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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの放熱構造
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20230119BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230119BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20230119BHJP
   H01B 7/42 20060101ALI20230119BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
H01B7/00 301
B60K1/04 Z
H02G3/04 062
H01B7/42 D
H05K7/20 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019139091
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021022677
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】葛原 史浩
(72)【発明者】
【氏名】西山 高広
(72)【発明者】
【氏名】吉川 慧
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-135540(JP,A)
【文献】特開2017-091800(JP,A)
【文献】特開2018-148007(JP,A)
【文献】特開2007-149550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
B60K 1/04
H01B 7/00
H01B 7/42
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスと、
前記ワイヤハーネスが熱伝導可能に接触する放熱体と、
特定方向で熱伝導性が向上された熱伝導部材を含み、
前記ワイヤハーネスと前記放熱体とが、前記熱伝導部材を前記特定方向で間に挟んで、相互に押し当てられており、
前記熱伝導部材が可撓性を有する熱伝導シートを含み、前記特定方向が前記熱伝導シートの厚さ方向であり、
前記放熱体が、前記ワイヤハーネスに沿って延出して冷媒が挿通される冷却管によって構成され、
前記熱伝導シートの長さ方向中間部分が、前記冷却管の外周面に巻きつけられて密着する外周密着部を構成し、
前記熱伝導シートの長さ方向両端部が相互に重ね合されて前記冷却管の側方に突出する側方突出部を構成し、
前記ワイヤハーネスが第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスを含んで構成されており、
前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスがそれぞれの第1当接部位で前記側方突出部を前記厚さ方向で間に挟んで相互に押し当てられており、
前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスは、前記第1当接部位とは異なるそれぞれの第2当接部位で、前記外周密着部を前記厚さ方向で間に挟んで前記冷却管に当接している、ワイヤハーネスの放熱構造。
【請求項2】
ワイヤハーネスと、
前記ワイヤハーネスが熱伝導可能に接触する放熱体と、
特定方向で熱伝導性が向上された熱伝導部材を含み、
前記ワイヤハーネスと前記放熱体とが、前記熱伝導部材を前記特定方向で間に挟んで、相互に押し当てられており、
前記熱伝導部材が可撓性を有する熱伝導シートを含み、前記特定方向が前記熱伝導シートの厚さ方向であり、
前記ワイヤハーネスが第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスを含んで構成されており、
前記放熱体が、前記ワイヤハーネスに沿って延出して冷媒が挿通される冷却管と矩形断面形状で延びて前記ワイヤハーネスが挿通状態で収容される筒状部材によって構成され、
前記筒状部材の底壁の幅方向中央部分に前記冷却管が配置され、前記冷却管から前記幅方向両側に離隔した部位に前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスが配置されており、
前記熱伝導シートの長さ方向中間部分が、前記冷却管の上方側から外周面に巻きつけられて密着する外周密着部を構成し、
前記熱伝導シートの長さ方向両端部が前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスの下方側から外周面にそれぞれ巻きつけられて密着する第1側密着部と第2側密着部を構成し、
前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスがそれぞれの第1当接部位で前記外周密着部を前記厚さ方向で間に挟んで前記冷却管に当接し、
前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスは、前記第1当接部位とは異なるそれぞれの第2当接部位で、前記第1側密着部と前記第2側密着部を前記厚さ方向で間に挟んで前記筒状部材に当接している、ワイヤハーネスの放熱構造。
【請求項3】
ワイヤハーネスと、
前記ワイヤハーネスが熱伝導可能に接触する放熱体と、
特定方向で熱伝導性が向上された熱伝導部材を含み、
前記ワイヤハーネスと前記放熱体とが、前記熱伝導部材を前記特定方向で間に挟んで、相互に押し当てられており、
前記熱伝導部材が可撓性を有する熱伝導シートを含み、前記特定方向が前記熱伝導シートの厚さ方向であり、
前記ワイヤハーネスが第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスを含んで構成されており、
前記放熱体が、前記ワイヤハーネスに沿って延出して冷媒が挿通される冷却管と矩形断面形状で延びて前記ワイヤハーネスが挿通状態で収容される筒状部材によって構成され、前記冷却管が第1冷却管と第2冷却管を含んで構成されており、
前記筒状部材の底壁の幅方向で相互に離隔した2箇所に前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスが配置されており、
前記熱伝導シートが、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスの周囲を囲んで環状に巻きつけられており、
前記環状の前記熱伝導シートには、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスの離隔隙間に上下側から窪んだ一対の窪み部が設けられており、該窪み部に前記第1冷却管と前記第2冷却管がそれぞれ配設されており、
前記第1冷却管と前記第2冷却管は、前記筒状部材の上壁と前記底壁にそれぞれ当接する一方、
前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスがそれぞれの上側第1当接部位および下側第1当接部位で前記熱伝導シートを前記厚さ方向で間に挟んで前記冷却管に当接し、
前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスは、それぞれの周方向で異なる部位に設けられた第2~第4当接部位において、前記熱伝導シートを前記厚さ方向で間に挟んで前記筒状部材の前記底壁と、側壁と前記上壁にそれぞれ当接している、ワイヤハーネスの放熱構造。
【請求項4】
前記熱伝導部材が、発泡体からなる基材を有している請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネスの放熱構造。
【請求項5】
複数の前記熱伝導部材が、前記ワイヤハーネスの長さ方向で相互に離隔した複数箇所にそれぞれ配設されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネスの放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスの放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハイブリッド車や電気自動車等の車両には、バッテリとインバータとの間等を接続する高圧のワイヤハーネスが配索されている。高圧のワイヤハーネスは、通電時の発熱量が大きくなるため、ワイヤハーネスの放熱性を向上させることが求められる。そこで、例えば、特許文献1には、ワイヤハーネスを収容する金属製パイプに対してワイヤハーネスの外周に密着する溝状の嵌合部を形成し、パイプに収容されたワイヤハーネスの外周に溝状嵌合部を密着させる構造が提案されている。この構造によれば、金属製パイプの溝状嵌合部がワイヤハーネスの外周に密着するため、ワイヤハーネスで発生した熱が、直接金属製パイプに伝熱されて、金属製パイプの外周から大気中に効率よく放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再公表特許第2008/062885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の構造では、金属製パイプを特定形状に加工する必要があることから、製造工程の簡素化や汎用性の向上を図りつつ、ワイヤハーネスの放熱性を向上することができる構造が求められていた。
【0005】
そこで、簡単な構造で汎用性の向上を図りつつ優れた放熱性を確保できる、新規なワイヤハーネスの放熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスの放熱構造は、ワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスが熱伝導可能に接触する放熱体と、特定方向で熱伝導性が向上された熱伝導部材を含み、前記ワイヤハーネスと前記放熱体とが、前記熱伝導部材を前記特定方向で間に挟んで、相互に押し当てられており、前記熱伝導部材が可撓性を有する熱伝導シートを含み、前記特定方向が前記熱伝導シートの厚さ方向であり、前記放熱体が、前記ワイヤハーネスに沿って延出して冷媒が挿通される冷却管によって構成され、前記熱伝導シートの長さ方向中間部分が、前記冷却管の外周面に巻きつけられて密着する外周密着部を構成し、前記熱伝導シートの長さ方向両端部が相互に重ね合されて前記冷却管の側方に突出する側方突出部を構成し、前記ワイヤハーネスが第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスを含んで構成されており、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスがそれぞれの第1当接部位で前記側方突出部を前記厚さ方向で間に挟んで相互に押し当てられており、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスは、前記第1当接部位とは異なるそれぞれの第2当接部位で、前記外周密着部を前記厚さ方向で間に挟んで前記冷却管に当接している、ワイヤハーネスの放熱構造である。
また、本開示の別のワイヤハーネスの放熱構造は、ワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスが熱伝導可能に接触する放熱体と、特定方向で熱伝導性が向上された熱伝導部材を含み、前記ワイヤハーネスと前記放熱体とが、前記熱伝導部材を前記特定方向で間に挟んで、相互に押し当てられており、前記熱伝導部材が可撓性を有する熱伝導シートを含み、前記特定方向が前記熱伝導シートの厚さ方向であり、前記ワイヤハーネスが第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスを含んで構成されており、前記放熱体が、前記ワイヤハーネスに沿って延出して冷媒が挿通される冷却管と矩形断面形状で延びて前記ワイヤハーネスが挿通状態で収容される筒状部材によって構成され、前記筒状部材の底壁の幅方向中央部分に前記冷却管が配置され、前記冷却管から前記幅方向両側に離隔した部位に前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスが配置されており、前記熱伝導シートの長さ方向中間部分が、前記冷却管の上方側から外周面に巻きつけられて密着する外周密着部を構成し、前記熱伝導シートの長さ方向両端部が前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスの下方側から外周面にそれぞれ巻きつけられて密着する第1側密着部と第2側密着部を構成し、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスがそれぞれの第1当接部位で前記外周密着部を前記厚さ方向で間に挟んで前記冷却管に当接し、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスは、前記第1当接部位とは異なるそれぞれの第2当接部位で、前記第1側密着部と前記第2側密着部を前記厚さ方向で間に挟んで前記筒状部材に当接している、ワイヤハーネスの放熱構造である。
さらに、本開示のさらに別のワイヤハーネスの放熱構造は、ワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスが熱伝導可能に接触する放熱体と、特定方向で熱伝導性が向上された熱伝導部材を含み、前記ワイヤハーネスと前記放熱体とが、前記熱伝導部材を前記特定方向で間に挟んで、相互に押し当てられており、前記熱伝導部材が可撓性を有する熱伝導シートを含み、前記特定方向が前記熱伝導シートの厚さ方向であり、前記ワイヤハーネスが第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスを含んで構成されており、前記放熱体が、前記ワイヤハーネスに沿って延出して冷媒が挿通される冷却管と矩形断面形状で延びて前記ワイヤハーネスが挿通状態で収容される筒状部材によって構成され、前記冷却管が第1冷却管と第2冷却管を含んで構成されており、前記筒状部材の底壁の幅方向で相互に離隔した2箇所に前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスが配置されており、前記熱伝導シートが、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスの周囲を囲んで環状に巻きつけられており、前記環状の前記熱伝導シートには、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスの離隔隙間に上下側から窪んだ一対の窪み部が設けられており、該窪み部に前記第1冷却管と前記第2冷却管がそれぞれ配設されており、前記第1冷却管と前記第2冷却管は、前記筒状部材の上壁と前記底壁にそれぞれ当接する一方、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスがそれぞれの上側第1当接部位および下側第1当接部位で前記熱伝導シートを前記厚さ方向で間に挟んで前記冷却管に当接し、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスは、それぞれの周方向で異なる部位に設けられた第2~第4当接部位において、前記熱伝導シートを前記厚さ方向で間に挟んで前記筒状部材の前記底壁と、側壁と前記上壁にそれぞれ当接している、ワイヤハーネスの放熱構造である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡単な構造で汎用性の向上を図りつつ優れた放熱性を確保できるワイヤハーネスの放熱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1にかかるワイヤハーネスの放熱構造を電気自動車に搭載した状態を示す模式図である。
図2図2は、図1に示すワイヤハーネスの放熱構造の分解斜視図である。
図3図3は、図2に示すワイヤハーネスの放熱構造の組付け状態を示す平面図である。
図4図4は、図3におけるIV-IV断面拡大図である。
図5図5は、実施形態2にかかるワイヤハーネスの放熱構造の分解斜視図である。
図6図6は、実施形態2にかかるワイヤハーネスの放熱構造の断面図であって、図4に相当する図である。
図7図7は、実施形態3にかかるワイヤハーネスの放熱構造の分解斜視図である。
図8図8は、実施形態3にかかるワイヤハーネスの放熱構造の断面図であって、図4に相当する図である。
図9図9は、実施形態3の変形例にかかるワイヤハーネスの放熱構造の断面図であって、図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のワイヤハーネスの放熱構造は、
(1)ワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスが熱伝導可能に接触する放熱体と、特定方向で熱伝導性が向上された熱伝導部材を含み、前記ワイヤハーネスと前記放熱体とが、前記熱伝導部材を前記特定方向で間に挟んで、相互に押し当てられており、前記熱伝導部材が可撓性を有する熱伝導シートを含み、前記特定方向が前記熱伝導シートの厚さ方向であり、前記放熱体が、前記ワイヤハーネスに沿って延出して冷媒が挿通される冷却管によって構成され、前記熱伝導シートの長さ方向中間部分が、前記冷却管の外周面に巻きつけられて密着する外周密着部を構成し、前記熱伝導シートの長さ方向両端部が相互に重ね合されて前記冷却管の側方に突出する側方突出部を構成し、前記ワイヤハーネスが第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスを含んで構成されており、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスがそれぞれの第1当接部位で前記側方突出部を前記厚さ方向で間に挟んで相互に押し当てられており、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスは、前記第1当接部位とは異なるそれぞれの第2当接部位で、前記外周密着部を前記厚さ方向で間に挟んで前記冷却管に当接しているワイヤハーネスの放熱構造である。
【0010】
態様のワイヤハーネスの放熱構造によれば、ワイヤハーネスと放熱体の間に熱伝導部材が介装されており、熱伝導率が向上された熱伝導部材の特定方向で、ワイヤハーネスと放熱体が相互に押し当てられている。そのため、熱伝導部材を介したワイヤハーネスから放熱体への熱伝導が有利に促進される。
しかも、ワイヤハーネスと放熱体の間に、熱伝導部材を特定方向に挟むように介在させればよいことから、既存のワイヤハーネスと放熱体に対して形状変更等を必要とすることなく、簡便に本開示の放熱構造を適用することができる。それゆえ、汎用性の向上を図りつつ優れた放熱性を確保できるワイヤハーネスの放熱構造を、簡単な構造で提供することが可能となる。特に、熱伝導部材を特定方向で挟んだ状態でワイヤハーネスと放熱体が相互に押し当てられていることから、効率的な熱伝導を安定して維持することができる。
また、冷却管の外周面に熱伝導シートを巻きつけることで、外周密着部と側方突出部を容易に構成でき、2本のワイヤハーネスと放熱体である冷却管とが、厚さ方向で熱伝導シートを間に挟んで相互に押し当てる構造を有利に構築できる。しかも、第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスの当接面間には、熱伝導シートが二重に重ね合された側方突出部が介在している。これにより、各ワイヤハーネスにおいて一重の熱伝導シートを厚さ方向で間に挟んで当接する冷却管との熱交換が優先的に促進されて、冷却管による各ワイヤハーネスの放熱(吸熱)が確実に促進される。
【0011】
なお、熱伝導部材としては、熱伝導率が特定方向で向上されたものであれば、何れも採用可能である。例えば、エラストマー等からなる基材に熱伝導性フィラーが含有された熱伝導体であって、熱伝導性フィラーを配向することにより、特定方向で熱伝導率が向上されたもの等が採用可能である。
【0012】
本開示の別のワイヤハーネスの放熱構造は、
(2)ワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスが熱伝導可能に接触する放熱体と、特定方向で熱伝導性が向上された熱伝導部材を含み、前記ワイヤハーネスと前記放熱体とが、前記熱伝導部材を前記特定方向で間に挟んで、相互に押し当てられており、前記熱伝導部材が可撓性を有する熱伝導シートを含み、前記特定方向が前記熱伝導シートの厚さ方向であり、前記ワイヤハーネスが第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスを含んで構成されており、前記放熱体が、前記ワイヤハーネスに沿って延出して冷媒が挿通される冷却管と矩形断面形状で延びて前記ワイヤハーネスが挿通状態で収容される筒状部材によって構成され、前記筒状部材の底壁の幅方向中央部分に前記冷却管が配置され、前記冷却管から前記幅方向両側に離隔した部位に前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスが配置されており、前記熱伝導シートの長さ方向中間部分が、前記冷却管の上方側から外周面に巻きつけられて密着する外周密着部を構成し、前記熱伝導シートの長さ方向両端部が前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスの下方側から外周面にそれぞれ巻きつけられて密着する第1側密着部と第2側密着部を構成し、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスがそれぞれの第1当接部位で前記外周密着部を前記厚さ方向で間に挟んで前記冷却管に当接し、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスは、前記第1当接部位とは異なるそれぞれの第2当接部位で、前記第1側密着部と前記第2側密着部を前記厚さ方向で間に挟んで前記筒状部材に当接している、ワイヤハーネスの放熱構造である。
本態様のワイヤハーネスの放熱構造によれば、ワイヤハーネスと放熱体の間に熱伝導部材が介装されており、熱伝導率が向上された熱伝導部材の特定方向で、ワイヤハーネスと放熱体が相互に押し当てられている。そのため、熱伝導部材を介したワイヤハーネスから放熱体への熱伝導が有利に促進される。
しかも、ワイヤハーネスと放熱体の間に、熱伝導部材を特定方向に挟むように介在させればよいことから、既存のワイヤハーネスと放熱体に対して形状変更等を必要とすることなく、簡便に本開示の放熱構造を適用することができる。それゆえ、汎用性の向上を図りつつ優れた放熱性を確保できるワイヤハーネスの放熱構造を、簡単な構造で提供することが可能となる。特に、熱伝導部材を特定方向で挟んだ状態でワイヤハーネスと放熱体が相互に押し当てられていることから、効率的な熱伝導を安定して維持することができる。
また、筒状部材の底壁上に載置した冷却管の上方から熱伝導シートの長さ方向中間部分を載置するように配設し、その熱伝導シートの上方側から長さ方向両端部分に対して第1および第2ワイヤハーネスを載置することで、各密着部を容易に構成できる。また、1枚の熱伝導シートを用いて、ワイヤハーネスと冷却管およびワイヤハーネスと筒状部材を、それぞれ熱伝導シートを厚さ方向で挟んで相互に押し当てることができる。これにより、ワイヤハーネスの複数の放熱体への伝熱経路を少ない部品点数で効率的に構築できる。なお、第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスは、少なくとも第2当接部位で筒状部材に当接していればよいが、複数の当接部位で筒状部材に当接していてもよい。例えば、第1当接部位とは異なるそれぞれの第2当接部位で、第1側密着部と第2側密着部を厚さ方向で間に挟んで筒状部材の底壁に当接し、第1および第2当接部位とは異なるそれぞれの第3当接部位で、第1側密着部と第2側密着部を厚さ方向で間に挟んで筒状部材の側壁に当接していることがさらに好ましい。これにより、筒状部材内で第1ワイヤハーネスと冷却管を安定して保持しつつ、第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスの放熱を促進することができる。
本開示のさらに別のワイヤハーネスの放熱構造は、
(3)ワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスが熱伝導可能に接触する放熱体と、特定方向で熱伝導性が向上された熱伝導部材を含み、前記ワイヤハーネスと前記放熱体とが、前記熱伝導部材を前記特定方向で間に挟んで、相互に押し当てられており、前記熱伝導部材が可撓性を有する熱伝導シートを含み、前記特定方向が前記熱伝導シートの厚さ方向であり、前記ワイヤハーネスが第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスを含んで構成されており、前記放熱体が、前記ワイヤハーネスに沿って延出して冷媒が挿通される冷却管と矩形断面形状で延びて前記ワイヤハーネスが挿通状態で収容される筒状部材によって構成され、前記冷却管が第1冷却管と第2冷却管を含んで構成されており、前記筒状部材の底壁の幅方向で相互に離隔した2箇所に前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスが配置されており、前記熱伝導シートが、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスの周囲を囲んで環状に巻きつけられており、前記環状の前記熱伝導シートには、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスの離隔隙間に上下側から窪んだ一対の窪み部が設けられており、該窪み部に前記第1冷却管と前記第2冷却管がそれぞれ配設されており、前記第1冷却管と前記第2冷却管は、前記筒状部材の上壁と前記底壁にそれぞれ当接する一方、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスがそれぞれの上側第1当接部位および下側第1当接部位で前記熱伝導シートを前記厚さ方向で間に挟んで前記冷却管に当接し、前記第1ワイヤハーネスと前記第2ワイヤハーネスは、それぞれの周方向で異なる部位に設けられた第2~第4当接部位において、前記熱伝導シートを前記厚さ方向で間に挟んで前記筒状部材の前記底壁と、側壁と前記上壁にそれぞれ当接している、ワイヤハーネスの放熱構造である。
本態様のワイヤハーネスの放熱構造によれば、ワイヤハーネスと放熱体の間に熱伝導部材が介装されており、熱伝導率が向上された熱伝導部材の特定方向で、ワイヤハーネスと放熱体が相互に押し当てられている。そのため、熱伝導部材を介したワイヤハーネスから放熱体への熱伝導が有利に促進される。
しかも、ワイヤハーネスと放熱体の間に、熱伝導部材を特定方向に挟むように介在させればよいことから、既存のワイヤハーネスと放熱体に対して形状変更等を必要とすることなく、簡便に本開示の放熱構造を適用することができる。それゆえ、汎用性の向上を図りつつ優れた放熱性を確保できるワイヤハーネスの放熱構造を、簡単な構造で提供することが可能となる。特に、熱伝導部材を特定方向で挟んだ状態でワイヤハーネスと放熱体が相互に押し当てられていることから、効率的な熱伝導を安定して維持することができる。
また、筒状部材の内部において、ワイヤハーネスと冷却管を熱伝導シートを介して安定して所定部位に保持することができる。また、熱伝導シートを相互に離隔配置された第1ワイヤハーネスおよび第2ワイヤハーネスの周囲に環状に巻きつけるだけで、2つの冷却管を収容する一対の窪み部を構成しつつ、熱伝導シートを厚さ方向で間に挟んだ状態で、ワイヤハーネスと筒状部材およびワイヤハーネスと冷却管を複数箇所で相互に押し当てることができる。これにより、ワイヤハーネスの2つの放熱体への伝熱経路を、少ない部品点数で効率的に構築できる。
【0013】
)前記熱伝導部材が、発泡体からなる基材を有していることが好ましい。基材が発泡体である熱伝導部材を採用することにより、熱伝導部材がワイヤハーネスや放熱体の外面形状に追従して変形しやすく、熱伝導部材のワイヤハーネスや放熱体への接触面積の増大を有利に図ることができる。
【0018】
)複数の前記熱伝導部材が、前記ワイヤハーネスの長さ方向で相互に離隔した複数箇所にそれぞれ配設されていることが好ましい。
特定方向で熱伝導率が向上された熱伝導部材を用いていることから、ワイヤハーネスの全長に亘って熱伝導部材を設けることなく、部分的に設けても、所望のワイヤハーネスから放熱体への熱伝導を有利に実現できる。これにより、コストの削減や軽量化等を図ることができる。
【0019】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示のワイヤハーネスの放熱構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1について、図1から図4を参照しつつ説明する。図1は、図示しない電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に、本開示の実施形態1のワイヤハーネスの放熱構造10を適用した場合の全体構成を示している。図示しない車両の前方にはインバータ12が搭載されたモータ14が配置され、車両の後方にはバッテリ16が配置されている。これらの間は図2に示すように複数本(図示のものは2本)の高圧のワイヤハーネスである第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bによって接続されている。これらの第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bは、放熱体を構成する筒状部材20内に挿通状態で収容されている。ここで、インバータ12は、自動車のモータ14を駆動するために、バッテリ16から供給された電力を交流に変換するために用いられている。また、ワイヤハーネスの放熱構造10を構成する第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bは、任意の向きで配置することができる。以下では、図2に示すZ方向を上方、Y方向を幅方向、X方向を長さ方向として説明する。なお、X方向の右方はバッテリ16側であり、逆方向はインバータ12側である。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0021】
<第1,第2ワイヤハーネス18a,18b>
本開示の実施形態1のワイヤハーネスの放熱構造10は、図2に示すように、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bを含んでいる。第1ワイヤハーネス18aがバッテリ16およびインバータ12のプラス側端子間を接続しており、第2ワイヤハーネス18bがバッテリ16およびインバータ12のマイナス側端子間を接続している。第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bはいずれも、金属製(例えば、アルミニウム合金や銅合金など)の導体22の外周を合成樹脂製の絶縁被覆24で包囲した形態であり、導体22は、複数本の細線(図示せず)を螺旋状に撚り合わせた撚り線からなる。第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの断面形状は、導体22と絶縁被覆24の双方が真円形とされている。
【0022】
<筒状部材20>
筒状部材20は、図2に示すように、樋形状で長さ方向に延びる筒状部本体26と、筒状部本体26の上方開口部を覆蓋する矩形平板状の蓋体28を含んで構成されている。筒状部本体26は、長さ方向に延びる矩形平板状の底壁30と、底壁30の幅方向の両端部から上方に向かって突出する矩形平板状の側壁32を含んでいる。底壁30の下面には、長さ方向に離隔する3箇所において、図示しない車両等の所望の位置に固定するための逆U字状の固定用脚部33が溶接等の任意の手段を用いて取り付けられている。筒状部材20を構成する筒状部本体26,蓋体28および固定用脚部33は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。かかる金属板材を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の熱伝導性が高い金属を適宜に選択することができる。
【0023】
<冷却管34>
本開示の実施形態1のワイヤハーネスの放熱構造10は、図2に示すように、放熱体を構成する1本の冷却管34を含んでいる。1本の冷却管34は、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bに沿って平行に延び出している。冷却管34は円筒形状を有しており、図4に示すように、冷却管34の内部は図示しない冷媒が挿通される冷却通路36となっている。第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bは隙間を隔てて並列配置され、冷却管34がそれらの間に配置された状態で、図2の左右方向に延出している。なお、冷却管34は、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの外径よりやや小さい外径を有する長尺のパイプによって構成されており、耐熱性、耐圧性及び柔軟性を有する材質にて形成されている。
【0024】
図1に示すように、冷却管34は、車両に搭載されたエンジン38を冷却するための冷却水の循環回路C中に組込まれている。この循環回路C自体はエンジン冷却用の既存の回路を利用したものであり、同回路は、既存回路から冷却管34を接続する回路を分岐して構成されている。また、循環回路C中には循環ポンプ40及びラジエータ(図示しない)が配されていて、冷却管34を流れる冷却水を循環させている。
【0025】
<熱伝導シート42>
図2に示すように、熱伝導部材を構成する熱伝導シート42が、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの長さ方向である左右方向で相互に離隔する3箇所において、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bと1本の冷却管34の外周面に巻き付けられて密着されている。熱伝導シート42は、絶縁性を有しており、扁平なシート状をなしている。熱伝導シート42は、熱伝導率が厚さ方向で向上されたものであれば、何れも採用可能である。例えば、特開2015-105282号公報に記載されている、エラストマー等からなる基材に熱伝導性フィラーが含有された熱伝導体であって、熱伝導性フィラーを配向することにより、厚さ方向で熱伝導率が向上されたものも採用可能である。また、特開2009-51148号公報に記載されている、ポリウレタンフォーム(発泡体)からなる基材と、基材中に配合されている磁性フィラーと、を有し、磁性フィラーは、球以外の形状をなし、互いに線接触および面接触の少なくとも一方により連接して配向することにより、厚さ方向で熱伝導率が向上されたものも採用可能である。基材が発泡体であることにより、熱伝導部材が第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bや筒状部材20,冷却管34の外面形状に追従して変形しやすくなる。それゆえ、熱伝導部材の第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bや筒状部材20,冷却管34への接触面積の増大を有利に図ることができる。また、熱伝導シート42は可撓性を有しており、上下方向に加えられる力に応じて、厚さ寸法が変化できるようになっている。なお、本実施形態では、熱伝導シート42は、何れもシート状をなしているが、熱伝導部材の形状はこれに限定されず任意の形状が採用可能である。
【0026】
<ワイヤハーネスの放熱構造10の組み付け工程>
続いて、ワイヤハーネスの放熱構造10の組み付け工程の一例について説明する。ワイヤハーネスの放熱構造10の組み付け工程は、以下の記載に限定されない。
【0027】
まず、冷却管34と、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bと、3枚の熱伝導シート42を準備する。3枚の熱伝導シート42は、トムソン型抜き加工等の公知の手法により所定の形状に切り出される。
【0028】
次に、筒状部材20を準備する。筒状部材20は、筒状部本体26と蓋体28と固定用脚部33を含んで構成されており、金属板材を所定の形状にプレス加工して形成されている。筒状部本体26の所定位置には、固定用脚部33が溶接等の任意に手段により取付けられている。蓋体28は、筒状部本体26の上方開口部を覆蓋してロック状態に保持される。
【0029】
そして、筒状部本体26の上方から、1本の冷却管34を挿し入れて、筒状部本体26の底壁30の幅方向中央部分に配置する(図4参照)。次に、冷却管34の長さ方向で相互に離隔した3箇所において、熱伝導シート42,42,42を上方から載置する(図2参照)。この時、各熱伝導シート42の長さ方向中間部分が冷却管34の上方側から外周面に巻き付けられて密着され、後述する外周密着部44を構成する(図4参照)。続いて、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bを各熱伝導シート42の長さ方向両端部分に上方から載置するように筒状部本体26の内部に挿し入れる。これにより、各熱伝導シート42の長さ方向両端部分が、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの下方側から外周面にそれぞれ巻き付けられて密着され、後述する第1側密着部46と第2側密着部48を構成する。最後に、筒状部本体26の上方開口部を蓋体28を用いてロック状態に覆蓋して、ワイヤハーネスの放熱構造10が完成する。
【0030】
本実施形態では、図4に示すように、放熱体が、冷却管34と矩形断面形状で延びる筒状部材20によって構成されている。筒状部材20の筒状部本体26の底壁30の幅方向(図4のY方向)の中央部分に冷却管34が配置され、冷却管34から幅方向両側に離隔した部位に第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bが配置されている。熱伝導シート42は、長さ方向(図4のY方向)の中間部分が、冷却管34の上方側から冷却管34の外周面に巻きつけられて密着する外周密着部44を構成している。熱伝導シート42の長さ方向両端部は、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの下方側から各第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bの外周面にそれぞれ巻きつけられて密着する第1側密着部46と第2側密着部48を構成している。
【0031】
また、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bがそれぞれの第1当接部位50で外周密着部44を厚さ方向で間に挟んで冷却管34に当接している。また、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bは、第1当接部位50とは異なるそれぞれの第2当接部位52で、第1側密着部46と第2側密着部48を厚さ方向で間に挟んで筒状部材20の筒状部本体26の底壁30に当接している。さらに、第1および第2当接部位50,52とは異なるそれぞれの第3当接部位56で、第1側密着部46と第2側密着部48を厚さ方向で間に挟んで筒状部材20の筒状部本体26の側壁32に当接している。図4に基づいて説明すると、第1ワイヤハーネス18aにおいて、第2当接部位52は第1当接部位50から周方向に反時計回りに45度ずれた位置にあり、第3当接部位56は第2当接部位52より周方向に反時計回りにさらに90度ずれた位置にある。同様に、第2ワイヤハーネス18bにおいては、第2当接部位52は第1当接部位50から周方向に時計回りに45度ずれた位置にあり、第3当接部位56は第2当接部位52より周方向に時計回りにさらに90度ずれた位置にある。
【0032】
以上のように、ワイヤハーネスの放熱構造10は、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bと、放熱体を構成する冷却管34と筒状部材20と、熱伝導部材を構成する熱伝導シート42と、を含んでいる。第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bは、例えば放熱体を構成する冷却管34には、熱伝導シート42を介して第1当接部位50で熱伝導可能に接触している。しかも、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bと放熱体を構成する冷却管34は、熱伝導シート42を熱伝導性が向上された特定方向である厚さ方向で間に挟んで、相互に押し当てられている。
【0033】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態によれば、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと冷却管34および第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと筒状部材20をそれぞれ、各熱伝導シート42を厚さ方向で間に挟んで相互に押し当てるという簡単な構造により、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの冷却管34,筒状部材20への伝熱経路を少ない部品点数で効率的に構築できる。
【0034】
また、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと放熱体を構成する冷却管34,筒状部材20は、熱伝導シート42を熱伝導性が向上された厚さ方向で挟んで、相互に押し当てられている。それゆえ、熱伝導シート42を介した第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bから冷却管34,筒状部材20への熱伝導が有利に促進される。しかも、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと冷却管34,筒状部材20の間に、熱伝導シート42を特定方向である厚さ方向に挟むように介在させればよいことから、既存の第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと冷却管34,筒状部材20の構成を変更することなく、簡便に本開示のワイヤハーネスの放熱構造10を適用でき、効率的な熱伝導を安定して維持することができる。それゆえ、汎用性の向上を図りつつ優れた放熱性を確保できるワイヤハーネスの放熱構造10を、簡単な構造で提供することが可能となる。
【0035】
熱伝導部材として可撓性を有する熱伝導シート42を採用することにより、様々な形状の第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bや冷却管34,筒状部材20に対して、その表面に沿うように熱伝導シート42を配設することが可能となる。これにより、熱伝導性が向上された熱伝導シート42の厚さ方向で、熱伝導シート42が第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと冷却管34,筒状部材20の間で挟まれた構成を確実に実現することができる。それゆえ、一層汎用性に優れたワイヤハーネスの放熱構造10を、優れた放熱性を確保しつつ簡単に提供することができる。また、熱伝導部材としてシート状の熱伝導シート42を採用することにより、例えば熱伝導率が向上された方向以外の方向で第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと冷却管34,筒状部材20の間に無駄に熱伝導部材が配設されて、熱が籠るおそれも有利に回避できる。
【0036】
本実施形態1のように、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと冷却管34の間に熱伝導シート42を熱伝導率が向上された厚さ方向で介在させて第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと冷却管34を相互に押し当てることで、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bで生じた熱を冷却管34に速やかに伝熱して効率よく冷却管34への放熱(吸熱)を実現できる。また、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと筒状部材20の間に熱伝導シート42を熱伝導率が向上された厚さ方向で介在させて第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bを筒状部材20に相互に押し当てる。これにより、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bで生じた熱を筒状部材20に速やかに伝熱して効率よく筒状部材20を介した大気への放熱を実現できる。
【0037】
加えて、熱伝導シート42は、熱伝導率が向上された厚さ方向で第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと冷却管34,筒状部材20の間で挟まれることで、効率よく第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bの冷却管34,筒状部材20への伝熱による放熱が達成されている。それゆえ、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bの長さ方向(図2のX方向)で相互に離隔する3箇所に熱伝導シート42を配設する程度でも、所望の第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bの放熱を実現できる。これにより、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bの全長にわたって熱伝導部材を設ける場合に比して、コストの削減や軽量化等を図ることができる。
【0038】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施形態1では、1本の冷却管34を含んでいる例を示したが、これに限定されない。図5~6に示す本開示の実施形態2のように、第1冷却管34a,第2冷却管34bを含んでいてもよい。具体的には、筒状部材20の内部において筒状部本体26の底壁30の幅方向中央部分の上側および下側にそれぞれ第1冷却管34a,第2冷却管34bが配置され、第1冷却管34a,第2冷却管34bから幅方向両側に離隔した部位に第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bが配置されている。熱伝導シート58は、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの周囲を囲んで環状に巻きつけられており、環状の熱伝導シート58には、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの離隔隙間に上下側から窪んだ一対の窪み部62,62が設けられている。一対の窪み部62,62にはそれぞれ第1冷却管34aと第2冷却管34bがそれぞれ配設されている。第1冷却管34aと第2冷却管34bは、筒状部材20の上壁に当たる蓋体28と底壁30にそれぞれ当接し、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bがそれぞれの上側第1当接部位64,下側第1当接部位66で熱伝導シート58を厚さ方向で間に挟んで第1冷却管34a,第2冷却管34bに当接している。第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bは、それぞれの周方向で異なる部位に設けられた第2~第4当接部位52,56,57において、熱伝導シート58を厚さ方向で間に挟んで筒状部材20の底壁30と側壁32と蓋体28にそれぞれ当接している。
【0040】
これにより、熱伝導シート58を第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの下側の外周面と第2冷却管34bの上側の外周面および第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの上側の外周面と第1冷却管34aの下側の外周面に密着させることができる。このように構成された、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bと第1冷却管34a,第2冷却管34bと熱伝導シート58が、筒状部本体26に収容される。そして、筒状部本体26の上方開口部を蓋体28を用いてロック状態に覆蓋することにより、実施形態2のワイヤハーネスの放熱構造60が完成される。
【0041】
このように、実施形態2においては、筒状部材20の内部において、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bと第1冷却管34a,第2冷却管34bを熱伝導シート58を介して安定して所定部位に保持することができるようになっている。また、熱伝導シート58を、相互に離隔配置された第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの周囲に環状に巻きつけるだけで、第1冷却管34a,第2冷却管34bを収容する一対の窪み部62,62を構成できる。これにより、熱伝導シート58を厚さ方向で間に挟んだ状態で、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bと筒状部材20および第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bと第1冷却管34a,第2冷却管34bを複数箇所で相互に押し当てることができる。それゆえ、効率的な第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bの筒状部材20,第1冷却管34a,第2冷却管34bへの伝熱経路を少ない部品点数で効率的に構築できる。
【0042】
(2)上記実施形態1では、放熱体として筒状部材20を含んでいる例を示したが、これに限定されない。図7~8に示す本開示の実施形態3のように、筒状部材20を用いることなく、結束バンド68を用いて第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bと冷却管34と熱伝導シート70を固定するシンプルな構造としてもよい。この場合、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの長さ方向に離隔する3箇所において、まず熱伝導シート70の中央部を冷却管34に巻き付け、冷却管34の側方(冷却管34の径方向外方)に突出する熱伝導シート70の両端部を幅方向から第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bで挟み込む。そして、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bと冷却管34と熱伝導シート70を結束バンド68を用いて結束固定することにより、実施形態3のワイヤハーネスの放熱構造72が完成される。なお、理解を容易にするため、結束バンド68は仮想線で記載している。
【0043】
熱伝導シート70の長さ方向中間部分は、冷却管34の外周面に巻きつけられて密着する外周密着部44を構成し、熱伝導シート70の長さ方向両端部が相互に重ね合されて冷却管34の側方に突出する側方突出部74を構成している。第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bが、それぞれの第1当接部位76で側方突出部74を厚さ方向で間に挟んで相互に押し当てられており、第1当接部位76とは異なる第2当接部位78で、外周密着部44を厚さ方向で間に挟んで冷却管34に当接している。
このように、実施形態3においては、冷却管34の外周面に熱伝導シート70を巻きつけることで、外周密着部44と側方突出部74を容易に構成できる。これにより、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと冷却管34とが、厚さ方向で熱伝導シート70を間に挟んで相互に押し当てる構造を有利に構築できる。しかも、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの当接面間には、熱伝導シート70が二重に重ね合された側方突出部74が介在している。それゆえ、第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bにおいては一重の熱伝導シート70を厚さ方向で間に挟んで当接する冷却管34との熱交換が優先的に促進されるので、冷却管34による第1ワイヤハーネス18aと第2ワイヤハーネス18bの放熱(吸熱)を確実に促進できる。
【0044】
(3)上記実施形態3のワイヤハーネスの放熱構造72は、図9に示す本開示の実施形態3の変形例のワイヤハーネスの放熱構造80のように、筒状部材20に収容してもよい。これにより、ワイヤハーネスの放熱構造80を筒状部材20内に安定して保持できる。
【0045】
(4)例示の実施形態では、熱伝導部材としてシート状の熱伝導シート42,5870を採用していたが、これに限定されない。熱伝導部材が、熱伝導率が向上された特定方向で、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bと冷却管34,筒状部材20の間に介在されていれば、熱伝導部材として任意の形状が採用可能である。
(5)例示の実施形態では、第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bの長さ方向で相互に離隔した3箇所に熱伝導部材を設ける例を示したが、2箇所でもよく、4箇所やそれ以上でもよい。さらに第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bの長さ方向の全長にわたって熱伝導部材を設けてさらなる熱伝導率の向上を図ってもよい。
(6)例示の実施形態では、本開示のワイヤハーネスの放熱構造10,60,72,80を、バッテリ16とインバータ12をつなぐ第1ワイヤハーネス18a,第2ワイヤハーネス18bに適用した例を示したが、これに限定されず、いずれの部位に配設されたワイヤハーネスに対しても本開示のワイヤハーネスの放熱構造10,60,72,80は同様に適用可能である。それゆえ、ワイヤハーネスの本数や放熱体の構造等も例示のものに限定されない。
【符号の説明】
【0046】
10 ワイヤハーネスの放熱構造(実施形態1)
12 インバータ
14 モータ
16 バッテリ
18a 第1ワイヤハーネス(ワイヤハーネス)
18b 第2ワイヤハーネス(ワイヤハーネス)
20 筒状部材(放熱体)
22 導体
24 絶縁被覆
26 筒状部本体
28 蓋体(上壁)
30 底壁
32 側壁
33 固定用脚部
34 冷却管(放熱体)
34a 第1冷却管(放熱体)
34b 第2冷却管(放熱体)
36 冷却通路
38 エンジン
40 循環ポンプ
42 熱伝導シート(熱伝導部材)
44 外周密着部
46 第1側密着部
48 第2側密着部
50 第1当接部位
52 第2当接部位
56 第3当接部位
57 第4当接部位
58 熱伝導シート(熱伝導部材)
60 ワイヤハーネスの放熱構造(実施形態2)
62 窪み部
64 上側第1当接部位
66 下側第1当接部位
68 結束バンド
70 熱伝導シート(熱伝導部材)
72 ワイヤハーネスの放熱構造(実施形態3)
74 側方突出部
76 第1当接部位
78 第2当接部位
80 ワイヤハーネスの放熱構造(実施形態3の変形例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9