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特許7213164金属積層造形システム、金属積層造形方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】金属積層造形システム、金属積層造形方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/82 20210101AFI20230119BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230119BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230119BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230119BHJP
   B22F 10/80 20210101ALI20230119BHJP
   B23K 9/04 20060101ALN20230119BHJP
   B23K 9/32 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
B22F12/82
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B22F10/80
B23K9/04 Z
B23K9/32 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019147009
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021025120
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸志
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】飛田 正俊
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達也
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047681(JP,A)
【文献】特開2019-107878(JP,A)
【文献】国際公開第2018/069446(WO,A1)
【文献】中国実用新案第205631397(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B22F 3/105、3/16
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材を積載して移動する架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上に、金属を含む造形材料を用いて複数の金属層を積層してなる積層造形物を形成する第1の部屋と、
前記架台を収容可能であって、当該架台に積載された前記母材上の前記積層造形物に加工を施す第2の部屋と、
前記架台を収容可能であって、当該架台に積載された前記母材上の前記積層造形物を検査する第3の部屋と、
前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋のそれぞれの扉を開閉することで、互いの部屋同士を連通させ、または閉鎖させる開閉手段と、
前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋のそれぞれの大気における、金属粉の濃度を検出する検出手段と、
いずれかの部屋の大気における前記金属粉の濃度が予め定められた基準濃度以上となった場合に、前記開閉手段による互いの部屋同士連通を禁止する禁止手段と
を含む金属積層造形システム。
【請求項2】
前記禁止手段は、いずれかの部屋における前記金属粉の濃度が予め定められた基準濃度以上となった場合に、前記第1の部屋と前記第2の部屋との間での前記架台の移動、当該第2の部屋と前記第3の部屋との間での当該架台の移動、および、当該第3の部屋と当該第1の部屋との間での当該架台の移動を禁止すること
を特徴とする請求項1記載の金属積層造形システム。
【請求項3】
前記基準濃度が、部屋ごとに異なることを特徴とする請求項1または2記載の金属積層造形システム。
【請求項4】
前記母材を積載する前記架台が複数存在することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の金属積層造形システム。
【請求項5】
前記母材が、複数の架台に跨がって積載されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の金属積層造形システム。
【請求項6】
母材を積載して移動する架台を収容可能な第1の部屋に設けられ、当該架台に積載された当該母材上に、金属を含む造形材料を用いて複数の金属層を積層してなる積層造形物を形成する形成手段と、
前記架台を収容可能な第2の部屋に設けられ、当該架台に積載された前記母材上の前記積層造形物に加工を施す加工手段と、
前記架台を収容可能な第3の部屋に設けられ、当該架台に積載された前記母材上の前記積層造形物を検査する検査手段と、
前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋のそれぞれの扉を開閉することで、互いの部屋同士を連通させ、または閉鎖させる開閉手段と、
前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋のそれぞれの大気における、金属粉の濃度を検出する検出手段と、
いずれかの部屋の大気における前記金属粉の濃度が予め定められた基準濃度以上となった場合に、前記開閉手段による互いの部屋同士連通を禁止する禁止手段と
を含む金属積層造形システム。
【請求項7】
母材を積載して移動する架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上に、金属を含む造形材料を用いて複数の金属層を積層してなる積層造形物を形成する第1の部屋の大気における金属粉の濃度と、当該架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上の当該積層造形物に加工を施す第2の部屋の大気における当該金属粉の濃度と、当該架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上の前記積層造形物を検査する第3の部屋の大気における当該金属粉の濃度とを取得するステップと、
いずれかの部屋の大気における前記金属粉の濃度が予め定められた基準濃度以上となった場合に、前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋のそれぞれの扉を閉鎖して互いの部屋同士連通を禁止するステップと
を有する金属積層造形方法。
【請求項8】
コンピュータに、
母材を積載して移動する架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上に、金属を含む造形材料を用い複数の金属層を積層してなる積層造形物を形成する第1の部屋の大気における金属粉の濃度と、当該架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上の当該積層造形物に加工を施す第2の部屋の大気における当該金属粉の濃度と、当該架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上の前記積層造形物を検査する第3の部屋の大気における当該金属粉の濃度とを取得する機能と、
いずれかの部屋の大気における前記金属粉の濃度が予め定められた基準濃度以上となった場合に、前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋のそれぞれの扉を閉鎖して互いの部屋同士連通を禁止する機能と
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属積層造形システム、金属積層造形方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dプリンタの生産手段としてのニーズが高まっており、特に金属材料での適用については航空機業界等で実用化に向けて研究開発が行われている。金属材料による3Dプリンタは、レーザやアーク等の熱源を用いて、金属粉体や金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層させて造形物を造形する。
【0003】
例えば特許文献1には、粉末材料を用いて成形物を形成するノズルを内蔵する付加加工室と、付加加工室の側方に設けられ、付加加工室で形成された成形物に除去加工を施す除去加工部を内蔵する除去加工室と、2つのパレットを保持する保持機構と、一方のパレットを付加加工室内に位置させるとともに、他方のパレットを除去加工室内に位置させるように、保持機構を旋回させるパレット交換装置と、保持機構の旋回に連動して、付加加工室と除去加工室との間に設けられた開口部を開閉する仕切り部材と、を有する三次元形状物製造装置が記載されている。
また、特許文献1には、付加加工時の付加加工室内に、粉末材料の種に応じて、付加加工室内に窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-75778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属を積層してなる造形物である、積層造形物にて製品を製造する場合、積層造形物の形成および積層造形物の加工に加えて、積層造形物の検査も一連のプロセスとして実行したい、という要請がある。
また、積層造形物の形成、積層造形物の加工および積層造形物の検査を一連のプロセスとして実行するにあたって、例えば積層物の製造等に伴って発生した危険物が、積層物の周囲に残存していると、この危険物に起因する災害が発生するおそれがあった。
【0006】
本発明は、積層造形物の形成、加工および検査を一連のプロセスとして実行するに際して、積層造形物の製造等に伴って発生した危険物に起因する災害の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、母材を積載して移動する架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上に、金属を含む造形材料を用いて複数の金属層を積層してなる積層造形物を形成する第1の部屋と、前記架台を収容可能であって、前記架台に積載された当該母材上の前記積層造形物に加工を施す第2の部屋と、前記架台を収容可能であって、前記架台に積載された当該母材上の前記積層造形物を検査する第3の部屋と、前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋のそれぞれを開閉することで、互いの部屋同士を接続および切断する開閉手段と、前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋のそれぞれにおける、危険物の濃度を検出する検出手段と、いずれかの部屋における前記危険物の濃度が予め定められた基準濃度以上となった場合に、前記開閉手段による互いの部屋の接続を禁止する禁止手段とを含む、金属積層造形システムを提供する。
ここで、前記禁止手段は、いずれかの部屋における前記危険物の濃度が予め定められた基準濃度以上となった場合に、前記第1の部屋と前記第2の部屋との間での前記架台の移動、当該第2の部屋と前記第3の部屋との間での当該架台の移動、および、当該第3の部屋と当該第1の部屋との間での当該架台の移動を禁止すること、としてもよい。
また、前記危険物の濃度が、雰囲気中における金属粉の濃度であること、としてもよい。
また、前記基準濃度が、部屋ごとに異なること、としてもよい。
また、前記母材を積載する前記架台が複数存在すること、としてもよい。
また、前記母材が、複数の架台に跨がって積載されること、としてもよい。
【0008】
また、本発明は、母材を積載して移動する架台を収容可能な第1の部屋に設けられ、当該架台に積載された当該母材上に、金属を含む造形材料を用いて複数の金属層を積層してなる積層造形物を形成する形成手段と、前記架台を収容可能な第2の部屋に設けられ、当該架台に積載された前記母材上の前記積層造形物に加工を施す加工手段と、前記架台を収容可能な第3の部屋に設けられ、当該架台に積載された前記母材上の前記積層造形物を検査する検査手段と、前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋のそれぞれを開閉することで、互いの部屋同士を接続および切断する開閉手段と、前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋のそれぞれにおける、危険物の濃度を検出する検出手段と、いずれかの部屋における前記危険物の濃度が予め定められた基準濃度以上となった場合に、前記開閉手段による互いの部屋の接続を禁止する禁止手段とを含む、金属積層造形システムを提供する。
【0009】
また、本発明は、母材を積載して移動する架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上に、金属を含む造形材料を用いて複数の金属層を積層してなる積層造形物を形成する第1の部屋における危険物の濃度と、当該架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上の当該積層造形物に加工を施す第2の部屋における当該危険物の濃度と、当該架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上の前記積層造形物を検査する第3の部屋における当該危険物の濃度とを取得するステップと、いずれかの部屋における前記危険物の濃度が予め定められた基準濃度以上となった場合に、前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋を含む互いの部屋の接続を禁止するステップとを有する、金属積層造形方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、コンピュータに、母材を積載して移動する架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上に、金属を含む造形材料を用い複数の金属層を積層してなる積層造形物を形成する第1の部屋における危険物の濃度と、当該架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上の当該積層造形物に加工を施す第2の部屋における当該危険物の濃度と、当該架台を収容可能であって、当該架台に積載された当該母材上の前記積層造形物を検査する第3の部屋における当該危険物の濃度とを取得する機能と、いずれかの部屋における前記危険物の濃度が予め定められた基準濃度以上となった場合に、前記第1の部屋、前記第2の部屋および前記第3の部屋を含む互いの部屋の接続を禁止する機能とを実現させるプログラム、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層造形物の形成、加工および検査を一連のプロセスとして実行するに際して、積層造形物の製造等に伴って発生した危険物に起因する災害の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態における金属積層造形システムの概略構成例を示した図である。
図2】構造体製造装置の概略構成例を示した斜視図である。
図3】構造体製造装置の概略構成例を示した上面図である。
図4】構造体製造装置と架台との関係を説明するための図である。
図5】制御装置のハードウェア構成例を示した図である。
図6】制御装置の機能構成例を示した図である。
図7】構造体を説明するための図であって、(a)は半製品の構成例を示した斜視図であり、(b)は完成品の構成例を示した斜視図である。
図8】(a)、(b)は、架台と母材との関係を説明するための図である。
図9】完成品の基本的な製造プロセスを説明するためのフローチャートである。
図10】(a)~(f)は、図9に示す各工程における母材等の状態を説明するための図である。
図11】(a)~(c)は、積層工程の詳細を説明するための図である。
図12】構造体製造装置を用いて、2個の完成品を並行して製造する場合の製造プロセスを説明するためのフローチャートである。
図13】(a)~(m)は、2個の完成品を並行して製造する場合の、各工程での状態を説明するための図である。
図14】完成品の製造プロセスと並行して実行される監視プロセスを説明するためのフローチャートである。
図15】(a)~(c)は、構造体製造装置の第1の変形例を説明するための図である。
図16】(a)、(b)は、構造体製造装置の第2の変形例を説明するための図である。
図17】(a)~(c)は、構造体製造装置の第3の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[金属積層造形システム]
図1は、本発明の実施の形態における金属積層造形システム1の概略構成例を示した図である。
本実施の形態の金属積層造形システム1は、構造体(詳細は後述する)を製造する構造体製造装置10と、構造体を構成する母材(詳細は後述する)等を積載して移動する架台40を搬送する架台搬送装置60と、これら構造体製造装置10および架台搬送装置60の動作を制御する制御装置80とを備えている。ここで、図1には、金属積層造形システム1が、複数の架台40を有している場合を例示している。
【0014】
では、金属積層造形システム1を構成する構造体製造装置10、架台搬送装置60および制御装置80のそれぞれについて、説明を行う。
【0015】
(構造体製造装置)
図2は、図1に示す構造体製造装置10の概略構成例を示した斜視図である。また、図3は、図1に示す構造体製造装置10の概略構成例を示した上面図である。以下では、図1に加えて、図2および図3も参照しつつ、構造体製造装置10の構成に関する説明を行う。
【0016】
構造体製造装置10は、待機室11と、積層室12と、加工室13と、検査室14とを備えている。これら待機室11、積層室12、加工室13および検査室14は、それぞれ、床および天井とこれらの間に設けられた側壁とを有することで仕切られた部屋として構成されている。そして、この例では、図3における図中左下側に待機室11が、その上側に積層室12が、その右側に加工室13が、その下側であって待機室11の右側に検査室14が、それぞれ配置されており、2行×2列の配列となっている。
【0017】
また、構造体製造装置10は、外部シャッタ20と、第1内部シャッタ21と、第2内部シャッタ22と、第3内部シャッタ23と、第4内部シャッタ24とを備えている。これら外部シャッタ20、第1内部シャッタ21、第2内部シャッタ22、第3内部シャッタ23および第4内部シャッタ24は、構造体製造装置10を構成する側壁に、天地方向に対して開閉できるように取り付けられている。そして、これら外部シャッタ20、第1内部シャッタ21、第2内部シャッタ22、第3内部シャッタ23および第4内部シャッタ24は、それぞれが独立して開閉できるように構成されている。ここで、外部シャッタ20は、構造体製造装置10の外部と待機室11との境界部に設置されている。また、第1内部シャッタ21は、待機室11と積層室12との境界部に設置されている。さらに、第2内部シャッタ22は、積層室12と加工室13との境界部に設置されている。さらにまた、第3内部シャッタ23は、加工室13と検査室14との境界部に設置されている。そして、第4内部シャッタ24は、検査室14と待機室11との境界部に設置されている。なお、本実施の形態において、構造体製造装置10を構成する待機室11、積層室12、加工室13および検査室14は、それぞれ、所謂防爆構造を有している。このため、外部シャッタ20、第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24も、所謂防爆仕様のものが用いられている。また、待機室11、積層室12、加工室13および検査室14の床、天井および側壁は、それぞれ、防火仕様のものが用いられており、所謂防火材で構成されている。
【0018】
さらに、構造体製造装置10は、積層造形装置12aと、加工装置13aと、検査装置14aとを備えている。ここで、積層造形装置12aは積層室12内に、加工装置13aは加工室13内に、検査装置14aは検査室14内に、それぞれ設置されている。
【0019】
さらにまた、構造体製造装置10は、待機室内濃度計測部11bと、積層室内濃度計測部12bと、加工室内濃度計測部13bと、検査室内濃度計測部14bとを備えている。ここで、待機室内濃度計測部11bは待機室11内に、積層室内濃度計測部12bは積層室12内に、加工室内濃度計測部13bは加工室13内に、検査室内濃度計測部14bは検査室14内に、それぞれ設置されている。
【0020】
ここで、本実施の形態では、積層室12が第1の部屋の一例であり、加工室13が第2の部屋の一例であり、検査室14が第3の部屋の一例である。また、本実施の形態では、積層造形装置12aが形成手段の一例であり、加工装置13aが加工手段の一例であり、検査装置14aが検査手段の一例である。さらに、本実施の形態では、第1内部シャッタ21、第2内部シャッタ22、第3内部シャッタ23および第4内部シャッタ24が、開閉手段の一例である。さらにまた、本実施の形態では、積層室内濃度計測部12b、加工室内濃度計測部13bおよび検査室内濃度計測部14bが、検出手段の一例である。
【0021】
次に、構造体製造装置10を構成する各室(各部屋)と、各構成要素との関係に着目して説明を行う。
図4は、図3に示す構造体製造装置10と架台40との関係を説明するための図である。以下では、図1図3に加えて、図4も参照しつつ、構造体製造装置10と架台40との関係に関する説明も行う。
【0022】
〔待機室〕
図3において図中左下側に位置する待機室11は、外部シャッタ20を介して外部と、第1内部シャッタ21を介して積層室12と、第4内部シャッタ24を介して検査室14と、それぞれ接続可能になっている。このため、待機室11内に存在する架台40は、外部シャッタ20を介して外部への搬出が可能であり、第1内部シャッタ21を介して積層室12との間での受け渡しが可能であり、第4内部シャッタ24を介して検査室14との間での受け渡しが可能である。
【0023】
また、待機室11内には、待機室内濃度計測部11bが設置されている。
そして、待機室内濃度計測部11bは、待機室11内に存在する危険物の濃度の計測を行う。なお、本実施の形態における危険物の詳細については後述する。
【0024】
〔積層室〕
図3において図中左上側に位置する積層室12は、第1内部シャッタ21を介して待機室11と、第2内部シャッタ22を介して加工室13と、それぞれ接続可能になっている。このため、積層室12内に存在する架台40は、第1内部シャッタ21を介して待機室11との間での受け渡しが可能であり、第2内部シャッタ22を介して加工室13との間での受け渡しが可能である。
【0025】
また、積層室12内には、積層造形装置12aと積層室内濃度計測部12bとが設置されている。
まず、積層造形装置12aは、積層室12内の架台40に積載された母材等に対し、積層造形法を用いた積層造形物の形成(積層)を行う。
ここで、積層造形装置12aが実行する積層造形法としては、公知の各種法(材料押出法、材料噴射法、粉末床溶融結合法、結合剤噴射法、液槽光重合法、シート積層法、指向エネルギー堆積法等)を採用することができる。ただし、本実施の形態の場合、金属を含む造形材料を用いることが前提となる。このとき、造形材料を構成する金属の形状としては、粉体状(金属粉)や線状(金属線:ワイヤ)等を挙げることができるが、金属線に対して活性が高くなり易い、金属粉を含む造形材料を用いた場合に適用することがより望ましい。また、金属を含む造形材料を用いた積層造形法においては、通常、造形中あるいは造形後に加熱を行うことで、得られる積層造形物の強度を高める(一体化する)ことが行われる。そして、造形中に加熱を行う手法としては、例えば、アークや、レーザや電子線等の照射が挙げられる。なお、本実施の形態では、積層造形装置12aが、所謂アーク溶接の手法を転用した積層造形法(造形材料として金属線を用い、熱源としてアークを用いる)を採用しているものとして、以下の説明を行う。
また、積層室内濃度計測部12bは、積層室12内に存在する危険物の濃度の計測を行う。
【0026】
〔加工室〕
図3において図中右上側に位置する加工室13は、第2内部シャッタ22を介して積層室12と、第3内部シャッタ23を介して検査室14と、それぞれ接続可能になっている。このため、加工室13内に存在する架台40は、第2内部シャッタ22を介して積層室12との間での受け渡しが可能であり、第3内部シャッタ23を介して検査室14との間での受け渡しが可能である。
【0027】
また、加工室13内には、加工装置13aと加工室内濃度計測部13bとが設置されている。
まず、加工装置13aは、加工室13内の架台40に積載された母材上に形成された積層造形物等に対し、各種加工法を用いた加工を行う。
ここで、加工装置13aが実行する加工法としては、各種機械的加工、各種電気的加工、各種化学的加工等が挙げられる。なお、加工装置13aは、一種類の加工のみを行うものを用いてもよいし、複数種類の加工を行えるものを用いてもよい。
また、加工室内濃度計測部13bは、加工室13内に存在する危険物の濃度を計測する。
【0028】
〔検査室〕
図3において図中右下側に位置する検査室14は、第3内部シャッタ23を介して加工室13と、第4内部シャッタ24を介して待機室11と、それぞれ接続可能になっている。このため、検査室14内に存在する架台40は、第3内部シャッタ23を介して加工室13との間での受け渡しが可能であり、第4内部シャッタ24を介して待機室11との間での受け渡しが可能である。
【0029】
また、検査室14内には、検査装置14aと検査室内濃度計測部14bとが設置されている。
まず、検査装置14aは、検査室14内の架台40に積載された母材上に形成された積層造形物や積層造形物を加工して得られた加工物等に対し、各種検査法を用いた検査を行う。
ここで、検査装置14aが実行する検査法としては、各種機械的検査、各種電気的検査、各種化学的検査等が挙げられる。ここで、検査装置14aは、一種類のみの検査を行うものを用いてもよいし、複数種類の検査を行えるものを用いてもよい。
また、検査室内濃度計測部14bは、検査室14内に存在する危険物の濃度を計測する。
【0030】
〔危険物について〕
ではここで、構造体製造装置10に設けられた待機室内濃度計測部11b、積層室内濃度計測部12b、加工室内濃度計測部13bおよび検査室内濃度計測部14bが濃度の計測を行う、「危険物」について説明を行う。
【0031】
本実施の形態の金属積層造形システム1では、上述したように、金属を含む造形材料を用いて積層造形物の形成を行い、また、得られた積層造形物に対して各種加工を施す。このため、構造体製造装置10の内部では、これらの実行に伴って発生した金属粉が、積層室12内や加工室13内に滞留するおそれがある。また、積層室12内や加工室13内に滞留する金属粉は、各種内部シャッタが開放された際に、待機室11や検査室14内に移動して滞留するおそれもある。そして、このような金属粉は、所謂粉じん爆発を発生させる要因となり得る。特に、積層造形法で使用され得るチタン粉、アルミニウム粉、マグネシウム粉等は、粉じん爆発を生じさせやすいことが知られている。また、鉄粉やステンレス粉等でも、粉じん爆発が起こりうることが知られている。このように、金属粉は、危険物となり得るのである。
【0032】
このため、本実施の形態の金属積層造形システム1では、上述した待機室内濃度計測部11b、積層室内濃度計測部12b、加工室内濃度計測部13bおよび検査室内濃度計測部14bが、それぞれ自室内の雰囲気(この例では大気)中での金属粉の濃度の計測を行うとともに、制御装置80が、これら各計測部の計測結果に基づき、各室内の危険物の濃度を監視するようになっている(詳細は後述する)。
【0033】
なお、ここでは特に説明を行わなかったが、待機室11、積層室12、加工室13および検査室14のそれぞれには、各部屋内に存在する金属粉等の収集を行う、集塵機を設けておくことが望ましい。
【0034】
(架台搬送装置)
架台搬送装置60は、構造体製造装置10の外部と内部との間で、1または複数(この例では2台)の架台40の搬送(搬入および搬出)を行う。また、架台搬送装置60は、構造体製造装置10の内部において、待機室11、積層室12、加工室13および検査室14の間での架台40の搬送を行う。
【0035】
(架台)
架台40は、母材を積載する機能と、積載した母材を自身に固定する機能と、自身が移動する機能とを有している。そして、架台40は、例えば自身が車輪等を有する台車で構成してもよいし、自身は車輪等を有しない構成としてもかまわない。
【0036】
(制御装置)
続いて、図1に示す制御装置80の詳細について説明を行う。
〔ハードウェア構成〕
図5は、本実施の形態の制御装置80のハードウェア構成を示した図である。
この制御装置80は、OSや各種アプリケーション等のプログラムを読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)81と、CPU81が実行するプログラムやプログラムを実行する際に使用するデータ等を記憶するROM(Read Only Memory)82と、プログラムを実行する際に一時的に生成されるデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)83とを備えている。また、制御装置80は、各種プログラムや各種データ等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)84と、制御装置80の外部に設けられた機器(構造体製造装置10および架台搬送装置60を含む)との間でデータの送受信を行うNIC(Network Interface Card)85と、操作者からの入力を受け付ける入力装置86と、表示画面に画像を表示する表示装置87と、これらを接続するバス88とをさらに備えている。そして、制御装置80に設けられたCPU81が実行するプログラムは、予めROM82やHDD84に記憶させておく形態の他、例えばCD-ROM等の記憶媒体に格納してCPU81に提供したり、あるいは、ネットワーク(図示せず)を介してCPU81に提供したりすることも可能である。
【0037】
〔機能構成〕
図6は、本実施の形態の制御装置80の機能構成例を示した図である。
本実施の形態の制御装置80は、全体制御部801と、積層制御部802と、加工制御部803と、検査制御部804と、開閉制御部805と、搬送制御部806とを有している。
【0038】
{全体制御部}
禁止手段の一例としての全体制御部801は、積層制御部802、加工制御部803、検査制御部804、開閉制御部805および搬送制御部806を介して、金属積層造形システム1の全体的な動作を制御する。また、全体制御部801には、待機室内濃度計測部11bから待機室危険物濃度C1が、積層室内濃度計測部12bから積層室危険物濃度C2、加工室内濃度計測部13bから加工室危険物濃度C3が、検査室内濃度計測部14bから検査室危険物濃度C4が、それぞれ入力されてくる。そして、全体制御部801は、これら各種危険物濃度に基づき、金属積層造形システム1の動作を緊急停止させるか否かの監視およびその制御も行う。
【0039】
{積層制御部}
積層制御部802は、全体制御部801による制御の下、構造体製造装置10の積層室12内に設けられた積層造形装置12aの動作を制御する。
【0040】
{加工制御部}
加工制御部803は、全体制御部801による制御の下、構造体製造装置10の加工室13内に設けられた加工装置13aの動作を制御する。
【0041】
{検査制御部}
検査制御部804は、全体制御部801による制御の下、構造体製造装置10の検査室14内に設けられた検査装置14aの動作を制御する。
【0042】
{開閉制御部}
開閉制御部805は、全体制御部801による制御の下、構造体製造装置10に設けられた、外部シャッタ20、第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24の動作(より具体的には開閉動作)を制御する。
【0043】
{搬送制御部}
搬送制御部806は、全体制御部801による制御の下、架台搬送装置60の動作すなわち架台40の搬送動作を制御する。
【0044】
(構造体)
ではここで、本実施の形態の金属積層造形システム1によって製造される構造体に関する説明を行っておく。
図7は、本実施の形態における構造体の構成例を説明するための図である。ここで、図7(a)は、構造体の一例としての半製品100Sの構成例を示した斜視図であり、図7(b)は、構造体の他の一例としての完成品100Fの構成例を示した斜視図である。ここで、図7(a)に示す半製品100Sは、例えば上述した積層室12内で、積層造形装置12aを用いて製造される。これに対し、図7(b)に示す完成品100Fは、例えば上述した加工室13内で、加工装置13aを用いて半製品100Sに加工を施すことで製造される。
【0045】
〔半製品〕
まず、図7(a)に示す半製品100Sについて説明を行う。
本実施の形態の半製品100Sは、積層対象となる母材110と、金属を含む造形材料(ここでは金属線)を用いて母材110上に形成される積層造形物120とを備えている。
【0046】
この例において、母材110は、金属材料で構成されており、矩形状(板状)を呈するとともに、その表面が鉛直上方を向くように配置されている。また、この例において、金属材料で構成される積層造形物120は、円筒状を呈するとともに、母材110の表面に、自身に設けられた開口部が鉛直上方を向くように形成されている。この例の場合、積層造形物120は、金属線からなる造形材料を用いて得られた複数(ここでは5つ)のビード121の積層体で構成されている。より具体的に説明すると、この例の積層造形物120は、母材110上に積層される1層目のビード121(1)と、1層目のビード121(1)上に積層される2層目のビード121(21)と、2層目のビード121(2)上に積層される3層目のビード121(3)と、3層目のビード121(3)上に積層される4層目のビード121(4)と、4層目のビード121(4)上に積層される5層目のビード121(5)とを備えている。
【0047】
〔完成品〕
次に、図7(b)に示す完成品100Fについて説明を行う。
本実施の形態の完成品100Fは、上述した母材110と、上述した積層造形物120に加工を施すことによって得られた加工物130とを備えており、当然のことながら、加工物130は母材110上に形成されている。
【0048】
この例において、加工物130は、図7(a)に示す積層造形物120の外周面および内周面に切削加工を施したものであって、積層造形物120と同様に、円筒状を呈するとともに、母材110の表面に、自身に設けられた開口部が鉛直上方を向くように形成されている。この例の場合、加工物130は、上述した切削加工が施されることに伴い、その元となる積層造形物120には存在していた表面の凹凸が、取り除かれたものとなっている。
【0049】
なお、本実施の形態では、便宜上、図7(b)に示すものを「完成品」と称しているが、要求される仕様等によっては、図7(a)に示すものが「完成品」となることもあり得る。
【0050】
(架台と母材との関係)
続いて、本実施の形態の金属積層造形システム1で用いられる架台40と、架台40に積載される母材110との関係について説明を行う。
図8は、架台40と母材110との関係を示す図であって、図8(a)は第1の関係例を、また、図8(b)は第2の関係例を、それぞれ示している。
【0051】
〔第1の関係例〕
図8(a)に示す第1の関係例の場合、1台の架台40の上に、1台の母材110が積載されている。これは、架台40の上面(積載面)の面積が、母材110の下面(被積載面)の面積よりも大きい場合(通常の場合)に採用される。そして、図8(a)に示す状態で、図示しない固定治具により、架台40上に母材110が固定され、構造体製造装置10での搬送に供される。
【0052】
〔第2の関係例〕
図8(b)に示す第2の関係例の場合、並べて配置された2台の架台40の上に、1台の母材110が跨がって積載されている。これは、架台40の上面(積載面)の面積が、母材110の下面(被積載面)の面積よりも小さい場合(特殊な場合)に採用される。そして、図8(b)に示す状態で、図示しない固定治具により、2台の架台40上に母材110が固定され、構造体製造装置10での搬送に供される。なお、ここでは詳細な説明を行わないが、並べて配置された3台以上の架台40の上に、1台の母材110を取り付けた状態で、構造体製造装置10での搬送に供することも可能である。
【0053】
[金属積層造形システムの動作]
続いて、本実施の形態の金属積層造形システム1の動作について説明を行う。
本実施の形態の金属積層造形システム1では、制御装置80が、架台搬送装置60を介して、構造体製造装置10に対する架台40の搬入動作と、構造体製造装置10からの架台40の搬出動作とを制御する。このとき、構造体製造装置10に搬入される架台40には、母材110が積載されており、また、構造体製造装置10から搬出される架台40には、母材110を含む完成品100Fが積載されている。また、制御装置80は、架台搬送装置60を介して、構造体製造装置10内における架台40の搬送動作も制御する。このとき、架台40は、母材110等を積載した状態で、待機室11、積層室12、加工室13および検査室14を行き来する。
【0054】
また、この金属積層造形システム1では、制御装置80が、構造体製造装置10内において、架台40に積載された母材110に対する積層造形物120の形成および積層造形物120に各種加工を施すことによる加工物130の作製と、母材110および積層造形物120を含む半製品100Sや母材110および加工物130を含む完成品100Fに対する検査とを制御する。より具体的に説明すると、制御装置80は、積層造形装置12aを用いた、積層室12内の架台40に積載された母材110に対する積層造形物120の形成動作を制御する。また、制御装置80は、加工装置13aを用いた、加工室13内の架台40に積載された半製品100Sに対する機械加工すなわち加工物130の作製動作を制御する。さらに、制御装置80は、検査装置14aを用いた、検査室14内の架台40に積載された半製品100Sまたは完成品100Fに対する検査動作を制御する。
【0055】
[完成品の基本的な製造プロセス]
次に、本実施の形態の金属積層造形システム1を用いた、図7(b)に示す完成品100Fの製造手順について説明を行う。
図9は、完成品100Fの基本的な製造プロセスを説明するためのフローチャートである。また、図10(a)~(f)は、以下に説明する各工程における母材110等の状態を説明するための図である。ここで、図10では、母材110を積載する架台40の記載を省略している。なお、以下に説明する制御は、金属積層造形システム1に設けられた制御装置80が行う。
【0056】
(搬入工程)
最初に、母材110を積載した架台40を、構造体製造装置10の外部から、構造体製造装置10の内部、より詳細には待機室11へと搬入する、搬入工程を実行する(ステップ10、図10(a)参照)。
【0057】
(積層工程)
次に、構造体製造装置10の内部に搬入された架台40上の母材110に対し、積層室12において、積層造形装置12aを用いてビード121の積層を行うことで積層造形物120を形成する、積層工程を実行する(ステップ20)。このとき、架台40上には、図10(b)に示す半製品100Sが積載された状態となる。
【0058】
(半製品検査工程)
続いて、架台40上の半製品100Sに対し、検査室14において、検査装置14aを用いて半製品100Sを検査する、半製品検査工程を実行する(ステップ30)。このとき、架台40上には、図10(c)に示す半製品100Sが、引き続き積載されたままの状態となっている。
【0059】
(加工工程)
次いで、架台40上の半製品100Sに対し、加工室13において、加工装置13aを用いて積層造形物120に加工を施すことで加工物130を形成する、加工工程を実行する(ステップ40)。このとき、架台40上には、図10(d)に示す完成品100Fが積載された状態となる。
【0060】
(製品検査工程)
それから、架台40上の完成品100Fに対し、検査室14において、検査装置14aを用いて完成品100Fを検査する、完成品検査工程を実行する(ステップ50)。このとき、架台40上には、引き続き、完成品100Fが積載されたままの状態となっている(図10(e)参照)。
【0061】
(搬出工程)
最後に、完成品100Fを積載した架台40を、構造体製造装置10の内部、より詳細には待機室11から、構造体製造装置10の外部へと搬出する、搬出工程を実行する(ステップ60)。このとき、架台40上には、引き続き、完成品100Fが積載されたままの状態となっている(図10(f)参照)。
以上により、完成品100Fの製造が完了する。なお、各工程におけるより詳細な手順については、後述する。
【0062】
(積層工程の詳細)
ではここで、上述したステップ20の積層工程について、より具体的な説明を行う。
図11は、積層工程の詳細すなわち母材110に対する積層造形物120の形成手順、換言すれば、半製品100Sの製造手順を説明するための図である。
【0063】
図11(a)は、1層目の層形状データに基づき、母材110上に、1層目のビード121(1)を形成した後の状態を示す斜視図である。
この例では、1層目の層形状データを用いて積層造形装置12aを駆動することにより、母材110上に、略円環状を呈する1層目のビード121(1)が形成(積層)される。
【0064】
図11(b)は、2層目の層形状データに基づき、1層目のビード121(1)上に、2層目のビード121(2)を形成した後の状態を示す斜視図である。
この例では、2層目の層形状データを用いて積層造形装置12aを駆動することにより、略円環状を呈する1層目のビード121(1)の上に、略円環状を呈する2層目のビード121(2)が形成(積層)される。
【0065】
以降、詳細な説明は省略するが、同様の手順にて、2層目のビード121(2)の上には、それぞれが略円環状を呈する3層目のビード121(3)および4層目のビード121(4)が、順次形成(積層)されていく。
【0066】
図11(c)は、5層目の層形状データに基づき、4層目のビード121(4)の上に、最終層となる5層目のビード121(5)を形成した後の状態、すなわち、母材110上に積層造形物120を形成した後の状態を示す斜視図である。
この例では、5層目のビード121(5)を用いて積層造形装置12aを駆動することにより、略円環状を呈する5層目のビード121(5)が形成される。
以上の手順により、母材110と積層造形物120とを有する半製品100Sが得られる。
【0067】
[完成品の具体的な製造プロセス]
では、具体的な例を挙げつつ、本実施の形態の金属積層造形システム1における完成品100Fの製造プロセスについて説明を行う。なお、ここでは、図1等に示す金属積層造形システム1すなわち1台の構造体製造装置10を用いて、2個の完成品100Fを並列に製造する場合を例として説明を行う。
【0068】
図12は、構造体製造装置10を用いて、2個の完成品100Fを並行して製造する場合の製造プロセスを説明するためのフローチャートである。また、図13(a)~(m)は、2個の完成品100Fを並列に製造する場合の、各工程での状態を説明するための図である。ただし、図13においては、構造体製造装置10に設けられた外部シャッタ20および第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24の記載を省略しており、以下では、必要に応じて図1図11(特に図3および図4)等も参照しながら説明を行う。なお、以下では、説明で用いる2台の架台40のことを、それぞれ、「第1の架台A」および「第2の架台B」と称する。そして、図12において、図中左側は、第1の架台Aに積載された状態で製造される完成品100Fの製造手順を示しており、図中右側は、第2の架台Bに積載された状態で製造される完成品(他の完成品)100Fの製造手順を示している。これらの制御は、制御装置80が実行する。
【0069】
(初期状態)
また、製造プロセスを開始する前の初期状態において、構造体製造装置10は、以下に説明するような設定がなされているものとする。
まず、外部シャッタ20および第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24は、すべてが閉じられた状態(以下では、「閉扉状態」と称する)に設定されている。これに伴い、待機室11、積層室12、加工室13および検査室14は、すべてが閉じられた状態(以下では、「閉鎖状態」と称する)に設定されている。また、積層室12に設けられた積層造形装置12a、加工室13に設けられた加工装置13aおよび検査室14に設けられた検査装置14aは、すべて稼働していない状態(以下では、「非稼働状態」と称する)に設定されている。さらに、待機室11、積層室12、加工室13および検査室14は、すべてが架台40(第1の架台Aおよび第2の架台B)を収容していない状態に設定されている。したがって、第1の架台Aおよび第2の架台Bは、ともに構造体製造装置10の外部(以下では、「室外」と称する)に配置されている。そして、第1の架台Aおよび第2の架台Bのそれぞれには、母材110が積載された状態で固定されている。なお、以下では、第1の架台Aに取り付けられるものを母材110と称することがあり、第2の架台Bに取り付けられるものを他の母材110と称することがある。
【0070】
(第1工程)
まず、第1工程を実行する(図12のステップSa:図13(a)も参照)。この第1工程では、母材110を積載した第1の架台Aを、室外から構造体製造装置10の内部へと移動(搬入)させる。
【0071】
より具体的に説明すると、まず、外部シャッタ20が、閉扉状態から開いた状態(以下では、「開扉状態」と称する)へと移行することで、待機室11は、閉鎖状態から開いた状態(以下では、「開放状態」と称する)へと移行し、室外と待機室11とが繋がる。この状態で、母材110を積載した第1の架台Aが、室外から待機室11の室内へと移動する。そして、この状態で、外部シャッタ20が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、待機室11は、開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0072】
これらにより、第1工程が終了した時点では、閉鎖状態にある待機室11に、母材110を積載した第1の架台Aが収容された状態となる。
【0073】
(第2工程)
第1工程に続いて、第2工程を実行する(図12のステップSb:図13(b)も参照)。この第2工程では、待機室11内に収容される、母材110を積載した第1の架台Aを、待機室11から積層室12へと移動させる。
【0074】
より具体的に説明すると、まず、第1内部シャッタ21が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、待機室11および積層室12は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、母材110を積載した第1の架台Aが、待機室11から積層室12へと移動する。そして、この状態で、第1内部シャッタ21が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、待機室11および積層室12は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0075】
これらにより、第2工程が終了した時点では、閉鎖状態にある積層室12に、母材110を積載した第1の架台Aが収容された状態となる。
【0076】
(第3工程)
第2工程に続いて、第3工程を実行する(図12のステップSc:図13(c)も参照)。この第3工程では、積層室12内に収容される、第1の架台Aに積載された母材110に対し、積層造形物120の形成を行う。また、この第3工程では、他の母材110を積載した第2の架台Bを、室外から構造体製造装置10の室内へと移動(搬入)させる。
【0077】
より具体的に説明すると、まず、積層室12では、積層造形装置12aが非稼働状態から稼働する状態(以下では、「稼働状態」と称する)へと移行する。この状態で、積層造形装置12aは、第1の架台Aに積載された母材110に対し、複数のビード121を順次積層することによって積層造形物120の形成を行う。この間、積層室12に設けられた第1内部シャッタ21および第2内部シャッタ22はともに閉扉状態に維持され、その結果、積層室12は閉鎖状態に維持される。そして、積層造形物120の形成が完了すると、積層造形装置12aは、稼働状態から非稼働状態へと移行する。これらの結果、積層室12内に収容される第1の架台Aは、母材110と積層造形物120とを有する半製品100Sを積載した状態となる。
【0078】
また、これと並行して、外部シャッタ20が、閉扉状態から開扉状態へと移行し、待機室11は、閉鎖状態から開放状態へと移行し、室外と待機室11とが繋がる。この状態で、他の母材110を積載した第2の架台Bが、室外から待機室11の室内へと移動する。そして、この状態で、外部シャッタ20が、開扉状態から閉扉状態へと移行し、待機室11は、開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0079】
これらにより、第3工程が終了した時点では、閉鎖状態にある積層室12に、半製品100Sを積載した第1の架台Aが収容された状態となる。また、同じく閉鎖状態にある待機室11には、他の母材110を積載した第2の架台Bが収容された状態となる。
【0080】
(第4工程)
第3工程に続いて、第4工程を実行する(図12のステップSd:図13(d)も参照)。この第4工程では、積層室12内に収容される、半製品100Sを積載した第1の架台Aを、積層室12から加工室13を介して検査室14へと移動させる。また、この第4工程では、待機室11内に収容される、他の母材110を積載した第2の架台Bを、待機室11から積層室12へと移動させる。
【0081】
より具体的に説明すると、まず、第2内部シャッタ22が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、積層室12および加工室13は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、半製品100Sを積載した第1の架台Aが、積層室12から加工室13へと移動する。そして、この状態で、第2内部シャッタ22が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、積層室12および加工室13は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。この間、他の母材110を積載した第2の架台Bは、閉鎖状態にある待機室11に収容された状態を維持する。
【0082】
次に、第3内部シャッタ23が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、加工室13および検査室14は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、半製品100Sを積載した第1の架台Aが、加工室13から検査室14へと移動する。そして、この状態で、第3内部シャッタ23が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、加工室13および検査室14は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0083】
また、これと並行して、第1内部シャッタ21が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、待機室11および積層室12は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、これら両者は連通して接続された状態となる。この状態で、他の母材110を積載した第2の架台Bが、待機室11から積層室12へと移動する。そして、この状態で、第1内部シャッタ21が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、待機室11および積層室12は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0084】
これらにより、第4工程が終了した時点では、閉鎖状態にある検査室14に、半製品100Sを積載した第1の架台Aが収容された状態となる。また、同じく閉鎖状態にある積層室12には、他の母材110を積載した第2の架台Bが収容された状態となる。
【0085】
(第5工程)
第4工程に続いて、第5工程を実行する(図12のステップSe:図13(e)も参照)。この第5工程では、検査室14内に収容される、第1の架台Aに積載された半製品100Sに対し、積層造形物120の検査(1回目)を行う。また、この第5工程では、積層室12内に収容される、第2の架台Bに積載された他の母材110に対し、他の積層造形物120の形成を行う。
【0086】
より具体的に説明すると、まず、検査室14では、検査装置14aが非稼働状態から稼働状態へと移行する。この状態で、検査装置14aは、第1の架台Aに積載された半製品100Sにおける積層造形物120に対し、予め定められた検査(半製品検査)を行う。この間、検査室14に設けられた第3内部シャッタ23および第4内部シャッタ24はともに閉扉状態に設定され、その結果、検査室14は閉鎖状態に維持される。そして、積層造形物120の検査が完了すると、検査装置14aは、稼働状態から非稼働状態へと移行する。なお、このとき、積層造形物120だけでなく、母材110を含む半製品100Sの全体の検査を行うようにしてもよい。
【0087】
また、これと並行して、積層室12では、積層造形装置12aが非稼働状態から稼働状態へと移行する。この状態で、積層造形装置12aは、第2の架台Bに積載された他の母材110に対し、他の複数のビード121を順次積層することによって他の積層造形物120の形成を行う。この間、積層室12に設けられた第1内部シャッタ21および第2内部シャッタ22はともに閉扉状態に維持され、その結果、積層室12は閉鎖状態に維持される。そして、積層造形物120の形成が完了すると、積層造形装置12aは、稼働状態から非稼働状態へと移行する。これらの結果、積層室12内に収容される第2の架台Bは、他の母材110と他の積層造形物120とを有する他の半製品100Sを積載した状態となる。
【0088】
これらにより、第5工程が終了した時点では、閉鎖状態にある検査室14に、検査済みの半製品100Sを積載した第1の架台Aが収容された状態となる。また、同じ閉鎖状態にある積層室12には、他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが収容された状態となる。
【0089】
(第6工程)
第5工程に続いて、第6工程を実行する(図12のステップSf:図13(f)も参照)。この第6工程では、検査室14内に収容される、検査済みの半製品100Sを積載した第1の架台Aを、検査室14から待機室11および積層室12を介して加工室13へと移動させる。また、この第6工程では、積層室12内に収容される、他の母材110を積載した第2の架台Bを、積層室12から加工室13を介して検査室14へと移動させる。
【0090】
より具体的に説明すると、まず、第4内部シャッタ24が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、検査室14および待機室11は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、検査済みの半製品100Sを積載した第1の架台Aが、検査室14から待機室11へと移動する。そして、この状態で、第4内部シャッタ24が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、検査室14および待機室11は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0091】
また、これと並行して、第2内部シャッタ22が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、積層室12および加工室13は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが、積載室12から加工室13へと移動する。そして、この状態で、第2内部シャッタ22が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、積層室12および加工室13は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0092】
その結果、この時点では、閉鎖状態にある待機室11には検査済みの半製品100Sを積載した第1の架台Aが、同じく閉鎖状態にある加工室13には他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが、それぞれ収容された状態となる。
【0093】
次に、第1内部シャッタ21が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、待機室11および積層室12は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、検査済みの半製品100Sを積載した第1の架台Aが、待機室11から積層室12へと移動する。そして、この状態で、第1内部シャッタ21が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、待機室11および積層室12は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0094】
また、これと並行して、第3内部シャッタ23が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、加工室13および検査室14は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、半製品100Sを積載した第2の架台Bが、加工室13から検査室14へと移動する。そして、この状態で、第3内部シャッタ23が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、加工室13および検査室14は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0095】
その結果、この時点では、閉鎖状態にある積層室12には検査済みの半製品100Sを積載した第1の架台Aが、同じく閉鎖状態にある検査室14には他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが、それぞれ収容された状態となる。
【0096】
続いて、第2内部シャッタ22が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、積層室12および加工室13は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、検査済みの半製品100Sを積載した第1の架台Aが、積層室12から加工室13へと移動する。そして、この状態で、第2内部シャッタ22が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、積層室12および加工室13は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。この間、他の半製品100Sを積載した第2の架台Bは、閉鎖状態にある検査室14に設置された状態を維持する。
【0097】
これらにより、第6工程が終了した時点では、閉鎖状態にある加工室13に、検査済みの半製品100Sを積載した第1の架台Aが収容された状態となる。また、同じく閉鎖状態にある検査室14には、他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが収容された状態となる。
【0098】
(第7工程)
第6工程に続いて、第7工程を実行する(図12のステップSg:図13(g)も参照)。この第7工程では、加工室13内に収容される、第1の架台Aに積載された検査済みの半製品100Sに対し、積層造形物120の加工を行う。また、この第7工程では、検査室14内に収容される、第2の架台Bに積載された他の半製品100Sに対し、他の積層造形物120の検査(1回目)を行う。
【0099】
より具体的に説明すると、まず、加工室13では、加工装置13aが非稼働状態から稼働状態へと移行する。この状態で、加工装置13aは、第1の架台Aに積載された検査済みの半製品100Sにおける積層造形物120に対し、予め定められた加工(機械的加工)を行う。この間、加工室13に設けられた第2内部シャッタ22および第3内部シャッタ23はともに閉扉状態に設定され、その結果、加工室13は閉鎖状態に維持される。そして、積層造形物120の加工すなわち加工物130の形成が完了すると、加工装置13aは、稼働状態から非稼働状態へと移行する。なお、第7工程では、積層造形物120だけでなく、母材110に対する加工を行ってもよい。これらの結果、加工室13内に収容される第1の架台Aは、母材110と加工物130とを含む完成品100Fを積載した状態となる。
【0100】
また、これと並行して、検査室14では、検査装置14aが非稼働状態から稼働状態へと移行する。この状態で、検査装置14aは、第2の架台Bに積載された他の半製品100Sにおける他の積層造形物120に対し、予め定められた検査(半製品検査)を行う。この間、検査室14に設けられた第3内部シャッタ23および第4内部シャッタ24はともに閉扉状態に設定され、その結果、検査室14は閉鎖状態に維持される。そして、他の積層造形物120の検査が完了すると、検査装置14aは、稼働状態から非稼働状態へと移行する。なお、このとき、他の積層造形物120だけでなく、他の母材110を含む他の半製品100Sの全体の検査を行うようにしてもよい。
【0101】
これらにより、第7工程が終了した時点では、閉鎖状態にある加工室13に、完成品100Fを積載した第1の架台Aが収容された状態となる。また、同じく閉鎖状態にある検査室14には、検査済みの他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが収容された状態となる。
【0102】
(第8工程)
第7工程に続いて、第8工程を実行する(図12のステップSh:図13(h)も参照)。この第8工程では、加工室13内に収容される、完成品100Fを積載した第1の架台Aを、加工室13から検査室14へと移動させる。また、この第8工程では、検査室14内に収容される、検査済みの他の半製品100Sを積載した第2の架台Bを、検査室14から待機室11および積層室12を介して加工室13へと移動させる。
【0103】
より具体的に説明すると、まず、第4内部シャッタ24が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、検査室14および待機室11は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、検査済みの他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが、検査室14から待機室11へと移動する。そして、この状態で、第4内部シャッタ24が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、検査室14および待機室11は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。この間、完成品100Fを積載した第1の架台Aは、閉鎖状態にある加工室13に収容された状態を維持する。
【0104】
その結果、この時点では、閉鎖状態にある加工室13には完成品100Fを積載した第1の架台Aが、同じく閉鎖状態にある待機室11には検査済みの他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが、それぞれ収容された状態となる。
【0105】
次に、第3内部シャッタ23が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、加工室13および検査室14は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、完成品100Fを積載した第1の架台Aが、加工室13から検査室14へと移動する。そして、この状態で、第3内部シャッタ23が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、加工室13および検査室14は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0106】
また、これと並行して、第1内部シャッタ21が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、待機室11および積層室12は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、検査済みの他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが、待機室11から積層室12へと移動する。そして、この状態で、第1内部シャッタ21が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、待機室11および積層室12は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0107】
その結果、この時点では、閉鎖状態にある検査室14には完成品100Fを積載した第1の架台Aが、同じく閉鎖状態にある積載室12には検査済みの他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが、それぞれ収容された状態となる。
【0108】
続いて、第2内部シャッタ22が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、積層室12および加工室13は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、検査済みの他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが、積層室12から加工室13へと移動する。そして、この状態で、第2内部シャッタ22が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、積層室12および加工室13は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。この間、完成品100Fを積載した第1の架台Aは、閉鎖状態にある検査室14に収容された状態を維持する。
【0109】
これらにより、第8工程が終了した時点では、閉鎖状態にある検査室14に、完成品100Fを積載した第1の架台Aが収容された状態となる。また、同じく閉鎖状態にある加工室13には、検査済みの他の半製品100Sを積載した第2の架台Bが収容された状態となる。
【0110】
(第9工程)
第8工程に続いて、第9工程を実行する(図12のステップSi:図13(i)も参照)。この第9工程では、検査室14内に収容される、第1の架台Aに積載された完成品100Fに対し、加工物130の検査(2回目)を行う。また、この第9工程では、加工室13内に収容される、第2の架台Bに積載された検査済みの他の半製品100Sに対し、他の積層造形物120の加工を行う。
【0111】
より具体的に説明すると、まず、検査室14では、検査装置14aが非稼働状態から稼働状態へと移行する。この状態で、検査装置14aは、第1の架台Aに積載された完成品100Fにおける加工物130に対し、予め定められた検査(完成品検査)を行う。この間、検査室14に設けられた第3内部シャッタ23および第4内部シャッタ24はともに閉扉状態に設定され、その結果、検査室14は閉鎖状態に維持される。そして、加工物130の検査が完了すると、検査装置14aは、稼働状態から非稼働状態へと移行する。なお、このとき、加工物130だけでなく、母材110を含む完成品100Fの全体の検査を行うようにしてもよい。
【0112】
また、これと並行して、加工室13では、加工装置13aが非稼働状態から稼働状態へと移行する。この状態で、加工装置13aは、第2の架台Bに積載された検査済みの他の半製品100Sにおける他の積層造形物120に対し、予め定められた加工(機械的加工)を行う。この間、加工室13に設けられた第2内部シャッタ22および第3内部シャッタ23はともに閉扉状態に設定され、その結果、加工室13は閉鎖状態に維持される。そして、他の積層造形物120の加工すなわち他の加工物130の形成が完了すると、加工装置13aは、稼働状態から非稼働状態へと移行する。なお、第9工程では、他の積層造形物120だけでなく、他の母材110に対する加工を行ってもよい。これらの結果、加工室13内に収容される第2の架台Bは、他の母材110と他の加工物130とを含む他の完成品100Fを積載した状態となる。
【0113】
これらにより、第9工程が終了した時点では、閉鎖状態にある検査室14に、検査済みの完成品100Fを積載した第1の架台Aが収容された状態となる。また、同じく閉鎖状態となる加工室13には、他の完成品100Fを積載した第2の架台Bが収容された状態となる。
【0114】
(第10工程)
第9工程に続いて、第10工程を実行する(図12のステップSj:図13(j)も参照)。この第10工程では、検査室14内に収容される、検査済みの完成品100Fを積載した第1の架台Aを、検査室14から待機室11へと移動させる。また、この第10工程では、加工室13内に収容される、他の完成品100Fを積載した第2の架台Bを、加工室13から検査室14へと移動させる。
【0115】
より具体的に説明すると、まず、第4内部シャッタ24が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、検査室14および待機室11は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、検査済みの完成品100Fを積載した第1の架台Aが、検査室14から待機室11へと移動する。そして、この状態で、第4内部シャッタ24が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、検査室14および待機室11は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。この間、他の完成品100Fを積載した第2の架台Bは、閉鎖状態にある加工室13に設置された状態を維持する。
【0116】
その結果、この時点では、閉鎖状態にある待機室11には検査済みの完成品100Fを積載した第1の架台Aが、同じく閉鎖状態にある加工室13には他の完成品100Fを積載した第2の架台Bが、それぞれ収容された状態となる。
【0117】
次に、第3内部シャッタ23が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、加工室13および検査室14は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、他の完成品100Fを積載した第2の架台Bが、加工室13から検査室14へと移動する。そして、この状態で、第3内部シャッタ23が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、加工室13および検査室14は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。この間、検査済みの完成品100Fを積載した第1の架台Bは、閉鎖状態にある待機室11に設置された状態を維持する。
【0118】
これらにより、第10工程が終了した時点では、閉鎖状態にある待機室11に、検査済みの完成品100Fを積載した第1の架台Aが収容された状態となる。また、同じく閉鎖状態にある検査室14には、他の完成品100Fを積載した第2の架台Bが収容された状態となる。
【0119】
(第11工程)
第10工程に続いて、第11工程を実行する(図12のステップSk:図13(k)も参照)。この第11工程では、待機室11内に収容される、検査済みの完成品100Fを積載した第1の架台Aを、待機室11から構造体製造装置10の室外へと移動(搬出)させる。また、この第11工程では、検査室14内に収容される、第2の架台Bに積載された他の完成品100Fに対し、他の加工物130の検査(2回目)を行う。
【0120】
より具体的に説明すると、まず、外部シャッタ20が、閉扉状態から開扉状態へと移行し、待機室11は、閉鎖状態から開放状態へと移行し、待機室11と室外とが繋がる。この状態で、検査済みの完成品100Fを積載した第1の架台Aが、待機室11の室内から室外へと移動する。そして、この状態で、外部シャッタ20が、開扉状態から閉扉状態へと移行し、待機室11は、開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0121】
また、これと並行して、検査室14では、検査装置14aが非稼働状態から稼働状態へと移行する。この状態で、検査装置14aは、第2の架台Bに積載された他の完成品100Fにおける他の加工物130に対し、予め定められた検査(完成品検査)を行う。この間、検査室14に設けられた第3内部シャッタ23および第4内部シャッタ24はともに閉扉状態に設定され、その結果、検査室14は閉鎖状態に維持される。そして、他の加工物130の検査が完了すると、検査装置14aは、稼働状態から非稼働状態へと移行する。なお、このとき、他の加工物130だけでなく、他の母材110を含む他の完成品100Fの全体の検査を行うようにしてもよい。
【0122】
これらにより、第11工程が終了した時点では、検査済みの完成品100Fを積載する第1の架台Aは、構造体製造装置10の外部に排出された状態となる。また、閉鎖状態にある検査室14には、検査済みの他の完成品100Fが収容された状態となる。
【0123】
(第12工程)
第11工程に続いて、第12工程を実行する(図12のステップSl:図13(l)も参照)。この第12工程では、検査室14内に収容される、検査済みの他の完成品100Fを積載した第2の架台Bを、検査室14から待機室11内へと移動させる。なお、以下では、既に搬出されている第1の架台Aに関する説明を省略する。
【0124】
より具体的に説明すると、まず、第4内部シャッタ24が、閉扉状態から開扉状態へと移行することで、検査室14および待機室11は、ともに閉鎖状態から開放状態へと移行し、両者は連通して接続された状態となる。この状態で、検査済みの他の完成品100Fを積載した第2の架台Bが、検査室14から待機室11へと移動する。そして、この状態で、第4内部シャッタ24が、開扉状態から閉扉状態へと移行することで、検査室14および待機室11は、ともに開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0125】
これらにより、第12工程が終了した時点では、閉鎖状態にある待機室11に、検査済みの他の完成品100Fを積載した第2の架台Bが収容された状態となる。
【0126】
(第13工程)
第12工程に続いて、第13工程を実行する(図12のステップSm:図13(m)も参照)。この第13工程では、待機室11内に収容される、検査済みの他の完成品100Fを積載した第2の架台Bを、待機室11から構造体製造装置10の室外へと移動(搬出)させる。
【0127】
より具体的に説明すると、まず、外部シャッタ20が、閉扉状態から開扉状態へと移行し、待機室11は、閉鎖状態から開放状態へと移行する。この状態で、検査済みの他の完成品100Fを積載した第2の架台Bが、待機室11の室内から室外へと移動する。そして、この状態で、外部シャッタ20が、開扉状態から閉扉状態へと移行し、待機室11は、開放状態から閉鎖状態へと移行する。
【0128】
以上により、構造体製造装置10による、2つの架台A、Bを用いた2つの完成品100Fの製造が完了する。
【0129】
[完成品の製造における監視プロセス]
本実施の形態の金属積層造形システム1では、上述したような手順によって、半製品100Sを介した完成品100Fの製造が行われる。そして、本実施の形態の金属積層造形システム1では、このような完成品100Fの製造中に、完成品100Fの製造プロセスと並行して、構造体製造装置10を構成する各部屋における危険物の濃度の監視を行う。
【0130】
図14は、完成品100Fの製造プロセスと並行して実行される監視プロセスを説明するためのフローチャートである。なお、これらの制御も、制御装置80が実行する。
【0131】
構造体製造装置10を用いた完成品100Fの製造作業が開始されると(ステップ110)、全体制御部801は、まず、待機室11に設置された待機室内濃度計測部11bが計測した、待機室危険物濃度C1を取得する(ステップ120)。続いて、全体制御部801は、ステップ120で取得した待機室危険物濃度C1が、予め定められた基準値である、基準濃度C0以上となっているか否か(C1≧C0)を判断する(ステップ130)。ステップ130で肯定の判断(Yes)を行った場合は、後述するステップ220へと進む。
【0132】
一方、ステップ130で否定の判断(No)を行った場合、全体制御部801は、次に、積層室12に設置された積層室内濃度計測部12bが計測した、積層室危険物濃度C2を取得する(ステップ140)。続いて、全体制御部801は、ステップ140で取得した積層室危険物濃度C2が、上述した基準濃度C0以上となっているか否か(C2≧C0)を判断する(ステップ150)。ステップ150で肯定の判断(Yes)を行った場合は、後述するステップ220へと進む。
【0133】
一方、ステップ150で否定の判断(No)を行った場合、全体制御部801は、次に、加工室13に設置された加工室内濃度計測部13bが計測した、加工室危険物濃度C3を取得する(ステップ160)。続いて、全体制御部801は、ステップ160で取得した加工室危険物濃度C3が、上述した基準濃度C0以上となっているか否か(C3≧C0)を判断する(ステップ170)。ステップ170で肯定の判断(Yes)を行った場合は、後述するステップ220へと進む。
【0134】
一方、ステップ170で否定の判断(No)を行った場合、全体制御部801は、次に、検査室14に設置された検査室内濃度計測部14bが計測した、検査室危険物濃度C4を取得する(ステップ180)。続いて、全体制御部801は、ステップ180で取得した検査室危険物濃度C4が、上述した基準濃度C0以上となっているか否か(C4≧C0)を判断する(ステップ190)。ステップ190で肯定の判断(Yes)を行った場合は、後述するステップ220へと進む。
【0135】
これに対し、ステップ190で否定の判断(No)を行った場合、全体制御部801は、構造体製造装置10を用いた100Fの製造作業が終了したか否かを判断する(ステップ200)。ステップ200で否定の判断(No)を行った場合は、ステップ120に戻って処理を続行する。
【0136】
一方、ステップ200で肯定の判断(Yes)を行った場合、全体制御部801は、金属積層造形システム1を構成する各部の動作を通常停止させる、『製造作業通常停止動作』を実行する(ステップ210)。このとき、全体制御部801は、積層制御部802を介して積層造形装置12aの動作を通常停止させ、加工制御部803を介して加工装置13aの動作を通常停止させ、検査制御部804を介して検査装置14aの動作を通常停止させる。また、このとき、全体制御部801は、開閉制御部805を介して、外部シャッタ20および第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24の動作を通常停止させ、搬送制御部806を介して架台搬送装置60の動作を通常停止させる。ただし、完成品100Fの製造作業が終了した状態(ステップ200で肯定の判断がなされた状態)において、これら積層造形装置12a、加工装置13a、検査装置14aおよび架台搬送装置60は、上述したように、既にそれぞれの動作を停止している。また、製品の製造作業が終了した状態において、外部シャッタ20および第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24も、上述したように、既にそれぞれの動作を停止しており、これらはすべてが閉扉状態となっている。
【0137】
他方、上記ステップ130、上記ステップ150、上記ステップ170および上記ステップ190のいずれかにおいて否定の判断(No)を行った場合、全体制御部801は、金属積層造形システム1を構成する各部の動作を緊急停止させる、『製造作業緊急停止動作』を実行する(ステップ220)。このとき、全体制御部801は、積層制御部802を介して積層造形装置12aの動作を緊急停止させ、加工制御部803を介して加工装置13aの動作を緊急停止させ、検査制御部804を介して検査装置14aの動作を緊急停止させる。また、このとき、全体制御部801は、開閉制御部805を介して、外部シャッタ20および第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24の動作を通常停止させ、搬送制御部806を介して架台搬送装置60の動作を通常停止させる。ただし、このとき、搬送制御部806は、構造体製造装置10内に存在するすべての架台40が、待機室11、積層室12、加工室13および検査室14のいずれかに収容されるように(2つの部屋に跨がって停止しないように)、架台40の搬送を制御する。また、このとき、搬送制御部806は、1つの部屋に収容される架台40が1台以下となるように(1つの部屋に複数の架台40が設置されないように)、架台40の搬送を制御する。また、このとき、開閉制御部805は、外部シャッタ20および第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24のすべてが閉扉状態となってから停止するように、外部シャッタ20および第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24の動作を制御する。また、このとき、開閉制御部805は、構造体製造装置10内に存在するすべての架台40が停止してから(2つ部屋に跨がっている架台40が存在しなくなってから)、外部シャッタ20および第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24のすべてを閉扉状態へと移行させる。
【0138】
このようにすることで、本実施の形態の金属積層造形システム1では、構造体製造装置10を構成する各部屋での粉じん爆発等の災害の発生を抑制することができる。また、製造作業緊急停止動作の実行に伴って、緊急停止後には、構造体製造装置10を構成する各部屋を個別に仕切った状態とすることができるため、緊急停止時の危険性をより低下させることが可能になる。
【0139】
[その他]
なお、本実施の形態の説明においては、金属粉を危険物として監視する場合を例として説明を行ったが、これに限られるものではない。
例えば、構造体製造装置10内で、水素ガス等の可燃性ガスを使用するような場合には、各濃度計測部が、可燃性ガスの濃度を計測するようにし、制御装置80が、可燃性ガスの濃度の計測結果に基づき、金属積層造形システム1の動作を監視するようにしてもよい。
また、例えば、構造体製造装置10のうちの加工室13において、切削油を用いた切削加工を施すような場合にあっては、各濃度計測部が、切削油の濃度を計測するようにし、制御装置80が、切削油の濃度の計測結果に基づき、金属積層造形システム1の動作を監視するようにしてもよい。なお、このような構成を採用する場合にあっては、加工室13内で、切削油を用いた切削加工を施す工程を実行した後、被加工物に付着した切削油を除去する工程を設けることが望ましい。
【0140】
また、本実施の形態では、濃度監視において基準となる基準濃度C0を、一律に設定していたが、これに限られるものではない。
例えば、待機室11や検査室14に比べて金属粉が発生しやすい積層室12や加工室13における基準濃度を、待機室11や検査室14における基準濃度と異ならせる(例えば低くする)ようにしてもかまわない。
【0141】
また、本実施の形態では、構造体製造装置10を構成する待機室11、積層室12、加工室13および検査室14のうち、待機室11だけに、外部と接続するための外部シャッタ20を取り付けていたが、これに限られるものではない。
例えば、待機室11、積層室12、加工室13および検査室14のすべてに、外部シャッタ20を取り付けるようにしてもかまわない。このような構成を採用した場合は、例えば上述した製造作業緊急停止動作が実行された場合に、緊急停止の原因となった、危険物濃度が基準濃度C0以上となった部屋に対し、構造体製造装置10の外部から直接に入室することが可能になる。
【0142】
また、本実施の形態では、積層室12において、母材100上に複数のビード121を積層してなる積層造形物120を形成することで半製品100Sを製造し、検査室14において、得られた半製品100Sに対する検査(半製品検査)を行うようにしていたが、これに限られるものではない。
例えば、積層室12において、母材100上に1層目のビード121(1)を積層し、積層室12から移動させた検査室14において、母材100上の1層目のビード121(1)の検査を行い、問題がなければ、検査室14から移動させた積層室12において、1層目のビード121(1)上に2層目のビード121(2)を積層する、というプロセスを採用してもよい。一方、問題があった場合は、検査室14から移動させた加工室13において、この1層目のビード121(1)を切断し、加工室13から移動させた積層室12において、母材100上に再度1層目のビード121(1)を積層する、というプロセスを採用してもよい。
【0143】
また、本実施の形態では、構造体製造装置10を構成する4つの部屋(待機室11、積層室12、加工室13および検査室14)を一体的に配置していたが、これに限られるものではない。
例えば、これら待機室11、積層室12、加工室13および検査室14を、互いに、外部空間を隔てて配置するようにしてもかまわない。
【0144】
また、本実施の形態では、金属積層造形システム1を用い、2つの完成品100Fを並行して同じプロセスで製造するようにしていたが、これに限られるものではない。
例えば、1番目の完成品100Fについては、上述した手順すなわち、「搬入」→「積層」→「半製品の検査」→「加工」→「完成品の検査」→「搬出」の手順で製造を行い、これに続く2番目の完成品100Fについては、「搬入」→「積層」→「加工」→「搬出」の順で製造を行うようにしてもかまわない。ここで、1番目の完成品100Fの製造においては、「半製品の検査」および「完成品の検査」のそれぞれにおいて、検査記録を残しておき、「半製品の検査」の記録を、2番目の完成品100Fの「積層」プロセスに反映させ、「完成品の検査」の記録を、2番目の完成品100Fの「加工」プロセスに反映させるようにすればよい。
【0145】
また、本実施の形態では、金属積層造形システム1を構成する構造体製造装置10を、図3に示すような構成としていたが、これに限られるものではない。
【0146】
(第1の変形例)
まず、本実施の形態では、構造体製造装置10を構成する4つの部屋を、図3において時計回りに、待機室11、積層室12、加工室13および検査室14の順で配置していたが、これに限られるものではない。
【0147】
図15は、構造体製造装置10の第1の変形例を説明するための図である。
ここで、図15(a)は、図3に示したものに対し、加工室13および検査室14の位置を入れ替えたものである。また、図15(b)は、図3に示したものに対し、積層室12および加工室13の位置を入れ替えたものである。さらに、図15(c)は、図3に示したものに対し、積層室12、加工室13および検査室14の位置を入れ替えたものである。
【0148】
これらのような構成を採用した場合にも、本実施の形態で説明したものと略同様な手順にて、半製品100Sの製造および検査と、半製品100Sを用いた完成品100Fの製造および検査を実行することができる。
【0149】
(第2の変形例)
また、本実施の形態では、構造体製造装置10を4つの部屋(待機室11、積層室12、加工室13および検査室14)で構成していたが、これに限られるものではない。
【0150】
図16は、構造体製造装置10の第2の変形例を説明するための図である。
ここで、図16(a)は、構造体製造装置10を、待機室11を除く積層室12、加工室13および検査室14からなる3つの部屋で構成した場合を例示している。この例において、積層室12、加工室13および検査室14は、図中左側から順に一列に並べて配置されている。また、この例では、積層室12に外部シャッタ20および第1内部シャッタ21が取り付けられ、加工室13に第1内部シャッタ21および第2内部シャッタ22が取り付けられ、検査室14に第2内部シャッタ22および他の外部シャッタ30が取り付けられている。このため、図16(a)に示す構造体製造装置10では、例えば、外部から外部シャッタ20を介して、積層室12内に架台40を搬入することができるとともに、検査室14から他の外部シャッタ30を介して、外部に架台40を搬出することができるようになる。
【0151】
また、図16(b)は、構造体製造装置10を、待機室11、積層室12、加工室13および検査室14だけでなく、さらに他の待機室15を加えた5つの部屋で構成した場合を例示している。この例において、待機室11、積層室12、加工室13、検査室14および他の待機室15は、図16(a)に示す例と同じく、図中左側から順に一列に並べて配置されている。また、この例では、検査室14と他の待機室15との間に第4内部シャッタ24が取り付けられ、他の待機室15に他の外部シャッタ30が取り付けられている。このため、図16(b)に示す構造体製造装置10では、例えば、外部から外部シャッタ20を介して、待機室11内に架台40を搬入することができるとともに、他の待機室15から他の外部シャッタ30を介して、外部に架台40を搬出することができるようになる。
【0152】
(第3の変形例)
さらに、本実施の形態では、構造体製造装置10に、積層室12、加工室13および検査室14を、それぞれ1部屋ずつ設けていたが、これに限られるものではない。
【0153】
図17は、構造体製造装置10の第3の変形例を説明するための図である。
ここで、図17(a)は、構造体製造装置10が、2つの積層室(積層室12および他の積層室16)を有している場合を例示している。また、この例では、構造体製造装置10が、さらに他の待機室15を有することで、6つの部屋で構成される場合を例示している。この例において、待機室11、積層室12、加工室13、検査室14、他の待機室15および他の積層室16は、2行×3列の配列となっている。また、この例では、これら6つの部屋を接続可能とするために、第1内部シャッタ21~第4内部シャッタ24に加えて、第5内部シャッタ25、第6内部シャッタ26および第7内部シャッタ27をさらに備えている。さらに、この例では、待機室11に外部シャッタ20が取り付けられるとともに、他の待機室15に他の外部シャッタ30が取り付けられている。
【0154】
また、図17(b)は、構造体製造装置10が、2つの加工室(加工室13および他の加工室17)と、他の待機室15とを有している場合を例示している。この例において、他の加工室17は、図17(a)に示す構造体製造装置10における他の積層室16の位置に配置されている。
【0155】
さらに、図17(c)は、構造体製造装置10が、2つの検査室(検査室14および他の検査室18)と、他の待機室15とを有している場合を例示している。この例において、他の検査室18は、図17(b)に示す構造体製造装置10における他の加工室17の位置に配置されている。
【0156】
これらのような構成を採用した場合、図17(a)に示す例では積層造形動作を、図17(b)に示す例では加工動作を、図17(c)に示す例では検査動作を、それぞれ並行して実行することが可能になり、完成品100Fの生産効率をさらに向上させることが可能になる。
【0157】
そして、これ以上は詳細な説明を行わないが、構造体製造装置10については、少なくとも積層室12、加工室13および検査室14をそれぞれ1室以上備えるものであれば、その部屋数や各部屋の配置等については、適宜設計変更してかまわない。
【符号の説明】
【0158】
1…金属積層造形システム、10…構造体製造装置、11…待機室、11b…待機室内濃度計測部、12…積層室、12a…積層造形装置、12b…積層室内濃度計測部、13…加工室、13a…加工装置、13b…加工室内濃度計測部、14…検査室、14a…検査装置、14b…検査室内濃度計測部、20…外部シャッタ、21…第1内部シャッタ、22…第2内部シャッタ、23…第3内部シャッタ、24…第4内部シャッタ、40…架台、60…架台搬送装置、80…制御装置、100S…半製品、100F…完成品、110…母材、120…積層造形物、121…ビード、130…加工物
図1
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