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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】石炭灰利用資材及び埋立方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 15/10 20060101AFI20230119BHJP
   E02B 3/18 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E02D15/10
E02B3/18 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019094628
(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公開番号】P2020190086
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智弘
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-161016(JP,A)
【文献】特開2003-320335(JP,A)
【文献】特開2004-108085(JP,A)
【文献】特開2014-218810(JP,A)
【文献】特開2015-151669(JP,A)
【文献】特開平10-236862(JP,A)
【文献】特開2008-188528(JP,A)
【文献】特開2007-154646(JP,A)
【文献】特開平05-272119(JP,A)
【文献】特開昭61-290107(JP,A)
【文献】特開2000-319884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 15/10
E02B 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海面処分場に使用される石炭灰利用資材であって、
当該石炭灰利用資材は、石炭灰とセメントとを混合してなる粉体状の混合物を、通水防塵性の袋体に充填して構成され
前記混合物は、前記セメントを、前記石炭灰に対して重量比1~10%で混合して構成され、
前記石炭灰利用資材は、水中に設置され所定期間経過すると、一軸圧縮強度100kN/m 以上の強度を発現するものであることを特徴とする石炭灰利用資材。
【請求項2】
前記石炭灰はフライアッシュであり、乾灰であることを特徴とする請求項1に記載の石炭灰利用資材。
【請求項3】
前記石炭灰利用資材は、前記海面処分場の埋立に使用される埋立材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の石炭灰利用資材。
【請求項4】
堤体により区画された海面処分場の埋立方法であって、
前記堤体の背面に、請求項1~3いずれかに記載の石炭灰利用資材を多数投入して積層し、石炭灰地盤を造成することを特徴とする埋立方法。
【請求項5】
堤体により区画された海面処分場の埋立方法であって、
前記堤体の背面との間に間隔を置いて、石炭灰とセメントとを混合してなる粉体状の混合物を、通水防塵性の袋体に充填してなる石炭灰利用資材を列をなして設置した後、
前記堤体の背面と前記各石炭灰利用資材との間に、石炭灰にセメント及び水を混合した改質埋立材料を投入し、これを繰り返し積層して、石炭灰地盤を造成することを特徴とする埋立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば管理型廃棄物を最終処分する海面処分場に使用される石炭灰利用資材、及び当該石炭灰利用資材を埋立材料として使用した、海面処分場への埋立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所から排出されるフライアッシュは年間約1200万トンであり、石炭消費量の約10%を占めている。このフライアッシュ(石炭灰)の約70%は、セメントの原料として利用されているが、土木分野においても、地盤改良材、道路路盤材、盛土材、裏理材などとして14%程度、170万トン程度まで有効利用が進んでいる。これらの材料は、主に、破砕材、造粒材、塑性材、スラリー材として製造され、建設工事に使用されている。破砕材は、フライアッシュにセメント及び水等を加えて固化させた後に破砕した土砂代替品である。造粒材は、フライアッシュにセメント、添加材及び水を加えて造粒して製造した土砂代替品である。また、塑性材は、工事現場近傍にて、フライアッシュにセメント、土砂及び水を混合撹拌して製造した材料である。さらに、スラリー材は、施工場所にて、フライアッシュにセメント及び水等を混合してスラリー状にして圧送打設する材料である。このように、これら破砕材、造粒材、塑性材、スラリー材はいずれも、フライアッシュに、セメント及び水を混合して製造する材料である。
そして、さらに石炭灰を有効利用する土木資材の開発と実用が望まれている。
【0003】
一方、上述したように有効利用できないフライアッシュは、港湾内に築造される管理型廃棄物海面処分場等に埋立処分される(特許文献1参照)。埋立方法としては、湿灰を直接投入する方法や、スラリー化して圧送する方法がある。また、海面処分場の護岸をケーソンや鋼板セルなどの直立堤や鋼矢板や鋼管矢板で築造する場合、直立した護岸(以下、直立護岸という)の背面をフライアッシュのみで埋め立てると、地震時にフライアッシュが液状化して、直立護岸に埋立地盤の土圧に加えて大きな水平力(水圧)が作用することが懸念される。そのために、直立護岸の背面の埋立地盤には液状化しない石材などの材料を用いるか、あるいは所定の強度(例えば一軸圧縮強度としてq=100kN/m以上)を有する、セメント混合処理した非液状化石炭灰地盤を造成するなどの対応が必要となる。
【0004】
これに対処するために、フライアッシュに、一例として単位体積あたりの製造・運搬・打設費が最も安価なスラリー材を直立護岸の背面に圧送打設して非液状化石炭灰地盤を造成する方法が挙げられるが、この方法であると、その地盤の法勾配が1:10より緩く、必要ではない範囲まで非液状化石炭灰地盤が造成されることになり、使用するセメント総量が増加し、また非液状化対策地盤の造成工期が延びる等トータルコストが高くなる、という問題が生じる。さらに、直立護岸の背面に非液状化石炭灰地盤を造成する際、上述した、土木分野における、盛土材や裏理材などに採用されている破砕材、造粒材や塑性材を採用することも考慮できるが、これらを製造するためには専用プラントが必要であり、また養生・固化する期間に渡って製造ヤードを拘束する必要があり、これも、トータルコストが高くなる要因となり、施工上の制約となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-62757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、海面処分場において、特に、直立護岸の背面に所定強度を有する非液状化石炭灰地盤を造成する際、従来の埋立材料及び埋立方法であると、セメント使用量や材料調達や製造ヤードにおける制約が発生する。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、石炭灰を有効利用し、セメント使用量を削減し、施工上の簡便さと製造ヤードの省スペース化とを実現する石炭灰利用資材及び埋立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の態様)
以下に示す発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0009】
(1)海面処分場に使用される石炭灰利用資材であって、海面処分場に使用される石炭灰利用資材であって、当該石炭灰利用資材は、石炭灰とセメントとを混合してなる粉体状の混合物を、通水防塵性の袋体に充填して構成され、前記混合物は、前記セメントを、前記石炭灰に対して重量比1~10%で混合して構成され、前記石炭灰利用資材は、水中に設置され所定期間経過すると、一軸圧縮強度100kN/m 以上の強度を発現するものであることを特徴とする石炭灰利用資材(請求項1の発明に相当)。
(1)項の記載の石炭灰利用資材は、海面処分場の埋立材料、護岸建設のための建設資材、及び災害時の復旧資材等に使用されるものであって、石炭灰利用資材を水域に投入するだけの作業で、投入後に袋体内に浸入する水とセメントとの水和反応により、所定強度の石炭灰構造体(石炭灰地盤)を造成することができる。また、(1)項に記載の石炭灰利用資材は、これを製造するための複雑な設備も必要なく簡易化することができる。また陸上ヤードにて養生・固化する期間も必要ないので、製造ヤードの省スペース化を実現す
ることができる。また、(1)項に記載の石炭灰利用資材は、土砂と比較して土粒子密度が小さな石炭灰と、セメントとを混合してなる粉体状の混合物で構成されるために袋体全体としても軽量であり、一般的な大型土嚢などと比較して運搬効率が良い。また、混合物は、セメントを、石炭灰に対して重量比1~10%で混合して構成されるので、石炭灰利用資材を、水中に設置して一定時間経過すると、一軸圧縮強度100kN/m 以上の強度を発現させることができる。しかも、袋材内の強度を用途に応じて設定することが可能であり、特に5%以下の場合は、一般的なセメント改良土のセメント添加量の最低必要量50kg/m と比較しても、本石炭灰利用資材に必要となるセメント添加量(2%の場合は約20kg/m )は少なく、セメントの材料費として安価となる。また破砕材など製造時に水を混合する材料の場合の最適セメント添加量は100kg/m を超える場合もある。これと比較しても10%以下の添加量は経済的な範疇である。
【0010】
(2)前記石炭灰はフライアッシュであり、乾灰であることを特徴とする(1)項に記載の石炭灰利用資材(請求項2の発明に相当)。
(2)項に記載の石炭灰利用資材では、石炭火力発電所から排出される約9割のフライアッシュ(約1割がクリンカアッシュ)を対象としているので、石炭灰の有効利用に対して効果的である。また、フライアッシュとセメントとを粉体状で撹拌混合するのでセメントが略均一に行き渡る。その結果、必要強度を発揮するための必要セメント添加量が少なくてよく、当該石炭灰利用資材を水中に投入して設置した際に、石炭灰利用資材において強度の偏りが抑制され、全体が略均一の強度を有するようになる。
【0012】
)前記石炭灰利用資材は、前記海面処分場の埋立に使用される埋立材料であることを特徴とする(1)項または(2)項に記載の石炭灰利用資材(請求項の発明に相当)。
)項に記載の石炭灰利用資材は、海面処分場を区画する堤体の背面に所定強度の非液状化石炭灰地盤を造成する際の埋立材料として採用される。
【0013】
)堤体により区画された海面処分場の埋立方法であって、前記堤体の背面に、(1)項~(3)項いずれかに記載の石炭灰利用資材を多数投入して積層し、石炭灰地盤を造成することを特徴とする埋立方法(請求項の発明に相当)。
)項に記載の埋立方法では、石炭灰とセメントとを混合してなる粉体状の混合物を通水防塵性の袋体に充填してなる石炭灰利用資材を、堤体の背面の水域に投入して積層するだけの作業で、堤体の背面に所定強度を有する非液状化石炭灰地盤を造成することができる。また、埋立後に堤体に作用する土圧が一般土砂より軽減される。さらに、セメント量の総使用量を抑制できる。
【0014】
)堤体により区画された海面処分場の埋立方法であって、前記堤体の背面との間に間隔を置いて、石炭灰とセメントとを混合してなる粉体状の混合物を、通水防塵性の袋体に充填してなる石炭灰利用資材を列をなして設置した後、前記堤体の背面と前記各石炭灰利用資材との間に、石炭灰にセメント及び水を混合した改質埋立材料を投入し、これを繰り返し積層して、石炭灰地盤を造成することを特徴とする埋立方法(請求項の発明に相当)。
)項に記載の埋立方法では、石炭灰とセメントとを混合してなる粉体状の混合物を通水防塵性の袋体に充填してなる石炭灰利用資材を、堤体の背面から間隔を置いて堤体と平行に列状に並べることで、その石炭灰利用資材をその後に別途投入する改質埋立材料(例えばスラリー状にしたもの)の堰き止め壁部として機能させることができる。その結果、当該改質埋立材料が堰き止め壁部で堰き止められるので、これを繰り返すことで、短期間で堤体の背面に、法勾配を急にした必要最小限の非液状化石炭灰地盤を造成することが
でき、袋体の袋材の費用および製造費を削減し非液状化石炭灰地盤の造成コストを低減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る石炭灰利用資材によれば、当該石炭灰利用資材の製造設備としては、石炭灰用サイロ、セメント用サイロ及び撹拌設備のみが必要であり、水を貯留する水槽や圧送ポンプは不要であり、製造設備の占有スペースを低減させることができる。また撹拌設備からの混合物を充填した袋を、順次設置場所に搬出することができるため、固化するまでの養生期間に仮置きする必要がなく、陸上仮置きヤードを大きく低減することができる。
また、本発明に係る埋立方法によれば、石炭灰利用資材を、堤体の背面の水域に投入するだけの作業で、その水域に所定強度を有する非液状化石炭灰地盤を造成することができ、その結果、製造ヤードの省スペース化と施工上の簡便さとを実現することができる。さらに、非液状化材料として石材を用いる必要がなく、もともとの埋立材料である石炭灰を利用することができ、石炭灰の処分容量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1の(a)は、本発明の実施形態に係る石炭灰利用資材の斜視図であり、(b)は(a)のA-A線に沿う断面図である。
図2図2は、管理型廃棄物海面処分場の直立護岸の背面に造成される非液状化石炭灰地盤の概略断面図である。
図3図3は、図2とは別の非液状化石炭灰地盤の概略断面図である。
図4図4は、図1の石炭灰利用資材を製造して運搬する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図1図4に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態では、その石炭灰利用資材1が管理型廃棄物海面処分場10の埋立材料として使用される。本石炭灰利用資材1は、図1に示すように、石炭灰であるフライアッシュ2とセメント3とを混合してなる粉体状の混合物を袋体5に充填して構成される。混合物に、クリンカアッシュを含めてもよい。フライアッシュ2とセメント3とは、共に乾燥した粉体状であり、撹拌しながら混合される。その結果、セメント3が略均一に分散された状態で袋体5に封入される。フライアッシュ2は、石炭火力発電所にて発生する副産物である。なお、フライアッシュ2は、新生灰でも良いし、既成灰でも良い。新生灰は、自硬性を有している場合が多いために、水中に投入後強度を発現しやすく必要セメント添加量の低減を図りやすいものである。一方、一旦埋め立てられ水和反応した後の既成灰も採用することも可能であり、セメント3を新生灰の場合より多く混合することで所定の強度を発現させることが可能である。
【0018】
また、混合するセメント3は、フライアッシュ2に対して重量比1~10%、そのうち2~3%が液状化対策材として必要な強度が確保でき、経済面でも最適となる。そして、フライアッシュ2とセメント3とは、粉体状の混合物として袋体5に充填される。このとき、袋体5内に残存する空気を十分に抜くようにする。
【0019】
袋体5は、通水防塵性を有する。本実施形態では、袋体5は、テトロンポンジ製が採用される。なお、本実施形態では、袋体5にはテトロンポンジ製が採用されているが、通水防塵性が担保され、強度的に満足できれば、この素材に限定されることはない。そして、本石炭灰利用資材1では、セメント3がフライアッシュ2に対して重量比1~10%で混合され、当該石炭灰利用資材1を水中に設置して所定期間(例えば4週間程度)経過すると、一軸圧縮強度100kN/m程度以上の強度が発現される。この強度は非液状化石炭灰地盤15として十分な強度である。
【0020】
そして、図2に示すように、本実施形態に係る石炭灰利用資材1は、海面処分場、詳しくは管理型廃棄物海面処分場10を区画する、ケーソンや鋼板セル等の直立堤や、鋼矢板堤や鋼管矢板堤等の直立護岸11(堤体)の背面(処分場側の面)に造成される、所定勾配(例えば1:1.2)を有する非液状化石炭灰地盤15に使用される。なお、本石炭灰利用資材1を製造するための設備としては、図4に示すように、フライアッシュ用サイロ20と、セメント用サイロ21と、これらフライアッシュ用サイロ20からのフライアッシュ2とセメント用サイロ21からのセメント3とを撹拌混合する撹拌装置22とが施工場所近傍や石炭火力発電所の構内などの陸上に備えられている。そして、図1も参照して、撹拌装置22からのフライアッシュ2及びセメント3の混合物が袋体5に充填されて本石炭灰利用資材1が製造される。このように、本石炭灰利用資材1を製造する際には、特別な設備は必要ではなく、最小限の広さの陸上ヤードにて製造でき、また陸上仮置き場での固化時間等の製造後の養生期間も必要ではない。
【0021】
次に、本石炭灰利用資材1は、クレーン23等により運搬トラック24に積み込まれて設置場所に順次運搬される。続いて、これら本石炭灰利用資材1を、クレーン(図示略)等を用いて吊り上げ、図2に示すように、直立護岸11の背面側に所定高さまでブロック状、すなわち所定勾配を有するブロック状に積層する。その積層方法は、正積みでも良いし、乱積みでも良い。すると、各石炭灰利用資材1の内部に水が浸入することで、本石炭灰利用資材1が、セメント3の水和反応により所定強度を発現するようになる。その結果、直立護岸11の背面に所定強度を有する非液状化石炭灰地盤15を造成することができる。なお、フライアッシュ2の粒子は、およそ80%がシルトに分類される粒径であるために、粘土と比較して透水係数が大きい。そのため、袋体5が大型土嚢(またはフレコンバックや1t土嚢ともいう)程度の大きさであっても、袋体5内に水が浸透し易く、セメント3の水和反応により、石炭灰利用資材1全体が略均一の強度を有するようになり、ひいては非液状化石炭灰地盤15の全体が略均一の強度を有するようになる。
その後は、非液状化石炭灰地盤15の内側に、湿灰を直接投入して埋め立ても良いし、フライアッシュ2に水を混合してスラリー状にしたものを圧送して埋め立てても良い(図2及び図3においてグレーで示す範囲)。
【0022】
なお、直立護岸11の背面に非液状化石炭灰地盤15を造成する他の方法として、図3に示すように、直立護岸11の背面から間隔を置いて平行に、石炭灰利用資材1を列状に並べることで各石炭灰利用資材1を堰き止め壁部13として機能させる。なお、本実施形態では、図3から解るように、石炭灰利用資材1を、直立護岸11の背面から間隔を置いて平行に、下側に2列に並べると共にその上に1列積層することで全体として断面略台形状に配置して、堰き止め壁部13を設けている。そして、直立護岸11の背面と、各石炭灰利用資材1からなる堰き止め壁部13との間に、フライアッシュ2にセメント3及び水を混合した改質埋立材料14を投入する(図3において非液状化石炭灰地盤15内の斑点で示す範囲)。この作業を繰り返す、本実施形態では8回繰り返すことで、直立護岸11の背面に所定強度を有する非液状化石炭灰地盤15を造成することもできる。この実施形態では、改質埋立材料14が堰き止め壁部13(積層した多数の本石炭灰利用資材1)にて堰き止められるので、セメント3の使用総量の増加を抑制でき、短期間で直立護岸11の背面に非液状化石炭灰地盤15を造成することができる。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る石炭灰利用資材1では、特に、直立護岸11の背面に非液状化石炭灰地盤15を造成する際、当該石炭灰利用資材1を直立護岸11の背面の水域に投入するだけの作業で、セメント3の水和反応により所定強度の非液状化石炭灰地盤15を造成することができる。その結果、石炭灰利用資材1の製造から設置までの陸上作業(設備を含む)を簡易化することができる。本石炭灰利用資材1は、フライアッシュ2とセメント3とを混合してなる粉体状の混合物であるので軽量であり、その取り扱いが非常に容易となる。要するに、本石炭灰利用資材1では、当該石炭灰利用資材1を製造するための複雑な設備も必要なく、養生・固化する期間も必要ないので、施工上の簡便さと、製造ヤードの省スペース化とを実現することができる。また石材を使用せずに液状化対策ができる。
【0024】
また、本実施形態に係る石炭灰利用資材1では、セメント3を、フライアッシュ2に対して重量比1~10%で混合して構成されるので、当該石炭灰利用資材1を水中に設置して所定期間経過すると、一軸圧縮強度100kN/m程度以上の強度を発現させることができ、この強度は非液状化石炭灰地盤15として十分な強度である。また、本実施形態に係る石炭灰利用資材1では、フライアッシュ2とセメント3とを粉体状で撹拌混合するのでセメント3を略均一に分散させることができる。その結果、当該石炭灰利用資材1を水中に投入して設置した際に、本石炭灰利用資材1において強度の偏りが抑制され、その全体が略均一の強度を有するようになる。これにより、セメント3の量を最小限に留めることができる。
【0025】
さらに、本発明の実施形態に係る埋立方法では、フライアッシュ2とセメント3とを混合してなる粉体状の混合物を通水防塵性の袋体5に充填してなる石炭灰利用資材1を、直立護岸11の背面の水中に投入して積層するだけの作業で、直立護岸11の背面に所定強度を有する非液状化石炭灰地盤15を最小限の資材で造成することができる。これにより、セメント3の量を最小限に留めることができ、また工期も短縮することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、石炭灰利用資材1が埋立材料として使用される実施形態を説明したが、本石炭灰利用資材は、管理型廃棄物海面処分場の建設資材や災害時の復旧資材としての利用も可能である。詳しくは、管理型廃棄物海面処分場の建設資材として使用する場合には、例えば、護岸を構築する際の遮水シートの上載材としての大型土嚢や石材の代替材として使用される。また、災害時の復旧資材として使用する場合には、災害時に、例えば、鋼管矢板間の継手に対して外れない方向に付勢するための大型土嚢や石材の代替材として使用される。
このような用途で使用する場合でも、本発明の実施形態に係る石炭灰利用資材は、運搬時には軽量であるため、積載重量制限のある運搬車両に数をより多く積載することができる。または1袋あたりの容積を大きくすることができる。
【0027】
一例を挙げると、1袋あたりに1m中詰めできる大型土嚢であれば、単位体積重量1.8t/mの土砂で中詰めする場合は1袋あたりの重量は約1.8tとなる。一方、本石炭灰利用資材では、単位体積重量が1.0~1.2t/mであるため、1袋あたりの容積は約1.0~1.2tとなる。これは10t積みダンプトラックの積載個数として、土砂であれば5個積載可能であるが、本石炭灰利用資材では8~10個積載可能となり、運搬コストの削減に寄与する。また、一般的な大型土嚢は1t/袋であり、単位体積重量1.8t/mの土砂で中詰めする場合は1袋あたりの容積は約0.55mとなる。一方、本石炭灰利用資材は、単位体積重量が1.0~1.2t/mであるため、1袋あたりの容積は約0.83~1.00mとなる。これは施工箇所での必要個数を削減することに寄与する。
【符号の説明】
【0028】
1 石炭灰利用資材(埋立材料),2 フライアッシュ,3 セメント,5 袋体,10 管理型廃棄物海面処分場(海面処分場),11 直立護岸(堤体),14 改質埋立材料,15 非液状化石炭灰地盤
図1
図2
図3
図4