(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ロータリピストン及びシリンダ装置
(51)【国際特許分類】
F01C 3/02 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
F01C3/02 Z
(21)【出願番号】P 2019512284
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(86)【国際出願番号】 GB2017052557
(87)【国際公開番号】W WO2018042195
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-27
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508245563
【氏名又は名称】ロントラ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONTRA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リンジー,スティーブン フランシス
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526850(JP,A)
【文献】国際公開第2010/023487(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/012807(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、固定子と
回転シャッタとを備えたロータリピストン及びシリンダ装置であって、
回転子と
回転シャッタと、
を備え、
前記回転子はピストンを備え、
前記ピストンは第1側と第2側とを備え、
前記第1側は、前記
回転シャッタの
スロットとシールを形成するように配置された作用面を備え、
前記第2側は、前記第1側の実質的に反対側に向けられた側であり、前記第2側は、前記スロット及び/又は固定子とシールを形成するように配置されたシール部分と、前記スロットとシールを形成しないように配置された非シール部分と、を備え
、
前記非シール部分は、前記回転シャッタの前記スロットの表面に対して、シール形成表面も近接して延在する表面も実質的に含まない、
ロータリピストン及びシリンダ装置。
【請求項2】
前記第2側は、中央領域と、前記中央領域の少なくとも一部を囲む周囲領域と、前記回転子と接触せずかつ前記中央領域と前記周囲領域との間に位置する遠位領域と、を含み、
前記シール部分は、前記第2側の前記遠位領域の表面である、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記非シール部分が、近接して延在する関係もシール形成関係も成立されないように、前記
回転シャッタのそれぞれのスロット規定表面から離間される、請求項1
又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記非シール部分が1つ又は複数の開口部を備える、請求項1~
3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2側は、中央領域と、前記中央領域の少なくとも一部を囲む周囲領域と、前記回転子と接触せずかつ前記中央領域と前記周囲領域との間に位置する遠位領域と、を含み、
前記1つ又は複数の開口部が、前記第2側の前記遠位領域に設けられる、請求項
4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2側が、陥凹領域、又はポケット、又は前記ピストンの中空内部容積、又は空隙を規定する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記シール部分が少なくとも部分的に開口部を規定する、請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
前記ピストンは、中空部分を有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第2側が、複数の孔を備える又は多孔質である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2側がハニカム構造を備える、請求項1~
9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
第2側が少なくとも1つの熱交換構造を備える、請求項1~
10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの熱交換構造が、1つ又は複数のリブ又はフィン構造を備える、請求項
11に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの熱交換構造が、前記ピストンに対して冷却効果を実行するように配置される、請求項
11又は
12に記載の装置。
【請求項14】
前記第2側が1つ又は複数の補強構造を備える、請求項1~
13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記1つ又は複数の補強構造が1つ又は複数のリブを備える、請求項
14に記載の装置。
【請求項16】
前記第2側の前記非シール部分が、前記シール部分に対してオフセット又は後退される、請求項1~
15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記第2側は、中央領域と、前記中央領域の少なくとも一部を囲む周囲領域と、前記回転子と接触せずかつ前記中央領域と前記周囲領域との間に位置する遠位領域と、を含み、
前記第2側の前記シール部分が前記第2側の前記周囲領域を含む、請求項1~
16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記第2側は、中央領域と、前記中央領域の周囲から前記中央領域の少なくとも一部を囲む周囲領域と、前記回転子と接触せずかつ前記中央領域と前記周囲領域との間に位置する遠位領域と、を含み、
前記シール部分が前記第2側の前記周囲領域のうちの最も外側にある辺縁部又は辺縁領域を含む、請求項1~
17のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してロータリピストン及びシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリピストン及びシリンダ装置は、様々な形態をとることができ、内燃機関、又は過給機若しくは流体ポンプなどの圧縮機、又は蒸気機関若しくはタービン交換などの膨張機、又は別の形態の容積式装置としてなど、多数の用途に使用されることができる。
【0003】
ロータリピストン及びシリンダ装置は回転子及び固定子を含むと考えることができ、固定子は、少なくとも部分的に環状チャンバ又はシリンダ空間を規定し、回転子は、リング又は環状(断面が凹状)の表面の形態であり得、回転子は、回転子から環状シリンダ空間内に延在する少なくとも1つのピストンを含み、使用時に少なくとも1つのピストンは、固定子に対する回転子の回転時に環状シリンダ空間を通って周方向に移動し、回転子は固定子に対してシールされ、装置はシリンダ空間シャッタをさらに備え、シリンダ空間シャッタは、シャッタが回転可能に取り付けられていることなどにより、シャッタが環状シリンダ空間を仕切る閉位置まで、及びシャッタが少なくとも1つのピストンの通過を許容する開位置まで、固定子に対して移動可能であり、シリンダ空間シャッタはシャッタディスクの形態であり得る。
【0004】
我々は、そのような装置用に改良されたピストンを考案した。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、
回転子と、
回転シャッタと、を備え、
回転子はピストンを備え、
ピストンは第1側と第2側とを備え、
第1側は、シャッタのスロットとシールを形成するように配置され、及びピストンの作用面を備え、
第2側は、第1側の実質的に反対側に向けられた側であり得、第2側は、シャッタスロット及び/又は固定子とシールを形成するように配置されたシール部分と、シャッタスロット及び/又は固定子とシールを形成しないように配置された非シール部分と、を備え得る、 ロータリピストン及びシリンダ装置が提供される。
【0006】
第2側のシール部分は、シャッタスロットの表面、又は固定子の表面、あるいはその両方の組み合わせとシールを形成するように配置された遠位表面部分を備え得る。
【0007】
本文脈において、ピストンとそれぞれの固定子チャンバ規定表面との間の、及びピストンとシャッタのスロット規定表面との間のシールに関して、シールへの言及は、対向する表面間の密な間隔による意図的な流体の漏出経路の許容を含み、必ずしも流体密な構造を形成しない。この範囲内で、シールは、近接して延在する表面又は近接して延在する線又は近接して延在する領域によって達成され得る。シールは、そこを通る流体の伝達を最小化又は制限する対向する表面間のシールギャップによって提供することができる。異なる表面に対応するシールギャップは、異なる組立て及び動作上の要求により、それらのそれぞれの対向する部分に対して異なる隙間を有し得る。
【0008】
非シール部分は、シール部分から離間しているか又はそこから後退している表面を含んでもよく、シール部分は前記第2側の遠位領域を含んでもよい。
【0009】
第2側又は第2側の一部は、シャッタスロットに対して増大した隙間を有すると見なすことができる。
【0010】
第2側の非シール部分は、シャッタのスロットの表面に対して、シール表面も近接して延在する表面も実質的に含まない。非シール部分は、シールを形成することも、領域の近接して延在する線を形成することもないように、固定子/シャッタスロットの対向する表面から十分に離間されてもよい。非シール部分は、(シールを達成するために)幾何学的に理想的な位置又は構成から(少なくとも部分的に)オフセットされていると見なすことができる。オフセットは概ね第1側に向かってもよい。オフセットは均一であってもよく、又はオフセット領域にわたって一様でない又は不均一であってもよい。
【0011】
第2側は反対側と呼ばれることがある。装置が使用される用途に応じて、作用面及び反対面は、それぞれ先行面及び後続面であり得る、又はその逆であり得る。
【0012】
第1側及び第2側は、それぞれピストンの反対側の部分を占めてもよく、従って、回転子の回転の意味に沿って位置決めされてもよい。
【0013】
第1及び第2側は、遠位側方部分を含むと見なすことができる。
【0014】
ピストンは少なくとも部分的に中空であり得る。第2側方部分のかなりの体積部分は、中空であり得るか、又は1つ又は複数の空隙又は陥凹部を含み得る。第1側方部分もまた中空であり得る。
【0015】
第2側の遠位領域は、ピストンの内部空間への開口部を提供し得る。非シール部分は、ピストンの内側の領域への開口部を提供し得るか、又は開口部であり得る。
【0016】
第2側の遠位領域は、開口部又は空隙又は空間に対する周縁又は周辺部を含み得、この遠位領域は表面を含む。表面はかなりの表面寸法を有し、辺縁部、又は鋭い/識別可能な角、又は実質的に無視することができる表面積又は表面の幅/サイズの一部への言及を除外することができる。
【0017】
第2側は開放端側方部分であってもよい。
【0018】
第2側方部分は、主要な反対表面も面も実質的に含まなくてもよい。
【0019】
ピストンの内部容積は、ピストンの主要部分とは異なる材料で形成されたインサートを含み得る。インサートは構造インサートとしてもよい。
【0020】
「ピストン」という用語は、本明細書において、その最も広範な意味で、文脈が認めれば、シリンダ壁に対して移動可能な仕切りを含むように用いられ、そのような仕切りは、一般に相対移動の方向にかなりの厚さを有するものである必要はなく、ブレードの形態とすることができる。仕切りは、かなりの厚さを有するものとすることができるか、又は、中空とすることができる。ピストンはシリンダ空間内に仕切りを形成してもよい。ピストンは使用時に回転子の回転軸の周りを回転するように配置されてもよい。
【0021】
理論上、シャッタは、往復可能であることができるが、特に高速が必要とされる場合には、往復部材の使用を回避することが好ましく、シャッタは、好ましくは1つ又は複数のシャッタディスクを備え、シャッタディスクは、環状シリンダ空間の周方向又は円状に延在するボアと実質的に整列した状態に位置決めされるように配置され、シャッタの開状態において少なくとも1つのピストンがそこを通過することを許容する少なくとも1つの開口部を設けられる。
【0022】
回転子及び固定子は、作動チャンバを規定し得る。作動チャンバを部分的に規定する回転子の表面は、断面が凹状又は湾曲していてもよい。作動チャンバは実質的に環状の形態であってもよい。
【0023】
シャッタはシリンダ空間の実質的に半径方向に延在する仕切りを提示してもよい。
【0024】
シャッタの少なくとも1つの開口部は、シャッタの実質的に半径方向に、及びシャッタに対して設けられてもよい。
【0025】
好ましくは、回転子の回転軸は、シャッタの回転軸に対して非平行である。最も好ましくは、回転子の回転軸は、シャッタの回転軸に対して実質的に直交する。
【0026】
好ましくは、ピストンは、開口部が環状シリンダ空間を通るときに、妨げられることなく、移動するシャッタの開口部を通過するような形状にされる。ピストンは、ピストンが開口部を通るときにシールが形成されるように、ピストンとシャッタの開口部との間に最小限の隙間があるような形状にされてもよい。シールは、ピストンの第1側方部分の表面又は辺縁領域に設けることができる。圧縮機の場合、第1側方部分は先行表面を提供し、膨張器の場合、第1側方部分は後続表面を提供する。いずれの場合においても、第1側方部分はピストンの作用面を備え、それはかなりの作用を及ぼすか又は作動流体によってその上に作用が及ぼされる面である。
【0027】
回転子は、回転子本体及び固定子を相対的に位置決めするために、ピストンとシリンダ壁との間の協働に依拠するよりも、固定子によって回転可能に支持され得る。ロータリピストン及びシリンダ装置が、ピストンが比較的高い摩擦力を生じる好適なピストンリング又はランドによってシリンダと同軸に維持される従来の往復ピストン装置とは異なることが認識されるであろう。
【0028】
回転子は、固定子又は固定子アセンブリによって担持される適切な軸受によって回転可能に支持されてもよい。
【0029】
軸受は、回転子又は固定子のいずれかに接合又は接続される部品間に配置することができる。
【0030】
好ましくは、固定子は少なくとも1つ又はそれ以上のポートを含む。入口流れ用の少なくとも1つのポート、及び出口流れ用の少なくとも1つのポートがあってよい。
【0031】
ポートの少なくとも1つは、シャッタに実質的に隣接し得る。
【0032】
ポートの少なくとも1つは、回転子のポートと協働する弁付きポートを形成するように位置決めされてもよい。
【0033】
好ましくは、シャッタディスクの角速度に対する回転子の角速度の比は1:1であるが、他の比が可能である。
【0034】
装置は、チャンバ規定回転子表面が回転子の回転軸から概ね外側に向けられるか又は面する種類のものであってよい。装置はまた、チャンバ規定回転子表面が回転子の回転軸の方に概ね内側に向けられるか又は面する種類のものであってよい。
【0035】
シャッタは、シリンダ空間の(たった)1つの領域また位置において作動チャンバを通って延在するか又は作動チャンバと交差するように配置することができる。
【0036】
装置及び装置のいずれかの特徴部は、以下の記載中に記載され及び/又は図面中に示される1つ又は複数の構造的又は機能的特性を備えてもよい。
【0037】
ここで本発明の様々な実施形態を以下の図面を参照して単なる例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】ロータリピストン及びシリンダ装置の斜視図である。
【
図2】回転子の回転軸を含む面で取られた、
図1の装置の断面図である。
【
図3】
図1の装置の斜視図であるが、固定子が省かれている。
【
図6】回転子の実施形態の斜視図であり、ピストンのさらなる実施形態を含んでいる。
【
図10a】ピストンの実施形態の斜視図及び断面図を示す。
【
図10b】ピストンの実施形態の斜視図及び断面図を示す。
【
図21a】ロータリピストン及びシリンダ装置のさらなる種類のピストンの斜視図を示す。
【
図21b】ロータリピストン及びシリンダ装置のさらなる種類のピストンの斜視図を示す。
【
図22a】ロータリピストン及びシリンダ装置のさらに別の種類のピストンの斜視図を示す。
【
図22b】ロータリピストン及びシリンダ装置のさらに別の種類のピストンの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1、
図2及び
図3を参照すると、これらは、回転子2、固定子4、及びシャッタディスク3を含むロータリピストン及びシリンダ装置1を示しており、これらは、多くの動作上の外観で使用するように構成することができる。
【0040】
図1及び
図2に部分的に示されているが、表現を容易にするために
図3には示されていない固定子4は、回転子に対して維持されるハウジング又はケーシングなどの構造を備え、回転子の表面2aに面する固定子の表面は、全体的に100として示される環状のシリンダ空間又は作動チャンバを一緒に規定する。
【0041】
固定子4は、内側固定子及び外側固定子と呼ばれ得るものを含む。内側固定子4aは、実質的に円筒形であり、外面4a’を規定する。外側固定子4bは実質的に環状の形をしている。
【0042】
回転子と一体であるか又は回転子に固定され、表面2aから延在するピストン5が設けられている。シャッタディスク3に設けられたスロット3aは、ピストンが妨げられることなく通過することを可能にするような大きさ及び形状である。シャッタディスク3の回転は、トランスミッションアセンブリを介して回転子に連動される。トランスミッションアセンブリは、回転子2及びシャッタ3の回転を同期させる。トランスミッションアセンブリは、歯付きギア150を含む。ギアボックスを含むなどのさらなるギア(図示せず)又は他のトランスミッションが、歯付きギアをシャフト9に接続し、これによりシャッタ3がピストンと同期して回転することが保証される。シャッタの回転と回転子及びピストンの回転とを同期させるための異なる形態/タイプのトランスミッションが可能であることが理解されよう。
【0043】
固定子4はスロットをさらに備え、スロットは、シャッタ3を受け入れ、回転子及び固定子の上述の表面によって規定される環状チャンバ又はシリンダ空間100を分割するために設けられる。外側固定子4bにはポート7が設けられている。他のポートもまた、固定子内に、又はポート7に加えて設けられてもよい。
【0044】
この装置の使用時には、シャッタディスクの円周面30が回転子の表面2aと対向してそれらの間にシールを形成し、それによりシャッタディスクが環状作動チャンバ内で仕切りとして機能的に働くことを可能にする。
【0045】
回転子の表面2aの形状は、回転するシャッタディスクの円周面の少なくとも一部によって規定される。シャッタディスク3は、(環状)チャンバの片側のみを貫通/交差するので、ディスクと回転子の軸は一般に交差しない。
【0046】
シャッタ3は、ピストン5が通過することを可能にするためのシャッタスロット3aを備える。スロット3aは表面13、14、15によって規定される。
【0047】
以下に記載される実施形態では、ピストン構成の有利な特徴について特に言及される。
【0048】
特に
図3を参照すると、回転子2は、皿状の凹状(回転子の軸を含む半径方向平面の断面において)の表面を有する。回転子2は、内側固定子4aの上に嵌合して環状のシリンダ空間100を規定する。回転子2は、流体ポート16を備えている。ポート16は、環状シリンダ空間に対する回転子の反対側のさらなる固定子部分(図示せず)のさらなるポートに対応し、弁付きポートを形成することができる。この実施形態では、そのような固定子部分は、実質的に回転子の半径方向外側にある。あるいは、弁又は出入り口の別の形態が使用されてもよい。
【0049】
使用時には、シャフト9は、回転子へ又は回転子からトルクを伝達するように配置される。
【0050】
ピストン5は、第1側と第2側とを有すると見なすことができ、各側は、回転の意味に関してそれぞれの位置を占め、その点で反対方向を向いていると見なすことができる。ロータリピストン及びシリンダ装置のこの特定の実施形態の文脈において、各側部分は、それぞれ、ピストンの遠位領域を占める先行/前方部分及び後続/後方部分と見なすことができる。以下に記載される実施形態において、ピストンの反対側又は非作用側部分と称され得るもの、並びに、その構造及び構成に特に注意が向けられる。さらに、以下に記載される実施形態に関して、(機能的及び/又は構造的観点から)同じ又は実質的に同じ特徴、又は同等の特徴に言及する場合、同じ参照番号が使用される。
【0051】
ピストン5’を示す
図4a及び
図4bを参照すると、作用側が5bの参照符号で、その反対側が5aの参照符号で示されている。以下に記載される実施形態の特徴をより深く理解するために、
図4a及び
図4bを使用して、シャッタスロットとのシールを有効にするか又は回避する、あるいはシャッタスロットに比較的近接して延在するピストンの側の形状を実証する。側5aの破線は、シャッタ3の開口部のそれぞれのスロット規定表面とシールを形成するように配置された場合のその側の範囲及び構成を示す。明らかなように、反対側は、作用側5bに向かって、そのシール位置からオフセットされている。これは、ピストンがシャッタのスロットを通過するとき、反対側がシャッタスロット3aのそれぞれの表面とシールを形成しないことを意味する。しかしながら、作用側5bは、シャッタスロットを通過するとき、スロットのそれぞれの表面とシールを形成する。
【0052】
反対側のオフセットはしばしば、回転子又はシャッタディスクに取り付けられたいずれかのトランスミッション、又は回転子とシャッタディスクとの間のトランスミッションのバックラッシュ(ギアの歯のバックラッシュ又はベルトの張りなど)によるスロット内でのピストンの捕捉を防ぐために必要な場合がある。
【0053】
例えば、ギアのバックラッシュは振動又はアンロードサイクルの間に一時的にのみ存在し得るが、ピストンとシャッタディスクの間の相対的な動きに余裕がない場合、これらの条件の間に捕捉又は損傷が発生する可能性がある。捕捉が決して起こらないように、ピストンの作用面と反対面との両方で、ピストンとスロットとの間により大きな隙間を単に配置することが可能であるが、これは、大部分の動作条件に対してディスクの作用面とシャッタディスクスロットの各表面との間の隙間がはるかにより大きくなり、漏れを増大させそしてパフォーマンスを低下させることを意味するであろう。
図4に示す実施形態は、バックラッシュを吸収するのに必要な追加の隙間を(オフセット表面5aによって)ピストンの反対面にあるように配置するためのものである。このようにして、ピストンとシャッタディスクとの間のタイミングは、バックラッシュ(これは主に予想される動作バックラッシュであるべきである)の1つの極端に設定することができ、バックラッシュがある地点に存在する場合、それはこの隙間によって吸収することができる。
【0054】
しかしながら、面5aの全体をオフセットすることによって、面5c、5d、5eのシール効果が、ピストン運動の方向において、それらのそれぞれの密接に走るランドのより低い/より短い長さのために減少したことが分かる。これらの面は、反対側の面5a及び5bのようにギアトレインのバックラッシュのために捕捉する可能性が低いので、このシール長さの減少は、相殺する利益/効果を全く有さない。
【0055】
以下の実施形態において、面5c、5d及び5e(又はいずれかの同等に位置決めされた表面)の長いシールランドを維持しながら、同時にシャッタディスクとピストンとの間の捕捉の可能性を低減する方法を我々は考案した。これは、5aの中央領域と比較して、5aの遠位領域の一部又は全部の範囲をより大きくすることによって達成される。中央とは、周辺部分を少なくとも部分的に囲む領域を内側に含む。遠位領域は、好ましくは、回転子表面2aと接触していない側に沿って5aの周囲領域又は周辺領域に近接して位置するものであり得る。これらの領域は、好ましくは、固定子と密接に協働しているものであり、サイクルの一部では、シャッタスロットと密接に協働し得る。
【0056】
この構成の1つの追加の利点は、反対面の中央領域におけるオフセットがバックラッシュを吸収するのに必要な量よりもかなり大きくなり得るために(この部分とシャッタスロットとの間のシールは重要ではない可能性があるため)、この表面を以前の可能性よりも(表面上の所与の点でのオフセットが予想されるバックラッシュと最大許容誤差変動との合計よりも大きい限り)低い許容誤差で製造可能であり、これにより製造コストを削減することができることである。このオフセットはまた、シール性又は漏れの増加に関してさらなる欠点なしに他の特徴をピストンに組み込むことを可能にし得る。
【0057】
以下に記載される全ての実施形態において、ピストンの反対側の少なくとも一部は、例えば、それを実行するのにその幾何学的に理想的な位置からオフセットされて形成されることによって、シャッタのスロットとシールを形成することも比較的それに近接して延在することもないように構成され、ある部分は、シャッタスロットに近接して延在する遠位領域がまた潜在的なシール性の向上を与えるために側方領域又は5c、5d、及び5eなどの表面の少なくとも一部の長さをピストンの移動の方向において増加し得るというさらなる利点を伴って、シャッタスロットに近接して延在するように配置される。
【0058】
図5を参照すると、部分的に中空であり、反対側の表面25aの開口部から延在するピストン25が示されている。反対側からピストンの体積内に延在するポケット又は空隙28が規定される。ピストン25はまた、ピストン5を回転子表面2aに確実に取り付けることを可能にする、止まり穴などの締結具位置決め特徴部である、位置決め特徴部29を備える。面25fは、いったん組み立てられると回転子面2aと実質的に協働するピストンの面である。ポケット付きの反対面(その全周囲表面25c、25d、及び25eの周りにより広い範囲を維持する)は、有利には、ピストンを回転子に接合又は固定するのを容易にする広い表面25fを提供する。反対側の表面25aは、シャッタスロットに近接して延在するように配置され、開口部を空隙28に制限する周縁部を効果的に規定する。明らかに、開口部は、反対側の非シール及び非近接延在部分を形成する。
【0059】
図6に目を向けると、これは変形中空ピストン35を備えた回転子2を示している。図から分かるように、反対側35aには、空隙又は中空38内に延在する開口部が設けられている。ピストン35はさらに、表面35c、35d、及び35eを備え、これらは、内側固定子部分4a及び外側固定子部分4bのそれぞれの表面とシールを形成するように、又は好ましくはそれに近接して延在する構成を形成するように配置されている。
図5と同様に、反対側の表面35aは、シャッタスロットに対してシールを形成するかそれに比較的近接して延在してもよく、空隙38への開口部は非シール部分として機能する。先行の及び全ての以下の図及び実施形態と同様に、近接して延在するは他の表面又は領域と比較した場合の相対的な用語であり、近接して延在する領域又は表面は依然としてその対向する表面に対して実質的な隙間を有し得ることが理解される。
【0060】
図7a及び
図7bにおいて、ピストン45が示され、それは反対面又は反対側45aを含み、さらにピストンの空間エンベロープ内に2つのサブチャンバ又は空隙48a及び48bを規定するリブ46を含む。リブ46は、内側に(すなわち作用面に向かって)一定量オフセットされている。当然のことながら、リブ46の側面は、その側の遠位表面すなわち「最端」表面45aに関して、反対側の段付き背面を提供するものと見なすことができる。中空のピストンのかなりの体積割合は、有利に質量減少を可能にする。この実施形態ではリブは一定量内側にオフセットされているが、リブの複数の部分が可変量によって内側にオフセットされている他の実施形態も可能である。さらに、空隙48a及び48bは、完全に分離されてもよく、又は1つ又は複数の領域で連通するように配置されてもよい。
【0061】
図8a及び
図8bは、
図7a及び
図7bに示すものと幾分類似したピストン55を示し、反対側の表面55aと、特に表面55dへの構造的支持を提供するためのリブ57a及び57bの追加と、を有する。これらのリブとリブ56は一緒になって、ピストンの体積内にポケット又は空隙58a、58a’、58b及び58b’を規定する。
【0062】
図9a及び
図9bは、反対側シール表面65aを有するピストン65を示す。反対側表面には、ピストンの中空内部容積68と連通する、開口部66が設けられている。開口部66は、ピストンの内側に共振空洞を作り出すことができ、それは、装置の作動チャンバ100内(所与の時間に特徴部65a及び66と連通しているチャンバの部分)の圧力脈動(ノイズ)の制御/吸収をもたらす。開口部はまた、有利には強度/剛性への影響を最小限に抑えながら、中空ピストンの質量をさらに減少させる方法を提供し得る。さらに、開口部はまた、ピストンの両側の流体間の熱伝達を増大させる可能性がある。シャッタスロットは開口部66とシールを形成しないことは理解されるだろう。
【0063】
図10a及び
図10bは、後方シール表面75aと、仕切り76によって分離された空隙78a及び78bと、を含むピストン75を示す。後方シール表面75aは、空隙78aへの開口部を囲み、その開口部ではシャッタとのシールは形成されない。
図10bに見られるように、いったん組み立てられると回転子表面2aに面する表面75fは部分76’によって部分的に形成される。76’を設けることで、ピストンが機械的締結具ではなく(回転子の表面2aに対する表面75fの)ろう付け又は接着剤又は他の同様の接合方法によって回転子に取り付けられる場合、高度な接合強度を達成するために広い領域を有利に提供する。このようにして、表面75aの大部分が存在しないことに起因する捕捉の可能性を減少させながら、広い接合領域が達成されたことが分かる。
図5と比較して、仕切り76の存在により、より堅いピストンが達成される。
【0064】
図11a及び
図11bは、多孔質(ここではハニカム型構造によって表される)内部82を有するピストン85を示す。多孔は取り付け面85fまで延在するように示される。ピストン85は反対側表面85aを有する。「切り欠き」又は陥凹領域88が多孔質内部部分に隣接して設けられ、シール表面85aから後退又はオフセットされている。これは、それぞれ中空ピストン及び中実ピストンと比較して優れた剛性及び低い質量を提供する。多孔特徴部は、鋳造品へのインサートによって、又は純粋に鋳造法によって作製することができ、あるいは鋳造後に機械加工することができる。多孔特徴部は一様に分布している必要はない。多孔性はピストン内のさらなる空隙として考えることができる。
【0065】
図12a及び
図12bは、シャッタスロットとシールを形成するか又はシャッタスロットに比較的接近して延在するように配置された反対表面95aを有する主反対面を実質的に含まないと考えられ得るピストン95を示す。これは、リブ46がこの実施形態から本質的に省略されている
図7a及び
図7bに示されている実施形態と比較すると最もよく理解される。リブの後方表面はピストンの(オフセットされた)反対表面を提供した。これにより、本実施形態では、大きな空隙98が形成される。ピストン95は、大幅な質量減少と簡単な機械加工を提供する。
【0066】
図13a及び
図13bは、構造リブ107及び反対表面105aを備える、
図12a及び
図12bに示されるピストンの変形実施形態105を示す。リブ107は、サブチャンバ108a及び108bを規定する補助となる。これは、ピストンの剛性を高め、そしてピストンがより大きな負荷を受けるときに必要とされ得るような追加の位置決め特徴部109のための追加のスペースを提供する。これは可能な実施形態のほんの一例であり、代替実施形態ではさらなるリブ又はボスを使用することができる。
【0067】
図14は、
図12a及び
図12bに示されたものの修正バージョンとして考えることができるピストン実施形態115を示す。ピストン115は、ピストンの中空部内に配置され、ピストン内部に保持され得る、方向の急激な変化の周りをモールドが流れるのを助けるためのモールドゲート112a及びリブ112bを含む。加えて、エジェクタピン凹部などの成形副産物が、ピストン内部のキャビティの表面に配置されることができ、同様に、それらはスロット又は固定子の一部と接触する危険がないので、さらなる作業において除去される必要がない(これはコスト及び製造の複雑さを低減する)。あるいは、製造のためにピストンを取り付けるのを助けるため、又はピストン表面若しくは領域を測定するための基準点若しくは特徴部を形成するために、追加の鋳造又は機械加工された特徴部をピストンの中空部118内に配置することができる。
【0068】
図15a及び
図15bは、間隔を置いて配置された複数のフィン127を備えたピストン125を示している。ピストンの遠位の反対シール側面は125aで示されている。フィンは、ピストンを通るピストンの両側の作動流体間の熱伝達を高めるために表面積を有利に増大させる。フィンはまた、チャンバ内の振動を減衰させる効果を有し得る。
【0069】
図16a及び
図16bは、ピストンによって規定された空間138が高剛性構造インサート131を含むピストンを示す。ピストンは、より低いグレードの金属又は材料から鋳造することができ、次いでこれをインサートで補強する。これにより、より剛性の高い材料(これは処理がより高価で複雑になる可能性がある)からピストン全体を製造することの複雑さ及びコストを大幅に低減することができる。インサートは、締結具を使用して取り付けるか、又はろう付け若しくは接着剤を使用して接合することができる。1つ又は複数のインサートを使用することができ、インサートの多くの代替の形状又は形態を採用することができることに留意されたい。
【0070】
図17a及び
図17bは、ピストン145が空間148内に配置されたインサート141を含み、インサートが反対向きの表面を含む同様の概念を示す。インサートは、射出成形プラスチックなど低許容誤差の方法を使用して安価な材料から製造することができ、そして、全体に高精度のプロセスを使用する剛性材料(例えば金属)から製造されるピストンと比較して、より低い質量及びコストで幾何学的に正しい作用面の近似を提供するために使用することができる。インサートを提供する目的は、ピストンの両側の作動流体間の熱伝達を減少させることであり得る。インサート141の反対向きの表面は、ディスクスロットに対する追加の隙間を与えるために表面145aからオフセットされてもよい。
【0071】
図18a及び
図18bは、ハニカム又は多孔質インサート151がピストンの内部に規定された空間158内に取り付けられている同様の線に沿ったさらなる実施形態155を示す。インサートは、追加の剛性を提供してもよく、あるいは単に空隙158の容積を減少させる目的のために、又は追加の振動吸収のために含まれてもよい。
【0072】
図19a及び
図19bは、センサ手段161がピストンの中空容積168の内側に含まれるピストン実施形態165を示す。ピストンの反対側の部分は実質的に開いているので、センサはチャンバ内の流体にアクセスでき、例えば圧力、温度、湿度又は汚染を監視するために使用することができる。センサは、カメラを使用して外部から観察することができる受動的な感熱塗料であり得る。センサはさらに、電池、外部源からの誘導電力伝送、それを横切る温度勾配、振動、又は別の方法などの様々な電源によって電力供給され得る能動電子モジュール又はデバイスであり得る。他の感知手段もまた使用され得る。
【0073】
図20a及び
図20bはピストン175を示し、これは
図7a及び
図7bのピストン45の変形と考えることができる。この事例では、後方表面175aの遠位領域のさらなる部分は凹まされているか又はオフセットされている。結果として生じるより短い表面175dにわたるシーリング効果は低減されるが、この表面に対するその影響は、表面175c及び175eよりも低い可能性がある。このようにして、全長表面165c及び175e上のシール効果を依然として利用することができる一方で、さらなる質量減少を可能にすることができる。代替の実施形態では、後方表面175aの遠位領域のさらなる部分を凹ませるか又はオフセットさせることができ、それによって、175c及び/又は175eの一部又は全部のシール表面が減少する可能性がある。
【0074】
図21a及び
図21bは、ロータリピストン及びシリンダ装置のさらなる実施形態からのピストン185を示す。これは、本発明がそのような種類のピストンにどのように適用できるかを説明するために使用される。ピストン185は、シャッタスロット及び内側固定子の異なる構成に起因して、より少ない外側表面を有する。第2側方部分は、遠位表面領域185aを含む、第1側方部分の作用面185bとは反対側にあるように依然として規定され得ることが理解されよう。リブ186は、シャッタのそれぞれの表面からの大きな不均一なオフセットを表すように見ることができ、ピストンの剛性を高めるために存在する。締結具位置決め特徴部189は、ピストンの回転子への取り付けを補助するために存在する。
【0075】
図22a及び
図22bは、ロータリピストン及びシリンダ装置のさらに別の実施形態において本発明を具体化したピストン195を示す。ピストンはより細長い形状を有するように見えるが、ピストンの第1側の作用面195bと、ピストンの第2側の遠位に配置された反対面領域195aとを同様の方法で依然識別できることが理解されよう。空隙198は、遠位領域195aによって囲まれている。
【0076】
上の記載から明らかなように、ピストンの反対側が、シャッタとシールを形成することもシャッタに比較的近接して延在することもないようにすること、そしてピストンの内部容積が中空であることを保証する多くの重要な利点がある。特に、反対側が反対側の全ての領域でシャッタスロットと完全にシールを形成する必要も、近接して延在する必要も、部分的にのみシールを形成する必要もないことの実現はピストンの製造を容易にし、及びその要求を緩和したので、他の表面のシール及び又は構造的性能を維持しながら、追加の機能的特徴をピストンに組み込むことができることが実現された。