(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】パワートレイン
(51)【国際特許分類】
B62M 6/55 20100101AFI20230119BHJP
B62M 11/14 20060101ALI20230119BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B62M6/55
B62M11/14
F16H1/28
(21)【出願番号】P 2020540282
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2019053386
(87)【国際公開番号】W WO2019158503
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-12-27
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】520261817
【氏名又は名称】エドゥ ドリベ エスア
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デレバル,アーサー
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-88134(JP,A)
【文献】特開2017-132440(JP,A)
【文献】特開2017-206264(JP,A)
【文献】特表2021-514894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/55,11/00-11/48,
25/00-25/08
F16H 1/28- 1/48,
3/00- 3/78
48/00-48/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル車両用のパワートレイン(1)であって、
・第1の回転軸(30)を中心に回転するように配置されたクランクセットシャフト(2)と、
・出力伝達チェーンまたはベルト(23)を駆動するように配置された主出力チェーンリング(3)と、
・第1のモータ(40)と、
・第2のモータ(50)と、
・第1の入力要素と、出力要素および太陽ギヤ(5)とを含む遊星ギヤ装置と、を含み、
前記クランクセットシャフト(2)および前記第2のモータ(50)は、前記第1の入力要素を介して前記遊星ギヤ装置に接続されて、前記遊星ギヤ装置の第1の入力が形成され、
前記第1のモータ(40)は前記太陽ギヤ(5)を介して前記遊星ギヤ装置に接続されて、前記遊星ギヤ装置の第2の入力が形成され、
前記出力要素は前記遊星ギヤ装置を前記主出力チェーンリング(3)に接続して、前記遊星ギヤ装置の出力が形成され、
-前記主出力チェーンリング(3)、前記第1の入力要素、前記出力要素および前記太陽ギヤ(5)は、前記第1の回転軸(30)とは異なる同じ第2の回転軸(31)を中心に回転するように配置され、
-前記主出力チェーンリング(3)は前記出力要素と一体であり、
-前記パワートレイン(1)は、
・前記第1の回転軸(30)を中心に回転するように配置され、前記出力伝達チェーンまたはベルト(23)と噛み合う副出力チェーンリング(4)と、
・前記クランクセットシャフト(2)が通常のペダリング方向に回転するとき、前記副出力チェーンリング(4)が前記クランクセットシャフト(2)よりも遅く回転するのを防ぐように配置された第1のフリーホイール(16)と、
・前記クランクセットシャフト(2)と前記第1の入力要素との間で回転を伝達するために回転方向を維持する減速システムとを含むことを特徴とする、
パワートレイン(1)。
【請求項2】
前記第1の入力要素は前記遊星ギヤ装置のリングギヤ(9)であり、前記出力要素は前記遊星ギヤ装置の遊星キャリア(6)である、請求項1に記載のパワートレイン(1)。
【請求項3】
前記第1の入力要素は前記遊星ギヤ装置の遊星キャリア(6)であり、前記出力要素は前記遊星ギヤ装置のリングギヤ(9)である、請求項1に記載のパワートレイン(1)。
【請求項4】
回転方向を維持する前記減速システムは、変形可能な伝達要素(15)
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)。
【請求項5】
前記第2のモータ(50)は、単段減速機構によって前記遊星ギヤ装置の前記第1の入力要素に接続される、請求項1から4のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)。
【請求項6】
前記第1のモータ(40)は、前記太陽ギヤと一体である、請求項1から5のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)。
【請求項7】
前記第1のモータ(40)および前記第2のモータ(50)は、
前記ペダル車両の車幅方向において、前記遊星ギヤ装置の同じ側に配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)。
【請求項8】
・前記第1のモータ(40)の角位置測定要素と、
・前記第2のモータ(50)の角位置測定要素と、
・前記第1のモータ(40)の電流測定要素と、
・前記第2のモータ(50)の電流測定要素と、
・前記第1のモータ(40)と、前記第2のモータ(50)に接続され、前記第1のモータ(40)の前記角位置、前記第2のモータ(50)の前記角位置、前記第1のモータ(40)の前記電流および前記第2のモータ(50)の前記電流に基づいて前記第1のモータ(40)および前記第2のモータ(50)を制御するように配置された制御ユニットであって、電流またはトルク制御に従って前記第2のモータ(50)を制御し、角位置または角速度制御に従って前記第1のモータ(40)を制御するように配置された制御ユニットとをさらに含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記第1のモータを制御するためにギヤ比パラメータにさらに依存するように構成される、請求項8に記載のパワートレイン(1)。
【請求項10】
前記制御ユニットは、回転速度設定値を決定し、該回転速度設定値を前記第1のモータ(40)に課すように構成され、前記回転速度設定値は、前記第2のモータ(50)の前記角位置測定要素によって得られた前記第2のモータ(50)の回転速度および前記ギヤ比パラメータに正比例するように決定される、請求項9に記載のパワートレイン(1)。
【請求項11】
前記制御ユニットは、前記第2のモータ(50)を制御するために、前記パワートレインのギヤ比パラメータおよび支援レベルパラメータにさらに基づく、請求項8から10のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)。
【請求項12】
前記制御ユニットは、電流またはトルク設定値を決定し、該電流またはトルク設定値を前記第2のモータ(50)に課すように構成され、前記電流またはトルク設定値は、前記第1のモータ(40)の前記電流測定要素によって得られた前記第1のモータ(40)のトルクまたは電流に正比例するように決定され、前記パワートレインの前記ギヤ比パラメータおよび前記パワートレインの前記支援レベルパラメータに依存する、請求項11に記載のパワートレイン(1)。
【請求項13】
前記クランクセットシャフト(2)と前記第1の入力要素は、前記第1の入力要素が前記クランクセットシャフト(2)よりも速く回転するように接続される、請求項1から12のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)。
【請求項14】
前記主出力チェーンリング(3)は、前記副出力チェーンリング(4)よりも小さい直径を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)。
【請求項15】
前記第2のモータ(50)は、前記第1の入力要素が前記第2のモータ(50)
の回転子よりも遅く回転するように前記第1の入力要素に接続される、請求項1から14のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)。
【請求項16】
前記第2のモータ(50)が前記クランクセットシャフト(2)を前記ペダル車両の前進運動に対応する回転方向に駆動するのを防止するように配置された第2のフリーホイール(17)をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のパワートレイン(1)と、車輪と、主出力チェーンリング(3)、副出力チェーンリング(4)および車輪のピニオンと噛み合う出力
伝達チェーンまたはベルトと、を含むペダル車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダル車両、特に自転車または電動自転車用のパワートレインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、遊星ギヤ装置、クランクセットシャフト、出力チェーンリング、第1のモータおよび第2のモータからなる自転車のパワートレインを記載している。遊星ギヤ装置は、リングギヤ、太陽ギヤ、遊星キャリアで構成されている。
【0003】
このパワートレインでは、遊星キャリアはデュアル遊星ギヤを含み、これは、製造、組み立てが複雑で、高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、製造が簡単で、軽く、頑丈で、コンパクトで、特に効率的なペダル車両用のパワートレインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、本発明は、ペダル車両用のパワートレインを提供し、パワートレインは
・第1の回転軸を中心に回転するように配置されたクランクセットシャフト、
・出力伝達チェーンまたはベルトを駆動するように配置された主出力チェーンリング、
・第1のモータ、
・第2のモータ、
・第1の入力要素、出力要素および太陽ギヤを含む遊星ギヤ装置を含み、
クランクセットシャフトおよび第2のモータは、第1の入力要素を介して遊星ギヤ装置に接続され、それにより遊星ギヤ装置の第1の入力が形成され、
第1のモータは太陽ギヤを介して遊星ギヤ装置に接続され、それにより遊星ギヤ装置の第2の入力が形成され、
出力要素は遊星ギヤ装置を主出力チェーンリングに接続し、それにより遊星ギヤ装置の出力が形成され、
-主出力チェーンリング、第1の入力要素、出力要素および太陽ギヤは、第1の回転軸とは異なる同じ第2の回転軸を中心に回転するように配置され、
-主出力チェーンリングは出力要素と一体であり、
-パワートレインは、
・第1の回転軸を中心に回転するように配置され、出力伝達チェーンまたはベルトと噛み合う副出力チェーンリング、
・クランクセットシャフトが通常のペダリング方向に回転するとき、副出力チェーンリングがクランクセットシャフトよりも遅く回転するのを防ぐように配置された第1のフリーホイール、
・クランクセットシャフトと第1の入力要素との間で回転を伝達するために回転方向を維持する減速システムを含む、
ことを特徴とする。
【0006】
本発明によるパワートレインでは、主出力チェーンリング、第1の入力要素、出力要素および太陽ギヤは、クランクセットのシャフトの回転軸から空間的にオフセットされた回転軸を有する。これにより、太陽ギヤのサイズをクランクセットのシャフトの直径とは無関係にすることができる。これにより、直径の小さい太陽ギヤを取り付けることが可能になり、遊星ギヤ装置の比率を高めることができる。したがって、ダブル遊星ギヤを使用せずに遊星ギヤ装置に十分な比率を得ることができる。これにより、パワートレインの製造が容易になり、取り付けが容易になり、安価になる。
【0007】
本発明によるパワートレインはまた、第1のモータと出力チェーンリングとの間の高い減速比を達成することを可能にする。実際、この減速比は、遊星ギヤ装置の比率、クランクセットシャフトと遊星ギヤ装置の第1の入力との間のギヤ減速比、および副チェーンリングと主出力チェーンリングとの間の歯数の比率に依存する。
【0008】
主出力チェーンリングを出力要素に接続すると、遊星ギヤ装置の出力は、減速せずに主出力チェーンリングを駆動できる。これにより、パワートレインの組み立てが特に容易になり、特に軽量でコンパクトになる。さらに、これは特に高い効率をもたらす。
【0009】
主出力チェーンリングとは異なる軸を中心に回転する副出力チェーンリングは、クランクセットのシャフトの周りで出力伝達チェーンまたはベルトをガイドし、チェーンの下部ストランドと上部ストランドを広げる。したがって、これにより、伝達チェーンまたはベルトのストランドと後輪との間に、車両フレームの後部ベースが通過するための十分なスペースが確保される。この後部ベースは、後輪の取り付けポイントをセンターモータの取り付けブラケットに接続するフレームのチューブである。好ましくは、副出力チェーンリングは、パワートレインのケーシングの外側に配置される。
【0010】
クランクセットのシャフトは第1の入力要素のシャフトとは異なるため、クランクセットと第1の入力要素との間に第1のギヤ減速がある。これは、遊星ギヤ装置の回転速度を上げながらトルクを低減する。その結果、遊星ギヤ装置の堅牢性要件が軽減され、より軽い遊星ギヤ装置が可能になる。さらに、遊星ギヤ装置のコンポーネントの回転が速いため、一般に大型のモータよりも高速でトルクが小さい小型のモータと互換性がある。
【0011】
第1のフリーホイールは、クランクセットシャフトから副出力チェーンリングへの機械的な動力伝達を可能にするように設計されている。第1のフリーホイールは、好ましくは直接、クランクセットシャフトと副出力チェーンリングとの間に配置される。ロック位置では、クランクセットシャフトは副出力チェーンリングを直接駆動する。フリー位置では、副出力チェーンリングはクランクセットシャフトよりも速く回転できる。フリーホイールのこの位置により、パワートレインの特に低い第1のギヤ比を達成できる。
【0012】
さらに、第1のフリーホイールは、特定の条件下で、クランクセットシャフトが副出力チェーンリングを直接駆動することを可能にし、これにより、後輪を駆動する出力伝達チェーンまたはベルトが駆動される。次に、すべてのペダリング力が、副出力チェーンリングを介して出力伝達チェーンまたはベルトに直接伝達される。したがって、遊星ギヤ装置を含む伝達システムの残りの部分から負荷が軽減され、高い機械的効率が可能になる。これは、たとえば、パワートレインの電気システムがオフになっている場合、または動力支援が無効になっていて、パワートレインの最も低いギヤ比が選択されている場合に発生する。
【0013】
副出力チェーンリングはまた、クランクセットの瞬間トルクが一定の閾値を超え、第1のモータがその最大トルクで飽和した場合、動力の一部を伝達することができる。このペダル入力の期間中、パワートレインのギヤ比の瞬間値は減少し、たとえば、設定されたギヤ比が低い場合、第1のフリーホイールが動作を開始し、副出力チェーンリングを駆動する可能性があり、副出力チェーンリングは、サイクリストの過剰なトルクを出力伝達チェーンまたはベルトに伝達する。動力支援がアクティブになると発生する可能性があるこの状態が発生すると、出力伝達チェーンまたはベルトは、一方では遊星ギヤ装置および主出力チェーンリングを介して、他方では副出力チェーンリングを介して動力を受け取る。副出力チェーンリングおよび第1のフリーホイールの存在は、パワートレインのギヤ比が1未満になるのを防ぐ。
【0014】
興味深いことに、パワートレインには「通常の動作モード」と呼ばれる動作モードがあり、モータとサイクリストの動力の合計である全動力が主出力チェーンリングに供給される。この主出力チェーンリングは、出力伝達チェーンまたはベルトを介して後輪に動力を伝達する。この動作モードは、電動自転車を使用するサイクリストが最も頻繁に使用するモードである。
【0015】
本発明によるパワートレインでは、回転方向を維持する減速システムによる伝達装置が、クランクセットシャフトと遊星ギヤ装置の第1の入力との間に存在する。このギヤ減速システムにより、角速度のギヤ減速が可能になる。これは、クランクセットの速度が電気モータの速度よりもはるかに遅いため、特に興味深いものである。
【0016】
この文書の目的上、通常のペダリング方向とは、ペダル車両の前進に対応するクランクセットのシャフトの回転方向である。パワートレインのカップリングのため、パワートレインの要素はそれぞれ、この通常のペダリング方向に対応する回転方向を有することが好ましい。
【0017】
本発明によるパワートレインのさまざまな特性により、その要素は、伝達段の数を比較的少なく保ちながら、特に大きな機械的減速/ギヤ減速比を有することができる。したがって、パワートレインは、サイズと重量を低く抑えながら優れた効率を提供する。
【0018】
伝達段の数が少ないと、伝達効率が最適化される。また、パワートレインの各要素間の伝達クリアランスを低減し、パワートレインの制御精度を向上させることができる。この制御精度は、第1のモータが第2のモータの速度に基づいて速度制御される場合に特に便利である。
【0019】
パワートレインの利点は、クランクセットのシャフトと遊星ギヤ装置の第1の入力要素との間にギヤ減速を配置できることである。これは、遊星ギヤ装置のすべての要素がより速く、より少ないトルクで回転することを意味する。これにより、それらの要素にかかる機械的ストレスが軽減される。
【0020】
本発明によるパワートレインの別の利点は、無段変速比を提供することである。
【0021】
好ましくは、主および副出力チェーンリングは、ペダル車両の後輪を駆動する伝達チェーンまたはベルトと直接的または間接的に噛み合う。しかしながら、本発明の範囲内で、出力伝達チェーンまたはベルトを駆動するための他のいかなる機構も可能である。
【0022】
好ましくは、パワートレインは、第1および第2のモータを制御するための制御ユニットを含む。
【0023】
クランクセットのシャフトと副出力チェーンリングが同じ回転軸を有するという事実は、クランクセットシャフトが、主出力チェーンリングを後輪に接続する出力伝達チェーンまたはベルトの経路にないことを意味する。
【0024】
好ましくは、第1の回転軸および第2の回転軸は平行である。好ましくは、第2のモータの回転軸もそれらに平行である。
【0025】
この文書の目的上、2つの接続または連接された要素は、直接または間接的に接続または連接され得る。それらは、たとえば、少なくとも1つの中間歯車、ベルトおよび/またはローラを介して直接的または間接的に噛み合わされてもよい。
【0026】
この文書の目的上、「入力」および「出力」という用語は、運動連鎖における入力および出力を意味すると理解されるべきである。入力は好ましくは機械的動力入力であり、出力は好ましくは機械的動力出力である。
【0027】
この文書の目的上、遊星ギヤ装置の比率は遊星ギヤ装置の減速比である。シングル遊星ギヤを備える遊星ギヤ装置の場合、これは、太陽ギヤの直径に対するリングギヤの直径の比率である。ここでの遊星ギヤ装置の比率は、好ましくは5~10の間である。
【0028】
この文書の目的上、ペダル車両は、たとえば、自転車、モペット、三輪車とすることができる。
【0029】
この文書の目的上、「パワートレインのギヤ比」は、副出力チェーンリングの速度とクランクセットのシャフトの速度との間の比率として定義される。「ギヤ比パラメータ」とも呼ばれる。これは、制御インターフェースを介してサイクリストが手動で制御したり、他のパラメータに基づいて制御ユニットが自動で計算したりできるパラメータである。
【0030】
この文書の目的上、「回転軸を中心に回転するように配置された」要素は、その軸を中心に本質的に対称である要素であることが好ましい。
【0031】
この文書の目的上、2つのオブジェクト間の「固定比率」とは、それらの回転速度が一定の比率であることを意味する。
【0032】
この文書の目的上、「パワートレインの支援レベル」とは、サイクリストが提供する動力に対する、電気支援が提供する動力の割合を意味する。2つのモータの組み合わせの動力を、2つのモータとサイクリストの動力の組み合わせの動力の合計で割った値として計算できる。「支援レベルパラメータ」と呼ぶこともできる。これは、制御インターフェースを介してサイクリストが手動で制御したり、他のパラメータに基づいて制御ユニットが自動で計算したりできるパラメータである。
【0033】
この文書の目的上、角位置測定値は角速度測定値と同等である。実際、本発明によるパワートレインは、好ましくは、このモータの角位置からモータのうちの1つの角速度を決定する手段を含む。
【0034】
この文書の目的上、電流測定値はトルク測定値と同等である。実際、本発明によるパワートレインは、好ましくは、このモータに供給される電流からモータのうちの1つのトルクを決定する手段を含む。
【0035】
遊星ギヤ装置は、リングギヤ、遊星キャリア、太陽ギヤで構成されている。遊星キャリアには遊星ギヤが含まれる。太陽ギヤは、内部太陽ギヤまたは太陽とも呼ばれる。リングギヤは、外部太陽ギヤとも呼ばれる。太陽ギヤおよびリングギヤは、好ましくは、衛星を介して接続される。
【0036】
好ましくは、遊星キャリアは、単純な遊星ギヤのみを含む。実際、本発明によるパワートレインは、二重遊星ギヤの使用を回避する。
【0037】
好ましくは、パワートレインは、1つ以上のバッテリを含む。
【0038】
好ましくは、主出力チェーンリングは、第1のモータの軸の周りに配置され、かつ遊星ギヤ装置と同軸の中空シャフトに固定される。
【0039】
好ましくは、副出力チェーンリングは、クランクセットシャフトの周りに配置され、かつクランクセットのシャフトと同軸の中空シャフトに取り付けられる。
【0040】
主出力チェーンリングは「第1の出力チェーンリング」と呼ばれ、副出力チェーンリングは「第2の出力チェーンリング」と呼ばれる。
【0041】
クランクセットのシャフトと第1の入力要素との間の伝達は、第1の入力要素がクランクセットシャフトと同じ方向に回転するように、伝達機構を介して行われる。
【0042】
好ましくは、主出力チェーンリングおよび副出力チェーンリングは、出力伝達チェーンまたは出力伝達ベルトを介してペダル車両の後輪に接続される。
【0043】
クランクセットのシャフトの回転は、ペダル車両を使用するサイクリストのペダルを踏む運動によって引き起こされる。クランクセットのシャフトを入力として使用する遊星ギヤ装置を使用すると、クランクセットシャフトの回転と、主出力チェーンリングの回転および副出力チェーンリングの回転との間のギヤ比を変更できる。
【0044】
好ましくは、モータの制御は、閉ループ制御とも呼ばれるフィードバック制御である。
【0045】
本発明によるパワートレインは、バックペダルブレーキとして作動させることができ、これにより、ブレーキエネルギーを回収してバッテリを再充電することができる。次に、好ましくは、パワートレインは、後輪がチェーンを駆動して運動を主出力チェーンリングに伝達できるように配置される。これは、たとえば、後輪のピニオンを後輪のハブの固定位置に取り付けることによって行うことができる。したがって、ペダル車両が坂を下っている場合、チェーンは、主出力チェーンリングを駆動しながら回転する。これにより、第1のモータおよび/またはクランクセットは、通常のペダリング方向に対応する方向に回転する。サイクリストがブレーキをかけたい場合は、クランクセットを後方に、つまり通常のペダル操作方向と反対方向に操作できる。クランクセットの位置は、第2のモータの角位置の測定要素、たとえば第2のセンサによって決定できる。好ましくは、第2のモータは、その後、制御ユニットによって制御されない。好ましくは、第1のモータは、モータが発電機として機能するという事実に対応する負のトルク設定点で、トルクまたは電流制御される。この負のトルク設定点は、クランクセットによって作られる負の角度に比例することが好ましい。この角度の測定値は、サイクリストがクランクセットを後方に操作した瞬間にゼロに設定される。したがって、サイクリストがクランクセットを後方に動かすと、第1のモータは自転車にブレーキをかけ始める。サイクリストは、第1のモータのブレーキトルクに比例するトルクを感じ、クランクセットを前に動かそうとする。したがって、これは安定したシステムである。サイクリストが後ろに動かすほど、第1のモータはブレーキをかける。サイクリストがクランクセットへの後方圧力を解放すると、クランクセットが前方に動き、第1のモータは自転車にブレーキをかけるのを停止する。主出力チェーンリングが遊星キャリアに接続されている場合、遊星キャリアはディファレンシャルとして機能する。したがって、これは、第1のモータを通常のペダリング方向に対応する方向に回転させる傾向がある。次に、第1のモータは発電機のように制御され、自転車にブレーキをかけ、バッテリに電力を送る。このシステムは、たとえば魚雷システムのようなバックペダルで作動させることができる。ブレーキの力、したがってバッテリに供給されるエネルギーの量は、サイクリストによって加えられるバックペダルの力に従って制御することができる。
【0046】
本発明の第1の実施形態では、第1の入力要素は遊星ギヤ装置のリングギヤであり、出力要素は遊星ギヤ装置の遊星キャリアである。
【0047】
この実施形態の好ましい例によれば、クランクセットのシャフトは固定比でリングギヤに接続され、第2のモータの回転子は固定比でリングギヤに接続され、第1のモータの回転子は固定比で太陽ギヤに接続され、リングギヤは遊星ギヤ装置の第1の入力を形成し、太陽ギヤは遊星ギヤ装置の第2の入力を形成し、遊星キャリアは遊星ギヤ装置の出力を形成し、遊星キャリアは主出力チェーンリングと一体である。より好ましくは、第1のモータの回転子は、太陽ギヤと一体である。
【0048】
本発明の第2の実施形態では、第1の入力要素は遊星ギヤ装置の遊星キャリアであり、出力要素は遊星ギヤ装置のリングギヤである。
【0049】
この実施形態の好ましい例によれば、クランクセットシャフトは固定比で遊星キャリアに接続され、第2のモータの回転子は固定比で遊星キャリアに接続され、第1のモータの回転子は固定比で太陽ギヤに接続され、遊星キャリアと太陽ギヤは遊星ギヤ装置の2つの入力を形成し、リングギヤは遊星ギヤ装置の出力を形成し、リングギヤは固定比で主出力チェーンリングに接続される。より好ましくは、第1のモータの回転子は、太陽ギヤと一体である。
【0050】
本発明の実施形態では、回転方向を維持する減速システムは、変形可能な伝達要素、たとえばチェーンまたはベルトを含む。
【0051】
この文書の目的上、変形可能な伝達要素は、たとえば、可撓性ベルトであり得る。それは、好ましくは可撓性材料でできており、好ましくはその内面に歯またはノッチが付いているベルトであってもよい。チェーンにすることもできる。
【0052】
変形可能な伝達要素の使用はまた、ギヤの使用と比較して、伝達における許容差、すなわちクリアランスを低減することを可能にする。
【0053】
回転方向を保持する減速システムは、変形可能な伝達要素、二重ギヤ段、または歯車の1つに内歯があるギヤであることが好ましいが、これは、これらの各伝達システムでは、入力の回転方向が出力の回転方向と同じであるからである。
【0054】
ギヤ伝達とは対照的に、変形可能な伝達要素による伝達は、両端の回転要素間の中心距離を選択できる。これにより、設計の自由度が大幅に向上する。また、システムのサイズを大きくすることなく、クランクセットシャフトと遊星ギヤ装置の第1の入力との間の大きなギヤ減速比を達成することができる。この高いギヤ減速比により、比較的小径のクランクセットシャフトを選択でき、パワートレインの重量を軽減できる。また、電気モータのサイズも小さくなる。これにより、パワートレインのサイズを大きくすることなく、クランクセットのシャフトと第1の入力要素との間のギヤ減速比が向上する。
【0055】
さらに、クランクセットのシャフトの速度を遊星ギヤ装置の第1の入力まで減速するために変形可能な伝達要素を使用すると、クランクセットのシャフトと遊星ギヤ装置の軸との間の距離が特に大きくなる。これにより、遊星ギヤ装置のリングギヤのサイズを大きくして比率を上げることができる。遊星ギヤ装置の比率を上げる目的は、両方の電気モータの速度を上げて、これらのモータのサイズを小さくすることである。これにより、パワートレインの重量と体積が削減される。このようにして、2つの電気モータの直径を小さくして、両方をパワートレインの同じ側に配置することができる。
【0056】
変形可能な伝達要素は、クランクセットを電気モータや伝達装置によって引き起こされる振動から分離する。これにより、サイクリストの足が感じる振動が抑えられ、快適さが向上する。
【0057】
本発明の一実施形態では、第2のモータは、単段減速機構によって遊星ギヤ装置の第1の入力要素に接続される。たとえば、第2のモータの回転子を第1の入力要素と直接噛み合わせることができる。これにより、損失とギヤのクリアランスが制限される。
【0058】
本発明の一実施形態では、第1のモータは太陽ギヤと一体である。
【0059】
本発明の一実施形態では、第1のモータおよび第2のモータは遊星ギヤ装置の同じ側に配置される。この設計により、2つのモータが、両方とも接続され得る同じ電子基板に近接しているため、パワートレインの体積を削減し、組み立てを容易にすることができる。好ましくは、モータは、パワートレインの出力チェーンリングとは反対側に配置される。
【0060】
本発明の実施形態では、パワートレインはさらに
・第1のモータの角位置測定要素、
・第2のモータの角位置測定要素、
・第1のモータの電流測定要素、
・第2のモータの電流測定要素、
・第1のモータ、第2のモータに接続され、第1のモータの角位置、第2のモータの角位置、第1のモータの電流および第2のモータの電流に基づいて第1のモータおよび第2のモータを制御するように配置された制御ユニットであって、電流またはトルク制御に従って第2のモータを制御し、角位置または角速度制御に従って第1のモータを制御するように配置された制御ユニットを含む。
【0061】
本発明の一実施形態では、第1のモータの役割は、パワートレインのギヤ比を制御することである。その機能の1つは、所定の伝達比を提供することである。この伝達比は、クランクセットのシャフトの角速度と副出力チェーンリングの角速度との比である。この変速比は、たとえば、ペダル車両のユーザによって提供されるギヤ比パラメータに基づいて決定され得るか、またはサイクリストに自動ギヤチェンジを提供するために制御ユニットによって決定され得る。この決定は、特に、ギヤシフトアルゴリズムによって実行することができる。第1のモータは、好ましくは、たとえば、角位置または角速度設定点が尊重されるように第1のモータを制御する制御ユニットを介して、角位置または角速度で制御される。
【0062】
本発明の一実施形態では、第2のモータの役割は、パワートレインの正しいレベルの支援を管理することである。その機能の1つは、クランクセットにトルクを加えることでサイクリストの動きを支援することである。好ましくは、支援のレベルは、とりわけ支援レベルパラメータに基づいて制御ユニットによって決定される。支援レベルパラメータは、ユーザが決定するか、パワートレインの制御ユニットが自動的に決定できる。支援レベルは、パワートレインのギヤ比とは無関係であることが好ましい。第2のモータは、好ましくは、たとえば、電流またはトルクの設定値が満たされるように第2のモータを制御する制御ユニットを介して電流またはトルクで制御される。
【0063】
好ましくは、制御ユニットは、第1のモータの角位置測定要素、第2のモータの角位置測定要素、第1のモータの電流測定要素、および第2のモータの電流測定要素に電気的に接続される。
【0064】
興味深いことに、位置制御と速度制御の間には、2つの値の間に直接的な数学的関係があるため、基本的な違いはない。角速度は、角位置の時間微分である。たとえば、一定の角速度で動作するようにモータを制御することは、時間とともに直線的に変化する角位置を追跡するようにモータを制御することに似ている。
【0065】
たとえば、第1および第2のモータの制御は、第1の実施形態では以下のように行うことができる。
【0066】
自転車の後輪の角速度ω
Rは、副出力チェーンリングω
platの角速度に比例する。
自転車の後輪の角速度と副出力チェーンリングの角速度との間の伝達比であるR
Rを使用する。
副出力チェーンリングの角速度は次のように与えられる。
ここで、R
outは副出力チェーンリングと主出力チェーンリングとの間の歯数の比率、R
Cはクランクセットシャフトとリングギヤとの間のギヤ減速比、ω
M1は第1のモータの角速度、ω
pedはクランクセットの角速度およびRは遊星ギヤ装置の比率である。
【0067】
クランクセット角速度は、第2のモータの測定角速度ω
mes
M2から次のように決定できる。
ここで、R
M2は第2のモータとリングギヤとの間の減速比である。R
M2は、5と15の間であることが好ましい。
【0068】
制御ユニットは、ギヤ比パラメータGC(ギヤ係数)と第2のモータの測定角速度ω
mes
M2を使用して、
GCパラメータが一定の場合、後輪の角速度がクランクセットの角速度に比例するように、第1のモータに課される角速度設定値を決定する。方程式を組み合わせると、次のようになる。
【0069】
したがって、ωcons
M1は、第1のモータに課される角速度設定値である。同様に、単にこの速度設定値ωcons
M1の積分である位置設定値を割り当てることにより、第1のモータを所定の位置に制御できる。
【0070】
遊星ギヤ装置のトルク方程式により、次の式が得られる。
ここで、C
M1は第1のモータのトルク、C
courはリングギヤのトルク、C
PSは遊星キャリアのトルクである。
【0071】
クランクセットのトルクおよび第2のモータのトルクがリングギヤで加算されることがわかっているため、第1のモータで測定されたトルクC
M1と第2のモータで測定されたトルクC
M2からクランクセットのトルクC
pedを計算できる。
これにより、ほとんどのペダル車両のパワートレインの場合のように、トルクセンサが不要になる。
【0072】
AF(支援因子)支援のレベルのパラメータは、たとえば、電気モータから供給される動力と主出力チェーンリングに供給される総動力との比率に等しいと考えることができる。
【0073】
動力が角速度を乗じたトルクに等しいことを考慮に入れると、所望の支援レベルパラメータに到達するのに十分な第2のモータのトルクを、第1のモータのトルクC
M1に基づいて次の方程式のように決定できる。
【0074】
したがって、Ccons
M2は、第2のモータに課せられるトルクまたは電流の設定値である。
【0075】
上記のように、第1のモータの速度制御は、伝達クリアランスに非常に敏感である。実際、太陽ギヤと遊星ギヤ装置の第1の入力との同期は、パワートレインのギヤ比に比例する特定の乗算係数を介して行われる。太陽ギヤの瞬時角位置は、第1のモータの角位置センサを介して認識される。遊星ギヤ装置の第1の入力の角位置は、第2のモータの角位置センサによって読み取られた角位置から導き出される。したがって、第2のモータと遊星ギヤ装置の第1の入力との間の伝達クリアランスを制限することが好ましい。したがって、伝達クリアランスを低減するために、第2のモータと遊星ギヤ装置の第1の入力との間に1つの減速段のみを設けることが好ましい。同様に、遊星ギヤ装置セットの第1の入力の位置は、第1の入力とクランクセットのシャフトとの間の伝達クリアランスの影響を受ける。興味深いことに、歯付きベルトなどの変形可能な伝達要素を使用することでも伝達クリアランスが大幅に減少する。
【0076】
本発明の実施形態では、制御ユニットは、電流またはトルク設定点を決定し、該電流またはトルク設定点を第2のモータに課すように配置され、電流またはトルク設定点は、第1のモータの電流測定要素によって得られた第1のモータのトルクまたは電流に正比例するように決定され、パワートレインのギヤ比パラメータ(GC)およびパワートレインの支援レベルパラメータ(AF)に依存する。
【0077】
本発明の一実施形態では、クランクセットシャフトと第1の入力要素は、第1の入力要素がクランクセットシャフトよりも速く回転するように接続される。これにより、ギヤの減速が可能になる。したがって、トルクが低いため、遊星ギヤ装置はほとんど機械的ストレスを受けない。さらに、これにより遊星ギヤ装置の要素の回転速度が増加し、これにより、高速で回転する電気モータを使用できるため、サイズが小さくなる。
【0078】
本発明の一実施形態では、主出力チェーンリングは、副出力チェーンリングよりも小さい直径を有する。副出力チェーンリングは、たとえば、主出力チェーンリングの直径よりも1.5から3倍大きい直径を有することができる。
【0079】
本発明の一実施形態では、第2のモータは、第1の入力要素が第2のモータの回転子よりも遅く回転するように、第1の入力要素に接続される。これにより、第2のモータの回転子のトルクを低減して回転速度を上げることができ、第2のモータを小型化することができる。
【0080】
本発明の一実施形態では、パワートレインはプリント回路基板をさらに含み、第1のモータの角位置測定要素は第1のセンサを含み、第2のモータの角位置測定要素は第2のセンサを含み、第1のセンサおよび第2のセンサは、好ましくは、プリント回路基板上に配置される。プリント回路基板は、好ましくは平坦である。
【0081】
本発明の一実施形態では、パワートレインは、第2のモータがクランクセットシャフトをペダル車両の前進運動に対応する回転方向に駆動するのを防止するように配置された第2のフリーホイールをさらに含む。
【0082】
本発明は、
・本発明の実施形態の1つによるパワートレインと、
・車輪と、
・主出力チェーンリング、副出力チェーンリングおよび車輪のピニオンと噛み合う出力伝達チェーンまたはベルトと、を含むペダル車両をさらに提供する。
【0083】
この車輪は、好ましくはペダル車両の後輪である。さらに、ペダル車両は、出力伝達チェーンまたはベルトと係合して出力駆動チェーンまたはベルトの張力を向上させるテンションローラを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明を読むと明らかになり、その理解のために添付の図面を参照する必要がある。
【
図1】本発明の第1の実施形態の第1の変形の概略断面図を示す。
【
図2】本発明の第1の実施形態の第2の変形の概略断面図を示す。
【
図3】本発明の実施形態によるパワートレインの内部運動学連鎖を非常に概略的に示す。
【
図4】本発明の実施形態によるパワートレインと、ペダル車両の後輪への伝達装置の側面図を示す。
【
図5】本発明による動力支援を平滑化する第1の方法を示す。
【
図6】本発明によるパワートレインに適用できる伝達スリップ防止の方法を図式化している。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本発明は、特定の実施形態および図を参照して説明されるが、本発明はそれらによって限定されるものではない。説明された図面または図は、単なる概略であり、限定するものではない。
【0086】
この文書の目的上、「第1」および「第2」という用語は、異なる要素を区別するためにのみ使用されており、要素間の順序を意味するものではない。
【0087】
図において、同一または類似の要素は、同じ符号を有する場合がある。
【0088】
図1は、本発明の第1の実施形態の第1の変形の概略断面図を示している。
【0089】
パワートレイン1は、同じ回転軸を備えたクランクセットシャフト2と副出力チェーンリング4を含む。この軸は、第1の回転軸30と呼ばれることがある。好ましくは、クランクセットシャフト2は、2つのクランク18に取り付けられる。好ましくは、パワートレイン1はケーシング19を含むものとする。
【0090】
パワートレイン1は、遊星キャリア6と共に回転するように、好ましくは遊星キャリア6の一端において遊星キャリア6に取り付けられた主出力チェーンリング3を含む。
【0091】
パワートレイン1はまた、ケーシング19の側壁を通過する副出力中空シャフト25に取り付けられた副出力チェーンリング4を含む。副出力中空シャフト25は、クランクセットシャフト2の周りのベアリングに取り付けられている。第1のフリーホイール16は、クランクセットシャフト2が通常のペダリング方向に作動するとき、副出力チェーンリング4がクランクセットシャフト2よりも低速で回転できないように、クランクセットシャフト2と副出力中空シャフト25との間に設置されるものとする。
【0092】
パワートレイン1は、第1のモータ40および第2のモータ50を含む。第1のモータ40は、ステータ46と、好ましくは磁石48を含む回転子47とを含む。回転子47は、第2の回転軸31を中心に回転するように配置される。回転子47のトルクは、回転子のシャフト43を介して太陽ギヤ5に伝達される。第2のモータ50は、ステータ56と、好ましくは磁石58を含む回転子57とを含む。回転子57は、第3の回転軸32を中心に回転するように配置される。トルクの回転子57は、回転子のシャフト53を介してピニオン12に伝達される。
【0093】
第1のフリーホイール16の機能は、たとえモータ40、50に動力が供給されていなくても、クランクセットシャフト2から伝達チェーン23への純粋に機械的な動力伝達を可能にすることである。ロック位置では、フリーホイール16により、クランクセットシャフト2が副出力チェーンリング4と一体になり、自由位置では、出力チェーンリング4は、クランクセットシャフト2が通常のペダリング方向に作動するとき、クランクセットシャフト2よりも自由に速く回転する。
【0094】
パワートレイン1は、好ましくは、第1のモータ40の電流測定要素および第2のモータ50の電流測定要素を含む。
【0095】
さらに、パワートレイン1は、好ましくはプリント回路基板20に取り付けられた制御ユニットを含むことが好ましい。プリント回路基板20は、第2の回転軸31および第3の回転軸32に対して垂直に配置されることが好ましい。
【0096】
好ましくは、第1の測定磁石42は、第1のモータ40のシャフト43の一端に取り付けられ、第2の測定磁石52は、第2のモータ50のシャフト53の一端に取り付けられる。
【0097】
好ましくは、第1のセンサ41は、第2の回転軸31にほぼ沿ってプリント回路基板20に取り付けられる。第1のセンサ41および第1の測定磁石42は、第1のモータ40の回転子47の角位置測定要素の一部である。
【0098】
好ましくは、第2のセンサ51は、ほぼ第3の回転軸32の軸においてプリント回路基板20に取り付けられる。第2のセンサ51および第2の測定磁石52は、第2のモータ50の回転子57の角位置測定要素の一部である。
【0099】
制御ユニットは、第1のモータ40の角位置、第2のモータ50の角位置、第1のモータ40の電流および第2のモータ50の電流に基づいて、第1のモータ40および第2のモータ50を制御し、これらの情報は測定要素によって制御ユニットに提供されている。
【0100】
制御ユニットは、電流またはトルクで第2のモータ50を制御する。制御ユニットは、角位置または角速度で第1のモータ40を制御する。
【0101】
パワートレイン1は、第1の入力要素、出力要素および太陽ギヤ5を含む遊星ギヤ装置を含む。
【0102】
パワートレイン1は、クランクセットシャフト2と第1の入力要素との間で回転を伝達するための変形可能な伝達要素15、たとえば、チェーンまたはベルトを含む。この変形可能な伝達要素15は、回転方向を維持する減速システムを形成する。
【0103】
本発明の第1の実施形態では、
図1および
図2に示されているが、第1の入力要素はリングギヤ9であり、出力要素は遊星キャリア6である。好ましくは、遊星キャリア6は、遊星ギヤシャフト7を中心に回転するように配置された少なくとも1つの衛星8を含む。好ましくは、リングギヤ9は、その内歯10を介して少なくとも1つの遊星ギヤ8と噛み合っている。好ましくは、太陽ギヤ5は、少なくとも1つの遊星ギヤ8と噛み合っている。
【0104】
本発明の一実施形態では、第1の歯車13は、クランクセットシャフト2と一体である。第1の歯車13は、変形可能な伝達要素15によって第2の歯車14に接続されている。第2の歯車14は、リングギヤ9と一体である。好ましくは、第1の歯車13は、クランクセットシャフト2の回転速度に対して回転速度を増加させるために、第2の歯車14よりも大きな直径を有する。たとえば、第1の歯車13の直径は、第2の歯車14の直径の1.5倍から3倍の間とすることができる。
【0105】
通常の動作モードでは、本発明の第1の実施形態によるパワートレイン1は、以下のように機能する。クランクセットシャフト2と第2のモータ50はリングギヤ9を駆動し、クランクセットシャフト2とリングギヤ9との間の駆動は、変形可能な伝達要素15を通過する。リングギヤ9は、遊星ギヤ装置の第1の入力である。第1のモータ40は、遊星ギヤ装置の第2の入力である太陽ギヤ5を駆動する。リングギヤ9と太陽ギヤ5は、遊星ギヤ装置の出力である遊星キャリア6を駆動する。遊星キャリア6は、主出力チェーンリング3を駆動する。主出力チェーンリングの回転速度は、リングギヤ9の回転速度と太陽ギヤ5の回転速度の加重和に等しくなる。したがって、太陽ギヤ5の回転速度を上げることにより、クランクセットシャフト2での回転速度を一定に保ちながら、主出力チェーンリング3の速度を上げることが可能である。したがって、これは無段変速機(CVT)である。
【0106】
ピニオン12は、第2のモータ50の回転子57に、この回転子57と共に回転するように接続されている。ピニオン12は、リングギヤ9の外歯11と直接噛み合っている。ピニオン12は、リングギヤ9よりも小さい直径を有し、その目的は、モータの回転速度と比較して回転速度を低下させることである。
【0107】
太陽ギヤ5は、第1のモータ40の回転子47に、この回転子47と共に回転するように接続されている。
【0108】
遊星キャリア6はケーシング19の側壁を通過するので、遊星キャリア6に取り付けられた主出力チェーンリング3はケーシング19の外側に配置される。
【0109】
第1のフリーホイール16は、クランクセットシャフト2が通常のペダリング方向に回転するときに、副出力チェーンリング4がクランクセットシャフト2よりも遅く回転することを防止する。このフリーホイール16の目的は、パワートレインのギヤ比が1:1未満にならないことである。第1のフリーホイール16のこの位置は、高いペダリングトルクの場合に、伝達装置の残りの部分での高いトルクを回避することを可能にする。したがって、パワートレインの特定の部品は高トルクにさらされない。特に興味深いのは、このようにベルトなどの変形可能な伝達要素15を含む場合に、遊星ギヤ装置と伝達システムをクランクセットシャフト2の間に維持することである。
【0110】
図2は、第2のフリーホイール17がクランクセットシャフト2と第1の歯車13との間に設置されているパワートレイン1の変形を示している。このフリーホイール17の機能は、クランクセットシャフト2が通常のペダリング方向に作動するときに、第2のモータ50がクランクセットシャフト2を駆動するのを防止することである。
【0111】
第2のフリーホイール17は、クランクセットシャフト2が通常のペダリング方向に作動するとき第1の歯車13を駆動するが、第1のギヤ13は、クランクセットシャフト2が通常のペダリング方向に作動するときクランクセットシャフト2を駆動できない。
【0112】
第2のフリーホイール17の追加は、クランクセットシャフト2を操作することなく第2のモータ50が回転することを可能にするので、より多くの制御の柔軟性を提供する。これにより、たとえば、サイクリストがクランクセットを操作しなくても、アクセルを使用してモータを操作できる。
【0113】
図3は、本発明の実施形態によるパワートレイン1の内部運動連鎖を非常に概略的に示している。この運動連鎖によれば、サイクリストはペダル21を介してシステムに入力動力を提供し、クランク18を介してクランクセットシャフト2を駆動する。クランクセットシャフト2と一体の第1の歯車13は、変形可能な伝達要素15を介してリングギヤ9を駆動し、それにより、リングギヤ9はクランクセットシャフト2よりも速く回転する。第2のモータ(この簡略図には図示せず)の回転子57と一体のピニオン12は、固定比でリングギヤ9に接続されている。リングギヤ9は、遊星ギヤ装置の第1の入力である。第1のモータ(この簡略図には図示せず)の回転子47と一体の太陽ギヤ5は、遊星ギヤ装置の第2の入力である。太陽ギヤ5およびリングギヤ9は、少なくとも1つの遊星ギヤ8を含む遊星キャリア6によって互いに接続される。遊星ギヤ(複数可)8は、遊星キャリア6のシャフト7によって回転自由に保持される。遊星キャリア6は、遊星ギヤ装置の出力である。
【0114】
図3の矢印は、パワートレイン1の通常の動作中の個々のコンポーネントの回転方向を示している。
図3の図を単純化して見やすくするために、さまざまな伝達コンポーネント(ホイール、ピニオン、ベルト)は滑らかに見え、摩擦伝達を示唆している場合がある。もちろん、これは歯付きホイールや歯付きベルトを作るための歯付き歯の使用を除外するものではない。
【0115】
図4は、本発明の実施形態を有するペダル車両の側面図を示し、パワートレイン1、出力伝達チェーン23、後輪ピニオン24およびテンションローラ22がある。出力伝達チェーン23は、上部ストランド23a、下部ストランド23bおよび中間ストランド23cを含む。中間ストランド23cは、主出力チェーンリング3と副出力チェーンリング4との間の出力伝達チェーン23の一部である。
【0116】
テンションローラ22の機能は、伝達装置に負荷がかかったときに出力伝達チェーンまたはベルト23のたるみを吸収することである。これは、中間ストランド23cが緊張したままであることを可能にする。このテンションローラ22は、パワートレイン1に統合するか、またはペダル車両のフレームに取り付けることができる。テンションローラ22は、下部ストランド23bと接するように配置されている。ローラ22に張力をかけることなく静止動作を考慮することも可能である。
【0117】
パワートレイン1の通常動作モードでは、主出力チェーンリング3は出力伝達チェーンまたはベルト23を駆動する。副出力チェーンリング4は、好ましくは主出力チェーンリング3と同じ伝達チェーン23に噛み合っており、クランクセットシャフト2よりも高速で回転する。副出力チェーンリング4は、第1のフリーホイール16によってクランクセットシャフト2から外される。副出力チェーンリング4の第1の機能は、クランクセット2のシャフトの周りに伝達チェーン23を案内することであり、それにより、上部チェーンストランド23aと下部チェーンストランド23bとの間の距離を増加させる。このように、推進システムが自転車のフレームに設置されている場合、フレームの右後部ベースが通過するための十分なスペースがある。この右後部フレームベースは、後輪の取り付け点をパワートレインの取り付けブラケットに接続するフレームチューブである。これは
図4には示されていない。
【0118】
パワートレイン1の通常の動作モードとは異なるいくつかの特殊な動作モードでは、第1のフリーホイール16がロックされ、副出力チェーンリング4がクランクセット2のシャフトよりも遅く回転するのを防ぐ。この場合、副出力チェーンリング4は、全体的または部分的に出力伝達チェーン23を駆動し、したがって、主出力チェーンリング3も駆動する。電気システムがオフになっている、および/または動力支援が無効になっていて、パワートレイン1の最も低いギヤ比が(ユーザまたは制御システムによって)選択されている場合、サイクリストの動力のすべては、副出力チェーンリング4を介して伝達チェーン23に伝達される。したがって、残りの伝達装置は無負荷であり、伝達装置は機械的に非常に効率的である。
【0119】
副出力チェーンリング4はまた、サイクリストの瞬間トルクが一定の閾値を超え、第1のモータ40がその最大トルクで飽和した場合、パワートレイン1の通常の動作中に動力の一部を伝達することができる。ペダル21をこのように押している間、パワートレインのギヤ比の瞬間値は減少し、プログラムされたギヤ比が低い場合、第1のフリーホイール16は、サイクリストの過剰なトルクを伝達チェーンへ23に伝達する副出力チェーンリング4を作動させて駆動する。副出力チェーンリング4と第1のフリーホイール16の相互作用により、パワートレインのギヤ比が1未満の値に達するのを防ぐ。
【0120】
本発明による動力支援を平滑化する第1の方法が
図5に示されている。この第1の方法は、第2のモータによって与えられる推力を時間的にシフトすることによって2つの電気モータによって提供されるトルクを平滑化することを含む。
図5のグラフは、トルク101対クランクセット角度102のグラフ上の、ユーザ103のトルク、第1のモータ104のトルクおよび第2のモータ15のトルクを示している。ユーザは、自分が加える力をクランク18を介してクランクセットシャフト2に伝達し、それにより、クランクセット2のシャフトに往復トルクが誘発される。ユーザが提供するトルクは、2つのクランクの1つが水平に近いときに最大になる。第1のモータ40は、好ましくは、クランクセット40のクランクセット角速度に比例する特定の回転速度で動作するように調整される。ユーザが2つのクランク18の1つに推力を加えると、クランクセットが加速して、第1のモータ40の角位置に遅延を引き起こす。第1のモータ40は、トルクを増加させることにより、この遅延を修正する。したがって、サイクリストによって提供されるトルクと第1のモータ40によって提供されるトルクは、比較的同相である。
【0121】
本発明は、第1のモータ40のトルクトラフを満たすために第2のモータ50に加えられるトルクを位相シフトし、それにより後輪に提供される全トルクを平滑化することを提案する。これにより、調整が安定し、効率が向上し、伝達装置のストレスが減少し、第1のモータ40のサイズを小さくできる。この平滑化方法を達成するために、たとえば、クランクセットの角位置に従って第1のモータ40で測定された電流信号をシフトまたはフィルタリングし、第2のモータ50に加えられるトルクのシフトをもたらすことが可能である。
【0122】
図6は、本発明によるパワートレインに適用できる伝達スリップ防止の方法を図式化している。
図6のグラフは、トルク101対クランクセット角度102のグラフ上の、ユーザ103のトルク、第1のモータ104のトルクおよび第2のモータ15のトルクを示している。人間は、高い値のトルクを短時間かつ低いペダリング速度でクランクセットに提供できる。クランクセットに加えられるトルクは(遊星ギヤ装置のトルク法則を介して)第1のモータ40とは反対に直接伝達されるため、これは、第1のモータ40が、大量のトルクを迅速に送達しなければならず、したがって、その位置設定値に従うために多くの電流を消費しなければならないことを意味する。エネルギー消費を制限し、第1のモータ40の巻線および歯車を保護するために、本発明は、第1のモータ40によって提供される最大トルクを制限することを提案する。この制限の欠点は、最大トルク(電流の制限)で飽和すると、第1のモータ40が位置サーボの設定点に適切に追従できなくなり、過剰なペダル推力の短い瞬間にサイクリストがギヤ比の低下を感じるような滑り感が生じることである。したがって、パワートレインは、第2のモータ50の電流またはトルク設定点が遅れて加えられるように配置され、それにより、第2のモータ50の支援ピークは、第1のモータ40のトルクトラフと同相になる。
【0123】
本発明により提案される滑り止め方法は、第2のモータ50を発電機として使用して、サイクリストがペダルに過度の推力を与えたときにサイクリストの動きを制動することを含む。電気的支援の実際のレベルはこの過剰な推力の間に減少するが、第1のモータ40は、その角位置設定点に追従でき、したがって設定点ギヤ比に追従できる。
図6は、ユーザが提供するトルクが急激に増加し、高い値に上昇する状況を示している。本発明による方法は、第2のモータ50の設定点電流(およびしたがってトルク)を減少させ、一時的に負の電流(負のトルク)を課すことさえあり、それにより第1のモータ40がその角位置設定点にできるだけ、かつ過度のトルクを提供することなく追従することを可能にする。第2のモータ50がクランクセットを制動している間、第2のモータ50によって供給される電流は、バッテリに電力を供給するか、または第1のモータ40に供給することができる。この再生領域は、
図6でハッチングされている。したがって、パワートレインは、第1のモータ40がその角位置設定点にもはや追従できなくなったときに、第2のモータ50の電流またはトルク設定点が負の電流またはトルク値に低下するように構成される。
【0124】
興味深いことに、本発明によるパワートレインの構成は、文献国際公開第2013/160477号パンフレットまたは文献国際公開第2016/034574号パンフレットに記載されているパワートレインの変形、または他の既知のパワートレインの変形と互換性がある。
【0125】
言い換えれば、本発明は、ペダル車両用のパワートレイン1に関する。パワートレイン1は、第1のフリーホイール16によってクランクセットシャフト2に結合された主出力チェーンリング3および副出力チェーンリング4を含む。クランクセットシャフト2と主出力チェーンリング3との間の結合は、変形可能な伝達要素15および遊星ギヤ装置を介して行われる。
【0126】
本発明を、純粋に例示的なものであり、かつ限定するものと見なされるべきではない特定の実施形態に関して説明してきた。一般に、本発明は、上記に例示および/または説明された例に限定されない。動詞「consist」、「include」、「comprise」、またはその他の変形、およびそれらの活用の使用は、言及されたもの以外の要素の存在を排除するものでは決してない。要素を紹介するための不定冠詞「an」または定冠詞「the」の使用は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。請求項における参照番号は、その範囲を制限するものではない。