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特許7213125シリカを含有する水の凝集沈殿装置及び凝集沈殿処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】シリカを含有する水の凝集沈殿装置及び凝集沈殿処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20230119BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20230119BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20230119BHJP
   B01D 21/08 20060101ALI20230119BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B01D21/01 107Z
B01D21/01 102
B01D21/01 107A
B01D21/01 107B
C02F1/52 K
C02F1/56 K
B01D21/01 B
B01D21/01 C
B01D21/08 C
B01D21/24 D
B01D21/24 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019073504
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020171870
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 歩
(72)【発明者】
【氏名】福水 圭一郎
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079425(JP,A)
【文献】特表2001-522720(JP,A)
【文献】特開2002-346572(JP,A)
【文献】特開2006-007208(JP,A)
【文献】特開2009-142761(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038537(WO,A1)
【文献】特開2015-188850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52- 1/56
B01D 21/00-21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含有する被処理水に無機凝集剤を添加する手段と、前記被処理水にエピクロロヒドリン・ジメチルアミン共重合物である有機凝結剤を添加する手段と、を備える第1の反応槽と、
前記第1の反応槽の下流に位置する沈殿槽と、
前記第1の反応槽から前記沈殿槽の手前までの間の区間に位置し、前記被処理水にアニオン性高分子凝集剤を添加する手段と、を有し、
前記沈殿槽は、前記無機凝集剤と前記有機凝結剤と前記アニオン性高分子凝集剤とが添加された前記被処理水を攪拌することによって、凝集フロックの形成と当該凝集フロックの造粒濃縮を行い、造粒濃縮された前記凝集フロックを処理水から分離する、凝集沈殿装置。
【請求項2】
前記第1の反応槽が、カチオン性高分子凝集剤を添加する手段をさらに備える、請求項1に記載の凝集沈殿装置。
【請求項3】
前記第1の反応槽と、前記アニオン性高分子凝集剤を添加する手段との間に位置し、前記被処理水にカチオン性高分子凝集剤を添加する手段を備える第3の反応槽を有する、請求項1に記載の凝集沈殿装置。
【請求項4】
シリカを含む被処理水に無機凝集剤を添加する手段を備える第1の反応槽と、
前記第1の反応槽の下流に位置し、前記被処理水にエピクロロヒドリン・ジメチルアミン共重合物である有機凝結剤を添加する手段を備える第2の反応槽と、
第2の反応槽の下流に位置する沈殿槽と、
前記第2の反応槽から前記沈殿槽の手前までの間の区間に位置し、前記被処理水にアニオン性高分子凝集剤を添加する手段と、を有し、
前記沈殿槽は、前記無機凝集剤と前記有機凝結剤と前記アニオン性高分子凝集剤とが添加された前記被処理水を攪拌することによって、凝集フロックの形成と当該凝集フロックの造粒濃縮を行い、造粒濃縮された前記凝集フロックを処理水から分離する、凝集沈殿装置。
【請求項5】
前記第2の反応槽と、前記アニオン性高分子凝集剤を添加する手段との間位置し、前記被処理水にカチオン性高分子凝集剤を添加する手段を備える第3の反応槽を有する、請求項4に記載の凝集沈殿装置。
【請求項6】
第1の添加位置でシリカを含有する被処理水に無機凝集剤とエピクロロヒドリン・ジメチルアミン共重合物である有機凝結剤を添加することと、
前記第1の添加位置からその下流の沈殿槽の手前までの間の区間に位置する第2の添加位置で前記被処理水にアニオン性高分子凝集剤を添加することと、
前記無機凝集剤と前記有機凝結剤と前記アニオン性高分子凝集剤とが添加された前記被処理水を前記沈殿槽に供給することと、
前記沈殿槽で前記被処理水を攪拌することによって、凝集フロックの形成と当該凝集フロックの造粒濃縮を行うことと、
前記沈殿槽内で造粒濃縮された凝集フロックを処理水から分離することと、を有する、凝集沈殿処理方法。
【請求項7】
前記第1の添加位置で、カチオン性高分子凝集剤が前記被処理水に添加される、請求項6に記載の凝集沈殿処理方法。
【請求項8】
前記第1の添加位置の下流でかつ前記第2の添加位置の上流に位置する第3の添加位置で、カチオン性高分子凝集剤が前記被処理水に添加される、請求項6に記載の凝集沈殿処理方法。
【請求項9】
第1の添加位置でシリカを含有する被処理水に無機凝集剤を添加することと、
前記第1の添加位置から下流に位置する第4の添加位置で前記被処理水にエピクロロヒドリン・ジメチルアミン共重合物である有機凝結剤を添加することと、
前記第4の添加位置からその下流の沈殿槽の手前までの間の区間に位置する第2の添加位置で前記被処理水にアニオン性高分子凝集剤を添加することと、
前記無機凝集剤と前記有機凝集剤と前記アニオン性高分子凝集剤とが添加された前記被処理水を前記沈殿槽に供給することと、
前記沈殿槽で前記被処理水を攪拌することによって、凝集フロックの形成と当該凝集フロックの造粒濃縮を行うことと、
前記沈殿槽内で造粒濃縮された凝集フロックを処理水から分離することと、を有する、凝集沈殿処理方法。
【請求項10】
前記第4の添加位置の下流でかつ前記第2の添加位置の上流に位置する第3の添加位置で、カチオン性高分子凝集剤が前記被処理水に添加される、請求項9に記載の凝集沈殿処理方法。
【請求項11】
前記シリカを含有する被処理水が、飽和溶解度を超えるシリカ濃度である、請求項6~10のいずれか1項に記載の凝集沈殿処理方法。
【請求項12】
前記有機凝結剤が200mg/L以上の濃度で、被処理水に添加される、請求項6~11のいずれか1項に記載の凝集沈殿処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリカを含有する水の凝集沈殿装置と凝集沈殿処理方法に関し、特に沈殿槽の上流側で被処理水に凝集剤を添加し、沈殿槽内攪拌により沈殿槽内で凝集、造粒を行う装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理装置の1つとして、用水処理や排水処理などに凝集沈殿装置が広く用いられている。凝集沈殿装置は、原水に含まれる懸濁物質を凝集させて沈殿槽内で沈殿させ、原水を汚泥と処理水とに分離するものである。凝集沈殿装置の中には沈殿槽内に汚泥の浮遊密集層(スラッジブランケット)を形成させ、このスラッジブランケットにより沈殿槽に供給される原水中の微細粒子や懸濁物質を捕捉し、清澄な処理水を得る技術がある。
【0003】
このような凝集沈殿装置の中でも、凝集剤が添加された被処理水(原水)を沈殿槽内の攪拌翼により緩速攪拌して凝集フロックを形成し、さらに凝集フロック同士の衝突や凝集フロックの転がり運動を繰り返し生じさせることで凝集フロックの粒径を次第に増大させて、球状のペレットを形成する造粒型の凝集沈殿装置が知られている。造粒型の凝集沈殿装置では、高密度で沈降速度が速いペレットが流動層(ペレットブランケット)を形成することで、より高速での処理が可能になるとともに、沈殿槽内の通水線速度(LV)を高め、処理流量の増加または沈殿槽の小型化を実現することができる。
【0004】
水処理装置としては、近年特に半導体や液晶を製造する工程から生じるシリカを含有する排水の処理に対する要望が高まっている。そして、シリカを含有する排水の凝集沈殿処理において、排水を塩酸や水酸化ナトリウムで中性領域まで中和した後に、PAC等の無機凝集剤で凝集物を沈殿させ、固液分離する方法がある。しかし、この方法では排水に含有するシリカがゲル状の凝集物として析出するため、沈降性が悪く、処理流量の増加または沈殿槽の小型化を実現することが難しい。
そこで、排水に多量の水酸化カルシウムを添加する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-50948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された方法では、処理水中の懸濁物質濃度(濁度)が高いため処理水質が十分ではなく、さらに多量の水酸化カルシウムが汚泥として発生するといった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、シリカを含有する被処理水について、沈降速度の速いペレットを形成し、且つ濁度成分の除去などを効率的に行うことができる凝集沈殿処理装置および凝集沈殿処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリカを含有する被処理水に無機凝集剤を添加する手段と、前記被処理水に有機凝結剤を添加する手段と、を備える第1の反応槽と、前記第1の反応槽の下流に位置する沈殿槽と、前記第1の反応槽から前記沈殿槽の手前までの間の区間に位置し、前記被処理水にアニオン性高分子凝集剤を添加する手段と、を有し、前記沈殿槽は、前記無機凝集剤と前記有機凝結剤と前記アニオン性高分子凝集剤とが添加された前記被処理水を攪拌することによって、凝集フロックの形成と当該凝集フロックの造粒濃縮を行い、造粒濃縮された前記凝集フロックを処理水から分離する、凝集沈殿装置である。
【0009】
また、本発明は、第1の添加位置でシリカを含有する被処理水に無機凝集剤と有機凝結剤を添加することと、前記第1の添加位置からその下流の沈殿槽の手前までの間の区間に位置する第2の添加位置で前記被処理水にアニオン性高分子凝集剤を添加することと、前記無機凝集剤と前記有機凝結剤と前記アニオン性高分子凝集剤とが添加された前記被処理水を前記沈殿槽に供給することと、前記沈殿槽で前記被処理水を攪拌することによって、凝集フロックの形成と当該凝集フロックの造粒濃縮を行うことと、前記沈殿槽内で造粒濃縮された凝集フロックを処理水から分離することと、を有する、凝集沈殿処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリカを含有する被処理水について、沈降速度の速いペレットを形成し、且つ濁度成分の除去などを効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の態様に係る凝集沈殿装置の全体構成を示す模式図である。
図2】本発明の第2の態様に係る凝集沈殿装置の全体構成を示す模式図である。
図3】本発明の第3の態様に係る凝集沈殿装置の全体構成を示す模式図である。
図4】本発明の第4の態様に係る凝集沈殿装置の全体構成を示す模式図である。
図5】本発明の第5の態様に係る凝集沈殿装置の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の凝集沈殿装置および凝集沈殿処理方法について説明する。各図において同一の符号は同一の部品または要素を示すものとする。
【0013】
<被処理水>
本発明に用いられる被処理水としては、シリカを含有するものであり、例えば、地熱発電等において用いられる地熱水、半導体、液晶、太陽電池等のシリコンを用いる製品の製造工程、イオン交換樹脂の再生において排出される排水を挙げることができる。
また、本発明で用いられる被処理水としては、飽和溶解度を超えるシリカ濃度を含むものであってもよい。
【0014】
<第1の実施態様>
図1は、本発明の第1の実施態様に係る凝集沈殿装置の模式図である。図1において凝集沈殿装置201は、被処理水(原水)を貯留する原水層2と、第1の反応槽3と、沈殿槽5と、を有し、これらが配管11、12で直列に接続されている。すなわち、第1の反応槽3は第1の配管11によって原水層2と接続され、沈殿槽5は第2の配管12によって第1の反応槽3と接続されている。沈殿槽5は第1の反応槽3の下流に位置し、第1の配管11には被処理水の供給ポンプ14と流量計15が設けられている。
【0015】
第1の反応槽3は、被処理水に無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加手段6と、被処理水に有機凝結剤を添加する有機凝結剤添加手段7と、被処理水にpH調整剤を添加するpH調整剤添加手段8とを備えている。すなわち、第1の反応槽3は被処理水に無機凝集剤と有機凝結剤とpH調整剤とが添加される第1の添加位置を構成する。
無機凝集剤添加手段6は無機凝集剤貯留タンク61と、無機凝集剤貯留タンク61に接続された無機凝集剤供給配管62と、無機凝集剤供給配管62上に設けられた無機凝集剤供給ポンプ63と、を有している。無機凝集剤供給配管62の下流側の端部は第1の反応槽3の内部で開口している。無機凝集剤としては、硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム(PAC)などのアルミニウム塩、塩化第二鉄の酸性溶液、ポリ硫酸第二鉄などの第二鉄塩の酸性溶液などを使用できる。被処理水の処理に用いられる無機凝集剤の添加量としては、沈殿処理ができる範囲であれば特に制限はないが、例えば、被処理水中における無機凝集剤の濃度が10~10000mg/L、好ましくは100~5000mg/L、より好ましくは500~2000mg/Lとなるように設定される。
【0016】
有機凝結剤添加手段7は有機凝結剤貯留タンク71と、有機凝結剤貯留タンク71に接続された有機凝結剤供給配管72と、有機凝結剤供給配管72上に設けられた有機凝結剤供給ポンプ73と、を有している。有機凝結剤供給配管72の下流側の端部は第1の反応槽3の内部で開口している。有機凝結剤としては、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアン・ジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体などが挙げられ、これらの分子量は数万~数十万程度である。有機凝結剤の種類は、被処理水に添加する無機凝集剤の添加量を削減する効果があれば、これらに限定されない。被処理水の処理に用いられる有機凝結剤の添加量としては、沈殿処理ができる範囲であれば特に制限はないが、例えば、被処理水中における有機凝結剤の濃度が10~1000mg/L、好ましくは50~800mg/L、より好ましくは200~500mg/Lとなるように設定される。
【0017】
pH調整剤添加手段8はpH調整剤貯留タンク81と、pH調整剤貯留タンク81に接続されたpH調整剤供給配管82と、pH調整剤供給配管82上に設けられたpH調整剤供給ポンプ83と、を有している。pH調整剤供給配管82の下流側の端部は第1の反応槽3の内部で開口している。pH調整剤は被処理水のpHを6~8程度に調整するために添加され、NaOH、Ca(OH)などのアルカリ薬剤を使用することができる。第1の反応槽3には被処理水のpHを測定するためのpH計16が設けられている。また、第1の反応槽3は攪拌翼31を有しており、無機凝集剤と有機凝結剤とpH調整剤が添加された被処理水を高速で攪拌することができる。
【0018】
凝集沈殿装置201は被処理水にアニオン性高分子凝集剤を添加するアニオン性高分子凝集剤添加手段10を有している。アニオン性高分子凝集剤添加手段10はアニオン性高分子凝集剤貯留タンク101と、アニオン性高分子凝集剤貯留タンク101に接続されたアニオン性高分子凝集剤供給配管102と、アニオン性高分子凝集剤供給配管102上に設けられたアニオン性高分子凝集剤供給ポンプ103と、を有している。アニオン性高分子凝集剤供給配管102の下流側の端部は第2の配管12に合流している。アニオン性高分子凝集剤添加手段10の第2の配管12との合流点は、被処理水にアニオン性高分子凝集剤を添加する第2の添加位置17を構成する。第2の添加位置17は第1の反応槽3と沈殿槽5との間に位置している。
【0019】
アニオン性高分子凝集剤としては、例えば、アクリルアミドとアクリル酸の重合物が挙げられる。アニオン性高分子凝集剤の分子量は、例えば、1000万以上あるいは1500万以上とすることができ、また2500万以下とすることができる。アニオン性高分子凝集剤の被処理水への添加量は、例えば、0.3~10mg/Lとすることが好ましい。添加量が0.3mg/L未満では粒径の大きな造粒物を形成する効果が得られにくい場合がある。また、添加量を10mg/L超としても、造粒物の粒径を大きくする効果は少なく、その一方でアニオン性高分子凝集剤の使用量が増えることになる。アニオン性高分子凝集剤は、予め水に溶解した溶液の状態で被処理水に添加することが好ましい。その溶液のアニオン性高分子凝集剤の濃度は、0.05~0.3w/v%であることが好ましい。アニオン性高分子凝集剤のアニオン基比率(アニオン性モノマーとノニオン性モノマーの合計量に対するアニオン性モノマーの比率)の最適値は被処理水の性状や凝集pHにより異なる。
【0020】
凝集沈殿装置201による被処理水の処理は以下のように行われる。被処理水はまず原水槽2から第1の配管11を通って第1の反応槽3(第1の添加位置)に導入され、無機凝集剤と有機凝結剤とpH調整剤とが添加され、高速攪拌される。これによって、被処理水中に凝集フロックが形成される。次に、被処理水には第2の配管12上の第2の添加位置17でアニオン性高分子凝集剤が添加される。第2の添加位置17でアニオン性高分子凝集剤が添加されることで、より強固で沈降速度の速いペレットを形成することができる。
【0021】
<第2の実施態様>
図2は、本発明の第2の実施態様に係る凝集沈殿装置の模式図である。図2において凝集沈殿装置202は、図1における第1の実施態様に加えて、第1の反応槽3にカチオン性高分子凝集剤添加手段9を備えている。カチオン性高分子凝集剤添加手段9はカチオン性高分子凝集剤貯留タンク91と、カチオン性高分子凝集剤貯留タンク91に接続されたカチオン性高分子凝集剤供給配管92と、カチオン性高分子凝集剤供給配管92上に設けられたカチオン性高分子凝集剤供給ポンプ93と、を有している。カチオン性高分子凝集剤供給配管92の下流側の端部は第3の反応槽4の内部で開口している。
【0022】
凝集沈殿装置202による被処理水の処理は以下のように行われる。被処理水はまず原水槽2から第1の配管11を通って第1の反応槽3(第1の添加位置)に導入され、無機凝集剤と有機凝結剤とpH調整剤と、カチオン性高分子凝集剤が添加され、高速攪拌される。これによって、被処理水中に凝集フロックが形成され、さらに凝集フロックは粗大化される。次に、被処理水には第3の配管12上の第2の添加位置17でアニオン性高分子凝集剤が添加される。第1の反応槽3(第1の添加位置)でカチオン性高分子凝集剤カチオン性高分子凝集剤が、第2の添加位置17で第1のアニオン性高分子凝集剤が添加されることで、より強固で沈降速度の速いペレットを形成することができる。
【0023】
カチオン性高分子凝集剤としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート・塩化メチル四級塩(DAA)、ジメチルアミノエチルメタアクリレート塩化メチル4級塩(DAM)が挙げられる。カチオン性高分子凝集剤の分子量は、例えば、700万以上あるいは1000万以上とすることができ、また1500万以下とすることができる。カチオン性高分子凝集剤の被処理水への添加量は、例えば、0.3~10mg/Lとすることが好ましい。添加量が0.3mg/L未満ではカチオン性高分子凝集剤の効果(カチオン性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤とを併用する効果)が得られにくく、大きな造粒物を形成しにくい場合がある。また、添加量を10mg/L超としても、造粒物の粒径を大きくする効果は少なく、その一方でカチオン性高分子凝集剤の使用量が増えることになる。カチオン性高分子凝集剤は、予め水に溶解した溶液の状態で被処理水に添加することが好ましい。その溶液のカチオン性高分子凝集剤の濃度は、例えば0.05~0.3w/v%である。カチオン性高分子凝集剤のカチオン基比率(カチオン性モノマーとノニオン性モノマーの合計量に対するカチオン性モノマーの比率)は27モル%以下が好ましい。カチオン基比率は15モル%以下であることがより好ましく、8モル%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
<第3の実施態様>
図3は、本発明の第3の実施態様に係る凝集沈殿装置の模式図である。図3において凝集沈殿装置203は、図1における第1の実施態様に加えて、被処理水にカチオン性高分子凝集剤を添加するカチオン性高分子凝集剤添加手段9を有する第3の反応槽4を備えている。第3の反応槽4は、被処理水にカチオン性高分子凝集剤が添加される第3の添加位置を構成し、第3の反応槽4は第1の反応槽3とその下流の沈殿槽5との間に位置している。第3の反応槽4は攪拌翼41を有しており、カチオン性高分子凝集剤が添加された被処理水を高速で攪拌することができる。
【0025】
凝集沈殿装置203による被処理水の処理は以下のように行われる。被処理水はまず原水槽2から第1の配管11を通って第1の反応槽3(第1の添加位置)に導入され、無機凝集剤と有機凝結剤とpH調整剤とが添加され、高速攪拌される。これによって、被処理水中に凝集フロックが形成される。次に、被処理水は第2の配管12を通って第3の反応槽4(第3の添加位置)に導入され、カチオン性高分子凝集剤が添加され、高速攪拌される。これによって、凝集フロックが粗大化される。次に、被処理水には第3の配管13上の第2の添加位置17でアニオン性高分子凝集剤が添加される。第3の反応槽4(第3の添加位置)でカチオン性高分子凝集剤が、第2の添加位置17でアニオン性高分子凝集剤が添加されることで、より強固で沈降速度の速いペレットを形成することができる。
【0026】
<第4の実施態様>
図4は、本発明の第4の実施態様に係る凝集沈殿装置の模式図である。図4において凝集沈殿装置204は、図1における第1の実施態様に加えて、第2の反応槽19を備えている一方、第1の反応槽3には、有機凝結剤添加手段7を備えていない。第2の反応槽19は、被処理水に有機凝結剤が添加される第4の添加位置を構成する。第2の反応槽19は第1の反応槽3とその下流の沈殿槽5との間に位置している。第2の反応槽19は、被処理水に有機凝結剤を添加する有機凝結剤添加手段7を備えている。有機凝結剤添加手段7は有機凝結剤貯留タンク71と、有機凝結剤貯留タンク71に接続された有機凝結剤供給配管72と、有機凝結剤供給配管72上に設けられた有機凝結剤供給ポンプ73と、を有している。有機凝結剤供給配管72の下流側の端部は第2の反応槽5の内部で開口している。第2の反応槽19は攪拌翼21を有しており、有機凝結剤が添加された被処理水を高速で攪拌することができる。
【0027】
凝集沈殿装置204による被処理水の処理は以下のように行われる。被処理水はまず原水槽2から第1の配管11を通って第1の反応槽3(第1の添加位置)に導入され、無機凝集剤とpH調整剤とが添加され、高速攪拌される。これによって、被処理水中に凝集フロックが形成される。次に、被処理水は第2の配管12を通って第2の反応槽19(第4の添加位置)に導入され、有機凝結剤が添加され、高速攪拌される。これによって、凝集フロックが粗大化される。次に、被処理水には第3の配管13上の第2の添加位置17でアニオン性高分子凝集剤が添加される。第2の添加位置17でアニオン性高分子凝集剤が添加されることで、より強固で沈降速度の速いペレットを形成することができる。
【0028】
<第5の実施態様>
図5は、本発明の第5の実施態様に係る凝集沈殿装置の模式図である。図5において凝集沈殿装置205は、第4の実施形態に加えて、第3の実施形態と同様に、被処理水にカチオン性高分子凝集剤を添加するカチオン性高分子凝集剤添加手段9を有する第3の反応槽4を備えている。第3の反応槽4は、被処理水にカチオン性高分子凝集剤が添加される第3の添加位置を構成する。第3の反応槽4は第2の反応槽19とその下流の沈殿槽5との間に位置している。
【0029】
凝集沈殿装置205による被処理水の処理は以下のように行われる。被処理水はまず原水槽2から第1の配管11を通って第1の反応槽3(第1の添加位置)に導入され、無機凝集剤とpH調整剤とが添加され、高速攪拌される。これによって、被処理水中に凝集フロックが形成される。次に、被処理水は第2の配管12を通って第2の反応槽19(第4の添加位置)に導入され、有機凝結剤が添加され、高速攪拌される。これによって、凝集フロックが粗大化される。次に、被処理水には第3の配管13を通って第3の反応槽4(第3の添加位置)に導入され、カチオン性高分子凝集剤が添加され、高速攪拌される。これによって、凝集フロックがさらに粗大化される。次に、被処理水には第4の配管18上の第2の添加位置17でアニオン性高分子凝集剤が添加される。第3の反応槽4(第3の添加位置)でカチオン性高分子凝集剤が、第2の添加位置17でアニオン性高分子凝集剤が添加されることで、より強固で沈降速度の速いペレットを形成することができる。
【0030】
<沈殿槽>
第1~第5の実施形態の沈殿槽5は、外側容器51と、外側容器51の内部に設けられた仕切板52とを有している。沈殿槽5は外側容器51と仕切板52とによって沈殿部54と、汚泥濃縮部55と、に分離されている。沈殿部54は、無機凝集剤と有機凝結剤とアニオン性高分子凝集剤とカチオン性高分子凝集剤とが添加された被処理水を緩速攪拌することによって、凝集フロックの形成と凝集フロックの造粒濃縮(ペレット形成)を行い、造粒濃縮された凝集フロックを処理水から分離する。汚泥濃縮部55は懸濁物質の汚泥を収集し濃縮する。凝集フロックが沈殿槽5から越水して汚泥濃縮部55に収集されるように、仕切板52の頂部は沈殿部54の頂部より低くされている。汚泥濃縮部55の側面の下部に汚泥の引抜きノズル(図示せず)が設けられている。沈殿部54の側面の上部には清澄水(処理水)の取出しノズル(図示せず)が設けられている。沈殿部54の内部には、モータ57に連結された回転軸56に取り付けられた複数の攪拌翼58が設けられている。
【0031】
第1~第5の実施形態において、被処理水は沈殿槽5に導入される。被処理水は沈殿部54の底部の被処理水供給口59から沈殿部54に上昇流として供給され、攪拌翼58で緩速攪拌される。第2の添加位置17で添加されたアニオン性高分子凝集剤はこれによって被処理水中に攪拌分散される。凝集フロック同士が衝突や転がり運動を繰り返すことで、凝集フロックの粒径は次第に増加していき、球状のペレットが形成される。ペレットは重力による下向きの力と、被処理水供給口59から供給される被処理水の上昇流による上向きの力を受けて、沈殿部54の内部を浮遊する。新たに供給された被処理水に含まれる凝集フロックは沈殿部54の内部を浮遊するペレットに捕捉され、合体する。これによって、ペレット径はさらに増加する。
【0032】
被処理水は造粒濃縮された凝集フロックから分離され、上昇流となる。この結果、沈殿部54の下部にペレットの層(ペレットブランケット53)が、上部にペレットブランケット53から分離した清澄水の層54が形成される。層54の清澄水は処理水として取出しノズルから取り出される。ペレットブランケット53の頂部界面は徐々に上昇していき、ペレットブランケット53の頂部界面が仕切板52の頂部に達すると、ペレットは仕切板52を越水して汚泥濃縮部55に収集される。以降、被処理水の通水中はペレットブランケット53の頂部界面からペレットの越水が続き、ペレットブランケット53は一定の高さを保つ。汚泥濃縮部55は被処理水の上昇流がないため、凝集フロックは重力で汚泥濃縮部55内を沈降して濃縮汚泥となる。濃縮汚泥は引抜きノズルから引抜かれる。
【0033】
ポリ塩化アルミニウム(PAC)や塩化鉄等の無機凝集剤によって形成される凝集フロックは架橋性が少なく、細かくて軽い凝集フロックとなる。そのため、シリカの低減のために多量の無機凝集剤を使用すると、カチオン性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤を併用しても強度の高い凝集フロックを形成させることができず、造粒沈殿装置でペレットを形成することが困難となる場合がある。本実施形態では有機凝結剤を使用することで、ペレットを確実に形成しつつ、無機凝集剤の添加量を減らすことができる。また、無機凝集剤の添加量を減らすことで汚泥発生量も減らすことができるため、コスト削減効果が期待できる。さらに、無機凝集剤の添加量が多くペレット凝集沈殿処理の適用が困難であった排水においても、有機凝結剤を使用することでペレットの形成が容易となり、高LV処理が可能となる。
【実施例
【0034】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。ただし本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
<被処理水水質>
以下の実施例及び比較例で用いた被処理水の水質は、表1の通りである。SiOの濃度は、吸光光度計(商品名:DR3900、HACH社製)により測定した。濁度及び色度は、濁度・色度計(NIPPON DENSHOKU社製Water Analyzer 2000N)を用いて測定した。なお、被処理水のシリカ濃度は、25℃における飽和溶解度(100mg/L)を超えるものを用いた。
【0036】
【表1】
【0037】
<実施例1>
表1に示した水質の被処理水300mLを300mLのビーカーに投入し、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)(商品名:ポリ塩化アルミニウム、オルガノ株式会社製)を、濃度が1000mg/Lになるように添加した。その後、NaOH水溶液でpH7に調整し、直径6.5cmの攪拌翼を用いて、150rpmの回転で10分間攪拌、混合した。次いで、有機凝結剤としてエピクロロヒドリン・ジメチルアミン共重合(商品名:オルフロック CL-621、オルガノ株式会社製)を、濃度が300mg/Lとなるまで添加し、150rpmで10分間攪拌、混合した。そして、カチオン性高分子凝集剤(商品名:オルフロック HS-0660、オルガノ株式会社製)を、濃度が4mg/Lとなるように添加し、100rpmで2分間急速攪拌をおこなった。続いて、アニオン性高分子凝集剤(商品名:オルフロック OA-3H、オルガノ株式会社製)を、濃度が2mg/Lとなるように添加し、100rpmで1分間急速攪拌した後、40rpmで5分間緩速攪拌を行った。この間に、攪拌中のフロックの高さを測定した。試験後、10分間沈静させ、上澄水の濁度を測定した。
【0038】
<実施例2>
有機凝結剤の添加量を100mg/L、カチオン性高分子凝集剤の添加量を2mg/L、アニオン性高分子凝集剤の添加量を1mg/Lとした以外は、実施例1と同様に被処理水を処理した。
【0039】
<実施例3>
有機凝結剤の添加量を50mg/L、カチオン性高分子凝集剤の添加量を2mg/L、アニオン性高分子凝集剤の添加量を1mg/Lとした以外は、実施例1と同様に被処理水を処理した。
【0040】
<比較例1>
表1に示した水質の被処理水300mLに、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)を、濃度が1000mg/Lになるように添加した。その後、NaOH水溶液でpH7に調整し、150rpmの回転で10分間攪拌、混合した。次いで、カチオン性高分子凝集剤を濃度が、2mg/Lとなるよう添加し、100rpmで2分間急速攪拌をおこなった。続いて、アニオン性高分子凝集剤を、濃度が1mg/Lとなるように添加し、100rpmで1分間急速攪拌した後、40rpmで5分間緩速攪拌を行った。試験後、10分間沈静させ、上澄水の濁度の測定を行った。
【0041】
実施例1~3および比較例1の結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2より、有機凝結剤を添加した実施例1~3では、上澄水の濁度を十分に低下させることができ、沈降性の良い、良好なフロックが形成することがわかった。一方、有機凝結剤を添加していない比較例1では、上澄水の濁度が7.8度と高くなってしまい、沈降性の悪いフロックが形成することが明らかとなった。
以上の結果より、エピクロロヒドリン・ジメチルアミン共重合などの有機凝結剤を添加することによって、沈降性の良いフロックが形成できることが分かった。
【0044】
<実施例4>
実施例1で得られた上澄水に含まれるSiOの濃度を、測定した。
【0045】
<実施例5>
表1に示した水質の被処理水300mLに、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)を、濃度が1000mg/Lとなるように添加した。その後、NaOH水溶液でpH7に調整し、150rpmの回転で10分間攪拌、混合した。次いで、有機凝結剤としてエピクロロヒドリン・ジメチルアミン共重合を、濃度が300mg/Lとなるように添加し、150rpmで10分間攪拌、混合した。続いて、アニオン性高分子凝集剤を、濃度が6mg/Lとなるように添加し、100rpmで1分間急速攪拌した後、40rpmで5分間緩速攪拌を行った。この間に、攪拌中のフロックの高さ、フロックサイズを測定した。試験後、10分間沈静させ、濁度の測定を行った。
【0046】
<実施例6>
有機凝結剤の添加量を100mg/Lとした以外は、実施例5と同様に被処理水を処理した。
【0047】
<実施例7>
有機凝結剤の添加量を50mg/Lとした以外は、実施例5と同様に被処理水を処理した。
【0048】
実施例4~7の結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3より、カチオン性高分子凝集剤を添加した実施例4では、沈降性が良く、フロックの攪拌中のフロックの高さが抑えられていることがわかる。また、上澄水中のSiOの濃度も低く抑えられており、シリカを含む被処理水を効率的に処理できることがわかる。また、実施例5および6から、有機凝結剤を200mg/L以上となるように添加することにより、良好なフロック高さおよびSiOの濃度となるように被処理水を処理できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によって、シリカを含有する被処理水に対し、沈降速度の速いペレットを形成し、且つ濁度成分の除去などを効率的に行うことができる凝集沈殿装置および凝集沈殿処理方法が提供される。
【符号の説明】
【0052】
3 第1の反応槽(第1の添加位置)
4 第3の反応槽(第3の添加位置)
5 沈殿槽
6 無機凝集剤添加手段
7 有機凝結剤添加手段
9 カチオン性高分子凝集剤添加手段
10 アニオン性高分子凝集剤添加手段
17 第2の添加位置
19 第2の反応槽(第4の添加位置)
201~205 凝集沈殿装置
図1
図2
図3
図4
図5