(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】トンネルの防音扉の遮音施工方法及びトンネルの防音扉の遮音構造
(51)【国際特許分類】
E21D 9/00 20060101AFI20230119BHJP
E21F 17/00 20060101ALI20230119BHJP
E21D 9/14 20060101ALI20230119BHJP
E01F 8/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E21D9/00 C
E21F17/00
E21D9/14
E01F8/00
(21)【出願番号】P 2019060070
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】小林 正明
(72)【発明者】
【氏名】松岡 明彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 琢志
(72)【発明者】
【氏名】小泉 穂高
(72)【発明者】
【氏名】小林 由委
(72)【発明者】
【氏名】和久田 敦志
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204380(JP,A)
【文献】特開2018-180557(JP,A)
【文献】特開2006-037471(JP,A)
【文献】特開2001-355400(JP,A)
【文献】特開2015-180797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/00
E21F 17/00
E21D 9/14
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの防音扉の遮音施工方法であって、
前記防音扉に設けられる車両用扉の上端を前記防音扉に固定
して前記防音扉の剛性を向上する工程及び前記車両用扉の下端をベースコンクリートに固定
して前記防音扉の剛性を向上する工程の少なくともいずれか一方の工程を含むことを特徴とする、トンネルの防音扉の遮音施工方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記車両用扉は、第1扉と第2扉を有する両開き戸であり、
前記第1扉と前記第2扉とを召し合わせ部で固定することを特徴とする、トンネルの防音扉の遮音施工方法。
【請求項3】
トンネルの防音扉の遮音構造であって、
前記防音扉に設けられる車両用扉の上端から上方へ延びる第1固定板と、
前記第1固定板を前記防音扉に固定する第1ボルトと、
を含むことを特徴とする、トンネルの防音扉の遮音構造。
【請求項4】
トンネルの防音扉の遮音構造であって、
前記防音扉に設けられる車両用扉の下端から下方へ延びる第2固定板と、
前記第2固定板をベースコンクリートに固定する第2ボルトと、
を含むことを特徴とする、トンネルの防音扉の遮音構造。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記車両用扉は、第1扉と第2扉を有する両開き戸であり、
前記第1扉から前記第2扉側へ延びる第3固定板と、
前記第3固定板を前記第2扉に固定する第3ボルトと、
をさらに含むことを特徴とする、トンネルの防音扉の遮音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの防音扉の遮音施工方法及びトンネルの防音扉の遮音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、道路や鉄道用トンネルの掘削土木工事においては、掘削時に発生する機械の振動や発破作業時に発生する発破音などの騒音が頻繁に発生する。このとき発生する騒音は、現場の作業員や近隣の住民等に多大な不快感を与えるとともに、また健康に対する悪影響を及ぼすこともある。このため、トンネル土木工事を行う際には十分な遮音対策が必要となる。
【0003】
特に、発破作業を伴う山岳トンネルなどの工事現場では、トンネル発破音が外部環境に漏れ出すことを防止すべく、トンネル坑口付近に防音扉を設置するのが一般的である。これは、鋼鉄製やコンクリート製など質量が大きい防音扉によってトンネル坑口を塞ぐことで遮音効果を得るものである。
【0004】
しかしながら、トンネル発破音は、低周波帯域から高周波帯域まで幅広い音域を持つ大音量の音である。こうした発破音に対して、従来の防音扉で対処しようとした場合、扉の質量に応じて高周波帯域の音については遮音効果が得られるが、大きな質量の部材であっても通過しやすい低周波帯域の音については低減効果が小さい。
【0005】
そこで、トンネルの坑口ないし坑内を隔壁で閉塞し、一端をトンネル坑内に開口し他端を閉塞しそれぞれ経路長が異なる複数の管体を、前記所定隔壁よりも切羽側に設置するトンネル発破音消音器(特許文献1)が提案されている。この発明によれば、トンネル発破音のうち低周波帯域の音についても消音効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案される方法では、発破音源からの音波と管体で反射した音波が逆位相となり互いに打ち消し合うことで消音するものであるため、複数の管体で特定の周波数を消音する効果は得られるものの、幅広い周波数帯について消音効果が得られるものではない。すなわち、この方法では、例えば63Hz、32Hz、16Hzといった特定の音波に対する消音効果を有する管体を準備しても、それらの間の例えば20Hz、40Hzの音波に対しては16Hz、32Hz、63Hzと同じ消音効果が得られない。
【0008】
そこで、本発明は、幅広い低周波数の帯域に対して防音扉の遮音性能を向上させることができるトンネルの防音扉の遮音施工方法及びトンネルの防音扉の遮音構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[1]本発明に係るトンネルの防音扉の遮音施工方法の一態様は、
トンネルの防音扉の遮音施工方法であって、
前記防音扉に設けられる車両用扉の上端を前記防音扉に固定して前記防音扉の剛性を向上する工程及び前記車両用扉の下端をベースコンクリートに固定して前記防音扉の剛性を向上する工程の少なくともいずれか一方の工程を含むことを特徴とする。
【0011】
前記トンネルの防音扉の遮音施工方法の一態様によれば、幅広い低周波数の帯域に対してトンネルの防音扉の遮音性能を向上させることができる。
【0012】
[2]前記トンネルの防音扉の遮音施工方法において、
前記車両用扉は、第1扉と第2扉を有する両開き戸であり、
前記第1扉と前記第2扉とを召し合わせ部で固定することができる。
【0013】
前記トンネルの防音扉の遮音施工方法の一態様によれば、幅広い低周波数の帯域に対してトンネルの防音扉の遮音性能をさらに向上させることができる。
【0014】
[3]本発明に係るトンネルの防音扉の遮音構造の一態様は、
トンネルの防音扉の遮音構造であって、
前記防音扉に設けられる車両用扉の上端から上方へ延びる第1固定板と、
前記第1固定板を前記防音扉に固定する第1ボルトと、
を含むことを特徴とする。
【0015】
[4]本発明に係るトンネルの防音扉の遮音構造の一態様は、
トンネルの防音扉の遮音構造であって、
前記防音扉に設けられる車両用扉の下端から下方へ延びる第2固定板と、
前記第2固定板をベースコンクリートに固定する第2ボルトと、
を含むことを特徴とする。
【0016】
前記トンネルの防音扉の遮音構造の一態様によれば、幅広い低周波数の帯域に対してトンネルの防音扉の遮音性能を向上させることができる。
【0017】
[5]前記トンネルの防音扉の遮音構造において、
前記車両用扉は、第1扉と第2扉を有する両開き戸であり、
前記第1扉から前記第2扉側へ延びる第3固定板と、
前記第3固定板を前記第2扉に固定する第3ボルトと、
をさらに含むことができる。
【0018】
前記トンネルの防音扉の遮音構造の一態様によれば、幅広い低周波数の帯域に対してトンネルの防音扉の遮音性能をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、幅広い低周波数の帯域に対して防音扉の遮音性能を向上させることができるトンネルの防音扉の遮音施工方法及びトンネルの防音扉の遮音構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係るトンネルの防音扉の正面図である。
【
図2】本実施形態に係るトンネルの防音扉のA-A断面図である。
【
図3】本実施形態に係るトンネルの防音扉のB-B断面図である。
【
図7】実施例1の遮音性能の低減量と中心周波数との関係を示すグラフである。
【
図8】実施例2の遮音性能の低減量と中心周波数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0022】
本発明の一実施形態に係るトンネルの防音扉の遮音施工方法の一態様は、トンネルの防音扉の遮音施工方法であって、前記防音扉に設けられている車両用扉の上端を前記防音扉に固定する工程及び前記車両用扉の下端をベースコンクリートに固定する工程の少なくともいずれか一方の工程を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の一実施形態に係るトンネルの防音扉の遮音構造の一態様は、トンネルの防音扉の遮音構造であって、前記防音扉に設けられている車両用扉の上端から上方へ延びる第1固定板と、前記第1固定板を前記防音扉に固定する第1ボルトと、を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の一実施形態に係るトンネルの防音扉の遮音構造の一態様は、トンネルの防音扉の遮音構造であって、前記防音扉に設けられている車両用扉の下端から下方へ延びる第2固定板と、前記第2固定板をベースコンクリートに固定する第2ボルトと、を含むことを特徴とする。
【0025】
1.防音扉
図1~
図3を用いて本実施形態に係るトンネル10の防音扉20の遮音構造について説明する。
図1は本実施形態に係るトンネル10の防音扉20の正面図であり、
図2は本実施形態に係るトンネル10の防音扉20のA-A断面図であり、
図3は本実施形態に係るトンネル10の防音扉20のB-B断面図である。
【0026】
トンネル10としては、例えば、山岳トンネルがあげられる。山岳トンネルでは地山の岩盤などをダイナマイトによる発破作業で崩し、坑道を掘り進める。発破作業に伴う発破音は、トンネル10内をトンネル坑口12に向かって伝搬する。トンネル10の開口であるトンネル坑口12から外部へ発破音が漏れることを防止するため、トンネル坑口12を塞ぐように防音扉20が設置される。
【0027】
防音扉20は、トンネル10のトンネル坑口12を塞ぐように設置される。防音扉20は、トンネル坑口12に固定される遮音板16と、風管が接続される風管接続部14と、観音開きに開閉する車両用扉30と、人が通行にする人用扉50とを備える。
【0028】
遮音板16は、トンネル坑口12の内面に沿って隙間なく施工され、例えば3つの開口を有する。遮音板16の3つの開口にはそれぞれ、風管接続部14と車両用扉30と人用扉50とが設けられる。遮音板16は、車両用扉30の上及び左右を囲むように例えばH形鋼の枠26を有する。枠26は、車両用扉30の上側に横枠26aと、車両用扉30の左右に縦枠26b,26bと、を備える。遮音板16は、2枚の金属板の間に吸音材を挟み込んだ構造を有する。金属板としては、鋼板等の金属板を用いることができる。吸音材としては、グラスウール、軟質ウレタンフォーム等を用いることができる。遮音板16は
、金属板にコンクリートを吹き付けたものであってもよい。
【0029】
風管接続部14は、遮音板16に設けられる円形の開口である。風管は、トンネル内に空気を供給するための管で、送風機と接続される。風管は、風管接続部14で遮音板16に接続する。
【0030】
車両用扉30は、トンネル10の内部へ車両の通行を可能にする観音開きの扉である。車両としては、トンネル内部で作業する重機、発破により発生した岩石等の搬出のための車両などがある。車両用扉30は、第1扉36と第2扉38を有する両開き戸である。第1扉36と第2扉38とは、左右の両端と縦枠26b,26bとの間にヒンジ部を有し、遮音板16に対して回転して開閉可能である。第1扉36と第2扉38とは略中央に召し合わせ部39を有する。よって、車両用扉30は、略中央から左右に観音開きにトンネル坑口12側へ開くことができる。
【0031】
車両用扉30は、遮音板16と同じ材質で構成することができる。車両用扉30は、金属製の2枚の金属板、例えば鋼板の間に吸音材を挟み込んだ構造である。車両用扉30の外面または内面に金属板の質量を上げるためにコンクリートを吹き付けてもよいし、金属板の剛性を上げるために特開2017-227109の遮音構造体をさらに採用してもよい。
【0032】
車両用扉30は複数(例えば4本)の閂31を有し、発破を行う際には、閂31によって第1扉36と第2扉38が開かないようにする。閂31は、第1扉36及び第2扉38に設けられるL字型の金物(閂鎹)に上から落としこんで車両用扉30が開かないようにするが、閂31と金物との間には隙間がある。そのため、第1扉36及び第2扉38は前後に数mm程度の移動が許容されることになり、閂31だけでは遮音板16と車両用扉30との一体化は達成されない。つまり、遮音板16に対して車両用扉30が前後に移動可能であるため、車両用扉30に閂31を掛けただけでは防音扉20の全体としての剛性は低く、特に低い周波数帯の音波に対する遮音性能が低い。
【0033】
遮音効果は、構造体の共振周波数以下の周波数領域においては、構造体の剛性に対応して遮音効果が律則される剛性則と称される法則に依存するとともに、構造体の共振周波数以上の周波数領域においては、構造体の質量に対応して遮音効果が律則される質量則に依存する。防音扉20は、以下に説明する固定構造を採用することにより、防音扉20全体としての剛性を上げて防音扉20の共振周波数が高くなるようにして、共振周波数よりも低い周波数帯の遮音性能を向上させる。
【0034】
2.固定構造
図1~
図6を用いて、防音扉20における車両用扉30の固定構造について説明する。
図4は上部構造22を説明する縦断面図であり、
図5は下部構造24を説明する縦断面図であり、
図6は召し合わせ部39を説明する横断面図である。
図4~
図6は全て車両用扉30を閉じた状態を示す。
【0035】
図1及び
図4に示すように、防音扉20の上部構造22は、防音扉20に設けられる車両用扉30の上端32から上方へ延びる第1固定板60と、第1固定板60を防音扉20に固定する第1ボルト62(
図4に示す)と、を含む。
【0036】
第1固定板60は、金属製例えば鋼板である。第1固定板60は、第1扉36及び第2扉38の上端32に間隔をあけて複数例えば6個が溶接されて取り付けられる。第1固定板60は、例えば一部を切り欠いたL形鋼である。第1固定板60は、複数例えば上下に2つの貫通孔を有する。車両用扉30を閉じたときに貫通孔と対応する遮音板16の枠2
6の横枠26aに雌ねじ部としての第1ナット64が溶接で固定される。
【0037】
車両用扉30を閉じた状態で、第1固定板60であるL形鋼の平面の一方を上端32の上にある遮音板16の横枠26aに当接させる。第1固定板60の貫通孔に第1ボルト62を挿通して、第1ボルト62を第1ナット64に締結する。これにより、車両用扉30の上端32は遮音板16の横枠26aに固定され、車両用扉30は前後の移動が制限される。横枠26aは、縦枠26b,26bに固定される。縦枠26b,26bは、上側がトンネル10に固定され、下側が床コンクリートまたはベースコンクリート40に固定される。
【0038】
図1及び
図5に示すように、防音扉20の下部構造24は、車両用扉30の下端34から下方へ延びる第2固定板70と、第2固定板70をベースコンクリート40に固定する第2ボルト72(
図5に示す)と、を含む。下端34にはゴム板が下端34とベースコンクリート40との隙間を塞ぐように設けられる。
【0039】
第2固定板70は、金属製例えば鋼板である。第2固定板70は、車両用扉30を閉じた状態で、第1扉36及び第2扉38の下端34に間隔をあけて複数例えば6個が取付ボルト74で取り付けられる。第2固定板70は、例えばL形金具である。第2固定板70は、例えば上下に長い貫通孔を有する。工事の経過と共にベースコンクリート40が沈み込み、ベースコンクリート40と下端34との間隔が広がるからである。
【0040】
ベースコンクリート40には上端が開口するナットアンカー76が間隔をあけて複数個埋設される。ベースコンクリート40は、トンネル10の地面の高さに合わせてコンクリートが打設される。ベースコンクリート40は、プレキャストコンクリートであってもよい。
【0041】
車両用扉30を閉じた状態で、第2固定板70を下端34から垂下するように取付ボルト74で車両用扉30に取り付ける。第2固定板70の下面をベースコンクリート40上に当接させ、第2固定板70に設けられた貫通孔に第2ボルト72を挿通して、第2ボルト72をナットアンカー76の雌ねじに締結する。これにより、車両用扉30の下端34はベースコンクリート40に固定され、車両用扉30は前後の移動が制限される。本実施形態では第2固定板70を車両用扉30におけるトンネル10側に固定したが、これに限らず、第2固定板70を車両用扉30におけるトンネル坑口12側すなわちトンネル10の外側に固定してもよい。トンネル10の外側であれば、第2固定板70の取付作業をトンネル10内に入らずに作業することができるため、安全性が向上し、施工省力化できる。
【0042】
このように、車両用扉30が遮音板に対し前後の移動を制限されることにより、車両用扉30が遮音板16と一体化して防音扉20全体の剛性が向上する。防音扉20の剛性の向上により、幅広い低周波数の帯域に対してトンネル10の防音扉20の遮音性能を向上させることができる。防音扉20の剛性を向上させるためには、車両用扉30の上端32及び下端34の両方を固定することが好ましいが、上端32及び下端34のいずれか一方だけを固定してもよい。上端32及び下端34のいずれか一方だけを固定してもその分だけ防音扉20の剛性が向上し、遮音性能が向上するからである。
【0043】
図1及び
図6に示すように、防音扉20は、第1扉36から第2扉38側へ延びる第3固定板80と、第3固定板80を第2扉38に固定する第3ボルト82(
図6に示す)と、をさらに含む。
図6に示すように、切羽側に第2扉38から第1扉36側へ延びる第3固定板80をさらに有してもよいし、切羽側だけに設けてもよい。
【0044】
第3固定板80は、金属製例えば鋼板である。第3固定板80は、第1扉36と第2扉38との召し合わせ部39に上下の間隔をあけて複数例えば6個が溶接されて取り付けられる。第3固定板80は、第1扉36に溶接されるが、例えば
図6のように第3固定板80を切羽側にも取り付ける場合には第2扉38に溶接される。第3固定板80は、例えば平鋼である。第3固定板80は、溶接された扉から他方の扉側へ延在し、貫通孔を有する。車両用扉30を閉じたときに当該貫通孔と対応する位置に雌ねじ部としての第3ナット84が他方の扉に溶接で固定される。
【0045】
車両用扉30を閉じた状態で、第1扉36の召し合わせ部39を第2扉38に当接させる。第3固定板80の貫通孔及び第1扉36の貫通孔に第3ボルト82を挿通して、第3ボルト82を第3ナット84に締結する。第2扉38についても同様に第3ボルト82と第3ナット84で第1扉36に締結する。これにより、第1扉36と第2扉38とが一体化して車両用扉30の剛性がさらに向上する。
【0046】
第1扉36と第2扉38とが一体化して車両用扉30の剛性が向上することにより、幅広い低周波数の帯域に対してトンネル10の防音扉20の遮音性能をさらに向上させることができる。
【0047】
3.施工方法
図1~
図6を用いて、本実施形態に係るトンネル10の防音扉20の遮音施工方法について説明する。
【0048】
図1及び
図4に示すように、車両用扉30を閉じて、防音扉20に設けられる車両用扉30の上端32を防音扉20に固定して一体化する。より具体的には、車両用扉30を閉じて第1固定板60を横枠26aに当接させ、第1固定板60の貫通孔に第1ボルト62を挿通して、第1ボルト62を第1ナット64に締結する。
【0049】
図1及び
図5に示すように、車両用扉30の下端34をベースコンクリート40に固定する。より具体的には、第2固定板70を下端34から垂下するように取付ボルト74で取り付け、第2固定板70に設けられた貫通孔に第2ボルト72を挿通して、第2ボルト72をナットアンカー76に締結する。
【0050】
上端32の固定と下端34の固定とはいずれを先に行ってもよい。また、上端32を防音扉20に固定する工程及び下端34をベースコンクリート40に固定する工程の少なくともいずれか一方の工程を実行してもよい。
【0051】
車両用扉30を遮音板16に固定することで防音扉20の剛性が向上するため、幅広い低周波数の帯域に対してトンネル10の防音扉20の遮音性能を向上させることができる。
【0052】
さらに、
図1及び
図6に示すように、車両用扉30の第1扉36と第2扉38とを召し合わせ部39で固定する。より具体的には、車両用扉30を閉じた状態で第3固定板80の貫通孔に第3ボルト82を挿通して、第3ボルト82を第3ナット84に締結する。
【0053】
第1扉36と第2扉38とが一体化して車両用扉30の剛性が向上することにより、幅広い低周波数の帯域に対してトンネル10の防音扉20の遮音性能を、車両用扉30の上下だけ固定した状態よりもさらに向上させることができる。
【実施例1】
【0054】
実施例1として、実際のトンネルの施工現場において、高さ約7300mm×幅約12
000mmの防音扉の車両用扉の上端を6枚の第1固定板により遮音板に固定した。車両用扉の高さは約4400mmであり、幅は約5000mmであった。
【0055】
トンネル内(切羽側)で模擬発破音を発生させ、トンネル坑口の外側5mの位置に設置したマイクで騒音を測定して
図7のグラフに示した。
図7は、車両用扉の上端を固定する前の騒音の測定結果を0dBとして、実施例1の測定結果で騒音の低減量を縦軸にプロットしたグラフとした。
図7の横軸は、騒音の中心周波数とした。低減量(dB)が大きければ大きいほど実施例1の遮音性能が車両用扉の固定前より向上したことを示す。
【0056】
図7によれば、実施例1の防音扉の共振周波数は8Hz付近にあり、測定した3.15Hz~250Hzの広い周波数帯域で遮音性能が車両用扉の固定前よりも向上した。また、実験結果は省略するが、車両用扉の下端だけを6枚の第2固定板で固定した場合でも実施例1に近い遮音性能の向上が確認された。
【実施例2】
【0057】
実施例2として、実施例1の上端の固定に加えて、さらに車両用扉の下端を6枚の第2固定板で固定し、召し合わせ部を6枚の第3固定板で固定した。
【0058】
実施例1と同様に騒音を測定し、測定結果を
図8のグラフに示した。
図8は、車両用扉を固定する前の騒音の測定結果を0dBとして、実施例2の測定結果で騒音の低減量を縦軸にプロットしたグラフとした。
図8の横軸は、騒音の中心周波数とした。低減量(dB)が大きければ大きいほど実施例2の遮音性能が車両用扉の固定前より向上したことを示す。
【0059】
図8によれば、実施例2の防音扉の共振周波数は10Hz付近にあり、測定した3.15Hz~250Hzの広い周波数帯域で遮音性能が車両用扉の固定前よりも向上した。特に、実施例1の防音扉の共振周波数よりも実施例2の共振周波数の方が高くなることにより、共振周波数より低い周波数帯域の遮音性能が実施例1より向上した。これは剛性則による低周波帯域の遮音性能の向上と考えられる。
【0060】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0061】
10…トンネル、12…トンネル坑口、14…風管接続部、16…遮音板、20…防音扉、22…上部構造、24…下部構造、26…枠、26a…横枠、26b…縦枠、30…車両用扉、31…閂、32…上端、34…下端、36…第1扉、38…第2扉、39…召し合わせ部、40…ベースコンクリート、50…人用扉、60…第1固定板、62…第1ボルト、64…第1ナット、70…第2固定板、72…第2ボルト、74…取付ボルト、76…ナットアンカー、80…第3固定板、82…第3ボルト、84…第3ナット