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特許7213002アドレス指定可能な焦点手がかりを用いた立体視ディスプレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】アドレス指定可能な焦点手がかりを用いた立体視ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230119BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20230119BHJP
   H04N 13/344 20180101ALI20230119BHJP
   G02B 25/00 20060101ALI20230119BHJP
   G02B 17/08 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
H04N13/344
G02B25/00 A
G02B17/08 A
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020189912
(22)【出願日】2020-11-14
(62)【分割の表示】P 2019087244の分割
【原出願日】2013-10-17
(65)【公開番号】P2021047417
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2020-12-12
(31)【優先権主張番号】61/795,500
(32)【優先日】2012-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505167532
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】フア、ホン
(72)【発明者】
【氏名】フー、シンダ
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/096325(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0075257(US,A1)
【文献】特開平07-306377(JP,A)
【文献】特開2002-031776(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101634750(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0081800(US,A1)
【文献】特開2001-147400(JP,A)
【文献】Xinda Hu et.al.,A Depth-Fused Multi-Focal-Plane Display Prototype Enabling Focus Cues in Stereoscopic Displays,Digest of Technical Papers (SID 11 DIGEST),米国,Society for Information Dispay,2011年05月,Vol.42-2,pp. 691-694
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
H04N 5/64
H04N 13/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の奥行ゾーンを有する仮想画像を表示し、当該仮想画像の焦点距離を異なる奥行ゾーンに調整可能なように構成された仮想ディスプレイシステムであって、
ユーザーに表示するための仮想画像を提供するマイクロディスプレイと、
可変屈折力を提供するように構成された能動反射光学素子であって、前記仮想ディスプレイシステムの絞りを画定するものである、前記能動反射光学素子と、
焦点距離fを有するリレーレンズであって、前記マイクロディスプレイと前記能動反射光学素子との間の光路上に配置されているものである、前記リレーレンズと、
焦点距離feyeを有するシースルー接眼レンズであって、
前記能動反射光学素子から光放射を受光し、受光した光放射を前記仮想ディスプレイシステムの射出瞳に反射させて仮想表示光路を提供するように構成された選択された面を有し、
当該シースルー接眼レンズにより前記仮想ディスプレイシステムの絞りが中継され、この中継された絞りによって前記射出瞳が形成されるものであり、
前記選択された面は、前記マイクロディスプレイ以外の光源から光放射を受光し、当該光放射を前記射出瞳に透過させてシースルー光路を提供するように構成されているものである、
前記シースルー接眼レンズと
を有し、
前記射出瞳のサイズDxpの前記能動反射光学素子のサイズDDMMDに対する比は、
【数9】
である、仮想ディスプレイシステム。
【請求項2】
請求項1記載の仮想ディスプレイシステムにおいて、前記シースルー接眼レンズは、フリーフォームのプリズム形状を有するものである、仮想ディスプレイシステム。
【請求項3】
請求項1記載の仮想ディスプレイシステムにおいて、前記シースルー接眼レンズは前記能動反射光学素子から光放射を受光し当該光放射を屈折させるように構成された第1の面と、前記第1の面から屈折された前記光放射を受光するように構成され、前記光放射を前記シースルー接眼レンズの前記選択された面に向けて反射させるように構成された第2の面とを有するものである、仮想ディスプレイシステム。
【請求項4】
請求項3記載の仮想ディスプレイシステムにおいて、前記第2の面は、前記光放射を内部全反射させるように構成されているものである、仮想ディスプレイシステム。
【請求項5】
請求項1記載の仮想ディスプレイシステムにおいて、前記シースルー接眼レンズは、前記選択された面を含む複数の面を有し、当該複数の面のうちの1もしくはそれ以上は、回転非対称な面を有するものである、仮想ディスプレイシステム。
【請求項6】
請求項1記載の仮想ディスプレイシステムにおいて、この仮想ディスプレイシステムは、前記シースルー接眼レンズの前記選択された面に隣接する前記シースルー光路上に配置された、収差および歪みを補償するためのシースルー接眼レンズ補償板を有するものである、仮想ディスプレイシステム。
【請求項7】
請求項1記載の仮想ディスプレイシステムにおいて、この仮想ディスプレイシステムは、前記マイクロディスプレイに隣接して配置され、前記マイクロディスプレイの拡大倍率を提供するように構成された視野レンズを有するものである、仮想ディスプレイシステム。
【請求項8】
請求項7記載の仮想ディスプレイシステムにおいて、前記視野レンズは、非球面および回折光学特徴を有するものである、仮想ディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年10月18日付で出願され、この参照によりその全部が本明細書内に組み込まれる、米国仮出願第61/795,500号に対する優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、全米科学財団(National Science Foundation:NSF)により授与された第IIS0915035号の下に政府支援を得てなされたものである。本発明について、政府は一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、立体視ディスプレイに関し、より具体的に、しかし排他的にではなく、アドレス指定可能な焦点手がかりを用いた立体視ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0004】
従来の立体視3次元ディスプレイは、両眼視差に基づいた奥行きの錯視を生じさせ、視聴者から固定距離離れた位置に、1対の遠近感のある2次元画像から3次元の光景を描画する。したがって、従来の立体視ディスプレイは、調節手がかりおよび輻輳手がかりの不自然な非干渉化を強い、知覚された奥行きのゆがみ、複視、視覚的不快感、および疲労などの、立体視ディスプレイにおける様々な視覚的な画像の乱れの原因となることがある。ボリュメトリックディスプレイ、ホログラフィックディスプレイ、および多焦点面ディスプレイのように、従来の立体視ディスプレイの欠点を克服できる多くの方法が提案されている。しかし、調節/輻輳(accommodation-convergence)の根本的な問題を解決し、かつまた高画質かつフリッカーフリーの速度で大きな体積の連続3次元光景を描画する光学的シースルー立体視ディスプレイを開発する必要がある。
【0005】
アドレス指定可能な焦点手がかりを用いた立体視ディスプレイは、3次元仮想物体の正確なまたはほぼ正確な焦点手がかりを描画する機能を提供するうえでの根本的な調節/輻輳問題を解決するための、将来的に最も有望な方法の1つである。従来の立体視ディスプレイとは異なり、アドレス指定可能な焦点手がかりを用いた立体視ディスプレイは、視聴者の関心のある領域に基づいて能動光学素子によって仮想表示の焦点距離を動的に変化させる、可変焦点表示モードとして知られる機能、または視聴者の関心のある領域を追跡する必要なくフリッカーフリーの速度で複数の焦点面を表示する、多焦点表示モードとして知られる機能のいずれかを可能とする。例えば、多焦点面ディスプレイは、視軸上に綿密に配置された複数の個別の焦点距離の位置に遠近感のある2次元画像を表示する。これらの個別の焦点面は、3次元光景の体積を複数のゾーンとしてサンプリングし、各ゾーン内の物体は、図1に示すように、このゾーンに対応する隣り合った1対の焦点面によって描画される。したがって、多焦点面ディスプレイは、異なる奥行きにある仮想物体のための正確なまたはほぼ正確な焦点手がかりを描画することができる。ホログラフィックディスプレイおよびボリュメトリックディスプレイのような多視点ディスプレイとは対照的に、多焦点面ディスプレイは固視点ディスプレイである。視点位置を制限することにより、多焦点面ディスプレイシステムは、少数の視点を表示するだけでよい。また、多焦点ディスプレイは、2次元表示における視差、閉塞、および遠近法、ならびに正反射および陰影などの視角依存性の照明効果の描画を維持することができる。実運用上は、多焦点面ディスプレイの実施は、空間多重化または時間多重化の2つに分類することができる。空間多重化システムでは、複数の2次元表示を積み重ねることにより多焦点機能が実現される。より洗練された別の方法である時間多重化システムでは、単一の2次元表示からの画像の焦点距離が、複数の焦点面のフレーム描画と同期した能動光学素子によって高速で切り替えられる。一般に、多焦点面ディスプレイは、光学系の配置をあまり変更せずに可変焦点モードで使用できるようにすることが容易である。
【0006】
さらに、最近では、この参照によりその内容が本明細書内に組み込まれる共同所有の米国特許出願公報第2011/0075257号に反映されているように、奥行き知覚が改善されたアドレス指定可能な焦点面を有しながらも必要な計算能力を既存の方法よりもかなり軽減した、ヘッドマウント式とすることのできる立体視ディスプレイの分野で進捗が見られる。しかし、アドレス指定可能な焦点手がかりを用いた立体視ディスプレイにおいて向上した撮像性能を提供できる光学撮像システムの必要性が、依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その一観点において、ユーザーに向けて表示するための仮想画像を提供するマイクロディスプレイを有する、アドレス指定可能な焦点手がかり(addressable focus cues)を用いた仮想ディスプレイシステムを提供することができる。また、可変屈折力を提供するように構成された能動反射光学素子を提供することもできる。リレーレンズの共役平面に前記マイクロディスプレイと能動光学素子とを配置するようにして、前記マイクロディスプレイと前記能動光学素子との間の光路上に前記レリーレンズを配置することができる。前記マイクロディスプレイと前記能動光学素子との間の光路上に、前記能動光学素子から光放射を受光する方向に、ビームスプリッターを配置することができる。さらに、前記ビームスプリッターから光放射を受光し、受光した前記放射を前記システムの射出瞳に向けて反射させて仮想表示光路を提供するように構成された選択面を含む、シースルー接眼レンズを設けることもできる。前記選択面はまた、前記マイクロディスプレイ以外の(現実世界などの)光源から光放射を受光し、当該光放射を前記射出瞳に透過させてシースルー光路を提供するように構成することもできる。前記接眼レンズはフリーフォームのプリズム形状を含むことができ、具体的には、前記ビームスプリッターから光放射を受光し、これを屈折させるように構成された第1の面を含むことができ、かつまた前記第1の面から屈折した前記光放射を受光するように構成され、前記光放射を前記接眼レンズの前記選択面に向けて反射させるように構成された第2の面を含むことができる。前記第2の面は、前記光放射を内部全反射させるように構成することができ、また前記接眼レンズの前記面のうちの1つ以上は、回転非対称な面を有することができる。
【0008】
本発明は、その別の観点において、ユーザーに向けて表示するための仮想画像を提供するマイクロディスプレイを有するアドレス指定可能な焦点手がかりを用いた仮想ディスプレイシステム、および光放射を前記マイクロディスプレイから前記システムの射出瞳へと反射させるように構成された反射光学素子を有する接眼レンズを提供することができる。可変屈折力を提供するように構成された能動屈折光学素子を有するリレーレンズを、前記マイクロディスプレイと前記接眼レンズとの間の光路に沿って配置して前記マイクロディスプレイから前記接眼レンズに画像を中継することができる。前記リレーレンズは前記第1および第2のレンズ群を含み、当該第1のレンズ群と第2のレンズ群はその間に位置する前記能動光学素子と共に前記光路に沿って配置される。さらに、ビームスプリッターを、前記マイクロディスプレイと前記接眼レンズとの間の前記光路に沿って配置し、前記マイクロディスプレイ以外(現実世界など)の光源からの光放射を受光し、これを前記射出瞳に透過させてシースルー光路を提供するように構成することができる。前記接眼レンズは球面鏡を有することができ、前記システムは前記マイクロディスプレイ内でテレセントリックであることができる。前記システムはまた、3よりも小さいF値を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の前述の概要および以下の例示的な実施形態の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より深く理解することができる。
図1図1は、視聴者に対する複数の焦点面によって描画された3次元物体の概略図である。
図2図2は、本発明に係る例示的なディスプレイシステムの非屈曲光路の概略図である。
図3A図3Aは、本発明に係る例示的なディスプレイシステムの仮想表示光学系の2次元配置の概略図である。
図3B図3Bは、図3Aの例示的なディスプレイシステムであるが、シングレットではなく2つの光学素子を有する視野レンズを有する2次元配置の概略図である。
図3C図3Cは、図3Aおよび3Bのフリーフォーム接眼レンズおよび補償板がシースルー光路を示す概略図である。
図3D図3Dは、図3Aおよび3Bのフリーフォーム接眼レンズおよび補償板がシースルー光路および表示光路の両方を示す概略図である。
図4A図4A~4Eは、図3Bの仮想ディスプレイシステムの表示光路を通る多色MTFの図である。
図4B図4A~4Eは、図3Bの仮想ディスプレイシステムの表示光路を通る多色MTFの図である。
図4C図4A~4Eは、図3Bの仮想ディスプレイシステムの表示光路を通る多色MTFの図である。
図4D図4A~4Eは、図3Bの仮想ディスプレイシステムの表示光路を通る多色MTFの図である。
図4E図4A~4Eは、図3Bの仮想ディスプレイシステムの表示光路を通る多色MTFの図である。
図4F図4Fは、図3Bの仮想ディスプレイシステムの表示光路を通るゆがみグリッドの図である。
図5A図5A~5Eは、図3Bの仮想ディスプレイシステムのシースルー光路を通る多色MTFの図である。
図5B図5A~5Eは、図3Bの仮想ディスプレイシステムのシースルー光路を通る多色MTFの図である。
図5C図5A~5Eは、図3Bの仮想ディスプレイシステムのシースルー光路を通る多色MTFの図である。
図5D図5A~5Eは、図3Bの仮想ディスプレイシステムのシースルー光路を通る多色MTFの図である。
図5E図5A~5Eは、図3Bの仮想ディスプレイシステムのシースルー光路を通る多色MTFの図である。
図5F図5Fは、図3Bの仮想ディスプレイシステムのシースルー光路を通るゆがみグリッドの図である。
図6A図6Aは、図3Bのディスプレイシステムのリレー光学系を有するフリーフォーム接眼レンズの3次元配置の概略図である。
図6B図6Bは、図6Aのディスプレイシステムの組み立て後のフリーフォーム接眼レンズおよび補償板の3次元Solidworksモデルの概略図である。
図7A図7Aは、図3Bの設計に従って作製されたプロトタイプの接眼レンズを通して捕らえた、視野40度および奥行き3ディオプターの、奥行き融合した6焦点面の3次元光景の図である。
図7B図7Bおよび7Cは、図3Bの設計に従って作製したプロトタイプの、それぞれ2mおよび30cmに焦点を合わせたカメラで捕らえた、6焦点面の3次元光景の図である。
図7C図7Bおよび7Cは、図3Bの設計に従って作製したプロトタイプの、それぞれ2mおよび30cmに焦点を合わせたカメラで捕らえた、6焦点面の3次元光景の図である。
図8A図8Aは、2面の焦点面をそれぞれ1.2Dおよび1.8Dに配置し、輝度比を1:1とした二重焦点面表示内の調節の関数としての網膜像MTFの図である。
図8B図8Bは、異なる空間周波数のコントラスト勾配を示す調節の関数としての網膜像のコントラストの図である。
図9A図9Aおよび9Bは、それぞれ焦点面間の間隔が増加するとき、および眼の瞳孔の大きさが増加するときに、遷移点の空間周波数が低下する図である。
図9B図9Aおよび9Bは、それぞれ焦点面間の間隔が増加するとき、および眼の瞳孔の大きさが増加するときに、遷移点の空間周波数が低下する図である。
図10A図10Aおよび10Bは、本発明に係るさらなる例示的なディスプレイシステムの仮想表示光学系の、それぞれ2次元配置および3次元配置の概略図である。
図10B図10Aおよび10Bは、本発明に係るさらなる例示的なディスプレイシステムの仮想表示光学系の、それぞれ2次元配置および3次元配置の概略図である。
図11図11は、選択的に採用可能な表示照明光路を伴う図10Aのリレーレンズ群の2次元配置の概略図および要素の説明である。
図12A図12Aおよび12Bは、図10A~11の系のそれぞれ多色MTFおよび視野曲線の図である。
図12B図12Aおよび12Bは、図10A~11の系のそれぞれ多色MTFおよび視野曲線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本発明の一観点による、すべての図を通して同様の要素には同様の番号を付した図を参照すると、図2は、アドレス指定可能な焦点手がかりを用いた奥行き融合型多焦点面立体視ディスプレイ(in depth-fused multi-focal-plane stereoscopic displays)において高画質を提供するために特に好適な例示的な光学系の一次非屈曲光路を概略的に図示している。図3Aおよび3Bは、図2の配置に従った具体的な設計を概略的に図示しており、図3Aでは第1の光学系100が単一の視野レンズ18を有し、図3Bでは別の方法の系200が2つの素子17および19から成る視野レンズ18を有している。(視聴者の一方の眼に供する1組の光学系を図示しているものの、最終的な立体視装置では、このような光学系を各々の眼に1組のずつ、2組提供されることが分かる。)
【0011】
前記設計の関連性のある特徴は、デジタル・マイクロ・ミラー装置(digital micro-mirror device:DMD)60などのから接眼レンズ12の前部に前記画像を中継するリレーレンズ群20が含まれていることである。前記レリーレンズ群20は、従来の非変形レンズ21、および図2の膜可変形鏡80のような能動反射光学素子を含むことができる。前記リレーレンズ21は、図3Aおよび図3Bの1対のダブレット22、24とレンズ26とを含むことができる。前記膜可変形鏡装置(deformable membrane mirror device:DMMD)80は、前記リレーレンズ21の焦点面に配置することができ、前記系の絞りとして機能することができる。図2の前記レンズ21(または図3Aおよび3Bのレンズ22、24、および26)並びに前記DMMD80は、協働して奥行き融合型多焦点面立体視ディスプレイに特に好適な屈曲両側テレセントリック系を提供することができる。両側テレセントリックリレー20を設計する利点は、前記DMMD80上の屈折力が変化しても前記画像の拡大倍率は変化せずに中間画像の位置のみが変化するので、前記系の視野および視点空間の角度分解能が一定に保たれ、複数の焦点面上の対応する画素が1対1で相互に重なり合うことである。このように、図3Aおよび3Bの設計は、さもなくば像の異なる拡大倍率に起因して位置ずれを起こす複数の焦点画像の補正を必要としない奥行き融合技術に非常に好適である。これらの便益は、焦点手がかりおよび調節範囲の解析によってさらによく理解することができる。
【0012】
前記系が描画することのできる前記3次元体積の奥行き範囲を意味する焦点手がかりまたは調節範囲ΔDaccomodationは、下記式によって決定される。
【0013】
【数1】
【0014】
但し、Φeyeは前記接眼レンズ12の倍率、Φは前記リレーレンズ21の倍率であり、およびΔDMMDは前記可変形鏡80が変化できる倍率の範囲を示す。上記の等式によって、前記リレーレンズ20の焦点距離と前記接眼レンズ12との間の関係が求められる。前記接眼レンズ12は前記系の絞り、即ち前記DMMD80を中継して射出瞳を形成するので、所望の前記調節範囲が決定されると、前記射出瞳Dxpのサイズと前記DMMD80のサイズとの間の比は固定される。
【0015】
【数2】
【0016】
前記屈曲両側テレセントリックリレーの設計の1つの欠点は、前記DMDディスプレイ60の画像に拡大倍率を提供しないことである。したがって、所望の系の視野を得るためには、前記DMDディスプレイ60の前部に視野レンズ18を追加して前記画像を拡大すればよい。(前記ディスプレイ60は発光型ディスプレイでもよく、または照明光路を通じて照明される反射型ディスプレイであってもよい。)前記視野レンズ18がもたらす前記拡大倍率は、下記式のとおりである。
【0017】
【数3】
【0018】
このとき、前記系の半視野は下記式となる。
【0019】
【数4】
【0020】
その設計目標、装置の仕様、および力学的考察に基づいて、図3Aおよび3Bの設計の一次系の仕様を表1に掲載する。
【0021】
【表1】
【0022】
フリーフォーム接眼レンズおよび補償板
前記系100および200の光学シースルー機能は、ビームスプリッターを使用して、仮想表示光学系(例えば、DMD60、視野レンズ18、およびリレーレンズ群20)が妨げとならないようにこれらを屈曲させることにより実現することができる。しかし、この設計における前記接眼レンズ12が短い焦点距離を有することから、従来の方法で前記系を設計することは非常に困難であった。
【0023】
この即製の例示的な設計において、より洗練された解決策を模索した。図3Cおよび3Dに示すように、前記接眼レンズ12をくさび形をしたフリーフォームのプラスチックレンズとして設計した。前記フリーフォームのプリズム接眼レンズ12は、それぞれS1、S2、およびS3と名付けられた3つの回転非対称な面を含むことができる。図3Dの前記仮想表示光路について検討すると、前記ディスプレイ60の中間画像からの光線は、まず前記面S3によって屈折する。面S1およびS2によって2度連続して反射した後、前記光線は前記面S1を透過し、前記系の射出瞳(眼の瞳孔)に達する。前記面S1は、前記面S1上で反射する全光線について内部全反射の条件を満たすことが望ましい。前記接眼レンズ12の面S2は、前記光学シースルー機能を助長するためにハーフミラーとして被覆することができる。2つの回転非対称な面S2およびS4を含むことのできるフリーフォーム補償板14を前記接眼レンズ12に接着することができ、前記2つの部品12および14が図3Cのように結合されると、現実世界の光景からの光線にもたらされる収差およびゆがみが補償される。さらに、任意選択的に採用できる円柱レンズ13を前記フリーフォーム補償板14と一緒に含めて前記シースルー光路の収差およびゆがみを最小限に抑えるために役立てることができる。
【0024】
所望の前記光学性能を達成するために、MTF値を選択して画像の全体的な鮮鋭度を評価した。前記仮想表示系100は前記接眼レンズ12から前記ディスプレイ60へと逆行して設計されたので、その目的は、前記ディスプレイ60上で、14μmの画素サイズのカットオフ周波数である36lp/mmの空間周波数で20%以上のMTF値を有することであった。人間の眼は1分角の角度分解能を有する。したがって、前記補償板14は、現実世界の光景の劣化を最小限に抑えるために30サイクル/度での前記MTF値が0.2よりも大きくなるように最適化された。前記系100および200のもう1つの重要な光学性能の要素は、画像のゆがみであった。従来の系において、ゆがみは規則的であり、電子的または演算的に容易に補正することができる。しかし、フリーフォームの軸外し光学系を有する系では、前記ゆがみは非常に大きく不規則な場合がある。したがって、前記系100および200の設計は、前記視野全体に亘ってサンプリングされたゆがみに対して厳しい制約を有するべきである。前記ゆがみは、前記シースルー視野を通して見る物体の大きさおよび形状を変える可能性があり、したがって3次元知覚に大きな影響を与えるので、前記シースルー光路にとって特に重要である。
【0025】
設計および最適化の手順
前記系100および200の設計には、前記仮想表示光路と前記シースルー光路との2段階が必要であった。前記仮想表示光路について、CodeV内に前記リレーレンズ20および視野レンズ18と共に前記フリーフォーム接眼レンズ12を設定し、一緒に最適化した。前記40度のFOVおよび前記所望の3ディオプターの調節範囲全域に亘ってサンプリングされた視野について、前記表示性能を均衡させた。前記仮想表示の最適化が完了した後、前記フリーフォーム接眼レンズ12を前記補償板14と共に設定し、前記補償板の背面S4をシースルー性能について最適化した。視野の中央部40度を強調しながら、60度について前記シースルー性能を最適化した。前記系の性能が向上するに従って前記フリーフォーム面の可変表面係数の数値を徐々に増加することによって、両方の段階に漸進的最適化手順を採用した。
【0026】
最終的な設計において、前記フリーフォーム接眼レンズ並びに補償板の面S1、S2、S3、およびS4を第10次までのXY多項式によって表し、PMMA上での単一点ダイヤモンド回転によりプロトタイプを製作した。図3Bの系200において、前記視野レンズ素子のうちの1つである素子17を最適化し、回折光学特徴を付加して前記フリーフォーム接眼レンズ12によってもたらされる色収差を補正した。プロトタイプ製作コストを削減するため、その他のレンズ19、22、24、および26は、すべて既製品の構成要素である。
【0027】
3mmの瞳孔について評価した前記仮想表示の多色MTF値は、図4A~4Eに示すように、40度の視野全域に亘って36lp/mmで0.2よりも大きく、中心視野値は0.5である。また、前記仮想表示の示すゆがみは、図4Fに示すように最小限である。3mmの瞳孔について評価した前記シースルー光路の多色MTF値は、図5A~5Eに示すように、40度の視野全域に亘って30サイクル/度で0.4よりも大きい。また、前記シースルー光景のゆがみも、図5Fに示すように非常に良好に補正された。図3Bの具体的な設計のための処方度数を以下のとおりに提供する。
【0028】
仮想表示光路のための系の処方度数
表2では、面2番~4番は前記フリーフォーム接眼レンズ12の仕様を定めている。面2番および4番は、物理的に同一の面を示しており、また接眼レンズの面S1として表示されている。面3番もまた接眼レンズの面S2として表示されており、面5番もまた接眼レンズの面S3として表示されている。面8番~15番および面17番~24番は、複光路内に形成されたリレーレンズ22、24、および26と同様の群である。前記可変形鏡80は、面16番に形成される。面25番および26番は、45度の前記ビームスプリッター16を形成する。面27番~28番は前記視野レンズ素子17を示しており、面29番~30番は前記視野レンズ素子19を示している。
【0029】
【表2】
【0030】
シースルー光路のための系の処方度数
表3では、面2番および3番は、前記仮想表示光路と同様に形成された接眼レンズ面S1およびS3である。面4番および5番は、前記フリーフォーム補償板14の仕様を定めている。面4番は、面3番(接眼レンズ面S3)の正確な複製である。
【0031】
【表3】
【0032】
前記系の処方度数の表(例えば、表2および表3)中で使用されるとき、「XY多項式面」という言葉は、下記の等式で表すことのできる面を指す。
【0033】
【数5】
【0034】
但し、zは局部的なxyz座標系のz軸に沿って測定されたフリーフォーム面のたるみ、cは頂点曲率(CUY)、rは半径距離、kは円錐定数、Cはxの係数である。表中の「非球面」という言葉は、下記の等式で表すことのできる非球面を指す。
【0035】
【数6】
【0036】
但し、zは局部的なxyz座標系のz軸に沿って測定された面のたるみ、cは頂点曲率、rは半径距離、kは円錐定数、A~Eはそれぞれ4次、6次、8次、10次、および12次の変形係数である。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
【表7】
【0041】
【表8】
【0042】
【表9】
【0043】
前記第2の視野レンズ素子17の処方度数に目を向けると、前記視野レンズ素子17の両面が非球面である。さらに、前記視野レンズ素子17の面29番(表2)は、以下の等式によって表すことができるキノフォーム回折光学特徴を有する。
【0044】
【数7】
【0045】
但し、Φは回折素子の位相関数、rは半径距離、A~Eはそれぞれ4次、6次、8次、10次、および12次の位相定数である。前記第2の視野レンズ素子17の面の処方度数を、表10~12に提供する。
【0046】
【表10】
【0047】
【表11】
【0048】
【表12】
【0049】
【表13】
【0050】
【表14】
【0051】
円柱レンズを用いない別の方法による例示的な設計
上記の図3Aおよび3Bの設計では、収差およびゆがみを最小限に抑えるうえで役立つように、前記フリーフォーム補償板14と共に任意選択的に採用可能な円柱レンズ13を含めている。前記円柱レンズ13を用いない別の方法の設計もまた提供しており、この設計では、前記仮想表示光路は、図3Bおよび表2に示すのと同様である。前記円柱レンズ13の存在しない前記シースルー光路のその他残りの面についての唯一の違いは、前記接眼レンズ/補償板の面S2(表3のシースルー光路の面5番)である。表15では、面2番および3番は、前記仮想表示光路の場合と同様に形成された接眼レンズ面S1およびS3である。面4番および5番は、前記フリーフォーム補償板14について説明している。面4番は、面3番の正確な複製である。
【0052】
【表15】
【0053】
【表16】
【0054】
【表17】
【0055】
図3Bの系のプロトタイプ
既製品のレンズおよびカスタム化した光学系を用いて図3Bの多焦点面ディスプレイシステム200のプロトタイプを製作した。その3次元表示を図6Aおよび6Bに提供する。視聴者の頭部に当たらないように前記システム200を屈曲させた。また、前記DMD60(ノルウェー、Drammen市のVISITECH社製LUXBEAM(登録商標)4500)上の表示画像、前記LED(図示せず)の照明、および前記可変形鏡80(オランダ、Rijswijk町のFlexible Optical B.V.社製OKO(登録商標)Technologies MMDM10-1-focus)の焦点面の切替えを制御し同期させるために、カスタム電子回路も開発した。
【0056】
傾斜平面の物体および緑色のフロアグリッド(双方とも0ディオプターから2.5ディオプターまで延在)から構成された連続3次元光景を描画した。前記光景を、前記対象物の奥行き値に基づいて3ディオプター、2.4ディオプター、1.8ディオプター、1.2ディオプター、0.6ディオプター、および0ディオプターに配置した6面の焦点面に分解し、奥行き融合技術を使用して6面の前記焦点面を滑らかな連続体として融合させた。前記3次元光景全体を約60Hzでリフレッシュしたので、フリッカーは視認できなかった。図7Aは、前記システムを通して見た6面の前記焦点面の実際の光景を示しているが、前記画像は鮮鋭で、ゆがみは非常に小さかった。特別なアルゴリズムを使用せずとも、前記一定視野設計により、異なる焦点面上の画素が重なり合い、滑らかに融合する。さらに、被写界深度の浅いカメラレンズを使用し、前記光景の異なる部分で手動で焦点を合わせた。図7Bでは、バックウォールに分解能ターゲットを表示し、前記カメラの焦点を約2mに合わせた。前記フロアグリッドの終端付近では焦点が合っておらず、背景グリッド並びにロゴには鮮鋭に焦点が合っていた。図7Cでは、前部焦点面に分解能ターゲットを表示し、前記カメラの焦点を30cmに合わせた。今度は、近くの光景の焦点が合い、後方のコンテンツがぼやけていた。このように、前記プロトタイプに、高画質高分解能のカラー画像の6面以上の焦点面をフリッカーフリーの速度で描画する能力があることを実証した。前記プロトタイプはまた、拡張現実感アプリケーションのための非常に良好なシースルー光学特性を有していたし、奥行き知覚正確度の向上、立体視力の向上、および利用者の疲労の低減を提供する可能性を有する。
【0057】
別の方法による例示的な焦点可変レンズ
本発明は、その別の観点において、反射型液晶素子(Liquid Crystal on Silicon:LCOS)および強磁性反射型液晶(Ferroelectric Liquid Crystal on Silicon:FLCoS)などの高速表示技術と、電気式焦点可変レンズ380などの高速の能動屈折光学素子とを組み合わせて例示的な多焦点面ディスプレイシステム300を提供する。その具体的な設計は、0.8インチWXGA LCOS/FLCOSディスプレイ360および10mm口径の電気式焦点可変レンズ380(スイス、Dietikon市のOptotune AG社製Optotune EL-10-30)に基づいている。前記焦点可変レンズ380は、前記レンズ380を通って電流が流れると形状を変化させて屈折力に変化を生じさせる。前記Oputotuneレンズ380は約2.5msの応答時間を有するので、多焦点面ディスプレイに使用できる可能性がある。
【0058】
【表18】
【0059】
前記設計の最終的な配置を図10A~11に示す。リレーレンズ群(レンズ302、304、306、380、308、および310)が前記画像を球面鏡318に中継し、この球面鏡318が接眼レンズとして機能し、ユーザーのために仮想画像を形成する。前記鏡318は、選択的に非球面であってもよい。シースルー機能を可能とするために、ビームスプリッター316が使用されている。前記焦点可変レンズ380は前記システムの絞りを提供することができ、前記システムは、LCOS/FLCoSの要件のために前記マイクロディスプレイ360に対してテレセントリックであることができる。また、図11の照明ビームスプリッター317のために十分な空間も与えられている。前記システム300の処方度数を、表19~26に提供する。(表19では、面9番~12番が前記Optotune電気式焦点可変レンズ380を形成する。)前記システムの性能を、図12Aおよび12Bに図示する。
【0060】
【表19】
【0061】
【表20】
【0062】
【表21】
【0063】
【表22】
【0064】
【表23】
【0065】
【表24】
【0066】
【表25】
【0067】
【表26】
【0068】
全体的な設計上の検討
本発明は、その別の観点において、奥行き融合型ディスプレイ(depth-fused display:DFD)システムの設計パラメータを決定するための新しい判定基準に関する。DFDディスプレイ内の融合画素の光学品質はその網膜像の点像分布関数(point spread function:PSF)によって定量化され、または等価的に、前記3次元表示上の正弦波物体のコントラスト変調に対する前記網膜像のコントラスト変調の比により特徴付けられる変調伝達関数(modulation transfer function:MTF)によって定量化される。例えば、描画されている奥行きzに眼が調節されると、zおよびzにそれぞれ位置する隣接した1対の焦点面上の2つの画素による融合画素のPSFであるPSF12は、下記式のとおり、前方の画素および後方の画素からのPSFの加重和として説明することができる。
【0069】
【数8】
【0070】
但し、PSF(z,z)およびPSF(z,z)は、眼が距離zに調節されているときの前方および後方の画素の点像分布関数である。式(1)中のPSFは、前記加重和を計算する前に前方および後方の画素が同じ輝度を有するように、正規化される。wおよびwは、前記前方および後方の画素の輝度を変調して奥行きに重み付けした融合関数であり、シミュレートされた奥行きが変化したときに前記融合画像の総輝度が変化しないように、通常、w(z)+w(z)=1が強制されている。次に、PSF12(z)のフーリエ変換によって前記ディスプレイのMTFを計算することができる。
【0071】
二重焦点面DFDディスプレイのシミュレートされた網膜像のMTFプロットの例を、図8Aに示す。前記シミュレーションにおいて、前記2面の焦点面をそれぞれ1.2ディオプターおよび1.8ディオプターの位置に配置し、前記2面の焦点面間の輝度比は1:1であり、前記融合画素が前記前方および後方の焦点面の中間視度、即ち、1.5ディオプターでシミュレートされたことを示した。前記奥行き融合の効果に集中するために、瞳孔が3mmの眼球モデルを選択し、すべての残存収差を除去した。図8Aは、眼が前記2面の焦点面間の様々な位置に調節するに従って、前記網膜像のMTFがどのように変化するかを示している。図8Bは、異なる空間周波数についての眼の調節距離の関数としてのコントラスト勾配を示しているが、各周波数についてのピークコントラストを黒い四角のマーカーでマーキングした。双方のプロットから、約17サイクル/度(cycle/degree:cpd)の遷移周波数が観察される。その遷移周波数未満では、前記網膜像のMTFは、前記二重焦点面システム内での1:1の輝度比によってシミュレートされた奥行きである1.5ディオプターの中間視度で最大化される。さらには、眼が遠方側または手前側のいずれかの焦点面から前記シミュレートされた奥行きに近づくに従い、前記MTFの値が滑らかに上昇し、眼に前記調節をさせるために必要な適切なコントラスト勾配を提供する。しかし、17cpdよりも高い周波数については、前記融合画素のコントラストは常に、眼が物理的な焦点面またはその付近に調節されているときに最高となり、即ち、前記コントラスト勾配は前記調節を前記シミュレートされた画素奥行きから遠ざける傾向を有するので、相反する調節手がかりを生じさせてしまう。
【0072】
図9Aおよび9Bは、前記遷移周波数が、焦点面間の間隔の関数および瞳孔のサイズの関数としてどのように変化するかを示している。図9Aは3mmの眼の瞳孔を想定しており、図9Bは0.6ディオプターの一定した焦点面間の間隔を想定している。この結果は、前記焦点面間の間隔が狭いほど、および前記設計された眼の瞳孔のサイズが小さいほど、前記遷移点の周波数が高くなることを示唆している。したがって、DFDディスプレイを設計するうえでの非常に重要な判定基準は、前記焦点面間の間隔および前記ディスプレイの実用的な瞳孔のサイズを、相反する調節手がかりの視聴者への提示を回避するために、前記コントラスト勾配の反転点が前記システムのカットオフ周波数よりも高くなるように決定すべきことである。例えば、1.8分角/画素(約17cpdの空間周波数)の角度分解能および10cd/mよりも高い輝度を提供するDFDディスプレイでは、隣接する焦点面間の間隔を0.6ディオプターとすれば十分であるとみなすことができる。10cd/mの表示輝度の刺激によって、眼の瞳孔の直径は約3mmとなる。1分角/画素(即ち30cpd)の角度分解能を提供するディスプレイでは、0.45ディオプター以下の間隔が望まれるであろう。画素当たりの前記角度分解能が小さいほど、または前記画像の明るさが低いほど、必要とされる焦点面間の間隔が小さくなるであろう。
【0073】
前述の明細書から、当業者には、これらおよびその他の本発明の利点が明らかとなるであろう。したがって、当業者であれば、本発明の広範な発明概念から逸脱することなく、上述の実施形態に変更または修正を加えることができることを認識するであろう。したがって、本発明は、本明細書内で説明した特定の実施形態に限定されるものではなく、請求項に明記した本発明の範囲および趣旨を逸脱しないすべての変更および修正を含むことが意図されることを理解すべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12A
図12B