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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】熱機関
(51)【国際特許分類】
   F01K 7/36 20060101AFI20230119BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20230119BHJP
   F01D 17/08 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
F01K7/36
F01D17/00 N
F01D17/00 V
F01D17/08 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020522705
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018078376
(87)【国際公開番号】W WO2019081296
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】1717675.1
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510232430
【氏名又は名称】スピラックス‐サルコ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ザハー,オバダ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジェレミー
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0269503(US,A1)
【文献】実開昭61-122301(JP,U)
【文献】特開平06-081611(JP,A)
【文献】中国実用新案第203097963(CN,U)
【文献】特開2012-077704(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104110273(CN,A)
【文献】特開昭56-132412(JP,A)
【文献】特表2011-511209(JP,A)
【文献】米国特許第03401277(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/00-25/14
F01K 21/00
F01K 7/36
F01C 1/00- 7/00
F01C 20/00-20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源から作動流体に熱を伝達する熱交換器と、
前記熱交換器から入口作動流体を受け取って、膨張した前記作動流体を多相流体として排出して、膨張した前記作動流体および前記入口作動流体の間に、前記入口作動流体の入口乾燥度の関数である全体的な体積膨張比が存在するように構成された容積型膨張器と、
前記熱交換器および前記容積型膨張器の間に配置されるとともに、前記作動流体に可変圧力降下を生じさせて、前記入口乾燥度を変化させるように構成されている可変膨張弁と、
前記作動流体への、または前記作動流体からの可変の熱伝達を補償するように前記可変膨張弁を制御することによって、前記全体的な体積膨張比を維持するように構成された制御部と、を有する熱機関。
【請求項2】
前記制御部は、前記全体的な体積膨張比に関する動作パラメータを監視するように構成され、前記制御部は、監視された前記動作パラメータに基づいて、前記可変膨張弁を制御するように構成されている、請求項1に記載の熱機関。
【請求項3】
前記動作パラメータは、
前記熱源の熱力学的特性、
前記熱源の流量、
前記熱機関の前記作動流体から熱が伝達される冷却流の熱力学的特性、
前記冷却流の流量、
前記作動流体の温度、圧力または相組成のような、前記熱機関の監視位置における前記作動流体の熱力学的特性、
前記作動流体の質量流量、
前記熱機関のポンプの環境設定、
前記容積型膨張器への前記作動流体の前記入口乾燥度、
前記容積型膨張器の回転速度に関する回転速度パラメータからなる群から選択される、請求項2に記載の熱機関。
【請求項4】
前記制御部は、1つ以上の監視された前記動作パラメータに基づいて、データベースまたはモデルを参照することによって、前記可変膨張弁の弁設定を決定するように構成されている、請求項2または3に記載の熱機関。
【請求項5】
前記制御部は、それぞれのセンサを使用して少なくとも2つの前記動作パラメータの値を決定するように構成され、
前記制御部は、少なくとも2つの前記動作パラメータによって相関付けられた前記弁設定を含むデータベースを参照することによって、または前記熱機関のモデルを評価することによって、前記可変膨張弁の前記弁設定を決定するように構成される、請求項4に記載の熱機関。
【請求項6】
前記制御部は、監視された前記動作パラメータに基づいて、前記熱機関のポンプを動作させるための循環設定を決定するように構成されている、請求項2~5のいずれか1項に記載の熱機関。
【請求項7】
前記制御部は、前記容積型膨張器の前記全体的な体積膨張比を決定し、所定の最適範囲内に前記全体的な体積膨張比を維持するように、前記可変膨張弁を制御するように構成されている、請求項2~6のいずれか1項に記載の熱機関。
【請求項8】
前記制御部は、前記容積型膨張器からの体積流量に基づいて前記全体的な体積膨張比を決定するように構成され、
前記制御部は、前記容積型膨張器の回転速度パラメータを監視するように構成され、
前記制御部は、前記容積型膨張器の前記回転速度パラメータの関数として、前記容積型膨張器からの前記体積流量を決定するように構成される、請求項7に記載の熱機関。
【請求項9】
使用時に、前記熱交換器を出る前記作動流体が飽和温度の単相液体、またはサブクールの単相液体になるように構成されている、請求項7または8に記載の熱機関。
【請求項10】
前記制御部は、前記可変膨張弁の上流の前記作動流体の熱力学的特性、および前記可変膨張弁の弁設定に基づいて、前記可変膨張弁の下流の前記入口作動流体の乾燥度を決定するように構成され、
前記制御部は、前記入口作動流体の前記乾燥度に基づいて、前記容積型膨張器への体積流量を決定するように構成されている、請求項7~9のいずれか1項に記載の熱機関。
【請求項11】
前記制御部は、前記熱源の温度または前記熱交換器における前記作動流体の温度に関する温度パラメータに基づいて、ポンプの環境設定を制御するように構成されることによって、前記熱交換器における前記作動流体の飽和温度は、前記熱交換器における前記作動流体の最高温度以上になり、
使用中において、前記熱交換器を出る前記作動流体は、前記飽和温度における単相液体またはサブクールの単相液体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱機関。
【請求項12】
前記容積型膨張器は、組み込み体積比を備えるスクリュー式の膨張器であって、
前記制御部は、前記全体的な体積膨張比を、前記組み込み体積比に対応する最適範囲内に維持するように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱機関。
【請求項13】
熱源から作動流体に熱を伝達する熱交換器と、
前記熱交換器から入口作動流体を受け取って、膨張した前記作動流体を多相流体として排出して、膨張した前記作動流体および前記入口作動流体の間に、前記入口作動流体の入口乾燥度の関数である全体的な体積膨張比が存在するように構成された容積型膨張器と、を有する熱機関の制御方法であって、
前記熱交換器および前記容積型膨張器の間に配置される可変膨張弁を制御して、前記作動流体に可変圧力降下を生じさせて、前記入口乾燥度を変化させて、
前記作動流体への、または前記作動流体からの可変の熱伝達を補償するように前記可変膨張弁を制御することによって、前記全体的な体積膨張比は維持される熱機関の制御方法。
【請求項14】
前記全体的な体積膨張比に関する動作パラメータを監視する工程と、
監視された前記動作パラメータに基づいて前記可変膨張弁を制御する工程と、を有する、請求項13に記載の制御方法。
【請求項15】
前記容積型膨張器の前記全体的な体積膨張比を決定する工程と、
所定の最適範囲内に前記全体的な体積膨張比を維持するように、前記可変膨張弁を制御する工程と、
使用時に、前記熱交換器を出る前記作動流体が飽和温度の単相液体、またはサブクールの単相液体になるように前記熱機関の動作を制御する工程と、を有する、請求項13または14に記載の制御方法。
【請求項16】
前記熱源の温度または前記熱交換器における前記作動流体の温度に関する温度パラメータを監視する工程と、
前記温度パラメータに基づいて、前記熱交換器における前記作動流体の飽和温度は、前記熱交換器における前記作動流体の最高温度以上になるように、ポンプの環境設定を制御する工程と、を有し、
前記熱交換器を出る前記作動流体は、前記飽和温度における単相液体またはサブクールの単相液体である、請求項13~15のいずれか1項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積型膨張器を備える熱機関に関する。
【背景技術】
【0002】
熱機関は、熱から力を生成するよく知られた熱力学システムであって、一般的には、熱機関は、一次熱交換器、膨張器、凝縮器、および閉回路で作動流体を運ぶ圧縮機(またはポンプ)を有する。
【0003】
熱機関は、一般的に、作動流体がタービンを介して膨張するときに、動力源を生成するために、膨張タービンを使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容積型膨張器は、従来のタービンよりも高いピーク運転効率を有する可能性のある代替タイプの膨張器として提案されてきた。容積型膨張器の特定の型は、スクリュー式の膨張器である。容積型膨張器を備える熱機関は、膨張機が二相(すなわち、液体および気体)である作動流体を受け取り、膨張した二相の作動流体を放出することが提案されている。このような熱機関では、最適な膨張効率が達成され、膨張器の全体的な体積膨張比は、膨張器の幾何学的膨張比と実質的に一致する。
【0005】
当該技術分野において知られているように、幾何学的膨張比は、容積型膨張器のチャンバーの容積比に関連している。当該技術分野では、この比は、組み込み体積比(BIVR)と呼ばれることがあり、この用語は本明細書全体で使用されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、熱源から作動流体に熱を伝達する熱交換器と、前記熱交換器から入口作動流体を受け取って、膨張した作動流体を多相流体として排出して、膨張した前記作動流体および前記入口作動流体の間に、前記入口作動流体の入口の乾燥度の関数である全体的な体積膨張比が存在するように構成された容積型膨張器と、前記熱交換器および前記容積型膨張器の間に配置されるとともに、前記作動流体に可変圧力降下を生じさせて、前記入口乾燥度を変化させるように構成されている可変膨張弁と、前記作動流体への、または前記作動流体からの可変の熱伝達を補償するように前記可変膨張弁を制御することによって、前記全体的な体積膨張比を維持するように構成された制御部と、を有する熱機関が提供される。
【0007】
全体的な体積膨張比は、作動流体の熱力学的特性の関数であって、この関数は、特に、入口作動流体の入口乾燥度を含みうる(これに限定されない)。
【0008】
全体的な体積膨張比は、複数の熱力学的特性の関数であってもよく、例えば、入口作動流体の入口乾燥度、入口作動流体の圧力、膨張器からの出口における作動流体の圧力、および熱機関における作動流体の質量流量を含みうる。
【0009】
制御部は、全体的な体積膨張比を、膨張器の組み込み体積比に対応する最適範囲内に維持するように構成されうる。
【0010】
制御部は、全体的な体積膨張比に関する動作パラメータを監視するように構成されうる。制御部は、監視された動作パラメータに基づいて弁を制御するように構成されうる。
【0011】
動作パラメータは、熱源の熱力学的特性、熱源の流量、熱機関内の作動流体から熱が伝達される冷却流の熱力学的特性、冷却流の流量、作動流体の温度、圧力または相組成などの、熱機関の監視位置における作動流体の熱力学的特性、作動流体の質量流量、熱機関のポンプの循環設定、二相膨張器への作動流体の入口乾燥、膨張器の回転速度に関する回転速度パラメータからなる群から選択されうる。
【0012】
流体の熱力学的特性は、流体の温度、圧力、または相組成でありうる。
【0013】
制御部は、監視された動作パラメータまたはそれぞれの動作パラメータに基づくデータベースまたはモデルを参照して、弁の設定を決定するように構成されうる。
【0014】
制御部は、データベースまたはモデルを含みうる。制御部は、データベースまたはモデルを含む非一時的な機械可読媒体、およびプロセッサによって実行されたときに、制御部にデータベースまたはモデルにアクセスさせて弁設定(および/またはポンプを動作させるための循環設定)を決定させる命令を含むことができる。制御部は、プロセッサを含みうる。データベースまたはモデルは、圧縮機から離れている場合がある。制御部は、プロセッサによって実行されたときに、制御部に遠隔データベースまたはモデルにアクセスさせて、弁設定(および/または作動ポンプの循環設定)を決定させる命令を含むことができる。
【0015】
制御部は、それぞれのセンサを用いて、少なくとも2つの動作パラメータの値を決定するように構成されうる。制御部は、少なくとも2つの動作パラメータによって関連付けられた弁設定を含むデータベースを参照することによって、または熱機関のモデルを参照することによって、弁の設定を決定するように構成されうる。
【0016】
制御部は、監視された動作パラメータに基づいて、熱機関の弁を動作させるための循環設定を決定するように構成されうる。制御部は、データベースまたはモデルを参照することによって、ポンプを動作させるための循環設定を決定するように構成されうる。
【0017】
制御部は、膨張器の全体的な体積膨張比を決定するとともに、所定の最適範囲内に全体的な体積膨張比を維持するように弁を制御するように構成される。
【0018】
制御部は、膨張器から出る体積流量に部分的に基づいて、全体的な体積膨張比を決定するように構成されうる。制御部は、膨張器の回転速度パラメータを監視するように構成されうる。制御部は、膨張器の回転速度パラメータの関数として、膨張器から出る体積流量を決定するように構成されうる。
【0019】
熱機関は、使用時に熱交換器を出る作動流体が飽和温度の単相液体、またはサブクールの単相液体であるように構成されうる。
【0020】
制御部は、弁の上流の作動流体の熱力学的特性、および制御弁の設定に基づいて、弁の下流の入口作動流体の乾燥度を決定するように構成されうる。制御部は、入口作動流体の乾燥度に基づいて、膨張器への体積流量を決定するように構成されうる。
【0021】
制御部は、熱源の温度または熱交換器における作動流体の温度に関する温度パラメータに基づいて、ポンプの環境設定を制御して、熱交換器での作動流体の飽和温度が熱交換器での作動流体の最大温度以上になるように、使用中、熱交換器を出る作動流体は、飽和温度の単相液体またはサブクールの単相液体であるように、構成される。
【0022】
膨張器は、組み込み体積比を有するスクリュー式の膨張器でありうる。制御部は、全体的な体積膨張比を組み込み体積比に対応する最適範囲内に維持するように構成されうる。全体的な体積膨張比の最適な範囲は、BIVR±5、またはBIVR±2、BIVR±1、BIVR±0.5などのより近い範囲である。
【0023】
第2の態様によれば、熱機関を制御する方法が開示される。熱機関は、熱源から作動流体に熱を伝達するための熱交換器と、前記熱交換器から入口作動流体を受け取り、膨張した作動流体を多相流体として排出して、膨張した前記作動流体と前記入口作動流体との間には、入口作動流体の入口乾燥度の関数である全体的な体積膨張比が存在するように構成された容積型膨張器と、を有する。この方法は、熱交換器および膨張器の間に配置された可変膨張弁を制御して、作動流体に可変圧力降下を導入して、入口乾燥度を変化させるステップを有し、全体的な体積膨張比は、作動流体へのまたは作動流体からの変動する熱伝達を補償するように弁を制御することによって維持される。
【0024】
熱機関は、第1の態様に従ってもよい。
【0025】
この方法は、全体的な体積膨張比に関する動作パラメータを監視する工程と、監視された前記動作パラメータに基づいて弁を制御する工程と、を含みうる。
【0026】
この方法は、監視されたまたは各監視された動作パラメータに基づいて、データベースまたはモデルを参照することにより、弁の設定を決定する工程を含みうる。
【0027】
この方法は、それぞれのセンサを使用して少なくとも2つの動作パラメータの値を決定する工程、および少なくとも2つの動作パラメータによって関連付けられた弁設定を含むデータベースを参照することによって、弁の設定を決定する工程、または熱機関のモデルを評価して、弁の設定を決定する工程を含みうる。
【0028】
この方法は、監視された動作パラメータに基づいて、熱機関のポンプを動作させるための環境設定を決定する工程を含みうる。
【0029】
この方法は、膨張器の全体的な体積膨張比を決定する工程と、所定の最適範囲内に全体的な体積膨張比を維持するように弁を制御する工程と、を含みうる。
【0030】
この方法は、膨張器の回転速度パラメータを監視する工程と、膨張器の回転速度パラメータの関数として膨張器から出る体積流量を決定する工程と、膨張器から出る体積流量に部分的に基づいて、全体的な体積膨張比を決定する工程と、含みうる。
【0031】
この方法は、使用中に熱交換器を出る作動流体が飽和温度の単相液体、またはサブクールの単相液体になるように、熱機関の動作を制御する工程を含みうる。
【0032】
この方法は、弁の上流の作動流体の熱力学的特性、および制御弁の設定に基づいて、弁の下流の入口作動流体の乾燥度を決定する工程と、入口作動流体の乾燥度に基づいて、膨張器への体積流量を決定する工程と、を含みうる。
【0033】
この方法は、熱交換器における作動流体の温度の熱源の温度に関する温度パラメータを監視する工程と、熱交換器での作動流体の飽和温度が熱交換器での作動流体の最高温度以上になるように、温度パラメータに基づいてポンプの循環設定を制御する工程と、を含み、熱交換器を出る作動流体は、飽和温度の単相液体またはサブクールの単相液体でありうる。
【0034】
膨張器は、組み込み体積比を有するスクリュー式の膨張器であって、弁は、組み込み体積比に対応する最適範囲内に全体的な体積膨張比を維持するように制御されうる。
【0035】
本発明は、相互に排他的であるような特徴の組み合わせを除いて、本明細書で言及される特徴および/または制限の任意の組み合わせを含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、例として説明される。
図1】熱機関の一例を示す図である。
図2図1の熱機関を介する調整されていない熱サイクルの圧力-体積プロットを示す図であって、膨張器の不足膨張が存在している。
図3】膨張器の上流の等エンタルピー膨張が制御された、図1の熱機関を介して調整された熱サイクルの圧力-体積プロットを示す図である。
図4】体積膨張比を直接的および間接的に維持するための、弁の監視の方法を示すフローチャートである。
図5】体積膨張比を直接的および間接的に維持するための、制御の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、熱源からの熱エネルギーを機械的エネルギーに変換するための熱機関10を示す。本実施例では、熱源100は廃熱源であって、特に、蒸気システムからの復水排出物100である。熱機関10は、一次熱交換器12、制御弁14である可変膨張弁、二相容積型膨張器16、凝縮器18、およびポンプ20(圧縮機でもよい)を含む作動回路を備える。本実施例では、各構成要素は、作動流体の輸送の方向に関して、上記の順序で回路の周りに直列に配置されている。作動流体は、水または冷媒(例えば、R245fa)などの任意の適切な流体でありうる。本実施例では、二相容積型膨張器16は、スクリュー式の膨張器である。
【0038】
本実施例では、発電機22は、膨張器16からの機械的動力を電力に変換するために二相膨張器16に結合される。
【0039】
熱機関10は、以下で詳細に説明されるように、可変膨張弁14を制御するように構成された制御部30をさらに有する。
【0040】
本実施例では、制御部30はまた、ポンプ20の動作を制御するようにポンプ20に結合され、膨張器16の回転センサに結合され、以下で説明するように、膨張器の回転特性を監視する。しかしながら、他の例では、弁を制御すること、ポンプ20を制御すること、および膨張器の回転特性を監視することのために、別個の制御部が設けられてもよい。
【0041】
図1に示される熱機関10は、一次熱交換器12の熱源側が廃熱源100を受け入れるように、例示的なプラントに設置され、使用中において、熱は廃熱源100から一次熱交換器のヒートシンク側の作動流体に伝達される。
【0042】
同様に、凝縮器18は、凝縮器のヒートシンク側で冷却流102を受けるように配置されているため、使用中において、凝縮器18の熱源側の作動流体から冷却流102に熱が伝達される。冷却流は、例えば、冷水でありうる。
【0043】
本実施例では、作動流体の熱力学的特性を監視するために、作動回路の周りの監視位置に、センサが配置されている。監視位置は、本開示において、作動流体の局所的な状態を参照することによって言及される。センサは、以下の場所に存在する熱機関10の構成要素間の流体ラインに提供される。すなわち、一次熱交換器12および制御弁14の間の加熱位置A(すなわち、一次熱交換器12での作動流体の加熱後)、制御弁14および二相膨脹器16の間の調整位置B(すなわち、制御弁での調整後)、二相膨張器16および凝縮器18の間の膨張位置C(すなわち、膨張器16による膨張後)、凝縮器18およびポンプ20の間の凝縮位置D(すなわち、凝縮器18での作動流体の冷却後)、ポンプ20および一次熱交換器12の間の圧縮位置E(すなわち、ポンプ20による圧縮後)の位置である。
【0044】
本実施例では、温度および圧力センサが各監視位置に提供されている。質量流量を監視するように構成された流量計、および作動流体の品質(すなわち、乾燥度)を監視するように構成された位相センサは、制御弁14および膨張器16の間の調整位置B、および膨張器16および凝縮器18の間の膨張位置Cに設けられる。
【0045】
制御部30は、各センサからの出力信号を受信するために、監視位置A~Eにおいて、各センサに結合されている。
【0046】
本実施例では、廃熱源100および冷却流102の特性をそれぞれ監視するために、監視位置F、Gにも、センサが設けられている。各監視位置F、Gには、温度センサ、圧力センサ、および質量流量センサがあり、それらのセンサもまた、制御部30に結合されている。
【0047】
作動回路の周りの3つの例示的な調整されていない熱サイクルの最初のセットを、図2を参照して説明する。図2は、3つのそれぞれの熱サイクルに対する作動回路の周りの作動流体の圧力-体積プロットを示す。本実施例の最初のセットでは、制御弁14は、完全に開いているため、制御弁で作動流体の調整は行われず、これらの形態は、「調整されていない熱サイクル」と称する。上記の位置A~Eは、図1に示される位置との相互参照のため、図2のプロットにマークされている。
【0048】
これらの特定の例では、廃熱源の温度は、それぞれ、80℃、85℃、90℃(摂氏)であって、廃熱源100の質量流量は、15℃の各例の間で一定のままである。したがって、熱源および冷却流の温度差は、それぞれの例で異なる。この温度差は、熱機関の熱出力と称される。上記の内容からわかるように、廃熱源100から熱機関10に伝達される熱エネルギーは、熱源の温度の関数である。作動回路の周りの作動流体の質量流量は、作動流体への、または作動流体からの熱伝達の変動に対応するように変化させることができる。
【0049】
これらの例では、一次熱交換器12を出る作動流体の温度(すなわち、加熱位置A)は、廃熱源100の温度よりも約5℃低く、凝縮器18における作動流体の温度(すなわち、膨張位置Cおよび凝縮位置D)における作動流体の温度は、冷却流102の温度よりも約5℃高い。
【0050】
これらの例では、一次熱交換器12および凝縮器18における作動流体の圧力は、廃熱源100の温度および冷却流102の温度にそれぞれ関連するように、熱機関10は、作動するように構成および制御される。
【0051】
作動流体は、膨張器16を出て、二相流体として凝縮器18に入るため、本質的に飽和温度にある。凝縮器での作動流体の圧力は、凝縮器を通る作動流体の温度によって決定される。これは次に、冷却流102の温度に関連する。これらの例において、凝縮器18は、作動流体の気相を凝縮するための等温熱伝達のために構成および操作され、凝縮器を通る作動流体の温度は、(上述のように)冷却流102の温度より約5℃高く、すなわち、約20℃である。20℃の飽和温度は、1.32barの作動流体の圧力に対応する(作動流体がR245faの場合)。
【0052】
したがって、凝縮器の出口にサブクールはなく、熱機関の最適以下の性能をもたらす不必要な冷却になる。
【0053】
さらに、熱交換器(凝縮器を含む)は、(i)相変化のための等温熱伝達、または(ii)作動流体の温度変化のための熱伝達(ここでは比熱と称される)のいずれかに構成されていると、より効率的に動作する。
【0054】
したがって、相変化のための熱伝達のみが(特定の加熱ではなく)凝縮器で生じるように熱機関10を構成および制御することは、そのタイプの熱伝達に最適化されたより効率的な凝縮器が設置されうることを意味する。
【0055】
これらの例示的な熱サイクルでは、熱機関10は加熱位置A(すなわち、一次熱交換器12からの出力として)の作動流体が、高温の廃棄物供給源100の温度より約5℃低い飽和温度で低い乾燥率で部分的に蒸発するように動作するように構成および制御される。これらの特定の熱サイクルでは、乾燥率は0.11である。
【0056】
例えば、廃熱源温度が80℃の熱サイクルでは、加熱位置Aの作動流体の温度は約75℃である。8.11barの圧力は75℃の飽和温度に対応する。制御部30は、圧縮位置Eでの圧力が8.11barになるように、ポンプ20を作動させて、一次熱交換器12での加熱によって、飽和温度75℃で、0.11の乾燥率まで部分的に蒸発させうる。
【0057】
これらの特定の例では、ポンプ20は、遠心ポンプなどの可変速度ポンプであって、ポンプ速度(または動力)を変化させて、上述のように加熱位置Aで下流圧力を目標とするように制御される。これらの例では、ポンプは制御部30によって制御されるが、他の例では、別のポンプ用の制御部を有していてもよい。
【0058】
各例の熱サイクルでは、作動流体は、一次熱交換器12から二相膨張器16に流れ、そこで膨張して、膨張器16において熱エネルギーを機械エネルギーに変換する。機械エネルギーは、次に、発電機22によって電気エネルギーに変換される。
【0059】
図2に示すように、作動流体が二相膨張器16で連続的に(すなわち、滑らかに)膨張するにつれて、圧力は低下する。しかしながら、各実施例において、作動流体は、膨張器内にある間、不足膨張であって、このため、膨張器からの放出時に、不連続な(すなわち、急激な)等エンタルピー膨張の放出段階が存在する。このような不連続な膨張は、膨張器の下流チャンバーが膨張器16および凝縮器18の間の流体ラインと流体連通するように配置されるときに起こりうる。
【0060】
これらの各例では、膨張器全体の全体的な体積膨張比が機械のBIVRよりも大きいため、不足膨張が発生する。全体的な体積膨張比は、膨張器の後ろの同じ流体の体積に対する、膨張器の前の流体の体積の比率である。これには、凝縮器圧力に到達するための膨張器の最後のチャンバーでの(等エンタルピーの)膨張が含まれ、これは膨張器の機械的出力に寄与せず、不足膨張を示している。
【0061】
BIVRは、例えば、膨張器の第1のチャンバーへの入口での等エンタルピー膨張の第1の膨張段階と、膨張器の最初と最後のチャンバーとの間の幾何学的体積比に対応する第2の膨張段階との積に対応し得る。当技術分野におけるBIVRという用語の使用は、場合によっては、この組み合わせではなく、純粋な幾何学的比率(すなわち、上記の第2の拡張段階)のみを指す。本開示において、用語BIVRは、拡張の第1段階が存在する範囲で、両方の段階の積を示すために使用される。これは、「見かけのBIVR」、つまり膨張器の最初と最後のチャンバーの間で明らかであるBIVRと呼ばれることもある。
【0062】
流体内のエネルギーが膨張器16によって機械的仕事に完全に変換されないため、不足膨張は最適化された膨張に関する損失を表す。
【0063】
他の例では、膨張器内に過剰膨張がある場合がある。例えば、膨張器全体の全体的な体積膨張比がBIVRよりも低い場合、過剰膨張が発生する。幾何学的特性に従って、作動流体を膨張させるように制約されているため、膨張器内で過剰膨張が発生する。簡単に言えば、膨張器を通る流れは2つの段階があると考えることができる。すなわち、膨張器が作動流体の膨張によって駆動されて機械的エネルギーを抽出するとみなすことができる膨張段階と、作動流体が膨張器の機械的エネルギーを使用する膨張器の出口圧力まで効果的に再圧縮される再圧縮段階である。最終結果では、膨張段階で抽出された機械的エネルギーの一部が、再圧縮段階を通じて作動流体を再圧縮するために使用され、損失と次善の効率をもたらす。
【0064】
不足膨張または過剰膨張のいずれかが発生すると、熱機関の効率が最適化されず、膨張器の全体的な体積膨張比およびBIVRが一致しなくなる。この特定の例では、膨張器16のBIVRは5である。
【0065】
膨張器16での(すなわち膨張位置Cでの)膨張に続いて、作動流体は、二相である。二相の作動流体は、膨張器16から凝縮器18に流れ、そこで熱が作動流体から冷却流102に伝達されて、作動流体の気相を凝縮させる。
【0066】
作動流体は、飽和温度で100%液体として、凝縮器を出る(すなわち、凝縮位置Dで)。液体の作動流体は、凝縮器からポンプ20に流れ、上述のように圧縮される。
【0067】
一定の熱条件、つまり一定の廃熱源と冷却流条件が与えられた場合、全体的な体積膨張比が膨張器のBIVRと一致するように作動する熱機関を設計して、膨張器の効率を最適化できる。しかしながら、出願人は、作動流体への、または作動流体からの熱伝達の変動が、全体的な体積膨張比のBIVRからの逸脱を引き起こし、結果として最適ではない性能をもたらすことを見出した。
【0068】
以下のさらなる開示は、作動流体へのおよび/または作動流体からの可変の熱伝達にも関わらず、全体的な体積膨張比をBIVRに一致させる方法に関する。これによって、全ての膨張が再圧縮無しで、膨張器で行われることが保証され、膨張する作動流体から最大限の仕事を引き出すことができる。
【0069】
膨張器内の膨張は、等エントロピーであると仮定することができず、膨張器のパフォーマンスおよびプロパティに依存するため、全体的な体積膨張比は計算によって決定することが困難である。
【0070】
したがって、ある範囲の異なる入口条件にわたって、全体的な膨張比をBIVRに一致させる結果となる、膨張器上の固定圧力比を単純に指定することは不可能である。
【0071】
出願人は、全体的な膨張比をBIVRに一致させる2つの主要な方法があると考えている。1つ目は、全体の膨張比を決定して、全体の膨張比がBIVRと一致するように、熱機関を制御する直接監視方法である。2つ目は、膨張器内の熱力学的特性を監視し、熱機関を制御して、これらが凝縮器の熱力学的特性と一致するようにする間接的一致方法である。
【0072】
直接監視方法では、膨張器への体積流量および膨張器からの体積流量が決定される。膨張器への体積流量は、質量流量および作動流体の品質(乾燥度)に基づいて決定され得る。質量流量は、作動回路内の流量計の出力に基づいて直接決定することができる。そうでない場合、質量流量は間接的に、例えば、質量流量とポンプの動作パラメータ(たとえば、回転速度)およびポンプでの作動流体の熱力学的特性(たとえば、ポンプへの流入時の圧力と温度)の間の所定の関係に基づいている場合がある。
【0073】
膨張器に入る作動流体の品質(乾燥度)は、例えば、膨張器の上流(例えば、調整位置B)の位相センサを使用して直接決定することができる。そうでなければ、それは、位相センサが必要とされないように、間接的に決定されてもよい。位相センサは高価で不正確な場合がある。例えば、熱機関は、作動流体が飽和温度で100%液体であるように、または一次熱交換器からの出口で(すなわち、加熱位置Aで)既知のサブクールであるように操作され得る。一次熱交換器および膨張器の間で制御弁が絞られている場合、等エンタルピー膨張による弁の品質(乾燥度)の変化は、弁の圧力降下に基づいて決定される場合がある。
【0074】
膨張器から出ると、作動流体は飽和温度で二相になる。膨張器から出る体積流量は、質量流量(例えば、上記のように決定される)および作動流体の品質(乾燥度)に基づいて決定され得る。品質(乾燥度)は、膨張器および凝縮器の間(たとえば、膨張位置C)の位相センサを使用して決定できる。
【0075】
そうでなければ、膨張器からの体積流量は、膨張器の回転速度に基づいて決定されてもよい。特に、膨張器は容積式装置であるため、回転速度と、膨張器からの体積流量との間には所定の関係がある。
【0076】
膨張器に出入りする体積流量がわかると、全体的な体積膨張比が決定され、BIVRと比較される。次に、制御部は制御弁を変更して、BIVRを全体的な体積膨張比の設定点として指定するフィードバックループで、膨張器への作動流体の熱力学的特性を変化させる。
【0077】
間接法では、熱機関を制御することにより、全体的な体積膨張比をBIVRに間接的に一致させ、膨張器の最後のチャンバーの熱力学的特性が凝縮器での作動流体の熱力学的特性と一致するようにする。これは、全体的な体積膨張比が膨張器のBIVRに一致するように、過剰膨張または不足膨張がないことを示している。
【0078】
例えば、凝縮器における圧力は、膨張位置Cまたは凝縮位置Dにおける圧力センサを使用して決定でき、膨張器の最後のチャンバーの圧力は、そのチャンバーに設置された圧力センサを使用して決定できる。制御部は、それらの間の圧力差を決定し、圧力差の設定点として零点を指定するフィードバックループ内の制御弁を変更できる。
【0079】
さらに、作動流体は二相流体として(すなわち、飽和温度で)膨張器を出るので、出口での作動流体の圧力は、凝縮器を通る作動流体の温度によって決定される。これは、冷却流の温度に関連している。ここで説明する例では、凝縮器を通る作動流体の温度は、冷却流の温度よりも5℃高くなっている。
【0080】
したがって、制御部は、凝縮器の温度(例えば、膨張位置Cまたは凝縮位置Dの温度センサを使用して決定された)とそこでの温度センサを使用して膨張器の最後のチャンバーの温度との間の温度差を決定する場合がある。制御部は、温度差の設定点として零点を指定するフィードバックループ内の制御弁を変更できる。
【0081】
しかしながら、膨張器の最後のチャンバーに圧力センサおよび温度センサを取り付けるのは困難な場合がある。したがって、上述のように、回転速度パラメータに基づいて膨張器からの体積流量を決定することが有利である場合がある。
【0082】
さらに、図3を参照して、3つの調整された熱サイクルのセットを説明する。この例では、制御部30は、制御弁14を制御して、作動流体へのまたは作動流体からの可変の熱伝達を補償することにより、全体的な体積膨張比を最適範囲内に維持するように動作する。
【0083】
全体的な体積膨張比の最適範囲は、BIVR±5、またはBIVR±2、BIVR±1、BIVR±0.5などのより近い範囲である。作動流体へのまたは作動流体からの可変の熱伝達は、廃熱源100の流れまたは冷却流102の変化、例えば、温度または質量流量の変化によって起こりうる。
【0084】
制御部30は、制御弁を操作して、一次熱交換器12と膨張器16との間(すなわち、加熱位置Aと調整位置Bとの間)の制御弁14に可変の圧力降下を導入する。
【0085】
図3は、それぞれ80℃、85℃、90℃(摂氏)の廃熱源温度に対応する、3つの調整された熱サイクルの例、および15℃の温度の冷却流102(調整されていない熱サイクルの例)の圧力-体積プロットを示している。図2と同様に、熱サイクルの周囲の位置A~Eが、相互参照用のプロットに示されている。
【0086】
ポンプ20は、調整されていない熱サイクルに関し上述したように操作され、加熱位置Aおよび膨張位置Cでの作動流体の圧力が、対応する調整されていない熱サイクルおよび調整された熱サイクル間で同じになり(つまり、85℃の調整されていない熱サイクルおよび85℃の調整された熱サイクルの間など)、それにより、作動流体への、および作動流体からの熱伝達、およびそれらの位置での作動流体の温度は、それに応じて対応する。例えば、85℃の調整された熱サイクルの例と調整されていない熱サイクルの例の両方で、加熱位置Aでの作動流体の品質(つまり、乾燥度)は0.11で、圧力は8.11barである。
【0087】
しかしながら、調整された熱サイクルでは、制御部30は弁14を制御して、一次熱交換器12および二相膨張器16の間の作動流体の流れを絞り、圧力降下(等エンタルピーであると考えられる)を生じさせる。
【0088】
例として、図3に示すように、膨張器での膨張前の85℃の調整された熱サイクルにおける作動流体の圧力は、85℃の調整されていない熱サイクルの圧力よりも低くなっている。
【0089】
例では、85℃の調整された熱サイクルで、制御弁14が32%開くように絞られており、これによって、8.11barから5.11barへの圧力降下が発生し、調整位置Bでの作動流体の品質(つまり乾燥度)が約0.26の二相膨張器に流入する。圧力降下によって飽和温度が低下し、それによって作動流体の相変化(つまりフラッシング、気化)が発生するため、品質(乾燥度)が向上する。
【0090】
乾燥度が増加すると、膨張器16への体積流量は結果として増加する。膨張器16の圧力と関連する可変性能の低下と相まって、これにより、全体の体積膨張比が(対応する調整されていない熱サイクルに対して)低下し、膨張器のBIVRと一致する。
【0091】
調整された熱サイクルの間、制御部は、制御弁14を制御して、膨張器16全体の全体的な体積膨張比を維持し、以下に述べるように、作動流体への可変する熱伝達を補償する。他の例では、全体的な体積膨張比を維持して、作動流体からの変動する熱伝達を補償することができる。
【0092】
比較例として、90℃の調整された熱サイクルでは、一次熱交換器12での85℃の調整された熱サイクルよりも作動流体への熱伝達が多い。したがって、90℃に調整された熱サイクルでは、加熱位置Aの作動流体の圧力は、加熱位置Aで0.11の同じ品質(乾燥度)を維持するため、85℃に調整された熱サイクル(8.11bar)の対応する圧力よりも高く(9.17bar)、対応して高い飽和温度になる。
【0093】
90℃に調整された熱サイクルでは、制御部は、制御弁14を制御して29%の開度に絞り、9.17barから5.17barへの圧力低下をもたらし、その結果、調整位置Bでの制御弁14の下流の品質(乾燥度)は、0.3になる(85℃の熱サイクルでの32%の開度と比較して、5.11barまでの圧力降下および調整位置Bでの品質(乾燥度)は、0.26である)。
【0094】
さらなる比較例として、80℃に調整された熱サイクルでは、制御部は、制御弁14を制御して36%の開度に絞り、弁の下流の乾燥度を0.21にする。
【0095】
調整された熱サイクルの実施例は、制御弁によって生じる圧力降下を変化させるために制御部によって監視される特定の動作パラメータを参照することなく、上記で説明されている。
【0096】
次に、そのような監視および制御の例を、図1の熱機関10に関して説明する。
【0097】
上述のように、図1の例示的な熱機関10には、廃熱源100および冷却流の特性を監視するためのセンサと共に、作業回路の周りの複数の場所で作動流体の特性を監視するためのセンサが存在する。
【0098】
しかしながら、制御部30は、それぞれのセンサから導出された限られた数のパラメータを監視することによって弁を制御するように構成されてもよい。
【0099】
したがって、図1の例示的な熱機関10におけるセンサ配置は、かなりの量の冗長性を表す。熱機関10のこのセンサの配置は、センサがどこに提供され得るかを示すために、例として開示されている。実際の実装では、提供されるセンサは少なくなる。
【0100】
制御部30は、多くの異なる方法で全体的な体積膨張比を維持するように弁14を制御するように構成され得る。以下のさらなる説明では、全体的な体積膨張比が制御手順での使用のために直接決定される最初の直接監視および制御方法、および動作パラメータが決定され、動作パラメータとの所定の関係に基づいて弁が制御される第2の間接的な監視および制御方法が説明される。
【0101】
第1の例示的な方法では、制御部30は、膨張器16の全体的な体積膨張比の関数である全体的な体積膨張比パラメータを決定するように構成される。制御部30は、膨張器への体積流量の関数である、調整位置Bの位相センサ、調整位置Bの圧力センサ、および調整位置Bの質量流量計の出力に基づいて、入力体積流量パラメータを決定する。制御部30は、エキスパンダーからの体積流量の関数である、膨張位置Cでの位相センサ、膨張位置Cでの圧力センサ、および調整位置Bでの質量流量計の出力に基づいて、出力体積流量パラメータを決定する(質量流量は、作動回路の周囲で一定である)。
【0102】
本実施例では、入力および出力の体積流量パラメータは、入力および出力の体積流量の測定値であり、全体の体積膨張比は、それらの組み合わせによって直接決定できる。他の変形例では、入力および出力の体積流量パラメータは実際の体積流量である必要はないが、それぞれの体積流量の関数であるパラメータである可能性があり、例えば、体積流量に比例するか、そうでなければ、それらの組み合わせが、膨張器全体の全体的な体積膨張比の関数である全体的な体積膨張比パラメータを提供できるように関連する。
【0103】
制御部30は、膨張器のBIVRに対応する全体的な体積膨張比パラメータの設定点を目標とする制御ループ内の制御弁14の弁設定を変化させる。
【0104】
この第1の例の変形例では、制御部は、調整位置Bおよび膨張位置Cの一方または両方で位相センサを使用することなく、体積流量パラメータを決定することができる。例えば、上述のように、膨張器からの体積流量は、回転速度パラメータと、膨張位置Cでの作動流体の圧力および温度とに基づいて決定され得る。さらに、一次熱交換器からの作動流体が100%液体であるように熱機関が構成および制御される場合、膨張器への体積流量は、制御弁の弁設定に関連するパラメータと下流の位相比率との間の所定の関係に基づいて決定され得る。パラメータは、たとえば、圧力降下(圧力センサによって測定される)または弁設定自体であってもよい。
【0105】
図4は、上述の例示的な方法40のフローチャートを示している。ブロック42では、一次熱交換器からの作動流体が100%液体になるように熱機関が運転される。ブロック44では、入口作動流体の入口乾燥度は、弁における膨張に基づいて(すなわち、弁の上流の作動流体の熱力学的特性に基づいて、および弁の弁設定に基づいて)決定される。ブロック46では、膨張器の回転パラメータが監視される。ブロック48では、膨張器への体積流量を決定することにより、および上記のように膨張器から出る体積流量を決定することにより、上記のように全体的な体積膨張比が決定される。ブロック50では、ブロック48で決定された全体的な体積膨張比に基づいて、膨張器のBIVRに対応する最適範囲に体積膨張比を維持するように弁が制御される。
【0106】
したがって、上記のこの第1の例(および上記で示した変形例)では、制御部30は、維持されるべき量(すなわち、全体的な体積膨張比)を直接監視して、これをフィードバックループで利用して、制御弁14の弁設定を設定する。
【0107】
熱機関の動作構成によって相関付けられた、BIVRおよび全体的な体積膨張比の間のマッチングに対応する弁設定のデータベースが生成されてもよい。そのようなデータベースは、熱機関10の複数の異なる動作構成で熱機関10を動作させ、上述のように適切な弁設定を決定することにより、経験的に生成され得る。それ以外の場合、このようなデータベースは、膨張器のパフォーマンスがシミュレーションされる熱機関の代表的な熱モデルを使用して(たとえば、計算流体力学(CFD)などの熱力学的シミュレーションを使用して)生成され、適切な弁設定が上述のようにそれぞれの動作構成に対して決定されるが、物理的な操作ではなくシミュレーションに基づいている。
【0108】
熱機関10の動作構成は、熱サイクルを決定する一組の動作パラメータである。動作パラメータは、熱機関の熱サイクルの動作に影響を与える、熱機関の外部の熱条件に関連する外部動作パラメータを含み得る。外部動作パラメータは、熱源の温度、熱源の質量流量、冷却流の温度、冷却流の質量流量、熱源組成物(例:水または他の材料)、冷却流の構成(例:水または別の材料)を含みうる。
【0109】
動作パラメータには、熱機関の熱サイクルの動作に影響を与える内部動作パラメータが含まれる場合がある。内部動作パラメータは、作動流体の組成、ポンプが一次熱交換器の圧力を制御して一次熱交換器の出口で作動流体の相組成に影響を与える方法を決定するポンプ制御パラメータ(たとえば、飽和で100%液体、所定のサブクールで100%液体、または特定または不特定の乾燥度の二相流体)を含みうる。
【0110】
動作パラメータは、直接変化するように制御されないが、他の要因に応じて変化し、熱サイクルの動作を示す受動的動作パラメータも含み得る。受動的動作パラメータは、作業回路内の監視された場所での圧力、温度、相組成、作動流体の質量流量、ポンプの循環設定(以下で説明)、膨張器の回転速度パラメータを含みうる。
【0111】
理解されるように、上記の動作パラメータの異なる順列に関連する多くの異なる動作構成があり得る。実際には、限られた数の動作パラメータは、特定のタイプの熱機関で変化すると考えられ、弁の設定が決定され(経験的またはシミュレーションによって)、妥当なサイズのデータベースに入力される。例えば、特定の設備では、冷却流は温度のみで変化し、質量流量では変化せず、限られた範囲で変化することが予想される。
【0112】
そうでなければ、モデルは、例えば、上記のように生成された経験的またはシミュレートされたデータに基づいて生成されてもよく、それによって、適切な弁設定が多くの動作パラメータの関数として決定されてもよい。モデルは、弁設定および動作パラメータの間の簡略化された関係を含み、全体的な体積膨張比の最適範囲(たとえば、BIVR±5、またはBIVR±2、BIVR±1またはBIVR±0.5などのより近い範囲)に対応する弁設定の推定を提供する。
【0113】
同様に、データベースまたはモデルには、ポンプを制御するために導出された循環設定が含まれる場合がある。例えば、上述のように、ポンプを出る位置(すなわち、圧縮位置E)で、作動流体の圧力は、熱源から作動流体への熱伝達の変化に従って変化し得る。例えば、循環設定は、圧縮位置Eでのピーク圧力であり、ポンプは、圧縮位置Eまたは加熱位置Aの圧力センサからのフィードバックループを使用して、目標圧力に基づいて動作する。他の例では、循環設定は、経験的にまたは熱モデルを使用して、適切な加圧をもたらすように決定されるポンプ20の回転速度であってもよい。さらに別の例では、循環設定は目標質量流量であってもよく、ポンプ20は、作業回路内の任意の位置にある質量流量計からのフィードバックループを備えた目標質量流量に基づいて動作されてもよい。
【0114】
上記のようなデータベースまたはモデルは、データベースの入力データを収集するのに十分なセンサを組み込んだ熱機関のベースライン構成を使用して、またはそのような熱機関のベースラインシミュレーションを使用して生成することができる。「ベースライン」という用語は、最初の熱機関(物理的またはシミュレートされたもの)と、間接監視および制御方法を使用して、データベースまたはモデルを参照することで操作できる同様の構成を持つ他の熱機関を区別するために使用される。
【0115】
この2番目の例では、体積膨張率は直接決定されないが、熱機関の1つ以上の動作パラメータを監視し、弁を制御して対応する熱伝達の変動を補償し、前述のデータベースまたはモデルを参照して全体的な体積膨張率を維持することで、体積膨張率が維持される。
【0116】
上記で説明したように、全体的な体積膨張比に影響を与える多くの動作パラメータが存在する場合がある。そのような動作パラメータは、例えば、熱源および冷却流のそれぞれの質量流量および温度を含む外部動作パラメータを含みうる。
【0117】
ただし、熱機関の構成に依存して、これらの要素の多くを一定に保つことができるため、それらを監視する必要はない。例えば、冷却流の特性は、既知であり得るか、そうでなければ、設定温度および流量で流れるように独立して制御され得る。
【0118】
したがって、極端な場合には、熱機関を設置および構成して、動作パラメータのいずれにも変動がないようにすることができる。このような熱機関では、作動流体への、または作動流体からの可変の熱伝達を補償するために制御弁を変更するための動作パラメータを監視および制御する必要はない。
【0119】
いくつかの例では、熱機関設備(すなわち、プラントに設置された熱機関)は、全体的な体積膨張比に影響を与える1つの動作パラメータのみ、例えば冷却流102の温度を変えることができるように構成され得る。体積膨張比を維持するための適切な弁設定は、1つの動作パラメータに基づいてのみ可変であるため、そのような熱機関は1つの自由度を持っていると説明できる。したがって、そのような熱機関の間接的な監視および制御方法は、そのパラメータによって関連付けられた弁設定を含むルックアップテーブルを使用して、それぞれの動作パラメータに基づいて弁設定をルックアップすることができる。
【0120】
例えば、動作パラメータは、冷却流自体の温度であってもよい(これは、上で説明したように外部動作パラメータである)。そうでない場合、動作パラメータは、冷却流の温度に関連する受動的動作パラメータ、例えば、凝縮器での作動流体の温度、または凝縮器での作動流体の圧力(たとえば、膨張位置Cまたは凝縮位置D)である場合がある。
【0121】
同じ原理が、全体的な体積膨張比に影響を与える複数の動作パラメータを変化させることが許可されている熱機関設備にも当てはまる。例えば、そのような2つの動作パラメータが変化することが許容される熱機関設備は、2つの自由度を有すると説明することができる。
【0122】
例として、図1の熱機関10を参照して、間接的な監視および制御方法を以下に説明する。ここで、変化することが許容される唯一の動作パラメータは、冷却流102の温度である。
【0123】
この例では、熱機関の内部動作パラメータは、一次熱交換器での圧力が、一次熱交換器からの出口の作動流体が2℃のサブクールで100%液体になるように、ポンプが制御されるという点で、上記の例と異なる。この例では、廃熱源100の温度は85℃に固定されており、一次熱交換器の出口での作動流体の温度は、4℃低い81℃になっている。したがって、2℃のサブクールは、83℃の飽和温度に対応する。これは、8.09barの一次熱交換器12の圧力に対応する。したがって、ポンプ20は、8.09barの圧縮位置E(または加熱位置A)で下流圧力を目標とするように制御される。
【0124】
この例では、制御部30は、冷却流の温度に関連する監視位置G(すなわち、冷却流102内)の温度センサから出力される冷却流温度パラメータを監視する。この例では、冷却流温度パラメータは監視温度である。しかしながら、上記のように、他の例では、冷却流温度パラメータは、冷却流の実際の温度ではなく、温度の関数である場合がある。例えば、冷却流温度パラメータは、温度に比例する(例えば、mVの単位での)温度センサの較正されていない出力でありうる。
【0125】
制御部30は、例えば10秒間隔で、定期的に冷却流温度パラメータを監視する。例えば、時間間隔i1では、冷却流の温度は15℃である。この例では、これは、約20℃の凝縮器での作動流体の(監視されていない)温度と1.18barの圧力に対応する。制御部30は、冷却流温度パラメータによって関連付けられた弁設定のデータベースを参照して、冷却流温度パラメータに基づいて適切な弁設定を決定して、制御弁での8.09barから5.19barへの2.9barの圧力降下に対応する弁設定を返す(一部の例では、弁設定はスロットル量または目標圧力降下になる場合がある)。
【0126】
制御部30は、調整位置Bの圧力センサからの出力を監視することによって、圧力降下を実現するために制御弁14のスロットルを制御する。
【0127】
制御部30は、10秒間隔で冷却流温度パラメータを監視し続ける。この例では、さらに4つのインターバルの後(つまり、インターバルi5で)、制御部は、冷却流温度パラメータが15℃から11℃に減少したと判断する。変動により、制御部30はデータベースを参照し、8.09バールから4.6バールへの3.5バールの圧力降下に対応する新しい冷却流温度パラメータに相関する更新された弁設定を取得する。
【0128】
いくつかの例では、制御部30は、閾値変動を超えるデータベースへの以前の参照に対する監視された動作パラメータの変動を決定するとき、更新された弁設定についてデータベースまたはモデルを参照するだけでよい。
【0129】
この例では、データベースは、制御部30のメモリ(非一時的な記憶媒体)にローカルに格納される。しかしながら、他の例では、データベースはリモートで格納されてもよく、有線または無線接続を介してアクセスされてもよい。データベースには、インターネット接続などのリモート接続を介してアクセスできる。
【0130】
上記の説明は、単一の動作パラメータ(すなわち、1自由度)の変化に関するものであるが、同じ原理が、複数の自由度を有するより複雑な例にも当てはまることが理解されるだろう。
【0131】
上記の例では、ポンプは、一次熱交換器の出口での2℃のサブクールに対応する目標圧力に基づいて制御される。この例では、廃熱源100の温度は変化しないので、制御部は、監視されたパラメータに基づいてポンプの循環設定を調べない。しかしながら、他の例では、制御部は、監視された動作パラメータに基づいてポンプの制御を変化させるための循環パラメータを調べてもよい。
【0132】
図5は、上述のような間接的な監視および制御の例示的な方法50のフローチャートである。ブロック52では、冷却ガス流102の温度などの動作パラメータが監視される。ブロック54では、データベースが参照されるか、またはモデルが評価されて、少なくとも制御弁の弁設定を決定する。ブロック56では、制御弁は、弁の設定に基づいて制御され、容積膨張比を維持して、作動流体への、または作動流体からの可変の熱伝達を補償する。ブロック58では、任意選択で、例えば同じまたは異なるデータベースまたはモデルを参照することによって、ポンプの循環設定が決定される。
【0133】
上記の例では、2相膨張器はスクリュー式の膨張器である。しかしながら、本開示は、他のタイプの容積型膨張器にも適用される。
【0134】
本明細書で説明される温度の例は、全て摂氏温度である。
図1
図2
図3
図4
図5