(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/12 20060101AFI20230119BHJP
G01B 21/22 20060101ALI20230119BHJP
B66C 23/94 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E02F9/12 Z
G01B21/22
B66C23/94 D
(21)【出願番号】P 2019174501
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成尾 直樹
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-074751(JP,A)
【文献】特開平08-072826(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116522(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/12
G01B 21/22
B66C 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
旋回ベアリングを介して前記支持体に旋回可能に支持された旋回体と、
前記支持体に対して前記旋回体を旋回させる旋回機構とを備える作業機械において、
前記旋回機構は、
前記旋回体に支持された旋回モータと、
前記旋回モータの駆動力が伝達されて回転するピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤに噛合したリングギヤと、
周方向に離間した位置で前記リングギヤを前記支持体に固定する複数のボルトと、
前記複数のボルトに対面し得る位置で前記旋回体に支持された近接センサとを備え、
前記近接センサは、前記リングギヤの端面から突出した前記ボルトの頭部を検知して、検知結果を示す検知信号を出力
し、
前記複数のボルトは、
複数の標準ボルトと、
前記頭部の突出量が前記標準ボルトと異なる基準ボルトを含み、
前記近接センサは、前記標準ボルトを検知したときと、前記基準ボルトを検知したときとで、異なる前記検知信号を出力することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
支持体と、
旋回ベアリングを介して前記支持体に旋回可能に支持された旋回体と、
前記支持体に対して前記旋回体を旋回させる旋回機構とを備える作業機械において、
前記旋回機構は、
前記旋回体に支持された旋回モータと、
前記旋回モータの駆動力が伝達されて回転するピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤに噛合したリングギヤと、
周方向に離間した位置で前記リングギヤを前記支持体に固定する複数のボルトと、
前記複数のボルトに対面し得る位置で前記旋回体に支持された近接センサとを備え、
前記近接センサは、前記リングギヤの端面から突出した前記ボルトの頭部を検知して、検知結果を示す検知信号を出力
し、
前記支持体は、
前記リングギヤに対してグリースを供給するために、底壁の前記リングギヤに対面する位置に設けられた給脂口と、
前記給脂口を閉塞するカバーとを備え、
前記近接センサは、前記カバーを貫通する貫通孔に取付けられることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記旋回体を旋回させる操作を受け付けて、旋回方向に応じた操作信号を出力する操作装置と、
前記検知信号に基づいて前記旋回体の旋回量を特定し、前記操作信号に基づいて前記旋回体の旋回方向を特定するコントローラとを備えることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
支持体と、
旋回ベアリングを介して前記支持体に旋回可能に支持された旋回体と、
前記支持体に対して前記旋回体を旋回させる旋回機構とを備える作業機械において、
前記旋回機構は、
前記旋回体に支持された旋回モータと、
前記旋回モータの駆動力が伝達されて回転するピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤに噛合したリングギヤと、
周方向に離間した位置で前記リングギヤを前記支持体に固定する複数のボルトと、
前記複数のボルトに対面し得る位置で前記旋回体に支持された近接センサとを備え、
前記近接センサは、前記リングギヤの端面から突出した前記ボルトの頭部を検知して、検知結果を示す検知信号を出力
し、
前記近接センサは、前記複数のボルトのピッチより狭い間隔で、周方向に離間して配置された第1近接センサ及び第2近接センサを含み、
前記第1近接センサから出力される前記検知信号の数に基づいて前記旋回体の旋回量を特定し、前記第1近接センサ及び前記第2近接センサからの前記検知信号の出力順序に基づいて前記旋回体の旋回方向を特定するコントローラを備えることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回体を備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、管制サーバからの指示に従って動作する作業機械(以下、「情報化施工機」とも表記する。)の開発が進んでいる。情報化施工機では、作業機械の現在の状態(例えば、旋回角)を特定するために、各種センサを搭載する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、旋回角検出機構を備えた作業車両が開示されている。特許文献1に記載の旋回角検出機構は、角度の変化に対応する距離や厚みの角度対応カムを外筒に固定し、内筒に固定されたレーザ変位センサで角度対応カムを検出することによって、旋回位置を把握する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、厚みや距離が異なる複数の角度対応カムを外筒に取り付ける必要がある。そのため、部品点数が多くなると共に、既存の作業機械への取り付けが難しいという課題がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数の増加を抑えつつ、既存の機械への適用が容易な旋回角センサを備えた作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、支持体と、旋回ベアリングを介して前記支持体に旋回可能に支持された旋回体と、前記支持体に対して前記旋回体を旋回させる旋回機構とを備える作業機械において、前記旋回機構は、前記旋回体に支持された旋回モータと、前記旋回モータの駆動力が伝達されて回転するピニオンギヤと、前記ピニオンギヤに噛合したリングギヤと、周方向に離間した位置で前記リングギヤを前記支持体に固定する複数のボルトと、前記複数のボルトに対面し得る位置で前記旋回体に支持された近接センサとを備え、前記近接センサは、前記リングギヤの端面から突出した前記ボルトの頭部を検知して、検知結果を示す検知信号を出力し、前記複数のボルトは、複数の標準ボルトと、前記頭部の突出量が前記標準ボルトと異なる基準ボルトを含み、前記近接センサは、前記標準ボルトを検知したときと、前記基準ボルトを検知したときとで、異なる前記検知信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、旋回体を備える作業機械において、部品点数の増加を抑えつつ、既存の機械への適用が容易な旋回角センサを実現することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る作業車両の代表例である油圧ショベルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る作業車両の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る作業車両の代表例である油圧ショベル1の側面図である。
図2は、下部走行体2の斜視図である。
【0011】
なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。また、作業車両の具体例は油圧ショベル1に限定されず、旋回機構を備える他の装置(例えば、クレーン)などにも本発明を適用することができる。
【0012】
油圧ショベル1は、下部走行体(支持体)2と、下部走行体2に支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2は、左右一対の前輪8fと、左右一対の後輪8rとを備える。前輪8f及び後輪8rは、走行モータ(図示省略)の駆動力が伝達されて回転する。これにより、下部走行体2が走行する。
【0013】
但し、下部走行体2は、装輪式に限定されず、クローラ式であってもよい。また、支持体の具体例は下部走行体2に限定されず、特定の場所に固定された台座などであってもよい。すなわち、本発明の作業機械は、自走可能でなくてもよい。
【0014】
上部旋回体3は、旋回ベアリング9(
図4参照)を介して下部走行体2に旋回可能に支持されている。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5と、旋回フレーム5の前端中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機4と、旋回フレーム5の後部に配置されたカウンタウェイト6と、旋回フレーム5の前方左側に配置されたキャブ(運転席)7と、下部走行体2に対して上部旋回体3を旋回させる旋回機構10(
図3参照)とを主に備える。
【0015】
フロント作業機4は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム4aと、ブーム4aの先端に揺動可能に支持されたアーム4bと、アーム4bの先端に揺動可能に支持されたバケット4cと、ブーム4a、アーム4b、及びバケット4cを駆動させる油圧シリンダ4d、4e、4fとを含む。カウンタウェイト6は、フロント作業機4との重量バランスを取るためのもので、上部旋回体3の後端に取り付けられた重量物である。
【0016】
キャブ7には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。キャブ7の内部には、オペレータが着席するシート(図示省略)と、シートに着席したオペレータが操作する操作装置(ステアリング、ペダル、レバー、スイッチなど)が配置されている。そして、キャブ7に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機4が動作する。
【0017】
操作装置は、上部旋回体3を旋回させる旋回レバー7a(
図5参照)を含む。旋回レバー7aは、上部旋回体3の旋回方向及び旋回速度を指示するオペレータの操作を受け付ける。そして、旋回レバー7aは、オペレータの操作(すなわち、上部旋回体3の旋回方向及び旋回速度)に応じた操作信号を、コントローラ20(
図5参照)に出力する。
【0018】
より詳細には、旋回レバー7aを第1方向に倒伏すると、上部旋回体3が時計回りに旋回する。一方、旋回レバー7aを第1方向と反対の第2方向に倒伏すると、上部旋回体3が反時計回りに旋回する。さらに、旋回レバー7aの倒伏量が大きいほど、上部旋回体3の旋回速度が速くなる。
【0019】
図3は、旋回機構10の斜視図である。
図4は、旋回機構10の要部断面図である。旋回機構10は、オペレータによる旋回レバー7aの操作に従って、下部走行体2に対して上部旋回体3を旋回させる。旋回機構10は、旋回モータ11と、ピニオンギヤ12と、リングギヤ13と、複数のボルト14a、14b(以下、これらを総称して、「ボルト14」と表記する。)と、近接センサ15とを主に備える。
【0020】
旋回モータ11は、上部旋回体3に支持されている。旋回モータ11は、エンジン(図示省略)によって駆動される油圧ポンプ(図示省略)から作動油の供給を受けて正逆回転する。ピニオンギヤ12は、旋回モータ11の駆動軸に連結されている。すなわち、ピニオンギヤ12は、旋回モータ11の駆動力が伝達されて回転する。
【0021】
リングギヤ13は、複数のボルト14によって下部走行体2に固定されている。
図4に示すように、リングギヤ13は、円環形状のリング部13aと、リング部13aの内周面に等間隔に設けられた複数の歯13bとを主に備える。そして、リングギヤ13の複数の歯13bは、ピニオンギヤ12と噛合している。
【0022】
図4に示すように、旋回ベアリング9は、リングギヤ13と旋回フレーム5との間に配置されている。より詳細には、旋回ベアリング9は、リングギヤ13の外周面に固定された内輪9aと、旋回フレーム5に固定された外輪9bと、内輪9a及び外輪9bの間に配置された複数の球9cとを備える転がり軸受である。
【0023】
複数のボルト14は、リングギヤ13を下部走行体2に固定する。
図3及び
図4に示すように、ボルト14は、リングギヤ13の周方向に離間した位置において、リングギヤ13のリング部13aを上下方向に貫通する。そして、ボルト14の頭部は、リング部13aの上側の端面(すなわち、旋回フレーム5に対面する面)から上方に突出している。
【0024】
図3に示すように、ボルト14は、リングギヤ13の周方向に等間隔に配置されている。すなわち、リングギヤ13が36本のボルト14で下部走行体2に固定されている場合、ボルト14は10°間隔で配置されていることになる。但し、ボルト14の具体的な配置は、前述の例に限定されない。
【0025】
図3及び
図4に示すように、ボルト14は、複数の標準ボルト14aと、1つの基準ボルト14bとを含む。基準ボルト14bは、例えば、上部旋回体3が前方を向いた(旋回角=0°)ときに、近接センサ15に対面する位置に配置される。但し、基準ボルト14bの位置及び数は、前述の例に限定されない。他の例として、旋回角=0°、90°、180°、270°の4箇所に、基準ボルト14bが配置されていてもよい。
【0026】
複数の標準ボルト14aの頭部は、リング部13aの端面からの突出量が同一である。一方、基準ボルト14bの頭部は、複数の標準ボルト14aと突出量が異なる。より詳細には、
図4に示すように、基準ボルト14bの突出量は、標準ボルト14aより大きい。換言すれば、基準ボルト14bの頭部は、標準ボルト14aより旋回フレーム5(より詳細には、近接センサ15)に近接している。
【0027】
例えば、リングギヤ13の端面と近接センサ15との距離は30mm程度であり、標準ボルト14aと近接センサ15との距離は20mm程度であり、基準ボルト14bと近接センサ15との距離は10mm程度である。但し、ボルト14の突出量の関係は前述の例に限定されず、標準ボルト14aの頭部が基準ボルト14bより旋回フレーム5に近接していてもよい。
【0028】
なお、本実施形態では、頭部の突出量が異なる2種類のボルト14a、14bでリングギヤ13を固定する例を説明したが、突出量の異なるボルト14の種類は前述の例に限定されない。他の例として、旋回角=0°、90°、180°、270°の4箇所に基準ボルト14bを配置する場合、4つの基準ボルト14bの頭部は互いに突出量が異なっていてもよい。
【0029】
図4に示すように、近接センサ15は、上部旋回体3(より詳細には、旋回フレーム5)に取り付けられて、上部旋回体3と共に回転する。近接センサ15は、リングギヤ13のリング部13aに対面する位置に配置されている。換言すれば、近接センサ15は、複数のボルト14に対面し得る位置に配置されている。油圧ショベル1を平面視したとき、上部旋回体3と共に旋回する近接センサ15の移動軌跡は、複数のボルト14の頭部を結んだ仮想円と重なる。
【0030】
より詳細には、旋回フレーム5の底壁5aには、給脂口5bが設けられている。給脂口5bは、リングギヤ13にグリースを供給するための開口である。給脂口5bは、リングギヤ13に対面する位置に設けられている。また、給脂口5bは、着脱可能なカバー16によって閉塞されている。そして、近接センサ15は、ダブルナット(図示省略)等によって、カバー16を貫通する貫通孔16aに取り付けられている。
【0031】
近接センサ15は、ボルト14の頭部を検知して、検知結果を示す検知信号を出力する。検知信号の出力先は、油圧ショベル1が備えるコントローラ20でもよいし、通信アンテナ31を通じて管制サーバであってもよい。近接センサ15は、例えば、近接する金属(典型的には、ボルト14の頭部)との距離に応じて静電容量が変化する静電容量型のセンサである。但し、近接センサ15は、誘電型であってもよいし、磁気型であってもよい。
【0032】
本実施形態に係る近接センサ15は、隣接するボルト14の間に位置しているとき、検知信号を出力しない。また、近接センサ15は、標準ボルト14aと対面しているとき、第1検知信号を出力する。さらに、近接センサ15は、基準ボルト14bと対面している時、第1検知信号と異なる(例えば、電流値が大きい)第2検知信号を出力する。
【0033】
すなわち、上部旋回体3を旋回させたとき、近接センサ15は、所定の時間間隔毎に第1検知信号を繰り返し出力する。また、近接センサ15は、上部旋回体3が360°回転する間に、第1検知信号を1回(すなわち、上部旋回体3の旋回角度が0°のとき)だけ出力する。
【0034】
図5は、油圧ショベル1のハードウェア構成図である。油圧ショベル1は、コントローラ20を備える。コントローラ20は、旋回レバー7aから出力される操作信号、近接センサ15から出力される検知信号、及び通信アンテナ31通じて管制サーバから受信した管制データに基づいて、旋回モータ11及びディスプレイ32を制御する。
【0035】
通信アンテナ31は、管制サーバとの間で無線通信を行うインタフェースである。コントローラ20は、例えば、通信アンテナ31を通じて管制サーバから管制データを受信し、通信アンテナ31を通じて管制サーバに自車のステータスを送信する。管制データは、油圧ショベル1の動作を管制するためのデータであって、例えば、後述する旋回可能範囲、目標旋回角度などを含む。ディスプレイ32は、キャブ7内に配置されている。ディスプレイ32は、キャブ7に搭乗するオペレータに情報を報知する報知手段の一例である。
【0036】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、及びRAM(Random Access Memory)23を備える。コントローラ20は、ROM22に格納されたプログラムコードをCPU21が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。RAM23は、CPU21がプログラムを実行する際のワークエリアとして用いられる。
【0037】
但し、コントローラ20の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0038】
コントローラ20は、近接センサ15から出力される検知信号と、旋回レバー7aから出力される操作信号とに基づいて、上部旋回体3の旋回角度を特定する。本実施形態に係るコントローラ20は、近接センサ15から出力される検知信号に基づいて上部旋回体3の旋回量を特定し、旋回レバー7aから出力される操作信号に基づいて上部旋回体3の旋回方向を特定する。
【0039】
RAM23は、近接センサ15から出力される第1検知信号の積算値を保持する変数xを記憶している。なお、リングギヤ13は、10°間隔で配置された36本のボルト14で下部走行体2に固定されているものとする。
【0040】
コントローラ20は、旋回レバー7aが第1方向に倒伏されている(すなわち、上部旋回体3が時計回りに旋回している)間、近接センサ15から出力される第1検知信号の数を、変数xに加算する。一方、コントローラ20は、旋回レバー7aが第2方向に倒伏されている(すなわち、上部旋回体3が反時計回りに旋回している)間、近接センサ15から出力される第1検知信号の数を、変数xから減算する。
【0041】
また、コントローラ20は、近接センサ15から第2検知信号が出力されたタイミング(すなわち、旋回角度が0°)で、変数xの値をリセット(0をセット)する。そして、コントローラ20は、変数xの値にボルト14の設置間隔(すなわち、10°)を乗じることによって、上部旋回体3の現在の旋回角度を特定する。さらに、コントローラ20は、特定した旋回角度に基づいて、下記の処理を実行してもよい。
【0042】
一例として、コントローラ20は、特定した旋回角度をディスプレイ32に表示させてもよい。他の例として、コントローラ20は、通信アンテナ31を通じて管制サーバから旋回可能範囲を受信してもよい。そして、コントローラ20は、特定した旋回角度が旋回可能範囲を逸脱しないように、旋回モータ11を停止させてもよい。さらに他の例として、コントローラ20は、通信アンテナ31を通じて管制サーバから受信した目標旋回角度に、特定した旋回角度が一致するように、旋回モータ11を駆動させてもよい。
【0043】
本実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0044】
本実施形態によれば、下部走行体2に対してリングギヤ13を固定するためのボルト14を近接センサ15で検知し、近接センサ15の検知結果に基づいて上部旋回体3の旋回角度を特定する。これにより、部品点数の増加を最小限に抑えつつ、上部旋回体3の旋回角度を特定することができる。また、ボルト14に対面し得る位置に近接センサ15を配置するだけなので、既存の作業機械への適用も容易になる。
【0045】
また、本実施形態によれば、標準ボルト14a及び基準ボルト14bの頭部の突出量を異ならせることによって、上部旋回体3が特定の旋回角度(例えば、0°)に達したことを正確に認識することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、給脂口5bを閉塞するカバー16に近接センサ15を取り付けるので、部品点数の増加を抑制すると共に、既存の作業機械への適用がさらに容易になる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、検知信号に基づいて旋回量を特定し、操作信号に基づいて旋回方向を特定するので、上部旋回体3の旋回角度を正確に特定することができる。但し、上部旋回体3の旋回角度を特定する方法は、前述の例に限定されない。
【0048】
他の例として、油圧ショベル1は、第1近接センサ及び第2近接センサを含んでもよい。第1近接センサ及び第2近接センサの構成は、近接センサ15と同一である。また、第1近接センサ及び第2近接センサは、各々がボルト14に対面し得る位置において、周方向に離間して配置される。さらに、第1近接センサ及び第2近接センサの間隔は、ボルト14のピッチ(例えば、10°間隔)より狭く設定される。
【0049】
そして、コントローラ20は、第1近接センサから出力される検知信号の数に基づいて上部旋回体3の旋回量を特定し、第1近接センサ及び第2近接センサからの検知信号の出力順序に基づいて上部旋回体3の旋回方向を特定する。
【0050】
より詳細には、コントローラ20は、第1近接センサが第2近接センサより先に検知信号を出力している間、第1近接センサから出力される第1検知信号の数を、変数xに加算する。一方、コントローラ20は、第2近接センサが第1近接センサより先に検知信号を出力している間、第1近接センサから出力される第1検知信号の数を、変数xから減算する。変数xの値から上部旋回体3の旋回角度を特定する方法は、前述の例と共通する。
【0051】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 下部走行体
4 フロント作業機
4a ブーム
4b アーム
4c バケット
4d,4e,4f 油圧シリンダ
5 旋回フレーム
5a 底壁
5b 給脂口
6 カウンタウェイト
7 キャブ
8f 前輪
8r 後輪
9 旋回ベアリング
9a 内輪
9b 外輪
9c 球
10 旋回機構
11 旋回モータ
12 ピニオンギヤ
13 リングギヤ
13a リング部
13b 歯
14,14a,14b ボルト
15 近接センサ
16 カバー
16a 貫通孔
20 コントローラ
21 CPU
22 ROM
23 RAM
31 通信アンテナ
32 ディスプレイ