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特許7213188STINGアゴニストとしての環状ジヌクレオチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】STINGアゴニストとしての環状ジヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/02 20060101AFI20230119BHJP
   A61K 31/7084 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C07H21/02 CSP
A61K31/7084
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/20
A61P1/16
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/20
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019540532
(86)(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2018050497
(87)【国際公開番号】W WO2018138684
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】62/451,285
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/454,131
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,マーク
(72)【発明者】
【氏名】コノリー,ピーター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,ジェームス パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ワン,グアンイ
(72)【発明者】
【氏名】タティコンダ,サンソッシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ベイゲルマン,レオニド
(72)【発明者】
【氏名】ゾン,ミンホン
(72)【発明者】
【氏名】ビグナン,ギルス
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-524593(JP,A)
【文献】特表2018-522914(JP,A)
【文献】特表2020-511420(JP,A)
【文献】特表2020-503303(JP,A)
【文献】特表2020-500862(JP,A)
【文献】国際公開第2016/100261(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 21/02
A61K 31/7084
A61P 43/00
A61P 35/00
A61P 31/12
A61P 31/20
A61P 1/16
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物1~3:
【化1】
からなる群から選択される、合物、
又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくはその医薬的に許容される塩形態。
【請求項2】
請求項1記載の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態と、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、及び医薬的に許容される希釈剤のうちの少なくとも1つとを含む、医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物が、固体の経口投与形態である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、シロップ剤、エリキシル剤又は懸濁剤である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
化合物4~6:
【化2】
からなる群から選択される、合物、
又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくはその医薬的に許容される塩形態。
【請求項6】
請求項に記載の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態と、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、及び医薬的に許容される希釈剤のうちの少なくとも1つとを含む、医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物が、固体の経口投与形態である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物が、シロップ剤、エリキシル剤又は懸濁剤である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
STINGによって調節されるウイルス感染又は癌を治療する方法で用いるための医薬組成物であって、請求項1又は5に記載の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態を含み、前記方法が、前記治療を必要とする対象に治療有効量の前記化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態を投与すること、を含む、医薬組成物。
【請求項10】
ウイルス感染又は癌を治療する方法で用いるための医薬組成物であって、請求項1又は5に記載の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態を含み、前記ウイルス感染又は癌が、STINGのアゴニスト活性によって影響を受けるものであり、前記方法が、前記治療を必要とする対象に治療有効量の前記化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態を投与すること、を含む、医薬組成物。
【請求項11】
癌を治療するためのものである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記癌が、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌及び線維肉腫からなる群から選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
イルス感染を治療するためのものである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ウイルス感染が、B型肝炎である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項2~4及び6~8のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、ウイルス感染、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌及び線維肉腫からなる群から選択される疾患、症候群又は状態を治療する方法で用いるためのものであり、前記方法が、前記治療を必要とする対象に、治療有効量の前記医薬組成物を投与すること、を含む、医薬組成物。
【請求項16】
前記ウイルス感染が、B型肝炎である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ウイルス感染、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌及び線維肉腫からなる群から選択される疾患、症候群又は状態の治療を必要とする対象において前記疾患、症候群又は状態を治療するための医薬を調製するための、請求項1又は5に記載の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態の使用。
【請求項18】
ウイルス感染、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌及び線維肉腫からなる群から選択される疾患、症候群又は状態の治療を必要とする対象において前記疾患、症候群又は状態を治療する方法において使用するための医薬組成物であって、請求項1又は5に記載の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年1月27日に出願された米国特許仮出願第62/451,285号、及び2017年2月3日に出願された米国特許仮出願第62/454,131号に対する優先権を主張するものであり、これらの全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、STING(Stimulator of Interferon Genes;インターフェロン遺伝子刺激因子)のアゴニストであり、STINGタンパク質の調節によって影響を受ける障害の治療に有用な、新規化合物に関する。本発明はまた、かかる化合物のうちの1つ以上を含む医薬組成物、かかる化合物及び組成物の調製プロセス、及び様々な疾患、症候群及び障害を治療するためのかかる化合物又は医薬組成物の使用に関する。本発明は、下流のシグナル伝達経路の活性化に関与していてもよく、更に第2のメッセンジャー及び増殖因子を活性化し、先天性免疫及び適応免疫に関与するインターフェロンの産生に関与し得る。より具体的には、本発明は、限定されないが、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及び抗ウイルス療法を含む種々の感染、疾患、症候群及び障害の治療のための、かかる化合物又は医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
STING(インターフェロン遺伝子刺激因子)は、TMEM173、MITA、MPYS及びERISとしても知られ、細胞内部に位置する膜貫通受容体であり、細胞質核酸の重要なセンサーである(Zhong B,et al.「The Adaptor Protein MITA Links Virus-Sensing Receptors to IRF3 Transcription Factor Activation.」Immunity.2008.vol.29:538-550)。最近の研究により、STINGの生物学と、マウスモデルにおいて堅牢な抗腫瘍活性をもたらす先天性免疫反応を動員する際の役割とが明らかになってきた。STING経路の活性化によって、IRF3(インターフェロン調節因子3)経路によるI型インターフェロン(主にIFN-α及びIFN-β)の産生が誘導される。IRF3の活性化はTBK1によって介在されると考えられており、TBK1は、IRF3を動員及びリン酸化させることにより、核に移行してI型インターフェロン及びその他の遺伝子を転写させ得るIRF3ホモ二量体を形成させる(Liu S,et al.「Phosphorylation of innate immune adaptor proteins MAVS,STING,and TRIF induces IRF3 activation」Science.2015:2630-2637)。TBK1はまた、癌原性転写因子NF-κBを介し活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサーをも活性化させ、これにより炎症促進性サイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-6、TNF-αなど)の産生が誘導される。これに加えて、STINGは、STAT6(シグナル伝達兼転写活性化因子6)を活性化し、ケモカインCCL2、CCL20及びCCL26を含む種々のサイトカインの産生を誘導し(Th2型)、増加させ(IL-12)、又は減少させる(IL-10)(ChenH,et al.「Activation of STAT6 by STING Is Critical for Antiviral Innate Immunity」Cell.2011,vol.14:433-446)。活性化時のSTINGのSer366の直接的なリン酸化もまた、TBK1又はULK1を介して起こることが報告されている(Corrales,L.et al「Direct activation of STING in the tumor microenvironment leads to potent and systemic tumor regression and immunity」Cell Reports,2015,vol.11:1-13;Konno,H.et al.「Cyclic dinucleotides trigger ULK1(ATG1)phosphorylation of STING to prevent sustained innate immune signaling」Cell,2013,vol.155:688-698)。
【0004】
STING(2’,3’)環状グアノシンモノホスフェート-アデノシンモノホスフェート(2’,3’-cGAMP)に結合し、これを活性化させる天然リガンドと、その合成に関与する酵素(cGAS、C6orf150又はMB21D1としても知られている)は、この経路を調節する機会を提供することが解明されている。cGAMPは、STING経路を活性化するための内因性の二次メッセンジャーとして機能する、哺乳動物細胞において産生されるSTINGの高親和性リガンドである。cGAMPは、外因性二本鎖DNAの存在下(例えば、細菌、ウイルス又は原虫の侵入により放出される)、又は哺乳動物の自己DNAの存在下でcGASによって生成する固有の2’,3’結合を有する環状ジヌクレオチドである(Wu et al.,2013;Sun,L.et al.「Cyclic GMP-AMP Synthase Is a Cytosolic DNA Sensor That Activates the Type I Interferon Pathway」Science,2013,vol.339:786-791;Bhat N及びFitzgerald KA.「Recognition of Cytosolic DNA by cGAS and other STING-dependent sensors.」Eur J Immunol.2014 Mar;44(3):634-40)。STING活性化はまた、侵入してきた細菌によって放出される外因性(3’,3)環状ジヌクレオチド(c-ジ-GMP、c-ジ-AMP及び3’3’-cGAMP)の結合によって起こり得る(Zhang X,et al.「Cyclic GMP-AMP Containing Mixed Phosphodiester Linkages Is An EndogenousHigh-Affinity Ligand for STING」Molecular Cell,2013,vol.51:226-235;Danilchanka,O及びMekalanos,JJ.「Cyclic Dinucleotides and the Innate Immune Response」Cell.2013.vol.154:962-970)。
【0005】
STING経路の活性化は、特異的なキラーT細胞を生成する免疫応答を引き起こし、このキラーT細胞が、腫瘍を収縮させ、かつ再発しないように長く持続する免疫を与えることができる。前臨床モデルにおいてSTINGアゴニストを用いて得られた顕著な抗腫瘍活性は、この標的について高レベルの興奮を作り出し、STING経路を調節し得る低分子化合物は、癌を治療するのと、自己免疫疾患を減らすのとの両方の可能性がある。
【0006】
STING経路の活性化はまた、抗ウイルス応答にも関与する。細胞又は生物レベルのいずれかでの機能性応答の喪失は、STINGが存在しないとウイルス負荷を制御することができないことを示す。STING経路の活性化が免疫応答のトリガーとなり、その結果、ウイルスに対抗し免疫系の先天性及び適応性のアームを動員する抗ウイルス性及び炎症性サイトカインが得られる。最終的に、長期持続性の免疫が、病原性ウイルスに対して発達する。前臨床モデルにおいてSTINGアゴニストを用いて得られた顕著な抗ウイルス活性は、この標的について高レベルの興奮を作り出し、STING経路を調節し得る低分子化合物は、慢性ウイルス感染(例えばB型肝炎)を治療する可能性がある。
【0007】
慢性肝炎B型ウイルス(HBV)への感染は重要な世界的健康問題であり、世界人口の5%以上が感染している(患者数は全世界で3億5千万人超、米国内では125万人)。ある種のHBVワクチン及び治療が利用可能ではあるが、厄介な慢性HBV感染は、発展途上国の大部分では治療選択肢が最適であるとは言えず、また新規感染率が依然として高いことから、重要な未解決の世界的な医療問題であり続けている。現在の治療は、ウイルスポリメラーゼの阻害剤として作用するインターフェロンα及びヌクレオシド類似体といった2種類の薬剤のみに限定されている。しかしながら、これらの療法の中には疾患を治癒するものはなく、かつ薬物耐性、低有効性、及び忍容性についての課題によりその効果が制限される。HBVの治癒率が低いのは、少なくとも一部では、単一の抗ウイルス剤によりウイルス産生を完全に抑制することが困難であるとの事実に起因する。しかしながら、HBV DNAの持続的な抑制は、肝臓疾患の進行を遅らせ、肝細胞癌の防止につながる。HBV感染患者の現在の治療目標は、血清中のHBVのDNAを低いレベル、又は検出不能なレベルにまで低減させ、最終的には肝硬変及び肝細胞癌の発症を低下又は防止することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ウイルス産生の抑制を高めることができ、HBV感染を治療、寛解、又は予防することができる治療剤が当該技術分野で必要とされている。単独療法として、又は他のHBV治療若しくは補助的治療との併用で、HBV感染した患者に対しかかる治療剤を投与することによって、ウイルス量の大幅な減少、予後の改善、疾患進行の減少、及びセロコンバージョン率の向上がもたらされ得る。
【0009】
先天性免疫及び適応免疫の両方を強化する潜在的な治療効果は、STINGを、それ自体による刺激活性を示し、他の免疫療法と組み合わせることもできる、魅力的な治療標的にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(I)の化合物:
【0011】
【化1】
[式中、R1A、R2A、R1D、R2D、及びR2Eは、各々独立して、当該R1A、R2A、R1D、R2D、及びR2Eうちの1つがメチルであるように、水素又はメチルから選択され、
1Bは、水素、ヒドロキシ、又はフルオロであり、
又は、R1Bは-O-であり、R1DはCHであり、R1Bと、R1Dと、これらが結合する原子とが、5員環を形成し、
1Cは、ヒドロキシ、チオール、及びBH からなる群から選択され、
は、環b1及びb2からなる群から選択され、
【0012】
【化2】
2Bは、ヒドロキシ、フルオロ、及びメトキシからなる群から選択され、
2Cは、ヒドロキシ、チオール及びBH からなる群から選択される]、
又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態に関する。
【0013】
本発明はまた、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、及び/又は医薬的に許容される希釈剤と、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩形態とを含む、それらからなる、及び/又はそれらから本質的になる、医薬組成物も提供する。
【0014】
更に、式(I)の化合物と、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、及び/又は医薬的に許容される希釈剤とを混合すること、を含む、それからなる、及び/又は本質的にそれからなる、医薬組成物を製造するためのプロセスが提供される。
【0015】
本発明は更に、式(I)の化合物を用い、ウイルス感染、疾患、症候群又は状態がSTINGのアゴニスト活性によって影響を受ける、哺乳動物及び/又はヒトを含む対象においてウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療するか、又は寛解させるための方法を提供する。
【0016】
本発明は更に、式(I)の化合物を用い、哺乳動物及び/又はヒトを含む対象においてウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療するか、又は寛解させるための方法を提供する。
【0017】
本発明は更に、式(I)の化合物を用い、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、ウイルス感染、疾患、症候群又は状態がSTINGのアゴニスト活性によって影響を受ける、哺乳動物及び/又はヒトを含む対象においてウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療するか、又は寛解させるための方法を提供する。
【0018】
本発明は更に、式(I)の化合物を用い、哺乳動物及び/又はヒトを含む対象において、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、ウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療するか、又は寛解させるための方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、STINGのアゴニスト活性によって影響を受けるウイルス感染、疾患、症候群又は状態の治療を必要とする対象において当該疾患、症候群又は状態を治療するための医薬が調剤される、医薬の調剤における、本明細書に記載のいずれかの化合物の使用に関する。
【0020】
本発明はまた、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、ウイルス感染、疾患、症候群又は状態の治療を必要とする対象において当該疾患、症候群又は状態を治療するための医薬が調剤される、医薬の調剤における、本明細書に記載のいずれかの化合物の使用に関する。
【0021】
本発明はまた、STINGの選択的なアゴニストとして作用する置換環状ジヌクレオチド誘導体の調製に関する。
【0022】
本発明の例示は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、STINGによって調節されるウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療する方法であって、当該治療を必要とする対象に、治療有効量の上述の化合物又は医薬組成物のいずれかを投与すること、を含む、方法である。
【0023】
本発明の例示は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択されるウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療する方法であって、当該治療を必要とする対象に、治療有効量の上述の化合物又は医薬組成物のいずれかを投与すること、を含む、方法である。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、STINGのアゴニスト活性によって影響を受けるウイルス感染、疾患、症候群又は状態の治療に使用するための、式(I)の化合物に関する。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択されるウイルス感染、疾患、症候群又は状態の治療のための、式(I)の化合物を含む組成物に関する。
【0026】
本発明は、式(II)の化合物式
【0027】
【化3】
[式中、R1Hは、フルオロであり;又は、R1Hは-O-であり、R1JはCHであり、R1Hと、R1Jと、これらが結合する原子とが、5員環を形成し;
1Jは、水素又はメチルであり、
1Kは、ヒドロキシ又はチオールからなる群から選択され、
2Lは、ヒドロキシ及びチオールからなる群から選択される]、
又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態に関する。
【0028】
本発明はまた、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、及び/又は医薬的に許容される希釈剤と、式(II)の化合物又はその医薬的に許容される塩形態とを含む、又はそれらからなる、及び/又はそれらから本質的になる、医薬組成物も提供する。
【0029】
更に、式(II)の化合物と、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、及び/又は医薬的に許容される希釈剤とを混合すること、を含む、それからなる、及び/又は本質的にそれからなる、医薬組成物を製造するためのプロセスが提供される。
【0030】
本発明は更に、式(II)の化合物を用い、ウイルス感染、疾患、症候群又は状態がSTINGのアゴニスト活性によって影響を受ける、哺乳動物及び/又はヒトを含む対象においてウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療するか、又は寛解させるための方法を提供する。
【0031】
本発明は更に、式(II)の化合物を用い、哺乳動物及び/又はヒトを含む対象においてウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療するか、又は寛解させるための方法を提供する。
【0032】
本発明は更に、式(II)の化合物を用い、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、ウイルス感染、疾患、症候群又は状態がSTINGのアゴニスト活性によって影響を受ける、哺乳動物及び/又はヒトを含む対象においてウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療するか、又は寛解させるための方法を提供する。
【0033】
本発明は更に、式(II)の化合物を用い、哺乳動物及び/又はヒトを含む対象において、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、ウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療するか、又は寛解させるための方法を提供する。
【0034】
本発明はまた、STINGの選択的なアゴニストとして作用する式(II)の置換環状ジヌクレオチド誘導体の調製に関する。
【0035】
本発明の例示は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、STINGによって調節されるウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療する方法であって、当該治療を必要とする対象に、治療有効量の式(II)の化合物又はその医薬組成物のいずれかを投与すること、を含む、方法である。
【0036】
本発明の例示は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択されるウイルス感染、疾患、症候群又は状態を治療する方法であって、当該治療を必要とする対象に、治療有効量の式(II)の化合物又はその医薬組成物を投与すること、を含む、方法である。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、STINGのアゴニスト活性によって影響を受けるウイルス感染、疾患、症候群又は状態の治療に使用するための、式(II)の化合物に関する。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択されるウイルス感染、疾患、症候群又は状態の治療のための、式(II)の化合物を含む組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
置換基に関連して用いられる「独立して」という用語は、2個以上の置換基が存在し得る場合に、それらの置換基が互いに同じであっても異なってもよい状況を意味する。
【0040】
単独で用いられるか又は置換基の一部として用いられるかによらず、「アルキル」という用語は、1~8個の炭素原子を有する、直鎖状及び分岐鎖状の炭素鎖を意味する。したがって、指定された炭素原子の数(例えば、C1~8)は、独立して、アルキル部分又はより大きなアルキル含有置換基のアルキル部の炭素原子数を意味する。複数のアルキル基を有する置換基、例えば、(C1~6アルキル)アミノ-において、ジアルキルアミノのC1~6アルキル基は、同じであっても異なってもよい。
【0041】
「アルコキシ」という用語は、「アルキル」という用語を上記で定義されるものとして-O-アルキル基を意味する。
【0042】
「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、2~8個の炭素原子を有する、直鎖状及び分岐鎖状の炭素鎖を意味し、アルケニル鎖は、少なくとも1つの二重結合を含み、アルキニル鎖は、少なくとも1つの三重結合を含む。
【0043】
「シクロアルキル」という用語は、飽和又は部分的に飽和の、単環式又は多環式の、3~14個の炭素原子の炭化水素環を意味する。このような環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びアダマンチルが挙げられる。
【0044】
「ヘテロシクリル」という用語は、少なくとも1つの炭素原子とN、O及びSから独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを含む3~10個の環員を有する非芳香族の単環系又は二環系を意味する。ヘテロシクリルという用語の範囲には、1~2員がNである5~7員の非芳香族環、又は0、1若しくは2員がNであり、2員以下がO若しくはSであり、少なくとも1員がN、O若しくはSのいずれかでなければならない5~7員の非芳香族環が含まれる。環は、所望により、0~1個の不飽和結合を含んでいてよく、環が6又は7員である場合、所望により、2個以下の不飽和結合を含んでいてよい。ヘテロシクリルの環を構成する炭素原子の環員は、完全に飽和していても部分的に飽和していてもよい。「ヘテロシクリル」という用語はまた、架橋されることで二環式環を形成する2個の5員の単環式ヘテロシクロアルキル基も含む。このような基は、完全に芳香族性とはみなされず、ヘテロアリール基とは称されない。ヘテロシクリルが二環式の場合、ヘテロシクリルの両環は、非芳香環であり、かつ、少なくとも一方の環はヘテロ原子の環員を含む。ヘテロシクリル基の例としては、限定するものではないが、ピロリニル(2H-ピロール、2-ピロリニル又は3-ピロリニルを含む)、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、及びピペラジニルが挙げられる。特に断らない限り、ヘテロシクリルは、そのペンダント基と、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子又は炭素原子で結合している。
【0045】
「アリール」という用語は、6~10個の炭素員からなる、不飽和、芳香族性の単環又は二環式環を意味する。アリール環の例としては、フェニル及びナフタレニルが挙げられる。「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子と、N、O及びSからなる群から独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを含む5~10個の環員を有する芳香族性の単環式又は二環式の芳香環系を指す。ヘテロアリールという用語の範囲には、5又は6員の芳香環が含まれ、ただし環は炭素原子からなり、少なくとも1つのヘテロ原子の環員を有する。適切なヘテロ原子としては、窒素、酸素、及び硫黄が挙げられる。5員環の場合、ヘテロアリール環は、好ましくは、1員の窒素、酸素又は硫黄を含み、更に3個以下の更なる窒素を含む。6員環の場合、ヘテロアリール環は、好ましくは1~3個の窒素原子を含む。6員環が3個の窒素原子を有する場合では、最大で2個の窒素原子が隣り合う。ヘテロアリール基の例としては、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル及びキナゾリニルが挙げられる。特に断らない限り、ヘテロアリールは、そのペンダント基と、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子又は炭素原子で結合している。
【0046】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子を指す。
【0047】
「アルキル」若しくは「アリール」という用語又はこれらの接頭辞の語根のいずれかが、置換基の名称中に現れる場合(例えば、アリールアルキル、アルキルアミノ)、名称は、「アルキル」及び「アリール」について上記に与えられた限定を含むものとして解釈されるものとする。指定される炭素原子数(例えば、C~C)は、アルキル部分、アリール部分、又は、アルキルがその接頭辞の語根として現れる、より大きな置換基のアルキル部分の炭素原子数を独立して指す。アルキル及びアルコキシ置換基について、指定される炭素原子数は、指定された所定の範囲内に含まれる全ての独立した構成員を含む。例えば、C1~6アルキルには、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルを個々に含むだけでなく、それらの下位の組み合わせ(例えば、C1~2、C1~3、C1~4、C1~5、C2~6、C3~6、C4~6、C5~6、C2~5など)も含まれる。
【0048】
一般的に、本開示全体で使用される標準的な命名法の規則の下では、指定される側鎖の末端部分が最初に記載され、続けて結合点の方向に隣接する官能基が記載される。したがって、例えば、「C~Cアルキルカルボニル」置換基は下式の基:
【0049】
【化4】
を意味する。
【0050】
立体中心における「R」という用語は、当該技術分野で定義されているように、その立体中心が純粋にR-配置であることを示す。同様に、用語「S」は、純粋にS-配置であることを意味する。本願明細書で使用する場合、立体中心における「R」又は「S」という用語は、その立体中心が純粋なものであるが、どちらの配置であるか不明であることを指定するのに使用される。本願明細書で使用する場合、「RS」という用語は、R-及びS-配置の混合物として存在する立体中心を意味する。同様に、「RS」又は「SR」という用語は、R配置及びS配置の混合物として存在し、その分子内の別の立体中心に関してその配置が不明である立体中心を意味する。
【0051】
1個の立体中心を有する化合物であって、立体化学的結合の指定なしで図示されているものは、2つのエナンチオマーの混合物である。2個の立体中心を有する化合物であって、両方とも立体化学的結合の指定なしで図示されているものは、4つのジアステレオマーの混合物である。「RS」の両方で標識された2個の立体中心を有する化合物であって、立体化学的結合の指定を付して図示されているものは、図示されている相対的な立体化学を有する2成分混合物である。「RS」の両方で標識された2個の立体中心を有する化合物であって、立体化学的結合の指定を付して図示されているものは、相対的な立体化学が不明である2成分混合物である。立体化学的結合の指定なしで図示されている未標識の立体中心は、R-配置とS-配置との混合である。立体化学的結合の指定を付して図示されている未標識の立体中心は、その絶対的な立体化学は図示されたとおりのものである。
【0052】
特に断らない限り、分子内の特定の位置における任意の置換基又はその変形物の定義は、その分子内の他の位置におけるその定義とは独立であることが意図されている。本発明の化合物における置換基及び置換パターンは、化学的に安定であり、かつ当技術分野において周知の技術及び本明細書で説明される方法により容易に合成できる化合物を提供するために、当業者が選択することができると理解される。
【0053】
「対象」という用語は、治療、観察又は試験の対象となっている動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。
【0054】
「治療有効量」という用語は、治療される疾患、症候群、状態又は障害の症状の緩和若しくは部分的緩和を含む、研究者、獣医、医師、又は他の臨床専門家が得ようとする生物学的又は医薬的応答を組織系、動物又はヒトにおいて誘導する、本発明の化合物を含む活性化合物又は医薬品の量を指す。
【0055】
「組成物」という用語は、治療有効量の特定の成分を含む生成物、並びに特定の量の特定の成分の組み合わせから直接又は間接的にもたらされる任意の生成物を意味する。
【0056】
「STINGアゴニスト」という用語は、STINGに結合することによってSTINGに作用し、STING機能に関連する分子の活性化によって特徴付けられる下流のシグナル伝達を誘導する、化合物を包含することを意図している。この用語には、STING、IRF3及び/又はNF-Bの直接リン酸化反応も含まれ、STAT6も含まれ得る。STING経路活性化によって、I型インターフェロン(主にIFN-α及びIFN-β)の産生及びインターフェロン刺激遺伝子の発現が増加する(ChenH,et al.「Activation of STAT6 by STING Is Critical for Antiviral Innate Immunity.」Cell.2011,vol.14:433-446;and Liu S-Y,et al.「Systematic identification of type I and type II interferon-induced antiviral factors」.Proc.Natl.Acad.Sci.2012:vol.109 4239-4244)。
【0057】
「STING調節された」という用語は、限定されないが、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎感染などのウイルス感染、疾患又は状態を含む、STINGによって直接、又はSTING経路を介して影響を受ける状態を指すために用いられる。
【0058】
本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、「STINGによって調節される障害」という用語は、ウイルス感染、疾患、障害又は状態のうち、その特徴的な症状の少なくとも1つがSTINGアゴニストで治療すると緩和するか、又は除去されることを特徴とするものを意味する。好適な例としては、限定されないが、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される場合、特に断らない限り、(STINGのアゴニスト活性により影響を受けるウイルス感染、疾患、症候群、状態又は障害に言及する場合の)「影響する」又は「影響される」という用語は、当該ウイルス感染、疾患、症候群、状態又は障害の1つ以上の症状又は所見の頻度及び/又は重症度の低下を含み、並びに/又は、当該ウイルス感染、疾患、症候群、状態若しくは障害の1つ以上の症状若しくは所見の進行の予防、又は、ウイルス感染、疾患、状態、症候群又は障害の進行の予防を含む。
【0060】
本発明の化合物は、STINGのアゴニスト活性により影響を受けるウイルス感染、疾患、症候群、状態又は障害を治療又は寛解させるための方法に有用である。このような方法は、対象、例えば、このような治療、寛解及び/又は予防を必要とする動物、哺乳類及びヒトに、治療有効量の式(I)若しくは式(II)の化合物又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物若しくは医薬的に許容される塩を投与すること、を含み、それからなり、及び/又は本質的にそれからなる。
【0061】
特に、式(I)及び式(II)の化合物又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物若しくは医薬的に許容される塩形態は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎感染などの疾患、症候群、状態又は障害を治療するか、又は寛解させるのに有用である。
【0062】
より具体的には、式(I)及び式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物、若しくは医薬的に許容される塩形態は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎感染などを治療するか、又は寛解させるのに有用であり、当該治療又は寛解を必要とする対象に、治療有効量の本明細書で定義した式(I)又は式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物、若しくは医薬的に許容される塩形態を投与すること、を含む。
【0063】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、ヘパドナウイルス(Hepadnaviridaee)(例えばB型肝炎ウイルス、すなわちHBV)によって引き起こされる感染を含むウイルス感染を寛解させ、及び/又は治療する方法に関する。この方法は、ウイルス感染症を患っていると特定された対象に、有効量の式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態、又は式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を含む医薬組成物を投与すること、を含んでいてもよい。
【0064】
本明細書に開示される他の実施形態は、ウイルス感染を寛解させ、及び/又は治療する方法であって、ウイルスに感染した細胞と、有効量の本明細書に記載の1種類以上の化合物(例えば、式(I)若しくは式(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態)、又は本明細書に記載の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を含む医薬組成物とを接触させること、を含んでいてもよい、方法に関する。本明細書に記載される更に他の実施形態は、ウイルス感染を寛解させ、及び/又は治療するための医薬の製造において、式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態を使用することに関する。
【0065】
本明細書に記載されるなおも更に他の実施形態は、ウイルス感染を寛解させ、及び/又は治療するために使用可能な、式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態、又は式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を含む医薬組成物に関する。本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、ウイルスの複製を阻害する方法であって、ウイルスに感染した細胞と、有効量の式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態、又は本明細書に記載の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を含む医薬組成物とを接触させること、を含んでいてもよい、方法に関する。
【0066】
本明細書に記載される他の実施形態は、ウイルスの複製を阻害するための医薬の製造において、式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態を使用することに関する。本明細書に記載される更に他の実施形態は、ウイルスの複製を阻害するために使用可能な、本明細書に記載の1種類以上の化合物(例えば、式(I)若しくは式(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態)、又は本明細書に記載の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を含む医薬組成物に関する。
【0067】
いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、B型肝炎ウイルス感染であってもよい。この方法は、HBVを患っていると特定された対象に、有効量の式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態、又は式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を含む医薬組成物を投与すること、を含んでいてもよい。
【0068】
本明細書に開示される他の実施形態は、ウイルス感染を寛解させ、及び/又は治療する方法であって、HBVに感染した細胞と、有効量の式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態、又は式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を含む医薬組成物とを接触させること、を含んでいてもよい、方法に関する。本明細書に記載される更に他の実施形態は、HBVを寛解させ、及び/又は治療するための医薬の製造において、式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を使用することに関する。
【0069】
本明細書に記載されるなおも更に他の実施形態は、HBVを寛解させ、及び/又は治療するために使用可能な、式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態、又は式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を含む医薬組成物に関する。本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、HBVの複製を阻害する方法であって、ウイルスに感染した細胞と、有効量の式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態、又は式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を含む医薬組成物とを接触させること、を含んでいてもよい、方法に関する。
【0070】
本明細書に記載される他の実施形態は、HBVの複製を阻害するための医薬の製造において、式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩を使用することに関する。本明細書に記載される更に他の実施形態は、HBVの複製を阻害するために使用可能な、式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又は式(I)若しくは式(II)の1種類以上の化合物若しくはその医薬的に許容される塩形態を含む医薬組成物に関する。
【0071】
本発明の実施形態は、式(I)の化合物、
【0072】
【化5】
[式中、
AA)R1Bは、ヒドロキシ若しくはフルオロであり、R1Dは水素であり、
BB)R1Bは-O-であり、R1DはCHであり、R1Bと、R1Dと、これらが結合する原子とが、5員環を形成し、
CC)R1Cは、ヒドロキシ及びチオールからなる群から選択され、
DD)Bは環b2であり、
【0073】
【化6】
EE)R2Cは、ヒドロキシ及びチオールからなる群から選択され、
上記の実施形態AA)~EE)の任意の組み合わせは、R1A、R2A、R1D、R2D、及びR2Eのうちの1つがメチルになるようなものであり、ただし、同じ置換基の異なる実施形態が組み合わされる組み合わせが除外されると理解される]、
又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態に関する。
【0074】
本発明の一実施形態は、式(I)の化合物、
【0075】
【化7】
[式中、R1A、R2A、R1D、R2D、及びR2Eは、各々独立して、当該R1A、R2A、R1D、R2D、及びR2Eのうちの1つがメチルとなるように、水素又はメチルから選択され、
1Bは、水素、ヒドロキシ又はフルオロであり、
又は、R1Bは-O-であり、R1DはCHであり、R1Bと、R1Dと、これらが結合する原子とが、5員環を形成し、
1Cは、ヒドロキシ及びチオールからなる群から選択され、
は環b2であり、
【0076】
【化8】
2Bは、ヒドロキシ、フルオロ、及びメトキシからなる群から選択され、
2Cは、ヒドロキシ及びチオールからなる群から選択される]、
又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態に関する。
【0077】
本発明の実施形態は、本明細書に定義される式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物、若しくは医薬的に許容されるその塩形態を含み、本明細書に定義される可変部の1つ以上から選択される置換基(例えば、R1A、R1B、R1C、R1D、B、R2A、R2B、R2C、R2D、及びR2E)は、独立して、以下の表1のリストに例示されるものからの任意の個々の置換基又は任意の置換基のサブセットであるように選択される。
【0078】
【表1】
【0079】
本発明の更なる実施形態は、化合物1~3から選択される式(I)の化合物、
【0080】
【化9】
又はその医薬的に許容される塩形態に関する。
【0081】
本発明の実施形態は、本明細書に定義される式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物、若しくは医薬的に許容されるその塩形態を含み、本明細書に定義される可変部の1つ以上から選択される置換基(例えば、R1H、R1K、R1J、及びR2L)は、独立して、以下の表2のリストに例示されるものからの任意の個々の置換基又は任意の置換基のサブセットであるように選択される。
【0082】
【表2】
【0083】
本発明の更なる実施形態は、式(II)の化合物4~6、
【0084】
【化10】
又はその医薬的に許容される塩形態に関する。
【0085】
医薬における使用に関して、式(I)及び式(II)の化合物の塩は、非毒性の「医薬的に許容される塩」を意味する。ただし、他の塩が、式(I)及び式(II)の化合物又はその医薬的に許容される塩形態の調製に有用である場合がある。式(I)及び式(II)の化合物の適切な医薬的に許容される塩としては、例えば、当該化合物の溶液を、医薬的に許容される酸、例えば、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸又はリン酸の溶液と混合することにより形成され得る酸付加塩が挙げられる。更に、式(I)及び式(II)の化合物が酸性部分を有する場合、その適切な医薬的に許容される塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩又はマグネシウム塩)、及び適切な有機リガンドと形成される塩(例えば、第四級アンモニウム塩)を挙げることができる。すなわち、代表的な医薬的に許容される塩としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カルシウムエデト酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシラート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシネート、ハイドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、パモン酸塩(エンボナート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド、及び吉草酸塩が挙げられる。
【0086】
医薬的に許容される塩の調製に使用することができる代表的な酸及び塩基としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アシル化アミノ酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、(+)-樟脳酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、D-グルクロン酸、L-グルタミン酸、α-オキソ-グルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩化水素酸、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸及びウンデシレン酸を含む酸、並びに、アンモニア、L-アルギニン、ベネタミン(benethamine)、ベンザチン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)-エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチル-グルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、L-リジン、水酸化マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、ピペラジン、水酸化カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン、及び水酸化亜鉛を含む塩基が挙げられる。
【0087】
本発明の実施形態は、式(I)及び式(II)の化合物のプロドラッグを含む。一般的には、このようなプロドラッグは、インビボで必要な化合物へと容易に変換可能な化合物の、機能的誘導体である。したがって、本発明の治療又は予防の方法の実施形態において、「投与すること」という用語には、具体的に開示された化合物による、又は具体的には開示されていない場合もあるが患者への投与後にインビボで特定の化合物へと変換される化合物による、記載された様々な疾患、状態、症候群及び障害の治療又は予防が包含される。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製に関する通常の手順は、例えば、「Design of Prodrugs」,ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985に記載されている。
【0088】
本発明の実施形態に基づく化合物が少なくとも1個のキラル中心を有する場合、それに応じて化合物はエナンチオマーとして存在し得る。化合物が2つ以上のキラル中心を有する場合、ジアステレオマーとして追加的に存在してもよい。かかる異性体及びその混合物は全て、本発明の範囲内に包含されると理解される。更に、化合物の結晶型の中には、多形として存在できるものもあり、そのような多形も本発明に含まれることが意図される。加えて、化合物の中には、水との溶媒和物(すなわち、水和物)又は一般的な有機溶媒との溶媒和物を形成できるものもあり、このような溶媒和物もまた、本発明の範囲に包含されることが意図される。当業者は、本明細書で使用する場合、「化合物」という用語が、式(I)及び式(II)の化合物の溶媒和物を含むことを意味すると理解するであろう。
【0089】
本発明の特定の実施形態に基づく化合物の調製プロセスにより立体異性体の混合物を生じる場合、これらの異性体は、分取クロマトグラフィーなどの従来技術により分離することができる。化合物はラセミ体で調製されてもよく、又は個々のエナンチオマーをエナンチオ選択的合成若しくは分解のいずれかにより調製することもできる。化合物は、例えば、(-)-ジ-p-トルオイル-d-酒石酸及び/又は(+)-ジ-p-トルオイル-l-酒石酸などの光学活性酸と塩を形成させた後に、分別結晶化を行い、遊離塩基を再生させることによりジアステレオマー対を形成させるなどの標準的技術により、それら化合物の成分であるエナンチオマーに分割することができる。化合物はまた、ジアステレオマーのエステル又はアミドを形成した後、クロマトグラフィー分離を行い、キラル補助基を除去することにより、分解することもできる。あるいは、化合物はキラルHPLCカラムを用いて分割してもよい。
【0090】
本発明の一実施形態は、式(I)又は式(II)の化合物の(+)-エナンチオマーを含む、それからなる、及び/又は本質的にそれからなる組成物、例えば、医薬組成物に関し、組成物は、当該化合物の(-)-異性体を実質的に含まない。本文脈において、実質的に含まないとは、下式で算出される(-)-異性体が、約25%未満、好ましくは約10%、より好ましくは約5%、更により好ましくは約2%未満、及び更により好ましくは約1%未満であることを意味する。
【0091】
【数1】
【0092】
本発明の別の実施形態は、式(I)又は式(II)の化合物の(-)-エナンチオマーを含む、それからなる、及び本質的にそれからなる組成物、例えば、医薬組成物であり、当該組成物は、化合物の(+)-異性体を実質的に含まない。本文脈において、実質的に含まないとは、下式で算出される(+)-異性体が、約25%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、更により好ましくは約2%未満、更により好ましくは約1%未満であることを意味する。
【0093】
【数2】
【0094】
本発明の種々の実施形態の化合物を調製するための任意のプロセスの最中、関連する分子のいずれかにおける感受性基又は反応性基を保護することが必要である、及び/又は望ましい場合がある。これは、Protective Groups in Organic Chemistry,Second Edition,J.F.W.McOmie,Plenum Press,1973;T.W.Greene & P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,1991;及びT.W.Greene & P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,John Wiley & Sons,1999などに記載されるような従来の保護基を用いることによって達成され得る。保護基は、その後の好都合な段階において、当該技術分野で周知の方法を用いて除去することができる。
【0095】
本発明の実施形態の化合物(その医薬的に許容される塩及び医薬的に許容される溶媒和物を含む)は単独で投与することができるが、これらの化合物は、一般的には、意図された投与経路及び標準的な製薬学的又は獣医学的な慣行の観点から選ばれ得る、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤及び/又は医薬的に許容される希釈剤との混合物として投与される。このため、本発明の特定の実施形態は、式(I)及び/又は(II)の化合物と、少なくとも1つの医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤及び/又は医薬的に許容される希釈剤とを含む、医薬組成物及び獣医学的組成物に関する。
【0096】
一例として、本発明の実施形態の医薬組成物では、式(I)及び式(II)の化合物は、任意の適切な結合剤、潤滑剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤及びそれらの組み合わせと混合されてもよい。
【0097】
本発明の化合物を含む固体の経口投与形態、例えば、錠剤又はカプセルを、必要に応じて1回につき少なくとも1つの投与形態で投与することができる。持続放出性製剤で化合物を投与することも可能である。
【0098】
本発明の化合物が投与され得る追加の経口形態としては、エリキシル剤、液剤、シロップ剤及び懸濁剤が挙げられる。各々は、任意選択的に香味剤及び着色剤を含有する。
【0099】
あるいは、式(I)及び式(II)の化合物を、吸入(気管内又は経鼻的に)により、又は、坐剤若しくはペッサリーの形態で投与することができ、又は、それらを、ローション、液剤、クリーム、軟膏若しくは散布剤の形態で局所的に適用することができる。例えば、式(I)及び式(II)の化合物は、ポリエチレングリコール又は流動パラフィンの水性エマルジョンを含む、それからなる、及び/又は本質的にそれからなるクリームに添加することができる。式(I)及び式(II)の化合物は、クリームの約1重量%~約10重量%の濃度で、必要に応じて任意の安定剤及び保存剤と共にワックス又は軟パラフィン基剤を含む、それからなる、及び/又はそれから本質的になる軟膏に添加することもできる。投与の代替手段としては、皮膚又は経皮貼付剤を使用することによる経皮投与が挙げられる。
【0100】
本発明の医薬組成物(本発明の化合物単独と同様に)は、非経口的に、例えば、陰茎海綿体内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、又は髄腔内に注入することができる。この場合、組成物はまた、適切な担体、適切な賦形剤、及び適切な希釈剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0101】
非経口投与について、本発明の医薬組成物は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張に保つうえで充分な塩及び単糖を含んでもよい滅菌水溶液の形態で最も良好に使用される。
【0102】
癌の治療のための上述の投与経路に加えて、医薬組成物は、腫瘍内又は腫瘍周囲への注射による投与に適合され得る。このように免疫系を活性化して、離れた部位で腫瘍を死滅させることは、アブスコパル効果として一般的に知られており、多数の治療法を用いて動物において実証されている(van der Jeught,et al.,Oncotarget,2015,6(3),1359-1381)。局所投与又は腫瘍内若しくは腫瘍周囲への投与の更なる利点は、はるかに低用量で同等の有効性を達成し、ひいては高用量の場合に観察され得る有害事象を最小限に抑えるか又は排除するという能力である(Marabelle,A.,et al.,Clinical Cancer Research,2014,20(7),1747-1756)。
【0103】
口腔又は舌下投与では、本発明の医薬組成物を錠剤又はトローチ剤の形態で投与してもよく、これは従来法で製剤することができる。
【0104】
更なる例として、少なくとも1つの式(I)及び式(II)の化合物を活性成分として含む医薬組成物は、従来の医薬配合技術に基づいて、化合物を、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される希釈剤及び/又は医薬的に許容される賦形剤と混合することにより、調製され得る。担体、賦形剤、及び希釈剤は、所望の投与経路(例えば、経口、非経口など)に応じ、広範な形態を取ることができる。したがって、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤及び液剤などの液体経口製剤の場合、適切な担体、賦形剤及び希釈剤としては、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、防腐剤、安定剤、着色剤及びこれらに類するものが挙げられ、散剤、カプセル剤及び錠剤などの固体経口製剤の場合、適切な担体、賦形剤及び希釈剤としては、デンプン、糖類、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤及びこれらに類するものが挙げられる。吸収及び崩壊の主要部位を調節するために、固体経口製剤を糖などの物質で任意選択的にコーティングするか、又は腸溶性コーティングを施すことができる。非経口投与の場合、担体、賦形剤及び希釈剤は、通常、滅菌水を含み、組成物の溶解度及び保存性を高めるために他の成分を添加してもよい。注射用懸濁剤又は液剤はまた、水性担体を、適切な添加剤、例えば、可溶化剤及び保存剤と共に使用して、調剤することもできる。
【0105】
式(I)若しくは式(II)の化合物又はその医薬組成物の治療有効量は、平均的な(70kgの)ヒトについて1日当たり、約1~約4回のレジメンで、約0.01mg~約3000mgの用量範囲、又はこれに含まれる任意の特定の量若しくは範囲、特に、約0.05mg~約1000mg、又はこれに含まれる任意の特定の量若しくは範囲、又は更に特定的には、約0.05mg~約250mg、又はこれに含まれる任意の特定の量若しくは範囲の活性成分を含むが、式(I)若しくは式(II)の化合物の治療有効量は、治療される疾患、症候群、状態及び障害によって異なることが当業者には明らかである。
【0106】
経口投与については、医薬組成物は、好ましくは、約1.0、約10、約50、約100、約150、約200、約250、及び約500mgの式(I)又は式(II)の化合物を含む、錠剤の形態において提供される。
【0107】
有利なことに、式(I)又は式(II)の化合物は、一日量を1回に投与してもよいし、又は、1日あたりの総用量を、2回、3回又は4回に分割した用量で1日のうちに投与してもよい。
【0108】
投与される式(I)又は式(II)の化合物の最適な用量は、容易に決定することができ、使用される具体的な化合物、投与方法、製剤の強度、及び疾患、症候群、状態又は障害の進行によって変化するであろう。加えて、治療される具体的な対象に関連する要因、例えば、対象の性別、年齢、体重、食事及び投与タイミングにより、適切な治療レベル及び所望の治療効果を得るために用量を調節する必要が生じる。したがって、上記の投与量は平均的な場合の例である。当然、これより高いか低い用量範囲が有効である個々の例が存在することができ、これらも本発明の範囲内に含まれる。
【0109】
式(I)及び式(II)の化合物は、式(I)又は式(II)の化合物の使用が、それを必要とする対象に必要とされる場合には、上記組成物及び投与レジメン又は当技術分野で確立された組成物及び投与レジメンのいずれかで投与され得る。
【0110】
STINGタンパク質アゴニストとして、式(I)及び式(II)の化合物は、STINGタンパク質の調節(アゴニスト活性を含む)によってウイルス感染、疾患、症候群、状態又は障害が影響を受ける、動物、哺乳類及びヒトなどの対象における、ウイルス感染、疾患、症候群、状態又は障害を治療又は予防するための方法において有用である。このような方法は、このような処置又は予防を必要とする対象、例えば、動物、哺乳動物及びヒトに治療有効量の式(I)若しくは式(II)の化合物、塩、又は溶媒和物を投与すること、を含み、それからなり、及び/又は本質的にそれからなる。
【0111】
一実施形態では、本発明は、癌、並びに癌疾患及び状態、又はウイルス感染の治療における使用のための、式(I)若しくは式(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態に関する。
【0112】
式(I)若しくは式(II)の化合物又はその医薬的に許容される塩若しくは溶媒和物が有益な抗腫瘍効果を潜在的に有し得る癌疾患及び状態の例としては、限定されるものではないが、肺、骨、膵臓、皮膚、頭部、頸部、子宮、卵巣、胃、結腸、乳房、食道、小腸、腸、内分泌系、甲状腺、副甲状腺、副腎、尿道、前立腺、陰茎、精巣、尿管、膀胱、腎臓又は肝臓の癌、直腸癌、肛門部分の癌、卵管、子宮内膜、子宮頸管、膣、外陰部、腎盂、腎細胞の癌、軟組織の肉腫、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、奇形腫、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、血管腫、肝癌、線維肉腫、軟骨肉腫、骨髄腫、慢性白血病又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、原発性中枢神経リンパ腫、中枢神経系の腫瘍形成、脊髄軸腫瘍、扁平上皮細胞癌、滑膜肉腫、悪性胸骨上皮腫、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、気管支腺腫、軟骨性過誤腫(chondromatous hanlartoma)、中皮腫(inesothelioma)、ホジキン病、又は前述の癌のうちの1つ以上の組み合わせが挙げられる。好適には、本発明は、脳(神経膠腫)、膠芽腫、星状細胞腫、多型性グリオブラストーマ、Bannayan-Zonana症候群、カウデン病、レルミット・ダクロス病、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣腫、髄芽腫、頭頸部、腎臓、肝臓、黒色腫、卵巣、膵臓、腺癌、導管腺癌、腺扁平上皮癌、腺房細胞癌、グルカゴノーマ、インスリノーマ、前立腺、肉腫、骨肉腫、骨の巨細胞腫瘍、甲状腺、リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、形質細胞腫、免疫芽球性大細胞白血病、マントル細胞白血病、多発性骨髄腫、巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫、急性巨核芽球性白血病、前骨髄球性白血病、赤白血病、悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球性T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、神経芽細胞腫、膀胱癌、尿路上皮癌、外陰癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎癌、中皮腫、食道癌、唾液腺癌、肝細胞癌、胃癌、上咽頭癌、口腔癌、口の癌、GIST(消化管間質腫瘍)及び精巣癌からなる群から選択される癌を治療するか、又は重篤度を下げるための方法に関する。
【0113】
別の実施形態では、本発明は、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、線維肉腫及びB型肝炎からなる群から選択される、STINGのアゴニスト活性によって影響を受ける障害の治療に使用するための式(I)又は式(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩形態に関する。
【0114】
開示される式(I)若しくは式(II)の化合物は、HBV感染の治療に有用な1種以上の追加の化合物と併用するのに有用であり得る。これらの追加の化合物は、他の開示される化合物、及び/又はHBV感染の症状又は影響を治療、予防、若しくは低減することが公知である化合物を含み得る。そのような化合物としては、限定されないが、HBVポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、ウイルス侵入阻害剤、ウイルス成熟阻害剤、文献記載のカプシドアセンブリ調節因子、逆転写酵素阻害剤、免疫調節因子、TLR-アゴニスト、及びHBVのライフサイクルに影響を及ぼす、又はHBV感染症の転帰に影響を及ぼす、異なる又は未知の機序を伴う他の薬剤が挙げられる。
【0115】
非限定的な例では、開示される化合物は、次のものを含む群から選択される1つ以上の薬物(又はその塩)と併用され得る:
ラミブジン(3TC、Zeffix、Heptovir、Epivir、及びEpivir-HBV)、エンテカビル(Baraclude、Entavir)、アデフォビルジピボキシル(Hepsara、Preveon、bis-POM PMEA)、テノホビルジソプロキシルフマレート(Viread、TDF又はPMPA)を含むがこれらに限定されないHBV逆転写酵素阻害剤、並びにDNA及びRNAポリメラーゼ阻害剤;
インターフェロンアルファ(IFN-α)、インターフェロンベータ(IFN-β)、インターフェロンラムダ(IFN-λ)、及びインターフェロンガンマ(IFN-γ)を含むがこれらに限定されないインターフェロン;
ウイルス侵入阻害剤;
ウイルス成熟阻害剤;
カプシドアセンブリ調節因子、例えば、限定されないが、BAY41-4109;
逆転写酵素阻害剤;
TLR-アゴニストなどの免疫調節因子;及び
異なる又は未知の機序を伴う薬剤、例えば、限定されないが、AT-61((E)-N-(1-クロロ-3-オキソ-1-フェニル-3-(ピペリジン-1-イル)プロパ-1-エン-2-イル)ベンズアミド)、AT-130((E)-N-(1-ブロモ-1-(2-メトキシフェニル)-3-オキソ-3-(ピペリジン-1-イル)プロパ-1-エン-2-イル)-4-ニトロベンズアミド)及びこれらの類似体。
【0116】
一実施形態では、追加の治療剤はインターフェロンである。「インターフェロン」又は「IFN」という用語は、ウイルス複製及び細胞増殖を阻害し、免疫応答を調節する、高度に相同な種特異的タンパク質のファミリーの任意のメンバーを指す。例えば、ヒトインターフェロンは、インターフェロンアルファ(IFN-α)、インターフェロンベータ(IFN-β)、及びインターフェロンオメガ(IFN-ω)を含むI型、インターフェロンガンマ(IFN-γ)を含むII型、並びにインターフェロンラムダ(IFN-λ)を含むIII型の3つに分類される。開発され、市販されている組換え型のインターフェロンは、本明細書で使用する用語「インターフェロン」により包含される。化学修飾されたインターフェロン又は変異導入されたインターフェロンなどのインターフェロンのサブタイプも、本明細書で使用する用語「インターフェロン」に包含される。化学修飾インターフェロンとしては、ペグ化インターフェロン及びグリコシル化インターフェロンを挙げてよい。インターフェロンの例としては、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファ2b、インターフェロンアルファn1、インターフェロン-ベータ1a、インターフェロンベータ1b、インターフェロンラムダ1、インターフェロンラムダ2、及びインターフェロンラムダ3も挙げられるが、これらに限定されない。ペグ化インターフェロンの例としては、ペグ化インターフェロンアルファ2a及びペグ化インターフェロンアルファ2bが挙げられる。
【0117】
したがって、一実施形態では、式(I)及び式(II)の化合物は、インターフェロンアルファ(IFN-α)、インターフェロンベータ(IFN-β)、インターフェロンラムダ(IFN-λ)及びインターフェロンガンマ(IFN-γ)からなる群から選択されるインターフェロンと併用投与することができる。特定の一実施形態では、インターフェロンは、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファ2b、又はインターフェロンアルファn1である。別の特定の実施形態では、インターフェロンアルファ2a又はインターフェロンアルファ2bはペグ化されている。好ましい実施形態では、インターフェロンアルファ2aはペグ化インターフェロンアルファ2a(PEGASYS)である。別の実施形態では、追加の治療剤は、インターフェロンクラスに属する生物学的薬剤を含む、免疫調節療法又は免疫刺激剤療法から選択される。
【0118】
更に、追加の治療剤は、他の必須ウイルスタンパク質又はHBV複製若しくは持続に要求される宿主タンパク質の機能を破壊する薬剤であってもよい。
【0119】
別の実施形態では、追加の治療剤は、ウイルスの侵入若しくは成熟をブロックする、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチド若しくは非ヌクレオシ(チ)ドポリメラーゼ阻害剤などのHBVポリメラーゼを標的とする抗ウイルス剤である。併用療法の更なる実施形態では、逆転写酵素阻害剤又はDNA若しくはRNAポリメラーゼ阻害剤は、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、ddA、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、エムトリシタビン、エンテカビル、アプリシタビン、アテビラピン、リバビリン、アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、テノホビル、アデフォビル、PMPA、シドフォビル、エファビレンツ、ネビラピン、デラビルジン、又はエトラビリンである。
【0120】
一実施形態では、追加の治療剤は、無関係のウイルスに対して免疫応答の誘導をもたらす、天然の限定された免疫応答を誘導する免疫調節剤である。換言すれば、免疫調節剤は、抗原提示細胞の成熟、T細胞の増殖、及びサイトカイン放出(例えば、とりわけIL-12、IL-18、IFN-α、β、及びγ並びにTNF-α)に影響を及ぼし得る。
【0121】
更なる実施形態では、追加の治療剤は、TLR調節因子又はTLRアゴニスト、例えばTLR-7アゴニスト若しくはTLR-9アゴニストである。併用療法の更なる実施形態において、TLR-7アゴニストは、SM360320(9-ベンジル-8-ヒドロキシ-2-(2-メトキシ-エトキシ)アデニン)及びAZD8848(メチル[3-({[3-(6-アミノ-2-ブトキシ-8-オキソ-7,8-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル)プロピル][3-(4-モルホリニル)プロピル]アミノ}メチル)フェニル]アセテート)からなる群から選択される。
【0122】
本明細書で提供する方法のいずれかにおいて、方法は、少なくとも1つのHBVワクチン、ヌクレオシドHBV阻害剤、インターフェロン、又はそれらの任意の組み合わせを個体に投与すること、を更に含み得る。一実施形態では、HBVワクチンは、RECOMBIVAXHB、ENGERIX-B、ELOVAC B、GENEVAC-B、又はSHANVAC Bのうちの少なくとも1つである。
【0123】
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体、侵入阻害剤、融合阻害剤、及びこれらの又は他の抗ウイルス機序の任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の治療剤を投与すること、を更に含む。
【0124】
別の態様では、治療有効量の開示される化合物を単独で、又は逆転写酵素阻害剤と組み合わせて個体に投与することと、治療有効量のHBVワクチンを個体に更に投与してHBVウイルス負荷を低減させることと、を含む、HBV感染を治療する必要がある個体においてHBV感染を治療する方法を本明細書で提供する。逆転写酵素阻害剤は、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、ddA、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、エムトリシタビン、エンテカビル、アプリシタビン、アテビラピン、リバビリン、アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、テノホビル、アデフォビル、PMPA、シドフォビル、エファビレンツ、ネビラピン、デラビルジン、又はエトラビリンのうち少なくとも1つであり得る。
【0125】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、HBV感染の治療を必要としている個体においてHBV感染を治療する方法であって、治療有効量の開示される化合物を単独で、又は、HBV核酸を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド又はRNA干渉剤と組み合わせて個体に投与することと、治療有効量のHBVワクチンを個体に更に投与することとによって、HBVウイルス負荷を低下させること、を含む、治療方法である。アンチセンスオリゴヌクレオチド又はRNA干渉剤は、ウイルスゲノムの複製、ウイルスRNAの転写、又はウイルスタンパク質の翻訳を阻害するため、標的のHBV核酸に対する十分な相補性を有する。
【0126】
別の実施形態では、開示される化合物と少なくとも1種類の更なる治療薬とは同時配合される。更なる別の実施形態では、開示される化合物と少なくとも1種類の更なる治療薬とは同時投与される。本明細書に記載される任意の併用療法では、適切な方法、例えばSigmoid-Emax式(Holford & Scheiner,19981,Clin.Pharmacokinet.6:429-453)、Loewe加法の式(Loewe & Muischnek,1926,Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114:313-326)、及びメジアン効果式(Chou & Talalay,1984,Adv.Enzyme Regul.22:27-55)などを使用し、相乗効果を計算することができる。上記に挙げた各式に実験データを代入し、対応するグラフを生成して、薬物併用の効果を評価する助けとすることができる。上記の方程式と関連付けられる対応するグラフは、それぞれ濃度-効果曲線、アイソボログラム曲線、及び組み合わせ指標曲線である。
【0127】
本明細書において提供する併用療法を施す方法のいずれかの実施形態では、この方法は、対象のHBVウイルス負荷のモニタリング又は検出を更に含むことができ、方法は、一定期間、例えばHBVウイルスが検出不可となるまで実施される。
【0128】
本明細書、特にスキーム及び実施例で使用される略語は、以下のとおりである。
【0129】
【表3】
【0130】
具体的実施例
【0131】
(実施例1)
【0132】
【化11】
【0133】
【化12】
【0134】
工程1:化合物1bの調製
1a(5g、16.82mmol)のピリジン(100mL)溶液に、tert-ブチルクロロジメチルシラン(16.4g、151.4mmol)を室温で滴下した。1時間後、塩化イソブチリル(5.38g、50.5mmol)を室温で滴下した。最終混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を、水(150mL)を用いて0℃でクエンチし、NHOH(50mL)を0℃で滴下した。10分後、混合物を室温で0.5時間撹拌した。混合物を濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、CHCl:MeOH=10:1)により精製して、1b(3.8g、63.9%)を得た。ESI-MS:m/z=368.0[M+1]
【0135】
工程2:化合物1cの調製
1b(3.7g、10.07mmol)及びDMTrCl(5.12g、15.11mmol)のピリジン(10mL)溶液を、室温で一晩撹拌した。混合物を水(500mL)でクエンチし、CHCl(300mL×3)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過して、濾液を濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、CHCl:MeOH=15:1、R=0.5)により精製して、1c(5.7g、84%)を淡黄色固体として得た。
【0136】
工程3:1eの調製
1c(7.6g、11.35mmol)及びDIPEA(8.80g、68.09mmol)のTHF(30mL)溶液に、3-((クロロ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノ)オキシ)プロパンニトリル1d(8.06g、34.04mmol)を室温で添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、MeOHでクエンチした。混合物をEtOAcで抽出し、合わせた有機層をブラインで2回洗浄した。この有機層をNaSOで乾燥させ、濾過して、濾液を濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(CHCl:MeOH=20:1,R=0.6)により精製して、化合物1e(9.5g,96.23%)を得た。ESI-MS:m/z=787.5[M+1]
【0137】
工程4:化合物1fの調製
1e(9.5g、10.92mmol)及び水(393.464mg、21.84mmol)の乾燥CHCN(38mL)溶液に、ピリジニウムトリフルオロアセテート(2.531g、13.10mmol)を室温で添加した。t-ブチルアミン(38mL)を添加した。得られた混合物を15℃で20分間撹拌した。混合物を濃縮して、1f(8.876g、粗生成物)を白色固体として得た。この粗生成物を、次の工程に直接使用した。
【0138】
工程5:1gの調製
化合物1f(8.876g、10.92mmol)及び水(1.967g、109.2mmol)のCHCl(80mL)溶液に、ジクロロ酢酸(4.72g、36.62mmol)を室温で1.5時間かけて添加した。ピリジン(1.53g、21.84mmol)を添加した。混合物を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、CHCl:MeOH=5:1)により精製して、1g(3.5g、62.79%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)8.27(s,1H),7.28-7.22(m,5H),5.92-5.88(m,1H),5.04-4.99(m,1H),3.99-3.96(m,2H),3.78(m,2H),3.43(s,3H),2.87-2.75(m,1H),1.13-1.12(d,J=6.4Hz,6H);31P NMR(162MHz,DMSO-d6)2.27(s,1P),0.34(s,1P);ESI-MS:m/z=431.9[M+1]
【0139】
工程6:1jの調製
1g(500mg、0.98mmol)及び4Å MS(0.5g)を入れたCHCN(35mL)溶液を室温、アルゴン雰囲気下で3分間撹拌した。イミダゾール過塩素酸塩(3.30g、19.59mmol)を添加した。10分後、CHCN(5mL)中の1h(1g、1.13mmol)を添加した。混合物を26℃で1時間撹拌した。t-ブチルヒドロパーオキシド(0.98mL、4.90mmol)を添加した。得られた混合物を26℃で1時間撹拌した。混合物を濃縮し、残渣を分取HPLCにより精製して、1j(38.5mg、0.04mmol、ESI-MS m/z 930.4(M+1))、及びDMTrカチオンで汚染された1j(1000mg、0.01mmol、0.914%、ESI-MS m/z 930.4(M+1))を白色固体として得た。
【0140】
工程2:1k及び1lの調製
1j(38.5mg、0.041mmol)及びモレキュラーシーブを入れたピリジン(20mL)溶液に、DMOCP(22.93mg、0.124mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温で添加した。混合物を26℃で1時間撹拌した。水(7.46mg、0.414mmol)及びI(52.55mg、0.207mmol)を添加した。反応混合物を26℃で1時間撹拌した。反応をNaSO水溶液でクエンチした。混合物を濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を分取HPLCにより精製して、2l(7.5mg、0.008mmol、ESI-MS m/z 875.3)及び1k(13.5mg、0.015mmol、ESI-MS m/z 927.9(M+1))を白色固体として得た。
【0141】
工程3:化合物4、アンモニウム塩の調製
化合物1l(7.5mg、0.008mmol)を、MeNHのEtOH溶液(33%、3mL)で処理し、室温で1時間撹拌して、化合物4の第1の粗生成物バッチを作製した。
【0142】
化合物1k(13.5mg、0.015mmol)を、MeNHのEtOH(5mL)溶液で処理し、室温で1時間撹拌して、化合物4の第2の粗生成物バッチを作製した。2つの粗生成物バッチを合わせ、濃縮乾固させ、分取HPLCにより精製して、化合物4アンモニウム塩(6.8mg、0.010mmol)を白色固体として得た。H NMR(400MHz,DO)8.14(s,1H),7.92(s,1H),7.69(s,1H),6.03(s,1H),5.77(d,J=8.4Hz,1H),5.60(s,1H),4.81(s,2H),4.32(s,2H),4.19(d,J=10.0Hz,1H),4.08-3.99(m,4H),3.89(d,J=8.8Hz,1H),3.40(s,3H);ESI-MSm/z 701.1(M+1).
【0143】
工程4:化合物4ナトリウム塩の調製
体積8mLのDowex 50W×8,200-400(H形態)をビーカー(6.8mgの化合物4アンモニウム塩用)に添加し、脱イオン水で洗浄した(2回)。次いで、樹脂に15%HSO-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂を、15%HSO-脱イオン水溶液の入ったカラムに移し、15%HSOで洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで脱イオン水で洗浄した。樹脂をビーカーに戻し、15%NaOH-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂をカラムに移し、15%NaOH-脱イオン水溶液で洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで水で洗浄した(少なくとも4CV)。Aを脱イオン水に溶解し(5mL中6.8mg)、カラムの上部に添加し、脱イオン水で溶出させた。TLC(UV)によって検出されるように、化合物4は、初期の画分に溶出した。生成物を凍結乾燥し、化合物4ナトリウム塩(5.6mg、0.008mmol)を得た。H NMR(400MHz,DO)8.14(s,1H),7.89(s,1H),7.76(s,1H),6.04(s,1H),5.84(d,J=8.4Hz,1H),5.76-5.67(m,1H),4.97(d,J=2.8Hz,1H),4.84(s,1H),4.47-4.34(m,2H),4.24(d,J=12.0Hz,1H),4.18(d,J=4.4Hz,1H),4.09(d,J=8.0Hz,3H),3.95(d,J=8.4Hz,1H),3.47(s,3H).31P NMR(162MHz,DO)-1.51,-2.20;ESI-MS m/z 700.8(M+1)。
【0144】
(実施例2)
【0145】
【化13】
【0146】
【化14】
【0147】
工程1:化合物2aの調製
化合物1e(1.2g、1.38mmol)及びHO(0.05mL)のCHCN(7.2mL)溶液に、ピリジニウムトリフルオロアセテート(0.32g、1.66mmol)を25℃で添加した。2分後、TLC(CHCl:MeOH=15:1、R=0.5)が出発物質の消費を示したので、t-ブチルアミン(7.2mL)を添加した。最終混合物を25℃で10分間撹拌した。粗生成物をMeCN(5mL)で濃縮し(3回)、粗化合物2a(粗生成物、1.2g)を白色固体として得た。粗生成物は、精製せずに次の工程に直接使用した。
【0148】
工程2:化合物2bの調製
粗化合物2a(1.2g、1.476mmol、粗生成物)及び水(14.764mmol、0.266mL)のCHCl(10mL)溶液に、ジクロロ酢酸(CHCl中6%、6mL)を25℃で20分間添加した。20分後、ピリジン(233.56mg、2.953mmol)を添加した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を得た。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM/MeOH=100/1~3/1)により精製して、化合物2b(440mg、収率58%)を白色泡状物として得た。ESI-MS:m/z=432.2[M+H]
【0149】
工程3:化合物2e+2fの調製
化合物2b(440mg、0.862mmol)及び4Åモレキュラーシーブ(1g)を入れた乾燥CHCN(10mL)溶液を、窒素下、15℃で10分間撹拌した。10分後、1H-イミダゾール過塩素酸塩(2.70g、16.026mmol)を添加した。混合物を25℃で10分間撹拌した。10分後、化合物2c(981.56mg、1.12mmol)の乾燥CHCN(5mL)溶液を添加した。混合物を25℃で50分間撹拌した。50分後、tert-ブチルヒドロパーオキシド(ヘキサン中5.5M、0.784mL、4.310mmol)を添加した。最終混合物を15℃で1時間撹拌した。混合物を濃縮して残渣を得た後、この残渣を分取HPLC(カラム:Phenomenex Gemini C18 25050 10u;条件:水(10mM NHHCO)-ACN;Bの開始:48;Bの終了:78;流速(mL/分):22)により精製して、化合物2e+2f(120mg、収率15%)を白色固体として得た。ESI-MS:m/z 921.1,460.9[M+H]+。
【0150】
工程4:化合物2g+2hの調製
化合物2e+2f(120mg、0.13mmol)及び4Åモレキュラーシーブ(1g)を入れたピリジン(50mL)溶液に、2-クロロ-5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサホスフィナン2-オキシド(72.242mg、0.391mmol)を25℃で添加した。この溶液を25℃で1時間撹拌した。1時間後、化合物2g+2h(50mL、粗生成物)の溶液を、更に精製せずに次の工程に直接使用した。
【0151】
工程5:化合物2i+2jの調製
化合物2g+2h(50mL、粗生成物)の溶液に水(0.02mL)を添加し、次いで、I(140.7mg、0.556mmol)を25℃で添加した。この溶液を25℃で1時間撹拌した。1時間後、反応液をNaSO(水溶液)でクエンチした。混合物を濾過し、濃縮して残渣を得、これを分取HPLC(カラム:Boston Green ODS 15030 5u;移動相:水(10mM NHHCO)-ACN、流速:25mL/分)により精製して、白色固体として化合物2i(10mg、収率10%)(ESI-MS:m/z 918.2[M+H])と、白色固体として化合物2j(45mg、収率47%)(ESI-MS:m/z 865.2[M+H])と、を得た。
【0152】
工程6:化合物5アンモニウム塩の調製
化合物2j(30mg、0.035mmol)を、MeNHのEtOH溶液(33%、2mL)で処理し、得られた混合物を2時間撹拌した。次いで、溶液を減圧下で濃縮して、白色固体を得て、これを逆相分取HPLC(カラム:Agela Durashell C18 150×25μ 5μM;移動相:水(0.05%アンモニア水酸化物v/v)-ACN、流速:35mL/分)により精製し、化合物5アンモニウム塩(18mg)を白色固体として得た。H NMR(400MHz,DO),8.32(br s,1H),8.17(br s,1H),7.81(br s,1H),6.39(br,d,J=14.1Hz,1H),5.86(br,d,J=8.0Hz,1H),5.72(br,s,1H),5.55-5.32(m,1H),5.15-4.96(m,1H),4.49(br,s,2H),4.38(br s,1H),4.20(br,d,J=19.8Hz,3H),4.07(br,s,1H),3.55(s,3H).ESI-MS:m/z 691.1,345.9[M+H]
【0153】
工程7:化合物5ナトリウム塩の調製
Dowex 50W×8,200-400(H形態、5mL)をビーカー(18mgの化合物5アンモニウム塩用)に添加し、脱イオン水で洗浄した(2回)。次いで、樹脂に15%HSO-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂を、15%HSO-脱イオン水溶液の入ったカラムに移し、15%HSOで洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで脱イオン水で洗浄した。樹脂をビーカーに戻し、15%NaOH水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂をカラムに移し、15%NaOH水溶液で洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで水で洗浄した(少なくとも4CV)。化合物5アンモニウム塩を脱イオン水に溶解し(2mL中18mg)、カラムの上部に添加し、脱イオン水で溶出させた。TLC(UV)によって検出されるように、変換されたナトリウム塩は、初期の画分に溶出した。生成物を凍結乾燥し、化合物5ナトリウム塩(14.8mg、収率77%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz,DO),8.23(br,d,J=6.5Hz,2H),7.82(s,1H),6.42(br,d,J=14.2Hz,1H),5.87(br,d,J=8.4Hz,1H),5.67(br,d,J=4.4Hz,1H),5.59-5.42(m,1H),5.18-5.05(m,1H),4.57-4.50(m,2H),4.46(br,d,J=12.4Hz,1H),4.21(br,s,3H),4.13(br,d,J=12.8Hz,1H),3.55(s,3H);19F NMR(376MHz,DO)-202.946;31P NMR(162MHz,DO)-1.422,-2.618;ESI-MS:m/z 690.8[M+H]
【0154】
バッチ2:
工程6:化合物5アンモニウム塩の調製
化合物2j(15mg、0.017mmol)を、MeNHのEtOH溶液(33%、1mL)で処理し、得られた溶液を5時間撹拌した。5時間後、溶液を減圧下で濃縮して残渣を得、これを逆相分取HPLC(カラム:Agela Durashell C18 150×25 5μM;移動相:水(0.05%アンモニア水酸化物v/v)-ACN、流速:35mL/分)により精製して、化合物5アンモニウム塩(8mg、収率67%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz,DO)8.24(d,J=8.3Hz,2H),7.82(s,1H),6.43(d,J=14.1Hz,1H),5.88(d,J=8.5Hz,1H),5.70-5.64(m,1H),5.59-5.44(m,1H),5.19-5.06(m,1H),4.56-4.50(m,2H),4.47(br,d,J=12.8Hz,1H),4.22(br,d,J=4.0Hz,3H),4.13(br,d,J=12.3Hz,1H),3.55(s,2H),3.58-3.53(m,1H);ESI-MS:m/z 690.8[M+H]
【0155】
工程7:化合物5ナトリウム塩の調製
Dowex 50W×8,200-400(H形態)をビーカー(8mgの化合物5アンモニウム塩用)に添加し、脱イオン水で洗浄した(2回)。次いで、樹脂に15%HSO-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂を、15%HSO-脱イオン水溶液の入ったカラムに移し、15%HSOで洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで脱イオン水で洗浄した。樹脂をビーカーに戻し、15%NaOH水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂をカラムに移し、15%NaOH水溶液で洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで水で洗浄した(少なくとも4CV)。化合物5を脱イオン水に溶解し(2mL中8mg)、カラムの上部に添加し、脱イオン水で溶出させた。TLC(UV)によって検出されるように、変換されたナトリウム塩は、初期の画分に溶出した。生成物を凍結乾燥して、化合物5を得たMHz,DO),8.20(br,d,J=11.0Hz,2H),7.78(s,1H),6.40(br,d,J=14.1Hz,1H),5.85(d,J=8.8Hz,1H),5.62(br,d,J=4.3Hz,1H),5.57-5.41(m,1H),5.16-5.02(m,1H),4.53-4.46(m,2H),4.42(br d,J=13.3Hz,1H),4.18(br,d,J=4.0Hz,3H),4.10(br d,J=9.5Hz,1H),3.51(s,3H).19F NMR(376MHz,DO)-202.954;31P NMR(162MHz,DO)-1.458,-2.582;ESI-MS:m/z=690.8[M+H]+。
【0156】
(実施例3)
【0157】
【化15】
【0158】
【化16】
【0159】
【化17】
【0160】
工程1:化合物3bの調製
化合物3a(50.0g、108.12mmol、1.0当量)のMeCN(500mL)溶液に、IBX(45.413g、162.18mmol、1.5当量)を添加した。混合物を80℃で12時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。混合物を濃縮乾固させて粗化合物3bを得(57.0g、淡黄色油)、それを更に精製せずに次の工程に使用した。
【0161】
工程2:化合物3cの調製
化合物3bを無水トルエンと3回共蒸発させて、水を除去した。次いで、MeMgBr(76mL、228.047mmol、EtO中3M、3.0当量)の溶液を、化合物3b(35g、粗生成物)のTHF(400mL)溶液に-78℃で20分かけて滴下し、得られた混合物を-78℃で約2時間撹拌した。ドライアイス-アセトン冷却浴を外し、混合物をNHCl(300mL)の飽和溶液に撹拌しながら注ぎ入れた。25℃まで加温した後、混合物をEtOAc(500mL)で抽出し、珪藻土で濾過し、ブラインで洗浄した(300mL×3回)。合わせた有機抽出物を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物3c(32g、褐色油)を得て、これを更に精製せずに次の工程に使用した。
【0162】
工程3:化合物3dの調製
化合物3c(32g、粗生成物)、DMAP(16.41g、134.32mmol、2.0当量)、EtN(20.39g、201.48mmol、3.0当量)のCHCl(500mL)溶液に、BzCl(28.32g、201.48mmol、3.0当量)を0℃で添加した。混合物を25℃で12時間撹拌した。反応混合物をCHCl(100mL)で希釈し、次いで飽和NaHCO水溶液(100mL)で洗浄した。水相をCHCl(100mL)で抽出し、合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥するまで蒸発させて、黒色油状物を得た。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/EtOAc=10/1~EtOAc)により精製して、化合物3d(19.0g、収率49%)を白色固体として得た。ESI-MS m/z 603.1(M+Na)
【0163】
工程4:化合物3eの調製
化合物3d及び6-クロロ-9H-プリンを無水トルエンと共蒸発させて(3回)、水を除去した。化合物3d(17.0g、29.281mmol、1.0当量)及び6-クロロ-9H-プリン(9.051g、58.562mmol、2.0当量)を撹拌した乾燥MeCN(300mL)懸濁液に、DBU(26.746g、175.686mmol、6.0当量)を0℃で添加した。混合物を0℃で15分間撹拌した後、TMSOTf(52.064g、234.248mmol、8.0当量)を0℃で滴下した。添加後、透明な溶液が得られるまで、混合物を0℃で15分間撹拌した。次いで、混合物を70℃まで加熱し、12時間撹拌した。反応物を室温まで冷却し、CHCl(200mL)で希釈した。溶液に飽和NaHCO(100mL)を添加し、有機層をブラインで洗浄し(100mL×2回)、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して残渣を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/EtOAc=10/1~5/1)により精製して、化合物3e(15.0g、収率84%)を白色固体として得た。
【0164】
工程5:化合物3fの調製
化合物3d(4.6g、7.504mmol)及びNH(70.0mL、MeOH中7M)を50℃で24時間撹拌した。溶液を減圧下で濃縮し、残渣を得た。溶液を減圧下で濃縮し、残渣を得た。粗生成物をCHCl/MeOH=10/1(30mL)から結晶化させて、化合物3f(収率76%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)8.46(s,1H),8.14(s,1H),7.29(s,2H),5.94(s,1H),5.24(s,3H),4.07(d,J=9.0Hz,1H),3.96-3.78(m,2H),3.69(d,J=10.0Hz,1H),0.76(s,3H).
【0165】
工程6:化合物3gの調製
化合物3f(3.0g、10.666mmol、1.0当量)のピリジン(30.0mL)溶液に、TMSCl(6.953g、63.996mmol、6.0当量)を0℃で添加した。次に、混合物を25℃で2時間撹拌した。反応混合物(Py中0.356M、30mL)を精製せずに次の工程に使用した。
【0166】
BzCl(2.999g、21.332mmol、2.0当量)を溶液に添加した。反応混合物を25℃で12時間撹拌した。この溶液にNH・HO(1.869g、53.33mmol、5.0当量)を加えた後、反応混合物を25℃で3時間撹拌した。溶液を圧力下で濃縮して残渣を得、これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、CHCl/MeOH=100/1~10/1)により精製して、化合物3g(3.2g、収率78%)を白色固体として得た。ESI-MS:m/z=386.0(M+1)
【0167】
工程7:化合物3hの調製
化合物3g(1.3g、3.373mmol、1.0当量)のDMF(20mL)溶液に、ジ-tert-ブチルシランジイルビス(トリフルオロメタンスルホネート)(1.634g、3.711mmol、1.1当量)を0℃で滴下した。混合物を0℃で2時間撹拌した。この反応混合物に、1H-イミダゾール(1.148g、16.867mmol、5.0当量)を0℃で添加し、反応物を25℃で30分間撹拌した。混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、ブラインで洗浄し(50mL×3回)、NaSO上で乾燥させ、濾過し、圧力下で濃縮して残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1~1/1)により精製して、化合物3h(1.32g、収率74%)を白色固体として得た。
【0168】
工程8:化合物3iの調製
化合物3h(620mg、1.179mmol、1.0当量)及び3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(0.992g、11.794mmol、10.0当量)のCHCl(8mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(201.725mg、1.769mmol、1.5当量)を0℃で添加した。次いで、反応混合物を25℃で16時間撹拌した。反応混合物をCHCl(20mL)で希釈し、EtN(1mL)でクエンチした。次いで、溶液をブラインで洗浄し(10mL×2回)、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して残渣を得、これをシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1~3/1)により精製して、化合物3i(552mg、収率77%)を白色発泡体として得た。
【0169】
工程9:化合物3jの調製
ピリジン塩酸塩(326.23uL、3.621mmol、4.0当量)をピリジン(1.5mL)で慎重に希釈し、次いで化合物3i(552mg、0.905mmol、1.0当量)のTHF(5mL)溶液に0℃で滴下した。混合物を25℃まで加温し、5分間撹拌した。ピリジン(1.5mL)を添加して反応混合物をクエンチし、CHCl(20mL)で希釈した。混合物をブラインで洗浄し(10mL×2)、NaSOで乾燥させ、濾過し、濾液を圧力下で濃縮して残渣を得た。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1~0/1)により精製して、化合物3j(収率93.79%)を白色泡状物として得た。
【0170】
工程10:化合物3kの調製
化合物3j(736mg、1.568mmol、1.0当量)のピリジン(10.0mL)溶液に、DMTrCl(796.748mg、2.351mmol、1.5当量)を25℃で添加した。溶液を25℃で2時間撹拌した。MeOH(2.0mL)を添加して反応混合物をクエンチし、EtOAc(20mL)で希釈し、ブラインで洗浄した(10mL×3回)。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して残渣を得て、これをシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1~0/1)によって精製して、化合物3k(1.13g、収率93%)を白色固体として得た。
【0171】
工程11:化合物3lの調製
化合物3k(1.13g、1.464mmol、1.0当量)のTHF(8.0mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.135g、8.784mmol、6.0当量)及び2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイト(1.039g、4.392mmol、3.0当量)を、アルゴン雰囲気下、0℃で素早く添加した。次いで、反応混合物を25℃まで加温し、2時間撹拌した。反応混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、ブライン(2×20mL)で洗浄し、有機相をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1~3/1)により精製して、化合物3l(1.25g、収率88%)を白色泡状物として得た。31P NMR(162MHz,CDCl)151.242,150.783,149.656,149.209;ESI-MS m/z 889.2(M-N(iPr)+17)
【0172】
工程12:化合物3nの調製
化合物3m(1.0g、1.031mmol、1.0当量)及び水(37.138mg、2.061mmol、2.0当量)のMeCN(5.0mL)溶液に、ピリジニウムトリフルオロアセテート(238.872mg、1.237mmol、1.2当量)を25℃で添加した。反応混合物を25℃で5分間撹拌した。5分後、t-ブチルアミン(5.0mL)を添加した。反応混合物を25℃で15分間撹拌した。次いで、混合物を減圧下で濃縮して発泡体を形成した。残渣をCHCN(5.0mL)に溶解し、減圧下で濃縮して、再び発泡体を得た。このプロセスを更に1回繰り返して、化合物3n(859.79mg、粗生成物)を白色発泡体として得た。粗生成物は、更に精製せずに次の工程に直接使用した。
【0173】
工程13:化合物3oの調製
化合物3n(859.79mg、1.031mmol、1.0当量)及び水(185.738mg、10.31mmol、10当量)のCHCl(12mL)溶液に、ジクロロ酢酸(CHCl中6%、12mL)を0℃で添加した。混合物を25℃で1時間撹拌した。ピリジン(2.0mL)を添加して反応液をクエンチした。反応混合物を25℃で30分間撹拌した。反応混合物を圧力下で濃縮して残渣を得て、これをシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1~5/1)によって精製して、化合物3o(495mg、収率90%)を白色泡状物として得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d)8.18(s,1H),7.82(s,2H),5.78-5.70(m,1H),5.07(s,1H),4.90(s,1H),4.23(s,1H),3.78(s,1H),3.69-3.57(m,1H),3.50-3.31(m,2H),2.71-2.57(m,2H),0.99(d,J=6.8Hz,6H),0.77(s,9H),0.01(d,J=4.9Hz,6H);31P NMR(162MHz,DMSO)0.260(s,1P),-1.127(s,1P);ESI-MS m/z532.1(M+1)
【0174】
工程14:化合物3pの調製
化合物3o(650mg、1.223mmol、1.0当量)及び4Åモレキュラーシーブを入れたMeCN(乾燥、40mL)溶液を、室温、N雰囲気下で5分間撹拌した。1H-イミダゾール過塩素酸塩(2.085g、12.228mmol、10.0当量)を添加した。10分後、化合物3l(1.248g、1.284mmol、1.05当量)をMeCN(20.0mL)に添加した。混合物を25℃で50分間撹拌した後、この反応混合物(MeCN中0.02M、60mL)を、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0175】
工程15:化合物3q+3rの調製
化合物3p(MeCN中0.02M、60mL)の溶液に、tert-ブチルヒドロパーオキシド(1.112mL、6.115mmol、5.0当量)を25℃で添加した。反応混合物を25℃で1時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して残渣を得、これを逆相分取HPLC(カラム:Waters Xbridge 150×25 5μM;移動相:水(10mM NHHCO)-ACN、B%:37%~67%)により精製して、化合物3q+3rの混合物(3qを360mg及び3rを130mg)を白色固体として得た。31P NMR(162MHz,CDOD)3.904,2.553,-2.139,-2.242;ESI-MS:m/z=1116.5[M+1]
【0176】
工程16:化合物3s+3tの調製
化合物3q+3rの混合物(120mg、0.108mmol、1.0当量)及び4Åモレキュラーシーブを入れたピリジン(40mL)溶液に、DMOCP(59.53mg、0.323mmol、3.0当量)を25℃で添加した。混合物を25℃で1時間撹拌した後、反応混合物(Py中0.0027M、40mL)を次の工程に直接使用した。
【0177】
工程17:化合物3u+3vの調製
化合物3s+3t(0.0027M、40mL)の溶液に、水(19.457mg、1.08mmol、10.0当量)及びI(137.057mg、0.54mmol、5.0当量)を25℃で添加した。混合物を25℃で1時間撹拌した。反応物をNaSO(10mL水溶液)でクエンチした。混合物を濾過し、濾液を圧力下で濃縮して残渣を得、これを逆相分取HPLC(カラム:Waters Xbridge 150×25 5μM;移動相:水(10mM NHHCO)-ACN、B%:20%~40%、流速:25mL/分)により精製し、化合物3u+3vの混合物(25mg、収率21%)を白色固体として得た。31P NMR(162MHz,メタノール-d)-1.94(s,1P),-1.98(s,1P)。
【0178】
工程18:化合物3wの調製
化合物3u+3vの混合物を、MeNHのEtOH(33%、3mL)溶液で処理し、反応物を25℃で16時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、粗生成物(26.8mg)を白色固体として得て、これを更に精製せずに次の工程に使用した。
【0179】
水(2mL)中の粗生成物に、AcOH(10%水溶液、2mL)を添加した。反応混合物を25℃で5時間撹拌した。反応混合物をEtNで中和し、粗生成物を凍結乾燥して、化合物3w(30.5mg)を黄色固体として得た。粗生成物を更に精製せずに次の工程に使用した。
【0180】
工程19:化合物1アンモニウム塩の調製
化合物3w(30.5mg、0.038mmol、1.0当量)のPy(2mL)溶液に、EtN(384.49mg、3.8mmol、100当量)及びEtN-3HF(306.271mg、1.9mmol、50当量)を25℃で添加した。反応混合物を50℃で10時間撹拌した。混合物をTHF(3mL)に溶解し、イソプロポキシトリメチルシラン(502.607mg、3.8mmol、100当量)を25℃で添加し、1時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮して残渣を得、これを逆相分取HPLC(カラム:Agela Durashell C18 150×25 5μM;移動相:水(0.05%アンモニア水酸化物v/v)-ACNを0%~10%、流量:35mL/分)により精製して、化合物1アンモニウム塩(18mg、収率69%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz,DO)8.44(s,1H),8.18(s,1H),7.97(s,1H),5.80(d,J=10.4Hz,2H),5.62(s,1H),4.61-4.55(m,1H),4.52(s,1H),4.41(s,1H),4.35-4.10(m,4H),3.92(d,J=11.9Hz,1H),1.13(s,3H);31P NMR(162MHz,DO)-0.612(s,1P)。
【0181】
工程20:化合物1ナトリウム塩の調製
化合物1アンモニウム塩を高真空下で乾燥させて、白色固体(15mg)を得た。Dowex 50W×8,200-400(H形態、3mL)をビーカー(15mgの化合物7用)に添加し、脱イオン水で洗浄した(2回)。次いで、樹脂に15%HSO-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂を、15%HSO-脱イオン水溶液の入ったカラムに移し、15%HSOで洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで脱イオン水で洗浄した。樹脂をビーカーに戻し、15%NaOH-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂をカラムに移し、15%NaOH-脱イオン水溶液で洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで脱イオン水で洗浄した(少なくとも4CV)。化合物1を脱イオン水に溶解し(2mL中15mg)、カラムの上部に添加し、脱イオン水で溶出させた。TLC(UV)によって検出されるように、変換されたナトリウム塩は、初期の画分に溶出した。生成物を凍結乾燥して、白色固体として化合物7ナトリウム塩(4.9mg、収率31%)の第1バッチと、白色固体として化合物1ナトリウム塩(6.2mg、収率37%)の第2バッチとを得た。H NMR(400MHz,DO)8.04(s,1H),8.02(s,1H),7.90(s,1H),5.94(s,1H),5.89(d,J=8.4Hz,1H),5.30(dt,J=4.0,8.8Hz,1H),4.56(t,J=8.4Hz,1H),4.51(d,J=4.0Hz,1H),4.33-4.24(m,3H),4.13-4.01(m,3H),1.00(s,3H);31P NMR(162MHz,DO)-1.125(s,1P),-2.066(s,1P)。ESI-MS:m/z=688.9(M+1)
【0182】
実施例4に示される反応スキームでは、本発明の化合物2及びその医薬的に許容される塩形態を調製可能な、一経路を記載する。
【0183】
(実施例4)
【0184】
【化18】
【0185】
【化19】
【0186】
【化20】
【0187】
実施例5に示される反応スキームでは、本発明の化合物3及びその医薬的に許容される塩形態を調製可能な、一経路を記載する。
【0188】
(実施例5)
【0189】
【化21】
【0190】
【化22】
【0191】
【化23】
【0192】
(実施例6)
【0193】
【化24】
【0194】
【化25】
【0195】
【化26】
【0196】
工程1:化合物1fの調製
化合物1e(4.6g、5.288mmol)及び水(190.520mg、10.575mmol)のアセトニトリル(20mL)溶液に、ピリジニウムトリフルオロアセテート(1.225g、6.345mmol)を15℃で添加した。0.5時間後、t-ブチルアミン(20mL)を添加した。混合物を2時間濃縮して、粗生成物1f(3.96g、粗生成物)を白色固体として得た。
【0197】
この粗生成物を、次の工程に直接使用した。
【0198】
工程2:1gの調製
化合物1f(3.359g、4.578mmol)及び水(824.688mg、45.777mmol)のCHCl(40mL)溶液に、ジクロロ酢酸(40mL、CHCl中6%)を15℃で添加した。1時間後、ピリジン(724.192mg、9.155mmol)を添加した。混合物を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(CHCl:MeOH=5:1、R=0.5)、粗生成物1g(1.5g)を白色固体として得た。
【0199】
工程3:化合物6f+6gの調製
化合物1g(1.959g、1.352mmol)及び
【0200】
【数3】
MS(3g)を入れた脱水CHCN(40mL)溶液を、窒素下、15℃で10分間撹拌した。1H-イミダゾール過塩素酸塩(6.683g、39.182mmol)を添加した。10分後、CHCN(20mL)中の化合物2c(2.059g、2.351mmol)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。(E)-N,N-ジメチル-N’-(3-チオキソ-3H-1,2,4-ジチアゾール-5-イル)ホルムイミダミド(DDTT、5.176g、25.211mmol)を添加した。最終混合物を15℃で1時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣を逆相分取HPLC(カラム:Phenomenex Kinetex XB-C18 150mm×30mm,5μm;条件:水(10mM NHHCO)-ACN;Bの開始:20;Bの終了:50;流速(mL/分):25)により精製し、化合物6f+6gの混合物(260mg)を白色固体として得た。ESI-MS:m/z=937.1。
【0201】
工程4:化合物6hの調製
化合物6f+6gの混合物(260mg、0.278mmol)及びモレキュラーシーブ(0.3g)を入れたピリジン(30mL)溶液に、16℃でDMOCP(153.836mg、0.834mmol)を添加した。混合物を16℃で1時間撹拌した。水(50.055mg、2.778mmol)及びBeaucage試薬(278.173mg、1.389mmol)を添加し、室温で1.5時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣を逆相分取HPLC(カラム:Phenomenex Synergi C18 250×21.2mm 4μm;条件:水(10mM NHHCO)-ACN;Bの開始:10;Bの終了:40;流速(mL/分):25)により精製して、異性体の混合物(150mg)(41.45%の6i)として化合物6h及び6iを白色固体として得た。ESI-MS:m/z=950.2。
【0202】
工程5:アンモニウム塩としての化合物6a、6b、6c及び6dの調製
化合物6h及び6iのMeNH-EtOH溶液(33%、15mL)を15℃で2時間撹拌した。混合物を濃縮し、残渣を水(3mL)で希釈し、逆相分取HPLC(カラム:Agela Durashell C18 150×25 5μm、条件:水(0.05%アンモニア水酸化物v/v)-ACN;Bの開始:0;Bの終了:20;流速(mL/分):35)により精製して、白色固体として6a(20.9mg)、白色固体として6b(23.0mg)、白色固体として6c(13.9mg)、及び白色固体として6b(9.9mg)、を得た。
【0203】
化合物6a:H NMR(400MHz,DO)8.36(s,1H),8.11(s,1H),7.83(s,1H),6.34(d,J=14.8Hz,1H),5.81-5.79(m,1H),5.78-5.64(m,1H),5.61-5.57(m,1H),5.10-5.03(m,1H),4.45-4.44(m,2H),4.41-4.38(m,1H),4.11-4.10(m,3H),4.02-3.99(m,1H),3.46(s,3H);19F NMR(376MHz,DO)-202.08(s,1F);31P NMR(162MHz,DO)54.07(s,1P),52.51(s,1P)。
【0204】
化合物6b:H NMR(400MHz,DO)8.27(s,1H),7.78(s,1H),6.36(d,J=14.8Hz,1H),5.80-5.75(m,2H),5.39-5.26(m,1H),5.17-5.12(m,1H),4.44-4.30(m,4H),4.07(d,J=3.6Hz,1H),4.00-3.93(m,2H),3.46(s,3H);19F NMR(376MHz,DO)-201.87(s,1F);31P NMR(162MHz,DO)56.04(s,1P)。
【0205】
化合物6c:H NMR(400MHz,DO)8.25(s,1H),8.01(s,1H),7.72(s,1H),6.28(d,J=15.6Hz,1H),5.72-5.69(m,1H),5.56(br s,1H),4.95-4.88(m,1H),4.46(br s,1H),4.38-4.35(m,2H),4.09(s,3H),3.88-3.86(m,1H),3.44(s,3H);31P NMR(162MHz,DO)52.06(s,1P),51.37(s,1P)。
【0206】
化合物6d:H NMR(400MHz,DO)8.27-8.23(m,2H),7.80(s,1H),6.36(d,J=16.4Hz,1H),5.76(br s,2H),5.37-5.25(m,2H),4.47-4.36(m,4H),4.10-4.05(m,2H),3.92(br s,1H),3.46(s,3H)。
【0207】
工程6:化合物6aナトリウム塩の調製
体積10mLのDowex 50Wx8,200-400(H形態)をビーカー(20.9mgの白色固体用)に添加し、脱イオン水で洗浄した(2回)。次いで、樹脂に15%HSO-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂を、15%HSO-脱イオン水溶液の入ったカラムに移し、15%HSOで洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで脱イオン水で洗浄した。樹脂をビーカーに戻し、15%NaOH-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂をカラムに移し、15%NaOH-脱イオン水溶液で洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで水で洗浄した(少なくとも4CV)。化合物6aアンモニウム塩(20.9mg、0.022mmol)を脱イオン水(3mL)に溶解し、カラムの上部に添加し、脱イオン水で溶出させた。TLC(UV)によって検出されるように、化合物6aは、初期の画分に溶出した。生成物を凍結乾燥し、化合物6aナトリウム塩(10.7mg)を白色固体として得た。ESI-MS:m/z=722.8;H NMR(400MHz,DO)8.29(s,1H),8.06(s,1H),7.83(s,1H),6.30(d,J=14.8Hz,1H),5.79(d,J=8.8Hz,1H),5.75-5.61(m,1H),5.59-5.56(m,1H),5.07-5.01(m,1H),4.45-4.37(m,3H),4.11-4.10(m,3H),3.99(d,J=11.6Hz,1H),3.45(s,3H);31P NMR(162MHz,DO)54.23(s,1P),52.76(s,1P);19F NMR(376MHz,DO)-202.00(s,1F)。
【0208】
化合物6bナトリウム塩の調製
体積10mLのDowex 50Wx8,200-400(H形態)をビーカー(23.0mgの白色固体用)に添加し、脱イオン水で洗浄した(2回)。次いで、樹脂に15%HSO-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂を、15%HSO-脱イオン水溶液の入ったカラムに移し、15%HSOで洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで脱イオン水で洗浄した。樹脂をビーカーに戻し、15%NaOH-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂をカラムに移し、15%NaOH-脱イオン水溶液で洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで水で洗浄した(少なくとも4CV)。化合物6bアンモニウム塩(23.0mg、0.030mmol)を脱イオン水(3mL)に溶解し、カラムの上部に添加し、脱イオン水で溶出させた。
【0209】
TLC(UV)によって検出されるように、化合物6bは、初期の画分に溶出した。生成物を凍結乾燥し、化合物6bナトリウム塩(12.7mg)を白色固体として得た。ESI-MS:m/z=722.7;H NMR(400MHz,DO)8.39(s,1H),8.09(s,1H),7.71(s,1H),6.31(d,J=14.0Hz,1H),5.79-5.73(m,2H),5.41-5.27(m,1H),5.24-5.14(m,1H),4.43-4.38(m,3H),4.32-4.30(m,1H),4.08(d,J=4.0Hz,1H),4.00-3.97(m,2H),3.45(s,3H);31P NMR(162MHz,DO)55.88(s,1P),53.45(s,1P);19F NMR(376MHz,DO)-201.97(s,1F)。
【0210】
6cナトリウム塩の調製
体積10mLのDowex 50Wx8,200-400(H形態)をビーカー(13.9mgの白色固体用)に添加し、脱イオン水で洗浄した(2回)。次いで、樹脂に15%HSO-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂を、15%HSO-脱イオン水溶液の入ったカラムに移し、15%HSOで洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで脱イオン水で洗浄した。樹脂をビーカーに戻し、15%NaOH-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂をカラムに移し、15%NaOH-脱イオン水溶液で洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで水で洗浄した(少なくとも4CV)。化合物6cアンモニウム塩(13.9mg、0.018mmol)を脱イオン水(3mL)に溶解し、カラムの上部に添加し、脱イオン水で溶出させた。TLC(UV)によって検出されるように、6cは、初期の画分に溶出した。生成物を凍結乾燥し、化合物6cナトリウム塩(4.8mg)を白色固体として得た。ESI-MS:m/z=722.8;1H NMR(400MHz,DO)8.09(s,1H),8.02(s,1H),7.84(s,1H),6.30(d,J=15.2Hz,1H),5.80-5.64(m,2H),5.47-5.41(m,1H),4.99-4.93(m,1H),4.47-4.41(m,3H),4.24(d,J=4.0Hz,1H),4.10(br s,2H),4.05-4.02(m,1H),3.43(s,3H);
31P NMR(162MHz,DO)52.46(s,1P),52.00(s,1P);19F NMR(376MHz,DO)-201.91(s,1F)。
【0211】
6dナトリウム塩の調製
体積10mLのDowex 50Wx8,200-400(H形態)をビーカー(9.9mgの白色固体用)に添加し、脱イオン水で洗浄した(2回)。次いで、樹脂に15%HSO-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂を、15%HSO-脱イオン水溶液の入ったカラムに移し、15%HSOで洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで脱イオン水で洗浄した。樹脂をビーカーに戻し、15%NaOH-脱イオン水溶液(50mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、デカンテーションした(1回)。樹脂をカラムに移し、15%NaOH-脱イオン水溶液で洗浄し(少なくとも4CV)、次いで、中性になるまで水で洗浄した(少なくとも4CV)。化合物6dアンモニウム塩(9.9mg、0.013mmol)を脱イオン水(3mL)に溶解し、カラムの上部に添加し、脱イオン水で溶出させた。TLC(UV)によって検出されるように、化合物6dは、初期の画分に溶出した。生成物を凍結乾燥し、化合物6dナトリウム塩(1.0mg)を白色固体として得た。ESI-MS:m/z=722.8;H NMR(400MHz,DO)8.14(s,1H),8.12(s,1H),7.71(s,1H),6.33(d,J=13.6 Hz,1H),5.76(d,J=8.4 Hz,1H),5.65-5.62(m,1H),5.47-5.34(m,1H),5.21-5.13(m,1H),4.46-4.43(m,3H),4.32-4.29(m,1H),4.18(d,J=3.6Hz,1H),4.02-3.99(m,2H),3.43(s,3H);31P NMR(162MHz,DO)55.68(s,1P),51.77(s,1P);19F NMR(376MHz,DO)-202.20(s,1F)。
【0212】
生物学的実施例
インビトロ・アッセイ
(実施例1)
STING SPA結合アッセイ
ヒトSTING SPA結合アッセイは、トリチウム標識された2’,3’cGAMP(環状(グアノシン-(2’→5’)-モノホスフェート-アデノシン-(3’→5’)-モノホスフェート)から、ビオチン化STINGタンパク質への置換を測定する。4つの膜貫通ドメインを欠いており、232位にRを有する(H232R)Q86WV6の残基139-379を含む、可溶化態様の組み替えSTINGを、大腸菌内で発現させた。集団について対立遺伝子頻度が58%であることに基づき、H232Rは、野生型であると考えられる(Yi,et.al.,「Single Nucleotide Polymorphisms of Human STING can affect innate immune response to cyclic dinucleotides」PLOS ONE.2013,8(10),e77846)。STINGコンストラクトは、N末端にHISタグを有しており、それに続き、TEVプロテアーゼ切断部位及びAVIタグを有しており、BirAビオチンリガーゼによる選択的ビオチン化を可能にする(Beckett et al.,A minimal peptide substrate in biotinHoloenzyme synthetase-catalyzed biotinylation.(1999)Protein Science 8,921-929)。精製後、かつビオチン化の前に、HISタグを切断させる。
【0213】
8nMの[H]-2’3’-cGAMP及び40nMビオチン-STINGタンパク質をアッセイバッファー[25mMHEPES(Corning 25-060-C1)pH7.5、150mM NaCl(Sigma S5150)、0.5mg/mL BSA(Gibco 15260-037)、0.001%Tween-20(Sigma P7949)、分子生物学グレードの水(Corning 46-000-CM)]に加え、ウェルあたりの合計体積8μLで、1536ウェルプレートでアッセイを行った。試験化合物(80nL)を、アコースティックディスペンサー(EDC Biosystems)を用いて100%DMSOに加え、最終アッセイ濃度を1%DMSOとした。プレートを1分間遠心分離し、室温で60分間インキュベートした。最後に、(2μL)ポリスチレンストレプトアビジンSPAビーズ(PerkinElmer RPNQ0306)を加え、プレートを密封し、室温で1分間遠心分離した。プレートを2時間暗所で適応させ、プレート当たり12分間ViewLux(Perkin Elmer)で読み取った。[H]-2’3’-cGAMPに関する飽和結合曲線は、STINGに対する結合について、天然リガンドについて報告されている値に匹敵する3.6±0.3のKを示した(Zhang et al.,Cyclic GMP-AMP containing mixed phosphodiester linkages is an endogenousHigh-affinity ligand for STING。
【0214】
環状ジ-GMPを含む他の天然リガンドもまた、予想される範囲内で、このアッセイにおいて値を返した。参照化合物はcGAMPであり、結果は、阻害率及びIC50値として報告される。マウスSTINGに対する結合は、Q3TBT3の残基138-378を含有する上述のものと類似のコンストラクトを使用した。
【0215】
完全長ヒトSTING結合アッセイ
232位にRを有し(H232R)、N末端に6HISタグを有し、それに続きFLAGタグ、TEVプロテアーゼ開裂部位及びビオチン化のためのAVIタグを有する、Q86WV6の残基1-379由来のヒトSTINGを、HEK293-EXPI細胞内で組換え発現した。これらの細胞から精製膜を調製し、STING発現を確認し、免疫ブロットにより定量した。Greiner 384ウェルアッセイプレート中でSTING含有膜を試験化合物と合わせ、STING SPA結合アッセイに使用したのと同じアッセイバッファー中、室温で1時間インキュベートした。次に、[H]-2’3’-cGAMPを加え、プレートを室温で30分間インキュベートした。反応物を予め洗浄したPall 5073フィルタープレートに移し、各ウェルを50μLのアッセイバッファーで3回洗浄した。フィルタープレートを50℃で1時間乾燥させた。各ウェルに、10μLのMicroscintシンチレーション流体を加え、プレートを密封し、ウェル当たり1分間TopCount(Perkin Elmer)で読み取った。
【0216】
STING SPR結合アッセイ
化合物を、S200 biacore SPR装置(GEHealthcare)で分析した。大腸菌に産生させた切断型STINGタンパク質を、ビオチン捕捉(GEHealthcare#BR100531)により一連のSストレプトアビジンチップ上に固定化した。化合物を、スクリーニングバッファー(10mMHEPES、pH7.4、150mM NaCl、0.005%P20、1mM TECEP)により100uM~0.195uMまで1:2希釈し、スクリーニングした。1:1結合モデルを用いて定常状態の親和性及び動態評価を行った(STINGはダイマーとして処理した)。実験パラメータは以下のとおりであった。IFM化合物については60秒オン、300秒オフ、環状ジ-GMP(60秒オン/60秒オフ)、チオール異性体1(60秒オン/300秒オフ)、及びcGAMP(60秒オン/1200secオフ)、流速50μL/min及び25℃、40Hzでのデータ収集。
【0217】
STINGヒト細胞レポーターアッセイ
ヒトSTING経路のアゴニスト活性は、インターフェロン調節因子(IRF)により誘導可能なSEAPレポーターコンストラクトの安定な組み込みによって、ヒトTHP1単球細胞株由来のTHP1-ISG細胞(Invivogen,カタログ番号thp-isg)において評価される。THP1 Blue ISG細胞は、5つのインターフェロン(IFN)刺激応答配列と共に、ISG54ミニマルプロモーターの制御下で、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を発現する。結果として、THP1 Blue ISG細胞により、SEAP活性を測定してIRF活性化をモニタリングすることが可能になる。細胞培養上清中のIRF誘導性SEAPのレベルは、アルカリホスファターゼ検出培地、SEAP検出試薬によって容易に評価される。これらの細胞は、ゼオシン耐性である。このアッセイにおいて、陽性対照として2’3’cGAMPを使用した。アッセイを行うために、60,000個の細胞を、白色で底が不透明の組織培養処理された384ウェルプレートに30μL/ウェルで分注した。
【0218】
試験化合物を10μLの体積で添加した(最終濃度1%DMSO)。最初に化合物を100%DMSO中で調製し、中間希釈プレート上にスポットし、その後、移す前に培地で希釈した。アッセイを37℃、5%COで24時間インキュベートした後、プレートを1200rpm(120xg)で5分間遠心分離した。最後のインキュベートの後、90μLのアルカリホスファターゼ検出培地基質を新しい384ウェル透明プレートの各ウェルに加え、Biomek FXを使用して、10μLの細胞上清をアッセイプレートから新しいアルカリホスファターゼ検出培地プレートに移し、4回混合した。プレートを室温で20分間インキュベートした後、655nmでの吸光度をTecan Safire 2で測定した。
【0219】
STINGマウス細胞レポーターアッセイ
マウスSTING経路のアゴニスト活性は、インターフェロン誘導性Luciaルシフェラーゼレポーターコンストラクトの安定な組み込みによって、マウスRAW-264.7マクロファージ細胞株由来のRAW Lucia細胞(Invivogen、カタログ番号rawl-isg)において評価される。RAW Lucia細胞は、5つのインターフェロン(IFN)刺激応答配列と共に、ISG54ミニマルプロモーターの制御下で、分泌型ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現する。結果として、RAW Lucia細胞により、ルシフェラーゼの活性を測定してIRF活性化をモニタリングすることが可能になる。細胞培養上清中のIRF誘導性ルシフェラーゼのレベルは、ルシフェラーゼ検出試薬QUANTI-Luc(登録商標)を用いて容易に評価される。これらの細胞は、ゼオシン耐性である。このアッセイにおいて、陽性対照として2’3’cGAMPを使用する。アッセイを行うために、組織培養物処理された96ウェル透明平底プレートに90μL/ウェルで100,000個の細胞を分注した。試験化合物を10μLの体積で添加した。このアッセイを、37℃、5%CO2で、24時間及び48時間インキュベートした。インキュベート後、アッセイプレートから20μLの細胞上清を新しい96ウェル白色プレートに移し、50uLのQUANTI-Luc基質を加えた。プレートをインキュベートし、室温で5分間振盪した後、0.1秒の積分時間で発光をEnVision 2104で読み取った。
【0220】
ヒトインターフェロン-β誘導アッセイ
THP1 Blue ISG細胞を使用して、STING経路活性化後の培養上清へのINF-βの分泌を測定する。アッセイを行うために、抗INF-β捕捉抗体を96ウェルMultiArrayプレート(Mesoscale Discovery)上にコーティングした。1時間のインキュベート後、プレートを洗浄し、このコーティングされたプレート内で、STINGヒト細胞レポーターアッセイプレート由来の50μLの上清又はIFN-β標準を、Sulfotagを付加した20μLの共役検出抗体と混合した。プレートをインキュベートし、2時間振盪し、洗浄し、読み取りバッファーを加えた。電気化学発光をSectorImagerで測定した。
【0221】
STING細胞シグナル伝達経路の評価
STING経路のアゴニスト活性は、ホスホ-STING(S366)、ホスホ-TBK1(S172)及びホスホ-IRF3(S396)のウェスタンブロットによって、THP1 BLUE ISG細胞において測定された。簡潔に述べると、90μLのヌクレオフェクション(商標)バッファー中の5百万個の細胞を、10μLの試験化合物と混合した。これらの混合物を、Amaxa Nucleofector(Lonza)上でプログラムV-001を用いてエレクトロポレーションした。細胞を新鮮な培地を入れた12ウェルプレートに移し、37℃、5%COで1時間回復させた。次いで、細胞を冷HBSSで洗浄し、RIPAバッファーに溶解させた。サンプルは、総タンパク質を正規化し、ProteinSimpleサンプルバッファー又はLDSローディングバッファーのいずれかで希釈した。サンプルを95℃で5分間加熱変性した後、PeggySue(ProteinSimple)を使用してホスホ-及び総STING及びIRF3を測定し、一方、NuPAGE(Invitrogen)システムを使用してTBK1を測定した。データを、Compass又はLicor Odygseyソフトウェアを使用してそれぞれ分析した。
【0222】
STINGインビボ活性
全ての試験において、雌性Balb/cマウスはCharles River Labs(Wilmington,MA)から得て、6~8週齢になり、体重が約20gになったときに使用した。全ての動物を、実験での使用前に最低5日間、あらゆる輸送関連ストレスから順応及び回復させた。逆浸透処理し塩素を添加した水及び照射された食品(Laboratory Autoclavable Rodent Diet 5010、Lab Diet)を不断給餌で与え、動物を12時間の明暗サイクルに維持した。使用前にケージ及び床敷きをオートクレーブ処理し、毎週交換した。全ての実験は、The Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って行い、Institutional Animal Care and Use Committee of Janssen R & D(SpringHouse,PA)により承認された。各実験群には、8匹のマウスが含まれていた。500,000個のCT26結腸癌腫瘍細胞をBalb/cマウスに皮下移植し、腫瘍を100~300mmに成長させることによって、マウスCT26腫瘍モデルにおけるインビボ有効性を決定した。化合物を、リン酸緩衝生理食塩水中で、1回の注入当たり0.1mLの体積で処方し、腫瘍内注射した。3日おきに、合計3回の用量として0.05mgを、マウスに投与した。次式:((C-T)/(C))100(全ての対照動物が試験下にある場合)により、対照腫瘍体積(C)に対する、治療した腫瘍体積(T)のサイズの減少によって計算される腫瘍増殖阻害率(TGI)として、有効性を評価した。治癒は、最後の用量を投与した後に、10腫瘍体積倍加時間(TVDT)を測定可能な腫瘍が検出されなかった動物の数であると定義された。
【0223】
得られたデータを表3に示す。
【0224】
【表4】
【0225】
ND-実施せず。ヒトIFN-βのランク付け値は、THP-1 Blue細胞において試験した投与範囲(0.78~50uM)にわたる全累積IFN-β誘導によって決定されるランク付け値によって決定される。
【0226】
生物学的実施例2
STING初代ヒトPBMCサイトカイン誘導アッセイ
ヒト全血由来の初代ヒト末梢血単核球(PBMC)においてヒトSTING経路のアゴニスト活性を評価する。1パイント(約420mL)の新鮮なドナー血液(AllCells Inc.(Alameda,CA))を、リンパ球分離培地(1.077~1.080g/ml、Corning(Manassas,VA))上に層状に配置し、次いで、破壊することなく、室温、500gで20分間遠心分離する。血清とリンパ球分離培地との間の界面で集めたPBMCを採取し、洗浄し、次いで計測する。PBMCは、B細胞、T細胞などのリンパ球及び単球のサブタイプから構成され、文献において、これらのサブタイプは、異なるレベルのSTINGタンパク質を発現するとして特徴付けられている。2’3’-cGAMPなどのSTINGアゴニストに応答して、これらの細胞が活性化され、様々な炎症性及び抗ウイルス性サイトカインの発現が誘導される。また、STINGアゴニストで刺激すると、これらの細胞は、活性化マーカーを上方調節する。サイトカイン誘導レベルは、ELISA、Luminex及びMSDを含む様々な方法によって測定することができる。活性化マーカーのアップレギュレーションのレベルは、フローサイトメトリーによって測定することができる。
【0227】
アッセイを行うために、組織培養処理された96ウェル平底プレートに225μL/ウェルで1,000,000個の細胞を分注した。試験化合物を、10倍濃度で、25μLの体積で添加した。一部の化合物を100%DMSOに溶解し、これらの化合物を投与する培養物におけるDMSOの最終濃度は1%とした。このアッセイを、37℃、5%COで48時間インキュベートした。プレートの底部の細胞を乱さないように200μLの上清を採取し、次いで、Luminex測定の時間まで-20℃で凍結させた。MILLIPLEX MAP Human Cytokine/Chemokine Magnetic Bead Panel-Immunology Multiplex AssayキットからのG-CSF、IFNα2、IFNγ、IL-1b、IL-6、IL-10、IL-12(p40)、IL-12(p70)、TNFα、及びMILLIPLEX MAPHuman Cytokine/Chemokine Magnetic Bead Panel IVキット(EMD Millipore、Billerica、MA)からのIFNβ1検体を用い、製造業者のプロトコルに従って、Luminexアッセイを行った。サイトカイン誘導は、Luminex FlexMAP 3D(登録商標)装置(Luminex Corporation(Radnor、PA))を使用して測定した。収集されたLuminexデータの分析は、MILLIPLEX Analystソフトウェア(EMD Millipore)を使用して行った。
【0228】
STING活性化された初代ヒトPBMCからの馴化培地を使用したPHH細胞におけるHBVウイルスの抑制
初代ヒト肝細胞は、B型肝炎ウイルスに感染し得るものであり、感染中は、ELISAによって検出可能なHBsAg及びHBeAgなどのウイルスタンパク質を産生する。エンテカビルなどの化合物による治療処置は、HBV複製を抑制することができ、この抑制は、ウイルスタンパク質の産生の減少によって評価することができる。組織培養処理された24ウェル平底プレートに、500μL/ウェルで、(細胞数)4×10個/ウェルの初代ヒト肝細胞(BioReclamation、ウェストベリー、NY)を分注した。24時間後、細胞を30~75moiのHBVに感染させた。翌日、PHHを3回洗浄し、新鮮な維持培地を細胞に添加した。同時に、PBMCを、上述のとおり単離した。PBMCを刺激するために、組織培養物処理された24ウェル平底プレートに400μL/ウェルで10,000,00010,000,000個の細胞を分注した。試験化合物を体積100μLで添加した後、培養物を37℃、5%COで48時間インキュベートした。上清を回収した。フローサイトメトリーを使用して、活性化マーカーのアップレギュレーションについて細胞を測定した。簡潔に述べると、細胞を、CD56、CD19、CD3、CD8a、CD14、CD69、CD54、CD161、CD4及びCD80を対象とする蛍光標識抗体で染色した。Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Fisher、Carlsbad、CA)でサンプルを分析した。
【0229】
刺激したPBMC培養物から、上述のとおり、Luminexによるサイトカイン検出のために上清の一部を確保した。残りの上清を半分に分割し、アッセイのd8で使用するために1つのアリコートを4℃で保存した。上清の他のアリコートを2XPHH培地で1:1に希釈した後、d4感染したPHH細胞に添加した。96時間後、使用済み培地を交換し、上清に、2XPHH培地を添加し1:1希釈した。この時点で、HBsAg ELISAキット(Wantai Bio pharm、北京、中国)を使用してHBsAgの仮測定を行った。96時間後、培地を回収し、HBsAgを測定した。
【0230】
表4:CDN化合物で刺激したPBMC培養におけるサイトカインの誘導倍率。誘導倍率は、約20μMの化合物で48時間後に誘導されたサイトカインの濃度を測定し、次いで、PBSで誘導された細胞のサイトカイン産生のベースラインレベルで除算することによって計算される。データは、3つの実験にわたる複数のドナーの平均である。nt=試験せず。
【0231】
【表5】
【0232】
表5:より高濃度のCDN化合物で刺激したPBMC培養におけるサイトカインの誘導倍率。誘導倍率は、指定の濃度の化合物で48時間後に誘導されたサイトカインの濃度を測定し、次いで、PBSで誘導された細胞のサイトカイン産生のベースラインレベルで除算することによって計算される。データは、3つの実験にわたる複数のドナーの平均である。nt=試験せず。
【0233】
【表6】
【0234】
表6.CDNで刺激されたPBMCからの馴化培地は、HBV感染したPHH細胞のウイルス負荷を抑制することができる。PBMCを、記載のCDNを用いて20、4、0.8μMで48時間刺激した。上澄み液を新鮮な培地と1:1の比率で混合した後、HBV感染したPHH細胞に添加した。HBsAg産生は、8日後に測定した。データは、2名の独立したドナーの平均である。
【0235】
【表7】
【0236】
表7.CDNはPBMCを活性化する。PBMCを20μMのCDNで48時間刺激した。細胞を、単球上のCD54のアップレギュレーションについて、フローサイトメトリーによって評価した。平均蛍光強度の増加倍率は、休止細胞のレベルに対して計算した。データは、2名の独立したドナーの平均である。
【0237】
【表8】
【0238】
上記の明細書は、説明を目的として与えられる実施例と共に本発明の原理を教示するものであるが、本発明の実施には、以下の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に含まれる全ての通常の変形例、適合例及び/又は改変例が包含される点が理解されるであろう。

以下の態様を包含し得る。
[1] 式(I)の化合物
【化27-1】
[式中、R 1A 、R 2A 、R 1D 、R 2D 、及びR 2E は、各々独立して、前記R 1A 、R 2A 、R 1D 、R 2D 、及びR 2E のうちの1つがメチルとなるように、水素又はメチルから選択され、
1B は、水素、ヒドロキシ又はフルオロであり、
又は、R 1B は-O-であり、R 1D はCH であり、R 1B と、R 1D と、これらが結合する原子とが、5員環を形成し、
1C は、ヒドロキシ、チオール、及びBH からなる群から選択され、
は、環b1及びb2からなる群から選択され、
【化27-2】
2B は、ヒドロキシ、フルオロ、及びメトキシからなる群から選択され、
2C は、ヒドロキシ、チオール及びBH からなる群から選択される]、
又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態。
[2] R 1B が、水素又はフルオロである、上記[1]に記載の化合物。
[3] R 1B が-O-であり、R 1D がCH であり、R 1B と、R 1D と、これらが結合する原子とが、5員環を形成する、上記[1]に記載の化合物。
[4] R 1C が、ヒドロキシ及びチオールからなる群から選択される、上記[1]に記載の化合物。
[5] R 1D が水素である、上記[1]に記載の化合物。
[6] B が、環b2
【化27-3】
である、上記[1]に記載の化合物。
[7] R 2A が水素である、上記[1]に記載の化合物。
[8] R 2C が、ヒドロキシ及びチオールからなる群から選択される、上記[1]に記載の化合物。
[9] R 2D が水素である、上記[1]に記載の化合物。
[10] 式(I)の化合物
【化27-4】
[式中、R 1A 、R 2A 、R 1D 、R 2D 、及びR 2E は、各々独立して、前記R 1A 、R 2A 、R 1D 、R 2D 、及びR 2E のうちの1つがメチルとなるように、水素又はメチルから選択され、
1B は、水素、ヒドロキシ又はフルオロであり、
又は、R 1B は-O-であり、R 1D はCH であり、R 1B と、R 1D と、これらが結合する原子とが、5員環を形成し、
1C は、ヒドロキシ及びチオールからなる群から選択され、
は環b2であり、
【化27-5】
2B は、ヒドロキシ、フルオロ、及びメトキシからなる群から選択され、
2C は、ヒドロキシ及びチオールからなる群から選択される]、
又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態。
[11] 化合物1~3:
【化27-6】
からなる群から選択される、式(I)の化合物、
又はその医薬的に許容される塩形態。
[12] 上記[1]~[11]に記載の化合物と、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、及び医薬的に許容される希釈剤のうちの少なくとも1つとを含む、医薬組成物。
[13] 前記組成物が、固体の経口投与形態である、上記[12]に記載の医薬組成物。
[14] 前記組成物が、シロップ剤、エリキシル剤又は懸濁剤である、上記[12]に記載の医薬組成物。
[15] 式(II)の化合物
【化27-7】
[式中、R 1H は、フルオロであり;又は、R 1H は-O-であり、R 1J はCH であり、R 1H と、R 1J と、これらが結合する原子とが、5員環を形成し;
1J は、水素又はメチルであり、
1K は、ヒドロキシ又はチオールからなる群から選択され、
2L は、ヒドロキシ及びチオールからなる群から選択される]、
又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは医薬的に許容される塩形態。
[16] 化合物4~6:
【化27-8】
からなる群から選択される、上記[15]に記載の式(II)の化合物、
又はその医薬的に許容される塩形態。
[17] 上記[15]又は[16]に記載の化合物と、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、及び医薬的に許容される希釈剤のうちの少なくとも1つとを含む、医薬組成物。
[18] 前記組成物が、固体の経口投与形態である、上記[17]に記載の医薬組成物。
[19] 前記組成物が、シロップ剤、エリキシル剤又は懸濁剤である、上記[17]に記載の医薬組成物。
[20] STINGによって調節される疾患、症候群又は状態を治療する方法であって、前記治療を必要とする対象に治療有効量の上記[1]又は上記[15]に記載の化合物を投与すること、を含む、方法。
[21] 疾患、症候群又は状態を治療する方法であって、前記疾患、症候群又は状態が、STINGのアゴニスト活性によって影響を受けるものであり、前記治療を必要とする対象に治療有効量の上記[1]又は上記[15]に記載の化合物を投与すること、を含む、方法。
[22] 前記疾患、症候群又は状態が、癌である、上記[21]に記載の方法。
[23] 前記癌が、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌及び線維肉腫からなる群から選択される、上記[22]に記載の方法。
[24] 前記疾患、症候群又は状態が、ウイルス感染である、上記[21]に記載の方法。
[25] 前記ウイルス感染が、B型肝炎である、上記[24]に記載の方法。
[26] ウイルス感染、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌及び線維肉腫からなる群から選択される疾患、症候群又は状態を治療する方法であって、前記治療を必要とする対象に、治療有効量の上記[12]又は上記[17]に記載の組成物を投与すること、を含む、方法。
[27] 前記ウイルス感染が、B型肝炎である、上記[26]に記載の方法。
[28] ウイルス感染、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌及び線維肉腫からなる群から選択される疾患、症候群又は状態の治療を必要とする対象において前記疾患、症候群又は状態を治療するための医薬を調剤するための、上記[1]又は上記[15]に記載の化合物の使用。
[29] ウイルス感染、黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌及び線維肉腫からなる群から選択される疾患、症候群又は状態の治療を必要とする対象において前記疾患、症候群又は状態を治療する方法において使用するための、上記[1]又は上記[15]に記載の化合物の使用。