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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20230119BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G01R15/00 500
G01R19/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019011920
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020118629
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】松田 純
(72)【発明者】
【氏名】麦島 昭夫
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第10128433(DE,C1)
【文献】特開2017-015588(JP,A)
【文献】特開2009-229133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0082661(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19638288(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相インバータとモータとの間に接続される絶縁被覆された複数の母材を有する電流検出装置であって、
前記複数の母材は、第1の母材と、第2の母材と、第3の母材と、で構成され、
前記第1の母材は、前記3相インバータの第1相とモータとに接続されると共に、一対の第1の母材で構成され、
前記一対の第1の母材間に第1の抵抗体が挟み込まれ、
前記一対の第1の母材夫々の上面には第1の測定端子が固定配置され、
前記一対の第1の母材夫々は、前記第1の抵抗体が配置されている部分及び前記第1の測定端子が固定配置されている部分以外が絶縁被覆され、
前記第1の測定端子には、電流を検出できる第1の電流検出回路を備えた第1の基板が挿入され、これによって、該第1の基板が、前記第1の母材の上面に配置固定され、もって、前記第1の測定端子と、前記第1の電流検出回路とが電気的に接続されてなり、
前記第2の母材は、前記3相インバータの第2相とモータとに接続されると共に、一対の第2の母材で構成され、
前記一対の第2の母材間に第2の抵抗体が挟み込まれ、
前記一対の第2の母材夫々の下面には第2の測定端子が固定配置され、
前記一対の第2の母材夫々は、前記第2の抵抗体が配置されている部分及び前記第2の測定端子が固定配置されている部分以外が絶縁被覆され、
前記第2の測定端子には、電流を検出できる第2の電流検出回路を備えた第2の基板が挿入され、これによって、該第2の基板が、前記第2の母材の下面に配置固定され、もって、前記第2の測定端子と、前記第2の電流検出回路とが電気的に接続されてなり、
前記第3の母材は、絶縁被覆されると共に、前記3相インバータの第3相とモータとに接続され、
前記第3の母材の上面は、前記一対の第1の母材夫々の下面に密着配置され、
前記第3の母材の下面は、前記一対の第2の母材夫々の上面に密着配置されてなる電流検出装置。
【請求項2】
前記第1の基板並びに第2の基板を隠蔽するように、密着配置された前記第1の母材及び前記第2の母材並びに前記第3の母材の所定箇所を全て絶縁ケースで囲み、
前記絶縁ケースの外周面を導電性にしてなる請求項に記載の電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相インバータとモータとの間に接続される電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3相インバータとモータとの間に接続される電流検出装置として、例えば、特許文献1に記載のようなものが知られている。この特許文献1に記載の発明は、各相に流れる電流を3つのシャント抵抗器で個々に検出することにより、検出された各電流のうちいずれかが所定電流量を超える過電流となる場合に、過電流保護が行われるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-229133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、3相インバータとモータとの間の配線には、モータを駆動するにあたり大電流が流れることから、電気的損失を減らすため低抵抗が求められている。そしてさらに、3相インバータが発する高周波電流が周囲に放射しないように、各相の配線を密着させた低インダクタンスであることも求められている。
【0005】
そこで、そのような要求を満たすべく、3つのシャント抵抗器を重ね合わせることが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記のように3つのシャント抵抗器を重ね合わせてしまうと、電流検出回路を搭載した基板を配置することができないという問題があった。それゆえ、低抵抗並びに低インダクタンスの要求を満たすことができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、低抵抗並びに低インダクタンスの要求を満たすことができる電流検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
請求項1の発明によれば、3相インバータ(INV)とモータ(M)との間に接続される絶縁被覆された複数の母材(第1の母材2、第2の母材3、第3の母材4)を有する電流検出装置(1)であって、
前記複数の母材(第1の母材2、第2の母材3、第3の母材4)は、第1の母材(2)と、第2の母材(3)と、第3の母材(4)と、で構成され、
前記第1の母材(2)は、前記3相インバータ(INV)の第1相とモータ(M)とに接続されると共に、一対の第1の母材(2)で構成され、
前記一対の第1の母材(2)間に第1の抵抗体(20)が挟み込まれ、
前記一対の第1の母材(2)夫々の上面には第1の測定端子(21)が固定配置され、
前記一対の第1の母材(2)夫々は、前記第1の抵抗体(20)が配置されている部分及び前記第1の測定端子(21)が固定配置されている部分以外が絶縁被覆され、
前記第1の測定端子(21)には、電流を検出できる第1の電流検出回路を備えた第1の基板(5)が挿入され、これによって、該第1の基板(5)が、前記第1の母材(2)の上面に配置固定され、もって、前記第1の測定端子(21)と、前記第1の電流検出回路とが電気的に接続されてなり、
前記第2の母材(3)は、前記3相インバータ(INV)の第2相とモータ(M)とに接続されると共に、一対の第2の母材(3)で構成され、
前記一対の第2の母材(3)間に第2の抵抗体(30)が挟み込まれ、
前記一対の第2の母材(3)夫々の下面には第2の測定端子(31)が固定配置され、
前記一対の第2の母材(3)夫々は、前記第2の抵抗体(30)が配置されている部分及び前記第2の測定端子(31)が固定配置されている部分以外が絶縁被覆され、
前記第2の測定端子(31)には、電流を検出できる第2の電流検出回路を備えた第2の基板(6)が挿入され、これによって、該第2の基板(6)が、前記第2の母材(3)の下面に配置固定され、もって、前記第2の測定端子(31)と、前記第2の電流検出回路とが電気的に接続されてなり、
前記第3の母材(4)は、絶縁被覆されると共に、前記3相インバータ(INV)の第3相とモータ(M)とに接続され、
前記第3の母材(4)の上面は、前記一対の第1の母材(2)夫々の下面に密着配置され、
前記第3の母材(4)の下面は、前記一対の第2の母材(3)夫々の上面に密着配置されてなることを特徴としている。
【0011】
求項の発明によれば、上記請求項に記載の電流検出装置(1)において、前記第1の基板(5)並びに第2の基板(6)を隠蔽するように、密着配置された前記第1の母材(2)及び前記第2の母材(3)並びに前記第3の母材(4)の所定箇所を全て絶縁ケース(7)で囲み、
前記絶縁ケース(7)の外周面(7a)を導電性にしてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
請求項1に係る発明によれば、絶縁被覆された第3の母材(4)の上面に、絶縁被覆された第1の母材(2)が密着配置され、さらに、第3の母材(4)の下面に、絶縁被覆された第2の母材(3)が密着配置されている。そして、第1の母材(2)の絶縁被覆されていない部分に、第1の抵抗体(20)と、第1の母材(2)上に固定される第1の測定端子(21)と、を備えるようにすれば、第1の測定端子(21)に第1の基板(5)が挿入され、これによって、該第1の基板(5)が、第1の母材(2)の上面に配置固定される。そしてさらに、第2の母材(3)の絶縁被覆されていない部分に、第2の抵抗体(30)と、第2の母材(3)上に固定される第2の測定端子(31)と、を備えるようにすれば、第2の測定端子(31)に第2の基板(6)が挿入され、これによって、該第2の基板(6)が、第2の母材(3)の下面に配置固定される。
【0014】
しかして、本発明によれば、第1の母材(2)及び第2の母材(3)並びに第3の母材(4)を密着配置させた状態で、第1の基板(5)及び第2の基板(6)を配置することができる。これにより、低抵抗並びに低インダクタンスの要求を満たすことができる。
【0015】
また、請求項の発明によれば、第1の基板(5)並びに第2の基板(6)を隠蔽するように、密着配置された第1の母材(2)及び第2の母材(3)並びに第3の母材(4)の所定箇所を全て絶縁ケース(7)で囲み、その絶縁ケース(7)の外周面を導電性にしているから、第1の基板(5)及び第2の基板(6)もシールドされることとなり、もって、高周波電流が周囲に放射しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る電流検出装置の分解斜視図、(b)は、同実施形態に係る電流検出装置の斜視図である。
図2】(a)は、同実施形態に係る電流検出装置の断面図、(b)は、同実施形態に係る電流検出装置に第1の基板及び第2の基板を実装した状態を示す断面図である。
図3】モータ制御装置に同実施形態に係る電流検出装置を接続した状態を示す概念ブロック図である。
図4】同実施形態に係る電流検出装置に第1の基板及び第2の基板を実装し、その実装した第1の基板及び第2の基板を絶縁ケースで囲っている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る電流検出装置の一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0018】
本実施形態に係る電流検出装置1は、図3に示すモータ制御装置100の3相インバータINVとモータMとの間に接続されるものである。この電流検出装置1について、図1及び図2を参照して具体的に説明する。
【0019】
電流検出装置1は、図1(a)に示すように、第1の母材2と、第2の母材3と、第3の母材4と、を有している。この第1の母材2は、所謂バスパーと呼ばれるもので、銅等の金属からなり、長尺の略矩形状に形成されている。そして、この第1の母材2は、図2に示すように、一対の第1の母材2で構成され、この一対の第1の母材2間に第1の抵抗体20が挟み込まれている。この第1の抵抗体20は、図1及び図2に示すように、厚板状で短尺の矩形状に形成されており、例えば、Cu-Mn系合金、Cu-Ni系合金、Ni-Cr系合金、等で形成されている。しかして、このように形成される第1の抵抗体20の両側面20a,20bには、図1及び図2に示すように、図示左に位置する第1の母材2が第1の抵抗体20の一方の側面20aに溶接により接合され、図示右に位置する第1の母材2が第1の抵抗体20の他方の側面20bに溶接により接合されている。これにより、一対の第1の母材2間に第1の抵抗体20が挟み込まれ、もって、第1の母材2と第1の抵抗体20とが一体的に形成されることとなる。
【0020】
一方、一対の第1の母材2には、図1及び図2に示すように、一対の第1の母材2上(図示では、上面)にそれぞれ第1の測定端子21が溶接により立設固定されている。この第1の測定端子21は、銅,錫メッキ等で形成されており、図2(b)に示す電流検出用の第1の基板5を実装可能なものである。
【0021】
また一方、一対の第1の母材2は、第1の抵抗体20及び第1の測定端子21が形成されている箇所を除いた大半の箇所を印刷や紛体等で形成された第1の絶縁層22で被覆されることによって、絶縁被覆されている。これにより、図1(b)に示すように、第1の母材2と、第2の母材3と、第3の母材4とが重ね合わさっても相毎の絶縁性を確保することができる。なお、第1の母材2の長手方向に沿う一側面2a側(図1に示す右側)には、図示しないボルトの軸部を挿通させるための円形状のボルト孔2bが上下方向に貫通して形成されている。
【0022】
第2の母材3は、所謂バスパーと呼ばれるもので、銅等の金属からなり、長尺の略矩形状に形成されている。そして、この第2の母材3は、図2に示すように、一対の第2の母材3で構成され、この一対の第2の母材3間に第2の抵抗体30が挟み込まれている。この第2の抵抗体30は、図1及び図2に示すように、厚板状で短尺の矩形状に形成されており、例えば、Cu-Mn系合金、Cu-Ni系合金、Ni-Cr系合金、等で形成されている。しかして、このように形成される第2の抵抗体30の両側面30a,30bには、図1及び図2に示すように、図示左に位置する第2の母材3が第2の抵抗体30の一方の側面30aに溶接により接合され、図示右に位置する第2の母材3が第2の抵抗体30の他方の側面30bに溶接により接合されている。これにより、一対の第2の母材3間に第2の抵抗体30が挟み込まれ、もって、第2の母材3と第2の抵抗体30とが一体的に形成されることとなる。
【0023】
一方、一対の第2の母材3には、図1及び図2に示すように、一対の第2の母材3上(図示では、下面)にそれぞれ第2の測定端子31が溶接により立設固定されている。この第2の測定端子31は、銅,錫メッキ等で形成されており、図2(b)に示す電流検出用の第2の基板6を実装可能なものである。
【0024】
また一方、一対の第2の母材3は、第2の抵抗体30及び第2の測定端子31が形成されている箇所を除いた大半の箇所を印刷や紛体等で形成された第2の絶縁層32で被覆されることによって、絶縁被覆されている。これにより、図1(b)に示すように、第1の母材2と、第2の母材3と、第3の母材4とが重ね合わさっても相毎の絶縁性を確保することができる。なお、第2の母材3の長手方向に沿う一側面3a側(図1に示す右側)には、図示しないボルトの軸部を挿通させるための円形状のボルト孔3bが上下方向に貫通して形成されている。
【0025】
第3の母材4は、所謂バスパーと呼ばれるもので、銅等の金属からなり、長尺の略矩形状に形成されている。そして、この第3の母材4は、略全領域に亘って、印刷や紛体等で形成された第3の絶縁層42で被覆されることによって、絶縁被覆されている。これにより、図1(b)に示すように、第1の母材2と、第2の母材3と、第3の母材4とが重ね合わさっても相毎の絶縁性を確保することができる。なお、第3の母材4の長手方向に沿う一側面4a側(図1に示す右側)には、図示しないボルトの軸部を挿通させるための円形状のボルト孔4bが上下方向に貫通して形成されている。
【0026】
かくして、上記のように構成される第1の母材2と、第2の母材3と、第3の母材4とは、図1(b)に示すように重ね合わされて使用されることとなる。すなわち、図1(b)及び図2に示すように、第3の絶縁層42で被覆されることで絶縁被覆されている第3の母材4の上面に、第1の絶縁層22で被覆されることで絶縁被覆されている第1の母材2の下面が密着配置され、第3の絶縁層42で被覆されることで絶縁被覆されている第3の母材4の下面に、第2の絶縁層32で被覆されることで絶縁被覆されている第2の母材3の上面が密着配置されることによって、第1の母材2と、第2の母材3と、第3の母材4とは、重ね合わさることとなる。そして、この状態で、図2(b)に示すように、第1の測定端子21に、電流検出用の第1の基板5が実装されることによって、第1の母材2と対向する位置に第1の基板5が配置固定され、第2の測定端子31に、電流検出用の第2の基板6が実装されることによって、第2の母材3と対向する位置に第2の基板6が配置固定されることとなる。なお、第1の母材2と、第2の母材3と、第3の母材4とを重ね合わせるにあたっては、接着剤等を用いて重ね合わせても良いし、単に、重ねわせるだけでも良く、どのような方法で重ね合わせても良い。
【0027】
ところで、この第1の基板5は、図2(b)に示すように、横長矩形状に形成されると共に、樹脂等で形成されており、電流検出回路を構成する様々なICチップ50が搭載され、これらICチップ50は、図示しない配線パターンによって電気的に接続されている。そして、この第1の基板5には、図2(b)に示すように、第1の測定端子21が挿入可能な貫通孔5aが穿設されている。しかるに、この貫通孔5aに第1の測定端子21が挿入されることによって、電流検出用の第1の基板5が実装されることととなる。
【0028】
一方、第2の基板6は、図2(b)に示すように、横長矩形状に形成されると共に、樹脂等で形成されており、電流検出回路を構成する様々なICチップ60が搭載され、これらICチップ60は、図示しない配線パターンによって電気的に接続されている。そして、この第2の基板6には、図2(b)に示すように、第2の測定端子31が挿入可能な貫通孔6aが穿設されている。しかるに、この貫通孔6aに第2の測定端子31が挿入されることによって、電流検出用の第2の基板6が実装されることととなる。
【0029】
かくして、図2(b)に示すように、第1の母材2と、第2の母材3と、第3の母材4とが重ね合わさり、第1の測定端子21に、電流検出用の第1の基板5が実装され、第2の測定端子31に、電流検出用の第2の基板6が実装された電流検出装置1は、図3に示すモータ制御装置100の3相インバータINVとモータMとの間に接続されることとなる。これにより、3相インバータINVからモータMへ流れる3相のうちの何れか1相の電流値が第1の測定端子21から取り出され、電流検出回路を構成する様々なICチップ50によって信号処理され、第1の基板5の出力端子(図示せず)から検出電流として出力されることとなる。そしてさらに、3相インバータINVからモータMへ流れる3相のうちの何れか1相の電流値が第2の測定端子31から取り出され、電流検出回路を構成する様々なICチップ60によって信号処理され、第2の基板6の出力端子(図示せず)から検出電流として出力されることとなる。
【0030】
しかして、このようにすれば、3相インバータINVからモータMへ流れる3相のうちの何れか2相の電流値を検出することができることとなり、もって、3相の電流値を検出することができることとなる。この点、図3に示すモータ制御装置100の構成を説明することで、詳しく説明することとする。
【0031】
モータ制御装置100は、ベクトル制御によりPWM信号を生成してモータを駆動制御するものであって、ベクトル制御では、モータの電機子巻線に流れる電流を、永久磁石の磁束方向と、それに直交する方向とに分離してそれらを独立に調整し、磁束と発生トルクとを制御し、電流制御では、モータの回転子と共に回転するd-q座標系で表されたd軸電流(励磁電流)、q軸電流(トルク成分電流)が用いられる。具体的に説明すると、図3に示すように、モータ制御装置100には、d軸電流指令値Idref、q軸電流指令値Iqrefが入力される。このd軸電流指令値Idrefは、減算器101に入力され、q軸電流指令値Iqrefは、減算器102に入力される。この減算器101は、d軸電流指令値Idrefからd軸電流値Idを減算してd軸電流偏差ΔIdを求めるものである。そしてさらに、減算器102は、q軸電流指令値Iqrefからq軸電流値Iqを減算してq軸電流偏差ΔIqを求めるものである。
【0032】
しかして、このように減算器101にて求められたd軸電流偏差ΔIdは、PI制御部103によって、PID(Proportional-Integral-Differential)演算が実行される。これにより、d-q座標系で表されるd軸電圧指令値Vdが生成されることとなる。また、減算器102にて求められたq軸電流偏差ΔIqは、PI制御部104によって、PID演算が実行される。これにより、d-q座標系で表されるq軸電圧指令値Vqが生成されることとなる。
【0033】
しかして、このように生成されたd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqは、dq/αβ座標変換部105により、α-β座標系で表した値に変換され、さらに、αβ/UVW座標変換部106により、各相電圧指令値Vu、Vv、Vwに変換されることとなる。なお、dq/αβ座標変換部105における座標変換の計算には、モータMの回転子の回転角度θが用いられる。
【0034】
しかして、このように変換された各相電圧指令値Vu、Vv、Vwは、PWM変換部107に出力され、もって、PWM変換部107にて、PWM信号に変換され、3相インバータINVに出力されることとなる。この3相インバータINVは、PWM信号に応じて、図示しない直流電源(バッテリ等)の電力を3相交流電力に変換し、もって、モータMを駆動制御することとなる。
【0035】
ところで、この3相インバータINVの各相出力端子は、それぞれ、モータMの各相固定子巻線(図示せず)に接続されており、両者間を接続する配線として、電流検出装置1が接続されている。この電流検出装置1は、3相の電流値Iu、Iv,Iwのうち、何れか2相の電流値(本実施形態では、Iu、Iwを例示)を検出するものである。すなわち、3相のうちの1相の電流値Iuが第1の測定端子21から取り出され、電流検出回路を構成する様々なICチップ50によって信号処理され、第1の基板5の出力端子(図示せず)から検出電流として出力されることとなる。そしてさらに、3相のうちの何れか1相の電流値Iwが第2の測定端子31から取り出され、電流検出回路を構成する様々なICチップ60によって信号処理され、第2の基板6の出力端子(図示せず)から検出電流として出力されることとなる。これにより、電流検出装置1にて、3相の電流値Iu、Iv,Iwのうち、何れか2相の電流値(本実施形態では、Iu、Iwを例示)を検出することができることとなる。なお、図2(b)に示すように、第1の母材2と、第2の母材3と、第3の母材4とは、重ね合わさっているが、第1の絶縁層22で被覆されることによって、第1の母材2は絶縁被覆され、さらに、第2の絶縁層32で被覆されることによって、第2の母材3は絶縁被覆され、そしてさらに、第3の絶縁層42で被覆されることによって、第3の母材4は絶縁被覆されているから、相毎の絶縁性を確保している。これにより、3相の電流値Iu、Iv,Iwのうち、何れか2相の電流値(本実施形態では、Iu、Iwを例示)を検出するにあたって、不正確な電流値を検出してしまう事態を防止することができる。
【0036】
かくして、このように検出された電流値Iu、Iwは、UVW/αβ座標変換部108にてα-β座標系に変換されることとなる。
【0037】
ところで、3相交流は、Iu+Iv+Iw=0という関係式が成り立つことが知られている。それゆえ、3相のうちの何れか2相の電流値を検出すれば、残りの1相の電流値は計算によって算出することができる。しかるに、UVW/αβ座標変換部108は、検出された電流値Iu、Iwに基づき、Iu+Iv+Iw=0の関係式から、Ivの電流値を算出した上で、α-β座標系に変換することとなる。
【0038】
しかして、このようにα-β座標系に変換されたデータは、αβ/dq座標変換部109にて、d-q座標系に変換してd軸電流値Id及びq軸電流値Iqに演算される。そしてその演算されたd軸電流値Idは、減算器101に入力され、q軸電流値Iqは、減算器102に入力されることとなる。なお、αβ/dq座標変換部109における座標変換の計算には、モータMの回転子の回転角度θが用いられる。
【0039】
かくして、このようにして、モータMは駆動制御させることとなり、3相インバータINVからモータMへ流れる3相のうちの何れか2相の電流値を検出することができることとなる。そして、3相インバータINVからモータMへ流れる3相のうちの何れか2相の電流値を検出すれば、残り1相の電流値は計算によって算出することができることとなるから、3相インバータINVからモータMへ流れる3相のうちの何れか2相の電流値を検出できれば、3相の電流値を検出することができることとなる。
【0040】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、第3の絶縁層42で被覆されることで絶縁被覆されている第3の母材4の上面に、第1の絶縁層22で被覆されることで絶縁被覆されている第1の母材2の下面が密着配置され、第3の絶縁層42で被覆されることで絶縁被覆されている第3の母材4の下面に、第2の絶縁層32で被覆されることで絶縁被覆されている第2の母材3の上面が密着配置されている。そして、第1の母材2に第1の抵抗体20と、第1の測定端子21を設けることによって、第1の測定端子21に第1の基板5を実装することができ、もって、第1の母材2と対向する位置に第1の基板5が配置固定されることとなる。そしてさらに、第2の母材3に第2の抵抗体30と、第2の測定端子31を設けることによって、第2の測定端子31に第2の基板6を実装することができ、もって、第2の母材3と対向する位置に第2の基板6が配置固定されることとなる。
【0041】
しかして、本実施形態によれば、第1の母材2及び第2の母材3並びに第3の母材4を重ね合わせた状態で、電流検出回路を搭載した第1の基板5及び第2の基板6を配置することができるため、もって、低抵抗並びに低インダクタンスの要求を満たすことができる。
【0042】
なお、本実施形態において示した電流検出装置1は、あくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。例えば、図4に示すように、第1の基板5及び第2の基板6を隠蔽するように、密着配置された第1の母材2及び第2の母材3並びに第3の母材4の所定箇所を全て絶縁ケース7で囲むようにしても良い。
【0043】
なお、図4では、第1の基板5及び第2の基板6を隠蔽するように、密着配置された第1の母材2及び第2の母材3並びに第3の母材4の所定箇所を一つの絶縁ケース7で囲むものを例示したが、それに限らず、第1の基板5、第2の基板6をそれぞれ別の絶縁ケースを用いて囲むようにしても良い。
【0044】
また、絶縁ケース7の表面(外周面)7aを、金属などの導電性物質で覆い、導電性にしても良い。このようにすれば、第1の基板5及び第2の基板6もシールドされることとなるため、高周波電流が周囲に放射しないようにすることができる。
【0045】
一方、本実施形態においては、3相インバータINVの3相のうちの2相の電流値として、Iu、Iwを検出する例を示したが、それに限らず、Iv、Iwでも良いし、Iu、Ivでも良く、3相のうちの何れか2相の電流値を検出しさえすれば良い。
【符号の説明】
【0046】
1 電流検出装置
2 第1の母材
20 第1の抵抗体
21 第1の測定端子
22 第1の絶縁層
3 第2の母材
30 第2の抵抗体
31 第2の測定端子
32 第2の絶縁層
4 第3の母材
42 第3の絶縁層
5 第1の基板
6 第2の基板
7 絶縁ケース
7a 表面(外周面)
INV 3相インバータ
M モータ
図1
図2
図3
図4