(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】煙感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/10 20060101AFI20230119BHJP
G08B 17/107 20060101ALI20230119BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G08B17/10 H
G08B17/107 A
G08B17/00 G
(21)【出願番号】P 2018104155
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 治男
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 将文
【審査官】西巻 正臣
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02320398(EP,A1)
【文献】特開2016-045093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-21/01
21/17-21/61
G08B17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に設けられる送風機によって、周囲の空気を上方、もしくは上方側面の吸気口から吸い込み、その吸い込んだ空気を、空気の通路を経て、下方、もしくは下方側面の排気口から吐き出し、
前記吸い込んだ空気によって、火災を検出する火災検出手段を備え、
送風機の下流で空気の通路の途中に遮光性煙検出空間を形成し、この煙検出空間内に、煙検出領域を設け、
吸気口から煙検出領域までの通路、および煙検出領域から排気口までの通路の少なくともいずれか一方は、空気の流過方向に沿って少なくとも3軸方向に屈曲して形成され、
煙検出領域に向けて光を発生する発光素子と、
煙検出領域で発光素子の光軸と交差する光軸を有する受光素子と、
受光素子の光軸に沿って煙検出領域に関して受光素子とは反対側に延び、煙検出領域に臨んで開口し、煙検出領域から遠ざかった位置で閉鎖され、受光素子の光軸の周辺で指向特性に対応した範囲を遮光空間とする遮光部材とを含み、
前記火災検出手段は、
処理回路と、
送風機の上流で前記空気の通路に設けられる温度検出素子と、
火災の発生を表す表示動作を行なう表示素子とを備え、
処理回路は、
予め定める設定時間W0毎に発光素子を点灯して受光素子からの受光信号を取り込み、その後、発光素子を消灯し、
受光素子からの受光信号に応答し、空気中の煙の濃度が予め定める値L1以上であるとき、表示素子を駆動し、
温度検出素子によって検出される空気の温度が、火災の発生時における予め定める温度以上になったとき、煙の濃度に拘らず表示素子を駆動することを特徴とする火災および煙感知器。
【請求項2】
前記火災検出手段は、複数の火災検出手段を搭載していることを特徴とする請求項1に記載の火災および煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器に関し、特に煙による散乱光を光学的に検出する煙感知器に関する。
【0002】
本件明細書中、上下方向は、煙感知器が検出すべき空間である、たとえば、建物の部屋において、その天井に取付けられた装着状態における方向を表わし、特定の図面中の上下方向であるときは、その旨を述べる。煙感知器の各構成要素について、天井への装着状態における煙感知器の正面、背面、左右の側面、平面、底面と同じ方向で示す。
【背景技術】
【0003】
従来、光電式感知器では、発光素子から発した光のうち、煙によって散乱した光を受光素子にて検出することにより煙を検出している。この構成において、外乱光(すなわち、設置空間から光)が検出空間に侵入すると、煙が存在していると誤検知してしまうという課題がある。
【0004】
外乱光の侵入を阻みつつも、煙の流入性の良いラビリンス壁(遮光壁)が設置されていた(特許文献1)。しかしながら、外乱光の侵入を防ぎつつ、良好な流入特性を実現するために、構造が複雑になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、外乱光の侵入を防ぎつつ、良好な流入特性を実現する煙感知器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の説明では、後述の発明の実施の形態における記載個所を、丸括弧( )内の図面および段落の番号で示す。
本発明は、
ハウジング3内に設けられる送風機100によって、周囲の空気を上方、もしくは上方側面
の吸気口11から吸い込み、その吸い込んだ空気を、空気の通路を経て、下方、もしくは下方側面
の排気口24から吐き出し、
前記吸い込んだ空気によって、火災を検出する火災検出手段を備え、
送風機100の下流(段落[0027、0029])で空気の通路の途中に遮光性煙検出空間45を形成し、この煙検出空間45内に、煙検出領域111(
図22)を設け、
吸気口11から煙検出領域111までの通路、および煙検出領域111から排気口24までの通路の少なくともいずれか一方は、空気の流過方向に沿って少なくとも3軸方向に屈曲して形成され、
煙検出領域111に向けて光を発生する発光素子112と、
煙検出領域111で発光素子112の光軸と交差する光軸を有する受光素子113と、
受光素子113の光軸に沿って煙検出領域111に関して受光素子113とは反対側に延び、煙検出領域111に臨んで開口し、煙検出領域111から遠ざかった位置で閉鎖され、受光素子113の光軸の周辺で指向特性に対応した範囲を遮光空間121とする遮光部材118とを含み、
前記火災検出手段は、
処理回路62と、
送風機100の上流(段落[0027、0028、0078])で前記空気の通路32に設けられる温度検出素子127(図19)と、
火災の発生を表す表示動作を行なう表示素子92とを備え、
処理回路62は、
予め定める設定時間W0毎に発光素子112を点灯して受光素子113からの受光信号を取り込み、その後、発光素子112を消灯し(段落[0050])、
受光素子113からの受光信号に応答し、空気中の煙の濃度が予め定める値L1以上であるとき、表示素子92を駆動し(段落[0051])、
温度検出素子127によって検出される空気の温度が、火災の発生時における予め定める温度以上になったとき、煙の濃度に拘らず表示素子92を駆動する(段落[0054])ことを特徴とする火災および煙感知器である。
【発明の効果】
【0010】
また、複雑な構造の遮光壁を設けないことにより、設計、製造が容易になり、コストの低減を見込むことができる。
【0014】
本発明は、
火災を検出する検出手段は、複数の火災検出手段を搭載していることを特徴とする。
【0016】
火災により発生した煙、および熱は発生位置から上昇する特性を持ち、天井位置まで上昇した後に天井に沿って移動する。従来技術では、吸気口が感知器中心よりも下方にあるため、天井から離れた低い位置の吸気口に煙、もしくは熱が到達した後、検知部へ煙、もしくは熱が流入することにより火災を検知するため、感知器の周囲に煙が到達した後も検知までに時間を要することが課題となっており、火災を速やかに検知するために感知性能を維持しつつ煙、もしくは熱の流入性をよくする必要がある。
【0017】
本発明では、送風機を内蔵している感知器において吸気口を感知器の上方、もしくは上方側面に、排気口を下方、もしくは下方側面に設けることにより、火災を速やかに、かつ確実に検知することが可能となる。たとえば、吸気口を天井付近に設けることにより、天井に沿って移動してくる煙を速やか、確実に検知領域へ導くことが可能となる。
【0019】
従来の煙感知器では、上下に延びるボデイの上部が天井に固定され、煙は、ボデイの下方から自然に流動して入り込み、外乱光の侵入を抑えるために設けられる水平断面がく字形の多数の隔壁が水平面内で円形に配置されて円環状に構成されるラビリンス壁の間を経て、ボデイ内を上昇して光素子受発光部に到達し、煙は、そこで滞留したままになる。したがって、煙の発生後、煙はその自然な対流などに従って、光素子受発光部に到達するので、煙が検出されるまでに比較的長い時間を要する。また、ラビリンス壁によって、煙の移動経路が長くなり、このことによっても、煙が検出されるまでに比較的長い時間を要する。
【0020】
この従来の煙感知器では、光素子受発光部における煙感知室内における光の乱反射による誤検出を防ぐための構造が複雑であり、大型化する、という問題がある。さらに、ラビリンス壁では、外乱光の侵入を防ぐことが不充分であり、また、流動抵抗が増え、自然に流動する煙の流入性が低下し、煙が光素子受発光部に到達することが困難である。従来のラビリンス壁は、構造が複雑であり、大型化する、という問題もある。
本発明に従えば、煙を短時間で検出する煙感知器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の一形態の煙感知器1を下方から見た斜視図である。
【
図11】ハウジング基体4を下方から見た斜視図である。
【
図14】
図3の切断面線J-Jから見たハウジング基体4の断面図である。
【
図16】
図8の切断面線B-Bから見た煙感知器1の断面図である。
【
図17】
図4の切断面線H-Hから見た煙感知器1の断面図である。
【
図18】
図3の切断面線F-Fから見た煙感知器1の断面図である。
【
図19】
図5の切断面線I-Iから見た煙感知器1の断面図である。
【
図20】検出空間形成体40に関連する排気案内部材50と遮光カバー70などを、上下を逆にして示す分解斜視図である。
【
図21】煙感知器1における煙の通路を説明するための左側方から見た断面図である。
【
図22】
図22(1)は検出空間形成体40内の検出領域における煙による散乱光を示す水平断面図であり、
図22(2)は検出空間形成体40内における受光素子113のための遮光空間121を形成する遮光部材118の働きを説明するための水平断面図である。
【
図23】仕切り部材30と導入遮光部材41とを示す斜視図である。
【
図24】仕切り部材30を下から見た斜視図である。
【
図26】導入遮光部材41と導出遮光部材42と排気案内部材50とを示す左側面図である。
【
図27】導入遮光部材41と導出遮光部材42とを背面寄りで下方から見た斜視図である。
【
図28】導出遮光部材42と排気案内部材50とを正面寄りで下方から見た斜視図である。
【
図35】遮光カバー70を下方から見た斜視図である。
【
図40】表示片91がハウジング本体5に装着されてインジケータ90が構成された状態を示す断面図である。
【
図41】煙感知器1の電子回路装置60を示すブロック図である。
【
図42】煙感知器1の電子回路装置60に備えられる処理回路62の動作を説明するフローチャートである。
【
図43】検出領域111における煙の濃度に対応する受光素子113からの出力電圧の時間経過を示すグラフである。
【
図44】インジケータ90の表示素子92の動作を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の実施の一形態の煙感知器1を下方から見た斜視図であり、
図2は煙感知器1を上方から見た斜視図であり、
図3は煙感知器1の正面図であり、
図4は煙感知器1の背面図であり、
図5は煙感知器1の左側面図であり、
図6は煙感知器1の右側面図であり、
図7は煙感知器1の平面図であり、
図8は煙感知器1の底面図である。これらの図面を参照して、煙感知器1は基本的に、取付け部材2と、ハウジング3とを有する。ハウジング3は、その全体の概略の形状が扁平な4角柱状であり、取付け部材2に固定されるハウジング基体4と、ハウジング基体4から外側方に段差7を形成して張り出したハウジング本体5とを有する。取付け部材2は、煙が検出されるべき建物の部屋の天井6に、ボルト8などによって取付けられる。
【0023】
ハウジング基体4の4つの各周壁10には、複数の吸気口11が形成される。ハウジング本体5の下部21は、正面と背面との前後に細長く延びて下方に膨出した膨出部22と、膨出部22の左右側方で上方に凹んだ凹部23とを有し、膨出部22と凹部23とによって、左右の外側方に臨む排気口24が形成される。火災で発生した煙は、直ちに上昇して天井6の下面に到達し、天井6に沿って水平に移動し、この天井6の下面と段差7との間で、吸気口11から遠心ファン100(
図21)によって強制吸引され、ハウジング3内の検出手段110によって煙が検出され、排気口24から下方に強制排出される。検出手段110によって煙が検出されると、インジケータ90が点滅、または連続点灯して発光し、火災の発生が表示される。
【0024】
図9は取付け部材2の正面図であり、
図10は取付け部材2の左側面図である。取付け部材2の取付け板81には、その下面に、左右一対の突起82と、突起82よりも背面寄り(
図10の左方)で左右一対の係止片83とが形成される。取付け板81に形成される透孔84(
図2)は、係止片83に対応し、取付け部材2の射出成形を容易にする。
【0025】
図11はハウジング基体4を下方から見た斜視図であり、
図12はハウジング基体4の正面図であり、
図13はハウジング基体4の左側面図であり、
図14は
図3の切断面線J-Jから見たハウジング基体4の断面図であり、
図15はハウジング基体4の底面図である。これらの図面を参照して、ハウジング基体4の上板12の上面には、取付け部材2の係止片83に係止して支持される支持片(図示せず)が形成される。上板12には、取付け部材2の各突起82を弾発的に挟持して位置決めする挟持片13が、その周囲の透孔によって形成される。
【0026】
各周壁10の下端部には、段差7を形成する環状の外向きフランジ14が形成されるとともに、ハウジング本体5に着脱自在に連結するための下方に延びる係止爪15が形成される。外向きフランジ14から下方には、ライン引き込み口16が垂下して形成される。上板12のほぼ中央位置には、遠心ファン100を収納して固定するための収納凹所17が形成される。上板12には、フイルタ保持突起18が形成される。各周壁10の吸気口11に臨んでフイルタ87を装着するための装着部19が形成される。
【0027】
図16は
図8の切断面線B-Bから見た煙感知器1の断面図であり、
図17は
図4の切断面線H-Hから見た煙感知器1の断面図であり、
図18は
図3の切断面線F-Fから見た煙感知器1の断面図であり、
図19は
図5の切断面線I-Iから見た煙感知器1の断面図であり、
図20は検出空間形成体40に関連する排気案内部材50と遮光カバー70などを、上下を逆にして示す分解斜視図であり、
図21は煙感知器1における煙の通路を説明するための左側方から見た断面図である。これらの図面を参照して、ハウジング基体4には、スペーサ突起88によって下方に間隔をあけて仕切り部材30が配置される。ハウジング基体4の外向きフランジ14と、仕切り部材30の仕切り片34、35の左右の外側縁などとが当接する。これらによって、ハウジング基体4の上板12の下面と、仕切り部材30の仕切り板31の上面との間に、空気室32が形成される。空気室32には、吸気口11からフイルタ87を介して遠心ファン100によって強制吸引された空気が集合される。
図17において、空気の流動を実線矢印で示す。遠心ファン100は、空気室32に臨んで下方に開口した入口101を有し、この入口101からの空気を、正面に向かって開口した出口102から吐出する。出口102からの空気は、検出手段110における検出空間形成体40に供給される。検出空間形成体40は、導入遮光部材41と、それに組み合わされる導出遮光部材42とによって構成される。遠心ファン100の出口102と、導入遮光部材41の垂下壁47に形成される導入口43との間には、ハウジング基体4の上板12の下面に形成される空気遮蔽突条89と、垂下壁47から背面(
図21の左方)に延びるU字状空気案内突部48とによって案内空間49が形成される。垂下壁47は、遠心ファン100の出口102の左右両側方で空気室32を塞ぐ。
【0028】
空気の温度を検出する温度検出素子127は、たとえば一例として、空気室32において配置される。
【0029】
検出空間形成体40内に形成される検出空間45には、検出空間45の上部背面寄りの導入口43から空気が供給される。検出空間45内の空気は、検出空間45の下部正面寄りで導出遮光部材42の下板46に形成される導出口44から導出される。導出口44からの空気は、導出遮光部材42の下板46の下面と、排気案内部材50の背面側になるにつれて下方に傾斜した空気案内板51の上面との間の案内経路52を経て背面方向(
図21の左方)に移動し、排気案内部材50の排気案内口53を経て、覆い板片54の下面とハウジング本体5の膨出部22とその付近の下面との間の排気空間55を経て、排気口24から下方の外側方に排出される。
【0030】
図22(1)は検出空間形成体40内の検出領域111における煙による散乱光を示す水平断面図であり、
図22(2)は検出空間形成体40内における受光素子113のための遮光空間121を形成する遮光部材118の働きを説明するための水平断面図である。これらの
図22(1)、
図22(2)は、前述の
図19に対応する。
【0031】
検出手段110は、検出空間形成体40を有し、この検出空間形成体40は、煙を含む空気が遠心ファン100によって吸引、圧送される通路の途中に遮光性の検出空間45を形成し、この検出空間45内に、煙の検出領域111を有する。検出空間45は、導入遮光部材41の仕切り板131と、垂下壁47とによって、および導出遮光部材42の左右両側壁133、134と、正面壁135と、下板136とによって形成される、矩形体、たとえば、直方体の空間である。導入遮光部材41と導出遮光部材42とは、遮光性の合成樹脂などから成り、少なくとも検出空間45を形成する内面は、乱反射を抑制する黒色であってもよい。
【0032】
導入遮光部材41の垂下壁47には、背面側に、発光素子112をその上部から保持する凹所が形成される発光素子保持部137が設けられる。発光素子112は、検出領域111に向けて光を発生する。垂下壁47の背面側にはまた、受光素子113をその上部から保持する凹所が形成される受光素子保持部138が設けられる。受光素子113は、検出領域111で発光素子112の光軸と交差する光軸を有する。
【0033】
発光経路形成部材115は、遮光性であり、中空であり、垂下壁47において、発光素子保持部137(
図22)に連なり、発光素子112の光軸に沿って延び、検出領域111に関して発光素子112寄りで、発光素子112からの光が辿る、仮想線で示される発光経路114を形成する。発光経路形成部材115は、発光素子112の指向特性に従って、検出領域111で煙の検出に必要な発光素子112から発光される光の発光光軸に沿う拡がりを規定し、すなわち、発光光軸を中心とする仮想垂直平面内の円周上で、予め定める光度、または照度が得られる範囲、たとえば、指向角、半値角を規定し、煙の検出に不要な低強度の光の検出空間への放射を制限し、乱反射を抑制する。
【0034】
受光経路形成部材117は、遮光性であり、中空であり、垂下壁47において、受光素子保持部138(
図22)に連なり、受光素子113の光軸に沿って延び、検出領域111に関して受光素子113寄りで、受光素子113への光が辿る、仮想線で示される受光経路116を形成する。受光経路形成部材117は、受光素子113の指向特性に従って、検出領域111から煙の検出に必要な受光素子113の受光光軸に沿う入射光の拡がりを規定し、煙の検出に不要であって、検出領域111以外からの乱反射光の入射を制限し、誤検出を防ぐ。
【0035】
導出遮光部材42の下部にもまた、導入遮光部材41の発光素子保持部137、受光素子保持部138に対応する構成要素が設けられ、同一の数字の参照符に添え字aを付して示し、これらが上下に組み合されて保持機能を果たす。
【0036】
遮光部材118は、受光素子113の光軸の周辺で指向特性に対応した範囲を遮光空間121とする働きをし、一対の遮光板122、123と、仕切り板131と、下板136と、側壁133とによって囲まれて形成される。遮光空間121は、受光素子113の光軸に沿って検出領域111に関して受光素子113とは反対側に延び、検出領域111に臨んで開口し、検出領域111から遠ざかった位置で、実施の一形態では、側壁133によって閉鎖される。
【0037】
遮光部材118は、受光素子113の光軸に沿って検出領域111に関して受光素子113とは反対側で、受光素子113の対向する位置に、受光素子113の入射光の拡がりを、すなわち、受光感度が予め定める値以上得られる、たとえば、視野角を、覆いかぶさって包み込むように延びる。
【0038】
図22(2)に示されるとおり、遮光部材118によって、検出空間45内で、発光素子112から出射された光が、矢印で示されるように、どのように乱反射しようとも、乱反射光が遮光部材118の遮光空間121内に入った後でないと、受光素子113に到達しないので、受光素子113に到達する乱反射光を少なくできる。遮光部材118の遮光空間121内に入る光は、検出空間45内の乱反射によって、その光量であるエネルギが既に弱まっているので、受光素子113に到達して入射する、仮想線119で示される範囲の反射光は、自ずと弱くなり、したがって、受光素子113の光電流による検出動作に悪影響を及ぼさない。遮光部材118は、遮光板122、123のような隔壁などの単純な構成で実現できるので、検出空間形成体40と遮光部材118などとを含む構成要素を合成樹脂製とすることによって、射出成形の金型を簡単化できる。
【0039】
受光経路形成部材117の検出領域111寄りの端部に、受光素子113の受光経路116に関して発光素子112から遠ざかった位置に、発光素子112の発光経路114の外方で、検出空間45に上下に延びて突出する遮光性の突起125が設けられる。この突起125は、発光素子112の発光経路114の外方で、したがって、発光素子112から出射される光の検出領域111への煙検出に必要な拡がりの照射を妨げることなく、検出空間45内で乱反射した光が受光素子113へ入射することを防ぐことが確実である。
【0040】
実施の他の形態では、発光素子112の光軸に沿って検出領域111に関して発光素子112とは反対側に延び、検出領域111に臨んで開口し、検出領域111から遠ざかった位置で閉鎖され、発光素子112の光軸の周辺で指向特性に対応した範囲を遮光空間121とする、もう1つの遮光部材を、さらに設けることができる。これによって、検出空間45における発光素子112からの光の乱反射をさらに一層防ぐことができる。
【0041】
図23は仕切り部材と導入遮光部材とを示す斜視図であり、
図24は仕切り部材を下から見た斜視図であり、
図25は仕切り部材の正面図である。これらの図面を参照して、U字状空気案内突部48の背面側の端面は、仕切り部材30の仕切り板31に、遠心ファン100の出口102付近で下方に立設される平面視でU字状の遮蔽突部33に嵌まり込んで、遮蔽突部33の正面側の面に当接し、導入口43へ空気を導く。仕切り部材30は、仕切り板31の側部から正面側に延びる仕切り片34、35は、導入遮光部材41の両側方で、ハウジング基体4の上板12との間の空気室32を塞ぐ。仕切り板31には、導入遮光部材41の垂下壁47に対向して案内片36が垂下されるとともに、発光素子112寄りで遮蔽壁37が形成される。
【0042】
図26は導入遮光部材41と導出遮光部材42と排気案内部材50とを示す左側面図であり、
図27は導入遮光部材41と導出遮光部材42とを背面寄りで下方から見た斜視図であり、
図28は導出遮光部材42と排気案内部材50とを正面寄りで下方から見た斜視図である。
図29は導入遮光部材41の正面図であり、
図30は導入遮光部材41の背面図であり、
図31は導入遮光部材41の底面図である。
図32は、導出遮光部材42の背面図であり、
図33は導出遮光部材42の平面図である。
【0043】
これらの図面を参照して、導出遮光部材42には、正面壁135のほぼ中腹位置から正面側に突出して延びる仕切り板139が形成される。仕切り板139の上面は、仕切り部材30の仕切り片34、35とともに、ハウジング基体4の上板12の下面との間に案内空間を形成し、正面における吸気口11から周壁10内のフイルタ87を介する空気を空気室32に導き、ハウジング基体4の正面の外向きフランジ14の下面に重なる。導出遮光部材42の左右の側壁133、134の背面側の端部には、相互に内向きで上下に延びる係止部141、142が形成され、導入遮光部材41の垂下壁47の左右の両側端に係合して、導入遮光部材41と導出遮光部材42とが組立てられる。導出遮光部材42の左右の係止爪151、152は、排気案内部材50の係止凹所56、57と着脱自在に係止される。
【0044】
図34は遮光カバー70の斜視図であり、
図35は遮光カバー70を下方から見た斜視図であり、
図36は遮光カバー70の正面図である。遮光カバー70は、仕切り部材30の仕切り板31の下面に搭載される電子回路装置60を下方から覆う。
【0045】
再び、
図19を参照して、電子回路装置60の基板63には、仕切り部材30のコネクタ壁38に対向してコネクタ61が配置され、発光素子112と、受光素子113と、温度検出素子127との可撓性の各リード線がそれぞれ接続され、インジケータ90のための発光ダイオードなどによって実現される表示素子92が表示片91に対向して下向きに立設され、これらの各構成要素に接続されてそれらの動作を制御するマイクロコンピュータなどによって実現される処理回路62などが設けられる。温度検出素子127は、たとえば一例として、そのリード線が仕切り部材30に形成される接続孔39に挿通されて、前述の空気室32に設けられる。基板63は、ボルト64、65が仕切り部材30のねじ孔86(
図24)およびハウジング基体4のねじ孔88(
図15)に螺合して、固定される。
【0046】
遮光カバー70は、下板71と、左右の側板72,73と、コネクタ61のための切り欠き74を有する背面板75と、遮蔽壁76と、左右の正面隔壁77、78とを有する。この遮蔽壁76と、仕切り部材30の遮蔽壁37とは、組立て完了時、左右に連なって配置される。下板71には、表示素子92が下方に露出する透孔79が形成される。
【0047】
図37は、ハウジング本体5の斜視図である。ハウジング本体5の下部21における膨出部22の背面寄りには、インジケータ90のための表示片91が固定される。ハウジング本体5の左右側壁25、26の内面には、ハウジング基体5の係止爪15が着脱自在に係止する係止突部27が形成される。ハウジング本体5の背面壁28には、ライン引き込み口16のための切り欠き29が形成される。
【0048】
図38は表示片91の斜視図であり、
図39は表示片91の下方から見た斜視図であり、
図40は表示片91がハウジング本体5に固定された状態を示す断面図である。これらの図面を参照して、表示片91は、円板状の基部93の上面に円環状突部94を有し、基部93の下面には、正面と背面との前後に細長く扁平な表示突条95を有する。表示突条95の下部は、前後方向断面も左右方向断面もいずれも、下に凸の円弧状に形成される。円環状突部94の凹部には、表示素子92が遮光カバー70の透孔79を介して臨み、表示素子92からの光が照射される。ハウジング本体5および表示片91の合成樹脂材料の屈折率が異なることによって、表示素子92からの光は、下方から見たとき、表示片91の表示突条95のみに伝搬して輝いた状態が得られるので、美感が向上される。
【0049】
図41は、煙感知器1の電子回路装置60の構成を示すブロック図である。コネクタ61の電源用端子66からの電力は、ファン用電源回路144からファン100に与えられる。ファン100の回転速度は、回転速度検出器145によって検出され、処理回路62に与えられる。処理回路62は、発光駆動回路146によって発光素子112を駆動させる。受光素子113の出力は、増幅回路147を介して処理回路62に与えられる。コネクタ61の通信用端子67は、通信回路148を介して処理回路62に接続され、これによって、処理回路62は遠隔の表示装置などとの信号の授受をすることができる。処理回路62は、表示素子92を点灯制御する。制御用電源回路149が備えられる。検出手段110は、検出空間形成体40、ならびに発光素子112、受光素子113、および処理回路62などの検出回路を含む電子回路装置60などによって、構成される。
【0050】
図42は、煙感知器1の電子回路装置60に備えられる処理回路62の動作を説明するフローチャートである。ステップs1からステップs2へ移り、処理回路62を初期化し、ステップs3において、表示素子92を含むインジケータ90のための処理動作を行なう。ステップs4において、火災情報を送信するための処理動作を行なう。ステップs5において、処理回路62に備えられる煙検知タイマによる計時時間Wが予め定める設定時間W0(たとえば、0,5秒)以上経過したかを判断し、経過していなければ、ステップs3に戻る。ステップs5において、計時時間Wが予め定める設定時間W0である0,5秒以上経過したことが判断されると、ステップs6において、発光素子112を点灯する。ステップs7では、受光素子113からの受光信号を、処理回路62に取り込み、ステップs8では、発光素子112を消灯する。ステップs9では、受光素子113からの受光信号の出力電圧レベルから、煙の濃度を演算し、火災の発生を判定する。受光素子113からの受光信号の出力電圧が、検出された煙の濃度に対応する予め定めるしきい値以上であって、火災が発生したものと判定されると、表示素子92を予め定める態様で、たとえば、点滅または連続点灯などして、火災の発生を目視表示する。火災が発生していなければ、表示素子92を消灯したままに保つ。ステップs10では、煙検知タイマの計時時間Wを零にクリアし、ステップs3に戻る。こうして、予め定める設定時間W0毎に、煙の濃度の検出を行なう。
【0051】
図43は、検出領域111における煙の濃度に対応する受光素子113からの出力電圧の時間経過を示すグラフである。受光素子113の出力電圧は、検出空間形成体40の検出空間45における検出領域111を通過する空気に含まれる煙の濃度に対応する。処理回路62は、
図42のステップs9において、受光素子113の出力に応答し、その出力電圧が、たとえば、参照符L1で示される予め定めるしきい値以上であるとき、火災が発生したものと判定して、表示素子92によって、火災の発生を表わす表示動作を行なわせる。
【0052】
図44は、インジケータ90の表示素子92の動作を説明する波形図である。検出領域111を通過する空気に含まれる煙の濃度が低く、そのため、受光素子113の出力が、
図43のしきい値L1未満であれば、この正常時(非火災時)には、表示素子92は、処理回路62によって、
図44の点灯時間W1、消灯時間W2がそれぞれ一定の間隔で点滅している。
【0053】
煙の濃度が高く、そのため、受光素子113の出力が、
図43のしきい値L1以上であれば、表示素子92は、処理回路62によって駆動され、正常時(非火災時)とは異なる間隔で点滅動作される。時刻t1において、受光素子113の出力がしきい値L1以上になると、表示素子92は、時間W1だけ点灯し、次の時間W2だけ消灯する態様が、正常時(非火災時)とは異なり、このような動作が繰返される。
【0054】
処理回路62はまた、温度検出素子127の出力に応答し、検出される空気の温度が、火災の発生時における予め定める値以上になったとき、煙の濃度に拘らず、インジケータ90の表示素子92を表示駆動する。
【0055】
実施の他の形態では、処理回路62は、
図44の点滅動作に代えて、連続点灯であってもよく、これらの目視表示に代えて、音響表示または振動などによる表示が行なわれてもよい。
【0056】
本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)(a)ハウジング3であって、
ハウジング3の上部で外側方に開口する吸気口11と、
ハウジング3の下部に開口する排気口24と、
吸気口11から排気口24に空気を導く通路とを有するハウジング3と、
(b)吸気口11から空気を吸引し、通路を経て、排気口24に排気する吸引手段100と、
(c)通路の途中に設けられ、空気中の煙を検出する検出手段110とを含むことを特徴とする煙感知器である。
【0057】
煙を短時間で検出する煙感知器が提供される。たとえば、火災で発生した煙は、直ちに上昇して天井6の下面に到達し、天井6に沿って移動し、この天井6の下面でその下面近傍に、煙感知器1の周囲に存在する、火災発生初期の煙は、ハウジング3の上部で外側方に開口する吸気口11から、通路に吸引手段100、たとえば、遠心ファンによって強制されて吸引され、空気中の煙を検出する検出手段へ導かれ、通路を経て排気口24に強制されて排気され、通路内で滞留しない。したがって、天井6に沿って移動してくる煙の検出手段110への円滑な流入性がよく、煙を速やかに、かつ確実に検出することができる。遠心ファンに代えて、空気を吸引、圧送する他の構成でもよく、軸流ファンなどでもよい。
【0058】
吸気口11は、ハウジング3の上部で天井6の下面から下方に間隔をあけて天井6の下面に臨んで、直上方に向かって、または斜め上方に向かって開口した構成も含む。ハウジング3の下部の排気口24は、ハウジング3の直下方に向かって、斜め下方に向かって、または外側方に向かって開口した構成も含み、吸気口11よりも下方に配置される。
【0059】
(2)吸気口11から検出空間形成体40の導入口43までの通路、および
検出空間形成体40の導出口44から排気口24までの通路の少なくともいずれか一方は、
遮光性であり、空気の流過方向に沿って少なくとも3軸方向に屈曲して形成されることを特徴とする。
【0060】
煙による散乱光を光学的に検出する検出空間45への外乱光の侵入を確実に防ぐ煙感知器1が提供される。検出空間45への外乱光の侵入を、容易な構造で防ぐことができる。設置空間、たとえば、建物の部屋の外部からの外乱光が検出空間45に侵入することがないので、煙が存在しているものと誤検出するおそれがない。
【0061】
吸気口11から検出空間45へ繋がる通路がXYZの直交3軸方向全ての方向にそれぞれ1回以上曲がり、すなわち、煙の流れる方向を2回以上変化する構成を有する。たとえば、後述の実施の形態では、左右の吸気口11からの空気は、空気室32内で水平なX軸方向(すなわち、左右方向)に移動し、次に、遠心フアン100の入口101に吸引されて下方のZ軸方向に移動し、これによって、流れの方向が1回変化し、次に、遠心フアン100によって吸引、下降したZ軸方向の空気は、遠心フアン100の出口102から正面側に向かってY軸方向に移動して、流れの方向がもう1回変化した後、検出空間45に導入されるので、空気は、左右の吸気口11から検出空間45の導入口43に到達するまでに、少なくとも3軸方向に屈曲している。
【0062】
吸引手段100を内蔵している煙感知器1において、前述の従来のラビリンス壁などの遮光壁を設けることなく、たとえ、外部からの外乱光が吸気口11の入口端へ侵入しても、その入口端から侵入した外乱光が検出空間45まで到達しない。また、前述の従来のラビリンス壁のような複雑な構造の遮光壁を設けないことによって、通路の構造が単純になり、設計、製造が容易になり、コストの低減が見込まれる。
【0063】
実施の他の形態では、吸引手段100を内蔵している煙感知器1において、吸気口11と検出空間40との間、もしくは検出空間40と排気口24との間のどちらか、または両方に、多孔質構造を有するフイルタ87を取り付けてもよい。これによって、煙以外に、たとえば、塵埃、虫などの異物、または外部からの外乱光などが検出空間45へ侵入し難くなる。本発明によれば、通路の構造が単純になり、塵埃、虫が侵入しやすくなるが、フイルタ87による異物外乱光などの混入が防がれる。フイルタ87は、多孔質の、たとえば、3次元の複雑に屈曲した連通孔を有する焼結金属、合成樹脂、不織布、紙などから成ってもよく、弾発性を有してもよく、剛性であってもよい。
【0064】
(3)検出空間形成体40は、
検出空間45に通路からの空気が導入される導入口43と、
検出空間からの空気が通路に導出される導出口44とを有し、
導入口43から導出口44までの空気の経路の途中に、検出領域111が配置されることを特徴とする。
【0065】
検出空間45内に、煙の検出領域111と、乱反射防止の遮光部材118と、突起125などが存在する。
【0066】
検出領域111は導入口43から導出口44までの空気の経路の途中に配置されるので、空気が常時流れており、滞留していないので、煙の検出が迅速である。
【0067】
(4)検出手段110は、
通路の途中に遮光性の検出空間45を形成し、この検出空間45内に、煙の検出領域111を有する検出空間形成体40と、
検出領域111に向けて光を発生する発光素子112と、
検出領域111で発光素子112の光軸と交差する光軸を有する受光素子113と、
受光素子113の光軸に沿って検出領域111に関して受光素子113とは反対側に延び、検出領域111に臨んで開口し、検出領域111から遠ざかった位置で閉鎖され、受光素子113の光軸の周辺で指向特性に対応した範囲を遮光空間とする遮光部材118と(遮光部材118は、一対の遮光板122、123と、仕切り板131と、下板136と、側壁133とから構成されてもよい。)、
受光素子113の出力に応答し、その出力が煙に対応することを検出する検出回路60とを含むことを特徴とする。
【0068】
煙による散乱光を光学的に検出する検出空間45における光の乱反射を防ぐための構造を簡単にし、小形化し、安価な煙感知器1が提供される。
【0069】
受光素子113、たとえば、シリコンフォトダイオードには、視野角、または指向半値角が存在し、視野角外の感度は、視野角内である正面に対して低い。本発明では、受光素子113の光軸に沿って検出領域111に関して受光素子113とは反対側で、受光素子113の対向する位置に、受光素子113の入射光の拡がりを、たとえば、後述の
図22(1)の受光経路116のとおり、視野角を、覆いかぶさって包み込むように延びる遮光部材118を設ける。遮光部材118は、検出領域111に臨んで開口し、検出領域111から遠ざかった位置で閉鎖され、受光素子113の光軸の周辺で指向特性に対応した範囲を遮光空間121とする。
【0070】
この遮光部材118によって、検出空間45内で、発光素子112、たとえば、発光ダイオードから出射された光が、どのように乱反射しようとも、乱反射光が遮光部材118の遮光空間121内に入った後でないと、受光素子113に到達しないので、
図22(2)に示されるとおり、受光素子113に到達する乱反射光を少なくできる。遮光部材118の遮光空間121内に入る光は、検出空間45内の乱反射によって、その光量であるエネルギが既に弱まっているので、受光素子113に到達して入射する反射光は、自ずと弱くなり、したがって、受光素子113の光電流による検出動作に悪影響を及ぼさない。遮光部材118は、隔壁などの単純な構成で実現できるので、検出空間形成体40と遮光部材118などとを含む構成要素を合成樹脂製とすれば、射出成形の金型を簡単化できる。
【0071】
(5)発光素子112の光軸に沿って延び、検出領域111に関して発光素子112寄りで、発光素子112からの光の発光経路114を形成する遮光性の発光経路形成部材115と、
受光素子113の光軸に沿って延び、検出領域111に関して受光素子113寄りで、受光素子113への光の受光経路116を形成する遮光性の受光経路形成部材117とを含むことを特徴とする。
【0072】
発光経路形成部材115は、発光素子112の指向特性に従って、検出領域111で煙の検出に必要な発光素子112から発光される光の発光光軸に沿う拡がりを規定し、発光経路114のとおり、発光光軸を中心とする仮想垂直平面内の円周上で、予め定める光度、または照度が得られる範囲、たとえば、指向角、半値角を規定し、煙の検出に不要な低強度の光の検出空間への放射を制限し、乱反射を抑制する。
【0073】
受光経路形成部材117は、受光素子の指向特性に従って、検出領域111から煙の検出に必要な受光素子113の受光光軸に沿う入射光の拡がりを規定し、煙の検出に不要であって、検出領域111以外からの乱反射光の入射を制限し、誤検出を防ぐ。
【0074】
実施の他の形態では、発光素子112の光軸に沿って検出領域111に関して発光素子112とは反対側に延び、検出領域111に臨んで開口し、検出領域111から遠ざかった位置で閉鎖され、発光素子112の光軸の周辺で指向特性に対応した範囲を遮光空間とする、もう1つの遮光部材を、さらに設けることができる。これによって、検出空間45における発光素子112からの光の乱反射をさらに一層防ぐことができる。
【0075】
(6)受光素子113の受光経路116の検出領域111寄りの端部に、受光素子113の受光経路116に関して発光素子112から遠ざかった位置に、発光素子112の発光経路114の外方で、検出空間45に突出する遮光性の突起125が設けられることを特徴とする。
【0076】
突起125は、発光素子112の発光経路114の外方で、したがって、発光素子112から出射される光の検出領域111への煙検出に必要な拡がりの照射を妨げることなく、検出空間45内で乱反射した光が受光素子113へ入射することを防ぐことが確実である。
【0077】
(7)通路の途中に、空気の温度を検出する温度検出素子127が設けられ、
検出手段は、煙を検出するだけでなく、温度検出素子127の温度出力に応答し、その温度出力が火災に対応することを検出することを特徴とする。
【0078】
煙と、煙を含んでもよい空気の温度との両者を検出して、火災などの発生を迅速に検出できる。温度検出素子127、たとえば、サーミスタは、吸引手段100の上流に、すなわち、吸引手段100よりも吸気口11側に配置してもよい。
【0079】
(8)強制吸引でなくてもよい乱反射防止の煙感知器であり、
空気の通路の途中に遮光性の検出空間45を形成し、この検出空間45内に、煙の検出領域111を有する検出空間形成体40と、
検出領域111に向けて光を発生する発光素子112と、
検出領域111で発光素子112の光軸と交差する光軸を有する受光素子113と、
受光素子113の光軸に沿って検出領域111に関して受光素子112とは反対側に延び、検出領域111に臨んで開口し、検出領域111から遠ざかった位置で閉鎖され、受光素子112の光軸の周辺で指向特性に対応した範囲を遮光空間121とする遮光部材118と、
受光素子113の出力に応答し、その出力が煙に対応することを検出する検出回路60とを含むことを特徴とする煙感知器である。
【0080】
前述のとおり、煙による散乱光を光学的に検出する検出空間45における光の乱反射を防ぐための構造を簡単にし、小形化する煙感知器1が提供される。
【0081】
受光素子113には、視野角、または指向半値角が存在し、視野角外の感度は、視野角内である正面に対して低い。本発明では、受光素子113の光軸に沿って検出領域111に関して受光素子113とは反対側で、受光素子113の対向する位置に、受光素子113の入射光の拡がりを、たとえば、後述の
図22(1)の受光経路116のとおり、視野角を、覆いかぶさって包み込むように延びる遮光部材118を設ける。遮光部材118は、検出領域111に臨んで開口し、検出領域111から遠ざかった位置で閉鎖され、受光素子113の光軸の周辺で指向特性に対応した範囲を遮光空間121とする。
【0082】
この遮光部材118によって、検出空間45内で、発光素子112、たとえば、発光ダイオードから出射された光が、どのように乱反射しようとも、乱反射光が遮光部材118の遮光空間121内に入った後でないと、受光素子113に到達しないので、後述の
図22(2)に示されるとおり、受光素子113に到達する乱反射光を少なくできる。遮光部材118の遮光空間121内に入る光は、検出空間45内の乱反射によって、その光量であるエネルギが既に弱まっているので、受光素子113に到達して入射する反射光は、自ずと弱くなり、したがって、受光素子113の光電流による検出動作に悪影響を及ぼさない。遮光部材118は、隔壁などの単純な構成で実現できるので、検出空間形成体40と遮光部材118などとを含む構成要素を合成樹脂製とすれば、射出成形の金型を簡単化できる。
【0083】
(9)(a)吸気口と、排気口と、吸気口から排気口に空気を導く通路とを有するハウジングと、
(b)吸気口から空気を吸引し、通路を経て、排気口に強制排気する吸引手段と、
(c)通路の途中に設けられ、空気中の煙を検出する検出手段とを含み、
(d)吸気口から検出空間形成体の導入口までの通路、および
検出空間形成体の導出口から排気口までの通路の少なくともいずれか一方は、
遮光性であり、空気の流過方向に沿って少なくとも3軸方向に屈曲して形成されることを特徴とする煙感知器である。
【0084】
本発明に従えば、煙を短時間で検出する煙感知器が提供される。火災発生初期の煙は、ハウジング3の吸気口11から、通路に吸引手段100、たとえば、遠心ファンによって強制されて吸引され、空気中の煙を検出する検出手段へ導かれ、通路を経て排気口24に強制されて排気され、通路内で滞留しない。したがって、煙の検出手段110への円滑な流入性がよく、煙を速やかに、かつ確実に検出することができる。遠心ファンに代えて、空気を吸引、圧送する他の構成でもよく、軸流ファンなどでもよい。
【0085】
特に、吸気口11から検出空間形成体40の導入口43までの通路、および
検出空間形成体40の導出口44から排気口24までの通路の少なくともいずれか一方は、遮光性であり、空気の流過方向に沿って少なくとも3軸方向に屈曲して形成されるので、煙による散乱光を光学的に検出する検出空間45への外乱光の侵入を確実に防ぐ煙感知器1が提供される。検出空間45への外乱光の侵入を、容易な構造で防ぐことができる。設置空間、たとえば、建物の部屋の外部からの外乱光が検出空間45に侵入することがないので、煙が存在しているものと誤検出するおそれがない。
【0086】
吸気口11から検出空間45へ繋がる通路がXYZの直交3軸方向全ての方向にそれぞれ1回以上曲がり、すなわち、煙の流れる方向を2回以上変化する構成を有する。一例として、遠心フアン100を使用して、空気を少なくとも3軸方向に屈曲する構成は、前述のとおりである。
【0087】
吸引手段100を内蔵している煙感知器1において、前述の従来のラビリンス壁などの遮光壁を設けることなく、たとえ、外部からの外乱光が吸気口11の入口端へ侵入しても、その入口端から侵入した外乱光が検出空間45まで到達しない。また、前述の従来のラビリンス壁のような複雑な構造の遮光壁を設けないことによって、通路の構造が単純になり、設計、製造が容易になり、コストの低減が見込まれる。
【0088】
(10)(a)ハウジング3であって、
ハウジング3の上部で外側方に開口する吸気口11と、
ハウジング3の下部に開口する排気口24と、
吸気口11から排気口24に空気を導く通路とを有するハウジング3と、
(b)吸気口11から空気を吸引し、通路を経て、排気口24に強制排気する吸引手段100と、
(c)通路の途中に設けられ、空気の温度を検出する検出手段127とを含むことを特徴とする熱感知器1である。
【0089】
空気の温度を短時間で検出する熱感知器が提供される。たとえば、火災で発生した煙を含んでもよい空気は、直ちに上昇して天井6の下面に到達し、天井6に沿って移動し、この天井6の下面でその下面近傍に、熱感知器の周囲に存在する、火災発生初期の煙は、ハウジングの上部で外側方に開口する吸気口11から、通路に吸引手段100によって強制されて吸引され、空気の温度を検出する検出手段127へ導かれ、通路を経て排気口24に強制排気され、通路内で滞留しない。したがって、天井6に沿って移動してくる空気の検出手段127への円滑な流入性がよく、空気の温度を速やかに、かつ確実に検出することができる。火災以外によって発生された空気の温度も検出される。
【0090】
吸気口11は、ハウジング3の上部で天井6の下面から下方に間隔をあけて天井6の下面に臨んで、直上方に向かって、または斜め上方に向かって開口した構成も含む。ハウジング3の下部の排気口24は、ハウジングの3直下方に向かって、斜め下方に向かって、または外側方に向かって開口した構成も含み、吸気口11よりも下方に配置される。
【0091】
(11)微粒子を含む流体が供給される通路の途中に遮光性の検出空間45を形成し、この検出空間45内に、微粒子の検出領域111を有する検出空間形成体40と、
検出領域111に向けて光を発生する発光素子112と、
検出領域111で発光素子112の光軸と交差する光軸を有する受光素子113と、
受光素子113の光軸に沿って検出領域111に関して受光素子113とは反対側に延び、検出領域111に臨んで開口し、検出領域111から遠ざかった位置で閉鎖され、受光素子113の光軸の周辺で指向特性に対応した範囲を遮光空間121とする遮光部材118と、
受光素子113の出力に応答し、その出力が微粒子に対応することを検出する検出回路60とを含むことを特徴とする流体中の微粒子検出装置である。
【0092】
空気などの気体、または液体などの流体中に含まれる微粒子、たとえば空気中の煙などを検出するにあたり、前述と同じく、微粒子による散乱光を光学的に検出する検出空間45における光の乱反射を防ぐための構造を簡単にし、小形化する流体中の微粒子検出装置が提供される。
(12) ハウジング3内に設けられる送風機100によって、吸気口11から周囲の空気を吸い込んで、空気中の煙を光学的に検出する検出手段内の検出領域に供給し、排気口24から吐き出す煙感知器において、
吸気口から検出領域までの通路、および検出領域から排気口までの通路の少なくともいずれか一方は、
空気の流過方向に沿って少なくとも3軸方向に屈曲して形成されることを特徴とする煙感知器である。
(13) 吸気口から検出領域までの通路、および検出領域から排気口までの通路の少なくともいずれか一方に、多孔質構造を有するフイルタ87を有することを特徴とする。
送風機を内蔵している煙感知器において、遮光壁を設けることなく、吸気口から検知領域へ繋がる流路が3軸方向全ての方向にそれぞれ1回以上曲がっている構成であり、遮光壁を設けていないので、外乱光が流路へ侵入しやすいが、通路が3軸方向全ての方向にそれぞれ1回以上曲がっているので、通路に侵入した外乱光が検出領域まで到達しない。
この構造により、流路の構造が単純になるため、塵埃、虫が侵入しやすくなるが、送風機を内蔵する煙感知器において、吸気口と検知手段の間、検知手段と排気口の間のどちらか、もしくは両方に多孔質構造を有するフィルタを取り付けることによって、検出手段へ煙以外が侵入し難くなる。
(14) ハウジング内に設けられる送風機によって、周囲の空気を上方、もしくは上方側面から吸い込み、その吸い込んだ空気を、下方、もしくは下方側面から吐き出し、
前記吸い込んだ空気によって、火災を検出する検出手段を備えることを特徴とする火災感知器である。
(15) 火災を検出する検出手段は、前記吸い込んだ空気によって、火災を判定する基準となる物理現象の対応する火災情報信号、もしくは火災信号を出力することを特徴とする。
煙の流入性がよく、煙を速やかに、かつ確実に検知することのできる感知器を提供することができる。すなわち、火災の検知方法に応じて、判定基準となる物理現象の対応する火災情報信号(煙濃度、温度など、数字を含むデータの信号)もしくは火災信号(火災の発生か、発生していないかを表わす信号)を発生する。
火災を検知する手段として、複数の火災検知手段を搭載している構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、煙感知器に関連して実施することができるだけでなく、熱感知器にも関連して実施することができ、さらに、空気中の煙だけでなく、気体または液体に含まれる微粒子を検出するためなどに、広い技術分野で実施できる。
【符号の説明】
【0094】
1 煙感知器
3 ハウジング
4 ハウジング基体
5 ハウジング本体
6 天井
11 吸気口
18 フイルタ保持突起
22 膨出部
24 排気口
30 仕切り部材
32 空気室
40 検出空間形成体
41 導入遮光部材
42 導出遮光部材
43 導入口
44 導出口
45 検出空間
60 電子回路装置
70 遮光カバー
87 フイルタ
90 インジケータ
91 表示片
92 表示素子
100 遠心ファン
110 検出手段
111 検出領域
112 発光素子
113 受光素子
114 発光経路
116 受光経路
118 遮光部材
121 遮光空間
127 温度検出素子
137、137a 発光素子保持部
138、138a 受光素子保持部