(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ジッパーテープおよびジッパーテープ付き容器
(51)【国際特許分類】
A44B 19/16 20060101AFI20230119BHJP
B65D 75/58 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A44B19/16
B65D75/58
(21)【出願番号】P 2020549212
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037263
(87)【国際公開番号】W WO2020067008
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018181737
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 太士郎
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/054313(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/024582(WO,A1)
【文献】特開2009-18052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B19/16
B65D33/25
B65D75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の基部条片、および前記1対の基部条片の互いに対向する面からそれぞれ突出し互いに係合可能な係合部を断面形状に含む長尺状のジッパーテープであって、
少なくとも前記係合部がポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成され、前記樹脂組成物の示差走査熱量測定(DSC)における120℃以上の温度範囲での融解エンタルピーΔH
120が30J/g未満、かつ前記樹脂組成物の引張弾性率が600MPa以下であるジッパーテープ。
【請求項2】
前記融解エンタルピーΔH
120が30J/g未満、かつ前記引張弾性率が500MPa以下、又は、前記融解エンタルピーΔH
120が20J/g以下、かつ前記引張弾性率が600MPa以下である、請求項1に記載のジッパーテープ。
【請求項3】
前記融解エンタルピーΔH
120が20J/g超30J/g未満、かつ前記引張弾性率が100MPa以上500MPa以下、又は、前記融解エンタルピーΔH
120が5J/g超20J/g以下、かつ前記引張弾性率が100MPa以上600MPa以下である、請求項1に記載のジッパーテープ。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、改質剤をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のジッパーテープ。
【請求項5】
前記改質剤は、エチレン-プロピレンゴム(EPR)を含む、請求項4に記載のジッパーテープ。
【請求項6】
前記基部条片の少なくとも一部が前記係合部を形成する前記樹脂組成物とは異なる樹脂組成物で形成される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のジッパーテープ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のジッパーテープと、
前記ジッパーテープが接合される容器本体と
を備えるジッパーテープ付き容器。
【請求項8】
前記容器本体は、袋体を形成する、請求項7に記載のジッパーテープ付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッパーテープおよびジッパーテープ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ジッパーテープ付き袋の製造工程は、ジッパーテープが接合されたフィルムを互いに対向させ、袋の両端にあたる部分をジッパーテープごとシールするサイドシール工程を含む。このとき、フィルムの内面から突出するジッパーテープの係合部で接合不良があるとピンホールが発生して袋の封止性が低下するため、サイドシール部の形成前にジッパーテープの係合部を予め偏平に変形させるポイントシール工程が実施される。
【0003】
ところが、このポイントシール工程が製造工程の速度制約になる場合があった。ポイントシールの温度を上昇させれば工程にかかる時間を短縮できるが、フィルムの耐熱性が低い場合には皺が発生するため、温度上昇には限界がある。特に、ジッパーテープの係合部がポリプロピレンで形成される場合、ポリプロピレンの融点が高いためにポイントシール工程により長い時間がかかり、製造工程に大きな速度制約をもたらしていた。
【0004】
この点に関し、特許文献1には、内部にアルミニウム箔を有するジッパーテープ付き包装袋において、ジッパーテープの基部を係合部よりも引張弾性率が高い樹脂で形成することによって、ヒートシール時の皺の発生を防止し、またポイントシール工程でのアルミニウム割れを防止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1は、内部にアルミニウム箔を有するジッパーテープ付き包装袋において皺の発生やアルミニウム割れを防止するための技術であって、上述したようなジッパーテープの係合部がポリプロピレンで形成される場合にポイントシール工程により長い時間がかかるという課題に対処したものではない。
【0007】
そこで、本発明は、ジッパーテープの係合部がポリプロピレンを含む樹脂で形成される場合にサイドシール部分でのポイントシール工程を短縮または省略することを可能にする、新規かつ改良されたジッパーテープおよびジッパーテープ付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある観点によれば、1対の基部条片、および1対の基部条片の互いに対向する面からそれぞれ突出し互いに係合可能な係合部を断面形状に含む長尺状のジッパーテープであって、少なくとも係合部がポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成され、樹脂組成物の示差走査熱量測定(DSC)における120℃以上の温度範囲での融解エンタルピーΔH120が30J/g未満、かつ引張弾性率が600MPa以下であるジッパーテープが提供される。
【0009】
上記のジッパーテープにおいて、融解エンタルピーΔH120が30J/g未満、かつ引張弾性率が500MPa以下、又は、融解エンタルピーΔH120が20J/g未満、かつ引張弾性率が600MPa以下であってもよい。あるいは、融解エンタルピーΔH120が20J/g超30J/g未満、かつ引張弾性率が100MPa以上500MPa以下、又は、融解エンタルピーΔH120が5J/g超20J/g以下、かつ引張弾性率が100MPa以上600MPa以下であってもよい。
また、上記のジッパーテープにおいて、樹脂組成物は、改質剤をさらに含んでもよい。改質剤は、エチレン-プロピレンゴム(EPR)を含んでもよい。また、基部条片の少なくとも一部が係合部を形成する樹脂組成物とは異なる樹脂組成物で形成されてもよい。
【0010】
本発明の別の観点によれば、上記のジッパーテープと、ジッパーテープが接合される容器本体とを備えるジッパーテープ付き容器が提供される。容器本体は、袋体を形成してもよい。
【0011】
上記の構成によれば、ジッパーテープの係合部の潰し性が向上するため、係合部がポリプロピレンを含む樹脂で形成される場合にサイドシール部分でのポイントシール工程を短縮または省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋の平面図である。
【
図2】
図1に示すジッパーテープ付き袋のII-II線断面図である。
【
図3】樹脂組成物の融解エンタルピーΔH
120について説明するためのグラフである。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋の平面図であり、
図2は
図1に示すジッパーテープ付き袋のII-II線断面図である。
図1および
図2に示されるように、第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋1は、第1面11Aおよび第2面11Bを有する袋体を形成するフィルム10と、ジッパーテープ20とを含む。
【0015】
フィルム10は、本実施形態における容器本体であり、例えば単層または多層の熱可塑性樹脂で形成される。より具体的には、フィルム10は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリプロピレン(PP)で形成された層を含んでもよい。PPは、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、またはブロックポリプロピレン(BPP)であってもよい。フィルム10が多層である場合、表基材に二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)、または二軸延伸ナイロン(ONy)を用いてもよい。また、フィルム10は、アルミニウム蒸着やアルミニウム箔の積層などによって形成された無機材料の層を含んでもよい。
【0016】
なお、本実施形態では、2枚のフィルム10がボトムシール部12およびサイドシール部13において互いに接合されることによって第1面11Aおよび第2面11Bを有する袋体を形成しているが、別の実施形態では、1枚のフィルム10がサイドシール部13に対応する部分で折り返されることによって第1面11Aおよび第2面11Bが形成されてもよい。あるいは、
図1の例におけるボトムシール部12またはサイドシール部13に対応する部分でフィルム10が内側に折り込まれた部分、いわゆるガセットが形成されてもよい。この場合、ガセットは、フィルム10によって形成されてもよいし、フィルム10に接合された別のフィルムによって形成されてもよい。また、ジッパーテープ付き袋1は、底部にガセットが形成されることによって立てて置くことが可能なスタンディングパウチであってもよい。
【0017】
また、本実施形態では、ボトムシール部12およびサイドシール部13が形成される一方で、トップシール部が形成されないことによってジッパーテープ付き袋1の開口部14が形成されているが、別の実施形態では、ボトムシール部12およびサイドシール部13に加えてトップシール部が形成され、トップシール部とジッパーテープ20との間を切断することによって事後的にジッパーテープ付き袋1に開口部14を形成することが可能であってもよい。さらに別の実施形態では、ボトムシール部12が形成されない、すなわちジッパーテープ付き袋1がジッパーテープ20とは反対側で封止されていない状態で袋体が提供されてもよい。この場合、ボトムシール部12はジッパーテープ付き袋1に内容物を充填した後で形成される。これ以外にも、ジッパーテープが融着されるものであれば、公知の各種の構成の袋、および袋以外の容器にジッパーテープを接合して本発明の実施形態に係るジッパーテープ付き容器とすることが可能である。
【0018】
ジッパーテープ20は、
図2に示されるように、フィルム10の第1面11Aおよび第2面11Bにそれぞれ接合される1対の基部条片21A,21Bと、基部条片21A,21Bの互いに対向する面からそれぞれ突出し互いに係合可能な係合部22A,22Bと断面形状に含む長尺状の部材である。図示された例において、係合部22Aは雄型の断面形状を有し、係合部22Bは雌型の断面形状を有し、これらの係合部22A,22Bが互いに係合することによってジッパーテープ20が閉じられ、ジッパーテープ付き袋1の開口部14が封止される。なお、雄型および雌型に限られず、爪状、鉤状、または瘤状などを組み合わせた公知の各種のジッパーテープの係合部の形状を、上記の例の係合部22A,22Bに適用することも可能である。
【0019】
本実施形態では、ジッパーテープ20の基部条片21A,21Bおよび係合部22A,22Bが、ポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成される。樹脂組成物に含まれるポリプロピレンは、具体的には例えばランダムポリプロピレン(RPP)である。この樹脂組成物は、以下で説明する示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)における120℃以上の温度範囲の融解エンタルピーΔH120が30J/g未満であり、かつ引張弾性率が600MPa以下である。ΔH120は、好ましくは25J/g以下であり、より好ましくは20J/g以下である。ΔH120が30J/g未満であると潰し性がより向上する。ΔH120の下限値は、特に限定されないが、通常の場合においてΔH120は5J/g以上である。ΔH120と引張弾性率との組み合わせについては、ΔH120が20J/g超30J/g未満である場合には引張弾性率が500MPa以下であることが好ましく、ΔH120が20J/g以下である場合には引張弾性率が600MPa以下であることが好ましい。引張弾性率については、好ましくは400MPa以下であり、350MPa以下であることがより好ましい。引張弾性率が600MPa以下とすることで、より潰し性が向上する。引張弾性率の下限値は特に限定されないが、通常の場合において引張弾性率は100MPa以上である。
【0020】
図3は、樹脂組成物の融解エンタルピーΔH
120について説明するためのグラフである。なお、以下の説明では、DSCの測定方法および解析方法についてはJIS K7121「プラスチックの転移温度測定方法」を前提とする。DSCにおける融解エンタルピーΔHは、温度Tを横軸とするDSC曲線のピークにおけるDSC曲線とベースラインとの間の領域の面積として求められる。従って、図示されているように、120℃以上の温度範囲の融解エンタルピーΔH
120は、上記の領域で温度T≧120℃を満たす部分の面積として求められる。ここで、DSC曲線のピークについて、JIS K7121では「曲線がベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分」と定義されており、ベースラインは「試験片に転移および反応を生じない温度領域の(中略)DSC曲線」と定義されている。つまり、DSC曲線が一旦ベースラインに達した後、転移または反応が生じ始めてから、生じなくなるまでの温度領域がピークである。ただし、本実施形態では、樹脂組成物の組成によってはピークの開始温度の特定が困難な場合があることに鑑み、ピークの開始温度を20℃に固定する。この場合、DSC曲線のピークは「温度20℃から、試験片に転移および反応が生じなくなるまでの部分」になり、融解エンタルピーΔHを求めるためのベースラインは「温度20℃から、ピーク終点、すなわち試験片に転移および反応が生じなくなる点までを結ぶ線分」になる。
【0021】
一方、引張弾性率は、樹脂組成物の変形のしにくさの指標であり、本実施形態ではJIS K7161「プラスチック-引張特性の試験方法」を前提とする。
【0022】
本実施形態においてジッパーテープ20の係合部22A,22Bを形成する樹脂組成物には、改質剤を添加してもよい。改質剤は、例えばエチレン-プロピレンゴム(EPR)である。他にも、改質剤として例えばエチレン-ブテン-1(EBR)や、プロピレン-ブテン-1(PBR)、ターポリマー、石油樹脂を用いることができる。潰し性向上のためには、改質剤としてもΔHが小さい樹脂を用いることが望ましい。
【0023】
本実施形態では、ジッパーテープ20の係合部22A,22Bを上記のような樹脂組成物で形成することによって係合部22A,22Bの潰し性が向上する。基部条片21A,21Bから突出する異形部分である係合部22A,22Bの潰し性が向上することによって、サイドシール部13の形成前にジッパーテープ20の係合部22A,22Bを予め偏平に変形させるポイントシール工程が低い温度で実施可能になることによって短縮されるか、または省略可能になる。
【0024】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋の断面図である。
図4に示されるように、第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋2は、フィルム10と、ジッパーテープ30とを含む。なお、フィルム10の構成については、上記の第1の実施形態と同様であるため、以下では重複した説明を省略する。
【0025】
ジッパーテープ30は、フィルム10の第1面11Aおよび第2面11Bにそれぞれ接合される1対の基部条片31A,31Bと、基部条片31A,31Bの互いに対向する面からそれぞれ突出する係合部22A,22Bとを含む。係合部22A,22Bは、上記の第1の実施形態と同様に構成され、互いに係合可能である。係合部22A,22Bは、ポリプロピレンを含み、示差走査熱量測定(DSC)における120℃以上の温度範囲の融解エンタルピーΔH120が30J/g未満であり、かつ引張弾性率が600MPa以下である。ΔH120は、好ましくは25J/g以下であり、より好ましくは20J/g以下である。ΔH120の下限値は、特に限定されないが、通常の場合においてΔH120は5J/g以上である。ΔH120が30J/g未満であると潰し性がより向上する。ΔH120と引張弾性率との組み合わせについては、ΔH120が20J/g超30J/g未満である場合には引張弾性率が500MPa以下であることが好ましく、ΔH120が20J/g未満である場合には引張弾性率が600MPa以下であることが好ましい。引張弾性率については、好ましくは400MPa以下であり、350MPa以下であることがより好ましい。引張弾性率が600MPa以下とすることで、より潰し性が向上する。引張弾性率の下限値は特に限定されないが、通常の場合において引張弾性率は100MPa以上である。
【0026】
一方、ジッパーテープ30の基部条片31A,31Bは、係合部22A,22Bとは異なる樹脂組成物で形成される。基部条片31A,31Bを形成する樹脂組成物は、係合部22A,22Bを形成する樹脂組成物と同様の融解エンタルピーΔH120や弾性率に関する条件を満たしてもよいし、満たさなくてもよい。ジッパーテープ30は、例えば係合部22A,22Bを形成する樹脂組成物と、基部条片31A,31Bを形成する樹脂組成物とを共押出成形することによって形成される。基部条片31A,31Bは、さらにいくつかの部分に分かれ、それぞれの部分が異なる樹脂組成物で形成されてもよい。
【0027】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、ジッパーテープ30の係合部22A,22Bの潰し性が向上するため、サイドシール部13のポイントシール工程が低い温度で実施可能になることによって短縮されるか、または省略可能になる。
【実施例】
【0028】
以下では、本発明の実施例について説明する。なお、実施例では、DSCにパーキンエルマージャパン社製の「Diamond DSC」を使用し、樹脂組成物の試験片を0℃で5分間等温保持した後で、10.00℃/分で220℃まで昇温(1st Run)させたときのDSC曲線から、上述したようなピークおよびベースラインの定義に従って120℃以上の温度範囲の融解エンタルピーΔH120を算出した。なお、融解エンタルピーΔH120の算出について、上記の条件以外はJIS K7121による。
【0029】
一方、引張弾性率の測定には、島津製作所社製「オートグラフ AGSX-1kN」を使用し、引張速度500mm/min、試験片間(掴み部)距離100mmとし、JIS K-7161に従って算出した。ただし、試験片の掴み部が100mmに満たない場合は、引張弾性率式の試験片が1%歪み時の荷重を調整することで算出した。なお、本実施例において、引張弾性率は(1)引張弾性率(kg/cm2)=試験片が1%歪み時の荷重(kg)/(試験片幅*試験片厚み(cm2))及び(2)引張弾性率(MPa)=引張弾性率(kg/cm2)*0.0980665によって算出されるが、上記の実施形態で説明したジッパーテープのような複雑形状の試験片の場合は幅と厚みが定義できないため、光学顕微鏡を用いて雄型および雌型の係合部の断面積(cm2)を測定することで代用した。ここで、係合部の断面積は、それぞれ基部条片に垂直であり、かつ係合部を幅方向で包含する2つの平面の間に存在する係合部の断面積とするが、基部条片の切除部分の大きさにばらつきがあるため、試験片毎に断面積を測定した。
【0030】
上記で説明した本発明の第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋において、ジッパーテープの係合部および基部条片を形成する樹脂組成物のΔH120が30J/g以下、かつ引張弾性率が500MPa以下であるものを実施例1~実施例6、樹脂組成物のΔH120が20J/g以下、かつ引張弾性率が600MPa以下であるものを実施例7として、サイドシール部でのピンホールの有無を評価した。
【0031】
実施例1~実施例7のジッパーテープでは、係合部および基部条片を形成する樹脂組成物に含まれるポリプロピレンとして、融点123℃、メルトフローレート7.0g/分のメタロセンランダムポリプロピレン(表1ではポリプロピレンAと記載)、融点125℃、メルトフローレート6.0g/分のポリプロピレン(表1ではポリプロピレンBと記載)、融点131℃、メルトフローレート7.0g/分のランダムポリプロピレン(表1ではポリプロピレンCと記載)を使用した。また、改質剤として密度0.89g/cm3、メルトフローレート6.0g/のメタロセン軟質ポリプロピレン(表1では改質剤Iと記載)、密度0.89g/cm3、メルトフローレート8.0g/のエチレン-プロピレンゴム(表1では改質剤IIと記載)、密度0.88g/cm3、メルトフローレート8.0g/のエチレン-プロピレンゴム(表1では改質剤IIIと記載)を用意した。これらを単一または所定の比率で混合して形成される原料組成物を押出成形した後、水冷することによりジッパーテープを作製した。なお、各材料の融点は材料毎にジッパーテープを作製したものを前述のDSCより算出した。
【0032】
一方、比較例1~比較例4として、ΔH120、引張弾性率のいずれかまたは両方が実施例1~実施例6の範囲を逸脱する樹脂組成物でジッパーテープを作成した。また、比較例5として、引張弾性率が518MPaであり、ΔH120が30J/gである樹脂組成物でジッパーテープを作製し、第1の実施形態と同様のフィルムに接合してジッパーテープ付き袋とした。
【0033】
実施例1~実施例7および比較例1~比較例5において、ピンホールが発生しない最低のポイントシール温度(最低潰し温度)の評価結果を表1に示す。評価方法は以下のとおりである。
【0034】
(製袋条件)
トタニ技研工業社製三方プレスシール自動製袋機「BH-60HV」を用いて、OPP#30/CPP#40のラミネートフィルムを使用し、実施例1~実施例7および比較例1~比較例4のジッパーテープとラミネートフィルムとについて、ポイントシール2段、サイドシール2段、サイド冷却2段でシール時間0.25秒、加速度0.6G、待機時間0秒、送り長160mm、ジッパーシール温度150℃、サイドシール温度150℃を共通のシール条件とし、ポイントシールの温度を適宜変化させながら評価サンプルを得た。この評価サンプルについて、最低潰し温度によって潰し性を評価した。表1では、最低潰し温度が180℃未満の場合を”GOOD”、180℃以上190℃未満の場合を”FAIR”、190℃以上200℃未満の場合を”POOR”として示している。
【0035】
(ピンホールの有無)
実施例1~実施例7および比較例1~比較例5のジッパーテープ付き袋内にインクで着色したアルコールを封入し、サイドシール部におけるピンホールの有無を評価した。表1に示された最低潰し温度は、サイドシール部から着色したアルコールが漏れた場合に2段設けられているポイントシール温度を5℃ずつ昇温させ、アルコールが漏れなくなった時点のポイントシール温度である。
【0036】
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0038】
1,2…ジッパーテープ付き袋、10…フィルム、12…ボトムシール部、13…サイドシール部、14…開口部、20,30…ジッパーテープ、21A,21B,31A,31B…基部条片、22A,22B…係合部。