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特許7213196モータ駆動装置およびそれを用いた空気調和機の室外機、モータ駆動制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】モータ駆動装置およびそれを用いた空気調和機の室外機、モータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/05 20060101AFI20230119BHJP
   H02P 21/22 20160101ALI20230119BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20230119BHJP
   H02P 6/10 20060101ALI20230119BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230119BHJP
   F24F 1/12 20110101ALI20230119BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20230119BHJP
   F24F 11/871 20180101ALI20230119BHJP
【FI】
H02P21/05
H02P21/22
H02P27/08
H02P6/10
H02M7/48 E
F24F1/12
F24F11/86
F24F11/871
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020032933
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021136811
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中尾 矩也
(72)【発明者】
【氏名】戸張 和明
(72)【発明者】
【氏名】杉野 友啓
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-141175(JP,A)
【文献】特開2012-44785(JP,A)
【文献】特開2010-57218(JP,A)
【文献】特開2003-18900(JP,A)
【文献】特開2003-259698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/05
H02P 21/22
H02P 27/08
H02P 6/10
H02M 7/48
F24F 1/12
F24F 11/86
F24F 11/871
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに電力を供給する電力変換回路と、
前記電力変換回路を制御する制御部と、
前記モータに通電される三相電流を検出する電流センサと、を備え、
前記制御部は、前記モータの駆動に寄与する指令電圧を演算する指令電圧演算部と、
前記電流センサにより検出した三相検出電流を互いに直交する成分に分離した各成分に基づいて前記各成分の脈動分を抽出した第一成分と第二成分を生成する脈動電流検出部と、
前記第一成分に基づいて前記モータの構造に起因するトルク脈動を補償する第一補償指令電圧を出力するトルク脈動補償部と、
前記第二成分に基づいて前記電力変換回路のデッドタイムに起因する出力電圧歪みを補償する第二補償指令電圧を出力するデッドタイム補償部と、を有し、
前記第一補償指令電圧および前記第二補償指令電圧により前記指令電圧を補正することで、前記トルク脈動および前記出力電圧歪みを低減することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動装置において、
前記制御部は、前記三相検出電流をd軸電流およびq軸電流に変換する三相/dq変換部を有し、
前記互いに直交する成分は、d軸成分とq軸成分であり、
前記第一成分は、d軸成分およびq軸成分の内の一方の脈動分であり、
前記第二成分は、d軸成分およびq軸成分の内の他方の脈動分であることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ駆動装置において、
前記制御部は、前記モータの回転子位置を検出する回転子位置検出部を有し、
前記脈動電流検出部は、前記モータの回転子位置に応じて6n次(nは1以上の整数)で変動する正弦波信号もしくは余弦波信号を前記q軸電流に乗算することで前記第一成分の情報を含む信号を生成し、
前記モータの回転子位置に応じて6n次で変動する正弦波信号もしくは余弦波信号を前記d軸電流に乗算することで前記第二成分の情報を含む信号を生成することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載のモータ駆動装置において、
前記制御部は、前記三相検出電流をd軸電流およびq軸電流に変換する三相/dq変換部と、
前記モータの回転子位置を検出する回転子位置検出部と、を有し、
前記脈動電流検出部は、前記d軸電流および前記q軸電流を基にこれらの電流によって形成される電流ベクトルとq軸とが成す角に相当する電流位相を演算する電流位相演算部と、
前記モータの回転子位置と前記電流位相を加算して補正後回転子位置を生成する加算部と、
前記電流位相を基に前記d軸電流および前記q軸電流を前記電流ベクトルの向きと対向するδ軸上の成分と前記δ軸に対して90°位相がずれたγ軸の成分に変換するdq/γδ変換部と、を有し、
前記補正後回転子位置に応じて6n次(nは1以上の整数)で変動する正弦波信号もしくは余弦波信号を前記δ軸上の電流に乗算することで前記第一成分の情報を含む信号を生成し、
前記補正後回転子位置に応じて6n次で変動する正弦波信号もしくは余弦波信号を前記γ軸上の電流に乗算することで前記第二成分の情報を含む信号を生成することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ駆動装置において、
前記トルク脈動補償部は、前記第一成分を基に積分制御によって前記モータの構造に起因する誘起電圧歪みに関する第一パラメータを演算し、
前記第一パラメータと、前記モータの電気角速度と、前記回転子位置あるいは前記補正後回転子位置に応じて6n次で変動する正弦波信号もしくは余弦波信号を基にd軸補償指令電圧およびq軸補償指令電圧を生成することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項6】
請求項4に記載のモータ駆動装置において、
前記トルク脈動補償部は、前記第一成分を基に積分制御によって前記モータの構造に起因する誘起電圧歪みに関する第一パラメータを演算し、
前記第一パラメータと、前記q軸電流と、前記モータの電気角速度と、前記回転子位置あるいは前記補正後回転子位置に応じて6n次で変動する正弦波信号もしくは余弦波信号をもとにd軸補償指令電圧およびq軸補償指令電圧を生成することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項7】
請求項1に記載のモータ駆動装置において、
前記デッドタイム補償部は、前記第二成分を基に積分制御によって前記電力変換回路のデッドタイムに起因する出力電圧歪みに関する第二パラメータを演算し、
前記第二パラメータと、前記三相検出電流の情報を基に三相補償指令電圧を生成することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項8】
永久磁石同期モータと、
前記永久磁石同期モータを駆動するモータ駆動装置と、
前記永久磁石同期モータに接続されるファンと、
前記永久磁石同期モータを取り付けるフレームと、
圧縮機装置システムと、を備える空気調和機の室外機において、
前記モータ駆動装置は、請求項1から7のいずれか1項に記載のモータ駆動装置であることを特徴とする空気調和機の室外機。
【請求項9】
モータに通電される三相電流を検出し、当該検出した三相検出電流を互いに直交する成分に分離して各成分の脈動分を抽出した第一成分と第二成分を生成し、
前記第一成分に基づいて前記モータの構造に起因するトルク脈動を補償する第一補償指令電圧を生成し、
前記第二成分に基づいて電力変換回路のデッドタイムに起因する出力電圧歪みを補償する第二補償指令電圧を生成し、
前記第一補償指令電圧および前記第二補償指令電圧により前記モータの駆動に寄与する指令電圧を補正することで、前記トルク脈動および前記出力電圧歪みを低減することを特徴とするモータ駆動制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載のモータ駆動制御方法において、
前記互いに直交する成分は、d軸成分とq軸成分であり、
前記第一成分は、d軸成分およびq軸成分の内の一方の脈動分であり、
前記第二成分は、d軸成分およびq軸成分の内の他方の脈動分であることを特徴とするモータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ(電動機)を駆動するモータ駆動装置とその制御に係り、特に、静音性が求められる用途で使用されるモータ(電動機)の駆動制御に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石同期モータの誘起電圧は理想的には基本波成分のみを含むが、実際には三相静止座標上において5次成分や7次成分といった空間高調波成分が存在する。この誘起電圧の歪み成分はモータトルクが脈動する一因となり、この変動するトルクが機械共振の励起源となることで、騒音や振動が発生する。
【0003】
機械共振によって生じる騒音や振動は、例えば、モータを固定する箇所や回転軸受け部に防振ゴムを設けることで軽減できる。しかし、この方法では部品点数の増加に伴い構造が複雑化すること、さらにコストが増加することが問題となる。
【0004】
このことから、防振ゴムのような部材を用いることなく、永久磁石同期モータの制御方法により機械共振の励起源であるトルク脈動を抑制する技術(以下、トルク脈動抑制制御と称する)の開発が進められている。
【0005】
制御によってトルク脈動を抑制する場合、制御指令を生成するにあたり、誘起電圧の歪み成分がどの程度含まれているかを把握しておく必要がある。一つの手段として、誘起電圧波形を含むモータ特性を事前に測定しておく方法が考えられるが、不特定のモータに対して個別の測定を行うことは容易ではない。また、既設の製品等ではモータ特性の測定が困難な場合もある。
【0006】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「固定子電流を、回転子N極位相をd軸位相とする直交2軸のdq同期座標系上のベクトル信号として捕らえ、最終電流指令値に追従するように制御する電流制御手段と、初期トルク指令値あるいは初期電流指令値を補償するための補償信号を生成する補償信号生成手段と、生成した補償信号を用いて初期トルク指令値あるいは初期電流指令値を補償して、最終電流指令値を生成する最終電流指令値生成手段と、を備える同期電動機の駆動制御装置であって、誘起電圧に含まれる高調波成分の一部または全部を実時間抽出し、実時間抽出した誘起電圧高調波成分と固定子電流相当値と回転子速度相当値とを少なくとも用いて補償信号を生成するように、該補償信号生成手段を構成したことを特徴とする同期電動機の駆動制御装置」が開示されている。
【0007】
特許文献1のようにモータ駆動装置内で制御指令やセンサ情報を基に所望のパラメータをオンラインで推定することにより、不特定のモータが搭載されるファンやポンプ等の用途であっても高い汎用性を実現することができる。
【0008】
また、特許文献2には「スイッチング素子をオフ状態とする保護期間であるデッドタイムの長さを決定するデッドタイムの長さ指令に基づいたスイッチング指令によってスイッチング素子がオンおよびオフ動作されたときの電力変換部から負荷へ供給される電流値またはスイッチング指令を生成するための電圧指令値を用いて、電圧指令値を補償する補償量を求める電力変換装置」が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には「永久磁石モータを駆動する電力変換回路と、前記電力変換回路を制御する制御部とを備え、前記制御部は、電圧指令生成部と、トルク脈動補償部とを含み、前記トルク脈動補償部は、振幅生成部と、補正電圧生成部と、加算部とを含み、前記電圧指令生成部は電圧指令を出力し、前記振幅生成部は補正電圧振幅を出力し、前記補正電圧生成部は前記補正電圧振幅と回転子位置とから補正電圧指令を出力し、前記加算部は前記電圧指令と前記補正電圧指令とから補正後電圧指令を出力し、前記補正後電圧指令に基づいて前記電力変換回路を動作させるモータ駆動装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2012-100510号公報
【文献】特開2018-182901号公報
【文献】特開2017-229126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、永久磁石同期モータにおける誘起電圧の歪み成分は、先に述べたように三相静止座標上において5次、7次といった次数成分を含んでいる。これらの次数成分は、モータの電気的な回転に同期した二軸直交座標(以下、dq座標)上においては、6次成分となって現れる。このことから、dq座標上において上記特許文献1に開示されているようなオブザーバを構築することで、制御指令やセンサ情報に含まれる6次成分を基に、外乱に相当する誘起電圧の歪み成分を推定することができる。
【0012】
しかしながら、複数の要因で制御指令やセンサ情報に6次成分を含有する場合、特許文献1に開示されているような方法では要因毎に影響を切り分けられないため、誘起電圧の歪み成分を精度良く推定できなくなるという課題があった。
【0013】
制御指令やセンサ情報に6次成分を含有する他の要因としては、インバータ起因の出力電圧誤差がある。インバータはスイッチング素子を動作させることでモータに電力を供給しており、上下アーム間の短絡を防止するためにスイッチング素子を同時にオフさせる期間(以下、デッドタイムとも称する)を設定する。これに伴い、インバータの出力電圧は指令電圧に対してずれが生じ、dq座標上において6次の外乱電圧が発生する。
【0014】
以上のことから、モータ起因の誘起電圧歪みと、インバータ起因の出力電圧歪みが同時に存在する中でトルク脈動抑制制御を実現する場合、これらの影響を制御指令やセンサ情報の中から切り分け、個別に関連パラメータを推定して補償する手段が必要となる。
【0015】
上記特許文献2では、検出電流の中から上記2つの影響を分離する有効な手段が開示されている。この方法では、通常一定に設定されるデッドタイムの長さを6次以外の周期で変化させることで、6次周期で変化する誘起電圧の歪み成分との干渉を回避している。
【0016】
特許文献2はインバータ起因の出力電圧歪みを補償するものであるが、モータ起因の誘起電圧歪みを補償する既存の手段を組み合わせることで、より効果的なトルク脈動抑制制御を実現できると考えられる。しかしながら、デッドタイムの長さを変化させる場合、幅を有する設定の下端値が上下アーム間の短絡を防止するために必要なオフ期間を下回らないようにする必要があり、制御設計が複雑化してしまう。
【0017】
また、ファンやポンプ用途では安価な駆動装置を用いており、特許文献2のようにデッドタイム時間を周期的に変化させることが困難な場合があった。
【0018】
そこで、本発明の目的は、モータ起因の誘起電圧歪み及びインバータ起因の出力電圧歪みによるトルク脈動を効果的に抑制可能なモータ駆動装置およびそれを用いた空気調和機の室外機、モータ駆動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明は、モータに電力を供給する電力変換回路と、前記電力変換回路を制御する制御部と、前記モータに通電される三相電流を検出する電流センサと、を備え、前記制御部は、前記モータの駆動に寄与する指令電圧を演算する指令電圧演算部と、前記電流センサにより検出した三相検出電流を互いに直交する成分に分離した各成分に基づいて前記各成分の脈動分を抽出した第一成分と第二成分を生成する脈動電流検出部と、前記第一成分に基づいて前記モータの構造に起因するトルク脈動を補償する第一補償指令電圧を出力するトルク脈動補償部と、前記第二成分に基づいて前記電力変換回路のデッドタイムに起因する出力電圧歪みを補償する第二補償指令電圧を出力するデッドタイム補償部と、を有し、前記第一補償指令電圧および前記第二補償指令電圧により前記指令電圧を補正することで、前記トルク脈動および前記出力電圧歪みを低減することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、永久磁石同期モータと、前記永久磁石同期モータを駆動するモータ駆動装置と、前記永久磁石同期モータに接続されるファンと、前記永久磁石同期モータを取り付けるフレームと、圧縮機装置システムと、を備える空気調和機の室外機において、前記モータ駆動装置は、上記の特徴を有するモータ駆動装置であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、モータに通電される三相電流を検出し、当該検出した三相検出電流を互いに直交する成分に分離して各成分の脈動分を抽出した第一成分と第二成分を生成し、前記第一成分に基づいて前記モータの構造に起因するトルク脈動を補償する第一補償指令電圧を生成し、前記第二成分に基づいて電力変換回路のデッドタイムに起因する出力電圧歪みを補償する第二補償指令電圧を生成し、前記第一補償指令電圧および前記第二補償指令電圧により前記モータの駆動に寄与する指令電圧を補正することで、前記トルク脈動および前記出力電圧歪みを低減することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、モータ起因の誘起電圧歪み及びインバータ起因の出力電圧歪みによるトルク脈動を効果的に抑制可能なモータ駆動装置およびそれを用いた空気調和機の室外機、モータ駆動制御方法を提供することができる。
【0023】
これにより、予備試験等による事前調整を必要とせずにモータの騒音や振動を低減可能で、多様なモータに対応可能な汎用性の高いモータ駆動装置とそれを用いた空気調和機の室外機、モータ駆動制御方法を実現できる。
【0024】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1に係るモータ駆動装置の構成を示す図である。
図2図1の構成の一部をdq座標上で表現した図である。
図3】要因毎の電圧歪み波形の一例を示す図である。
図4】q軸電流のみを通電した場合の電流ベクトルおよび電圧歪み成分の軌跡を示す図である。
図5図1の脈動電流検出部116の構成を示す図である。
図6図1のトルク脈動補償部109の構成を示す図である。
図7図1のデッドタイム補償部112の構成を示す図である。
図8】本発明の実施例1に係るモータ駆動装置の動作波形の一例を示す図である。
図9】本発明の実施例2に係るモータ駆動装置の構成を示す図である。
図10図9のトルク脈動補償部109’の構成を示す図である。
図11】本発明の実施例2に係るモータ駆動装置の動作波形の一例を示す図である。
図12】d軸およびq軸電流を通電した場合の電流ベクトルおよび電圧歪み成分の軌跡を示す図である。
図13】本発明の実施例3に係るモータ駆動装置の構成を示す図である。
図14図13の脈動電流検出部116’の構成を示す図である。
図15】本発明の実施例4に係る空気調和機の室外機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0027】
図1から図8を参照して、本発明の実施例1のモータ駆動装置とその制御方法について説明する。
【0028】
図1は、本実施例のモータ駆動装置の構成図である。図1に示すように、本実施例のモータ駆動装置100は、指令速度発生部102と、制御部103と、永久磁石同期モータ101(以下、単に「モータ」とも呼ぶ)に電力を供給する電力変換回路104(以下、「インバータ」とも呼ぶ)と、電流センサ105と、を備える。本実施例では、モータ駆動装置100が指令速度発生部102を備えるが、制御部103の中、あるいはモータ駆動装置100の外に備える構成であってもよい。
【0029】
制御部103は、指令速度発生部102より与えられる指令速度ωr*と、電流センサ105にて検出される三相検出電流Iu,Iv,Iwに基づき、三相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*を出力し、モータ101の回転速度制御を行う。本実施例では、三相全ての電流を電流センサ105で検出しているが、いずれか二相分を電流センサ105で検出し、残りの一相を制御部103で演算する構成であってもよい。
【0030】
電力変換回路104は、制御部103から出力される三相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に基づき、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行い、パルス状の出力電圧を発生させることでモータ101を駆動する。
【0031】
制御部103は、ベクトル制御を基本構成としている。指令速度発生部102より制御部103に入力される指令速度ωr*は、ゲイン乗算部106でゲイン「モータ極数P/2」が乗算され、電気角速度(P/2)・ωr*が演算される。
【0032】
指令電圧演算部107では、予め設定されるd軸指令電流Id*と、q軸検出電流IqcからLPF(Low Pass Filter)108を介して算出されるq軸指令電流Iq*と、電気角速度(P/2)・ωr*と、モータ定数の設定値に基づいて、d軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*を演算する。d軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*は、モータ101の回転に寄与する直流量の指令電圧である。
【0033】
トルク脈動補償部109は、モータ起因の誘起電圧歪みの影響を補償するためのd軸およびq軸補償指令電圧ΔVd*,ΔVq*を演算する。d軸およびq軸補償指令電圧ΔVd*,ΔVq*は、加算部110にてd軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*に加算され、補償後のd軸およびq軸指令電圧Vdc**,Vqc**が生成される。尚、加算部110は、加算部110a,110bで構成されている。
【0034】
dq/3相変換部111は、回転子位置θdcに基づき、補償後のd軸およびq軸指令電圧Vdc**,Vqc**を三相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に変換する。
【0035】
デッドタイム補償部112は、インバータ起因の出力電圧歪みの影響を補償するための三相補償指令電圧ΔVu*,ΔVv*,ΔVw*を生成する。三相補償指令電圧ΔVu*,ΔVv*,ΔVw*は、加算部113にて三相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に加算され、補償後の三相指令電圧Vu**,Vv**,Vw**が生成され、電力変換回路104に入力される。尚、加算部113は、加算部113a,113b,113cで構成されている。
【0036】
回転子位置検出部114では、d軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*と、d軸およびq軸検出電流Idc,Iqcと、電気角速度(P/2)・ωr*と、モータ定数の設定値に基づいて、制御軸(dc軸)とモータの磁束軸(d軸)との位相偏差である軸誤差Δθcを演算する。そして、PLL(Phase Locked Loop)によりΔθcがゼロとなるように電気角速度を制御し、得られた値を積分することで回転子位置θdcを演算する。すなわち、本実施例は位置センサを不要とするセンサレスベクトル制御を構成するものである。
【0037】
3相/dq変換部115では、回転子位置θdcに基づき、三相検出電流Iu,Iv,Iwをd軸およびq軸検出電流Idc,Iqcに変換する。
【0038】
脈動電流検出部116では、回転子位置θdcと、d軸およびq軸検出電流Idc,Iqcに基づき、d軸およびq軸検出電流Idc,Iqcの脈動分である第一成分Ih1 ̄と第二成分Ih2 ̄を抽出する。第一成分Ih1 ̄はトルク脈動補償部109、第二成分Ih2 ̄はデッドタイム補償部112に入力され、それぞれにおいて補償制御に関わるパラメータの推定演算に利用される。
【0039】
すなわち、本実施例では、モータ起因の誘起電圧歪みの影響と、インバータ起因の出力電圧歪みの影響がd軸およびq軸検出電流Idc,Iqcの脈動分として現れるものとし、その情報を脈動電流検出部116にて適切に抽出することで制御を行うものである。
【0040】
以上が、本実施例の基本構成である。
【0041】
指令電圧演算部107では、以下の式(1)に従って、d軸指令電流Id*と、q軸指令電流Iq*と、電気角速度(P/2)・ωr*と、モータ定数の設定値に基づいて、d軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*を演算する。
【0042】
【数1】
【0043】
式(1)において、Rは巻線抵抗、Ldはd軸インダクタンス、Lqはq軸インダクタンス、Keは誘起電圧係数をそれぞれ表し、上付き文字*は各モータ定数の設定値を意味する。
【0044】
指令電圧演算部107では、d軸指令電流Id*として予め設定した一定値を用い、q軸指令電流Iq*としてq軸検出電流IqcにLPF108によりローパスフィルタ処理を施した値を用いて、式(1)の演算を行う。
【0045】
このことから、モータ101が一定速度で駆動される定常状態においては、d軸指令電流Id*,q軸指令電流Iq*は一定となり、d軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*も同様に一定となる。
【0046】
回転子位置検出部114では、以下の式(2)に従って、d軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*と、d軸およびq軸検出電流Idc,Iqcと、電気角速度ω1cと、モータ定数の設定値に基づいて、軸誤差Δθcを演算する。
【0047】
【数2】
【0048】
式(2)において、電気角速度ω1cはPLLにより軸誤差Δθcがゼロとなるように電気角速度を調整することで得られる信号である。回転子位置検出部114では、電気角速度ω1cを積分することで、回転子位置θdcを演算する。
【0049】
以上の構成でモータ101を駆動すると、先に述べたようにモータ起因の誘起電圧歪みの影響と、インバータ起因の出力電圧歪みの影響がd軸およびq軸検出電流Idc,Iqcの脈動分として現れる。この原理について、図2を用いて以下に説明する。
【0050】
図2は、図1に示す構成の内、説明に必要な要素を図示したものであり、トルク脈動補償部109やデッドタイム補償部112は示していない。また、永久磁石同期モータ200はdq座標上の等価モデルで示している。減算部201a,201bでは、d軸およびq軸上の誘起電圧係数の歪み成分Kehd、Kehqに電気角速度(P/2)・ωrを乗算した(P/2)・ωr・Kehd、(P/2)・ωr・Kehqが減算される。
【0051】
すなわち、減算部201a,201bは、モータ起因の誘起電圧歪みの影響をdq座標上で等価的に表現したものである。
【0052】
減算部202a,202bでは、d軸およびq軸上のデッドタイムによる出力電圧歪みVtdd、Vtdqが減算される。
【0053】
すなわち、減算部202a,202bは、インバータ起因の出力電圧歪みの影響をdq座標上で等価的に表現したものである。
【0054】
なお、図2において、実線の矢印は「直流量+交流量」、点線の矢印は「直流量のみ」を含むことを表す。
【0055】
図2に示すように、モータ起因の誘起電圧歪みと、インバータ起因の出力電圧歪みが存在する場合、指令電圧演算部107で生成されるd軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*それぞれに交流量である「(P/2)・ωr・Kehd+Vtdd」と「(P/2)・ωr・Kehq+Vtdq」が減算される。
【0056】
その結果、永久磁石同期モータ200には、d軸およびq軸それぞれにおいて直流分Id ̄,Iq ̄に加えて、脈動分Idh、Iqhが通電される。これらの電流の内、q軸電流「Iq ̄+Iqh」はLPF108を介してq軸指令電流Iq*に変換されて指令電圧演算部107へとフィードバックされる。このとき、LPF108のカットオフ周波数をq軸電流の脈動分Iqhの変動周波数よりも十分に小さくし、Iq*=Iq ̄となるように設定されるものとする。
【0057】
これにより、指令電圧演算部107で生成されるd軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*は直流量となり、d軸およびq軸電流の直流分Id ̄、Iq ̄のみが制御される。
【0058】
一方、脈動分Idh、Iqhは指令電圧演算部107に関係なくそのまま残存するため、これらの電流脈動分を検出することで、モータ起因の誘起電圧歪み「(P/2)・ωr・Kehd,(P/2)・ωr・Kehq」とインバータ起因の出力電圧歪み「Vtdd,Vtdq」の影響を観測することができる。
【0059】
ここで、d軸およびq軸の誘起電圧係数の歪み成分は互いに等しくなるものとする(Kehd=Kehq)。また、デッドタイムによる出力電圧歪みは、静止座標上において以下の式(3)で表されるものとする。
【0060】
【数3】
【0061】
式(3)において、Tdはデッドタイムの長さ、fcはキャリア周波数、VDCはインバータに印加される直流電圧であり、sign(i)は各相の検出電流の極性を意味する。
【0062】
図3は、モータにq軸側のみ電流が通電される場合において(d軸電流はゼロ)、モータ起因の誘起電圧歪み「(P/2)・ωr・Kehd,(P/2)・ωr・Kehq」とインバータ起因の出力電圧歪み「Vtdd,Vtdq」を図示したものである。
【0063】
図3に示すように、モータ起因の誘起電圧歪み「(P/2)・ωr・Kehd,(P/2)・ωr・Kehq」は、d軸、q軸上において振幅はともに同一であり、位相が互いに90°ずれた脈動電圧となる。一方、インバータ起因の出力電圧歪み「Vtdd,Vtdq」は、d軸上において鋸波状、q軸上において半波状となり、形状が互いに大きく異なる脈動電圧となる。
【0064】
脈動振幅の観点で見ると、q軸側のVtdqに比べてd軸側のVtddの方が大きいことから、インバータ起因の出力電圧歪みはd軸側、すなわち非通電軸側に顕著に現れていることが分かる。
【0065】
この特性をdq座標上で図示すると、図4に示すように表現することができる。図4において、Iは電流ベクトル(q軸電流のみ通電)、Xはモータ起因の誘起電圧歪みの軌跡、Yはインバータ起因の出力電圧歪みの軌跡である。Xは円状の軌跡になるのに対して、Yは半月状の軌跡となる。
【0066】
また、6次成分のみに着目して数式で表現すると、モータ起因の誘起電圧歪みと、インバータ起因の出力電圧歪みはそれぞれ以下の式(4)と式(5)で表される。
【0067】
【数4】
【0068】
【数5】
【0069】
但し、式(4)において、Keh ̄はKehdおよびKehqの振幅である。また、式(5)において、Vtdd ̄とVtdq ̄はVtddとVtdqの振幅である。
【0070】
本実施例では、インバータ起因の出力電圧歪みにおける特徴から、d軸およびq軸検出電流Idc,Iqcの脈動分を抽出する脈動電流検出部116を図5に示す構成としている。
【0071】
先に述べたように、インバータ起因の出力電圧歪みは主として非通電軸であるd軸側に現れることから、デッドタイム補償部112で使用する第二成分Ih2 ̄をd軸検出電流Idcより抽出している。
【0072】
より具体的には、Vtddの変動周波数が十分に速いと仮定(すなわち、モータ速度が十分に速いと仮定)すると、電流位相は電圧位相に対して90°遅れること、さらに式(5)より主成分であるVtddはsinθdの関数であることから、乗算部501にてd軸検出電流Idcにcos6θdcを乗算することでインバータ起因の出力電圧歪みの影響を検出する。LPF502では、乗算部501の演算結果であるIdc・cos6θdcの直流量を抽出し、第二成分Ih2 ̄を出力する。
【0073】
一方、q軸検出電流Iqcからは、モータ起因の誘起電圧歪みの影響として、トルク脈動補償部109で使用する第一成分Ih1 ̄を抽出している。
【0074】
より具体的には、式(4)より(P/2)・ωr・Kehqはcos6θdの関数であることから、乗算部504にてq軸検出電流Iqcにsin6θdcを乗算する。LPF505では、乗算部504の演算結果であるIqc・sin6θdcの直流量を抽出し、第一成分Ih1 ̄を出力する。
【0075】
本実施例では、脈動電流検出部116にLPF502とLPF505を含むが、これらのLPFを削除した構成としても良い。これは、トルク脈動補償部109とデッドタイム補償部112が、第一成分Ih1 ̄と第二成分Ih2 ̄に基づく積分制御を備えており、結果としてIdc・cos6θdcとIqc・sin6θdcの交流量がキャンセルされるためである。詳細については、後述する。
【0076】
図6は、トルク脈動補償部109の構成図である。トルク脈動補償部109は、脈動電流検出部116にて抽出した第一成分Ih1 ̄と電気角速度(P/2)・ωr*を基に、モータ起因の誘起電圧歪みで発生するトルク脈動を補償するためのd軸およびq軸補償指令電圧ΔVd*,ΔVq*を生成する。
【0077】
先ず、積分制御部600において、電流脈動の第一成分Ih1 ̄に応じて調整信号ΔKeh ̄を生成する。調整信号ΔKeh ̄は、加算部601にて初期値設定部602で設定されている初期値Keh0 ̄に加算され、設定値Keh* ̄が生成される。
【0078】
その後、sin6θdc信号生成部603で生成したsin6θdcと、電気角速度(P/2)・ωr*がそれぞれ乗算部604と607においてKeh* ̄に乗算され、d軸補償指令電圧ΔVd*が生成される。同様に、cos6θdc信号生成部605で生成したcos6θdcと、電気角速度(P/2)・ωr*がそれぞれ乗算部606と608においてKeh* ̄に乗算され、q軸補償指令電圧ΔVq*が生成される。
【0079】
本実施例では、初期値設定部602で設定されている値を初期値Keh0 ̄としたが、制御上は任意の値を設定することが可能であり、ゼロを設定してもよい。
【0080】
図1に示すように、d軸およびq軸補償指令電圧ΔVd*,ΔVq*は加算部110にてd軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*に加算され、補償後のd軸およびq軸指令電圧Vdc**,Vqc**が生成される。
【0081】
図2において、d軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*に代わり補償後のd軸およびq軸指令電圧Vdc**,Vqc**を適用すると、永久磁石同期モータ200内の加算部201aと201bで加算される(P/2)・ωr・Kehdおよび(P/2)・ωr・Kehqがそれぞれ補償後のd軸指令電圧Vdc**内のd軸補償指令電圧ΔVd*と補償後のq軸指令電圧Vqc**内のq軸補償指令電圧ΔVq*によって相殺され、モータ起因の誘起電圧歪みの影響が補償される。
【0082】
図7は、デッドタイム補償部112の構成図である。デッドタイム補償部112は、脈動電流検出部116にて抽出した第二成分Ih2 ̄と三相検出電流Iu,Iv,Iwを基に、インバータ起因の出力電圧歪みの影響を補償するための三相補償指令電圧ΔVu*,ΔVv*,ΔVw*を生成する。
【0083】
先ず、積分制御部700において、電流脈動の第二成分Ih2 ̄に応じて調整信号ΔVtd ̄を生成する。調整信号ΔVtd ̄は、加算部702にて初期値設定部701で設定されている初期値Vtd0 ̄に加算され、設定値Vtd* ̄が生成される。
【0084】
その後、符号関数部703で生成したU相検出電流Iuの極性に対応した1又は-1の信号が乗算部704においてVtd* ̄に乗算され、U相補償指令電圧ΔVu*が生成される。同様に、符号関数部705で生成される信号が乗算部706においてVtd* ̄に乗算され、V相補償指令電圧ΔVv*が生成される。さらに、符号関数部707で生成される信号が乗算部708においてVtd* ̄に乗算され、W相補償指令電圧ΔVw*が生成される。
【0085】
本実施例では、初期値設定部701で設定されている値を初期値Vtd0 ̄としたが、制御上は任意の値を設定することが可能であり、ゼロを設定してもよい。
【0086】
図1に示すように、三相補償指令電圧ΔVu*,ΔVv*,ΔVw*は加算部113にて三相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に加算され、補償後の三相補償指令電圧Vu**,Vv**,Vw**が生成される。
【0087】
ここで、三相補償指令電圧ΔVu*,ΔVv*,ΔVw*をdq軸成分に変換したものをΔVd**、ΔVq**とし、これらの指令電圧をd軸およびq軸指令電圧Vdc*,Vqc*に加算したものをVd***、Vq***とする。
【0088】
図2において、Vdc*,Vqc*に代わりVdc***,Vqc***を適用すると、加算部202aと202bで加算されるVtddおよびVtdqがそれぞれVdc***内のΔVd**とVqc***内のΔVq**によって相殺され、インバータ起因の出力電圧歪みの影響が補償される。
【0089】
図8は、本実施例の動作波形を示したものである。但し、d軸指令電流Id*はゼロに設定し、トルク脈動補償部109の初期値Keh0 ̄とデッドタイム補償部112の初期値Vtd0 ̄はゼロに設定している。図8において、時刻T1はトルク脈動補償部109が動作を開始する(積分制御部600が動作を開始する)時間、時刻T2はデッドタイム補償部112が動作を開始する(積分制御部700が動作を開始する)時間を示している。
【0090】
時間T1<t<T2において、トルク脈動補償部109が動作すると、q軸検出電流Iqcの脈動分が低減していくとともに、設定値Keh* ̄の実際値Keh ̄に対する設定比率が増加していることが分かる。これは、電流脈動の第一成分Ih1 ̄、すなわちq軸検出電流Iqcの脈動分を基に積分制御部600によって設定値Keh* ̄が調整されたためである。
【0091】
しかし、比率Keh* ̄/Keh ̄は1未満となっており、「設定値Keh* ̄=実際値Keh ̄」とはなっていない。これは、図3に示すようにq軸側においてインバータ起因の出力電圧歪みVtdqが存在しており、積分制御部600で生成される調整信号ΔKeh ̄に誤差が含有しているためである。
【0092】
時刻T2<tにおいて、デッドタイム補償部112が動作すると、d軸検出電流Idcの脈動分が低減していくとともに、設定値Vtd* ̄の実際値Vtd ̄に対する設定比率が増加していることが分かる。これは、電流脈動の第二成分Ih2 ̄、すなわちd軸検出電流の脈動分を基に積分制御部700によって設定値Vtd* ̄が調整されたためである。
【0093】
また、設定値Keh* ̄の実際値Keh ̄に対する設定比率も同時に変化している。これは、トルク脈動補償部109におけるインバータ起因の出力電圧歪みVtdqの影響がデッドタイム補償部112によって補償され、積分制御部600で生成される調整信号ΔKeh ̄に含有する誤差が除去されたためである。
【0094】
結果として、比率Vtd* ̄/Vtd ̄と比率Keh* ̄/Keh ̄は共に1付近に収束し、「設定値Vtd* ̄=実際値Vtd ̄」および「設定値Keh* ̄=実際値Keh ̄」となるよう制御が行われている。
【0095】
このように、本発明はモータ起因の誘起電圧歪みと、インバータ起因の出力電圧歪みが同時に存在する中で、これら2つの影響を検出電流の中から切り分け、個別に関連パラメータを推定して補償(補正)することが可能である。
【0096】
図8において、トルク脈動補償部109とデッドタイム補償部112の動作開始時間をずらしている(T1≠T2)が、これらの補償部の動作を同時に開始してもよい(T1=T2)。
【実施例2】
【0097】
図9から図11を参照して、本発明の実施例2のモータ駆動装置とその制御方法について説明する。
【0098】
実施例1では、トルク脈動補償部109とデッドタイム補償部112が動作することで、図2におけるモータ起因の誘起電圧歪みとインバータ起因の出力電圧歪みの影響が補償され(加算部201a,201bと加算部202a,202bで加算される項がキャンセルされ)、脈動分Idh,Iqhを含まない一定のd軸およびq軸電流Id ̄、Iq ̄が通電される。すなわち、諸要因で歪んだ電流波形を理想的な正弦波状に近づけることによってトルク脈動低減効果を得るものである。
【0099】
しかし、図2において一定のd軸およびq軸電流Id ̄,Iq ̄を通電したとしても、乗算部203,204におけるモータ起因の誘起電圧歪みの影響は残っているため、得られるトルク脈動低減効果は限定的となる。(図8のトルク波形を参照)
そこで、上記のトルク脈動を補償するために、例えば上記特許文献3に開示されている方法を用いてもよい。すなわち、トルク脈動が相殺されるように、意図的にq軸電流を脈動させるように制御してもよい。
【0100】
図9は、本実施例のモータ駆動装置の構成図である。本構成は、実施例1(図1)の構成におけるトルク脈動補償部109をトルク脈動補償部109’に置き換えたものである。
【0101】
図10に、トルク脈動補償部109’の構成を示す。実施例1(図1)のトルク脈動補償部109との違いは、q軸検出電流Iqcが入力されていること、補償電圧演算部1000と、LPF(ローパスフィルタ)1002と、乗算部1003,1004,1006,1007と、加算部1005,1008が付加されていることである。
【0102】
LPF(ローパスフィルタ)1002は、q軸検出電流Iqcの直流量を抽出し、Iqc ̄を生成する。
【0103】
補償電圧演算部1000には、誘起電圧係数の歪み成分の設定値Keh* ̄と、LPF1002によるIqc ̄と、電気角速度(P/2)・ωr*が入力され、以下の式(6)に基づいて、第一d軸補償指令電圧ΔVd1* ̄、第二d軸補償指令電圧ΔVd2* ̄、第一q軸補償指令電圧ΔVq1* ̄、第二q軸補償指令電圧ΔVq2* ̄を生成する。
【0104】
【数6】
【0105】
補償電圧演算部1000の演算結果であるΔVd1* ̄,ΔVd2* ̄には、それぞれ乗算部1003と乗算部1004においてsin6θdcとcos6θdcが乗算され、ΔVd1* ̄・sin6θdcとΔVd2* ̄・cos6θdcが生成される。その後、これらの演算結果は加算部1005で足し合わされてd軸補償指令電圧ΔVd*が生成される。
【0106】
同様に、ΔVq1* ̄,ΔVq2* ̄には、それぞれ乗算部1006と乗算部1007においてsin6θdcとcos6θdcが乗算され、ΔVq1* ̄・sin6θdcとΔVq2* ̄・cos6θdcが生成される。その後、これらの演算結果は加算部1008で足し合わされてq軸補償指令電圧ΔVq*が生成される。
【0107】
本実施例の構成で生成したd軸およびq軸補償指令電圧ΔVd*、ΔVq*を適用すると、定常状態において式(7)に示すq軸電流が通電される。
【0108】
【数7】
【0109】
式(7)に示す脈動分を含むq軸電流が通電されることにより、実施例1の構成に対して、トルク脈動を比率「ΔKeh ̄/Ke」で低減することができる。
【0110】
図11は、本実施例の動作波形を示したものである。動作条件は図8に示す実施例1の場合と同様であり、トルク脈動補償部109がトルク脈動補償部109’に置き換わっている点のみが異なる。実施例1の動作波形である図8と比較すると、トルクおよび電流波形が異なっている。本実施例では、時刻T1<tにおいて意図的に脈動分を含有させたq軸電流Iqが通電されており、より高いトルク脈動低減効果を得られていることが分かる。
【0111】
このように、本実施例ではインバータ起因の出力電圧歪みが存在する条件下であっても、検出電流から誘起電圧係数の歪み成分Keh ̄を推定することができ、得られたKeh ̄に基づいて脈動電流を意図的に通電することで、より効果的にトルク脈動を相殺することができる。
【実施例3】
【0112】
図12から図14を参照して、本発明の実施例3のモータ駆動装置とその制御方法について説明する。
【0113】
先に述べたように、インバータ起因の出力電圧歪みは非通電軸側に顕著に現れる。このことから、電流ベクトルの向きを観測して通電軸と非通電軸の向きを把握することができれば、他の通電条件においても実施例1,2と同様の制御動作を実現できる。
【0114】
ここで、d軸電流Idとq軸電流Iqがなす角度を電流位相β(=tan-1(-Id/Iq))と定義する。電流位相βを45°に設定する場合において、電流ベクトルI’と、モータ起因の誘起電圧歪みの軌跡X’と、インバータ起因の出力電圧歪みの軌跡Y’を図示したものを図12に示す。
【0115】
q軸電流のみが通電される図4のケースと比較すると、軌跡XとX’は同様であり、モータ起因の誘起電圧歪みの影響は電流に依存しないことが分かる。一方、軌跡YとY’は互いに異なっており、インバータ起因の出力電圧歪みの影響は電流ベクトルの向きとともに変化している。電流ベクトルの向き、すなわち通電方向をδ軸とし、時計回りに90°位相がずれた非通電方向をγ軸とすると、インバータ起因の出力電圧歪みの影響はγ軸に顕著に現れる。
【0116】
図13は、本実施例のモータ駆動装置の構成図である。本構成は、電流ベクトルの向きとインバータ起因の出力電圧歪みの影響の関係を考慮し、実施例1(図1)の構成における脈動電流検出部116を脈動電流検出部116’に置き換えたものである。本実施例(図13)では、トルク脈動補償部109を含む構成としているが、実施例2で示したトルク脈動補償部109’に置き換えた構成としてもよい。
【0117】
図14に、脈動電流検出部116’の構成を示す。実施例1(図5)の脈動電流検出部116との違いは、電流位相演算部1400と、dq/γδ変換部1401と、加算部1402が付加されていることである。
【0118】
電流位相演算部1400はd軸およびq軸検出電流Idc,Iqcを基に電流位相β「tan-1(-Idc/Iqc)」を演算する。dq/γδ変換部1401は、電流位相βを基に以下の式(8)を演算する。
【0119】
【数8】
【0120】
式(8)の演算により、電流ベクトルが非通電方向であるγ軸成分と通電方向であるδ軸成分に分離される。γ軸検出電流Iγcには、乗算部1405にてcos6θdc’が乗算され、LPF502を介して電流脈動の第二成分Ih2 ̄が生成される。同様に、δ軸検出電流Iδcには、乗算部1406にてsin6θdc’が乗算され、LPF505を介して電流脈動の第一成分Ih1 ̄が生成される。
【0121】
脈動電流検出部116’にて、電流脈動の第一成分Ih1 ̄および第二成分Ih2 ̄が生成された後の動作は、実施例1および実施例2と同様である。
【実施例4】
【0122】
図15を参照して、本発明の実施例4の空気調和機の室外機について説明する。図15は、上記の実施例1から実施例3のいずれかの実施形態によるモータ駆動装置を、空気調和機の室外機に搭載されるファンモータシステムに適用した例を示している。
【0123】
室外機1500は、ファンモータ用駆動装置1501と、圧縮機モータ用駆動装置1502と、ファンモータ1503と、ファン1504と、フレーム1505と、圧縮機装置1506を搭載する。ファンモータ用駆動装置1501は、上記の実施例1から実施例3のいずれかの実施形態によるモータ駆動装置である。
【0124】
室外機1500におけるファンモータシステムの動作を説明する。交流電源1507は、圧縮機モータ用駆動装置1502に接続される。圧縮機モータ用駆動装置1502は、供給される交流電圧VACを直流電圧VDCに整流し、圧縮機装置1506を駆動する。同時に、圧縮機モータ用駆動装置1502は、ファンモータ用駆動装置1501にも直流電圧VDCを供給し、さらにモータ速度指令ωr*を出力する。
【0125】
ファンモータ用駆動装置1501は、入力されたモータ速度指令ωr*に基づいて動作し、三相電圧をファンモータ1503に供給する。これにより、ファンモータ1503が駆動し、接続されたファン1504が回転する。以上が、ファンモータシステムの動作である。
【0126】
空気調和機の室外機では、低コスト化のために、ファンモータ用駆動装置1501に安価な演算装置を搭載するのが一般的である。また、ファンモータ1503には位置センサが付加されていない場合が多い。このような用途でも、本発明によるモータ駆動装置をファンモータ用駆動装置として用いることで、トルク脈動抑制制御を実現できる。その結果、ファンモータ1503に起因するフレーム1505への振動が低減され、室外機ユニット1500より放出される騒音を低減することができる。
【0127】
本発明によるモータ駆動装置は、予備試験や調整作業等が不要であるため、適用が非常に容易である。また、自律的なトルク脈動抑制制御であることから、モータ特性の測定が困難な既設の設備に対しても本発明を適用することができる。
【0128】
なお、実施例1から実施例3の実施形態によるモータ駆動装置は、圧縮機モータ用駆動装置として用いることも可能である。要するに、ベクトル制御を基本構成とするモータ駆動装置であれば、本発明を適用することが可能である。
【0129】
また、実施例1から実施例3の実施形態では、位置センサレス方式によるモータ駆動装置を例に説明したが、エンコーダ、レゾルバ、磁極位置センサなどの位置センサを備えるモータ駆動装置にも本発明を適用することができる。例えば、図1図9図13に示すモータ101に位置センサを付加し、制御部103に位置センサの情報に基づく速度フィードバック制御を付加する構成としても、本発明を適用することができる。
【0130】
また、図1図9図13の各指令電圧演算部107に代わり、d軸指令電流Id*とd軸検出電流Idcの偏差と、q軸指令電流Iq*とq軸検出電流Iqcの偏差に基づく電流フィードバック制御を含む構成としても、本発明を適用することができる。
【0131】
この場合、構築される電流フィードバック制御の応答帯域は、モータ起因の誘起電圧歪みやインバータ起因の出力電圧歪みの変動周波数よりも十分に低く設計しておく。これにより、d軸およびq軸検出電流Idc、Iqcに含まれる情報が実施例1から実施例3の実施形態と同一となり、本発明による適切な動作が可能となる。
【0132】
実施例1から実施例3では、モータ起因の誘起電圧歪みとインバータ起因の出力電圧歪みが6次周期で変動するものとして説明したが、変動周期が6次以外(12次、24次など)となる場合であっても本発明を同様に適用することが可能である。
【0133】
また、本発明の各実施例によれば、検出信号の一つであるd軸およびq軸検出電流に基づいて、モータ起因の誘起電圧歪み及びインバータ起因の出力電圧歪みの影響を検出して補償を行う制御である。指令信号ではなく、検出信号を用いることで、モデル化誤差や計算誤差等の影響を極力排して、高い精度で上記制御を行うことができる。
【0134】
検出信号を用いる場合、センサ等の追加に伴うコストの増加が懸念されるが、モータ駆動装置は電流センサを備える場合がほとんどである。すなわち本発明は、自律的に動作するトルク脈動抑制制御を既設センサのみで実現するものである。
【0135】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施例は本発明に対する理解を助けるために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0136】
100…モータ駆動装置、101…永久磁石同期モータ(モータ)、102…指令速度発生部、103…制御部、104…電力変換回路、105…電流センサ、106…ゲイン乗算部、107…指令電圧演算部、108…LPF(ローパスフィルタ)、109,109’…トルク脈動補償部、110,110a,110b…加算部、111…dq/3相変換部、112…デッドタイム補償部、113,113a,113b,113c…加算部、114…回転子位置検出部、115…3相/dq変換部、116,116’…脈動電流検出部、200…永久磁石同期モータ(dq座標モデル)、201a,201b…加算部、202a,202b…加算部、203,204…乗算部、500…cos6θdc信号生成部、503…sin6θdc信号生成部、501,504…乗算部、502,505…LPF(ローパスフィルタ)、600…積分制御部、601…加算部、602…初期値設定部、603…sin6θdc信号生成部、604,606,607,608…乗算部、605…cos6θdc信号生成部、700…積分制御部、701…初期値設定部、702…加算部、703,705,707…符号関数部、704,706,708…乗算部、1000…補償電圧演算部、1002…LPF(ローパスフィルタ)、1003,1004,1006,1007…乗算部、1005,1008…加算部、1400…電流位相演算部、1401…dq/γδ変換部、1402…加算部、1403…cos6θdc’信号生成部、1404…sin6θdc’信号生成部、1405,1406…乗算部、1500…室外機(ユニット)、1501…ファンモータ用駆動装置、1502…圧縮機モータ用駆動装置、1503…ファンモータ、1504…ファン、1505…フレーム、1506…圧縮機装置、1507…交流電源、ωr…モータ速度、ωr*…指令速度(モータ速度指令)、ω1c…PLLにより得られる電気角速度、Vu*,Vv*,Vw*…三相指令電圧、Vdc*,Vqc*…d軸およびq軸指令電圧、ΔVd*,ΔVq*…d軸およびq軸補償指令電圧、Vdc**,Vqc**…補償後のd軸およびq軸指令電圧、ΔVu*,ΔVv*,ΔVw*…三相補償指令電圧、Vu**,Vv**,Vw**…補償後の三相補償指令電圧、Iu,Iv,Iw…三相検出電流、Id,Iq…d軸およびq軸電流、Idc,Iqc…d軸およびq軸検出電流、Ih1 ̄,Ih2 ̄…電流脈動の第一成分および第二成分、θd…回転子位置、θdc…回転子位置の推定値、Δθc…軸誤差、τm…モータトルク、P…モータ極数、R…巻線抵抗、Ld,Lq…d軸およびq軸インダクタンス、Ke…誘起電圧係数、Kehd,Kehq…d軸およびq軸上の誘起電圧係数の脈動成分(歪み成分)、Keh ̄…KehdおよびKehqの振幅値、Keh* ̄…振幅値Keh ̄の設定値、ΔKeh ̄…Keh* ̄の演算における調整値、Keh0 ̄…Keh* ̄の演算における初期値、Vtd…インバータ起因の出力電圧歪みの三相静止座標成分、Vtdd,Vtdq…インバータ起因の出力電圧歪みのd軸およびq軸成分、Vtd ̄…Vtdの振幅値、Vtd* ̄…振幅値Vtd ̄の設定値、ΔVtd ̄…振幅値Vtd* ̄の演算における調整値、Vtd0 ̄…振幅値Vtd* ̄の演算における初期値、ΔVd1* ̄,ΔVd2* ̄…d軸補償電圧の第一振幅および第二振幅(第一d軸補償指令電圧,第二d軸補償指令電圧)、ΔVq1* ̄,ΔVq2* ̄…q軸補償電圧の第一振幅および第二振幅(第一q軸補償指令電圧,第二q軸補償指令電圧)、Iγc,Iδc…γ軸およびδ軸検出電流、β…電流位相、VAC…交流電圧、VDC…直流電圧。
図1
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