IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社悠心の特許一覧

<>
  • 特許-固形物含有被包装物の充填包装体 図1
  • 特許-固形物含有被包装物の充填包装体 図2
  • 特許-固形物含有被包装物の充填包装体 図3
  • 特許-固形物含有被包装物の充填包装体 図4
  • 特許-固形物含有被包装物の充填包装体 図5
  • 特許-固形物含有被包装物の充填包装体 図6
  • 特許-固形物含有被包装物の充填包装体 図7
  • 特許-固形物含有被包装物の充填包装体 図8
  • 特許-固形物含有被包装物の充填包装体 図9
  • 特許-固形物含有被包装物の充填包装体 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】固形物含有被包装物の充填包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/46 20060101AFI20230119BHJP
   B65B 9/207 20120101ALI20230119BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230119BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B65D75/46
B65B9/207
B32B27/00 H
B65D81/24 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021013247
(22)【出願日】2021-01-29
(62)【分割の表示】P 2020116372の分割
【原出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2021193036
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2020099454
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038603(JP,A)
【文献】特開2020-050374(JP,A)
【文献】特開2019-051968(JP,A)
【文献】特開2018-052120(JP,A)
【文献】特開2018-034841(JP,A)
【文献】特開2018-069597(JP,A)
【文献】国際公開第2014/207948(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 65/00-65/46
B65B 9/207
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層とシーラント層とを具える積層プラスチックフィルムを、該シーラント層どうしが対面するように重ね合わせて縦シールと横シールして形成されている包装袋内に、固形物含有の被包装物が、一対の横シールロールによる夾雑物シール処理により充填されている包装体であって、
前記横シールロールによる夾雑物シール処理によって形成される横シール部は、前記シーラント層が、ベース層側からシーラント第1層(A1)および該シーラント第1層(A1)よりも低融点のシーラント第2層(A2)の少なくとも2層によって構成されていると共に、該シーラント第1層(A1)およびシーラント第2層(A2)は、ポリオレフィン樹脂を主たる構成物とし、当該横シール部に残留する前記固形物が粉砕されていて、その粉砕された該固形物どうしの隙間および当該固形物に発生した割れ目内に、前記夾雑物シール処理によって軟化-溶融した前記積層プラスチックフィルムの前記シーラント第2層(A2)の樹脂が含浸してなる粉砕含浸処理層を構成していることを特徴とする固形物含有被包装物の充填包装体。
【請求項2】
前記シーラント第1層(A1)およびシーラント第2層(A2)の主たる構成物は、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の固形物含有被包装物の充填包装体。
【請求項3】
前記シーラント第1層(A1)の従たる構成物は、低密度ポリエチレンまたは中密度ポリエチレンからなるものであることを特徴とする請求項2に記載の固形物含有被包装物の充填包装体。
【請求項4】
前記シーラント第2層(A2)の従たる構成物は、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはエチレン-アクリル酸共重合体からなるものであることを特徴とする請求項2または3に記載の固形物含有被包装物の充填包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば胡椒のような香辛料や胡麻などの穀物粒子、果物の果肉や果皮、野菜や肉等の固形物を含む液状物や粘稠物、練り物のような流動性を有する固形物等からなる被包装物を、積層プラスチックフィルムからなる包装袋内に夾雑物シールによって充填包装した固形物含有被包装物の充填包装体に関し、とりわけ、固形物の横シール部内への噛み込みに伴うシール不良のおそれのない固形物含有被包装物の充填包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
積層プラスチックフィルムからなる包装袋内に液状の被包装物を自動的に充填し、縦横のヒートシールを施して包装する縦ピロー方式の充填包装機については、特許文献1および特許文献2に記載されているような充填包装機がよく知られている。
【0003】
これらの文献に開示の充填包装機は、例えば、ベース層とシーラント層とを具える積層プラスチックフィルムからなる長尺の包装用フィルムを、長手方向に沿って上方から下方へ連続的に走行させながら、前記シーラント層が向い合わせになるように幅方向に半折りし、その重なり合うフィルム両側縁どうしを縦シールロールによって縦方向に連続的にヒートシールして、縦シール部を形成して該フィルムを筒状(いわゆるピロー形状)とし、次いで該筒状の包装用フィルム内に充填ノズルを介して被包装物を供給しつつ、該包装用フィルムの幅方向に沿って延びる一対の横シールロール(シール刃)によって、被包装物を絞り出しながら所定の間隔で横シール部を形成する(一般に、「夾雑物シール」と言われる。)ことで包装体が連続して製造できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-301237号公報
【文献】特開2006-248578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記充填包装機においては、いわゆる「夾雑物シール」方法、即ち、一対の横シールロールによって包装用フィルムを挟持し、該横シールロールの回転によって包装用フィルム間に残存する被包装物を絞り出しながら、該絞り出し位置に横シール部を形成する方法を採用しているため、該横シール部分に被包装物が必然的に介在することになる。そのため、被包装物の一部(固形物)が、横シール部分に滞留したまま残留し、噛み込まれやすくなり、とくに、被包装物中に胡椒や胡麻などの固形物が含まれていると、横シール部の内部に該固形物が噛み込まれて、その噛み込み位置の融着接合が阻害されて剥離が生じやすくなり、やがては液漏れ(スローリーク)が発生するという問題があった。そのため、夾雑物シール方法を利用する前記充填包装機は、従来、固形物を含まない醤油やソース等の調味液等の液状の被包装物の充填に好適に用いられ、例えば胡椒等の固形物を含むドレッシング等の充填包装や、カレーやシチュー等のレトルト食品の充填包装には不向きとされていた。
【0006】
また、たとえばポン酢などのように柑橘類を含む被包装物は、その柑橘類の香りを長期の間、保持させることが望まれている。柑橘類の香り成分であるリモネンは、果皮に多く含まれているため、果皮を生のまま液体と共に包装袋内に充填包装することが好ましいが、果皮や果肉等は水分を多く含んでいるため、生のまま充填すると時間の経過に伴ってカビが発生するおそれがあり、従来は果汁のみを充填したり、果皮等を乾燥させる等して充填していた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、胡椒や胡麻、果皮などの固形物を含有する液状物や粘稠物等の流体、流動性を有する固形、半固形物からなる被包装物をプラスチック製の包装袋内に夾雑物シール方法によって充填包装してなる充填包装体において、剥離等のシール不良(液漏れ)を招くことのない横シール部を有し、とくに固形物含有被包装物が飲食品からなる場合に、横シール部分に残留している固形物由来のカビや細菌等の増殖を抑制することのできる固形物含有被包装物の充填包装体について提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため鋭意検討した結果、発明者らは、下記に述べる要旨構成に係る本発明に想到した。
即ち、本発明は、ベース層とシーラント層とを具える積層プラスチックフィルムを、該シーラント層どうしが対面するように重ね合わせて縦シールと横シールして形成されている包装袋内に、固形物含有の被包装物が、一対の横シールロールによる夾雑物シール処理により充填されている包装体であって、
前記横シールロールによる夾雑物シール処理によって形成される横シール部は、前記シーラント層が、ベース層側からシーラント第1層(A1)および該シーラント第1層(A1)よりも低融点のシーラント第2層(A2)の少なくとも2層によって構成されていると共に、該シーラント第1層(A1)およびシーラント第2層(A2)は、ポリオレフィン樹脂を主たる構成物とし、当該横シール部に残留する前記固形物が粉砕されていて、その粉砕された該固形物どうしの隙間および当該固形物に発生した割れ目内に、前記夾雑物シール処理によって軟化-溶融した前記積層プラスチックフィルムの前記シーラント第2層(A2)の樹脂が含浸してなる粉砕含浸処理層を構成していることを特徴とする固形物含有被包装物の充填包装体である。
【0009】
この固形物含有被包装物の充填包装体においては、
(1)前記シーラント第1層(A1)およびシーラント第2層(A2)主たる構成物は、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなるものであること、
(2)前記シーラント第1層(A1)の従たる構成物は、低密度ポリエチレンまたは中密度ポリエチレンからなるものであること、
(3)前記シーラント第2層(A2)の従たる構成物は、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはエチレン-アクリル酸共重合体からなるものであること、
がより好ましい解決手段になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、縦シール後の筒状のプラスチックフィルムからなる袋内に連続して充填される固形物を含有する流体や、流動性を有する固形物、半固形物からなる被包装物を、一対の横シールロールによって絞り(抜き)出しながら、その絞り出し位置を横シールする夾雑物シール処理によって、横シール位置の積層プラスチックフィルムを加圧して該被包装物を押し出すと共に、該被包装物中に粉砕(破砕)可能な固形物が含まれるような場合には、該横シール位置に残留する被包装物中の、その固形物を粉砕すると同時に、その粉々となった固形物の割れ目および該固形物どうしの隙間に、該横シールロールによる加熱によって軟化し溶融した積層プラスチックフィルムのシーラント層樹脂を含浸(含侵)させていく粉砕含浸(含侵)処理が行される。このため、横シール部内に残留する固形物は、島状に分散して点在した状態で溶融したシーラント層樹脂によって含浸(含侵)もしくは包囲されると共に、積層プラスチックフィルムのシーラント層樹脂と共に融着接合して横シール部を形成することになるため、該横シール部の融着接合が前記固形物によって阻害されることがなく、隙間の発生や剥離等によってシール不良(液漏れ)を招くようなことがない。
【0011】
また、本発明によれば、積層プラスチックフィルムを構成するシーラント層を、ベース層側からシーラント第1層(A1)およびシーラント第2層(A2)の少なくとも2層によって構成し、該シーラント第1層(A1)の厚みtA1と、シーラント第2層(A2)の厚みtA2との比が、0.10≦tA2/tA1≦0.75となるように積層したことで、前記横シールロールによるシール圧力を、500kPa以上の高圧にしても、積層プラスチックフィルムが破断等することがなく、被包装物中に含有される固形物を粉砕することができる。そのため、固形物が例えば、レモンやオレンジなどの柑橘類の内果皮やじょうのう膜などの繊維状のものや肉や魚等であっても小片に粉砕することができる。とくに、粉砕含浸処理は、横シール位置に残留する固形物の厚み方向の大きさを、重ね合わせた積層プラスチックフィルムの対面し融着接合するシーラント層のトータル厚み以下の小片になるまで粉砕することで行われ、これによれば固形物の噛み込みに起因するシール不良を招くおそれがなく、なおかつ横シール部のシール強度を高めることができる。したがって、本発明によれば、肉や魚、野菜等の固形物を含有するレトルト食品や、胡椒や塩のような粉粒状物、ポテトサラダのような流動性を有する固形物等を夾雑物シール方法によって包装袋内に充填包装した包装体を得ることができる。
【0012】
また、本発明によれば、積層プラスチックフィルムを、上記のように横シールロールによって500kPa以上で強加圧すると共に、横シールロールによる横ヒートシール速度を、従来の充填包装機における横シールロールによる横ヒートシール速度(12~18m/min)よりも低速(10m/min以下、より好ましくは2~6m/min以下)にすることで、横シール時に発熱が生じ、該発熱によって横シールロールのシール温度を従来よりも低く設定することができるようになる。従って、使用するプラスチックフィルムの選択肢が広がると共に、ヒートシール条件の幅を広げることができる。
【0013】
また、本発明によれば、上記したように横シール部内に隙間や剥離等が発生することがないため、横シール部内に例えば被包装物中に含まれる液体分や、固形物の粉砕によって発生する水分が残留しても、積層プラスチックフィルムの軟化、溶融した樹脂によって含浸されて横シール部端面に漏れ出すことがなく、該横シール部端面における微生物の増殖が抑制されることになり、包装体の汚染のリスクを低減することができる。
【0014】
さらに本発明によれば、被包装物が液状や粘稠状のものなどからなる場合に、前記積層プラスチックフィルムからなる包装袋に、セルフシール機能を有するフィルム状注出ノズルを設けることで、使用開始後においても、該注出ノズルからの袋内への外気の侵入を抑制することができ、袋内での好気性菌の増殖を有効に抑制することができる。また、充填する被包装物が飲食品からなる場合には、被包装物のpHを4.0未満に調整することや、被包装物を70℃以上に加熱した状態で前記包装袋内に充填包装(ホットパック)することで、密封袋内での微生物の増殖を抑制することができ、袋内の被包装物の汚染リスクをより一層、低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】縦型充填包装機の一例を示す概略図である。
図2】夾雑物シール処理において用いられる1対の第1横シールロールの拡大側面図である。
図3】従来の方法により形成された横シール部の断面図である。
図4】本発明の充填包装体を構成する積層プラスチックフィルムの断面図である。
図5】本発明の粉砕含浸処理を説明する模式図である。
図6】本発明の充填包装体の横シール部の断面図である。
図7】本発明の夾雑物シール処理において用いられる第1横シールロール用シール刃の一実施形態を示す部分斜視図である。
図8】本発明の充填包装体の一実施形態を示す図である。
図9】(a)実施例の横シール部と、(b)比較例の横シール部のシール面を比較して示す写真である。
図10】(a)実施例の横シール部と、(b)比較例の横シール部の断層写真を比較して示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の一形態を、図面に示すところに基づいて説明する。
本発明の充填包装体は、被包装物を連続充填しながらヒートシールを行う夾雑物シールを利用する各種の縦ピロータイプの充填包装機や縦ピロータイプの多列充填包装機等の充填包装機によって形成することができる。ここでは図1に示す縦型充填包装機1によって被包装物として胡椒や胡麻などの固形物を含有する液状物を、連続的に充填包装し、三方シールもしくは四方シールした包装体Wを製造する場合を代表例として説明する。なお、被包装物としては、胡椒や胡麻などの穀物粒子や肉、魚、果実、野菜などの固形物を含む液状物や粘稠物の他、胡椒、塩等の粉粒状物や流動性を有する固形物や半固形物(練り物等)などの飲食品や化学品、医薬品等、各種のものを用いることができる。
【0017】
例えば、三方シール袋用の充填包装機1は、フィルムロールRから連続的に繰り出されて走行する1枚の長尺のベース層20とシーラント層21とを具える積層プラスチックフィルムFを上方から下方へ連続的に走行させながら、その走行中にガイドロッド2で案内しつつ積層プラスチックフィルムFをそのシーラント層21が互いに向かい合わせになるように幅方向に折り返し、図では積層プラスチックフィルムFの左端部に位置するその両側端部同士を重ね合わせ、その重ね合わされた両側端部同士を1対の縦シールロール3によって積層プラスチックフィルムFの長手方向(縦方向)に連続的に加圧および加熱して、前記シーラント層21同士を融着接合させることで縦シール部4を形成し、これにより積層プラスチックフィルムFを筒状に形成する。
【0018】
次に、ポンプその他の供給経路を介して供給される被包装物Mは、1対の縦シールロール3間を上方から下方へ貫通している充填ノズル5によって、筒状に形成された積層プラスチックフィルムFの内側へ連続的に充填される。その後、充填後の筒状に形成された積層プラスチックフィルムFは、長手方向に一定間隔をおいて配置された1対の第1横シールロール6a、6bによる挟持によって全幅にわたり加熱しつつ加圧されて、対面するシーラント層同士が溶着されることで所定間隔ごとに横シール部7が形成される。その後、一対の第2横シールロール8a、8bで横シール部7を挟持して再加圧し、該シールを確実なものとし、これにより多数の包装体Wが積層プラスチックフィルムFの長手方向へつながった状態で連続的に製袋される。なお、包装体Wは、図に示すように第2横シールロール8の下流側に設けた切断機構12によって横シール部7の中央位置を切断することにより、一袋ずつもしくは複数袋ずつにしてもよい。
【0019】
ここで、1対の第1横シールロール6a、6bは、図2の拡大側面図を示したように、相互に平行に対向配置され、互いに逆方向に回転駆動するように構成されている。各第1横シールロール6a、6bは、それぞれヒーター(図示しない)が内蔵されると共に、周方向に等間隔で軸線方向に延在するシール刃9が配設されている。なお、図では第1横シールロール6a、6bにそれぞれ4本のシール刃9が設けられているが、該シール刃9の本数は、シールピッチや充填速度等の包装条件に合わせて適宜変更することができる。
【0020】
一対の第1横シールロール6a、6bは、同期して回転駆動し、これに基づいて対向するシール刃9同士が当接し合って第1横シールロール6a、6b間を走行する筒状の積層プラスチックフィルムFを挟持すると共に、当該位置を加熱および加圧して積層プラスチックフィルムFの内面側に位置する(相互に対面する)前記シーラント層21どうしを融着接合させることで横シール部7が形成される。
【0021】
ここで、筒状の積層プラスチックフィルムF内に充填された被包装物Mは、横シールロール6a、6bの回転に伴い、シール刃9同士が当接することで上方へと絞り出され、該絞り出し位置の対面する積層プラスチックフィルムFのシーラント層21どうしが、シール刃9によって加熱および加圧されて融着接合し、上記のように横シール部7が形成されるが、被包装物Mに含有されている胡椒や胡麻などの固形物Sの一部が押し出されず、図3の横シール部7の断面図(図2の一点鎖線部分を拡大して示す断面図)に示したように横シール部7内に噛み込んだまま残留してしまうことがある。
【0022】
このように横シール部7内に固形物Sが残留したままになると、横シール部7内に未融着部分11が生じて隙間となり、該未融着部分11が通路となって包装体W内に充填した被包装物Mが漏れ出すおそれや、固形物Sの残留位置の横シール部7の厚みが大きくなり、横シール部7表面にシワが発生してスローリークを招くようになる他、見栄えも悪くなるという問題があった。
【0023】
そこで、本発明では、以下で説明するような粉砕含浸処理方法を採用して上記の問題を克服することにした。以下、粉砕含浸処理方法について説明する。
夾雑物シール方法により横シール部7を形成するにあたり、本発明の好ましい実施形態としては、図4に示すように積層プラスチックフィルムFのシーラント層21を、ベース層20側からそれぞれシーラント第1層(A1)およびシーラント第2層(A2)の少なくとも2層により構成し、該積層プラスチックフィルムFを、一対の第1横シールロール6a、6bのそれぞれに設けられたシール刃9同士の当接により挟圧することで、横シール位置に残留する固形物Sを、シーラント層21の樹脂、とりわけ対面するシーラント第2層(A2)どうしの間に挟んだまま強く加圧する。
【0024】
この加圧により、図5の模式図に示すように、横シール部7中に残留する固形物Sは粉砕され、その小片となった該固形物S自体に生じた割れ目や小粒化した該固形物S同士の隙間に、シール刃9による加熱および加圧によって、軟化し溶融した積層プラスチックフィルムFのシーラント層21の樹脂(とくに対面するシーラント第2層(A2)の樹脂)が含浸(浸透)したり包囲する、いわゆる粉砕含浸処理が行われることになる。
【0025】
このような粉砕含浸処理を行うことにより、前記液状物中の固形物Sは、加熱および加圧により細かく粉砕されて、図6に示すように、軟化-溶融したシーラント樹脂21’内において分散して島状に点在し、該シーラント樹脂21’と共に融着接合して一体化した状態で横シール部7を形成することになる。その結果、横シール部7内に残留する固形物Sによって、従来のような未融着部分11(隙間)が発生するようなことがなく、シール不良(液漏れ)の発生をも防止することができる。
【0026】
なお、シーラント層21を構成するシーラント第1層(A1)およびシーラント第2層(A2)はいずれも、主たる構成物がポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなり、シーラント第1層(A1)の厚みtA1と、シーラント第2層(A2)の厚みtA2との比が、0.10≦tA2/tA1≦0.75となるように構成されている。これは、上記粉砕含浸処理を行った際に、固形物Sを挟持するために強度が犠牲になるシーラント第2層(A2)に対して、シーラント第1層(A1)の厚みを相対的に大きく(厚く)することで、シーラント層21として求められている必要な強度を維持することができる。一方で、一対の第1横シールロール6a、6bによるシール圧力を、前述した固形物Sの粉砕含浸処理のために、下記のように高圧にしても積層プラスチックフィルムFが破断等するようなことがなくなり、該粉砕含浸処理を好適に行うことができる。
【0027】
上記粉砕含浸処理は、一対の第1横シールロール6a、6bのそれぞれの圧力が、充填包装機に設けられる一般的な横シールロールの圧力の3倍以上10倍以下の、500kPa以上、好ましくは500~2000kPa、より好ましくは600kPa~1500kPaの高圧とする。このように、本発明では、第1横シールロール6a、6bの圧力を高圧とすることで、固形物Sが野菜や果実のじょうのう膜等のような夾雑物シール方法によって絞り出し難い繊維状のものであっても、効果的に絞り出すことができると共に細かく粉砕され、粉砕含浸処理を行うことができる。
【0028】
また、かかる粉砕含浸処理においては、一対の第1横シールロール6a、6bによって、横シール位置に残留する固形物Sを粉砕し、該粉砕後の固形物Sが厚み方向の大きさで、重ね合わせた積層プラスチックフィルムの、相互に対面し融着接合するシーラント層21のトータル厚み(2枚のシーラント層21の合計厚み)未満、好ましくは100μm以下で割れ目付き、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは5~30μm程度の大きさの割れ目の多い小片となるようにする。これにより、固形物Sが残留している部分であっても、該固形物Sは軟化-溶融したシーラント樹脂21’内に分散した状態で含浸され、横シール部7の厚みが増すことがなく、また固形物Sが非常に小さく、目視で確認できない程度であるため、横シール部7の美観を向上させることができる。なお、固形物Sの厚みが2枚のシーラント層21の合計厚みよりも大きくなると、横シール部7の、固形物Sの残留する部分の厚みが他の部分に対して大きくなり、横シール部7表面に凹凸ができたり、固形物Sの残留が目視で確認できるようになり好ましくない。
【0029】
さらに、一対の第1横シールロール6a、6bによって上記のように強加圧下で、かつ横ヒートシール速度を従来よりも低速(10m/min以下、より好ましくは2m/min~6m/min)にすることで、横シール位置に残留する被包装物Mを効果的に絞り出し、横シール部7内に残留する固形物Sをわずかなものとすることができる。しかも、前記のように粉砕含浸処理によって、横シール部7内に通路となるような隙間や剥離等が生じることがなく、また横シール部7内に残存する固形物Sは、軟化―溶融したシーラント樹脂21’によって含浸あるいは包囲されているため、該固形物Sが包装体Wの端面に位置していても、該端面におけるカビの発生や微生物の増殖を抑制することができ、包装体Wの汚染のリスクを低減することができる。
また、本発明の粉砕含浸処理によれば、上記のように一対の第1横シールロール6a、6bによって横シール位置の積層プラスチックフィルムを、高い圧力でかつ低速でヒートシールすることで、該第1横シール部では主として固形物が粉砕されることによる発熱が生じる。その結果、前記ヒートシール温度を従来よりも低い温度に設定することができると共に、前記粉砕含浸の処理がより効果的なものになる。
【0030】
なお、本発明の粉砕含浸処理を行うために使用される積層プラスチックフィルムFは、上記したようにシーラント層21が、シーラント第1層(A1)およびシーラント第2層(A2)の少なくとも2層からなり、該シーラント層21の総厚tが好ましくは15~150μm、より好ましくは20~100μm、さらに好ましくは25~75μmの範囲とする。これは、総厚tが15μm未満であると、上記のように被包装物に含まれる固形物を粉砕含浸処理した際に、横シール部7が十分な破袋強度を得られなくなるおそれがあり、一方、150μmを超えると強度は増すものの、コストの増加が問題となるほか、積層プラスチックフィルムFを折り返して包装体とした場合に、その折り返し端において、外側となるベース層20に過剰な引張応力がかかり、破断するおそれがあるためである。
【0031】
以下、シーラント第1層(A1)とシーラント第2層(A2)について詳細に説明する。
まず、シーラント層21を構成するシーラント第1層(A1)は、主たる構成物がポリオレフィン樹脂からなり、厚みtA1が好ましくは12~140μm、より好ましくは15~70μmの範囲にある。これは、シーラント第1層(A1)の厚みtA1が下限未満では、ヒートシールによって、包装体Wとした際に横シール部7が十分な破袋強度を得られなくなるおそれがあり、一方、上限超えでは、コスト増となるほか、積層プラスチックフィルムFを折り返して包装体Wとした場合、その折り返し端において、外側となるベース層20に過剰な引張応力がかかり、破断するおそれがあるためである。
【0032】
なお、シーラント第1層(A1)の主たる構成物であるポリオレフィン樹脂は、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなることが好ましい。以下は、シーラント第1層(A1)が、ポリエチレンからなる場合を代表例として説明するが、これに限定されるものではない。
シーラント第1層(A1)の主たる構成物であるポリエチレンは、密度が0.925g/cm以上、より好ましくは密度が0.925~0.940g/cmからなる。なお、あまりに密度を高くするとフィルムが脆くなってしまい、ピンホールの発生が懸念される。また、前記ポリエチレンとしては、シングルサイト触媒(例えば、メタロセン触媒)を用いた直鎖状ポリエチレンが好ましく、たとえば、シングルサイト触媒であるメタロセン触媒を用いた直鎖状低密度ポリエチレンとして、プライムポリマー製のエボリュー(登録商標)SP3010や東ソー製のニポロン(登録商標)HF250Kなどが例示される。シングルサイト触媒を用いた直鎖状ポリエチレンを用いることで引っ張り強さに優れ、コシのある包装用積層フィルムとすることができ、耐熱性・耐寒性に優れた効果が得られる。ここで、「主たる」とは、シーラント第1層(A1)の50質量%を超えることをいう。
【0033】
シーラント第1層(A1)の主たる構成物は、示差走査熱量測定(DSC)で求めた融解ピーク温度(Tm1)が、120℃以上であり、融解ピークの半値全幅(Fw1)が1.5℃以下のポリエチレンであることが好ましい。ここで、示差走査熱量測定に用いる装置としては、METTLER TOLEDO社製の示差走査熱量測定装置「DSC1」が例示される。DSCで測定した融解ピークの半値全幅(Fw1)が1.5℃以下と狭い範囲にあることは、共重合体における分子量の分布が狭い範囲にあるだけでなく、たとえば、直鎖状ポリエチレンであるなど分子構造のばらつきが少ないことを示していると考えられる。シーラント第1層(A1)は、シーラント第2層(A2)よりも一対の第1横シールロール6a、6bによって、高温で加熱される(第1横シールロール6a、6bによってベース層20側から加熱されるため、ベース層20に近いシーラント第1層(A1)は、シーラント第2層(A2)に比べて高温で加熱される)ため、シーラント第2層(A2)が溶融したときでもシーラント第1層(A1)が溶融しないように、相対的に融点の高いポリエチレンとする。また、DSCピークの半値全幅を狭く管理し、ポリエチレンの分子量分布を狭く管理する必要がある。シーラント第1層(A1)の主たる構成物は、Tm1が120~140℃の範囲にあって、Fw1が1.0~1.5℃の範囲のポリエチレンがより好ましい。
【0034】
シーラント第1層(A1)を、上記のような構成とすることにより、夾雑物シールする際に、従来品より高温域まで発泡によるシール不良を発生することなく、広い運転速度を選択することができる。
【0035】
シーラント第1層(A1)の従たる構成物は、低密度ポリエチレン(LDPE)または中密度ポリエチレン(MDPE)であることが好ましい。さらに、シングルサイト触媒(例えば、メタロセン触媒)を用いた直鎖状ポリエチレンであることがより好ましい。また、主たる構成物の上記機能を害さないように、密度を0.915~0.940g/cmの範囲とし、DSCで求めた融解ピーク温度(Tm1)が115~140℃の範囲にあり、その半値全幅(Fw1)が1.5℃以下にあることが好ましい。従たる構成物のシーラント第1層(A1)中の組成は、合計で50質量%未満とし、好ましくは、35質量%以下である。
【0036】
シーラント第1層(A1)の従たる構成物として、アイオノマー(IO)等を含んでもよい。また、積層したフィルム層間の応力を緩和する応力調整剤を含んでもよい。
【0037】
シーラント第2層(A2)の主たる構成物であるポリオレフィン樹脂は、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなることが好ましい。以下は、シーラント第2層(A2)が、ポリエチレンからなる場合を代表例として説明するが、これに限定されるものではない。
【0038】
シーラント第2層(A2)の厚みtA2は、3~15μmの範囲にあり、該厚みtA2が下限未満では、一対の第1横シールロール6a、6bによって粉砕含浸処理を行うことができず、一方、上限超えでは、溶融したシーラント層21の樹脂溜りが厚くなり引張応力がかかり、破断するおそれがある。
【0039】
シーラント第2層(A2)は、密度が0.915g/cm以下の低密度ポリエチレン(LDPE)または超低密度ポリエチレン(VLDPE)を主たる構成物として用いることが好ましく、横シール部7で軟化、溶融し夾雑物の除去と、横シール部7内に残留する固形物の粉砕含浸処理を行うことができると共に、被包装物に直接接触する層として、耐寒性、耐水性や無機溶剤に対する耐薬品性、耐衝撃性、成形性に優れる。たとえば、シングルサイト触媒(例えば、メタロセン触媒)を用いた直鎖状ポリエチレンや、マルチサイト触媒(チーグラー触媒)を用いたポリエチレンを用いることができ、東ソー製のニポロン(登録商標)HF210KやHF213Kなどが例示される。ここで、「主たる」とは、シーラント第2層(A2)の50質量%を超えることをいう。好ましくは、密度が、0.890~0.915g/cmの範囲である。
【0040】
シーラント第2層(A2)は、DSCで求めた融解ピーク温度(Tm2)が95~105℃の範囲にあり、その半値全幅(Fw2)が8~15℃の範囲にある低密度ポリエチレン(LDPE)または超低密度ポリエチレン(VLDPE)であることが好ましい。それにより、上記夾雑物シール方法において、シールバー7による加熱、加圧によってシーラント層21のうちシーラント第2層(A2)が先に溶融・移動し、所望の効果が発揮されるからである。
【0041】
シーラント第2層(A2)の従たる構成物としては、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)またはエチレン-アクリル酸共重合体(EAA)等を用いることができる。シーラント第2層(A2)の従たる構成物の組成は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。また、積層したフィルム層間の応力を緩和する応力調整剤を含んでもよい。
【0042】
ベース層20としては、一軸もしくは二軸延伸のポリエステル(PET)やナイロン樹脂(NY)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などにより構成することができるが、これに限定されるものではなく、所要に応じて適宜選択することができる。
【0043】
また、本発明に使用される積層プラスチックフィルムFは、ベース層20とシーラント第1層(A1)との間に所要に応じて、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、金属アルミニウムまたはその酸化物の蒸着層、シリカ蒸着層等の金属または金属酸化物層や、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂層からなるガスバリア性・水蒸気バリア性の高い層からなる中間層等を積層させることができ、このような積層プラスチックフィルムFは、レトルト食品用パウチを構成するフィルム(食品側にポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂からなる熱融着可能な樹脂層を有し、外側にポリエステル、ポリアミドなどのガスバリア性の高い樹脂や、アルミ箔などからなる層を設けてなる積層フィルム)等として好適にされている。
【0044】
積層プラスチックフィルムFの製造方法としては、ドライ積層法、押出積層法、共押出法等が挙げられるが、好ましくは、ベース層20とシーラント第1層(A1)とは、ドライ積層法により接着して積層させ、シーラント第1層(A1)とシーラント第2層(A2)とは、押出積層法により積層することであり、とくにインフレーション法が好ましい。
【0045】
また、本発明では、図7に示すように一対の第1横シールロール6a、6bの少なくとも一方に設けたシール刃9表面に、第1横シールロール6a、6bの軸線方向に延在して1以上の条溝10を設けることが好ましい。これによれば、シール刃9表面が、条溝10を介して回転方向に狭幅に区画されることになるため、条溝10を形成していないシール刃に比べて挟持力(押圧力)が高くなり、被包装物Mを効果的に絞り出すことができると共に、横シール位置に残存する固形物Sの粉砕含浸処理を効果的に行うことができ、また、横シール部7のシール強度を高めることもできる。
【0046】
なお、条溝10の最大深さは、シール刃9どうしの当接によってヒートシールする重なり合う積層プラスチックフィルムFのトータル厚み以下である、300μm以下、好ましくは30μm以上200μm以下、より好ましくは40μm以上160μm以下とし、これによれば、重なり合う積層プラスチックフィルムFどうしを、条溝10部分において表裏からしっかりと挟持して加熱、加圧することができるため、上記効果を一層高めることができる。
【0047】
上記実施形態では、三方シール形の包装体Wを一例として説明したが、包装体Wは四方シール形や背貼りシール形等、各種のものとすることができる。
【0048】
また、被包装物Mが液状または粘稠状のものなどからなる場合には、図8に示すように包装体Wには、包装袋本体13の上部側縁または上端縁14(図8では上端縁14)から突出するように逆止機能を有するフィルム状注出ノズル15を設けてもよく、この場合には、使用開始後においても包装体W内へ外気が進入するのを防止することができるため、袋内に細菌やゴミが進入することや、袋内でのカビ等の好気性菌の成長を抑制することができる。
【0049】
なお、逆止機能を有するフィルム状注出ノズル15は、少なくともベース層と、該ベース層の両面に積層されたシーラント層とを具えるプラスチック製の積層フィルムからなり、該プラスチック製の積層フィルムを表裏に重ね合わせた状態で、基端部を除いて周縁部で熱融着することで中央部に注出通路が区画形成されたものである。
【0050】
また、前記フィルム状注出ノズル15の逆止機能とは、包装体W内の被包装物Mの注出を、包装体Wの傾動または包装体Wへの押圧によって外気を吸い込むことなく行うと共に、包装体Wの起立復帰または包装体Wへの押圧の解除に基づく注出の停止に当っては、包装体W内の減圧雰囲気に伴う負圧に晒されて、注出ノズルの注出通路内面どうしが、注出通路の内表面に付着する(包装体W内から流入した)被包装物Mによる薄膜の介在下で直ちに密着し、包装体W内への外気の侵入を阻止するセルフシール機能のことである。
【0051】
被包装物Mが飲食品からなる場合には、包装体W内での微生物の増殖を抑制するため、被包装物MのpHを4.0未満とすることが好ましい。これは、飲食品の保存に関係のある微生物の種類によって発育可能なpH値が異なり、pHを4.0未満とすることで一般細菌や大腸菌、乳酸菌の増殖を抑制することができるためである。
【0052】
さらに、被包装物Mは、70℃以上に加熱した状態で包装袋W内に充填包装する(ホットパック)ことが好ましい。これによれば飲食品の保存に関係のある種々の微生物を殺菌することができるため、例えばpHを4.0未満に調整しても増殖を抑制することができないようなカビ(酸性生育限界値:pH:2.0、死滅温度70℃)や酵母(酸性生育限界値:pH:3.0、死滅温度60℃)であっても死滅させることができ、包装体W内の被包装物の汚染リスクをより一層、低減することができる。
【0053】
したがって、包装体Wにフィルム状注出ノズル15を設けることや、充填する被包装物MのpHを調整すること、さらには被包装物Mを70℃以上に加熱して充填包装することを充填する被包装物Mによって種々選択することで、本発明の充填包装方法によって例えば、果物や野菜等を生のまま充填したとしても、包装体W内での微生物の増殖を効果的に抑制することができるようになり、従来よりも長期の保管が可能になる。
【実施例
【0054】
(実施例1)
本実施例では、固形物を含有する液状物からなる被包装物を夾雑物シール充填するに際し、本発明の高圧の横シールロールを用いて粉砕含浸処理によって形成した横シール部(実施例)と、従来の方法で形成した横シール部(比較例)について評価を行った。
なお、液状物としては、液体:レモンの絞り汁と、固形物:レモンの絞り残りとなるじょうのう膜や内果皮等をみじん切りにしたものを用いた。また他の条件としては以下のとおりとした。
包装袋のサイズ: 袋幅100mm×長さ300mm
包装用フィルムのフィルム構成:PET12μm/ナイロン15μm/PE60μm
シール刃 :幅35mm フラット
ヒートシール温度:125℃
横シールロール圧力:(実施例)左/右=1200/1200kPa
(比較例)左/右=300/300kPa
横シールロール周速:4m/min
【0055】
図9は、(a)実施例の横シール部と、(b)比較例の横シール部のシール面を比較して示す写真である。
実施例の横シール部では、目視では固形物の噛み込みが確認できなかった。これに対し、比較例の横シール部では、目視で大きな噛み込みが複数個所で確認され、この中には長い繊維状の固形物が噛み込んでいるものもあった。
これにより、比較例の包装体では、固形物が十分に粉砕しきれず、長径のまま横シール部内に噛み込まれて隙間等が発生し、シール不良によって液漏れが発生するおそれがあるのに対し、実施例の包装体では、横シールロールの圧力を高圧にしたことで、固形物が細かく粉砕されると共に含浸処理され、良好なシール状態が得られることが確認できた。
【0056】
また、比較例の横シール部は、45N/幅15mm程度のシール強度であったのに対し、実施例の横シール部では、50~60N/幅15mm以上の高いシール強度が得られた。
【0057】
さらに、横シール部の断層写真を図10に示す。
図10(a)の実施例の横シール部では、固形物が粉砕含浸処理されて、該固形物の残留箇所においても厚みが5μm程度しか増加せず、横シール部表面にも凹凸等は見られなかった。
これに対し、図10(b)の比較例の横シール部では、固形物の残留箇所の厚みが、他の箇所よりも大きく膨れており、また連続した長い噛み込み箇所が発生しているため、該箇所が通路となって液状物が漏れ出すおそれが高いことがわかる。
【0058】
(実施例2)
飲食品用の包装体については、微生物の汚染のリスクを低減することが求められる。一般的には、飲食品の腐敗の目安としてはカビの有無が考えられ、その発育には、栄養やpHの他、自由水や結合水といった水分の有無が重要となる。そこで、本実施例では、固形物を含有する液状物からなる被包装物を夾雑物シール充填するに際し、本発明の高圧の横シールロールを用いて粉砕含浸処理によって形成した横シール部(実施例)と、従来の方法で形成した横シール部(比較例)について、フィルム端面にカビを塗布し、それらを培養して、フィルム端面にカビが増殖するかどうか経時的に評価を行った。
【0059】
各条件は下記のとおりとした。
液状物:水+ゴマ
包装袋のサイズ: 袋幅100mm×長さ300mm
包装用フィルムのフィルム構成:PET12μm/ナイロン15μm/PE60μm
シール刃 :幅35mm フラット
ヒートシール温度:125℃
横シールロール圧力:(実施例)左/右=1200/1200kPa
(比較例)左/右=300/300kPa
横シールロール周速:4m/min
【0060】
試験方法としては、製造した包装体の横シール部から評価サンプル片(10mm×10mm、サンプル数:N=3)を切り取り、各サンプル片の端面にカビ(黒カビ:Cladosporium cladosporioides)を少量塗布し、平板培地(ポテトデキストロース寒天培地)上に乗せ、25℃で2週間培養を行った。
【0061】
その結果、比較例のサンプル片では、7日目にカビの発生が確認され、2週間目にはサンプル片の端面からカビが円形状に大きく広がっている様子が確認された。これは、サンプル片(横シール部)内に固形物や水分が残り、固形物の残留によって形成される隙間等から液状物が端面に漏れ出す等して、カビが増殖した結果であると考えられる。
【0062】
これに対し、実施例のサンプル片では、2週間経過後もカビの発生が確認されなかった。これは、粉砕含浸処理によって横シール部内に残留する固形物および水分が、溶融したシーラント樹脂(PE)による含浸によって、横シール部内に分散した状態で固く封じ込められ、横シール部内に通路となるような隙間等が発生することがなく、またサンプル片(横シール部)の端面に水分が漏出することがなく、カビが増殖しなかったものと推測される。本実施例により、本発明の粉砕含浸処理によって、包装体のカビによる汚染リスクを低減することができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の固形物含有被包装物のプラスチック製包装袋内への充填包装方法は、固形物を含む液状や粘稠状、さらには流動性を有する固形物のみならず、固形物を含まない接着剤やシリコン樹脂のような高粘度で流動性の低い物質の充填包装にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 充填包装機
2 ガイドロッド
3 縦シールロール
4 縦シール部
5 充填ノズル
6a、6b 第1横シールロール
7 横シール部
8a、8b 第2横シールロール
9 シール刃
10 条溝
11 未融着部分
12 切断機構
13 包装袋本体
14 上端縁
15 フィルム状注出ノズル
20 ベース層
21 シーラント層
21’ シーラント樹脂
A1 シーラント第1層
A2 シーラント第2層
R フィルムロール
F 積層プラスチックフィルム
S 固形物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10