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特許7213252新規な遷移金属化合物、それを含む触媒組成物、およびそれを用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法
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  • 特許-新規な遷移金属化合物、それを含む触媒組成物、およびそれを用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】新規な遷移金属化合物、それを含む触媒組成物、およびそれを用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 19/00 20060101AFI20230119BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20230119BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20230119BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20230119BHJP
   C07F 7/28 20060101ALN20230119BHJP
   C07F 7/08 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
C07F19/00 CSP
C08F4/6592
C08F10/00 510
C08F210/16
C07F7/28 G
C07F7/08 S
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020531827
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 IB2018054486
(87)【国際公開番号】W WO2019038605
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】10-2017-0105468
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520060977
【氏名又は名称】サビック エスケー ネクスレン カンパニー ピーティーイー. エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】SABIC SK NEXLENE COMPANY PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】ハン ヨンギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミジ
(72)【発明者】
【氏名】シム チョオンシク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ヒュンミン
(72)【発明者】
【氏名】チョン サンベイ
(72)【発明者】
【氏名】ハム ヒョン テク
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-143675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0154158(US,A1)
【文献】特開2006-232816(JP,A)
【文献】特開2004-256407(JP,A)
【文献】特開平09-087313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 19/00
C08F 4/6592
C08F 10/00
C08F 210/16
C07F 7/28
C07F 7/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される遷移金属化合物。
【化1】
(前記化学式1中、
Mは、周期表における第4族の遷移金属であり;
~Rは、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、ハロゲン、(C2-C20)アルケニル、(C3-C20)ヘテロアリール、(C3-C20)ヘテロシクロアルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であるか、前記R~Rは、隣接した置換基と、芳香族環を含むか含まない(C2-C7)アルキレンまたは(C3-C7)アルケニレンを介して連結されて縮合環を形成してもよく;
mは1または2の整数であって、mが2である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよく;
およびRは、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、(C3-C20)ヘテロアリール、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であるか、前記RおよびRは、(C4-C7)アルキレンを介して連結されて環を形成してもよく;
~R10は、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、ハロゲン、(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、ハロゲン、(C2-C20)アルケニル、(C3-C20)ヘテロアリール、(C1-C20)ヘテロシクロアルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であるか、前記R~R10は、隣接した置換基と、芳香族環を含むか含まない(C4-C7)アルケニレンを介して連結されて縮合環を形成してもよく;
11は、(C1-C20)アルキルであるか、前記R10と、芳香族環を含むか含まない(C4-C7)アルケニレンを介して連結されて縮合環を形成してもよく、前記R11のアルキルは、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C6-C12)アリール、(C1-C10)アルキル(C6-C12)アリール、(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、および-PRa5a6からなる群から選択される1つ以上でさらに置換されてもよく;
前記Ra1~Ra6は、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C6-C20)アリールであり;
前記R~RおよびR~R10のアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル、ならびに前記Ra1~Ra6のアルキルまたはアリールは、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリールオキシ、ニトロ、シアノ、-OSiRb1b2b3、-SRb4、-NRb5b6、および-PRb7b8からなる群から選択される1つ以上でさらに置換されてもよく;
前記Rb1~Rb8は、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルであり;
およびXは、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、((C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール)(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルコキシ(C6-C20)アリールオキシ、-OSiR、-SR、-NR、-PR、または(C1-C20)アルキリデンであり;
前記R~Rは、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルであり;
前記R~Rは、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、またはトリ(C6-C20)アリールシリルであり;
但し、前記XおよびXのうち1つが(C1-C20)アルキリデンである場合、他の1つは無視され;
前記ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む。)
【請求項2】
下記化学式2、化学式3、または化学式4で表される、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【化2】
【化3】
【化4】
(前記化学式2~4中、M、R、R、R、R、R10、R11、X、およびXは、請求項1の化学式1での定義のとおりであり;
R、R´、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、ハロゲン、(C2-C20)アルケニル、(C3-C20)ヘテロアリール、(C3-C20)ヘテロシクロアルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であり;
前記Ra1~Ra6は、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C6-C20)アリールであり;
前記R、R´、R、R、R、およびRのアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル、ならびに前記Ra1~Ra6のアルキルまたはアリールは、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリールオキシ、ニトロ、シアノ、-OSiRb1b2b3、-SRb4、-NRb5b6、および-PRb7b8からなる群から選択される1つ以上でさらに置換されてもよく;
前記Rb1~Rb8は、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルである。)
【請求項3】
11は(C1-C20)アルキルであり、前記R11のアルキルは、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C6-C12)アリール、(C1-C10)アルキル(C6-C12)アリール、(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、(C6-C12)アリールオキシ、(C1-C10)アルキルチオ、(C6-C12)アリールチオ、ジ(C1-C10)アルキルアミノ、ジ(C6-C12)アリールアミノ、ジ(C1-C10)アルキルホスフィン、およびジ(C6-C12)アリールホスフィンからなる群から選択される1つ以上でさらに置換されてもよいものである、請求項2に記載の遷移金属化合物。
【請求項4】
下記化学式5、化学式6、または化学式7で表される、請求項3に記載の遷移金属化合物。
【化5】
【化6】
【化7】
(前記化学式5~7中、M、X、およびXは、請求項1の化学式1での定義のとおりであり;
RおよびR´は、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、またはハロ(C1-C20)アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、または(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであり;
およびR10は、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、またはハロゲンであるか、前記RおよびR10は、
を介して連結されて縮合環を形成してもよく;
11は(C1-C20)アルキルである。)
【請求項5】
下記化合物から選択されるものである、請求項4に記載の遷移金属化合物。
(Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムである。)
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の遷移金属化合物と、
アルミニウム化合物、ホウ素化合物、またはこれらの混合物から選択される助触媒と、
を含む、エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体製造用遷移金属触媒組成物。
【請求項7】
助触媒として用いられるアルミニウム化合物は、アルキルアルミノキサンおよび有機アルミニウムから選択される1つまたは2つ以上の混合物であって、メチルアルミノキサン、改良メチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムから選択される単独またはこれらの混合物を含む、請求項6に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体製造用遷移金属触媒組成物。
【請求項8】
アルミニウム化合物助触媒は、遷移金属(M):アルミニウム原子(Al)の比が、モル比基準で1:10~5,000のものである、請求項6または7に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体製造用遷移金属触媒組成物。
【請求項9】
助触媒として用いられるホウ素化合物は、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランから選択される単独またはこれらの混合物を含む、請求項6に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体製造用遷移金属触媒組成物。
【請求項10】
遷移金属化合物と助触媒の割合は、遷移金属(M):ホウ素原子(B):アルミニウム原子(Al)のモル比が1:0.1~100:10~3,000の範囲であることを特徴とする、請求項6または9に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体製造用遷移金属触媒組成物。
【請求項11】
遷移金属化合物と助触媒の割合は、遷移金属(M):ホウ素原子(B):アルミニウム原子(Al)のモル比が1:0.5~5:100~3,000の範囲であることを特徴とする、請求項10に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体製造用遷移金属触媒組成物。
【請求項12】
請求項6に記載の遷移金属触媒組成物を用いた、エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法。
【請求項13】
エチレンと共重合されるα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン(Norbonene)、フェニルノルボルネン、スチレン(styrene)、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、および3-クロロメチルスチレンから選択される1種以上であり、前記エチレンとα-オレフィンとの共重合体中におけるエチレンの含量が30~99重量%であることを特徴とする、請求項12に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法。
【請求項14】
エチレン単独重合、またはエチレン単量体とα-オレフィンとの共重合の反応器内の圧力は1~1000気圧であり、重合反応温度は25~400℃であることを特徴とする、請求項13に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法。
【請求項15】
エチレン単独重合、またはエチレン単量体とα-オレフィンとの共重合の反応器内の圧力は10~150気圧であり、重合反応温度は100~200℃であることを特徴とする、請求項14に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法。
【請求項16】
180℃未満の重合反応温度で、1,000g/mol以上の数平均分子量および0.900g/cc未満の超低密度を有するエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造することを特徴とする、請求項15に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法。
【請求項17】
180℃以上の重合反応温度で、1,000g/mol以上の数平均分子量および0.900g/cc以上の密度を有するエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造することを特徴とする、請求項15に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な遷移金属化合物、それを含む、エチレン単独重合体またはエチレンと1つ以上のα-オレフィンとの共重合体を製造するための高い触媒活性を有する遷移金属触媒組成物、それを用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法、およびそれにより製造されたエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレン単独重合体、またはα-オレフィンとの共重合体の製造には、通常、チタンまたはバナジウム化合物の主触媒成分と、アルキルアルミニウム化合物の助触媒成分とから構成される、いわゆるジグラ-ナッタ触媒系が用いられてきた。ところで、ジグラ-ナッタ触媒系は、エチレン重合に対して高活性を示すが、不均一な触媒活性サイトによって、一般に生成重合体の分子量分布が広く、特に、エチレンとα-オレフィンとの共重合体においては、組成分布が均一ではない欠点があった。
【0003】
チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの、周期表における第4族の遷移金属のメタロセン化合物と、助触媒であるメチルアルミノキサン(methylaluminoxane)と、から構成されるメタロセン触媒系は、単一種の触媒活性サイトを有する均一系触媒であるため、従来のジグラ-ナッタ触媒系に比べて、分子量分布が狭く、且つ組成分布が均一なポリエチレンが製造可能であるという特徴を有している。例えば、ヨーロッパ特許出願公開第320,762号、第372,632号、または日本特開昭63-092621号、日本特開平02-84405号、または日本特開平03-2347号には、CpTiCl、CpZrCl、CpZrMeCl、CpZrMe、エチレン(IndHZrClなどのメタロセン化合物を助触媒のメチルアルミノキサンで活性化させることで、エチレンを高活性で重合させ、分子量分布(Mw/Mn)が1.5~2.0の範囲であるポリエチレンを製造できることが発表されている。しかしながら、上記の触媒系では、高分子量の重合体を得ることが困難であり、特に、120℃以上の高温で行われる溶液重合法に適用する場合、重合活性が急激に減少し、β-水素離脱反応が優勢になるため、重量平均分子量(Mw)が100,000以上の高分子量の重合体を製造するには適しないと知られている。
【0004】
一方、溶液重合条件で、エチレン単独重合、またはエチレンとα-オレフィンとの共重合において高い触媒活性および高分子量の重合体が製造可能な触媒として、遷移金属を環状に連結させた、いわゆる幾何拘束型非メタロセン系触媒(いわゆる、単一活性サイト触媒)が発表された。ヨーロッパ特許第0416815号および同特許第0420436号では、1つのシクロペンタジエンリガンドにアミド基を環状に連結させた例が提示されており、同特許第0842939号では、電子供与化合物としてフェノール系リガンドをシクロペンタジエンリガンドと環状に連結させた触媒の例が開示されている。かかる幾何拘束型触媒は、触媒自体の低くなった立体障害効果により高級アルファ-オレフィンとの反応性が著しく改善されたものの、商業的に利用するには多くの困難性がある。そのため、経済性に踏まえた商業化触媒の要求特性、すなわち、優れた高温活性、優れた高級アルファ-オレフィンとの反応性、および高分子量の重合体の製造能力などを有する、より競争力のある触媒系の確保が重要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術の問題を克服するべく、本発明者らは広範囲な研究を行った結果、中心金属として周期表における第4族の遷移金属が、堅い(rigid)平面構造を有し、且つ電子が豊富で広く非局在化しているリガンドとして、シクロペンタジエン環に多数個のベンゼン環が縮合されているリガンドと、溶解度および性能の向上に有用な置換基が容易に導入可能なアルキルが置換されているフェノキシ(phenoxy)基と、を介して連結された構造を有している遷移金属化合物が、エチレンおよびオレフィン類の重合において優れた触媒活性を示すことを見出した。このような事実に着目し、高温で行われる溶液重合工程で重合温度を変更し、目的の密度を有する高分子量のエチレン単独重合体、またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体を高活性で製造することができる触媒を開発し、これに基づいて本発明を完成した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造用触媒として有用な遷移金属化合物を提供するとともに、それを含む触媒組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記遷移金属化合物を含む触媒組成物を用いて、エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体を商業的な観点で経済的に製造する方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、合成経路が単純であって触媒合成が非常に経済的であるだけでなく、オレフィンの重合で高い活性を示す単一活性サイト触媒、およびかかる触媒成分を用いて、多様な物性を有するエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体を商業的な観点で経済的に製造することができる重合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の一態様は、下記化学式1で表されるシクロペンタ[a]ナフタレン(Cyclopenta[a]naphthalene)基に基づく新しい遷移金属化合物に関する。より詳細には、中心金属として周期表における第4族の遷移金属が、堅い(rigid)平面構造を有し、且つ電子が豊富で広く非局在化しているシクロペンタ[a]ナフタレン(Cyclopenta[a]naphthalene)基と、溶解度および性能の向上に有用な置換基が容易に導入可能なアルキルが置換されているフェノキシ(phenoxy)基と、を介して連結され、前記シクロペンタ[a]ナフタレン基と、アルキルが置換されているフェノキシ基とが、シリルを介して連結されている構造を有する遷移金属化合物に関する。
【0010】
【化1】
【0011】
前記化学式1中、
Mは、周期表において酸化数+2、+3、および+4を有する第4族の遷移金属であり;
~Rは、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、ハロゲン、(C2-C20)アルケニル、(C3-C20)ヘテロアリール、(C3-C20)ヘテロシクロアルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であるか、前記R~Rは、隣接した置換基と、芳香族環を含むか含まない(C2-C7)アルキレンまたは(C3-C7)アルケニレンを介して連結されて縮合環を形成してもよく;
mは1または2の整数であって、mが2である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよく;
およびRは、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、(C3-C20)ヘテロアリール、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であるか、前記RとRは、(C4-C7)アルキレンを介して連結されて環を形成してもよく;
~R10は、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、ハロゲン、(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、ハロゲン、(C2-C20)アルケニル、(C3-C20)ヘテロアリール、(C1-C20)ヘテロシクロアルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であるか、前記R~R10は、隣接した置換基と、芳香族環を含むか含まない(C4-C7)アルケニレンを介して連結されて縮合環を形成してもよく;
11は、(C1-C20)アルキルであるか、前記R10と、芳香族環を含むか含まない(C4-C7)アルケニレンを介して連結されて縮合環を形成してもよく、前記R11のアルキルは、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、(C6-C1)アリール(C1-C20)アルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、および-PRa5a6からなる群から選択される1つ以上でさらに置換されてもよく;
a1~Ra6は、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C6-C20)アリールであり;
前記R~RおよびR~R10のアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル、およびRa1~Ra6のアルキルまたはアリールは、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリールオキシ、ニトロ、シアノ、-OSiRb1b2b3、-SRb4、-NRb5b6、および-PRb7b8からなる群から選択される1つ以上でさらに置換されてもよく;
b1~Rb8は、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アル(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルであり;
およびXは、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、((C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール)(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルコキシ(C6-C20)アリールオキシ、OSiR、-SR、-NR、-PR、または(C1-C20)アルキリデンであり;
~Rは、互いに独立して、 (C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アル(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルであり;
~Rは、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アル(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、またはトリ(C6-C20)アリールシリルであり;
但し、XまたはXのうち1つが(C1-C20)アルキリデンである場合、他の1つは無視され;
前記ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の他の一態様は、前記化学式1で表される遷移金属化合物と、アルミニウム化合物、ホウ素化合物、またはこれらの混合物から選択される助触媒と、を含む、エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体製造用遷移金属触媒組成物に関する。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明のさらに他の一態様は、前記触媒組成物を用いた、エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造方法に関する。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明のさらに他の一態様は、前記化学式1で表される遷移金属化合物または前記触媒組成物を用いて製造されたエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る遷移金属化合物、または前記遷移金属化合物を含む触媒組成物は、合成過程が単純であって収率が高く、経済的な方法により容易に製造することができ、また、触媒の熱的安定性に優れて高温でも高い触媒活性を維持するとともに、他のオレフィン類との共重合反応性が良く、重合温度を調節することで、目的の密度を有する高分子量の重合体を高い収率で製造することができる。これにより、従来に知られているメタロセンおよび非メタロセン系の単一活性サイト触媒に比べて商業的な実用性が高い。したがって、本発明に係る遷移金属およびそれを含む触媒組成物は、様々な物性を有するエチレン単独重合体またはα-オレフィンとの共重合体の製造に有用に用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1で製造された遷移金属化合物1のX-ray crystallography結晶構造である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより具体的に説明する。この際、用いられる技術用語および科学用語において、他に定義しない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有する。下記の説明において、本発明の要旨を不明瞭にする可能性のある公知機能および構成についての説明は省略する。
【0018】
本発明の一態様に係る遷移金属化合物は、下記化学式1で表されるシクロペンタ[a]ナフタレン(Cyclopenta[a]naphthalene)基に基づく遷移金属化合物であって、中心金属として周期表における第4族の遷移金属が、堅い(rigid)平面構造を有し、且つ電子が豊富で広く非局在化しているシクロペンタ[a]ナフタレン(Cyclopenta[a]naphthalene)基と、溶解度および性能の向上に有用な置換基が容易に導入可能なアルキルが置換されているフェノキシ(phenoxy)基と、を介して連結され、前記シクロペンタ[a]ナフタレン基と、アルキルが置換されているフェノキシ基とがシリルを介して連結されている構造を有する。これにより、エチレンおよびオレフィン類の重合において優れた触媒活性を示すため、高効率および高分子量のエチレン系重合体を得るにおいて有利な構造的利点を有している。
【0019】
【化1】
【0020】
前記化学式1中、
Mは、周期表における第4族の遷移金属であり;
~Rは、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、ハロゲン、(C2-C20)アルケニル、(C3-C20)ヘテロアリール、(C3-C20)ヘテロシクロアルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であるか、前記R~Rは、隣接した置換基と、芳香族環を含むか含まない(C2-C7)アルキレンまたは(C3-C7)アルケニレンを介して連結されて縮合環を形成してもよく;
mは1または2の整数であって、mが2である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよく;
およびRは、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、(C3-C20)ヘテロアリール、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であるか、前記RとRは、(C4-C7)アルキレンを介して連結されて環を形成してもよく;
~R10は、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、ハロゲン、(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、ハロゲン、(C2-C20)アルケニル、(C3-C20)ヘテロアリール、(C1-C20)ヘテロシクロアルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であるか、前記R~R10は、隣接した置換基と、芳香族環を含むか含まない(C4-C7)アルケニレンを介して連結されて縮合環を形成してもよく;
11は、(C1-C20)アルキルであるか、前記R10と、芳香族環を含むか含まない(C4-C7)アルケニレンを介して連結されて縮合環を形成してもよく、前記R11のアルキルは、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C6-C12)アリール、(C1-C10)アルキル(C6-C12)アリール、(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、および-PRa5a6からなる群から選択される1つ以上でさらに置換されてもよく;
a1~Ra6は、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C6-C20)アリールであり;
前記R~RおよびR~R10のアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル、およびRa1~Ra6のアルキルまたはアリールは、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリールオキシ、ニトロ、シアノ、-OSiRb1b2b3、-SRb4、-NRb5b6、および-PRb7b8からなる群から選択される1つ以上でさらに置換されてもよく;
b1~Rb8は、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アル(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルであり;
およびXは、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、((C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール)(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルコキシ(C6-C20)アリールオキシ、-OSiR、-SR、-NR、-PR、または(C1-C20)アルキリデンであり;
~Rは、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アル(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルであり;
~Rは、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アル(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、またはトリ(C6-C20)アリールシリルであり;
但し、XまたはXのうち1つが(C1-C20)アルキリデンである場合、他の1つは無視され;
前記ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、N、O、およびSから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む。
【0021】
本発明の用語「アルキル」は、炭素および水素原子のみから構成された1価の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素ラジカルを意味し、かかるアルキルラジカルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の用語「アリール」は、1つの水素の除去により芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであって、各環に、好適には4~7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単一または縮合環系を含み、多数個のアリールが単一結合により連結されている形態も含む。縮合環系は、飽和または部分的に飽和された環のような脂肪族環を含み得て、必ず1つ以上の芳香族環を含んでいる。また、前記脂肪族環は、窒素、酸素、硫黄、カルボニルなどを環中に含んでもよい。前記アリールラジカルの具体的な例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インデニル(indenyl)、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、9,10-ジヒドロアントラセニルなどを含む。
【0023】
本発明の用語「ヘテロアリール」は、芳香族環の骨格原子としてN、O、およびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、それ以外の芳香族環の骨格原子が炭素であるアリール基を意味し、5~6員の単環式ヘテロアリール、および1つ以上のベンゼン環と縮合された多環式ヘテロアリールであり、部分的に飽和されてもよい。また、本発明でのヘテロアリールは、1つ以上のヘテロアリールが単一結合により連結された形態も含む。前記ヘテロアリール基の例としては、ピロール、キノリン、イソキノリン、ピリジン、ピリミジン、オキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チオフェン、ベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフランなどを含むが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の用語「シクロアルキル」は、1つ以上の環から構成された1価の飽和炭素環式(carbocyclic)ラジカルを意味する。シクロアルキルラジカルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどを含むが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。
【0026】
本発明の用語「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲンで置換されたアルキルを意味し、一例として、トリフルオロメチルなどが挙げられる。
【0027】
本発明の用語「アルコキシ」および「アリールオキシ」は、それぞれ-O-アルキルラジカルおよび-O-アリールラジカルを意味し、ここで、「アルキル」および「アリール」は、上述の定義のとおりである。
【0028】
本発明に係る前記化学式1で表される遷移金属化合物は、遷移金属に特定構造のリガンド化合物が結合されていることで、高い触媒活性を有し、遷移金属の周囲の電子的/立体的環境を容易に制御することができるため、合成されるエチレン単独重合体またはα-オレフィンとの共重合体の化学的構造、分子量、分子量分布、密度、機械的物性などの特性を容易に調節することができる。
【0029】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される遷移金属化合物は、下記化学式2、化学式3、または化学式4で表される遷移金属化合物であってもよい。
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】
前記化学式2~4中、M、R、R、R、R、R10、R11、X、およびXは、前記化学式1での定義のとおりであり;
R、R´、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、ハロゲン、(C2-C20)アルケニル、(C3-C20)ヘテロアリール、(C3-C20)ヘテロシクロアルキル、-ORa1、-SRa2、-NRa3a4、または-PRa5a6であり;
a1~Ra6は、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C6-C20)アリールであり;
前記R、R´、R、R、R、およびRのアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル、およびRa1~Ra6のアルキルまたはアリールは、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリールオキシ、ニトロ、シアノ、-OSiRb1b2b3、-SRb4、-NRb5b6、および-PRb7b8からなる群から選択される1つ以上でさらに置換されてもよく;
b1~Rb8は、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アル(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルである。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記R11は(C1-C20)アルキルであり、前記R11のアルキルは、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C6-C12)アリール、(C1-C10)アルキル(C6-C12)アリール、(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、(C6-C12)アリールオキシ、(C1-C10)アルキルチオ、(C6-C12)アリールチオ、ジ(C1-C10)アルキルアミノ、ジ(C6-C12)アリールアミノ、ジ(C1-C10)アルキルホスフィン、およびジ(C6-C12)アリールホスフィンからなる群から選択される1つ以上でさらに置換されてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される遷移金属化合物は、より好ましくは、下記化学式5、化学式6、または化学式7で表される遷移金属化合物であってもよい。
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
前記化学式5~7中、M、X、およびXは、前記化学式1での定義のとおりであり;
RおよびR´は、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、またはハロ(C1-C20)アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、または(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであり;
およびR10は、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、またはハロゲンであるか、前記RとR10は、
を介して連結されて縮合環を形成してもよく;
11は、(C1-C20)アルキルである。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記遷移金属化合物のMは、周期表における第4族の遷移金属であり、好ましくは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)であってもよく、酸化数+2、+3、または+4を有してもよい。
【0041】
本発明の一実施形態において、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、アミル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-ペンタデシル、フェニル、ピリジル、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、メチルチオ、エチルチオ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、ジフェニルアミノ、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、またはジフェニルホスフィンであってもよく、前記R~Rは、隣接した置換基と
を介して連結されて縮合環を形成してもよい。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、またはジ(C1-C20)アルキルアミノであってもよく、好ましくは、Rは、水素または(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、またはジ(C1-C10)アルキルアミノであり、R~Rは、それぞれ独立して、水素または(C1-C10)アルキルであるか、前記R~Rは、隣接した置換基と
を介して連結されて縮合環を形成してもよく;mは1または2の整数である。
【0043】
本発明の一実施形態において、前記Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、またはジエチルアミノであり、mは1または2の整数であり、R~Rは、それぞれ独立して、水素、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチルであるか、前記RとRは、
を介して連結されて縮合環を形成してもよく、前記RとRは、
を介して連結されて縮合環を形成してもよい。
【0044】
本発明の一実施形態において、Rは水素であり、RおよびR
を介して連結されて縮合環を形成してもよい。
【0045】
本発明の一実施形態において、Rは、(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、またはジ(C1-C10)アルキルアミノであり、R~Rは、それぞれ独立して、水素または(C1-C10)アルキルであってもよい。
【0046】
本発明の一実施形態において、Rは、(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、またはジ(C1-C10)アルキルアミノであり、RとRは、
を介して連結されて縮合環を形成してもよい。
【0047】
本発明の一実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、またはジエチルアミノであり、R~Rは、それぞれ独立して、水素、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチルであってもよい。
【0048】
本発明の一実施形態において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、アミル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-ペンタデシル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、フェニル、トリル、キシリル、トリメチルフェニル、テトラメチルフェニル、ペンタメチルフェニル、エチルフェニル、n-プロピルフェニル、イソプロピルフェニル、n-ブチルフェニル、sec-ブチルフェニル、tert-ブチルフェニル、n-ペンチルフェニル、ネオペンチルフェニル、n-ヘキシルフェニル、n-オクチルフェニル、n-デシルフェニル、n-ドデシルフェニル、ビフェニル(biphenyl)、フルオレニル、トリフェニル、ナフチル、アントラセニル、ベンジル、ナフチルメチル、アントラセニルメチル、ピリジル、メトキシ、エトキシ、メチルチオ、エチルチオ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、ジフェニルアミノ、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、またはジフェニルホスフィンであるか、前記RとRは、ブチレンまたはペンチレンを介して連結されて環を形成してもよい。
【0049】
本発明の一実施形態において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキル、好ましくは(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、好ましくはハロ(C1-C10)アルキル、(C6-C20)アリール、好ましくは(C6-C12)アリール、または(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、好ましくは(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキルであってもよい。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、フェニル、またはベンジルであってもよい。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記R~R10は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、アミル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-ペンタデシル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、クロロ、フルオロ、ブロモ、フェニル、ビフェニル(biphenyl)、フルオレニル、トリフェニル、ナフチル、アントラセニル、ベンジル、ナフチルメチル、アントラセニルメチル、ピリジル、メトキシ、エトキシ、メチルチオ、エチルチオ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、ジフェニルアミノ、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、またはジフェニルホスフィンであるか、前記RとR10は、
を介して連結されて縮合環を形成してもよい。
【0052】
本発明の一実施形態において、前記R~R10は、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、好ましくは(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、好ましくはハロ(C1-C10)アルキル、またはハロゲンであってもよい。
【0053】
本発明の一実施形態において、前記R~R10は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、tert-ブチル、またはフルオロであってもよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、前記Rは水素であり、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素、(C1-C20)アルキル、好ましくは(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、好ましくはハロ(C1-C10)アルキルまたはハロゲンであってもよく、前記RとR10は、
を介して連結されて縮合環を形成してもよい。
【0055】
本発明の一実施形態において、前記RおよびR10は水素であり、Rは、(C1-C10)アルキルまたはハロゲンであるか、前記RとR10
を介して連結されて縮合環を形成してもよい。
【0056】
本発明の一実施形態において、前記RおよびR10は水素であり、Rは、メチル、エチル、tert-ブチル、またはフルオロであってもよく、前記RとR10
を介して連結されて縮合環を形成してもよい。
【0057】
本発明の一実施形態において、前記R11は、(C1-C10)アルキル、好ましくは(C3-C10)アルキルであってもよく、より好ましくは、前記R11は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、アミル、n-ヘキシル、またはn-オクチルであってもよい。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記XおよびXは、それぞれ独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル、エチル、イソプロピル、アミル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ナフチル、ベンジル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、フェノキシ、4-tert-ブチルフェノキシ、トリメチルシロキシ、tert-ブチルジメチルシロキシ、ジメチルアミノ、ジフェニルアミノ、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、エチルチオ、またはイソプロピルチオであってもよい。
【0059】
本発明の一実施形態において、前記X1およびX2は、(C1-C20)アルキル、好ましくは(C1-C10)アルキルまたはハロゲンであってもよく、より好ましくは、前記X1およびX2は(C1-C10)アルキルであってもよい。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記XおよびXは、メチルまたはクロロであってもよく、好ましくはメチルであってもよい。
【0061】
本発明の一実施形態において、前記遷移金属化合物は、下記構造の化合物から選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0062】
【0063】
前記Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)であり;RおよびR´は、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキルまたはハロ(C1-C20)アルキルであり;RおよびRは、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、または(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであり;Rは、(C1-C20)アルキル、ハロ(C1-C20)アルキル、またはハロゲンであり;R11は(C1-C20)アルキルであり;XおよびXは、(C1-C20)アルキルまたはハロゲンである。
【0064】
本発明の一実施形態において、前記遷移金属化合物は、より具体的に、下記構造の化合物から選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0065】


(前記Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムである。)
【0066】
一方、本発明に係る遷移金属化合物は、エチレン単独重合体、およびエチレンとα-オレフィンとの共重合体から選択されるエチレン系重合体の製造に用いられる活性触媒成分とするために、好ましくは、遷移金属錯体中のXおよびXリガンドを抽出し、中心金属をカチオン化させながら弱い結合力を有する対イオン、すなわち、アニオンとして作用し得るアルミニウム化合物、ホウ素化合物、またはこれらの混合物を助触媒としてともに作用することができ、上記の遷移金属化合物と助触媒を含む触媒組成物も、本発明の範囲内である。
【0067】
本発明の一実施形態に係る触媒組成物において、助触媒として使用可能なアルミニウム化合物は、具体的に、下記化学式8または9で表されるアルミノキサン化合物、化学式8で表される有機アルミニウム化合物、または化学式10または化学式11で表される有機アルミニウムオキシド化合物から選択される1つまたは2つ以上であってもよい。
【0068】
【化8】
【0069】
【化9】
【0070】
【化10】
【0071】
【化11】
【0072】
【化12】
[前記化学式8~12中、R51は(C1-C20)アルキルであって、好ましくはメチルまたはイソブチルであり、nとqはそれぞれ5~20の整数であり;R52およびR53はそれぞれ(C1-C20)アルキルであり;Eは水素またはハロゲンであり;rは1~3の整数であり;R54は(C1-C20)アルキルまたは(C6-C20)アリールである。]
【0073】
前記アルミニウム化合物として使用可能なものの具体的な例として、アルミノキサン化合物として、メチルアルミノキサン、改良メチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサンが挙げられ;有機アルミニウム化合物の例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリヘキシルアルミニウムを含むトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、およびジヘキシルアルミニウムクロリドを含むジアルキルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、およびヘキシルアルミニウムジクロリドを含むアルキルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジプロピルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、およびジヘキシルアルミニウムヒドリドを含むジアルキルアルミニウムヒドリドが挙げられる。
【0074】
本発明の一実施形態において、前記アルミニウム化合物は、好ましくは、アルキルアルミノキサン化合物およびトリアルキルアルミニウムから選択される1つまたは2つ以上の混合物、より好ましくは、メチルアルミノキサン、改良メチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムから選択される単独または2つ以上の混合物であってもよい。
【0075】
本発明において、助触媒として使用可能なホウ素化合物は、米国特許第5,198,401号に公知されており、下記化学式13~15で表されるホウ素化合物から選択されてもよい。
【0076】
【化13】
【0077】
【化14】
【0078】
【化15】
【0079】
前記化学式13~15中、Bはホウ素原子であり;R41はフェニルであり、前記フェニルは、フルオロ、フルオロで置換されているかまたは置換されていない(C1-C20)アルキル、およびフルオロで置換されているかまたは置換されていない(C1-C20)アルコキシから選択される3~5個の置換基でさらに置換されてもよく;R42は、(C5-C7)芳香族ラジカルまたは(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリールラジカル、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルラジカル、例えば、トリフェニルメチリウム(triphenylmethylium)ラジカルであり;Zは、窒素またはリン原子であり;R43は、(C1-C50)アルキルラジカル、または窒素原子とともに2個の(C1-C10)アルキルで置換されたアニリニウム(Anilinium)ラジカルであり;およびpは2または3の整数である。
【0080】
前記ホウ素系助触媒の好ましい例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4-トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4-トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートが挙げられる。また、それらの特定の配合例としては、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1´-ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが含まれ、中でも、最も好ましいものは、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0081】
一方、前記助触媒は、反応物中の触媒に毒として作用する不純物を除去するスカベンジャ(scavenger)の役割を果たすことができる。
【0082】
本発明に係る一実施形態において、前記アルミニウム化合物を助触媒として用いる場合、本発明の遷移金属化合物と助触媒の割合の好ましい範囲は、遷移金属(M):アルミニウム原子(Al)の比が、モル比基準で1:10~5,000であってもよい。
【0083】
本発明に係る一実施形態において、前記アルミニウム化合物およびホウ素化合物を同時に助触媒として用いる場合、本発明の遷移金属化合物と助触媒の割合の好ましい範囲は、モル比基準で、遷移金属(M):ホウ素原子(B):アルミニウム原子(Al)のモル比が1:0.1~100:10~3,000の範囲であってもよく、より好ましくは、1:0.5~5:100~3,000の範囲であってもよい。
【0084】
本発明の遷移金属化合物と助触媒の割合が上記の範囲を外れる場合、助触媒の量が相対的に少なくて遷移金属化合物の活性化が完全に行われないため、遷移金属化合物の触媒活性度が十分ではなく、必要以上の助触媒が用いられて生産コストが著しく増加する問題が発生し得る。上記の範囲内である場合、エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造するための優れた触媒活性を示し、反応の純度によって割合の範囲が変わる。
【0085】
本発明の他の態様として、前記遷移金属触媒組成物を用いたエチレン重合体の製造方法は、適切な有機溶媒の存在下で、前記遷移金属触媒、助触媒、およびエチレンまたは必要に応じてα-オレフィン共単量体を接触させて行うことができる。この際、遷移金属触媒と助触媒成分は、別に反応器内に投入してもよく、または各成分を予め混合して反応器に投入してもよい。投入順序、温度、または濃度などの混合条件は別に制限されない。
【0086】
前記製造方法で使用可能な好ましい有機溶媒は(C3-C20)炭化水素であり、その具体的な例としては、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0087】
本発明の一実施形態において、前記重合は、スラリー相、液相、気相、バルク相(bulk phase)で行ってもよいが、前記触媒組成物は重合反応器内で均一な形態で存在するため、該当重合体の溶融点以上の温度で行う溶液重合工程に適用することが好ましい。
【0088】
本発明の一実施形態において、前記重合は、回分式、半連続式、または連続式反応により行ってもよく、好ましくは連続式により重合する。
【0089】
エチレン単独重合またはエチレン単量体とα-オレフィンとの共重合のための反応器内の圧力は1~10000気圧であり、より好ましくは10~150気圧であってもよい。重合反応の温度は25~400℃、好ましくは50~260℃、より好ましくは100~200℃で行うことが効果的であるが、前記重合ステップの温度および圧力条件は、適用しようとする反応の種類および反応器の種類によって、重合反応の効率を考慮した上で決定してもよい。
【0090】
エチレン単独重合体を製造する際には、単量体としてエチレンを単独で使用し、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造する際には、エチレンとともに、共単量体としてC3~C18のα-オレフィン、C5~C20のシクロオレフィン、スチレン、およびスチレンの誘導体から選択される1つ以上が使用でき、C3~C18のα-オレフィンの好ましい例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、および1-オクタデセンからなる群から選択されてもよく、C5~C20のシクロオレフィンの好ましい例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン(Norbonene)、およびフェニルノルボルネンからなる群から選択されてもよく、スチレンおよびその誘導体としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、および3-クロロメチルスチレンから選択されてもよい。本発明では、エチレンに、上記のオレフィンを単独重合させるか、2種類以上のオレフィンを共重合させてもよく、より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、または1-デセンとエチレンを共重合させてもよい。この場合、好ましいエチレンの圧力および重合反応の温度は、前記エチレン単独重合体の製造時と同様であり、本発明の方法により製造された共重合体は、通常、エチレン30重量%以上を含有し、好ましくは60重量%以上のエチレンを含有し、より好ましくは60~99重量%の範囲でエチレンを含有する。
【0091】
上記のように、本発明の触媒を使用し、且つエチレンと共単量体としてC3~C18のα-オレフィンを使用して製造された重合体は、1.5~4.0の分子量分布(Mw/Mn)を有し、1,000g/mol以上、好ましくは5,000~1,000,000g/molの数平均分子量(Mn)を有することができる。
【0092】
本発明の一実施形態において、重合反応の温度によって、目的の密度を有する高分子量のエチレン単独重合体、またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造することができる。
【0093】
特に、重合反応の温度が180℃未満、好ましくは130℃以上180℃未満である場合、高分子量および低密度のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体が生成されることができ、具体的に、1,000g/mol以上、好ましくは5,000~300,000g/mol、より好ましくは10,000~150,000g/molの数平均分子量、および0.900g/cc未満の超低密度、好ましくは0.850g/cc以上0.900g/cc未満の密度を有することができる。
【0094】
また、重合反応の温度が180℃以上、好ましくは180~200℃である場合、高分子量および高密度のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体が生成されることができ、具体的に、1,000g/mol以上、好ましくは5,000~1,000,000g/mol、より好ましくは10,000~300,000g/molの数平均分子量、および0.900g/cc以上の高密度、好ましくは0.900~0.980g/ccの密度を有することができる。
【0095】
また、本発明に係るエチレン単独重合体または共重合体の製造時に、分子量を調節するために、水素を分子量調節剤として用いてもよい。
【0096】
本発明で提示された触媒組成物は、重合反応器内で均一な形態で存在するため、該当重合体の溶融点以上の温度で行う溶液重合工程に適用することが好ましい。しかし、米国特許第4,752,597号に開示されているように、多孔性金属酸化物支持体に前記遷移金属触媒および助触媒を支持させて得られる不均一触媒組成物の形態で、スラリー重合や気相重合工程に用いられてもよい。
【0097】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、下記の実施例によって本発明の範囲が本発明を限定するわけではない。
【0098】
別に言及する場合を除き、全てのリガンドおよび触媒合成実験は、窒素雰囲気下で、標準シュレンク(Schlenk)またはグローブボックス技術により行っており、反応に用いる有機溶媒は、ナトリウム金属とベンゾフェノン下で還流させて水分を除去し、使用直前に蒸留して使用した。合成されたリガンドおよび触媒のH-NMR分析は、常温でBruker 500MHzを用いて行った。
【0099】
重合溶媒であるシクロヘキサンは、分子篩5Åと活性アルミナが充填された管を通過させ、高純度の窒素でバブリングさせることで、水分、酸素、およびその他の触媒毒物質を十分に除去させてから使用した。重合された重合体は、下記で説明された方法により分析した。
【0100】
1.分子量および分子量分布
Freeslate Rapid GPCを用いて、135℃で1.0mL/minの速度で1,2,3-卜リクロロベンゼン溶媒下で測定し、PLポリスチレン標準物質を使用して分子量を補正した。
【0101】
2.共重合体中のα-オレフィンの含量(mol%)
Bruker Avance400核磁気共鳴分光器を用い、125MHzで1,2,4-卜リクロロベンゼン/C(7/3重量分率)混合溶媒を使用して120℃で13C-NMRモードで測定した。(参考文献:Randal,J.C.JMS‐Rev.Macromol.Chem.Phys.1980,C29,201)
【0102】
共重合体のエチレンとα-オレフィンの割合は、赤外線分光器を用いて定量化した。
【0103】
3.メルトインデックス(MI2.16):ASTM D1238分析法により、190℃で2.16kgの荷重で測定した。
【0104】
4.密度:ASTM D792分析法により測定した。
【0105】
[実施例1]本発明に係る遷移金属触媒1の製造
【0106】
[2-Allyloxy-3-tertbutyl-5-methylphenyl](dimethyl)(2-methyl-3H-cyclopenta[a]naphthalen-3-yl)silane(化合物B)の製造
[2-(Allyloxy)-3-tert-butyl-5-methylphenyl](chloro)dimethylsilane(化合物A)は、論文[J.Organomet.Chem.,2007,692,4059-4066)]に記載の合成内容を参照して合成した。
【0107】
THF(112mL)に2-メチル-9bH-シクロペンタ[a]ナフタレン(30.08mmol)を加えた後、-78℃でn-BuLi(2.5M、31.58mmol)のヘキサン溶液をゆっくりと加えた。n-BuLiの投入が完了した後、温度を徐々に室温に昇温してから2時間撹拌した。撹拌が完了すると、-78℃に冷却させてから、[2-(Allyloxy)-3-tert-butyl-5-methylphenyl](chloro)dimethylsilane(化合物A、33.09mmol)のトルエン(14mL)溶液をゆっくりと滴下した後、反応混合物を室温に昇温した。室温でさらに3時間撹拌した後、反応混合物を蒸留水(200mL)に加えて反応を終結した。有機層をトルエン(2x50mL)で抽出し、NaSOで水分を除去し、真空蒸留器で溶媒を除去して得た黄色のオイル状の残渣を、シリカゲル60(40-63μm)が充填されたカラムを用いてフラッシュクロマトグラフィー(silica gel 40-63um、eluent:dichlroromethane/hexane(1:10vol))により精製することで、目的化合物である化合物Bを得た(収率62%)。
1H NMR (CDCl3): δ 8.17 (m, 1H), 7.92 (m, 1H), 7.45-7.56 (m, 3H), 7.34 (m, 1H), 7.31 (m, 1H), 7.20 (m, 1H), 7.11 (m, 1H), 6.14 (m, 1H), 5.66 (m, 1H), 5.39 (m, 1H), 4.54 (m, 2H), 4.30 (m, 1H), 2.37 (s, 3H), 2.08 (s, 3H), 1.54 (s, 9H), 0.32 (s, 3H), 0.08 (s, 3H).
【0108】
Dimethylsilylene(2-methylcyclopenta[a]naphthalen-3-yl)-2-tertbutyl-4-methylphenoxy)dichloro titanium(化合物C)の製造
化合物B(20mmol)とEtN(45mmol)が溶解されているトルエン(70mL)を-78℃に冷却した後、n-BuLi(2.5M、22mmol)のヘキサン溶液をゆっくりと加えた。n-BuLiの投入後、反応混合物を室温に昇温してから20時間撹拌した。この反応混合物をさらに-78℃に冷却した後、TiCl(15mmol)のトルエン溶液(22mL)をゆっくりと滴下した。TiClの投入完了後、反応混合物を室温に昇温した後、90℃で16時間撹拌して反応を進行した。反応混合物を室温に冷却した後、溶媒を窒素雰囲気下で真空により除去した。溶媒の除去後、熱いメチルシクロヘキサンを加え、Celite 503で充填されたフィルターを介して濾液を得た。得られた濾液を真空で乾燥した後、メチルシクロヘキサンとヘキサンの混合溶媒に溶かし、-30℃で赤褐色の固体状の目的化合物Cを得た(収率58%)。
1H NMR (CD2Cl2): δ 8.35 (m, 1H), 7.83 (m, 1H), 7.74 (m, 1H), 7.66 (m, 2H), 7.51 (m, 1H), 7.37 (m, 1H), 7.30 (m, 1H), 7.21 (m, 1H), 2.47 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 1.25 (s, 9H), 0.75 (s, 3H), 0.69 (s, 3H).
【0109】
Dimethylsilylene(2-methylcyclopenta[a]naphthalen-3-yl)-2-tertbutyl-4-methylphenoxy)dimethyl titanium(化合物1)の製造
二塩化物(dichloride)形態のTi化合物Cをジエチルエーテル(100mL)に溶かした後、-30℃に冷却した。この反応溶液に、MeMgBr(2.9M in ether、22mmol)溶液をゆっくりと滴下した。反応混合物を室温に昇温し、22時間撹拌した後、窒素雰囲気下で真空により溶媒を除去した。その後、熱いヘキサンを加え、Ceilte 503で充填されたフィルターを介して濾液を得た。得られた濾液から、窒素雰囲気の真空下で溶媒を除去した。得られた固体をヘキサン(70mL)に溶かした後、さらにCelite 503で濾過して得られた濾液を-30℃に冷却し、黄色の固体状の目的化合物1を得た(収率78%)。
1H NMR (C6D6): δ 8.37 (m, 1H), 7.86 (m, 1H), 7.66 (m, 1H), 7.59 (m, 1H), 7.54-7.57 (m, 1H), 7.50 (m, 1H), 7.40 (m, 1H), 7.22 (m, 1H), 7.16 (m, 1H), 2.36 (s, 3H), 1.95 (s, 3H), 1.57 (s, 9H), 0.67 (s, 3H), 0.61 (s, 3H), 0.58 (s, 3H), -0.47 (s, 3H); 13C NMR (CD2Cl2): δ 164.46, 137.37, 136.17, 132.95, 131.89, 131.57, 130.53, 130.42, 129.58, 129.08, 128.77, 127.54, 126.93, 126.75, 124.99, 123.94, 111.67, 103.26, 59.88, 51.82, 35.25, 30.08, 21.23, 1.20, -0.45.
【0110】
[実施例2]本発明に係る遷移金属触媒2の製造
【0111】
[2-(Allyloxy)-3-tert-butyl-5-methylphenyl](chloro)diethylsilane(化合物D)の製造
2-Allyloxy-1-bromo-3-tert-butyl-5-methylbenzene(19.8g、70mmol)をトルエン(200mL)に溶解させた後、-78℃でn-BuLi(36.4ml、2.5M in hexane、91mmol)をゆっくりと加え、前記反応物を-20℃に昇温しながら1時間撹拌した。前記反応物をさらに-78℃に冷却した後、ジクロロジエチルシラン(33g、210mmol)を速やかに加えた。前記反応物を室温に昇温した後、5時間撹拌した。生成されたLiCl塩を濾過により除去した後、溶媒を真空で除去し、約21.6g(95%)の黄色の生成物を得た。次の反応のために、追加精製なしに進行した。
1H NMR (CDCl3): δ 7.32 (m, 1H), 7.25 (m, 1H), 6.03 (m, 1H), 5.51 (m, 1H), 5.29 (m, 1H), 4.36 (m, 2H), 2.32 (s, 3H), 1.38 (s, 9H), 1.09-1.14 (m, 4H), 1.01-1.05 (m, 6H).
【0112】
[2-Allyloxy-3-tertbutyl-5-fluorophenyl](diethyl)(2-methyl-3H-cyclopenta[a]naphthalen-3-yl)silane(化合物E)の製造
THF(110mL)に2-メチル-9bH-シクロペンタ[a]ナフタレン(5.42g、30.1mmol)を加えた後、-78℃でn-BuLi(12.6mL、2.5M in hexane、31.6mmol)をゆっくりと加えた。n-BuLiの投入が完了した後、温度を徐々に室温に昇温しながら2時間撹拌した。反応物をさらに-78℃に冷却した後、[2-(Allyloxy)-3-tert-butyl-5-methylphenyl](chloro)diethylsilane(化合物D、10.75g、33.09mmol)のトルエン(14mL)溶液をゆっくりと加え、反応混合物を室温に徐々に昇温した。室温でさらに3時間撹拌し、蒸留水(200mL)を加えて反応を終結した。有機層をトルエン(2x50mL)で抽出し、NaSOで乾燥した。真空で溶媒を除去し、黄色のオイル状の生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(silica gel 40-63um、eluent:hexane-dichloromethane、10:1、vol.)により精製することで、目的化合物である化合物Eを得た(12.6g、収率89%)。
1H NMR (CDCl3): δ 8.13 (m, 1H), 7.90 (m, 1H), 7.44-7.56 (m, 3H), 7.36 (m, 1H), 7.30 (m, 1H), 7.16 (m, 1H), 7.02 (m, 1H), 6.12 (m, 1H), 5.63 (m, 1H), 5.34 (m, 1H), 4.51 (m, 2H), 4.35 (m, 1H), 2.31 (s, 3H), 2.10 (s, 3H), 1.50 (s, 9H), 0.84-0.95 (m, 6H), 0.64-0.70 (m, 4H).
【0113】
Diethylsilylene(2-methylcyclopenta[a]naphthalen-3-yl)-2-tert-butyl-4-fluorophenoxy)dichloro titanium(化合物F)の製造
EtN(4.6g、6.3mL、45mmol)と化合物E(4.7g、10mmol)が溶解されているトルエン(70mL)を-78℃に冷却した後、n-BuLi(8.8mL、2.5M in hexane、22mmol)をゆっくりと加えた。反応物を室温に昇温した後、20時間撹拌した。反応物をさらに-78℃に冷却した後、TiCl(2.8g、1.65mL、15mmol)のトルエン溶液(22mL)を、注射器を用いて反応物にゆっくりと加えた。反応混合物を室温に徐々に昇温した後、90℃で16時間撹拌した。室温に冷却した後、溶媒を真空により除去した。反応生成物を熱いヘキサンで処理し、溶解されない物質をCelite-pad filterを介して除去した。得られた濾液から、溶媒を真空により適切に除去した後、-30℃で再結晶することで、赤色を呈する褐色の生成物を得た(常温に温度が上昇すると固体が溶ける)。NMR分析結果、約55mole%の収率で2.6gの生成物、化合物Fを得た。追加精製なしに、次の反応を進行した。
1H NMR (CDCl3): δ 8.31 (m, 1H), 7.76 (m, 1H), 7.70 (m, 1H), 7.61 (m, 1H), 7.59 (m, 1H), 7.44 (m, 1H), 7.29 (m, 1H), 7.18 (m, 2H), 2.50 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 1.25 (s, 9H), 1.03 (m, 6H), 0.85 (m, 4H).
【0114】
Diethylsilylene(2-methylcyclopenta[a]naphthalen-3-yl)-2-tert-butyl-4-fluorophenoxy)dimethyl titanium(化合物2)の製造
化合物F(5.5g、10mmol、純度100%と仮定して反応を進行)をジエチルエーテル(100mL)に溶かした後、MeMgBr(7.6mL 2.9M in ether、22mmol)溶液を-30℃でゆっくりと加えた。反応混合物を室温で22時間撹拌した後、真空により溶媒を除去した。熱いヘキサンで処理し、溶解されない物質をCelite-padフィルターを介して除去した。溶媒を真空により除去した後、追加の熱いヘキサン(70mL)で処理し、溶解されない物質を再びcelite-padフィルターを介して除去した。ヘキサンを除去した後、ペンタン(30mL)を加え、-30℃で再結晶することで、黄色の固体を得た。得られた黄色の固体は、冷たいペンタンで洗浄した後、フィルターを介して回収した。母液は真空により溶媒を除去した後、ペンタン(10mL)を加え、再結晶により第2の生成物を得た。得られた黄色の固体を真空で4時間乾燥し、約1.7gの目的化合物2を得た。
1H NMR (CD2Cl2): δ 8.37 (m, 1H), 7.86 (m, 1H), 7.66 (m, 1H), 7.59 (m, 1H), 7.56 (m, 1H), 7.50 (m, 1H), 7.40 (m, 1H), 7.21 (m, 1H), 7.10 (m, 1H), 2.35 (s, 3H), 1.92 (s, 3H), 1.55 (s, 9H), 1.01-1.19 (m, 10H), 0.65 (s, 3H), -0.48 (s, 3H); 13C NMR(CD2Cl2): δ 165.11, 137.60, 136.11, 133.64, 131.88, 131.11, 130.58, 130.18, 129.41, 129.03, 128.83, 127.97, 127.53, 126.90, 126.84, 125.07, 123.93, 112.06, 102.03, 59.64, 51.89, 35.19, 30.10, 21.26, 15.46, 7.83, 7.73, 6.08, 5.18.
【0115】
[実施例3]本発明に係る遷移金属触媒3の製造
【0116】
(2-Allyloxy-3-tert-butyl-5-methylphenyl)(1,2-dimethylcyclopenta[a]naphthalen-3-yl)diethylsilane(化合物G)の製造
2-メチル-9bH-シクロペンタ[a]ナフタレン(30.08mmol)の代わりに、1,2-ジメチル-9bH-シクロペンタ[a]ナフタレン(30.08mmol)を使用したことを除き、前記実施例2の化合物Eの製造方法と同様の方法により反応させて化合物Gを得た(収率78%、黄色のオイル)。
1HNMR (CDCl3): δ 8.57 (m, 1H), 7.87 (m, 1H), 7.36-7.49 (m, 3H), 7.28 (m, 1H), 7.22 (m, 1H), 6.84 (m, 1H), 6.06 (m, 1H), 5.56 (m, 1H), 5.30 (m, 1H), 4.41 (m, 2H), 4.16 (m, 1H), 2.50 (s, 3H), 2.21 (s, 3H), 1.98 (s, 3H), 1.44 (s, 9H), 0.88-0.96 (m, 2H), 0.79-0.85 (m, 3H), 0.63-0.72 (m, 5H).
【0117】
Diethylsilylene(1,2-dimethylcyclopenta[a]naphthalen-3-yl)(3-tert-butyl-5-methyl-2-phenoxy)dichlorotitanium(化合物H)の製造
化合物E(10mmol)の代わりに、化合物G(10mmol)を使用したことを除き、前記実施例2の化合物Fの製造方法と同様の方法により反応させて化合物Hを得た(収率26%、赤褐色の固体)。
1HNMR (CDCl3): 8.64 (m, 1H), 7.78 (m, 1H), 7.70 (m, 1H), 7.60 (m, 1H), 7.41 (m, 1H), 7.33 (m, 1H), 7.19 (m, 1H), 3.01 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 2.39 (s, 3H), 1.18-1.31 (m, 2H), 1.24 (s, 9H), 1.03 (m, 6H), 0.84-0.90 (m, 2H).
【0118】
Diethylsilylene(1,2-dimethylcyclopenta[a]naphthalen-3-yl)(3-tert-butyl-5-methyl-2-phenoxy)dimethyltitanium(化合物3)の製造
化合物F(10mmol)の代わりに、化合物H(10mmol)を使用したことを除き、前記実施例2の化合物2の製造方法と同様の方法により反応させて化合物3を得た(収率93%、黄色の固体)。
1HNMR (CD2Cl2): δ 8.66 (m, 1H), 7.81 (m, 1H), 7.65 (m, 1H), 7.53 (m, 1H), 7.37 (m, 1H), 7.27 (m, 1H), 7.20 (m, 1H), 7.10 (m,1H), 2.89 (s, 3H), 2.35 (s, 3H), 1.92 (s, 3H), 1.50 (s, 9H), 1.00-1.13 (m, 7H), 0.93 (m, 3H), 0.47 (s, 3H), -0.50 (s, 3H); 13CNMR (CD2Cl2): δ 165.18, 136.08, 135.98, 135.56, 132.60, 131.97, 130.96, 129.82, 129.33, 129.24, 128.41, 127.19, 126.73, 126.33, 124.69, 124.41, 123.75, 101.77, 58.54, 56.69, 35.13, 30.02, 21.25, 15.35, 13.37, 7.80, 6.10, 6.56.
【0119】
[実施例4]本発明に係る遷移金属触媒4の製造
【0120】
前記実施例1の方法により、ジメチルシリレン(3-ジメチルシクロペンタ[a]ナフタレン-3-イル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)ジメチルチタニウム(化合物4)を製造した(収率93%、黄色の固体)。
1HNMR (CD2Cl2): δ 8.63 (m, 1H), 7.73 (m, 1H), 7.68 (m, 1H), 7.52 (m, 1H), 7.19 (s, 1H), 7.15 (d,1H), 6.82 (d, 1H), 6.52 (s, 1H), 3.14 (s, 3H), 2.36 (s, 3H), 1.45 (s, 9H), 0.69 (s, 3H), 0.62 (s, 3H), 0.37 (s, 3H), -0.49 (s, 3H).
【0121】
[実施例5]本発明に係る遷移金属触媒5の製造
【0122】
前記実施例1の方法により、ジエチルシリレン(3-ジメチルシクロペンタ[a]ナフタレン-3-イル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)ジメチルチタニウム(化合物5)を製造した(収率93%、黄色の固体)。
1HNMR (CD2Cl2): δ 8.63 (d, 1H), 7.74 (d, 1H), 7.68 (m, 1H), 7.52 (m, 1H), 7.21 (s, 1H), 7.15 (d, 2H), 6.82 (s, 1H), 6.53 (s,1H), 3.15 (s, 3H), 2.37 (s, 3H), 1.46 (s, 9H), 1.17 (m, 4H), 1.04 (m, 6H) 0.7 (s, 3H), -0.49 (s, 3H).
【0123】
[比較例1]ジメチルシリレン(2-メチルインデン-1-イル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)ジメチルチタニウム(Dimethylsilylene(2-methylinden-1-yl)(3-tert-butyl-5-methyl-2-phenoxy)dimethyltitanium)の製造
【0124】
前記実施例1の方法により、ジメチルシリレン(2-メチルインデン-1-イル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)ジメチルチタニウム(Dimethylsilylene(2-methylinden-1-yl)(3-tert-butyl-5-methyl-2-phenoxy)dimethyltitanium)を製造した(収率73%、黄色の固体)。
1HNMR (C6D6): δ 7.60 (m, 1H), 7.47 (m, 1H), 7.27 (m, 1H), 7.18 (m, 1H), 7.06 (m, 1H), 6.98 (m,1H), 6.64, (m,1H), 2.27 (s, 3H), 1.70 (s, 9H), 1.63 (s, 3H), 0.95 (s, 3H), 0.48 (s, 3H), 0.41 (s, 3H), 0.13 (s, 3H); 13CNMR (CD2Cl2): δ 164.51, 136.11, 135.35, 132.57, 133.21, 131.56, 129.59, 129.03, 128.77, 127.33, 126.43, 125.01, 124.88, 110.56, 102.14, 58.41, 52.19, 35.25, 30.07, 21.18, 1.10, -0.42.
【0125】
[比較例2]ジメチルシリレン(2,4,5-トリメチル-6H-シクロペンタ[2,3,-b]チオフェン-6-イル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)ジメチルチタニウム(Dimethylsilylene(2,4,5-trimethyl-6H-cyclopenta[2,3-b]thiophen-6-yl)(3-tert-butyl-5-methyl-2-phenoxy)dimethyltitanium)の製造
【0126】
前記実施例1の方法により、ジメチルシリレン(2,4,5-トリメチル-6H-シクロペンタ[2,3,-b]チオフェン-6-イル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)ジメチルチタニウム(Dimethylsilylene(2,4,5-trimethyl-6H-cyclopenta[2,3-b]thiophen-6-yl)(3-tert-butyl-5-methyl-2-phenoxy)dimethyltitanium)を製造した(収率81%、黄色の固体)。
1HNMR (CD2Cl2): δ 7.18 (m, 1H), 7.07 (m, 1H), 6.89 (m, 1H), 2.56 (s, 3H), 2.36 (s, 3H), 2.31 (s, 3H), 1.61 (s, 3H), 1.58 (s, 9H), 0.51 (s, 3H), 0.43 (s, 3H), 0.35 (s, 3H), 0.02 (s, 3H); 13CNMR (CD2Cl2): δ 164.54, 148.69, 142.46, 136.12, 135.55, 134.54, 133.14, 131.14, 129.59, 129.51, 118.09, 116.24, 99.60, 57.41, 55.19, 35.25, 30.06, 21.14, 16.88, 12.72, -0.35, -1.42.
【0127】
[比較例3]ジメチルシリレン(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)ジメチルチタニウム(Dimethylsilylene(2,3,4,5-tetramethylcyclopentadienyl)(3-tert-butyl-5-methyl-2-phenoxy)dimethyltitanium)の製造
【0128】
前記実施例1の方法によりジメチルシリレン(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)ジメチルチタニウムを製造した。
1H NMR (CDCl3): δ 7.21 (m, 1H, Ar-H), 7.17 (m, 1H, Ar-H), 2.31 (s, 3H, Ar-Me), 2.02 (s, 6H, C5Me4), 1.95 (s, 6H,C5Me4), 1.36 (s, 9H, Ar-tBu), 0.62 (s, 3H, Si-Me), 0.58 (s, 3H, Si-Me), 0.21 (s, 3H), 0.07 (s, 3H).
【0129】
[比較例4]ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)-N-tert-ブチルジメチルチタニウム(Dimethylsilylene(tetramethylcyclopentadienyl)-N-tertbutyldimethyltitanium)の製造
【0130】
化合物I(20mmol)とEtN(45mmol)が溶解されているトルエン(70mL)を-78℃に冷却した後、n-BuLi(2.5M in hexane、22mmol)をゆっくりと加えた。n-BuLiの投入後、反応物を室温に昇温した後、20時間撹拌した。反応物をさらに-78℃に冷却した後、TiCl(15mmol)のトルエン溶液(22mL)をゆっくりと滴下した。反応溶液を室温に昇温した後、16時間撹拌して反応を進行した。反応溶液を室温で真空で乾燥し、生成された反応物をヘキサンで処理し、Celite 503で充填されたフィルターを介して濾液を得た。得られた濾液を真空で乾燥した後、ヘキサン溶媒に溶かしてから-30℃に冷却し、赤褐色の固体状の化合物Jを58%の収率で得た。化合物Jをジエチルエーテル(100mL)に溶かした後、-30℃に冷却し、この反応溶液にMeMgBr(2.9M in ether、22mmol)溶液をゆっくりと滴下した。反応混合物は室温に昇温した後、22時間撹拌してから真空乾燥した。得られた反応物をペンタンで処理し、Ceilte 503で充填されたフィルターを介して濾液を得た。得られた濾液を真空乾燥した後、ペンタン(70mL)で生成物を溶かし、Celite 503で濾過して得られた濾液を-30℃に冷却することで、黄色の固体状のジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)-N-tert-ブチルジメチルチタニウムを得た(収率78%)。
1H NMR (CDCl3): δ 2.15 (s, 6H, C5Me4), 1.902 (s, 6H, C5Me4), 1.553 (s, 9H, Me3CN), 0.464 (s, 6H,Me2Si), 0.159 (s, 6H,Me2Si)
【0131】
[実施例6~15および比較例5~8]エチレンと1-ヘキセンの共重合
エチレン/1-ヘキセン共重合過程は次のとおりである。
【0132】
重合は、温度調節が可能であって、高圧で利用される機械式撹拌機付きの反応器で行った。この反応器に、スカベンジャとしてTiBA/BHT(triisobutylaluminum/2,6-di-tert-butyl-4-methylphenol=1/1モル比、30μmol、120μL、0.25Mのトルエン溶液)、1-ヘキセン(270μL、300μL、または450μL)、およびトルエンを加え、全体積が5mLとなるようにした。反応器の温度は重合温度(130℃または150℃)に調節した後、撹拌速度を800rpmに設定した。エチレンを重合温度によって一定に維持するために、150℃では220psi、130℃では180psiで加えた。重合触媒の使用量としては10nmoleまたは15nmoleを適用し、重合触媒に対する助触媒の量は5当量に固定した。重合触媒を反応器に投入した後、5当量の助触媒TTB(triphenylmethylium tetrakis(pentafluorophenyl)borate)を投入しながら重合を開始した。重合反応は5分間進行するか、生成される高分子が100~200mgを超えない時間に重合を終了した。
【0133】
重合終了の後、反応器の温度を室温に冷却し、反応器内のエチレンを徐々に排気させて除去した。その後、真空により生成された重合体を乾燥した。
【0134】
前記実施例および比較例の重合反応条件、および得られた重合体の物性を下記表1に記載した。
【0135】
【表1】
【0136】
前記表1に示されたように、実施例8~15のエチレン/1-ヘキセン共重合の活性が、比較例5~8のエチレン/1-ヘキセン共重合の活性に比べて高いことが分かる。特に、重合温度150℃での実施例7、9、11、13、および15は、比較例6および8に比べて高い活性を維持していることを確認することができる。1-ヘキセンに対する反応性である共重合特性において、実施例の触媒は、比較例の結果に比べて比較的高いレベルの共重合反応性を有していることが分かる。比較的高温である重合温度150℃で、実施例の触媒は高い共重合特性を維持していることを確認することができる。特に、実施例9、11、13、および15は、150Lの1-ヘキセンの濃度で重合を行った結果であるのにもかかわらず、共重合体中の1-ヘキセンの含量が比較例6および8に比べて高いレベルであることを確認することができ、実施例の触媒のうち、最も高い共重合特性を有していることが分かる。生成された共重合体の分子量において、実施例の触媒は相対的により高いレベルの共重合特性を有するにもかかわらず、高温である150℃で、実施例から重合された共重合体の分子量と同等レベルの分子量を有することを確認することができる。
【0137】
上述のように、実施例の触媒は、高温の共重合条件で、比較例の触媒に比べて高いレベルの共重合特性と重合活性を有することを確認することができ、生成された共重合体の分子量において、比較例の触媒から生成された共重合体の分子量と同等レベルであることを確認することができた。
【0138】
[実施例16~28および比較例9~14]エチレンと1-オクテンの共重合
エチレン/1-オクテン共重合過程は次のとおりである。
【0139】
重合は、温度調節が可能な、機械式撹拌機付きの連続重合反応器で行った。
【0140】
130~200℃の温度に予熱された1.0Lの連続撹拌式反応器に、メチルシクロヘキサン溶媒と、1-オクテンおよびエチレン単量体を40barの圧力で供給した。触媒貯蔵タンクから重合触媒とAnB(N,N-Dimethylanilinium Tetrakis(pentafluorophenyl)borate)またはTTB(triphenylmethylium tetrakis(pentafluorophenyl)borate)助触媒を反応器に供給し、共重合反応を進行した。反応溶媒であるメチルシクロヘキサンは、毎時間当り5kgの量で反応器に注入し、反応器の滞留時間は約8分程度であって、エチレンは、毎時間当り約400~600gの範囲内で、C2/MCH比である8、10、および12によって調節して反応器に注入した。重合は、130~200℃の比較的高い温度で実施し、触媒の投入量はfeed温度と反応器温度の温度差を維持する量に調節しながら反応器に投入した。共重合反応により形成された高分子溶液は、反応器の後端で3barに減圧させた後、溶媒分離器に送られ、溶媒の殆どを溶媒分離工程により除去した。以上のように進行した重合の結果を下記表2にまとめた。
【0141】
【表2】
【0142】
前記表2に示されたように、本発明の遷移金属化合物を重合触媒として使用した場合のエチレン/1-オクテン共重合の活性は、既に公知の触媒を使用したエチレン/1-オクテン共重合の活性に比べて高いことを、同一の重合温度条件で触媒の投入量が少ないことから分かる(実施例16および20vs比較例9および12)。特に、重合温度150℃での実施例18、19、22、および23は、比較例10および13に比べて高い活性を維持していることを確認することができる。1-オクテンに対する反応性である共重合特性において、実施例の触媒は、低いC8/C2比の条件でも低い密度の共重合体を生成することができ、これから、比較例の結果に比べて比較的高いレベルの共重合反応性を有することが分かる。低密度ポリエチレンの生成において、高い重合温度といえる重合温度150℃で、実施例の触媒は高い共重合特性を維持していることを確認することができる。特に、実施例24~26は、150℃および160℃の高い重合温度でも、低いC8/C2比の条件で、高分子量を有する0.87g/mlの低密度ポリエチレンを製造することができることを確認することができる。また、実施例27および28は、比較例14と異なって、密度0.901または0.915g/ml程の直鎖状低密度領域の高い分子量を有する共重合体を、非常に高い重合温度である180℃と200℃で製造できることを確認することができる。前記表2に示されたように、実施例の触媒は、比較例の触媒に比べて140℃以上の高い重合温度で、高い共重合特性を有し、高いレベルの分子量を有する低密度乃至中密度ポリエチレンを製造可能な触媒であることを確認することができた。
【0143】
上述のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、添付の請求範囲に定義された本発明の範囲を逸脱することなく本発明を多様に変形して実施可能である。したがって、本発明のこれからの実施形態の変更は、本発明の技術を逸脱することができない。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明に係る遷移金属化合物、または前記遷移金属化合物を含む触媒組成物は、合成過程が単純であって収率が高く、経済的な方法により容易に製造することができ、また、触媒の熱的安定性に優れて高温でも高い触媒活性を維持するとともに、他のオレフィン類との共重合反応性が良く、重合温度を調節することで、目的の密度を有する高分子量の重合体を高い収率で製造することができる。これにより、従来に知られているメタロセンおよび非メタロセン系の単一活性サイト触媒に比べて商業的な実用性が高い。したがって、本発明に係る遷移金属およびそれを含む触媒組成物は、様々な物性を有するエチレン単独重合体またはα-オレフィンとの共重合体の製造に有用に用いられることができる。
図1