(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】固有の分枝構造を呈する炭化水素混合物を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C10G 50/00 20060101AFI20230119BHJP
C10G 45/64 20060101ALI20230119BHJP
C10G 69/12 20060101ALI20230119BHJP
B01J 27/12 20060101ALI20230119BHJP
B01J 29/74 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C10G50/00
C10G45/64
C10G69/12
B01J27/12 M
B01J29/74 M
(21)【出願番号】P 2020561820
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 US2019029873
(87)【国際公開番号】W WO2020060590
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-02-09
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520421732
【氏名又は名称】ノヴィ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バラルト、エデュアルド
(72)【発明者】
【氏名】チェン、コン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ハオ、ヤリン
(72)【発明者】
【氏名】ホー、リウェニー
(72)【発明者】
【氏名】ホー、ウィルビー
(72)【発明者】
【氏名】プラダン、アジット
(72)【発明者】
【氏名】ロザリー、ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、ベントン
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ、ジェイソン
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-517523(JP,A)
【文献】国際公開第2018/089457(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101484552(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースストックを調製するプロセスであって、
(i
)C14~C20オレフィンを含むオレフィン系供給原料
であって、該C14~C20オレフィンが40重量%未満の分岐オレフィン、および40重量%超のアルファオレフィンを含むものである、上記オレフィン系供給原料を提供することと、
(ii)中間体の二量体留分が水素異性化なしで飽和化されたときに27~35の分枝近接度を有する飽和二量体を生じさせる様な二量体留分を有する中間体を得るために
20~60℃の範囲である反応温度及び60~400分の平均滞留時間を含む反応条件を制御しながら
、三フッ化ホウ素触媒を用いて前記オレフィン系供給原料をオリゴマー化することと、
(iii)金属を含浸させた、10員環を有する一次元ゼオライト触媒を用いて、工程(ii)から得られた前記中間体の少なくとも一部を水素異性化し、BP/BI≧-0.6037×(分子あたりの内部アルキル分枝)+2.0および分子あたり5番目またはそれ以上の位置に平均で0.3~1.5のメチル分枝を有する、C28+生成物を得ることと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記オレフィン系供給原料が50重量%超のアルファオレフィンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記オレフィン系供給原料が8重量%未満の分岐オレフィンを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記オレフィン系供給原料が70重量%超のアルファオレフィンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
(ii)のオリゴマー化に用いられる三フッ化ホウ素触媒が、アルコール助触媒、およびエステル助触媒を更に含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記オリゴマー化反応のための前記滞留時間が、60~180分の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記中間体を回収すること、前記中間体から未反応の単量体を取り除くこと、および工程(iii
)に、生じた中間体を
供給すること、を更に含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
取り除かれた前記未反応の単量体が、工程(i)のオレフィン系供給原料へとリサイクルされる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記生じた中間体を水素化し、水素化中間体を生成し、次に該水素化中間体を工程(iii)の水素異性化にかけることと、
前記水素異性化から生成物を回収すること、及び前記水素異性化からの生成物を、40の最大炭素数を有する95重量%超の二量体を含む留分と、42の最小炭素数を有する95重量%超の三量体およびより高次のオリゴマーを含む留分とに分けることと、を更に含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記生じた中間体を、40の最大炭素数を有する95重量%超の二量体を含む留分と、42の最小炭素数を有する95重量%超の三量体およびより高次のオリゴマーを含む留分とに分ける、請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
前記留分のそれぞれを、個別に水素異性化することを更に含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記生じた中間体が更に水素化されて水素化中間体が生成し、ここで前記水素化中間体が、40の最大炭素数および分枝近接度28~32を有する二量体を含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項13】
前記水素異性化することが、100~800psigの圧力、290~350℃の範囲である温度、および500~3500scf/bblの水素流量の下で実施される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項14】
(i)において8重量%未満の分岐単量体オレフィンおよび50重量%超の単量体アルファオレフィンを含み、前記単量体オレフィンがC14~C20の範囲である炭素数を有する、オレフィン系供給原料を提供することと、
BF
3触媒ならびにBuOHおよびBuAc共触媒上で、60~180分間の反応滞留時間で、セミバッチまたは連続撹拌タンクリアクタ中で、(i)の前記オレフィン系供給原料を用いて(ii)におけるオリゴマー化反応を行うことと、
工程(ii)中のオリゴマー化反応から中間体を回収すること、蒸留により
前記中間体から未反応の単量体を取り除
き残液蒸留生成物を製造すること
、および
得られた残液蒸留生成物を水素化することと、
前記水素化から水素化生成物を回収すること、および金属を含浸させた、10員環を有する一次元ゼオライト触媒上で、100~800psigの範囲である圧力にて、290~350℃の範囲である温度で、および500~3500scf/bblの水素流量にて、前記水素化生成物を水素異性化して水素異性化生成物を製造することと、
前記蒸留中で取り除かれた前記未反応の単量体を(i)におけるオレフィン系供給原料にリサイクルすることと、
前記水素異性化された生成物から、二量体留分と、三量体およびより高次のオリゴマー留分とを分けることであって、前記二量体留分が、40の最大炭素数を有する95重量%以上の二量体を含むことと、を更に含む、
請求項2に記載の、ベースストックを調製するためのプロセス。
【請求項15】
(i)において8重量%未満の分岐単量体オレフィンおよび50重量%超の単量体アルファオレフィンを含み、前記単量体オレフィンがC14~C20の範囲である炭素数を有する、オレフィン系供給原料を提供することと、
BF
3触媒ならびにBuOHおよびBuAc共触媒上で、60~180分間の反応滞留時間で、セミバッチまたは連続撹拌タンクリアクタ中で、(i)の前記オレフィン系供給原料を用いて(ii)におけるオリゴマー化反応を行うことと、
工程(ii)中のオリゴマー化反応から中間体を回収すること、蒸留により
前記中間体から未反応の単量体を取り除
き残液蒸留生成物を製造すること
、および金属を含浸させた、10員環を有する一次元ゼオライト触媒上で、100~800psigの範囲である圧力で、290~350℃の範囲である温度で、および500~3500scf/bblの水素流量にて、前記残液
蒸留生成物を水素異性化することと、
前記蒸留にて取り除かれた前記未反応の単量体を(i)におけるオレフィン系供給原料にリサイクルすることと、
前記水素異性化から水素異性化生成物を回収し、前記水素異性化生成物を、C28~C40の範囲である炭素数を有する二量体を含む二量体留分と、42以上の炭素数を有する化合物を含む三量体およびより高次のオリゴマー留分とに分けることと、を更に含む、
請求項2に記載の、ベースストックを調製するためのプロセス。
【請求項16】
(i)において8重量%未満の分岐単量体オレフィンおよび50重量%超の単量体アルファオレフィンを含み、前記単量体オレフィンがC14~C20の範囲である炭素数を有する、オレフィン系供給原料を提供することと、
BF
3触媒ならびにBuOHおよびBuAc共触媒上で、60~180分間の反応滞留時間で、セミバッチまたは連続撹拌タンクリアクタ中で、(i)の前記オレフィン系供給原料を用いて(ii)におけるオリゴマー化反応を行うことと、および前記蒸留から生じた中間体を回収すること
前記工程(ii)中のオリゴマー化反応から中間体を回収すること、
および蒸留により
前記中間体から未反応の単量体を取り除
き残液蒸留生成物を製造するこ
とと、
前記残液蒸留生成物から、二量体留分と、三量体およびより高次のオリゴマー留分とを分け、ここで前記二量体留分が、40の最大炭素数を有する95%以上の化合物を含み、かつ前記三量体およびより高次のオリゴマー留分が、42以上の炭素数を有する化合物を含むことと、
金属を含浸させた、10員環を有する一次元ゼオライト触媒上で、100~800psigの範囲である圧力で、290~350℃の範囲である温度で、500~3500scf/bblの水素流量で、二量体留分ならびに三量体およびより高次のオリゴマー留分それぞれを個別に水素異性化させることと、を更に含む、請求項2に記載の、ベースストックを調製するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プロセスは、固有の組成的な特徴を持ち、かつ優れた低温特性と低揮発性を示す高性能炭化水素混合物を調製するため開発された。
【背景技術】
【0002】
ベースストックは種々の潤滑油を製造するために一般的に使用されており、自動車用潤滑油、産業用油、タービンオイル、グリース、金属加工流体などを含んでいる。ベースストックはまた、プロセスオイル、ホワイトオイル、および熱転移流体としても使用される。完成した潤滑油は、一般にはベースオイルと添加剤といった2つの成分からなる。ベースオイルは、1つのベースストックまたはベースストックの混合物であり得るが、これはこうした完成した潤滑油においては主要な骨子であり、粘度および粘度指数、揮発性、安定性、および低温での性能といった完成した潤滑油の性能に大きく貢献する。一般には、数種類のベースストックを使用し、個々のベースストックと個々の添加剤の混合物を変更させることで広範囲にわたる種々の完成した潤滑油を製造する。
【0003】
米国石油協会(API)は、中の飽和炭化水素の含有量、硫黄レベル、および粘度指数に基づき、ベースストックを5種類のグループに分類している(以下の表1)。グループI、IIおよびIIIのベースストックは、大半は、例えばグループIには溶剤精製、グループIIおよびグループIIIには水素化処理などの高価な加工によって原油から誘導される。ある特定のグループIIIのベースストックはまた、ガス流体プロセス(GTL)を用いて合成炭化水素流体から製造することも可能であり、これは天然ガス、石炭または他の化石資源から得られる。グループIVのベースストックであるポリアルファオレフィン(PAO)は、1-デセンなどのアルファオレフィンのオリゴマー化によって製造される。グループVのベースストックは、グループI~グループIVに属さないもの全てを含む。これは例えばナフテン系ベースストック、ポリアルキレングリコール(PAG)およびエステルである。大量のベースストックを製造するための供給原料の大半は再利用できない。
【表1】
【0004】
自動車のエンジンオイルは、ベースストックにとって飛び抜けて高い需要である。自動車業界は、以前に比べると排気ガスの低減、より長い排油間隔、そして良好な燃費のための要件を理由として、エンジンオイルについてより厳格な性能基準を定めているところである。特に自動車のOEM(相手先ブランド製造)は、摩擦損失を低下させ、燃費向上を達成するため、0W-20~0W-8といった低粘度エンジンオイルの採用を強く要求してきている。0W-xxのエンジンオイルではグループIIでの使用が大きく制限される。これは、グループIIのベースストックと混合された配合物は、0W-xxのエンジンオイル向けの性能基準に合わないからであり、こうした不適合がグループIIIおよびグループIVのベースストックに対する需要を増大させることにつながっている。
【0005】
グループIIIのベースストックは、その大半が水素化分解と触媒脱ロウ法(例えば水素異性化)による減圧軽油(VGO)から製造される。グループIIIのベースストックはまた、溶剤精製に起因する粗ロウの触媒脱ロウ法によって、またはガス液化ベースオイル(GTL)としても公知である、天然ガスもしくは石炭ベースの未精製の原料を基としたフィッシャー・トロプシュ合成に起因する、ロウの触媒脱ロウ法によって製造され得る。
【0006】
VGOからグループIIIのベースストックを製造するプロセスは、米国特許第5,993,644号および第6,974,535号にて述べられている。グループIIIのベースストックの沸点分布は、同じ粘度のPAOよりも典型的には高く、このことはPAOよりも高い揮発性の原因となっている。加えて、グループIIIのベースストックは、同等の粘度ではグループIVのベースストックよりも高いコールドクランク粘度(すなわちASTM D5293に従って測定された動的粘度、CCS)を典型的には有する。
【0007】
GTLベースストック加工は、米国特許第6,420,618号および第7,282,134号、ならびに米国特許出願公開第2008/0156697号に記載されている。例えば、後者の特許出願公開は、フィッシャー・トロプシュ合成生成物からベースストックを調製するためのプロセスについて記載しており、適切な沸点範囲を有するこれらの生成物の留分は、水素異性化にかけられ、GTLベースストックを製造する。
【0008】
GTLベースストックの構造および特性は、例えば米国特許第6,090,989号および第7,083,713号、ならびに米国特許出願公開第2005/0077208号に記載されている。米国特許出願公開第2005/0077208号では、最適化された分枝を有する潤滑油のベースストックが記載されている。これはベースストックのコールドフロー特性を向上させるため、分子の中心に向かって集中した状態であるアルキル分枝鎖を有している。とは言え、GTLベースストックの場合の流動点は、PAOまたは他の合成炭化水素ベースストックよりも典型的には劣っている。
【0009】
GTLベースストックに関する更なる課題は、新しいGTLを製造する設備に関して資金的な要件が法外なほど高いことから商業的な供給が大きく制限されていることである。低コストの天然ガスを利用することもまた、有利にGTLベースストックを製造するために求められている。加えて、GTLベースストックは広範な沸点分布を有する異性化油から典型的には蒸留されるため、典型的なPAOプロセスによるものと比較した場合、こうしたプロセスにより、望ましい粘度を有するベースストックに対して相対的に低い収率が生じる。以上のような金銭的かつ収率的な制限により、現状ではグループIII+GTLベースストックのみの製造プラントだけが存在しており、GTLを用いる配合物は供給連鎖および価格変動のリスクに曝されている。
【0010】
ポリアルファオレフィン(PAO)、またはグループIVのベースオイルは、AlCl3、BF3、またはBF3複合体といったフリーデル・クラフツ触媒の存在下でアルファオレフィンを重合することにより製造される。例えば、1-オクテン、1-デセンおよび1-ドデセンを使用し、広範な範囲の粘度を有するPAOを製造してきた。このPAOは低分子量および100℃で約2cStの低粘度から、高分子量であり、100℃で100cStを超える粘度を有する粘性物質へと変化している。重合反応は水素の不在下で典型的には実施される。これに従い、残留不飽和を低減させるため、潤滑油範囲の生成物は磨かれるかまたは水素化される。例えば米国特許第3,382,291号、4,172,855号、3,742,082号、3,780,128号、3,149,178号、4,956,122号、5,082,986号、7,456,329号、7,544,850号、および米国特許出願公開第2014/0323665号には、潤滑油ベースのPAOを製造するプロセスが開示されている。
【0011】
自動車のエンジンオイルおよび他の現在の潤滑油に関する厳格な性能要件に一層適合させるためには、1-デセンから誘導された低粘度のポリアルファオレフィンベースストックが特に好ましい。これらは潤滑油配合物中、単独または他の鉱油ベースストックとの混合のいずれかで使用される。ただし、1-デセンベースのポリアルファオレフィンは、1-デセンの供給が限定されていることに起因して法外に高額なものとなり得る。1-デセンを利用する上での制限を克服しようとする試みにより、C8~C12混合アルファ-オレフィン系供給原料からPAOを製造し、上記特性を付与するのに必要とされる1-デセンの量を低下させることができる。ただし、こうした試みであってもまだ、性能要件を理由に、優勢なオレフィン系供給原料として1-デセンを提供するという要件は完全には排除されていない。
【0012】
代替的には、C14~C20範囲での直鎖アルファオレフィンを用いて作製されたPAOは、許容できないほど高い流動点を有する。これは0W-xxエンジンオイルを含む種々の潤滑油における使用にとっては不適である。
【0013】
したがって、最も厳格な自動車用途および他の潤滑油用途において使用するのに優れた特性を有するベースストック組成物を得るといった、費用対効果の大きい製造プロセスに対する需要が未だ存在している。かかる特性には、粘度、Noack揮発度および低温での流動度の1つ以上が含まれる。
【0014】
自動車業界に対する技術的要求に加え、環境への意識と規制により、ベースストックおよび潤滑油の製造に関して、製造者らは再利用可能な供給原料および未精製の原料を用いるようになってきている。望ましいベースストックを提供することが可能でありながら、再利用可能な供給原料の利用もまた活用するプロセスが大きく期待されている。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、良好に制御された構造的特徴を有する飽和炭化水素混合物を調製する固有のプロセスに関する。これは、自動車のエンジンオイルに関する、より厳格な環境規制および燃費規制によって推進された性能要件に取り組むものである。該プロセスにより、-35℃でのCCS粘度(ASTM D5329)とNoack揮発度(ASTM D5800)との驚くような関係を有する組成物を常に提供するように制御されている、炭化水素分子の分枝鎖特徴が可能となる。
【0016】
一態様では、本プロセスは40重量%未満の分岐オレフィンと、50%超のアルファオレフィンを有する、C14~C20オレフィンのオレフィン系供給原料を提供することからなる。該供給原料は、20~60℃の範囲である反応温度にて、三フッ化ホウ素触媒の存在下でオリゴマー化される。次いでオリゴマー化生成物は、貴金属を含浸させた10員環のゼオライト触媒の存在下で水素異性化される。
【0017】
生じた生成物は、FIMSに則って、偶数の炭素数を有する80%超の分子を有する飽和炭化水素混合物である。炭化水素混合物が炭素NMRによって解析される場合、この炭素NMRはBP/BI≧-0.6037(分子あたりの内部アルキル分枝)+2.0の分枝鎖特徴を呈示し、かつ分子あたり平均で、少なくとも0.3~1.5の5+メチル分枝鎖を有する。
【0018】
別の態様では、該プロセスはオリゴマー化から生成物を回収することと、水素異性化前に未反応の単量体をオレフィンとして該生成物から取り除くことを更に含む。未反応の単量体が取り除かれた回収生成物は次いで、2つの生成物の留分に分けられる。1つの留分は、40の最大炭素数を有する95重量%超の二量体を含み、1つの生成物留分は、42の最小炭素数を有する95%超の三量体およびより高次のオリゴマー化された化合物を含む。該2つの留分は個別に水素異性化される。更に別の態様では、95重量%超の二量体を含む、分離された該二量体留分は、仮に水素異性化なしで水素化された場合、27~35の分枝近接度(branching proximity)を有する。
【0019】
別の態様では、8重量%未満の分岐単量体オレフィンと、90重量%超の分枝単量体アルファオレフィンを含むオレフィン系供給原料を提供するプロセスを提供する。この場合、該単量体オレフィンは、C14~C20の範囲である炭素数を有する。オリゴマー化反応は、BF3およびBuOH/BuAc共触媒の存在下で、20~60℃の範囲である温度にてオレフィン系供給原料を用いて実施される。この場合、反応滞留時間は60~180分であり、セミバッチまたは連続撹拌タンクリアクタによって反応は実施される。生成物はオリゴマー化反応から回収され、未反応のオレフィン単量体は蒸留によって取り除かれる。残液生成物を蒸留から回収し、該生成物を、100~800psigの範囲である圧力にて、10員環を有する貴金属を含浸させた一次元ゼオライト(one-dimensional zeolite)上で水素異性化させる。この場合温度は290~350℃の範囲であり、水素流量は500~3500scf/bblである。水素異性化の後、該生成物を2つの留分へと蒸留する。1つ目の留分はおよそ95重量%超の二量体から成り、2つ目の留分はおよそ95重量%超の三量体とより高次のオリゴマーからなる。別の態様では、オリゴマー化によって回収された該生成物は、蒸留により取り除かれる未反応の単量体オレフィンを有し、残液は水素化され、その後、生成物の最終蒸留前に水素異性化される。
なお、下記[1]から[16]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
ベースストックを調製するプロセスであって、
(i)40重量%未満の分岐オレフィン、および40重量%超のアルファオレフィンを含む、C14~C20オレフィンを含むオレフィン系供給原料を提供することと、
(ii)27~35の分枝近接度を有する飽和二量体中間体を生じさせる、20~60℃の範囲である反応温度にて、三フッ化ホウ素触媒の存在下で前記オレフィン系供給原料をオリゴマー化することと、
(iii)貴金属を含浸させた、10員環を有する一次元ゼオライト触媒の存在下にて、工程(ii)から得られた前記オリゴマー化生成物を水素異性化し、BP/BI≧-0.6037(分子あたりの内部アルキル分枝)+2.0および分子あたり平均で0.3~1.5の5+メチル分枝を有する、C28+生成物を得ることと、を含む、プロセス。
[2]
前記オレフィン系供給原料が50重量%超のアルファオレフィンを含む、[1]に記載のプロセス。
[3]
前記オレフィン系供給原料が8重量%未満の分岐オレフィンを含む、[2]に記載のプロセス。
[4]
前記オレフィン系供給原料が70重量%超のアルファオレフィンを含む、[1]に記載のプロセス。
[5]
オリゴマー化が、三フッ化ホウ素オリゴマー化触媒、アルコール助触媒、およびエステル助触媒を用いて実施される、[2]に記載のプロセス。
[6]
前記オリゴマー化反応のための前記滞留時間が、60~180分の範囲である、[2]に記載のプロセス。
[7]
更なる加工の前に、前記オリゴマー化から生成物を回収することと、前記生成物から未反応の単量体を取り除くことと、を更に含む、[2]に記載のプロセス。
[8]
取り除かれた前記未反応の単量体が、続くオリゴマー化反応の間、オレフィン系供給原料へとリサイクルされる、[7]に記載のプロセス。
[9]
前記未反応の単量体を取り除いた前記生成物を水素化し、水素化生成物を生成し、次にこれを水素異性化にかけることと、
前記水素異性化から生成物を回収することと、前記生成物を、40の最大炭素数を有する95重量%超の二量体を含む生成物留分と、42の最小炭素数を有する95重量%超の三量体およびより高次のオリゴマーを含む生成物留分とに分けることと、を更に含む、[7]に記載のプロセス。
[10]
前記未反応の単量体を取り除いた前記生成物を、40の最大炭素数を有する95重量%超の二量体を含む生成物留分と、42の最小炭素数を有する95重量%超の三量体およびより高次オリゴマー化された化合物を含む生成物留分とに分ける、[7]に記載のプロセス。
[11]
前記生成物留分のそれぞれを、個別に水素異性化することを更に含む、[10]に記載のプロセス。
[12]
前記生成物が更に水素化され、かつ前記水素化生成物が、40の最大炭素数および分枝近接度28~32を有する二量体を含む、[7]に記載のプロセス。
[13]
前記水素異性化することが、100~800psigの圧力、290~350℃の範囲である温度、および500~3500scf/bblの水素流量の下で実施される、[2]に記載のプロセス。
[14]
(i)8重量%未満の分岐単量体オレフィンおよび50重量%超の単量体アルファオレフィンを含み、前記単量体オレフィンがC14~C20の範囲である炭素数を有する、オレフィン系供給原料を提供することと、
(ii)20~60℃の範囲である温度にて、BuOHおよびBuAc共触媒上で、60~180分間の反応滞留時間で、セミバッチまたは連続撹拌タンクリアクタ中で、(i)の前記オレフィン系供給原料を用いてオリゴマー化反応を行うことと、
(iii)前記オリゴマー化反応から生成物を回収すること、および蒸留により未反応の単量体を取り除くことと、
(iv)(iii)中の前記蒸留によって回収された生成物を水素化することと、
(v)(iv)中の前記水素化から生成物を回収することと、貴金属を含浸させた、10員環を有する一次元ゼオライト触媒上で、100~800psigの範囲である圧力にて、290~350℃の範囲である温度で、および500~3500scf/bblの水素流量にて、前記生成物を水素異性化することと、
(vi)(iii)中で取り除かれた前記未反応の単量体が、その後のオリゴマー化にてリサイクルされることと、
(vii)前記水素異性化された生成物から、二量体と、三量体およびより高次の化合物を分けることを更に含み、前記二量体が、40の最大炭素数を有する95重量%以上の二量体を含むことと、を更に含む、
[2]に記載の、ベースストックを調製するためのプロセス。
[15]
(i)8重量%未満の分岐単量体オレフィンおよび50重量%超の単量体アルファオレフィンを含み、前記単量体オレフィンがC14~C20の範囲である炭素数を有する、オレフィン系供給原料を提供することと、
(ii)20~60℃の範囲である温度で、BuOHおよびBuAc共触媒上で、60~180分間の反応滞留時間で、セミバッチまたは連続撹拌タンクリアクタ中で、(i)の前記オレフィン系供給原料を用いてオリゴマー化反応を行うことと、
(iii)前記オリゴマー化反応から生成物を回収すること、および蒸留により未反応の単量体を取り除くことと、
(iv)(iii)中の前記蒸留により残液生成物を回収することと、貴金属を含浸させた、10員環を有する一次元ゼオライト触媒上で、100~800psigの範囲である圧力で、290~350℃の範囲である温度で、および500~3500scf/bblの水素流量にて、前記生成物を水素異性化することと、を更に含み、
(v)(iii)にて取り除かれた前記未反応の単量体が、その後のオリゴマー化にてリサイクルされることと、
(vi)前記水素異性化からの生成物の回収と、前記生成物を、C28~C40の範囲である炭素数を有する二量体を含む二量体生成物と、42以上の炭素数を有する化合物を含む三量体およびより高次の化合物生成物とに分けることと、を更に含む、
[2]に記載の、ベースストックを調製するためのプロセス。
[16]
(i)8重量%未満の分岐単量体オレフィンおよび50重量%超の単量体アルファオレフィンを含み、前記単量体オレフィンがC14~C20の範囲である炭素数を有する、オレフィン系供給原料を提供することと、
(ii)20~60℃の範囲である温度で、BuOHおよびBuAc共触媒上で、60~180分間の反応滞留時間で、セミバッチまたは連続撹拌タンクリアクタ中で、(i)の前記オレフィン系供給原料を用いてオリゴマー化反応を行うことと、
(iii)前記オリゴマー化反応から生成物を回収することと、蒸留により未反応の単量体を取り除くことと、
(iv)(iii)の前記残液蒸留生成物から、二量体と、三量体およびより高次の化合物とを分け、前記二量体生成物が、40の最大炭素数を有する95%以上の化合物を含み、かつ前記三量体およびより高次の化合物生成物が、42以上の炭素数を有する化合物を含むことと、
(v)貴金属を含浸させた、10員環を有する一次元ゼオライト触媒上で、100~800psigの範囲である圧力で、290~350℃の範囲である温度で、500~3500scf/bblの水素流量で、各生成物を個別に水素異性化させることと、を更に含む、[2]に記載の、ベースストックを調製するためのプロセス。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】1-デセンおよび1-ドデセンから製造された低粘度PAO、GTLベースオイル、および水素異性化されたヘキサデセンオリゴマーを含む種々の炭化水素に対し、BP/BIと分子あたりの内部アルキル分枝鎖との関係を示している。プロット中の直線は、BP/BI=-0.6037(分子あたりの内部アルキル分枝鎖)+2.0という式を表す。
【0021】
【
図2】1-デセンおよび1-ドデセンから製造された低粘度PAO、GTLベースオイル、および水素異性化されたヘキサデセンオリゴマーを含む種々の炭化水素に対し、BP/BIと分子あたりの5+メチル分枝鎖との関係を示している。これは本特許で開示されている炭化水素混合物に関して分子あたりの5+メチル分枝鎖が、0.3~1.5といった固有の範囲内に収まっていることを示している。
【0022】
【
図3】1-デセンおよび1-ドデセンから製造された低粘度PAO、GTLベースオイル、グループIIIベースオイル、および水素異性化されたヘキサデセンオリゴマーを含む種々の炭化水素に対し、Noack揮発度と-35℃でのCCSとの関係を示している。実線と点線は、本発明の固有の炭化水素混合物によって呈示されたNoack対-35℃でのCCSの上限と下限を表している。この上限と下限はそれぞれ、Noack=2,750(-35℃でのCCS)
(-0.8)+2およびNoack=2,750(-35℃でのCCS)
(-0.8)-2である。
【0023】
【
図4】水素異性化後に二量体生成物および三量体生成物を分ける本プロセスの、一実施形態を表す。水素異性化前にオリゴマーもまた水素化される。
【0024】
【
図5】水素異性化後に二量体生成物および三量体生成物を分ける本プロセスの、別の実施形態を表す。オリゴマーは水素異性化工程前に飽和されない。
【0025】
【
図6】二量体生成物および三量体生成物を飽和させ、水素異性化前に分ける本プロセスの、一実施形態を表す。各生成物は次いで個別に水素異性化される。
【0026】
【
図7】
図6中のプロセスの変形例を表しており、このプロセスではオリゴマーが分離および水素異性化前に水素化されていない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
NMRによって特徴付けられるような固有の分枝構造を有する飽和炭化水素混合物を調製するためのプロセスを、本明細書では開示している。この混合物は、高品質の合成ベースストックとして使用されるのに好適なものである。該プロセスは、C14~C20オレフィンをオリゴマー化し、未反応の単量体、二量体(C28~C40)、および三量体およびより高次のオリゴマー(≧C42)からなるオリゴマー生成物を形成することを含む。未反応の単量体は、その後のオリゴマー化で可能な再利用のために留去され得る。残留しているオリゴマーは次いで水素異性化され、固有の分枝鎖構造物を有する最終の炭化水素混合物を得る。
【0028】
特定の場合には、FIMSに則って、炭化水素混合物は偶数の炭素数を有する80%超の分子を含む。NMRによる炭化水素混合物の分枝特徴は、≧-0.6037(分子あたりの内部アルキル分枝鎖)+2.0といった範囲であるBP/BIを示している。加えて、平均で少なくとも0.3~1.5の内部メチル分枝鎖が、末端の炭素から4個超の炭素が離れたところに存在している。この固有の分枝構造を有する飽和炭化水素は、コールドクランク・シミュレート粘度(CCS)対Noack揮発度の驚くような関係を呈する。これは低粘度である自動車のエンジンオイルを混合するのに有利である。
【0029】
関連する有利な特性を有する固有の分枝鎖構造物を有する炭化水素混合物を作製するためのプロセスまたは方法が本明細書にて提供される。炭化水素混合物はオレフィンのオリゴマー化を通じて合成されることができ、望ましい炭素鎖長を得る。その後、水素異性化し、流動点やCCSなどといったコールドフロー特性を向上させる。
【0030】
一実施形態では、長さにして14~20個の炭素を有するオレフィンは、三フッ化ホウ素触媒の存在下でオリゴマー化され、オリゴマー混合物を形成する。該オレフィンは、例えば原油またはガスベースのオレフィンといった天然に存在する分子、またはエチレン重合によって調達することができる。いくつかの変形例では、本明細書に記載のオレフィン系供給原料中の炭素原子のうち約100%が、再利用可能な炭素供給源から作り出され得る。例えば、アルファオレフィン単量体は、再利用可能な炭素供給源から製造されたエタノールを脱水することで誘導されたエチレンのオリゴマー化によって製造されてよい。いくつかの変形例では、アルファオレフィン単量体は再利用可能な炭素供給源から製造されたエタノール以外の第1級アルコールを脱水することによって製造されてよい。当該再利用可能なアルコールは、ガンマアルミナまたは硫酸を用いてオレフィンへと脱水可能である。いくつかの実施形態では、再利用可能な炭素資源から誘導された修飾されたテルペン供給原料または部分的に水素化されたテルペン供給原料は、再利用可能な炭素資源から誘導された1つまたは複数のオレフィンと組み合わされる。
【0031】
オレフィン系供給原料を生成するためのC14~C20オレフィンの混合物は、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン(および/もしくは任意選択的にはこれらのオレフィンの分岐構造異性体)ならびに/または直鎖内部もしくは分岐内部ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、およびエイコセンから誘導された内部オレフィンからなる群から選択され得る。一実施形態では、供給原料混合物のオレフィン単量体は、不飽和直鎖アルファ-オレフィン、不飽和直鎖内部オレフィン、分岐アルファオレフィン、分岐内部オレフィン、およびそれらの組合せからなる群から選択されてよい。更に別の実施形態では、供給原料混合物のオレフィン単量体は、直鎖アルファオレフィンおよび/または直鎖内部オレフィンの混合物を含んでよい。ある特定の実施形態によれば、C14~C20オレフィンから製造されたより長い直鎖パラフィン分枝鎖はVIを増加させ、かつオリゴマーのCCSを減少させる。一方、該オリゴマーの流動点は二量体の異性化により分枝を導入することで低下され得る。
【0032】
本発明の一実施形態では、オレフィン系供給原料は、40重量%未満の分岐含有量を含む、長さにして14~20個の炭素を由来とするオレフィンからなる。本発明の更に別の実施形態では、オレフィン系供給原料は30重量%未満の分岐含有量を有するオレフィンからなる。更に別の実施形態では、オレフィン系供給原料は20重量%未満の分岐含有量を有するオレフィンからなる。更に別の実施形態では、オレフィン系供給原料は8重量%未満の分岐含有量を有するオレフィンからなる。好ましい実施形態では、オレフィン系供給原料は3重量%未満の分岐含有量からなる。オレフィン中の分枝により、オリゴマー化反応により生じたオリゴマーの直線性を低下させる。分岐オレフィンによりオリゴマーへと付加された分枝鎖の作成により、流動点およびCCSなどのコールドフロー特性を著しく低減させることなく粘度指数を減少させる。
【0033】
本発明の一実施形態では、オレフィン系供給原料は少なくとも50%のアルファオレフィンを含有する。更に別の実施形態では、オレフィン系供給原料は少なくとも70%のアルファオレフィンを含有する。更に別の実施形態では、オレフィン系供給原料は少なくとも80%のアルファオレフィンを含有する。好ましい実施形態では、オレフィン系供給原料は少なくとも90%のアルファオレフィンを含有する。十分なアルファオレフィン含有量を含まないオレフィン系供給原料のオリゴマー化は、オリゴマーの直線性を低下させる。単量体供給原料の炭素鎖における二重結合位置によっては、オリゴマーの分枝近接度は、同等の鎖長のアルファオレフィンから作製されたオリゴマーと比較した場合、低減され得る。長鎖分枝鎖の存在によって流動点が低下する一方、このことで粘度指数の望ましくない低下やCCSの望ましくない増加などが引き起こされることもある。
【0034】
オレフィン系供給原料に加え、オリゴマー化条件もオリゴマー生成物の構造および特性に強い影響を与える。一実施形態では、C14~C20の間のオレフィン単量体は、BF3ならびに/または直鎖アルコールおよびアルキルアセテートエステルなどのアルコールおよび/もしくはエステルの混合物を用いて活性化させたBF3の存在下にて、60~400分の平均滞留時間にて連続撹拌タンクリアクタ(CSTR)中でオリゴマー化される。別の実施形態では、C14~C20のオレフィン単量体は、BF3および/または活性化されたBF3の存在下で90~300分の平均滞留時間にてCSTR中でオリゴマー化される。更に別の実施形態では、C14~C20のオレフィン単量体は、BF3および/または活性化されたBF3の存在下で120~240分の平均滞留時間にてCSTR中でオリゴマー化される。オリゴマー化反応の温度は、10℃~90℃の範囲であってよい。ただし、好ましい一実施形態では、該温度は、該反応の継続時間中、15℃~75℃の範囲で維持され、最も好ましくは20℃~60℃の範囲で維持される。該反応温度は、該オリゴマー化プロセスにわたって発生する異性化の程度に強い影響を有することが判明した。高温でのオリゴマー化により異性化が増加し、更に多くの分岐オリゴマー生成物がもたらされる。これは、飽和二量体中間体に関して分枝近接度が減少することにより証明されている。該飽和二量体中間体がオリゴマー化二量体として定義されている場合、これは蒸留することで<5%の三量体またはより高次のオリゴマーへと単離され、異性化なしに水素化されている。かかる分岐二量体は、分子あたりの5+メチル分枝などの望ましい構造を有さず、理想的な水素異性化供給原料として使用される必要とされる直線性もまた有さない。すなわち、非常に高い温度で生成されたオリゴマーは、同じ流動点に対するより直線性の二量体留分の水素異性化によって得られたものと比較すると、水素異性化後の低粘度指数および高いNoack揮発度などの望ましくない物理特性を得ることになる。オリゴマー化反応温度に関する直接の影響は、例14~例16に示されている。
【0035】
二量体部分が100gあたり100mg未満のBr
2といったBr指数に対して飽和されている場合(ASTM D2710)、オリゴマー化生成物の該二量体部分(C28~C40)が25~35の分枝近接度(BP)、好ましくは27~35、より好ましくは27~33、および最も好ましくは28~32の分枝近接度を有することを確実にするには、CSTR内でのオリゴマー化反応温度および滞留時間を適切に制御することが必要とされる。水素異性化に先立ち分枝近接度が低すぎると、
図1中の実線に該当する異性化炭化水素混合物がもたらされる。これは
図3に示されている範囲内に適合する所与のNoack揮発度に関して、-35℃の値ではあまり望ましくない高さを有するCCS粘度を生じる。反対に、分枝近接度が高すぎると、許容できる流動点に達するようにするためより多くの異性化が必要になる。これはNoack揮発度および-35℃でのCCSを同時に増加させる。
【0036】
一実施形態では、不飽和オリゴマー生成物は未反応の単量体をオレフィンとして取り除くために蒸留される。例えば、未反応の単量体は蒸留などによってオリゴマー生成物と分けられてよい。また、それ自身のオリゴマー化のため、この未反応の単量体をリサイクルし、オレフィン系供給原料へと戻すことができる。
【0037】
該オリゴマー生成物は次いで水素異性化され、理想的な分枝特徴を得るのに必要とされる追加の分枝鎖を提供する。一実施形態では、二量体(C28~C40)とそれよりも重いオリゴマー(≧C42)の両方を含むオリゴマー生成物全体が、蒸留による分離に先立ち水素異性化される。水素異性化された生成物は次いで、蒸留によって最終の炭化水素生成物に分けられる。別の実施形態では、二量体およびこれよりも重いオリゴマーは個別に分留および水素異性化される。
【0038】
本発明で有用な水素異性化触媒は通常、形状選択的分子ふるい、水素化に関して触媒として活性である金属または金属混合物、および耐熱性の酸化担体を含む。水素化成分の存在により、生成物の安定性が向上される。典型的な触媒として活性な水素化金属には、クロム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、コバルト、タングステン、亜鉛、白金およびパラジウムが挙げられる。白金およびパラジウムが特に好ましく、白金が最も好ましい。白金および/またはパラジウムを使用する場合、典型的には金属成分は全触媒の0.1~5重量%の範囲であり、通常は0.1~2重量%であり、10重量%を超えることはない。水素異性化触媒は例えば、米国特許第7,390,763号および第9,616,419号、ならびに米国特許出願公開第2011/0192766号および第2017/0183583号にて述べられている。
【0039】
水素異性化に関する条件は、上記の特異的な分枝特性を有する異性化炭化水素混合物を得るように調整されている。したがってこれは、使用される供給原料の特徴によって変化する。反応温度は、一般には約0.5hr-1~約5hr-1である液空間速度(LHSV)にて、一般には約200℃~400℃であり、好ましくは260℃~370℃であり、最も好ましくは288℃~345℃である。圧力は、典型的には約15psig~約2500psig、好ましくは約50psig~約2000psig、より好ましくは約100psig~約1500psig、最も好ましくは100~800psigである。低圧により異性化選択率は増強される。これは、更なる異性化と供給原料の分解の低下をもたらす。こうすることでベースストックの沸点範囲において炭化水素混合物の収率を増加させる。
【0040】
水素異性化プロセス中、水素は反応帯に存在しており、典型的には、約0.1~10MSCF/bbl(バレルにつき1000標準立方フィート)の水素対供給原料比、好ましくは約0.3~約5MSCF/bblの水素対供給原料比で水素中に存在する。水素を生成物から分け、反応帯へとリサイクルしてよい。
【0041】
一実施形態では、水素化の追加工程は、下流の水素異性化触媒を保護するために水素異性化前に添加される。別の実施形態では、水素化または水素化仕上げといった追加工程は、炭化水素混合物の飽和および安定性を更に向上させるために水素異性化後に添加される。
【0042】
水素異性化炭化水素混合物は、C28~C40の範囲での炭素数を有する二量体、およびC42以上の炭素数を有する三量体+の混合物からなる。該炭化水素混合物のそれぞれは、分子あたり≧-0.6037(内部アルキル分枝)±2.0の範囲でのBP/BI、および分子あたり5番目またはそれ以上の位置にて、平均では0.3~1.5メチル分枝鎖を呈する。重要なことには、各組成物中、少なくとも80%の分子はまた、FIMSによって決定されるような偶数の炭素数を有する。別の実施形態では、炭化水素組成物のそれぞれはまた、Noackが2750(-35℃にてCCS)(-0.8)±2の範囲内であるよう、-35℃でのNoackとCCSの関係を呈している。こうした特徴により、低粘度のエンジンオイルの配合物および多数の他の高性能の潤滑油生成物が可能となる。
【0043】
一実施形態では、C16オレフィンは、オリゴマー化反応のための供給原料として使用されている。該供給原料としてC16オレフィンを用いる場合、水素異性化二量体生成物は、<8%のNoack損失を有する4.3cStのKV100およびおよそ1,700cPの-35℃でのCCSを一般には呈している。極度に低いNoack揮発度は、他の3.9~4.4cStの合成ベースストックと比較した場合、高い初留点と狭い沸点分布が原因である。これにより該二量体生成物は、厳格な揮発性要件を有する低粘度エンジンオイルにて使用するのに理想的となる。優れたCCSおよび流動点特徴は、上述の分枝特徴に起因する。一実施形態では、該二量体生成物は≦-40℃の流動点を有する。これはミニロータリー粘度基準(ASTM D4684)およびスキャンニングブルックフィールド粘度基準(ASTM D2983)を含む、0W配合物に関する重要なエンジンオイル配合要件に合格するのに必要である。
【0044】
本プロセスの異なる実施形態は、
図4~
図7のブロック図にて表される。
【0045】
図4は、長さにして14~20個の炭素の混合オレフィンまたは単一オレフィンを用いたオレフィン系供給原料の選択(1)を含む、好ましい実施形態を表している。セミバッチまたはCSTRモードにおいて、BF
3および助触媒(13)の存在下で、当該オレフィンをオリゴマー化(2)する。その後、蒸留(3)により該未反応の単量体オレフィンを取り除く。任意選択的には、該未反応の単量体をリサイクルし(12)、該オリゴマー化リアクタへと戻すことができる。該二量体およびより高次のオリゴマーは、次に同時に飽和(4)および水素異性化(5)される。水素異性化中に形成された分解軽生成物(11)は、蒸留(6)によって取り除かれる。残留オリゴマーは次に、蒸留(7)により最終の二量体生成物(9)と三量体+生成物(10)へと分けられる。
【0046】
図5は、長さにして14~20個の炭素の混合オレフィンまたは単一オレフィンを用いるオレフィン系供給原料の選択(14)に関係する一実施形態を表している。セミバッチまたはCSTRモードにおいて、BF
3および助触媒(24)の存在下で、当該オレフィンをオリゴマー化する(15)。その後、蒸留によって未反応の単量体を取り除く(16)。任意選択的には、未反応のオレフィン単量体をリサイクルし、オリゴマー化リアクタへと戻す(23)。該二量体およびより高次のオリゴマーは、次いで水素異性化(17)される。該異性化オリゴマーの完全な飽和状態は、水素異性化プロセス(17)中に達成される。水素異性化中に形成された分解軽生成物(22)を取り除く(18)。残留オリゴマーは次に、蒸留(19)により最終の二量体生成物(20)と三量体+生成物(21)へと分けられる。
【0047】
図6は、オリゴマー化生成物が飽和(28)され、および水素異性化に先立ち蒸留(29)されるプロセスにおける変形例を表している。異性化されていない水素化二量体(30)は、27~35の間の分枝近接度を有する。異性化されていない二量体(30)および三量体+(35)生成物は、次いで個別に水素異性化(31、36)され、生じた分解軽流(34、39)は蒸留(32、37)を通して取り除かれ、最終の二量体(33)および三量体+(38)生成物を得る。
【0048】
図7は、三量体+オリゴマー(46、51)から、異性化されていない二量体を分けるためのオリゴマーの蒸留(45)が、水素異性化に先立って行われるプロセスに関する変形例を表す。二量体および三量体+留分の両方を完全に飽和させた状態は、水素異性化プロセス(47、52)中に得られる。分解軽生成物(50、55)は次いで、蒸留(48、53)によって該水素異性化二量体および三量体から取り除かれ、最終の二量体(49)および三量体+(54)生成物を得る。
【0049】
記載の通り、本プロセスから得られた、生じた炭化水素混合物は、極度に低い揮発度、良好な低温特性などを含む、傑出した特性を有する。これは高品質のベースストックの重要な性能属性である。特定の場合には、FIMSに則って、混合物は偶数の炭素数を有する80%超の分子を含む。NMRによる炭化水素混合物の分枝特徴は、≧-0.6037(分子あたりの内部アルキル分枝鎖)+2.0といった範囲であるBP/BIを示している。加えて、平均で少なくとも0.3~1.5の内部メチル分枝鎖が、末端の炭素から4個超の炭素が離れたところに存在している。これらの特徴は、
図1~
図3の図面に表されている。この固有の分枝構造を有する飽和炭化水素は、コールドクランク・シミュレート粘度(CCS)対Noack揮発度の驚くような関係(
図3)を呈する。これは低粘度である自動車のエンジンオイルを混合するのに有利である。以下の説明は、本プロセスによって得られた炭化水素混合生成物の固有性を良好に理解するために提供されている。
【0050】
炭化水素特性の説明
以下の特性は、新規の飽和炭化水素混合物を記載するのに使用されている。
【0051】
粘度は、ベースストックの流動度を測定する物理特性である。粘度は温度と強く相関している。2つの一般的に使用されている粘度測定は、動的粘度および動粘度である。動的粘度は、流れに対する流体の内部抵抗性を測定する。エンジンオイルについての-35℃でのコールドクランク・シミュレート(CCS)粘度は動的粘度測定の一例である。動的粘度のSI単位はPa・sである。使用されている従来の単位はセンチポアズ(cP)である。これは0.001Pa・s(または1mPa・s)と等しい。業界は、緩やかにSI単位へと移行中である。動粘度は、密度に対する動的粘度の比率である。動粘度のSI単位は、mm2/sである。業界において他の一般的に使用されている単位は、40℃(KV40)および100℃(KV100)でのセンチストーク(cSt)、ならびに100゜Fおよび210゜Fでのセイボルトユニバーサル秒(SUS)である。好都合なことには、1mm2/sは1cStと等しい。ASTM D5293およびD445は、CCS測定および動粘度測定に対するそれぞれの方法である。
【0052】
粘度指数(VI)は、温度の関数として、ベースストックの動粘度における変化を測定するために使用されている実験上の数である。高いVIであればあるほど、温度に伴う粘度における相対的な変化はより低くなる。高いVIベースストックは、大半の潤滑油用途にとっては望ましい。特にマルチグレードの自動車エンジンオイルおよび他の自動車用潤滑油は、使用温度の変化を大きく受ける。ASTM D2270は、VIを決定するための一般的に許容された方法である。
【0053】
流動点は、検査試料の動きを観察した際の最低温度である。大半の潤滑油は液相で操作されるよう設計されているため、ベースストックにとってこれは最も重要な特性の1つである。流動点が低いことが通常は望ましく、特に冷涼な天候での潤滑時に望ましい。ASTM D97は、流動点を測定するための標準的な手動の方法である。この方法は、ASTM D5950およびASTM D6749などの自動化された方法へと徐々に置き換えられているところである。1℃の試験間隔を有するASTM D5950は、本特許に対する例に関する流動点測定に使用されている。
【0054】
揮発性は、高温での蒸発によるオイル損失の測定値である。これは排気ガスおよび動作寿命といった課題(特に軽グレードのベースストックに関する課題)を理由として、非常に重要な規格となっている。揮発性は、特に沸点曲線の前端部にて、オイルの分子組成によって変化する。Noack(ASTM D5800)は、自動車用潤滑油に関する揮発性を測定するための、一般的に許容された方法である。Noack試験方法自体は、内燃機関の動作などの高温時の運転における蒸発損失をシミュレートするものである。
【0055】
沸点分布は、5%および95%の物質が蒸発する真沸点(TBP)によって定義されている、沸点範囲である。これは本明細書ではASTM D2887によって測定される。
【0056】
NMR分枝解析:
全ての分枝パラメータは、<1000Br指数mg Br/100gを有する炭化水素上で測定されるものである。炭化水素の特性評価に関して、NMR分光法により測定された分枝パラメータは、以下のものを含む。すなわち、
【0057】
分枝指数(Branching Index、BI):イソパラフィン炭化水素中、1H NMR化学範囲が0.5~2.1ppmにて発生する全水素中、0.5~1.05ppmである化学シフト範囲にて発生するメチル水素のパーセンテージ。
【0058】
分枝近接度(BP):13C NMR化学シフト(29.8ppm)にて発生する末端基または分枝鎖から取り除かれた4以上の数の炭素原子であるメチレン炭素を再現するパーセンテージ。
【0059】
内部アルキル炭素:末端メチル炭素から取り除かれた3個以上の炭素である、メチル炭素、エチル炭素、またはプロピル炭素の数である。これは、3-メチル、4-メチル、5+メチル、隣接メチル、内部エチル、n-プロピル、および13C NMR化学シフトで0.5ppm~22.0ppmの間で発生する未知のメチルを含むが、13.8ppmにて発生する末端メチル炭素は除く。
【0060】
5+メチル炭素:平均的なイソパラフィン分子中、13C NMR化学シフトで19.6ppmにて発生する末端の炭素から4個超離れた炭素であるメチン炭素に結合するメチル炭素の数である。
【0061】
該供給原料は、アルファオレフィン、分岐オレフィン、および内部オレフィンといった用語で定義され得る。
【0062】
触媒の定義:ブタノールおよびブチルアセテートはn-ブタノールとして、ブチルアセテートはn-ブチル-アセテートとして記載されている。
【0063】
アルファ-オレフィン:CxH2xの化学式を有する不飽和炭化水素であり、第1またはアルファ位置にて二重結合を有し、かつ直鎖炭化水素を有することで区別されている。
【0064】
分岐オレフィン:炭素構造が内部で1つまたは複数の第3級炭素を有するオレフィン。
【0065】
内部オレフィン:内部の末端位置にて不飽和状態が存在しないオレフィン。
【0066】
NMRスペクトルは、5mmのBBIプローブを使用するBruker AVANCE 500分光計を用いて取得された。各サンプルはCDCl3と1:1(重量:重量)で混合された。1H NMRは500.11MHzにて、各スペクトルに対し共に適用された64回のスキャンを用い、4秒間隔で加えられた9.0μs(30゜)パルスを使用して記録された。13C NMRは125.75MHzにて、各スペクトルに対し共に適用された4096回のスキャンを用い、6秒間隔で加えられ、7.0μsパルスを使用し、かつ逆ゲート付デカップリングを用いて記録された。少量の0.1MのCr(acac)3を緩和剤として添加し、TMSを内部標準として使用した。
【0067】
本発明の潤滑油ベースストックサンプルの分枝特性は、以下の6段階のプロセスに従って決定される。手順の詳細は、米国特許20050077208(A1)号にて提供されており、その全体が本明細書に組み入れられている。以下の手順は現在の一連のサンプルを特性評価するためにわずかに変更されている:
1)CH分枝の中心およびDEPTパルスシーケンスを使用したCH
3分枝の終端点の識別(Doddrell,D.T.;D.T.Pegg;M.R.Bendall,Journal of Magnetic Resonance 1982,48,323ff.)。
2)APTパルスシーケンスを使用した、複数の分枝鎖(第4級炭素)を開始させる炭素の欠損の検査(Patt,S.L.;J.N.Shoolery,Journal of Magnetic Resonance 1982,46,535ff.)。
3)表形式および計算済の値を使用し、種々の分枝炭素共鳴を特定の分枝位置および長さに代入(Lindeman,L.P.,Journal of Qualitative Analytical Chemistry 43,1971 1245ff;Netzel,D.A.,et.al.,Fuel,60,1981,307ff.)。
分枝鎖NMR化学シフト(ppm)
【表2】
4)末端メチル炭素の積分強度と単一炭素の強度とを比較する(総積分/混合物における分子あたりの炭素数)ことで、異なる炭素位置での分枝発生の相対頻度を定量化。例えば、分子あたりの5+メチル分枝鎖の数は、単一炭素の強度に対する19.6ppmの化学シフトでのシグナル強度から計算される。
2-メチル分枝鎖といった固有の場合に関し、末端メチルおよび分枝メチルの両方が同様の共鳴位置で発生した場合には、分枝発生頻度の計算を行う前に該強度を2つに分割した。
4-メチル分枝の留分を計算および合計する場合、該5+メチルへの寄与は重複計算を避けるために減算されなくてはならない。
未知のメチル分枝は5.0~22.5ppmの間で生じるシグナルの寄与から計算される。ただし、これには表2で報告されたいずれかの分枝鎖を含んではいない。
5)分枝指数(BI)および分枝近接度(BP)を、米国特許第6,090,989号(その全体が参照として本明細書に組み入れられている)に記載の計算値を用いて計算する。
6)工程3および工程4に記載の分枝(2-メチル分枝を除く)を加算することで、分子あたりの内部アルキル分枝鎖を計算する。これらの分枝鎖は、3-メチル、4-メチル、5+メチル、内部エチル、n-プロピル、隣接メチルおよび未知のメチルを含む。
【0068】
FIMS解析:本発明の炭化水素分布は、FIMS(電界イオン質量分析)によって決定される。FIMSスペクトルは、Waters GCT-TOF質量分析計を用いて得られた。サンプルを固体プローブを用いて導入し、約40℃から、1分あたり50℃ずつの割合で500℃まで加熱した。質量分析計は、40m/zから、1桁につき5秒ずつの割合で1000m/zまでスキャンした。得られた質量スペクトルを合計し、パラフィンと最大で6つの環を含有するシクロパラフィンの炭素数分布を提供する、平均化スペクトルを1つ生成した。
【0069】
炭化水素構造および特性
本明細書に開示された炭化水素混合物の構造は、FIMSおよびNMRによって特徴付けられる。FIMS解析は、炭化水素混合物中の分子の80%超が偶数の炭素数を有することを示している。
【0070】
本明細書にて開示の炭化水素混合物の固有の分枝構造は、BP、BI、内部アルキル分枝、および5+メチルなどのNMRパラメータによって特徴付けられる。炭化水素混合物のBP/BIは、≧-0.6037(分子あたりの内部アルキル分枝)+2.0の範囲である。炭化水素混合物の5+メチルは、平均して分子あたり0.3~1.5である。
【0071】
炭化水素混合物は、炭素数分布に基づき2つの分子範囲に分類することが可能である。これはすなわち、C28~C40炭素と、C42以上の炭素である。一般には、各炭化水素混合物中に存在する分子の約95%または95%超は、特定範囲内の炭素数を有する。C28~C40範囲について代表的な分子構造は、NMR解析およびFIMS解析に基づいて提案され得る。特定の理論のいずれか1つに縛られるものではないが、オレフィンをオリゴマー化かつ水素異性化することで作製された構造は、該構造全体にわたって分布しているメチル分枝鎖、エチル分枝鎖、ブチル分枝鎖を有し、分枝指数および分枝近接度は、驚くべきことに生成物の良好な低温特性に寄与すると考えられている。本発明の炭化水素混合物中の代表的な構造は以下の通りである。
【化1】
【0072】
炭化水素混合物の固有の分枝構造および狭い炭素分布により、該炭化水素混合物は高品質の合成ベースオイル(特に低粘度のエンジンオイル用途)として使用されるのに好適となる。該炭化水素混合物は:
・3.0~10.0cStの範囲であるKV100、
・-20~-55℃の範囲である流動点、および
・Noackが2750(-35℃にてCCS)(-0.8)±2の範囲内であるような、Noackと-35℃でのCCSの関係
を呈する。
【0073】
炭化水素混合物についてのNoackとCCSの関係は、
図3および
図4に示されている。各図において、最上部の線は、Noack=2750(-35℃にてCCS)
(-0.8)+2を表し、下のグラフの線は、Noack=2750(-35℃にてCCS)
(-0.8)-2を表す。より好ましい炭化水素混合物は、Noackが、Noack=2750(-35℃にてCCS)
(-0.8)+0.5~Noack=2750(-35℃にてCCS)
(-0.8)-2の間となるようにNoackと-35℃でのCCSの関係を有する。
図3および
図4において開始点に近い炭化水素混合物は、低粘度および-35℃での揮発度が減少していることに起因して、低粘度のエンジンオイルに対してより有利であることが見いだされている。
【0074】
C28~C40の範囲である炭素数を有する、本発明に従った炭化水素混合物、および別の実施形態でのC28~C36の範囲の炭素数、または別の実施形態でのC32の炭素数を有する分子は、上記のBP/BI、分子あたりの内部アルキル分枝鎖、分子あたりの5+メチル分枝鎖、およびNoack/CCS関係といった特徴に加え、以下のような特徴を一般には呈する。すなわち、
・3.0~6.0cStの範囲であるKV100、
・11ln(BP/BI)+135~11ln(BP/BI)+145の範囲であるVI、および
・33ln(BP/BI)-45~33ln(BP/BI)-35の範囲である流動点
である。
【0075】
一実施形態では、C28~C40の炭化水素混合物についてのKV100は、3.2~5.5cStの範囲であり、別の実施形態では、KV100は4.0~5.2cStの範囲であり、別の実施形態では、4.1~4.5cStである。
【0076】
C28~C40の炭化水素混合物についてのVIは、一実施形態では125~155の範囲であり、別の実施形態では、135~145の範囲である。
【0077】
炭化水素混合物の流動点は、一実施形態では、25~-55℃の範囲であり、別の実施形態では、35~-45℃の範囲である。
【0078】
C28~C40の炭化水素混合物の沸点範囲は、一実施形態では、ASTM D2887によって測定した場合、125℃(95%でのTBP~5%でのTBP)に過ぎず、別の実施形態では100℃、一実施形態では75℃、別の実施形態では50℃、および一実施形態では30℃に過ぎない。好ましい実施形態では、たった50℃の沸点範囲、および更により好ましくはたった30℃の沸点範囲を有するものは、驚くべきごとに、所与のKV100に対して低いNoack揮発度(ASTM D5800)を提供する。
【0079】
一実施形態でのC28~C40の炭化水素混合物は、15~25の範囲である分枝指数(BI)を有する14~30の範囲である分枝近接度(BP)を有し、別の実施形態では15~28の範囲でのBPおよび16~24の範囲でのBIを有する。
【0080】
C28~C40の炭化水素混合物のNoack揮発度(ASTM D5800)は、一実施形態では16重量%未満であり、一実施形態では12重量%未満であり、一実施形態では10重量%未満であり、一実施形態では8重量%未満であり、また一実施形態では7重量%未満である。一実施形態では、C28~C40炭化水素混合物はまた、2700cP未満である-35℃でのCCS粘度を有し、別の実施形態では2000cP未満、一実施形態では1700cP未満、また一実施形態では1500cP未満の粘度を有する。
【0081】
C42以上の炭素数範囲を有する炭化水素混合物は、上記のBP/BI、分子あたりの内部アルキル分枝鎖、分子あたりの5+メチル分枝鎖、およびNoackと-35℃でのCCSとの関係といった特徴に加え、以下のような特徴を一般には呈する。すなわち、
・6.0~10.0cStの範囲であるKV100、
・11ln(BP/BI)+145~11ln(BP/BI)+160の範囲であるVI、および
・33ln(BP/BI)-40~33ln(BP/BI)-25の範囲である流動点
である。
【0082】
一実施形態では、C42以上の炭素数を含む炭化水素混合物は8.0~10.0cStの範囲であるKV100を有し、別の実施形態では8.5~9.5cStの範囲であるKV100を有する。
【0083】
一実施形態にて≧42個の炭素を有する炭化水素混合物のVIは、140~170であり、別の実施形態では150~160である。
【0084】
一実施形態での流動点は、-15~-50℃の範囲であり、別の実施形態での流動点は-20~-40℃の範囲である。
【0085】
一実施形態では、≧42個の炭素を含む炭化水素混合物は、15~25の範囲であるBIを有する、16~30の範囲であるBPを有する。別の実施形態では、炭化水素混合物は18~28の範囲であるBPと、17~23の範囲であるBIを有する。
【0086】
一般には、上で開示された両方の炭化水素混合物は、以下の特徴を呈する。すなわち、
・FIMSに則って、少なくとも80%の分子が偶数の炭素数を有する、
・3.0~10.0cStの範囲であるKV100、
・-20~-55℃の範囲である流動点、
・Noackが2750(-35℃でのCCS)(-0.8)±2の範囲内であるような、-35℃でのNoackとCCSの関係、
・分子あたり≧-0.6037(内部アルキル分枝)+2.0の範囲でのBP/BI、および
・平均で分子あたり0.3~1.5の5+メチル分枝鎖である。
【0087】
潤滑油配合物
本プロセスで調製された炭化水素混合物を、潤滑油ベースストックとして使用さして、添加剤を含む最終の潤滑油生成物を配合することができる。ある特定の変形例では、本明細書に記載の方法に従って調製されたベースストックは、1つまたは複数の追加のベースストック、例えば、1つまたは複数の市販のPAO、1つまたは複数のガス流体(GTL)ベースストック、1つまたは複数の鉱油ベースストック、植物油ベースストック、藻類由来のベースストック、本明細書に記載の第2のベースストック、または任意の他の種類の再利用可能なベースストックを用いて混合される。任意の有効量の追加ベースストックが、望ましい特性を有する混合ベースオイルに達するように追加されてよい。
【0088】
本発明は、以下の例によって更に示されているが、これは限定を意図したものではない。
【0089】
例
例1~例6(C28~C40炭化水素混合物)
例1
8%未満の分岐オレフィンおよび内部オレフィンを有する1-ヘキサデセンは、ブタノールとブチルアセテートの共触媒組成物を有するBF3の下でオリゴマー化された。反応は、オレフィンと共触媒を半連続式に添加している間、20℃に維持された。滞留時間は90分であった。未反応の単量体を次いで留去し、蒸留残液中に0.1%未満の単量体を残した。次に二量体は、蒸留によって三量体+と分けられた。5%未満の三量体は、二量体留分中に残留した状態であった。
【0090】
次に二量体は、アルミナと結合されたMRE構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび307℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパー(online stripper)を用いて水素異性化C16二量体と分けられた。
【0091】
例2
オリゴマー化およびオリゴマー蒸留は、例1と同様に実施された。次に二量体は、アルミナと結合されたMRE構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび313℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16二量体と分けられた。
【0092】
例3
オリゴマー化およびオリゴマー蒸留は、例1と同様に実施された。次に二量体は、アルミナと結合されたMRE構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび324℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16二量体と分けられた。
【0093】
例4
オリゴマー化およびオリゴマー蒸留は、例1と同様に実施された。次に二量体はアルミナと結合されたMTT構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび316℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16二量体と分けられた。
【0094】
例5
オリゴマー化およびオリゴマー蒸留は、例1と同様に実施された。次に二量体はアルミナと結合されたMTT構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび321℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16二量体と分けられた。
【0095】
例6
オリゴマー化およびオリゴマー蒸留は、例1と同様に実施された。次に二量体はアルミナと結合されたMTT構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび332℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16二量体と分けられた。
【0096】
例7~12(C≧42の炭化水素混合物)
例7
8%未満の分岐オレフィンおよび内部オレフィンを有する1-ヘキサデセンは、ブタノールとブチルアセテートの共触媒組成物を有するBF3の下でオリゴマー化された。該反応は、オレフィンと共触媒を半連続式に添加している間、20℃に維持された。滞留時間は90分であった。未反応の単量体を次いで留去し、蒸留残液中に0.1%未満の単量体を残した。続く蒸留は、三量体およびより高次のオリゴマーから二量体を分離するために実施された。生じた二量体は5%未満の三量体を有している。
【0097】
次に三量体およびより高次のオリゴマー(三量体+)留分は、アルミナと結合されたMRE構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび313℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16三量体+と分けられた。
【0098】
例8
オリゴマー化およびそれに続く蒸留は、例7と同様に実施された。次に三量体+留分は、アルミナと結合されたMRE構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび318℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16三量体+と分けられた。
【0099】
例9
オリゴマー化およびそれに続く蒸留は、例7と同様に実施された。次に三量体+留分は、アルミナと結合されたMRE構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび324℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16三量体+と分けられた。
【0100】
例10
オリゴマー化およびそれに続く蒸留は、例7と同様に実施された。次に三量体+留分は、アルミナと結合されたMTT構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび321℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16三量体+と分けられた。
【0101】
例11
オリゴマー化およびそれに続く蒸留は、例7と同様に実施された。次に三量体+留分は、アルミナと結合されたMTT構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび327℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16三量体+と分けられた。
【0102】
例12
オリゴマー化およびそれに続く蒸留は、例7と同様に実施された。次に三量体+留分は、アルミナと結合されたMTT構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、500psigおよび332℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパーを用いて水素異性化C16三量体+と分けられた。
【0103】
例13および例14
75%のアルファオレフィンおよび8%未満の分岐オレフィンおよび内部オレフィンを有するヘキサデセンは、ブタノールとブチルアセテートの共触媒組成物を有するBF3の下でオリゴマー化された。反応は、オレフィンと共触媒を半連続式に添加している間、50℃に維持された。滞留時間は90分であった。未反応の単量体を次いで留去し、0.1%未満の単量体蒸留残液を残した。
【0104】
次に二量体およびより高次のオリゴマーは、アルミナと結合されたMRE構造タイプの触媒である、貴金属を含浸させたアルミナケイ酸塩を用いて水素異性化された。該反応は、350psigおよび300℃で固定床リアクタにて実施された。分解された分子は、オンラインストリッパー(online stripper)を用いて水素異性化C16二量体と分けられた。続く蒸留は、二量体留分中に残留した5%未満の三量体を有する三量体+から、二量体を分離するために実施された。三量体+を含有する蒸留留分を検査し、例14として表されている。
【0105】
例1~例14にて得られた炭化水素混合物に関する検査結果は、以下の表3にその概要が示されている。
【表3】
【0106】
図1および
図2では、BP/BIと分子あたりの内部アルキル分枝鎖との関係、およびBP/BIと分子あたりの5+メチル分枝鎖との関係はそれぞれ、本プロセスにより得られた炭化水素混合物に関して示されている。
図3は、得られた炭化水素生成物に関して、Noack揮発度と-35℃でのCCSとの関係をグラフ的に表している。表3におけるデータは、これらの固有の関係および特徴を表明するものである。
【0107】
例15~例21
オリゴマー構造および特性に関する三フッ素ホウ素のオリゴマー化反応温度の影響を調査した。高反応温度は、オリゴマー化中に発生する異性化を増加させることが明らかとなった。NMRによりこの影響を直接観察するため、オリゴマー生成物を飽和させ、二量体と三量体+留分へと蒸留させた。各二量体留分例についての分枝近接度を測定した。結果は、サンプル15~サンプル21について、以下の表4にて示されている。
【表4】
【0108】
該データから、分枝近接度により測定されるように、反応温度が増加するに従って留分の直線性は低下することを確認することができる。これは炭素骨格に沿って、分枝鎖の数が増加していることを示している。高温でのオリゴマー化中に生じる分枝の増加により、望ましい流動点を得るのに必要である、分子あたりの5+メチル分枝の必要な数を有する二量体留分は得られない。望ましい5+メチル分枝は、オリゴマー生成物の水素異性化によって得られる。
【0109】
オリゴマー化中のメチル分枝における増加により、不適切な分枝および非理想的な物理特性を有する水素異性化生成物が生じる。水素異性化を行う前に、分枝近接度が27~35の間であることが水素化された二量体には求められる。
【0110】
例15
93%のアルファオレフィンおよび8%未満の分岐オレフィンおよび内部オレフィンを有するヘキサデセンは、ブタノールとブチルアセテートの共触媒組成物を有するBF3の下でオリゴマー化された。反応は、オレフィンと共触媒を半連続式に添加している間、30℃に維持された。滞留時間は90分であった。未反応の単量体を次いで留去し、0.1%未満の単量体蒸留残液を残した。続く蒸留は、二量体留分中に残留した5%未満の三量体を有する三量体+から、二量体を分離するために実施された。二量体留分は、異性化することなくその後水素化された。
【0111】
例16
93%のアルファオレフィンおよび8%未満の分岐オレフィンおよび内部オレフィンを有するヘキサデセンは、ブタノールとブチルアセテートの共触媒組成物を有するBF3の下でオリゴマー化された。反応は、オレフィンと共触媒を半連続式に添加している間、50℃に維持された。滞留時間は90分であった。未反応の単量体を次いで留去し、0.1%未満の単量体蒸留残液を残した。続く蒸留は、二量体留分中に残留した5%未満の三量体を有する三量体+から、二量体を分離するために実施された。二量体留分は、異性化することなくその後水素化された。
【0112】
例17
93%のアルファオレフィンおよび8%未満の分岐オレフィンおよび内部オレフィンを有するヘキサデセンは、ブタノールとブチルアセテートの共触媒組成物を有するBF3の下でオリゴマー化された。反応は、オレフィンと共触媒を半連続式に添加している間、80℃に維持された。滞留時間は90分であった。未反応の単量体を次いで留去し、0.1%未満の単量体蒸留残液を残した。続く蒸留は、二量体留分中に残留した5%未満の三量体を有する三量体+から、二量体を分離するために実施された。二量体留分は、異性化することなくその後水素化された。
【0113】
例18
75%のアルファオレフィンおよび1%未満の分枝オレフィンおよび内部オレフィンを有するヘキサデセンは、ブタノールとブチルアセテートの共触媒組成物を有するBF3の下でオリゴマー化された。反応は、オレフィンと共触媒を半連続式に添加している間、50℃に維持された。滞留時間は120分であった。未反応の単量体を次いで留去し、0.1%未満の単量体蒸留残液を残した。続く蒸留は、二量体留分中に残留した5%未満の三量体を有する三量体+から、二量体を分離するために実施された。二量体留分は、異性化することなくその後水素化された。
【0114】
例19
60%のアルファオレフィンおよび1%未満の分岐オレフィンおよび内部オレフィンを有するヘキサデセンは、ブタノールとブチルアセテートの共触媒組成物を有するBF3の下でオリゴマー化された。反応は、オレフィンと共触媒を半連続式に添加している間、50℃に維持された。滞留時間は120分であった。未反応の単量体を次いで留去し、0.1%未満の単量体蒸留残液を残した。続く蒸留は、二量体留分中に残留した5%未満の三量体を有する三量体+から、二量体を分離するために実施された。二量体留分は、異性化することなくその後水素化された。
【0115】
例20
60%のアルファオレフィンおよび1%未満の分岐オレフィンおよび内部オレフィンを有するヘキサデセンは、ブタノールとブチルアセテートの共触媒組成物を有するBF3の下でオリゴマー化された。反応は、オレフィンと共触媒を半連続式に添加している間、30℃に維持された。滞留時間は120分であった。未反応の単量体を次いで留去し、0.1%未満の単量体蒸留残液を残した。続く蒸留は、二量体留分中に残留した5%未満の三量体を有する三量体+から、二量体を分離するために実施された。二量体留分は、異性化することなくその後水素化された。
【0116】
例21
45%のアルファオレフィンおよび1%未満の分岐オレフィンおよび内部オレフィンを有するヘキサデセンは、ブタノールとブチルアセテートの共触媒組成物を有するBF3の下でオリゴマー化された。反応は、オレフィンと共触媒を半連続式に添加している間、50℃に維持された。滞留時間は120分であった。未反応の単量体を次いで留去し、0.1%未満の単量体蒸留残液を残した。続く蒸留は、二量体留分中に残留した5%未満の三量体を有する三量体+から、二量体を分離するために実施された。二量体留分は、異性化することなくその後水素化された。