(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】取付器具、屋根構造、および壁構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/36 20060101AFI20230119BHJP
E04F 13/22 20060101ALI20230119BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E04D3/36 B
E04F13/22
E04F13/08 101S
(21)【出願番号】P 2020065960
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591188941
【氏名又は名称】株式会社サカタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】栗林 秀光
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-065506(JP,A)
【文献】特許第4851787(JP,B2)
【文献】特許第6473264(JP,B1)
【文献】実公昭60-006118(JP,Y2)
【文献】特開2008-063872(JP,A)
【文献】意匠登録第1634584(JP,S)
【文献】意匠登録第1351745(JP,S)
【文献】意匠登録第1286642(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00-13/18
E04F 13/08-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材を支持部材に取り付けるための取付器具であって、
前記支持部材と前記支持部材を固定するための締結部材との間に挿入される底板部と、
前記被取付部材が固定される上板部と、
前記底板部と前記上板部とを接続する接続部と
を備え、
前記底板部は、第1の板状部材の一部であり、
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を少なくとも1回折り返すことによって形成されており、
前記上板部の少なくとも一部の厚さは前記底板部の厚さより厚い、取付器具。
【請求項2】
前記上板部と前記底板部とは対向するよう配置されており、
前記上板部のうちの前記底板部とは反対側の表面が、前記被取付部材が固定される面である、請求項1に記載の取付器具。
【請求項3】
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を前記底板部の側に折り返すことによって形成されている、請求項
1または2に記載の取付器具。
【請求項4】
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を前記底板部と反対の側に折り返すことによって形成されている、請求項
1または2に記載の取付器具。
【請求項5】
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を一回のみ折り返すことによって形成されている、請求項
3または
4に記載の取付器具。
【請求項6】
前記底板部は、第1の板状部材の一部であり、
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を、前記締結部材に対する前記底板部の挿入方向に交差する方向に沿った少なくとも1つの折り目で折り返すことによって形成されている、請求項1または2に記載の取付器具。
【請求項7】
前記上板部は、
前記少なくとも1つの折り目として複数の折り目を有し、前記第1の板状部材の他の一部を、前記複数の折り目で同じ方向に折り返すことによって形成されている、請求項
6に記載の取付器具。
【請求項8】
前記底板部は、第1の板状部材の一部であり、
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を、前記締結部材に対する前記底板部の挿入方向に沿った少なくとも1つの折り目で折り返すことによって形成されている、請求項1または2に記載の取付器具。
【請求項9】
被取付部材を支持部材に取り付けるための取付器具であって、
前記支持部材と前記支持部材を固定するための締結部材との間に挿入される底板部と、
前記被取付部材が固定される上板部と、
前記底板部と前記上板部とを接続する接続部と
を備え、
前記底板部は、第1の板状部材の一部であり、
前記上板部
のうちのビスがねじ込まれる部分は、前記第1の板状部材の他の一部と、前記第1の板状部材の他の一部の表面に固定された補強部材とを含
み、
前記上板部と前記ビスとの結合強度が増大するように前記底板部の厚さより厚い構造となっている、取付器具。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の取付器具を備えた屋根構造であって、
前記支持部材として屋根部材を備えている、屋根構造。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の取付器具を備えた壁構造であって、
前記支持部材として壁部材を備えている、壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付器具、屋根構造、および壁構造に関し、特に、被取付部材を屋根部材あるいは壁部材などの支持部材に取り付けるための取付器具、この取付器具を備えた屋根構造、およびこの取付器具を備えた壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、既設の屋根に新設の屋根を取り付けるための取付金具(改修金具)として、既設の屋根とその締結部材との間に挿入される底板部と、新規の屋根が固定される上板部とを有する打込みピースがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、従来の取付金具は、一枚の板材から構成されており、板材を薄くすれば底板部を既設の屋根とその締結部材との間に挿入しやすくなり施工性が向上する反面、被固定部材を固定する上板部への取付強度が低下してしまうこと、逆に板材を厚くすれば被固定部材を固定する上板部の取付強度が向上する反面、底板部を既設の屋根とその締結部材との間に挿入しにくくなり施工性が低下してしまうという課題を初めて見出した。
【0005】
本発明は、支持部材に被支持部材を取り付ける際の施工性と取付強度との両立を可能とする取付器具、このような取付器具を備えた屋根構造、およびこのような取付器具を備えた壁構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
被取付部材を支持部材に取り付けるための取付器具であって、
前記支持部材と前記支持部材を固定するための締結部材との間に挿入される底板部と、
前記被取付部材が固定される上板部と、
前記底板部と前記上板部とを接続する接続部と
を備え、
前記上板部の少なくとも一部の厚さは前記底板部の厚さより厚い、取付器具。
(項目2)
前記上板部と前記底板部とは対向するよう配置されており、
前記上板部のうちの前記底板部とは反対側の表面が、前記被取付部材が固定される面である、項目1に記載の取付器具。
(項目3)
前記底板部は、第1の板状部材の一部であり、
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を少なくとも1回折り返すことによって形成されている、項目1または2に記載の取付器具。
(項目4)
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を前記底板部の側に折り返すことによって形成されている、項目3に記載の取付器具。
(項目5)
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を前記底板部と反対の側に折り返すことによって形成されている、項目3に記載の取付器具。
(項目6)
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を一回のみ折り返すことによって形成されている、項目4または5に記載の取付器具。
(項目7)
前記底板部は、第1の板状部材の一部であり、
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を、前記締結部材に対する前記底板部の挿入方向に交差する方向に沿った少なくとも1つの折り目で折り返すことによって形成されている、項目1または2に記載の取付器具。
(項目8)
前記上板部は、前記複数の折り目を有し、前記第1の板状部材の他の一部を、前記複数の折り目で同じ方向に折り返すことによって形成されている、項目7に記載の取付器具。
(項目9)
前記底板部は、第1の板状部材の一部であり、
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部を、前記締結部材に対する前記底板部の挿入方向に沿った少なくとも1つの折り目で折り返すことによって形成されている、項目1または2に記載の取付器具。
(項目10)
前記底板部は、第1の板状部材の一部であり、
前記上板部は、前記第1の板状部材の他の一部と、前記第1の板状部材の他の一部の表面に固定された補強部材とを含む、項目1または2に記載の取付器具。
(項目11)
項目1~10のいずれか一項に記載の取付器具を備えた屋根構造であって、
前記支持部材として屋根部材を備えている、屋根構造。
(項目12)
項目1~10のいずれか一項に記載の取付器具を備えた壁構造であって、
前記支持部材として壁部材を備えている、壁構造。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、支持部材に被支持部材を取り付ける際の施工性と取付強度との両立を可能とする取付器具、このような取付器具を備えた屋根構造、およびこのような取付器具を備えた壁構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の取付器具における上板部の折り目を説明するための斜視図であり、
図1(a)は、締結部材に対する取付器具の挿入方向に交差する方向に沿った折り目を示し、
図1(b)は、締結部材に対する取付器具の挿入方向に沿った折り目を示す。
【
図1A】
図1Aは、本発明の取付器具の上板部を構成する板状部材の折り曲げ方法を説明するための図であり、
図1A(a)~
図1A(c)は、板状部材を2つの折り目Lb1、Lb2で底板部の側に折り曲げる手順を示す。
【
図1B】
図1Bは、本発明の取付器具の上板部を構成する板状部材の折り曲げ方法を説明するための図であり、
図1B(a)~
図1B(c)は、板状部材を2つの折り目Lb1、Lb2で底板部とは反対の側に折り曲げる手順を示す。
【
図1C】
図1Cは、本発明の取付器具の上板部を構成する板状部材の折り曲げ方法を説明するための図であり、
図1C(a)~
図1C(c)は、板状部材を1つの折り目Lb1で底板部の側に折り曲げ、もう1つの折り目Lb2で底板部とは反対の側に折り曲げる手順を示す。
【
図1D】
図1Dは、本発明の取付器具の上板部を構成する板状部材の折り曲げ方法を説明するための図であり、
図1D(a)~
図1D(c)は、板状部材を1つの折り目Lb1で底板部とは反対の側に折り曲げ、もう1つの折り目Lb2で底板部の側に折り曲げる手順を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1による取付器具100を説明するための斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2Aに示す取付器具100を説明するための平面図であり、
図3(a)~
図3(e)は、
図2Aの取付器具をA~E方向から見た構造を示す。
【
図4】
図4は、
図2Aに示す取付器具100を用いた屋根修復方法の一例を説明するための斜視図であり、取付器具100を取り付ける既設の波板スレート屋根(支持部材)10を示す。
【
図5】
図5は、
図2Aに示す取付器具100を用いた屋根修復方法の一例を説明するための斜視図であり、取付器具100を
図4に示す既設の波板スレート屋根10に取り付けた状態を示す。
【
図7】
図7は、
図2Aに示す取付器具100を用いた屋根修復方法の一例を説明するための斜視図であり、
図7(a)は、
図5に示す既設の波板スレート屋根10に新たな金属製折板屋根(被支持部材)20を設置する様子を示し、
図7(b)は、
図7(a)のR2部分における母屋部材50と平行な縦断面の構造を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、取付器具の上板部にねじ込まれたビスの引張り試験の結果を説明するための図であり、上板部が板状部材の折り返し部分を含まない場合(折り返しなし)、上板部が板状部材の底板部側への折り返し部分を含む場合(上側へ折り返し)、上板部が板状部材の底板部と反対側への折り返し部分を含む場合(下側へ折り返し)のそれぞれに関して試験前後での取付器具の形状変化を概念的に示している。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態2による取付器具200を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0010】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0011】
本発明は、支持部材に新たな屋根部材などの被支持部材を取り付ける際の施工性と取付強度との両立を可能とする取付器具を得ることを課題とし、
被取付部材を支持部材に取り付けるための取付器具であって、
支持部材と支持部材を固定するための締結部材との間に挿入される底板部と、
被取付部材が固定される上板部と、
底板部と上板部とを接続する接続部と
を備え、
上板部の少なくとも一部の厚さは底板部の厚さより厚い、取付器具を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0012】
従って、本発明の取付器具は、被取付部材が固定される上板部の少なくとも一部を、支持部材とその固定のための締結部材との間に挿入される底板部よりも厚くしたものであれば、その他の構成は限定されるものではなく、任意であり得る。
【0013】
(取付器具の具体的な構成例)
取付器具は、底板部と、上板部と、底板部と上板部とを接続する接続部とを備えている。
【0014】
取付器具は、一つの板状部材(第1の板状部材)で構成されていてもよいし、あるいは、二つ以上の部材(例えば、第1の板状部材と補強部材)で構成されていてもよい。
【0015】
取付器具が第1の板状部材で構成されている場合、取付器具の底板部は、第1の板状部材の一部であり、取付器具の上板部は、第1の板状部材の他の一部であって少なくとも1回折り返されている。折り返されることによって上板部の厚みは底板部の厚みよりも厚くすることができる。
【0016】
また、折り返す向きは任意であり得る。例えば、上板部は、第1の板状部材の他の一部を底板部の側に折り返すことによって形成されていてもよいし、あるいは、上板部は、第1の板状部材の他の一部を底板部とは反対の側に折り返すことによって形成されていてもよい。好ましくは、第1の板状部材の他の一部を底板部の側に折り返す。このようにすることで、
図7Aで説示するように、さらに取付強度を向上させることが可能となる。
【0017】
また、折り返す際の折り目の向きも任意であり得る。例えば、
図1(a)に示すように、第1の板状部材の他の一部を、締結部材に対する底板部の挿入方向Yに交差する方向(例えば、直交する方向)Xに沿った折り目Lbxで折り返して上板部を形成してもよいし、
図1(b)に示すように、第1の板状部材の他の一部を、締結部材に対する底板部の挿入方向Yに沿った折り目Lbyで折り返して上板部を形成してもよい。
【0018】
このようにして形成された上板部における折り目の数(折り返す回数)も任意であり得、1つでもあるいは2以上でもよい。
【0019】
すなわち、上板部を構成する第1の板状部材を1つの折り目のみで(一回のみ)折り返してもよい。この場合は、
図1に示すように底板部とは反対側に折り返してもよいし、あるいは底板部の側に折り返してもよい。また、この場合、折り目は、締結部材に対する底板部の挿入方向Yに交差する方向(例えば、直交する方向)Xに沿った折り目Lbx(
図1(a)参照)でもよいし、締結部材に対する底板部の挿入方向Yに沿った折り目Lby(
図1(b)参照)でもよい。
【0020】
また、上板部を構成する第1の板状部材を複数の折り目で(つまり、複数回)折り返してもよい。この場合は、第1の板状部材を複数の折り目で同じ方向に折り返してもよいし、あるいは複数の折り目で異なる方向に折り返してもよい。
【0021】
例えば、上板部を構成する第1の板状部材の折り目を締結部材に対する底板部の挿入方向Yに直交する方向Xに沿った折り目とすると、第1の板状部材を複数の折り目で同じ方向に折り返す場合としては、
図1A(a)~(c)に示すように、第1の板状部材のうちの上板部を構成する部分を複数の折り目(2つの折り目Lb1、Lb2)で底板部の側に折り返す場合と、
図1B(a)~(c)に示すように、第1の板状部材のうちの上板部を構成する部分を複数の折り目(2つの折り目Lb1、Lb2)で底板部とは反対の側に折り返す場合とが挙げられる。
【0022】
また、上板部を構成する第1の板状部材の折り目を締結部材に対する底板部の挿入方向に直交する方向に沿った折り目とすると、第1の板状部材を複数の折り目で異なる方向に折り返す場合としては、
図1C(a)~(c)に示すように、第1の板状部材のうちの上板部を構成する部分を第1の折り目Lb1で底板部の側D1に折り返し、第2の折り目Lb2で底板部とは反対の側D2に折り返す場合と、
図1D(a)~(c)に示すように、第1の板状部材のうちの上板部を構成する部分を第1の折り目Lb1で底板部とは反対の側D2に折り返し、第2の折り目Lb2で底板部の側D1に折り返す場合とが挙げられる。
【0023】
また、上板部を構成する第1の板状部材を、締結部材に対する底板部の挿入方向Yに沿った折り目で折り返す場合でも、上述したとおり、2つ以上の折り目で同じ方向に折り返してもよいし(
図1A、
図1B参照)、異なる方向に折り返してもよい(
図1C、
図1D参照)ことは言うまでもない。
【0024】
さらに、上板部は、折り返しにより重なった部分同士を固着手段で固着してもよい。このようにすることでさらに、取付強度を高めることが可能となる。固着手段は任意でありえる。例えば、接着剤による接着、溶接による接着、ロウ付けによる接着、あるいは、かしめによる固定のうちの少なくとも1つによって固定されていてもよい。このようにすることで、取付強度を向上させることが可能となる。特に、折り返す向きが第1の板状部材の他の一部を底板部とは反対の側に折り返す場合には、上板部の下側の部分も上側の部分に追従することになり、有効である。
【0025】
取付器具が、二つ以上の部材で構成されている場合、取付器具は、第1の板状部材と補強部材で構成されていてもよい。この場合、取付器具の底板部は、第1の板状部材の一部であり、上板部は、第1の板状部材の他の一部と、第1の板状部材の他の一部の表面に固定された補強部材とを含んでいる。ここで、第1の板状部材の他の一部の表面は、第1の板状部材の底板部側の面する面でもよいし、第1の板状部材の底板部とは反対側の面でもよい。第1の板状部材への補強部材の固着方法は、任意であり得る。例えば、接着剤による接着、溶接による接着、ロウ付けによる接着、あるいは、かしめによる固定のうちの少なくとも1つによって固定されていてもよい。このようにすることで、取付強度を向上させることが可能となる。
【0026】
底板部は、支持部材と支持部材を固定するための締結部材との間に挿入するための切欠部を有する。切欠部の形状は任意であり得る。例えば、U字形状、V字形状、L字形状などであってもよい。
【0027】
さらに、底板部のうちの切欠部に隣接する両内縁部の厚みは、切欠部に近いほど、かつ底板部の外縁に近いほど、薄くなるテーパ形状とするのが好ましい。底板部のうちの切欠部に隣接する両内縁部をこのようにテーパ形状とすることで、底面部を支持部材とその固定のための締結部材との間に挿入しやすくすることが可能となる。
【0028】
底板部の厚さは、任意であり得る。一般的には約2mm~約2.3mmであるが、本発明の取付器具の実施形態において、底板部の厚さは約1.6mmである。厚さを薄くすることで支持部材と支持部材を固定するための締結部材との間に挿入する施工性を向上させることが可能となる。
【0029】
上板部は被固定部材を固定する部分を有する。上板部は被固定部材を固定する締結部材を貫通させる穴を予め備えていてもよいし、施工時に穴を加工する場合であってもよいし、上板部のうちの被固定部材を固定する部分は、ビスなどの締結部材のねじ込みにより穴が形成されるものでもよい。
【0030】
上板部の厚さは、少なくとも一部(被固定部材を固定する部分)の厚さが底板部の厚さよりも厚くなっている。
【0031】
上板部の厚さを厚くする方法は、任意であり得る。例えば、上述したように、第1の部材の他の一部を折り返すことで達成してもよいし、第1の板状部材に補強部材を固定することで達成してもよい。このようにすることで、被固定部材の取付強度を確保しつつ、第1の板状部材の厚みを薄くできる。第1の板状部材の厚みを薄くすることで、底板部を支持部材と支持部材を固定する締結部材との間に差し込みやすくなり、取付器具の軽量化も図れる。その結果、施工性の向上と屋根への負荷軽減が可能となる。
【0032】
また、折り返す回数は上述したように任意であり得る。例えば、1回であってもよいし、2回以上の複数であってもよい。好ましくは、折り返しは一回のみである。1回のみの折り返しであっても、被取付部材の取付強度の向上が図れるとともに、製造を容易に行うことが可能となる。
【0033】
上板部において、被固定部材をどの面で固定するかは任意であり得る。例えば、上板部の底板部側に面する表面で固定してもよいし、上板部の底板部側とは反対側に面する表面で固定してもよい。1つの実施形態において、上板部の底板部とは反対側に面する表面で、被取付部材を固定する。
【0034】
ここで、取付器具を構成する部材(第1の板状部材および補強部材)の材質は、金属であってもよいし、熱硬化性の樹脂材料であってもよい。金属材料としては、鉄、アルミニウム、ステンレス、チタンなどがあり、硬質の樹脂材料としては、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、あるいは、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などがある。第1の板状部材と補強部材とは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0035】
また、補強部材の形状は任意であり得る。1つの実施形態において、板状であるが、本発明はこれに限定されない。
【0036】
(支持部材の例)
支持部材は、例えば、建造物の屋根であり、建造物の屋根は、例えば、波板スレートなどのスレート屋根、折板屋根などの金属屋根、コンクリート製の屋根、瓦葺の屋根である。また、支持部材は、建物の屋根に限らず、建造物の壁であってもよい。さらに、支持部材は、柱、基礎(具体的には、鉄筋コンクリートの基礎)であってもよいし、あるいは、建造物以外の構造物の一部であってもよい。
【0037】
(被取付部材の例)
被取付部材は、取付器具を介して支持部材に取り付けられるものであれば任意であり得る。例えば、支持部材が建造物の屋根である場合は、被取付部材は、新設の屋根や屋根上に設置される設備(屋根上設備)である。新設の屋根には、波板スレート屋根や折板金属屋根などがある。また、屋根上設備には、例えば、太陽電池モジュール(ソーラーパネル)、空調装置、アンテナ、避雷針、緑化屋根用プランターなどがある。また、被取付部材は、新設の屋根や屋根上設備を取り付けるための架台やフレーム部材であってもよい。また、支持部材が建造物の壁である場合は、被取付部材は、新設の壁やその壁面上に設置される設備(壁面設置設備)である。壁面設置設備には、屋根上設備と同様な機器や部材がある。
【0038】
さらに、本発明の取付器具は、支持部材として既存の屋根を有する屋根構造において、既存の屋根に新規な屋根などの被取付部材を取り付ける取付器具として用いることができ、さらに、支持部材として既存の壁を有する壁構造において、既存の壁に新規な壁などの被取付部材を取り付ける取付器具として用いることができる。
【0039】
ただし、以下の実施形態の取付器具の説明では、取付器具は、屋根構造に用いられたものであって、金属材料(鉄に亜鉛めっきを施したもの)で構成されたものとする。特に、実施形態1では、取付器具は、底板部、上板部および接続部のすべてが一つの板状部材(第1の板状部材)で構成されたものとし、上板部は、取付器具の挿入方向に直交する方向に沿った折り目で板状部材を底板部の側に1回のみ折り返されたものとする。実施形態2では、取付器具は、底面部および接続部が第1の板状部材の一部で構成され、上板部が第1の板状部材の他の一部と補強部材とで構成されたものとする。
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0041】
(実施形態1)
図2は、本発明の実施形態1による取付器具100を説明するための斜視図である。
【0042】
本実施形態1の取付器具100は、被取付部材20を支持部材10に取り付けるための取付器具である。この取付器具100は、支持部材10と支持部材10を固定するための締結部材60との間に挿入される底板部110と、被取付部材20が固定される上板部120と、底板部110と上板部120とを接続する接続部130とを備えている。
【0043】
この取付器具100は、厚みが約1.6mmと薄い略均一厚みの一つの板状部材を打抜き加工および折曲げ加工により形成されたものであり、底板部110と上板部120とが対向し、底板部110の一端とこれに対向する上板部120の一端との間に接続部130が介在しており、
図2AのF方向から見た形状は略コ字形状となっている。
【0044】
底板部110は、一つの板状部材の一部で構成され、上板部120は、一つの板状部材の他の一部を底面部の側に一回折り返すことにより形成されている。これにより、上板部120の一部の厚さは底板部110の厚さ(約1.6mm)より厚くなっている(約3.2mm)。なお、接続部130は、一つの板状部材のその他の一部で構成されている。ここで、板状部材は、鉄に亜鉛めっきを施したものである。ただし、板状部材の構成材料はアルミニウム、ステンレス、チタンなどの他の金属材料で構成されていてもよいし、金属以外の硬質樹脂材料、例えば、上述したPVC、PS、ABS、あるいは、PMMAなどで構成されていてもよい。
【0045】
また、支持部材10は波板スレート屋根であり、被支持部材20は折板屋根であるが、支持部材10および被支持部材20は上述したとおり、これらのものに限定されるものではない。
【0046】
また、締結部材60は、フックボルト61、固定ナット62、亀座63、およびパッキン64を含む。フックボルト61は一端側部分がフック状に折れ曲がったJ型形状を有し、フック状端部にはCチャンネル鋼やアングル鋼材などの母屋が引っ掛けられ、他端に形成されたねじ部には固定ナット62が装着されるようになっている。パッキン64には弾力性のあるゴム部材が用いられ、亀座63は、波板スレート屋根10の湾曲した頂点部分の形状に対応するよう湾曲させた座金である。なお、締結部材60の具体的な構成は、フックボルト61、固定ナット62、亀座63、およびパッキン64を含むものに限定されず、例えば、フックボルト61および固定ナット62に代えて、亀座63、パッキン64および波板スレート屋根10を貫通して母屋にねじ込まれる金属製ビスを含むものでもよい。
【0047】
以下、実施形態1の取付器具100をより詳しく説明する。
【0048】
図2Aは、
図2に示す取付器具100の具体的な構造を示す斜視図であり、
図3は、
図2Aに示す取付器具100を説明するための平面図であり、
図3(a)~
図3(e)は、
図2Aの取付器具をA~E方向から見た構造を示す。なお、
図2Aの取付器具をF方向から見た構造は、
図2Aの取付器具100をA方向から見た構造と対称な形状を有するので、
図2Aの取付器具をF方向から見た構造を示す図は省略する。
【0049】
(底板部110)
底板部110には、薄い板状(約1.6mm)であって、
図2A、
図3(c)に示すように、締結部材60、具体的には、フックボルト61を収容するV字形状の切欠部111が形成されている。なお、切欠部111の形状はV字形状に限定されず、U字形状やL字形状などであってもよい。切欠部111は、底板部110をその外端側から切り込むことにより形成されている。切欠部111は、入口部111aと、突当部111cと、入口部111aから突当部111cにまたがる中間部111bとを含み、切欠部111の突当部111cにフックボルト61が収容されるようになっている。さらに、切欠部111の中間部111bの両側辺は、突当部111cに入り込んだフックボルト61が突当部111cから切欠部111の外部に出にくくなるように鋸歯形状となっている。本発明の取付器具100は、底板部110の厚みは従来の約2.0mm~約2.3mmのものに比べて薄い約1.6mmであるので、底板部110を支持部材10とその固定のための締結部材60との間に挿入しやすく、施工性を向上させることが可能となる。
【0050】
さらに、底板部110のうちの切欠部111に隣接する両内縁部113は、
図2A、
図3(d)に示すように、切欠部111の幅方向において切欠部111に近いほど、かつ切欠部の長さ方向において入口部111aに近いほど、薄くなるテーパ形状となっている。底板部110のうちの切欠部111に隣接する両内縁部113をこのようにテーパ形状とすることで、底板部110を支持部材10とその固定のための締結部材60との間に挿入しやすく、さらに施工性を向上させることが可能となる。
【0051】
また、底板部110の切欠部111の両側には、底板部110の下側に突出した一対の底補強リブ112が、両内縁部113の外側に位置するように形成されている。
【0052】
(上板部120)
上板部120は、板状部材1の一部に形成された一対の折曲ガイド孔121を通る直線を折り目として板状部材1を底板部110の側に1回のみ折り返すことにより形成されている。すなわち、上板部120は、板状部材1を、締結部材60に対する底板部110の挿入方向Yに直交する方向Xに沿った折り目で折り返すことによって形成されている。従って、上板部120のうちの板状部材1が重なった部分122の厚さは、底板部110の厚さ(約1.6mm)の約2倍(約3.2mm)となっている。また、上板部120のうちの板状部材1が重なった部分122は、
図2A、
図3(b)に示すように、被取付部材20を固定するビスがねじ込まれるビス固定面122aを、上板部120の上側の表面に形成している。ここで、上板部120の上側の表面は、上板部120の表面のうちの底板部110とは反対側に面する表面である。また、上板部120では板状部材1が折り返されていることにより取付器具100の剛性向上に寄与している。さらに、上板部120では板状部材を折り返すことにより厚くしているので、取付器具100の全体を構成する板状部材1の板厚は薄く抑えることができる。これにより、底板部110を支持部材10と支持部材10を固定する締結部材60との間に差し込みやすくなり、取付器具100の軽量化も図れる。その結果、施工性の向上と屋根への負荷軽減を図ることができる。
【0053】
なお、実施形態1では、上板部120は、締結部材60に対する底板部110の挿入方向Yに直交する方向Xに沿った折り目で底板部110の側に1回のみ折り返すことによって形成されているが、上板部120は、板状部材1を、締結部材60に対する底板部110の挿入方向Yに沿った折り目(例えば、実施形態1の上板部120の左右両側縁に相当する2つの折り目)で折り返すことによって形成されていてもよい。また、上板部120は、板状部材1を底板部110の側ではなく、底板部110と反対の側に折り返すことによって形成されていてもよい。さらに、上板部120は、板状部材1を、1回のみではなく、底板部110の側にあるいは底板部110と反対の側に同じ方向に複数回折り返すことによって形成されていてもよい。
【0054】
また、上板部120のうちの板状部材1の折り返しにより重なった部分は、固着手段で固定してもよい。このようにすることでさらに、取付強度を高めることが可能となる。ここで、固着手段は任意でありえる。例えば、上板部120のうちの板状部材1の重なった部分は、接着剤による接着、溶接による接着、ロウ付けによる接着、あるいは、かしめによる固定のうちの少なくとも1つによって固定されていてもよい。
【0055】
(接続部130)
接続部130は、底板部110のうちの切欠部111の入口部111aとは反対側の端部と、これに対向する上板部120の端部とを接続する部分であり、取付器具100の側壁部となっている。接続部130には、
図2A、
図3(a)、(d)、(e)に示すように、対向する一対の側壁補強リブ131が形成されている。
【0056】
次に、実施形態1の取付器具100を用いて既設の波板スレート屋根10に新設の折板屋根20を取り付ける方法を
図4~
図7を参照して説明する。
【0057】
図4~
図7は、
図2Aに示す取付器具100を用いた屋根修復方法の一例を説明するための斜視図であり、
図4は、取付器具100を取り付ける既設の波板スレート屋根(支持部材)10を示し、
図5は、取付器具100を
図4に示す既設の波板スレート屋根10に取り付けた状態を示し、
図6は、
図5のR1部分を拡大して示し、
図7(a)は、
図5に示す既設の波板スレート屋根10に新たな金属製折板屋根(被支持部材)20を設置する様子を示し、
図7(b)は、
図7(a)のR2部分における母屋部材50と平行な縦断面の構造を示す図である。なお、
図7(a)では、説明の都合上、ビス70は拡大して示している。
【0058】
例えば、既設の波板スレート屋根10が、
図4に示すように、建造物(図示せず)の母屋部材50に取り付けられている。具体的には、既設の波板スレート屋根10は、締結部材60(具体的には、フックボルト61、亀座63、パッキン64および固定ナット62)を用いて母屋部材50に固定されている(
図1参照)。ここで、母屋部材50にはCチャンネル鋼が用いられている。
【0059】
この状態で、
図6に示すように、波板スレート屋根10とパッキン64との間に取付器具100の底板部110を挿入し、さらに、
図1に示すように、フックボルト61が底板部110の切欠部111の突当部111cに収容されるように取付器具100を波板スレート屋根10に沿って押し込むことにより、取付器具100を波板スレート屋根10に取り付ける。
【0060】
このように取付器具100の底板部110を波板スレート屋根10とパッキン64との間に挿入する作業を、波板スレート屋根10を母屋部材50に固定している締結部材60毎に行うことにより、波板スレート屋根10に複数の取付器具100を取り付ける(
図5参照)。
【0061】
その後、波板スレート屋根10上に複数の取付器具100に跨るように新規の折板屋根20の部品である屋根部材20aを配置し、屋根部材20aのうちの取付器具100の上板部120と重なった部分を、ビス70で上板部120に固定することにより屋根部材20aを既存の波板スレート屋根10に取り付ける(
図7(b)参照)。
【0062】
なお、屋根部材20aを取付器具100に固定する場合、取付部材に直接屋根部材を固定するのに対して、部材を介して間接的に固定してもよい。間接的に固定する場合に間に挿入する部材は任意であり得る。例え、Cチャンネル鋼(C型鋼)などの鋼材であってもよいし、垂木(足場垂木など)であってもよい。屋根部材20aを取付器具100に取り付ける前に予め、波板スレート屋根10上に、母屋部材50に沿って並ぶ複数の取付器具100に跨るようにCチャンネル鋼などの鋼材を配置して取付器具100にビス70で固定し、屋根部材20aを、取付器具100ではなく、取付器具100に固定されているCチャンネル鋼などの鋼材に取り付ける。
【0063】
このように、本実施形態1では、被取付部材20を支持部材10に取り付けるための取付器具100において、支持部材10と支持部材を固定するための締結部材60との間に挿入される底板部110と、被取付部材20が固定される上板部120と、底板部110と上板部120とを接続する接続部130とを備え、上板部110の少なくとも一部の厚さを底板部110の厚さより厚くしたので、支持部材10に新たな屋根部材などの被支持部材20を取り付ける工程における、底板部110を支持部材とその締結部材60との間に挿入するときの施工性と、上板部120における被支持部材を固定する取付強度との両立を可能とする取付器具100を得ることができる。
【0064】
また、本発明の取付器具100は、一つの板状部材1の打抜き加工と折曲げ加工とによって底板部110と上板部120とを形成できるため、作業効率を向上させることが可能となる。
【0065】
また、上板部120が、第1の板状部材1の他の一部を底板部110の側に折り返すことによって形成されたものは、上板部120が、第1の板状部材1の他の一部を底板部110の反対側に折り返すことによって形成されたものとは異なり、上板部120の上面にビス70で固定された被取付部材20を上板部120から引き離す力が働いたときであっても、上板部120の板状部材が重なった重複部分122で上側の板状部材1だけがめくれ上がるのを回避することが可能であり、さらに取付強度を向上させることが可能である。
【0066】
図7Aにおいて、「試験前」の〔折り返しなし〕は、取付器具の上板部(折り返しなし)にビスが装着された状態を示し、「試験前」の〔上側へ折り返し〕は、取付器具の上板部(上側への折り返しあり)にビスが装着された状態を示し、「試験前」の〔下側へ折り返し〕は、取付器具の上板部(下側への折り返しあり)にビスが装着された状態を示す。
【0067】
図7Aにおいて、「試験後」の〔折り返しなし〕は、取付器具の変形と上板部(折り返しなし)に装着されたビスのビス抜けが生じた状態を示し、「試験後」の〔上側へ折り返し〕は、取付器具の変形と上板部(上側への折り返しあり)に装着されたビスのビス抜けが一部で生じた状態を示し、「試験後」の〔下側へ折り返し〕は、取付器具の変形が生じているが、上板部(下側への折り返しあり)に装着されたビスのビス抜けは生じていない状態を示す。
【0068】
図7Aに示すビスの引張り試験の結果から以下の知見が得られた。
【0069】
取付器具を構成する板状部材は、板状部材を上板部で上側(底板部とは反対側)に折り返した場合、ビスを上板部から引き抜く方向に引っ張ると、板状部材の折り返しにより重なった重複部分の上側の板部分がビスに追従する分、折り返しなしの場合に比べて上板部とビスとの結合強度は増大する結果が得られた。しかしながら、引張強度が大きくなりすぎると重複部分の下側(底板部側)の板部分がビスに追従しなくなるという結果が得られた。しかし、上板部の折り返しにより重なる部分を固着手段で固着することにより、重複部分の下側(底板部側)の板部分がビスに追従しなくなるという課題を解決できるものである。
【0070】
板状部材を上板部で下側に折り返した場合は、ビスを上板部から引き抜く方向に引っ張ると、板状部材の折り返しにより重なった重複部分の上下の板部分がともに常にビスに追従するため、板状部材を上板部で上側に折り返した場合よりも、さらに上板部とビスとの結合強度は増大する結果が得られた。この結果は、上板部とビスとの結合強度の増大により取付器具と被取付部材との取付強度が増大することを示す。
【0071】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2による取付器具200を説明するための斜視図である。
【0072】
本実施形態2の取付器具200は、実施形態1の取付器具100と同様に、被取付部材20を支持部材10に取り付けるための取付器具であり、この取付器具200は、支持部材10と支持部材10を固定するための締結部材60との間に挿入される底板部210と、被取付部材20が固定される上板部220と、底板部210と上板部220とを接続する接続部230とを備えている。
【0073】
そして、この取付器具200は、底面部210が第1の板状部材1の一部で構成され、接続部230が第1の板状部材1の他の一部で構成され、上板部220が第1の板状部材1のその他の一部と補強部材2とで構成されている点で、実施形態1の取付器具100と異なっている。この取付器具200では、上板部220のうちの第1の板状部材1と補強部材2とが重なっている部分222が、被取付部材20を固定するビス70がねじ込まれるビス固定面222aを形成している。
【0074】
ここでは、補強部材2は、溶接による接着部Mによって、第1の板状部材1のうちの上板部220を構成する部分の上側(底板部210と反対側)に固定されている。なお、補強部材2は、第1の板状部材1のうちの上板部220を構成する部分の下側(底板部210の側)に固定されていてもよいし、また、溶接による接着以外の方法、例えば、接着剤による接着、ロウ付けによる接着、かしめによる固定のうちの少なくとも1つで上板部220を構成する第1の板状部材1に固定されていてもよい。
【0075】
なお、実施形態2の取付器具200の底板部210および接続部230は、実施形態1の取付器具100における底板部110および接続部130と同一の構造を有している。
【0076】
また、この実施形態2の取付器具200を用いて既設の波板スレート屋根10に新設の折板屋根20を取り付ける方法も、
図4~
図7を参照して説明した実施形態1の取付器具100を用いて既設の波板スレート屋根10に新設の折板屋根20を取り付ける方法と同様である。
【0077】
このような構成の実施形態2による取付器具200では、底面部210を第1の板状部材1の一部で構成し、接続部230を第1の板状部材1の他の一部で構成し、上板部220を第1の板状部材1のその他の一部と補強部材2とで構成しているので、実施形態1の効果の他に、以下の効果を得ることが可能となる。
【0078】
1つは、補強部材の厚さを選択することにより、容易に被取付部材の取付強度を調整することが可能となるという効果である。
【0079】
もう一つは、取付器具の上板部を厚くする加工は、溶接、ロウ付け、あるいは接着材の塗布、あるいは、かしめなど、金型を用いない簡単な加工とすることができるという効果である。
【0080】
なお、上記実施形態1および実施形態2では、取付器具100、200を屋根構造に適用した場合を示したが、これらの取付器具100、200は、既設の屋根と、既設の屋根に取り付けられた新設の屋根などの被取付部材とを備えた屋根構造において、既設の屋根に被取付部材を取り付ける取付器具として用いる場合に限らず、既設の壁と、既設の壁に取り付けられた新設の壁などの被取付部材とを備えた壁構造において、既設の壁に被取付部材を取り付ける取付器具として用いることができる。
【0081】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、支持部材に被支持部材を取り付ける際の施工性向上と取付強度向上との両立を可能とする取付器具、このような取付器具を備えた屋根構造、およびこのような取付器具を備えた壁構造を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0083】
10 既設の波板スレート屋根(支持部材)
20 新設の折板屋根(被支持部材)
60 締結部材
70 ビス
100、200 取付器具
110、210 底板部
120、220 上板部
122a、222a ビス固定面
130、230 接続部(側壁部)