】
受託番号DSM14294で寄託されている細菌のバイオタイプである細菌株もまた、中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患を処置または予防するのに有効であると期待される。バイオタイプは、同じまたは非常に類似する生理的及び生化学的特徴を有する近縁の株である。
【0023】
受託番号DSM14294で寄託されている細菌のバイオタイプでありかつ本発明における使用に好適である株は、受託番号DSM14294で寄託されている細菌の他のヌクレオチド配列をシークエンスすることによって同定されてよい。例えば、実質的に全ゲノムがシークエンスされてよく、本発明における使用のためのバイオタイプ株は、その全ゲノムの少なくとも80%にわたって(例えば、少なくとも85%、90%、95%もしくは99%にわたって、またはその全ゲノムにわたって)少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有していてよい。例えば、いくつかの実施形態において、バイオタイプ株は、そのゲノムの少なくとも98%にわたって少なくとも98%の配列同一性、またはそのゲノムの99%にわたって少なくとも99%の配列同一性を有する。バイオタイプ株を同定するのに使用される他の好適な配列は、hsp60または反復配列、例えば、BOX、ERIC、(GTG)、もしくはREPまたは[22]を含んでいてよく、バイオタイプ株は、受託番号DSM14294で寄託されている細菌の対応する配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有していてよい。いくつかの実施形態において、バイオタイプ株は、DSM14294として寄託されているBlautia hydrogenotrophica株の対応する配列と少なくとも97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有しており、配列番号1と少なくとも99%同一である(例えば、少なくとも99.5%または少なくとも99.9%同一である)16S rRNA配列を含む。いくつかの実施形態において、バイオタイプ株は、DSM14294として寄託されているBlautia hydrogenotrophica株の対応する配列と少なくとも97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有しており、配列番号1の16S rRNA配列を有する。
【0024】
代替的には、受託番号DSM14294で寄託されている細菌のバイオタイプでありかつ本発明における使用に好適である株は、受託番号DSM14294の寄託物、ならびに制限断片分析及び/またはPCR分析を使用することによって、例えば、蛍光増幅断片長多型分析(FAFLP)及び反復DNA要素(rep)-PCR指紋検査、またはタンパク質プロファイリング、または部分16Sもしくは23s rDNAシークエンシングを使用することによって同定されてよい。好ましい実施形態において、かかる技術は、他のBlautia hydrogenotrophica株を同定するのに使用されてよい。
【0025】
ある特定の実施形態において、受託番号DSM14294で寄託されている細菌のバイオタイプでありかつ本発明における使用に好適である株は、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析されるとき、例えば、Sau3AI制限酵素(例示的な方法及びガイダンスについては、例えば[23]を参照されたい)を使用するとき、受託番号DSM14294で寄託されている細菌と同じパターンを付与する株である。代替的には、バイオタイプ株は、受託番号DSM14294で寄託されている細菌と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として同定される。
【0026】
本発明の組成物及び方法において有用である他のBlautia hydrogenotrophica株、例えば、受託番号DSM14294で寄託されている細菌のバイオタイプは、実施例において記載されているアッセイを含め、いずれの適切な方法またはストラテジーを使用して同定されてもよい。例えば、本発明で使用される株は、EAEモデルプロトコル、例えば、実施例において使用されているものを使用して、細菌を培養しかつマウスに投与することによって同定され得る。特に、受託番号DSM14294で寄託されている細菌と同様の成長パターン、代謝型及び/または表面抗原を有する細菌株は、本発明において有用であり得る。有用な株は、DSM14294株に匹敵する微生物叢調節活性を有する。特に、バイオタイプ株は、実施例において示されている効果に匹敵する、中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患に対する効果を引き出し、これは、実施例において記載されている培養及び投与プロトコルを使用することによって同定されてよい。
【0027】
本発明の特に好ましい株は、受託番号DSM14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株である。これは、実施例において試験されて、疾患を処置するのに効果的であることが示される例示的なBH株である。そのため、本発明は、特に本明細書に記載されている疾患の治療における使用のための、細胞、例えば、受託番号DSM14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株、またはその派生物(derivative)の単離細胞を提供する。
【0028】
受託番号DSM14294で寄託されている株の派生物は、娘株(後代)、またはオリジナルから培養された(サブクローニングされた)株であってよい。本発明の株の派生物は、生物活性を取り除くことなく、例えば、遺伝子レベルで修飾されてよい。特に、本発明の派生株は、治療的に活性である。派生株は、オリジナルのDSM14294株に匹敵する微生物叢調節活性を有する。特に、派生株は、実施例において示されている効果に匹敵する、中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患に対する効果を引き出し、これは、実施例において記載されている培養及び投与プロトコルを使用することによって同定されてよい。DSM14294株の派生物は、概して、DSM14294株のバイオタイプである。
【0029】
受託番号DSM14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株の細胞への言及は、受託番号DSM14294で寄託されている株と同じ安全及び治療効能特性を有するいずれの細胞も包含し、かかる細胞は本発明によって包含される。
【0030】
好ましい実施形態において、本発明の組成物における細菌株は生存しており、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。
【0031】
治療的使用
本発明の組成物は、中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患を処置または予防する際の使用のためのものである。実施例は、本発明の組成物が、CNS炎症のマウスモデル(EAEモデル)における疾患の発生及び疾患の重篤度の低減を達成し、そのため、かかる状態の処置または予防において有用であり得ることを実証している。
【0032】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、脱髄性自己免疫疾患を処置または予防する際の使用のためのものである。実施例において示されている効果は、かかる疾患に特に関係する。
【0033】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、炎症性脱髄疾患を処置または予防する際の使用のためのものである。実施例において示されている効果は、かかる疾患に特に関係する。
【0034】
特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、より詳細に以下において考察されているように、多発性硬化症を処置または予防する際の使用のためのものである。
【0035】
ある特定の実施形態において、上記障害は、脊椎に主に影響する。ある特定の実施形態において、上記障害は、脊髄に主に影響する。ある特定の実施形態において、上記障害は、脳に主に影響する。
【0036】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物による処置は、脊髄における炎症を低減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物による処置は、脳における炎症を低減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物による処置は、脊髄及び脳における炎症を低減する。
【0037】
好ましい実施形態において、上記組成物は:多発性硬化症、視神経脊髄炎、抗MOG自己免疫性脳脊髄炎、慢性再発性炎症性視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、急性出血性白質脳炎、バロー同心円性硬化症、びまん性脱髄性硬化症、Marburg多発性硬化症、Tumefactive多発性硬化症及び孤立性硬化症;からなるリストから選択される疾患を処置または予防する際の使用のためのものである。実施例において示されている効果は、炎症性脱髄疾患(IDD)、または特発性炎症性脱髄疾患(HDD)、または多発性硬化症のボーダーラインの形態としても知られている、かかる疾患に特に関係する。
【0038】
ある特定の実施形態において、上記組成物は、横断性脊髄炎、ビッカースタッフ脳幹脳炎、ミラーフィッシャー症候群、CNS血管炎、神経サルコイドーシス、全身性エリテマトーデスの神経精神的発現、熱帯性痙性不全対麻痺(TSP)ZHTLV-I関連脊髄症(HAM)、または、CNSのウエストナイルウイルス感染を処置または予防する際の使用のためのものである。
【0039】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患、例えば、Campylobacter jejuni感染を引き起こすことが知られている感染性疾患を有すると診断された患者における使用のためのものである。
【0040】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物による処置は、疾患の発生または疾患の重篤度の低減を結果として生じさせる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、疾患の発生または疾患の重篤度を低減する際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物による処置は、運動機能の低下を予防し、または運動機能の改善を結果として生じさせる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、運動機能の低下を予防する際の使用のための、または運動機能を改善する際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物による処置は、麻痺の発生を予防する。
【0041】
特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、多発性硬化症を処置または予防する際の使用のためのものである。実施例は、本発明の組成物が、多発性硬化症のマウスモデル(EAEモデル)における疾患の発生及び疾患の重篤度の低減を達成し、そのため、多発性硬化症の処置または予防において有用であり得ることを実証している。多発性硬化症は、特に脳及び脊柱における神経細胞の髄鞘への損傷に関連する中枢神経系の炎症性障害及び脱髄疾患である。多発性硬化症は、慢性疾患であり、次第に不能にし、エピソードにおいて発達する。MSは、通常、高齢患者において見られる。T細胞及びB細胞の浸潤物からなる炎症は、通常、MS患者のCNS及び病斑において見られる。リンパ球浸潤の程度は、疾患の後期とは対照的に疾患の初期において、より高い。CD8+T細胞は、CD4+T細胞及びB細胞のレベルがより低い主たるリンパ球集団である。本発明の組成物は、多発性硬化症を予防または処置するのに特に有効であり得る。
【0042】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物による処置は、MS発生またはMS重篤度の低減を結果として生じさせる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、再発の発生または再発の重篤度を低減する際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物による処置は、運動機能の低下を予防し、または、MSに関連する運動機能の改善を結果として生じさせる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、MSの処置において、運動機能の低下を予防する際の使用のための、または運動機能を改善する際の使用のためのものである。
【0043】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物による処置は、MSにおいて麻痺の発生を予防する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、MSの処置において麻痺を予防する際の使用のためのものである。
【0044】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、多発性硬化症の危険性があると同定されている、または早期多発性硬化症もしくは「再発寛解型」多発性硬化症と診断されている患者における多発性硬化症を予防する際の使用のためのものである。本発明の組成物は、MSの発生を予防するのに有用であり得る。本発明の組成物は、MSの進行を予防するのに有用であり得る。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、MS、例えば、主要組織適合複合体(MHC)クラスII表現型、ヒト白血球抗原(HLA)-DR2またはHLA-DR4の遺伝性素因を有すると同定されている患者における使用のためのものである。
【0045】
本発明の組成物は、多発性硬化症を管理または軽減するのに有用であり得る。本発明の組成物は、多発性硬化症に関連する症状を低減するのに特に有用であり得る。多発性硬化症の処置または予防とは、例えば、症状の重篤度の軽減、または患者にとって問題である憎悪の頻度もしくは誘因の範囲の低減を称し得る。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、疾患の進行を遅延または停止する。
【0046】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、再発寛解型MSを処置する際の使用のためのものである。代替の実施形態において、本発明の組成物は、PPMSと類似するが重複する再発を伴っている、徐々の連続的な神経学的退行及び進行型の再発MS(PRMS)を示す、RRMS、一次進行型MS(PPMS)の診断後に経時的に発展する、進行型MS、例えば、二次進行型MS(SPMS)を処置する際における使用のためのものである。
【0047】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は:疲労、視覚障害、しびれ、うずき、筋肉のけいれん、筋肉のこわばり、筋肉の衰弱、運動性の問題、疼痛、思考、学習及び計画による問題、うつ病及び不安、性的問題、膀胱問題、腸管問題、言語及び嚥下障害;からなる群から選択されるMSの症状の1または2以上を処置する際の使用のためのものである。
【0048】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、二次活性薬剤との併用のためのものである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、P-インターフェロン1aもしくは1bまたはガラティラメルアセテートとの併用のためのものである。他の二次薬剤には、他のインターフェロン、フマル酸ジメチル、テリフルノミド、フィンゴリモド、ミトキサントロン、ヒト化モノクローナル抗体(例えば、ナタリズマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ)、幹細胞、DNAワクチン、ナノ粒子及び改変ペプチドリガンドが含まれる。本発明の組成物は、二次活性薬剤への患者の応答を改善し得る。
【0049】
ヒストン脱アセチル酵素阻害薬、例えば、ブチレートは、多発性硬化症の処置における使用も提案されている[24]。
【0050】
ある特定の実施形態において、Blautia hydrogenotrophicaを含む本発明の組成物は、神経炎症を阻害する。ある特定の実施形態において、Blautia hydrogenotrophicaを含む本発明の組成物は、IL-IRA(前炎症性IL-1Pの阻害薬)のレベルを増加させる。ある特定の実施形態において、Blautia hydrogenotrophicaを含む本発明の組成物は、前炎症性IL-1β及び/またはTNFαのレベルを減少させる。ある特定の実施形態において、Blautia hydrogenotrophicaを含む本発明の組成物は、IL-IRAのレベルを増加させるIL-4発現を増加させる。ある特定の実施形態において、Blautia hydrogenotrophicaを含む本発明の組成物は、核因子κB(NF-κB)活性化を阻害する。したがって、Blautia hydrogenotrophicaを含む本発明の組成物は、IL-1B、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12、誘導的硝酸合成酵素、シクロオキシゲナーゼ-2、細胞間接着分子-1、T細胞受容体α及びMHCクラスII分子を含めた初期免疫炎症反応遺伝子の発現を調節し得る。
【0051】
本発明の組成物は、中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患を処置または予防する際の使用のためのものである。そのため、ある特定の実施形態において、本発明の組成物によって処置される障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD);小児発達障害;強迫神経症(OCD);大うつ病性障害;うつ病;季節性情動障害;不安障害;慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎);ストレス障害;心的外傷後ストレス障害;統合失調症スペクトラム障害;統合失調症;双極性障害;精神病;気分障害;認知症;アルツハイマー病;パーキンソン病;慢性疼痛、運動ニューロン疾患;ハンチントン病;ギラン-バレー症候群または髄膜炎ではない。
【0052】
投与の形態
好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株による腸への送達及び/または腸への部分もしくは全体定着を可能にするために胃腸管に投与されるべきである。概して、本発明の組成物は、経口で投与されるが、これらは、経直腸的に、鼻腔内に、または頬側もしくは舌下経路を介して投与されてよい。
【0053】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、フォームとして、スプレーまたはゲルとして投与されてよい。
【0054】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、坐薬、例えば肛門坐薬として、例えば、カカオ脂(ココアバター)、合成硬質脂肪(例えば、坐剤用基材、ウィテップゾール)、グリセロ-ゼラチン、ポリエチレングリコール、または石鹸グリセリン組成物の形態で投与されてよい。
【0055】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、チューブ、例えば、鼻腔栄養チューブ、経口胃チューブ、胃チューブ、経空腸チューブ(Jチューブ)、経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)、またはポート、例えば胃、空腸及び他の好適なアクセスポートへのアクセスを付与する胸壁ポートを介して胃腸管に投与される。
【0056】
本発明の組成物は、一度で投与されてよく、または処置レジメンの一部として逐次的に投与されてよい。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、連日投与されるべきである。実施例は、投与が、中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患の処置において成功裏の定着及び臨床的利益を付与することを実証している。
【0057】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば毎日、2日おきに、または週1回、長期にわたって、例えば少なくとも1週間、2週間、1ヶ月間、2ヶ月間、6ヶ月間、または1年間定期的に投与される。実施例は、BH投与が、腸への永久定着を結果として生じない場合があり、そのため、長期にわたる定期的投与が、より大きな治療的利益を付与する場合があることも実証している。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、7日、14日、16日、21日もしくは28日間、または 7日、14日、16日、21日もしくは28日を超えて投与される。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、16日間投与される。
【0059】
本発明のある特定の実施形態において、本発明による処置は、患者の腸内微生物叢のアセスメントによって達成される。処置は、本発明の株の送達及び/またはそれによる部分的もしくは全体的定着が達成されず、その結果、効能が観察されないことになるとき、繰り返されてよく、あるいは、処置は、送達及び/または部分的もしくは全体的定着が成功裏でありかつ効能が観察されるときに中止されてよい。
【0060】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、妊娠した動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトに、その子宮内の胎児及び/または生まれた後の小児において発症する中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患を予防するために投与されてよい。
【0061】
本発明の組成物は、中枢神経系の自己免疫障害または炎症性障害を有すると診断されている、またはかかる障害の危険性があると同定されている患者に投与され得る。上記組成物はまた、健常な患者における疾患の発症を予防するための予防対策として投与されてもよい。
【0062】
本発明の組成物は、異常な腸内微生物叢を有すると同定されている患者に投与されてよい。例えば、患者は、Blautia、特に、Blautia hydrogenotrophicaによる定着が低減されているか、または該定着がないかであり得る。
【0063】
本発明の組成物は、食品、例えば栄養補助食品として投与されてよい。
【0064】
概して、本発明の組成物は、ヒトの処置のためのものであるが、単胃哺乳動物、例えば、家禽、ブタ、ネコ、イヌ、ウマまたはウサギを含めた動物を処置するのに使用されてよい。本発明の組成物は、動物の成長及びパフォーマンスを向上させるのに有用である場合がある。動物に投与されるとき、経口胃管栄養法が使用されてよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記組成物が投与されるべき対象は、ヒト成人である。いくつかの実施形態において、上記組成物が投与されるべき対象は、ヒト乳児である。
【0066】
組成物
概して、本発明の組成物は、細菌を含む。本発明の好ましい実施形態において、組成物は、凍結乾燥形態で調合される。例えば、本発明の組成物は、本発明の細菌株を含む顆粒またはゼラチンカプセル、例えば、硬質ゼラチンカプセルを含んでいてよい。
【0067】
好ましくは、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌を含む。細菌の凍結乾燥は、確立された手順であり、関連のガイダンスは、例えば、参照文献[25~27]において入手可能である。凍結乾燥組成物は、特に有効であり得る。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、凍結乾燥細菌を含み、MSの処置のためのものである。
【0068】
代替的には、本発明の組成物は、生きている、活性な細菌培養物を含んでいてよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、不活性化されていない、例えば、熱不活性化されていない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、殺傷されていない、例えば、熱殺傷されていない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、弱毒化されていない、例えば、熱弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、殺傷されていない、不活性化されていない及び/または弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、生きている。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、生きている。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、生存しており、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。
【0069】
いくつかの実施形態において、組成物は、生きている細菌株と殺傷されている細菌株との混合物を含む。
【0070】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、腸への細菌株の送達を可能にするようにカプセル化されている。カプセル化は、目標箇所に送達するまで、例えばpHの変化によって引き起こされる場合がある化学的または物理的刺激、例えば圧力、酵素活性または物理的崩壊による破断を通しての劣化から組成物を保護する。いずれの適切なカプセル化方法が使用されてもよい。例示的なカプセル化技術として、多孔質マトリクス内への取り込み、固体担体表面への付着または吸着、凝集によるまたは架橋剤を用いた自己会合、及び微多孔膜またはマイクロカプセルの後の機械的拘束が挙げられる。本発明の組成物を調製するのに有用であり得るカプセル化についてのガイダンスは、例えば、参照文献[28~29]において入手可能である。
【0071】
組成物は、経口で投与されてよく、錠剤、カプセルまたは粉末の形態であってよい。カプセル化された製品が好ましい、なぜなら、Blautiaが嫌気性生物であるからである。他の成分(例えばビタミンCなど)が、生体内での送達及び/または部分的もしくは全体的定着ならびに生存を改善するように脱酸素剤及びプレバイオティック基質として含まれていてよい。代替的には、本発明のプロバイオティック組成物は、食品もしくは栄養製品、例えばミルクもしくはホエイベースの発酵乳製品として、または医薬製品として経口で投与されてよい。
【0072】
組成物は、プロバイオティックとして調合されてよい。
【0073】
本発明の組成物は、治療有効量の本発明の細菌株を含む。治療有効量の細菌株は、患者への有益な効果を発揮するのに十分である。治療有効量の細菌株は、患者の腸への送達及び/または部分的もしくは全体的定着を結果として生じさせるのに十分であり得る。
【0074】
例えばヒト成人への細菌の好適な1日量は、約1×10~約1×1011個のコロニー形成単位(CFU);例えば、約1×10~約1×1010CFU;別の例において、約1×10~約1×1010CFU;別の例において、約1×10~約1×1011CFU;別の例において、約1×10~約1×1010CFU;別の例において、約1×10~約1×1011CFUであってよい。
【0075】
ある特定の実施形態において、細菌の用量は、少なくとも10細胞/日、例えば、少なくとも1010、少なくとも1011、または少なくとも1012細胞/日である。
【0076】
ある特定の実施形態において、組成物は、組成物の重量に対して約1×10~約1×1011CFU/g;例えば、約1×10~約1×1010CFU/gの量で細菌株を含有する。用量は、例えば、1g、3g、5g、及び10gであってよい。いくつかの実施形態において、用量は、1g以下、例えば、約0.5g~約1g、例えば、約0.5g、0.6g、0.75g、0.8g、0.9gまたは1gであってよい。
【0077】
典型的には、プロバイオティック、例えば本発明の組成物は、少なくとも1の好適なプレバイオティック化合物と任意選択的に組み合わされる。プレバイオティック化合物は、通常、上部消化管において分解または吸収されない、非消化性炭水化物、例えば、オリゴ-もしくは多糖、または糖アルコールである。公知のプレバイオティクスとして、市販品、例えば、インスリン及びトランスガラクト-オリゴ糖が挙げられる。
【0078】
ある特定の実施形態において、本発明のプロバイオティック組成物は、組成物の合計重量に対して約1~約30重量%(例えば、5~20重量%)の量でプレバイオティック化合物を含む。炭水化物は:フラクト-オリゴ糖(またはFOS)、短鎖フラクト-オリゴ糖、インスリン、イソマルト-オリゴ糖、ペクチン、キシロ-オリゴ糖(またはXOS)、キトサン-オリゴ糖(またはCOS)、β-グルカン、アラビアガム変性及び耐性デンプン、ポリデキストロース、D-タガトース、アカシアファイバ、イナゴマメ、オート麦、ならびにシトラスファイバ;からなる群から選択されてよい。一態様において、プレバイオティクスは短鎖フラクト-オリゴ糖(簡潔のために、以下本明細書においてFOSs-c.cと示す)であり;該FOSs-c.c.は、テンサイ糖の転換によって一般に得られ、3のグルコース分子が結合しているサッカロース分子を含んでいる消化性炭水化物ではない。
【0079】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体を含んでいてよい。かかる好適な賦形剤の例は、参照文献[30]において見出され得る。治療的使用のための許容される担体または希釈剤は、薬剤分野において周知されており、例えば参照文献[31]において記載されている。好適な担体の例として、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好適な希釈剤の例として、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図する投与経路及び標準の薬務に関して選択され得る。医薬組成物は、上記担体、賦形剤または希釈剤として、またはこれに加えて、いずれの好適な結合剤(複数可)、潤滑剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、コーティング剤(複数可)、可溶化剤(複数可)を含んでいてもよい。好適な結合剤の例として、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えば、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、β-ラクトース、コーンシロップ、天然及び合成ガム、例えば、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースならびにポリエチレングリコールが挙げられる。好適な潤滑剤の例として、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤、安定剤、染料、及びさらなる香味剤が医薬組成物において付与されていてよい。防腐剤の例として、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、システイン及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、防腐剤は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルから選択される。酸化防止剤及び懸濁剤が使用されてもよい。好適な担体のさらなる例は、サッカロースである。防腐剤のさらなる例は、システインである。
【0080】
本発明の組成物は、食品として調合されてよい。例えば、食品は、例えば栄養補助食品において、本発明の治療効果に加えて、栄養的利益を付与してよい。同様に、食品は、本発明の組成物の風味を向上するように、または組成物を、医薬組成物よりもむしろ、一般食料とより類似することによって、消費するのにより魅力的であるようにするように調合されてよい。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ミルクベースの製品として調合される。用語「ミルクベースの製品」は、変動する脂肪分を有する、いずれの液体または半固体のミルク-またはホエイベースの製品も意味する。ミルクベースの製品は、例えば、ウシのミルク、ヤギのミルク、ヒツジのミルク、スキムミルク、ホールミルク、いずれの処理もしていない粉ミルク及びホエイからの還元ミルク、または加工品、例えばヨーグルト、凝固したミルク、カード、酸乳、酸全乳、バターミルク及び他の酸乳製品であり得る。別の重要な群として、ミルク飲料、例えばホエイ飲料、発酵乳、コンデンスミルク、乳幼児ミルク;フレーバーミルク、アイスクリーム;ミルク含有食品、例えば、スイーツが挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、Blautia属の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の属からの細菌も含有せずまたは、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の、別の属からの細菌を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1または2以上のBlautia hydrogenotrophica種の細菌株を含み、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の、別の種からの細菌を含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、Blautia hydrogenotrophicaの単一株、好ましくは、株BHを含み、いずれの他の株からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の、別の株からの細菌を含む。
【0084】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、単一の細菌株または種を含有し、いずれの他の細菌株または種も含有しない。かかる組成物は、ほんの僅少なまたは生物学的に関連のない量の他の細菌株または種を含んでいてよい。かかる組成物は、他の種の生物を実質的に含まない培養物であってよい。いくつかの実施形態において、かかる組成物は、他の種の生物を実質的に含まない凍結乾燥物であってよい。
【0085】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Blautia属の1または2以上の細菌株、例えば、Blautia hydrogenotrophicaを含み、いずれの他の細菌属も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の、別の属からの細菌を含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、単一のBlautia種、例えば、Blautia hydrogenotrophica種を含み、いずれの他の細菌種も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の、別の種からの細菌を含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Blautia、例えば、Blautia hydrogenotrophicaの単一株を含み、いずれの他の細菌株もしくは種も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の、別の株もしくは種からの細菌を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1を超える細菌株または種を含む。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同種内からの1を超える株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40または45を超える株)を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同種内からの50未満の株(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4または3未満の株)を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同種内からの1~40、1~30、1~20、1~19、1~18、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、6~30、6~15、16~25、または31~50株を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同属内からの1を超える株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、23、25、30、35または40を超える種)を含み、任意選択的に、いずれの他の属からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同属内からの50未満の種(例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、12、10、8、7、6、5、4または3未満の種)を含み、任意選択的に、いずれの他の属からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同属内からの1~50、1~40、1~30、1~20、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、6~30、6~15、16~25、または31~50種を含み、任意選択的に、いずれの他の属からの細菌も含有しない。本発明は、上記のいずれの組み合わせも含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、組成物は、微生物コンソーシアム(consortium)を含む。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、微生物コンソーシアムの一部としてBlautia hydrogenotrophica細菌株を含む。例えば、いくつかの実施形態において、Blautia hydrogenotrophica細菌株は、腸において生体内で共生的に生きることができる、他の属からの1または2以上の(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、15または20の)他の細菌株において存在する。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、異なる属からの細菌株と組み合わせたBlautia hydrogenotrophicaの細菌株を含む。いくつかの実施形態において、微生物コンソーシアムは、単一の生物、例えば、ヒトの糞便サンプルから得られた2以上の細菌株を含む。いくつかの実施形態において、微生物コンソーシアムは、本来は一緒には見られない。例えば、いくつかの実施形態において、微生物コンソーシアムは、少なくとも2の異なる生物の糞便サンプルから得られた細菌株を含む。いくつかの実施形態において、該2の異なる生物は、同種、例えば、2の異なるヒトからのものである。いくつかの実施形態において、該2の異なる生物はヒト乳児及びヒト成人である。いくつかの実施形態において、該2の異なる生物は、ヒト及び非ヒト哺乳動物である。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、受託番号DSM14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株と同じ安全及び治療効能特性を有するが、受託番号DSM14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株ではない、Blautia hydrogenotrophicaではない、またはBlautiaではない細菌株をさらに含む。
【0089】
本発明の組成物が1を超える細菌株、種または属を含むいくつかの実施形態において、個々の細菌株、種または属は、別々、同時または逐次投与用であってよい。例えば、組成物は、1を超える細菌株、種もしくは属の全てを含んでいてよく、または細菌株、種もしくは属は、別々に貯蔵されてよく、また、別々に、同時にもしくは逐次的に投与されてよい。いくつかの実施形態において、1を超える細菌株、種または属は、別々に貯蔵されているが、使用前に一緒に混合される。
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、ヒト成人の糞便から得られる。本発明の組成物が1を超える細菌株を含むいくつかの実施形態において、細菌株の全てがヒト成人の糞便から得られ、または、他の細菌株が存在するとき、ほんの僅少な量で存在する。細菌は、ヒト成人の糞便から得られ本発明の組成物において使用された後に培養されてよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、1または2以上のBlautia細菌株は、本発明の組成物において唯一の治療的活性剤(複数可)である。いくつかの実施形態において、組成物における細菌株(複数可)は、本発明の組成物において唯一の治療的活性剤(複数可)である。
【0092】
本発明による使用のための組成物は、販売承認を必要としてもしなくてもよい。
【0093】
ある特定の実施形態において、本発明は、上記細菌株が凍結乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、上記細菌株が噴霧乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生きている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生存している、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生存しており、かつ腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記医薬組成物を提供する。
【0094】
いくつかの場合において、凍結乾燥または噴霧乾燥されている細菌株は、投与前に再構成される。いくつかの場合において、再構成は、本明細書に記載されている希釈剤の使用による。
【0095】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含んでいてよい。
【0096】
ある特定の実施形態において、本発明は、本発明の細菌株と;薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤とを含む医薬組成物であって;細菌株が、それを必要とする対象に投与されるとき、障害を処置するのに十分な量であり、当該障害が中枢神経系の自己免疫障害または炎症性障害である、上記医薬組成物を提供する。
【0097】
ある特定の実施形態において、本発明は、上記医薬組成物であって、細菌株の量が、組成物の重量に対してグラム当たり約1×10~約1×1011個のコロニー形成単位である、上記医薬組成物を提供する。
【0098】
ある特定の実施形態において、本発明は、1g、3g、5gまたは10gの用量で投与される、上記医薬組成物を提供する。
【0099】
ある特定の実施形態において、本発明は、経口、直腸、皮下、鼻、頬側、及び舌下からなる群から選択される方法によって投与される、上記医薬組成物を提供する。
【0100】
ある特定の実施形態において、本発明は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される担体を含む上記医薬組成物を提供する。
【0101】
ある特定の実施形態において、本発明は、エタノール、グリセロール及び水からなる群から選択される希釈剤を含む上記医薬組成物を提供する。
【0102】
ある特定の実施形態において、本発明は、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、β-ラクトース、コーンシロップ、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される賦形剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0103】
ある特定の実施形態において、本発明は、防腐剤、酸化防止剤及び安定剤の少なくとも1つをさらに含む、上記医薬組成物を提供する。
【0104】
ある特定の実施形態において、本発明は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルからなる群から選択される防腐剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0105】
ある特定の実施形態において、本発明は、上記細菌株が凍結乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。
【0106】
ある特定の実施形態において、本発明は、組成物が約4℃または約25℃で密閉容器に貯蔵されて容器が50%の相対湿度を有する雰囲気に置かれているとき、コロニー形成単位で測定される細菌株の少なくとも80%が、少なくとも約1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年の期間の後に残存している、上記医薬組成物を提供する。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載されている組成物を含む密閉容器において付与される。いくつかの実施形態において、密閉容器は、サチェまたはボトルである。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載されている組成物を含むシリンジにおいて付与される。
【0108】
本発明の組成物は、いくつかの実施形態において、医薬製剤として付与されてよい。例えば、組成物は、錠剤またはカプセルとして提供されてよい。いくつかの実施形態において、上記組成物は、1つの錠剤もしくはカプセルまたは1を超える錠剤もしくはカプセル、例えば、1、2、3、4、5もしくはそれ以上の錠剤もしくはカプセルの形態で提供され得る。いくつかの実施形態において、カプセルは、ゼラチンカプセル(「gel-cap」)である。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、経口投与される。経口投与は、嚥下を含んでいてよく、その結果、化合物が、胃腸管に入ることになり、かつ/または頬側、舌側、もしくは舌下投与によって化合物が口から直接血流に入ることになる。
【0110】
経口投与に好適な医薬製剤として、固体プラグ、固体微粒子状物、半固体及び液体(多相及び分散系を含む)、例えば錠剤;多-またはナノ-粒子状物を含有する軟質または硬質カプセル、液体(例えば、水溶液)、エマルジョンまたは粉末;ロゼンジ(液体が充填されたものを含む);咀嚼剤;ゲル;急速分散剤形;フィルム;膣坐剤;スプレー;ならびに頬側/粘膜接着パッチが挙げられる。
【0111】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、腸溶性製剤、すなわち、経口投与による腸への本発明の組成物の送達に好適である胃耐性製剤(例えば、胃のpHに耐性)である。腸溶性製剤は、組成物の細菌または別の成分が酸感受性である、例えば、胃条件下で分解しやすいとき、特に有用であり得る。
【0112】
いくつかの実施形態において、腸溶性製剤は、腸溶性コーティングを含む。いくつかの実施形態において、該製剤は、腸溶性コーティングされた剤形である。例えば、該製剤は、腸溶性コーティングされた錠剤または腸溶性コーティングされたカプセルなどであってよい。腸溶性コーティングは、経口送達のための従来の腸溶性コーティング、例えば、錠剤、カプセルなどのための従来のコーティングであってよい。該製剤は、フィルムコーティング、例えば、腸溶性ポリマー、例えば酸不溶性ポリマーの薄膜層を含んでいてよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、腸溶性製剤は、本質的に腸溶性であり、例えば、腸溶性コーティングを必要とすることない胃耐性である。そのため、いくつかの実施形態において、該製剤は、腸溶性コーティングを含まない腸溶性製剤である。いくつかの実施形態において、該製剤は、熱ゲル化材料から作製されたカプセルである。いくつかの実施形態において、熱ゲル化材料は、セルロース系材料、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。いくつかの実施形態において、カプセルは、いずれのフィルム形成ポリマーも含有しないシェルを含む。いくつかの実施形態において、カプセルは、シェルを含み、該シェルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、いずれのフィルム形成ポリマーも含まない(例えば、[32]を参照されたい)。いくつかの実施形態において、該製剤は、本質的に腸溶性のカプセル(例えば、Capsugel製Vcaps(登録商標))である。
【0114】
いくつかの実施形態において、該製剤は、軟質カプセルである。軟質カプセルは、カプセルシェルに存在する軟化剤、例えば、グリセロール、ソルビトール、マルチトール及びポリエチレングリコールなどの添加のおかげで、ある特定の弾性及び柔軟性を有し得るカプセルである。軟質カプセルは、例えば、ゼラチンまたはデンプンベースで製造され得る。ゼラチンベースの軟質カプセルは、種々の供給者から市販されている。例えば経口または経直腸などの投与方法に応じて、軟質カプセルは、種々の形状を有することができ、例えば、円形、楕円形、長方形または魚雷型であり得る。軟質カプセルは、従来のプロセス、例えば、Schererプロセス、Accogelプロセスまたは液滴もしくは発泡プロセスなどによって製造され得る。
【0115】
培養方法
本発明における使用のための細菌株は、例えば、参照文献[33~35]に詳述されている標準の微生物学的技術を使用して培養され得る。
【0116】
培養に使用される固体または液体培地は、例えば、YCFA寒天またはYCFA培地であってよい。YCFA培地として(100ml当たりの近似値):Casitone(1.0g)、酵母エキス(0.25g)、NaHCO(0.4g)、システイン(0.1g)、KHPO(0.045g)、KHPO(0.045g)、NaCl(0.09g)、(NHSO(0.09g)、MgSO・7HO(0.009g)、CaCl(0.009g)、レザズリン(0.1mg)、ヘミン(1mg)、ビオチン(1μg)、コバラミン(1μg)、p-アミノ安息香酸(3μg)、葉酸(5μg)、及びピリドキサミン(15μg)を挙げることができる。
【0117】
総則
本発明の実施は、別途示さない限り、当業者の範囲内の、化学、生化学、分子生物、免疫学及び薬理学の従来の方法を用いる。かかる技術は、文献において完全に説明されている。例えば、参照文献[36~43]などを参照されたい。
【0118】
用語「comprising(含む)」は、「including(含む)」及び「consisting(からなる)」を包含し、例えば、組成物がXを「comprising(含む)」は、Xから排他的になってもよく、またはさらなる何か、例えば、X+Yを含んでいてもよい。
【0119】
数値xに関係する用語「約」は、任意選択的であり、例えば、x±10%を意味する。
【0120】
語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてよい。必要に応じて、語「実質的に」は、本発明の定義から省略されてよい。
【0121】
2つのヌクレオチド配列間の百分率の配列同一性への言及は、整列しているとき、ヌクレオチドの百分率が、2つの配列を比較したときに同じであることを意味する。このアラインメント及びパーセント相同性または配列同一性は、当該分野において公知のソフトウエアプログラム、例えば、参照文献[44]のセクション7.7.18に記載されているものを使用して決定され得る。好ましいアラインメントは、12のギャップオープンペナルティ及び2のギャップエクステンションペナルティ、62のBLOSUMマトリクスによるアフィンギャップ検索を使用してSmith-Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムは、参照文献[45]に開示されている。
【0122】
特に記述されていない限り、多数のステップを含むプロセスまたは方法は、方法の開始及び終了時にさらなるステップを含んでいてよく、またはさらなる介在するステップを含んでいてよい。また、ステップは、適切な場合、代替の順序で、組み合わされ、省略され、または実施されてよい。
【0123】
本発明の種々の実施形態は本明細書に記載されている。各実施形態において特定されている特徴は、他の特定されている特徴と組み合わされて、さらなる実施形態を付与してよいことが認識される。特に、好適な、典型的なまたは好ましいとして本明細書において強調されている実施形態は、互いに組み合わされてよい(これらが互いに排他的であるときを除く)。
【実施例
【0124】
本発明を実施するための形態
実施例1
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、ヒト疾患MSの多くの態様を映すCNS炎症のマウスモデルであり、EAEは、ヒトMSに関して最も一般的に使用されている実験モデルである。EAEもまた、CNS特異的自己免疫性障害[46]、及び急性散在性脳脊髄炎を含めた他の特異的状態のモデルとして、より一般的に使用されている。EAEは、CNSの多くの自己免疫及び炎症性疾患、ならびに特にMSの基礎となるメカニズムに密接に調和する免疫及び炎症反応を誘い出すミエリンペプチド及びアジュバントによる予防接種を使用して誘発する。EAEにおいて効能を示す多くの治療はまた、ヒト患者におけるMSの処置での効能も示す[46]。最も重要なことには、EAEは、炎症、脱髄、軸索喪失及びグリオーシスを含めたMSの重要な特徴を再現する。脱髄の効果は、脳幹及び小脳がほとんど変化することなく、主として、EAEにおいて脊髄に制限される。EAEにおいて、CD4+T細胞は、CNSにおいて見られる主要細胞集団である。
【0125】
方法論
Blautia hydrogenotrophica(受託番号DSM14294で寄託されている株「Blautix」)を凍結乾燥粉末として使用し、必要に応じて再構成した。
【0126】
成体雌性C57BL/6Jマウスを実験群にランダムに割り当て、1週間慣れさせた。全ての群がn=12であった。
【0127】
0日目及び7日目に、群2、3、8及び9の動物に、ガス(イソフルラン)麻酔下で皮下注射によってMycobacterium Tuberculosis H37Raを補充したMOG35-55及び完全フロイントアジュバント(CFA)を含有するエマルジョンを投与した。0日目に、2の皮下注射を脇腹において実施した;背部の下方四半部のそれぞれにおいて1の注射。7日目に、2の皮下注射を脇腹において実施し、背部の上方四半部のそれぞれにおいて1の注射を実施した。
【0128】
0日目及び2日目に、群2、3、8及び9の動物に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の百日咳毒素(PTx)を腹腔内注射によって投与した。0日目に、PTx投与をMOG注射の後に実施した。
【0129】
Blautixまたは対照による処置を、以下のスケジュールに従って-14日目から投与した:
【0130】
【表1】
非該当:当てはまらない、SID:1回/日、PO:経口投与(胃管栄養法)、SC:皮下注射、IP:腹腔内注射、MOG:ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、CFA:完全フロイントアジュバント、PTx:百日咳毒素、PBS:リン酸緩衝生理食塩水
【0131】
処置を調製の15分以内に行った。
【0132】
群3のマウスを陽性対照としての参照デキサメタゾンで処置した。群3では、1mg/kg(5ml/kg)の用量を使用し、マウスを、ビヒクル(PBS)のみによりPO経路を介して-14日目から-1日目まで、1週間に5回(2日オン、1日オフ、3日オン、1日オフ);ならびに、ビヒクル及びデキサメタゾンによりSC経路を介して、0日目から終了まで、1週間に5回(2日オン、1日オフ、3日オン、1日オフ)処置した。
【0133】
Blautixを2×10;100μl/マウスの用量で投与した。
【0134】
-14日目から、動物を1週間当たり3回秤量した。0日目から実験の終了まで、動物を毎日秤量した。0日目から実験の終了まで、動物を尾部及び/または肢の不全麻痺及び麻痺を含めたEAEの臨床的兆候に関して毎日スコアリングした。-14日目及び35日目に、血液サンプルを収集及び処理して血清を単離した。-14日目及び35日目のサンプルを、拘束した動物における尾(尾部)静脈から収集した。サンプルをELISAによる抗MOG抗体のさらなる任意の分析まで-20℃で保存した。35日目に、動物を処分し;脳及び脊髄を切り取り、一方の脳半球及び脊髄を組織固定剤中に移し、パラフィンに埋め込み、任意の組織病理学的分析までまとめて保存した。一方の脳半球を切り取り、瞬間凍結し、次いで-80℃で保存した。35日目に、脾臓を切り取り、秤量し、処理して細胞懸濁液とした。1動物当たり1のアリコートを細胞増殖アッセイに使用した。1動物当たり1のアリコートを瞬間凍結し、次いで-80℃で保存した。
【0135】
35日目に、全盲腸(及びその内容物)を液体窒素において瞬間凍結し、-80℃で保存した。また、以下:盲腸の回腸上流、上行結腸、横行結腸及び下行結腸;のそれぞれの2センチメートルをRNAlater(>10体積)において4℃で一晩凍結し、次いで-80℃で保存した。
【0136】
1日目(ベースライン)及び34日目に、糞便ペレットを各動物から収集し、直ちに瞬間凍結し、次いで-80℃で保存した。
【0137】
非特異的臨床観察
-14日目(最初の処置投与に相当する)から実験の終了まで、動物を、姿勢異常(かがむ)、異常なコート状態(立毛)及び異常な活動レベル(活動の低減または増加)を含む非特異的臨床的兆候について毎日チェックした。異常呼吸を示す動物を直ちに処分した。非特異的臨床的兆候が重篤すぎると判断されたときには、研究の予定された終了よりも前に動物を処分した。
【0138】
臨床的兆候のスコアリング
例示的な提案されている疾患活動スコア観察:
0-非免疫マウスと比較して運動機能の明白な変化なし。
0.5-尾部の先端が弱々しい。
1.0-弱々しい尾部。
1.5-弱々しい尾部及び後脚抑制。
2.0-弱々しい尾部及び後脚の衰弱。
OR-歩行が観察されたときに頭部傾斜の明白な兆候がある。バランスが不十分である。
2.5-弱々しい尾部及び後脚の引きずり。
OR-マウスを時折転倒させる強い頭部傾斜がある。
3.0-弱々しい尾部及び後脚の完全な麻痺。
3.5-弱々しい尾部及び後脚の完全な麻痺。
加えて:マウスがケージの周りを動くが、横向きに寝かせたときには起き上がることができない。
後脚が体の片側と一緒になっている。
4.0-弱々しい尾部、全後脚及び部分的な前脚の麻痺。
マウスがケージの周りを最小限に動いているが、警戒して摂取しているように見える
4.5-全後脚及び部分的な前脚の麻痺、ケージの周りの動作なし。
マウスを直ちに安楽死させてケージから除去する。
5.0 重篤な麻痺ゆえにマウスを安楽死させる。
動物が1または2以上の疾患活動スコアを有するとき、陽性の疾患発生スコアを有するとされる。
【0139】
重篤すぎると判断されたスコアを有する動物を実験の予定された終了よりも前に処分した。瀕死状態に相当する(5)のスコアを有するマウスを、いずれの事象においても直ちに処分した。後肢及び前肢の両方に影響する麻痺に相当する(4)のスコアを有するマウスを、2の連続する事象において処分した。両方の後肢に影響する麻痺に相当する(3)のスコアを有するマウスを、4の連続する事象において処分した。群2の2匹のマウスを実験の終了前にEAEスコアによって終了させた。群3及び8のそれぞれの1匹のマウスを、実験の終了前に臨床観察によって終了させた。群1及び9の全てのマウスを実験の終了時に終了させた。
【0140】
組織病理学
全脳ならびに脊髄の縦及び横断面の切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。切片を実験プロトコルの知識によらずにブラインド方式で評価した。
【0141】
以下の採点法を使用した:
グレード0-組織病理学的に正常。
グレード1-有意な脱髄を伴わない別々の血管周囲細胞浸潤がほとんどない。
グレード2-柔組織及び髄膜に影響する多数の別々の低~中程度の血管周囲細胞浸潤。周囲の柔組織への浸潤の穏やかな展開に関連する個々の軸索の局所脱髄がある場合がある。
グレード3-多数の中程度~高度の血管周囲細胞浸潤が、一体化して柔組織内にかなり展開している場合がある。髄膜も関与している。柔組織内への展開に関連する軸索群の脱髄がある場合がある。
【0142】
結果
臨床スコア
図1a及び2aは、30日目の研究の結果を示す。図1b及び2bは、35日目の研究の結果を示す。群9(Blautix-ビヒクル)は、疾患誘発が成功裏であったこと、及びモデルが群1(対照)と比較して増加した臨床スコアを有するMSの臨床的特徴のいくつかを複製していることを示す。群3(デキサメタゾン)は、臨床的兆候の成功裏の改善を示す陽性対照である。
【0143】
全処置群対ビヒクル(PBS;群2)を比較するためのダネットのpost-hoc試験による二元ANOVAは、時間及び処置の有意な効果ならびに時間及び処置間の相関関係を明らかにした(全てp<0.0001)。濃度曲線下面積(AUC)分析は、両側の対応のない2標本スチューデントt検定によって評価されるように、デキサメタゾン対ビヒクル-PBS対照の有意な効果(p<0.001)を明らかにした。本発明の細菌組成物(群8-Blautix)の投与は、群9及び群2(PBS陰性対照)とも比較して臨床スコアの明らかな低減を付与し、処置の全身の効果及び症状の成功裏の処置ならびにEAEの臨床的発現を実証した。これらのデータは、Blautixが、多発性硬化症ならびに他の中枢神経系の自己免疫または炎症性疾患を処置または予防するのに有用であり得ることを示している。
【0144】
組織病理学
病理組織学的分析は、脊髄及び脳においてこのモデルに関して予期される変化を明らかにした。
【0145】
脊髄。予期されたように、群1は病状を示さず、群2は、最も高い割合の任意の群の動物の最も重篤な病状を示した。群3は、2の動物においてのみ非常に限定された病状を示した。群8及び9は、より均一であり、群2よりも重篤でない病状が、群当たり比較的少数の動物に影響したことを示した。データを、各処置群をビヒクル(PBS)群と比較するマンホイットニー試験を使用して分析した。この分析は、ビヒクル(PBS)群と比較してデキサメタゾン及びBlautix群において病状の有意な減少を明らかにした(それぞれp<0.001及びp<0.05;図3)。
【0146】
図4は、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した脊髄切片の代表的な写真を示す。A.マウス1.12、脊髄×10。組織学的異常がない。B及びC.マウス2.7、脊髄×10及び×20。局所血管周囲細胞浸潤による重篤な広汎性炎症及び末梢白質脱髄。D.マウス3.3、脊髄×20。末梢白質における別々の病巣炎症。H.マウス8.3、脊髄×20。球状物及び広汎性炎症による著しい脱髄。I.マウス9.3、脊髄×10。広汎性炎症、脱髄及び球状物形成。
【0147】
脳。群1動物は組織学的変化を示さず、罹患した動物が1匹のみであり非常に低い平均病状スコアである群3においては無視できるほどの変化があった。群2、8及び9において同様の平均重篤度スコアであったが、群2と比較して群8及び9において罹患した動物がより少なかった。脊髄データといくらかの相関関係があった(すなわち、群1が正常であり、群3が限定された病状である)が、いくらかの差異もあった(すなわち、群2は最も重篤な脊髄の病状を有するが、脳においては有さない)。このことは、このモデルにおいて予想外ではなく、脊髄の病状が、多くの場合、群内で脳において起こるものよりも一貫性がある。マンホイットニー試験は、図3に示すように、ビヒクル(PBS)群と比較してデキサメタゾン群において有意により低い脳の病状スコアを明らかにした(p<0.05)。
【0148】
図5は、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した脳切片の代表的な写真を示す。A.マウス1.1×10、正常な小脳。B.マウス2.7×10、スコア3。血管周囲細胞浸潤及び一体化する肉芽腫性炎症の小脳白質。H.マウス8.5×10、スコア2。より穏やかな広汎性炎症の小脳白質を伴う別々の血管周囲細胞浸潤。I.マウス9.1×10、スコア3。広汎性炎症の小脳白質を伴う複数の血管周囲細胞浸潤。
【0149】
結論として、Blautixは、ビヒクル(PBS)と比較して脊髄の病状を有意に改善した。Blautixはまた、脊髄においても炎症を統計的に有意に低減した。脳において陽性結果を示す強い傾向もあった。
【0150】
抗MOG抗体分析
-14日目及び実験終了の際に、血液サンプルを収集及び処理して血清を単離した。-14日目及び35日目に、血液サンプルを、拘束した動物において尾(尾部)静脈から収集した(全血液体積の10%を超えない)。血清サンプルをさらなる分析まで-20℃で保存した。全ての動物からのベースラインの血清サンプル及び最終の血清サンプルをELISAによって抗ペプチド(MOG)全IgG抗体について分析し、各群のコーティング抗原が、予防接種に使用したペプチド(MOG)であった。
【0151】
複数の比較のためのダネットのpost試験が続く一元ANOVAを使用して、ビヒクル-PBSとEAE動物との間、ビヒクルPBSとデキサメタゾン処置動物との間、及びBlautixのビヒクルとBlautix処置動物との間の差を求めた。
【0152】
-14日目の動物からの血清は、ナイーブ動物で予期されたように、MOG35-55ペプチドにIgG抗体反応を示さなかった。35日目の動物からの血清は、対照群動物と比較して全てのEAE群においてMOG35-55へのIgG抗体反応の増加を示した(図9)。増加した抗体反応は、EAEモデルにおいて予期される、各群内での抗体力価の変動に起因して、統計的に有意ではなかった。
【0153】
これらのデータにより、モデルによって得られる疾患誘発が、中枢神経系の自己免疫疾患及び炎症性疾患の病状と関係することが確認される。
【0154】
T細胞増殖
35日目に、群2、3、8及び9からの脾臓を切り取り、処理して単一の細胞懸濁液とした。脾細胞をMOG35-55ペプチドの存在及び非存在下に3日間培養し、トリチウム化チミジンの取り込みを定量化して細胞増殖のレベルを明らかにした。非刺激及び抗CD3/抗CD28(陽性対照)刺激対照培養物も確立させた。
【0155】
複数の比較のためのシダックのpost試験が続く二元ANOVAを使用して、in vivo処置群内での差を求めた。複数の比較のためのダネットのpost試験が続く二元ANOVAを使用して、ex vivo処置群(培地、MOG35-55または抗CD3/CD8)内での差を求めた。有意な差は、培地及びMOG35-55刺激サンプル間では見られなかったが、培地及びMOG35-55の両者間では見られ、抗CD3/CD28刺激の統計的有意差を見出した(p<0.0001)。これにより、細胞が刺激後に強い増殖反応を生じる能力が確認される(データは示さず)。
【0156】
35日目の脾細胞におけるMOG T細胞増殖反応は、上記の非刺激(培地のみ)増殖反応よりも増加した(図10)。抗CD3/CD28刺激への増殖反応を有意に増加させ(p<0.0001)、脾細胞の生存率、及び高度に陽性の刺激によって強く増殖する能力が確認された。
【0157】
これらのデータにより、モデルによって得られる疾患誘発が、中枢神経系の自己免疫疾患及び炎症性疾患の病状と関係することが確認される。
【0158】
実施例2-SCFA産生健常ラットに対する細菌凍結乾燥物の効果
健常なHIMラットにおけるSCFA産生に対するBlautia hydrogenotrophica株DSM14294の凍結乾燥物の慢性投与の効果を研究した。結果を図6において報告する。実験に関するさらなる詳細は、図の詳細な説明において上記に提供されている。図6は、BHの投与が、アセテートの有意な増加ならびにブチレート産生を誘発することを示している。
【0159】
実施例3-ヒト微生物叢関連ラット(HMAラット)モデルにおいて研究したB.hydrogenotrophicaの効能
概要
16匹の無菌ラット群(対照群における8匹のラット及び処置群における8匹のラットを含む)にヒトIBS対象からの糞便微生物叢を接種した(IBS-HMAラット)。3つの一連の実験を、3の異なるIBS患者からの糞便サンプルを使用して実施した。2の他のラット群(n=10)に、内臓感受性対照として、健常な対象の糞便サンプルを接種した(n=2対象;2群の健常-HMAラット)。これにより、24匹のIBS-微生物叢関連ラット(対照)、24匹のBlautix処置IBS微生物叢関連ラット及び20匹の健常-微生物叢関連ラットが存在した。次いでIBS-HMAラットの半分に本発明によるB.hydrogenotrophicaの細菌株を含む組成物を28日間投与した一方で、他の半分の動物には対照溶液を与えた。
【0160】

Blautia hydrogenotrophica(BH)株DSM14294。
【0161】
組成物及び投与
BH凍結乾燥物を無菌の鉱物溶液中で1010細菌/mlの濃度に懸濁した。2mlのこの溶液を経口胃管栄養法によってIBS-HMAラットにつき毎日28日間投与した。
【0162】
対照溶液は、IBS-HMAラットの対照群に経口胃管栄養法によって毎日(2ml/ラット)投与した無菌の鉱物溶液であった。
【0163】
ラット
無菌雄性Fisherラット(10週齢)に、IBS対象からのヒト糞便微生物叢を接種した(IBS-HMAラット)。16匹のラットに同じヒト糞便接種材料を接種した。3つの一連の実験を、3の異なるIBS対象からの糞便サンプルを用いて実施した。2の他の群の10匹のラットに、2の健常な対象(正常感受性対照群)からの糞便サンプルを接種した。
【0164】
研究設計
-14日目-無菌ラットにヒト糞便微生物叢を接種。
0~28日目-経口胃管栄養法による、1日用量のBH凍結乾燥物(アッセイ群)または対照溶液(対照群)
14~22日目の間-電極を腹部内に埋め込む手術(膨張アッセイ用)
22~28日目-膨張試験に関連するストレスを回避するためのラットの適応。
28日目-膨張アッセイ、ならびに動物を安楽死させてスルフィド及び短鎖脂肪酸(SCFA)分析用の盲腸サンプルを収集。
0、14及び28日目-微生物分析用の糞便サンプルの収集:BH集団及び他の共生微生物群の評価のためのqPCR、ならびに選択培地及び偏性嫌気性方法を使用した微生物の機能群の計数。
【0165】
結果
図7は、対照溶液またはBH凍結乾燥物が与えられたIBS-HMAラットからの糞便サンプルのB.hydrogenotrophica集団のqPCR分析の結果を表す。BH凍結乾燥物が与えられたラットにおいて投与期間の最後(28日目)にBH集団の有意な増加が観察され、結腸におけるBHの成功裏の送達を確認した。
【0166】
図8は、IBS-HMAラットの盲腸サンプルにおける主な発酵代謝産物である短鎖脂肪酸に対するBHの投与の影響について報告する。BHの投与は、アセテート濃度の有意な増加及びブチレート濃度の有意な増加を結果として生じさせた(図8B)。
【0167】
実施例4-安定性試験
本明細書に記載されている少なくとも1つの細菌株を含有する本明細書に記載されている組成物を25℃または4℃で密閉容器に保存し、当該容器を30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%の相対湿度を有する雰囲気に置く。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年後、細菌株の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%が、標準プロトコルによって決定されるコロニー形成単位で測定されるように残存する。
【0168】
配列
配列番号1(Blautia hydrogenotrophica株S5a36 16SリボソームRNA遺伝子、部分配列-X95624.1)
1 gatgaacgct ggcggcgtgc ttaacacatg caagtcgaac gaagcgatag agaacggaga
61 tttcggttga agttttctat tgactgagtg gcggacgggt gagtaacgcg tgggtaacct
121 gccctataca gggggataac agttagaaat gactgctaat accgcataag cgcacagctt
181 cgcatgaagc ggtgtgaaaa actgaggtgg tataggatgg acccgcgttg gattagctag
241 ttggtgaggt aacggcccac caaggcgacg atccatagcc ggcctgagag ggtgaacggc
301 cacattggga ctgagacacg gcccaaactc ctacgggagg cagcagtggg gaatattgca
361 caatggggga aaccctgatg cagcgacgcc gcgtgaagga agaagtatct cggtatgtaa
421 acttctatca gcagggaaga aagtgacggt acctgactaa gaagccccgg ctaattacgt
481 gccagcagcc gcggtaatac gtaaggggca agcgttatcc ggatttactg ggtgtaaagg
541 gagcgtagac ggtttggcaa gtctgatgtg aaaggcatgg gctcaacctg tggactgcat
601 tggaaactgt cagacttgag tgccggagag gcaagcggaa ttcctagtgt agcggtgaaa
661 tgcgtagata ttaggaggaa caccagtggc gaaggcggcc tgctggacgg taactgacgt
721 tgaggctcga aagcgtgggg agcaaacagg attagatacc ctggtagtcc acgctgtaaa
781 cgatgaatac taggtgtcgg gtggcaaagc cattcggtgc cgcagcaaac gcaataagta
841 ttcccacctg gggagtacgt tcgcaagaat gaaactcaaa ggaattgacg gggacccgca
901 caagcggtgg agcatgtggt ttaattcgaa gcaacgcgaa gaaccttacc aaatcttgac
961 atccctctga ccgggaagta atgttccctt ttcttcggaa cagaggagac aggtggtgca
1021 tggttgtcgt cagctcgtgt cgtgagatgt tgggttaagt cccgcaacga gcgcaaccct
1081 tattcttagt agccagcagg tagagctggg cactctaggg agactgccag ggataacctg
1141 gaggaaggtg gggatgacgt caaatcatca tgccccttat gatttgggct acacacgtgc
1201 tacaatggcg taaacaaagg gaagcgaagg ggtgacctgg agcaaatctc aaaaataacg
1261 tctcagttcg gattgtagtc tgcaactcga ctacatgaag ctggaatcgc tagtaatcgc
1321 gaatcagaat gtcgcggtga atacgttccc gggtcttgta cacaccgccc gtcacaccat
1381 gggagtcagt aacgcccgaa gtcagtgacc caaccnaaag gagggagctg ccgaaggtgg
1441 gactgataac tggggtga
参照文献
[1] Spor et al.(2011) Nat Rev Microbiol.9(4):279-90.
[2] Eckburg et.al(2005) Science.10;308(5728):1635-8.
[3] Tap et al.(2009) Environ Microbiol,ll(10):2574-84
[4] Macpherson et al.(2001) Microbes Infect.3(12):1021-35
[5] Macpherson et al.(2002) Cell Mol Life Sci.59(12):2088-96.
[6] Mazmanian et al.(2005) Cell 15;122(1):107-18.
[7] Frank et al.(2007) PNAS 104(34):13780-5.
[8] Scanlan et al.(2006) J Clin Microbiol.44(11):3980-8.
[9] Kang et al.(2010) Inflamm Bowel Dis.16(12):2034-42.
[10] Machiels et al.(2013) Gut.63(8):1275-83.
[11] Mayer et al(2014) The Journal of Neuroscience 34(46):15490 -15496
[12] Cryan and Dinan(2015) Neuropsychopharmacology,40:241-2.
[13] WO 2013/050792
[14] WO 03/046580
[15] WO 2013/008039
[16] WO 2014/167338
[17] Lee and Lee(2014) World J Gastroenterol.20(27):8886-8897.
[18] WO2016/143961
[19] WO2014/201037
[20] Liu et al.(2008) Int J Syst Evol Microbiol 58,1896-1902.
[21] Bemalier et al.(1996) Arch.Microbiol.166(3),176-183.
[22] Masco et al.(2003) Systematic and Applied Microbiology,26:557-563.
[23] Srutkova et al.(2011) J.Microbiol.Methods,87(l):10-6.
[24] Gray & Dangond(2006) Epigenetics,1:2,67-75
[25] Miyamoto-Shinohara et al.(2008) J.Gen.Appl.Microbiol.,54,9-24.
[26] Cryopreservation and Freeze-Drying Protocols,ed.by Day and McLellan,Humana Press.
[27] Leslie et al.(1995) Appl.Environ.Microbiol.61,3592-3597.
[28] Mitropoulou et al.(2013) J Nutr Metab.(2013) 716861.
[29] Kailasapathy et al.(2002) Curr Issues Intest Microbiol.3(2):39-48.
[30] Handbook of Pharmaceutical Excipients,2nd Edition,(1994),Edited by A Wade and PJ Weller
[31] Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)
[32] US 2016/0067188
[33] Handbook of Microbiological Media,Fourth Edition(2010) Ronald Atlas,CRC Press.
[34] Maintaining Cultures for Biotechnology and Industry(1996) Jennie C.Hunter-Cevera,Academic Press
[35] Strobel(2009) Methods Mol Biol.581:247-61.
[36] Gennaro(2000) Remington:The Science and Practice of Pharmacy.20th edition,ISBN:0683306472.
[37] Molecular Biology Techniques:An Intensive Laboratory Course,(Ream et al.,eds.,1998,Academic Press).
[38] Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan,eds.,Academic Press,Inc.)
[39] Handbook of Experimental Immunology,Vols.I-IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds,1986,Blackwell Scientific Publications)
[40] Sambrook et al.(2001) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press).
[41] Handbook of Surface and Colloidal Chemistry(Birdi,K.S.ed.,CRC Press,1997)
[42] Ausubel et al.(eds)(2002) Short protocols in molecular biology,5th edition(Current Protocols).
[43] PCR(Introduction to Biotechniques Series),2nd ed.(Newton & Graham eds.,1997,Springer Verlag)
[44] Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987) Supplement 30
[45] Smith & Waterman(1981) Adv.Appl.Math.2:482-489.
[46] Constantinescu et al.(2011) Br J Pharmacol.164(4):1079-1106
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
0007212945000001.app