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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】負荷補償された調整可能な結合
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/10 20230101AFI20230119BHJP
   H10N 60/12 20230101ALI20230119BHJP
【FI】
H01L39/22 Z
H01L39/22 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020538088
(86)(22)【出願日】2019-01-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 US2019012049
(87)【国際公開番号】W WO2019236137
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】15/868,416
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キーン,ザカリー カイル
(72)【発明者】
【氏名】ストランド,ジョエル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ナアマン,オフェル
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05552735(US,A)
【文献】国際公開第2017/062143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 39/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステムであって
超伝導クロスバースイッチの第1のポートに接続された第1の量子オブジェクトと、
前記超伝導クロスバースイッチの第2のポートに接続された、前記第1の量子オブジェクトの負荷特性を近似する第1のダミー負荷と、
前記超伝導クロスバースイッチの第3のポートに接続された第2の量子オブジェクトと、
前記超伝導クロスバースイッチの第4のポートに接続された、前記第2の量子オブジェクトの負荷特性を近似する第2のダミー負荷と、
を備え、
それにより、前記第1の量子オブジェクトおよび前記第2の量子オブジェクトが、クロス状態およびバー状態の一方である、前記超伝導クロスバースイッチの第1の結合状態では結合され、かつ、前記クロス状態および前記バー状態の他方である、前記超伝導クロスバースイッチの第2の結合状態では、前記第1の量子オブジェクトおよび前記第2の量子オブジェクトが切り離され、前記第1の量子オブジェクトが前記第2のダミー負荷に結合され、前記第2の量子オブジェクトが前記第1のダミー負荷に結合される、超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステム。
【請求項2】
前記第1のポートが、第1の可変インダクタンス結合要素を介して前記第3のポートに結合され、
前記第1のポートが、第3の可変インダクタンス結合要素を介して前記第4のポートに結合され、
前記第2のポートが、第2の可変インダクタンス結合要素を介して前記第3のポートに結合され、
前記第2のポートが、第4の可変インダクタンス結合要素を介して前記第4のポートに結合される、
請求項1に記載の超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステム。
【請求項3】
前記第1の結合状態での、前記第1のポートから前記第3のポートおよび前記第2のポートから前記第4のポートと、前記第2の結合状態での、前記第1のポートから前記第4のポートおよび前記第2のポートから前記第3のポートと、の間で信号の選択的ルーティングを可能にするために、前第1の可変インダクタンス結合要素、前記第2の可変インダクタンス結合要素、前記第3の可変インダクタンス結合要素、および前記第4の可変インダクタンス結合要素の、高インダクタンス状態および低インダクタンス状態を含むそれぞれのインダクタンス状態を変更することによって、前記第1の結合状態と前記第2の結合状態との間で前記超伝導クロスバースイッチの設定を制御するように構成されたスイッチコントローラをさらに備える、請求項2に記載の超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステム。
【請求項4】
前記スイッチコントローラが、前記第1のダミー負荷および前記第2のダミー負荷に誘導的に結合された磁束バイアス制御ラインを通る電流の量および極性を制御して、前記超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステムを前記第1の結合状態と前記第2の結合状態との間で切り替える、請求項3に記載の超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステム。
【請求項5】
前記スイッチコントローラが、前記第2の結合状態では、前記第1の可変インダクタンス結合要素および前記第4の可変インダクタンス結合要素を前記低インダクタンス状態に、かつ前記第2の可変インダクタンス結合要素および前記第3の可変インダクタンス結合要素を前記高インダクタンス状態に設定し、前記第2の結合状態では、前記第1の可変インダクタンス結合要素および前記第4の可変インダクタンス結合要素を前記高インダクタンス状態に、かつ前記第2の可変インダクタンス結合要素および前記第3の可変インダクタンス結合要素を前記低インダクタンス状態に設定する、請求項3に記載の超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステム。
【請求項6】
前記第1の可変インダクタンス結合要素が第1のジョセフソン接合であり、前記第2の可変インダクタンス結合要素が第2のジョセフソン接合であり、前記第3の可変インダクタンス結合要素が第3のジョセフソン接合であり、前記第4の可変インダクタンス結合要素が第4のジョセフソン接合である、請求項2に記載の超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステム。
【請求項7】
前記第1のダミー負荷および前記第2のダミー負荷が、各々インダクタである、請求項1に記載の超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステム。
【請求項8】
前記第1のダミー負荷および前記第2のダミー負荷によってそれぞれ近似される、前記第1の量子オブジェクトおよび前記第2の量子オブジェクトの負荷特性が、誘導性負荷特性である、請求項1に記載の超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステム。
【請求項9】
各量子オブジェクトの動作周波数が、前記第1の結合状態と前記第2の結合状態との間で一定のままである、請求項1に記載の超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステム。
【請求項10】
第1の量子オブジェクトおよび第2の量子オブジェクトを結合および負荷補償して切り離す方法であって、前記方法が、
前記第1の量子オブジェクトおよび前記第2の量子オブジェクトを結合することと、
前記第1の量子オブジェクトおよび前記第2の量子オブジェクトを切り離すと同時に、
前記第1の量子オブジェクトを、前記第2の量子オブジェクトであるかのように前記第1の量子オブジェクトから見えるように設計された第1のシミュレートされた負荷に結合することと、
前記第2の量子オブジェクトを、前記第1の量子オブジェクトであるかのように前記第2の量子オブジェクトから見えるように設計された第2のシミュレートされた負荷に結合することと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記第1のシミュレートされた負荷が、前記第1の量子オブジェクトが前記第2の量子オブジェクトに結合されることから経験するのと同じ誘導負荷を前記第1の量子オブジェクトに提示するサイズのインダクタであり、前記第2のシミュレートされた負荷が、前記第2の量子オブジェクトが前記第1の量子オブジェクトに結合されることから経験するのと同じ誘導負荷を前記第2の量子オブジェクトに提示するサイズのインダクタである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の量子オブジェクト、前記第2の量子オブジェクト、前記第1のシミュレートされた負荷、および前記第2のシミュレートされた負荷が、超伝導クロスバースイッチを使用してそれぞれ結合されるかまたは切り離される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の量子オブジェクトおよび前記第2の量子オブジェクトが、第1の可変インダクタンス結合要素を介して結合され、
前記第1の量子オブジェクトが、第2の可変インダクタンス結合要素を介して前記第1のシミュレートされた負荷に結合され、
前記第2の量子オブジェクトが、第3の可変インダクタンス結合要素を介して前記第2のシミュレートされた負荷に結合される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の可変インダクタンス結合要素、前記第2の可変インダクタンス結合要素、前記第3の可変インダクタンス結合要素、および第4の可変インダクタンス結合要素が、前記第1のシミュレートされた負荷および前記第2のシミュレートされた負荷に誘導結合された磁束バイアス制御ラインを通る電流の量および極性を制御することによって、前記第1の量子オブジェクトおよび前記第2の量子オブジェクトと前記第1のシミュレートされた負荷および前記第2のシミュレートされた負荷との間で選択的結合を可能にするために、高インダクタンス状態および低インダクタンス状態を含むそれぞれのインダクタンス状態の間で切り替えられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
クロス状態およびバー状態の一方である第1の結合状態では、前記第1の量子オブジェクトおよび前記第2の量子オブジェクトを結合するために、前記第1の可変インダクタンス結合要素および前記第4の可変インダクタンス結合要素が前記低インダクタンス状態に設定され、前記第2の可変インダクタンス結合要素および前記第3の可変インダクタンス結合要素が前記高インダクタンス状態に設定され、
前記クロス状態および前記バー状態の他方である第2の結合状態では、各量子オブジェクトをそのそれぞれのシミュレートされた負荷に結合するために、前記第1の可変インダクタンス結合要素および前記第4の可変インダクタンス結合要素が前記高インダクタンス状態に設定され、前記第2の可変インダクタンス結合要素および前記第3の可変インダクタンス結合要素が前記低インダクタンス状態に設定される、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権益
本発明は政府契約の下で行われた。したがって、米国政府は、その契約に明記されている本発明に対する権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、2018年1月11日に提出された米国特許出願第15/868416号の優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、概して超伝導回路に関し、具体的には、量子オブジェクトの負荷補償された調整可能な結合に関する。
【背景技術】
【0004】
従来のマイクロ波機械式、電気機械式、および電子式スイッチは、互換性のない製造プロセスと高電力消費のため、超伝導電子回路とのオンチップ統合および極低温動作と互換性がない場合がある。同様に、電圧可変コンデンサ(すなわち、バラクタ)、機械的ドライバ、または強誘電体およびフェライト材料などのいずれかのアクティブコンポーネントを使用することによって一般に実現される調整可能なフィルタは、単一磁束量子(SFQ)技術で生成できる信号レベルによって簡単に制御できず、そして多くは極低温では動作し得ない。超伝導マイクロ波フィルタは、固定式および調整可能の両方で、高温超伝導体および低温超伝導体の両方を使用して以前に実現されているが、スイッチングアプリケーションでのそれらの使用は、高いリターンロス、限られた使用可能な帯域幅、および不十分な帯域外のオフ状態のアイソレーションに悩まされている。
【0005】
半導体クロスバースイッチは、デジタル信号とマイクロ波信号との両方で、スイッチマトリックス、トランシーバ、試験および通信システムなどの再構成可能な信号ルーティングアプリケーションで使用されている。クロスバースイッチは4ポートデバイスであり、第1の設定(「バーの状態」と呼ばれる)では、第1の入力ポートが第1の出力ポートに接続され、第2の入力ポートが第2の出力ポートに接続され、第2の設定(「クロス状態」と呼ばれる)では、第1の入力ポートが第2の出力ポートに接続され、第2の入力ポートが第1の出力ポートに接続される。しかしながら、従来のクロスバースイッチは概して、極低温の超低電力消費アプリケーションと互換性がなく、概して、SFQ制御技術と互換性のない数ボルトのオーダの電圧制御信号を必要とする。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で説明する負荷補償された調整可能なカプラは、クロスバースイッチと、ここではバラストとも呼ばれるシミュレートされた負荷とを活用して、2つの量子オブジェクト間の調整可能な結合を、それらの共振周波数を変更せずに提供する。
【0007】
一例では、超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステムが提供されている。本システムは、超伝導クロスバースイッチの第1のポートに接続された第1の量子オブジェクト、スイッチの第2のポートに接続された第1の量子オブジェクトの負荷特性を近似する第1のダミー負荷、スイッチの第3のポートに接続された第2の量子オブジェクト、およびスイッチの第4のポートに接続された第2の量子オブジェクトの負荷特性を近似する第2のダミー負荷を含む。第1および第2の量子オブジェクトは、スイッチのクロス状態で結合されている。スイッチのバー状態では、第1および第2の量子オブジェクトは切り離され、第1の量子オブジェクトは第2のダミー負荷に結合され、第2の量子オブジェクトは第1のダミー負荷に結合される。
【0008】
別の例は、2つの量子オブジェクトを結合および負荷補償して切り離す方法を提供する。第1の量子オブジェクトおよび第2の量子オブジェクトは、結合されている。2つの量子オブジェクトを切り離すと同時に、第1の量子オブジェクトは、第2の量子オブジェクトであるかのように第1の量子オブジェクトから見えるように設計された第1のシミュレートされた負荷に結合され、第2の量子オブジェクトは、第1の量子オブジェクトであるかのように第2の量子オブジェクトから見えるように設計された第2のシミュレートされた負荷に結合される。例えば、第1のシミュレートされた負荷は、第1の量子オブジェクトが第2の量子オブジェクトに結合されることから経験するであろうものと同じ誘導負荷を第1の量子オブジェクトに提示するサイズのインダクタであることができ、第2のシミュレートされた負荷は、第2の量子オブジェクトが第1の量子オブジェクトに結合されることから経験するであろうものと同じ誘導負荷を第2の量子オブジェクトに提示するサイズのインダクタであることができる。
【0009】
さらに別の例では、超伝導負荷補償された調整可能なカプラシステムは、各々がそれぞれの動作周波数を有する第1および第2の量子オブジェクトを結合および分離することができる。ジョセフソン接合ブリッジは、超伝導クロスバースイッチとして構成されている。ブリッジは、4つのジョセフソン接合で作成されている。第1のジョセフソン接合は、第1の量子オブジェクトと第2の量子オブジェクトの誘導性負荷特性を近似する第2のバラストの第1の端部との間に接続されている。第2のジョセフソン接合は、第2のバラストの第1の端部と第1の量子オブジェクトの誘導性負荷特性を近似する第1のバラストの第1の端部との間に接続されている。第3のジョセフソン接合は、第1の量子オブジェクトと第2の量子オブジェクトとの間に接続されている。第4のジョセフソン接合は、第2の量子オブジェクトと第1のバラストの第1の端部の間に接続されている。1つ以上の磁束バイアスラインが、一方では、高インダクタンス状態を有する第1および第4のジョセフソン接合と低インダクタンス状態を有する第2および第3のジョセフソン接合との間でジョセフソン接合のインダクタンスを切り替えるために構成されており、ここで第1および第2の量子オブジェクトは互いに結合さており、そして、他方では、第1および第4のジョセフソン接合は低インダクタンス状態を有し、第2および第3のジョセフソン接合は高インダクタンス状態を有し、ここで第1の量子オブジェクトは第2のバラストに結合され、第2の量子オブジェクトは第1のバラストに結合されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】例示的な超伝導負荷補償された調整可能なカプラのブロック図である。
図1B図1Aの例示的な超伝導負荷補償された調整可能なカプラの例の活性化状態を図解する。
図1C図1Aの例示的な超伝導負荷補償された調整可能なカプラの非活性化状態を図解する。
図2】クロスバースイッチ回路および関連するバイアス要素の概略図を図解する。
図3】負荷補償された調整可能なカプラの概略図を図解する。
図4図3の回路のSパラメータシミュレーションのグラフである。
図5】2つの量子オブジェクトを結合および負荷補償して切り離す例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、一般に超伝導回路に関し、より詳細には、2つの量子オブジェクト間の負荷補償された調整可能なカプラに関する。超伝導負荷補償された調整可能なカプラは、スイッチコントローラおよびバイアス要素を含むスイッチ制御システムを備えた超伝導クロスバースイッチを含むことができる。超伝導クロスバースイッチは、クロスポイントスイッチまたはトランスファースイッチとしても知られ、バイアス要素およびスイッチコントローラを介して磁束によって制御される可変インダクタンス結合要素を使用して、スイッチの異なるセクションを相互に結合および分離し、バー状態とクロス状態との間で切り替えることができる。超伝導クロスバースイッチは、極低温で動作し、実質的に電力を消費せず、単一磁束量子(SFQ)互換信号で制御することができる。スイッチは、2つの量子オブジェクトの各々を相互に、またはターゲット量子オブジェクトの負荷をシミュレートすることができるバラストに接続することができる。それに応じて、負荷補償された調整可能なカプラは、両方のオブジェクトに可変の負荷を提示し、望ましくないことにそれらの動作周波数を変更する可能性がある、オブジェクト間で調整可能な誘導要素を使用することに関連付けられた制限を克服する。
【0012】
図1Aは、負荷補償された調整可能なカプラシステム100の例を図解する。カプラが作動されると、負荷補償された調整可能なカプラシステム100は、SQUIDブリッジ回路構成104を備えたフィルタネットワーク102を使用して、本明細書ではソース量子オブジェクトと呼ばれることもある第1の量子オブジェクト110を、本明細書ではターゲット量子オブジェクトと呼ばれることもある第2の量子オブジェクト112に接続することができる。第1の量子オブジェクト110は、第1のポートまたは端子INを介してフィルタネットワーク102に接続することができる。第2の量子オブジェクト112は、第3のポートまたは端子OUTを介してフィルタネットワーク102に接続することができる。この状態では、フィルタネットワーク102は、第2のポートまたは端子INおよび第4のポートまたは端子OUTを介して、第1のダミー負荷114を第2のダミー負荷116に接続することもできる。図1Bに図解するように、調整可能なカプラシステム100のこの活性化されたモードは、フィルタネットワーク102の「バー」モードを構成し、第1の信号を第1のポートINから第3のポートOUTにルーティングし、第2の信号を第2のポートINから第4のポートOUTにルーティングする。
【0013】
カプラが非活性化されると、負荷補償された調整可能なカプラシステム100は、フィルタネットワーク102を使用して、第1の量子オブジェクト110を、第2の量子オブジェクト112の1つ以上の特性を近似するように構成された第2のダミー負荷116に接続することができる。同様に、非活性化状態では、フィルタネットワーク102は、第2の量子オブジェクト112を、第1の量子オブジェクト110の1つ以上の特性を近似するように構成された第1のダミー負荷114に接続することができる。図1Cに図解するように、調整可能なカプラシステム100のこの非活性化されたモードは、フィルタネットワーク102の「クロス」モードを構成し、第1の信号を第1のポートINから第4のポートOUTにルーティングし、第2の信号を第2のポートINから第3のポートOUTにルーティングする。
【0014】
ダミー負荷114、116は、例えば、各ダミー負荷がそれぞれ非結合状態で接続する量子オブジェクトの特性エネルギーを維持するようなサイズのインダクタンスである。結果として、接続性に関係なく、各量子オブジェクトの負荷は、量子オブジェクトの観点からは変化しない。ダミー負荷はまた、シミュレートされた負荷またはバラストと呼ぶこともできる。
【0015】
図1Aに図解された上記の構成は、システム100のほんの一例を表す。別の例では、第2の量子オブジェクト112および第2のダミー負荷116の位置(すなわち、フィルタネットワーク102への接続)は、活性化または結合状態がクロス状態(図1Cに示すように)であり、非活性化または非結合状態がバー状態(図1Bに示すように)であるように交換することができる。同様に、第1の量子オブジェクト110および第1のダミー負荷114の位置は交換することができる。構成が何であれ、より大きな制御システムおよびスイッチコントローラ108を、それに応じて適合させることができる。
【0016】
このようにして、フィルタネットワーク102は、各それぞれの入力ポートから所望のセクションを通ってそれぞれの選択された出力ポートに通過する信号の所望の部分(例えば、特定の周波数帯域幅)に対応することができるバンドパスフィルタリングされた出力信号を提供することができる超伝導クロスバースイッチを構成することができる。加えて、信号の不要な部分をブロックすることができ、それにより、信号の不要な部分がフィルタネットワークを通過していずれかの出力ポートに到達することはない。
【0017】
負荷補償された調整可能なカプラシステム100は、量子オブジェクト(例えば、キュービットまたは共振器)間の結合および分離を提供するために、様々な超伝導回路システムのいずれかに実装することができる。結合されたオブジェクト間の信号は、例えば、キュービットのゲートまたは読み出し動作を実施するなど、量子回路の制御方式で実装されるマイクロ波信号とすることができる。別の例として、信号は、信号パルス、通信信号、または制御コマンド信号とすることができる。負荷補償された調整可能なカプラシステム100は、極低温で動作することができ、実質的に電力を消費せず、単一磁束量子(SFQ)互換信号で制御することができる。
【0018】
負荷補償された調整可能なカプラシステム100は、1つ以上の第1の入力共振器または極としてのフィルタネットワーク102の第1の入力部分、1つ以上の第2の入力共振器または極としてのフィルタネットワーク102の第2の入力部分、1つ以上の第1の出力共振器または極としてのフィルタネットワークの第1の出力部分、および1つ以上の第2の出力共振器または極としてのフィルタネットワークの第2の出力部分を構成するための1つ以上のインピーダンスコンポーネント(例えば、コンデンサ、インダクタ)を含むことができるマイクロ波バンドパスフィルタネットワークから形成される超伝導クロスバースイッチを含むことができる。負荷補償された調整可能なカプラシステム100は、スイッチコントローラ108およびバイアス要素106を含むことができる。フィルタネットワーク102は、バイアス要素106およびスイッチコントローラ108を介して磁束によって制御される可変インダクタンス結合要素を使用して、バー状態(図1Aに示すように構成した場合は活性化状態または結合状態に対応)またはクロス状態(図1Aに示すように構成した場合は非活性化状態または非結合状態に対応)のいずれかの選択されたモードに基づいて、各入力の第1および第2の入力共振器を各第1および第2の出力共振器のそれぞれ1つに結合および分離することができる。
【0019】
前述の可変インダクタンス結合要素は、ジョセフソン接合であることができる。ジョセフソン接合のインダクタンスは、一方では、異なるフィルタセクション(例えば、共振器または極)を互いに結合し、これらの結合されたセクションを介して信号を通過させるための低インダクタンス状態と、他方では、異なるフィルタセクションを互いに分離し、信号が分離されたセクションを通過するのをブロックする高インダクタンス状態との間で切り替えることができる。ジョセフソン接合を低インダクタンス状態と高インダクタンス状態の間で構成および制御して、超伝導クロスバースイッチをバー状態とクロス状態との間で切り替え、クロスバースイッチを通過する信号のルートを制御することができる。ジョセフソン接合は、SQUIDブリッジ回路構成104内のRF SQUIDまたはSQUIDの要素として構成することができる。
【0020】
SQUIDブリッジ回路構成104は、第1のジョセフソン接合の反対側に結合された第1のインダクタおよび第3のインダクタを含むことができる第1のSQUIDを含むことができ、第1のインダクタは、フィルタ回路の第1の極または共振器の少なくとも一部を形成し、第3のインダクタは、フィルタ回路の第3の極または共振器の少なくとも一部を形成する。第2のSQUIDは、第2のジョセフソン接合の反対側に結合された第2のインダクタおよび第3のインダクタによって形成することができ、第3のSQUIDは、第3のジョセフソン接合の反対側に結合された第1のインダクタおよび第4のインダクタによって形成することができ、第4のSQUIDは、第4のジョセフソン接合の反対側に結合された第2のインダクタおよび第4のインダクタによって形成することができる。第2のインダクタは、フィルタ回路の第2の極または共振器の少なくとも一部を形成し、第4のインダクタは、フィルタ回路の第4の極または共振器の少なくとも一部を形成する。
【0021】
ジョセフソン接合は、それぞれのSQUIDに電流が流れていないか、低い電流が誘導されているときに第1のインダクタンスを有し、ある電流またはより高い電流がそれぞれのSQUIDに誘導されて、それが、例えば、約0.1Φ0より大きく、約0.45Φ0より小さい磁束を生成または誘導する所定の閾値にあるときに、第2のインダクタンスを有することができ、ここで、Φ0は磁束量子に等しい。第1のインダクタンス(例えば、
【数1】
、ここで
【数2】
はPlanckの定数を2πで割ったもの、eは電子電荷、Iはジョセフソン接合の臨界電流である)は、所望のセクションの対向する端部間で入力信号の所望の帯域幅部分の通過を可能にするような、フィルタネットワークの所望のセクション間の結合を提供することができる。第2のインダクタンス(例えば、比較的大きなインダクタンス値)は、入力信号の所望の帯域幅部分の通過が、望ましくないセクションの対向する端部間でブロックされるように、フィルタネットワークのセクション間の分離を提供することができる。
【0022】
一例では、フィルタネットワークの第1の極は第1の入力ポートに結合され、フィルタネットワークの第2の極は第2の入力ポートに結合される。さらに、フィルタネットワークの第3の極は第1の出力ポートに結合され、フィルタネットワークの第4の極は第2の出力ポートに結合される。バー状態では、第2のSQUIDおよび第4のSQUIDに磁束が誘導され得、第2および第4のジョセフソン接合に高いインダクタンスを持たせ、一方第1のSQUIDおよび第3のSQUIDには磁束が誘導されず、第1および第3のジョセフソン接合に低いインダクタンスを持たせる。これは、第1の信号が第1の入力ポートから第1の極および第3の極を通って第1の出力ポートに通過することを可能にし、第1の信号が第4の極を通って第2の出力ポートに通過するのをブロックする。加えて、第2の信号は、第2の入力ポートから第2の極および第4の極を通って第2の出力ポートへ通過することができ、第2の信号が第3の極を通って第1の出力ポートへ通過するのをブロックする。
【0023】
クロス状態では、第1のSQUIDおよび第3のSQUIDに磁束が誘導され得、第1および第3のジョセフソン接合に高いインダクタンス持たせ、一方第2のSQUIDおよび第4のSQUIDには磁束が誘導されず、第2および第4のジョセフソン接合に低いインダクタンスを持たせる。これは、第1の信号が第1の入力ポートから第1の極および第4の極を通って第2の出力ポートに通過することを可能にし、第1の信号が第3の極を通って第1の出力ポートに通過するのをブロックする。加えて、第2の信号は、第2の入力ポートから第2の極および第3の極を通って第1の出力ポートへ通過することができ、第2の信号が第4の極を通って第2の出力ポートへ通過するのをブロックする。
【0024】
図2は、クロスバースイッチ回路200および関連するバイアス要素の概略図を図解する。クロスバースイッチ回路は、ポート1のラベルが付いた第1のポート、ポート2のラベルが付いた第2のポート、ポート3のラベルが付いた第3のポート、ポート4のラベルが付いた第4のポートを有するバンドパスフィルタで形成されている。電流は、ポート1に関連付けられた極または共振器に誘導結合され、ポート2に関連付けられた極または共振器に誘導結合された第1の制御ライン202を介して提供される。電流はまた、ポート3に関連付けられた極または共振器に結合され、ポート4に関連付けられた極または共振器に誘導結合された第2の制御ライン204を介して提供される。第1の構成(例えば、バー状態)および第2の構成(例えば、クロス状態)の両方において、電流は、第1の制御ライン202を通って、磁束1入力から磁束1出力への方向に流れる。第1の構成では、電流は、第2の制御ライン204を通って磁束2入力から磁束2出力の方向に流れ、それは、ポート1の第1の信号がポート3にルーティングされ(または逆も同じ)、ポート2の第2の信号がポート4にルーティングされる(または逆も同じ)結果をもたらすが、他のすべての対でのポートの組み合わせは相互に絶縁されている。第2の構成では、電流は、第2の制御ライン204を通って磁束2出力から磁束2入力の方向に流れ、それは、ポート1の第1の信号がポート4にルーティングされ(または逆も同じ)、ポート2の第2の信号がポート3にルーティングされる(または逆も同じ)結果をもたらすが、他のすべての対でのポートの組み合わせは相互に絶縁されている。
【0025】
図2を参照して、第2の構成についてポート1からポート4への信号伝搬を検討する。ポート1からの信号は、バンドパスフィルタに入力結合容量を提供する直列結合コンデンサCc1を介して回路に入る。次いで、信号は、フィルタの第1の極を形成するCr1およびLの並列組み合わせを構成するシャント共振器を通過する。次に、信号は、ジョセフソン接合Jを介してCr4およびLの並列組み合わせによって形成されたフィルタの第4の極に結合され、最後に出力結合コンデンサCc4を通ってポート4へフィルタを出る。ポート2から入る信号は、極Cr2||LおよびCr3||Lと結合要素Cc2、J、およびCc3とによって形成されるバンドパスフィルタを横切ることによって、同様にポート3に送られる。制御磁束は、この設定では、制御磁束によって決定されるこれらの接合の高インダクタンス状態のために、信号が接合JおよびJを通って伝搬できないように構成されている。
【0026】
制御磁束の第1の構成では、JおよびJは高インダクタンス状態にあり、JおよびJは低インダクタンス状態にある。この第1の構成では、ポート1からの信号は、極Cr1||LおよびCr3||Lと結合要素Cc1、J、およびCc3とによって形成されるバンドパスフィルタを介してポート3にルーティングされ、一方、ポート2からの信号は、極Cr2||LおよびCr4||Lと結合要素Cc2、J、およびCc4とによって形成されるバンドパスフィルタを介してポート4にルーティングされる。
【0027】
4つのジョセフソン接合J~Jの各々は、回路の2つのノード間に接続されており、これらのノードはまた、接地されたインダクタに接続されている。例えば、Jは接地されたインダクタLおよびLに接続されている。このようにして、接合の各々は、RF SQUIDを形成する超伝導誘導ループに埋め込まれている。RF SQUIDループがゼロの適用磁束を囲む場合、関連する接合は低インダクタンス状態になり、マイクロ波信号の伝送が可能になる。RF SQUIDループが、Φ/2の実質的な部分である外部から適用される磁束を囲む場合、関連する接合は、高インダクタンスの状態にあり、マイクロ波信号の伝送を可能にしない。したがって、マイクロ波信号が回路を通過する経路は、RF SQUIDループの各々に適用される磁束によって制御される。
【0028】
例えば、実質的にゼロである、磁束ΦONは、接合の低インダクタンス状態に対応し、磁束±Φ/2のかなりの部分である磁束±ΦOFFは、接合の高インダクタンス状態に対応する。例えば、ポート磁束1入力からポート磁束1出力まで制御ライン202に電流を供給することができ、それにより、図2の変圧器を介してインダクタLに結合された磁束は(ΦOFF+ΦON)/2であり、その変圧器を介してインダクタLに結合された磁束は-(ΦOFF+ΦON)/2である(負の符号は、変圧器の反対巻によるものである)。さらに、ポート磁束2入力から磁束2出力まで制御ライン204に電流を供給することができ、それにより、変圧器を介してインダクタLに結合された磁束は(ΦOFF-ΦON)/2であり、インダクタLに結合された磁束は-(ΦOFF-ΦON)/2である(負の符号は、変圧器の反対巻によるものである)。
【0029】
この状況では、L~J~L RF SQUIDで囲まれた磁束は,(ΦOFF+ΦON)/2+(ΦOFF-ΦON)/2=ΦOFFであり、Jは、高インダクタンス状態である。同様に、L~J~L RF SQUIDで囲まれた磁束は、-(ΦOFF+ΦON)/2-(ΦOFF-ΦON)/2=-ΦOFFであり、接合Jもまた高インダクタンス状態である。同じ構成が、±ΦONをL~J~LおよびL~J~Lのループにおいて与え、それによりJおよびJは、低インダクタンス状態である。この制御電流の構成では、ポート1はポート3に接続され、ポート2はポート4に接続されている。磁束2ライン34に供給される電流の符号が逆になり、それにより電流が磁束2出力から磁束2入力に流れる場合、接合JおよびJは、高インダクタンス状態となり、接合JおよびJは、低インダクタンス状態となり、それによりポート1はポート4に接続され、ポート2はポート3に接続される。
【0030】
クロスバースイッチ回路200のいくつかのバージョンを設計することができ、各々が異なる伝達特性を有する。例えば、4次のチェビシェフフィルタ設計で構築されたスイッチは、異なるSパラメータ特性を提供する。したがって、ここで説明するクロスバースイッチは、例えば、帯域幅、リップル、セクション数、リターンロス、等の要件に合わせるために、様々な異なるフィルタ構成で実装することができる。制御信号帯域からRF信号帯域への漏れ電流を最小限に抑えるために、制御信号をフィルタの阻止帯域に制限することができる。帯域がRF通過帯域の帯域と重ならないローパスフィルタを通して制御信号を適用することにより、漏れをさらに減らすことができる。クロスバースイッチを介してルーティングできるRF信号の強度は、接合臨界電流によって制限される。一部の例では、スイッチを通過することができる最大RF電力は約-90dBmである。クロスバースイッチ回路は、接合J~Jの各々を、各々が元の接合よりもN倍大きい臨界電流を有するN接合の直列アレイに置き換えることによって、最大電力を増やすように設計することができる。例えば、N=10(10個の接合、各々×10高い臨界電流を有する)は、最大電力を20dBだけ増加させる。
【0031】
図2のクロスバースイッチ200は、オンザフライで量子回路を再構成することができるコヒーレントルーティングメカニズムを提供する。ライン202および204を通る制御電流磁束1および磁束2をそれぞれ調整することによって、ポート間の接続性を変更することができる。1セットのコントロールでは、ポート1はポート3に接続し、ポート2はポート4に接続し、別のセットでは、ポート1はポート4に接続し、ポート2はポート3に接続する。
【0032】
スイッチ200のクロスバー機能を使用して、2つの量子オブジェクト間に効果的な単極単投(SPST)スイッチを作成することができ、それは、例えば、ソースおよびターゲットの量子オブジェクトをポート1およびポート3にそれぞれ接続し、ソースおよびターゲットのオブジェクトのインダクタンスに等しいインダクタンスを有するシミュレートされた負荷をポート2およびポート4に接続することによって、スイッチの位置に関係なく各オブジェクトの負荷を維持する。このような構成では、クロスバースイッチが1つの位置にあるとき、ソースとターゲットの量子オブジェクトが互いに接続され、スイッチが他の位置にあるとき、各オブジェクトはシミュレートされた負荷に接続され、これにより、接続性に関係なく、各量子オブジェクトの特性エネルギーを維持する。このため、このようなスイッチは、量子オブジェクト間の結合をオンまたはオフにすることによって、量子オブジェクト間の選択的な情報交換を可能にし、一方でまた、両方のオブジェクトへの可変負荷の提示や、例えば、オブジェクト間の単純な調整可能な誘導要素を使用して量子オブジェクトが結合されたときに発生する可能性がある動作周波数の問題のある結果的な変化を回避する。
【0033】
図3は、超伝導クロスバースイッチを含む例示的な負荷補償された調整可能なカプラ回路300の概略回路図を図解する。図示された設計は、例えばアジレントのAdvanced Design Simulation(ADS)ツールを使用したシミュレーションで利用することができる。ジョセフソン接合J~Jからなるジョセフソン接合ブリッジは、図2の回路200における同様のブリッジに対応することができる。回路200と同様に、回路300は、2つの磁束バイアス制御ライン、磁束1および磁束2、を有し、回路図において公称入力および出力ポート、磁束1入力、磁束1出力、磁束2入力、磁束2出力、によってラベル付けされている。いくつかの例では、一方の制御ライン(例えば、磁束1)は、DC制御電流を提供して磁束バイアスを提供するように構成することができるのに対し、他方の制御ライン(例えば、磁束2)は、高速制御電流を提供するように構成することができ、このためスイッチトグルの機能を提供する、すなわち、バーおよびクロスの状態間を切り替える。他の例では、磁束2がDC制御電流を提供することができ、磁束1が高速スイッチトグルとして構成され得る。どちらの場合も、一組の制御ポートをDCまたは低帯域幅伝送ラインに接続して低速制御として指定でき、他方の組の制御ポートを広帯域伝送ラインに接続して高速(スイッチトグル)制御として指定することができる。クロス状態では、ジョセフソン接合JおよびJがオンのとき、各量子オブジェクト302、304は、バラスト(ダミー負荷)L、Lに接続される。例えば、L図1Aの第1のダミー負荷114に対応することができ、L図1Aの第2のダミー負荷116に対応することができる。バー状態では、ジョセフソン接合JおよびJがオンのとき、量子オブジェクト302、304は互いに接続される。
【0034】
バラストL、Lは、量子オブジェクトの誘導負荷がクロス状態とバー状態とで等しくなるようにサイズ設定することができる。すなわち、LおよびLのインダクタンス値は、それぞれターゲットおよびソース量子オブジェクト304、302、およびそれらのそれぞれのシャントインダクタL、Lの特性に基づいて選択することができる。このため、LおよびLは、それぞれの量子オブジェクトの負荷に良く一致するように設計することができる、すなわち、カプラの観点から、Lは、L/ターゲットオブジェクト304システムのようにできるだけ見えるようにすることができ、およびLは、L/ソース量子オブジェクトシステムのようにできるだけ見えるようにすることができる。いくつかの例では、LおよびLのインダクタンス値をほぼ等しくすることができ、4つのジョセフソン接合すべてのサイズをほぼ等しくすることができる。すべての4つのジョセフソン接合J~Jは、すべてのインダクタンスおよびそれらの選択された値と一致するように、いくつかのパラメトリック変動を有することができる。LおよびLの値は、所望の結合強度に基づいて選択することができる。LおよびLのインダクタンス値をほぼ等しくすることもできるが、これらのコンポーネントが等しくない活用事例もある。
【0035】
例示的なシミュレーション方法論では、各量子オブジェクト302、304は、例えば、特定の長さおよびインピーダンスの伝送ラインなどの何らかの共振オブジェクトとして表すことができる。ジョセフソン接合J~Jは、ジョセフソン接合の実際の物理的挙動にかなりよく対応する、すなわち、回路内に何らかの調整可能なインダクタンスを有する、可変インダクタンスのインダクタによってシミュレーションで表すことができる。低インダクタンス状態の接合公称インダクタンスはすべて、例えば、882pHにすることができ、高インダクタンス状態は、例えば、低インダクタンス値よりも50倍大きいインダクタンスを有することができる。コンポーネント値は、入力および出力容量(C、C)が各5fF、シャントインダクタLおよびLが各20pH、ダミー負荷インダクタLおよびLが各20pHになるように作成することができる。コンポーネント値は、信号パスが2次バターワースバンドパスフィルタ応答を近似するように選択することができる。
【0036】
上述のように、図示された構成300において、ライン磁束1を通る電流を一定に保つことができ、一方、ライン磁束2を通る電流を変化させて単一のカプラ制御信号を提供することができる。別の構成では、2つの制御ライン磁束1、磁束2の役割を、電流設定点への対応する変更と交換することができる。このため、図3の負荷補償された調整可能なカプラ300は、接合の対称配置を利用し、2つの動的制御信号の必要性をなくし、回路200と比較してデバイスの動作を単純化する。カプラ300はまた、カプラが動作されたときに、結合されたオブジェクトへの負荷が変化するのを防ぎ、そのようにして、結合されたオブジェクトの共振周波数の望ましくないシフトを回避する。
【0037】
図4は、結合モード404および非結合モード402の両方における図3の回路のSパラメータシミュレーションの一組の重ね合わせたグラフである。実際においてSパラメータプロットは、回路の一部を流れるエネルギーの量を示す。1つの量子オブジェクト(例えば、ターゲット量子オブジェクト302)のシミュレーション出力は、実線のプロットとして示され、別の量子オブジェクト(例えば、ソース量子オブジェクト304)のシミュレーション出力は、破線のプロットとしてグラフ化されている。矢印402の位置で示されるように、シミュレーション結果は、カプラがオフにされたとき(すなわち、オブジェクトが結合されていないとき)、個々のオブジェクトにおいてエネルギーシフトを示さない。結合がオフの場合、プロットは、グラフの上部に矢印402の位置で示されている、Sパラメータにおける非常に小さい下向きの隆起のみを示しており、本質的に電力が流れていないことを示している。結合がオンの場合、プロットは、Sパラメータにおいて非常に大きな減少を示し、大きな電力が流れている(すなわち、2つの量子オブジェクトが結合している)ことを示している。大きなくぼみは、量子オブジェクトが結合中に情報を交換していることを示している。グラフの上部の小さなくぼみは、対応する大きなくぼみとグラフの周波数軸に沿って同じ位置にあるため、プロットは、各量子オブジェクトの動作周波数が結合のオン状態とオフ状態の間で一定のままであることを示している。
【0038】
このため、ここで説明する負荷補償された調整可能なカプラは、超伝導クロスバースイッチを使用して、2つの量子オブジェクトを一緒に結合することと、各々をダミー負荷に結合することとを切り替えることができ、そのため、クロスバースイッチが開いているか閉じているかに関係なく、各量子オブジェクトは常に同じ負荷を見て、これにより、異なる量子オブジェクトの動作周波数の変化に関する懸念を軽減する。
【0039】
図5のフローチャートは、2つの量子オブジェクトを結合および負荷補償して切り離す方法500を示している。第1の量子オブジェクトおよび第2の量子オブジェクトが結合される(502)。この結合は、例えば、図3に図解するように構成された超伝導クロスバースイッチを介して行うことができる。2つの量子オブジェクトの切り離し(504)と同時に、第1の量子オブジェクトを、第2の量子オブジェクトであるかのように第1の量子オブジェクトから見えるように設計された第1のシミュレートされた負荷に結合することができ(506)、第2の量子オブジェクトを、第1の量子オブジェクトであるかのように第2の量子オブジェクトから見えるように設計された第2のシミュレートされた負荷に結合することができる(508)。このようにして、2つの量子オブジェクトを、それらの共振周波数を変更せずに選択的に結合または切り離すことができまる。
【0040】
シミュレートされた負荷は、例えば、インダクタンス値を選択または設定するなどして、そのように設計することができる。例えば、第1のシミュレートされた負荷は、第1の量子オブジェクトが第2の量子オブジェクトに結合されることから経験するのと同じ誘導負荷を第1の量子オブジェクトに提示するサイズのインダクタであることができる。同様に、第2のシミュレートされた負荷は、第2の量子オブジェクトが第1の量子オブジェクトに結合されることから経験するのと同じ誘導負荷を第2の量子オブジェクトに提示するサイズのインダクタであることができる。
【0041】
方法500における量子オブジェクトおよびシミュレートされた負荷は、例えば、図2に示されているクロスバースイッチ200のような、または図3で構成されているような超伝導クロスバースイッチを使用して、それぞれ結合または切り離され得る。例えば、量子オブジェクトは第1の可変インダクタンス結合要素を介して結合することができ、第1の量子オブジェクトは第2の可変インダクタンス結合要素を介して第1のシミュレートされた負荷に結合することができ、第2の量子オブジェクトは第3の可変インダクタンス結合要素を介して第2のシミュレートされた負荷に結合することができる。可変インダクタンス結合要素は、例えば、ジョセフソン接合であり得る。可変インダクタンス結合要素は、第1および第2のシミュレートされた負荷に誘導結合された磁束バイアス制御ラインを通る電流の量と極性を制御することによって、量子オブジェクトとそれぞれのシミュレートされた負荷との間で選択的に結合することを可能にするために、反対のインダクタンス状態の間で切り替えられ得る。そのような制御は、例えば、図1に示されるスイッチコントローラ108のようなスイッチコントローラを使用して実施することができる。
【0042】
例えば、バー状態では、第1および第4の可変インダクタンス結合要素を低インダクタンスに設定し、第2および第3の可変インダクタンス結合要素を高インダクタンスに設定して、量子オブジェクトを結合することができ、クロス状態では、第1および第4の可変インダクタンス結合要素を高インダクタンスに設定し、第2と第3の可変インダクタンス結合要素を低インダクタンスに設定して、各量子オブジェクトをそれぞれのシミュレートされた負荷に結合することができる(すなわち、図5に関して確立された術語を使用して、第1の量子オブジェクトを第1のシミュレートされた負荷に、第2の量子オブジェクトを第2のシミュレートされた負荷に)。
【0043】
上記で説明したのは、本発明の例である。もちろん、本発明を説明する目的で構成要素または方法論の考えられるすべての組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲を含む、本出願の範囲内に入るそのようなすべての変更、修正、および変形を包含することが意図されている。さらに、開示または特許請求の範囲が「ある(a)」、「ある(an)」、「第1の(a first)」、「別の(another)」要素、またはそれらの同等物を記載している場合、そのような要素を1つ以上含むと解釈されるべきであり、そのような要素を2つ以上要求することも除外することもしない。本明細書で使用する場合、「含む(includes)」という用語は、限定することなく含むことを意味し、「含む(including)」という用語は、限定することなく含むことを意味する。「に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。

図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5