(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】補強シールリング
(51)【国際特許分類】
F16J 9/26 20060101AFI20230119BHJP
F16J 9/28 20060101ALI20230119BHJP
F16J 15/30 20060101ALI20230119BHJP
F16J 15/16 20060101ALI20230119BHJP
F16J 15/56 20060101ALI20230119BHJP
F16J 9/10 20060101ALI20230119BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
F16J9/26 B
F16J9/28
F16J15/30
F16J15/16 A
F16J15/56
F16J9/10
F04B39/00 107J
(21)【出願番号】P 2020506927
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 US2018046105
(87)【国際公開番号】W WO2019032895
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-10
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513127423
【氏名又は名称】メインスプリング エナジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スヴルツェク, マット
(72)【発明者】
【氏名】プリュドム, ジョディー
(72)【発明者】
【氏名】デヨング, ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】ハスラー, トム
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-114158(JP,U)
【文献】特開昭59-083869(JP,A)
【文献】特開平08-200510(JP,A)
【文献】特開2001-289328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 7/00-10/04
F16J 15/16-15/32
F16J 15/54-15/56
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールリングアセンブリであって、前記シールリングアセンブリは、
少なくとも1つのリングセグメントであって、前記少なくとも1つのリングセグメントは、前記少なくとも1つのリングセグメントが摩耗するときにシリンダボアに対してシールするように構成され
ており、前記少なくとも1つのリングセグメントは、
自己潤滑性材料と、
第1の表面と
を備える、少なくとも1つのリングセグメントと、
第2の表面を備えている補強層と
を備え、
前記第1の表面および前記第2の表面は、それらの間に界面を形成し、前記界面は、前記第1の表面におよび前記第2の表面に取り付けられ
ている接合層を備え
、
前記補強層は、前記界面において前記少なくとも1つのリングセグメント上に圧縮予負荷を提供する、シールリングアセンブリ。
【請求項2】
前記接合層は、ろう付けされた界面である、請求項1に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項3】
前記自己潤滑性材料は、ポリマーを備えている、請求項1に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項4】
前記自己潤滑性材料は、黒鉛を備えている、請求項1に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項5】
前記シールリングアセンブリは、オイルレス動作のために構成されている、請求項1に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのリングセグメントは、対応する第1の熱膨張係数(CTE)を有し、
前記補強層は、対応する第2のCTEを有し、
前記第1のCTEと前記第2のCTEとは、互いに合致させられている、請求項1に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項7】
前記補強層は、少なくとも1つの金属シートを備えている、請求項1に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項8】
前記補強層は、前記少なくとも1つのリングセグメントの一部に沿って取り付けられている、請求項1に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項9】
前記補強層は、前記少なくとも1つのリングセグメントの内側半径方向表面に沿って取り付けられている、請求項1に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのリングセグメントが動作中に摩耗するとき、前記少なくとも1つのリングセグメントは、圧縮状態のままであり、前記補強層は、動作中、少なくともある時間にわたって引張状態のままである、請求項1に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項11】
デバイスであって、前記デバイスは、
ボアを備えているシリンダであって、前記ボアは、低圧領域
と高圧領域とを備えている、シリンダと、
リング溝を備えているピストンであって、前記ピストンは、前記ボアの軸に沿って平行移動するように構成されている、ピストンと、
前記リング溝の中に配置され
ているシールリングアセンブリと
を備え、
前記シールリングアセンブリは、
少なくとも1つのリングセグメントであって、前記少なくとも1つのリングセグメントは、前記少なくとも1つのリングセグメントが摩耗するときにシリンダボアに対してシールするように構成され
ており、前記少なくとも1つのリングセグメントは、
自己潤滑性材料と、
第1の表面と
を備える、少なくとも1つのリングセグメントと、
第2の表面を備えている補強材と
を備え、
前記第1の表面および前記第2の表面は、それらの間に界面を形成し、前記界面は、前記第1の表面におよび前記第2の表面に取り付けられ
ている接合層を備え
、
前記補強材は、前記界面において前記少なくとも1つのリングセグメント上に圧縮予負荷を提供する、デバイス。
【請求項12】
前記シールリングアセンブリは、前記ボア内でのオイルレス動作のために構成されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記自己潤滑性材料は、ポリマーを備えている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記補強
材は、前記少なくとも1つのリングセグメントの一部に沿って取り付けられている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記補強
材は、前記少なくとも1つのリングセグメントの内側半径方向表面に沿って取り付けられている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
前記少なくとも1つのリングセグメントが動作中に摩耗するとき、前記少なくとも1つのリングセグメントは、圧縮状態のままであり、前記補強
材は、動作中、少なくともある時間にわたって引張状態のままである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
シールリングアセンブリであって、前記シールリングアセンブリは、
シリンダボアに対してシールするように構成されている外側表面を備えている少なくとも1つのリングセグメントと、
前記少なくとも1つのリングセグメント
に係合され
ている少なくとも1つのワイヤと
を備え、
前記少なくとも1つのワイヤは、前記少なくとも1つのリングセグメントが圧縮状態にあ
るようにし、かつ、前記少なくとも1つのワイヤが引張状態にあるようにする、シールリングアセンブリ。
【請求項18】
前記ワイヤは、金属を備えている、請求項17に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項19】
前記少なくとも1つのワイヤは、界面において前記少なくとも1つのリングセグメントに係合されている、請求項17に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項20】
前記少なくとも1つのワイヤは、引張終端を使用して、前記少なくとも1つのリングセグメントに係合されている、請求項17に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項21】
前記少なくとも1つのワイヤは、少なくとも1つのねじ山付き端部を備え、
前記引張終端は、前記ねじ山付き端部に対応するねじ山を備え、
前記引張終端は、前記ねじ山付き端部上にねじ式で通され、前記係合を引き起こす、請求項20に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項22】
前記引張終端は、前記ねじ山付き端部にトルクがかけられる、請求項20に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項23】
前記少なくとも1つのワイヤは、前記少なくとも1つのリングセグメントを通して
前記少なくとも1つのリングセグメントの長さに沿って延びている、請求項17に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項24】
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、自己潤滑性材料を備えている、請求項17に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項25】
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、黒鉛を備えている、請求項17に記載のシールリングアセンブリ。
【請求項26】
デバイスであって、前記デバイスは、
ボアを備えているシリンダであって、前記ボアは、低圧領域
と高圧領域とを備えている、シリンダと、
リング溝を備えているピストンであって、前記ピストンは、前記ボアの軸に沿って平行移動するように構成されている、ピストンと、
前記リング溝の中に配置され
ているシールリングアセンブリと
を備え、
前記シールリングアセンブリは、
少なくとも1つのリングセグメントであって、前記少なくとも1つのリングセグメントは、前記少なくとも1つのリングセグメントが摩耗するときにシリンダボアに対してシールするように構成されている、少なくとも1つのリングセグメントと、
前記少なくとも1つのリングセグメント
に係合され
ている少なくとも1つのワイヤと
を備え、
前記少なくとも1つのワイヤは、前記少なくとも1つのリングセグメントが圧縮状態にあ
るようにし、かつ、前記少なくとも1つのワイヤが引張状態にあるようにする、デバイス。
【請求項27】
前記シールリングアセンブリは、前記ボア内でのオイルレス動作のために構成されている、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
前記少なくとも1つのワイヤは、前記少なくとも1つのリングセグメントを通して
前記少なくとも1つのリングセグメントの長さに沿って延びている、請求項26に記載のデバイス。
【請求項29】
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、自己潤滑性材料を備えている、請求項26に記載のデバイス。
【請求項30】
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、黒鉛を備えている、請求項26に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ピストンシールリングアセンブリを対象とし、より具体的に、本開示は、補強材を伴うシールリングを含むピストンシールリングアセンブリを対象とする。本願は、その開示が、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる2017年8月9日に両方が出願された米国仮特許出願第62/543,282号および第62/543,285号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
典型的に、ピストンシリンダデバイスは、シールを提供するための油潤滑を伴う金属リングを採用する。潤滑油がない場合、ピストンシールは、ポリマーまたはセラミック(例えば、黒鉛)等の自己潤滑性材料から構成されることができる。シールのための自己潤滑性材料の使用は、潤滑されていない金属リングによって引き起こされるスカッフィングまたはかじりを排除するが、従来の油潤滑されたシール配置と比較して比較的に高い摩耗率をもたらし得る。
【0003】
経済的理由のために、シールが、交換を必要とする前に可能な限り長時間にわたって機能することが、望ましい。例えば、典型的な標的は、数百または数千時間の動作であり得る。この寿命全体を通して、シールは、半径方向に摩耗する。この摩耗を補償するために、シールは、典型的に、1つ以上の場所において分割され、圧力が、リングを外向きに拡張させ、摩耗を介して除去される材料にもかかわらず、シリンダ壁とのシール接触を維持することを可能にする。
【0004】
シールは、摩耗するにつれて、伸び、例えば、ピストンストローク中にシリンダに形状適合する。この伸びは、シールにおける増加するレベルの引張応力をもたらし、最も高い伸び誘発引張応力が、典型的に、リングまたはリングセグメントの内径(ID)において生じる。引っ張りが弱い(すなわち、脆性である)材料に関して、それは、寿命を限定する現象であり得、シールは、それが破壊することを引張応力が引き起こす前、有限量の伸び(次に、有限量の半径方向摩耗)しか可能でない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態では、シールリングアセンブリは、少なくとも1つのリングセグメントと、界面において少なくとも1つのセラミックリングセグメントに取り付けられる少なくとも1つの補強材とを含む。補強材は、少なくとも1つのリングセグメントに圧縮予負荷を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、界面は、ろう付けされた接合部である。いくつかの実施形態では、補強材は、少なくとも1つの金属シートを含む金属層を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、セラミックまたはポリマーを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、自己潤滑性材料を含む。例えば、いくつかの実施形態では、自己潤滑性材料は、黒鉛を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのリングセグメントは、対応する第1の熱膨張係数(CTE)を有し、補強材は、対応する第2のCTEを有し、第1のCTEと第2のCTEとは、互いに合致させられる。例えば、いくつかの実施形態では、第1のCTEと第2のCTEとは、実質的に類似する。いくつかの実施形態では、例えば、第1のCTEおよび第2のCTEは、合致させられる必要はない。
【0009】
いくつかの実施形態では、補強材は、少なくとも1つのセラミックリングセグメントの一部に沿って取り付けられる。いくつかの実施形態では、補強材は、少なくとも1つのリングセグメントの内側半径方向表面に沿って取り付けられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのリングセグメントが、摩耗するとき、少なくとも1つのリングセグメントは、圧縮状態のままであり、少なくとも1つの補強材は、動作中、少なくともある時間にわたって引張状態のままである。例えば、いくつかの実施形態では、ピストンおよびシリンダデバイスのストロークまたはサイクルの高圧期間中、少なくとも1つのリングセグメントは、圧縮状態のままであり、少なくとも1つの補強材は、引張状態のままである。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、シリンダと、ピストンと、シールリングアセンブリとを含むデバイスを対象とする。シリンダは、ボアを含み、ボアは、次に、低圧領域と、高圧領域とを含む。ピストンは、リング溝を備え、ピストンは、ボアの軸に沿って平行移動するように構成される。シールリングアセンブリは、リング溝の中に配置される。シールリングアセンブリは、低圧領域と高圧領域との間でシールするように構成された少なくとも1つのリングセグメントと、界面において少なくとも1つのリングセグメントに取り付けられる少なくとも1つの補強材とを含む。補強材は、ストロークの少なくとも一部にわたって、少なくとも1つのリングセグメント上に圧縮予負荷を提供する。いくつかの実施形態では、シールリングアセンブリは、ボア内でのオイルレス動作のために構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのリングセグメントと、少なくとも1つのリングセグメントを圧縮状態にさせ、ストロークの少なくとも一部(例えば、毎ストロークの少なくとも一部)にわたって、少なくとも1つのワイヤを引張状態にさせる少なくとも1つのリングセグメントと係合された少なくとも1つのワイヤとを含むシールリングアセンブリを対象とする。
【0013】
いくつかの実施形態では、ワイヤは、金属を備えている。
【0014】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのワイヤは、界面において少なくとも1つのリングセグメントに係合される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのワイヤは、引張終端を使用して、少なくとも1つのリングセグメントに係合される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのワイヤは、少なくとも1つのリングセグメントを通して方位角に延びている。
【0015】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのワイヤは、少なくとも1つのねじ山付き端部を含み、引張終端は、ねじ山付き端部に対応するねじ山を含み、引張終端は、ねじ山付き端部上にねじ式で通され、係合を引き起こす。いくつかの実施形態では、引張終端は、ねじ山付き端部にトルクがかけられる。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、シリンダと、ピストンと、シールリングアセンブリとを含むデバイスを対象とする。シリンダは、ボアを含み、ボアは、次に、低圧領域と、高圧領域とを含む。ピストンは、リング溝を含み、ピストンは、ボアの軸に沿って平行移動するように構成される。シールリングアセンブリは、リング溝の中に配置される。シールリングアセンブリは、低圧領域と高圧領域との間でシールするように構成された少なくとも1つのリングセグメントと、少なくとも1つのリングセグメントを圧縮状態にさせ、少なくとも1つのワイヤを引張状態にさせる少なくとも1つのリングセグメントと係合された少なくとも1つのワイヤとを含む。いくつかの実施形態では、シールリングアセンブリは、ボア内でのオイルレス動作のために構成される。いくつかの実施形態では、例えば、少なくとも1つのワイヤは、金属または炭素繊維を含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
シールリングアセンブリであって、前記シールリングアセンブリは、
少なくとも1つのリングセグメントと、
界面において前記少なくとも1つのリングセグメントに取り付けられた少なくとも1つの金属層と
を備え、
前記金属層は、前記界面において、前記少なくとも1つのリングセグメント上に圧縮予負荷を提供する、シールリングアセンブリ。
(項目2)
前記界面は、ろう付けされた界面である、項目1に記載のシールリングアセンブリ。
(項目3)
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、自己潤滑性材料を備えている、項目1に記載のシールリングアセンブリ。
(項目4)
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、黒鉛を備えている、項目1に記載のシールリングアセンブリ。
(項目5)
オイルレス動作のために構成されている、項目1に記載のシールリングアセンブリ。
(項目6)
前記少なくとも1つのリングセグメントは、対応する第1の熱膨張係数(CTE)を有し、
前記金属層は、対応する第2のCTEを有し、
前記第1のCTEと前記第2のCTEとは、互いに合致させられている、項目1に記載のシールリングアセンブリ。
(項目7)
前記金属層は、少なくとも1つの金属シートを備えている、項目1に記載のシールリングアセンブリ。
(項目8)
前記金属層は、前記少なくとも1つのリングセグメントの一部に沿って取り付けられている、項目1に記載のシールリングアセンブリ。
(項目9)
前記金属層は、前記少なくとも1つのリングセグメントの内側半径方向表面に沿って取り付けられている、項目1に記載のシールリングアセンブリ。
(項目10)
前記少なくとも1つのリングセグメントが動作中に摩耗するとき、前記少なくとも1つのリングセグメントは、圧縮状態のままであり、前記少なくとも1つの金属層は、動作中、少なくともある時間にわたって引張状態のままである、項目1に記載のシールリングアセンブリ。
(項目11)
デバイスであって、前記デバイスは、
ボアを備えているシリンダであって、前記ボアは、低圧領域と、高圧領域とを備えている、シリンダと、
リング溝を備えているピストンであって、前記ピストンは、前記ボアの軸に沿って平行移動するように構成されている、ピストンと、
前記リング溝の中に配置されたシールリングアセンブリと
を備え、
前記シールリングアセンブリは、
前記低圧領域と前記高圧領域との間でシールするように構成された少なくとも1つのリングセグメントと、
界面において前記少なくとも1つのリングセグメントに取り付けられた少なくとも1つの金属層と
を備え、
前記金属層は、前記界面において、前記少なくとも1つのリングセグメント上に圧縮予負荷を提供する、デバイス。
(項目12)
前記シールリングアセンブリは、前記ボア内でのオイルレス動作のために構成されている、項目11に記載のデバイス。
(項目13)
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、自己潤滑性材料を備えている、項目11に記載のデバイス。
(項目14)
前記金属層は、前記少なくとも1つのリングセグメントの一部に沿って取り付けられている、項目11に記載のデバイス。
(項目15)
前記金属層は、前記少なくとも1つのリングセグメントの内側半径方向表面に沿って取り付けられている、項目11に記載のデバイス。
(項目16)
前記少なくとも1つのリングセグメントが動作中に摩耗するとき、前記少なくとも1つのリングセグメントは、圧縮状態のままであり、前記少なくとも1つの金属層は、動作中、少なくともある時間にわたって引張状態のままである、項目11に記載のデバイス。
(項目17)
シールリングアセンブリであって、前記シールリングアセンブリは、
少なくとも1つのリングセグメントと、
前記少なくとも1つのリングセグメントと係合された少なくとも1つのワイヤと
を備え、
前記少なくとも1つのワイヤは、前記少なくとも1つのリングセグメントが圧縮状態にあり、前記少なくとも1つのワイヤが引張状態にあるようにする、シールリングアセンブリ。
(項目18)
前記ワイヤは、金属を備えている、項目17に記載のシールリングアセンブリ。
(項目19)
前記少なくとも1つのワイヤは、界面において前記少なくとも1つのリングセグメントに係合されている、項目17に記載のシールリングアセンブリ。
(項目20)
前記少なくとも1つのワイヤは、引張終端を使用して、前記少なくとも1つのリングセグメントに係合されている、項目17に記載のシールリングアセンブリ。
(項目21)
前記少なくとも1つのワイヤは、少なくとも1つのねじ山付き端部を備え、
前記引張終端は、前記ねじ山付き端部に対応するねじ山を備え、
前記引張終端は、前記ねじ山付き端部上にねじ式で通され、前記係合を引き起こす、項目20に記載のシールリングアセンブリ。
(項目22)
前記引張終端は、前記ねじ山付き端部にトルクがかけられる、項目20に記載のシールリングアセンブリ。
(項目23)
前記少なくとも1つのワイヤは、前記少なくとも1つのリングセグメントを通して方位角に延びている、項目17に記載のシールリングアセンブリ。
(項目24)
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、自己潤滑性材料を備えている、項目17に記載のシールリングアセンブリ。
(項目25)
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、黒鉛を備えている、項目17に記載のシールリングアセンブリ。
(項目26)
デバイスであって、前記デバイスは、
ボアを備えているシリンダであって、前記ボアは、低圧領域と、高圧領域とを備えている、シリンダと、
リング溝を備えているピストンであって、前記ピストンは、前記ボアの軸に沿って平行移動するように構成されている、ピストンと、
前記リング溝の中に配置されたシールリングアセンブリと
を備え、
前記シールリングアセンブリは、
前記低圧領域と前記高圧領域との間でシールするように構成された少なくとも1つのリングセグメントと、
前記少なくとも1つのリングセグメントと係合された少なくとも1つのワイヤと
を備え、
前記少なくとも1つのワイヤは、前記少なくとも1つのリングセグメントが圧縮状態にあり、前記少なくとも1つのワイヤが引張状態にあるようにする、デバイス。
(項目27)
前記シールリングアセンブリは、前記ボア内でのオイルレス動作のために構成されている、項目26に記載のデバイス。
(項目28)
前記少なくとも1つのワイヤは、前記少なくとも1つのリングセグメントを通して方位角に延びている、項目26に記載のデバイス。
(項目29)
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、自己潤滑性材料を備えている、項目26に記載のデバイス。
(項目30)
前記少なくとも1つのリングセグメントのうちの少なくとも1つは、黒鉛を備えている、項目26に記載のデバイス。
【図面の簡単な説明】
【0017】
1つ以上の様々な実施形態による本開示は、以下の図を参照して詳細に説明される。図面は、例証の目的のためのみに提供され、単に、典型的または例示的実施形態を描写する。これらの図面は、本明細書に開示される概念の理解を促進するために提供され、これらの概念の範疇、範囲、または適用可能性を限定するものと見なされるものではない。例証の明確化および容易性のために、これらの図面が、必ずしも正確な縮尺通りに作製されているわけではないことに留意されたい。
【0018】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による非摩耗シールリングアセンブリを伴う例証的ピストンおよびシリンダアセンブリの一部の断面端面図を示す。
【0019】
【
図2】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による摩耗シールリングアセンブリを伴う例証的ピストンおよびシリンダアセンブリの一部の断面端面図を示す。
【0020】
【
図3】
図3は、本開示のいくつかの実施形態によるシールリングアセンブリを伴う例証的ピストンおよびシリンダアセンブリの一部の断面斜視図を示す。
【0021】
【
図4】
図4は、本開示のいくつかの実施形態によるリングセグメントと、補強材とを伴う例証的シールリングアセンブリの一部の断面斜視図を示す。
【0022】
【
図5】
図5は、本開示のいくつかの実施形態によるリングセグメントと、補強材とを伴う
図4の例証的シールリングアセンブリの断面図を示す。
【0023】
【
図6】
図6は、本開示のいくつかの実施形態によるワイヤ補強材を伴うリングセグメントを伴う例証的シールリングアセンブリの一部の断面斜視図を示す。
【0024】
【
図7】
図7は、本開示のいくつかの実施形態によるワイヤ補強材を伴うリングセグメントを有する例証的シールリングアセンブリの一部の側面図を示す。
【0025】
【
図8】
図8は、本開示のいくつかの実施形態によるワイヤ補強材を伴うリングセグメントを伴う
図7の例証的部分の端面図を示す。
【0026】
【
図9】
図9は、本開示のいくつかの実施形態による例証的ピストンおよびシリンダアセンブリの斜視図を示す。
【0027】
【
図10】
図10は、本開示のいくつかの実施形態によるシリンダのボア内の例証的シールリングアセンブリの断面斜視図を示す。
【0028】
【
図11】
図11は、本開示のいくつかの実施形態によるシールリングアセンブリを含む例証的デバイスの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示によると、シールリングアセンブリは、複合構造を含み得る。複合構造は、少なくとも2つの材料を含み得、その第1のものは、比較的に脆性の材料(例えば、ポリマーまたは黒鉛等のセラミック)を含み、その第2のものは、比較的により高い引張強度(例えば、金属、金属合金、金属固体、炭素繊維、もしくは他の材料)を有する。2つの材料は、界面において係合され、脆性材料が圧縮状態にあり、第2の材料が引張状態にあり得る。故に、複合構造は、ピストンシリンダデバイスのボア内の環境にさらされるシールとして使用されるとき、脆性材料単独より比較的に弾力的であり得る。本明細書で使用されるような「脆性材料」または「比較的に脆性の材料」は、(例えば、補強材料と比較して)引っ張りに弱いが、圧縮に強い材料を指すことを理解されたい。故に、セラミック(例えば、黒鉛)およびポリマー等の材料が、本明細書において、例えば、シールリングアセンブリという文脈において、脆性材料と称され得る。脆性材料は、それらが、それら自体が脆性ではない微量成分(例えば、金属添加剤または他の材料)を含む場合であっても、比較的に脆性である複合構造も含み得る。さらに、補強のために使用される材料は、例えば、金属または炭素繊維等の引っ張りにおけるより高い相対強度を有する材料を含み得る。補強材は、そうでなければ脆性であろうが、事実上、リングセグメントほど脆性ではない、構造内に含まれる材料を含み得る。本明細書に使用されるような「自己潤滑性材料」が、表面上に(例えば、摩擦または摩滅を介して)堆積し、相対運動における構成要素のかじりもしくはスカッフィングを防止するための固体潤滑剤としての機能を果たす材料を指すことも理解されたい。例えば、黒鉛は、本明細書において自己潤滑性材料と称され得る。
【0030】
本明細書で使用されるような用語「シール」は、高圧領域と低圧領域との作成、維持、または両方を指す。例えば、シールは、シールの高圧境界と低圧境界との間の流動を限定することによって、高圧領域から低圧領域へのガスの漏出率を低減させるように構成されるシールリングアセンブリを含み得る。故に、シールは、漏出率に対するその制約の観点から定義されることができる。本明細書に説明されるようなシールまたはシールリングアセンブリは、任意の好適な対応する漏出率を有し得ることを理解されたい。例えば、いくつかの状況では、比較的に粗悪なシールが、より多くの漏出を可能にし得るが、ある性能基準に基づいて容認可能であり得る。さらなる例では、補強材を有し、ピストンおよびシリンダデバイスの高効率動作のために構成されるシールリングアセンブリは、比較的に低い漏出率を有し(例えば、より効果的シールであり)得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、シールリングアセンブリは、比較的に脆性の材料を含み得る少なくとも1つのリングセグメントを含み得る。いくつかの実施形態では、第2の材料は、リングセグメントに取り付けられる金属層であり得る。いくつかの実施形態では、第2の材料は、リングセグメントと係合されるワイヤの形態にあり得る。
【0032】
本明細書で使用されるように、「リングセグメント」は、ゼロ度を上回る方位角にわたって延び、半径方向外側表面を有し、かつボアに対して少なくとも半径方向外側表面の一部に沿ってシールするように構成されるシール要素を指すものとする。リングセグメントは、フルボアの周囲に方位角に連続していない場合、端面を含み得る。
【0033】
本明細書で使用されるように、「リング」は、ボアに沿って方位角に連続し得るが、そうである必要はない少なくとも1つのリングセグメントを含むシール要素を指すものとする。例えば、リングは、1つのリングセグメントを含み得、その場合、これらの用語は、重複する。さらなる例では、リングは、4つのリングセグメントを含み得、その場合、リングは、4つのリングセグメントの集合を指す。リングは、1つ以上のリングセグメント間に1つ以上の界面を含み得るが、そうである必要はない。「リング」は、ピストンのランドに対してシールするように構成される少なくとも1つのリングセグメントを含むシール要素も指すものとする。
【0034】
本明細書で使用されるように、「間隙カバー要素」は、界面において1つ以上のリングセグメントに対してシールし、1つ以上のリングセグメントの摩耗中、ボアの少なくとも一部に対してシールするように構成されるシール要素を指すものとする。間隙カバー要素は、リングが摩耗するにつれて、リングセグメントとして機能し得るが、本開示における議論の目的のために、間隙カバー要素は、明確化の目的のためにリングセグメントであると見なされない。
【0035】
本明細書で使用されるように、「シールリングアセンブリ」は、1つ以上のリングのアセンブリを指し、時として、ピストンと係合するように構成され、シリンダの高圧領域と低圧領域との間をシールするように構成される1つ以上の間隙カバー要素も指すものとする。例えば、単一のリングセグメントは、リングおよびシールリングアセンブリであり得る。さらなる例では、いくつかのリングセグメントおよび対応する間隙カバーが、シールリングアセンブリであり得る。
【0036】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による非摩耗シールリングアセンブリ150を伴う例証的ピストンおよびシリンダアセンブリ100(例えば、ピストン110と、シリンダ120とを含む)の一部の断面端面図を示す。
図2は、本開示のいくつかの実施形態による摩耗シールリングアセンブリ250を伴う例証的ピストンおよびシリンダアセンブリ200(例えば、ピストン110と、シリンダ120とを含む)の一部の断面端面図を示す。
図1のシールリングアセンブリ150は、摩耗されるにつれて、最終的に、
図2のシールリングアセンブリ250に類似し得る。例えば、間隙151が、広がり、間隙251に類似し得る。ベクトル101によって示される(例えば、高圧領域からの)圧力が、動作中、シールリングアセンブリ150を外向きに押し、それは、ピストンシリンダデバイスをシールすることを補助し得る。シールリングアセンブリが、摩耗するにつれて、間隙251が、隣接するリングセグメントの間に生じ得る。間隙251は、考慮されない場合、ピストンシリンダデバイスの増加した漏出およびより不十分な性能につながる。
【0037】
図3は、本開示のいくつかの実施形態によるシールリングアセンブリ350を伴う例証的ピストンおよびシリンダアセンブリ300の一部の断面斜視図を示す。ピストンは、明確化の目的のために
図3に図示されていないが、シールリングアセンブリ350が、ボア322内のピストンのリング溝の中に配置されるように構成されることに留意されたい。シールリング350は、例えば、ピストンストローク中、軸370に沿ってピストンとともに移動するように構成され得る。
【0038】
シールリングアセンブリ350は、各々が2つのそれぞれのリングセグメントを含む第1のシールリング352を含む。例えば、シールリング352は、
図3に示されるような2つのリング間隙を含む。故に、隣接するシールリングのリング間隙を(例えば、方位角に)整列させないことによって、シールリングアセンブリ350が摩耗するときの有意な漏出が、防止され得る。
【0039】
本開示によると、いくつかの実施形態では、シールリングアセンブリまたはそのリングセグメントが、金属/黒鉛(もしくは任意の他の好適な金属/セラミック)複合構造から作成される。例えば、
図3のシールリングアセンブリ350を参照すると、シールリング352は、複合構造を含み得る。
図3に示されていないが、シールリングアセンブリは、各リングが、1つ以上のそれぞれのリングセグメントを含む2つ以上のリングを含み得る。2つ以上のリングが含まれるいくつかの実施形態では、1つ以上のリングもしくはリングの全てが、本開示のいくつかの実施形態による補強材を含み得る。
【0040】
例証的例では、複合構造が、金属の薄シートをセラミックリングまたはリングセグメントの内径(ID)に接合(例えば、ろう付けもしくは接着)することによって作成され得る。いくつかの実施形態では、複合構造は、リングまたはリングセグメントのID上の黒鉛境界を中立軸により近接するように移動させる。故に、複合構造の「最も端の繊維」(例えば、拡張し、シールするとき、最も高い引張応力を受ける)が、セラミック内ではなく、金属層内に配置される。いくつかの実施形態では、複合構造は、シールリングのIDをその中立状態において圧縮状態にし、拡張中に誘発される引張負荷に対抗する圧縮「予負荷」をもたらす。いくつかの実施形態では、複合構造は、シールリングの曲げ剛性を増加させ、それは、シリンダ内の支持されていない範囲(例えば、ガス交換のためのポート等)の上をおおって動作するときの破損の可能性を低減させる。
【0041】
図4は、本開示のいくつかの実施形態によるリングセグメント420および422と、それぞれの補強材(例えば、金属層)421および423とを伴う例証的シールリングアセンブリの一部400の断面斜視図を示す。
図4では、軸470は、軸方向にあり、軸471は、半径方向にあり、軸472は、方位角方向(例えば、軸470の周囲)にある。補強材421が、リングセグメント420の内側半径方向表面に方位角に沿って、リングセグメント420に取り付けられる。補強材423が、リングセグメント422の内側半径方向表面に方位角に沿って、リングセグメント422に取り付けられる。いくつかの実施形態では、例えば、金属層等の補強材が、それぞれのリングセグメント420および422の好適な表面上にろう付けされる。
図5は、本開示のいくつかの実施形態によるリングセグメント422と、補強材423とを伴う
図4の区分425によって画定される、
図4の例証的シールリングアセンブリ400の断面図を示す。界面520が、リングセグメント422が補強材423と出会う空間領域として定義される。界面520は、リングセグメント422と補強材423との間に配置される1つ以上の材料を含み得る。いくつかの実施形態では、界面520は、リングセグメント422と補強材423との間で剪断力を伝達し得るろう付け材料、接着剤、任意の他の好適な材料、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、例えば、金属層等の補強材が、区分化され、それは、シールリングに沿って方位角に配置される2つ以上のセグメントを含む。いくつかの実施形態では、補強材は、2つ以上の層または積層を含み得る。例えば、
図5を参照すると、補強材423は、スタックに接合されたいくつかの金属層によって取って代わられ得、金属層の各々は、対応する組成および性質を有する。
【0043】
例証的例では、リングセグメント(例えば、
図3のシールリング352のリングセグメントまたは
図4-5のリングセグメント422)は、そのIDにおいてろう付けされた金属層を含む補強材を含み得る。金属層は、例証的例として、0.005インチの厚さのモリブデンから作製され得、(例えば、接合部に影響を及ぼすためのろう付け箔を使用して)リングセグメントにろう付けされ得る。金属層は、リングセグメント(例えば、補強材が取り付けられる黒鉛体)の用途および特定の特性に適切であるような任意の好適な厚さ、および金属組成を有し得る。2リング配置において、任意の好適なリングセグメントを有するシールリングの任意の好適な配置が、使用され得、補強材が、本開示によるリングセグメントのうちの1つ以上のものに取り付けられ得ることを理解されたい。
【0044】
いくつかの実施形態では、補強材として使用される金属材料が、セラミックの熱膨張係数(CTE)と比較した、そのCTEの値に基づいて選択される。(例えば、機関、空気圧縮機、または他のピストンシリンダデバイスの)動作温度近傍において、厳密に合致するCTEを有する材料を選択することは、動作中の接合部(すなわち、界面)における熱的に誘発された応力を低減させる。いくつかの実施形態では、ろう付け温度における2つの材料のCTEの差異が、ろう付け接合部における残留応力と比較的に脆性の材料内に圧縮予負荷を誘発することとの間で、最適化するために考慮されることができる。例えば、脆性材料(例えば、黒鉛)内に圧縮予負荷を生じさせるために、ろう付け温度において脆性材料よりわずかに高いCTEを有する補強材料が、選択され得る。故に、シールリングアセンブリが、冷却すると、補強材は、リングセグメントより比較的に大きく弧長が収縮し、そのIDに沿って脆性材料を収縮させ得る。しかしながら、いくつかの状況では、ろう付け温度において脆性材料と比較して高すぎるCTEを有する補強材(例えば、金属)が、ろう付け接合部を高残留応力に起因して破損させ得る。いくつかの実施形態では、例えば、補強材は、好適な温度における引張強度およびCTEに基づいて選択され得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、リングまたはリングセグメントのCETと、補強材のCETとが、合致させられる。例えば、リングセグメントは、黒鉛を含み得、補強材は、モリブデン(例えば、99%純度のモリブデンまたは任意の他の好適なグレードのもの)、タングステン、ニレジストD5、コバール、インバー、もしくは任意の他の好適な材料、または材料の組み合わせを含み得る。本明細書において称されるような合致させられたCTEは、ある好適な制約基準を達成する、対応するCTE値を有する脆性材料および補強材料を選択するステップを指す。例えば、基準は、CTEが(例えば、ある温度において)閾値内であること、CTE不一致が(例えば、ある温度において)閾値内であること、構成要素の最大拡張が(例えば、ある温度において)閾値内であること、最大応力が材料の界面にあること、または、それらの組み合わせを含み得る。例証的例では、CTEの40%の差異等の閾値が、合致させられていると見なされ得る一方、CTEの200%の差異が、合致させられていないと見なされ得る。任意の好適な制約に応じて、任意の好適な閾値が、CTEの合致を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態では、CTEは、合致させられる必要はないが、そうでなければ、材料選択に影響を及ぼす。例えば、いくつかのそのような実施形態では、黒鉛リングセグメントを参照すると、補強材は、ステンレス鋼合金、ニッケル合金、または任意の他の好適な材料を含み得る。
【0046】
動作時のいくつかの条件下において、シールリングアセンブリが、圧力下で外向きに伸び、シリンダボアに形状適合する。これが、生じると、最も高い引張応力が、シールリングアセンブリのIDにおいて生じ、最も高い圧縮応力が、シールリングアセンブリの外径(OD)において生じる。脆性材料のIDにおける伸びに起因する引張応力とろう付け接合部に起因する圧縮応力とは、相加的である。IDにおける応力の結果として生じる合計は、例えば、等価的にサイズを決定されたセラミックのみのリング(すなわち、金属層を伴わない)におけるものよりはるかに低い。加えて、圧縮予負荷効果がなくとも、リングをその拡張中に曲げ状態のビームと見なすと、最大応力を受けるのは、ビームの最も端の繊維(すなわち、中立軸から最も遠いリングのODおよびIDのまさに表面における材料)である。ビームのID(すなわち、曲げ状態において最大引張応力を受ける表面)における材料をはるかにより高い引張強度を有する材料と交換すること、またはそれに追加することは、破損(例えば、セラミックの破壊)の可能性を低減させる。シールリングまたはリングセグメントのID上の引張応力が、主要懸念事項であるが、他の応力も、生じ、材料選択、補強、もしくは両方に影響を及ぼし得る。例えば、呼吸ポートおよびブリッジを軸方向に横断するシールリングアセンブリは、好適な補強材を含むことによって対処される応力を提示し得る。いくつかの実施形態では、補強材は、シールリングのIDにおいて、またはそれにおいてのみ含まれる必要はない。例えば、補強材は、比較的に脆性の材料のシールリングの軸面に含まれ、または取り付けられ、それによって、破損の可能性を低減させ得る。補強材は、シールリングの任意の好適な場所に含まれ、本開示によるシールリングとの任意の好適な界面を形成し得る。
【0047】
リング構造全体が2つの材料の複合物を含むとき、曲げ強度および剛性が、単一材料(例えば、脆性材料のみ)のシールリングまたはそのリングセグメントの等価的にサイズを決定された区分を上回り得る。これは、特に、例えば、シールリングアセンブリが、オープンポートの上を(例えば、軸方向に)平行移動するとき、有益であり得る(リングは、ポートブリッジ間のオープンスパン(すなわち、ポート間の固体材料)を横断して負荷を支持し得る)。
【0048】
いくつかの実施形態では、金属層の寸法(例えば、厚さ)、組成、または両方が、複合構造の所望される剛性、セラミックの所望される予圧、もしくは両方を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、例えば、単一の分割リング(すなわち、1つのリングセグメントを有するシールリング)が、ID上へのろう付けされた金属層の追加から恩恵を得る。
【0049】
補強材を対象とする本開示は、例えば、シールリングが、圧縮に比較的に強いが、張力に比較的に弱いポリマーまたはセラミック等の材料から作製されるとき、適用可能である。例えば、そのような材料は、シールリングアセンブリが、従来の油潤滑のない状態で動作させられる(例えば、直接接触を介してシリンダボアに対して摩耗するように構成される)状況において使用され得る。
【0050】
例証的例では、シールリングアセンブリは、少なくとも1つのセラミックリングまたはリングセグメントと、少なくとも1つのセラミックリングまたはリングセグメントにろう付けもしくは別様に取り付けられる少なくとも1つの金属シート層とを含み得る。金属シート層は、少なくとも1つのセラミックリングまたはリングセグメント上に圧縮予負荷を提供する。少なくとも1つのセラミックリングは、例えば、黒鉛から作成され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、複合構造は、リングセグメントの半径方向中央を通して、またはその近傍に、1つ以上のワイヤを組み込むことによって作成される。いくつかのそのような実施形態では、ワイヤは、(例えば、リングセグメントの弧の各端部において端部キャップに取り付けることによって)リングセグメントに取り付けられる。複合構造は、シールリングまたはそのリングセグメントと、金属層、ワイヤ、もしくは両方とを含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、ワイヤ補強材が、ねじ留め(例えば、対応するオス型およびメス型のねじ山を係合させること)、圧着、ろう付け、任意の好適な機械的方法、またはそれらの任意の組み合わせによって、端部キャップに取り付けられる。いくつかの実施形態では、ワイヤ補強材は、その(例えば、方位角方向の)長さに沿ってワイヤをセラミックにろう付けすることによって、シールリングまたはそのリングセグメントに取り付けられる。例えば、ワイヤが、2リング様式シールリングアセンブリの前部および後部シールリングの両方、単一のリングセグメントを有するシールリング、より多い(すなわち、3以上)数のリングセグメントを有するシールリング、任意の他の好適なシールリング構成、またはそれらの任意の好適な組み合わせに取り付けられ得る。
【0053】
図6は、本開示のいくつかの実施形態によるワイヤ補強材を有するセラミックリングセグメント620と、622とを伴う例証的シールリングアセンブリ600の一部600の断面斜視図を示す。ワイヤ624および625は、引張状態にあり、リングセグメント620と係合され、リングセグメント620を圧縮状態にする。ワイヤ626および627は、引張状態にあり、リングセグメント622と係合され、リングセグメント622を圧縮状態にする。一部600が、明確化の目的のために、約90°の部分を除いたシールリングアセンブリであることに留意されたい。
【0054】
図7は、本開示のいくつかの実施形態によるワイヤ820を伴うセラミックリングセグメント710を有する例証的シールリングアセンブリの一部700の側面図を示す。リングセグメント710は、シールリングまたはシールリングアセンブリを集合的に形成する複数のリングセグメントのうちの1つのリングセグメントであり得る。リングセグメント710は、それに沿ってワイヤ820が配置される通路750を含む。ワイヤ820の両端部は、端部キャップ810および811を越えて方位角に(例えば、軸770に沿って)延びている。端部キャップ810および811は、例えば、金属、セラミック、プラスチック、またはそれらの任意の組み合わせ等の任意の好適な性質を有する材料を含み得る。ワイヤ820は、ワイヤ820を引張状態にし、リングセグメント710を圧縮状態にするようにするねじ山付き締め具(例えば、ナット)、圧着接続、任意の他の好適な固定具、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る締め具(例えば、引張終端821および825)によって引張状態に保持される。
【0055】
図8は、本開示のいくつかの実施形態による
図7の例証的部分700の端面図を示す。端部キャップ810は、各々がワイヤ820および822の一方を収容するが、引張終端821ならびに823を収容しない2つの孔を含む(例えば、孔の直径は、ワイヤ820および822の直径を上回るが、締め具821または823の幅を下回る)。引張終端821および823は、それぞれのワイヤ820および822の両端部に取り付けられ、したがって、ワイヤ820および822を引張状態にする。類似する引張終端および端部キャップが、ワイヤ820および822の他方の端部(すなわち、
図8に図示せず)に存在することに留意されたい。引張力が、端部キャップ810および反対の端部キャップ811に対して作用し合うようにされ、したがって、(例えば、予負荷として)リングセグメント710を圧縮状態にする。
図8に示されるように、ワイヤ820および822は、固定を提供するねじ山付き界面、圧着界面、取り付け界面、または任意の他の好適な界面を含み得るそれぞれの界面860および862において、それぞれの引張終端821および823に取り付けられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、ねじ山付きワイヤが、ナットに規定されたトルクを加えることによってナットを使用し、リングセグメントの両端部において配置される、端部キャップに対して引張状態にされ、したがって、ワイヤを引張状態に引き締める。この引張は、端部キャップに対して作用し合うようにされ、それは、(例えば、ポリマー、黒鉛、または他のセラミックから作製され得る)リングセグメントの圧縮をもたらす。故に、リングセグメントは、その中立状態において圧縮状態にある。リングセグメントのこの圧縮「予負荷」は、拡張中(例えば、ピストンシリンダデバイスの動作中)に誘発される引っ張りに対抗する。動作中の引張応力のこの低下された状態が、セラミックの生存性を増大させ、セラミックのより高い最終摩耗限界を可能にする。いくつかの実施形態では、リングセグメントは、非動作時、ピストンシリンダデバイスのストロークの一部の間、ピストンシリンダデバイスのストロークの全体の間、またはそれらの任意の好適な組み合わせにおいて圧縮状態にあり得る。例えば、補強材は、動作していないときでも、リングセグメント上に予負荷を加え得る(例えば、リングセグメントを圧縮状態にし得る)。さらなる例では、予負荷は、加えられる必要がなく、補強材は、(例えば、動作中に)圧力が加えられるまで、引張状態にある必要はない。
【0057】
いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、シールリングが、圧縮に非常に強いが、引っ張りに弱い黒鉛または他のセラミック等の材料から作製されるときに有用である金属ワイヤ補強材を対象とする。例えば、そのような材料は、シールリングアセンブリが、従来の油潤滑のない状態で動作させられる(例えば、シリンダボアに対して摩耗するように構成される)状況において、使用され得る。
【0058】
例証的例では、シールリングアセンブリは、少なくとも1つのリングまたはリングセグメントと、少なくとも1つのセラミックリングもしくはリングセグメントを通して、またはその少なくとも一部上に延びている、少なくとも1つの金属ワイヤとを含み得る。金属ワイヤは、引っ張られ、少なくとも1つのセラミックリングまたはリングセグメントに圧縮予負荷を提供する。さらに、シールリングアセンブリは、少なくとも1つのリングセグメントの端部および少なくとも1つの金属ワイヤの端部に取り付けられる少なくとも1つの端部キャップを含み得る。
【0059】
図9は、本開示のいくつかの実施形態による例証的ピストンおよびシリンダアセンブリ900の斜視図を示す。シリンダ960は、その中をピストンアセンブリ910が進行する内側円筒表面であるボア962を含み得る。ピストンアセンブリ910は、シールリングアセンブリ920が乗るように構成されるシールリング溝922を含むピストン926を含み得る。ピストンアセンブリ910が、(例えば、機関サイクル中)シリンダ960内で軸980によって示される軸方向に沿って平行移動するにつれて、高圧領域950内のガス圧は、変化し得る(高圧領域950は、シリンダヘッドまたは対向ピストンでて閉鎖され得る)。例えば、ピストンアセンブリ910が、軸980の方向に反対に(すなわち、
図9の左に)移動するにつれて、高圧領域950内の圧力は、増加し得る。シールリングアセンブリ920の後部に位置する低圧領域970は、大部分ではない場合でも、ピストンおよびシリンダアセンブリのピストンストロークまたはサイクルの少なくとも一部にわたって高圧領域950の圧力を下回るガス圧にあり得る。高圧領域950および低圧領域970における圧力範囲は、任意の好適な範囲(例えば、低大気圧~250バールを大いに超える値)であり得、それは、圧縮比、呼吸の詳細(例えば、給気圧、圧力波、ポートタイミング)、損失、ガスの熱化学的特性、およびそれらの反応に依存し得る。故に、本明細書に説明されるシールリングアセンブリは、任意の好適な圧力範囲を有する任意の好適な高圧領域および低圧領域をシールするために使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、低圧領域970は、ポート968または969と連通する給気もしくは排気ダクトと流動に関して相互作用し、ダクト内の圧力の比較的に近くに維持され得る。例証的例では、低圧領域970は、吸気呼吸ポート968または969に対して開放し得、(例えば、概して)吸気圧力(例えば、給気圧)に近い圧力にある、もしくはそれによって強く影響を及ぼされ得る。さらなる例証的例では、低圧領域970は、呼吸ポート968または969に対して開放し得、(例えば、概して)排気圧力に近い圧力にある、もしくはそれによって強く影響を及ぼされ得る。本開示によると、シールリングアセンブリは、ピストンおよびシリンダアセンブリのピストンストロークまたはサイクルの少なくとも一部にわたって、低圧領域から高圧領域をシールするために使用され得る。シールリングアセンブリ920の「前部」は、高圧領域950に軸方向に最も近い面を指し、シールリングアセンブリ920の「後部」は、低圧領域970に軸方向に最も近い面を指すことを理解されたい。
【0060】
別様に規定されない限り、本明細書において言及される圧力は全て、絶対単位である(例えば、ゲージまたは相対単位ではない)ことを理解されたい。
【0061】
いくつかの実施形態では、低圧領域970は、ガス交換のためのポート968および969を含み、それとガス圧を伝え合い、または別様にそれに対して開放していることもある。例えば、ポート968および969は、排気ポート、吸気ポート、または両方であり得る。ポートは、弁を使用して開放および閉鎖され得るが、そうである必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、ポート968および969は、含まれた弁なしに、多岐管または他の流動プレナムに結合される開口部を指す(例えば、流動は、シールリングアセンブリ920によって、ポート968および969を覆うこと、覆いを取ることによって制御される)。さらなる例では、いくつかの実施形態では、ポート968および969は、流動プロファイルおよびタイミングを制御するための弁が含まれる多岐管または他の流動プレナムに結合される開口部を指す。用語「弁」は、限定ではないが、ボール弁、プラグ弁、バタフライ弁、チョーク弁、逆止弁、仕切弁、リーフ弁、ピストン弁、ポペット弁、回転弁、スライド弁、電磁弁、二方弁、または三方弁を含む開口部に物質を選択的に通すための任意の作動流動コントローラもしくは他の作動機構を指し得る。弁は、限定ではないが、機械、電気、磁気、カムシャフト駆動、油圧、または空気圧式手段を含む任意の手段によって作動させられ得る。
【0062】
高圧力および低圧力は、ピストンおよびシリンダデバイスの一過性の圧力状態を指し得ることを理解されたい。例えば、機関サイクルを参照すると、シールリングアセンブリの高圧側は、(例えば、おそらく、サイクルの呼吸または呼吸に近い部分の間を除いて)機関サイクルの大部分にわたって、シールリングアセンブリの低圧側を上回る圧力を有し得る。故に、高圧力および低圧力は、相対的であり、シールされているガスの条件に依存する。
【0063】
シールリングアセンブリは、各々が任意の好適な圧力範囲内で動作する高圧および低圧領域をシールするために使用され得る。シールリングアセンブリが、サイクル内の異なる位置において異なってシールし得ることも理解されたい。低圧領域が、ピストンおよびシリンダアセンブリのピストンストロークまたはサイクルの一部にわたって、高圧領域の圧力を上回る圧力を含み得ることをさらに理解されたい。例えば、シールリングアセンブリは、常時、低圧領域から高圧領域をシールし得る。さらなる例では、シールリングアセンブリは、高圧領域内の圧力が低圧領域内の圧力を上回る限り、低圧領域から高圧領域をシールし得る。さらなる例では、シールリングアセンブリは、高圧領域内の圧力が低圧領域内の圧力を上回る限り、低圧領域から高圧領域をシールし得、逆に、低圧領域内の圧力が高圧領域内の圧力を上回る限り、高圧領域から低圧領域をシールし得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、シールリングアセンブリ920は、シリンダ960のボア962上に(例えば、自己潤滑性材料を含む)材料を堆積させ得る。堆積させられた材料は、ボア962とシールリングアセンブリ920との間のボア/シールリングアセンブリ間界面を潤滑にし(例えば、乾燥潤滑剤を提供し)得る。故に、いくつかの実施形態では、ピストンおよびシリンダアセンブリ900は、潤滑のための油を用いずに動作し得る。いくつかの実施形態では、シールリングアセンブリ920は、金属層、金属ワイヤ、または両方、もしくは任意の他の好適な補強材を含み、シールリングアセンブリ920は、ボア962と金属層または金属ワイヤとの間の接触を防止するように構成される。
【0065】
いくつかの実施形態では、ピストン926は、開放型ピストンであり得る。例えば、ピストン926は、高圧領域950からリング溝922までの開口部、切り欠き、または他の流体経路を含み得る。故に、開放型ピストンを採用するいくつかの実施形態では、(例えば、
図9の半径方向の軸982を参照して)シールリングアセンブリ920の内側半径方向表面は、高圧領域950のガス圧にさらされ得る。
【0066】
図10は、本開示のいくつかの実施形態によるシリンダ1020のボア1021内の例証的シールリングアセンブリ1050の断面斜視図を示す。シリンダ1020は、ポートブリッジ1070間に配置される、ポート1068を含む。ポート1068は、ガス交換(例えば、機関の吸気、排気、または両方の呼吸)を可能にするように構成されるボア1021内の開口部である。シールリングアセンブリ1050が、ポート1068およびポートブリッジ1070の上をおおって軸方向に通過するにつれて、シールリングアセンブリ1050は、ボア1021からの非均一または低減させられた内向きの力を受け得る。シールリングアセンブリ1050の複合構造は、ポート1068を横断するとき、シールリングアセンブリ1050のリングセグメント内の引張応力を低減させ得る。
【0067】
図11は、本開示のいくつかの実施形態によるそれぞれのシールリングアセンブリ1112と、1122とを含む2つの自由ピストンアセンブリ1110と、1120とを含む例証的デバイス1100の断面図を示す。いくつかの実施形態では、デバイス1100は、それぞれの自由ピストンアセンブリ1110および1120の運動エネルギーと電気エネルギーとの間で変換するための線形電磁機械1150と、1155とを含み得る。いくつかの実施形態では、デバイス1100は、例えば、大部分ではない場合でも、サイクル(例えば、機関サイクルまたは空気圧縮サイクル)の少なくとも一部にわたって、ガス領域1170(例えば、高圧領域)より比較的に低い圧力にあり得るガス領域1160と、1162とを含み得る。例えば、ガス領域1160および1162(例えば、低圧領域)は、それぞれの呼吸ダクト(例えば、吸気多岐管、吸気システム、排気多岐管、排気システム)に開放していることもある。例証のために、呼吸ポート1134および1135は、シリンダ1130のボア1132に反応物質を提供し、それから排気を除去するように構成される。さらなる例では、ガス領域1160および1162は、(例えば、約1.01バール絶対圧力である)大気への通気口を開けられ得る。いくつかの実施形態では、デバイス1100は、圧縮ガスの形態でサイクル中、エネルギーを貯蔵および放出するために使用され得るガスばね1180と、1185とを含み得る(例えば、駆動部区分)。例えば、自由ピストンアセンブリ1110および1120の各々は、それぞれのシールリングアセンブリ1181および1186のための溝を有するそれぞれのピストン1182と、1187とを含み、それぞれのガス領域1184および1189(例えば、低圧領域)からそれぞれのガス領域1183および1188(例えば、高圧領域)をシールし得る。
【0068】
シリンダ1130は、軸1172の周りに中心を置かれたボア1132を含み得る。いくつかの実施形態では、自由ピストンアセンブリ1110および1120は、ボア1132内で軸1172に沿って平行移動し、ガス領域1170が圧縮および拡張することを可能にし得る。例えば、ガス領域1170は、(例えば、対向ピストンの同期化において、軸1172に沿って平行移動し得る)自由ピストンアセンブリ1110および1120のストロークの少なくとも一部にわたって、ガス領域1160と比較して比較的に高圧にあり得る。シールリングアセンブリ1112および1122は、ボア1132内で、それぞれのガス領域1160および1162からガス領域1170をシールし得る。いくつかの実施形態では、自由ピストンアセンブリ1110および1120は、それぞれのピストン1114および1124と、ピストン1114および1124のそれぞれの対応する溝の中に配置され得るそれぞれのシールリングアセンブリ1112および1122とを含み得る。ガス領域1160、1162およびガス領域1170は、自由ピストンアセンブリ1110および1120が、軸1172に沿って移動するにつれて、または異なる場所に別様に位置付けられるにつれて、体積を変化させ得ることを理解されたい。ガス領域1170に最も近いそれぞれのシールリングアセンブリ1112および1122の一部が、各々、前部と称され、それぞれのガス領域1160および1162に最も近い、シールリングアセンブリ1112および1122一部が、各々、後部と称される。シールリングアセンブリ1112および1122の各々は、各々がガス領域1170内の圧力に依存し得る高圧境界を含み得る。例えば、シールリングアセンブリ1112の高圧境界は、ガス領域1170(例えば、1つ以上のオリフィスもしくは他の開口部によって結合される)に開放し、ガス領域1170の圧力と同一(例えば、ガス領域1170からのガスが、シールリングアセンブリにおいて絞られていない場合)、もしくはそれ未満(例えば、ガス領域1170からのガスが、シールリングアセンブリにおいて絞られている場合)の対応する圧力を有し得る。シールリングアセンブリ1112および1122の各々は、各々がガス領域1160および1162内のガス圧に依存し得る低圧境界を含み得る。例えば、シールリングアセンブリ1112の低圧境界は、ガス領域1160に開放し、ガス領域1160の圧力とほぼ同一の対応する圧力を有し得る。いくつかの実施形態では、シールリングアセンブリ1112および1122が、それぞれのポート1135および1134(例えば、図示されていないが、対応するポートブリッジ)の上を軸方向に通過するにつれて、それらは、ボア1132からの非均一または低減させられた内向きの力を受け得る。シールリングアセンブリ1112および1122の複合構造は、ポート1135および1134を横断するとき、シールリングアセンブリ1112および1122の各々のそれぞれのリングセグメント内の引張応力を低減させ得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、ピストン1114および1124の各々は、その中に1つ以上のそれぞれのシールリングアセンブリが配置され得る1つ以上の溝を含み得る。例えば、
図11に示されるように、ピストン1114および1124の各々は、その中にシールリングアセンブリ1112およびシールリングアセンブリ1122が、それぞれ据え付けられ得る1つの溝を含み得る。さらなる例では、
図11に示されていないが、ピストン1114は、その中に2つのそれぞれのシールリングアセンブリが据え付けられ得る2つの溝を含み得る。さらなる例では、ピストン1114は、2つの溝と、第1のシールリングアセンブリ1112と、第2のもの(図示せず)とを含み得、第2のものは、シールリングアセンブリ1112の後部に配置されるが、その前部が、ガス領域1160により近く、それによって、2つのシールリングアセンブリ間の圧力(例えば、それは、ガス領域1170内の圧力未満であり得る)に対してガス領域1160内の圧力をシールする。故に、シールリングアセンブリは、任意の好適な高圧および低圧領域を、互いからシールするために使用され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、自由ピストンアセンブリ1110および1120は、それぞれのステータ1152および1157と相互作用し、それぞれの線形電磁機械1150および1155を形成する、それぞれの磁石区分1151と、1156とを含み得る。例えば、自由ピストンアセンブリ1110が、(例えば、機関サイクルのストローク中)軸1172に沿って平行移動するにつれて、磁石区分1151は、ステータ1152の巻線の中に電流を誘発し得る。さらに、電流は、ステータ1152のそれぞれの相巻線に供給され、自由ピストンアセンブリ1110への電磁力を発生させ(例えば、自由ピストンアセンブリ1110の運動をもたらし)得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、ピストン1114および1124、シールリングアセンブリ1112および1122、およびシリンダ1130が、ピストンおよびシリンダアセンブリと見なされ得る。いくつかの実施形態では、デバイス1100は、機関、空気圧縮機、ピストンおよびシリンダアセンブリを有する任意の他の好適なデバイス、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、デバイス1100は、2つの自由ピストンアセンブリを含む必要はない。例えば、シリンダ1130は、閉鎖され得(例えば、シリンダヘッドを用いて)、自由ピストンアセンブリ1110のみが、軸1172に沿って平行移動し得る。
【0072】
本開示は、本明細書に説明される実施形態に限定されず、任意の好適なシステムという文脈において実装され得ることを理解されたい。いくつかの好適な実施形態では、本開示は、往復機関および圧縮機に適用可能である。いくつかの実施形態では、本開示は、自由ピストン機関および圧縮機に適用可能である。いくつかの実施形態では、本開示は、往復機関および自由ピストン機関等の燃焼および反応デバイスに適用可能である。いくつかの実施形態では、本開示は、往復圧縮機、自由ピストン熱機関、および自由ピストン圧縮機等の非燃焼および非反応デバイスに適用可能である。いくつかの実施形態では、本開示は、ガスばねに適用可能である。いくつかの実施形態では、本開示は、オイルフリー往復および自由ピストン機関および圧縮機に適用可能である。いくつかの実施形態では、本開示は、内部または外部の燃焼もしくは反応を伴うオイルフリー自由ピストン機関に適用可能である。いくつかの実施形態では、本開示は、圧縮点火、化学点火(例えば、触媒表面への暴露、自然着火)、プラズマ点火(例えば、火花点火)、熱発火、点火のための任意の他の好適なエネルギー源、またはそれらの任意の組み合わせを用いて動作するオイルフリー自由ピストン機関に適用可能である。いくつかの実施形態では、本開示は、ガス燃料、液体燃料、または両方を用いて動作するオイルフリー自由ピストン機関に適用可能である。いくつかの実施形態では、本開示は、線形自由ピストン機関に適用可能である。いくつかの実施形態では、本開示は、内部の燃焼/反応を伴う燃焼機関、または(例えば、廃熱等の熱源もしくは燃焼等の外部反応からの)外部熱添加を伴う任意のタイプの熱機関であり得る機関に適用可能である。
【0073】
前述のものは、本開示の原理を例証するにすぎず、種々の修正が、本開示の範囲から逸脱することなく、当業者によって成され得る。上で説明される実施形態は、限定ではなく、例証の目的のために提示される。本開示は、本明細書に明示的に説明されるもの以外の多くの形態をとることもできる。故に、本開示は、明示的に開示される方法、システム、および装置に限定されず、以下の請求項の精神の範囲内にある変形例およびそれらの修正を含むことが意図されることが強調されている。