(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ボトル缶の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20230119BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230119BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230119BHJP
B21D 51/26 20060101ALI20230119BHJP
B21D 51/38 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D3/00 F
B05D7/00 K
B21D51/26 P
B21D51/38 E
(21)【出願番号】P 2019134414
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2019062287
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】村山 朗
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-29367(JP,A)
【文献】特開2006-232347(JP,A)
【文献】特開2004-141943(JP,A)
【文献】特開平3-56176(JP,A)
【文献】特開2017-185470(JP,A)
【文献】特開昭55-134664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B21D 51/00-51/54
B65D 1/00-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を有する円筒状の筒体の外面に印刷を施す印刷工程と、前記印刷工程後に前記筒体の印刷層を含む外周面に透明な塗膜を形成するオーバーコート工程と、前記オーバーコート工程後の筒体を加工して、円筒状の筒胴部と、前記筒胴部に連続して形成され、該筒胴部の缶軸方向上側に位置する肩部と、前記肩部の上端から前記筒胴部に対して缶軸方向上側に向かうに従って縮径する縮径部と、前記縮径部の缶軸方向上側に缶軸に沿って延びる小径部と、を形成するネッキング工程と、前記小径部を加工して、ねじ部を有する口部を形成する口部成形工程と、を備え、
前記オーバーコート工程では、前記筒体における前記口部となる領域の前記塗膜の膜厚をA、前記筒体における前記縮径部となる領域の前記塗膜の膜厚をB、前記筒体における前記胴部となる領域の前記塗膜の膜厚をDとした場合に、A<B<Dとすることを特徴とするボトル缶の製造方法。
【請求項2】
前記オーバーコート工程では、前記筒体における前記肩部となる領域の前記塗膜の膜厚をC、前記筒体における前記胴部となる領域の前記塗膜の膜厚Dのうち、底部側領域の前記塗膜の膜厚をD2、該底部側領域を除く領域の前記塗膜の膜厚をD1とした場合に、D1≦C、かつ、D1<D2とすることを特徴とする請求項1に記載のボトル缶の製造方法。
【請求項3】
前記オーバーコート工程では、前記筒体の外面に前記塗膜となる塗料を、前記筒体を一周以上二周未満回転させて塗装するとともに、前記筒体の一周目により前記塗料が一度だけ塗布されるシングル領域が形成され、
前記縮径部となる領域の前記塗膜の膜厚Bのうち、前記シングル領域における前記塗膜の膜厚B1は、45mg/dm
2以上とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のボトル缶の製造方法。
【請求項4】
前記塗膜の膜厚B1は、80mg/dm
2以下とすることを特徴とする請求項3に記載のボトル缶の製造方法。
【請求項5】
前記オーバーコート工程では、前記筒体の外面に前記塗膜となる塗料を、前記筒体を二周以上回転させて塗装することを特徴とする請求項1又は2に記載のボトル缶の製造方法。
【請求項6】
前記オーバーコート工程では、前記筒体の二周目により前記塗料が二重に塗布されるダブル領域が形成され、前記縮径部となる領域の前記塗膜の膜厚Bのうち、前記ダブル領域における前記塗膜の膜厚B2を60mg/dm
2以上112mg/dm
2以下とすることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のボトル缶の製造方法。
【請求項7】
前記オーバーコート工程では、前記筒体の外面に前記塗膜となる塗料を、前記筒体を二周以上三周未満回転させて塗装するとともに、前記筒体の二周目により前記塗料が二重に塗布されるダブル領域と、前記筒体の三周目により前記塗料が三重に塗布されるトリプル領域と、が形成されることを特徴とする請求項5に記載のボトル缶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料等の内容物が充填されるボトル缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の内容物が充填、密封される缶体として、缶の開口端部にキャップが装着されたボトル缶が知られている。このボトル缶は、一般に、胴部と底部とを有する有底円筒状に形成され、その胴部の開口部側に上方へ向かうに従い漸次縮径する肩部、縮径部が設けられ、縮径部の上端に口部が設けられた構成とされている。このようなボトル缶は、金属板材(アルミニウム合金材料の板材)にカッピング工程(絞り工程)及びDI工程(絞りしごき工程、Drawing & Ironing)、及びトリミング工程を施すことにより、胴部及び底部を有する有底円筒状の筒体に形成され、その有底円筒状の筒体の胴部に縮径工程(ネッキング工程)を施すことにより肩部及び縮径部が形成される。そして、ネッキング工程により縮径した口部に膨出部やねじ部等を成形する口部形成工程が施される。このようなボトル缶において、印刷及びオーバーコートは、絞りしごき工程、トリミング工程後の有底円筒状の筒体に対して行われる。
【0003】
このような筒体の外面に印刷がなされ、その印刷層を含む外周面全体に透明な塗膜(オーバーコート)を同じ厚さで施すと、ネッキング工程の縮径率が大きいことから、塗膜に亀裂が生じたり、塗膜が剥離したりする場合がある。このため、特許文献1及び2のように、底部を有する円筒状の筒体において、その後の加工により、ネック部やねじ部となる領域に対する塗膜の塗布量(単位面積当たりの塗布量及び塗布厚等)を変更する方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1の方法では、筒体においてねじ部及びねじ部の上端に形成されるカール部となる領域に他の缶胴部分より薄い塗膜を形成することが開示されている。
また、例えば、特許文献2の方法では、筒体において縮径が施されない缶胴部の外周面に形成される塗装膜より、縮径が施される缶胴部の外周面に形成される塗装膜の単位面積当たりの塗布量を少なくすることが開示されている。
一方、特許文献3には、筒体の外周面に縮径を施さない、いわゆる2ピース缶ではあるが、缶同士が接触する缶の上下両端部の塗膜を缶の中央部の塗膜に比べて厚くして、缶製造工程、飲料充填工程、流通過程等の缶の取り扱い時における擦り傷等を抑制して商品外観を維持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-232347号公報
【文献】特開平9-29367号公報
【文献】特開平3-56176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、ボトル缶の内容量を拡大することが求められている。この際、ボトル缶の内容量を拡大するには、ボトル缶の径を拡大することが考えられるが、従来の製造施設の制約が大きいので、缶の高さを大きくすることが採用される。この場合、ボトル缶の筒胴部を高くすることや、縮径部の缶軸に対する傾斜角度を小さくして大容量化することが考えられる。特に、縮径部の缶軸に対する傾斜角度を小さくして大容量化しようとすると、縮径部の缶軸方向の伸びが大きくなって、その成形が難しい。このため、特許文献1~3に開示された各方法をそのまま適用すると、ボトル缶のネッキング工程時又はその後の洗灌工程時に塗膜浮きが生じて、印刷層が剥離する可能性がある。また、ボトル缶のねじ成形時に塗膜浮きが生じると、ねじ部がざらつき、開栓トルクが高くなるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、塗膜浮きの発生を抑制して印刷剥離を抑制するとともに、開封時のトルク増大を抑制できるボトル缶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のボトル缶の製造方法は、底部を有する円筒状の筒体の外面に印刷を施す印刷工程と、前記印刷工程後に前記筒体の印刷層を含む外周面に透明な塗膜を形成するオーバーコート工程と、前記オーバーコート工程後の筒体を加工して、円筒状の筒胴部と、前記筒胴部に連続して形成され、該筒胴部の缶軸方向上側に位置する肩部と、前記肩部の上端から前記筒胴部に対して缶軸方向上側に向かうに従って縮径する縮径部と、前記縮径部の缶軸方向上側に缶軸に沿って延びる小径部と、を形成するネッキング工程と、前記小径部を加工して、ねじ部を有する口部を形成する口部成形工程と、を備え、前記オーバーコート工程では、前記筒体における前記口部となる領域の前記塗膜の膜厚をA、前記筒体における前記縮径部となる領域の前記塗膜の膜厚をB、前記筒体における前記胴部となる領域の前記塗膜の膜厚をDとした場合に、A<B<Dとする。
【0009】
本発明では、筒体における縮径部となる領域の塗膜の膜厚Bを、筒体における胴部となる領域の塗膜の膜厚Dより薄く形成しているので、筒体における縮径部となる領域がネッキング工程により缶軸方向に伸びる際に、塗膜浮きにより印刷層が剥離することを抑制できる。また、口部成形工程でのねじ加工は、ネッキング工程の加工に比べて、より過酷であるため、筒体における口部となる領域の塗膜の膜厚Aを、筒体におけるネック部となる領域の膜厚Bよりさらに薄く形成している。これにより、ボトル缶のねじ成形時における塗膜浮きを抑制して、ねじ部がざらつくことにより開栓トルクが高くなることを抑制できる。
【0010】
本発明のボトル缶の製造方法の好ましい態様としては、前記オーバーコート工程では、前記筒体における前記肩部となる領域の前記塗膜の膜厚をC、前記筒体における前記胴部となる領域の前記塗膜の膜厚Dのうち、底部側領域の前記塗膜の膜厚をD2、該底部側領域を除く領域の前記塗膜の膜厚をD1とした場合に、D1≦C、かつ、D1<D2とするとよい。
【0011】
ここで、筒体においてボトル缶の肩部と、胴部の底部側領域とは、ボトル缶に内容物を充填する充填ラインや搬送時においてボトル缶同士が接触する部分である。
上記態様では、胴部となる領域のうち、底部側領域を除く領域の塗膜の膜厚D1より、底部側領域の塗膜の膜厚D2が厚く形成され、かつ、肩部となる領域の塗膜の膜厚Cが底部側領域を除く領域の塗膜D1以上の厚さに形成されるので、充填ラインや搬送時においてボトル缶同士が接触しても、塗膜に擦り傷が生じてボトル缶の外観を損ねることを抑制できる。
【0012】
本発明のボトル缶の製造方法の好ましい態様としては、前記オーバーコート工程では、前記筒体の外面に前記塗膜となる塗料を、前記筒体を一周以上二周未満回転させて塗装するとともに、前記筒体の一周目により前記塗料が一度だけ塗布されるシングル領域が形成され、前記縮径部となる領域の前記塗膜の膜厚Bのうち、前記シングル領域における前記塗膜の膜厚B1は、45mg/dm2以上とするとよい。
【0013】
シングル領域における塗膜の膜厚B1が45mg/dm2未満であると、塗膜の強度が不足することから、ネッキング工程時に印刷層が剥がれる可能性がある。
【0014】
本発明のボトル缶の製造方法の好ましい態様としては、前記塗膜の膜厚B1は、80mg/dm2以下とするとよい。
【0015】
縮径部となる領域の塗膜の膜厚B1が80mg/dm2を超えると、塗膜が厚すぎることから、ネッキング工程時に塗膜浮きが生じて、ザラツキが生じる可能性がある。
【0016】
本発明のボトル缶の製造方法の好ましい態様としては、前記オーバーコート工程では、前記筒体の外面に前記塗膜となる塗料を、前記筒体を二周以上回転させて塗装するとよい。
【0017】
上記態様では、塗膜となる塗料が少なくとも二重に塗布されるので、印刷層の剥離及び塗膜浮きを確実に抑制できる。
【0018】
本発明のボトル缶の製造方法の好ましい態様としては、前記オーバーコート工程では、前記筒体の二周目により前記塗料が二重に塗布されるダブル領域が形成され、前記縮径部となる領域の前記塗膜の膜厚Bのうち、前記ダブル領域における前記塗膜の膜厚B2を60mg/dm2以上112mg/dm2以下とするとよい。
【0019】
上記態様では、塗膜となる塗料が二重に塗布されたダブル領域の塗膜の膜厚B2を上記範囲内としたので、ダブル領域における印刷層の剥離及び塗膜浮きを抑制できる。特に、縮径部は、缶軸方向の伸びが大きいため、縮径部となる領域の塗膜の膜厚が60mg/dm2未満であると、ネッキング工程時に印刷層が剥がれる可能性があり、112mg/dm2を超えると、ネッキング工程時に塗膜浮きが生じてザラツキが生じる可能性がある。
【0020】
本発明のボトル缶の製造方法の好ましい態様としては、前記オーバーコート工程では、前記筒体の外面に前記塗膜となる塗料を、前記筒体を二周以上三周未満回転させて塗装するとともに、前記筒体の二周目により前記塗料が二重に塗布されるダブル領域と、前記筒体の三周目により前記塗料が三重に塗布されるトリプル領域と、が形成されてもよい。
【0021】
上記態様では、塗膜となる塗料が少なくとも二重に塗布されるので、印刷層の剥離及び塗膜浮きを確実に抑制できるとともに、塗膜となる塗料が三重を超えることがないので、ネッキング工程時の塗膜浮きを抑制して、ザラツキが生じる可能性を低減できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ボトル缶のように印刷及びオーバーコート工程の後に胴部に大きな加工が施される缶において、塗膜浮きを抑制して印刷剥離を抑制するとともに、開封時のトルク増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るボトル缶の製造方法により製造されたボトル缶を示す正面図である。
【
図2】上記実施形態のボトル缶の製造工程のオーバーコート工程における筒体の外周面の塗膜が形成される各領域を示す模式図である。
【
図3】上記実施形態のボトル缶の製造工程を(a)~(c)の順に示す図であり、(a)及び(b)が缶軸を通る縦断面図、(c)が正面図である。
【
図4】上記実施形態の筒体の外周面に印刷層及び塗膜が形成された状態を示す部分断面図である。
【
図5】上記実施形態の筒体の外周面に塗膜を形成するための塗装装置の概略構成を示す模式図である。
【
図6】上記実施形態の塗装装置のグラビアロールの溝の深さを比較するための模式図である。
【
図7】上記実施形態の変形例に係るボトル缶を示す正面図である。
【
図8】上記変形例のボトル缶の製造工程のオーバーコート工程における筒体の外周面の塗膜が形成される各領域を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るボトル缶の正面図である。このボトル缶1は、開口端部1aにキャップ(図示省略)が装着されることにより、飲料等を収容する容器として用いられる。
本実施形態の製造方法により製造されるボトル缶1は、アルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、Al-Mn系アルミニウム合金)等の薄板金属からなり、
図1に示すように、底部11を有する筒胴部12と、筒胴部12の上端に位置する肩部130と、肩部130の上端から缶軸方向上側に向かうに従って縮径する縮径部13と、縮径部13の上端に形成された口径38mmの口部14とを備えている。また、ボトル缶1の高さH1は、194mm以上230mm以下(例えば、210mm)に設定されている。
【0025】
筒胴部12は、缶軸Sに沿う方向に直線状に延びる円筒状に形成され、その外径w1は、64mm以上68mm以下に設定され、例えば66.2mmとされる。筒胴部12の下端部には、ドーム状をなす底部11が形成されており、底部11は、缶軸S上に位置するとともに、上方(筒胴部11の内部)に向けて膨出するように形成されたドーム部111と、ドーム部111の外周縁部と筒胴部12の下端部とを接続するヒール部112とを備えている。また、ドーム部111とヒール部112との接続部分は、缶軸方向の下方に向けて凸となるように屈曲形成されており、ボトル缶1が正立姿勢(
図1に示される、口部14が上方を向く姿勢)となるように載置面上に載置されたときに、載置面に接する接地部113となっている。接地部113は、底部11において最も下方に向けて突出しているとともに、周方向に沿って延びる環状をなしている。この接地部113の直径w2は、例えば、56mmに設定されている。
【0026】
肩部130は、筒胴部12の缶軸方向上側の上端に位置している。この肩部130は、ボトル缶1の搬送時に他のボトル缶1と接触する部位であり、筒胴部12と縮径部13とを接続する。また、底部11の接地部113から肩部130までの高さH2は、110mm以上150mm以下(例えば、125mm)に設定されている。
【0027】
縮径部13は、缶軸方向の下側に凸湾曲部131、上側に凹湾曲部132が形成され、これらが滑らかに接続されている。この場合、下側の凸湾曲部131の曲率半径R1より、上側の凹湾曲部132の曲率半径R2が大きく設定されている。具体的には、凸湾曲部131は、その外面の曲率半径R1が50mm以上70mmに形成され、凹湾曲部132は、その外面の曲率半径R2が90mm以上110mm以下に形成される。
【0028】
また、凹湾曲部132の缶軸方向上側の端部には、缶軸Sを含む縦断面において径方向外側に向けて凸となる下側凸部133と、下側凸部133の缶軸方向上側に連続して形成され、縦断面において径方向内側に向けて凹となる上側凹部134とが設けられている。この下側凸部133は、凹湾曲部132の缶軸方向上側端に接続され、上側凹部134は、縮径部13と口部14との間に形成され、口部14より小径円筒状の首部15に接続されている。このため、凹湾曲部132の上端部は、くびれた形状となる。
【0029】
口部14は、前述した首部15の上に周方向に膨出部141が形成され、膨出部141の上にねじ部142が形成され、ねじ部142の上方の開口端部1aにカール部143が形成されている。そして、キャップ(図示略)がねじ部142に螺合し、キャップの裾部が膨出部141に巻き込まれた状態で、キャップ内面のライナがカール部143に圧接して、内部を密封する。
【0030】
このボトル缶1を製造するには、まず、アルミニウム板材を打ち抜いて絞り加工することにより、
図3(a)に示すように比較的大径で浅いカップ21を成形する(カップ成形工程)。その後、このカップ21に再度の絞り加工及びしごき加工(DI加工)を加えて同図(b)に示すように所定高さの有底円筒状の筒体22を成形する(絞りしごき工程(DI工程))。この絞りしごき加工により、筒体22の上端部に耳部が発生するので、上端部をトリミングして、高さを周方向に揃えた状態とする(トリミング工程)。この絞りしごき工程により、筒体22の底部は最終のボトル缶1としての底部11の形状に成形される。
【0031】
次いで、筒体22を脱脂及び化成処理した後、印刷装置(図示省略)に供給して、外周面22aに印刷を施して印刷層221を形成する(印刷工程)とともに、塗装装置40に供給してその印刷層221を含む外周面22a全体に透明な塗膜222(オーバーコート又は仕上げニス)を形成し(オーバーコート工程)、塗装後の筒体22をオーブン内に通して印刷層221及び塗膜222を焼き付け、乾燥させる(外面印刷塗装工程)。これにより、
図4に示すように、筒体22の外周面に印刷層221及び塗膜222が形成される。なお、
図2が印刷・塗装後の筒体22を示しているが、便宜上、塗膜222のみ符号を付して示している。この塗膜222は、印刷層221よりも広い面積で形成される。
【0032】
また、塗膜222の原料となる塗料P(
図5参照)には、インキの表面張力よりも小さい表面張力を有するものからインキよりも表面張力が大きいものまで種々の塗料を用いることができ、例えば、ポリエステル、エポキシ、アクリル、アミド等の樹脂により構成される。具体的には、硬化したエポキシ-フェノール系樹脂または硬化したポリエステル-アミノ系樹脂を溶剤で溶かし、これにワックスを添加することによって構成される。なお、原料に添加されるワックスには、カルナバワックスやマイクロクリスタリン等が挙げられる。
【0033】
また、塗料Pには、鱗片状の粒子や、発泡性の粒子、光を乱反射させる粒子等の添加剤を混合したものを用いることができ、インキよりも表面張力が高い塗料Pの場合には、添加剤を混合することが好ましい。例えば平滑なフレーク表面を金属酸化物やシリカで被覆することで虹彩色やカラープロップ性(見る角度により光輝度や色相が変化する性質)を示すパール顔料や、発泡剤を添加した発泡塗料、シリカを混合した艶消し塗料、チタン顔料を混合したベースコート塗料、アルミ粉末を混合したアルミペースト塗料等の添加剤を含有させた塗料を好適に用いることができる。
【0034】
(塗装装置の構成)
本実施形態の缶の製造方法のオーバーコート工程には、
図5に示すような塗装装置40が用いられる。この塗装装置40は、塗料供給部41と、グラビアロール42と、アプリケーターロール43とを備え、塗料供給部41から供給された塗料Pを、グラビアロール42を用いてアプリケーターロール43の外周面43aに付着させ、複数の筒体22をそれぞれの軸線を大きく略円形状に公転させるようにして順次搬送通路45に沿って搬送させながら、各々の筒体22の外周面22aにアプリケーターロール43の外周面43aを当接させることにより塗料Pを塗布するようになっている。
【0035】
アプリケーターロール43は、その外周面43aがゴム等により形成されており、外周面43aの材料としては、例えばアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)を好適に用いることができる。また、アプリケーターロール43は、その回転軸S3を中心に回転可能に設けられており、搬送通路45の下方において、その搬送通路45の塗装位置に外周面43aの上方の一部が重なるようにして配置されている。また、アプリケーターロール43の回転方向X3は、搬送通路45を搬送される筒体22の公転方向X1とは逆向きとされている。
【0036】
また、グラビアロール42は、ステンレスやスチール等の硬質の材料により円柱形状に設けられており、その外周面42aに塗料Pが入り込む溝が形成され、塗料供給部41から塗料Pが供給されるようになっている。また、グラビアロール42は、その回転軸S2を中心に回転可能とされており、アプリケーターロール43の塗装位置よりも回転方向X3の上流側に配置されている。そして、グラビアロール42の外周面42aをアプリケーターロール43の外周面43aに摺接させることにより、アプリケーターロール43の外周面43aに塗料Pを付着させるようになっている。また、グラビアロール42の回転軸S2とアプリケーターロール43の回転軸S3とは、平行に配置されており、グラビアロール42の回転方向X2は、アプリケーターロール43の回転方向X3とは逆向きとされて、互いに同期して逆方向に回転するようになっている。
【0037】
次に、この缶の塗装装置40による筒体22の塗装方法について説明する。
まず、塗料供給部41からグラビアロール42の外周面42a上に塗料Pを供給し、その外周面42a全体に満遍なく塗料Pを付着させる。グラビアロール42の外周面42a上に付着した塗料Pは、その回転に伴って移動し、グラビアロール42と逆方向に回転するアプリケーターロール43の外周面43a上に付着され、アプリケーターロール43に付着した塗料Pは、アプリケーターロール43の回転に伴って順次回転方向X3に移動していく。
【0038】
そして、塗装位置に搬送されてきた筒体22の外周面22aを、その塗装位置において、塗料Pが付着したアプリケーターロール43の外周面43aと当接させた状態で、アプリケーターロール43と筒体22とを互いに逆方向に転動させて、アプリケーターロール43の外周面43a上で筒体22を1周以上回転移動させる。塗装装置40では、筒体22を、アプリケーターロール43の回転と同期させて、塗装位置においてアプリケーターロール43の回転方向X3と逆向き(矢印Y方向)に自転するように構成しており、これにより、アプリケーターロール43の回転と筒体22の回転に伴って、アプリケーターロール43の外周面43a上の塗料Pが順次外周面22aへと塗布(転移)され、外周面22aに塗膜222が形成される。
【0039】
この際、アプリケーターロール43に供給する塗料Pの粘度や外周面43a上に付着させる塗料Pの塗布量、アプリケーターロール43の外周面43a上を転動する筒体22の回転速度(自転速度)は、外周面22aに形成する塗膜222の要求塗布量に対する筒体22の塗装回数、すなわちアプリケーターロール43の外周面43a上で回転移動する筒体22の周回数に伴って調整される。
例えば、本実施形態でのオーバーコート工程では、筒体22を一周以上二周未満回転移動させる。このため、筒体22の外周面22aに塗膜となる塗料Pを塗装する際に、筒体22の一周目により塗料Pが一度だけ塗布されるシングル領域と、筒体22の二周目により塗料Pが二重に塗布されるダブル領域と、が形成される。
【0040】
次いで、筒体22の内周面にスプレー等により塗料を吹き付けて内面塗装を行い、焼き付け、乾燥する(内面塗装工程)。
その後、筒体22の上端部を成形して、
図3(c)に示すように、下側部分をそのまま筒胴部12とし、筒胴部12より上方部分を縮径して肩部130、縮径部13を形成するとともに、その上方に小径筒部231を形成して、第1中間成形体23とする(ネッキング工程)。そして、
図3(d)に示すように、第1中間成形体23の小径筒部231に首部15を形成することにより、小径部241を形成して第2中間成形体24とする。そして、小径部241を加工して、径方向外側に剖出する膨出部141と、ねじ部142と、カール部143と、を有する口部14を形成する(口部成形工程)。
【0041】
この一連の製造工程における外面塗装工程では、筒体22の外周面22aの全領域に塗膜222を焼き付け、乾燥させる。
ここで、ボトル缶1の材料となるアルミニウム合金板は、圧延方向とその交差方向とで伸びが異なるため、筒体22の外周面22aの全領域に形成される塗膜222の膜厚を同じ膜厚とすると、ボトル缶1のネッキング工程時に塗膜浮きが生じて印刷層が剥離することやザラツキを低減することができない。また、ボトル缶1のねじ成形時に塗膜浮きが生じると、ねじ部142がざらつき、開栓トルクが高くなるおそれがある。
【0042】
そこで、本実施形態では、オーバーコート工程における塗料Pの塗布量を調整する。
図2は、外面印刷塗装工程後(オーバーコート工程後)の筒体22の外周面22aを示しており、塗膜222は、底部11からわずかな部分を残し、筒体22の外周面22aの全領域に塗布されている。この塗膜222は、筒体22における口部となる領域(以下、第1塗布領域Ar1という)と、筒体22における縮径部13となる領域(以下、第2塗布領域Ar2という)と、筒体における肩部130となる領域(以下、第3塗布領域Ar3という)と、胴部となる領域と、に形成される。これらのうち、胴部となる領域は、底部11側に位置する底部側領域(以下、第5塗布領域Ar5という)と、底部側領域(第5塗布領域Ar5)を除く領域(以下、第4塗布領域Ar4という)とからなる。
【0043】
そして、オーバーコート工程では、筒体22の外周面22aにおける第1~第5塗布領域Ar1~Ar5のそれぞれに塗布される塗膜222a~222eの厚さを以下のとおりとする。具体的には、第1塗布領域Ar1の塗膜222aの膜厚をA、第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚をB、胴部となる領域(第4及び第5塗布領域Ar4,Ar5)の塗膜222dの膜厚をDとした場合に、A<B<Dとする。すなわち、オーバーコート工程では、胴部となる領域の塗膜222dの膜厚Dよりも、第1塗布領域Ar1に塗布される塗膜222aの膜厚A及び第2塗布領域Ar2に塗布される塗膜222bの膜厚Bが薄く形成されるとともに、第2塗布領域Ar2に塗布される塗膜222bの膜厚Bよりも第1塗布領域Ar1に塗布される塗膜222aの膜厚Aが薄く設定されている。
【0044】
さらに、第3塗布領域Ar3の塗膜222cの膜厚をC、胴部となる領域の塗膜222dの膜厚Dのうち、第5塗布領域Ar5の塗膜222d2の膜厚をD2、第4塗布領域Ar4の塗膜222d1の膜厚をD1とした場合に、D1≦C、かつ、D1<D2とする。すなわち、オーバーコート工程では、第4塗布領域Ar4の塗膜222d1の膜厚D1より、第5塗布領域Ar5に塗布される塗膜222d2の膜厚D2が厚く設定されているとともに、第3塗布領域Ar3に塗布される塗膜222cの膜厚Cが第4塗布領域Ar4に塗布される塗膜222dの膜厚D1以上の厚さに設定されている。
なお、印刷層221は、第2塗布領域Ar2~第5塗布領域Ar5に形成されている。すなわち、第1塗布領域Ar1には、塗膜222aのみが塗布される。
【0045】
本実施形態では、第1塗布領域Ar1の塗膜222aの膜厚Aは、30mg/dm2以上65mg/dm2以下、第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚B(B1)は、45mg/dm2以上80mg/dm2以下、第3塗布領域Ar3の塗膜222cの膜厚Cは、55mg/dm2以上100mg/dm2以下、第4塗布領域Ar4の塗膜222d1の膜厚D1は、50mg/dm2以上90mg/dm2以下、第5塗布領域Ar5の塗膜222d2の膜厚D2は、55mg/dm2以上100mg/dm2以下とされる。
なお、上記膜厚A~D2の数値範囲は、筒体22の一周目により塗膜222が一度だけ塗布されるシングル領域における数値範囲を示している。また、筒体22の二周目により塗料が二重に塗布されるダブル領域における数値範囲は、例えば、各種数値範囲の1.3~1.4倍となり、第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚B2は、60mg/dm2以上112mg/dm2以下とされる。
【0046】
なお、シングル領域における第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚B1が45mg/dm2未満であると、塗膜の強度が不足することから、ネッキング工程時に印刷層が剥がれる可能性があり、上記膜厚B1が80mg/dm2を超えると、塗膜が厚すぎることから、ネッキング工程時に塗膜浮きが生じて、ザラツキが生じる可能性がある。また、縮径部13となる第2塗布領域Ar2は、缶軸方向の伸びが大きいため、ダブル塗布領域における第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚B2が60mg/dm2未満であると、ネッキング工程時に印刷層221が剥がれる可能性があり、112mg/dm2を超えると、ネッキング工程時に塗膜浮きが生じて、ザラツキが生じる可能性がある。
また、シングル領域の第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚B1は、45mg/dm2以上60mg/dm2以下であることがより好ましく、ダブル領域の第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚B2は、60mg/dm2以上85mg/dm2以下であることがより好ましい。この場合、ネッキング工程時の印刷層の剥離及びザラツキが生じることを確実に抑制できる。
【0047】
また、筒体22の高さH10は、ボトル缶1の高さH0より若干大きく形成され、198mm~210mm(例えば、202mm)とされる。また、筒体22における塗膜222が塗布されない底部11の高さH3は、5mm~11mm(例えば、7mm)、筒体22における第5塗布領域Ar5の高さH4は10mm~20mm(例えば、15mm)、筒体22における第4塗布領域Ar4の高さH5は80mm~100mm(例えば、93mm)、筒体22における第3塗布領域Ar3の高さH6は15mm~25mm(例えば、20mm)とされる。この点、第3塗布領域Ar3は、筒体22における肩部130となる領域であるが、実際の肩部の高さよりも大きく設定されており、ネッキング工程によりその位置が多少ずれる可能性があるため、上述したようにある程度の幅を持たせており、ボトル缶1の底部11の接地部113から肩部130までの高さH2が第3塗布領域Ar3の高さ方向における中心に位置するように設定されている。
また、筒体22における第2塗布領域Ar2の高さH7は、20mm~60mm(例えば、42mm)、筒体22における第1塗布領域Ar1の高さH8は、15mm~35mm(例えば、23mm)とされている。
【0048】
このような筒体22における塗料Pの塗布は、上述した塗装装置40が採用されており、各塗布領域Ar1~Ar5のそれぞれに当接するアプリケーターロール43の外周面43aに塗料Pを供給するグラビアロール42の対応部分が、各塗布領域Ar1~Ar5に塗布された塗料Pからなる塗膜222a~222d2の膜厚A~D2が上記数値範囲となるように設定されている。具体的には、グラビアロール42の外周面42aに形成される溝(画線)の深さ及び本数が各塗布領域Ar1~Ar5に対応する塗布領域ごとに異なっている。この画線の深さ及び本数は、深さが大きい、及び本数が多いほど塗料Pを多く含むことから、画線の深さが深い、及び画線の本数が多い程、塗料Pが多量に筒体22の外周面22aに塗布される。
【0049】
詳述すると、
図6に示すように、グラビアロール42の外周面42aにおける第1塗布領域Ar1に対応する第1領域Ar10に形成される画線421aの深さ及び本数は、第2塗布領域Ar2に対応する第2領域Ar20に形成される画線421bの深さよりも小さくかつ、本数も少なく設定されている。また、第2領域Ar20に形成される画線421bの深さ及び本数は、第4塗布領域Ar4に対応する第4領域Ar40に形成される画線421d1の深さよりも小さくかつ、本数も少なく設定されている。さらに、第3塗布領域Ar3に対応する第3領域Ar30及び第5塗布領域Ar5に対応する第5領域Ar50の画線421c,421d2の深さ及び本数は、それぞれ同じとされ、かつ、第4領域Ar40に形成される画線421d1の深さよりも大きく設定されている。
【0050】
このグラビアロール42の第1~第5領域Ar10~Ar50に対応するアプリケーターロール43の外周面43aには、上記各領域Ar10~Ar50に応じた塗料Pが供給され、このアプリケーターロール43の外周面43aを筒体22が1周以上2周未満回転することにより、各塗布領域Ar1~Ar5の塗膜222a~222d2の膜厚A~D2を上記数値範囲とすることが可能となる。
【0051】
本実施形態では、筒体における縮径部となる領域の塗膜の膜厚Bを、筒体における胴部となる領域の塗膜の膜厚Dより薄く形成しているので、筒体における縮径部となる領域がネッキング工程により缶軸方向に伸びる際に、塗膜浮きにより印刷層が剥離することを抑制できる。また、口部成形工程でのねじ加工は、ネッキング工程の加工に比べて、より過酷であるため、筒体における口部となる領域の塗膜の膜厚Aを、筒体におけるネック部となる領域の膜厚Bよりさらに薄く形成している。これにより、ボトル缶のねじ成形時における塗膜浮きを抑制して、ねじ部がざらつくことにより開栓トルクが高くなることを抑制できる。
【0052】
また、胴部となる領域のうち、底部側領域を除く領域の塗膜の膜厚D1より、底部側領域の塗膜の膜厚D2及び肩部となる領域の塗膜の膜厚Cが厚く形成されるので、充填ラインや搬送時においてボトル缶同士が接触しても、塗膜に擦り傷が生じてボトル缶の外観を損ねることを抑制できる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、ボトル缶1の縮径部13は、凸湾曲部131及び凹湾曲部132を有する形状であることとしたが、これに限らず、缶軸方向上側に円錐台の傾斜面状に傾斜する形状であってもよい。
【0054】
図7は、上記実施形態の変形例に係るボトル缶1Aを示す正面図であり、
図8は、上記変形例のボトル缶1Aの製造工程のオーバーコート工程における筒体52の外周面52aの塗膜が形成される各領域を示す模式図である。なお、以下の説明では、上記実施形態と同じ又は略同じ構成については、同じ番号を付し、説明を省略又は簡略化する。
本変形例のボトル缶1Aは、
図7に示すように、底部11を有する筒胴部12Aと、筒胴部12Aの上端に位置する肩部130と、肩部130の上端から缶軸方向上側に向かうに従って縮径する縮径部13Aと、縮径部13Aの上端に形成された口部14とを備えている。すなわち、本変形例のボトル缶1Aは、筒胴部12A及び縮径部13Aの形状が、上記実施形態と一部異なっている。また、ボトル缶1の高さH9は、195mm以上210mm以下(例えば、198.6mm)に設定されている。
【0055】
肩部130は、筒胴部12Aの缶軸方向上側の上端に位置している。この肩部130は、ボトル缶1Aの搬送時に他のボトル缶1Aと接触する部位であり、筒胴部12Aと縮径部13Aとを接続する。また、底部11の接地部113から肩部130までの高さH30は、140mm以上155mm以下(例えば、147mm)に設定されている。すなわち、本変形例では、筒胴部12Aの長さが上記実施形態よりも大きくなっている。
縮径部13Aは、縦断面視で肩部130の缶軸方向上側の上端から缶軸Sに向けて傾斜して直線状に延びる形状であり、缶軸方向の長さが上記実施形態の縮径部13の長さよりも小さく形成されている。また、縮径部13Aの下端部の曲率半径R3は、5mm以上12mm以下に形成されている。この直線状に延びる縮径部13Aの上端は、下側凸部133に接続され、上側凹部134は、縮径部13Aと口部14との間に形成され、口部14より小径円筒状の首部15に接続されている。
【0056】
このようなボトル缶1Aは、上記実施形態のボトル缶1と同様に、カップ成形工程によりカップを形成し、再度の絞り加工及びしごき加工(DI加工)を加えて有底円筒状の筒体52を成形する(絞りしごき工程(DI工程))。そして、トリミング工程を経て、筒体52を脱脂及び化成処理した後、印刷装置(図示省略)に供給して、外周面52aに印刷を施して印刷層を形成する(印刷工程)とともに、塗装装置40に供給してその印刷層を含む外周面52a全体に透明な塗膜522(オーバーコート又は仕上げニス)を形成し(オーバーコート工程)、塗装後の筒体52をオーブン内に通して印刷層及び塗膜522を焼き付け、乾燥させる(外面印刷塗装工程)。
【0057】
そして、オーバーコート工程では、筒体52の外周面52aにおける第1~第5塗布領域Ar1~Ar5のそれぞれに塗布される塗膜522a~522eの厚さを以下のとおりとする。具体的には、第1塗布領域Ar1の塗膜522aの膜厚をA、第2塗布領域Ar2の塗膜522bの膜厚をB、胴部となる領域(第4及び第5塗布領域Ar4,Ar5)の塗膜522dの膜厚をDとした場合に、A<B<Dとする。さらに、第3塗布領域Ar3の塗膜522cの膜厚をC、胴部となる領域の塗膜522dの膜厚Dのうち、第5塗布領域Ar5の塗膜522d2の膜厚をD2、第4塗布領域Ar4の塗膜522d1の膜厚をD1とした場合に、D1≦C、かつ、D1<D2とする。
【0058】
本変形例では、第1塗布領域Ar1の塗膜522aの膜厚Aは、30mg/dm2以上65mg/dm2以下、第2塗布領域Ar2の塗膜522bの膜厚B(B1)は、45mg/dm2以上80mg/dm2以下、第3塗布領域Ar3の塗膜522cの膜厚Cは、55mg/dm2以上100mg/dm2以下、第4塗布領域Ar4の塗膜522d1の膜厚D1は、50mg/dm2以下90mg/dm2以下、第5塗布領域Ar5の塗膜522d2の膜厚D2は、55mg/dm2以上100mg/dm2以下とされる。
なお、上記膜厚A~D2の数値範囲は、筒体52の一周目により塗料が一度だけ塗布されるシングル領域における数値範囲を示している。また、筒体52の二周目により塗料が二重に塗布されるダブル領域における数値範囲は、例えば、各種数値範囲の1.3~1.4倍となり、第2塗布領域Ar2の塗膜522bの膜厚B2は、60mg/dm2以上112mg/dm2以下とされる。
また、シングル領域の第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚B1は、45mg/dm2以上60mg/dm2以下であることがより好ましく、ダブル領域の第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚B2は、60mg/dm2以上85mg/dm2以下であることがより好ましい。この場合、ネッキング工程時の印刷層の剥離及びザラツキが生じることを確実に抑制できる。
【0059】
また、筒体52の高さH90は、ボトル缶1Aの高さH9より若干大きく形成され、198mm~210mm(例えば、199mm)とされる。また、筒体52における塗膜522が塗布されない底部11の高さH31は、5mm~11mm(例えば、7mm)、筒体52における第5塗布領域Ar5の高さH32は10mm~20mm(例えば、15mm)、筒体52における第4塗布領域Ar4の高さH33は100mm~120mm(例えば、115mm)、筒体52における第3塗布領域Ar3の高さH34は10mm~20mm(例えば、15mm)とされる。この点、第3塗布領域Ar3は、筒体52における肩部130となる領域であるが、実際の肩部の高さよりも大きく設定されており、ネッキング工程によりその位置が多少ずれる可能性があるため、上述したようにある程度の幅を持たせており、ボトル缶1Aの底部11の接地部113から肩部130までの高さH30が第3塗布領域Ar3の高さ方向における中心に位置するように設定されている。
また、筒体52における第2塗布領域Ar2の高さH35は、10mm~30mm(例えば、20mm)、筒体52における第1塗布領域Ar1の高さH36は、15mm~35mm(例えば、23mm)とされている。
【0060】
本変形例のボトル缶1Aは、上記実施形態のボトル缶1とは、筒胴部12A及び縮径部13Aの形状が異なるものの、オーバーコート工程における第1領域Ar1~Ar5の塗膜522a~522d2の膜厚A~D2を上記実施形態と同じとしたので、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
上記実施形態では、第3塗布領域Ar3の塗膜222cの膜厚Cと第5塗布領域Ar5の塗膜222d2の膜厚D2とを同じとしたが、これに限らず、いずれかの塗膜の膜厚を大きくしてもよい。すなわち、D1≦C、かつ、D1<D2を満たせば、CとD2とは、いずれが大きくてもよいし、同じでもよい。
【0062】
上記実施形態では、オーバーコート工程において、筒体22を一周以上二周未満回転移動させることとしたが、これに限らない。例えば、オーバーコート工程において、筒体22を二周以上回転移動させて、塗装することとしてもよい。この場合、塗膜となる塗料Pが少なくとも二重に塗布されるので、塗膜の膜厚を大きくでき、印刷層221の剥離及び塗膜浮きを確実に抑制できる。
【0063】
さらに、オーバーコート工程では、筒体22を二周以上三周未満回転移動させることとしてもよい。より好ましくは、筒体22を2.0周以上2.4周以下回転移動させるとよい。この場合、筒体22の外周面22aに塗膜となる塗料Pを塗装する際に、外周面22aには、筒体22の二周目により塗料Pが二重に塗布されるダブル領域と、筒体22の三周目により塗料Pが三重に塗布されるトリプル領域とが形成される。この場合、塗膜となる塗料が少なくとも二重に塗布されるので、印刷層の剥離及び塗膜浮きを確実に抑制できるとともに、塗膜となる塗料が三重を超えることがないので、ネッキング工程時に塗膜浮きが生じて、ザラツキが生じる可能性を低減できる。
【0064】
なお、この場合においても、ダブル領域における第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚B2は、60mg/dm2以上112mg/dm2以下とされる。また、筒体22の三周目により塗料が三重に塗布されるトリプル領域における数値範囲は、例えば、シングル領域における各種数値範囲の1.6~2.0倍となり、トリプル領域における第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚は、80mg/dm2以上150mg/dm2以下とされる。なお、トリプル領域における第2塗布領域Ar2の塗膜222bの膜厚は、厚くなりがちであるため、トリプル領域は形成されなくてもよい。
【0065】
上記実施形態では、グラビアロール42の外周面42aにおける各領域Ar10~Ar50における画線421a~421d2の深さ及び本数のそれぞれを異ならせることとしたが、これに限らず、深さのみを異ならせることとしてもよいし、本数のみを異ならせることとしてもよい。すなわち、各塗布領域Ar1~Ar5の塗膜222a~222d2の膜厚A~D2を上記数値範囲とすることができればよい。
【0066】
また、上記実施形態において、印刷前に、筒体22の外周面22aにベースコートやサイズコート塗装を施してもよい。
【0067】
また、ボトル缶1として、予め一体成型された有底円筒状の筒体を形成して、その外面に印刷したが、筒体は一体成型された底部を有していないものも含むものとし、筒体に、別に形成した底部を巻き締めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 1A ボトル缶
11 底部
111 ドーム部
112 ヒール部
113 接地部
12 12A 筒胴部
13 13A 縮径部
130 肩部
131 凸湾曲部
132 凹湾曲部
14 口部
141 膨出部
142 ねじ部
143 カール部
15 首部
21 カップ
22 52 筒体
22a 52a 外周面
221 印刷層
222 222a 222b 222c 222d1 222d2 522a 522b 522c 522d1 522d2 塗膜
23 第1中間成形体
231 小径筒部
24 第2中間成形体
241 小径部
40 塗装装置
41 塗料供給部
42 グラビアロール
42a 外周面
421a 421b 421c 421d1 421d2 画線
43 アプリケーターロール
43a 外周面
Ar1 第1塗布領域
Ar2 第2塗布領域
Ar3 第3塗布領域
Ar4 第4塗布領域
Ar5 第5塗布領域
Ar10 第1領域
Ar20 第2領域
Ar30 第3領域
Ar40 第4領域
Ar50 第5領域