(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】積層型熱交換器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20230119BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2018234390
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】文後 卓也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】坂井 耐事
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-235967(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131240(WO,A1)
【文献】特開2005-268305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34-23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H05K7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ多数の開口部(1a)と非開口部(1b)とが交互に二次元に並列して穿設された平坦な複数の金属製のパンチングプレート(2)(3)を有し、各パンチングプレート(2)(3)が互いに接触して積層されると共に、隣接する各パンチングプレート(2)(3)の各開口部(1a)が互いに平面方向に位置ずれされたコア(4)と、
そのコア(4)の外周を被嵌し、端部に冷媒のマニホールド部(5)を有するケーシング(6)と、を具備し、
それら各部品間が一体にろう付け固定されて、
冷媒(15)が各パンチングプレート(2)(3)の各開口部(1a)内を厚み方向に蛇行しつつ全体として平面方向に流通する多数の冷媒(15)の流通路(7)を有する積層型熱交換器において、
パンチングプレート(2)(3)の前記冷媒(15)の流通路(7)の途中には分岐口(8)が形成され、その分岐口(8)から、2以上の第1流路(7a)、第2流路(7b)が下流側に形成され
、第1流路(7a)と第2流路(7b)とが互いに隣接して形成され、両流路の下流側に両流路を連結する合流口(9)が設けられた積層型熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の積層型熱交換器において、
パンチングプレート(2)(3)の外周には、プレート固定用の爪(10)、または切欠き(11)、または締結孔またはその他の各プレートどうしの位置決め部材(13)が設けられ
、その近傍には異形の部位(14)が外周に突出し、その部位(14)に第2流路(7b)が配置された積層型熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワートランジスタや集積回路パッケージ等の発熱体を冷却する積層型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、半導体素子等の発熱体を冷却する冷却装置の一例として、小孔を多数穿設したパンチングプレートを積層すると共に、その外周をケーシングで被嵌するものが提案されている。その発熱体は、ケーシングの外表面に配置され、ケーシング内を流通する冷媒との間に熱交換が行われる。
このような熱交換器の内部の熱交換器コアは、各プレート同士を位置決めする位置決め部材が外周に配置されているため、その外周は平端ではなく異形に形成されることが多い。すると、その異形部分の外周近傍には、冷媒が流通できない部分が生じる。そのため、異形部分の近傍に配置された発熱体からの発熱を効果的に冷却できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、従来型コアでは冷媒を流通させることができなかった部位の改良により、流路形成範囲を拡大し発熱体等と効果的に熱交換できる積層型熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、それぞれ多数の開口部1aと非開口部1bとが交互に二次元に並列して穿設された平坦な複数の金属製のパンチングプレート2,3を有し、各パンチングプレート2,3が互いに接触して積層されると共に、隣接する各パンチングプレート2,3の各開口部1aが互いに平面方向に位置ずれされたコア4と、
そのコア4の外周を被嵌し、端部に冷媒のマニホールド部5を有するケーシング6と、を具備し、
それら各部品間が一体にろう付け固定されて、
冷媒15が各パンチングプレート2,3の各開口部1a内を厚み方向に蛇行しつつ全体として平面方向に流通する多数の冷媒15の流通路7を有する積層型熱交換器において、
パンチングプレート2,3の前記冷媒15の流通路7の途中には分岐口8が形成され、その分岐口8から、2以上の第1流路7a、第2流路7bが下流側に形成され、第1流路7aと第2流路7bとが互いに隣接して形成され、両流路の下流側に両流路を連結する合流口9が設けられた積層型熱交換器である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の積層型熱交換器において、
パンチングプレート2,3の外周には、プレート固定用の爪10、または切欠き11、または締結孔またはその他の各プレートどうしの位置決め部材13が設けられ、その近傍には異形の部位14が外周に突出し、その部位14に第2流路7bが配置された積層型熱交換器である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、パンチングプレート2,3の冷媒15の流通路7の途中に設けた分岐口8から2以上の第1流路7a、第2流路7bが下流側に分岐されたものである。そのため、流通路7の途中から新たな流路を設け、冷媒を任意の方向に流通させ、流路形成範囲を拡大して、可及的に熱交換器の性能を向上することができる。
【0009】
また、第1流路7aと第2流路7bとを連結する合流口9が設けられたものである。この合流口9により、流路形成の自由度がさらに向上し流路形成範囲をいっそう拡大することができる。
請求項2に記載の発明は、パンチングプレート2,3の外周には、プレート固定用の爪10、または切欠き11、または締結孔またはその他の各プレートどうしの位置決め部材13が設けられ、その近傍には異形の部位14が外周に突出し、その部位14に第2流路7bが配置されたものである。
この構成により、冷媒を流通させることができなかった部位14に対して、流通路7の一部の冷媒流れを迂回できるように、上記構成を適用することで、その部位14の占める面積を少なくして、流路形成範囲を大きく確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)は本発明の積層型熱交換器のコア4の要部平面図、(B)は(A)のB-B矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面に基づいて本発明の各実施の形態につき説明する。
図1及び
図2は本発明の第1の実施の形態を示す積層型熱交換器である。
図1(A)はそのコア4の要部平面図であり、
図1(B)は
図1(A)のB-B矢視断面図である。また、
図2は同熱交換器の分解斜視図である。
この熱交換器は、
図1(B)において第1のパンチングプレート2と第2のパンチングプレート3とが交互に積層されてコア4を構成し、そのコア4の外周をケーシング6によって被嵌したものである。
第1のパンチングプレート2と第2のパンチングプレート3は、夫々多数の同一形状の長方形の小孔からなる開口部1aと非開口1bが2次元に並列する。上下に隣接する第1のパンチングプレート2の開口部1aと第2のパンチングプレート3の開口部1aとは、冷媒15の流通方向に半ピッチ位置ずれしている。そして、第1のパンチングプレート2の開口部1a内に、第2のパンチングプレート3の非開口1bが位置する。
【0012】
このような第1のパンチングプレート2と第2のパンチングプレート3との積層体からなるコア4は、
図2に示す如く、その外周にケーシング6が被嵌される。ケーシング6は皿状のケーシング本体6aと、その上端フランジ部を閉塞する蓋6bとを有する。そして、ケーシング本体6aに冷媒用の一対のパイプが取付られていて、各プレートの流通路7を幅方向に冷媒15が流通する。
即ち、冷媒15は、一方のパイプ16からケーシング6内に供給され、コア4の各パンチングプレートを幅方向に流通する。このとき、冷媒15は上下方向に各プレートを蛇行しながら、全体として直線的に流通する。そしてケーシング6の蓋6bに接合された発熱体17から生じる熱を流通路7を流通する冷媒15によって冷却する。
この例では、コア4の積層方向の上端及び下端に位置するプレートに爪10が突設され、それが各プレートの切欠き11に嵌着して、各プレートどうしが位置決めされる。
【0013】
(本発明の特徴)
本発明の特徴は、コア4に形成された従来型コアでは冷媒を流通させることができなかった部位14に、流通路7からの迂回路となる第2流路7bと分岐口8及び合流口9が配置されている点にある。
即ち、コア4の長手方向の両端位置には、爪10及び切欠き11を取り付けるための位置決め部材13が設けられ、その近傍には異形の部位14がコア4の外周に突出する。
その部位14に第2流路7bが配置される。第2流路7bの両端に分岐口8と合流口9とが配置されている。その部位14の第2流路7bは、流通路7に隣接している。流通路7の第2流路7bに隣接する位置の流路が、第1流路7aとなる。冷媒は、第1流路7aから分岐口8を介して、第2流路7bへ流入する。
【0014】
第2流路7bの上流部に分岐口8を有し、分岐口8を介して冷媒は第1流路7aと第2流路7bとに分岐する。そして、第1流路7aに隣接する第2流路7bの下流端に配置された合流口9を介して二つの流路の冷媒が合流する。
このように、コア4の長手方向の両端の外周に隣接して第2流路7bを設け、且つ、その両端に分岐口8と合流口9とを設けることにより、従来型コアでは冷媒を流通させることができなかった部位14の近傍に冷媒流路を確保することができ、その分だけ流路形成範囲を拡大することができ、熱交換を促進できる。
【0015】
なお、
図1(A)の例では、分岐口8及び合流口9が正方形に開口しているが、これに代えて、
図3の第2実施形態に示す如く、分岐口8をL字状に形成してもよい。
即ち、
図3では、分岐口8が平面L字状に形成され、第1流路7aを流通する冷媒15が分岐口8において、第1流路7aと第2流路7bにL字状に分流する。分岐口8に流入した冷媒は、同図では図示しない、下面側のプレートの第1流路と第2流路に導かれ、
図1(B)の如く、上下に蛇行しながら、平面内では直線状に流通する。そして、その下流側においては図示しない合流口9が同様に配置されている。
【0016】
次に、
図4の第3実施形態においては、従来型コアでは冷媒を流通させることができなかった部位14に第2流路7bと第3流路7cとが第1流路7aに並列し、その上流側に二つの分岐口8が配置されている。そして、第1流路7aから一方の分岐口8に分流すると共に、上下に隣接する下側のパンチングプレートを介して、さらに下流側の分岐口8に分流し、冷媒15が第2流路7bと第3流路7cとに供給される。
この例では、分岐口8のみを記載したが、その下流端においては図示しない合流口9が配置されている。その流通の様子は
図1(A)の合流口9と同様である。またその流通は、
図1(B)と同様である。
【0017】
次に、
図5は本発明の第4実施形態であり、この例では分岐口8が長方形に形成され、その長辺がコアの長手方向に配置されている。そして、第1流路7aに並列して第2流路7b,第3流路7cが存在し、分岐口8において第1流路7aの冷媒15が第2流路7b,第3流路7cにも分配される。そして、その下流側においては図示しない合流口9が
図1(A)と同様に配置されている。
【0018】
次に、
図6は本発明の第5実施形態であり、これが
図2の第1実施形態と異なる点は、ケーシング6及びコア4の形状である。
この例のコア4は、各パンチングプレートにマニホールド部5が形成されている。そして、その積層体を構成するコア4の上下両端に、天板プレート6cと底板プレート6dとが配置されている。各プレート及び天板プレート6cと底板プレート6dは、互いにろう付固定され、それらによりケーシング6が構成されている。そして、この例では天板プレート6cに発熱体17が接合され、それから生じる熱を各流通路7を流通する冷媒15によって冷却するものである。また、この例では、コア4の長手方向の一端のみに従来型コアでは冷媒を流通させることができなかった部位14が形成され、そこに隣接して第2流路7bと分岐口8及び合流口9とが配置されている。他の構造は、
図2のものと同一である。
分岐口8及び合流口9の形状は、第2実施形態~第4実施形態のものを用いても良い。
【符号の説明】
【0019】
1a 開口部
1b 非開口
2 パンチングプレート
3 パンチングプレート
4 コア
5 マニホールド部
6 ケーシング
6a ケーシング本体
6b 蓋
6c 天板プレート
6d 底板プレート
【0020】
7 流通路
7a 第1流路
7b 第2流路
7c 第3流路
8 分岐口
9 合流口
10 爪
11 切欠き
13 位置決め部材
14 部位
15 冷媒
16 パイプ
17 発熱体(素子)