(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】シリカ粒子分散液、研磨組成物及びシリカ粒子分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20230119BHJP
C01B 33/141 20060101ALI20230119BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20230119BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230119BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C01B33/141
C09G1/02
B24B37/00 H
(21)【出願番号】P 2020511001
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013678
(87)【国際公開番号】W WO2019189610
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018070294
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】江上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 光章
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
(72)【発明者】
【氏名】小松 通郎
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/007063(WO,A1)
【文献】特開2014-22511(JP,A)
【文献】特開2014-140056(JP,A)
【文献】特表2012-518127(JP,A)
【文献】特開2010-28078(JP,A)
【文献】特開2005-60219(JP,A)
【文献】国際公開第2017/200297(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/14
C01B33/141
C09G1/02
B24B37/00
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(c)の要件を満たすシリカ粒子を含有することを特徴とするシリカ粒子分散液。
(a)窒素吸着によるBET法により求められた比表面積に基づいて換算される一次粒子径が5~300nm
(b)粒子径変動係数が10%以下
(c)Sears数Yが10.0~12.0
【請求項2】
前記シリカ粒子は、粒子1個あたりに換算されるSears数yが、(2.92×10
-17×d-7.10×10
-16)≦y≦(2.92×10
-17×d-6.10×10
-16)
(dは窒素吸着によるBET法により求められた比表面積(SA[m
2/g])に基づいて換算される一次粒子径[nm])
の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のシリカ粒子分散液。
【請求項3】
前記シリカ粒子は、ピクノメーター法による密度が、1.80g/cm
3以上であることを特徴とする請求項1記載のシリカ粒子分散液。
【請求項4】
シリカ粒子と水溶性高分子とを含有する研磨組成物であって、前記シリカ粒子が、下記(a)~(c)の要件を満たすことを特徴とする研磨組成物。
(a)窒素吸着によるBET法により求められた比表面積に基づいて換算される一次粒子径が5~300nm
(b)粒子径変動係数が10%以下
(c)Sears数Yが10.0~12.0
【請求項5】
前記水溶性高分子が、前記研磨組成物の全量に対して0.001~10質量%配合されていることを特徴とする請求項4記載の研磨組成物。
【請求項6】
前記シリカ粒子は、平均粒子径が10~1000nmの凝集体を形成することを特徴とする請求項4記載の研磨組成物。
【請求項7】
前記水溶性高分子が、水溶性セルロース、水溶性ビニルポリマー、及び多価アルコール高分子のいずれかから選ばれる少なくとも1種の高分子であることを特徴とする請求項4記載の研磨組成物。
【請求項8】
アルコキシシランを加水分解及び重縮合させて、窒素吸着によるBET法により求められた比表面積に基づく一次粒子径が5~300nm、かつ粒子径変動係数が10%以下のシリカ粒子を含む分散液を調製する分散液調製工程と、
前記分散液をpH7以上で加熱して、シリカ粒子のSears数Yを10.0~12.0に調整する粒子表面調整工程と、
前記粒子表面調整工程で得られた分散液をpH7未満で濃縮する濃縮工程と、
を有することを特徴とするシリカ粒子分散液の製造方法。
【請求項9】
前記粒子表面調整工程において、前記分散液に含まれる分散媒が沸騰しない条件下で加熱されることを特徴とする請求項8記載のシリカ粒子分散液の製造方法。
【請求項10】
前記濃縮工程において、前記分散液に含まれる分散媒を沸騰しない条件下で加熱することにより濃縮することを特徴とする請求項8記載のシリカ粒子分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子の分散液と、これを使用した研磨組成物に関する。この分散液は、半導体集積回路の金属配線層の基板形成等における研磨組成物の材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハー等の研磨に用いられるシリカ粒子には、高い純度が要求される。例えば、特許文献1及び2には、ケイ酸アルキルを加水分解して得られた、金属不純物量が少ない高純度のコロイダルシリカが開示されている。
また、例えば、特許文献3~5には、残存シラノール基を減らした緻密なシリカ粒子を研磨組成物として使用することが開示されている。
このような研磨に用いられるシリカ粒子を含む分散液を得る場合、一般的に、アンモニア等のアルカリ触媒を用いてアルコキシシランの加水分解及び重縮合を行い、溶媒や副生成物であるアルコールを除去して水へ置換する方法が用いられている(例えば、特許文献6及び7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再表2008/123373号公報
【文献】特開2013-082584号公報
【文献】特開2010-028078号公報
【文献】再表2011/021599号公報
【文献】再表2017/057478号公報
【文献】特開2005-060217号公報
【文献】特開2005-060219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2のシリカ粒子は粒子径変動係数(CV値)が10を上回り、粒度分布が広い。このため、このシリカ粒子を用いた研磨組成物では、均一な研磨ができない。また、特許文献3~5の分散液は、シリカ粒子表面のシラノール基密度が低いため添加剤との相互作用が起こりにくく、研磨速度が遅い。また、文献6及び7の研磨組成物では、シリカ粒子の緻密化が十分に進んでいないため、研磨速度が遅く、研磨面の状態が不十分である。
【0005】
そこで、高い研磨速度を実現すると共に、研磨基板の表面平滑性(面質)を向上させ、ディフェクトを低減できる研磨組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
研磨組成物には、シリカ粒子(砥粒)と水溶性高分子とが含まれる。水溶性高分子は、基板表面に吸着して、塩基性化合物による腐食から被研磨面を保護しつつ、均一な研磨を可能とする。研磨時には、砥粒が押し付けられた部分の水溶性高分子が外れ、その直下の被研磨面が研磨されると考えられる。また、水溶性高分子は、研磨後の基板表面に親水性を付与して洗浄性を向上させる。
さらに、被研磨面に吸着していない水溶性高分子は、砥粒の表面に吸着して緩慢凝集による分散安定化を図ると共に、研磨屑の表面にも吸着し、基板への再吸着を防止してディフェクトを低減すると考えられる。
【0007】
本発明者らは、高い研磨速度と、良好な研磨面の形成(表面の平滑性の向上及びディフェクトの低減)という、トレードオフの関係にある目的を達成するために、砥粒としてのシリカ粒子と研磨組成物に添加する水溶性高分子との関係に着目した。
【0008】
まず、研磨組成物に、粒度分布の揃った粒子径の小さなシリカ粒子を用いた。これによって、研磨基板における平滑性の向上及びディフェクトの低減は実現できたものの、研磨速度は向上できなかった。しかしながら、このような小さな球状シリカ粒子でも、粒子表面の状態を制御(OH基(シラノール基)含有量を制御)して、研磨組成物に配合される水溶性高分子との相互作用の適正化を図ることで、凝集体にできることを見出した。
この凝集体は、シリカ粒子より適度に大きいため、高い研磨速度が実現できる。その一方で、この凝集体における粒子の結合力は比較的弱いため、研磨時に凝集体に強い力が働いた場合には容易に崩壊する。このため、研磨基板における平滑性を担保し、ディフェクトの発生を抑制できる。特に研磨段差によるディフェクトの低減には、大きな粒子の方が効果的である。
【0009】
これまで、粒子の凝集体は、「Light Point Defect(LPD)」と呼ばれる基板表面の欠陥の原因や、研磨組成物の濾過性を悪化させる原因になると考えられ、排除する対応がとられてきた。しかしながら、所定の要件を満たすシリカ粒子は、研磨組成物中で制御された凝集体を形成し、これが研磨速度の向上と良好な研磨面の形成とを同時に実現できることを見出した。
【0010】
このように、研磨組成物に用いられるシリカ粒子は、表面のOH基の含有量が重要である。そこで、シリカ粒子を含む分散液をpH7以上で加熱することによりシリカ粒子のOH基量を調整し、さらに、このOH基量が変化しない条件下でシリカ粒子分散液を濃縮することとした。これにより、所望のOH基量を含有するシリカ粒子を高濃度で含む分散液が得られる。
【0011】
すなわち、本発明に係るシリカ粒子は、下記(a)~(c)の要件を満たす。
(a)窒素吸着によるBET法により求められた比表面積に基づいて換算される一次粒子径が5~300nm
(b)粒子径変動係数が10%以下
(c)Sears数Yが10.0~12.0
【0012】
また、本発明の研磨組成物は、シリカ粒子と水溶性高分子とを含有する。
【0013】
また、本発明の製造方法は、アルコキシシランを加水分解及び重縮合させて、比表面積に基づいて換算される一次粒子径が5~300nm、かつ粒子径変動係数が10%以下のシリカ粒子を形成する粒子形成工程と、この粒子形成工程で得られたシリカ粒子分散液をpH7以上で加熱して、シリカ粒子のSears数Yを10.0~12.0に調整する粒子表面調整工程と、この粒子表面調整工程で得られたシリカ粒子分散液をpH7未満で濃縮する濃縮工程とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
高い研磨速度と、良好な研磨面の形成(表面の平滑性の向上及びディフェクトの低減)とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】合成実施例と合成比較例で製造されたシリカ粒子の平均一次粒子径とSears数yとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[シリカ粒子分散液]
本発明のシリカ粒子分散液は、シリカ粒子が、下記(a)~(c)の要件を満たす。
【0017】
(a)窒素吸着によるBET法により求められた比表面積に基づいて換算される一次粒子径が5~300nm
(b)粒子径変動係数(CV値)が10%以下
(c)Sears数Yが10.0~12.0
【0018】
このシリカ粒子は、粒度分布の揃った粒子径の小さな粒子である。これを研磨組成物として使用すると、粒子が砥粒として基板に接触した時、基板に均等に接触して転がる。従って、この粒子自体は、研磨時にディフェクトを生じさせない。
また、この粒子は、上記(c)の要件を満たすため、水溶性高分子との相互作用により、弱い結合による凝集体を形成する。このため、機械的研磨力が向上し、段差が平滑になり易く、面質が向上する。従って、本発明に係る研磨組成物によれば、高い研磨速度を実現できると共に、研磨面が良好な面質になる。更に、過度な力が働いた場合には、凝集体は容易に崩壊して、研磨面のディフェクトが抑制される。
【0019】
シリカ粒子の比表面積に基づいて換算される一次粒子径は、5~300nmである。なお、比表面積(SA[m2/g])は、窒素吸着によるBET法により求めたものである。一次粒子径が5nm未満だと、分散液の安定性が不十分となる。また、一次粒子径が小さすぎるため、研磨組成物として十分な研磨速度が得られない。逆に、一次粒子径が300nmを超えると、研磨基板にスクラッチが発生し、所望の平滑性が得られない。この一次粒子径は、5~100nmが好ましく、10~80nmがより好ましく、20~60nmが更に好ましく、25~45nmが特に好ましく、25~35nmが最も好ましい。
【0020】
また、このシリカ粒子の粒子径変動係数(CV値)は、10%以下である。CV値が10%を超えると、研磨基板にスクラッチが発生し、所望の平滑性が得られない。研磨組成物のシリカ粒子は、粒子径が揃っている方が研磨面の平滑性の向上及びディフェクト発生の抑制が図れる。このため、CV値は、8%以下が好ましく、6%以下がより好ましい。
【0021】
また、このシリカ粒子のSears数Yは、10.0~12.0である。ここで、Sears数とは、シリカ粒子のOH基(シラノール基)の量を示す指標である。Sears数Yが10.0未満だと、粒子に存在するOH基量が少なく、研磨組成物に配合した場合に、水溶性高分子との相互作用が小さくなる。このため、所望の凝集体が形成されない。逆に、Sears数Yが12.0を超えると、粒子に存在するOH基量が多く、研磨組成物に配合した場合に、水溶性高分子との相互作用が大きくなる。このため、形成された凝集体が研磨時に容易に崩壊せず、研磨基板にスクラッチが発生し、所望の平滑性が得られない。Sears数Yは、10.2~11.8が好ましく、10.5~11.5がより好ましい。
【0022】
Sears数Yは、SearsによるAnalytical Chemistry 28(1956), 12, 1981-1983.の記載に沿って、水酸化ナトリウムの滴定によって測定する。本測定法により、粒子表面(細孔外)のOH基量が測定される。
具体的には、シリカ粒子濃度が1質量%になるように、純水で希釈したもの150gに対し、30gの塩化ナトリウムを加え、塩酸でpHを4.0に調整した後、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、pH9.0までに要した量で表される。
【0023】
すなわち、Sears数Yは、シリカ1.5gに対して必要な0.1NのNaOH水溶液の滴定量である。このSears数Yは、研磨組成物に含まれるシリカ粒子全体の挙動を考慮したものといえる。
このシリカ粒子全体の挙動に加えて、更に研磨砥粒としての働きを考えた場合、(1)基板表面との相互作用、(2)水溶性高分子との相互作用、(3)砥粒同士の相互作用等、粒子1個当たりの挙動も重要である。この粒子1個当たりの挙動の重要性を考慮して、粒子1個あたりに換算されるSears数yが所定の範囲にあることが好ましい。
【0024】
そこで、この粒子1個あたりに換算されるSears数yを求める。ここで、シリカ粒子を真球と仮定し、シリカの密度を2.20g/cm3とする。
【0025】
シリカ1.5gの体積は(1.5/2.20)cm3であり、シリカ粒子1個当たりの体積はV=(4/3)Π(d/2)3と表される(ここで、Πは円周率、d[nm]はシリカ粒子の窒素吸着によるBET法により求められた比表面積(SA[m2/g])に基づいて換算される一次粒子径、すなわち、d=2727/SA)。
そこで、シリカ1.5gのシリカ粒子の個数(P)は、
P=(1.5/2.20)×(1/V)×(107)3
=(1.5/2.20)×(6/(Πd3))×(1021)
と表される。したがって、粒子1個あたりに換算されるSears数yは、Sears数Yと一次粒子径dから
y=Y/P=Y×(2.20×Πd3)/(1.5×6)×10-21 [式1]
で求められる。
【0026】
ここで、測定されたYとSAから[式1]により求められたyと、dとの関係をグラフ上にプロットし、これを近似式として表した。yが、この近似式[式2]の範囲にある場合に、良好な研磨特性が得られることを知見した。
【0027】
y=(2.92×10-17×d-6.60×10-16)±5×10-17 [式2]
すなわち、(2.92×10-17×d-7.10×10-16)≦y≦(2.92×10-17×d-6.10×10-16)を満たしている。
【0028】
Sears数yがこの範囲より小さいと、所望の研磨速度が得られないおそれがある。逆に、Sears数yがこの範囲より大きいと、面質(平滑性)が悪くなる傾向にある。このSears数yは、(2.92×10-17×x-6.60×10-16)±3×10-17の範囲にあることがより好ましく、(2.92×10-17×x-6.60×10-16)±1.8×10-17の範囲にあることが更に好ましく、(2.92×10-17×x-6.60×10-16)±1×10-17の範囲にあることが特に好ましい。
【0029】
また、シリカ粒子の液相置換法(ピクノメーター法)による密度は、1.80g/cm3以上が好ましい。密度が1.80g/cm3以上であれば、より高い研磨速度が得られる。密度は、1.85g/cm3以上がより好ましい。その上限は、研磨基板におけるディフェクトの発生を考慮して、2.00g/cm3程度が好ましい。
【0030】
また、シリカ粒子の真球度は、0.80~1.00が好ましい。シリカ粒子の形状が、真球もしくは、より真球に近いほど、研磨面の平滑性が向上し、ディフェクトの発生が抑制できる。このため、真球度は0.90~1.00がより好ましく、1.00が特に好ましい。
【0031】
本発明に係る分散液には、シリカ粒子が2個以上連結した連結粒子を含んでいなくてもよい。これは、後述のように、シリカ粒子は研磨組成物中で凝集体を形成し、基板上で連結粒子と同様の振る舞いをするためである。
【0032】
ただし、2個のシリカ粒子が連結した粒子は、研磨基板表面への影響が小さく、研磨速度の向上が望めることから、全シリカ粒子個数の10%以上含むことが好ましい。このような連結粒子は、研磨時に凝集体が崩壊した際に、連結粒子が研磨基板と接するように横向きになりやすい。そのため、研磨基板にディフェクトが発生しにくく、研磨基板との接触面積が大きくなることで研磨速度が向上する。この連結粒子の含有量は、20%以上がより好ましい。
【0033】
また、シリカ粒子は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量が0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量が1ppb未満、U、Thの各々の含有量が0.3ppb未満であることが好ましい。これらの金属元素は、不純分であり、分散液中にも含まれないことが好ましい。これらの元素を上述の量より多く含む分散液を用いた研磨材では、基板に元素が残存する場合がある。その場合、金属配線のインピーダンスの増加、応答速度の遅れ、消費電力の増大等が起きることがある。また、この元素イオンが移動(拡散)し、過酷な使用条件下や長期にわたる使用の場合に、上述のような不具合を生じることがある。特に、U、Thは放射線を発生するため、微量でも残存すると半導体の誤作動を引き起こす。なお、アルカリ金属とは、Li、Na、K、Rb、Cs、Frを表す。アルカリ土類金属とは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを表す。
【0034】
分散液中のシリカ粒子濃度は、例えば12質量%以上であり、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。シリカ粒子濃度の上限は特に制限されないが、例えば40質量%である。
【0035】
分散液中に存在するシリカ粒子以外の「珪素を含む化合物」の量は、200ppm以下が好ましい。この「珪素を含む化合物」の量が少ない程、基板への付着物を抑制できる。また、研磨材に添加される各種薬品の吸着や、各種薬品との反応が抑制されるため、各種薬品の効果が発揮できる。
【0036】
なお、「珪素を含む化合物」には、製造目的とするシリカ粒子まで反応が進んでいないものも含まれる。これは、例えば、未反応の原料アルコキシシランやその低分子加水分解物(オリゴマー、ミクロゲル)等が挙げられる。
【0037】
分散液の粘度(シリカ粒子濃度20質量%に換算)は、40mPa・s以下が好ましい。一般に、高純度、高濃度であるほど分散液の粘度は高くなる。ところが、この分散液は、高純度であるにもかかわらず、20質量%の高濃度においても低粘度であり、ニュートン性を示す。このように、低粘度であると研磨材(研磨組成物)への分散性がよく、加工も容易である。また、一般に、濃度を下げると粘度も低下するが、分散液の嵩が大きくなるので、運送コストや貯槽タンク等の設置といった費用がかかる。これに対して、本発明の分散液は、低粘度でかつ高濃度なので、これら費用を抑えられる効果がある。この粘度は、35mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、20mPa・s以下が特に好ましい。
【0038】
[研磨組成物(研磨材)]
本発明の研磨組成物は、シリカ粒子と水溶性高分子とを含有する。このシリカ粒子は、上述の分散液のシリカ粒子の要件を満たす。
【0039】
このシリカ粒子は、研磨組成物中で、水溶性高分子との相互作用により凝集体(二次粒子)となる。その凝集体の平均粒子径(平均凝集粒子径)は、10~1000nmが好ましい。平均凝集粒子径がこの範囲にあれば、高い研磨速度と、良好な研磨面を実現できる。この平均凝集粒子径は、10~300nmがより好ましく、50~250nmが更に好ましい。
【0040】
シリカ粒子の濃度は、0.1~50質量%が好ましい。シリカ粒子の濃度が0.1質量%未満だと、基材や絶縁膜の種類によっては研磨速度が遅くなることがある。逆に、シリカ粒子の濃度が50質量%を越えると、研磨組成物の安定性が不十分となり、研磨速度や研磨効率が更に向上することもない。また、研磨処理のために分散液を供給する工程で乾燥物が生成して付着することがあり、スクラッチ発生の原因となることがある。シリカ粒子濃度は、0.2~30質量%がより好ましい。
【0041】
水溶性高分子としては、水溶性セルロース、水溶性ビニルポリマー、多価アルコール高分子等が挙げられる。具体的に、水溶性セルロースは、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等が例示される。また、水溶性ビニルポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等が例示される。これらの中でも、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンが好ましい。多価アルコール高分子は、ポリビニルアルコール、ポリ(2-プロペノール)、ポリ(エチレン-1,2-ジオール)、ポリ(プロピレン-1,2-ジオール)、ポリ(プロピレン-1,3-ジオール)、ポリ(ブタジエン-1,4-ジオール)、ポリ(ブタジエン-1,3-ジオール)、ポリ(ブタジエン-2,3-ジオール)等が例示される。これらは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
水溶性高分子の配合(含有)量は、研磨組成物の全量に対して0.001~10質量%が好ましい。(水溶性高分子化合物の種類により最適な範囲は異なる。)また、シリカ粒子に対して0.01~80質量%が好ましい。
水溶性高分子の配合量がこの範囲であると、研磨パット内での研磨組成物の交換がよりスムーズに行われ、高い研磨速度と良好な研磨面形成の実現が容易となる。また、シリカ粒子のOH基との適度な相互作用により、適度な凝集体を形成できる。この水溶性高分子の配合量は、研磨組成物の全量に対して0.001~3質量%がより好ましい。また、シリカ粒子に対して0.1~20質量%がより好ましい。
【0043】
この研磨組成物は、シリカ粒子及び水溶性高分子の他に、塩基性化合物、pH調整剤、界面活性剤、キレート剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0044】
塩基性化合物は、研磨を促進し、シリカ粒子の分散性を向上させる。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、アミン、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、第4級アンモニウム化合物、アミン系カップリング剤等が挙げられる。中でも、アンモニアは、基板の平滑性等の研磨性能が向上するので好ましい。この理由は解明されていないが、基板の研磨において、シリカ粒子に荷重が掛かった際に、粒子内部や粒子表面に吸着したアンモニアが基板と接触して、そこが部分的にアルカリ性になることで研磨されやすい状態になると考えている。更に、アンモニアは、研磨において洗浄されやすく、基板に残りにくいので好適である。
【0045】
これら塩基性化合物は、単独あるいは組み合わせて使用できる。その配合量は、研磨組成物の全量に対して0.0001~5質量%が好ましい。配合量が5質量%よりも多いと、研磨組成物の安定性が低下するおそれがある。また、粒子内部や粒子表面に吸着する塩基性化合物が多すぎるため、研磨組成物に加工する際に、添加剤との相互作用が起こりにくくなり、過剰な塩基性化合物により研磨面がエッチングされるおそれがある。逆に、配合量が0.0001質量%よりも少ないと、上述のような研磨効果は得られないおそれがある。塩基性化合物の配合量は、研磨組成物の全量に対して0.001~2質量%がより好ましい。
【0046】
[シリカ粒子分散液の製造方法]
本発明のシリカ粒子の分散液の製造方法を説明する。
まず、アルコキシシランを加水分解及び重縮合させて、窒素吸着によるBET法により求められた比表面積に基づく一次粒子径が5~300nm、かつ粒子径変動係数(CV値)が10%以下のシリカ粒子を含む分散液を調製する(分散液調製工程)。この分散液をpH7以上で加熱して、シリカ粒子のSears数Yを10.0~12.0に調整する(粒子表面調整工程)。その後、この分散液をpH7未満で濃縮する(濃縮工程)。
【0047】
このような製造方法によって、所望量のOH基を含有するシリカ粒子を、高濃度で含む分散液を容易に製造できる。また、本製造方法は、水置換工程等の他の工程を有していてもよい。なお、特に断りがない限り、pHは25℃に換算した時の値である。
【0048】
以下に、各工程を詳細に説明する。
[分散液調製工程]
ここでは、原料のアルコキシシランを、水、有機溶媒及び触媒の存在下で、加水分解及び重縮合してシリカ粒子を形成させ、シリカ粒子を含む分散液を調製する。
【0049】
アルコキシシランは、下記[式3]で表されるアルコキシシランの1種類でも2種類以上でもよい。
【0050】
XnSi(OR)4-n ・・・[式3]
ここで、Xは水素原子、フッ素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはビニル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはビニル基を示し、nは0~3の整数である。
【0051】
ここで、アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン(TMOS)やテトラエトキシシラン(TEOS)等の、アルキル鎖が短いものが好ましい。これは、加水分解速度が速く、緻密化が進みやすく、炭素含有量の少ないシリカ粒子が得られる傾向にあるからである。
【0052】
アルコキシシランの加水分解によりシリカ粒子の分散液を調製する方法として、次の2つが例示できる。
(方法I)水、有機溶媒及び触媒を含む敷液に対して、アルコキシシラン及び有機溶媒の混合溶液を添加する方法。
(方法II)実質的に有機溶媒からなる敷液に対して、アルコキシシランを含有する液Aと、触媒及び水を含有する液Bとを同時に添加する方法。
ここで、液Aは有機溶媒を含んでいてもよい。また、「実質的に有機溶媒からなる」とは、有機溶媒の製造過程から不可避的に含まれる不純物等は含まれ得るが、それ以外は含まないことを意味する。例えば、有機溶媒が99質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以上である。このような敷液に対して、液Aと、液Bとを同時に添加すると、製造目的とするシリカ粒子に成長していないオリゴマー等の未反応物の生成が抑制される。特に、アルコキシシランの加水分解に大きな影響を与える水及びアルカリ触媒の量を、反応期間中アルコキシシランに対して一定とすることで、逐次添加されるアルコキシシランが常に同じ条件で加水分解される。これにより、未反応物の生成が抑制される。すなわち、液A及び液Bの添加を開始してから終了するまでの期間の、反応系におけるアルコキシシランに対するアルカリ触媒のモル比の初期値に対する変化率を0.90~1.10とし、液A及び液Bの添加を開始してから終了するまでの期間の、反応系におけるアルコキシシランに対する水のモル比の初期値に対する変化率を0.90~1.10とすることが好ましい。
アルコキシシランの加水分解は、通常、常圧下で、使用する溶媒の沸点以下の温度で行われる。また、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器を用いる場合には、この温度よりも更に高い温度で行うこともできる。
なお、両方法とも、敷液中に予め準備したシード粒子を加えておく、いわゆるシード法を採用することもできる。
【0053】
有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類などが挙げられる。より具体的には、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類が用いられる。これらの中でも、メタノール又はエタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0054】
触媒としては、アンモニア、アミン、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、第4級アンモニウム化合物、アミン系カップリング剤など、塩基性を示す化合物(アルカリ)が用いられる。これらの触媒は、単独あるいは組み合わせて使用できる。その使用条件や使用量等にもよるが、アンモニアが好ましい。
【0055】
これは、アンモニアはその構造に有機基を含まないため、研磨組成物に加工する際に、有機基が粒子表面のOH基を被覆して、粒子と添加剤との相互作用を妨げないからである。また、製造上の取り扱いが容易であり、余剰なアンモニアを加熱等により系外に容易に排出できる。このため、分散液中のアンモニア残存量も調整しやすい。更に、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物のように、研磨した基板の回路の絶縁性等に影響のおそれがある金属元素を含まない点でも好ましい。
【0056】
加水分解に用いる触媒の量は、アルコキシシラン1モル当たり、0.005~1モルが好ましい。0.005モル未満であると加水分解が生じにくく、粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。逆に、1モルを超えると、加水分解スピードが著しく速くなるため、粒子になりにくく、ゲル状物となるおそれがある。触媒の量は、アルコキシシラン1モル当たり0.01~0.8モル添加することがより好ましい。
【0057】
加水分解に用いる水の量は、アルコキシシランを構成するSi-OR基1モル当たり0.5~10モルが好ましく、1~5モルがより好ましい。
【0058】
分散液のシリカ粒子濃度は、10質量%未満が好ましく、8質量%未満がより好ましく、5質量%未満が更に好ましい。
【0059】
上記のような条件で加水分解すると、アルコキシシランの重縮合が三次元的に進行する。本工程で得られるシリカ粒子は、粒子の比表面積に基づく一次粒子径は5~300nm、CV値は10%以下である。一次粒子径が5nm未満であるとシリカ粒子分散液の安定性が不十分となる。また、一次粒子径が小さすぎるために、研磨組成物として用いた場合、十分な研磨速度が得られない。逆に、一次粒子径が300nmを超えたり、CV値が10%を超えたりしたシリカ粒子を研磨組成物に用いると、研磨基板にスクラッチが発生し所望の平滑性が得られないといった、研磨基板にディフェクトを発生させる要因となる。
【0060】
このシリカ粒子の一次粒子径は、5~100nmが好ましく、10~80nmがより好ましく、20~60nmが更に好ましく、25~45nmが特に好ましく、25~35nmが最も好ましい。また、CV値は、8%以下が好ましく、6%以下がより好ましい。
ところで、この得られたシリカ粒子の存在下で、再びアルコキシシランを加水分解することにより、より大きな、あるいは粒子径分布の均一なシリカ粒子を得ることもできる。
なお、このシリカ粒子の比表面積に基づく一次粒子径及びCV値は、最終製品としてのシリカ粒子分散液におけるシリカ粒子の、粒子の比表面積に基づく一次粒子径及びCV値とほぼ同じ値となる。
【0061】
[粒子表面調整工程]
粒子表面調整工程では、分散液調製工程で形成されたシリカ粒子分散液をpH7以上で加熱して、シリカ粒子のOH基含有量を調整する。ここでは、シリカ粒子のSears数Yを10.0~12.0に調整する。所望のSears数Yに調整するには、このpHを所定時間(少なくとも1時間以上)保持して加熱することが好ましい。一方、pH7未満で加熱する場合、シリカ粒子のOH基含有量は変化しにくいため、所望のSearsYは容易に得られない。
Sears数Yが10.0未満だと、粒子に存在するOH基量が少なく、粒子を研磨組成物に配合した場合に水溶性高分子との相互作用が小さくなる。このため、所望の凝集体が形成されない。逆に、Sears数Yが12.0を超えると、粒子に存在するOH基量が多く、粒子を研磨組成物に配合した場合に水溶性高分子との相互作用が大きくなる。このため、形成された凝集体が研磨時に容易に崩壊せず、研磨基板にスクラッチ(傷)が発生し、所望の平滑性が得られない。分散液を加熱する際のpHの上限は特に制限されないが、例えば10程度である。
【0062】
なお、所定のpHにするために、アルカリを加熱開始前又は加熱中に添加してもよい。ただし、既に所定のpHである場合には添加しなくてもよい。アルカリとしては、上述の分散液調製工程で用いた触媒が使える。このアルカリ種は、pHの調整が容易で、シリカ粒子を修飾して研磨性能や分散液の安定性を低下させるおそれがある有機基や、研磨した基板の回路の絶縁性等に影響のおそれがある金属元素を含まない点で、アンモニアが好ましい。このpHは、7.5以上が好ましく、8以上がより好ましい。
【0063】
本工程における加熱は、常圧又は加圧下での分散媒の沸点以上の温度で行われてもよい。ただし、沸騰しないように加熱する方が好ましい。その理由は、沸騰させない条件で加熱することにより、ミクロゲルの発生を抑制し、ひいては濾過性の向上や研磨基板におけるディフェクトの発生を抑制できるためである。例えば、常圧下又は加圧下、分散媒の沸点未満の温度で加熱できる。具体的には、常圧下、100℃未満での加熱が好ましく、90~96℃での加熱がより好ましい。
【0064】
また、本工程は、密閉系で行ってもよいし、開放系で行ってもよい。密閉系で行うと、系外へのアルカリの排出を防ぎ、系内のpHを維持したままOH基の調整ができる。一方、開放系で行うと、アンモニアやアミン等をアルカリとして使用する場合、加熱による溶媒の蒸発と共にアルカリも系外に排出される。このため、本工程は、pHの維持が容易で、OH基のより精密な調整が可能な、密閉系で行うことが好ましい。
【0065】
[濃縮工程]
濃縮工程では、粒子表面調整工程で得られた分散液をpH7未満で濃縮する。その下限は6.0程度である。本工程では、粒子表面調整工程で調整したOH基量を変化させないように濃縮する。なお、本濃縮工程は、粒子表面調整工程の後に行われる。ただし、粒子表面調整前の適当な段階(例えば、水置換工程の前)に、予備濃縮工程を設けてもよい。なお、pHの調整は、加熱によるアルカリの留去の他、イオン交換、限外膜処理等で行ってもよく、これらを併用してもよい。このpHは、6.9以下が好ましく、6.7以下がより好ましい。
【0066】
濃縮方法は、分散液のシリカ濃度を高められる方法であれば特に制限されない。例えば、加熱濃縮法、減圧濃縮法、膜濃縮法等が挙げられる。中でも、加熱濃縮法は、前の工程から連続して行えるので好ましい。この方法は、例えば、必要に応じてシリカ粒子分散液を添加しながら、分散液を加熱して有機溶媒及び水を蒸発させて濃縮する方法である。
【0067】
加熱濃縮法は、pH7以上であるとシリカ粒子のSears数Y(OH基量)が容易に変化する。このため、上記範囲でのpH管理が重要である。また、加熱は、分散液の分散媒が沸騰する条件で行っても構わないが、沸騰しない条件下で行う方が好ましい。これは、沸騰しない条件で加熱することにより、ミクロゲルの発生を抑制し、ひいては濾過性の向上や、研磨基板におけるディフェクトの発生を抑制できるためである。すなわち、常圧下又は加圧下、分散媒の沸点未満の温度で加熱することが好ましい。具体的には、分散媒が水の場合、常圧下、100℃未満で加熱することが好ましく、90~96℃で加熱することがより好ましい。
【0068】
ところで、粒子表面調整工程では、分散液調製工程で得られた分散液の粘度(シリカ濃度20質量%に換算)が、例えば60mPa・s以上まで一旦上昇する。しかしながら、粒子表面調整工程から濃縮工程の過程で、分散液のpHを7未満まで低下させることにより粘度を低下させられる。このように、60mPa・s以上まで粘度が一旦上昇した後、低下する工程を経た分散液は、粘度変化が起こる過程で、粒子の表面同士が相互作用し、緻密化が進行するためか、粒子は緻密で、分散液は未反応物を含まないものになりやすい。このように、粒子表面調整工程及び濃縮工程を経ることより「珪素を含む化合物」(未反応物)を200ppm以下まで低減できる。
【0069】
更に、粒子表面調整工程及び濃縮工程を経たシリカ粒子は、これらの工程を経ていない粒子に比して細孔分布が狭く、細孔容積が小さいという特徴を有する。従って、このシリカ粒子を用いた研磨組成物は、粒子内部に水溶性高分子が浸透することなく、粒子表面にとどまるため、高い研磨速度と、良好な研磨面が得られやすい。
【0070】
[水置換工程]
水置換工程では、シリカ粒子分散液中の有機溶媒を水(純水)に置換する。本工程は、分散液調製工程後の適当な段階で実施できる。中でも、粒子表面調整工程前に実施することが好ましい。
【0071】
水置換の方法は、有機溶媒を水(純水)に置換できれば特に制限されない。この方法としては、例えば、加熱置換法、減圧置換法、膜置換法等が挙げられる。中でも、加熱置換法は、その後に粒子表面調整工程を連続して行えるので好ましい。この方法は、例えば、分散液を加熱して有機溶媒を蒸発させると共に水の添加により液量を一定として水に置換する方法である。これは、操作上、常圧で行うことが好ましい。なお、液量を一定とすることなく、濃縮を兼ねることも可能である。
水置換は、常圧で加熱する場合、液温が実質的に水の沸点(100℃)になった時点で完了することもできる。ただし、ミクロゲル等の発生を抑えるためには、100℃に到達しない(沸騰しない)ように制御することが好ましい。これは、例えば、90~96℃程度を維持して、所定時間加熱した時点で完了する方法である。
【0072】
上述の製造方法により製造されるシリカ粒子分散液及びそれに含まれるシリカ粒子は、上述の分散液のシリカ粒子の要件を満たす。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0074】
<シリカ粒子分散液>
[合成実施例1]
(分散液調製工程)
テトラメトキシシラン(多摩化学工業(株)製(以下同じ))540.0gとメタノ-ル180.0gを混合し、原料溶液を調製した。反応槽に予めメタノ-ル、水、アンモニアを混合した溶媒5,400gを仕込んだ。この混合溶媒中の水の濃度は15質量%、アンモニアは1質量%であった。反応溶媒の温度が20℃に保持できるように液温を調節しながら、原料溶液を25分間、均等速度で反応槽に滴下し、シリカ粒子濃度3.5質量%のシリカ粒子分散液を得た。
【0075】
(予備濃縮工程)
分散液調製工程で得られた分散液(シリカ粒子濃度3.5質量%)を加熱濃縮法により濃縮した。具体的には、分散液調製工程で得られた分散液を常圧で加熱して、有機溶媒及び水を蒸発させると共に、液量が一定となるように予め調製しておいたシリカ粒子分散液(シリカ濃度3.5質量%)を添加し、分散液を濃縮した。
【0076】
(水置換工程)
濃縮された分散液に水を添加しながら常圧にて加熱置換法により水置換を行った。液温が96℃に到達した時点で、水置換工程を終了した。
【0077】
(粒子表面調整工程)
水置換工程終了後、常圧下で液温96℃を保ちながら、pH7以上で加熱処理を行った。この工程でも留去する液量と同量の水を添加し、系内のシリカ濃度を一定に保ったまま30時間加熱を続け、シリカ粒子を目標とするSears数に調整した。
【0078】
(濃縮工程)
pHが7を下回っていることを確認し、水の添加をやめ、シリカ粒子濃度が20質量%になるまで常圧下96℃にて濃縮を行い、シリカ粒子分散液Aを調製した。
【0079】
粒子表面調整工程開始時の分散液のpH、濃縮工程終了時の分散液のシリカ粒子濃度、pH、Sears数Y、シリカ粒子の比表面積(SA)、粒子密度、粘度、濾過性、未反応物量、一次粒子径(SA換算)、平均粒子径(SEM画像解析短径平均値)、粒子変動係数(CV値)、及び2個の連結粒子の含有率を表1に示す(以下の合成実施例及び合成比較例も同様)。なお、以下の方法で各種パラメータを測定した。
【0080】
《分散液のシリカ粒子濃度》
サンプル5gを150℃で1時間乾燥させ、乾燥後の質量から、固形分濃度を算出した。この固形分濃度から、後述のシリカ粒子の金属元素含有量を酸化物換算したものと未反応物量とを差し引いた値から、シリカ粒子濃度を算出した。
【0081】
《シリカ粒子のSears数Y》
Sears数Yは、SearsによるAnalytical Chemistry 28(1956), 12, 1981-1983.の記載に沿って、水酸化ナトリウムを用いる滴定によって測定した。
具体的には、シリカ粒子濃度が1質量%になるように純水で希釈したもの150gに対し、塩化ナトリウム30gを加え、塩酸でpHを4.0に調整した後、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、pH9.0までに要した量で表した(すなわち、シリカ量1.5gに対する0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液滴定量)。なお、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液の滴定は、自動滴定装置を用い、0.1ml/秒に固定して行った。
【0082】
《シリカ粒子の比表面積》
比表面積(SA)は、比表面積測定装置(マウンテック社製 Macsorb-1200)で窒素吸着によるBET法を用いて測定した。なお、測定用の試料は、シリカ粒子分散液を105℃で乾燥させ、粉末状にしたものを用いた。
【0083】
《シリカ粒子の密度》
シリカ粒子の密度(TD)は、液相置換法(ピクノメーター法)により、下記[式4]により求めた。なお、測定は、JIS Z 8807「固体の密度及び比重の測定方法」に準じて行った。
【0084】
TD=(W2-W1)/[V-(W3-W2)/ρe] [式4]
【0085】
ここで、W1は栓をした状態の比重瓶の質量、W2は比重瓶に試料を入れてその栓をした状態の質量、W3は試料を入れた比重瓶をエタノールで満たしてその栓をした状態の質量、Vは比重瓶をエタノールのみで満たしてその栓をした状態の体積、ρeはその温度でのエタノールの密度である。
以下に、シリカ粒子の密度の測定法について、具体的に述べる。
【0086】
〈試料の準備〉
シリカ粒子分散液をるつぼに入れ、150℃ホットプレート上で乾燥させた。乾燥後、更に300℃で1時間加熱し、吸湿を防止するため、デシケーター内で冷却した。次いで、デシケーターから取り出し、乳鉢で粉砕した。粉砕後の試料約10gを測定に供した。
【0087】
〈試料の測定〉
25ml比重瓶及びその栓をエタノールで洗浄し、乾燥する。この比重瓶に栓をして、天秤で秤量し、その質量をW1とした。次に、上記のように準備した試料を比重瓶に入れ、栓をして天秤で秤量し、その質量をW2とした。試料入れた比重瓶にエタノール20mlを比重瓶に入れ、0.02MPa以下で30分脱気した。脱気後、エタノールを満たし、栓をしない状態で、25℃の恒温槽に30分入れた。次に、比重瓶を恒温槽から取り出し、栓をして、あふれたエタノールを拭き取り、天秤で秤量し、その質量をW3とした。
比重瓶をエタノールのみで満たした状態で、液温を測定した。次に、比重瓶に栓をして、あふれたエタノールを拭き取り、天秤で秤量し、その温度でのエタノールの密度ρe(文献値)から比重瓶の体積(V)を求めた。
得られた値を上記式[4]に代入し、シリカ粒子の密度(TD)を求めた。
【0088】
粒子密度(緻密度)の判定は、以下の基準により行った。
《粒子密度(緻密度)判定法》
○:1.80g/cm3以上
△:1.70g/cm3以上1.80g/cm3未満
×:1.70g/cm3未満
【0089】
《分散液の粘度》
レオメーター(HAAKE社製 RS3000)を用いて、温度25℃、ずり速度100s-1の条件で測定した。なお、シリカ濃度20質量%換算粘度とは、あるシリカ濃度のシリカ粒子分散液のpHを変化させることなくシリカ粒子濃度20質量%に調整して測定したときの粘度をいう。
【0090】
粘度の判定は、以下の基準により行った。
《粘度判定法》
○:30mPa・s以下
△:30mPa・s超40mPa・s以下
×:40mPa・s超
【0091】
《分散液の濾過性》
濾過性は、アドバンテック東洋社製フィルター(DISMIC-25HP045AN)を50mlのシリンジの先に取り付け、3.5kgの加重で濾過した際の通液量を測定した。
【0092】
濾過性の判定は、以下の基準により行った。
《濾過性判定法》
〇:30g以上
△:25g以上30g未満
×:25g未満
【0093】
《シリカ粒子の金属元素含有量》
シリカ粒子中のアルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの含有量、Cu、Ni、Crの含有量、及びU、Thの含有量は、シリカ粒子をフッ酸で溶解し、加熱してフッ酸を除去した後、必要に応じて純水を加え、得られた溶液について、ICP-MS誘導結合プラズマ質量分析装置(Agilent社製 7900s)を用いて測定した。
【0094】
《分散液中の未反応物量》
小型超遠心機(日立工機株式会社製 CS150GXL)を用いて、分散液を設定温度10℃、1,370,000rpm(1,000,000G)で30分遠心処理した。この処理液の上澄み中に存在するシリカ粒子以外の「珪素を含む化合物」(未反応物)を、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製 ICPS-8100)でSiとして測定した。この測定値から、分散液中のSiO2濃度に換算した。
【0095】
《シリカ粒子の一次粒子径》
シリカ粒子の比表面積(SA)に基づく一次粒子径(d)は、粒子密度(ρ)を2.20g/cm3とし、下記式[5]より求める。
なお、比表面積は、上述のように、窒素吸着によるBET法により求めたものである。
【0096】
d=6000/(ρ・SA)=2727/SA[nm] [5]
【0097】
《シリカ粒子の平均粒子径(SEM画像解析)》
シリカ粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について、短径を求めた。詳しくは、それぞれの粒子を最小面積で取り囲む矩形を求め、短い方の辺の長さを粒子の短径とした。その平均値をシリカ粒子の平均粒子径(Dx)とした。
【0098】
《シリカ粒子の粒子径変動係数》
下記の式により求めた。なお、粒子径変動係数(CV値)を求める際の個々の粒子径及び平均粒子径は、上記の電子顕微鏡写真により求めたものを用いた。
【0099】
【0100】
《シリカ粒子の一次粒子の真球度》
電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について、それぞれその最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)との比(DS/DL)の平均値を求め、これを真球度とした。なお、真球度は、連結していない粒子から算出した。
【0101】
《連結粒子の割合》
シリカ粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について、連結の有無を確認し、連結していないもの、2個連結したもの、3個以上連結したものに分け、各粒子の個数をカウントし、全粒子数に対する2個連結したものの割合を算出した。
【0102】
[合成実施例2]
粒子表面調整工程の加熱時間を37時間とした以外は合成実施例1と同様にして、シリカ粒子分散液Bを調製した。
【0103】
[合成実施例3]
粒子表面調整工程の加熱時間を12時間とした以外は合成実施例1と同様にして、シリカ粒子分散液Cを調製した。
【0104】
[合成実施例4]
水置換工程終了時の液温を常圧下で100℃にした以外は合成実施例1と同様にして、シリカ粒子分散液Dを調製した。
【0105】
[合成実施例5]
分散液調製工程において、反応溶媒の液温を15℃に保持できるように液温を調節した以外は、合成実施例1と同様にして、シリカ粒子分散液Eを調製した。
【0106】
[合成実施例6]
分散液調製工程において、反応溶媒の液温を25℃に保持できるように液温を調節した以外は、合成実施例1と同様にして、シリカ粒子分散液Fを調製した。
【0107】
なお、いずれの合成実施例においても、シリカ粒子中のアルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量は0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量は1ppb未満、U、Thの各々の含有量は0.3ppb未満であった。また、シリカ粒子の一次粒子の真球度は、0.80~1.00であった。
【0108】
[合成比較例1]
粒子表面調整工程と濃縮工程を行なわなかった以外は合成実施例1と同様にして、シリカ粒子分散液Gを得た。
【0109】
[合成比較例2]
粒子表面調整工程と濃縮工程を行なわなかった以外は合成実施例4と同様にして、シリカ粒子分散液Hを得た。
【0110】
[合成比較例3]
粒子表面調整工程終了後、濃縮工程において、アンモニア水を添加してpHを7以上(pH7.5~8.0)とする以外は合成実施例4と同様にして、シリカ粒子分散液Iを得た。
【0111】
[合成比較例4]
粒子表面調整工程の加熱時間を60時間とした以外は合成実施例1と同様にして、シリカ粒子分散液Jを調製した。
【0112】
[合成比較例5]
粒子表面調整工程の加熱時間を0.5時間とした以外は合成実施例1と同様にして、シリカ粒子分散液Kを調製した。
【0113】
[合成比較例6]
原料溶液を20分間で反応槽に滴下した以外は、合成実施例6と同様にして、シリカ粒子分散液Lを調製した。
【0114】
なお、いずれの合成比較例においても、シリカ粒子中のアルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量は0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量は1ppb未満、U、Thの各々の含有量は0.3ppb未満であった。また、シリカ粒子の一次粒子の真球度は、0.80~1.00であった。
【0115】
<研磨組成物>
[実施例1]
シリカ粒子分散液Aと水溶性高分子a(ヒドロキシエチルセルロース(分子量350000))を表2に示す比率で混合し、シリカ粒子濃度0.45質量%の研磨組成物A-1を調製した。なお、研磨組成物中にはアンモニアを0.02質量%配合した。
【0116】
[実施例2]
シリカ粒子分散液Bを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Bを調製した。
【0117】
[実施例3]
シリカ粒子分散液Cを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Cを調製した。
【0118】
[実施例4]
シリカ粒子分散液Dを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Dを調製した。
【0119】
[実施例5]
水溶性高分子b(ポリビニルアルコール(分子量80000))を用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物A-2を調製した。
【0120】
[実施例6]
水溶性高分子aの配合比を変更する以外は実施例1と同様にして、研磨組成物A-3を調製した。
【0121】
[実施例7]
水溶性高分子aの配合比を変更する以外は実施例1と同様にして、研磨組成物A-4を調製した。
【0122】
[実施例8]
シリカ粒子分散液Eを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Eを調製した。
【0123】
[実施例9]
シリカ粒子分散液Fを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Fを調製した。
【0124】
[比較例1]
シリカ粒子分散液Gを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Gを調製した。
【0125】
[比較例2]
シリカ粒子分散液Hを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Hを調製した。
【0126】
[比較例3]
シリカ粒子分散液Iを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Iを調製した。
【0127】
[比較例4]
シリカ粒子分散液Jを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Jを調製した。
【0128】
[比較例5]
シリカ粒子分散液Kを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Kを調製した。
【0129】
[比較例6]
シリカ粒子分散液Lを用いる以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Lを調製した。
【0130】
[比較例7]
水溶性高分子aを配合しない以外は実施例1と同様にして、研磨組成物Mを調製した。
【0131】
表2に、研磨組成物の組成、pH、平均凝集粒子径、研磨特性(研磨速度、平滑性、ディフェクト)の判定を示す。なお、各測定値は、以下の方法で求めた。
【0132】
《平均凝集粒子径》
マルバーン・パナリティカル社製ゼータサイザーナノZSを用いて、動的光散乱法で測定した。測定して得られたZ平均の値を研磨組成物中のシリカ粒子の平均粒子径(平均凝集粒子径)とした。測定サンプルは、研磨組成物のシリカ濃度が0.5質量%よりも高いときは、pHが変化しないよう、アンモニア水で0.5質量%に希釈して測定した。ただし、シリカ濃度が0.5質量%よりも低い場合は、そのまま測定した。
【0133】
<研磨組成物の評価>
1.研磨速度
研磨用基板(結晶構造が1.0.0である単結晶シリコンウエハー)を用い、研磨装置(ナノファクター(株)製 NF300)にセットし、研磨パッドポリテックスP103、研磨荷重0.05MPa、テーブル回転速度50rpm、スピンドル速度50rpmで、上記研磨組成物(A~M)を100ml/分の速度で研磨用基板の研磨を5分間行った。その後、純水にて洗浄し風乾した。この基板の研磨速度を以下の基準で評価した。
【0134】
《研磨速度判定法》
〇:25nm/分超
△:20~25nm/分
×:20nm/分未満
【0135】
2.研磨面の状態
得られた研磨基板の研磨表面を、走査型白色干渉計(Zygo New View 7300)を用いて波長50~500μmでのうねりを観察し、表面の平滑性を以下の基準(うねり)で評価した。
【0136】
《平滑性判定法》
○:うねりが0.5nm未満
△:うねりが0.5nm以上1.0nm未満
×:うねりが1.0nm以上
【0137】
レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製 VK-X250)を用いて研磨基板に生じたスクラッチ等のディフェクトの程度を確認し、ディフェクトを以下の基準で評価した。
【0138】
《ディフェクト判定法》
〇:ディフェクトがほとんど認められない
△:ディフェクトが僅かに認められる
×:ディフェクトが広範囲に認められる
【0139】
【0140】
【0141】
次に、上記合成実施例1~6及び合成比較例1~6について、粒子1個あたりに換算されるSears数yを前述の[式1]により求めた。また、y=(2.92×10
-17×d-6.60×10
-16)±5×10
-17(d:比表面積に基づく一次粒子径)の範囲内に入るか否かの判定を行った。
その結果を表3及び
図1に示す。
【0142】