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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】表面反応炭酸カルシウムの処理
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/18 20060101AFI20230119BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20230119BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20230119BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230119BHJP
   C09C 1/02 20060101ALI20230119BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20230119BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20230119BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230119BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C01F11/18 J
B01D53/14 311
B01J20/04 C
B01J20/28
C09C1/02
C09C3/06
C09C3/08
C09D7/62
C09D201/00
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2018536496
(86)(22)【出願日】2017-01-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2017050184
(87)【国際公開番号】W WO2017121675
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2019-12-13
(31)【優先権主張番号】16151383.3
(32)【優先日】2016-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/311,043
(32)【優先日】2016-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンチ,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ウェルカー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック エー.シー.
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-235015(JP,A)
【文献】特表2001-524566(JP,A)
【文献】特表2012-524734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/18
C09D 7/62
C09D 201/00
C09C 1/02
C09C 3/08
C09C 3/06
B01D 53/14
B01J 20/04
B01J 20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面反応炭酸カルシウムの処理方法であって、
a)表面反応炭酸カルシウムを用意するステップであって、前記表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、前記二酸化炭素が前記Hイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、ステップ;
b)アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理剤を用意するステップ、および
c)ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤とを、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの窒素及びISO9277によるBET方法を用いて測定した総表面積を基準にして、添加された処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、1つまたは複数のステップにより10~200℃の温度で混合するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記天然の粉砕炭酸カルシウムが、大理石、白亜、ドロマイト、石灰岩、およびこれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択され、および前記沈降炭酸カルシウムが、霞石、バテライトまたは方解石型鉱物結晶構造物を有するまたはこれらの混合物の沈降炭酸カルシウムを含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面反応炭酸カルシウムが、
i)窒素およびISO9277によるBET法を用いて測定して、15m/g~200m/gの比表面積、および/または
ii)1~75μmの体積中央粒径d50、および/または
iii)水銀ポロシメトリー測定により測定して、0.004~1.6μmの範囲の粒子内細孔径、および/または
iv)水銀ポロシメトリー測定値から計算して、0.1~2.3cm/gの範囲内の粒子内圧入比細孔容積、
を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理剤が、
a)25℃および大気圧下で液体であり、または
b)融解型であり、および/または
c)溶媒中に溶解され、または
d)懸濁液中に分散される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、水、メタノール、エタノール、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、およびこれらの混合物を含む群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)で添加されるステップb)の処理剤の合計重量が、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの窒素及びISO9277によるBET方法を用いて測定した総表面積を基準にして、0.1~40mg/mである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)の処理剤が、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの合計乾燥重量を基準にして、0.01~80.0重量%の量でステップc)で添加される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、エコサジエン酸(ecosadienoic acid)、ドコサジエン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、鰯酸、テトラコサノールペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、これらの酸の塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記元素状鉄が、5nm~10μmの範囲の体積粒径中央値d50を有する微粒子粉末鉄である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムを少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤で処理するさらなるステップd)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記疎水化剤が、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸、1種または複数のリン酸モノエステルおよび1種または複数のリン酸ジエステルのリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサン、不活性のシリコーンオイル、脂肪族脂肪アルデヒドおよびこれらの混合物、からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、ステップc)またはd)で得られた表面反応炭酸カルシウムを封入するさらなるステップe)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、ステップc)またはd)で得られた表面反応炭酸カルシウムをワックスを用いて封入するさらなるステップe)を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
処理された表面反応炭酸カルシウムであって、
a)表面反応炭酸カルシウムであって、前記表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、前記二酸化炭素が、前記Hイオンドナー処理由来のインサイツ二酸化炭素および/または外部源の二酸化炭素であり、表面反応炭酸カルシウム、および
b)前記表面反応炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に処理層として位置する、および/または前記表面反応炭酸カルシウムの細孔の少なくとも一部中に細孔フィラーとして充填される処理剤を含み、
i)前記処理層または前記細孔フィラーが、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物、および/またはこれらの反応生成物からなる群より選択される処理剤からなり、
ii)前記表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の前記処理剤の合計重量が、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの窒素及びISO9277によるBET方法を用いて測定した総表面積を基準にして、0.01~40mg/mである、処理された表面反応炭酸カルシウム。
【請求項15】
前記表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の前記処理剤の合計重量が、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの窒素及びISO9277によるBET方法を用いて測定した総表面積を基準にして、0.1~40mg/mである、請求項14に記載の表面反応炭酸カルシウム。
【請求項16】
前記天然の粉砕炭酸カルシウムが、大理石、白亜、ドロマイト、石灰岩、およびこれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択され、および前記沈降炭酸カルシウムが、霞石、バテライトまたは方解石型鉱物結晶構造物を有するまたはこれらの混合物の沈降炭酸カルシウムを含む群から選択される、請求項14又は15に記載の表面反応炭酸カルシウム。
【請求項17】
前記表面反応炭酸カルシウムが、
i)窒素およびISO9277によるBET法を用いて測定して、15m/g~200m/gの比表面積、および/または
ii)1~75μmの体積中央粒径d50、および/または
iii)水銀ポロシメトリー測定により測定して、0.004~1.6μmの範囲の粒子内細孔径、および/または
iv)水銀ポロシメトリー測定値から計算して、0.1~2.3cm/gの範囲内の粒子内圧入比細孔容積、
を有する、請求項14~16のいずれか1項に記載の表面反応炭酸カルシウム。
【請求項18】
0.05~100mg/gの範囲の吸湿感受性を有する、請求項14~17のいずれか1項に記載の処理された表面反応炭酸カルシウム。
【請求項19】
0.1~60mg/gの範囲の吸湿感受性を有する、請求項18に記載の処理された表面反応炭酸カルシウム。
【請求項20】
少なくとも1種の追加の薬剤としての、前記処理された表面反応炭酸カルシウムを少なくとも部分的に被覆し、または前記処理された表面反応炭酸カルシウムの細孔の少なくとも一部に充填される疎水化剤を含む、請求項14~19のいずれか1項に記載の処理された表面反応炭酸カルシウム。
【請求項21】
前記疎水化剤は、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸および/またはその塩反応生成物、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸および/またはその塩反応生成物、1種または複数のリン酸モノエステルおよび/またはその反応生成物および1種または複数のリン酸ジエステルおよび/またはその塩反応生成物のリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサンおよびその塩反応生成物、不活性のシリコーンオイル、脂肪族脂肪アルデヒドおよび/またはその塩反応生成物およびこれらの混合物、からなる群より選択される、請求項20に記載の処理された表面反応炭酸カルシウム。
【請求項22】
前記表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の前記少なくとも1種の疎水化剤の合計重量が、0.001~10mg/mである、請求項20または21のいずれか1項に記載の処理された表面反応炭酸カルシウム。
【請求項23】
請求項14~22のいずれか1項で定義の処理された表面反応炭酸カルシウムの酸素捕捉剤としての使用。
【請求項24】
ポリマー組成物、コーティング、食品用途、フィルターおよび/または化粧品用途における、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記コーティングが、ペーパーまたはポリマーコーティングである、請求項24に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面反応炭酸カルシウムの処理方法であって、処理剤が、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩および鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理方法、処理された表面反応炭酸カルシウムならびに処理された表面反応炭酸カルシウムの酸素捕捉剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
食糧品の保存を妨げがちである卵菌、細菌および昆虫などの高等生物の生成および/または増殖を減らすまたは防止するための、凍結貯蔵、低温貯蔵、真空梱包および不活性雰囲気下梱包などの極めて多くの方法が知られている。しかし、大部分の卵菌、細菌および高等生物は、発生と増殖のために酸素を必要とする。したがって、食品用途において、食糧品がかびだらけになり、腐敗するのを防ぐ1つの適切な方法は、周辺環境、例えば、ガス状周辺環境から酸素を吸収または「捕獲」する酸素捕捉剤または酸素吸収剤を使用することである。例えば、このような酸素捕捉剤は、野菜、果実、肉および魚、チーズまたはパン、ペーストリー、ポテトチップ、ピーナッツまたはできあいの料理のような加工食品などの食糧品がかびだらけになり腐敗するのを防ぐために、食品用途、特に食品包装用途で使用される。
【0003】
別の用途は、化粧品の分野である。クリーム、ゲルまたはセラム、さらには、化粧品、粉おしろいなどもヒトの身体または皮膚上に使用される。その中に組み込まれる多くの活性物質が酸化により破壊されるために、これらの化粧品は、比較的低い量の酸素が活性物質と接触するようにパッケージ化されて販売されるのが望ましい。酸素捕捉剤または酸素吸収剤が化粧品または化粧品梱包に使用され、周辺環境、例えば、ガス状周辺環境から酸素を吸収または「捕獲」する場合には、これが可能となる。
【0004】
別の用途は、パッケージ化金属製品の保護である。金属製品の1つの問題は、金属の電気化学的酸化に繋がる金属と酸素などの酸化剤との反応であり、発錆としても知られる腐食である。したがって、金属製品の酸化が防止されるように、周辺環境から酸素を吸収または「捕獲」する酸素捕捉剤または酸素吸収剤と一緒に金属製品を梱包することが望ましい。
【0005】
酸素捕捉または吸着特性を有する種々の材料が当業者には既知である。例えば、米国特許第4,524,015号は、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種のアスコルビン酸化合物、アルカリ金属炭酸塩、鉄化合物、カーボンブラックおよび水を含む顆粒状酸素吸収剤に言及している。顆粒状酸素吸収剤は、該化合物を混合し、例えば、造粒機中でそれらを配合することにより製造される。
【0006】
欧州特許出願公開第1916276号は、揮発性腐食防止剤、乾燥剤および酸素捕捉剤を含む金属保護成分を含む包装材料に言及している。酸素捕捉剤は、トリアゾール、例えば、ベンゾトリアゾールを含んでよい。
【0007】
米国特許出願公開第2014/0288224号は、非繊維強化熱可塑性成形組成物に言及している。この組成物は、元素状金属、例えば、鉄、を酸素捕捉剤として含む。
【0008】
欧州特許出願公開第0320085号は、煮沸水用酸素捕捉剤および使用方法に言及している。酸素捕捉剤には、ジエチルアミノエタノールで中和されたアスコルビン酸が含まれる。
【0009】
しかし、酸素捕捉剤として使用される材料は、安価、無毒性で容易に入手可能な材料であるだけでなく、高度に効果的な酸素(O)捕捉をもたらす必要もある。
【発明の概要】
【0010】
したがって、記載した前述の技術的問題に対処し、特に酸素捕捉剤として使用できる材料の提供を可能とする方法、および特に酸素捕捉剤として既に使用されている先行技術の材料に比べて改善された特性をもたらす材料を提供する必要性が未だ存在する。
【0011】
したがって、本発明の1つの目的は酸素捕捉剤を調製する方法を提供することである。本発明の別の目的は、高度に効果的な酸素(O)捕捉をもたらす材料を提供することである。特に、既知の酸素捕捉材料に比べて改善された酸素(O)捕捉をもたらす材料を提供することは本発明の1つの目的である。また、非毒性で、容易に取り扱うことができる酸素捕捉剤を提供することも本発明の1つの目的である。長く持続する酸素(O)捕捉効果を提供するおよび/または捕捉剤の周囲環境から捕捉剤単位添加量当たり多量の酸素の除去を可能とする酸素捕捉材料を提供することも本発明の1つの目的である。この酸素捕捉材料が極めて多様な用途に使用できることは、本発明のさらなる目的である。
【0012】
前述およびその他の目的は、本明細書の独立請求項で定められる主題により解決される。
【0013】
本出願の一態様では、表面反応炭酸カルシウムの処理方法が提供される。該方法は、
a)表面反応炭酸カルシウムを用意するステップであって、表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、ステップ;
b)アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理剤を用意するステップ、および
c)ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤とを、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、添加された処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、1つまたは複数のステップにより10~200℃の温度で混合するステップ、を含む。
【0014】
意外にも、発明者らは、前述の方法により、高度に効果的な酸素(O)捕捉、特に、既知の酸素捕捉材料に比べて改善された酸素(O)捕捉をもたらす、処理された表面反応炭酸カルシウムを調製することが可能であることを見出した。さらに、本発明による方法により、長く持続する酸素(O)捕捉効果をもたらし、および/または周辺環境から多量の酸素の除去を可能とする、処理された表面反応炭酸カルシウムが提供される。さらに、本発明による方法により、非毒性で、容易に取り扱うことができ、極めて多様な用途に使用できる、処理された表面反応炭酸カルシウムが提供される。
【0015】
本発明の別の態様では、処理された表面反応炭酸カルシウムが提供される。処理された表面反応炭酸カルシウムは、
a)表面反応炭酸カルシウムであって、該表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であるか、または本明細書で定義の通りであり、該二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、表面反応炭酸カルシウム、および
b)表面反応炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に処理層として位置する、および/または表面反応炭酸カルシウムの細孔の少なくとも一部中に細孔フィラーとして充填される処理剤を含み、i)処理層または細孔フィラーが、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物、または本明細書で定義のもの、および/またはこれらの反応生成物からなる群より選択される処理剤からなり、ii)表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の処理剤の合計重量が、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、0.01~40mg/mである。
【0016】
処理された表面反応炭酸カルシウムの一実施形態では、表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の処理剤の合計重量は、0.01~40mg/m、好ましくは0.1~20mg/m、最も好ましくは0.2~15mg/mである。
【0017】
処理された表面反応炭酸カルシウムの別の実施形態では、処理された表面反応炭酸カルシウムは、0.05~100mg/g、好ましくは、0.1~60mg/g、より好ましくは、0.2~40mg/gの範囲の吸湿感受性を有する。
【0018】
処理された表面反応炭酸カルシウムの別の実施形態では、処理された表面反応炭酸カルシウムは、少なくとも1種の追加の薬剤としての、処理された表面反応炭酸カルシウムを少なくとも部分的に被覆し、または処理された表面反応炭酸カルシウムの細孔の少なくとも一部に充填される疎水化剤を含み、好ましくは、疎水化剤は、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸および/またはその塩反応生成物、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸および/またはその塩反応生成物、1種または複数のリン酸モノエステルおよび/またはその反応生成物および1種または複数のリン酸ジエステルおよび/またはその塩反応生成物のリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサンおよびその塩反応生成物、不活性のシリコーンオイル、好ましくはポリジメチルシロキサン、脂肪族脂肪アルデヒドおよび/またはその塩反応生成物およびこれらの混合物、からなる群より選択される。
【0019】
処理された表面反応炭酸カルシウムの一実施形態では、処理された表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の少なくとも1種の疎水化剤の合計重量は、0.001~10mg/mである。
【0020】
本発明のさらなる態様では、処理された表面反応炭酸カルシウムの本明細書で定義される酸素捕捉剤としての使用が提供される。処理された表面反応炭酸カルシウムは、好ましくは、ポリマー組成物、コーティング、好ましくはペーパーまたはポリマーコーティング、より好ましくはペーパーコーティング、食品用途、フィルターおよび/または化粧品用途で、好ましくは食品用途、より好ましくは食品包装用途で使用される。
【0021】
本方法の有利な実施形態は、対応する従属請求項で定められる。
【0022】
一実施形態では、天然の粉砕炭酸カルシウムは、大理石、白亜、ドロマイト、石灰岩、およびこれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択され、沈降炭酸カルシウムは、霞石、バテライトまたは方解石型鉱物結晶構造物を有するまたはこれらの混合物の沈降炭酸カルシウムを含む群から選択される。
【0023】
本発明の一実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、i)窒素およびISO9277によるBET法を用いて測定して、15m/g~200m/g、好ましくは27m/g~180m/g、より好ましくは30m/g~160m/g、最も好ましくは30m/g~150m/gの比表面積、および/またはii)1~75μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは3~40μm、さらにより好ましくは4~30μm、最も好ましくは5~15μmの体積中央粒径d50、および/またはiii)水銀ポロシメトリー測定により測定して、0.004~1.6μmの範囲、好ましくは0.005~1.3μmの範囲、特に好ましくは0.006~1.15μm、最も好ましくは0.007~1.0μmの粒子内細孔径、および/またはiv)水銀ポロシメトリー測定値から計算して、0.1~2.3cm/g、好ましくは0.2~2.0cm/g、より好ましくは0.4~1.8cm/g、最も好ましくは0.6~1.6cm/g、の範囲内の粒子内圧入比細孔容積(intra-particle intruded specific pore volume)を有する。
【0024】
本発明の別の実施形態では、処理剤は、a)25℃、大気圧下で液体であり、またはb)融解型であり、および/またはc)溶媒中に溶解され、好ましくは、溶媒は、水、メタノール、エタノール、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、およびこれらの混合物を含む群から選択され、好ましくは水であり、またはd)懸濁液中に分散される。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態では、ステップc)で添加されるステップb)の処理剤の合計重量は、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、0.1~40mg/m、好ましくは0.5~20mg/m、最も好ましくは0.7~15mg/mである。
【0026】
本発明の一実施形態では、ステップb)の処理剤は、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの合計乾燥重量を基準にして、0.01~80.0重量%、好ましくは0.1~70.0重量%、より好ましくは0.5~60.0重量%、最も好ましくは1.0~40.0重量%の量でステップc)で添加される。
【0027】
本発明の別の実施形態では、不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、エコサジエン酸(ecosadienoic acid)、ドコサジエン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、鰯酸、テトラコサノールペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、これらの酸の塩、およびこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、不飽和脂肪酸はオレイン酸またはリノール酸である。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態では、元素状鉄は、5nm~10μm、好ましくは10nm~2μm、より好ましくは30nm~500nmの範囲の体積粒径中央値d50を有する微粒子粉末鉄である。
【0029】
本発明の一実施形態では、方法は、ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムを少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤で処理するさらなるステップd)を含み、好ましくは、該疎水化剤は、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸、1種または複数のリン酸モノエステルおよび1種または複数のリン酸ジエステルのリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサン、不活性のシリコーンオイル、好ましくはポリジメチルシロキサン、脂肪族脂肪アルデヒドおよびこれらの混合物、からなる群より選択される。
【0030】
本発明の別の実施形態では、方法は、ステップc)またはd)で得られた表面反応炭酸カルシウムを、好ましくはワックスを用いて、より好ましくはパラフィンワックスを用いて、封入するさらなるステップe)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明においては、下記の用語は、下記の意味を有すると理解されたい。
本発明による「表面反応炭酸カルシウム」は、天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素はHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される。Hイオンドナーは、本発明においては、ブレンステッド酸および/または酸性塩である。
【0033】
本発明における意味では、用語の「処理された」表面反応炭酸カルシウムは、表面反応炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上に処理層を得るおよび/または細孔の少なくとも一部中に処理剤を充填するなどのために処理剤と接触させた表面反応炭酸カルシウムを意味する。
【0034】
用語の「処理剤」は、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物を意味する。
【0035】
本発明の主旨における「処理層」は、少なくとも1種の表面反応炭酸塩の表面上の処理剤の層、好ましくは単分子膜を意味する。「処理層」は、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物、および/またはこれらの反応生成物からなる群から選択される処理剤から基本的になる。
【0036】
本発明の主旨における「細孔フィラー」は、少なくとも1種の表面反応炭酸塩の細孔の少なくとも一部中への処理剤充填物を意味する。「細孔フィラー」は、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物、および/またはこれらの反応生成物からなる群から選択される処理剤から基本的になる。
【0037】
本発明における意味では、用語の「基本的に」は、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物および/またはこれらの反応生成物からなる群より選択される処理剤とは、処理層および/または細孔フィラーの合計量を基準にして、5重量%未満、好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の量の異なる化合物を含む処理層および/または細孔フィラーを意味する。
【0038】
本発明による用語の「塩基」は、ブレンステッド・ローリー理論により定義される塩基を意味する。したがって、本発明における意味では、塩基は水素イオン(H)(あるいはプロトンとして知られる)を受け取ることができる物質である。
【0039】
本発明における意味では、用語の「表面積」は、ISO9277:2010によるBET法により窒素を用いて測定される表面反応炭酸カルシウム粒子のBET表面積を意味する。
【0040】
用語の「乾燥」または「乾燥した」材料は、表面反応炭酸カルシウムの合計重量を基準にして、0.001~20重量%の水を有する材料であると理解される。%水(「含水量」に等しい)は、重量測定法で測定される。本発明の意味における「乾燥」は、表面反応炭酸カルシウムの含水量が、表面反応炭酸カルシウムの合計重量を基準にして、0.001~20重量%の範囲に入るまで、加熱が実施されることを意味する。
【0041】
本発明による用語の「固体」は、298.15K(25℃)の温度および正確に100000Pa(1バール、14.5psi、0.98692気圧)の絶対圧力の、標準的環境温度および圧力(SATP)下で固体である材料を意味する。固体は、粉末、錠剤、顆粒、フレーク、などの形態であってよい。
【0042】
本発明による用語の「液体」は、298.15K(25℃)の温度および正確に100000Pa(1バール、14.5psi、0.98692気圧)の絶対圧力の、標準的環境温度および圧力(SATP)下で液体である材料を意味する。液体は、未希釈の液体であっても、または溶媒、好ましくは水をさらに含む溶液であってもよいことに留意されたい。液体は、不溶性の固体を含んでもよく、この場合、懸濁液または分散液を形成し得る。
【0043】
本発明における意味では、用語の「融解」型は、材料が完全に液体である、換言すれば、完全に融解している状態として定義される。融解の現象はエネルギーの印加時に一定温度で起こるが、物質は、動的走査熱量測定、DSC(DIN51005:1983-11)により得られる、温度対エネルギー入力の曲線プロット上で観察される、温度が上昇を始める融解後の一瞬の時点で融解していると見なされる。
【0044】
本発明による用語の「大気圧」は、標準的環境温度圧力(SATP)を意味し、正確に100000Pa(1バール、14.5psi、0.98692気圧)の絶対圧力を意味する。用語の「減圧」は、「大気圧」未満の圧力を意味する。
【0045】
本発明における意味では、「懸濁液」または「分散液」は、不溶性固体および溶媒または液体、好ましくは水、場合により、追加の添加物を含み、通常大量の固体を含み、したがって、それが形成される元の液体より高い粘度であり、より高い密度であり得る。
【0046】
本出願において、「不溶性物質」材料は、100gの上記材料が100gの脱イオン水と混合され、0.2μmの細孔径を有するフィルターにより20℃で濾過し、濾液を回収し、大気圧下、上記100gの濾液を95~100℃で蒸発後に1.0g以下の回収固体材料が得られる材料として定義される。「水溶性」材料は、100gの上記材料が100gの脱イオン水と混合され、0.2μmの細孔径を有するフィルターにより20℃で濾過され、濾液が回収され、大気圧下、上記100gの濾液の95~100℃での蒸発後、1.0gを超える回収固体材料が得られる材料として定義される。
【0047】
本発明による「酸素捕捉剤」または「酸素吸収剤」は、周辺雰囲気から酸素を吸収または「捕獲」できる。
【0048】
本発明による用語の「吸収材」は、「捕捉する」能力および捕捉した材料を、どのような材料濃度勾配機構にも関係なく、吸収飽和にのみ依存して、単離状態で経時的に維持する能力を有するものを意味する。本発明においては、用語の「吸収」は、物理化学的吸収および吸着機構を含む。
【0049】
用語の「含む(comprising)」が本発明の記載および特許請求の範囲中で使われる場合、それは、その他の機能的重要度の大きなまたは小さい非指定要素を排除しない。本発明においては、用語の「からなる(consisting of)」は、用語「含む(comprising of)」の好ましい実施形態と見なされる。以下であるグループが少なくとも一定数の実施形態を含むことが確定される場合、これはまた、これらの実施形態のみからなるのが好ましいグループを開示すると理解されるべきである。
【0050】
用語の「含む(including)」または「有する(having)」が使用されるときはいつでも、これらの用語は、上記で定義の「含む(comprising)」と等価であることが意図されている。
【0051】
不定冠詞または定冠詞が使われる場合、例えば、「a」「an」または「the」などの単数名詞への言及は、特に記載のない限り、複数のその名詞を含む。
【0052】
「得ることが可能な(obtainable)」または「確定可能な(definable)」および「得られた(obtained)」または「確定された(defined)」などの用語は、同義に使用される。例えば、これは、文脈上別段の明確な記載がない限り、たとえ、このような限られた理解が常に用語の「得られた(obtained)」または「確定された(defined)」により好ましい実施形態として含まれる場合であっても、用語の「得られた(obtained)」は、例えば、ある実施形態を、例えば、用語「得られた(obtained)」の後の一連のステップにより得る必要があることを示すことを意図しないことを意味する。
【0053】
上記で記載のように、本発明の表面反応炭酸カルシウムの処理方法は、少なくともa)、b)、およびc)のプロセスステップを含む。以下では、本発明のさらなる詳細、特に本発明の表面反応炭酸カルシウムの処理方法の前述のステップについて言及される。
【0054】
ステップa):表面反応炭酸カルシウムの用意の特徴付け
本発明のプロセスのステップa)では、表面反応炭酸カルシウムが用意される。
【0055】
表面反応炭酸カルシウムは、1つまたは複数の表面反応炭酸カルシウムとすることができることは理解されよう。
【0056】
本発明の一実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、1種類の表面反応炭酸カルシウムを含む、好ましくはそれからなる。あるいは、表面反応炭酸カルシウムは、2種類以上の表面反応炭酸カルシウムを含む、好ましくはそれらからなる。例えば、表面反応炭酸カルシウムは、2種類または3種類の表面反応炭酸カルシウムを含む、好ましくはそれらからなる。
【0057】
好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、1種類の表面反応炭酸カルシウムを含む、より好ましくはそれからなる。
【0058】
表面反応炭酸カルシウムは、天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素はHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される。
【0059】
イオンドナーは、本発明においては、ブレンステッド酸および/または酸性塩である。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、(a)天然のまたは沈降炭酸カルシウムの懸濁液を用意するステップ、(b)20℃で0以下のpK値を有するまたは20℃で0~2.5のpK値を有する少なくとも1種の酸をステップ(a)の懸濁液に添加するステップ、および(c)ステップ(a)の懸濁液を、ステップ(b)の前、その間、またはその後に二酸化炭素で処理するステップを含むプロセスにより得られる。別の実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、(A)天然のまたは沈降炭酸カルシウムを用意するステップ、(B)少なくとも1種の水溶性酸を用意するステップ、(C)ガス状COを用意するステップ、(D)上記ステップ(A)の天然または沈降炭酸カルシウムを、ステップ(B)の少なくとも1種の酸およびステップ(C)のCOと接触させるステップを含むプロセスにより得られ、このプロセスは、(i)最初の利用可能な水素のイオン化に関連して、ステップB)の少なくとも1種の酸は20℃で2.5超で、7以下のpKを有し、対応する陰イオンは、この最初に利用可能な水素の減少時に形成され、水溶性カルシウム塩を形成可能であり、(ii)少なくとも1種の酸の天然のまたは沈降炭酸カルシウムとの接触後に、最初に利用可能な水素のイオン化に関連した少なくとも1種の水溶性塩(これは水素含有塩の場合には、20℃で7超のpKを有する)および非水溶性カルシウム塩を形成可能な塩陰イオンが、追加で供給されることを特徴とする。
【0061】
「天然の粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、好ましくは、大理石、白亜、ドロマイト、石灰岩、およびこれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択される。天然の粉砕炭酸カルシウムは、さらなる天然の成分、例えば、炭酸マグネシウム、アルミノ珪酸塩、などを含んでよい。
【0062】
一般に、天然の粉砕された炭酸カルシウムの粉砕は、乾式または湿式粉砕ステップであってよく、また、いずれの従来の粉砕装置、例えば、粉砕が主に二次物体による衝撃により起こるような条件下で、すなわち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心式衝撃粉砕機、縦型ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、微粉砕機、シュレッダー、デクランパー、ナイフカッター、または当業者に既知のその他のこのような装置の内の1つまたは複数中でも、実施し得る。炭酸カルシウム含有鉱物材料が湿式粉砕炭酸カルシウム含有鉱物材料を含む場合では、粉砕ステップは、自生粉砕が行われるような条件下で、および/または水平型ボールミリングにより、および/または当業者に既知のその他のこのようなプロセスにより、実施し得る。このようにして得られた湿式処理粉砕炭酸カルシウム含有鉱物材料は、よく知られたプロセスにより、洗浄され、例えば、凝集、濾過または強制蒸発により乾燥の前に脱水され得る。その後の乾燥ステップ(必要な場合)は、スプレー乾燥などの単一ステップで、または少なくとも2つのステップで実施し得る。このような鉱物材料が選鉱ステップ(浮遊、漂白または磁気分離ステップなど)にかけて不純物を除去することもまたよく行われる。
【0063】
本発明における意味では、「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、合成した材料であり、通常、水性環境中で二酸化炭素と水酸化カルシウムとの反応後沈殿により、またはカルシウムおよび炭酸塩イオン、例えば、CaClとNaCOの溶液からの沈殿により、得られる。さらなる可能なPCCの製造方法は、石灰ソーダ法、またはPCCがアンモニア生産の副産物であるソルベー法である。沈降炭酸カルシウムは、3つの主要な結晶型:方解石、霰石およびバテライトで存在し、これらの結晶型のそれぞれに多くの異なる多形(晶癖)がある。方解石は三方晶構造であり、偏三角面体(S-PCC)、菱面体(R-PCC)、六角形角柱、卓面体晶族、コロイド状(C-PCC)、立方体、および角柱(P-PCC)などの典型的な晶癖を有する。霰石は、斜方晶系構造であり、双晶六角形角柱結晶、ならびに多様な種類の細長い角柱状、湾曲した刃形、急峻な角錐形、チゼル形状結晶、分枝の木、およびサンゴまたはミミズ状型の典型的な晶癖を有する。バテライトは、六方晶系に属する。得られたPCCスラリーは機械的に脱水し、乾燥できる。
【0064】
本発明の一実施形態では、沈降炭酸カルシウムは、霞石、バテライトまたは方解石鉱物結晶構造物またはこれらの混合物を含む沈降炭酸カルシウムであるのが好ましい。
【0065】
沈降炭酸カルシウムは、二酸化炭素および少なくとも1種のHイオンドナーによる処理の前に、上述の天然の炭酸カルシウムの粉砕で使用したのと同じ手段により、粉砕され得る。
【0066】
本発明の一実施形態では、天然または沈降炭酸カルシウムは、0.05~10.0μm、好ましくは0.2~5.0μm、より好ましくは0.4~3.0μm、最も好ましくは0.6~1.2μm、特に0.7μmの重量中央粒径d50を有する粒子の形態である。本発明のさらなる実施形態では、天然または沈降炭酸カルシウムは、0.15~55μm、好ましくは1~40μm、より好ましくは2~25μm、最も好ましくは3~15μm、特に4μmのトップカット粒径d98を有する粒子の形態である。
【0067】
天然および/または沈降炭酸カルシウムは、乾燥状態でまたは水中に懸濁して使用し得る。好ましくは、対応するスラリーは、スラリーの重量を基準にして、1重量%~90重量%、より好ましくは3重量%~60重量%、さらにより好ましくは5重量%~40重量%、最も好ましくは10重量%~25重量%の範囲内の天然または沈降炭酸カルシウム含量を有する。
【0068】
表面反応炭酸カルシウムの調製に使用される1種または複数のHイオンドナーは、調製条件下でHイオンを生成する、任意の強酸、中強度の酸、または弱酸、またはこれらの混合物であってよい。本発明では、少なくとも1種のHイオンドナーは、調製条件下でHイオンを生成する酸性の塩でもあり得る。
【0069】
一実施形態では、少なくとも1種のHイオンドナーは、20℃で0以下のpKを有する強酸である。
【0070】
別の実施形態では、少なくとも1種のHイオンドナーは、20℃で0~2.5のpKを有する中強度酸である。20℃のpKが0以下の場合は、酸は、硫酸、塩酸、またはこれらの混合物から選択されるのが好ましい。20℃のpKが0~2.5の場合は、Hイオンドナーは、HSO、HPO、シュウ酸、またはこれらの混合物から選択されるのが好ましい。少なくとも1種のHイオンドナーはまた、酸性の塩、例えば、Li、Na、またはKまたはHPO 2-などの対応する陽イオンにより少なくとも部分的に中和された、Li、Na、K、Mg2+またはCa2+などの対応する陽イオンにより少なくとも部分的に中和された、HSO またはHPO 、とすることができる。少なくとも1種のHイオンドナーはまた、1種または複数の酸および1種または複数の酸性塩とすることもできる。
【0071】
さらに別の実施形態では、少なくとも1種のHイオンドナーは、20℃で測定して、最初の利用可能な水素のイオン化に関連する2.5超および7以下のpK値を有し、対応する陰イオンを有する弱酸であり、これは水溶性カルシウム塩を形成できる。その後、少なくとも1種の水溶性塩(水素含有塩の場合は、最初の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定して、7超のpKを有する)、および非水溶性カルシウム塩を形成できる塩陰イオンが追加で供給される。好ましい実施形態では、弱酸は、20℃で2.5超~5のpK値を有し、より好ましくは、弱酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。上記水溶性塩の代表的陽イオンは、カリウム、ナトリウム、リチウムおよびこれらの混合物からなる群より選択される。より好ましい実施形態では、上記陽イオンは、ナトリウムまたはカリウムである。上記水溶性塩の代表的陰イオンは、リン酸イオン、リン酸二水素イオン、リン酸一水素イオン、シュウ酸イオン、ケイ酸イオン、およびこれらの混合物ならびにこれらの水和物からなる群より選択される。より好ましい実施形態では、上記陰イオンは、リン酸イオン、リン酸二水素イオン、リン酸一水素イオン、およびこれらの混合物ならびにこれらの水和物からなる群より選択される。最も好ましい実施形態では、上記陰イオンは、リン酸二水素イオン、リン酸一水素イオン、およびこれらの混合物ならびにこれらの水和物からなる群より選択される。水溶性塩添加は、滴加によりまたは1度に行ってよい。滴加の場合には、この添加は、10分間の時間以内に行われるのが好ましい。上記塩を1度に加えるのがより好ましい。
【0072】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種のHイオンドナーは、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1種のHイオンドナーは、Li、Na、またはKまたはHPO 2-などの対応する陽イオンにより少なくとも部分的に中和された、Li、Na、K、Mg2+またはCa2+およびこれらの混合物などの対応する陽イオンにより少なくとも部分的に中和された、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、HPO からなる群から選択され、より好ましくは、少なくとも1種の酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、またはこれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1種のHイオンドナーはリン酸である。
【0073】
1種または複数のHイオンドナーを、濃縮液として、またはより希釈液として懸濁液に添加できる。好ましくはHイオンドナーの天然または沈降炭酸カルシウムに対するモル比は、0.01~4、より好ましくは0.02~2、さらにより好ましくは0.05~1、最も好ましくは0.1~0.58である。
【0074】
別の方法として、天然または沈降炭酸カルシウムが懸濁される前に、Hイオンドナーを水に添加することも可能である。
【0075】
次のステップでは、天然または沈降炭酸カルシウムが二酸化炭素で処理される。硫酸または塩酸などの強酸が天然または沈降炭酸カルシウムのHイオンドナー処理に使用される場合、二酸化炭素は自動的に形成される。代わりにまたは追加して、二酸化炭素は、外部源から供給できる。
【0076】
イオンドナー処理および二酸化炭素による処理は、同時に実施でき、これは、強酸または中強度酸が使用されるケースである。Hイオンドナー処理を最初に、例えば、20℃で0~2.5の範囲のpKを有する中強度酸を用いて実施し、この場合、二酸化炭素はインサイツで形成され、したがって、二酸化炭素処理は、Hイオンドナー処理と同時に自動的に実施され、続けて、外部源により供給された二酸化炭素による追加の処理が行われる。
【0077】
懸濁液中のガス状二酸化炭素の濃度は、体積換算で、比率(懸濁液の体積):(ガス状COの体積)が1:0.05~1:20、さらにより好ましくは1:0.05~1:5となるのが好ましい。
【0078】
好ましい実施形態では、Hイオンドナー処理ステップおよび/または二酸化炭素処理ステップは、少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返される。一実施形態では、少なくとも1種のHイオンドナーは、少なくとも約5分間、好ましくは少なくとも約10分間、通常、約10~約20分間、より好ましくは約30分間、さらにより好ましくは約45分間、時には、約1時間以上の時間をかけて添加される。
【0079】
イオンドナー処理および二酸化炭素処理の後で、水性懸濁液のpHは、20℃で測定して、6.0超、好ましくは6.5超、より好ましくは7.0超、さらにより好ましくは7.5超の値に自然に達し、それにより、水性懸濁液としての表面改質天然または沈降炭酸カルシウムは、6.0超、好ましくは6.5超、より好ましくは7.0超、さらにより好ましくは7.5超のpHを有する。
【0080】
表面反応天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、国際公開第00/39222A1号、国際公開第2004/083316A1号、国際公開第2005/121257A2号、国際公開第2009/074492A1号、欧州特許出願公開第2264108A1号、欧州特許出願公開第2264109A1号および米国特許出願公開第2004/0020410A1号に開示されている。これらの特許の内容は、参照により、本出願中に組み込まれる。
【0081】
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムが得られる。国際公開第2009/074492A1号の詳細から分かるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムをHイオンと接触させて、陰イオンを水性媒体中に可溶化させ、水性媒体中で非水溶性カルシウム塩を形成可能として、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することにより得られ、上記表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に形成された、不溶性の少なくとも部分的に結晶性の上記陰イオンのカルシウム塩を含む。
【0082】
上記可溶化カルシウムイオンは、Hイオンによる沈降炭酸カルシウム溶解時に自然に生成された可溶化カルシウムイオンに対して、過剰の可溶化カルシウムイオンに相当し、上記Hイオンは、陰イオンに対する対イオンの形でのみ、すなわち、酸性または非カルシウム酸性塩の形の陰イオンの添加を介して、さらなるカルシウムイオンまたはカルシウムイオン生成源が全く存在しない状況下で、供給される。
【0083】
上記過剰可溶化カルシウムイオンは、好ましくは、可溶性の中性または酸性カルシウム塩の添加により、または可溶性の中性のまたは酸性カルシウム塩をインサイツ生成する、酸性または中性のまたは酸性非カルシウム塩の添加により、供給される。
【0084】
上記Hイオンは、酸または上記陰イオンの酸性塩の添加、または上記過剰可溶化カルシウムイオンの全部または一部を同時に供給する役割をする酸または酸性塩の添加により供給され得る。
【0085】
表面反応天然または沈降炭酸カルシウムの調製のさらに好ましい実施形態では、天然または沈降炭酸カルシウムを、珪酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムまたはカリウムなどの希土類アルカリアルミン酸塩、酸化マグネシウム、またはこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の存在下で、1種または複数のHイオンドナーおよび/または二酸化炭素と反応させる。好ましくは少なくとも1種のケイ酸塩がケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、または希土類アルカリ金属珪酸塩から選択される。これらの成分を、1種または複数のHイオンドナーおよび/または二酸化炭素を添加する前に、天然または沈降炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加できる。
【0086】
あるいは、天然または沈降炭酸カルシウムと1種または複数のHイオンドナーおよび二酸化炭素の反応が既に開始されている間に、珪酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/または希土類アルカリアルミン酸塩および/または酸化マグネシウム成分を、天然または沈降炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加できる。少なくとも1種の珪酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/または希土類アルカリアルミン酸塩成分の存在下での表面改質天然または沈降炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、国際公開第2004/083316A1号に開示されている、この特許の内容は、ここでの参照により、本出願中に組み込まれる。
【0087】
表面反応炭酸カルシウムは、浮遊状態で、場合により、分散剤によりさらに安定化されて、保持できる。当業者に既知の従来の分散剤を使用できる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸および/またはカルボキシメチルセルロースからなる。
【0088】
あるいは、上記の水性懸濁液を乾燥させて、それにより、固体(すなわち、乾燥状態または液体形態ではないわずかな水を含む)の表面反応天然または沈降炭酸カルシウムを顆粒または粉末の形態で得ることができる。
【0089】
表面反応炭酸カルシウムは、異なる粒子形状、例えば、バラ、ゴルフボールおよび/または脳の形状を有してもよい。
【0090】
好ましい実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、窒素およびBET法を用いて測定して、15m/g~200m/g、好ましくは27m/g~180m/g、より好ましくは30m/g~160m/g、さらにより好ましくは30m/g~150m/g、最も好ましくは30m/g~120m/gの比表面積を有する。例えば、表面反応炭酸カルシウムは、窒素およびBET法を用いて測定して、30m/g~100m/gの比表面積を有する。本発明における意味では、BET比表面積は、粒子の表面積を、その粒子の質量で除算したものとして定義される。本明細書で使用される場合、比表面積は、BET等温線(ISO9277:2010)を用いて吸着により測定され、m/gで表される。
【0091】
表面反応炭酸カルシウム粒子は、1~75μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは3~40μm、さらにより好ましくは4~30μm、最も好ましくは5~15μmの体積中央粒径d50(vol)を有するのがさらに好ましい。
【0092】
表面反応炭酸カルシウム粒子は、さらに好ましくは、2~150μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは6~80μm、さらにより好ましくは8~60μm、最も好ましくは10~30μmの粒径d98(vol)を有し得る。
【0093】
値dは、x%の粒子がd未満の直径を有する場合の直径を表す。これは、d98値は、全粒子の98%がその粒径より小さい場合のその粒径であることを意味する。d98値は、「トップカット」とも表される。d値は、容積または重量パーセントで示し得る。d50値(wt)値は、重量中央粒径であり、すなわち、全粒子の50重量%がこの粒径より小さく、d50値(vol)値は、体積中央粒径であり、すなわち、全粒子の50体積%がこの粒径より小さい。
【0094】
体積中央粒径d50をMalvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを使って評価した。Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを使って測定したd50またはd98値は、それぞれ50体積%または98体積%の粒子が、この値より小さい直径を有するような直径値を示す。測定により得られた生データを、粒子屈折率1.57および吸収率0.005を用いて、ミー理論を使って解析する。
【0095】
重量中央粒径は、沈降法により測定され、これは、重力場における沈降挙動の解析である。測定は、Sedigraph(商標)5100または5120(Micromeritics Instrument Corporation)を用いて行った。方法および測定器は、当業者に既知であり、フィラーおよび顔料の粒径の測定によく用いられる。測定は、0.1重量%のNa水溶液中で実施する。試料を高速攪拌装置を用いて分散し、超音波処理した。
【0096】
プロセスおよび測定器は、当業者に既知であり、フィラーおよび顔料の粒径の測定によく用いられる。
【0097】
比細孔容積は、0.004μm(約1nm)ラプラススロート直径に等価な最大水銀圧力414MPa(60000psi)を備えたMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメーターを用いて、水銀圧入型ポロシメーター測定により測定する。それぞれの圧力ステップで用いた平衡時間は20秒である。サンプル材料を分析用の5cmチャンバーの粉末針入度計中に密封した。水銀圧縮、針入度計膨張、およびサンプル材料圧縮に対し、データは、ソフトウェアPore-Compを用いて補正される(Gane,P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews,G.P.and Ridgway,C.J.,“Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations”,Industrial and Engineering Chemistry Research,35(5),1996,p1753-1764.)。
【0098】
累積圧入データで認められる合計細孔容積は、214μmから約1~4μmまでの圧入データを含む2つの領域に分離でき、試料の何らかの凝集塊構造間の粗いパッキングが強く寄与していることを示している。これらの直径未満には、粒子それ自体の密な粒子間パッキングが存在する。それらも粒子内細孔を有する場合には、この領域は、二峰性として現れ、二峰の分布モードの転換点より小さい細孔、すなわち、二峰の変曲点より小さい細孔中への水銀が圧入された比細孔容積を求めることにより、比粒子内細孔容積が決定される。これらの3つの領域の合計が、粉末の合計全細孔容積を与えるが、元の試料の圧縮/分布の粗い気孔端の粉末の定着に強く依存する。
【0099】
累積圧入曲線の一次導関数をとることにより、必然的に気孔遮蔽を含む等価ラプラス径に基づく孔径分布が明らかになる。微分曲線は、粗い凝集塊細孔構造領域、粒子間細孔領域および存在する場合、粒子内細孔領域を明確に示す。粒子内細孔径範囲を知ることにより、合計細孔容積から残りの粒子間および凝集塊内細孔容積を差し引いて、目的の内部細孔の細孔容積のみを単位質量当たりの細孔容積(比細孔容積)として得ることができる。無論、この引き算の同じ原理を所望のその他の細孔径領域のいずれかを分離するのに適用できる。
【0100】
好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、水銀ポロシメトリー測定値から計算して、0.1~2.3cm/g、より好ましくは0.2~2.0cm/g、特に好ましくは0.4~1.8cm/g、最も好ましくは0.6~1.6cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積を有する。
【0101】
表面反応炭酸カルシウムの粒子内細孔径は、水銀ポロシメトリー測定により測定して、好ましくは、0.004~1.6μmの範囲、より好ましくは0.005~1.3μmの範囲、特に好ましくは0.006~1.15μm、最も好ましくは0.007~1.0μm、例えば、0.01~0.9μmである。
【0102】
表面反応炭酸カルシウムは、水性懸濁液の形態または乾燥形態で用意できることは理解されよう。
【0103】
表面反応炭酸カルシウムが水性懸濁液の形態で用意される場合、水性懸濁液は、水性懸濁液の合計重量を基準にして、5~80重量%の範囲の固形分含有量を有するのが好ましい。好ましい実施形態では、水性懸濁液の固形分含有量は、水性懸濁液の合計重量を基準にして、10~70重量%の範囲、より好ましくは15~60重量の範囲%、最も好ましくは15~40重量%の範囲である。
【0104】
用語の「水性」懸濁液は、液相が水を含む、好ましくは、水からなる系を意味する。しかし、上記用語は、水性懸濁液の液相が、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフランおよびこれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1種の少量の水混和性有機溶媒を含むことを排除しない。水性懸濁液が少なくとも1種の水混和性有機溶媒を含む場合、水性懸濁液の液相は、少なくとも1種の水混和性有機溶媒を、水性懸濁液の液相の合計重量を基準にして、0.1~40.0重量%、好ましくは0.1~30.0重量%、より好ましくは0.1~20.0重量%、最も好ましくは0.1~10.0重量%の量で含む。例えば、水性懸濁液の液相は、水からなる。
【0105】
好ましい実施形態では、水性懸濁液は、水、および表面反応炭酸カルシウムからなる。
【0106】
あるいは、水性表面反応炭酸カルシウム懸濁液は追加の添加物を含む。
【0107】
追加でまたは代わりに、表面反応炭酸カルシウム懸濁液は、分散剤、例えば、ポリアクリレートを含む。
【0108】
好ましくは、ステップa)で用意された表面反応炭酸カルシウムは、乾燥した表面反応炭酸カルシウムである。この実施形態は、この方法が溶媒を除去するコストのかかるステップを行うことなく実施できるために、有利である。
【0109】
例えば、ステップa)で用意された表面反応炭酸カルシウムは、ステップa)で用意された表面反応炭酸カルシウムの乾燥重量を基準にして、10.0重量%未満の含水量を有する。
【0110】
一実施形態では、ステップa)で用意された表面反応炭酸カルシウムは、ステップa)で用意された表面反応炭酸カルシウムの乾燥重量を基準にして、0.01重量%~10.0重量%、好ましくは0.01重量%~8.0重量%、より好ましくは0.01重量%~6.0重量%の含水量を有する。
【0111】
ステップb):処理剤の用意の特徴付け
本発明のステップb)では、処理剤が用意される。処理剤が、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩および鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択されることは本発明の1つの要件である。
【0112】
処理剤は、1種または複数の処理剤であってよいことは理解されよう。
【0113】
本発明の一実施形態では、処理剤は、好ましくは、1種類の処理剤を含む、好ましくはそれからなる。あるいは、処理剤は、2種類以上の処理剤を含む、好ましくはそれらからなる。例えば、処理剤は、2種類または3種類の処理剤を含む、好ましくはそれらからなる。
【0114】
好ましくは、処理剤は1種類の処理剤を含む、より好ましくはそれからなる。
【0115】
一実施形態では、処理剤は、アスコルビン酸である。例えば、アスコルビン酸は、好ましくはL-アスコルビン酸および/またはD-イソアスコルビン酸である。L-アスコルビン酸は、(5R)-5-[(1S)-1,2-ジヒドロキシエチル]-3,4-ジヒドロキシ-2(5H)-フラノンとしても知られることは理解されよう。D-イソアスコルビン酸は、(5R)-5-[(1R)-1,2-ジヒドロキシエチル]-3,4-ジヒドロキシフラン-2(5H)-オンとしても知られる。一実施形態では、処理剤は、L-アスコルビン酸またはD-イソアスコルビン酸であり、好ましくはL-アスコルビン酸である。代替的実施形態では、処理剤は、L-アスコルビン酸およびD-イソアスコルビン酸である。
【0116】
追加でまたは代わりに、処理剤はアスコルビン酸の塩である。
【0117】
アスコルビン酸の塩は、アスコルビン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、パルミチン酸およびステアリン酸塩からなる群より選択される化合物であるのが好ましい。例えば、処理剤は、アスコルビン酸のナトリウム、カリウム、および/またはカルシウム塩である。
【0118】
追加でまたは代わりに、処理剤は没食子酸である。没食子酸はまた、3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとしても知られ、分子式Cを有することは理解されよう。
【0119】
追加でまたは代わりに、処理剤は没食子酸の塩である。
【0120】
没食子酸の塩は、没食子酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリチウム塩からなる群より選択される化合物であるのが好ましい。
【0121】
追加でまたは代わりに、処理剤は、不飽和脂肪酸および/または不飽和脂肪酸の塩から選択される。
【0122】
本発明における意味では、用語の「不飽和脂肪酸」は、炭素および水素から構成される直鎖または分枝鎖不飽和有機化合物を意味する。上記有機化合物は、炭素骨格の末端に配置されたカルボキシル基をさらに含む。
【0123】
不飽和脂肪酸は、好ましくは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、エコサジエン酸(ecosadienoic acid)、ドコサジエン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、鰯酸、テトラコサノールペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、不飽和脂肪酸である処理剤は、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、不飽和脂肪酸である処理剤は、オレイン酸および/またはリノール酸、好ましくはオレイン酸またはリノール酸、最も好ましくはリノール酸である。
【0124】
追加でまたは代わりに、処理剤は不飽和脂肪酸の塩である。
【0125】
用語の「不飽和脂肪酸の塩」は、活性酸基が部分的にまたは完全に中和された不飽和脂肪酸を意味する。用語の「部分的に中和された」不飽和脂肪酸は、40~95モル%、好ましくは50~95モル%、より好ましくは60~95モル%、最も好ましくは70~95モル%の範囲の活性酸基の中和度を意味する。用語の「完全に中和された」不飽和脂肪酸は、95モル%超、好ましくは99モル%超、より好ましくは99.8モル%超、最も好ましくは100モル%の活性酸基の中和度を意味する。活性酸基は部分的にまたは完全に中和されているのが好ましい。
【0126】
不飽和脂肪酸の塩は、不飽和脂肪酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ストロンチウム、一級アミン、二級アミン、三級アミンおよびアンモニウム塩からなる群より選択される化合物であるのが好ましい。この場合、アミン塩は直鎖または環式である。例えば、処理剤は、オレイン酸および/またはリノール酸、好ましくはオレイン酸またはリノール酸、最も好ましくはリノール酸の塩である。
【0127】
不飽和脂肪酸の塩は、対応するその塩を得るために、添加ステップc)の前に不飽和脂肪酸を塩基で処理することにより得られるのが好ましい。
【0128】
塩基は、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、および/または水酸化ナトリウムから選択してよく、好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0129】
不飽和脂肪酸への少なくとも1種の塩基の添加は、当業者にいずれかの既知の従来の手段により達成できる。好ましくは、添加は、混合条件下で実施し得る。当業者は、混合速度および温度などのこれらの混合条件をプロセス用装置に応じて、適合させる。
【0130】
塩基は、不飽和脂肪酸を基準にして、0.1~100モル%の範囲、好ましくは1~98モル%の範囲、より好ましくは10~95重量%の範囲、最も好ましくは40~95重量%の範囲の量で不飽和脂肪酸に添加し得る。
【0131】
追加でまたは代わりに、処理剤は元素状鉄である。
【0132】
本発明による用語の「元素状鉄」は、記号Feの化学元素を意味する。元素状鉄は、298.15K(25℃)の温度および正確に100000Pa(1バール、14.5psi、0.98692気圧)の絶対圧力の、標準的環境温度および圧力(SATP)下で固体である。
【0133】
例えば、元素状鉄は、5nm~10μmの範囲の体積粒径中央値d50を有する微粒子粉末鉄である。好ましくは、元素状鉄は、10nm~2μm、より好ましくは30nm~500nmの範囲の体積粒径中央値d50を有する微粒子粉末鉄である。
【0134】
一実施形態では、元素状鉄はnmのサイズ範囲の微粒子粉末鉄である。例えば、元素状鉄は、10nm~300nm、好ましくは20nm~200nm、より好ましくは30nm~100nmの範囲の体積粒径中央値d50を有する微粒子粉末鉄である。
【0135】
追加でまたは代わりに、処理剤は鉄(II)塩である。本発明による用語の「鉄(II)塩」は、鉄が酸化数IIを有する第一鉄塩を意味する。例えば、鉄(II)塩の処理剤は、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)(FeCl)、フッ化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、モリブデン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、鉄(II)テトラフルオロボレート、ヘキサシアノ鉄酸カリウム、硫酸鉄(II)(無水)、硫酸鉄(II)一水和物、硫酸鉄(II)七水和物、硫酸アンモニウム鉄(II)(無水)、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物、およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、鉄(II)塩の処理剤は、硫酸鉄(II)一水和物、硫酸鉄(II)七水和物、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物、塩化鉄(II)およびこれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、鉄(II)塩の処理剤は、硫酸鉄(II)七水和物、および/または塩化鉄(II)、好ましくは硫酸鉄(II)七水和物または塩化鉄(II)、最も好ましくは硫酸鉄(II)七水和物である。
【0136】
追加でまたは代わりに、処理剤は鉄(II)含有酸化物および/または鉄(II、III)含有酸化物である。本発明による用語の「鉄(II)塩含有酸化物」は、鉄が酸化数IIを有する酸化鉄を意味する。本発明による用語の「鉄(II、III)含有酸化物」は、鉄が酸化数IIおよびIIIを有する酸化鉄を意味する。例えば、処理剤の鉄(II)含有酸化物は鉄(II)酸化物である。例えば、処理剤の鉄(II、III)含有酸化物は鉄(II)鉄(III)酸化物である。
【0137】
処理剤は好ましくは、好ましくは、「液体」または「融解」形態である。
【0138】
一実施形態では、処理剤は、25℃および大気圧で、(未希釈)液体である。
【0139】
あるいは、処理剤は「融解」形態である。
【0140】
処理剤が固体形態である場合、これはまた、溶媒中に溶解/分散/懸濁でき、溶液または懸濁液または分散液として、すなわち液体として、ステップc)で表面反応炭酸カルシウムに添加できる。
【0141】
処理剤を希釈/溶解/分散/懸濁するのに使用し得る溶媒は、水および/または水と混合可能である有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノールのような有機溶媒、およびこれらの混合物であってよい。好ましい実施形態では、溶媒は水からなる。別の好ましい実施形態では、溶媒は、水および少なくとも1種の水と混合可能である有機溶媒の混合物である。好ましくは、溶媒は、水およびエタノールの混合物であり、より好ましくは水:エタノール混合物は、溶媒の重量を基準にして、2:1~1:2の割合を有し、最も好ましくは水:エタノール混合物は、溶媒の重量を基準にして、1:1の割合を有する。
【0142】
本発明の一実施形態では、溶媒および処理剤を含む希釈/分散懸濁液/分散液の固形分含有量は、懸濁液/分散液の合計重量を基準にして、0.1~60重量%の範囲、好ましくは1~40重量%の範囲、より好ましくは1.5~30重量%の範囲、最も好ましくは2~25重量%の範囲である。
【0143】
本発明の別の実施形態では、溶媒および処理剤を含む希釈/溶解/分散/懸濁した溶液/懸濁液/分散液中の処理剤の量は、溶液/懸濁液/分散液の合計重量を基準にして、0.1~60重量%の範囲、好ましくは1~40重量%の範囲、より好ましくは1.5~30重量%の範囲、最も好ましくは2~25重量%の範囲である。
【0144】
本発明の別の実施形態では、処理剤または溶媒および少なくとも1種の処理剤を含む希釈/溶解/分散した溶液/懸濁液/分散液は、混合ステップc)が実施される前に、予熱される。すなわち、処理剤または溶媒および処理剤を含む希釈/溶解/分散した溶液/懸濁液/分散液は、混合ステップc)が実施される前に、30~120℃、好ましくは45~115℃、より好ましくは50~105℃、最も好ましくは80~100℃の温度で処理される。
【0145】
処理剤または溶媒および処理剤を含む希釈/溶解/分散した溶液/懸濁液/分散液の余熱を実施するための処理時間は、30分以下の時間、好ましくは20分以下の時間、より好ましくは15分以下の時間である。
【0146】
本発明の別の実施形態では、処理剤または溶媒および処理剤を含む希釈/溶解/分散した溶液/懸濁液/分散液は、添加ステップc)が実施される前に、30~120℃、好ましくは45~115℃、より好ましくは50~105℃、最も好ましくは80~100℃の温度での予熱が、30分以下の時間、好ましは20分以下の時間、より好ましくは15分以下の時間にわたり実施される。
【0147】
本発明の一実施態様では、処理剤または溶媒および処理剤を含む希釈/溶解/分散した溶液/懸濁液/分散液の予熱が、混合ステップc)が実施される間に行われる温度とほぼ等しい温度で実施される。
【0148】
本発明における意味では、用語の「等しい」温度は、混合ステップc)で用いられる温度より、最大で20℃、好ましくは最大で15℃、より好ましくは10℃、最も好ましくは最大で5℃、低いまたは高い温度での予熱を意味する。
【0149】
処理剤または溶媒および処理剤を含む希釈/溶解/分散した溶液/懸濁液/分散液の予熱が、好ましくは混合条件下で行われる。当業者は、これらの混合条件(ミキシングパレットおよび混合速度の構成など)をプロセス用装置に応じて、適合させる。
【0150】
ステップc):表面反応炭酸カルシウムと処理剤との混合の特徴付け
本発明のステップc)では、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤とを、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、添加された処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、1つまたは複数のステップにより10~200℃の温度で混合する。
【0151】
処理剤は、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、添加される処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムに添加されることが必要である。
【0152】
例えば、処理剤は、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、ステップc)で添加される処理剤の合計重量が0.1~40mg/m、好ましくは0.5~20mg/mとなるように、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムに添加される。最も好ましくは、処理剤は、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、ステップc)で添加される処理剤の合計重量が0.7~15mg/mとなるように、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムに添加される。
【0153】
追加でまたは代わりに、ステップb)の処理剤は、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの合計乾燥重量を基準にして、0.01~80.0重量%の量でステップc)で添加される。好ましくは、ステップb)の処理剤は、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの合計乾燥重量を基準にして、0.1~70.0重量%、より好ましくは0.5~60.0重量%、最も好ましくは1.0~40.0重量%の量でステップc)で添加される。
【0154】
ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤との1つまたは複数のステップでの混合ステップは、混合条件下で行われるのが好ましい。当業者は、これらの混合条件(ミキシングパレットおよび混合速度の構成など)をプロセス用装置に応じて、適合させる。
【0155】
例えば、混合は、プロシェアミキサーにより行い得る。プロシェアミキサーは、機械的に発生させた流動床の原理により機能する。プロシェアブレードが水平円筒状ドラムの内壁に近接して回転し、混合物の成分を生成物床から開放混合空間に送る。機械的に発生させた流動床は、大きなバッチでも非常に短時間で強力な混合を確実に行わせる。チョッパおよび/または分散機を使って、乾式操作で塊を分散させる。本発明のプロセスで使用し得る装置は、例えば、Gebruder Lodige Maschinenbau GmbH,Germanyから、またはVISCO JET Ruhrsysteme GmbH,Germanyから入手できる。
【0156】
本発明の一実施態様では、方法は連続式に実施される。この場合、ステップc)中に一定濃度の処理剤が供給されるように、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムに処理剤を一定流量で添加することが可能である。
【0157】
あるいは、1つのステップで、処理剤が、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムに添加され、上記処理剤は、一度に添加されるのが好ましい。
【0158】
別の実施形態では、方法は、バッチ方式で実施できる。すなわち、処理剤が、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムに、2つ以上のステップに分けて添加され、上記処理剤は、ほぼ等しい部分として添加されるのが好ましい。あるいは、ステップa)の水性の表面反応炭酸カルシウムに、等しくない部分に分けて、すなわち、より大きい部分とより小さい部分に分けて、処理剤を添加することが可能である。
【0159】
本発明の一実施形態では、ステップc)は、0.1~1000秒の期間にわたりバッチまたは連続プロセスで実施される。例えば、ステップc)は、連続プロセスで、1つまたはいくつかの接触ステップを含み、合計接触時間は、0.1~20秒、好ましくは0.5~15秒、最も好ましくは1~10秒である。
【0160】
ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤との十分な混合を得るために、混合ステップc)は、10~200℃の温度で実施することが必要である。例えば、混合ステップc)は、20~150℃、より好ましくは20~120℃、さらにより好ましくは20~100℃、最も好ましくは20~80℃の温度で実施される。混合ステップc)が実施される温度は、使われる特定の処理剤に適合されるのが好ましいことは理解されよう。これに関しては、ステップb)の処理剤は、液体形態、すなわち、未希釈の液体または希釈/溶解/分散した溶液/懸濁液/分散液の形態、または融解形態でなければならないことに留意されたい。
【0161】
ステップb)の処理剤が25℃および大気圧で未希釈の液体または希釈/溶解した溶液の形態である場合、そのため、混合ステップc)は、10~40℃、好ましくは20~40℃、より好ましくは25~35℃、最も好ましくは約30℃(±2℃)の温度で実施される。
【0162】
あるいは、ステップb)の処理剤が融解形態または分散した懸濁液/分散液である場合、混合ステップc)は、好ましくは40~200℃、好ましくは50~150℃、より好ましくは60~120℃、最も好ましくは80~120℃の温度で、ステップc)が実施される前に実施される。
【0163】
一実施形態では、ステップa)で用意される表面反応炭酸カルシウムおよび/またはステップb)の処理剤は、ステップc)が実施される前に、予熱される。例えば、ステップa)で用意される表面反応炭酸カルシウムまたはステップb)の処理剤は、ステップc)が実施される前に、予熱される。好ましくは、ステップa)で用意される表面反応炭酸カルシウムは、ステップc)が実施される前に、予熱される。
【0164】
例えば、ステップa)で用意される表面反応炭酸カルシウムは、ステップc)が実施される前に、予熱される。すなわち、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムは、ステップc)が実施される前に、30~150℃、好ましくは40~140℃、より好ましくは50~130℃、最も好ましくは80~120℃の温度で予熱される。例えば、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムは、120℃±5℃の温度に予熱される。
【0165】
ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの予熱を実施するための処理時間は、30分以下の時間、好ましくは20分以下の時間、最も好ましくは15分以下の時間、例えば、5分~15分間にわたり実施される。
【0166】
本発明の別の実施形態では、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムは、ステップc)が実施される前に、30~150℃、好ましくは40~140℃、より好ましくは50~130℃、最も好ましくは80~120℃の温度で、30分以下の時間、好ましは20分以下の時間、より好ましくは15分以下の時間、例えば、5分~15分間にわたり予熱される。
【0167】
本発明の一実施態様では、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの予熱は、混合ステップc)で用いられる温度とほぼ等しい温度で実施される。
【0168】
本発明における意味では、用語の「等しい」温度は、混合ステップc)で用いられる温度より、最大で20℃、好ましくは最大で15℃、より好ましくは10℃、最も好ましくは最大で5℃、低いまたは高い温度での予熱を意味する。
【0169】
ステップa)の表面反応炭酸カルシウムの予熱は、好ましくは、混合条件下で行われる。当業者は、これらの混合条件(ミキシングパレットおよび混合速度の構成など)をプロセス用装置に応じて、適合させる。
【0170】
一実施形態では、混合ステップc)は、少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、例えば、少なくとも10分間、15分間、20分間、30分間または45分間、実施される。追加でまたは代わりに、混合ステップc)は、最大で60分間、好ましくは最大で45分間、例えば、最大で30分間、実施される。
【0171】
例えば、混合ステップc)は、1分~60分の範囲の時間、好ましくは10分~45分の範囲の時間、最も好ましくは10分~30分間実施される。例えば、混合ステップc)は、20分±5分の間実施される。
【0172】
混合ステップc)は、20~200℃の範囲の温度で、1分~60分の範囲の時間にわたり実施されるのが好ましいことは理解されよう。
【0173】
したがって、一態様では、本発明は表面反応炭酸カルシウムの処理方法に関し、該方法は、
a)表面反応炭酸カルシウムを用意するステップであって、表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、ステップ;
b)アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理剤を用意するステップ、および
c)ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤とを、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、添加された処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、1つまたは複数のステップにより10~200℃の温度で混合するステップ、を含む。
【0174】
好ましい実施形態では、本発明は表面反応炭酸カルシウムの処理方法に関し、該方法は、
a)表面反応炭酸カルシウムを用意するステップであって、表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、ステップ;
b)アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理剤を用意するステップ、および
c)ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤とを、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、添加された処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、1つまたは複数のステップにより10~200℃の温度で混合するステップ、からなる。
【0175】
意外にも、発明者らは、前述の方法により、高度に効果的な酸素(O)捕捉、特に、既知の酸素捕捉材料に比べて改善された酸素(O)捕捉を可能とする、処理された表面反応炭酸カルシウムを調製することが可能であることを見出した。さらに、本発明による方法により、長く持続する酸素(O)捕捉効果をもたらし、および/または周辺環境から多量の酸素の除去を可能とする、処理された表面反応炭酸カルシウムが提供される。さらに、本発明による方法により、非毒性で、容易に取り扱うことができ、極めて多様な用途に使用できる、処理された表面反応炭酸カルシウムが提供される。
【0176】
さらなるプロセスステップ
本発明の一実施形態では、方法は、ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムを少なくとも1種の追加の薬剤である疎水化剤で処理するさらなるステップd)を含む。
【0177】
ステップd)の少なくとも1種の疎水化剤は、ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウム粒子の接触表面積の少なくとも一部上に疎水性の処理層を形成できる当業者に既知の任意の薬剤であってよい。
【0178】
本発明における意味では、用語の「少なくとも1種の」疎水化剤は、疎水化剤が1種または複数の疎水化剤を含む、好ましくはこれらからなることを意味する。
【0179】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の追加の疎水化剤は、1種の疎水化剤を含む、好ましくはそれからなる。あるいは、少なくとも1種の疎水化剤は、2種以上の疎水化剤を含む、好ましくはこれらからなる。例えば、少なくとも1種の疎水化剤は、2種または3種の疎水化剤を含む、好ましくはこれらからなる。
【0180】
好ましくは、少なくとも1種の疎水化剤は、1種の疎水化剤を含む、より好ましくはそれからなる。
【0181】
少なくとも1種の疎水化剤は、好ましくは、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸、1種または複数のリン酸モノエステルおよび1種または複数のリン酸ジエステルのリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサン、不活性のシリコーンオイル、好ましくはポリジメチルシロキサン、脂肪族脂肪アルデヒドおよびこれらの混合物、からなる群より選択される。
【0182】
ステップc)での表面反応炭酸カルシウムを処理するために好適する脂肪族カルボン酸は、例えば、4~24個の炭素原子を有する脂肪族直鎖または分岐鎖カルボン酸である。
【0183】
本発明における意味では、脂肪族直鎖または分岐鎖カルボン酸は、1種または複数の直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和および/または脂環式カルボン酸から選択され得る。好ましくは、脂肪族直鎖または分岐鎖カルボン酸は、モノカルボン酸、すなわち、単一カルボキシル基が存在することを特徴とする脂肪族直鎖または分岐鎖カルボン酸である。上記カルボキシル基は、炭素骨格の末端に配置される。
【0184】
本発明の一実施態様では、脂肪族直鎖または分岐鎖カルボン酸は、飽和非分岐鎖カルボン酸から選択され、すなわち脂肪族直鎖または分岐鎖カルボン酸は好ましくは、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、およびこれらの混合物からなるカルボン酸の群から選択される。
【0185】
本発明の別の実施形態では、脂肪族直鎖または分岐鎖カルボン酸は、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、脂肪族直鎖または分岐鎖カルボン酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0186】
例えば、脂肪族直鎖または分岐鎖カルボン酸は、ステアリン酸である。
【0187】
追加でまたは代わりに、少なくとも1種の疎水化剤は、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸および/または1種または複数のリン酸モノエステルおよび1種または複数のリン酸ジエステルのリン酸エステル混合物である。
【0188】
ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムの、単一置換無水コハク酸による、および/またはリン酸エステル混合物によるステップd)の処理およびコーティング用の好適な化合物は、欧州特許出願公開第2722368A1号および欧州特許出願公開第2770017A1号に記載されている。これらの特許出願公開は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0189】
追加でまたは代わりに、少なくとも1種の疎水化剤は、米国特許出願公開第2004/0097616A1号に記載のように、不活性シリコーンオイル、例えば、ポリジアルキルシロキサンである。
【0190】
最も好ましい不活性シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、好ましくはジメチコン、ポリジエチルシロキサンおよびポリメチルフェニルシロキサンおよび/またはこれらの混合物からなる群より選択される。
【0191】
不活性シリコーンオイルは、好ましくは、ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上の上記不活性シリコーンオイルの合計量は、1000ppm未満、より好ましくは800ppm未満、最も好ましくは600ppm未満であるような量で存在する。例えば、ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上の不活性シリコーンオイルの合計量は、100~1000ppm、より好ましくは200~800ppm、最も好ましくは300~600ppm、例えば、400~600ppmである。
【0192】
追加でまたは代わりに、少なくとも1種の疎水化剤は、ポリ水素シロキサン、好ましくは、ポリ(メチルヒドロシロキサン)である。
【0193】
追加でまたは代わりに、少なくとも1種の疎水化剤は、脂肪族脂肪アルデヒドである。
【0194】
ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムを、脂肪族脂肪アルデヒドでコーティング用のステップd)の処理は、欧州特許出願公開第2390285A1号に記載されている。この特許出願公開は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0195】
方法がステップd)を含む場合、ステップd)は、混合ステップc)の後で実施されることは理解されよう。
【0196】
したがって、一実施形態では、本発明は表面反応炭酸カルシウムの処理方法に関し、該方法は、
a)表面反応炭酸カルシウムを用意するステップであって、表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、ステップ;
b)アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理剤を用意するステップ、
c)ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤とを、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、添加された処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、1つまたは複数のステップにより10~200℃の温度で混合するステップ、および
d)ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムを少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤で処理するステップであって、好ましくは、該疎水化剤が、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸、1種または複数のリン酸モノエステルおよび1種または複数のリン酸ジエステルのリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサン、不活性のシリコーンオイル、好ましくはポリジメチルシロキサン、脂肪族脂肪アルデヒドおよびこれらの混合物、からなる群より選択されるステップ、を含む、好ましくはこれらステップからなる。
【0197】
本発明の一実施形態では、方法は、ステップc)またはd)で得られた表面反応炭酸カルシウムを、封入するさらなるステップe)を含む。
【0198】
したがって、表面反応炭酸カルシウムを封入するステップe)は、ステップc)、存在する場合、ステップd)の後で実施されることは理解されよう。すなわち、方法がステップd)を含む場合、封入ステップe)は、ステップd)の後で実施される。
【0199】
例えば、方法は、ステップc)またはd)で得られた表面反応炭酸カルシウムを、ワックスを用いて、好ましくはパラフィンワックスを用いて、封入するさらなるステップe)を含む。
【0200】
本発明における意味では、用語の「封入」は、好適な化合物を用いた表面反応炭酸カルシウムの基本的に完全な封入を意味する。
【0201】
ステップc)またはd)の表面反応炭酸カルシウムの封入ステップは、封入に好適する当業者に既知の任意のプロセスで実施できる。当業者は、自らのプロセス用装置に応じて、封入条件を適合させる。
【0202】
例えば、ステップc)またはd)の表面反応炭酸カルシウムの封入は、プロシェアミキサーにより行い得る。
【0203】
一実施形態では、本発明は表面反応炭酸カルシウムの処理方法に関し、該方法は、
a)表面反応炭酸カルシウムを用意するステップであって、表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、ステップ;
b)アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理剤を用意するステップ、
c)ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤とを、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、添加された処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、1つまたは複数のステップにより10~200℃の温度で混合するステップ、
d)場合により、ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムを少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤で処理するステップであって、好ましくは、該疎水化剤が、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸、1種または複数のリン酸モノエステルおよび1種または複数のリン酸ジエステルのリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサン、不活性のシリコーンオイル、好ましくはポリジメチルシロキサン、脂肪族脂肪アルデヒドおよびこれらの混合物、からなる群より選択されるステップ、および
e)ステップc)または存在する場合、ステップd)で得られた表面反応炭酸カルシウムを、好ましくはワックスを用いて、より好ましくはパラフィンワックスを用いて封入するステップ、を含む、好ましくはこれらのステップからなる。
【0204】
一実施形態では、ステップc)またはステップd)またはステップe)で得られた表面反応炭酸カルシウムが乾燥される。この任意のステップは、表面反応炭酸カルシウムの含水量を減らすために実施されるのが好ましい。したがって、乾燥した表面反応炭酸カルシウムは、乾燥ステップ前の表面反応炭酸カルシウムの含水量未満の含水量を有する。
【0205】
本発明の一実施形態では、したがって、方法は、ステップc)またはd)またはステップe)で得られた表面反応炭酸カルシウム、好ましくはステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムを、乾燥するさらなるステップf)を含む。
【0206】
例えば、任意の乾燥ステップf)は、40~200℃、好ましくは50~150℃、より好ましくは60~120℃、最も好ましくは80~120℃の範囲の温度で、大気圧または減圧下、得られた表面処理炭酸カルシウムの含水量が、表面反応炭酸カルシウムの合計重量を基準にして、0.001~20重量%の範囲に入るまで、実施される。
【0207】
任意の乾燥ステップf)は、大気圧または減圧下で実施できることは理解されよう。乾燥は、大気圧で実施されるのが好ましい。
【0208】
したがって、任意の乾燥ステップf)は、大気圧下、40~200℃の範囲の温度で実施されるのが好ましい。例えば、任意の乾燥ステップf)は、大気圧下、50~150℃、好ましくは60~120℃、より好ましくは80~120℃の範囲の温度で実施される。
【0209】
一実施形態では、任意の乾燥ステップf)は、得られた表面反応炭酸カルシウムの含水量が、表面反応炭酸カルシウムの合計重量を基準にして、0.005~15重量%、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%の範囲に入るまで、実施される。
【0210】
一実施形態では、本発明は表面反応炭酸カルシウムの処理方法に関し、該方法は、
a)表面反応炭酸カルシウムを用意するステップであって、表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、ステップ;
b)アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理剤を用意するステップ、
c)ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤とを、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、添加された処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、1つまたは複数のステップにより10~200℃の温度で混合するステップ、
d)場合により、ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムを少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤で処理するステップであって、好ましくは、該疎水化剤が、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸、1種または複数のリン酸モノエステルおよび1種または複数のリン酸ジエステルのリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサン、不活性のシリコーンオイル、好ましくはポリジメチルシロキサン、脂肪族脂肪アルデヒドおよびこれらの混合物、からなる群より選択されるステップ、
e)場合により、ステップc)または存在する場合、ステップd)で得られた表面反応炭酸カルシウムを、好ましくはワックスを用いて、より好ましくはパラフィンワックスを用いて封入するステップ、および
f)ステップc)またはステップd)またはステップe)で得られた表面反応炭酸カルシウムを乾燥するステップ、を含む、好ましくはこれらのステップからなる。
【0211】
処理された表面反応炭酸カルシウム
本発明の一態様では、処理された表面反応炭酸カルシウムが提供される。
【0212】
処理された表面反応炭酸カルシウムは、
a)表面反応炭酸カルシウムであって、該表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、表面反応炭酸カルシウムおよび、
b)表面反応炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に処理層として位置する、および/または表面反応炭酸カルシウムの細孔の少なくとも一部中に細孔フィラーとして充填される処理剤を含み、
i)処理層または細孔フィラーが、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物、および/またはこれらの反応生成物からなる群より選択される処理剤からなり、
ii)表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の処理剤の合計重量が、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、0.01~40mg/mである。
【0213】
一実施形態では、処理された表面反応炭酸カルシウムは、
a)表面反応炭酸カルシウムであって、該表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、表面反応炭酸カルシウムおよび、
b)表面反応炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に処理層として位置する、および/または表面反応炭酸カルシウムの細孔の少なくとも一部中に細孔フィラーとして充填される処理剤からなり、
i)処理層または細孔フィラーが、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物、および/またはこれらの反応生成物からなる群より選択される処理剤からなり、
ii)表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の処理剤の合計重量が、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、0.01~40mg/mである。
【0214】
処理された表面反応炭酸カルシウムは、好ましくは、本発明によるプロセスにより得られることは理解されよう。
【0215】
したがって、本発明の処理された表面反応炭酸カルシウムは、
a)表面反応炭酸カルシウムを用意するステップであって、表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、ステップ;
b)アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理剤を用意するステップ、および
c)ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤とを、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、添加された処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、1つまたは複数のステップにより10~200℃の温度で混合するステップ、を含むプロセス、好ましくはこれらのステップからなるプロセスにより得られる。
【0216】
一実施形態では、本発明の処理された表面反応炭酸カルシウムは、
a)表面反応炭酸カルシウムを用意するステップであって、表面反応炭酸カルシウムが天然の粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数のHイオンドナーとの反応生成物であり、二酸化炭素がHイオンドナー処理によりインサイツ形成されるおよび/または外部源から供給される、ステップ;
b)アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理剤を用意するステップ、
c)ステップa)の表面反応炭酸カルシウムと、ステップb)の処理剤とを、ステップa)の表面反応炭酸カルシウムを基準にして、添加された処理剤の合計重量が0.01~40mg/mとなるように、1つまたは複数のステップにより10~200℃の温度で混合するステップ、
d)場合により、ステップc)で得られた表面反応炭酸カルシウムを少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤で処理するステップであって、好ましくは、該疎水化剤が、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸、1種または複数のリン酸モノエステルおよび1種または複数のリン酸ジエステルのリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサン、不活性のシリコーンオイル、好ましくはポリジメチルシロキサン、脂肪族脂肪アルデヒドおよびこれらの混合物、からなる群より選択されるステップ、
e)場合により、ステップc)または存在する場合、ステップd)で得られた表面反応炭酸カルシウムを、好ましくはワックスを用いて、より好ましくはパラフィンワックスを用いて封入するステップ、および
f)場合により、ステップc)またはステップd)またはステップe)で得られた表面反応炭酸カルシウムを乾燥するステップ、を含むプロセス、好ましくはこれらのステップからなるプロセスにより得られる。
【0217】
表面反応炭酸カルシウム、処理剤、任意の追加の薬剤としての疎水化剤、任意の封入化合物およびこれらの好ましい実施形態の定義に関しては、本発明の方法の技術的詳細の考察の際に上記で提供された記載への参照がなされる。
【0218】
本発明における意味では、用語の「反応生成物」は、表面反応炭酸カルシウムを処理剤と接触させることにより得られる生成物を意味し、該処理剤は、すなわち、アスコルビン酸および/またはその塩、没食子酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩、元素状鉄、鉄(II)塩、鉄(II)含有酸化物、鉄(II、III)含有酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択される処理剤である。上記反応生成物は、少なくとも一部の適用された処理剤と、表面反応炭酸カルシウム粒子の表面または細孔中に位置する反応性分子との間で形成される。
【0219】
好ましくは、表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の処理剤の合計重量は、0.01~40mg/mである。より好ましくは、表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の処理剤の合計重量は、0.1~20mg/m、最も好ましくは0.2~15mg/mである。
【0220】
さらに、本発明の処理された表面反応炭酸カルシウムは、特定の吸湿感受性を有するのが好ましい。処理された表面反応炭酸カルシウムの吸湿感受性は、その合計表面水分レベルが100mg/g以下、より好ましくは60mg/g以下、最も好ましくは40mg/g以下の乾燥状態の処理された表面反応炭酸カルシウムであることが好ましい。例えば、処理された表面反応炭酸カルシウムは、0.05~100mg/g、好ましくは、0.1~60mg/g、より好ましくは、0.2~40mg/gの範囲の吸湿感受性を有する。
【0221】
処理された表面反応炭酸カルシウムが少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤でさらに処理される場合は、処理された表面反応炭酸カルシウムは、上記少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤をさらに含む。
【0222】
一実施形態では、したがって、処理された表面反応炭酸カルシウムが少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤を含み、これは、処理された表面反応炭酸カルシウムを少なくとも部分的に被覆するかまたは処理された表面反応炭酸カルシウムの少なくとも一部の細孔中に充填される。
【0223】
例えば、少なくとも1種の疎水化剤は、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸および/またはその塩反応生成物、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸および/またはその塩反応生成物、1種または複数のリン酸モノエステルおよび/またはその反応生成物および1種または複数のリン酸ジエステルおよび/またはその塩反応生成物のリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサンおよびその塩反応生成物、不活性のシリコーンオイル、好ましくはポリジメチルシロキサン、脂肪族脂肪アルデヒドおよび/またはその塩反応生成物およびこれらの混合物、からなる群より選択される。
【0224】
少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤およびその好ましい実施形態の定義に関しては、本発明の方法の技術的詳細の考察の際に上記で提供された記載への参照がなされる。
【0225】
本発明における意味では、少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤に関連する用語の「反応生成物」は、処理された表面反応炭酸カルシウムを少なくとも1種の疎水化剤と接触させることにより得られる生成物を意味し、疎水化剤は、すなわち、C~C24の炭素原子の合計量を有する脂肪族カルボン酸、置換基中に少なくともC~C30の炭素原子の合計量を有する直鎖、分岐、脂肪族および環状基から選択される基で単一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸、1種または複数のリン酸モノエステルおよび1種または複数のリン酸ジエステルのリン酸エステル混合物、ポリ水素シロキサン、不活性のシリコーンオイル、好ましくはポリジメチルシロキサン、脂肪族脂肪アルデヒドおよびこれらの混合物、からなる群より選択される疎水化剤である。上記反応生成物は、少なくとも一部の適用された疎水化剤と、処理された表面反応炭酸カルシウム粒子の表面または細孔中に位置する反応性分子との間で形成される。
【0226】
処理された表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤の合計重量は、表面反応炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に処理層として位置する、および/または表面反応炭酸カルシウムの細孔の少なくとも一部の細孔フィラーとして充填される処理剤の合計重量未満である。
【0227】
例えば、処理された表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤の合計重量は、0.001~10mg/mである。
【0228】
より好ましくは、処理された表面反応炭酸カルシウムの合計表面積上のまたは細孔中の少なくとも1種の追加の薬剤としての疎水化剤の合計重量は、0.005~8mg/m、最も好ましくは0.01~5mg/mである。
【0229】
発明者らは、意外にも、本発明の処理された表面反応炭酸カルシウムは、優れた酸素捕捉特性を有することを見出した。
【0230】
処理された表面反応炭酸カルシウムの使用
本発明の別の態様では、処理された表面反応炭酸カルシウムの酸素捕捉剤としての使用が提供される。
【0231】
処理された表面反応炭酸カルシウムおよびその好ましい実施形態の定義に関しては、本発明の処理された表面反応炭酸カルシウムおよび方法の技術的詳細の考察の際に上記で提供された記載への参照がなされる。
【0232】
意外にも、発明者らは、処理された表面反応炭酸カルシウムが高効率の酸素(O)捕捉、特に、既に知られている酸素捕捉剤材料に比べて、改善された酸素(O)捕捉をもたらすことを見出した。さらに、本発明による処理された表面反応炭酸カルシウムは、長く持続する酸素(O)捕捉効果をもたらし、および/または周辺環境から多量の酸素の除去を可能とする。
【0233】
本発明の一実施形態では、処理剤グラム当たり反応した酸素の合計体積は、1日当たり、表面処理剤のグラム当たり0.01~100mLの範囲、好ましくは、1日当たり、表面処理剤のグラム当たり0.1~50mLの範囲、より好ましくは、1日当たり、表面処理剤のグラム当たり0.4~25mLの範囲であり、酸素との反応は、標準圧力下で空気を満たした7Lの容積の密閉デシケータ中で、500gの乾燥した処理された表面反応炭酸カルシウムを用いて実施される。
【0234】
処理表面反応炭酸カルシウムの酸素捕捉特性を考慮すると、処理表面反応炭酸カルシウムは、極めて多様な用途で使用可能である。
【0235】
例えば、処理された表面反応炭酸カルシウムは、好ましくは、ポリマー組成物、コーティング、好ましくはペーパーまたはポリマーコーティング、より好ましくはペーパーコーティング、食品用途、フィルターおよび/または化粧品用途で、好ましくは食品用途、より好ましくは食品包装用途で使用できる。
【0236】
本発明の範囲および関心は、本発明の特定の実施形態を例示することを意図し、非限定的である、下記の実施例に基づいてよりよく理解されるであろう。
【0237】
実施例
1 測定方法
以下では、実施例で実施した測定方法が記載される。
【0238】
炭酸カルシウムの含水量
10gの粉末試料を、質量が20分間一定になるまで、オーブン中で150℃で加熱した。質量減少は重量測定法により測定され、最初の試料質量を基準にして、重量%減少として表現される。この質量減少を試料水分とした。
【0239】
吸湿感受性
本明細書において言及される材料の吸湿感受性は、10および85%の相対湿度雰囲気にそれぞれ、+23℃(±2℃)で2.5時間曝露した後に、mg水分/gで測定した。この目的のために、試料を最初に、10%の相対湿度で2.5時間保持し、その後、雰囲気を85%の相対湿度に変え、そこで、試料をさらに2.5時間保持した。その後、10%と85%の相対湿度の間の重量増加を用いて、吸湿量をmg水分/g試料として計算した。
【0240】
吸湿感受性mg/gを比表面積m/g(比表面積BETに基づいて計算)で除算した値は、mg/m試料、で表される「正規化吸湿感受性」に相当する。
【0241】
固形分含有量
懸濁液固形分含有量(「乾燥重量」としても知られる)を、Moisture Analyser MJ33(Mettler-Toledo,Switzerland)を用いて、次の設定で測定した:乾燥温度150℃、30秒間にわたり1mgを越える質量変化がない場合に自動スイッチオフ、5~20gの懸濁液の標準的乾燥。
【0242】
酸素捕捉試験
一定量の粉末を、酸素測定装置(GOX 100、GHM Messtechnik GmbH,Germany)を備えた密閉されたデシケータ中に置くことにより、酸素捕捉試験を実施した。空気中の酸素の相対量を定期的に記録し、ガスが理想気体の法則に従うことを仮定し、粉末により占められる体積を無視して、1グラムの試料(または活性物質)により捕捉された合計酸素量を推定した。結果をmL O/g粉末、またはmL O/g活性物質として表した。
【0243】
次の式を計算に使用した:
n(気体)=PV/(R・T)
n(O)=n(気体)×20.9/100
m(O)=n(O)×M(O
V(O2デシケータ)=V(デシケータ)×20.9/100
定数を次のように設定する:
R=8.314J・K-1・mol-1
T=295K
P=101300Pa
M(O)=32g・mol-1
空気中%O=20.9%
【0244】
実験の項で示した値は次のように計算される:
【数1】
【0245】
粒子状材料の粒度分布(X未満の直径を有する粒子の体積%)、d50値(容積中央粒子径)およびd98値:
微粒子粉末鉄などの粒子状材料の体積中央粒径d50を、Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction System(Malvern Instruments Plc.,Great Britain)を用い、粒子屈折率1.57、吸収率0.005として、ミー理論を使って評価した。あるいは、測定は、HELOS particle-size-analyser(Sympatec,Germany)で行うことができる。粒度分布全体にわたり一定の密度を仮定することにより、測定は重量分布に対し等価であると見なし得、測定方法への参照がなされる。
【0246】
粒子状材料の重量中央粒径および粒径質量分布を、沈降法により、すなわち、重力場での沈殿挙動の解析により測定した。測定は、Sedigraph(商標)5120を用いて行った。
【0247】
方法および測定器は、当業者に既知であり、フィラーおよび顔料の粒径の測定によく用いられる。測定は、0.1重量%のNa水溶液中で実施する。試料を高速攪拌装置および超音波を用いて分散した。
【0248】
粒子内圧入比細孔容積
粒子内圧入比細孔容積は、0.004μmのラプラススロート直径に等価な最大水銀圧力414MPa(60000psi)を備えたMicromeritics Autopore IV 9500水銀ポロシメーターを用いて、水銀圧入型ポロシメーター測定値から計算した。それぞれの圧力ステップで用いた平衡時間は20秒である。サンプル材料を分析用の5cmチャンバーの粉末針入度計中に密封した。水銀圧縮、針入度計膨張、およびサンプル材料圧縮に対し、ソフトウェアPore-Compを用いて補正する(Gane,P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews,G.P.and Ridgway,C.J.,“Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations”,Industrial and Engineering Chemistry Research,35(5),1996,p1753-1764.)。
【0249】
累積圧入データで認められる合計細孔容積は、214μmから約1~4μmまでの圧入データを含む2つの領域に分離でき、何らかの凝集塊構造間の試料の粗いパッキングが強く寄与していることを示している。これらの直径未満には、粒子それ自体の密な粒子間パッキングが存在する。それらが粒子内細孔も有する場合には、この領域は、二峰性として現れる。これらの3つの領域の合計が、粉末の合計全細孔容積を与えるが、元の試料の圧縮/分布の粗い気孔端の粉末の定着に強く依存する。これらの3つの領域の合計が、粉末の合計全細孔容積を与えるが、元の試料の圧縮/分布の粗い気孔端の粉末の定着に強く依存する。
【0250】
累積圧入曲線の一次導関数をとることにより、必然的に気孔遮蔽を含む等価ラプラス径に基づく孔径分布が明らかになる。微分曲線は、粗い凝集塊細孔構造領域、粒子間細孔領域および、存在する場合、粒子内細孔領域を明確に示す。粒子内細孔径範囲を知ることにより、合計細孔容積から残りの粒子間および凝集塊内細孔容積を差し引いて、目的の内部細孔の細孔容積のみを単位質量当たりの細孔容積(比細孔容積)として得ることができる。無論、この引き算の同じ原理を所望のその他の細孔径領域のいずれかを分離するのに適用できる。
【0251】
材料のBET比表面積
本文書全体を通して、フィラーの比表面積(m/g)は、当業者にはよく知られた(ISO9277:2010)BET法(吸着ガスとして窒素を使用)を用いて測定される。その後、フィラーの合計表面積(m)は、処理前のフィラー材料の比表面積および質量(g)の乗算により得られる。
【0252】
2 処理された表面反応炭酸カルシウムの調製
以下の調製の実施例および比較例の説明では、特に指示がない限り、「部」の形での重量の表示は、常に「重量部」を意味する。
【0253】
2.1 不飽和脂肪酸による処理
2.1.1 実施例1-粉末1
600gの表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g)を高速度ミキサー(MTI Mixer,MTI Mischtechnik International GmbH,Germany)に入れ、10分間(3000rpm、30℃)撹拌することによりコンディショニングした。その後、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、0.6部のリノール酸(3.6g、Sigma-Aldrich(Germany)、工業銘柄60~74%)を加え、撹拌を30℃でさらに20分間継続した。この処理レベルは、約0.16mg/mに相当する。その後、混合物を冷却し、混合機から取り出した。白色粉末を収集した(粉末1)。
【0254】
2.1.2 実施例2-粉末2
800gの表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g)を高速度ミキサー(MTI Mixer,MTI Mischtechnik International GmbH,Germany)に入れ、10分間撹拌する(3000rpm、30℃)ことによりコンディショニングした。その後、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、1.0部のリノール酸(8g、Sigma-Aldrich(Germany)、工業銘柄60~74%)を加え、撹拌を30℃でさらに20分間継続した。この処理レベルは、約0.27mg/mに相当する。その後、混合物を冷却し、混合機から取り出した。白色粉末を収集した(粉末2)。
【0255】
2.1.3 実施例3-粉末3
700gの表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g)を高速度ミキサー(MTI Mixer,MTI Mischtechnik International GmbH,Germany)に入れ、10分間撹拌する(3000rpm、30℃)ことによりコンディショニングした。その後、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、3.0部のリノール酸(21g、Sigma-Aldrich(Germany)、工業銘柄60~74%)を加え、撹拌を30℃でさらに20分間継続した。この処理レベルは、約0.81mg/mに相当する。その後、混合物を冷却し、混合機から取り出した。白色粉末を収集した(粉末3)。
【0256】
2.1.4 実施例4-粉末4
600gの表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g)を高速度ミキサー(MTI Mixer,MTI Mischtechnik International GmbH,Germany)に入れ、10分間撹拌する(3000rpm、30℃)ことによりコンディショニングした。その後、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、3.0部のオレイン酸(18g、Fluka(Belgium))を加え、撹拌を30℃でさらに20分間継続した。この処理レベルは、約0.81mg/mに相当する。その後、混合物を冷却し、混合機から取り出した。白色粉末を収集した(粉末4)。
【0257】
2.1.5 実施例5-粉末5
700gの表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g)を高速度ミキサー(MTI Mixer,MTI Mischtechnik International GmbH,Germany)に入れ、10分間撹拌する(1000rpm、30℃)ことによりコンディショニングした。その後、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、10部のオレイン酸(70g、Fluka(Belgium))を加え、30℃/2000rpmでさらに10分間、続けて、40℃/3000rpmで10分間、および最後に80℃/3000rpmで20分間、撹拌を継続した。この処理レベルは、約2.70mg/mに相当する。その後、混合物を冷却し、混合機から取り出した。白色粉末を収集した(粉末5)。
【0258】
2.1.6 実施例6-粉末6
500gの表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g)を室温でLodigeミキサー(M5 R-MK,Gebruder Lodige Maschinenbau GmbH,Germany)に入れた。撹拌を開始し、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、20部のオレイン酸(100g、Fluka(Belgium))を加え、添加後、撹拌を室温で1時間継続した。この処理レベルは、約5.41mg/mに相当する。その後、混合物を混合機から取り出した。白色粉末を収集した(粉末6)。
【0259】
2.1.7 実施例7-スラリー7
2Lのボトル中の500g(100部)の粉末4に、400gの脱イオン水、120gのエタノールおよび1.0部のポリアクリレート分散剤(11.9gの42重量%の100%ナトリウム中和ポリアクリレート(M=3500g/mol、pH=8)水溶液)を、強力撹拌(930rpm)下、室温で滴加した(Pendraulik攪拌機)。添加終了後、攪拌を10分間継続した。このスラリーをさらに変性することなく用いた(スラリー7)。
【0260】
2.2 アスコルビン酸による処理
2.2.1 実施例8-粉末8
300gの表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g)を室温でLodigeミキサー(M5 R-MK,Gebruder Lodige Maschinenbau GmbH,Germany)に入れた。撹拌を開始し、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、10部のL-アスコルビン酸(試薬グレード、Sigma life science,China、133gの予め調製した22.6重量%水溶液)を蠕動ポンプで滴加し(滴下時間:約20分)、添加後、撹拌を室温で20分間継続した。この処理レベルは、約2.70mg/mに相当する。その後、混合物を混合機から取り出した。ベージュ色/褐色の粉末を収集した(粉末8)。
【0261】
2.2.2 実施例9-粉末9
300gの乾燥した表面反応炭酸カルシウム(d50=4.5μm、BET比表面積=139m/g)をSomakonミキサー(Somakon Verfahrenstechnik UG,Germany)に入れ、30℃で10分間撹拌する(300rpm)ことによりコンディショニングした。その後、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、5部のD-イソアスコルビン酸(40mLの脱イオン水に溶解した15gを加える)を15分かけて滴加し、添加後、撹拌を30℃、300rpmで20分間継続した。この処理レベルは、約0.36mg/mに相当する。その後、混合物を混合機から取り出した。黄色/ベージュ色の粉末を収集した(粉末9)。
【0262】
2.3 没食子酸による表面処理
2.3.1 実施例10-粉末10
400gの乾燥した表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g)を室温でLodigeミキサー(M5 R-MK,Gebruder Lodige Maschinenbau GmbH,Germany)に入れ、100℃に加熱した。撹拌を開始し、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、10部の没食子酸(160gのエタノールに溶解した40g)を蠕動ポンプで滴加し(添加時間:約1時間)、添加後、撹拌を100℃で1時間継続した。この処理レベルは、約2.70mg/mに相当する。その後、混合物を混合機から取り出し、オーブン中(60℃、20ミリバール未満)でさらに1時間乾燥した。灰色の粉末を収集した(粉末10)。
【0263】
2.4 鉄による表面処理
2.4.1 実施例11-粉末11
420gの乾燥した表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g)を室温でLodigeミキサー(M5 R-MK,Gebruder Lodige Maschinenbau GmbH,Germany)に入れた。撹拌を開始し、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、4.8部の硫酸鉄七水和物(Sigma Aldrich,India、90gの予め調製した22.3重量%水溶液)を蠕動ポンプで滴加し(滴下時間:約1時間)、添加後、撹拌を室温で20分間継続した。この処理レベルは、約1.30mg/mに相当する。その後、混合物を混合機から取り出した。ベージュ色/褐色の粉末を収集した(粉末11)。
【0264】
2.4.2 実施例12-粉末12
300gの乾燥した表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g)をSomakonミキサー(Somakon Verfahrenstechnik UG,Germany)に入れ、120℃に加熱し、10分間撹拌する(500rpm)ことによりコンディショニングした。その後、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、5部のクエン酸(Sigma-Aldrich、20mLの脱イオン水に溶解した15g)を滴加し、添加後、撹拌を120℃、500rpmで20分間継続し、直ちに40℃に冷却した。
【0265】
第2段階では、100部の表面反応炭酸カルシウムに対し、3部の鉄ナノ粉末(9g、60~80nm粒径、Aldrich(China))を少しずつ分けて添加し、撹拌を20分間継続した(40℃、500rpm)。この処理レベルは、約0.81mg/mに相当する。その後、混合物を混合機から取り出した。灰色の粉末を収集した(粉末12)。
【0266】
2.5 比較例
2.5.1 比較例1-粉末CE1
粉末CE1は、未処理の表面反応炭酸カルシウム(d50=2.4μm、BET比表面積=37m/g、粒子内圧入比細孔容積=0.281cm/g、水分=1.58重量%)である。
【0267】
2.5.2 比較例2-CE2
CE2は、市販のリノール酸(Sigma-Aldrich(Germany)、工業銘柄60~74%)である。
【0268】
2.5.3 比較例3-CE3
CE3は、市販のオレイン酸(Fluka(Belgium))である。
【0269】
2.5.4 比較例4-粉末CE4
粉末CE4は、市販の(L)-アスコルビン酸結晶質粉末(Sigma life science、試薬グレード、China)である。
【0270】
2.5.1 比較例5-粉末CE5
粉末CE5は、未処理の表面反応炭酸カルシウム(d50=4.5μm、BET比表面積=139m/g、粒子内圧入比細孔容積=0.864cm/g、水分=6.77重量%)である。
表1は、調製された表面反応炭酸カルシウムに関する要約である。
【表1】
表2は、いくつかの処理された表面反応炭酸カルシウムの吸湿感受性の結果を示す。
【表2】
【0271】
3 コーティングカラー調製およびペーパーコーティング
実施例13(E13)
100部のCaCO(w/w)および6部(乾燥/乾燥)のスチレン-ブタジエンコポリマー系合成結合剤(Styronal D628(BASF,Germany))を含むコーティングカラーを、実施例7に準じたスラリーを用いて調製し、Fischer Papier AG,Switzerlandから入手したsuperYUPO(登録商標)箔(厚さ80μm、サイズ:18×26cm、62g/m、ポリプロピレン)の両側にコートし、ベルト乾燥器で乾燥した(150℃)。コーティング後、シートを直ちに密閉プラスチック袋中に保存し、使用まで酸素曝露を制限した。コーティングカラーの組成および塗布量を下表3にまとめている。
【表3】
【0272】
4 酸素捕捉試験
4.1 粉末での試験
一定量の粉末を、酸素測定装置(GOX 100、GHM Messtechnik GmbH,Germany)を備えた十分密閉されたデシケータ中に置くことにより、酸素捕捉試験を実施した。空気中の酸素の相対量を定期的に記録し、ガスが理想気体の法則に従うことを仮定し、粉末により占められる体積を無視して、1グラムの試料により捕捉された合計酸素量を推定した。結果はmL O/g粉末として表される。
【0273】
4.1.1 実施例14
実施例1からの500gの粉末を、約7Lの容積を有する密閉したデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約0.16mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表4に要約する。
【表4】
また、実施例14の結果を図1および2にも示す。
【0274】
4.1.2 実施例15
実施例2からの500gの粉末を、約7Lの容積を有する密閉したデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約0.27mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表5にも要約する。
【表5】
また、実施例15の結果を図1および2にも示す。
【0275】
4.1.3 実施例16
実施例3からの500gの粉末を、約7Lの容積を有する密閉したデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約0.81mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表6に要約する。
【表6】
また、実施例16の結果を図1および2にも示す。
【0276】
4.1.4 実施例17
実施例4からの500gの粉末を、約7Lの容積を有する密閉したデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約0.81mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表7に要約する。
【表7】
また、実施例17の結果を図3および4にも示す。
【0277】
4.1.5 実施例18
実施例5からの110gの粉末を、約7Lの容積を有する密閉したデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約2.70mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表8に要約する。
【表8】
また、実施例18の結果を図3および4にも示す。
【0278】
4.1.6 実施例19
実施例6からの35gの粉末を、約7Lの容積を有する密閉したデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約5.41mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表9に要約する。
【表9】
また、実施例19の結果を図3および4にも示す。
【0279】
4.1.7 実施例20
実施例10からの200gの粉末を、約2.9Lの容積を有する密閉したデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約2.70mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表10に要約する。
【表10】
また、実施例20の結果を図7および8にも示す。
【0280】
4.1.8 実施例21
実施例8からの500gの粉末を、約2.9Lの容積を有する密閉したデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約2.70mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表11に要約する。
【表11】
また、実施例21の結果を図5および6にも示す。
【0281】
4.1.9 実施例22
実施例9からの200gの粉末を、約7Lの容積を有する密閉したデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約0.36mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表12に要約する。
【表12】
また、実施例22の結果を図5および6にも示す。
【0282】
4.1.10 実施例23
実施例11からの100gの粉末を、密閉した7Lのデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約1.30mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表13に要約する。
【表13】
また、実施例23の結果を図9にも示す。
【0283】
4.1.11 実施例24
実施例12からの250gの粉末を、密閉した7Lのデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この処理レベルは、約0.81mg/mに相当する。この酸素捕捉試験結果を下表14に要約する。
【表14】
また、実施例24の結果を図9にも示す。
【0284】
4.1.10 比較例7
比較例1からの500gの粉末を、密閉した7Lのデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。2週間後、Oレベルの顕著な変化は認められなかった。この酸素捕捉試験結果を下表15に要約する。
【表15】
また、比較例7の結果を図5および9にも示す。
【0285】
4.1.11 比較例8
14.5gのオレイン酸(比較例3)を、密閉した7Lのデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この酸素捕捉試験結果を下表16に要約する。
【表16】
また、比較例8の結果を図4にも示す。
【0286】
4.1.12 比較例9
14.5gのリノール酸(比較例2)を50mLのビーカー中に入れ、密閉した7Lのデシケータ中に置いて、O量を定期的に記録した。この酸素捕捉試験結果を下表17に要約する。
【表17】
また、比較例9の結果を図2にも示す。
【0287】
4.1.13 比較例10
10gの(L)-アスコルビン酸結晶質粉末(Sigma life science、試薬グレード、China、比較例4の粉末)を、密閉した7Lのデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この酸素捕捉試験結果を下表18に要約する。
【表18】
また、比較例10の結果を図5および6にも示す。
【0288】
4.1.14 比較例11
比較例5からの200gの粉末を、密閉した7Lのデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。2週間後、Oレベルの顕著な変化は認められなかった。この酸素捕捉試験結果を下表19に要約する。
【表19】
また、比較例11の結果を図5にも示す。
【0289】
4.2 コート紙での試験
4.2.1 実施例25:実施例13からのペーパー(オレイン酸含有)
実施例13からのコート紙の136個の細片(5×18cm)を、さらに小片に切断し(各細片を4分割)、密閉した2.9Lのデシケータ中に置き、O量を定期的に記録した。この試験に使用されたコーティングの推定量(重量による)は84gであった。この酸素捕捉試験結果を下表20に要約する。
【表20】
また、実施例25の結果を図10にも示す。
【0290】
全ての実施例は、処理された表面反応炭酸カルシウムを用いて、高いO捕捉値が達成できることを示す。このように、表面反応炭酸カルシウムと組み合わせて、処理剤を用いることにより、おそらく、利用可能な表面積の増大を介して、Oとの反応を高めることができるのであろう。さらに、捕捉速度は、処理された表面反応炭酸カルシウムを用いることにより高めることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10