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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20230119BHJP
   F28F 9/18 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B23K26/21 N
F28F9/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018216756
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020082101
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】伊川 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】岸 正幸
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊典
(72)【発明者】
【氏名】平野 智哉
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-216298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130752(US,A1)
【文献】特開平11-245066(JP,A)
【文献】特開2016-161158(JP,A)
【文献】特開2014-067664(JP,A)
【文献】特開2015-078399(JP,A)
【文献】特開2011-220582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
F28F 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流通する流通路を内部に有する本体と、
前記本体に重ね合わせられた状態でレーザ溶接にて接合される被接合部材と、
を備え、
前記本体には、外部と前記流通路とを連通する連通孔が形成され、
前記被接合部材は、前記連通孔を覆うように前記本体に重ね合わせられた状態でレーザ光が照射され、
前記レーザ溶接による溶融部の電位は、前記本体の電位よりも高いことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記被接合部材の電位は、前記本体の電位よりも高い
請求項に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記本体の材料がアルミニウムの6000系合金であり、前記被接合部材の材料は、アルミニウムの3000系合金である
請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
液体が流通する流通路を内部に有する本体と、
前記本体に重ね合わせられた状態でレーザ溶接にて接合される被接合部材と、
を備え、
前記本体には、外部と前記流通路とを連通する連通孔が形成され、
前記被接合部材は、前記連通孔を介して前記流通路と連通して、当該流通路を流通する液体と接触し、
前記レーザ溶接による溶接部は、前記流通路を流通する液体が前記連通孔を介して装置外部に流出するのを抑制し、
前記レーザ溶接による溶融部の電位は、前記本体又は前記被接合部材の電位よりも高いことを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
前記被接合部材に対してレーザ光が照射され、
前記溶融部の電位は、前記本体の電位よりも高い
請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記被接合部材の電位は、前記本体の電位よりも高い
請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記本体の材料がアルミニウムの6000系合金であり、前記被接合部材の材料は、アルミニウムの3000系合金である
請求項4から6のいずれか1項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム材料を用いて成形された部材にて構成される冷却装置において、アルミニウム材料を用いて成形された部材同士を接合するために、はんだ付やろう付を行うことが提案されている。
例えば、特許文献1に記載された液冷式冷却装置は、冷却液流通体の流入部の一端面にアルミニウム製入口ヘッダをろう付し、同じく流出部の一端面にアルミニウム製出口ヘッダをろう付し、冷却液流通体の他端面にアルミニウム製中間ヘッダをろう付することにより構成されている。
また、アルミニウム材料を用いて成形された部材を接合するための方法として、特許文献2には、レーザ溶接を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-161158号公報
【文献】特開平4-270088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、内部に液体が流通する流通路を有する、アルミニウム材料を用いて成形された部材(以下、「アルミニウム材」と称する場合がある。)と、流通路の流通方向とは異なる方向に液体を流通させる等のためのアルミニウム材とを重ね合わせて、レーザ溶接にて接合することが考えられる。かかる構成である場合、2つのアルミニウム材の隙間を通ってレーザ溶接による溶接部にまで液体が入り込んでしまうことが考えられるため、溶融部が腐食してしまうことを抑制することが重要となる。
本発明は、レーザ溶接による溶融部を腐食し難くすることができる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、液体が流通する流通路を内部に有する本体と、前記本体に重ね合わせられた状態でレーザ溶接にて接合される被接合部材と、を備え、前記レーザ溶接による溶融部の電位は、前記本体又は前記被接合部材の電位よりも高いことを特徴とする冷却装置である。
ここで、前記被接合部材に対してレーザ光が照射され、前記溶融部の電位は、前記本体の電位よりも高くても良い。
また、前記本体には、外部と前記流通路とを連通する連通孔が形成され、前記被接合部材は、前記連通孔を覆うように前記本体に重ね合わせられ、当該連通孔の周囲にレーザ光が照射されても良い。
また、前記被接合部材の電位は、前記本体の電位よりも高くても良い。
また、前記本体の材料がアルミニウムの6000系合金であり、前記被接合部材の材料は、アルミニウムの3000系合金であっても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、材質の異なる2つのアルミニウム材を重ね合わせた状態でレーザ溶接することにより接合して構成される冷却装置であって、前記レーザ溶接による溶融部の電位は、前記2つのアルミニウム材の内の一方のアルミニウム材の電位よりも高いことを特徴とする冷却装置である。
ここで、前記2つのアルミニウム材の内の前記一方のアルミニウム材の材料は6000系合金であり、他方のアルミニウム材の材料は3000系合金であっても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、レーザ溶接による溶融部を腐食し難くすることができる冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る液冷式冷却装置の斜視図である。
図2】液冷式冷却装置を構成する部品を分解した図である。
図3図1のIII-III部の断面図である。
図4図1のIV-IV部の断面図である。
図5】重ね合わせ部におけるレーザ溶接工程を説明する斜視図である。
図6】(a)は、図1のVI-VI部の断面図である。(b)は、(a)のVIb部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る液冷式冷却装置1の斜視図である。
図2は、液冷式冷却装置1を構成する部品を分解した図である。
図3は、図1のIII-III部の断面図である。
図4は、図1のIV-IV部の断面図である。
実施の形態に係る液冷式冷却装置1は、内部に冷却液が流通する装置本体10と、装置本体10を流通する冷却液の流通方向を変更する変更部材20と、を備えている。また、液冷式冷却装置1は、装置本体10の外部から内部に冷却液を流入させる入口ジョイント30と、装置本体10の内部から外部に冷却液を流出させる出口ジョイント40と、を備えている。
【0009】
(装置本体10)
装置本体10は、概形が直方体の部材である。装置本体10は、押出加工にて成形された、JIS A6063合金の押出材を用いて成形されており、押出方向が長手方向となるように成形されている。また、図1に示すように、装置本体10の長手方向及び短手方向の長さは、上下方向の長さよりも大きい。なお、JIS A6063合金の質別は、T0又はT6であることを例示することができる。また、その他の質別であっても良いが、装置本体10の硬さが、42(HV(ビッカース硬さ))以上であることが望ましい。
【0010】
装置本体10の内部には、長手方向における一方の端部から他方の端部まで貫通した貫通孔11が複数形成されている。本実施の形態に係る液冷式冷却装置1においては、図4に示すように、貫通孔11は、短手方向の中央部よりも手前側と、中央部よりも奥側とに、それぞれ6つ形成されている。
【0011】
手前側の6つの貫通孔11は、入口ジョイント30を介して流入し、変更部材20に至る前の冷却液が流通する流入側流路111として機能する。隣接する流入側流路111は、流入側壁111aにより仕切られている。
他方、奥側の6つの貫通孔11は、変更部材20を通過後に流入し、出口ジョイント40に至る前の冷却液が流通する流出側流路112として機能する。隣接する流出側流路112は、流出側壁112aにより仕切られている。
【0012】
また、装置本体10には、長手方向における中央部に、上面から凹んだ空間12が2つ形成されている。2つの空間12の内の一つは、流入側流路111と連通するように形成された流入側空間121であり、他方は、流出側流路112と連通するように形成された流出側空間122である。
流入側空間121は、上壁13及び流入側壁111aが例えば切削加工にて除去されることで形成された空間であり、上壁13が貫通された貫通孔121aと、流入側壁111aが除去された下部空間121bとにより形成される。なお、図2に示した例では、流入側壁111aは、上側から下側にかけて全て除去されているが、上側の一部が除去され、下側の部分が残っていても良い。
流出側空間122は、上壁13及び流出側壁112aが例えば切削加工にて除去されることで形成された空間であり、上壁13が貫通された貫通孔122aと、流出側壁112aが除去された下部空間122bとにより形成される。なお、図2に示した例では、流出側壁112aは、上側から下側にかけて全て除去されているが、上側の一部が除去され、下側の部分が残っていても良い。
【0013】
(変更部材20)
変更部材20は、装置本体10における長手方向の両端部それぞれに配置されている。
変更部材20は、概形が直方体の部材であるとともに、装置本体10側の端面から凹んだ凹部21が形成されている。凹部21により、流入側流路111と流出側流路112とが連通させられている。
変更部材20は、装置本体10側の端面と、装置本体10の長手方向の端面とが突き合わせられた状態で、突き合わせ部にレーザ溶接が施されることにより接合されている。このように、変更部材20は、本体の一例としての装置本体10に対してレーザ溶接にて接合される被接合部材の一例である。
【0014】
変更部材20は、例えば、質別OのJIS A3000系合金からなる条に深絞り加工が施されることにより成形されたものであることを例示することができる。また、変更部材20は、例えば、質別H14のJIS A3000系合金又は質別H14のJIS A1000系アルミニウムからなる素材に切削加工が施されることにより成形されたものであっても良い。
【0015】
(入口ジョイント30)
入口ジョイント30は、円筒状であり中心線方向が上下方向となるように配置される入口パイプ31と、入口パイプ31を保持する保持部材32とを有している。
【0016】
入口パイプ31は、上端寄りの部分に設けられた、径方向外側に全周に亘って突出した上端側突出部311と、下端寄りの部分に設けられた、径方向外側に全周に亘って突出した下端側突出部312とを有している。
入口パイプ31における、下端側突出部312よりも下端側の部分が、保持部材32に形成された後述する貫通孔321に挿入されている。
保持部材32は、概形が板状の直方体の部材であり、中央部に円形の貫通孔321が形成されている。保持部材32は、JIS A3003合金の板材を用いて成形されている。なお、JIS A3003合金の質別は、質別H12又は質別H18であることを例示することができる。また、その他の質別であっても良いが、保持部材32の硬さが、35(HV)以上であることが望ましい。
【0017】
入口パイプ31は、下端側突出部312よりも下端側の部分が、保持部材32に形成された貫通孔321に挿入された状態でろう付されている。下端側突出部312における最外径部と保持部材32との間には、溶融したろう材からなるフィレット33が形成されている。
【0018】
そして、入口ジョイント30は、入口パイプ31の下端部が装置本体10の流入側空間121に挿入され、保持部材32の下端面が装置本体10の上面に載せられた状態(保持部材32と装置本体10とを重ね合わせた状態)で、レーザ溶接が施されることにより接合されている。このように、保持部材32は、装置本体10に対してレーザ溶接にて接合される被接合部材の一例である。
【0019】
(出口ジョイント40)
出口ジョイント40は、入口ジョイント30と同様の部材であり、円筒状であり中心線方向が上下方向となるように配置される出口パイプ41と、出口パイプ41を保持する保持部材42とを有している。
【0020】
出口パイプ41は、上端寄りの部分に設けられた、径方向外側に全周に亘って突出した上端側突出部411と、下端寄りの部分に設けられた、径方向外側に全周に亘って突出した下端側突出部412とを有している。
出口パイプ41における、下端側突出部412よりも下端側の部分が、保持部材42に形成された後述する貫通孔(不図示)に挿入されている。
保持部材42は、概形が板状の直方体の部材であり、中央部に円形の貫通孔(不図示)が形成されている。保持部材42は、保持部材32と同様に、JIS A3003合金の板材を用いて成形されている。なお、JIS A3003合金の質別は、質別H12又は質別H18であることを例示することができる。また、その他の質別であっても良いが、保持部材42の硬さが、35(HV)以上であることが望ましい。
【0021】
出口パイプ41は、下端側突出部412よりも下端側の部分が、保持部材42に形成された貫通孔(不図示)に挿入された状態でろう付されている。下端側突出部412における最外径部と保持部材42との間には、溶融したろう材からなるフィレット43が形成されている。
【0022】
そして、出口ジョイント40は、出口パイプ41の下端部が装置本体10の流出側空間122に挿入され、保持部材42の下端面が装置本体10の上面に載せられた状態(保持部材42と装置本体10とを重ね合わせた状態)で、レーザ溶接が施されることにより接合されている。このように、保持部材42は、装置本体10に対してレーザ溶接にて接合される被接合部材の一例である。
【0023】
(液冷式冷却装置1の作用)
以上のように構成された液冷式冷却装置1には、装置本体10の上面であって、入口ジョイント30及び出口ジョイント40が設けられた部位よりも長手方向の外側に、この液冷式冷却装置1により冷却される被冷却物が載せられる。被冷却物は、複数の直方体状の単電池101からなる組電池100であることを例示することができる。
【0024】
そして、液冷式冷却装置1においては、入口ジョイント30の入口パイプ31から装置本体10の流入側空間121内に流入した冷却液が、流入側流路111を通って変更部材20の凹部21内に至る。変更部材20の凹部21内に至った冷却液は、その後、流出側流路112を通って流出側空間122に至り、出口ジョイント40の出口パイプ41から流出する。このようにして、冷却液が、装置本体10の流入側流路111及び流出側流路112を流通する間に、装置本体10の上面に載せられた組電池100を冷却する。
【0025】
(液冷式冷却装置1の製造方法)
以上のように構成された液冷式冷却装置1は、以下のようにして製造される。
装置本体10における長手方向の両端部の端面と、変更部材20における装置本体10側の端面とを突き合わせた状態で、突き合わせ部に対して、レーザ光を連続的に照射する。このようにして、装置本体10における長手方向の両端部に、変更部材20を、レーザ溶接にて接合する。
突き合わせ部にレーザ光が照射されることで、突き合わせ部と略同一位置に溶接部22(図3参照)が形成される。
【0026】
また、装置本体10の流入側空間121に入口ジョイント30の入口パイプ31の下端部を挿入し、入口ジョイント30の保持部材32の下端面を装置本体10の上面に載せる(保持部材32と装置本体10とを重ね合わせる)。そして、保持部材32と装置本体10とを重ね合わせた状態で、保持部材32に対してレーザ光を照射し、入口パイプ31の周囲にレーザ光を連続的に照射していく。このようにして、装置本体10における中央部に、入口ジョイント30を、レーザ溶接にて接合する。
重ね合わせ部にレーザ光が照射されることで、照射された位置と略同一位置に溶接部34(図3参照)が形成される。
【0027】
同様に、装置本体10の流出側空間122に出口ジョイント40の出口パイプ41の下端部を挿入し、出口ジョイント40の保持部材42の下端面を装置本体10の上面に載せる(保持部材42と装置本体10とを重ね合わせる)。そして、保持部材42と装置本体10とを重ね合わせた状態で、保持部材42に対してレーザ光を照射し、出口パイプ41の周囲にレーザ光を連続的に照射していく。このようにして、装置本体10における中央部に、出口ジョイント40を、レーザ溶接にて接合する。
重ね合わせ部にレーザ光が照射されることで、照射された位置と略同一位置に溶接部44(図1参照)が形成される。
【0028】
(レーザ溶接工程)
図5は、重ね合わせ部におけるレーザ溶接工程を説明する斜視図である。
図5に示すように、装置本体10と入口ジョイント30の保持部材32(出口ジョイント40の保持部材42)との重ね合わせ部に向けて、レーザ装置150のレーザヘッド151からレーザ光Lを照射する。そして、レーザヘッド151を、入口パイプ31(出口パイプ41)の周囲の保持部材32(保持部材42)の端部形状に沿って移動させることで、レーザ光Lを連続的に照射する。
なお、レーザ装置150のレーザ源は特に限定されない。YAGレーザ、COレーザ、ファイバレーザ、ディスクレーザ、半導体レーザであることを例示することができる。また、レーザ光Lの照射方向は、重ね合わせ部の保持部材32(保持部材42)の面に対して直交する方向でも良いし、直交方向に対して傾斜した方向であっても良い。
また、装置本体10と変更部材20との突き合わせ部に向けて、レーザヘッド151からレーザ光Lを照射する。そして、レーザヘッド151を、突き合わせ部の形状に沿って移動させることで、レーザ光Lを連続的に照射する。
【0029】
(溶接部)
図6(a)は、図1のVI-VI部の断面図である。図6(b)は、図6(a)のVIb部の拡大図である。
図6(a)及び図6(b)は、入口ジョイント30の保持部材32と装置本体10との重ね合わせ部の溶接部34の断面形状を示している。レーザ装置150のレーザヘッド151から保持部材32に対してレーザ光Lが照射され、レーザ光Lのエネルギーが熱に変換されることによって、重ね合わせ部を構成している、アルミニウム材である保持部材32と装置本体10の母材自体が溶融し、その後急速に冷却される。この急速加熱・急速冷却により溶接部34に組織変化が生じ、溶接部34は、溶けて固まった溶融部34mと、溶接熱により組織変化の生じた熱影響部34hとにより構成される。熱影響部34hは、保持部材32の熱影響部32hと、装置本体10の熱影響部10hとにより構成される。
【0030】
上述したように製造される液冷式冷却装置1において、装置本体10に用いられるアルミニウム材料と、入口ジョイント30の保持部材32及び出口ジョイント40の保持部材42に用いられるアルミニウム材料とは異なる。
これは、本発明者が鋭意研究したところ、材質の異なる2つのアルミニウム材がレーザ溶接にて接合されると、レーザ溶接による溶融部の電位は、2つのアルミニウム材の内の一方のアルミニウム材の電位よりも高くなることを見出したことに起因する。材質の異なる2つのアルミニウム材の内の電位が低い方のアルミニウム材の電位、溶融部の電位、2つのアルミニウム材の内の電位が高い方のアルミニウム材の電位の順に高くなる。液冷式冷却装置1においては、装置本体10のアルミニウム材料と、保持部材32(保持部材42)のアルミニウム材料とを異ならせることで、これらをレーザ溶接したことによる溶融部34mの電位が最も低くならないようにした。
【0031】
また、本実施の形態に係る液冷式冷却装置1において、装置本体10のアルミニウム材料と、保持部材32(保持部材42)のアルミニウム材料とを選定するにあたって、装置本体10は、流入側流路111及び流出側流路112を内部に有し、保持部材32(保持部材42)は、流入側空間121(流出側空間122)を覆う点に鑑みる。保持部材32は、装置本体10に形成された、装置本体10の外部と流入側流路111とを連通する連通孔の一例としての貫通孔121aを覆うように装置本体10に重ね合わせられ、貫通孔121aの周囲にレーザ光が照射される。保持部材42は、装置本体10に形成された、装置本体10の外部と流出側流路112とを連通する連通孔の一例としての貫通孔122aを覆うように装置本体10に重ね合わせられ、貫通孔122aの周囲にレーザ光が照射される。
【0032】
そして、本実施の形態に係る液冷式冷却装置1においては、保持部材32(保持部材42)のアルミニウム材料をJIS A3000系合金とし、装置本体10のアルミニウム材料を、保持部材32(保持部材42)の電位よりも低い、JIS A6000系合金とした。より具体的には、保持部材32(保持部材42)のアルミニウム材料をJIS A3003合金、装置本体10のアルミニウム材料をJIS A6063合金とした(JIS A3003合金の電位は-719.3(mV)、JIS A6063合金の電位は-742.3(mV))。
【0033】
これにより、レーザ溶接の溶融部(例えば溶融部34m)の電位が装置本体10の電位よりも高くなるようにするとともに、保持部材32(保持部材42)の電位が装置本体10の電位よりも高くなるようにした。つまり、装置本体10の電位、溶融部(例えば溶融部34m)の電位、保持部材32(保持部材42)の電位の順に高くなるようにした。その結果、装置本体10と保持部材32(保持部材42)との間に冷却液が入り込んでしまったとしても、溶融部(例えば溶融部34m)が卑な金属となってしまうことを抑制することができ、溶融部が腐食してしまうことを抑制することができる。また、保持部材32(保持部材42)が卑な金属となってしまうことを抑制することができ、溶融部が腐食してしまうことを抑制することができる。
【0034】
これに対して、装置本体10の電位は、溶融部(例えば溶融部34m)の電位、及び、保持部材32(保持部材42)の電位よりも低いので、装置本体10と保持部材32(保持部材42)との間に冷却液が入り込んでしまった場合には、装置本体10が卑な金属となってしまい、装置本体10が腐食してしまうおそれがある。しかしながら、装置本体10における溶融部34mよりも内側の部位が腐食してしまっても、保持部材32は、装置本体10に形成された貫通孔121aを覆うように装置本体10に重ね合わせられ、貫通孔121aの周囲にレーザ光が照射されて、溶融部34mが形成されているので、冷却液が装置本体10の外部に漏れることが抑制される。また、保持部材42は、装置本体10に形成された貫通孔122aを覆うように装置本体10に重ね合わせられ、貫通孔122aの周囲にレーザ光が照射されて、溶融部が形成されているので、冷却液が装置本体10の外部に漏れることが抑制される。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態に係る液冷式冷却装置1は、材質の異なる2つのアルミニウム材を重ね合わせた状態でレーザ溶接することにより接合して構成される冷却装置であって、レーザ溶接による溶融部の電位は、2つのアルミニウム材の内の一方のアルミニウム材の電位よりも高いことを特徴とする冷却装置の一例である。ただし、この特徴点である、レーザ溶接による溶融部の電位が、2つのアルミニウム材の内の一方のアルミニウム材の電位よりも高いのは、冷却装置に限って好適なわけではない。2つのアルミニウム材をレーザ溶接にて接合して構成される全ての構造物に好適である。そして、レーザ溶接による溶融部の電位が、2つのアルミニウム材の内の一方のアルミニウム材の電位よりも高いことで、溶融部が腐食し難くなる。
【符号の説明】
【0036】
1…液冷式冷却装置、10…装置本体、10h…熱影響部、20…変更部材、30…入口ジョイント、31…入口パイプ、32…保持部材、32h…熱影響部、34…溶接部、34m…溶融部、34h…熱影響部、40…出口ジョイント、41…出口パイプ、42…保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6