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特許7213008バリア層を有する接着剤移送ホース及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】バリア層を有する接着剤移送ホース及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/12 20060101AFI20230119BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20230119BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230119BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230119BHJP
   F16L 11/08 20060101ALI20230119BHJP
   F16L 53/30 20180101ALI20230119BHJP
【FI】
F16L11/12 Z
B32B1/08 B
B32B15/08 E
C09J201/00
F16L11/08 B
F16L53/30
【請求項の数】 43
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017138715
(22)【出願日】2017-07-18
(65)【公開番号】P2018009700
(43)【公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】62/363,138
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/632,371
(32)【優先日】2017-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391019120
【氏名又は名称】ノードソン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ジム キーオ
(72)【発明者】
【氏名】レズリー ジェイ.ヴァルガ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス ビー.セッドマン
(72)【発明者】
【氏名】ウェス フォート
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ ラニア
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518553(JP,A)
【文献】特開2001-246307(JP,A)
【文献】特開2014-018799(JP,A)
【文献】特開昭58-099589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/12
F16L 11/08
F16L 53/30
B32B 1/08
B32B 15/08
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着剤移送用多層ホースであって、
加熱した液体ホットメルト接着剤を移送する金属製内部チューブであって、酸素が前記金属製内部チューブを通過して前記加熱した液体ホットメルト接着剤に侵入することを防止するように構成された不透過性バリア層を形成する前記金属製内部チューブと、
流体圧力に耐えるように構成された少なくとも1つの構造層と、
前記少なくとも1つの構造層の外面を覆う外被と、
前記加熱した液体ホットメルト接着剤を設定値に維持するヒーターであって、前記設定値を長時間に亘って約230℃(華氏約450度)以下に維持するように制御される電源に電気的に接続されるようになっているヒーターと、
を備える、ホース。
【請求項2】
前記金属製内部チューブは、可撓性金属チューブである、請求項1に記載のホース。
【請求項3】
前記金属製内部チューブは、金属テープである、請求項2に記載のホース。
【請求項4】
前記金属製内部チューブは、アルミニウムを含む、請求項2に記載のホース。
【請求項5】
記金製内部チューブは、複数の継ぎ目のないコルゲート部を有する、請求項2に記載のホース。
【請求項6】
記金製内部チューブの内面に沿って配置されるライナーを更に備える、請求項2に記載のホース。
【請求項7】
前記ライナーは、前記金製内部チューブを通る前記加熱した液体ホットメルト接着剤の流動を向上させるように構成された耐熱性ポリマー材料を含む、請求項6に記載のホース。
【請求項8】
前記ライナーは、流体の流動を促進するとともに、前記加熱した液体ホットメルト接着剤と前記金製内部チューブとの材料不適合を防ぐ平滑な内面を有する、請求項6に記載のホース。
【請求項9】
前記少なくとも1つの構造層は、編組ジャケットを含む、請求項1に記載のホース。
【請求項10】
前記少なくとも1つの構造層は、重なり合う2つの編組ジャケットを含む、請求項9に記載のホース。
【請求項11】
前記外被は、前記少なくとも1つの構造層の外面を覆い、直接接触する多層構造物を有する、請求項1に記載のホース。
【請求項12】
前記外被は、加熱テープ副層と、前記加熱テープ副層を覆う断熱副層と、前記断熱副層を覆う保護副層とを更に備える、請求項11に記載のホース。
【請求項13】
前記金属製内部チューブは、コアと前記コアに施される金属性被膜とを有する、請求項1に記載のホース。
【請求項14】
ホットメルト接着剤を溶融吐出する装置であって、
固体形態の前記ホットメルト接着剤を受け入れるチャンバーと、
前記チャンバーに接続されるとともに前記ホットメルト接着剤を受け取るように構成された、前記固体形態の前記ホットメルト接着剤を液化する加熱装置と、
前記加熱装置に流体接続される、請求項1に記載のホットメルト接着剤移送用多層ホースと、
を備える、装置。
【請求項15】
ホットメルト接着剤を基材上に吐出するディスペンサーと、
液体ホットメルト接着剤の供給源と前記ディスペンサーとに作動的に接続される、請求項1のホースと、
を備える、ホットメルトシステム。
【請求項16】
前記液体ホットメルト接着剤の供給源は、メルターである、請求項15に記載のホットメルトシステム。
【請求項17】
ホットメルト接着剤移送用多層ホースであって、1又は2以上の層が、溶融したホットメルト接着剤を移送する前記ホースの導管への酸素の侵入を防止又は最小限に抑える酸素バリア層であり、
前記ホットメルト接着剤移送用多層ホースは、
金属製内部チューブと、
流体圧力に耐えるように構成された構造層と、
前記構造層の外面を覆う外被と、
を備える、ホース。
【請求項18】
前記金属製内部チューブは、溶融状態の前記溶融したホットメルト接着剤を移送、第1の内面及び第1の外面を有
前記構造層は、前記金属製内部チューブの前記第1の外面を覆って配置され、第2の内面及び第2の外面を有
前記外被は、前記構造層の前記第2の外面を覆って配置され、第3の内面及び第3の外面を有する、請求項17に記載のホース。
【請求項19】
前記外被は、加熱テープ副層と、断熱副層と、保護副層とを更に備え、前記酸素バリア層は、前記断熱副層の外面、前記保護副層の内面又は前記保護副層の外面に直接接触する、請求項18に記載のホース。
【請求項20】
前記酸素バリア層は、閉じ込められた任意のガスの加熱時の熱膨張に適応するように、一方向弁に流体接続される、請求項19に記載のホース。
【請求項21】
前記酸素バリア層は、閉じ込められた任意のガスの加熱時の熱膨張に適応するように、拡張可能な構成を有する、請求項19に記載のホース。
【請求項22】
前記酸素バリア層は、金属性材料、ポリマー材料及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項17に記載のホース。
【請求項23】
前記酸素バリア層は、アルミニウムを含む金属性の層を含む、請求項17に記載のホース。
【請求項24】
前記酸素バリア層は、押出ポリマー層、プラズマ重合ポリマー層及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリマー層を含む、請求項17に記載のホース。
【請求項25】
ホットメルト接着剤を溶融吐出する装置であって、
固体形態の前記ホットメルト接着剤を受け入れるチャンバーと、
前記チャンバーに接続されるとともに前記ホットメルト接着剤を受け取るように構成された、前記固体形態の前記ホットメルト接着剤を液化する加熱装置と、
前記加熱装置に流体接続される、請求項17に記載のホットメルト接着剤移送用多層ホースと、
を備える、装置。
【請求項26】
ホットメルト接着剤を吐出する方法であって、
ホットメルト接着剤を溶融することと、
前記溶融したホットメルト接着剤を、ホースを通してディスペンサーに移送することと、
前記ホース内の前記溶融したホットメルト接着剤を約230℃(華氏約450度)以下の設定値で加熱することと、
金属製内部チューブを含むバリア層によって前記ホース内の前記接着剤中への酸素の移動を防止することと、
前記ホットメルト接着剤を基材上に吐出することと、
を含み、
前記ホースは、
前記金属製内部チューブと、
流体圧力に耐えるように構成された構造層と、
前記構造層の外面を覆う外被と、
を備える、方法。
【請求項27】
前記設定値は、約180℃(華氏約350度)以下である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ホットメルト接着剤を移送する方法であって、
ホットメルト接着剤を、約230℃(華氏約450度)の設定値以下の温度で移送用多層ホース内の可撓性金属チューブを通して移送することを含み、
前記可撓性金属チューブは、前記ホットメルト接着剤中への酸素の侵入を防止するように構成された不透過性バリア層を形成し、
前記移送用多層ホースは、
前記可撓性金属チューブと、
流体圧力に耐えるように構成された構造層と、
前記構造層の外面を覆う外被と、
を備える、方法。
【請求項29】
不透過性バリア層は、酸素が前記金属製内部チューブを通過して前記加熱した液体ホットメルト接着剤に侵入することを防止するように構成された金属を含む、請求項1に記載のホース。
【請求項30】
前記ホースは、一体的に形成されている、請求項1に記載のホース。
【請求項31】
前記金属製内部チューブ、前記少なくとも一つの構造層及び前記外被は、一定的に形成されている、請求項30に記載のホース。
【請求項32】
前記金属製内部チューブは、コルゲート構造を有する、請求項1に記載のホース。
【請求項33】
前記ヒーターは、加熱線を有する、請求項1に記載のホース。
【請求項34】
前記加熱線は、前記金属製内部チューブ又は前記構造層の外面の周囲に周方向に巻かれている、請求項33に記載のホース。
【請求項35】
前記金属製内部チューブは、コルゲート構造を有する、請求項17に記載のホース。
【請求項36】
加熱線で構成されたヒーターを備える、請求項17に記載のホース。
【請求項37】
前記加熱線は、前記金属製内部チューブ又は前記構造層の外面の周囲に周方向に巻かれている、請求項36に記載のホース。
【請求項38】
前記金属製内部チューブは、コルゲート構造を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
前記ホースは、加熱線で構成されたヒーターを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項40】
前記加熱線は、前記金属製内部チューブ又は前記構造層の外面の周囲に周方向に巻かれている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記可撓性金属チューブは、コルゲート構造を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項42】
前記ホースは、加熱線で構成されたヒーターを有する、請求項28に記載の方法。
【請求項43】
前記加熱線は、前記可撓性金属チューブ又は前記構造層の外面の周囲に周方向に巻かれている、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、接着剤移送ホースに関し、より詳細には、ホースの導管への空気の侵入を防止又は最小限に抑えるバリア層を有する接着剤移送ホースに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2016年7月15日に提出された米国仮特許出願第62/363138号及び2017年6月25日に提出された米国特許出願第15/632371号の利益を主張する。これらの出願の開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0003】
従来のホットメルト接着剤及び湿気硬化型反応性ホットメルトポリウレタン接着剤(「ホットメルトPUR」)を含むホットメルト接着剤は、安定な面接着部を形成しなければならない様々な用途において日常的に使用されている。さらに、ホットメルト接着剤は、例えば木材、プラスチック、コルゲートフィルム、紙、カートン素材、金属、硬質ポリ塩化ビニル(PVC)、布、皮革等の様々な材料を、同種及び異種のどちらでも、係合関係にして固定することに使用される。これらの接着剤は、接着剤を溶融吐出後に迅速に固化させることが望ましい用途において特に有用である。
【0004】
従来のホットメルト接着剤では、通常、ポリマーと、粘着付与剤と、抗酸化剤等の他の選択された添加剤とが混合され、接着剤が作製される。これらの材料は、冷却すると溶融状態から迅速に固化して結合を形成する傾向があり、塗布が比較的容易であるという利点を有する。ホットメルトPURでは、ポリオールと過剰のポリイソシアネート化合物との重合によって、イソシアネート基末端ウレタンポリマーが生成される。ホットメルトPURは、外部からの水分の存在下で硬化(例えば架橋)する。
【0005】
通常、固体形態のホットメルト接着剤は、様々な形状及び寸法で提供され、溶融したホットメルト接着剤を生成するための加熱タンク及び/又は加熱グリッドを備えるメルターに供給される。固体ホットメルト接着剤は、プラテンを使用して接着剤が溶融されるドラム又はバレルに供給することもできる。加熱後、溶融した接着剤は、溶融した材料を要求される塗布温度に維持する加熱ホースを通して、アプリケーター又はディスペンサーに圧送される。アプリケーター又はディスペンサーは、吐出「ガン」又は吐出ガンモジュールと呼ばれることもあり、弁及びノズルを備える。例示的な加熱ホースは、本願の譲受人が所有する米国特許第6,738,566号(引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)に記載されている。
【0006】
しかしながら、加熱ホースに関する一般的な問題は、溶融したホットメルト接着剤の変色が生じることである。このような変色は、ホットメルト接着剤の劣化の兆候であり得るため、ホットメルト接着剤の「ポットライフ」に悪影響を及ぼす可能性がある。本明細書で使用する場合、「ポットライフ」とは、システム温度において接着剤が劣化し始め、したがって粘度の増大、炭化(charring)及び/又はゲル化が生じるまでの最大の時間である。上記のことは、比較的少ない流量を要求するシステムにおいて特に問題となり得る。いくつかの用途において、溶融した接着剤が加熱ホース内に留まる時間が長すぎる場合、溶融した接着剤の「ポットライフ」が短縮する可能性がある。熱可塑性接着剤の「ポットライフ」が短縮すると、フィルターの詰まり等の動作上の問題が生じる可能性があり、また、炭化が生じれば、ホースの清掃が更に必要となり得る。
【0007】
チャー(Char)とは、黒色化又は燃焼した接着剤であり、ホットメルト接着剤の長すぎる加熱及び/又は高すぎる温度での加熱等の様々な理由で生じ得る。また、ホースへの酸素の侵入が、ホットメルト接着剤の炭化の主な要因であることが観察されている。ホットメルト接着剤は、抗酸化剤のような或る特定の添加剤によって保護することはできるが、分解する可能性があるので、長時間に亘って溶融状態に維持されるべきではない。要するに、熱、時間及び酸化の作用によって、接着剤は分解し始める。例えば、接着剤のポリマー鎖は、ホースの壁及び溶融タンク内の割れ目に粘着するゲルを形成するように結合し得る活性部位を形成し、システムを通したホットメルト接着剤の有効な流動を阻害するアンカー(anchor)を形成する。また、チャーが硬化して複数の欠片に砕け、この欠片がフィルター及び噴霧ノズルを詰まらせる可能性がある。
【0008】
チャーに関する主要な問題は、チャーがホットメルトシステムに入り込むと、チャーを除去することが非常に困難、場合によっては不可能であることである。チャーが生成されると、現行の製品の品質の問題、広範なメンテナンスの問題及び作業停止を引き起こす可能性がある。いくつかの場合において、チャーを完全に除去するために、ホットメルトシステム全体の分解が必要となる場合があり、構成部品を燃焼炉(burnout oven)において燃焼させなければならない。このプロセスは、非常に時間がかかり、高価でもある。したがって、チャーの生成がシステムにおいて問題となる前に、チャーの生成を防止又は低減させることが望ましい。
【0009】
本開示の発明者らは、接着剤の炭化を防止する1つの方法として、ホースへの酸素の侵入を排除又は最小限に抑えることを見出した。しかしながら、従来の接着剤移送ホースへの酸素の侵入を防止又は低減させることは、かなりの課題をもたらし得る。なぜなら、長尺であり、かつ直径の小さい通常のホースは、少量の接着剤のための広範な移送領域を有するからである。したがって、移送ホースへの酸素の侵入は、接着剤溶融タンクへの酸素の侵入よりも起こりやすい。例えば、接着剤は、加熱ホース内に長時間留まっても、接着剤の移送中に酸素がホースに侵入しない限り、変色を最小限に抑えることができる。
【0010】
また、従来のホットメルト用ホースは、通常のホースのコアを通して拡散する際の酸素の分圧の影響を考慮していない。抗酸化プロセス及び劣化プロセスは、ホース内の酸素を消費し、ホースが液圧によって数百psiまで加圧され得るにもかかわらず、大気から拡散するための推進力を生成する。また、ポリマー加工等の、華氏500度以上の高温用途に使用されるホースは、固体形態の接着剤を溶融した流動可能状態に十分に溶融するために必要な温度をはるかに超える。
【0011】
このように、ホットメルト接着剤の変色及びそれに付随する劣化は、外部からの酸素が、ホットメルト接着剤移送ホースの層に透過し及び/又は層を透過し、溶融温度条件下でホットメルト接着剤と反応することによってもたらされる。したがって、溶融したホットメルト接着剤を移送するホースの導管への酸素の侵入を防止又は最小限に抑える役割を果たし、それにより、加熱ホース内での残留時間における溶融したホットメルト接着剤の変色及びそれに対応する炭化を排除又は少なくとも大幅に低減させる不透過性バリア層を有する、ホットメルト接着剤移送ホースが必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
ホットメルト接着剤移送用多層ホースが提供される。本移送ホースは、加熱した液体ホットメルト接着剤を移送する導管と、溶融したホットメルト接着剤を移送するホースの導管への酸素の侵入を防止するように構成された不透過性バリア層と、バリア層の外面を覆う、高い流体圧力に耐えるように構成された少なくとも1つの構造層とを有する。より詳細には、バリア層は、酸素が導管を通過してホットメルト接着剤に侵入することを防止するように構成される。ホットメルト接着剤を設定値温度に維持するヒーターも設けることができ、ヒーターは、設定値を長時間に亘って華氏約450度以下に維持するように制御される電源に電気的に接続されるようになっている。
【0013】
バリア層及び構造層は、それぞれ耐熱性材料を含む。さらに、バリア層は、接着剤が長時間に亘って華氏約450度以下に加熱される場合であっても、ホットメルト接着剤の炭化を防止する。バリア層は、可撓性金属チューブであり、可撓性金属チューブは、複数の継ぎ目のないコルゲート部を有することができる。代替的には、バリア層は、アルミニウムテープ等の金属テープとすることができる。
【0014】
少なくとも1つの構造層は、編組ジャケットを含むことができ、編組ジャケットは、ステンレス鋼とすることができる。可撓性金属チューブも、ステンレス鋼とすることができる。さらに、少なくとも1つの構造層は、重なり合う2つの編組ジャケットを含むことができ、外被層は、少なくとも1つの構造層の外面を覆う別個の多層構造物を含む。
【0015】
外被層は、加熱線副層(heating wire sublayer)と、加熱線副層を覆う断熱副層と、断熱副層を覆う保護副層とを有することができる。外被層は、代替的には、加熱テープ副層を有することができることを理解されたい。
【0016】
さらに、バリア層は、内部チューブに施される金属性被膜(metallic coating)とすることができる。可撓性金属チューブは、内部に配置されるライナーを有してもよいことを理解されたい。ライナーは、耐熱性ポリマー材料を含み、可撓性金属チューブを通る溶融したホットメルト接着剤の流動を向上させるように構成される。また、ライナーは、流体の流動を促進するとともに、溶融したホットメルト接着剤と可撓性金属チューブとの材料不適合の問題を防ぐ平滑な内面を有する。
【0017】
バリア層は、予想外にも、接着剤が長時間に亘って華氏約250度以上~最大華氏約450度(華氏約450度を含む)の温度に加熱される場合であっても、ホットメルト接着剤の変色及び炭化を防止する。
【0018】
さらに、ホットメルト接着剤を移送する方法が開示される。本方法は、ホットメルト接着剤を、華氏約450度以下の温度で移送用多層ホースを通して移送するステップを含み、移送用多層ホースは、ホースの導管への酸素の侵入を防止するように構成された不透過性バリア層を形成する可撓性金属チューブを備える。可撓性金属チューブは、華氏約450度以下の温度に加熱されることを理解されたい。代替的には、可撓性金属チューブは、ホットメルト接着剤を華氏約400度以下の温度で移送することができる。さらに、可撓性金属チューブは、ホットメルト接着剤を華氏約350度以下の温度で移送することができる。
【0019】
バリア層の予想外の効果は、接着剤がホース内に少なくとも24時間、少なくとも48時間、72時間又は96時間残留した場合であっても、ホットメルト接着剤の著しい変色及び炭化が生じないことである。
【0020】
本開示の別の態様によれば、ホットメルト接着剤移送用多層ホースが提供される。ここでは、層のうちの少なくとも1つは、溶融したホットメルト接着剤を移送するホースの導管への酸素の侵入を防止又は最小限に抑える酸素バリア層である。
【0021】
本開示の別の態様によれば、ホットメルト接着剤を溶融吐出する装置が提供される。本装置は、固体形態のホットメルト接着剤を受け入れるチャンバーと、チャンバーに接続されてホットメルト接着剤を受け取るように構成された、固体形態のホットメルト接着剤を液化する加熱装置と、加熱装置に流体接続されるホットメルト接着剤移送用多層ホースとを備える。
【0022】
さらに、包装グレードのホットメルト接着剤等のホットメルト接着剤を吐出する方法が提供される。本方法は、ホットメルト接着剤を溶融するステップと、溶融したホットメルト接着剤を、ホースを通してディスペンサーに移送するステップと、ホース内の溶融したホットメルト接着剤を華氏約450度以下の設定値温度で加熱するステップと、バリア層によってホース内の接着剤中への酸素の移動を防止するステップと、ホットメルト接着剤を基材上に吐出するステップとを含む。
【0023】
ホットメルト接着剤を吐出するこの方法では、接着剤が少なくとも24時間ホース内に残留した場合であっても、接着剤の著しい変色及び炭化が生じない。さらに、接着剤が少なくとも48時間~96時間ホース内に残留した場合であっても、ホットメルト接着剤の著しい変色及び炭化が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】従来のホットメルト接着剤移送ホースの概略的な斜視図である。
図1B図1Aに示すホットメルト接着剤移送ホースの端面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係るホットメルト接着剤移送ホースの概略的な斜視図である。
図2B図2Aに示すホットメルト接着剤移送ホースの端面図である。
図3A】本発明の別の実施形態に係るホットメルト接着剤移送ホースの概略的な斜視図である。
図3B図3Aに示すホットメルト接着剤移送ホースの端面図である。
図4A】本発明のまた別の実施形態に係るホットメルト接着剤移送ホースの概略的な斜視図である。
図4B図4Aに示すホットメルト接着剤移送ホースの端面図である。
図5A】本発明のまた別の実施形態に係るホットメルト接着剤移送ホースの概略的な斜視図である。
図5B図5Aに示すホットメルト接着剤移送ホースの端面図である。
図6A】本発明の一実施形態に係るホットメルト接着剤移送ホースの概略的な斜視図である。
図6B図6Aに示すホットメルト接着剤移送ホースの端面図である。
図7】様々な変色状態を示す、実験炉において華氏350度で0時間~約95時間加熱されたHenkel 314Cホットメルト接着剤の試料皿上のサンプルを示す図である。
図8図7に示すサンプルに基づく例示的な1~10の定性的変色評価表を示す図である。
図9】種々の例示的な試験ホースを示す図である。
図10図9に示す例示的な試験ホースの端部キャップを示す図である。
図11】本明細書に記載される実験の開始前の、下記表1に報告されている試験サンプルの配置を示す図である。
図12】本明細書に記載される実験の完了後のサンプル1b、1a及び1c(左から右へ)を示す図である。
図13A】本開示に係るホットメルト接着剤移送ホースの概略的な斜視図である。
図13B図13Aに示すホットメルト接着剤移送ホースの端面図である。
図14A】本開示の別の態様に係るホットメルト接着剤移送ホースの概略的な斜視図である。
図14B図14Aに示すホットメルト接着剤移送ホースの端面図である。
図15A】本開示の別の態様に係るホットメルト接着剤移送ホースの概略的な斜視図である。
図15B図15Aに示すホットメルト接着剤移送ホースの端面図である。
図16】本開示の移送ホースとの比較に競合者の移送ホースを使用した、ホットメルト接着剤中に経時的に生成されるチャーの量を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面は、必ずしも一定の縮尺どおりではなく、構成部品のより良い理解をもたらすように描かれており、また、範囲の限定ではなく、例示的な説明を提供することが意図されていることに留意されたい。さらに、本開示の実施態様は図面を参照しながら説明され、図面全体において、同様の参照符号は同様の部品を示している。
【0026】
上述したように、従来のホットメルト接着剤移送ホースにおいて生じるホットメルト接着剤の変色は、それに続いて粘度の増大、炭化又はゲル化が生じることにより、ホットメルト接着剤の「ポットライフ」に悪影響を及ぼす可能性がある。このような変色は、外部からの酸素が、ホットメルト接着剤移送ホースの層に透過し及び/又は層を透過し、溶融温度条件下でホットメルト接着剤と反応することに起因し得ることが観察されている。
【0027】
したがって、バリア層を有するホットメルト接着剤移送用多層ホースが開示される。バリア層は、溶融したホットメルト接着剤を移送するホースの導管への酸素の侵入を防止又は最小限に抑える役割を果たし、それにより、溶融したホットメルト接着剤の変色を低減させる。さらに、酸素の侵入の阻害又は低減により、ホットメルト接着剤の予想「ポットライフ」を維持することもできる。
【0028】
酸素バリア層は、以下でより詳細に説明するように、ホースの別個の層、すなわち内部チューブとして機能する耐熱性ポリマーと無機添加剤との複合物又は混合物とすることができる。1つ以上のホットメルト接着剤移送用多層ホースを組み込むホットメルト接着剤装置、並びにホットメルト接着剤を移送する方法及びホットメルト接着剤移送ホースを作製する方法も記載される。
【0029】
本開示の1つの態様において、バリア層は不透過性であり、したがって、ホースの導管への酸素の拡散を防止する。本開示の別の態様において、酸素バリア層は、酸素バリア層が無いホットメルト接着剤移送ホースと比較して変色を低減させるように十分低いレベルの酸素透過率をホットメルト接着剤移送ホースにもたらす。例えば、酸素バリア層を有するホースの酸素透過率は、約1/10又は約1/100又は約1/1000又はそれよりも大きく低減させることができる。
【0030】
図1A及び図1Bを参照すると、簡略化された従来技術のホットメルト接着剤移送用多層ホース100が示されている。このホース100は、溶融したホットメルト接着剤を移送する内部チューブ102と、強度及び保護のための構造層104と、外被106とを有する。内部チューブ102は、溶融したホットメルト接着剤が実際に通って流れるホース100の作動コア(operative core)を形成する。
【0031】
内部チューブ102は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の、比較的高温に耐え得るポリマー材料から作製される。PTFE又は他の同様の溶融温度が高いポリマーは、通常、溶融したホットメルト接着剤を移送するために使用される高い流体圧力に耐えることができないので、内部チューブ102は、強化層、すなわち構造層104によって補強する必要がある。
【0032】
内部チューブ102の外周に配置されて、内部チューブ102に強度及び保護を与える役割を果たす構造層104は、耐熱性材料の編組ジャケットを含むことができる。上述したように、ホットメルト接着剤は、固体形態から溶融した流動可能状態に溶融するのに十分な設定値温度まで加熱される。設定値温度は、通常、約100℃(華氏約212度)~約230℃(華氏約450度)の範囲である。また、溶融したホットメルト接着剤の流動を促進するために、ホットメルト接着剤移送ホースは、最大約1500psi(約10.3MPa)の作動圧を受ける場合がある。したがって、構造層104は、ホットメルト接着剤移送ホースの所望の物理的完全性を提供する役割を果たす。
【0033】
[ポリマーバリア層]
したがって、本開示は、酸素等のガスがホースを透過してホース内部のホットメルト接着剤に接触することを防止及び/又は低減させるように構成された、ホットメルト接着剤移送用多層ホース200を提供する。図2A及び図2Bに示すように、ホットメルト接着剤移送ホース200の酸素バリア層203は、内部チューブ102の内面に接触する別個の層とすることができ、内部チューブ102は、構造層104及び外被106によって更に覆われる。代替的には、図3A及び図3Bに示すように、酸素バリア層203は、内部チューブ102の外面又は構造層104の内面に接触する別個の層とすることができ、構造層104は、外被106によって更に覆われる。図4A及び図4Bに示すように、酸素バリア層203は、内部チューブ102の周方向外側にあり、かつ構造層104の外面又は外被106の内面に接触する別個の層とすることができる。図5A及び図5Bに示すように、酸素バリア層203は、内部チューブ102と構造層104と外被106とを包囲することもでき、外被106の外面に接触する別個の層として形成される。
【0034】
図2図5を参照すると、内部チューブ102は、溶融したホットメルト接着剤が実際に通って流れるホース200の作動コアを形成する。酸素バリア層203は、ポリマー材料、金属性材料又はそれらの組合せを含むことができる。材料の選択は、ホットメルト接着剤移送ホースにおける酸素バリア層の位置によって決まり得る。例えば、内部チューブ102、構造層104及び/又は加熱テープ副層は、溶融したホットメルト接着剤の温度に近いか又はその温度よりも高い「高温領域」と呼ばれ得る場所にある。代替的には、外層106の断熱副層又は保護副層の外面は、高温領域に対して径方向に配置され、かつ高温領域の外側にあるため、比較的低温に曝される。したがって、酸素バリア層を高温領域の内側又は外側に構築するのに、溶融したホットメルト接着剤の所望の作動温度よりも高い溶融温度を有する材料を使用することができる。
【0035】
酸素バリア層203が高温領域内にある場合、酸素バリア層203を構築する材料の融点は、溶融したホットメルト接着剤の所望の作動温度よりも十分高い融点を含むべきである。例えば、高温領域内で酸素バリア層203を構築する材料の融点は、溶融したホットメルト接着剤の所望の作動温度よりも、少なくとも華氏約50度以上又は華氏約100度以上又は華氏200度以上高いことが好ましい。十分高い融点を有するそのような材料の例としては、限定はしないが、金属箔又は金属被膜等の金属性材料が挙げられる。金属性材料の非限定的な例としては、アルミニウム箔で裏打ちされたテープ、又は、スパッタリング、化学気相成長(CVD)、プラズマ化学気相成長(PECVD)若しくは原子層堆積(ALD)により施される金属被膜若しくは金属性被膜が挙げられる。金属被膜又は金属性被膜が施される層の表面は、米国特許第6,420,041号(引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)に記載されているように、金属の付着を向上させるために改質してもよい。酸素バリア層を形成するのに有用な金属材料の厚さは、所望される酸素透過率の低下度合に応じて変化し得る。
【0036】
ポリマー材料を単独で又は金属性材料と組み合わせて含む酸素バリア層203では、ポリマー材料の融点に応じて、図2図5のうちの1つに示す配置に従った酸素バリア層203の配置が、別の配置よりも好ましいものとなり得る。望ましい酸素透過率の値を有する例示的なポリマー材料のリストを表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
さらに、ポリマー材料は、米国特許第9,192,754号に開示されているように、熱可塑性ポリエーテル-ウレタン(TPEU)又は熱可塑性ポリエステルポリウレタンエラストマー等のウレタンを含むことができる。
【0039】
ポリマー材料の酸素透過率を更に低減させるために、ポリマー材料は、クレイ、シリケート及びシリカ、柱状物質(pillared materials)、金属塩、ナノプレートレット又はそれらの混合物等の無機添加剤、米国特許出願第2010/0300571号(引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)に記載されている無機添加剤等と組み合わせることもできる。例えば、ポリマー材料をベースにした酸素バリア層の透過率を低減させるために、層状ナノフィラー(lamellar nanofillers)をポリマー材料マトリクスに加えることができる。このような透過率の低減は、層状ナノフィラーによってもたらされる「蛇行性(tortuousness)」の効果によるものであり得る。なぜなら、酸素は、連続する層に配置されるこれらの障害物のために、はるかにより長い経路を辿る必要があるからである。理論モデルでは、バリア効果は、アスペクト比、すなわち長さ/厚さ比が増大するにつれてより顕著になるものとみなされる。
【0040】
今日最も広く研究されている層状ナノフィラーは、スメクタイト型のクレイ、主にモンモリロナイトである。使用の難しさは、まずこれら個々の層板の幾らか広範な分離、すなわち剥離、及びポリマー中での分布にある。剥離を補助するために、層板の負電荷を補う有機カチオン、概して第四級アンモニウムカチオンを用いて結晶を膨潤させることからなる「インターカレーション」法を使用することができる。これらの結晶性アルミノシリケートは、熱可塑性マトリクスにて剥離される場合には、個々の層板形態で存在し、そのアスペクト比が500以上程度の値に達することもある。
【0041】
本発明の別の態様によると、無機添加剤は、例えば米国特許出願公開第2007/0082159号(その関連部分が引用することにより本発明の一部をなす)に開示されるように、非剥離性のナノメートル規模の層状化合物の形態である、ジルコニウム、チタン、セリウム及び/ケイ素のリン酸塩をベースとする粒子を含み得る。
【0042】
酸素バリア層203の構築に用いられるポリマー材料における無機添加剤の含量は、所望のレベルの酸素透過性の低減に応じて変わり得る。無機添加剤は、存在する場合、酸素バリア層203の組成物の総重量に対して0.01重量%~約50重量%の量でポリマー材料中に存在し得る。
【0043】
図6A及び図6Bを参照すると、ポリマー材料と上記の無機添加剤の1つ以上との組合せを含む内部バリアチューブ608をホットメルト接着剤移送ホース600の構築に使用することができる。内部バリアチューブ608の構築に用いられるポリマー材料における無機添加剤の含量は、所望のレベルの酸素透過性の低減に応じて変わり得る。無機添加剤は、内部バリアチューブ608の組成物の総重量に対して0.01重量%~約50重量%の量でポリマー材料中に存在し得る。非限定的な一例では、内部バリアチューブ608は、所望のレベルの酸素透過性の低減をもたらすのに十分な量の上記の無機添加剤の1つ以上と併せてフルオロポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレン)を含むことができる。
【0044】
酸素バリア層203を高温領域の外側(例えば、外層106の断熱副層の外側又は外層106の保護副層の外側)に配置する場合では、断熱層内に閉じ込められたガスが加熱テープによって加えられる熱で膨張することで、気密層が拡張及び収縮する。いかなる熱膨張にも適応するために、酸素バリア層203は、大きめの寸法にする(oversized)及び/又はコルゲート状にするか、又は、膨張ガスを逃がし、続いて酸素の侵入を阻止するように一方向弁を取り付けることができる。上述したように、高温領域の外側での酸素バリア層203の配置は、比較的低融点の材料又は軟化材料のこの目的での使用を更に可能にする。例えば、上述の比較的高融点の材料に加えて、金属化ポリマーフィルム(例えばアルミ被覆マイラー)を高温領域の外側に使用することができる。
【0045】
図示しないが、図6A及び図6Bに示す移送ホース600は、図2図5に示すような別個の酸素バリア層203を有することもできることを理解されたい。酸素バリア層203又は内部バリアチューブ608が、ホットメルト接着剤を移送する導管への酸素の侵入を阻止又は阻害することができる一方で、酸素バリア層203、内部バリアチューブ608及び/又はホットメルト接着剤移送ホースの製造において、低酸素又は不活性ガス雰囲気を使用することが有利であり得ることを更に理解されたい。
【実施例
【0046】
基準:ホットメルト接着剤移送チューブにおけるHenkel 614Cホットメルト接着剤の観察された変色を定性的に評価するために、アルミニウム製試料皿に入れたHenkel 614Cの12個のサンプルを、華氏350度の実験炉において周囲雰囲気下で0時間~約72時間加熱した。様々な間隔でサンプルを炉から取り出し、室温に冷却した。変色の度合は、華氏350度の炉内での残留時間が増大するにつれて増大した(図7を参照)。図8は、12個のサンプルの図に基づき、ベースラインである1(Henkel 614Cの非加熱サンプル)から最大である12(約95時間加熱したサンプル)に及ぶ定性的なカラースケールを示している。
【0047】
比較試験:酸素バリア層が適用されているか又は適用されていない様々なチューブを使用して、複数のサンプルを評価した。図9に示すように、様々なチューブの種類には、ステンレス鋼編組物を含むか若しくは含まない0.030インチのPTFE(DupontTeflon(登録商標)62X 樹脂ベース)コア、ステンレス鋼編組物を含むか若しくは含まない0.040インチのPTFEコア、又はステンレス鋼編組物を含むか若しくは含まない0.030インチのPTFEカーボン裏打ちコアが含まれる。図10に示すように、ステンレス鋼編組物を含まないチューブサンプルは、黒色プラスチック製のねじキャップを用いて封止した。複数のチューブ及びアルミニウム皿(「ラットパン(ratpan)」)のサンプルを、表2(下記)に記載されるように準備し、実験炉に配置して(図11を参照)29時間に亘って華氏350度に加熱した。サンプルは、上述の開発されたカラースケールを使用して定性的に評価した。
【0048】
【表2-1】
【表2-2】
【0049】
図12に示すように、アルミニウム箔で巻かれたPTFE内部チューブ(サンプル1c)は、模擬試験条件下で、被覆物のないPTFEチューブ(サンプル1a)又はシリコーンテープで巻かれたPTFEチューブ(サンプル1b)と比較して、溶融したホットメルト接着剤の変色を改善した。図示しないが、内部カーボン被膜を有するPTFEチューブに関して、著しい変色(例えば9以上)が依然として観察された。さらに、溶融したホットメルト接着剤の色評価がインプロセス監視される場合、本願の譲受人に譲渡された米国特許出願第2014/0144933号(引用することによりその全体が明らかに本明細書の一部をなす)に記載されている装置及び方法を使用することができることを理解されたい。
【0050】
[金属バリア層]
本開示の別の態様によれば、空気及び他のガスが、ホースを透過してホース内部のホットメルト接着剤に接触するのを防止するように構成された、ホットメルト接着剤移送用多層ホース700が提供される。図13A及び図13Bに示すように、ホットメルト接着剤移送ホース700は、ホースの導管への酸素及び他のガスの侵入を防止し、それにより、溶融したホットメルト接着剤の変色及びそれに付随する劣化を排除するように構成された、内部チューブ702を含むバリア層を有する。さらに、ホースへの酸素の通過を防止することにより、ホットメルト接着剤の予想「ポットライフ」も維持される。
【0051】
内部チューブ702は、溶融したホットメルト接着剤が実際に通って流れるホース700の作動コアを形成する。内部チューブ702は、ステンレス鋼等の、比較的高温に耐え得る金属性材料から作製されることが好ましい。本開示の別の態様において、バリア層は、以下でより詳細に論じるように、コアに施されるアルミニウム等の金属テープ又は金属性被膜とすることができる。従来のホースの内部チューブとは異なり、ホットメルト接着剤ホース700の金属製内部チューブ702は、ガス不透過性であり、したがって、ホットメルト接着剤を収納する導管に空気が拡散されることがない。こうして、金属製内部チューブ702を含むバリア層は、酸素及び他のガスがホースに侵入してホットメルト接着剤に接触することを防止し、それにより、炭化を排除する。
【0052】
また、金属製内部チューブ702は、ホットメルトPURに湿気が影響を及ぼすことを阻止するとともに、ホース内のガスが漏出しないようにすることができる。例えば、金属製内部チューブ702内の発泡ホットメルトは、標準的なホースよりも長い時間、ガスを溶液に維持する。また、本開示に係る金属製内部チューブを含む不浸透性の可撓性バリア層の製造は、既存のホースの製造プロセスを使用することができる及び/又は容易に変更することができるので、時間効率及び費用効率がより高い。
【0053】
内部チューブ702は、可撓性を与えるように継ぎ目のないコルゲート部を有し、また、ホース全体で一貫したチューブ壁厚を維持し、金属における残留応力を最小限に抑えることが好ましい。さらに、内部チューブ702は、大きめの寸法にすることができる。内部チューブ702は、溶融したホットメルト接着剤の移送に用いられる高い流体圧力に耐えるのを助けるために、強化層、すなわち構造層704によって強化される。内部チューブ702の外周に配置されて、内部チューブに更なる強度及び保護を与える役割を果たす構造層704は、耐熱性材料の編組ジャケットを含んでもよい。
【0054】
したがって、構造層704は、ホットメルト接着剤移送ホースの所望の物理的完全性を提供する役割を果たす。1つの非限定的な例において、構造層704は、ステンレス鋼製の編組ジャケットを含む。編組物の打ち数(braiding frequency)及び/又は厚さは、ホットメルト接着剤装置の想定温度及び圧力制限に応じて決まり得る。編組物は、角編み又は一重編み等の、スパイラルパターン、ヘリカルパターン、織りパターン/織込みパターン又はフープパターン/ループパターンとすることができる。さらに、ホース700は、耐高圧性のための更なる補強を与える複数の構造層704を有することができる。図14に示すように、重なり合う2つの構造層704、705を有するホース700が提供される。
【0055】
さらに、ホットメルト接着剤移送ホース700は、図15A及び図15Bに示すように、内部チューブ702の内面に設けられるライナー710を有することができる。ライナー710は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は比較的高温に耐え得る他のポリマー等の耐熱性ポリマー材料を含むことが好ましい。移送ホース700の1つの態様において、ライナー710は、コルゲート状の内部チューブ702の内面に接触する別個の層である。ライナーは、内部チューブ702との材料不適合性を最小限に抑えることにより、ホットメルト接着剤の流動を向上させるように構成される。特に、ライナー710は、流体の流動を促進するとともに、移送される媒体と金属製内部チューブ702との材料不適合の問題を防ぐ平滑な内面を有する。例えば、ライナー710は、内部チューブ702の内側コルゲート部の溝の中に材料が詰まることを防止する。
【0056】
ホース700は、外被706を更に備えることができる。外被706は、加熱テープ副層、断熱副層及び/又は保護副層(これらの副層は図示せず)を有する多層構造物とすることができる。加熱テープは、ホットメルト接着剤ホースへの均一な伝導加熱をもたらす役割を果たす。限定はしないがアラミドフェルト断熱材又はガラス繊維断熱材を含むことができる絶縁層は、熱損失を抑制する役割を果たし、また、耐薬品性及び耐湿性を向上させることができる。主にホース及び他の内部部品/層を物理的乱用による損傷から保護する役割を果たす保護層は、限定はしないが、アラミドシース等の耐久性ポリマーを含むことができる。
【0057】
外被の各副層は、分離した別個の層である。例えば、加熱テープ副層は、構造層704の外面に接触し、断熱副層によって覆われる。保護副層は、断熱副層を覆う。
【0058】
内部チューブ702、構造層704及び/又は外被706の加熱テープ副層は、溶融したホットメルト接着剤の温度に近いか又はその温度よりも高い「高温領域」と呼ばれ得る場所にある。代替的には、外層706の断熱副層又は保護副層の外面は、高温領域に対して径方向に配置され、かつ高温領域の外側にあるので、比較的低温に曝される。
【0059】
さらに、移送ホース700は、ホットメルト接着剤を基材上に吐出するディスペンサーを備えるホットメルトシステムにおいて使用することができる。ホース700は、ディスペンサーに作動的に接続することができる。ホースは、メルター等の液体ホットメルト接着剤の供給源にも作動的に接続することができる。
【0060】
上述したように、ホットメルト接着剤は、固体形態から溶融した流動可能状態に溶融するのに十分な温度まで加熱され、この温度は、通常、約100℃(華氏約212度)~約230℃(華氏約450度)の範囲である。特に、移送ホースは、ホットメルト接着剤を設定値に維持するヒーターを更に備えることができる。ヒーターは、銅、アルミニウム又は銀等の金属を含む少なくとも1つの加熱線を備えることができる。少なくとも1つの加熱線は、ホースの内部コアの外面の周囲において、周方向にヘリカルパターンで巻くことができる。代替的には、少なくとも1つの加熱線は、内部コアの外面において、内部コアの長手軸に平行な方向に設けることができる。
【0061】
ヒーターは、設定値を長時間に亘って華氏約450度以下に維持するように制御される電源に電気的に接続されるようになっている。例えば、可撓性金属チューブは、華氏約400度以下の設定値温度、華氏約350度以下の設定値温度又は華氏約250度以上の設定値温度でホットメルト接着剤を更に移送することができる。ヒーター上に、又は代替的にはホース内に、設定値温度を測定するセンサーを更に設けることができる。
【0062】
また、金属バリア層702は、予想外にも、或る特定の温度において長時間に亘ってホース700内のホットメルト接着剤の炭化を防止することが観察された。具体的には、接着剤が華氏約250度以上~最大華氏約450度まで(華氏約450度を含む)の範囲の設定値温度に加熱される場合であっても、少なくとも96時間に亘ってホットメルト接着剤の炭化が生じないという、バリア層702の未知の効果が観察された。
【0063】
図16を参照すると、競合者のホットメルト接着剤移送ホースにおける一般的なホットメルト接着剤(HenkelのTechnomelt(商標)Supra 614C等)の観察された経時的変色の一例がラインAで示され、これと比較して、本開示の移送ホース700におけるホットメルト接着剤の観察された経時的変色がラインBで示されている。比較基準として、ホットメルト接着剤は、競合者の移送ホースと本開示の移送ホース700との双方において華氏350度の設定値に維持した。さらに、接着剤の色は、合計96時間に亘って8時間ごとに観察した。
【0064】
図示のように、競合者の移送ホースにおけるホットメルト接着剤の変色の度合は、時間とともに大きく増大した。例えば、96時間時点の競合者の移送ホースにおける接着剤のサンプルA9は、著しい変色を生じ、大量のチャーを含んでいた。対照的に、96時間時点での本開示の移送ホースにおける接着剤のサンプルB9は、著しい変色を生じず、大量の炭化生成物を含んでいなかった。図示のように、96時間時点での本開示の移送ホースにおける接着剤のサンプルB9は、開始時点での本開示の移送ホースにおける接着剤のサンプルB1と実質的に同じ色であった。
【0065】
また、図16に示すように、ホース700は、ホース内において華氏350度では8時間(B2)、16時間(B3)、24時間(B4)、32時間(B5)、40時間(B6)、48時間(B7)、72時間(B8)及び96時間(B9)時点で接着剤の著しい変色及び炭化が生じないという未知の効果があった。より詳細には、金属バリア層702により、予想外にも、24時間時点での炭化生成物が1.0%未満となった。同様に、図16に示すように、金属バリア層702を使用した結果、予想外にも、48時間、72時間、更には96時間時点での炭化生成物が1.0%未満となった。対照的に、図16に示すように、競合者のホース内の接着剤は、8時間(A2)時点で著しい変色及び炭化を示した。競合者のホース内での変色及び炭化の度合は、16時間(A3)、24時間(A4)、32時間(A5)、40時間(A6)、48時間(A7)、72時間(A8)及び96時間(A9)時点で悪化した。
【0066】
本開示を特定の実施形態の記載によって説明し、また、それらの実施形態をかなり詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の範囲をそのような詳細に制限又はいかようにも限定することは意図されていない。本明細書で論じた種々の特徴は、単独で用いても任意の組合せで用いてもよい。したがって、本開示は、特定の細部、代表的な装置及び方法、並びに図示及び記載した説明的な例に限定されない。むしろ、本開示は、添付の特許請求の範囲によって規定される本願の趣旨及び範囲から逸脱することなく、そのような代替形態、変更形態及び均等物を包含することが意図されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16