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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】液体の製造方法及び液体の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/02 20060101AFI20230119BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20230119BHJP
   C07D 493/08 20060101ALI20230119BHJP
   C07D 311/62 20060101ALI20230119BHJP
   C07D 307/62 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20230119BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20230119BHJP
   C07C 43/04 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
B01D11/02 A
C12N5/071
C07D493/08 B
C07D311/62
C07D307/62
A61K31/375
A61K31/353
G01N1/10 F
C07C43/04 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018165408
(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公開番号】P2020006357
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2018125170
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章悟
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-240609(JP,A)
【文献】国際公開第2006/058382(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0166175(US,A1)
【文献】国際公開第2015/152144(WO,A1)
【文献】特開2003-081896(JP,A)
【文献】Solvent Extraction Research and Development,2017年,Vol.24,P.37-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00 - 5/28
B01D 11/00 - 11/04
G01N 1/10
C11B 1/00 - 1/16
C11B 9/00 - 9/02
A23L 5/00 - 5/49
A61K 31/375
A61K 31/353
C07C 43/04
C07D 493/08
C07D 311/62
C07D 307/62
Japio-GPG/FX
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性成分を含む液体を製造する方法であって、
抽出槽において液化ガスを生体組織に接触させることで、前記生体組織から前記水溶性成分を抽出する工程と、
前記抽出槽で抽出された抽出液を第1の導管を経由して前記抽出槽から濃縮槽に導入した後、前記第1の導管、前記濃縮槽、及び前記濃縮槽に接続された第2の導管を含む経路内を前記液化ガスの飽和蒸気圧未満の圧力として前記液化ガスを気化させて前記第2の導管から排出することで、前記濃縮槽に前記抽出液を濃縮した液体を残留させる工程を含む
液体の製造方法。
【請求項2】
前記液化ガスを気化させることで濃縮された抽出液から非水溶性成分を分離する工程をさらに含む
請求項1に記載の液体の製造方法。
【請求項3】
前記抽出液は、前記抽出槽内に液化ガスを導入することで前記抽出槽から押し出されて前記濃縮槽に導入される
請求項1又は2のいずれか一項に記載の液体の製造方法。
【請求項4】
水溶性成分を含む液体を製造する装置であって、
液化ガスを生体組織に接触させることで、前記生体組織から前記水溶性成分を抽出するための抽出槽と、
前記抽出槽で抽出された抽出液を導出するための第1の導管と、
前記第1の導管を経由して前記抽出液が導入される濃縮槽と、
前記濃縮槽に接続された第2の導管を含み、
前記抽出槽内の前記抽出液を前記第1の導管を経由して前記抽出槽から前記濃縮槽に導入した後、前記第1の導管、前記濃縮槽、及び前記第2の導管を含む経路内を前記液化ガスの飽和蒸気圧未満の圧力として前記液化ガスを気化させて前記第2の導管から排出することで、前記濃縮槽に前記抽出液を濃縮した液体を残留させる
液体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水及び水溶性成分を含む液体を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精油(エッセンシャルオイル)は、芳香化合物を含み、揮発性を有する油であり、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法等により、植物から抽出されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、水蒸気蒸留法や溶媒抽出法では、抽出工程や抽出液の濃縮工程において、加熱する必要があり、抽出された成分が熱分解する可能性やタンパク質が熱変性する可能性があるという問題があった。
【0004】
本発明は、抽出された成分の熱分解やタンパク質の熱変性が起こりにくい所定の温度内で、生体組織に含まれる水溶性成分を抽出及び濃縮することが可能な液体の製造方法及び液体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、水溶性成分を含む液体を製造する方法であって、液化ガスを用いて、生体組織から前記水溶性成分を抽出する工程と、前記抽出する工程で抽出された抽出液から液化ガスを気化させることで前記抽出液を濃縮する工程を含む。
【0006】
本発明の他の一態様は、水溶性成分を含む液体を製造する装置であって、液化ガスを用いて、生体組織から前記水溶性成分を抽出する手段と、前記抽出する手段で抽出された抽出液から液化ガスを気化させることで前記抽出液を濃縮する手段を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、抽出された成分の熱分解やタンパク質の熱変性が起こりにくい所定の温度内で、生体組織に含まれる水溶性成分を抽出及び濃縮することが可能な液体の製造方法及び液体の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の液体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2】本実施形態の液体の製造装置の一例を示す模式図である。
図3】実施例の液体の製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0010】
(液体の製造方法)
図1に、本実施形態の液体の製造方法の一例を示す。
【0011】
液体の製造方法は、液化ガスを用いて、生体組織から水溶性成分を抽出する工程(S1)と、工程(S1)で抽出された抽出液から液化ガスを気化させることで抽出液を濃縮する工程(S2)を含む。これにより、抽出された成分の熱分解やタンパク質の熱変性が起こりにくい所定の温度内で、生体組織に含まれる水溶性成分を抽出及び濃縮することができ、水溶性成分を含む液体が得られる。
【0012】
工程(S1)では、例えば、液化ガスを生体組織に接触させて、水溶性成分を抽出する。これにより、水溶性成分を含む液体の防黴性を向上させることができる。
【0013】
また、液化ガスは、細胞膜成分を溶解するため、生体組織の細胞を破壊することができる。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲において、液化ガスとは、常温常圧(0℃、1atm(0.101325MPa)で気体である物質の液化物である。
【0015】
液化ガスとしては、生体組織から水溶性成分を抽出することが可能であれば、特に限定されないが、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ホルムアルデヒド、ケテン、アセトアルデヒド、プロパン、ブタン、液化石油ガス等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、比較的低温低圧で液化する点で、エチルメチルエーテル、ジメチルエーテルが好ましく、ジメチルエーテルが特に好ましい。
【0016】
ジメチルエーテルは、1~40℃、0.2~5MPa程度で液化するため、装置のコストが安価となる。また1~40℃の温度内であれば、生体組織に含まれる水溶性成分の熱分解やタンパク質の熱変性が起こりにくい。液化ジメチルエーテルは、常温常圧下で容易に気化することから、生体組織由来の水溶性成分を含む液体に残留しにくい。このことから、生体組織に含まれる水溶性成分の熱分解やタンパク質の熱変性を抑制しつつ、簡便に抽出液を濃縮することができる。
【0017】
水溶性成分としては、特に限定されないが、芳香化合物、天然色素化合物、抗酸化化合物、抗菌化合物、抗ウイルス化合物等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0018】
工程(S1)は、液化ガスの液体状態を維持するため、気密状態の抽出槽内等の飽和蒸気圧以上の環境下で実施される。
【0019】
液化ガスを生体組織に接触させる方法としては、特に限定されないが、液化ガスに生体組織を浸漬する方法等が挙げられる。
【0020】
液化ガスの温度は、1~80℃であることが好ましく、4~37℃であることがさらに好ましい。液化ガスの温度が4℃よりも低いと、水分の凍結により抽出された成分が損傷を受ける可能性があり、37℃よりも高いと、抽出された成分の熱分解やタンパク質の熱変性が起こる可能性がある。
【0021】
工程(S2)では、例えば、液化ガスで抽出された抽出液を常温常圧に戻す。
【0022】
ここで、液化ガスは、常温常圧下で容易に気化するため、抽出液から液化ガスを気化することができ、簡便に抽出液を濃縮することができる。
【0023】
なお、工程(S1)及び工程(S2)を複数回繰り返してもよい。
【0024】
液体の製造方法は、濃縮された抽出液が非水溶性成分を含む場合、濃縮された抽出液から非水溶性成分を分離する工程(S3)をさらに含んでいてもよい。
【0025】
ここで、非水溶性成分は、液化ガスに可溶で、水に不溶な成分であるため、液化ジメチルエーテルを気化させると、析出する。
【0026】
工程(S3)では、例えば、濃縮された抽出液を濾過することで、抽出液から非水溶性成分を分離することができる。
【0027】
(生体組織)
生体組織としては、特に限定されないが、葉、枝、樹木、花弁、茎、根、果肉、果皮、種子等の植物組織、ヒト又は異種哺乳動物由来の皮膚、血管、心臓弁膜、角膜、羊膜、硬膜等を含む軟組織又はその一部、心臓、腎臓、肝臓、膵臓、脳等を含む臓器又はその一部、骨、軟骨、腱又はその一部等の動物組織が挙げられる。
【0028】
(液体の製造装置)
本実施形態の液体の製造装置は、液化ガスを用いて、生体組織から水溶性成分を抽出し、抽出された抽出液から液化ガスを気化させることで抽出液を濃縮することが可能であれば、特に限定されない。
【0029】
以下、液化ガスとして、液化ジメチルエーテルを用いる場合について、説明する。
【0030】
本実施形態の液体の製造装置は、ジメチルエーテルを飽和蒸気圧以上にすることで生成した液化ジメチルエーテルを生体組織に接触させることで、細胞を破壊して、水溶性成分を抽出する。次に、抽出された抽出液を飽和蒸気圧未満にすることで、液化ジメチルエーテルを気化させ、抽出液を濃縮する。
【0031】
本実施形態の液体の製造装置は、後述する貯蔵手段から抽出手段に液化ジメチルエーテルを送液する送液手段と、送液された液化ジメチルエーテルを生体組織に接触させて、水溶性成分を抽出する抽出手段と、抽出手段から抽出液を導出する導出手段を備える。また、本実施形態の液体の製造装置は、温度及び/又は圧力を調節することにより、抽出液から液化ジメチルエーテルを気化させ、抽出液を濃縮する濃縮手段と、温度及び/又は圧力を調節することにより、気化したジメチルエーテルを凝縮させる凝縮手段を備える。さらに、本実施形態の液体の製造装置は、液化ジメチルエーテルを貯蔵する貯蔵手段と、液化ジメチルエーテルを貯蔵手段に供給する供給手段と、液化ジメチルエーテルの温度及び圧力を検知する検知手段を備える。
【0032】
送液手段としては、液化ジメチルエーテルの流量を調節することが可能であれば、特に限定されないが、送液ポンプ、熱駆動等が挙げられる。
【0033】
図2に、本実施形態の液体の製造装置の一例を示す。
【0034】
液体の製造装置100は、液化ジメチルエーテル2を貯蔵する貯槽1と、生体組織7を液化ジメチルエーテル2と接触させ、水溶性成分を抽出する抽出槽6と、貯槽1から抽出槽6へ液化ジメチルエーテル2を送液するポンプ3と、抽出液から液化ジメチルエーテルを気化させることで、抽出液を濃縮する濃縮槽11を有する。
【0035】
貯槽1に貯蔵される液化ジメチルエーテル2は、ジメチルエーテルを飽和蒸気圧以上にすることにより液体状態とされる。
【0036】
また、液体の製造装置100は、液化ジメチルエーテル2を導出又は導入する導管5、10、12、14、16、19、20、23、各槽内の気圧を調節し、液化ジメチルエーテル2の導出及び導入を制御するバルブ4、9、13、15、18、21、22を有する。抽出槽6及び濃縮槽11は、液化ジメチルエーテル2の液体状態を維持するため、圧力を調整することができる。
【0037】
液体の製造装置100において、貯槽1から抽出槽6に液化ジメチルエーテル2を導入するポンプ3、バルブ4及び導管5が、送液手段として機能する。抽出槽6は、抽出手段として機能する。抽出槽6から液化ジメチルエーテル2を導出させる導管10及びバルブ9が、導出手段として機能する。また、濃縮槽11は、濃縮手段として機能する。導管16に接続された凝縮器17は、凝縮手段として機能する。濃縮槽11に接続された導管12及びバルブ13は、気化手段として機能する。貯槽1は、貯蔵手段として機能する。導管19、20は、供給手段として機能する。
【0038】
液体の製造装置100は、各槽内の温度及び圧力を検知する温度計及び圧力計、各槽内で撹拌するための撹拌機、酸素等の活性ガスをパージするための、窒素等の不活性ガスを槽内及び導管内に流通させる装置等をさらに含んでいてもよい。
【0039】
以下に、液体の製造装置100を用いて、水溶性成分を含む液体を製造する方法を説明する。
【0040】
まず、フィルタ8が上流側及び下流側に設置されている抽出槽6に、生体組織7を導入する。このとき、バルブ4、9、13、15、18、21、22は、閉状態である。ここで、貯槽1に液化ジメチルエーテル2が十分に貯蔵されていない場合は、バルブ21を開状態とし、導管20を経由して、貯槽1に液化ジメチルエーテル2を供給した後、バルブ21を閉状態とする。ここで、バルブ21を開状態とするときに、バルブ18を開状態とし、バルブ21を閉状態とするときに、バルブ18を閉状態としてもよい。
【0041】
次に、バルブ4を開状態とし、ポンプ3により、貯槽1内の液化ジメチルエーテル2を導出し、導管5を経由して、生体組織7と接触するまで抽出槽6に導入した後、バルブ4を閉状態とする。
【0042】
その結果、生体組織7中の水溶性成分が液化ジメチルエーテル2に溶解し、抽出される。
【0043】
そして、バルブ4、9を開状態とし、ポンプ3により、貯槽1から液化ジメチルエーテル2を導出し、導管5を経由して抽出槽6に導入する。これにより、抽出槽6内の抽出液が導管10を経由して濃縮槽11に導入される。すなわち、貯槽1から抽出槽6に液化ジメチルエーテルが導入されると、抽出槽6内の抽出液が押し出され、濃縮槽11に導入される。その結果、抽出槽6内の抽出液が、液化ジメチルエーテルで置換される。抽出槽6が液化ジメチルエーテルで置換されると、飽和溶解度までの溶解量が大きくなる、即ち抽出力が高くなることから、より効率的に抽出液を抽出することが可能となる。一方、抽出槽6の上流側及び下流側に、フィルタ8が設置されていることから、生体組織7は、抽出槽6内に残留する。すなわち、抽出槽6に液化ジメチルエーテルが導入されることで、抽出液が生体組織7から分離される。
【0044】
ここで、バルブ4、9を開状態とするタイミングは、生体組織7から水溶性成分を抽出するために十分な時間が経過した後である。このとき、液化ジメチルエーテル2が生体組織7と接触している状態で撹拌してもよい。
【0045】
次に、バルブ4を閉状態とし、バルブ9、13、22を開状態として、バルブ4からバルブ13までの経路内をジメチルエーテルの飽和蒸気圧未満の圧力にすることで、これらの経路における液化ジメチルエーテル2が気化し、導管14を経由して、導管23から排出される。このとき、必要に応じて、ポンプ3を用いて、ジメチルエーテルを排出してもよい。
【0046】
このように、抽出液から液化ジメチルエーテル2が気化することで、濃縮槽11には、抽出された水溶性成分を含む液体が残留する。また、抽出槽6には、生体組織7の抽出残渣が残留する。
【0047】
ここでは、バルブ22を開状態とし、バルブ15を閉状態とする場合について説明したが、バルブ22を閉状態とし、バルブ15を開状態としてもよい。これにより、気化したジメチルエーテルが導管16を経由して、凝縮器17に導入される。その結果、凝縮器17に導入されたジメチルエーテルが凝縮して液化ジメチルエーテルが生成する。このとき、バルブ18を開状態とすることにより、生成された液化ジメチルエーテルが導管19を経由して貯槽1に導入される。このため、再度ポンプ3により、貯槽1から抽出槽6に液化ジメチルエーテル2を導入することにより、生体組織7に含まれる水溶性成分の抽出に用いることができる。その結果、液化ジメチルエーテルを交換したり、追加したりせずに、少量の液化ジメチルエーテルで、生体組織7に含まれる水溶性成分を抽出することができる。
【0048】
以上、貯槽1内の液化ジメチルエーテル2を不連続的に導出する場合について説明したが、貯槽1内の液化ジメチルエーテル2を連続的に導出してもよい。
【0049】
具体的には、バルブ4、9を開状態とし、導管5を経由して貯槽1内の液化ジメチルエーテル2を抽出槽6に連続的に導入するとともに、導管10を経由して抽出槽6内の抽出液を濃縮槽11内に連続的に導出してもよい。この場合、液化ジメチルエーテル2が生体組織7と連続的に接触するように、抽出槽6の内部構造を構成することが好ましい。
【0050】
なお、液体の製造装置100では、装置内の圧力を変化させることで、ジメチルエーテルの気液の状態変化を行っているが、圧力の代わりに、温度を変化させることで、気液の状態変化を行ってもよい。
【実施例
【0051】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されない。
【0052】
[実施例1]
図3の液体の製造装置を用いて、クロモジから、水溶性成分を含む液体を製造した。
【0053】
具体的には、フィルタ55、58が上流側及び下流側に設置されている内容積25mLの抽出槽56に、生体組織57としての、長さ約1mm以下に粉砕した、水分率10質量%のクロモジ6.0gを仕込んだ。次に、バルブ52を開状態、バルブ53を閉状態とし、シリンジポンプ50にジメチルエーテルを充填して、25℃、0.7MPaで液化ジメチルエーテル51を生成させた。次に、濃縮槽62を予めジメチルエーテルで置換し、バルブ52、53、54、59、60、61を閉状態とした。次に、バルブ53、54、59、60を開状態とし、シリンジポンプ50から抽出槽56に液化ジメチルエーテル51を供給した。このとき、抽出槽56が液化ジメチルエーテルで満たされた時点で、シリンジポンプ50を停止させ、バルブ54、59を閉状態とし、生体組織57を液化ジメチルエーテルに浸漬した。次に、バルブ54、59を開状態とし、シリンジポンプ50から、液化ジメチルエーテル51を抽出槽56に供給し、抽出液60mLを濃縮槽62で回収した。このとき、液化ジメチルエーテル51の流量を2.5mL/minに調整して、抽出槽56における液化ジメチルエーテルの滞留時間を10分間とした。次に、バルブ60を閉状態とし、濃縮槽62を装置から取り外した後、室温、大気圧のドラフト内で、濃縮槽62で回収した抽出液から、液化ジメチルエーテルを気化させて、水溶性成分を含む濃縮液を得た。このとき、濃縮液中に非水溶性成分が浮遊していた。
【0054】
上記の操作を2回繰り返した後、バルブ54を閉状態、バルブ59、60、61を開状態とし、抽出槽56内を大気圧とし、抽出槽56内の液化ジメチルエーテルを気化させて排出し、抽出後の生体組織57を抽出残渣として回収した。
【0055】
得られた濃縮液を、孔径0.47μmのフィルタでろ過して、非水溶性成分を除去し、水溶性成分を含む液体0.2gを得た。
【0056】
水溶性成分を含む液体をガスクロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィーにより分析したところ、水溶性成分には、芳香化合物としての、リナロール、1.8-シネオール、リモネン、抗酸化化合物としての、ポリフェノールが含まれていた。
【0057】
[比較例1]
水蒸気蒸留法を用いた以外は、実施例1と同様にして、クロモジから、水溶性成分を含む液体を製造した。
【0058】
具体的には、フラスコ1にクロモジ6.0gと水100gを入れ、フラスコ2に水300gのみを入れ、フラスコ2をガスバーナーで加熱して水蒸気を発生させた。そして、フラスコ1に水蒸気を吹き込み、クロモジに水蒸気を接触させた後、冷却器で冷却して水蒸気を凝縮することで、水及び水溶性成分を含む液体70gを得た。さらに、水溶性成分を含む液体を加熱して濃縮し、水溶性成分を含む液体10gを得た。
【0059】
[防黴性]
実施例1及び比較例1の水溶性成分を含む液体を60日間冷蔵保存したところ、比較例1の液体は、カビが発生し、濁りが生じていたのに対し、実施例1の液体は、カビが発生せず、透明であった。これは、実施例1の液体は、抽出液を抽出する際に、液化ジメチルエーテルにより、除菌されたためであると考えられる。
【0060】
[実施例2]
生体組織57として、水分率80質量%のバラ花弁15gを用いた以外は、実施例1と同様にして、水溶性成分を含む液体を製造したところ、水溶性成分を含む液体6.4gを得た。
【0061】
水溶性成分には、バラ花弁由来の天然色素化合物が含まれているため、液体は、赤色を呈していた。
【0062】
[比較例2]
水蒸気蒸留法を用いた以外は、実施例2と同様にして、バラ花弁から、水溶性成分を含む液体を製造した。
【0063】
具体的には、フラスコ1にバラ花弁15.0gと水100gを入れ、フラスコ2に水300gのみを入れ、フラスコ2をガスバーナーで加熱して水蒸気を発生させた。そして、フラスコ1に水蒸気を吹き込み、バラ花弁に水蒸気を接触させた後、冷却器で冷却して水蒸気を凝縮することで、水及び水溶性成分を含む液体70gを得た。さらに、水溶性成分を含む液体を加熱して濃縮し、水溶性成分を含む液体10gを得た。
【0064】
水溶性成分には、バラ花弁由来の天然色素化合物が含まれておらず、無色透明であった。
【0065】
[実施例3]
生体組織57として、水分率10質量%の粉末状のグレープシード15gを用いた以外は、実施例1と同様にして、水溶性成分を含む液体を製造したところ、水溶性成分を含む
液体0.5gを得た。
【0066】
水溶性成分を含む液体を液体クロマトグラフィーにより分析したところ、水溶性成分には、抗酸化化合物としての、ポリフェノール、抗菌化合物及び抗ウイルス化合物としての、カテキンが含まれていた。
【0067】
[比較例3]
水蒸気蒸留法を用いた以外は、実施例3と同様にして、グレープシードから、水溶性成分を含む液体を製造した。
【0068】
具体的には、フラスコ1にグレープシード15.0gと水100gを入れ、フラスコ2に水300gのみを入れ、フラスコ2をガスバーナーで加熱して水蒸気を発生させた。そして、フラスコ1に水蒸気を吹き込み、グレープシードに水蒸気を接触させた後、冷却器で冷却して水蒸気を凝縮することで、水及び水溶性成分を含む液体70gを得た。さらに、水溶性成分を含む液体を加熱して濃縮し、水溶性成分を含む液体10gを得た。
【0069】
水溶性成分を含む液体を液体クロマトグラフィーにより分析したところ、水溶性成分には、抗酸化化合物としての、ポリフェノール、抗菌化合物及び抗ウイルス化合物としての、カテキンが含まれていた。
【0070】
[実施例4]
生体組織57として、水分率70質量%のブタ肝臓10gを用いた以外は、実施例1と同様にして、水溶性成分を含む液体を製造したところ、水溶性成分を含む液体5.0gを得た。
【0071】
水溶性成分を含む液体を液体クロマトグラフィーにより分析したところ、水溶性成分には、抗酸化化合物としての、アスコルビン酸(ビタミンC)が含まれていた。
【0072】
[比較例4]
水蒸気蒸留法を用いた以外は、実施例4と同様にして、ブタ肝臓から、水溶性成分を含む液体を製造した。
【0073】
具体的には、フラスコ1にブタ肝臓10.0gと水100gを入れ、フラスコ2に水300gのみを入れ、フラスコ2をガスバーナーで加熱して水蒸気を発生させた。そして、フラスコ1に水蒸気を吹き込み、ブタ肝臓に水蒸気を接触させた後、冷却器で冷却して水蒸気を凝縮することで、水及び水溶性成分を含む液体70gを得た。さらに、水溶性成分を含む液体を加熱して濃縮し、水溶性成分を含む液体10gを得た。
【0074】
水溶性成分を含む液体を液体クロマトグラフィーにより分析したところ、水溶性成分には、抗酸化化合物としての、アスコルビン酸(ビタミンC)が含まれていた。
【符号の説明】
【0075】
1 貯槽
2 液化ジメチルエーテル
3 ポンプ
6 抽出槽
7 生体組織
11 濃縮槽
100 液体の製造装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【文献】特開2016-074820号公報
図1
図2
図3