IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中央電子株式会社の特許一覧

特許7213049ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム
<>
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図1
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図2
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図3
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図4
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図5
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図6
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図7
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図8
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図9
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図10
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図11
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図12
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図13
  • 特許-ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ファン制御装置、制御方法、制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20230119BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20230119BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20230119BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20230119BHJP
【FI】
G06F1/20 D
F24F11/74
F24F11/72
F24F11/46
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018184029
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020051720
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000210964
【氏名又は名称】中央電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一敏
(72)【発明者】
【氏名】石井 長歳
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060271(JP,A)
【文献】特開2011-191974(JP,A)
【文献】特開2016-164730(JP,A)
【文献】特開2010-108324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
F24F 11/00- 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサーバー機器が収納されたラック内の温度を目標温度になるように、前記ラック内に備えられたファンの動作を制御するファン制御装置において、
所定の間隔単位で検知した前記ラック内の温度を記憶手段に記憶する温度計測手段と、
前記記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、前記記憶手段に記憶された前記最新温度より前に記憶された過去温度とから
前記最新温度が、前記目標温度から一定の温度差で設けられた近接温度領域内に属しているか否かを目標温度比較手段が判断し、
前記最新温度から順に連続して過去にさかのぼった複数の過去温度が、連続して上昇または下降した間隔単位の連続回数を連続回数検知手段が検知し、
前記目標温度比較手段が、前記最新温度が前記近接温度領域内に属していると判断した場合は1間隔単位先の予測温度を算出し、
前記目標温度比較手段が、前記最新温度が前記近接温度領域内に属していないと判断した場合は前記最新温度取得時から前記連続回数検知手段が検知した連続回数分先の予測温度を算出して今後の予測温度を算出する予測温度算出手段と、
前記予測温度算出手段が算出した予測温度と前記目標温度との差によって、前記ファンへの出力を増減させるファン出力制御手段と、
を備えることを特徴とするファン制御装置。
【請求項2】
前記予測温度算出手段は、
前記最新温度から任意の間隔単位分さかのぼった過去温度から、前記最新温度までの温度差を、前記最新温度に加算した温度を前記任意の間隔単位後の予測温度とすること、
を特徴とする請求項1記載のファン制御装置。
【請求項3】
前記任意の間隔単位は、
1間隔単位であること、
を特徴とする請求項2記載のファン制御装置。
【請求項4】
連続性計測手段は、
前記連続回数連続した間隔単位を計測する回数に限界値を設けたこと、
を特徴とする請求項記載のファン制御装置。
【請求項5】
前記ファンの吸気側には、
前記ラック内の空気を冷却するための熱交換装置、
を備えることを特徴とする請求項1記載のファン制御装置。
【請求項6】
前記ラックは、
外気が入らない密閉構造であること、
を特徴とする請求項1記載のファン制御装置。
【請求項7】
複数のサーバー機器が収納されたラック内の温度を目標温度になるように、前記ラック内に備えられたファンの動作を制御するファン制御方法において、
温度計測手段が、所定の間隔単位で検知した前記ラック内の温度を記憶手段に記憶するステップと、
予測温度算出手段が
前記記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、前記記憶手段に記憶された前記最新温度より前に記憶された過去温度とから
前記最新温度が、前記目標温度から一定の温度差で設けられた近接温度領域内に属しているか否かを目標温度比較手段が判断し、
前記最新温度から順に連続して過去にさかのぼった複数の過去温度が、連続して上昇または下降した間隔単位の連続回数を連続回数検知手段が検知し、
前記目標温度比較手段が、前記最新温度が前記近接温度領域内に属していると判断した場合は1間隔単位先の予測温度を算出し、
前記目標温度比較手段が、前記最新温度が前記近接温度領域内に属していないと判断した場合は前記最新温度取得時から前記連続回数検知手段が検知した連続回数分先の予測温度を算出して今後の予測温度を算出するステップと、
ファン出力制御手段が、前記予測温度算出手段が算出した予測温度と前記目標温度との差によって、前記ファンへの出力を増減させるステップと、
を備えることを特徴とするファン制御方法。
【請求項8】
複数のサーバー機器が収納されたラック内の温度を目標温度になるように、前記ラック内に備えられたファンの動作を制御するファン制御プログラムにおいて、
コンピュータを、
所定の間隔単位で検知した前記ラック内の温度を記憶手段に記憶する温度計測手段、
前記記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、前記記憶手段に記憶された前記最新温度より前に記憶された過去温度とから
前記最新温度が、前記目標温度から一定の温度差で設けられた近接温度領域内に属しているか否かを目標温度比較手段が判断し、
前記最新温度から順に連続して過去にさかのぼった複数の過去温度が、連続して上昇または下降した間隔単位の連続回数を連続回数検知手段が検知し、
前記目標温度比較手段が、前記最新温度が前記近接温度領域内に属していると判断した場合は1間隔単位先の予測温度を算出し、
前記目標温度比較手段が、前記最新温度が前記近接温度領域内に属していないと判断した場合は前記最新温度取得時から前記連続回数検知手段が検知した連続回数分先の予測温度を算出して今後の予測温度を算出する予測温度算出手段、
前記予測温度算出手段が算出した予測温度と前記目標温度との差によって、前記ファンへの出力を増減させるファン出力制御手段、
として機能させることを特徴とするファン制御プログラム。
【請求項9】
複数のサーバー機器が収納されたラック内の温度を、前記ラック内に備えられたファンの動作を制御することで目標温度にするサーバーラックにおいて、
所定の間隔単位で検知した前記ラック内の温度を記憶手段に記憶する温度計測手段と、
前記記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、前記記憶手段に記憶された前記最新温度より前に記憶された過去温度とから
前記最新温度が、前記目標温度から一定の温度差で設けられた近接温度領域内に属しているか否かを目標温度比較手段が判断し、
前記最新温度から順に連続して過去にさかのぼった複数の過去温度が、連続して上昇または下降した間隔単位の連続回数を連続回数検知手段が検知し、
前記目標温度比較手段が、前記最新温度が前記近接温度領域内に属していると判断した場合は1間隔単位先の予測温度を算出し、
前記目標温度比較手段が、前記最新温度が前記近接温度領域内に属していないと判断した場合は前記最新温度取得時から前記連続回数検知手段が検知した連続回数分先の予測温度を算出して今後の予測温度を算出する予測温度算出手段と、
前記予測温度算出手段が算出した予測温度と前記目標温度との差によって、前記ファンへの出力を増減させるファン出力制御手段と、
を有するファン制御装置、
を備えることを特徴とするサーバーラック。
【請求項10】
複数のサーバー機器が収納されたサーバー管理室内の温度を、前記サーバー管理室に設置されたファンの動作を制御することで目標温度にする空調管理システムにおいて、
所定の間隔単位で検知した前記サーバー管理室の温度を記憶手段に記憶する温度計測手段と、
前記記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、前記記憶手段に記憶された前記最新温度より前に記憶された過去温度とから
前記最新温度が、前記目標温度から一定の温度差で設けられた近接温度領域内に属しているか否かを目標温度比較手段が判断し、
前記最新温度から順に連続して過去にさかのぼった複数の過去温度が、連続して上昇または下降した間隔単位の連続回数を連続回数検知手段が検知し、
前記目標温度比較手段が、前記最新温度が前記近接温度領域内に属していると判断した場合は1間隔単位先の予測温度を算出し、
前記目標温度比較手段が、前記最新温度が前記近接温度領域内に属していないと判断した場合は前記最新温度取得時から前記連続回数検知手段が検知した連続回数分先の予測温度を算出して今後の予測温度を算出する予測温度算出手段と、
前記予測温度算出手段が算出した予測温度と前記目標温度との差によって、前記ファンへの出力を増減させるファン出力制御手段と、
を有するファン制御装置、
を備えることを特徴とする空調管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン制御装置、ファン制御方法、ファン制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システムに関し、特にサーバー機器が収納されるラック内の温度を目標温度になるように、前記ラック内に備えられたファンの動作を制御するファン制御装置、ファン制御方法、ファン制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な情報処理を行う手段の代表的なものとして、コンピュータが知られている。このコンピュータの情報処理は、コンピュータに備えられた中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)が処理を行う。またこのCPUの処理速度を高速化することで、コンピュータの処理能力を高速化することができるようになる。
【0003】
ところが、このCPUの性能を高めることで生じる発熱が問題となっている。そこでCPUが発する熱を冷却するために、放熱を促すためのヒートシンクや暖められた空気を流すための小型ファンなどが組み合わされて構成されるCPUクーラーがある。これにより、情報を高速処理することで発せられる熱を冷却することができる。
【0004】
一方で、コンピュータを24時間365日に近い連続稼働を実現させるサーバーと呼ばれるコンピュータがある。このサーバーは、信頼性や性能を向上するために、複数のサーバーが連携して一つの業務を処理する構成を構築することがあり、このような複数のサーバーは、ルーターなどの接続機器などと一緒にサーバーラックやサーバールームなどに収められて運用される。
【0005】
これらの複数のサーバーや、ルーターなどの接続機器類が収容されたサーバーラックやサーバールームなどでは、収容機器を連続稼働させるため、さらに厳格な空調管理が必要とされている。そこで、このようなサーバーラックやサーバールームでは、たとえば特許文献1のような情報処理機器室用空調システムが採用されている。
【0006】
例えば特許文献1のような情報処理機器室用空調システムでは、あらかじめコントローラーの記憶デバイスに、サーバーラック内に設置された温度センサーが計測した温度が、設定温度を上回った場合の送風ファン送風能力の増加量が格納されている。
また同様にコントローラーの記憶デバイスには、温度センサーが計測した温度が、設定温度を下回った場合の送風ファン送風能力の減少量が格納されている。
【0007】
コントローラーは、温度センサーが計測した温度と設定温度とを比較し、設定温度を上回ったか、設定温度以下になったか、または設定温度の範囲内かを判断し、記憶デバイスに記憶された送風ファン送風能力の増減または現状維持などの出力指示信号を、コントローラーは送風ファンに送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-48150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のような情報処理機器室用空調システムでは、送風ファンの電力消費量が無駄に消費される問題があった。
具体的には、特許文献1の情報処理機器室用空調システムでは、温度センサーが計測した温度と設定温度とを比較して、送風ファンの送風量の増減を決定しているため、サーバーラック内の温度が、急激に変化したのか、または緩やかに変化したのかは加味されていない。
【0010】
例えば、温度センサーが計測した温度がその温度に至るまでには、サーバーラック内の温度が設定温度を急激に上回った場合と、緩やかに設定温度を上回った場合とが考えられる。
【0011】
前者の場合は今後も急激にサーバーラック内の温度が上昇する恐れがあるため冷却能力を高める必要がある。ところが、後者の場合は緩やかに温度が上昇しているため、必要以上に冷却能力を高める必要はない。
【0012】
逆に、同じ設定温度を上回る温度を温度センサーが計測しても、前者と後者とで同じ送風ファンの送風量で冷却した場合、前者の場合はサーバーラック内の温度を効率よく冷却することはできない。
【0013】
つまり、前者と後者とでは同じ設定温度を上回る温度を温度センサーが計測したとしても、サーバーラック内の温度を冷却するために必要な送風ファンの電力は異なってくる。このため、温度センサーが計測した温度と設定温度とを比較して送風ファンの送風量を制御するだけでは、必要以上に送風ファンの電力を消費してしまう問題や、冷却能力が足りなくなってしまう問題があった。
【0014】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、電力消費量を効率よく抑え、サーバー機器類が快適に稼働できる温度で安定させるためのファン制御装置、ファン制御方法、ファン制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では上記問題を解決するために、複数のサーバー機器が収納されたラック内の温度を目標温度になるように、前記ラック内に備えられたファンの動作を制御するファン制御装置において、所定の間隔単位で検知した前記ラック内の温度を記憶手段に記憶する温度計測手段と、前記記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、前記記憶手段に記憶された前記最新温度より前に記憶された過去温度とから今後の予測温度を算出する予測温度算出手段と、前記予測温度算出手段が算出した予測温度と前記目標温度との差によって、前記ファンへの出力を増減させるファン出力制御手段とを備えることを特徴とするファン制御装置が提供される。
【0016】
これにより、温度計測手段が、所定の間隔単位で検知したラック内の温度を記憶手段に記憶し、予測温度算出手段が、記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、記憶手段に記憶された最新温度より前に記憶された過去温度とから今後の予測温度を算出し、ファン出力制御手段が、予測温度算出手段が算出した予測温度と目標温度との差によって、ファンへの出力を増減させる。
【0017】
また、本発明では、複数のサーバー機器が収納されたラック内の温度を目標温度になるように、前記ラック内に備えられたファンの動作を制御するファン制御方法において、
温度計測手段が、所定の間隔単位で検知した前記ラック内の温度を記憶手段に記憶するステップと、予測温度算出手段が、前記記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、前記記憶手段に記憶された前記最新温度より前に記憶された過去温度とから今後の予測温度を算出するステップと、ファン出力制御手段が、前記予測温度算出手段が算出した予測温度と前記目標温度との差によって、前記ファンへの出力を増減させるステップとを備えることを特徴とするファン制御方法が提供される。
【0018】
これにより、温度計測手段が、所定の間隔単位で検知したラック内の温度を記憶手段に記憶し、予測温度算出手段が、記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、記憶手段に記憶された最新温度より前に記憶された過去温度とから今後の予測温度を算出し、ファン出力制御手段が、予測温度算出手段が算出した予測温度と目標温度との差によって、ファンへの出力を増減させる。
【0019】
また、本発明では、複数のサーバー機器が収納されたラック内の温度を目標温度になるように、前記ラック内に備えられたファンの動作を制御するファン制御プログラムにおいて、コンピュータを、所定の間隔単位で検知した前記ラック内の温度を記憶手段に記憶する温度計測手段、前記記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、前記記憶手段に記憶された前記最新温度より前に記憶された過去温度とから今後の予測温度を算出する予測温度算出手段、前記予測温度算出手段が算出した予測温度と前記目標温度との差によって、前記ファンへの出力を増減させるファン出力制御手段として機能させることを特徴とするファン制御プログラムが提供される。
【0020】
これにより、温度計測手段が、所定の間隔単位で検知したラック内の温度を記憶手段に記憶し、予測温度算出手段が、記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、記憶手段に記憶された最新温度より前に記憶された過去温度とから今後の予測温度を算出し、ファン出力制御手段が、予測温度算出手段が算出した予測温度と目標温度との差によって、ファンへの出力を増減させる。
【0021】
また、本発明では、複数のサーバー機器が収納されたラック内の温度を、前記ラック内に備えられたファンの動作を制御することで目標温度にするサーバーラックにおいて、所定の間隔単位で検知した前記ラック内の温度を記憶手段に記憶する温度計測手段と、前記記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、前記記憶手段に記憶された前記最新温度より前に記憶された過去温度とから今後の予測温度を算出する予測温度算出手段と、前記予測温度算出手段が算出した予測温度と前記目標温度との差によって、前記ファンへの出力を増減させるファン出力制御手段とを有するファン制御装置を備えることを特徴とするサーバーラックが提供される。
【0022】
これにより、温度計測手段が、所定の間隔単位で検知したラック内の温度を記憶手段に記憶し、予測温度算出手段が、記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、記憶手段に記憶された最新温度より前に記憶された過去温度とから今後の予測温度を算出し、ファン出力制御手段が、予測温度算出手段が算出した予測温度と目標温度との差によって、ファンへの出力を増減させる。
【0023】
また、本発明では、複数のサーバー機器が収納された室内の温度を目標温度にするサーバー管理室の空調管理システムにおいて、所定の間隔単位で検知した前記サーバー管理室の温度を記憶手段に記憶する温度計測手段と、前記記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、前記記憶手段に記憶された前記最新温度より前に記憶された過去温度とから今後の予測温度を算出する予測温度算出手段と、前記予測温度算出手段が算出した予測温度と前記目標温度との差によって、前記ファンへの出力を増減させるファン出力制御手段とを有するファン制御装置を備えることを特徴とする空調管理システムが提供される。
【0024】
これにより、温度計測手段が、所定の間隔単位で検知したラック内の温度を記憶手段に記憶し、予測温度算出手段が、記憶手段に記憶された温度のうち最も新しく記憶された最新温度と、記憶手段に記憶された最新温度より前に記憶された過去温度とから今後の予測温度を算出し、ファン出力制御手段が、予測温度算出手段が算出した予測温度と目標温度との差によって、ファンへの出力を増減させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のファン制御装置、ファン制御方法、ファン制御プログラム、サーバーラック、および空調管理システムによれば、予測温度算出手段が、ラック内の温度を検知するための温度センサーが一定の間隔単位で計測する最新温度と、温度センサーが一定間隔で計測した過去温度とから今後の予測温度を算出し、ファン出力制御手段が、予測温度算出手段が算出した予測温度と目標温度との差によって、ファンへの出力を増減させるので、ラック内の温度を目標温度に近づけるための過剰な電力消費量を抑えることができるので、省エネルギーでサーバー機器類が快適に稼働できる温度で安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施の形態に係るファン制御装置の概念を示すブロック図である。
図2】予測温度算出手段の詳細を示すブロック図である。
図3】ファン出力制御手段の詳細を示すブロック図である。
図4】記憶部の詳細を示すブロック図である。
図5】ファン制御装置が備えられたサーバーラック全体の構造を示すブロック図である。
図6】設定値記憶部に記憶される設定値情報のデータ構造例を示す図である。
図7】過去温度記憶部に記憶される温度情報のデータ構造例を示す図である。
図8】ファン制御装置がサーバーラック内の温度を計測してから、ファン出力を行うまでの処理を示すフローチャートである。
図9】予測温度算出手段が最新温度を取得してから予測温度を算出するまでの処理を示すフローチャートである。
図10】ファン出力制御手段が予測温度を取得してからファン出力を行うまでの処理を示すフローチャートである。
図11】過去温度および最新温度から予測温度を算出した一例を示すグラフである。
図12】過去温度および最新温度から予測温度を算出した一例を示すグラフである。
図13】過去温度および最新温度から算出された予測温度が属するエリアの入一例を示すグラフである。
図14】過去温度および最新温度から算出された予測温度が属するエリアの入一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係るファン制御装置の概念を示すブロック図である。
【0028】
本発明の概要は、従来サーバーラック内の温度を適温に保つために、温度センサー200が計測する温度と設定温度とを比較し、温度センサー200が計測する温度が設定温度を上回った場合にファンの風量を増加させ、設定温度を下回った場合にファンの風量を低下させることで、サーバーラック内の温度を設定温度に近づけていた。
【0029】
そこで本発明の制御装置は、ここでは図示しないサーバーラック400内に設置された温度センサー200が計測する最新温度Tcおよび過去温度Tpから今後の予測温度Tfを算出し、今後の予測温度Tfを目標温度Tbに近づけるようにファン300の風量を制御することで、サーバーラック400内の温度をあらかじめ設定された目標温度Tb付近で安定させるためものである。これにより、不要な電力を抑制しファン300の消費電力を減少させることができる。
【0030】
なお本実施の形態では、サーバーラック400内に設置された温度センサー200により入力されたサーバーラック400内の最新温度Tcおよび過去温度Tpから今後の予測温度Tfを算出し、あらかじめ設定された目標温度Tb(40.0℃)に今後の予測温度Tfを近づけるように、サーバーラック400内で冷気を循環させるためのファン300の回転数をファン制御装置100が制御する場合で説明する。
【0031】
温度センサー200は、サーバーラック400内の所定の場所に設置され、サーバーラック400内の温度を感知するためのものであり、例えば集積回路温度センサーや熱電対、サーミスタ、計測抵抗体などを利用した電気式かつ接触式の温度センサーである。
【0032】
ファン300は、サーバーラック400内の所定の場所に設置され、ファン300に備えられた羽根を回転させることで冷気をサーバーラック400内で循環させたり、サーバーラック400内でサーバー発熱する暖気を排出させたりするための送風機である。
【0033】
次に、ファン制御装置100の詳細を説明する。
図1に示すようにファン制御装置100は、温度計測手段110、予測温度算出手段120、ファン出力制御手段130、および記憶手段140を備えている。またファン制御装置100は、温度センサー200およびファン300に接続されている。
【0034】
温度計測手段110は、温度センサー200、予測温度算出手段120、および記憶手段140に接続されており、温度センサー200が感知したサーバーラック400内の温度を、あらかじめ設定された一定の計測間隔(以下、一定の計測間隔単位を計測ピリオドと称する。例えば一定の計測間隔を10秒とし、この10秒の計測間隔を1計測ピリオドとして表す)で計測するためのものである。
【0035】
温度計測手段110により計測されたサーバーラック400内の温度は、温度計測手段110が計測時間とともに接続された記憶手段140に記憶させる。また温度計測手段110によるサーバーラック400内温度の計測処理および記憶手段140への記憶処理が完了すると、温度計測手段110は、接続された予測温度算出手段120に処理が完了したことを通知する。
【0036】
予測温度算出手段120は、温度計測手段110、ファン出力制御手段130、および記憶手段140に接続されており、温度計測手段110の処理により記憶手段140に記憶されたサーバーラック400内の過去温度Tpと最新温度Tcとから、サーバーラック400内の今後の予測温度Tfを算出するためのものである。
【0037】
予測温度算出手段120により算出された予測温度Tfは、今後の予測温度Tfに到達すると予測された予測時間とともに、接続されたファン出力制御手段130に通知される。
【0038】
ファン出力制御手段130は、予測温度算出手段120、記憶手段140、およびファン300に接続されており、予測温度算出手段120により算出された予測温度Tfを、あらかじめ記憶手段140に記憶された目標温度Tbに近づけるように、接続されたファン300の回転数を増減するためのものである。
【0039】
記憶手段140は、温度計測手段110、予測温度算出手段120、およびファン出力制御手段130に接続されており、温度計測手段110によって計測されたサーバーラック400内の温度を計測時間とともに記憶するため、またサーバーラック400内でサーバー稼働を省エネルギーで安定稼働させるために最適な温度である目標温度Tbなどの情報を記憶するための記憶媒体である。
【0040】
図2は、予測温度算出手段の詳細を示すブロック図である。
図2に示すように、予測温度算出手段120は、目標温度比較部121、連続性検出部122、および予測温度計算部123を備えている。
【0041】
目標温度比較部121は、連続性検出部122、予測温度計算部123、および記憶手段140に接続されており、記憶手段140に記憶された最新温度Tcおよび目標温度Tbを取得し、目標温度Tbと最新温度Tcとの比較を行うためのものである。
【0042】
あらかじめ記憶手段140には、例えば目標温度Tb(40.0℃)から近い温度であるか否かを判断する基準として、任意で設定可能な温度差の上限設定値(目標温度Tb+0.5℃)および下限設定値(目標温度Tb-0.5℃)が記憶されており、目標温度比較部121は、最新温度Tcが下限設定値を超過かつ上限設定値未満(39.5℃を超過かつ40.5℃未満)であるか、または最新温度Tcが下限設定値以下、あるいは上限設定値以上であるかの判断を行う。
【0043】
目標温度比較部121が、最新温度Tcが下限設定値を超過かつ上限設定値未満である、つまり最新温度Tcが目標温度Tbに近い場合には、サーバーラック400内の最新温度Tcが目標温度Tbに近いとして、最新温度Tcを目標温度比較部121が予測温度計算部123に通知する。
【0044】
また目標温度比較部121が、最新温度Tcが下限設定値以下、あるいは上限設定値以上、つまり最新温度Tcが目標温度Tbから離れている場合には、サーバーラック400内の最新温度Tcが目標温度Tb離れているとして、最新温度Tcを目標温度比較部121が連続性検出部122に通知する。
【0045】
連続性検出部122は、目標温度比較部121、予測温度計算部123、および記憶手段140に接続されており、記憶手段140に記憶された過去温度Tpの履歴を取得し、サーバーラック400内の温度がどのくらいの計測ピリオドを連続して上昇または連続して下降しているかを計測するためのものである。
【0046】
連続性検出部122が計測した連続して上昇した計測ピリオド期間、または連続して下降した計測ピリオド期間の情報は、連続性検出部122によって温度計算部123に通知される。
【0047】
予測温度計算部123は、目標温度比較部121、連続性検出部122、記憶手段140、およびファン出力制御手段130に接続されており、最新温度Tcおよび過去温度Tpから今後の予測温度Tfおよび予測温度到達時間を算出するためのものである。
【0048】
具体的には、目標温度比較部121が、最新温度Tcが下限設定値を超過かつ上限設定値未満と判断した場合には、最新温度Tcと1計測ピリオド前の過去温度Tp[-1]とを比較して予測温度Tfを算出する。
【0049】
上記の場合のおける、具体的な予測温度Tfの算出方法は、最新温度Tcを基準として1計測ピリオド前の過去温度Tp[-1]から最新温度Tcまでの増減値最新温度Tcに加算したものを、最新温度Tcから1計測ピリオド先(10秒先)の予測温度Tfとして算出する。具体的な計算式は、予測温度Tf=Tc+(Tc-Tp[-1])=2Tc-Tp[-1]として予測温度計算部123が算出する。
【0050】
なお、ここでは、予測温度計算部123が最新温度Tcを基準として1計測ピリオド前の過去温度Tp[-1]から最新温度Tcまでの増減値最新温度Tcに加算したものを、最新温度Tcから1計測ピリオド先(10秒先)の予測温度Tfとして算出したが、予測温度計算部123は、最新温度Tcを基準として2計測ピリオド前の過去温度Tp[-2]から最新温度Tcまでの増減値最新温度Tcに加算したものを、最新温度Tcから2計測ピリオド先(20秒先)の予測温度Tfとして算出するようにしてもよい。
【0051】
また、目標温度比較部121が、最新温度Tcが下限設定値以下、あるいは上限設定値以上であると判断した場合には、連続性検出部122が連続して上昇または下降した計測ピリオドの数量を加味して予測温度Tfを算出する。
【0052】
上記の場合のおける、具体的な予測温度Tfの算出方法は、例えば、Tp[-5]、Tp[-4]、Tp[-3]、Tp[-2]、Tp[-1]、Tcと連続してサーバーラック400内の温度が上昇している場合には、最新温度Tcから5計測ピリオド先(50秒先)を予測温度Tfとして算出する。
【0053】
具体的な計算式は、予測温度Tf=Tc+(Tc-Tp[-1])×5=6Tc-5Tp[-1]として予測温度計算部123が算出する。
予測温度計算部123が算出した予測温度Tfおよび予測時間は、接続されたファン出力制御手段130に通知される。
【0054】
図3は、ファン出力制御手段の詳細を示すブロック図である。
図3に示すように、ファン出力制御手段130は、予測温度比較部131、およびファン出力制御部132を備えている。
【0055】
予測温度比較部131は、ファン出力制御部132、および予測温度算出手段120に接続されており、予測温度算出手段120から予測温度Tfおよび予測時間を取得し、予測温度Tfと目標温度Tbとの比較を行うためのものである。
【0056】
あらかじめ記憶手段140には、予測温度Tfに対応してファン300の回転数を決定するための設定値が記憶されている。例えば、目標温度Tb(40.0℃)から所定の温度差で設定した第一上限ファン設定値(目標温度Tb+0.5℃)、第二上限ファン設定値(目標温度Tb+2.0℃)、第一下限ファン設定値(目標温度Tb-0.5℃)、第二下限ファン設定値(目標温度Tb-2.0℃)が記憶されている。
【0057】
なお、ここでは第二上限ファン設定値(42.0℃)以上の温度領域をエリアA、第一上限ファン設定値(40.5℃)以上、かつ第二上限ファン設定値(42.0℃)未満の温度領域をエリアB、第一下限ファン設定値(39.5℃)を超過し、かつ第一上限ファン設定値(40.5℃)未満の温度領域をエリアC、第二下限ファン設定値(38.0℃)を超過し、かつ第一下限ファン設定値(39.5℃)以下の温度領域をエリアD、第二下限ファン設定値(38.0℃)以下の温度領域をエリアEとして説明する。
【0058】
予測温度比較部131は、予測温度Tfと目標温度Tbとの比較し、予測温度TfがエリアA~エリアEのどの温度領域で予測されているかを判断する。予測温度比較部131が比較し判断したエリアの情報は、接続されたファン出力制御部132に通知される。
【0059】
ファン出力制御部132は、予測温度比較部131、ファン300、および記憶手段140に接続されており、予測温度比較部131が比較し判断したエリアによって接続されたファン300への出力を制御するためのものである。
【0060】
例えば、あらかじめ記憶手段140には、各エリアA~エリアEに関連づけられたファン300の出力値が記憶されており、その出力値に応じてファン出力制御部132はファン300への出力を増減させる。
【0061】
具体的なエリアに対応する出力値の設定の一例としては、エリアAでは「ファン出力+5%」、エリアBでは「ファン出力+1%」、エリアCでは「ファン出力現状維持」、エリアDでは「ファン出力-1%」、エリアEでは「ファン出力-2%」などと設定されている。
【0062】
なお、ファン300の出力は、0~100%として説明する。例えば、エリアAでのファン出力は、「ファン出力+5%」として設定されており、現在のファン300への出力が50%の場合、ファン出力制御部132は55%の出力でファン300を回転させることとする。
【0063】
このように、予測温度Tfが目標温度Tbと比較して、どのくらい差があるかによって、ファン300の出力数を変化させることで、少ない出力で予測温度Tfを目標温度Tbに近づけることができる。また過剰な電力によってサーバーラック400内の温度を増減させることがなくなる。
【0064】
またエリアCのように、目標温度Tb付近でファン300への出力「ファン出力現状維持」としてファン300への出力を変化させない領域を設けることで、ファン300への出力変化を抑え、温度変化を緩やかに推移させることができる。これにより目標温度Tb付近でサーバーラック400内の温度を安定させることができる。
【0065】
また目標温度Tbよりも予測温度Tfが大きく下回るときは、ファン300の出力を下げて必要以上にサーバーラック400内の温度を下げないようにする。これにより、必要最小限の電量消費でサーバーラック400内の温度を安定させることができる。
【0066】
図4は、記憶部の詳細を示すブロック図である。
図4に示すように、記憶手段140は、設定値記憶部141、および過去温度記憶部142を備えている。
【0067】
設定値記憶部141は、目標温度Tb、上限設置値、下限設定値、第一上限ファン設定値、第二上限ファン設定値、第一下限ファン設定値、第二下限ファン設定値などの設置値を記憶させておくための記憶領域である。
【0068】
過去温度記憶部142は、温度計測手段110が計測したサーバーラック400内の最新温度Tcが計測時間とともに記録していくための記憶領域である。最新温度Tcが過去温度記憶部142に追加して記録されるにつれて、すでに過去温度記憶部142に記憶されていた最新温度Tcは過去温度Tpとして、新たに最新温度Tcが追加されてして記憶されていく。
【0069】
図5は、ファン制御装置が備えられたサーバーラック全体の構造を示すブロック図である。
図5に示すように、サーバーラック400は、複数のサーバー機器410、熱交換器420、密閉外装壁430、ファン制御装置100、温度センサー200、およびファン300を備えている。
【0070】
サーバー機器410は、例えばラックマウント型のサーバーや、ストレージなどであり、サーバーラック400内に所定の間隔かつ一定の向きで固定されている。またサーバー機器410は各機器の稼働状況によって発熱量が異なる。なお、サーバー機器410は、ルーターやスイッチングハブ、パッチパネルなどのネットワーク機器や無停電電源装置などの電源装置とすることもできる。
【0071】
熱交換器420は、例えば水冷式のラジエーターであって、熱交換器420内には一定温度の冷水が流し込まれており、サーバーラック400内で複数のサーバー機器410が発熱した熱量が熱交換器420によって交換され、熱交換器420に流し込まれた冷水は熱量が交換された後に温水となって排出される。
【0072】
また熱交換器420付近にはファン制御装置100、温度センサー200、およびファン300が設置されており、ファン300が回転することでサーバーラック400内の空気が循環され、熱交換器420によりサーバーラック400内の熱が交換されてサーバーラック400外へ排出される。
【0073】
ファン300は、一定の向きで設置されたサーバー機器410の前方側に設けられる白矢印で表されるコールドアイルの一部に設けられており、ファン300の吸気側に設けられた熱交換器420によって冷却された空気を、ファン300が回転することで各サーバー機器410の前方側に設けられたコールドアイルに冷却された空気を流入することができる。
【0074】
またコールドアイルに流入された冷たい空気は、各サーバー機器410の前方側から各サーバー機器410が備えるファンなどにより各サーバー機器410による発熱を冷却し、各サーバー機器410の後方側に設けられたホットアイルに温められた空気が排出される。ホットアイルに排出された温められた空気は、再び熱交換器420によって冷却され、ファン300の動作によりサーバーラック400内のコールドアイルへ循環される。
【0075】
密閉外装壁430は、サーバーラック400の外周部に設けられており、複数のサーバー機器410、熱交換器420、密閉外装壁430、ファン制御装置100、温度センサー200、およびファン300を収納する密閉外装壁である。密閉外装壁430により、冷却された空気が外部に漏れないので、密閉された密閉外装壁430内の空間でサーバー機器410を効率よく冷却することができる。
【0076】
図6は、設定値記憶部に記憶される設定値情報のデータ構造例を示す図である。
図6に示すように、設定値記憶部141には、設定項目と設定値とが関連づけられて記憶されている。
【0077】
目標温度欄には、サーバーラック400内でサーバー機器410が快適にかつ省エネルギーで稼働できる温度が設定されている。
上限設定値欄および下限設定値欄には、最新温度Tcが目標温度Tbと近い温度であるか、または離れた温度であるかを判定する基準となる上限値および下限値が設定されている。図6では、「目標温度Tb+0.5℃」のように目標温度Tbとの差分で設定しているが、上限値または下限値である温度を直接設定することもできる。
【0078】
ファン設定値欄には、算出された予想温度と目標温度Tbとの差によってファン300を回転させるためのファン出力値の条件が設定されている。図6では「目標温度Tb+0.5℃」や「ファン出力5%」のように、目標温度Tbやファン出力との差分で設定しているが、境界温度やファン300の出力値を直接設定することもできる。
【0079】
図7は、過去温度記憶部に記憶される温度情報のデータ構造例を示す図である。
図7に示すように、過去温度記憶部142には、計測時間と計測温度とが関連づけられて記憶されている。
【0080】
計測時間欄には、温度計測手段110が温度センサー200を介してサーバーラック400内の温度を計測した時間が、また計測温度欄には、温度計測手段110が温度センサー200を介してサーバーラック400内で計測した温度が設定されている。
【0081】
図8は、ファン制御装置がサーバーラック内の温度を計測してから、ファン出力を行うまでの処理を示すフローチャートである。以下、図8に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0082】
〔ステップS11〕
ファン制御装置100は最新温度Tcを計測する。具体的には、ファン制御装置100が備える温度計測手段110は、温度センサー200を介してサーバーラック400内の最新温度Tcを計測し記憶手段140に最新温度Tcを記憶させる。
【0083】
〔ステップS12〕
ファン制御装置100は予測温度Tfを算出する。具体的には、ファン制御装置100が備える予測温度算出手段120は、記憶手段140に記憶された最新温度Tcと過去温度Tpとから今後の予測温度Tfを算出する。
【0084】
〔ステップS13〕
ファン制御装置100はファン出力を行う。具体的には、ファン制御装置100が備えるファン出力制御手段130は、ステップS12で算出された予測温度Tfにより、予測温度Tfを目標温度Tbに近づけるようなファン出力をファン300に対して行う。
【0085】
図9は、予測温度算出手段が最新温度を取得してから予測温度Tfを算出するまでの処理を示すフローチャートである。以下、図9に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
〔ステップS21〕
予測温度算出手段120は、取得した最新温度Tcが目標温度Tbに近い温度であるか、または最新温度Tcが目標温度Tbから離れた温度であるかを判断する。具体的には、目標温度比較部121が、あらかじめ記憶手段140に設定された上限設定値および下限設定値と比較することで、最新温度Tcが目標温度Tbに近い温度であるか、または最新温度Tcが目標温度Tbから離れた温度であるかを判断する。
【0086】
予測温度算出手段120が、最新温度Tcが目標温度Tbに近い温度であると判断したときは、処理をステップS22に進め、予測温度算出手段120が、最新温度Tcが目標温度Tbから離れた温度であると判断したときは、処理をステップS25に進める。
【0087】
〔ステップS22〕
予測温度算出手段120は、1計測ピリオド前の過去温度Tp[-1]を取得する。具体的には、予測温度算出手段120が備える予測温度計算部123が記憶手段140に記憶された過去温度Tpから1計測ピリオド前の過去温度Tp[-1]を取得する。
【0088】
〔ステップS23〕
予測温度算出手段120は、最新温度Tcと1計測ピリオド前の過去温度Tp[-1]との差分を算出する。具体的には、予測温度算出手段120が備える予測温度計算部123が記憶手段140に記憶された最新温度Tcから過去温度Tp[-1]を減算して差分を算出する。
【0089】
〔ステップS24〕
予測温度算出手段120は、1計測ピリオド先の予測温度Tfを算出する。具体的には、予測温度算出手段120が備える予測温度計算部123が最新温度TcにステップS23で算出した差分を加算することで1計測ピリオド先の予測温度Tfを算出する。
【0090】
〔ステップS25〕
予測温度算出手段120は、カウンターnを初期化する。具体的には、予測温度算出手段120が備える連続性検出部122が、連続した計測ピリオドをカウントするためのカウンターnに0を代入することでカウンターnを初期化する。
【0091】
〔ステップS26〕
予測温度算出手段120は、カウンターnを1増加させる。具体的には、予測温度算出手段120が備える連続性検出部122が、連続した計測ピリオドをカウントするためのカウンターnに1を加算してカウントを1つ増加させる。
【0092】
〔ステップS27〕
予測温度算出手段120は、1計測ピリオド前の過去温度Tp[-n]を取得する。具体的には、予測温度算出手段120が備える連続性検出部122が記憶手段140に記憶された過去温度Tpからn計測ピリオド前の過去温度Tp[-n]を取得する。
【0093】
〔ステップS28〕
予測温度算出手段120は、カウンターnが2以上であるか否かの判断を行う。具体的には、予測温度算出手段120が備える連続性検出部122が、連続性を比較するための対象があるか否かのためにカウンターnが2以上であるか否かの判断を行う。
【0094】
連続性検出部122が、カウンターnが2以上であると判断したときは、処理をステップS26に進め、連続性検出部122が、カウンターnが2以上でないと判断したときは、処理をステップS29に進める。
【0095】
〔ステップS29〕
予測温度算出手段120は、Tp[-n]から最新温度Tcまでを比較する。具体的には、予測温度算出手段120が備える連続性検出部122が、記憶手段140に記憶された最新温度Tcから過去温度Tp[-1]、または過去温度Tp[-n]から過去温度Tp[-n+1]を減算して差分を算出することで各計測ピリオドでの温度変化を比較する。
【0096】
〔ステップS30〕
予測温度算出手段120は、温度変化の連続性を判断する。具体的には、予測温度算出手段120が備える連続性検出部122が、ステップS29で処理した各計測ピリオドでの温度変化から、連続した温度の上昇または連続した温度の下降があるか否として連続性の有無を判断する。
【0097】
連続性検出部122が、連続した温度の上昇または連続した温度の下降があると判断したときは、処理をステップS26に進め、連続性検出部122が、連続した温度の上昇または連続した温度の下降がないと判断したときは、処理をステップS31に進める。
【0098】
〔ステップS31〕
予測温度算出手段120は、n-1計測ピリオド先の予測温度Tfを算出する。具体的には、予測温度算出手段120が備える予測温度計算部123が、最新温度Tcにn=1のときにステップS27で取得した差分にn-1を乗じたものを加算することで、n-1計測ピリオド先の予測温度Tfを算出する。
【0099】
なお、図9で示したフローチャートでは、連続性検出部122が、ステップS29で上限なく過去にさかのぼって比較して連続性の有無を判断したが、ステップSのカウンターの増加に上限を設け、例えば最大9計測ピリオドまでさかのぼって連続性を判断するなど、連続性判断の上限を設けるようにすることもできる。
【0100】
図10は、ファン出力制御手段が予測温度を取得してからファン出力を行うまでの処理を示すフローチャートである。以下、図10に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0101】
〔ステップS41〕
ファン出力制御手段130は、取得した予測温度Tfが、どのエリアの温度領域に属するかを判断する。具体的には、ファン出力制御手段130が備える予測温度比較部131は、記憶手段140に記憶された第一上限ファン設定値、第二上限ファン設定値、第一下限ファン設定値、および第二下限ファン設定値で仕切られたエリアA~エリアEの温度領域のうち、取得した予測温度Tfがどの温度領域に属するかを判断する。
【0102】
予測温度比較部131が、エリアAに取得した予測温度Tfが属すると判断したときは、処理をステップS42に進め、予測温度比較部131が、エリアBに取得した予測温度Tfが属すると判断したときは、処理をステップS43に進め、予測温度比較部131が、エリアCに取得した予測温度Tfが属すると判断したときは、処理をステップS44に進め、予測温度比較部131が、エリアDに取得した予測温度Tfが属すると判断したときは、処理をステップS45に進め、予測温度比較部131が、エリアEに取得した予測温度Tfが属すると判断したときは、処理をステップS46に進める。
【0103】
〔ステップS42〕
ファン出力制御手段130は、現在値+5%のファン出力を行う。具体的には、ファン出力制御手段130が備えるファン出力制御部132が、現在出力しているファン出力から+5%のファン出力を行う。
【0104】
〔ステップS43〕
ファン出力制御手段130は、現在値+1%のファン出力を行う。具体的には、ファン出力制御手段130が備えるファン出力制御部132が、現在出力しているファン出力から+1%のファン出力を行う。
【0105】
〔ステップS44〕
ファン出力制御手段130は、現在値を維持したままファン出力を行う。具体的には、ファン出力制御手段130が備えるファン出力制御部132が、現在出力しているファン出力を維持したままファン出力を行う。
【0106】
〔ステップS45〕
ファン出力制御手段130は、現在値-1%のファン出力を行う。具体的には、ファン出力制御手段130が備えるファン出力制御部132が、現在出力しているファン出力から-1%のファン出力を行う。
【0107】
〔ステップS46〕
ファン出力制御手段130は、現在値-2%のファン出力を行う。具体的には、ファン出力制御手段130が備えるファン出力制御部132が、現在出力しているファン出力から-2%のファン出力を行う。
【0108】
図11は、過去温度および最新温度から予測温度を算出した一例を示すグラフである。
図11(A)に示すように、最新温度Tcは、目標温度Tbに近い状態を示す下限設定値を超過かつ上限設定値未満の温度領域(39.5℃を超過かつ40.5℃未満)から外れた25℃付近で計測されている。
【0109】
この場合、予測温度算出手段120が備える目標温度比較部121は、最新温度Tcが目標温度Tbから離れた温度であると判断し、連続性検出部122が温度の上昇または下降の連続性を判断する。
【0110】
このとき、連続性検出部122は、最新温度Tcから過去温度Tp[-5]までの5計測ピリオドが連続して温度が上昇しているが、過去温度Tp[-5]にから過去温度Tp[-6]にかけては温度が下降していると判断する。
【0111】
これにより、予測温度算出手段120が備える予測温度計算部123は、最新温度Tcから5ピリオド先を予測温度Tfとして、最新温度Tcと過去温度Tp[-1]との差分ΔTに連続した上昇ピリオド分の5を乗じたものを最新温度Tcに加算した33℃付近の予測温度Tfを算出する。
【0112】
図11(B)に示すように、最新温度Tcは、目標温度Tbに近い状態を示す下限設定値を超過かつ上限設定値未満の温度領域(39.5℃を超過かつ40.5℃未満)内の39℃付近で計測されている。
この場合、予測温度算出手段120が備える目標温度比較部121は、最新温度Tcが目標温度Tbに近い温度であると判断する。
【0113】
これにより、予測温度算出手段120が備える予測温度計算部123は、最新温度Tcから1計測ピリオド先を予測温度Tfとして、最新温度Tcと過去温度Tp[-1]との差分ΔTを最新温度Tcに加算した41℃付近の予測温度Tfを算出する。
【0114】
図12は、過去温度および最新温度から予測温度を算出した一例を示すグラフである。
図12(A)に示すように、最新温度Tcは、目標温度Tbに近い状態を示す下限設定値を超過かつ上限設定値未満の温度領域(39.5℃を超過かつ40.5℃未満)から外れた41℃付近で計測されている。
【0115】
この場合、予測温度算出手段120が備える目標温度比較部121は、最新温度Tcが目標温度Tbから離れた温度であると判断し、連続性検出部122が温度の上昇または下降の連続性を判断する。
【0116】
このとき、連続性検出部122は、最新温度Tcから過去温度Tp[-3]までの3計測ピリオドが連続して温度が下降しているが、過去温度Tp[-3] から過去温度Tp[-4]にかけては温度が上昇していると判断する。
【0117】
これにより、予測温度算出手段120が備える予測温度計算部123は、最新温度Tcから3ピリオド先を予測温度Tfとして、最新温度Tcと過去温度Tp[-1]との差分ΔTに連続した上昇ピリオド分の3を乗じたものを最新温度Tcに加算した38℃付近の予測温度Tfを算出する。
【0118】
図12(B)に示すように、最新温度Tcは、目標温度Tbに近い状態を示す下限設定値を超過かつ上限設定値未満の温度領域(39.5℃を超過かつ40.5℃未満)内の41℃付近で計測されている。
この場合、予測温度算出手段120が備える目標温度比較部121は、最新温度Tcが目標温度Tbに近い温度であると判断する。
【0119】
これにより、予測温度算出手段120が備える予測温度計算部123は、最新温度Tcから1計測ピリオド先を予測温度Tfとして、最新温度Tcと過去温度Tp[-1]との差分ΔTを最新温度Tcに加算した41℃付近の予測温度Tfを算出する。
【0120】
図13は、過去温度および最新温度から算出された予測温度が属するエリアの入一例を示すグラフである。
図13(A)に示すように、予測温度算出手段120により算出された予測温度Tfは、35度付近で予測されている。
【0121】
このとき、ファン出力制御手段130が備える予測温度比較部131は、予測温度Tfが第二上限ファン設定値(38.0℃)以下の温度領域であるエリアEに予測温度Tfが属していると判断する。
【0122】
次に、ファン出力制御手段130が備えるファン出力制御部132は、あらかじめ記憶手段140で記憶されたエリアEに対応する出力(現在値-2%)でファン300に対する出力を行う。
【0123】
これによりファン300は、現在出力されているファン出力値よりも少ないエネルギーでサーバーラック400内の温度を目標温度Tbに近づけることができる。すなわち、より少ないエネルギーでサーバー機器410が安定稼働できる温度である目標温度Tbに近づけることができる。
【0124】
図13(B)に示すように、予測温度算出手段120により算出された予測温度Tfは、41度付近で予測されている。
このとき、ファン出力制御手段130が備える予測温度比較部131は、予測温度Tfが第一上限ファン設定値(40.5℃)以上、かつ第二上限ファン設定値(42.0℃)未満の温度領域であるエリアBに予測温度Tfが属していると判断する。
【0125】
次に、ファン出力制御手段130が備えるファン出力制御部132は、あらかじめ記憶手段140で記憶されたエリアBに対応する出力(現在値+1%)でファン300に対する出力を行う。
【0126】
これによりファン300は、現在出力されているファン出力値から過剰な出力をせずにサーバーラック400内の温度を目標温度Tbに近づけることができる。すなわち、より少ないエネルギーでサーバー機器410が安定稼働できる温度である目標温度Tbに近づけることができる。
【0127】
図14は、過去温度および最新温度から算出された予測温度が属するエリアの入一例を示すグラフである。
図14(A)に示すように、予測温度算出手段120により算出された予測温度Tfは、39度付近で予測されている。
【0128】
このとき、ファン出力制御手段130が備える予測温度比較部131は、予測温度Tfが第二下限ファン設定値(38.0℃)を超過し、かつ第一下限ファン設定値(39.5℃)以下の温度領域であるエリアDに予測温度Tfが属していると判断する。
【0129】
次に、ファン出力制御手段130が備えるファン出力制御部132は、あらかじめ記憶手段140で記憶されたエリアDに対応する出力(現在値-1%)でファン300に対する出力を行う。
【0130】
これによりファン300は、現在出力されているファン出力値よりも少ないエネルギーでサーバーラック400内の温度を目標温度Tbに近づけることができる。すなわち、より少ないエネルギーでサーバー機器410が安定稼働できる温度である目標温度Tbに近づけることができる。
【0131】
図14(B)に示すように、予測温度算出手段120により算出された予測温度Tfは、40度付近で予測されている。
このとき、ファン出力制御手段130が備える予測温度比較部131は、予測温度Tfが第一下限ファン設定値(39.5℃)を超過し、かつ第一上限ファン設定値(40.5℃)未満の温度領域であるエリアCに予測温度Tfが属していると判断する。
【0132】
次に、ファン出力制御手段130が備えるファン出力制御部132は、あらかじめ記憶手段140で記憶されたエリアCに対応する出力(ファン出力現状維持)でファン300に対する出力を行う。
【0133】
これによりファン300は、現在出力されているファン出力値から過剰な出力をせず、また現在出力されているファン出力値からファン出力を下げることでサーバーラック400内温度が上昇してしまうことを防止することができる。すなわち、より少ないエネルギーでサーバー機器410が安定稼働できる温度である目標温度Tbに近づけることができる。
【0134】
なお、本実施の形態では、密閉外装壁430により密閉された空間内に設置された熱交換器420、ファン300、温度センサー200、およびファン制御装置100によりサーバーラック400内のサーバー機器410の稼働により上昇する温度を抑制したが、密閉されていないパンチング加工された外装壁などにより構成されるサーバーラック400内で、各サーバー機器410付近にファン300、温度センサー200、およびファン制御装置100を設置し、複数のファン300、温度センサー200、およびファン制御装置100により、各サーバー機器410による上昇温度を抑制するようにしてもよい。
【0135】
また、本実施の形態では、ファン300、温度センサー200、およびファン制御装置100をサーバーラック400内に設置することで、サーバーラック400内の温度をサーバー機器410が快適に稼働できる温度で安定させるようにしたが、例えばサーバー機器410を備えるサーバーラック400が複数設置されたサーバー機器管理室などの密閉された空間に、ファン300、温度センサー200、およびファン制御装置100を設置し、サーバー機器管理室などの密閉された空間に設置された各サーバー機器410による上昇温度を抑制するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0136】
100 ファン制御装置
110 温度計測手段
120 予測温度算出手段
121 目標温度比較部
122 連続性検出部
123 予測温度計算部
130 ファン出力制御手段
131 予測温度比較部
132 ファン出力制御部
140 記憶手段
141 設定値記憶部
142 過去温度記憶部
200 温度センサー
300 ファン
400 サーバーラック
410 サーバー機器
420 熱交換器
430 密閉外装壁
Tb 目標温度
Tc 最新温度
Tf 予測温度
Tp 過去温度
n カウンター
ΔT 差分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14