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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】誘導性部品の製造方法、及び誘導性部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20230119BHJP
   H01F 1/37 20060101ALI20230119BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
H01F41/02 D
H01F1/37
H01F17/06 F
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020127222
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2021027345
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】10 2019 211 439.3
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515028838
【氏名又は名称】ウルト エレクトロニク アイソス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】アルパンクマール パテル
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-215968(JP,A)
【文献】特開2015-043459(JP,A)
【文献】特開2002-087877(JP,A)
【文献】国際公開第2012/172921(WO,A1)
【文献】特開2005-219963(JP,A)
【文献】特開2005-310694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 1/37
H01F 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 誘導性部品の製造方法であって、
- 磁性材料を含む基体を提供し、
- 前記基体を焼結し、前記焼結は温度Tで行われ、ここで、T≧1000℃であり、
- 前記焼結された基体を粉砕して焼結粒子を形成し、
- 前記焼結粒子と結合剤から少なくとも1つの混合物を生成し、
- 前記少なくとも1つの混合物と少なくとも1つのコイルを型に配置し、
- 前記焼結粒子が前記結合剤とともに、前記少なくとも1つのコイルを少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの磁心を形成するように、前記少なくとも1つの混合物内の前記結合剤を活性化するステップを含む、方法において、
前記少なくとも1つの混合物は、前記結合剤に対する前記焼結粒子の質量比mが、75/25≦m≦99/1となるように、製造されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記磁性材料は、少なくとも1つのフェライト材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼結は、温度Tで行われ、ここで、T≧1100℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記焼結粒子はそれぞれのアスペクト比(A)を有し、前記少なくとも1つの混合物を生成する前に、前記焼結粒子の少なくとも一部は、前記アスペクト比(A)が低減されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの混合物を生成する前に、前記焼結粒子は、ボールミルによって加工されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの混合物を生成する前に、前記焼結粒子は、粒子形態及び/又は粒径に基づいて、少なくとも2種類の焼結粒子に分離されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの混合物を生成するために使用される前記焼結粒子の少なくとも70%は、それぞれのアスペクト比Aを有し、以下の、0.5≦A≦1が適用されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの混合物を生成するために使用される前記焼結粒子の少なくとも70%は、それぞれの最小寸法Aminを有し、以下の、10μm≦Amin≦1000μmが適用されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの混合物を生成する前に、前記焼結粒子は、第1焼結粒子を含む第1フラクションと、前記第1焼結粒子に対し、粒子形態及び/又は粒径が異なる第2焼結粒子を含む第2フラクションに分離されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1磁心は、第1焼結粒子で生成され、前記少なくとも1つのコイルを少なくとも部分的に取り囲むこと、及び、
第2磁心は、前記第1焼結粒子に対し、粒子形態及び/又は粒径が異なる第2焼結粒子で生成され、前記第1磁心、及び前記少なくとも1つのコイルを少なくとも部分的に取り囲むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記結合剤は、温度を上げるか、及び/又は圧力を上げるかによって活性化されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記磁性材料を押し付けることにより、前記基体が提供されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
- 少なくとも1つのコイルと、
- 前記少なくとも1つのコイルを少なくとも部分的に囲む、少なくとも1つの磁心と、を含む誘導性部品であって、
前記少なくとも1つの磁心は、結合剤によって互いに結合された焼結粒子で構成されている誘導性部品において、
前記結合剤に対する前記焼結粒子の質量比mが、75/25≦m≦99/1であることを特徴とする誘導性部品。
【請求項14】
第1焼結粒子を有する第1磁心は、前記少なくとも1つのコイルを少なくとも部分的に取り囲むこと、及び、
前記第1焼結粒子に対し、粒子形態及び/又は粒径が異なる第2焼結粒子を有する第2磁心は、前記第1磁心、及び前記少なくとも1つのコイルを少なくとも部分的に取り囲むことを特徴とする請求項13に記載の誘導性部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導性部品を製造する方法、及び誘導性部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、誘導性部品の製造方法を開示している。コイルと幾らかの磁性粉末から、固形本体が連続的に形成される。次に、その本体を炉に配置し、約900℃で焼結して、誘導性部品を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】EP 2 211 360 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を可能にする方法を提供する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。最初に、磁性材料を含む基体が提供される。磁性材料は、例えば、磁性廃棄物材料を再処理することによって、又は原材料を処理することによって生成され得る。例えば、磁性廃棄物材料は、粉砕、濾過及び/又は混合され、磁性材料を形成するために活性化されてもよい。基体は、特に磁性材料から形成される。基体の焼結は比較的高温で容易かつ低コストで行うことができる。なぜなら、焼結は少なくとも1つのコイルなしで行われ、その少なくとも1つのコイルの材料溶融温度を考慮する必要がないためである。焼結後、焼結された基体を粉砕し、焼結粒子を生成する。少なくとも1つの混合物を生成するための焼結粒子の粉砕及び/又は選択により、誘導性部品の電磁特性に影響を与えることができる。続いて、少なくとも1つの混合物が、焼結粒子と結合剤から生成される。少なくとも1つの混合物は、少なくとも1つのコイルと共に金型内に配置され、続いて、結合剤が活性化されることで、結合剤は、焼結粒子を結合して少なくとも1つの磁心を形成する。形成された磁心は、少なくとも1つのコイルを所望の方法で取り囲む。好ましくは、少なくとも1つの磁心は、端子接点から離れて、少なくとも1つのコイルを完全に取り囲む。焼結が少なくとも1つのコイルなしで行われ、焼結粒子が結合剤によって結合されて少なくとも1つの磁心を形成するので、誘導性部品の製造は容易かつ低コストである。焼結基体の粉砕、及び少なくとも1つの混合物を生成するために使用される焼結粒子の選択により、誘導性部品の電磁特性に特に影響を与えることができる。
【0006】
請求項2に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。少なくとも1つのフェライト材料は、容易かつ低コストで入手できる。少なくとも1つのフェライト材料は、高いインダクタンス及び/又は柔軟な飽和を可能にする。少なくとも1つのフェライト材料により、高電位試験(AC HiPot試験)で比較的低いAC電力損失(AC損失)及び/又は比較的高い電圧が可能になる。少なくとも1つのフェライト材料は、特にマンガン(Mn)、亜鉛(Zn)及び/又はニッケル(Ni)を含み、例えばNiZn及び/又はMnZnを含む。
【0007】
請求項3に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。焼結は少なくとも1つのコイルなしで行われるので、比較的高い温度Tでの焼結が可能である。焼結工程にかかる時間は、温度Tが高いほど短くなる。これにより、焼結工程にかかる時間を短縮できる。焼結は、焼結粒子の電磁特性に影響を与える。温度Tと焼結にかかる時間を容易かつ柔軟に選択又は設定できるため、電磁特性に所望の方法で影響を与えることができる。
【0008】
請求項4に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。アスペクト比は、それぞれの焼結粒子の最小寸法Aminと最大寸法Amaxの比率を特徴付ける。したがって、以下がアスペクト比Aに適用される:A=Amin/Amax。少なくとも1つの混合物を生成するために、焼結粒子は、それらの形状が球形及び/又は立方体形に類似するように加工される。焼結粒子のアスペクト比は、加工によって少なくとも部分的に減少する。焼結粒子はその形状が球形又は立方体形状に近いので、少なくとも1つの磁心は、実質的に均一な密度を有し、その結果、実質的に均一な電磁特性を有する。さらに、焼結粒子が結合剤によって均一に湿潤されるため、少なくとも1つの磁心は、優れた機械的安定性を有する。
【0009】
請求項5に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。焼結粒子はボールミルで加工されるため、それらの形状は球形及び/又は立方体形に近い。その加工は、好ましくは、焼結粒子のアスペクト比が少なくとも部分的に低減されるという効果を有する。ボールミルは回転ドラムを含み、その中にボール、例えば金属ボールが配置される。焼結粒子は砕製物(グランド材)としてボールミルに供給され、前述の方法でドラム内のボールによって加工される。
【0010】
請求項6に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。焼結粒子は、粒子形態及び/又は粒径に基づいて分離されるので、少なくとも1つの混合物に使用される焼結粒子は、所望の方法で選択できる。粒子形態に基づく分離又は選択は、例えば、アスペクト比Aが少なくとも0.5、特に少なくとも0.6、特に少なくとも0.7、特に少なくとも0.8、及び特に少なくとも0.9の焼結粒子が分離され、少なくとも1つの混合物の生成に用いられるように行われる。さらに、焼結粒子は、例えば、焼結粒子の第1の粗いフラクション(fraction)と第2の細かいフラクションが生成されるように、粒径に基づいて分離する。さらに、焼結粒子は、例えば、粒径が所望の範囲になるように、粒径に基づいて分離される。それらの粒子形態及び/又は粒径に基づいて焼結粒子を選択することにより、少なくとも1つのコアの電磁特性に特に影響を与えることができる。
【0011】
請求項7に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。好ましくは、少なくとも1つの混合物を生成するために使用される焼結粒子の少なくとも80%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%は、それぞれのアスペクト比Aを有する。アスペクト比Aは、焼結粒子の形状が球形又は立方体形に可能な限り近づくようにする。アスペクト比Aは、それぞれの焼結粒子の最小寸法Aminと最大寸法Amaxの比率を特徴付ける。以下は、アスペクト比Aに適用される:A=Amin/Amax。好ましくは、以下がアスペクト比Aに適用される:0.5≦A≦1、特に0.6≦A≦0.9、そして特に0.7≦A≦0.8。アスペクト比Aは、磁束の所望の分布に応じて選択できる。有利な特性は、アスペクト比A≒0.75で得られる。
【0012】
請求項8に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。好ましくは、使用される焼結粒子の少なくとも80%、特に少なくとも90%、そして特に少なくとも95%は、それぞれの最小寸法Aminを有する。好ましくは、使用される焼結粒子は、それらの粒径に基づいて、第1焼結粒子を含む第1フラクションと、第2焼結粒子を含む第2フラクションとに分離される。以下は、好ましくは、第1焼結粒子の最小寸法A1minに適用される:500μm≦A1min≦1000μm、特に600μm≦A1min≦900μm、特に700μm≦A1min≦800μm。以下は、好ましくは、第2焼結粒子の最小寸法A2minに適用される:10μm≦A2min≦500μm、特に100μm≦A2min≦400μm、そして特に200μm≦A2min≦300μm。好ましくは、使用される焼結粒子の少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%が最小寸法A1min又はA2minを有する。
【0013】
請求項9に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。好ましくは、第1焼結粒子及び第2焼結粒子は、それらの粒子形態及び/又はそれらの粒径が異なる。好ましくは、焼結粒子は、それらのアスペクト比及び/又はそれらの粒径、特にそれらの最小寸法及び/又はそれらの最大寸法に基づいて分離される。使用する焼結粒子を選択的に選択することにより、誘導性部品の電磁特性に所望の方法で影響を与えることができる。
【0014】
好ましくは、焼結粒子は、第1焼結粒子を含む粗の第1フラクションと、第1焼結粒子と比較して小さい、第2焼結粒子を含む微細の第2フラクションに分離される。焼結粒子が粗の第1フラクションと微細の第2フラクションに分離されているため、第1磁心を形成するための第1混合物と、第2磁心を形成するための第2混合物が生成される。第1混合物を生成するために、第1焼結粒子は結合剤と混合される。これに対応して、第2混合物を生成するために、第2焼結粒子が結合剤と混合される。少なくとも1つのコイル及び第1混合物が型内に配置され、続いて第1混合物の結合剤が活性化されるので、第1焼結粒子は結合剤により第1磁心を形成する。少なくとも1つのコイル及び第1磁心を備えて得られた部品は、第2混合物と共に第2型内に配置される。続いて、第2混合物中の結合剤が活性化され、その結果、第2焼結粒子は結合剤により第2磁心を形成する。第2磁心は、第1磁心及び少なくとも1つのコイルを少なくとも部分的に取り囲む。
【0015】
以下は、好ましくは、第1焼結粒子の最小寸法A1minに適用される:500μm≦A1min≦1000μm、特に600μm≦A1min≦900μm、特に700μm≦A1min≦800μm。以下は、好ましくは、第2焼結粒子の最小寸法A2minに適用される:10μm≦A2min≦500μm、特に100μm≦A2min≦400μm、特に200μm≦A2min≦300μm。好ましくは、使用される焼結粒子の少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%が最小寸法A1min又はA2minを有する。
【0016】
2段階の製造方法により、誘導性部品の電磁特性と機械特性を最適化できる。焼結粒子を多数のフラクションに分割し、焼結粒子を選択及び分割することにより、電磁特性に所望の方法で影響を与えることができる。
【0017】
好ましくは、第1磁心は、端子接点を除いて、少なくとも1つのコイルを完全に取り囲む。好ましくは、第2磁心は、端子接点を除いて、第1磁心及び少なくとも1つのコイルを完全に取り囲む。異なる焼結粒子を備えた多数の磁心を生成することにより、部品の電磁気的及び/又は機械的特性に望ましい方法で影響を与えることができる。比較的小さい第2焼結粒子が外側の第2磁心を形成するので、部品は特に滑らかな表面を有する。
【0018】
請求項10に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。焼結粒子は、好ましくは、それらの粒子形態及び/又はそれらの粒径に基づいて、第1焼結粒子及び第2焼結粒子に分離される。好ましくは、焼結粒子は、それらの粒径、特にそれらの最小寸法及び/又はそれらの最大寸法に基づいて、第1焼結粒子を有する粗の第1フラクションと、第1焼結粒子と比較して小さい第2焼結粒子を有する微細の第2フラクションに分離される。第1混合物は、第1焼結粒子及び結合剤から生成される。同様に、第2混合物は、第2焼結粒子と結合剤から生成される。少なくとも1つのコイル及び第1混合物は、第1型(モールド)に配置され、続いて、第1混合物内の結合剤が活性化されるので、第1焼結粒子は結合剤により第1磁心を形成する。第1磁心は、少なくとも1つのコイルを少なくとも部分的に取り囲む。少なくとも1つのコイルと第1磁心、及び第2混合物を用いて生成された部品は、第2型(モールド)に配置され、続いて、第2混合物内の結合剤が活性化される。そのため、第2焼結粒子が結合剤により第2磁心を形成する。第2磁心は、第1磁心及び少なくとも1つのコイルを少なくとも部分的に取り囲む。好ましくは、第1磁心は、端子接点を除いて、少なくとも1つのコイルを完全に取り囲む。好ましくは、第2磁心は、端子接点を除いて、第1磁心及び少なくとも1つのコイルを完全に取り囲む。異なる焼結粒子を備えた多数の磁心を生成することにより、部品の電磁気的及び/又は機械的特性に望ましい方法で影響を与えることができる。
【0019】
請求項11に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。結合剤は、少なくとも1つの混合物の温度を上げることによって、及び/又は少なくとも1つの混合物への圧力を上げることによって、簡単な方法で活性化される。結合剤の活性化は、焼結粒子が互いに結合して少なくとも1つのコアを形成するという効果を有する。結合剤として、例えば、高分子材料及び/又は樹脂が用いられる。
【0020】
請求項1に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。質量比mは、誘導性部品の密度及び/又はエアギャップを所望の方法で設定するために使用される。質量比mは、結合剤の質量mBに対する焼結粒子の質量mPの比を表す。以下は質量比mに適用される:m=mP/mB。結合剤に対する焼結粒子の質量比が高くなると、密度が増加し、及び/又は誘導性部品のエアギャップが減少する。逆もまた同様である。密度及び/又はエアギャップは、誘導性部品の飽和挙動に影響を与える。
【0021】
請求項12に記載の方法は、電磁特性が改善された誘導性部品の容易かつ低コストの製造を保証する。磁性体をプレスすることで簡単に基体を生成できる。磁性材料は、好ましくは、顆粒及び/又は粉末の形態をとる。磁性材料は、少なくとも1つのフェライト材料を含む。好ましくは、磁性材料は、少なくとも1つの原材料及び/又は少なくとも1つの廃棄物材料が処理及び/又は活性化されるように提供される。好ましくは、いくつかの原材料及び/又はいくつかの廃棄物材料が混合及び/又は処理される。好ましくは、磁性廃棄物材料は再処理される。
【0022】
本発明はまた、容易かつ低コストで、改善された電磁特性を備えて製造され得る誘導性部品を提供するという目的に基づいている。
【0023】
この目的は、請求項13の特徴を有する誘導性部品によって達成される。誘導性部品の利点は、方法のすでに説明した利点に対応する。誘導性部品は、特に、請求項1乃至12のうちの少なくとも1つの特徴を備えて開発されてもよい。焼結粒子は、活性化された結合剤と結合されて、少なくとも1つのコアを形成する。焼結粒子は、磁性材料、特に少なくとも1つのフェライト材料を含む。焼結粒子は、請求項1乃至12に関連して既に説明したように、それぞれの粒子形態、特にそれぞれのアスペクト比、及び/又はそれぞれの粒径を有する。参照番号は対応する機能に対して付けられる。
【0024】
請求項14に記載の誘導性部品は、電磁特性が改善された、容易かつ低コストの製造を保証する。多数の磁心の形成と、このために使用される焼結粒子の選択により、電磁特性に所望の方法で影響を与えることができる。
【0025】
本発明のさらなる特徴、利点及び詳細は、以下の例示的な実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】誘導性部品の断面図を示す。
図2A図1による誘導性部品を製造するステップの流れ図を示す。
図2B図1による誘導性部品を製造するステップの流れ図を示す。
図3】時間t及び周波数fの関数としての品質係数Qの図表であり、上図は先行技術による鉄合金を含む誘導性部品を示し、中央図はマンガン及び亜鉛を含むフェライト材料での本発明による誘導性部品を示し、下図はニッケル及び亜鉛を含むフェライト材料での本発明による誘導性部品を示す。
図4】時間t及び周波数fの関数としてのAC電力損失PACの図表であり、上図は先行技術による鉄合金を含む誘導性部品を示し、中図はマンガン及び亜鉛を含むフェライト材料での本発明による誘導性部品を示し、下図はニッケル及び亜鉛を含むフェライト材料での本発明による誘導性部品を示す。
図5】先行技術による鉄合金を含む誘導性部品の周波数f及び時間tの関数としての品質係数Qの図表を示す。
図6】マンガン及び亜鉛を含むフェライト材料での本発明による誘導性部品の周波数f及び時間tの関数としての品質係数Qの図表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
誘導性部品1は、コイル2、第1磁心3、及び第2磁心4を備える。コイル2は、例えば円筒状のコイルとして形成されている。コイル2は、導電性材料からなる。コイル2は、端子接点5、6を有する。
【0028】
第1磁心3は、コイル2を取り囲んでいる。第1磁心3は、第1結合剤Bによって互いに結合されている第1焼結粒子Pを含む。第2磁心4は、第1磁心3及びコイル2を取り囲んでいる。第2磁心4は、第2結合剤Bによって互いに結合されている第2焼結粒子Pを含む。端子接点5、6は、第1磁心3及び第2磁心4を通って外部に導出されている。
【0029】
第1焼結粒子Pは、いずれの場合にも、最小寸法A1min及び最大寸法A1maxを有する。第1焼結粒子Pは、それぞれの第1アスペクト比Aを有し、A=A1min/A1maxである。第1焼結粒子Pの少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%は、それぞれ最小寸法A1minを有し、ここで、500μm≦A1min≦1000μm、特に600μm≦A1min≦900μm、特に700μm≦A1min≦800μmである。第1焼結粒子Pの少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%は、それぞれのアスペクト比Aを有し、ここで、0.5≦A≦1、特に0.6≦A≦1、特に0.7≦A≦1、特に0.8≦A≦1、特に0.9≦A≦1である。好ましくはアスペクト比Aには、0.5≦A≦1、特に0.6≦A≦0.9、特に0.7≦A≦0.8が適用される。アスペクト比Aは、磁束の所望の分布に応じて選択できる。A≒0.75のアスペクト比で有利な特性が得られる。
【0030】
第2焼結粒子Pは、いずれの場合にも、最小寸法A2min及び最大寸法A2maxを有する。第2焼結粒子Pは、それぞれの第2アスペクト比Aを有し、A=A2min/A2maxである。第2焼結粒子Pの少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%は、それぞれ最小寸法A2minを有し、ここで、10μm≦A2min≦500μm、特に100μm≦A2min≦400μm、特に200μm≦A2min≦300μmである。第2焼結粒子Pの少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%は、それぞれのアスペクト比Aを有し、ここで、0.5≦A≦1、特に0.6≦A≦1、特に0.7≦A≦1、特に0.8≦A≦1、特に0.9≦A≦1である。好ましくは、アスペクト比Aには、0.5≦A≦1、特に0.6≦A≦0.9、特に0.7≦A≦0.8が適用される。アスペクト比Aは、磁束の所望の分布に応じて選択できる。A≒0.75のアスペクト比で有利な特性が得られる。
【0031】
第1焼結粒子P及び第2焼結粒子Pは、それらの粒子形態又はそれらのアスペクト比A又はA、及び/又はそれらの粒径又はそれらの最小寸法A1min又はA2minがそれぞれ異なる。
【0032】
以下、図2に基づいて、誘導性部品1の製造方法を説明する。
【0033】
ステップSにおいて、最初に、出発材料R~Rを互いに混合して出発材料混合物Rを形成する。出発材料R~Rは、例えば、リサイクル又は再処理される原材料及び/又は廃棄物である。出発材料R~Rは、例えば酸化亜鉛(ZnO)、酸化マンガン(MnO)及び/又は酸化鉄を含む。
【0034】
出発材料混合物Rは、ステップSにおいて活性化及び/又はか焼される。か焼において、カルシウム及び炭酸マグネシウムを含む出発材料混合物Rは、脱水及び/又は分解を達成するために加熱される。
【0035】
活性化された材料混合物Rは、磁性材料Mを形成する。磁性材料Mは、例えば、粉末形態及び/又は顆粒形態である。磁性材料Mは、少なくとも1つのフェライト材料、例えば、MnZnフェライト材料及び/又はNiZnフェライト材料を含む。
【0036】
ステップSにおいて、磁性材料Mはプレスされ、基体Gを形成する。基体Gは、グリーン体とも呼ばれる。
【0037】
次のステップSにおいて、基体Gは焼結される。焼結は、温度Tで行われる。ここで、T≧1000℃、特にT≧1100℃、特にT≧1200℃である。焼結された基体はGで示されている。
【0038】
ステップSにおいて、焼結された基体Gは粉砕される。粉砕は、例えば、破砕機又は粉砕機(クラッシャー)によって行われる。粉砕により、一般にPで示される焼結粒子が生成される。焼結粒子Pは、それぞれの場合、最小寸法Amin及び最大寸法Amaxを有し、これらはそれぞれのアスペクト比Aを定義する。それぞれのアスペクト比に、A=Amin/Amaxが適用される。焼結基体Gの粉砕後、焼結粒子Pのアスペクト比Aは大きく発散する。特に粉砕時、それぞれの小さいアスペクト比Aを有する、細長い形状の焼結粒子Pもまた生成される。焼結粒子Pのさらなる処理のために、実質的に球形及び/又は直方体形に対応する形状が望ましい。
【0039】
ステップSにおいて、焼結粒子Pのアスペクト比Aを小さくする。これは、それぞれの焼結粒子Pの最大寸法Amaxが最小寸法Aminに近づくことを意味する。この目的のために、焼結粒子Pは、例えば、ボールミルによって加工される。ボールミルは、ドラムと、その中に配置された金属ボールとを備える。焼結粒子Pは、ドラムに導入され、ドラムの回転に基づいて、金属ボールによって、さらに粉砕及び/又は摩擦によって加工され、その結果、焼結粒子Pのアスペクト比Aは、少なくとも部分的に減少する。
【0040】
ステップSにおいて、焼結粒子Pは、それらの粒子形態に基づいて、及び/又はそれらの粒径に基づいて分離される。焼結粒子Pは、第1焼結粒子Pを含む第1フラクションと、第2焼結粒子Pを含む第2フラクションに分離される。第1焼結粒子Pは、最小寸法A1min及び最大寸法A1max並びにアスペクト比Aを有し、一方、第2焼結粒子Pは、最小寸法A2min、最大寸法A2max及びアスペクト比Aを有する。第1フラクションは、第2フラクションと比較してより粗い粒子を含む。したがって、焼結粒子P、Pの少なくとも70%について、以下が適用される:A1min>A2min及び/又はA1max>A2min及び/又はA1min>A2max
【0041】
第1フラクションにも第2フラクションにも属さない、ステップSで分離された焼結粒子Pは、ステップSに戻されてさらに粉砕され、及び/又はステップSにおいて、さらに加工され得る。これは、図2に破線で示されている。
【0042】
次のステップS81において、第1焼結粒子P及び第1結合剤Bから第1混合物Xが生成される。これに対応して、ステップS82において、第2焼結粒子P及び第2結合剤Bから第2混合物Xが生成される。結合剤B及びBは、同じであっても異なっていてもよい。結合剤B、Bは、例えば、ポリマープラスチック及び/又は樹脂である。
【0043】
第1混合物Xは、第1焼結粒子Pの質量mP1と第1結合剤Bの質量mB1との質量比mを有する。したがって、質量比mには以下が適用される:m=mP1/mB1。好ましくは、以下が質量比mに適用される:75/25≦m≦99/1、特に80/20≦m≦98/2、及び85/15≦m≦95/5。第2混合物Xは、第2焼結粒子Pの質量mP2と第2結合剤Bの質量mB2との質量比mを有する。したがって、質量比mには以下が適用される:m=mP2/mB2。好ましくは、以下が質量比mに適用される:75/25≦m≦99/1、特に80/20≦m≦98/2、及び85/15≦m≦95/5。質量比は通常mで表される。
【0044】
ステップSにおいて、第1混合物X及びコイル2が第1型(モールド)F内に配置される。続いて、第1結合剤Bが活性化され、第1結合剤Bが第1焼結粒子Pを結合して第1磁心3を形成する。第1結合剤Bを活性化するために、第1混合物Xへの圧力p及び/又は第1混合物Xの温度Tが増加される。第1結合剤Bの硬化後、コイル2を有する第1磁心3が離型される。
【0045】
次のステップS10において、第1磁心3は、第2型(モールド)F内にコイル2及び第2混合物Xと共に配置される。続いて、第2結合剤Bが活性化され、第2結合剤Bが第2焼結粒子Pを結合して第2磁心4を形成する。第2結合剤Bは、第2混合物Xへの圧力pを増加することによって、及び/又は第2混合物Xの温度Tを増加することによって活性化される。第2結合剤Bの硬化後、第1磁心3及びコイル2を有する第2磁心4が離型される。
【0046】
ステップS11において、誘導性部品1は、離型によって提供される。
【0047】
図3は、時間tにわたる周波数f(100kHz、500kHz、1MHz)に対する品質係数Q(Q値)の測定曲線を示す。本発明による誘導性部品1の品質係数Q(中央図及び下図を参照)は、先行技術による誘導性部品(上図を参照)と比較して、時間tにわたってより一定である。測定曲線に加えて、平滑化された測定曲線が図3に示されており、これは品質係数Qの不変性に関してより簡単な比較を可能にすることを意図している。
【0048】
対応する方法で、図4は、時間tにわたる周波数f(400kHz、1.2MHz)に対するAC電力損失PACの測定曲線を示す。本発明による誘導性部品1のAC電力損失PAC(中央図及び下図を参照)は、先行技術による誘導性部品(上図を参照)と比較して、時間tにわたってより一定である。測定曲線に加えて、平滑化された測定曲線が図4に示されており、これはAC電力損失PACの不変性に関してより簡単な比較を可能にすることを意図している。
【0049】
本発明による部品1は、熱的劣化がほとんどなく、その結果、本発明による誘導性部品1を有する電気回路の挙動が、例えば、品質係数QやAC電力損失PACなど時間tにわたって変化するパラメータの結果として変化せず、これらの機能は損なわれないことを確実にする。図5の測定曲線と図6の測定曲線の比較は、本発明による誘導性部品1の品質係数Qが、時間tにわたってほとんど変化せず、本発明による部品1は、熱的劣化がほとんどないことを示す。
【0050】
一般に以下が適用される:
誘導性部品1は、少なくとも1つのコイル2を有する。好ましくは、誘導性部品1は、正確に1つのコイル又は正確に2つのコイルを有する。
【0051】
焼結基体Gを粉砕することによって生成された焼結粒子Pは、任意の所望の方法で、加工、分離及び/又は選択できる。言及したステップの順番は、ここで所望の通りにできる。既知のフィルタ及び/又は遮蔽物及び/又は分離装置が、分離及び/又は選択のために使用できる。焼結粒子Pの加工、分離及び/又は選択により、誘導性部品1の電磁特性を所望の方法で設定できる。特に、インダクタンス、飽和挙動、及び/又はエアギャップを設定できる。
【0052】
結合剤Bの活性化は、コールドプレス又はホットプレスにより行うことができる。
【0053】
磁性材料M、及びその結果として少なくとも1つの磁心3、4は、好ましくは少なくとも1つのフェライト材料を含む。フェライト材料は低コストで容易に入手できる。フェライト材料の使用は、誘導性部品1の比較的良好な電磁特性が達成されることを意味する。特に、誘導性部品1は、高いインダクタンス、所望の飽和挙動、低損失を有し、及び/又は高電圧で動作できる。このような誘導性部品1は、例えば、3kVAC(3mA、3秒)の電圧での高電位試験(AC HiPot試験)に耐えることができる。
【0054】
焼結粒子は、一般的にPで表される。アスペクト比は、一般的にAで表される。最小寸法は一般にAminで表される。最大寸法は一般にAmaxで表される。
【符号の説明】
【0055】
1 誘導性部品
2 コイル
3 第1磁心
4 第2磁心
5、6 端子接点
第1アスペクト比
第2アスペクト比
第1結合剤
第2結合剤
第1型(モールド)
第2型(モールド)
G 基体
焼結(された)基体
M 磁性材料
第1焼結粒子
第2焼結粒子
AC AC電力損失
Q 品質係数
出発材料
出発材料混合物
第1混合物
第2混合物
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6