(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20230119BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20230119BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
F01N3/08 B
B60K13/04 Z
E02F9/00 D
(21)【出願番号】P 2020058281
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪上 義明
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 卓博
(72)【発明者】
【氏名】堤 隆介
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180215(JP,A)
【文献】特開2015-021531(JP,A)
【文献】特開2019-100010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B60K 13/04
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に設けられエンジンを内部に備えたエンジン室と、前記車体に設けられ熱交換器およびファンを備えた冷却室と、前記エンジン室と前記冷却室とを前記車体の前後方向に隔離する隔壁と、前記冷却室に設けられ前記隔壁に対しブラケットを介して取り付けられた還元剤ポンプと、を備えた作業車両において、
前記隔壁には、
前記ブラケットの上下側にそれぞれ延在片が取り付けられると共に、前記ブラケットの脱落を防止するストッパ部材が取り付けられ、
前記ブラケットは、
前記隔壁に対し所定の寸法離した状態で、上側の前記延在片に1箇所および下側の前記延在片に2箇所設けられた弾性部材を介して上下側の前記延在片に取り付けられ
、幅方向の両端部に内側に向かって切り欠かれた切り欠きがそれぞれ形成され、
前記ストッパ部材は、
前記隔壁との間に前記ブラケットを挟んで対向する対向面部と、
前記対向面部の一端から前記隔壁に向かって延びる延出部と、を有し、
前記延出部が前記切り欠きの内部に位置するように、前記ブラケットの幅方向の両側にそれぞれ配置されている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記還元剤ポンプは、3つの前記弾性部材を頂点とし、これらの頂点を結んで形成される仮想三角形の内側に前記還元剤ポンプの重心が位置するように、前記ブラケットに固定されている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車両において、
前記弾性部材は、前記還元剤ポンプの重量に応じた耐荷重を有する防振ゴムである
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項
1に記載の作業車両において、
前記還元剤ポンプの下端部には、下方向に取り外して交換可能なフィルタが取り付けら
れ、
下側の前記延在片に設けられた2つの前記弾性部材は、前記フィルタの両側方にそれぞれ位置している
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に設けられたエンジン室と冷却室とが隔壁によって前後に隔離された作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホイールローダなどの作業車両においても、エンジンから排出される排出ガスに含まれるNOx量を低減するために、排出ガスを浄化するための排ガス処理装置が搭載されている。排ガス処理装置としては、例えば、還元剤として尿素水が用いられた選択触媒還元(SCR;Selective Catalytic Reduction)システムを採用したものが知られている。作業車両は、排ガス処理装置の他に、排ガス処理装置の内部に尿素水を噴射する尿素水噴射装置と、尿素水を貯留する尿素水タンクと、尿素水タンクから尿素水を汲み上げて尿素水噴射装置に供給する尿素水ポンプと、を備えている。
【0003】
排ガス処理装置および尿素水噴射装置は、通常、エンジンと共にエンジン室に収容される。例えば特許文献1に記載のホイールローダのように、エンジン室と冷却室とが隔壁により前後に隔離された作業車両では、尿素水ポンプが隔壁に取り付けられる場合がある。
【0004】
また、例えば特許文献2には、トラックなどの車両のシャシフレームに取り付けられたベースブラケットの複数所要箇所から張り出すように配設される突片に対し、弾性部材を介して弾性支持される支持ブラケットを備え、この支持ブラケットに尿素水ポンプが取り付けられた支持構造が開示されている。突片は、支持ブラケットの上側および下側のそれぞれに2つずつ配設されており、それぞれの突片に支持ブラケットがボルトおよびナットによって締結されている。そして、それぞれのボルトの外周に円筒状の弾性部材を設けることにより、尿素水ポンプに発生する振動を減衰させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/079773号
【文献】特開2015-21531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の尿素水ポンプの支持構造は、ボルトの周囲に弾性部材が設けられた4点による支持構造を有しているため、この支持構造を不整地で使用されるホイールローダなどの作業車両に適用した場合、弾性部材の防振性能は、車体振動によってボルトに作用する力を低減する範囲でしか発揮されず、車体全体が揺らされるような大きな振動が発生した場合には尿素水ポンプが不規則に揺らされて防振性能が十分に発揮されない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、エンジン室と冷却室とを隔離する隔壁に取り付けられた還元剤ポンプを、車体振動から保護することが可能な作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に設けられエンジンを内部に備えたエンジン室と、前記車体に設けられ熱交換器およびファンを備えた冷却室と、前記エンジン室と前記冷却室とを前記車体の前後方向に隔離する隔壁と、前記冷却室に設けられ前記隔壁に対しブラケットを介して取り付けられた還元剤ポンプと、を備えた作業車両において、前記隔壁には、前記ブラケットの上下側にそれぞれ延在片が取り付けられると共に、前記ブラケットの脱落を防止するストッパ部材が取り付けられ、前記ブラケットは、前記隔壁に対し所定の寸法離した状態で、上側の前記延在片に1箇所および下側の前記延在片に2箇所設けられた弾性部材を介して上下側の前記延在片に取り付けられ、幅方向の両端部に内側に向かって切り欠かれた切り欠きがそれぞれ形成され、前記ストッパ部材は、前記隔壁との間に前記ブラケットを挟んで対向する対向面部と、前記対向面部の一端から前記隔壁に向かって延びる延出部と、を有し、前記延出部が前記切り欠きの内部に位置するように、前記ブラケットの幅方向の両側にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エンジン室と冷却室とを隔離する隔壁に取り付けられた還元剤ポンプを、車体振動から保護することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るホイールローダの一構成例を示す外観側面図である。
【
図2】ホイールローダの車体後部の構成を示す模式図である。
【
図3】還元剤ポンプの支持構造を示す斜視図である。
【
図4】車体後方から見た場合における還元剤ポンプの支持構造を示す平面図である。
【
図5】還元剤ポンプの支持構造を示す左側面図である。
【
図6】ブラケットと一対のストッパ部材との位置関係を説明するための斜視図である。
【
図7】ブラケットと一対のストッパ部材との位置関係を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る作業車両の一態様として、例えば土砂や鉱物を掘削してダンプトラックなどへ積み込む荷役作業を行うホイールローダについて説明する。
【0012】
<ホイールローダ1の構成>
まず、本発明の実施形態に係るホイールローダ1の構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るホイールローダ1の一構成例を示す外観側面図である。
図2は、ホイールローダ1の車体後部の構成を示す模式図である。
【0014】
ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵されるアーティキュレート式の作業車両である。具体的には、
図1に示すように、車体の前部となる前フレーム1Aと車体の後部となる後フレーム1Bとが、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。なお、以下の説明において、車体の左右方向のうち、進行方向の前側を向いた状態での左手側を「左方向」とし、その反対となる右手側を「右方向」とする。
【0015】
車体には4つの車輪11が設けられており、2つの車輪11が前輪11Aとして前フレーム1Aの左右両側に、残り2つの車輪11が後輪11Bとして後フレーム1Bの左右両側に、それぞれ設けられている。なお、
図1では、左右一対の前輪11Aおよび後輪11Bのうち、左側の前輪11Aおよび後輪11Bのみを示している。
【0016】
前フレーム1Aの前部には、荷役作業に用いる油圧駆動式の作業装置2が取り付けられている。作業装置2は、前フレーム1Aに基端部が取り付けられたリフトアーム21と、リフトアーム21を駆動する2つのリフトアームシリンダ(不図示)と、リフトアーム21の先端部に取り付けられたバケット22と、バケット22を駆動するバケットシリンダ22Aと、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット22とバケットシリンダ22Aとのリンク機構を構成するベルクランク23と、を有している。
【0017】
リフトアーム21は、油圧ポンプから吐出された作動油が2つのリフトアームシリンダのそれぞれに供給されて各ロッドが伸びることにより、前フレーム1Aに対して上方向に回動し、各ロッドが縮むことにより、前フレーム1Aに対して下方向に回動する。
【0018】
バケット22は、土砂などを掬って放土したり、地面を均したりするための作業具であり、油圧ポンプから吐出された作動油がバケットシリンダ22Aに供給されてロッド220Aが伸びることにより、リフトアーム21に対して上方向に回動(チルト)し、ロッド220Aが縮むことにより、リフトアーム21に対して下方向に回動(ダンプ)する。なお、バケット22は、例えばブレード等の各種アタッチメントに交換することが可能であり、ホイールローダ1は、バケット22を用いた掘削作業や押土作業の他に、除雪作業などの作業を行うこともできる。
【0019】
後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室12と、エンジン31を内部に備えたエンジン室13と、熱交換器の一態様であってエンジン31の冷却水を冷却するラジエータ41およびファン42(
図2参照)を備えた冷却室14と、車体が傾倒しないように作業装置2とのバランスを保つカウンタウェイト15と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、運転室12は前側に、カウンタウェイト15は後側に、エンジン室13および冷却室14は運転室12とカウンタウェイト15との間に、それぞれ配置されている。
【0020】
図2に示すように、エンジン室13および冷却室14はいずれも、後フレーム1Bを上方からカバー101で覆うことによって車体内部に形成された空間である。エンジン室13と冷却室14とは隔壁102によって車体の前後方向に隔離されており、エンジン室13が運転室12に、冷却室14がカウンタウェイト15に、それぞれ隣接して配置されている。このように、エンジン室13と冷却室14との間に隔壁102が設けられることで、エンジン室13で発生した熱が冷却室14に伝達されにくい構造となっている。
【0021】
エンジン室13には、エンジン31と共に、エンジン31から排出される排出ガスを処理する排ガス処理装置32と、排ガス処理装置32の内部に還元剤を噴射する還元剤噴射装置33と、が収容されている。エンジン室13内において、排ガス処理装置32はエンジン31の上方に、還元剤噴射装置33は排ガス処理装置32の上側に隣接して、それぞれ配置されている。なお、還元剤噴射装置33は、排ガス処理装置32の内部に組み込まれていてもよい。
【0022】
還元剤には、例えば、水にアンモニアを溶解させた尿素水が用いられ、還元剤タンク16に貯留されている。還元剤タンク16は、冷却室14の側方の後フレーム1Bに配設されている。なお、本実施形態では、
図1および
図2に示すように、還元剤タンク16は、冷却室14の左側方に設けられているが、これに限らず、ホイールローダ1の仕様によっては冷却室14の右側方に配設されていてもよい。
【0023】
還元剤タンク16内の還元剤は、還元剤ポンプ51によって汲み上げられて還元剤噴射装置33に供給される。
図2に示すように、還元剤ポンプ51は、隔壁102における冷却室14側に取り付けられている。還元剤タンク16と還元剤ポンプ51とは第1接続配管50Aにより、還元剤ポンプ51と還元剤噴射装置33とは第2接続配管50Bにより、それぞれ接続されている。
【0024】
本実施形態では、還元剤ポンプ51の下端部に、下方向に取り外して交換可能なフィルタ52が取り付けられており、還元剤タンク16から汲み上げられて第1接続配管50Aに導かれた還元剤は、フィルタ52を通ることにより異物が取り除かれる。
【0025】
<還元剤ポンプ51の支持構造>
次に、還元剤ポンプ51の支持構造について、
図3~7を参照して説明する。
【0026】
図3は、還元剤ポンプ51の支持構造を示す斜視図である。
図4は、車体後方から見た場合における還元剤ポンプ51の支持構造を示す平面図である。
図5は、還元剤ポンプ51の支持構造を示す左側面図である。
図6は、ブラケット6と一対のストッパ部材91,92との位置関係を説明するための斜視図である。
図7は、ブラケット6と一対のストッパ部材91,92との位置関係を説明するための平面図である。なお、
図6および
図7では、還元剤ポンプ51およびフィルタ52を破線で示している。
【0027】
還元剤ポンプ51は、隔壁102に対してブラケット6を介して取り付けられている。ブラケット6は、例えば鋼などの金属板からなり、金属板を折り曲げ加工することにより冷却室14(後方)側に向かって張り出した3つの第1~第3張り出し部61~63を有している。
【0028】
第1~第3張り出し部61~63は、固定された還元剤ポンプ51の上方および下方に位置して三角形の頂点となる3箇所に配置されている。なお、本実施形態では、
図3および
図4に示すように、第1張り出し部61が還元剤ポンプ51の上方に、第2張り出し部62がフィルタ52の左側方に、第3張り出し部63がフィルタ52の右側方に、それぞれ配置されている。これにより、フィルタ52を交換するため作業員などが現状取り付けられているフィルタ52を下方に向かって引き抜く場合などにおいて、第2張り出し部62および第3張り出し部63が障害にならず、フィルタ52の交換作業がしやすくなっている。
【0029】
また、
図4および
図7に示すように、ブラケット6の幅方向(車体の左右方向)の両端部には、固定された還元剤ポンプ51の高さ位置に、内側に向かって切り欠かれた第1切り欠き601および第2切り欠き602がそれぞれ形成されている。なお、還元剤ポンプ51の左側の切り欠きを第1切り欠き601とし、右側の切り欠きを第2切り欠き602とする。これにより、ブラケット6には、車体の左方向に張り出した左腕部64が第1切り欠き601の上部に、車体の右方向に張り出した右腕部65が第2切り欠き602の上部に、それぞれ設けられている。
【0030】
さらに、ブラケット6の下端部には、第2張り出し部62と第3張り出し部63との間に、上側に向かって切り欠かれた第3切り欠き603が形成されている。これにより、ブラケット6には、第1切り欠き601の下部であって第3切り欠き603の左側に左脚部66が、第2切り欠き602の下部であって第3切り欠き603の右側に右脚部67が、それぞれ設けられている。
【0031】
図3および
図4に示すように、隔壁102には、ブラケット6の上方において第1張り出し部61に対向するように延在する上側延在片71と、ブラケット6の下方において第2張り出し部62および第3張り出し部63に対向するように延在する下側延在片72と、が設けられている。
【0032】
具体的には、上側延在片71は、ブラケット6と同様に、鋼などの金属板を折り曲げ加工して形成されており、隔壁102に2つのボルト70により固定される固定板部711と、固定板部711の下端から冷却室14側に向かって延出する延出板部712と、を有している。同様にして、下側延在片72は、鋼などの金属板を折り曲げ加工して形成されており、隔壁102に2つのボルト70により固定される固定板部721と、固定板部721の上端から冷却室14側に向かって延出する延出板部722と、を有している。
【0033】
本実施形態では、第2張り出し部62および第3張り出し部63の両方に対して下側延在片72の延出板部722が対向しており、延出板部722の中央部分には、フィルタ52の外径よりも大きい幅寸法を有する凹部722Aが形成されている。これにより、フィルタ52の交換作業を可能にしている。
【0034】
なお、必ずしも第2張り出し部62および第3張り出し部63に対して1つの下側延在片72が対応している必要はなく、第2張り出し部62に対応する下側延在片と第3張り出し部63に対応する下側延在片とが別個に設けられていてもよい。また、上側延在片71および下側延在片72は、必ずしもボルト70により固定板部711,721が隔壁102に固定されている必要はなく、例えば、溶接などによって予め隔壁102に固定されていてもよい。
【0035】
第1張り出し部61と上側延在片71とは、第1接続ユニット81によって互いに接続されている。同様に、第2張り出し部62と下側延在片72とは第2接続ユニット82によって、第3張り出し部63と下側延在片72とは第3接続ユニット83によって、それぞれ互いに接続されている。なお、第1~第3接続ユニット81~83はいずれも、同様の構成を有しているため、以下では第1接続ユニット81の構成を例に挙げて説明し、第2接続ユニット82および第3接続ユニット83の構成についての説明は割愛する。
【0036】
第1接続ユニット81は、第1張り出し部61と上側延在片71の延出板部712との間に介在する弾性部材810と、弾性部材810における第1張り出し部61との対向面に固定された第1板部材811と、第1板部材811を第1張り出し部61に固定する第1固定具813と、弾性部材810における延出板部712との対向面に固定された第2板部材812と、第2板部材812を延出板部712に固定する第2固定具814と、を有する。
【0037】
本実施形態では、弾性部材810は、還元剤ポンプ51の重量に応じた耐荷重を有する防振ゴムであり、高さ方向の弾性定数が還元剤ポンプ51の重量よりも大きな耐荷重を有する防振ゴムの弾性定数よりも小さく弾性変形しやすいことから、防振性能が高くなっている。なお、
図4に示すように、弾性部材810は、第1張り出し部61側から延出板部712側に向かうにつれて径が小さくなる円錐台形状に形成されているが、必ずしも円錐台形状である必要はなく、必要最低限の防振性能が確保されていれば形状については特に制限はない。
【0038】
第1板部材811および第2板部材812はそれぞれ、例えば接着剤などによって予め弾性部材810に固定されて一体となっている。本実施形態では、第1板部材811は、第1固定具813としての一対のボルト813Aおよびナット813Bにより第1張り出し部61に2箇所で締結されている。一方、第2板部材812は、弾性部材810との固定面の反対側の面に、ねじが切られた軸部材814Aが取り付けられており、この軸部材814Aが延出板部712に貫通され状態でナット814Bと螺合することにより延出板部712に締結されている。すなわち、第2固定具814は、軸部材814Aおよびナット814Bにより構成されている。
【0039】
ただし、第2接続ユニット82および第3接続ユニット83では、第1板部材821,831が軸部材823A,833Aおよびナット823B,833Bにより第2および第3張り出し部62,63に締結され、第2板部材822,832が一対のボルト824A,834Aおよびナット824B,834Bにより延出板部712に締結されている。したがって、第2接続ユニット82および第3接続ユニット83では、第1接続ユニット81と異なり、第1固定具823,833が軸部材823A,833Aおよびナット823B,833Bにより構成され、第2固定具824,834が一対のボルト824A,834Aおよびナット824B,834Bにより構成されている。
【0040】
第1固定具813,823,833は、第1板部材811,821,831が第1~第3張り出し部61~63に固定できればよく、同様に、第2固定具814,824,834は、第2板部材812,822,832が延出板部712,722に固定できればよいため、固定手段については特に制限はない。
【0041】
還元剤ポンプ51が固定されたブラケット6は、弾性部材810,820,830を有する第1~第3接続ユニット81~83の3点によって隔壁102に取り付けられているため、例えば、ホイールローダ1がバケット22を限界までダンプさせてストッパに打ち付けるショックダンプ作業を行う場合など、車体全体が揺れるような強く大きな振動が発生しても、還元剤ポンプ51に発生する振動を安定的に減衰させて、還元剤ポンプ51を確実に保護することができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、
図4に示すように、還元剤ポンプ51は、3つの弾性部材810,820,830を頂点とし、これらの頂点を結んで形成される仮想三角形(
図4において一点鎖線で示す)の内側に還元剤ポンプ51の重心Gが位置するように、ブラケット6に固定されている。これにより、還元剤ポンプ51に発生する不規則な揺れが抑制されて安定した揺れとなるため、還元剤ポンプ51に発生する振動をより効率よく減衰させることができる。
【0043】
また、隔壁102には、ブラケット6の脱落を防止する一対のストッパ部材91,92が設けられている。一対のストッパ部材91,92はそれぞれ、隔壁102との間にブラケット6を挟んで対向する対向面部911,921と、隔壁102に一対のボルト70で固定される固定部912,922と、対向面部911,921の一端から隔壁102に向かって延びて対向面部911,921と固定部912,922とを連結する延出部913,923と、を有する。
【0044】
図5に示すように、ブラケット6が振動していない状態では、ブラケット6と隔壁102とは、所定の寸法L1離れており、ブラケット6と対向面部911,921とは、所定の寸法L2(<L1)離れている。すなわち、ブラケット6と隔壁102との間およびブラケット6と対向面部911,921との間には、それぞれ隙間が形成されている。これらの隙間の大きさL1,L2は、車体振動に伴うブラケット6の前後方向の変位が過剰とならない範囲で設定されている。したがって、ブラケット6の前方向の変位は隔壁102により、後方向の変位は対向面部911,921により、それぞれ抑制されている。
【0045】
図6および
図7に示すように、一方の第1ストッパ部材91は、延出部913が第1切り欠き601の内部に位置するように、ブラケット6の左側に配置されている。他方の第2ストッパ部材92は、延出部923が第2切り欠き602の内部に位置するように、ブラケット6の右側に配置されている。
【0046】
これにより、例えば仮に、第1接続ユニット81の弾性部材810が破損してしまった場合であっても、ブラケット6は、左腕部64が第1ストッパ部材91の延出部913に、右腕部65が第2ストッパ部材92の延出部923に、それぞれ引っ掛かると共に、対向面部911,921に当接するため、還元剤ポンプ51が落下することを防止することができる。
【0047】
したがって、一対のストッパ部材91,92は、ブラケット6の前後方向の変位を抑制するストッパとしての機能に加えて、弾性部材810の破損時におけるブラケット6(還元剤ポンプ51)の脱落を防止する機能を有している。なお、一対のストッパ部材91,92において、ブラケット6との接触部分にスポンジやゴムなどの緩衝材を取り付けてもよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な他の変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、ホイールローダ1における還元剤ポンプ51の支持構造を例に挙げて説明したが、これに限らず、種々の作業車両において、エンジン室と冷却室とを前後に隔離する隔壁に取り付けられる還元剤ポンプの支持構造に対しても本発明を適用することが可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、還元剤ポンプ51の下端部にフィルタ52が取り付けられていたため、3つの張り出し部61~63は、還元剤ポンプ51の上方およびフィルタ52の両側方のそれぞれに位置していたが、これに限らず、例えば、還元剤ポンプ51の上方2箇所および還元剤ポンプ51の下方1箇所のそれぞれに位置していてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:ホイールローダ(作業車両)
6:ブラケット
13:エンジン室
14:冷却室
31:エンジン
51:還元剤ポンプ
52:フィルタ
71:上側延在片(延在片)
72:下側延在片(延在片)
91,92:ストッパ部材
102:隔壁
601,602:切り欠き
810,820,830:弾性部材
911,921:対向面部
913,923:延出部
G:重心