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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】微細加工チャネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B81C 1/00 20060101AFI20230119BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B81C1/00
H01L21/76 L
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020515771
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 NL2018050610
(87)【国際公開番号】W WO2019054873
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】2019560
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】596167974
【氏名又は名称】ベルキン ビーブイ
【氏名又は名称原語表記】BERKIN B.V.
(73)【特許権者】
【識別番号】500405473
【氏名又は名称】ウニフェルジテイト・トゥウェンテ
(73)【特許権者】
【識別番号】507273013
【氏名又は名称】スティヒティング フォール デ テヘニッヘ ウェテンスハペン
【氏名又は名称原語表記】Stichting voor de Technische Wetenschappen
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ、イユアン
(72)【発明者】
【氏名】フェルトカンプ、ヘンク-ヴィレム
(72)【発明者】
【氏名】ツェン、ヤーシャン
(72)【発明者】
【氏名】ロッターズ、ヨースト コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィーゲリンク、レムコ ジョン
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0098840(US,A1)
【文献】J. Haneveld,D.M. Brouwer,A. Mehendale,R. Zwikker,T.S.J. Lammerink,M.J. de Boer,and R.J. Wiegerink,MEMS-based Micro Coriolis mass flow sensor,Proceeding of The euspen International Conference -Zurich,2008年05月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81C 1/00
H01L 21/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細加工チャネルを製造する方法であって、
第1材料から構成され、異なる材料の埋め込み層を有する基板を提供する工程と、
次に、前記基板の少なくとも一部を除去することにより、互いに離れて設けられ、少なくとも部分的に互いに実質的に平行に延び、前記埋め込み層に向けて延びる少なくとも二つのトレンチを前記基板内に形成する工程と、
次に、前記第1材料とは異なる第2材料を提供し、前記少なくとも二つのトレンチを少なくとも前記第2材料で充填することにより、少なくとも二つの充填トレンチを形成する工程と、
次に、前記充填トレンチの間に延在する前記基板の少なくとも一部を除去することにより、前記充填トレンチの間に細長い空洞を形成する工程と、
次に、前記空洞内に前記空洞を囲む材料の層を設けることにより、囲まれたチャネルを形成する工程と、
次に、前記チャネルの壁に側壁加熱を設ける工程と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記細長い空洞を形成する工程の後において、前記空洞は、前記充填トレンチによって少なくとも部分的に境界づけられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記基板の少なくとも一部を除去することによって前記チャネルの外面を画定する工程を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記除去することは、リリースエッチング工程を備えることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基板は、シリコンオンインシュレータウェハを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記基板は、デバイス層、BOX層およびハンドル層を備えることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも二つのトレンチを形成する工程は、前記二つのトレンチをエッチングすることを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも二つの充填トレンチを形成する工程は、低圧化学気相堆積工程を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2材料は、多結晶または単結晶シリコンを備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細長い空洞を形成する工程は、前記細長い空洞をエッチングすることを備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記エッチングすることは、前記基板の等方性エッチングを備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細長いチャネルを形成する工程は、低圧化学気相堆積工程を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記材料の層を設けることにより前記囲まれたチャネルを形成する際、前記材料の層は、低応力シリコンリッチ窒化シリコンを備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
マスクを生成するためのマスキング工程をさらに備えることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記マスキングは、前記基板の湿式熱酸化を備えることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マスクをパターニングする工程を備えることを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記パターニングは、反応性イオンエッチングであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
チャネルの内壁材料は、化学的に不活性な物質で構成されることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に微細加工プロセスおよびそれによって形成されるデバイスに関する。より具体的には、本発明は、コリオリマスフローセンサ、密度センサ、比重センサ、燃焼デバイス、燃料電池濃度計、化学物質濃度センサ、温度センサ、薬物注入デバイス、流体搬送デバイス、ガス搬送デバイス、ガスセンサ、バイオセンサ、医療センサ、および静止または共振マイクロチャネルを利用できるその他のデバイスを含むが、これらに限定されないマイクロ流体デバイスに適した微細加工チャネルまたはチューブ(一般にマイクロチャネルと呼ばれる)を形成するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン微細加工技術を用いて、共振マスフローおよび密度センサを製造するプロセスが一般的に知られている。本書で使用されるように、微細加工は、基板(例えば、シリコンウェハ)のバルクエッチング、および/または表面薄膜エッチングによって非常に小さな要素を形成するための技術であり、後者は、一般に基板表面の犠牲層(例えば、酸化物層)上に薄膜(例えば、ポリシリコンまたは金属)を堆積し、次に、犠牲層の一部を選択的に除去して堆積された薄膜を自由にすることを含む。微細加工は、基板の表面の上方に支持される微細加工チューブを製造するために使用しうるウェハ接合およびエッチング技術を含みうる。
【0003】
EP2078936には、フローメータ用のシステムチップを製造する方法が開示されており、単結晶シリコン基板が提供され、SiN堆積工程および部分的なエッチングアウトおよびエッチングによる部分的な露出を用いて基板内にSiNチューブが実現され、チューブ構造は少なくとも一方側が固定され、他方側が自由となるように実現され、そのために微細表面チャネル技術(SCT)が用いられる。チャネルの幅および深さは、スリットの位置および量によって決まる。得られるチャネル断面は、平坦な上部を有する部分的に円形のチャネルの形状を有する。上限となる約300μmのチャネル直径は、このSCTにより実現できる。SCTにおいて、スリットを通じたシリコンのエッチング回数およびスリットアレイの配置は、表面チャネルの形状およびサイズの決定に極めて重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、微細加工チャネルを製造する改善された方法を提供し、特に改善されたチャネルが得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、微細加工チャネルを製造する方法が提供される。この方法は、
第1材料から構成され、異なる材料の埋め込み層を有する基板を提供する工程と、
前記基板の少なくとも一部を除去することにより、互いに離れて設けられ、少なくとも部分的に互いに実質的に平行に延び、前記埋め込み層に向けて延びる少なくとも二つのトレンチを前記基板内に形成する工程と、
前記第1材料とは異なる第2材料を提供し、前記少なくとも二つのトレンチを少なくとも前記第2材料で充填することにより、少なくとも二つの充填トレンチを形成する工程と、
前記充填トレンチの間に延在する前記基板の少なくとも一部を除去することにより、前記充填トレンチの間に細長い空洞を形成する工程と、
前記空洞内に前記空洞を囲む材料の層を設けることにより、囲まれたチャネルを形成する工程と、を備える。
【0006】
請求項1に定義される発明によれば、トレンチアシスト表面チャネル技術(TASCT)がトレンチで分離されたマイクロチャネルを製造するために用いられる。本発明に係る方法は、従来技術に係る方法では実現できなかった、実質的に矩形の断面形状を有する高精度かつ高精細な大容量のチャネルをシリコンオンインシュレータ(SOI)基板といった基板内に形成することを可能にする。例えばSOI基板と組み合わされたトレンチ構造は、チャネルの外形(チャネル壁)を画定するために用いることができ、これらは機械的な補強構造として機能する柱状構造を形成するために用いることができる。これら二つの構造の組み合わせは、平面内でのチャネル形成を可能にする。本発明のある実施の形態に係るTASCTプロセスは、自由に吊り下げられ、機械的に安定で、かつ、熱的に絶縁されたチャネルの製造を可能にする。追加的に、壁には、大きな燃焼反応チャンバの形成に有益となる側壁加熱が設けられてもよい。
【0007】
本発明に係る方法において、トレンチの使用は、任意の平面的な形状およびサイズを有するチャネルの設計に自由度を導入する。製造されたチャネルは、実質的に矩形の断面を有してもよい。チャネル側壁の高さは、SOIウェハのデバイス層の厚さによって定義されてもよい。チャネルの幅は、トレンチマスクの設計によって定義されることができる。本発明に係る方法におけるトレンチは、大きな膜を機械的に支持するための壁または柱として使用されてもよい。追加的または代替的に、トレンチは、チャネルの側壁として機能するために用いられてもよいし、チャネルの形状およびサイズを定義するために用いられてもよい。
【0008】
したがって、上記の通り、改善された微細加工チャネルを形成するための改善された方法が得られ、これにより本発明の目的が達成されることが分かる。
【0009】
この方法の有利な実施の形態は、以下に記載されるであろう。
【0010】
ある実施の形態において、前記細長い空洞を形成する工程の後において、前記空洞は、前記充填トレンチによって少なくとも部分的に境界づけられる。これは、前記第1材料の前記基板の材料がいったん除去されると、前記トレンチを充填するために使用される第2材料が、前記細長い空洞を部分的に境界づけることを意味する。したがって、細長い空洞を形成するための材料を除去する工程は、材料固有の工程であってもよく、すなわち、前記基板の前記第1材料を除去するが、前記トレンチの前記第2材料は除去しない工程であってもよい。したがって、実質的にトレンチは、形成されるべきチャネルの内面の境界を画定するために用いられてもよい。
【0011】
ある別の実施の形態において、前記細長い空洞を形成する工程の後において、前記空洞は、前記埋め込み層によって少なくとも部分的に境界づけられる。したがって、細長い空洞を形成するための材料を除去する工程は、材料固有の工程であってもよく、すなわち、前記基板の前記第1材料を除去するが、前記埋め込み層の前記材料は除去しない工程であってもよい。したがって、実質的に前記埋め込み層は、形成されるべきチャネルの下側の境界を画定するために用いられてもよい。
【0012】
このように、ある実施の形態においいて、トレンチおよび埋め込み層が前記基板の材料の除去後に前記空洞の境界を形成してもよい。
【0013】
ある実施の形態において、前記方法は、前記基板の少なくとも一部を除去することによって前記チャネルの外面を画定することを備える。この工程は、コリオリフローセンサに用いられるような自立するチャネルまたはチューブを形成するために有益である。第2材料は、第1材料とは異なるため、前記除去する工程は、上述のような材料固有の工程であってもよい。したがって、実質的にトレンチは、形成されるべきチャネルの外面の境界を画定するために用いられてもよい。
【0014】
ある実施の形態において、前記第1材料を前記除去することは、気相(ガス相または蒸気相)エッチング、RIE、DRIE、BOSCH DRIEおよび/またはこれらの組み合わせといったリリースエッチング工程を備える。
【0015】
ある実施の形態において、前記基板は、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェハを備える。
【0016】
ある実施の形態において、前記基板は、デバイス層、埋め込み酸化物(BOX)層およびハンドル層を備える。ある実施の形態において、シリコンオンインシュレータ基板は、約50μmの厚さを有するデバイス層と、約200nmの厚さを有するBOX層と、約400μmの厚さを有するハンドル層とを備える。
【0017】
微細加工チャネルは、ある実施の形態において、基板のデバイス層内に少なくとも部分的に設けられる。燃焼チューブの壁は、埋め込み層、具体的にはBOX層の少なくとも一部によって境界づけられてもよいし、または形成されてもよい。充填トレンチは、補強支持構造を形成してもよく、機械的に安定なチャネルを形成するためにデバイス層の材料とは異なる材料から少なくとも部分的に構成される。
【0018】
ある実施の形態において、前記少なくとも二つのトレンチを形成する工程は、前記二つのトレンチをエッチングすることを備える。
【0019】
前記少なくとも二つの充填トレンチを形成する工程は、低圧化学気相堆積(LPCVD)工程を備えてもよい。
【0020】
前記第2材料は、ある実施の形態において、多結晶シリコンまたは窒化シリコンといったシリコンを備えてもよい。したがって、トレンチを充填するために用いる材料は、シリコンであり、具体的には多結晶シリコンである。代替的に、単結晶シリコン材料を用いることもできる。
【0021】
ある実施の形態において、前記細長い空洞を形成する工程は、前記細長い空洞をエッチングすること、具体的には前記基板の等方性エッチングを備える。
【0022】
前記囲まれたチャネルを形成する工程は、低圧化学蒸着堆積工程を備えてもよい。
【0023】
ある実施の形態において、第3材料でありうる材料の層を設けることにより前記囲まれたチャネルを形成する際、前記材料の層は、低応力シリコンリッチ窒化シリコンを備える。したがって、前記囲まれたチャネルを形成する工程は、低応力シリコンリッチ窒化物を堆積することを備える。この実施の形態において、チャネルの内面は、少なくとも部分的に、低応力シリコンリッチ窒化物により形成される。
【0024】
ある実施の形態において、この方法は、マスクを生成するためのマスキング工程をさらに備える。前記マスクは、上述の一以上の工程において有益であってもよい。マスキングは、例えば基板の湿式熱酸化を用いることにより、基板上にハードマスクを形成することを含んでもよい。ハードマスクは、例えばRIEなどのエッチング工程を用いて、パターニングされてもよい。この方法は、先に設けられたマスクを完全にまたは部分的に除去することを備えてもよく、例えばBHFといったHFを含むエッチング液を用いてハードマスクが完全に除去される。
【0025】
前記マスキングは、前記マスクをパターニングする工程を備えるパターニング工程を備えてもよい。前記パターニングは、反応性イオンエッチングを備えてもよい。
【0026】
例示を目的として、この方法は、例えば、以下の五つの段階を備えてもよい。
【0027】
(エッチストップおよびチャネル外形)
50μmのデバイス層、200nmのBOX層および450μmのハンドル層を有する高ドープSOI基板は、適切な加熱炉内で1150℃の湿式熱酸化により酸化される。このSiO層は、トレンチエッチングの間、ハードマスクとして機能する。そのために、従来型のI線フォトリソグラフィおよび適切なプラズマエッチング装置内でのSiO2の反応性イオンエッチング(RIE)を用いて、3μm幅のトレンチを有するようにパターニングされる。3μm幅の高アスペクト比のトレンチは、適切な深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)プラズマシステムを使用し、低周波数(LF)の終了工程を用いるノッチフリーのボッシュプロセスで、BOX層まで完全に下りるようにエッチングされる。
【0028】
次に、2μmのパリレンCの層は、適切なシステム内での化学気相堆積(CVD)によってコンフォーマル(相似)に堆積される。
【0029】
この層は、後続でハードマスクを剥離する間、BOX層を保護する役割を果たす。表面のパリレンCは、バレル型エッチング装置内でOプラズマを用いてエッチングバックされる。ここでは、表面上のエッチングがトレンチの内側でのエッチングよりも高いレートを有すること、つまり、トレンチのアスペクト比によってエッチレートが制限されることを活用する。
【0030】
次に、SiOハードマスクは、バッファードHF(7:1のNH:HF)で剥離され、残存するパリレンCは、90℃のピラニア溶液(3:1のHSO:H)で取り除かれる。
【0031】
トレンチは、適切な炉内のSiHCl/NH/Nのフローを用いる低圧化学気相堆積(LPCVD)によって低応力(50MPa)のSiRNで最充填される。
【0032】
(チャネルおよびチャンバエッチング)
まず、Crの層がスパッタ装置を用いて低応力SiRN層の上にスパッタされる。スリットパターンは、I線フォトリソグラフィおよび適切なエッチング装置内でのRIEを用いるエッチングによって、チャネル側壁を形成する二つの隣接するトレンチの間にパターニングされる。これらのパターニングされるCr層およびSiRN層は、従来のSCTプロセスのような等方性チャネルエッチングの間にエッチングマスクとして用いられる。Crは、SiRNエッチングおよびSiエッチングの間、エッチングマスクとして機能し、SiRNにおけるスリット幅の増加を抑制する。
【0033】
マイクロ流体チャネルおよびチャンバ構造の内側のSiは、適切なエッチング装置を用いてスリット通じてエッチングにより除去される。チャネルおよびチャンバのエッチング後、Cr層は、湿式のCrエッチング液で取り除かれる。
【0034】
(チャネル壁の形成および閉鎖)
Siをエッチング除去した後、チャネルおよびチャンバの内壁は、低応力SiRNの別のLPCVDの実行によって形成され、スリット幅の半分よりも少しだけ大きい厚さ(合計での層の厚さ:スリット幅の±1.5倍)になるまでコンフォーマルに成長する。チャネルの閉鎖にLPCVDを用いることは、従来のSCTプロセスと同じである。
【0035】
(電気接続および金属堆積)
Si側壁ヒータ構造への電気的接点を生成するため、I線フォトリソグラフィおよび適切なプラズマエッチング装置内でのRIEによって、二つのSiRN層がパターニングされる。
【0036】
その後、Si側壁ヒータ間のインターフェースおよびマクロ世界の双方として機能する金属層(Ptおよび接着層)、抵抗性ヒータおよび温度センサがスパッタされる。
【0037】
Ptと基板の間の接着は、適切な接着層を用いた場合、500℃を超える高温にのみ耐えることができる。以前の研究から、Tiは高温に耐えることがえきず、Ptの剥離、穴の形成および凝集を生じさせることが分かっている。
【0038】
したがって、Taの接着層が用いられ、より高い温度に耐えることが分かっている。まず、薄い5nmのTa層がスパッタ装置内でスパッタされ、その直後に400nmのPt層がスパッタされる。金属層は、適切なエッチング装置内でイオンビームエッチングによってパターニングされる。
【0039】
(チャネルのリリース)
最終工程として、チャネルおよびチャンバは、吊り下げられたシステムを生成するためにリリースされ、バルクのSiから熱的に絶縁される。このリリースは、二つの工程で実行される。
【0040】
まず、ボッシュプロセスを用いて方向性エッチングが実行され、その後、全方向に残存するSiを除去するために等方性エッチングが用いられ、十分なサイズの空洞が生成される。
【0041】
双方の工程は、適切な(同じ)エッチング装置内で実行される。ボッシュプロセスでエッチングされる穴は、等方性エッチングのエッチング時間を減少させ、したがってSiRNがSFに曝される時間を制限する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明は、添付の図面および図の説明を用いて以下に説明される。図において、微細加工チャネルを基板から形成する異なる段階が示される。
図1】湿式熱酸化を用いてハードマスクが形成されたシリコンオンインシュレータウェハなどの基板を概略的に示す断面図である。
図2】RIEによってハードマスクをパターニングし、BOSCH DRIEを通じてトレンチを形成する工程を示す図である。
図3】CVDによるパリレンCを用いるBOX保護を示す図である。
図4】Oプラズマを用いてパリレンCをエッチングし、BHFでハードマスクを剥離する工程を示す図である。
図5】ピラニア溶液でパリレンCを剥離し、絶縁層を生成するためにSiを乾式熱酸化し、LPCVDによって多結晶シリコンを用いてトレンチを充填する工程を示す図である。
図6】RIEを用いて等方性エッチングマスクをパターニングする工程を示す図である。
図7】Siを等方性エッチングしてチャネルを生成する工程を示す図である。
図8】LPCVDによって低応力SiRNを堆積する工程を示す図である。
図9】等方性エッチングを用いてチャネルをリリースエッチングする工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1-9は、本発明に係る微細加工チャネル101を製造する方法のある実施の形態を概略的に示す。概して、この方法は、以下の工程を備える。
-第1材料から構成され、異なる材料の埋め込み層14を有する基板11を提供する工程(図1)。
-前記基板11の少なくとも一部を、具体的には埋め込み層14まで除去することにより、少なくとも二つのトレンチ21,22を前記基板11内に形成する工程。
-前記第1材料とは異なる第2材料を提供し、前記少なくとも二つのトレンチ21,22を少なくとも前記第2材料で充填することにより、少なくとも二つの充填トレンチ31,32を形成する工程(図5)。
-前記充填トレンチ31,32の間に延在する前記基板11の一部を除去することにより、前記充填トレンチ31,32の間に細長い空洞51を形成する工程(図7)。
-前記空洞51内に前記空洞51を囲む材料の層61を設けることにより、囲まれたチャネル5を形成する工程(図8)。
【0044】
ある実施の形態において、前記囲まれたチャネル5は、前記基板11の少なくとも一部を除去することにより前記チャネル5の外面を画定することにより前記基板から少なくとも部分的にリリースされてもよい(図9)。前記チャネルの外面を画定するために前記基板の一部を除去することにより、自由に吊り下げられ、機械的に安定で、かつ、熱的に絶縁されたチャネルの製造が実現されてもよい。
【0045】
プロセスは、以下により詳細に記載される。
【0046】
図1は、SOIウェハ11(例えば50μmのデバイス層13、200nmのBOX層14および400μmのハンドル層15を有する)が湿式熱酸化(例えば1150℃)によってハードマスク12を生成するために酸化されることを示す。このSiO層12は、実際のマスク12を生成するために3μm幅のトレンチを有するようにパターニングされる。
【0047】
図2は、DRIEプラズマシステムを用いるボッシュプロセスを用いて、例えば3μmの幅を有する高アスペクト比のトレンチ21,22がBOX層14まで完全に下りるようにエッチングされることを示す。
【0048】
その後、図3を参照すると、トレンチ21,22は、ポリマー71、具体的にはパリレンCで充填され、図示される実施の形態においてコンフォーマルな2μm厚の層となるようにCVDによって堆積される。このケースでは、トレンチ21,22を完全に充填することを確保するため、トレンチ21,22の幅の半分より大きい厚さが選択される。
【0049】
図4は、表面のパリレンCがバレル型エッチング装置内でOプラズマを用いてエッチングバックされることを示す。好ましいことに、表面上のエッチングがトレンチの内側でのエッチングよりも高いレートを有し、これは、SiO2のハードマスク12がBHF(7:1のNH:HF)で剥離される一方、埋め込み(BOX)層14が保護されることを意味する。残存するポリマー71は、例えば90℃のピラニア溶液(3:1のHSO:H)で取り除かれる。
【0050】
しかしながら、ポリマー71、具体的にはパリレンCでトレンチ21,22を充填する工程は、原理上は省略できる。その場合、ハードマスク12が除去され、トレンチ21,22内のBOX層14がエッチングされることが許容される。
【0051】
図5に示される次の工程において、トレンチは、乾式の熱酸化を通じて成長する薄いSiOエッチストップ層35および後続のLPCVDによる多結晶Si36の充填物から構成される複数層のシステムを用いて最充填される。このようにして、充填トレンチ31,32が得られる。もちろん、窒化シリコンなどの他の材料も考えられる。その場合、窒化シリコンは、いくつかのエッチング技術においてエッチストップ5として既に機能してもよく、これは追加のSiO層35がもはや必須ではないことを意味する。このようにして、実質的には、ある実施の形態において、層状の材料または単一の材料であってもよい充填材料でトレンチが充填されてもよい。
【0052】
充填材料は、特定のエッチング技術に対してエッチストップ層として機能してもよい。
【0053】
好ましくは、多結晶Si36はその後、空洞51をエッチングする際の問題を避けるために、等方性のシリコンエッチングを用いて、ウェハ11の表面から除去される。
【0054】
図6に示されるように、等方性エッチングマスクとして用いられるスリットパターン41は、RIEを用いて二つの隣接するトレンチ31,31の間に彫りこまれる。
【0055】
ここで図7を参照すると、デバイス層13のSiは、SiOエッチストップ35で止まる等方性の気相プロセスを用いてスリット41を通じてエッチング除去される。このようにして、空洞51が形成される。
【0056】
空洞51を形成するためにSi13をエッチング除去した後、チャネル5の内側チャネル壁がLPCVDを通じて低応力シリコンリッチ窒化シリコン61で構成される。これは、スリット41の幅よりも少しだけ大きい厚さとなるまでコンフォーマル(相似状)に成長し、全てのスリット41の完全な閉鎖を確実にする。
【0057】
選択的な最終工程として、チャネルは、等方性気相エッチングまたは半等方性RIEエッチングなどの適切なエッチングプロセスを用いて、上部および下部から自由となるように完全にエッチングされる。
【0058】
本発明のある実施の形態に係るTASCTプロセスは、単一のSOIウェハを用いて開始してもよく、スリット41のアレイを通じてチャネル5をエッチングし、バルク基板11からチャネル5をリリースするためにXeFを用いてもよい。これは、XeF2が速いエッチレートを有し、二酸化シリコンよりもシリコンに対して高い選択性を有することによる。深さ方向において、Box層14は、スリット41を通じたシリコンのエッチストップとして機能でき、したがって、チャネル5は、デバイス層13内に制限される。面方向において、高アスペクト比トレンチ21,22はデバイス層13内に彫り込まれ、全てのトレンチ壁31,32はXeFエッチストップとしての熱酸化物35の薄い層で被覆される。したがって、デバイス層13内に制限されるトレンチ31,32の内側で、スリット41のアレイを通じて、チャネル5をエッチングすることができ、設計された形状およびサイズをもたらすことができる。トレンチで閉じ込められたチャネルの外側において、ハンドル層15およびデバイス層13のシリコンは、熱酸化トレンチ壁35でありうるエッチストップに到達するまでXeFによりエッチングできる。
【0059】
ある実施の形態において、形成されるチャネル5の側壁にはヒータ機能が与えられてもよい。この目的のため、高ドープデバイス層シリコン13は、二つの充填トレンチ31内に封止/挟み込まれ、これらのトレンチの全ては熱酸化コーティング35を有し、バルクシリコン基板13からの電気的絶縁を提供できる。このようにして、側壁方向からチャネルを加熱することにより、周囲に対する熱損失を最小化できる。
【0060】
チャネル5の上面および下面は、低応力SiRN膜から構成されてもよく、これらはトレンチ31,32から構成される柱および側壁で接続されることができ、優れた機械的強度を実現する。したがって、これらの薄い膜は、数ミリメートルの長さまたは幅となることができる。
【0061】
上部および下部の膜厚は、矩形スリット41の幅により決定されてもよい。ヒータおよびセンサは、チャネルの天井面の上に配置でき、チャネル5を上から効率的に加熱し、温度プロファイルを効率的に測定する。下部膜は、非常に薄い膜で構成され、透明であってもよく、これは、マイクロチャネル内のプロセスの観察に有益であるかもしれない。例えば、燃焼チャネルとして用いられる場合、透明性は、チャネル内の炎の位置を顕微鏡で見るときのアクセスを容易にする。
【0062】
本発明に係る方法は、シリコンヒータが側壁に埋め込まれ、機械的に安定で熱的に絶縁されたマイクロ流体チャネル5をトレンチアシスト表面チャネル技術(TASCT)を用いて製造すること可能にする。
【0063】
側壁の加熱は、非常に均一な加熱を実現する一方、シリコンヒータの比較的大きな断面積(20μm×50μm)に起因した高加熱電力を可能にする。実証的な装置において、機械的応力によって制限される1.4Wの加熱電力で400℃の最高温度に到達した。
【0064】
この方法は、幅広い範囲のチャネル幅およびヒータ厚さを許容する。後者は、電力消費の変化を可能にし、したがってチャネルの長さに沿った温度プロファイルの変化を可能にする。
【0065】
吊り下げられたマイクロチャネルを製造するほとんどの技術では、チャネル5の上にあるヒータを用いた加熱のみが可能であるため、チャネル5の断面内で温度勾配が生じる。本発明に係る方法は、チャネル5の側壁の内側に抵抗性ヒータを組み込むことが可能であり、2面からの加熱が可能となり、より均一な温度プロファイルを実現する。
【0066】
さらに、ヒータの比較的大きな断面積は、大きな加熱電力を可能にする。重要な用途は、高温物理パラメータ検出および(バイオ)マイクロ反応炉である。ほとんどの用途において、最大で1g/h(±0.3ml/s)の流量が求められる。
【0067】
この方法において、マイクロチャネル5の最終的な形状は、実際のチャネルエッチングに依存しない。外形は、エッチストップとしての充填トレンチを用いて画定される。最終的なチャネル5の断面は、正方形または長方形であり、その高さは用いるSOIウェハによって定義され、幅は設計によって定義される。側壁加熱が可能であることに加えて、このプロセスは、柱の強化や混合促進装置などのチャネル内構造も許容する。
【0068】
例示的な実施の形態において、側壁ヒータおよび抵抗性Pt温度センサ有する直線状の8500μmの長さのチャネルを、提案した方法を用いてp型SOIウエハ(1×10-3~1×10-2Ωcm)に製造できる。この製造は、例えば、以下の三つの段階を備えてもよい。
1)マイクロ流体チャネルは、デバイス層(DL)内に50μmの深さのトレンチをボッシュエッチングし、それらを多層システムで再充填し、ハンドル層(HL)の入口をボッシュエッチングし、DL上のハードマスクにスリットパターンを反応性イオンエッチング(RIE)し、チャネルをXeFで等方性エッチングし、最終工程としてマイクロ流体構造の内壁を低圧化学気相堆積(LCPVD)によってSiRNで形成することにより製造される。
2)センサ構造および側壁ヒータのインターフェースは、まずRIEを通じて側壁ヒータまでの開口をエッチングし、その直後にTaおよびPtでスパッタリングし、これをイオンビームエッチングを通じてパターニングすることにより製造される。その後、SiNxのキャップ層がプラズマ援用化学気相堆積を通じて堆積され、RIEでパターニングされる。
3)最終工程として、デバイス層およびハンドル層のシリコンをXeFでエッチング除去する多段階アプローチを通じて、マイクロチャネルが吊り下げられる。
【0069】
本発明に係る方法は、バネまたはサスペンション構造の作成も可能にする。第1の実施の形態において、デバイス層内のチャネル構造または固体シリコンが用いられてもよく、これらはトレンチにより画定されるため、蛇行するバネといった任意の所望の形状を作成できる。第2の選択肢は、500nm厚のTEOSの薄い膜を用いることであり、これは、その下の全てのシリコンをXeFでエッチングすることにより、スリットハードマスクとして、バネまたはサスペンションとして機能する。結論として、本発明に係る方法を用いることで、二酸化シリコンよりもシリコンに対するXeFの選択性が高いため、屈曲およびサスペンションのための所望の形状およびサイズを自由に設計することが可能になる。
【0070】
一般に、本発明に係るチャネルについて多くの応用が可能である、本発明により得られるチャネルは、比較的大きな断面積および高い精度を有するように作成されてもよく、これは流体力学(境界層、層流/乱流、流れの発達)の観点で有利である。
【0071】
具体的な用途の一つは、チップ上でガス混合物を燃焼し、断熱火炎温度を測定するための小さなサイズの燃焼炉の製造であってもよい。マイクロコリオリセンサを追加で組み込むことで、任意のガス混合物のウォッベ指数の決定が可能となる。特に、自由に吊り下げられたチャネルを用いる場合、周囲への熱加熱損失を最小化し、燃焼から発生する熱よりも小さくすることができる。一般に、より大きな断面積を有する大きなチャネルが形成されてもよく、これは断熱火炎温度を得るための連続的な火炎伝搬を維持するのに有利である。ラジカルクエンチングを克服するため、チャネル内壁材料は、ラジカルの吸収およびラジカルの励起を生じさせるさらなる再結合を避けるため、化学的に不活性な物質で構成されてもよい。
【0072】
熱的な絶縁を提供するため、燃焼炉の下方および側方に比較的大きな空洞がさらに設けられてもよい。下方の空洞は、例えば最大で400μm、例えば200-400μm、例えば300-400μmの高さを有してもよい。側方の空洞は、最大で400μm、例えば200-400μm、例えば300-400μmの幅を(それぞれ)有してもよい。
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