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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】異種ゼオライト分離膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20230119BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20230119BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20230119BHJP
   C01B 37/02 20060101ALI20230119BHJP
   C01B 39/48 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B01D71/02
B01D53/22
B01D69/12
C01B37/02
C01B39/48
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020046048
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2020151709
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】10-2019-0030645
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジュンギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ クァンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヨンファン
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-534272(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157701(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/129625(WO,A1)
【文献】特開2017-170444(JP,A)
【文献】特表2018-505772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C02F 1/44
C01B 37/02
C01B 39/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階を含む異種ゼオライト分離膜の製造方法:
(a)Si/Al比率が5~∞である合成溶液を使用して、支持体上にCHA構造を有するゼオライト粒子を蒸着させて種層を形成する段階;及び
(b)前記種層の形成された支持体をDDR前駆体溶液で144~300時間水熱合成させて異種積層成長によって成長したDDR@CHA異種ゼオライト分離膜を製造する段階、
であって、異種ゼオライト分離膜の内部にCHAとDDRゼオライト構造が共存する、前記製造方法。
【請求項2】
次の段階を含む異種ゼオライト分離膜の製造方法:
(a)Si/Al比率が5~∞である合成溶液を使用して、支持体上にDDR構造を有するゼオライト粒子を蒸着させて種層を形成する段階;及び
(b)前記種層の形成された支持体をCHA前駆体溶液で144~300時間水熱合成させて異種積層成長によって成長したCHA@DDR異種ゼオライト分離膜を製造する段階、
であって、異種ゼオライト分離膜の内部にCHAとDDRゼオライト構造が共存する、前記製造方法。
【請求項3】
前記DDR前駆体溶液は、SiO、有機構造指向剤、NaO、H、及びAlを100:1~1000:0~500:10~100000:0~10のモル比で含み、前記有機構造指向剤は、ヨウ化メチルトロピニウム、臭化メチルトロピニウム、フッ化メチルトロピニウム、塩化メチルトロピニウム、水酸化メチルトロピニウム、キヌクリジニウム、エチレンジアミンおよびアダマンチルアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の異種ゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記CHA前駆体溶液は、有機構造指向剤、SiO、HO、Na、及びAlを1~100:100:1000~20000:0.5~50:0~10のモル比で含み、前記有機構造指向剤は、TMAdaOH(N,N,N-trimethyl adamantylammonium hydroxide)、TMAdaBr(N,N,N-trimethyl adamantylammonium bromide)、TMAdaF(N,N,N-trimethyl adamantylammonium fluoride)、TMAdaCl(N,N,N-trimethyl adamantylammonium chloride)、TMAdaI(N,N,N-trimethyl adamantylammonium iodide)、TEAOH(tetraethylammonium hydroxide)、TEABr(tetraethylammonium bromide)、TEAF(tetraethylammonium fluoride)、TEACl(tetraethylammonium chloride)、TEAI(tetraethylammonium iodide)、ジプロピルアミン(dipropylamine)及びシクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)から構成された群から選ばれる1種以上を含む、請求項2に記載の異種ゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記支持体は、α-アルミナ、γ-アルミナ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリイミド、シリカ、ガラス、ムライト(mullite)、ジルコニア(zirconia)、チタニア(titania)、イットリア(yttria)、セリア(ceria)、バナジア(vanadia)、シリコン、ステンレススチール、カーボン、カルシウム酸化物(calcium oxide)及びリン酸化物(phosphorus oxide)から構成された群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の異種ゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記(b)段階は、100~200℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の異種ゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項7】
前記(b)段階の水熱合成後に乾燥する段階をさらに含む、請求項1又は2に記載の異種ゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2の方法によって製造され、ゼオライト分離膜の内部にCHAとDDRゼオライト構造が共存することを特徴とする異種ゼオライト分離膜。
【請求項9】
請求項8の異種ゼオライト分離膜を用いてCH、N、O、C、C、C及びCから構成された群から選ばれる分子とCOとを含む混合物からCOを分離する方法。
【請求項10】
乾燥条件又は水分が存在する条件で25~200℃の温度で行うことを特徴とする、請求項9に記載のCOを分離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種ゼオライト分離膜及びその製造方法に関し、より詳細には、選択的な二酸化炭素分離能力を有するCHA(chabazite)とDDR(deca-dodecasil 3 rhombohedral)の2つのゼオライト構造を同時に有する分離膜を製造することによって、水分条件でも高いCO/N及びCO/CH分離性能を有する異種ゼオライト分離膜及びその製造方法、並びに該分離膜を用いて二酸化炭素を捕集及び除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、規則的で固い微細多孔性構造を有するアルミノシリケート結晶性物質である。気孔構造の大きさが永久気体の大きさに近いので、ゼオライトを適切に選択すると、建設現場で使用される既存の砂/石/砂利体と類似に機能する分子体として働き得る。実際に、ゼオライト分離膜は永久気体間の形状及び大きさの微小な差を区別できる潜在力が高いので、エネルギー効率的な気体分離が可能である(Jeon,M.Y.et al.,Nature 2017,543,690-691;Tung,C.T.P.et al.,Science 2011,334,1533-1538)。
【0003】
ゼオライト分離膜のうち、DDR結晶構造を有するゼオライト分離膜は、DDR種粒子が合成し難く、再現性が非常に低いだけでなく、DDR構造の粒子を合成しても種粒子として使用するための均一で適切な大きさを有するDDR種粒子を作ることには制限があるため、分離膜として高い潜在力を有するにもかかわらず、実の産業及び工程では使用し難いという不具合がある。これは、現在まで高い性能を持つDDR構造のゼオライト分離膜を再現可能に製作できる確固たる方法論が不在することに起因する。種成長(又は、二次成長)方法論によって合成したゼオライト分離膜が再現性ある分離性能を有し得る可能性を示してはいるものの、このような方法を適用しても、DDR構造のゼオライト結晶を用いて高い分離能力を示す分離膜を再現性あるように製作することは非常にまれな状況である。
【0004】
ゼオライト分離膜は一般に種成長方法を用いて製作するが、このとき、分離膜を構成するゼオライトと同じゼオライト結晶構造を有する種粒子を多孔性支持台上に均一に蒸着させた後(種層の役目)、引き続き分離膜を成長させる。したがって、既存の方法を用いてCHA又はDDR構造のゼオライト分離膜を製作するためには、種粒子を構成するゼオライトと分離膜を構成するゼオライトの結晶構造が同一でなければならない。しかし、既存に報告されたDDRゼオライト粒子を合成する方法は複雑で且つ大変であるだけでなく、再現性に劣り、追加的に適度の粒子サイズにすることにも制限がある。このようなDDR構造を有する種粒子合成の短所から、これを用いた種成長方法で連続したDDRゼオライト分離膜を製作することは困難である。
【0005】
既存に報告されたDDR構造のゼオライト粒子を合成する方法に関する文献及び既存に報告された方法では再現性あるDDR構造のゼオライト粒子の合成がし難いということが分かる(den Exter et al.,Stud.Surf.Sci.Catal.,1994,84,1159-1166;Gucuyener et al.,J.Mater.Chem.,2011,21,18386-18397;Kim et al.,Chem.Commun.,2013,49,7418-7420)。さらには、既存の方法を用いてDDR構造の種粒子を合成しても、合成されたDDR粒子を用いて種成長によってDDR構造を有するゼオライト分離膜を製作したとき、二酸化炭素/窒素の分離において非常に低い分離性能を示すということが多くの文献から確認された。
【0006】
韓国登録特許第10-1927889号ではDDR構造を有する分離膜を開示している。また、米国登録特許第9,901,882号、第6,953,493号、及び第7,282,082号は、種粒子とその上に形成した分離膜の結晶構造が同一であるゼオライトを用いて製作したCHA又はDDRゼオライト分離膜を開示している。DDR構造の分離膜を製作するために、既存の種成長方法を用いて分離膜と同じ構造を有するように合成することが困難で複雑なDDRゼオライト種粒子を使用したため、ゼオライト分離膜の製作も困難な実情である。
【0007】
そこで、本発明者らは、前記問題点を解決するために鋭意努力した結果、代表的なゼオライト結晶の一つであり、再現性が非常に高く、容易に合成可能なCHA構造を有するゼオライト粒子を種粒子として代替使用し、種粒子とゼオライト分離膜の結晶構造を個別に成長させることによって、CHAとDDRゼオライト結晶構造を同時に有する異種ゼオライト分離膜を製造する場合、従来のゼオライト分離膜に比べて二酸化炭素の分離に効果的であり、特に水分条件でも高いCO/N及びCO/CH分離性能を示すことを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来のゼオライト分離膜に比べて乾燥及び水分条件において高いCO/N及びCO/CH分離性能を有する分離膜及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、前記分離膜を用いたCO分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、(a)支持体上にCHA構造のゼオライト粒子を蒸着させて種層を形成する段階;及び(b)前記種層の形成された支持体をDDR前駆体溶液で水熱合成させてDDR@CHA異種ゼオライト分離膜を製造する段階を含む異種ゼオライト分離膜の製造方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、(a)支持体上にDDR構造のゼオライト粒子を蒸着させて種層を形成する段階;及び(b)前記種層の形成された支持体をCHA前駆体溶液で水熱合成させてCHA@DDR異種ゼオライト分離膜を製造する段階を含む異種ゼオライト分離膜の製造方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、前記方法によって製造され、ゼオライト分離膜の内部にCHAとDDRゼオライト構造が共存することを特徴とする異種ゼオライト分離膜を提供する。
【0013】
本発明はまた、前記異種ゼオライト分離膜を用いて、CH、N、O、C、C、C及びCから構成された群から選ばれる分子とCOを含む混合物からCOを分離する方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る異種ゼオライト分離膜は、従来のゼオライト分離膜に比して、乾燥及び水分条件の両方において高い二酸化炭素/窒素及び二酸化炭素/メタン分離性能を有する。また、二酸化炭素捕集効果に優れたCHAとDDRゼオライトからなるので、高い二酸化炭素分離性能を示す効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のDDR@CHA異種ゼオライト分離膜を製作する方法の模式図である。
図2】本発明の一実施例に係る分離膜において種層と連続の膜で異種積層成長した分離膜のSEMイメージ写真である。
図3】本発明の一実施例に係る異種積層成長させたゼオライト膜においてCHA及びDDRゼオライトを識別した写真である。
図4】本発明の一実施例に係る異種積層成長させたDDR@CHA分離膜の二酸化炭素透過選択度及び安定性を確認したグラフである。
図5】本発明の一実施例に係る異種積層成長させたDDR@CHA分離膜シリーズ内部欠陥を視覚化して確認した写真である。
図6】本発明の一実施例に係る異種積層成長させたDDR@CHA分離膜の分離性能を評価したグラフである。
図7】本発明の一実施例に係る種層の形成に使用されたSSZ-13(CHA類型ゼオライト)種粒子のサイズ分布を示すグラフである。
図8】本発明の一実施例に係る異種積層成長されたゼオライト膜の電子回折パターン及び模擬パターンを示す写真である。
図9】本発明の一実施例に係るDDR@CHA_4dにおいてCHA及びDDRゼオライトを識別した写真である。
図10】本発明の一実施例に係る界面におけるCHA類型ゼオライトからDDR類型ゼオライトの積層成長が可能な概略的な構造モデルを示す図である。
図11】本発明の一実施例に係るDDR種層のSEM及びXRD結果とCHA合成溶液を使用したDDR種層の異種積層成長した写真である。
図12】本発明の一実施例に係るMFI合成溶液と共にSSZ-13種層から成長させた膜のSEM及びXRD結果を示す図である。
図13】本発明の一実施例に係るDDR@CHA分離膜シリーズの表面形態、化学的組成及び疎水性を確認した写真である。
図14】本発明の一実施例に係るDDR@CHA分離膜シリーズの疎水性を確認した写真である。
図15】本発明の一実施例に係る異種積層成長させたDDR@CHA分離膜シリーズのXRD結果を示す図である。
図16】本発明の一実施例に係る二次成長時間によるDDR@CHA分離膜のCPO値を示す図である。
図17】本発明の一実施例に係る二次成長時間によるCO/N分離性能を示すグラフである。
図18】本発明の一実施例に係る供給ガスのモル濃度組成によるCO/N分離性能を示すグラフである。
図19】本発明の一実施例に係るCO/N分離性能に対する供給混合物においてCO/Nモル濃度組成の効果を示すグラフである。
図20】本発明の一実施例に係る水分条件におけるDDR@CHA_10dの長期安定性試験結果を示すグラフである。
図21】本発明の一実施例に係るDDR@CHA分離膜シリーズのFCOM特性を分析した写真である。
図22】本発明の一実施例に係るDDR@CHA分離膜シリーズのFCOM特性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特に定義されない限り、本明細書で使われる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われる命名法はこの技術分野でよく知られており、通常使われているものである。
【0017】
ゼオライト分離膜を製造するに当たって、DDR構造の種粒子を作ることが容易でないことから、高い分離性能を有する再現性あるDDRゼオライト分離膜を製作し難い問題点を克服するために、代表的なゼオライト結晶の一つであり、再現性が非常に高くて容易に合成可能なCHA構造を有するゼオライト粒子を種粒子として代替使用し、種粒子とゼオライト分離膜の結晶構造を個別に成長させることによってCHAとDDRゼオライト結晶構造を同時に有する異種ゼオライト分離膜を製作し、該異種ゼオライト分離膜が従来のゼオライト分離膜に比べて二酸化炭素分離に効果的であり、特に水分条件においても高いCO/N及びCO/CH分離性能を示すことを確認した。
【0018】
したがって、本発明は、一観点において、(a)支持体上にCHA構造のゼオライト粒子を蒸着させて種層を形成する段階;及び(b)前記種層の形成された支持体をDDR前駆体溶液で水熱合成させてDDR@CHA異種ゼオライト分離膜を製造する段階を含む異種ゼオライト分離膜の製造方法に関する。
【0019】
また、本発明は、他の観点において、(a)支持体上にDDR構造のゼオライト粒子を蒸着させて種層を形成する段階;及び(b)前記種層の形成された支持体をCHA前駆体溶液で水熱合成させてCHA@DDR異種ゼオライト分離膜を製造する段階を含む異種ゼオライト分離膜の製造方法に関する。
【0020】
本発明の明細書を通じて異種ゼオライト分離膜の記載には“@”という記号を使って“分離膜構造@種粒子構造”のように表示する。例えば、CHA構造の種粒子を用いてDDR構造の分離膜を有する異種ゼオライト分離膜は“DDR@CHA”と表すことができる。
【0021】
本発明に係るCHA構造の種粒子を用いて二酸化炭素分離に効果的なDDR構造の分離膜を有するDDR@CHA異種ゼオライト分離膜を製作する方法の模式図を、図1に示す。
【0022】
ゼオライト分離膜を形成するための二次成長方法は、ゼオライト種粒子を多孔性支持台の表面に蒸着させ、これを水熱処理によって種粒子間の隙間を埋める全過程を意味する。しかし、種層と同種の結晶で積層(epitaxial)成長しなければならない厳格な条件は、高いレベルのゼオライト分離膜の種類を制限する。このような観点で、初めて、SSZ-13(CHA類型ゼオライト)種層から高いシリカを含有したZSM-58(DDR類型ゼオライト)膜を製作し、異種結晶間の積層成長を試みた。これは、CHAとDDRゼオライトの構造的類似性に起因する。結果的に、生成された分離膜は優れたCO透過選択度を示す。しかも、異種ゼオライト分離膜は主に、高いシリカを含有したDDRゼオライトで構成されており、よって、水蒸気が存在するときにも高いCO透過選択度をよく維持する。
【0023】
本発明は、既存の方法で種成長を用いてDDRゼオライト分離膜を作るとき、分離膜の結晶構造と同じDDR構造を有する種粒子を用いて製作することとは違い、相対的に合成が容易で簡便なCHA構造を有するSSZ-13粒子を種として用いて、高い分離性能を有するDDR@CHA異種ゼオライト分離膜を再現性あるように合成できる技術である。
【0024】
また、反対方向にDDR構造を有する種粒子を用いて構成された種層からCHA構造を誘導して連続したCHA@DDR異種ゼオライト分離膜を再現性あるように合成できる技術である。すなわち、一つのゼオライト分離膜の内部にCHAとDDRゼオライト構造が共存する異種ゼオライト分離膜を製作することができる。
【0025】
異種ゼオライト分離膜においてCHA構造の種粒子を使用したとき、代表的な長所は次のとおりである。
(1)DDR種粒子の水熱合成時間(25日)に比べてSSZ-13種粒子の水熱合成時間(7日)が短い。これは、高温で反応する水熱合成特性の上、経済的である。
(2)DDR種粒子合成のための溶液の場合、2種の有機構造誘導体が含まれるため、1種の有機構造誘導体を必要とするSSZ-13種粒子に比べて不経済的ある。
(3)種粒子を合成するとき、有機構造誘導体を必要とするため、再現性に劣るDDR種粒子は有機構造誘導体が浪費されるものを意味し、経済性が低い。
(4)DDR種粒子の製作のための合成溶液の場合、高温の95℃で製作する過程が存在するが、SSZ-13種粒子の合成溶液は全製作過程が常温で可能である。
(5)分離膜の製作のための種粒子は小さくて均一なサイズを有する必要がある。DDR種粒子は粒子サイズを調節し難いのに対し、SSZ-13種粒子は粒子サイズの調節が容易である。
【0026】
本発明の一実施例において、CHA構造のSSZ-13ゼオライト構造を有する種粒子又は形成しようとする分離膜を合成するためにSi/Al比率が20~∞である合成溶液を使用し、これを用いてCHAとDDR構造を同時に有する最適の異種ゼオライト分離膜を製作することができる。
【0027】
本発明において、前記DDR前駆体溶液は、SiO、有機構造指向剤、NaO、HO、及びAlが100:1~1000:0~500:10~100000:0~10のモル比で構成され、そして前記有機構造指向剤は、ヨウ化メチルトロピニウム、臭化メチルトロピニウム、フッ化メチルトロピニウム、塩化メチルトロピニウム、水酸化メチルトロピニウム、キヌクリジニウム、エチレンジアミンおよびアダマンチルアミンからなる群から選択される1つ以上を含んでもよい。
【0028】
本発明において、好ましくは、前記DDR前駆体溶液は、SiO、メチルトロピニウム塩、NaO、HO、及びAlが100:1~1000:0~500:10~100000:0~10のモル比で構成されてもよい。
【0029】
本発明において、CHA前駆体溶液は、有機構造指向剤、SiO、HO、NaO、及びAlが1~100:100:1000~20000:1~50:0~10のモル比で構成され、前記有有機構造指向剤は、TMAdaOH(N,N,N-trimethyl adamantylammonium hydroxide)、TMAdaBr(N,N,N-trimethyl adamantylammonium bromide)、TMAdaF(N,N,N-trimethyl adamantylammonium fluoride)、TMAdaCl(N,N,N-trimethyl adamantylammonium chloride)、TMAdaI(N,N,N-trimethyl adamantylammonium iodide)、TEAOH(tetraethylammonium hydroxide)、TEABr(tetraethylammonium bromide)、TEAF(tetraethylammonium fluoride)、TEACl(tetraethylammonium chloride)、TEAI(tetraethylammonium iodide)、ジプロピルアミン(dipropylamine)及びシクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)から構成された群から選ばれる1種以上であり得る。
【0030】
本発明において、セラミックである前記支持体は、α-アルミナ、γ-アルミナ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリイミド、シリカ、ガラス、ムライト(mullite)、ジルコニア(zirconia)、チタニア(titania)、イットリア(yttria)、セリア(ceria)、バナジア(vanadia)、シリコン、ステンレススチール、カーボン、カルシウム酸化物(calcium oxide)及びリン酸化物(phosphorus oxide)から構成された群から選ばれる1種以上であり得る。
【0031】
本発明において、前記(b)段階は100~200℃の温度で12~300時間水熱合成し得る。
【0032】
本発明において、前記(b)段階の水熱合成後に乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0033】
本発明において、前記方法によって製造された異種ゼオライト分離膜が、種粒子と分離膜の結晶構造を異ならせることによって、燃焼後の排ガスから、二酸化炭素/窒素の分離とメタン高質化の二酸化炭素/メタンの分離において二酸化炭素だけを効果的に分離できることを確認した。
【0034】
したがって、本発明は、他の観点において、前記方法によって製造され、ゼオライト分離膜の内部にCHAとDDRゼオライト構造が共存することを特徴とする異種ゼオライト分離膜に関する。
【0035】
本発明は、さらに他の観点において、前記異種ゼオライト分離膜を用いてCH、N、O、C、C、C及びCから構成された群から選ばれる分子とCOを含む混合物からCOを分離する方法に関する。
【0036】
本発明に係る異種ゼオライト分離膜を用いる用途において、二酸化炭素の分離には二酸化炭素の分離、捕集又は除去などを全て含む。
【0037】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0038】
[実施例]
製造例1:DDR@CHA異種ゼオライト分離膜の製造
SSZ-13(CHA)粒子の合成
SSZ-13種粒子は、以前に報告された方法を修正して合成した(H.Kalipcilar et al.,Chem.Mater.14,3458-3464(2002);H.Robson,Microporous Mesoporous Mater.22,551-551(1998))。既存のSSZ-13粒子(約0.7μm及び約5μm)は、種粒子として使用するにはサイズが大きすぎるとともに2種の粒子サイズ分布を有し、均一な種層を形成するためには小さくて均一なサイズの種粒子を使用する必要がある。蒸留水のモル濃度を減らした、組成が修正された合成方法は、小さくて(約230nm)均一なサイズを有するSSZ-13粒子の合成を誘導した。
【0039】
具体的に、N,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシ(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium hydroxide)(TMAdaOH、25%、SACHEM)をまず、蒸留水の入っているポリプロピレン瓶中に添加した。その後、この溶液に水酸化ナトリウムを添加した(=98%ペレット、Sigma-Aldrich)。合成された混合物は混合機械を用いて20分間均一にさせた(JeioTech,Si-300R)。その後、シリカ原料であるLUDOX(R)HS-40コロイド性シリカ(HO中の40wt%懸濁液、Sigma-Aldrich)を、撹拌している均質化した混合物に一滴ずつ徐々に入れた。最後に、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide,reagent grade,Sigma-Aldrich)を混合物に溶解させた。合成された混合物を常温で2日間さらに撹拌した。合成溶液の最終モル濃度比は100 SiO:20 NaOH:5 Al(OH):20 TMAdaOH:1600 HOであり、既存文献において蒸留水の元来の含有量は4400だった(H.Kalipcilar et al.,Chem.Mater.14,3458-3464(2002))。次いで、製造された合成前駆体をテフロンライナー(Teflon liner、45mL)に移し、ライナーをステンレス-スチールオートクレーブ(stainless-steel autoclave)にはめ込んだ。オートクレーブは、160℃に予熱されているオーブン(Pluskolab,PL_HV_250)に移して約45rpmで回転させた。7日後、オートクレーブを水道水に浸して冷ましながら合成を終了した。その後、硬い生成物を(1)遠心分離(遠心分離器;Hanil Science Industrial,Combi-514R)、(2)蒸留水を注ぐ、及び(3)新しい蒸留水に分散させる、ことを順に5回反復して回収した。回収された粒子は70℃の乾燥オーブン(Pluskolab,HB-502M)で乾燥させ、焼成炉(Pluskolab,CRF-M20-UP)で空気を流しつつ(200mL/min-1)1℃/min-1の昇温速度で550℃で12時間焼成した。
【0040】
SSZ-13(CHA)種層の形成
焼成されたSSZ-13種粒子約0.03gをエタノール40mLに添加して種子懸濁液を製造した。この懸濁液を20分間超音波処理(JeioTech,UC-10)して円錐形遠心分離チューブ(50mL容量;Falcon)に均一に分散された溶液を得た;これをペトリ(petri)皿に注いだ。続いて、α-Alディスクの研磨された面を30秒間、種粒子の分散された懸濁液と接触させた。次に、懸濁液の表面を拭き取るかのようにα-Alディスクを徐々に持ち上げた後、ディスクを30秒間乾燥させた。このディップ-コーティング(dip-coating)工程を4回反復して表面を完全に覆った。種粒子のコートされたα-Alディスクを、焼成炉で1℃/min-1の昇温速度に上げた後、450℃で4時間焼成した。
【0041】
DDR@CHA分離膜製作のための有機構造指向剤(structure directing agent;SDA)の合成
MTI(Methyltropinium iodide)は、ZSM-58(DDR類型ゼオライト)の合成のための有機構造指向剤として知られている(J.Kuhn et al.,Microporous Mesoporous Mater.120,12-18(2009))。MTIは、ヨードメタン(Iodomethane,99%,Sigma-Aldrich)を用いてトロピン(tropine,98%,Alfa Aesar)のメチル化により製造された。この反応のために、還流液化装置に連結された500mL丸底フラスコにエタノール200mLをまず注いだ。次に、50gのトロピンをマグネチックバー(magnetic bar)で撹拌しながらエタノールに溶解させた。反応前に、フラスコをアルミニウムフォイルで包んで暗い環境を作り、不活性環境を確保するためにアルゴンをフラスコに供給した。その後、51gのヨードメタンをマグネチックバーで撹拌しながらフラスコに一滴ずつ入れた。添加を完了した後、反応を室温で3日間行った。反応の間に、溶液はマグネチックバーを用いて撹拌し続き、フラスコは不活性条件を保存するためにテフロンテープで密封した。生成物は白い粉末として形成され、真空濾過によって濾過した後、高純度の生成物を得るために多量のエタノールで洗浄した。回収した固体粉末を使用する前に70℃のオーブンで約1日間さらに乾燥させた。
【0042】
SSZ-13種層上にZSM-58ゼオライトの二次成長
SSZ-13種層の二次成長は、全シリカ(all-silica)ZSM-58ゼオライトの合成を誘導する合成溶液と共に行われた。第一に、MTIが蒸留水に溶解した。均質化のために、ポリプロピレン瓶を20分間超音波処理した。次いで、シリカ原料(ここで、LUDOX(R)HS-40コロイド性シリカ、HO中の40wt%懸濁液、Sigma-Aldrich)が水に溶解したMTI溶液に迅速に添加した。溶液を約12時間混合機械に入れてよく混ぜた。便宜上、この溶液を溶液Aとする。同時に、一定量の水酸化ナトリウム(水酸化ナトリウム、=98%ペレット、Sigma-Aldrich)を蒸留水に溶解させ、混合機械で約12時間さらに混合した。この溶液を溶液Bとする。準備した溶液A及びBを混合した後、混合直後に観察される不透明な混合物が透明な溶液になるまで混合機械内にさらに約12時間置いた。合成溶液の最終モル濃度組成は70 SiO:23 NaOH:17.5 MTI:2800 HOだった。ZSM-58の合成溶液に対する蒸留水のモル比率は1溶液A:4溶液Bである。準備した合成溶液約30mLを、種粒子のコートされたα-Alディスクが入っているテフロンライナー(45mL)に注いだ。α-Alディスクの種がコートされた面を、テフロン固定台の助けによって傾いた角度で下向きに置いた。ディスクを含むテフロンライナーをステンレス-スチールオートクレーブに入れ、該オートクレーブを130℃に予熱されたオーブンに移した。反応は静的条件で行われた。水熱二次成長過程はそれぞれ異なる期間(4日、6日、8日、10日及び12日)で行われた。反応が終わるとオートクレーブを取り出して水道水で迅速に冷却させた。ディスクサンプルを取り出した後、合成された分離膜を十分の蒸留水で洗浄し、100℃オーブン(HYSC,DO-42)でさらに乾燥させた。最後に、乾燥した分離膜サンプルを空気流量200mL/min-1の条件において焼成炉で12時間550℃で焼成して熱的に活性化させた。焼成のために0.2℃/min-1の昇温速度で徐々に焼成するプログラムを使用したが、これは、分離膜サンプルの欠陥形成を最小化するために選択した。便宜上、焼成されたゼオライト膜はDDR@CHA_xdと称される。ここで、CHAはSSZ-13種層を表し、DDRは二次成長後のZSM-58部分を表し、xは水熱二次成長時間(日)を表す。
【0043】
CHAゼオライト合成溶液を用いたDDR種層の二次成長
図11のA及びBにおいて、走査電子顕微鏡イメージはDDR種層が均一に形成されたことを示す。以前に報告された方法によって820±150nmサイズのダイアモンド状の全シリカDDR粒子を合成し、α-Alディスクに蒸着した(E.Kim et al.,J.Mater.Chem.A5,11246-11254(2017))。図11(E)のDDR種層に該当するXRDパターンは、形成された種層が純粋なDDRゼオライト相を有することを確認した。また、SSZ-13合成溶液で6日間二次成長させた後、DDR種層のSEMイメージとXRDパターンを図11のC及びEに示した。DDR種層の二次成長に使用されたSSZ-13(Si/Al=20)合成溶液の最終モル濃度組成は、20 NaOH:5 Al(OH):100 SiO:20 TMAdaOH:8800 HOであり、160℃で6日間水熱反応を進行した。反応が完了した後、分離膜サンプルを空気流量が200mL/min-1である焼成炉で0.2℃/min-1の昇温速度で12時間550℃で焼成した。走査電子顕微鏡イメージはSSZ-13膜がDDR種層の上部に連続して層を形成したことを示す(図11(C)及び(D))。また、CHAゼオライトに相応するXRDピークは、XRDパターンにおいて6日間水熱反応後に明確に現れる(図11(E))。CHA@DDR分離膜のXRDパターンは依然として、5゜から8.5゜までの2e範囲に拡大されたXRDパターンにおいてDDR種層(DDR類型ゼオライト)のXRDパターンの(101)ピークを含んでいる。
【0044】
実施例1:異種ゼオライト分離膜の特性確認
走査電子顕微鏡(Scanning electron microscopy;SEM)イメージは、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM,Hitachi S-4300)を用いてPtコーティングをしたサンプルから得た。Ptコーティングのために、サンプルは、Hitachi E-1045イオンスパッターを用いて30秒間30mAで生成されるPtでコートした。また、エネルギー分散型分光分析法(energy dispersive X-ray spectroscopy;EDX)結果は、Hitachi S-4800 FE-SEMを用いて得た。断面分離膜サンプルはまずTESCAN LYRA3 XMH SEMの集束イオンビーム(dual beam-focused ion beam;DB-FIB)を用いて製作し、集束イオンビームをする前に、サンプルはビームによる損傷を防止するために炭素及びPt層でコートされた。その後、Gaイオンを使用した集束イオンビームは断面サンプルの厚さを約100nmに薄くして透過電子顕微鏡(transmission electron microscopy;TEM)分析に適するものにした。その後、準備した断面サンプルを用いて走査透過電子顕微鏡マイクロプローブ(microprobe)モードで断面透過電子顕微鏡イメージ及び走査透過電子顕微鏡イメージとCHA及びDDR類型ゼオライト部分の回折パターンを得た。この目的のために、FEI XFEG-Titan themis Double Cs & Mono.TEMを使用した。明確にするために、晶帯軸(zone axis)及びミラー指数(Miller index)に2桁の数が含まれていると、数字間の空間を含めた。X-ray回折(X-ray diffraction;XRD)パターンはCu Kα radiation(e=0.154nm)を用いたRigaku Model D/Max-2500V/PC回折計から得た。X-ray回折パターン結果を比較するために、全シリカCHA及びDDRゼオライトの模写X-ray回折パターンはMercuryソフトウェア(Cambridge Crystallographic Data Centre;CCDC)を用いて結晶情報ファイル(CIFs)から得た。全シリカCHA及びDDRゼオライトの結晶情報ファイルは国際ゼオライト協会(International Zeolite Association;IZA)ウェブサイト(http://www.iza-online.org)からダウンロードした。結晶選択配向(Crystallographic preferential orientation;CPO)値は、以前に説明した方法(E.Kim et al.,Angew.Chem.Int.Edit.52,5280-5284(2013))によって粉末及び分離膜サンプルのX-ray回折パターンを分析して得たものである。また、分離膜サンプルの疎水性を評価するためにSEO Phoenix-300接触角分析器を用いて分離膜表面の水滴の接触角を測定した。
【0045】
DDR@CHA分離膜の分離性能実験は、供給する側と透過する側の全圧力を1atmに維持しながら測定するWicke-Kallenbachモードで進行した。供給側において、CO:N又はCO:CHの2種の混合物の部分圧力は乾燥条件において50.5kPa:50.5kPa(Dry CO:N=50:50又はDry CO:CH=50:50と言及)である。また、水分条件において3kPaの水蒸気が追加され、CO:N又はCO:CHの2種の混合物の部分圧力はそれぞれ49kPa(Wet CO:N=50:50又はWet CO:CH=50:50と言及)である。さらに、化石燃料を燃焼する発電所の模写排ガス(T.C.Merkel et al.,J.Membr.Sci.359,126-139(2010);D.Singh et al.,Energy Convers.Manag.44,3073-3091(2003);D.M.D’Alessandro et al.,Angew.Chem.Int.Edit.49,6058-6082(2010))は、乾燥条件で15.2kPa CO:85.8kPa N(Dry CO:N=15:85と言及)、及び水分条件で14.7kPa CO:83.3kPa N:3kPa HO水蒸気(Wet CO:N=15:85と言及)の部分圧力を有するようにして使用した。最後に、供給ガス混合物のうち、乾燥条件の5kPa CO:96kPa N(Dry CO:N=5:95と言及)及び水分条件の4.9kPa CO:93.1kPa N:3kPa HO水蒸気(Wet CO:N=5:95と言及)を使用したが、これはガスを燃焼する発電所の排ガスの組成を模写するために使用された(M.Mofarahi et al.,Energy 33,1311-1319(2008);X.C.Xu et al.,Fuel Process.Technol.86,1457-1472(2005);M.Halmann et al.,Energy 31,3171-3185(2006);O.Bolland et al.,Energy Convers.Manag.33,467-475(1992))。供給側とスイープ(sweep)ガス両方の全流量は100mL/min-1とした。透過側の透過されたガスは続けてスイープガスが掃いて、CO/Nの場合は熱伝導度検出器(thermal conductivity detector;TCD)、そしてCO/CHの場合はPDD(pulsed discharge ionization detector)が装着されたガスクロマトグラフィー(gas chromatography;GC、CO/N分析はYoung Lin(YL)6100GCシステム、そしてCO/CH分析はYL6500GCシステム)に送られた。特に、メタン及び水素(約5mL/min-1)は透過ガスのスイープ流れに追加した。これは、CO/N及びCO/CH混合物の透過速度を信頼性あるように計算するための内部標準として使用した。
【0046】
DDR@CHA_xdの蛍光共焦点蛍光顕微鏡(Fluorescent confocal optical microscopy;FCOM)(G.Bonilla et al.,J.Membr.Sci.182,103-109(2001))分析は、個体レーザー(solid-state laser)(555nm波長)を使用したZEISS LSM 700共焦点顕微鏡を用いて分離膜の内部に隠された欠陥構造を研究するために用いられた。フルオレセインナトリウム塩(Fluorescein sodium salt)(Sigma-Aldrich)は染色分子として使用され、分子サイズは約1nmである(J.Choi et al.,Science 325,590-593(2009))。このため、DDR類型ゼオライトの気孔サイズ(0.36×0.43nm)が欠陥のサイズより小さいか又は類似である。分析準備のために分離膜サンプルを1mMフルオレセインナトリウム塩(fluorescein sodium salt)溶液と接触させたままで放置して染色をした。特に、分離膜の表面が浸透類型モジュール(osmosis type module)を用いて4日間染色溶液に接触し得るようにした(T.Lee et al.,J.Membr.Sci.436,79-89(2013))。染色過程が完了した後に、染色されたDDR@CHA_xdサンプルのFCOMイメージは、膜表面から膜とα-Al支持台との間の界面まで膜厚さに沿って得た。
【0047】
図2(A)は、粒子の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示し、この粒子は、Si/Al比率が約20になるように合成された。この粒子の平均サイズは230±70nmであり(図7)、これは多孔性支持台上に種粒子として用いるのに非常に適する。図2(C)に示したX-ray回折(XRD)パターンで合成された粒子がSSZ-13(standard oil synthetic zeolite-13)と知られているCHAゼオライト相で構成されていることを確認した。図2(B)は、SSZ-13粒子が多孔性α-Alディスク表面で密集されており、よく分散されて均一なSSZ-13種層を形成したことを示す。図2(C)においてSSZ-13種層に該当するXRDパターンは、α-Alディスク上に高い純度の結晶性を有するSSZ-13粒子で均一な層を形成したことを示す。便宜上、異種積層成長で成長させた分離膜はDDR@CHA_xdと称し、ここで、CHAはSSZ-13種層を、そしてDDRは二次成長後のZSM-58部分を表す。最後に、xは水熱反応を進行した二次成長時間を意味する。図2(D)及び(E)は、ZSM-58(DDR類型ゼオライト)の合成を可能にする合成溶液と共に図2(B)に示した種層で6日間水熱成長(すなわち、DDR@CHA_6d)を進行し、結果的にDDRタイプゼオライトとの構造的類似性によってSSZ-13種層を効果的に覆ったことを示している。図2(E)に示すように、数マイクロメートル厚の膜(約4.3μm)の下方にSSZ-13種層と上方にDDR構造の部分が共存することを、図2(E)のXRDパターンから確認できる。これは、ZSM-58(DDR類型ゼオライト)合成溶液を使用してSSZ-13(CHA類型ゼオライト)層を二次成長させた後に異種ゼオライト分離膜を形成したことが分かる。さらに、図2(G)及び(H)は、水熱成長時間を10日に増加させた後、全厚さが約7μm(図2(H))に増加した連続した膜が形成され、これは、DDR@CHA_10dのDDR構造部分が増加したことを示す。主要部分がDDR成分又は結晶粒(grain)であるので、DDR@CHA_10dのSSZ-13層に該当するXRDピークはほとんどないように見え(図2(I))、これは分離膜内部にSSZ-13層がよく含まれており、感知し難いことを示す。
【0048】
連続した複合膜を形成するためにZSM-58ゼオライトがSSZ-13種層とどのように構造的によく結合されているかを確認した。特に、TEMに基づいて、ZSM-58結晶粒とSSZ-13種層との間の界面及びその周辺領域の視覚化によって互換性を調べることに重点をおいた。図3(A)に示した高配率SEMイメージの断面DDR@CHA_6dを用いて、図2(C)及び(D)にSTEMイメージ、及び図3(B)にTEMイメージを得た。図3(B)及び(C)において分離膜の下端にだいだい色の矢印で表す異なる対比を有する点(220±60nm、図3(C)で21個の暗い点で計算する。)が断面イメージ全体から容易に観察される。α-Alディスクに近い位置は、それらの点が230nmサイズのSSZ-13種粒子と関連していることを示す。また、これらの異なる対比を有する点の、不規則ではあるが球形である形状は、図2(A)及び(B)に示したように、種粒子と同一であることを裏付ける。次いで、DDR@CHA_6dにおいてCHA及びDDRゼオライト領域を区別するために、図3(D)において一つの暗い点(SSZ-13種粒子と関連していると考えられる。)内で“E”と、そして暗い点間の領域(異種に成長されたDDR結晶粒と関連していると考えられる。)で“F”と表示された領域から回折パターン(diffraction pattern)を得た。結果として、得られた回折パターンは、相応する模擬パターン(赤い点)と一緒に図3(E)及び(F)に示した。図3(E)の回折パターンが[4114]晶帯軸(zone axis)を有するCHAゼオライトに従う模擬回折パターンと非常によく一致することを確認した。同様に、図3(F)の回折パターンは、[871]晶帯軸を有するDDRゼオライトに該当する模擬回折パターンとよく一致する。さらにいうと、CHAゼオライトの[4114]晶帯軸に対する模擬回折パターンとDDRゼオライトの[871]晶帯軸は、図9の実験から得た回折パターンに隣接して示した。このようなTEMベースの分析は、DDR@CHA分離膜が2つの異種結晶(主要部分のDDRと種層のCHA)構造となっており、よって、DDR@CHA分離膜がDDR相と共にSSZ-13粒子同士の間で相互成長によって形成されたことを示す。同様に、短い成長時間によって顕著に成長しなかったDDR@CHA_4d(図9(A)の断面SEMイメージ参照)のSTEMイメージにも、前述した暗い点が含まれている(図4(B))。また、電子回折パターンの構造分析は、DDR@CHA_4dの内部にもCHAとDDRゼオライト相が共存することを裏付ける(図9(C)及び(D))。
【0049】
図10で、異種積層成長を前提としてCHAとDDR類型ゼオライト間の界面における異種積層成長を説明できる妥当な構造モデルを提案した。詳しくは、CHAとDDR類型のゼオライト両方とも六方晶系結晶グループ(hexagonal crystal family)の三方晶系結晶(trigonal crystal)を有し、R3mの空間群を有する(a=b≠cと共にα=90゜、β=90゜、γ=120゜)。しかも、単位格子(unit cell)のa及びb方向への長さが非常に類似てあることに注目すべきである(CHAゼオライト、a:13.6750Å、b:13.6750Å、c:14.7670Å、そしてDDRゼオライト、a:13.7950Å、b:13.7950Å、c:40.7500Å)。c軸に沿う相互成長の場合、CHAとDDRゼオライトの構造的類似性が、異種積層成長によってSSZ-13種層からDDRゼオライト及び連続する複合膜を形成する上で核心であると考えられる。予想のとおり、他の合成方向(すなわち、DDR種層から主要部分がCHAゼオライトである異種積層成長)への合成もよく進行された(図11)。図12に、MFI合成溶液と共にSSZ-13種層から成長させた膜のSEM及びXRD結果を示す。図12のA及びBは、他のMFI合成溶液で二次成長方法を進行した後、SSZ-13(CHA類型ゼオライト)種粒子がコートされたα-Alディスクの走査電子顕微鏡イメージを示しており、最終モル濃度の組成と水熱二次成長条件は、(A)C4 MFI@CHAの場合、40 SiO:9 TPAOH:9500 HO:160 EtOHに対して175℃で1日(A.Gouzinis et al.,Chem.Mater.10,2497-2504(1998))であり、(B)C6 MFI@CHAの場合、60 SiO:9 TPAOH:9500 HO:240 EtOHに対して175℃で2日(J.Choi et al.,Angew.Chem.Int.Edit.45,1154-1158(2006))だった。また、C4 MFI@CHA及びC6 MFI@CHA膜のXRDパターンは、全シリカCHA及びMFIゼオライトの模擬XRDパターンと共に(C)に示した。星印(*)は、α-AlディスクのXRDピークを表す。しかし、MFIゼオライトの合成溶液を用いたSSZ-13種層からの水熱成長は、2つのゼオライト間に構造的類似性を有しないため、連続した膜が形成されない(図12)。
【0050】
DDR@CHA分離膜シリーズ(DDR@CHA_xd;x=4,6,10,12)の特性を確認した(表1、図13図16)。二次成長時間が増加するにつれて膜の表面は次第にサイズの大きい結晶粒で稠密になった。さらに、厚さ、疎水性(hydrophobicity)及び面外方向性(out-of-plane orientation)の全ての分離膜特性が二次成長時間が増加するにつれて漸次増加した。
【0051】
実施例2:DDR@CHA分離膜のCO 透過選択度の確認
図17のAからEまで乾燥条件で同一比率のCO/N混合物を供給したとき、DDR@CHA_xd(x=4、6、8、10及び12)のCO及びN分子の透過度(permeance)と相応する分離係数(separation factor)を温度によって示した。より正確な比較のために、最高CO/N分離係数が観察される30℃で測定したDDR@CHA分離膜シリーズの分離性能を図17(F)に示した。DDR@CHA_4dは最大CO/N分離係数が約1.1程度と低く、DDR@CHA分離膜シリーズの中で最も低い分離性能を示す。これは、十分に相互成長しなかったことを意味する。しかし、分離膜の更なる成長は、CO/N分離係数の単調な増加を示し、約10日後には最高分離係数に到達した。明らかに膜の成長は約0日後にほとんど飽和した(表1に列挙された厚さ傾向とよく一致する)。
【0052】
同一濃度のCO/N及びCO/CH異成分系混合物に対して、温度によってDDR@CHA_10dの分離性能を図4(A)~図4(D)のグラフで示した。特に、バイオガス(CO/CH分離に関連する)及び火力発電所で生成される排ガス(CO/N分離に関連する)内に三番目に多い数蒸気が分離性能に及ぼす影響を確認するために、乾燥(図4(A)及び(C))及び水分(図4(B)及び(D))条件を全て考慮した。まず、乾燥条件でCO透過度は温度が増加するにつれて単調に減少したが、他の透過成分(N又はCH)は温度によって変わらなかった。温度によるCO透過度の挙動はCO/NとCO/CH混合物で非常に類似であり、COの優先吸着に明確に寄与することを示した(E.Kim et al.,Chem.Eng.J.306,876-888(2016))。従来の同種結晶構造のZSM-58分離膜と類似なこの分離傾向は、DDR@CHA複合膜においてDDRゼオライトが主要部分であることを示す。CO/NとCO/CH分離の最大の分離係数は最低温度である30℃で確認され、特に、最大の分離係数は、CO/Nの場合15.2±0.4であり、CO/CHの場合279±38である。N(0.364nm)とCH(0.38nm)分子間のサイズ差が非常に小さいにもかかわらず、それぞれに該当する分離係数が大きい差を示すことは、分子体能力が透過される分子のサイズに対して非常に敏感であることを示す。
【0053】
乾燥条件と比較して、水分条件でCOとゆっくり透過する成分(N又はCH)の固有の透過挙動を観察した(図4(B)及び(D))。特に、約30℃~100℃の低い温度区間で全ての透過成分(CO、N、及びCH)の透過度は、水分条件で分離膜表面に吸着した水分子の抑制によって減少したものと考えられる(M.P.Bernal et al.,AIChE J.50,127-135(2004))。30℃から75℃に温度が上昇するにつれて水蒸気の吸着が弱くなり、CO及びその他成分の透過度及び該当する分離係数が漸次増加した。これは、乾燥条件で観察された値と同一に回復する(図4(A)及び(C))。実際に、水分条件の100℃以上では透過度及び分離係数が、乾燥条件で得られた透過度及び分離係数と同一に完全に回復した。興味深いことに、水蒸気によるCO透過度が減少する程度は、非常に徐々に浸透する他の成分の透過度よりも大きく、結果として、水分条件で約30~75℃温度区間の該当の分離係数の減少をきたした。それにも拘わらず、水蒸気が存在してもDDR@CHA_10dのCO透過選択度は非常に高い。50℃でCO/N分離係数は9.1±3.6、及びCO/CH分離係数は78±9である。石炭火力発電所の排ガス及びバイオガスが約50℃~60℃の温度範囲で約12kPaまでの水蒸気を含んでいることを考慮すれば(D.Singh et al.,Energy Convers.Manag.44,3073-3091(2003);T.C.Merkel et al.,J.Membr.Sci.359,126-139(2010);E.Ryckebosch et al.,Biomass Bioenergy 35,1633-1645(2011);P.Weiland et al.,Appl.Microbiol.Biotechnol.85,849-860(2010))、疎水性を有するDDR@CHA_10dは信頼できるCO透過選択度を示すので、このような分野への適用が期待できる。また、より現実的な燃焼後の排ガス条件におけるDDR@CHA_10dの分離性能は、図4(A)及び(B)で示した値とほぼ同一である。DDR@CHA_10dはCO分子の線形吸着挙動によって混合ガスにおいて二酸化炭素分圧変化にほぼ線形反応を示す(図18及び図19)。これは、CO分子の様々な又は変動するモル濃度の組成に対してDDR@CHA_10dの信頼できる且つ柔軟な使用可能性を裏付ける。
【0054】
【表1】
【0055】
ゼオライト分離膜の使用における主要利点の一つは堅固性であり、長期的で実用的な応用に適している。堅固性実験においてDDR@CHA_10dを水分条件の代表的な排ガス温度である50℃と75℃で同一濃度のCO/Nに露出させた(図20(A))。それぞれの温度においてDDR@CHA_10dの3日間不活性化されるか或いは性能の低下がなかったが、これは分離膜の堅固性を示す。また、相対湿度がDDR@CHA_10dの性能に及ぼす影響を調査した(図20(B))。具体的に、CO:N=15:85模写排ガス組成を乾燥条件(すなわち、相対湿度0%)の50℃で6時間測定した後、分離性能を相対湿度(約26%、約60%、約100%)によって50℃でそれぞれ12時間測定した(図20(B))。それぞれの相対湿度において、DDR@CHA_10dにおけるCO透過度とCO/N分離係数はよく維持され、疎水性ゼオライト分離膜の好ましい特性を裏付ける。また、50℃で水蒸気圧が約12kPa(相対湿度100%)である石炭火力発電所の実際に近い水分条件の排ガスに対してDDR@CHA_10dのCO透過選択度を確認した(図4(E))。最大2日間の初期実験は、信頼できるCO透過選択度を示し、当該CO/N分離係数は約17である。さらに、温度を増加させて200℃で2日間実験することによって非活性化が加速化するように試みた。それにも拘わらず、DDR@CHA_10dのCO透過選択度は更なる2日間よく保存され(図4(E))、これは、高い長期安定性を強力に裏付ける。同様の方式で、約12kPaの水蒸気圧を有する水分条件で同一濃度のCO/CH混合物に対して50℃でDDR@CHA_10dの透過選択度を測定した(図4(F))。このような長期安定性実験は、実際の分離工程で信頼して使用するのに必須であるDDR@CHA_10dの堅固性を明らかに示す。
【0056】
等モル濃度の二酸化炭素/窒素組成の他にも、石炭燃焼及び天然ガス燃焼によって発電所から排出する排ガスの組成と類似な異なるCO/N混合比率(CO:N=15:85及びCO:N=5:95)に対してDDR@CHA_10dの透過実験をそれぞれ行った(図18)。注目すべきことは、乾燥及び湿潤条件の両方でCO及びN分子の透過挙動は図4(A)及び(B)で観察されたのと類似であり、これは、CO及びN分子の分圧変化に対してDDR@CHA_10dの線形反応を意味する。特に、乾燥条件の30℃で最も高いCO/N分離係数は、CO:N=50:50組成の15.2±0.4(図4(A))に比べて、CO:N=15:85組成のときは17.0±1.0(図18(A))であり、CO:N=5:95組成のときは20.0±1.3(図18(C))である。CO分子の分圧が減少することにより結果的にCO透過度が若干増加し、最高CO/N分離係数が漸次増加するということを確認した。これは、CO分圧が低いとき、吸着等温線の傾斜が大きくなるについてCOを優先する高い吸着能力のためであると説明できる(E.Kim et al.,Chem.Eng.J.306,876-888(2016);S.Himeno et al.,Ind.Eng.Chem.Res.46,6989-6997(2007))。同様に、代表的な排ガス条件である水分条件の50℃でCO/N分離係数は、CO:N=15:85のときは13.9±1.3(図18(B))であり、CO:N=5:95のときは16.5±3.1(図18(D))である。
【0057】
図19で、30℃で供給混合物中のCO分子のモル比率組成によって、CO及びN分子のモル濃度の流束(molar flux)及び透過度(permeance)を当該CO/N分離係数と共に示した。供給混合物中の二酸化炭素分圧は増加したが、二酸化炭素モル濃度の流束はあまり増加しなかった。したがって、該当するCO透過度は、乾燥条件で単調に減少した(図19(A)及び(C))。対照的に、N分子のモル濃度の流束は分圧が増加するにつれて増加し、乾燥条件でN分子はほとんど一定の透過度を有する(図19(A)及び(C))。これは、上述した低い圧力におけるCOの高い吸着挙動に起因し、一方、Nの吸着等温線はヘンリーの法則(Henry’s law)によって常に1barまで線形に従う(E.Kim et al.,Chem.Eng.J.306,876-888(2016))。水分条件でCO分子のモル濃度の流束は乾燥条件に比べて低いが、分圧が増加するにつれて線形的に増加して二酸化炭素分子は一定の透過度を有する(図19(B)及び(D))。対照的に、N分子のモル濃度の流束はほぼ一定であり、よって、CO分子の低い組成における透過度が減少し、同時にCO/N分離係数を増加させる(図19(B)及び(D))。様々な二酸化炭素分子の濃度において様々なCO/N分離係数を有するにもかかわらず、疎水性DDR@CHA分離膜を使用することによって、30℃の飽和水蒸気圧で高いCO/N分離係数(10に近いか或いは大きい)が達成できた。
【0058】
実施例3:DDR@CHA分離膜の欠陥構造確認
図5は、DDR@CHA_6dとDDR@CHA_10dの断面及び上部のSEM及びFCOMイメージを示している。特に、DDR@CHA_6dとDDR@CHA_10dは乾燥条件で二酸化炭素透過選択度において顕著な差を示したので、FCOM分析のためにこれら両分離膜を選択した(図17(B)及び(D))。約1nmのサイズを有する染色分子(fluorescein sodium salt)(J.Choi et al.,Science 325,590-593(2009);S.Hong et al.,Chem.Mater.30,3346-3358(2018))は、ゼオライト気孔(約1nmよりも小さい)には浸透できないが、ゼオライト分離膜の欠陥内には完全な接近が可能である(E.Kim et al.,J.Mater.Chem.A5,11246-11254(2017);S.Hong et al.,Chem.Mater.30,3346-3358(2018);G.Bonilla et al.,J.Membr.Sci.182,103-109(2001))。明白に、DDR@CHA_6dとDDR@CHA_10dのいずれも、DDR@CHA分離膜とα-Alディスク間の界面までつながる欠陥が存在する。このような欠陥の様子は、DDR@CHA_6dの方が密度及び頻度面において明確であり、DDR@CHA_10dに比べて欠陥がより多いことを意味する。このような傾向は、図5のDDR@CHA_6dとDDR@CHA_10dの上面FCOMイメージからより明らかである。事実上、欠陥の密度は、図4及び図17に見られるCO選択的な分離性能と直接に関連している。DDR@CHA_10dはDDR@CHA_6dに比べて欠陥が少ないので、乾燥条件ではるかに高いCO/N SFを示す(DDR@CHA_10d:約15.2vs、DDR@CHA_6d:約6.0)。比較のために、図21及び図22も、他の分離膜のFCOM結果(DDR@CHA_8d及びDDR@CHA_12d)をDDR@CHA_6d及びDDR@CHA_10dの結果と共に示した。二次成長時間が6日から12日に増加するにつれて膜厚さは単調に増加し、10日後には飽和状態となったが、逆に欠陥の程度は単調に減少する傾向を示し、最大10日まで続けて減少したが、最終的には変動しなくなった。これは、DDR@CHA複合構造においてDDR結晶粒の更なる相互成長によってより大きく形成された厚さが、焼成工程後に亀裂形成を避けるのに有効であることを示す。
【0059】
実施例4:DDR@CHA_10dの分離性能評価
約50~60℃でDDR@CHA_10dの測定したCO/N及びCO/CH分離性能を、文献に報告された他のゼオライト分離膜と共に示した(図6(A)及び(B))。特に、図6に乾燥(塗り潰された(filled)記号)及び水分(中抜き(open)記号)条件の両方で測定したゼオライト分離膜の性能を集めて示した。異種積層成長で製作したDDR@CHA_10dは、乾燥と水分条件の両方で優れた分離性能を示す。そして、単一結晶として成長したCHA類型(CHA:S.Hong et al.,Chem.Mater.30,3346-3358(2018);S.Hong et al.,Chem.Mater.30,3346-3358(2018);SSZ-13:N.Kosinov et al.,J.Mater.Chem.A2,13083-13092(2014);SAPO-34:Y.Chen et al.,J.CO Util.18,30-40(2017);DDR:L.Wang et al.,J.Membr.Sci.539,152-160(2017);及びZSM-58:E.Kim et al.,J.Mater.Chem.A5,11246-11254(2017);そしてFAU類型:X.H.Gu et al.,Ind.Eng.Chem.Res.44,937-944(2005))のゼオライト分離膜の分離性能と類似又は優秀である。これは、本発明に用いられた複合膜形成方法論の信頼性を示す。乾燥条件においてDDR@CHA_10dはCHA及びDDRゼオライト類型分離膜の分離性能と類似又は優秀な分離性能を示す(図6(A))。対照的に、高い親水性特徴を有するFAU類型ゼオライト(NaY)分離膜は、乾燥条件でややより高いCO/N分離係数を示すが、これは水分条件で顕著に悪化した。これは、明確にCO分子に比べて水蒸気の吸着がより優先されるためである。たとえ分離膜成分として高い親水性のFAUゼオライトの使用が乾燥条件に対する好ましい接近ではあるが、このような分離膜は水分条件において高いCO透過選択度を保障するには適していない。より好ましくは、効果的に異種積層成長された疎水性DDR@CHA_10dは実際に排ガス組成においても高い性能を示した(50℃でCO:N=15:85組成で水蒸気圧約12kPaを含む。)(図6(A))。
【0060】
また、DDR@CHA_10dは約50~60℃の実際のバイオガス温度で他のゼオライト分離膜に比べて乾燥条件で非常に高いCO/CH分離係数(50℃で約238)を示した(図6(B))。これは、複合DDR@CHA分離膜が信頼性あるように形成されることを強力に示す。CO/N分離から観察された通り、DDR@CHA_10dは50℃の水分条件で高いCO/CH分離係数を維持した(約3kPaの水蒸気圧で約78及び約12kPaの水蒸気圧で約145であって、相対的に高い値を有する)(図6(B))。図6(B)は、DDR@CHA_10dが、他のゼオライト分離膜と比較するとき、優れたCO/CH分離性能を示すことを明らかに示し、分離膜の合成において疎水性確保に対する本発明の接近法に信頼性があることを裏付ける。また、DDR@CHA_10dは約50℃の飽和水蒸気圧(約12kPa)において最高のCO/CH分離性能を示す。それにも拘わらず、分離膜モジュールのサイズに関連する水分条件におけるDDR@CHA_10dの現在のCO透過度は、実の適用のためには少なくとも1桁さらに大きいレベルの増加が必要である。図17(F)で、DDR@CHA_xd(x=6,8,10,12)間のCO透過度のわずかな変化から推論したように、DDR@CHA分離膜シリーズの最終透過度が支持台抵抗によって大きく影響を受けて制限される。したがって、実用化に向けた次の段階は、高い透過度を有する支持台上にDDR@CHA複合分離膜を製造することである。
【0061】
要するに、異種積層成長の概念は、高い性能を有する連続したゼオライト分離膜の製作に効果的であることが立証された。特に、これは、CO透過選択的なDDR@CHA複合分離膜を得るための代替が可能であり、信頼できる最初の方法であるといえる。既存の接近方法とは違い、DDR類型のゼオライトの合成を誘導する合成溶液と共にSSZ-13(CHA類型ゼオライト)種層の異種積層成長は、再現性の高い方法で主要部分がDDR相で構成された複合分離膜の形成を可能にする。特に、CHAとDDR類型のゼオライト間の構造的類似性は異種積層成長膜の成長に核心である。好ましくは、本発明で製作された複合膜は、CO/N及びCO/CH異成分混合物に対して優れたCO透過選択度を示した。分離膜の表面が大きい疎水性(hydrophobic)を有するので、水分条件でも高いCO透過選択度を維持した。前記性能は、従来のゼオライト分離膜の分離性能の中で最も高く、特に、実際の分離工程において水分条件の混合ガス分離と関連して非常に高い性能を示す。
【0062】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は好ましい実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されない点が明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、請求項とそれらの等価物によって定義されるといえよう。
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