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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】制御装置を備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/406 20060101AFI20230119BHJP
   G05B 19/409 20060101ALI20230119BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G05B19/406 Z
G05B19/409 C
B23Q15/00 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020572901
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019067349
(87)【国際公開番号】W WO2020002610
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102018210625.8
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506381599
【氏名又は名称】ディッケル マホ プロンテン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】アルミン ボルネマン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル フォーラー
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ フュッシンガー
(72)【発明者】
【氏名】マンフレッド シュミット
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-062913(JP,A)
【文献】特開平04-156601(JP,A)
【文献】特開2009-123194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0113199(US,A1)
【文献】特開平06-246591(JP,A)
【文献】特表2009-536580(JP,A)
【文献】特開平10-100045(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10037003(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009054420(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0202166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 15/00
B23Q 37/00 - 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械であって、該工作機械(W)を制御する制御装置を備え、該工作機械(W)はいくつかの機械領域(M)に分割され、該工作機械(W)は異なる運転モードを有し、該運転モードは少なくとも標準モード及び保守モードを含み、前記制御装置は、
ユーザーによる前記制御装置の操作のための操作ユニット(B)と、
該工作機械(W)の異なる機械領域(M)を制御する安全コントローラー(S)と、
を備え、
該工作機械(W)の機械領域(M)は前記操作ユニット(B)を介して選択され、前記選択された機械領域(M)に運転モードが割当可能であり、前記選択された機械領域(M)は前記割り当てられた運転モードとともに前記安全コントローラー(S)に送信され、
前記保守モードは、保守ドアが開放されたことによる信号と前記ユーザーの認可とに応じてアクティベートすることができる、工作機械。
【請求項2】
運転モードは、前記工作機械(W)のそれぞれの機械領域(M)に、互いに独立して割当可能である、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記運転モードは、前記工作機械(W)の組立及び/又は設置中に組立モードが割り当てられる前記工作機械の機械領域(M)を運転するように構成される前記組立モードを含む、請求項1及び2の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項4】
前記制御装置は、組立作業及び/又は保全作業が行われる機械領域(M)の選択と、組立モードでのこれらの機械領域(M)の運転とを可能にし、選択されていない前記機械領域を安全モードで運転するか又はこれらの領域を運転停止することが可能であり、前記組立モードは、前記工作機械(W)の組立及び/又は設置中に組立モードが割り当てられる前記工作機械の機械領域(M)を運転するように構成される、請求項1~3の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記制御装置は、電子アクセスキーのアクセス認可を認識することができるように構成され、前記アクセス認可に応じて、前記運転モード、特に安全運転モードの変更、及び/
又は機械領域(M)へのアクセスが指定可能である、請求項1~4の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記制御装置は、選択された機械領域(M)を前記割り当てられた運転モードでアクティベートするイネーブルボタン(MB1)又はアクティベーションボタンを備え、該イネーブルボタン(MB1)又はアクティベーションボタンが作動されたときにのみ操作が可能であるようになっている、請求項1~5の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記制御装置は運転セレクタースイッチとして作用し、前記制御装置は、ユーザーのアクセスキーのユーザー認可を決定することによって該ユーザーのアクセス認可を決定するように構成され、前記工作機械(W)を前記ユーザーの前記認可に従って運転することができるようにする、請求項1~6の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項8】
前記制御装置は、前記運転モードを変更する選択システムと、該選択システムへのアクセスを制限するアクセスシステムと、制御部の安全関連部分を制御する選定システムとを備える、安全運転セレクター装置を備える、請求項1~7の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項9】
前記操作ユニット(B)は、機械領域(M)とそれぞれの該機械領域(M)の運転モードとをグラフィカルに表す画面を備え、該画面は、特にタッチセンシティブスクリーンであり、該画面上での前記機械領域(M)及び運転モードの選択が可能である、請求項1~8の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項10】
前記運転モードは、機械オペレーター用の保守モードと、機械製造業者用の保守モードとを含む、請求項1~9の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記選択された機械領域(M)をアクティベートするために、前記安全コントローラー(S)に直接作用するイネーブルボタン(MB1)又はアクティベーションボタンが押されなければならず、前記機械領域(M)の前記選択は、データ伝送を介して前記安全コントローラー(S)に送信される、請求項1~10の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項12】
前記機械領域(M)の前記それぞれの運転モードでの運転をアクティベートするために、イネーブルボタン(MB1)又はアクティベーションボタンが押されなければならず、電子キーもまた前記制御装置に接続されていなければならない、請求項1~11の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項13】
前記安全コントローラー(S)からのフィードバックが、前記操作ユニット(B)の前記画面にもたらされ、該画面に、前記アクティベートされた機械領域(M)がグラフィカルに表現され、該グラフィカル表現は、特に、前記アクティベートされた機械領域(M)を強調表示することを含む、請求項9~12の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項14】
安全モードのアクティベーションの後、前記選択された機械領域(M)を変更することが可能である、請求項1~13の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項15】
前記操作ユニット(B)は、前記機械領域(M)の選択に加えて、この機械領域(M)の個々の構成要素又は複数の構成要素の選択も可能にし、それにより、これらの構成要素を必要に応じて設定することができ、該構成要素は、特に、前記工作機械(W)の駆動可能な構成要素である、請求項1~14の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項16】
前記制御装置は、前記機械領域(M)が選択されると前記機械領域(M)において事前
設定された通りに異なる前記構成要素を結合するように構成されている、請求項15に記載の工作機械。
【請求項17】
前記制御装置は、使用されるトランスポンダーキーのID番号の設定可能な送信のためにハンドシェイク制御による伝送方法を実行する、請求項1~16の少なくとも一項に記載の工作機械。
【請求項18】
工作機械を制御する制御装置であって、
ユーザーによる該制御装置の操作のための操作ユニットと、
前記工作機械(W)の異なる機械領域(M)を制御する安全コントローラー(S)と、を備え、
前記工作機械(W)の機械領域(M)は前記操作ユニット(B)を介して選択することができ、前記選択された機械領域(M)に運転モードを設定することができ、前記選択された機械領域は前記割り当てられた運転モードとともに前記安全コントローラー(S)に送信され、
前記運転モードは少なくとも標準モードと保守モードとを含み、
前記保守モードは、保守ドアが開放されたことによる信号と前記ユーザーの認可とに応じてアクティベートすることができる、制御装置。
【請求項19】
制御装置によって工作機械を制御する方法であって、該制御装置は前記工作機械()を制御する機械コントローラーと安全コントローラー(S)とを備え、前記工作機械(W)は複数の機械領域(M)を含み、該複数の機械領域(M)は異なる運転モードで運転することができ、該運転モードは少なくとも1つの保守モードと1つの通常モードとを含み、該方法は、
電子キーへの接続によって前記制御装置のシステムにアクセスするステップと、
機械領域(M)を選択するステップと、
前記機械領域(M)に対して運転モードを選択するステップと、
前記安全コントローラー(S)、選択された前記機械領域(M)と前記機械領域(M)に対して選択された前記運転モードとを含むデータを送信するステップと、
送信された前記データに基づいて前記機械領域(M)を前記安全コントローラー(S)により制御するステップと、
を含み、
前記保守モードは、保守ドアが開放されたことによる信号と前記ユーザーの認可とに応じてアクティベートすることができる、方法。
【請求項20】
データキャリアに記憶され、工作機械(W)の制御装置上で、請求項19に記載の方法が前記工作機械(W)において行われるように実行されるように構成されたプログラム手段を備えるコンピュータープログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械であって、当該工作機械の運転モードを制御するように構成された制御装置を備える工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
1つ以上のキースイッチを用いる工作機械のためのアクセス制御部は、従来技術から既知である。欧州指令及び標準規格による機械の個々の運転モードは、これらのキースイッチを介して明確にアクティベートされる。
【0003】
アクセス制御装置を備えた工作機械が、特許文献1から既知であり、そこでは、ユーザーは、選択装置を介して1つ以上の操作機能を選択することができる。アクセス制御装置が、ユーザーが実施することが認可される工作機械の操作機能へのユーザーアクセスのみを許可する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第2034378号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、操作性及び制御が改善した、特に、運転中の安全性を単純な方法で向上させることができる、制御装置と制御装置を備えた工作機械とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の有利な展開及び好ましい例示的な実施形態は、従属請求項に明記されている。
【0007】
工作機械は、当該工作機械を制御する制御装置と様々な機械領域とを備えることができる。工作機械は、異なる運転モード、特に、1つ以上の安全運転モード(安全運転モード(mode-of-safe-operation)、略してMSO)も有することができ、そうした運転モードは、少なくとも1つ以上の標準運転モードと保守(service)モード又は保守運転モードとを含むことができる。したがって、工作機械を、異なる運転モードで、少なくとも標準モード及び保守モードで運転することができる。標準運転モードは、例えば、安全標準運転「自動(Automatic)」(MSO 1)、安全標準運転「セットアップ(Setup)」(MSO 2)及び標準運転「拡張セットアップ」(MSO 3)を含むことができる。保守運転(MSO SE)もまた、安全運転モードとして構成することができる。
【0008】
制御装置は、ユーザーによる制御装置の操作のための操作ユニットと、工作機械の様々な機械領域を作動させる安全コントローラーとを備えることができる。工作機械の機械領域は、操作ユニットを介して選択することができ、選択された機械領域に対して、運転モード又は安全運転モードを規定することができ、選択された機械領域は割り当てられた運転モード又は安全運転モードとともに、安全コントローラーに送信することができる。
【0009】
有利には、こうした構成により、制御装置を備えた工作機械を提供することが可能になり、そこでは、ユーザーは、操作ユニットを介して工作機械の異なる機械領域を選択することができ、工作機械の異なる機械領域を異なる運転モードで運転することができるように、選択された機械領域に対して特定の運転モードを規定することができる。これには、
安全性を向上させるという利点があり、その理由は、例えば、工作機械の部分的な領域のみを、保守又は保全作業のために、同様に組立作業のために、安全運転に切り換えることができる一方で、必要とされていない機械領域は、例えば、スリープモード又は電源オフ状態にすることができるためである。
【0010】
機械領域を安全モードで運転することにより、例えば、工作機械のNC軸(例えば、送り軸、スピンドル等)の非常に低速な移動が可能になり、保全担当者又はユーザーが工作機械に対する保守作業を実施することができるように、保守ドアを開放するときの、通常は機械が安全に停止することになるエラーメッセージを阻止することができる。
【0011】
しかしながら、同時に、工作機械の他の領域を異なる安全モードで運転することができ、それにより、保守ドアが意図されずに開放されたとき、又は他の機械領域からのエラー信号があったときに、工作機械の警告又は運転停止が可能になる。工作機械の異なる機械領域に対して異なる運転モード又は安全運転モードを選択することにより、例えば、1つの機械領域における組立作業と、別の機械領域における保守作業(例えば、別の組立又は保全行為)とを同時に行うことも可能であり、その場合、機械領域を対応する運転モード又は安全運転モードにすることができ、その結果、工作機械を高い安全レベルで且つ効率的に保守又は転換することができる。保守作業が保留中であるとき、選択された機械領域における移動は、安全に監視されるか又は停止し、必要な場合は、制御手段を用いて安全に可能になる。
【0012】
操作ユニットは、ユーザーが、アクセスキーにおける定義された認可に従ってアクセス制御ユニットを介して工作機械の機能にアクセスすることができるように、構成することができ、操作ユニットは、アクセスキーを取得することにより認可を認識する。これにより、ユーザーは、ユーザーの認可に従って機械領域を選択し、それぞれの機械領域に対するユーザーの認可に従って運転モードを規定することができる。したがって、ユーザーの認可は、一方では機械領域に関連し、他方では、認可のユーザー又はユーザーのアクセスキーとの詳細な関連付けを可能にするように運転モードに関連することができる。
【0013】
工作機械のそれぞれの機械領域は、互いに独立して選択することができ、個々の運転モード又は安全運転モードは、選択された機械領域の各々に対して規定することができる。したがって、運転モード又は安全運転モードは、工作機械のそれぞれの機械領域に対して互いに独立して設定することができる。これにより、工作機械は高い安全率で制御することができ、その理由は、例えば工作機械における様々な作業に対して、それぞれの保守若しくは保全作業及び/又は組立作業が行われるべき機械領域のみがアクティベートされ、したがって、作業運転状態になり、一方で、他の機械領域は、例えば、電源オフ状態に切り替える(又は電源オフ状態で維持する)ことができるためである。
【0014】
運転モードは、組立運転を含むことができる。組立運転では、工作機械の組立及び/又は設置中に工作機械を運転することができる。これには、この組立運転により、機械領域の安全関連センサーを部分的にアクティベートすることができ、他のセンサーはディアクティベートし、それにより、例えば、保守ドアを組み立てているとき、それぞれの機械領域においてスピンドルの速度センサーがアクティベートされ、それにより、スピンドルが誤って又は意図せずにアクティベートされた場合、工作機械又はそれぞれの機械領域のみを電源オフにするか、又はそれを安全状態に移行させるために、エラーメッセージ又は電源オフ信号を出力することができる、という特定の利点がある。
【0015】
制御装置は、組立作業及び/又は保全作業が行われる機械領域の選択を可能にすることができ、それにより、これらの機械領域を組立モードで運転することができる。選択された機械領域を安全モードで運転するか又はそれらの電源をオフにすることも可能である。
【0016】
制御装置は、電子アクセスキー(アクセスユニット)から信号を受信する受信ユニットを(例えば、利用可能な運転モードから、例えば特定の運転モードを選択又はアクティベートするための、ダイヤル装置若しくは選択装置及び/又はアクティベーション装置とともに)備えることができる。こうした電子アクセスキー又はアクセスユニットは、例えば、トランスポンダーキーとして構成することができる。工作機械又はその制御部をアクティベートするユーザーの登録及び確認は、こうした電子アクセスキーを介して行うことができる。制御装置に直接受信ユニットを設けることにより、ユーザー及び使用される電子アクセスキーの認可を決定し、それに基づいて、選択可能な機械領域及び運転モードの選択を可能にすることができる。
【0017】
制御部は、電子アクセスキーのアクセス認可が認識され、そのアクセス認可に応じて運転モード若しくは安全運転モード及び/又は機械領域へのアクセスの変更を指定することができるように、構成することができる。したがって、制御装置は、異なる運転モード及び機械領域へのアクセスを、異なる電子アクセスキーの異なる認可に対して予め設定することができるようにプログラムすることができる。更なる実施形態では、ネットワークを介して制御装置をサーバーに接続することも可能であり、それにより、管理者は、サーバーを介して、アクセスキーのそれぞれの認可のために、許可可能な運転モード又は許可可能な安全運転モードと許可可能な機械領域とを指定することができる。これには、安全性を更に向上させることができるという利点があり、その理由は、特に、アクセスキーの異なる認可カテゴリーにおいてエラー発生が見つかる場合、エラー発生を低減させることができるように後に認可を変更することが容易であるためである。例えば、低い認可を有するアクセスキーを使用するとき、例えば高すぎるスピンドルの速度を設定することにより、或る特定のエラーが相当な程度まで生成される場合、スピンドルの特定の速度に対して特別な認可を要求することができ、それにより、或る一定の範囲を超える速度の変化に対してより高い認可が要求され、それにより、より高い認可を有するアクセスキーによる調整のみが可能になる。
【0018】
制御装置は、各機械領域に対して工作機械の運転モード又は安全運転モードを規定するように構成することができる。これにより、工作機械の運転の個々の構成と、したがって、保全、保守及び/又は組立作業中の安全性の向上とが可能になる。
【0019】
有利には、運転モードは、少なくとも、手動モード、自動モード及び組立モード(組立運転モード)を含むことができる。特に、運転モードは、自動モード(運転モード「自動」、MSO 1)、機械をセットアップするセットアップモード(運転モード「セットアップ」、MSO 2)、及び/又は拡張セットアップオプション及び機能で機械をセットアップする拡張セットアップモード(運転モード「拡張セットアップ」、MSO 3)、及び/又は保守モード(運転モード「保守」、MSO SE)並びに上述した組立モード(組立運転モード)とすることができる。
【0020】
有利には、制御装置は、選択された機械領域を割り当てられた運転モードでアクティベートするイネーブルボタンを含むことができる。これにより、イネーブルボタンの作動なしでの誤った操作が可能でないため、工作機械の操作が改善される。さらに、機械領域又は工作機械全体の操作を可能にするためにイネーブルボタンを連続して押さなければならないように制御装置を構成することが可能である。これは、例えば、上昇する速度でスピンドルを動かしているときに安全性を向上させるために工作機械を手動で操作するときに可能である。したがって、イネーブルボタンを連続して押すことにより、工作機械のユーザーが、制御装置の近くにおり、工作機械の作業領域におらず又は工作機械から離れるように移動していることを確実にすることができる。これは、特に、保守モード又は組立モードで機械領域を運転しているときの安全性に関連する。
【0021】
工作機械の機械領域にキャビン及び/又は保守ドアを設けることができ、機械領域の保守モード及び/又は組立モードで、例えば、キャビンが開放しているか又は保守ドアが開放していても、制御装置は、機械領域を運転するのを可能にすることができる。したがって、工作機械が保守運転又は組立運転で運転されているとき、保守作業又は組立作業を可能にするために、選択された機械領域で安全センサーをディアクティベートすることが可能である。例えば、或る機械領域において保守ドアを取り除くと、それぞれの機械領域に対して、保守ドアの位置(閉鎖位置、開放位置)を出力する安全センサーをディアクティベートすることができ、それにより、問題なしに且つエラーメッセージなしに、保守ドアを交換することができる。機械領域の他の安全要素は、アクティベートされたままにすることもできる。
【0022】
工作機械は、例えば、工具チェンジャー、工具マガジン、パレットチェンジャー及び/又はチップコンベヤシステムを備えることができ、好ましくは、各々が異なる機械領域に割り当てられている。
【0023】
制御装置は、運転セレクタースイッチとして動作することができ、アクセスキーのユーザー認可を決定することによりユーザーのアクセス認可を決定し、ユーザーの認可に従って工作機械が操作されるのを可能にするように構成することができる。
【0024】
安全モードでは、工作機械の最大作業速度を低下させることができ、或る特定の程度を超える作業速度の逸脱及び/又は安全センサーからの信号が検出されると、制御装置によって工作機械を停止させることができる(安全停止)。ここで、安全モードは、工作機械全体に対してのみではなく、工作機械の特別な選択された機械領域のみに対しても選択することができる。安全モードでの最大作業速度の低下と、さらに、或る特定の程度を超える作業速度の逸脱又は安全センサーからの信号の検出とによってもまた、安全性が向上する。安全モードでは、工作機械の機能を制限することができる。
【0025】
工作機械は、運転モードを変更する選択(selection)システムと、選択システムへのアクセスを制限するアクセスシステムと、制御部の安全関連部分を制御する選定(picking)システムとを備える、安全モード選択ユニットを備える制御装置を備えることができる。3つのシステム、すなわち、選択システム、アクセスシステム及び選定システムを含む構造により、安全性を向上させることができ、その理由は、運転モードを変更するために、まず、アクセスシステムにおいてユーザーの認可が検査され、次いで、選択システムにおいて運転モードを変更することができ、最後に、選定システムにおいて制御情報を安全コントローラーに送信することができるためである。これにより、非認可アクセスのリスクを低減させることができる。
【0026】
運転のモードは、手動運転、自動運転及びセットアップ運転、並びに手動での介入を伴う自動運転を含むことができる。これにより、それぞれの機械領域を個々に制御することができるように、様々な機械領域に対して多数の異なる運転モードが可能になる。
【0027】
保守モードは、保守ドアからの信号とユーザーの認可の同時の存在とに応じてアクティベートすることができる。この構成により、例えば、ユーザーがそれぞれの機械領域に対して保守モードに関しても認可されているとすれば、保守ドアが開放されるとすぐに、工作機械の機械領域を保守モードにすることができる。一方、必要な認可を有していないユーザーによって保守ドアが開放されるとき、工作機械の電源をオフにし、警告を発生させることができる。
【0028】
操作ユニットは、機械領域とそれぞれの機械領域の運転モードとをグラフィカルに表示
する画面を備えることができ、そこでは、選択される機械領域をマトリックスで表示することができる。機械領域及びそれぞれの運転モードのグラフィカル表現により、ユーザーが、いずれの機械領域がいずれの運転モードにあるかを一見して認識することができるという点で、安全性を向上させることができる。
【0029】
画面はタッチセンシティブスクリーンとすることができ、それにより、機械領域及び運転モードを画面上で直接選択することができる。この単純なタイプの操作によりさらに安全性が向上し、その理由は、画面上でそれぞれのスイッチに直接触れることにより切替えが可能であるため、画面上に配置されていないそれぞれのスイッチを探すことが不要であるためである。
【0030】
電子キーの認可を介する操作ユニットへのアクセスは、パスワード及び/又は(例えば、指紋認識による)指紋、又は同等のアクセス認可認証を入力することによってもまた保護することができる。したがって、操作ユニットは、認可並びにそれぞれのパスワード及び/又は指紋又は適切なアクセス認可に応じてのみ操作することができる。
【0031】
運転モードは、機械オペレーターのための保守モードと、機械製造業者のための保守モードとを含むことができる。この区別により、機械製造業者の保守従業員のみに対して、工作機械の特に重要な機械領域又は要素へのアクセスを可能にすることができる。
【0032】
選択された機械領域をアクティベートするために、押さなければならないイネーブルボタン又はアクティベーションボタンを設けることができる。イネーブルボタン(アクティベーションボタン)は、安全コントローラーに直接作用することができ、選択された機械領域は、データ伝送を介して安全コントローラーに伝達される。この有利な構成により、操作ユニットのシステムとは独立して機械領域を操作するようにイネーブルボタンを構成することができ、それにより、操作ユニットにおいてエラーが発生した場合に、イネーブルボタンを介する独立した安全電源オフが可能になる。言い換えれば、イネーブルボタンが操作ユニットとは独立して安全コントローラーに接続されており、それによって、イネーブルボタンを作動させなければ工作機械が事前選択された運転モードで運転されないという事実により、操作ユニットでエラーが発生した場合、機械領域の動作が阻止される。
【0033】
機械領域の運転をそれぞれの運転モードでアクティベートするために、イネーブルスイッチを押さなければならず、制御装置に電子キーも接続しなければならない。これは、安全性の更なる向上であり、その理由は、一方で、ユーザーがイネーブルスイッチを押すことと、さらに、ユーザーの電子キーへの接続が必要であるためユーザーが必要な認可も有することとが確実になるためである。
【0034】
電子キーに、キーのユーザーの資格又は訓練レベルに対応する認可を割り当てることができる。
【0035】
画面を介して機械領域を選択することができ、アクティベーションの後、ISO 16090に従って、これら機械領域を安全モードに移行させることができる。
【0036】
さらに、安全コントローラーからのフィードバックを操作ユニットの画面に転送することができ、そこで、アクティベートされた機械領域をグラフィカルに表現することができ、このグラフィカル表現は、特に、アクティベートされた機械領域の強調表示を含む。制御装置の画面への機械領域のこのフィードバックにより、それぞれの機械領域の運転に関するフィードバックをユーザーに与えることができる。欠陥のある機械領域が、運転中であるべきではないにも関わらず運転中である場合、ユーザーは、画面上の表示を介してこれを直接認識し、誤りを訂正することができる。
【0037】
操作ユニットの画面上に、安全モードで運転される機械領域をグラフィカルに表示することができる。これらの機械領域は、イネーブルボタンが押され、電子アクセスキーが制御装置に接続されたときにのみ、アクティベートすることができる。したがって、画面上のグラフィック表示により、電子アクセスキーが存在することとイネーブルボタンが押されることとを必要とすることによって、安全性が向上する。
【0038】
運転又は安全運転のアクティベーションの後に、選択された機械領域を変更することも可能とすることができる。したがって、工作機械の運転が開始されると、運転中に機械領域及び運転モードを変更することができ、それにより、特に、工作機械の制御がより柔軟なものとなる。様々な保守作業中、運転するべき機械領域を変更するために工作機械全体を再起動する必要はなくなり、運転中に機械領域を変更することができる。
【0039】
工作機械は、電子キーへの接続が中断された場合に、工作機械が完全に又は部分的に停止するように、工作機械の機械領域の運転が遮断されるように、構成することができる。
【0040】
工作機械は、工具マガジンと、工具マガジンへのアクセス部と、プレートチェンジャーと、プレートチェンジャーへのアクセス部と、作業空間と、作業空間へのアクセス部とを有することができ、それらの各々を別個の機械領域に割り当てることができる。
【0041】
操作ユニットは、携帯型操作ユニットすることができる。これにより、ユーザーは、特に組立及び保守作業中、工作機械の或る特定の部分に行くことができ、操作ユニットを携行することができる。ユーザーは携帯型操作ユニットを携行することができるため、工作機械を選択された機械領域で運転することができ、特に、運転に必要なイネーブルボタンのアクティベーションを現場で実施することができる。保守モードでは、ユーザーが、イネーブルボタンを押すために固定の操作ユニットのそばに立つ必要はなくなり、そのため、第2のユーザーが機械領域で保守を実施することができる。むしろ、本明細書では、保守従業員は、機械領域において直接、携帯型操作ユニットを用いて保守作業を行い、それぞれの運転モードで機械領域を設定又はアクティベートするように携帯型操作ユニットのイネーブルボタンを押すことができる。携帯型操作ユニットは、許可ユニットを備えることができる。工作機械は、2つの操作ユニットを備える制御装置を備えることができ、2つの操作ユニットは、制御装置に永久的に接続された(固定)操作ユニットと、携帯型(可動)操作ユニットとである。
【0042】
固定操作ユニット及び可動操作ユニットは、好ましくは、操作ユニットの一方のみが常にアクティブであるか又はアクティベートされるように構成される。特に、固定操作ユニット及び可動操作ユニットは、アクティベートされた操作ユニットを、他方の操作ユニットをアクティベートすることができる前にディアクティベートしなければならないように構成することができる。固定操作ユニット及び可動操作ユニットは、アクティベートされた操作ユニットが、他方の操作ユニットがアクティベートされたときに自動的にディアクティベートされるように構成されることも可能である。
【0043】
機械領域を選択することに加えて、操作ユニットは、この機械領域の個々の又は複数の構成要素又は装置(例えば、NC軸又は送り軸)の選択も可能にすることができ、それにより、機械領域の構成要素(要素、NC軸等)を必要に応じて設定する(又は制御する)ことができ、そうした構成要素は、特に、工作機械の駆動可能な構成要素(例えば、アクチュエーター、送り軸、軸スレッド、駆動シャフト等)とすることができる。この更なる区別により、工作機械の異なる機械領域を選択することができるだけでなく、スピンドル等、工作機械の異なる駆動可能な(又は制御可能な)構成要素を選択することもできる。これらの構成要素は、工作機械用の保全又は保守ドアも備えることができる。したがって
、例えば、1つの機械領域においてスピンドルを安全モードで運転するとともに、同じか又は異なる機械領域において保全ドアをディアクティベートすることができ、それにより、保守ドアが開放されているときに、ドアセンサーは間違った信号を出力することがない。
【0044】
制御装置は、異なる構成要素及び/又は機械領域の事前設定された結合を実施することができ、それにより、機械領域が選択されたとき、他の機械領域又は構成要素もまたアクティベート(選択)され、設定すべき運転モードは、これらの部分にも割り当てられる(又は、これらの構成要素は事前設定された運転モードに切り替えられる)。さらに、機械領域の異なる構成要素の事前設定された結合は、それらの構成要素が選択された機械領域を安全モードで運転するように設定されるように行われることが可能である。例えば、第1の機械領域に対して安全モードを選択すると、第2の機械領域に対する電源を切断することができ、それにより安全性を向上させることができる。
【0045】
使用される電子アクセスキー(トランスポンダーキー)のID番号を設定可能に送信するために、制御装置は、ハンドシェイク制御による伝送方法を実行することができる。これにより、工作機械の特に安全な制御が可能になる。アクセスシステムはまた、選択システムに組み込むこともできる。制御装置の受信ユニットは、RFID受信機とすることができる。工作機械を制御する制御装置は、ユーザーによる制御装置の操作のための操作ユニットと、工作機械の様々な機械領域を制御する安全コントローラーとを備えることができる。操作ユニットを用いて、工作機械の機械領域を選択し、選択された機械領域に対して運転モードを設定することができ、選択された機械領域は割り当てられた運転モードとともに、安全コントローラーに送信することができる。
【0046】
運転モードは組立モードを含むことができ、それにより、工作機械が設置されるとき、及び/又は工作機械が運転状態になるとき、例えば機械の安全要素を手動でバイパスする必要なしに機械の機能を提供することができる。
【0047】
制御装置はまた、特に操作ユニットに配置された、緊急停止ボタンも備えることができる。
【0048】
電子制御装置は、ユーザーが画面に触れることによって入力を行うことができるようにタッチセンシティブであるディスプレイを備えることができる。制御装置は、追加の携帯型操作ユニットを備えることができる。
【0049】
画面上に、選択された作業領域をグラフィカルに表示することができる。選択された作業領域は、好ましくは、画面上で(点滅する)領域を強調表示することにより安全な方法で示すことができる。機械領域の選択と運転モードの選択とは、タッチセンシティブスクリーンを介して行うことができる。
【0050】
工作機械及び/又は機械領域の運転を可能にするために、確認ボタンを押す必要があるようにすることができる。操作ユニットを介して、工作機械の領域を選択することができ、選択された領域に対して運転モードを設定することができ、選択された領域は運転モードとともに安全コントローラーに送信される。したがって、安全コントローラーと操作ユニットとの間のデータ伝送が提供される。
【0051】
工作機械であって、当該工作機械を制御する機械コントローラーと安全コントローラーとを備える制御装置を備えた工作機械を制御する方法であって、本方法は、電子キーに接続することによって制御装置のシステムにアクセスするステップと、電子キーの認可に応じて運転モードを選択するステップと、機械領域を選択するステップと、データを安全コ
ントローラーに送信するステップとを含む。工作機械は、複数の機械領域に分割することができ、そこでは、工作機械は、異なる運転モードで運転することができ、運転モードは、少なくとも1つの保守モードと1つの通常モードとを含む。
【0052】
データキャリアに記憶され且つ工作機械の制御装置で実行されるように構成されたプログラム手段を含むコンピュータープログラム製品を提供することができ、そこでは、(上述した)方法を、このプログラムを用いて工作機械で実行することができる。
【0053】
本発明の有利な構成及び更なる詳細を、概略的な図を参照して様々な例示的な実施形態に基づいて後述する。
【0054】
本発明を、概略的な図面においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】アクセスシステムと、選択システムと、選定システムとの関係の一例を示す図である。
図2】操作ユニットと、操作ユニットから安全コントローラーへのデータ伝送との一例を示す図である。
図3】可動操作ユニット及びアクティベーションボタン(例えば、安全スイッチ)の一例を示す図である。
図4】工作機械の機械領域への概略的な分割の一例を示す図である。
図5】操作ユニット、可動操作ユニット、安全コントローラー及び様々なアクセスキーの一例を示す図である。
図6a】安全運転モードを選択するための操作ユニットの画面の一例を示す図である。
図6b】例えば警告、パスワード入力等のための操作ユニットの画面の表示の一例を示す図である。
図7】機械領域とその機械領域の機械構成要素との選択の一例を示す図である。
図8】制御装置の例示的な実施形態の概略的な構造の一例を示す図である。
図9】制御装置の別の実施形態例の概略的な構造の一例を示す図である。
図10】操作ユニットを備えた制御装置の構造とともに操作ユニットの画面上の入力及び出力の一例を示す図である。
図11】回路概念の別の例の概略的な構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明の様々な例について、図を参照して詳細に説明する。同一の又は同様の要素は、同じ参照符号によって示す。しかしながら、本発明は、記載する特徴に限定されず、むしろ、独立請求項の範囲内で様々な例の特徴の更なる変更形態を包含する。
【0057】
図1は、アクセスシステムと、選択システムと、機械の運転モードを手動で選定する選定システムとからなる、安全運転モード選択装置の一例を示す。アクセスシステムは、制限された人々の群にアクセスを制限するとともに、選択システムの偶発的な又は不適切なアクティベーションを防止する装置である。選択システムは、工作機械の運転モードを変更することができるようにする装置である。選択システムは、アクセスシステムに、例えばキースイッチ(運転モードセレクタースイッチ)において、例えばトランスポンダー又は同様のアクセスシステムに接続して、組み込むことができる。選定システムは、制御システム全体の安全関連部分である。
【0058】
アクセスシステム、選択システム及び選定システムは、工作機械の制御装置の一部である。制御装置は、操作ユニット(B)及び安全コントローラーSを備える。ユーザーは、
電子アクセスキー(トランスポンダーキー)を用いてアクセスシステムを介して工作機械の制御システムにアクセスすることができる。選択システムを介して、ユーザーは、工作機械の作業領域を選択し、それらの領域の安全運転モードを変更することができる。運転モードの選択の後、これらの命令は、制御レベルで選定システムを介して工作機械Wの安全コントローラーSに送信される。したがって、この構成により、セキュアな方法で、電子アクセスキーを有する或る特定の人々の群に、制御部へのアクセスを制限することができ、工作機械の異なる作業領域を個別に選択し、それらの運転モードを個別に設定することも可能である。したがって、保全作業を実施するとき、又は工作機械を組み立てるとき、より高い安全性でそれぞれの作業を行うことができる。
【0059】
工作機械を安全モードで運転することができる。安全モードという用語は、或る特定の危険レベルを超えない共通の特徴を有する利用可能な機能群を含む。
【0060】
図1において例として示すように、アクセスシステムは、様々な方法でアクセスを制限することができる。アクセスは、好ましくは、電子キーを用いて制限される。さらに又は代替的に、パスワードも要求することができる。指紋センサー等、更なる安全特徴も設けることができる。
【0061】
図2に、例として、工作機械Wの制御装置の一部の概略的な構造を示す。工作機械Wの制御装置は、例えば、画面を備える操作ユニットBを備える。この画面を介して、ユーザーは、アクセスシステムにログインすることができた後、ユーザーのアクセスキーの認可に応じて電子アクセスキーを用いて、操作ユニットBにおいて機械領域Mを選択し、それぞれの機械領域Mに対して運転モードを設定することができる。工作機械Wの所望の運転を入力した後、記録されたデータは、データ接続を介して安全コントローラーSに送信され、その後、安全コントローラーSは、入力された情報に従って対応する機械領域Mを制御する。
【0062】
特に、以下の例示的な運転モードが、運転モードとして可能である。
【0063】
安全運転モード(手動運転、MSO 0):NC機能なしの「手での」制御による又は手動制御仕様による機械の運転。この運転モードでは、送り軸の非自動運転が可能となる。ここでは、オペレーターは、プログラムされた機械加工ステップを使用することなく機械加工プロセスを制御する。自動リセット機能を有するコマンドユニットとともに電子ハンドホイール又はジョイスティックを用いて、工作機械の軸を動かすことができる。これにより、制御コマンドの安全且つより単純な入力が可能になる。
【0064】
別のあり得る安全運転モードは自動モード(標準モード、MSO 1)である:機械の自動モードでは、プログラム又はオペレーターが機械を中断又は運転停止するまで、機能の範囲を制限することなく、機械を運転することができる。自動モードは、例えば、工具及び工作物を変更するための中断も含むことができる。
【0065】
別のあり得る安全モードは自動モード(標準モード、MSO 1)である:機械の自動モードでは、プログラム又はオペレーターが機械を中断又は運転停止するまで、機能の範囲を制限することなく、機械を運転することができる。自動モードは、例えば、工具及び工作物を変更するための中断も含むことができる。
【0066】
別のあり得る運転モードはセットアップモード(MSO 2)である:セットアップモードでは、オペレーターは、後続する作業プロセスを準備し、例えば、測定プローブを用いて工作物を探査することにより工具及び工作物の位置を決定することができる。
【0067】
別の運転モードは、任意選択的な「制限付き運転条件下での手動介入のための運転」(MSO 3)である:この運転モードにより、機械を、限られた性能で手動又は数値制御下で一時的に運転することができ、一時的に、分離保護装置又はトリガーされた非分離保護装置を開放することができる。この運転モードでは、安全性を向上させるために許可ユニットをアクティベートしなければならない。
【0068】
保守運転(MSO SE)では、工作機械を保守モードに切り替えることができる。保守運転は、好ましくは、機械製造業者からの保守担当者にのみ、又は訓練され認可された保守担当者にのみ、利用可能とするべきである。保守運転中、工作物の機械加工は可能ではない。
【0069】
有利には、工作機械のあり得る運転モードは、組立運転も含む。例えば、機械を運転状態にするプロセスが開始されるとき、通常キャビンはない。したがって、組立作業、例えば、工具チェンジャー、工具マガジン、プレートチェンジャー及び/又はチップコンベヤシステム等の取付を依然として行なわなければならない。キャビンは、組立の比較的終わりの方の段階でのみ機械に取り付けられる。したがって、依然として工作機械の機能を使用することができるために、工作機械の領域を組立モードにするか、又は必要に応じてそれら領域を制御することができる。
【0070】
保守運転中、機械で作業することを可能とすることができ、そこでは、例えば、いくつかの特定の保守行為のために、工作機械キャビンを取り外さなければならない。機械タイプに応じて、キャビン及びいくつかの特定の機械アセンブリは、輸送のために取外し可能でもあり、別個に輸送することができる。したがって、保守運転により、工作機械を保守作業のために制御することができる。
【0071】
組立及び/又は保守運転は、保全ドアの位置に応じてのみアクティベートすることができるのではなく、対応する認可を有する電子アクセスキーの存在等、これらの運転モードをアクティベートする従属物も提供することができる。
【0072】
作業が行われるべき機械領域は、機械コントローラーの画面上でマトリックスを介して選択することができる。コントローラーの画面上のマトリックスへのアクセスの許可は、電子アクセスキー(スマートキー、トランスポンダー)を介して与えられる。電子アクセスキーは、組立運転及び保守運転に対する認可を所有する。
【0073】
作業領域(機械領域)の事前選択は、操作ユニットBの画面上でマトリックスを介して行われる。事前選択された作業領域は、例えば、点滅により又は色を用いて等、グラフィカルに表示される。操作ユニットBへの入力の後、操作ユニットBと安全コントローラーSとの間のデータ伝送が発生する。特に、このデータ伝送は、出力及び/又はバス信号を介して行うことができる。
【0074】
事前選択された機械領域(作業領域)のマトリックスは、図3において例として示すように、安全コントローラーSに直接作用するイネーブルボタンMB1(アクティベーションボタン)を介してアクティベートされる。アクティベーションは、このプロセスによって達成される。次いで、安全コントローラーSは、マトリックス上で事前選択された機械領域Mを読み出し、適切な認可を有するトランスポンダーが挿入されている場合、イネーブルボタンMB1が押されると、安全コントローラーSにおいて事前選択された機械領域Mを採用する。図3に、イネーブルボタンMB1と安全コントローラーとの直接接続もまた示し、図3は、可動操作ユニットMBも示す。イネーブルボタンMB1は、可動操作ユニットBと工作機械に固定して接続された操作ユニットBとの両方に設けることができる。
【0075】
電子アクセスキーは、機械のそれぞれのユーザーが訓練及び自身の専門的な資格に基づいて取得したあり得る安全運転モードに対する認可を所有する。
【0076】
記載したアクティベーションの結果として、事前選択された機械領域Mは、例えばISO 16090-1の意図では、安全運転モード(運転モード:安全運転モード)に切り替えられる。安全コントローラーSから操作ユニットBの画面にフィードバックが送信される。このフィードバックは、そこでグラフィカルに表示され、例えば、点滅する事前選択された機械領域Mが、この時、静的な色で強調表示され、安全指示が表示される。このプロセスの結果として、操作ユニットBの画面で事前選択された機械領域Mは、例えばISO 16090-1の意図では、安全運転モードに切り替えられ、イネーブルボタンMB1及びアクセスキーと画面上の視覚的表現とによって安全が確保される。したがって、オペレーターは、このときいずれの作業領域が安全運転モードで規定されているかに関するフィードバックを受ける。対応する安全指示が表示される。ユーザーは、事前選択された領域を変更したい場合、先行するステップを再度繰り返すことによってこの変更を行うことができる。
【0077】
例えば、保守運転モードにアクセスするための電子アクセスキーが取り除かれた場合、3つの選択肢からの選択が可能である。選択された作業領域が保持されるか、又は選択された作業領域が残され、自動運転がアクティベートされるか、又は機械の全ての作業領域が遮断され、それにより、危険な移動が可能でなくなる。
【0078】
図4に、工作機械の機械領域M(作業領域)のあり得る分割を示す。これらの領域は、作業空間へのアクセス領域M1及び作業空間M2に分割される。さらに、プレートチェンジャーの領域M4とプレートチェンジャーへのアクセス領域M3(工作物に対するセットアップステーション)とが設けられている。工具マガジンの領域M6は、工具マガジンへのアクセス領域M5と工具マガジンへの第2のアクセス領域M7とに隣接している。この工作機械Wの異なる機械領域への分割は、分割に対する多くのあり得る選択肢のうちの単なる1つである。
【0079】
機械の作業領域M2を選定し、この領域を保守モードにすることにより、この作業領域においてNC送り軸及びスピンドルに対して全ての作業を行うことができる。工具の任意の必要なレーザー測定も行うことができる。工作機械Wの作業領域M2に対する保守モードでは、場合により(例えば、マシニングセンターにおける)工具チェンジャーとの結合によって、例えば、以下の機能を可能にすることができる:
-最高で安全な最大送り速度、例えば、最大2m/minのNC軸、
-安全な最大スピンドル回転速度、例えば、最高で最大800回転/分のスピンドル、
-チップコンベヤシステムのチップコンベヤスクリュー及び/又はチップコンベヤの移動なし、
-冷却潤滑剤の機能なし、
-パレットチェンジャーの移動なし、
-工具チェンジャーの移動、
-工具交換フラップの移動。
【0080】
保守モードでは、好ましくはISO 16090-1の仕様による、携帯型許可ユニットも設けることができる。
【0081】
工具チェンジャー及びスピンドルを互いに対して調整するために、機械領域として、作業領域M2及び工具チェンジャーを選択することができる。要求されていないNC軸、例えば、プレートチェンジャー又はチップコンベヤシステム内のチップコンベヤスクリュー
若しくはコンベヤは、安全に運転停止される。保守作業中、例えば、工具チェンジャーフラップは開放し、開放したままである。工具チェンジャーの移動は、機械の操作ステーションで、操作ユニットBで、又はローカルにプラグ接続された携帯型操作ステーションで明確に事前選択され、許可ユニットに関連する方向キーによって動かされなければならない。図7に、こうした携帯型操作ユニットMBを例として示す。
【0082】
オペレーターは、可能な場合は低下した速度で携帯型操作ステーションMBを用いて、ただし常に許可ユニット及び方向キー等を用いて、現場での移動を制御する。NC軸の場合、携帯型操作ステーションMBにおける許可ユニットに関連するハンドホイールを用いてもまた、移動をもたらすことができる。保守モードでの作業空間及びパレットチェンジャーの選択により、プレートチェンジャーの移動によりNC軸を互いに対して調整することができる。共通の選択が可能であるように、作業空間はプレートチェンジャーに結合される。結合された領域における全ての他のNC軸は安全に停止される。他の移動、例えば、チップコンベヤシステム等もまた停止される。
【0083】
図5に、工作機械の制御部の概略的な構造を例として示す。ユーザーが様々な領域を選択することができる、画面を備える操作ユニットBは、安全コントローラーSに接続されている。安全コントローラーSは、可動操作ユニットMBにも接続されている。異なる電子アクセスキー(BA1、BA2、BA3、又は例えばMSO 1、MSO 2、MSO
3等)と関連する認可とに応じて、異なる機械領域Mを選択することができる。
【0084】
図6a及び図6bに、操作ユニットBの画面上の様々な表示オプションを例として示す。操作ユニットBを用いて、工作機械の異なる機械領域を選択し、さらに、好ましくは、それぞれの機械領域Mに対して運転モード又は安全運転モードを設定することもできる。工作機械Wをアクティベートするために、例えば、安全性を向上させるためにパスワード入力PW及び対応するソフトウェアを用いて、操作ユニットBを介してパスワードを要求することができる。確認がうまくいった場合、(例えば、安全指示の表示を含む)安全アプリケーションAPは、安全コントローラーSにデータを転送し、工作機械Wを制御するように構成されている。
【0085】
図7に、工具チェンジャー及び工具マガジンの選択を例として示す。第1のグラフィック図(図7の上部)を介して、工作機械全体の概観が与えられている。この概観において、工作機械の単一の機械領域を選択することができる。有利な実施形態では、工作機械のそれぞれの機械領域に対して個別に、選択された領域のそれぞれの構成要素を更に選択し(図7の下方の更なるグラフィックを参照)、それぞれの運転モードにおけるそれらの運転を可能又は阻止する、すなわち、例えば、構成要素の移動を阻止することができる。このように、例えば、保守作業が作業領域で行われるとき、工具チェンジャーフラップ、及び/又はチップコンベヤシステムのコンベヤスクリュー及び/又はチップコンベヤを運転停止することができる。
【0086】
工作機械Wの機械領域Mにおける現場での保守作業を可能にするために、ユーザーは、イネーブルボタンMB1、及び、例えば回転スイッチ(例えば、ハンドホイール)の形態の速度制御装置MB2を含む、携帯型操作ユニットMBを携行することができる。イネーブルボタンMB1により、ユーザーが、移動が行われていることに対して常に承諾し、イネーブルボタンが解除されると、機械は即時に且つ安全に停止されることが確実になる。回転スイッチMB2により、選択された作業領域において様々な構成要素の回転の速度及び/又は方向を制御することができる。
【0087】
2人の人が、1人は制御ステーションで、1人は工具チェンジャーの領域で操作していることが必要である場合がある。両方の人が、互いに通信する。現場のオペレーターは、
可能な場合は、低下した速度で移動を制御し、許可ユニット及び方向ボタンを操作する。NC軸の場合、移動をもたらすために、許可ユニットとともにハンドホイールも用いることができる。好ましい操作ユニットを用いる場合、変更された操作ユニットを介して、工具チェンジャーの領域における運転に対する選択肢の全てを有する1人の人のみにより保全が行われることが可能である。
【0088】
工具マガジンが選定されると、工具マガジンの全ての構成要素を個別に制御することができる。特に、(例えば、チェーン又はホイールマガジンの場合の)工具マガジンのホイール又はチェーン等、可動部品は、例えば、操作ユニットの画面上でマトリックスにおいて、個別に又は組み合わせて選定することができる。工具交換自体又は工具清掃等、この領域における他の移動は、安全に停止することができる。オペレーターは、現場で低下した速度で移動を制御することができ、許可ユニット及び方向キー等は常に提供されている。破砕の危険がある場合、最大の許可可能な速度は、例えば、2メートル/分(周速)である。衝突の危険がある場合、最大速度は、例えば、15メートル/分(周速)である。追加の作業領域としての冷却剤/潤滑剤システムの選択も可能であり、その場合、冷却剤/潤滑剤システムの全ての機能を制御することができる。この目的で、例えば、保守モードで冷却剤/潤滑剤システムのノズルを調整することができる。不正確な運転を回避するために、他の作業領域における軸(例えば、1つ以上の送り軸)及びチップコンベヤシステムのチップコンベヤスクリュー又はコンベヤは、安全に運転停止することができる。
【0089】
図8は、例としてあり得る工作機械の制御装置の構造の別の概略的な図を示す。左側の領域に工作機械Wの様々な運転モード又は工作機械Wの作業領域を示す。これらは個別に又は組み合わせて選択することができ、その場合、これらは、作業領域がうまく選択された後に安全コントローラーSに転送される。安全コントローラーSは、アクティベートされた作業領域及び運転モードを表示することができる操作ユニットBの画面に、出力を生成する。操作のために、電子キーBA1への接続及びイネーブルボタンMB1(アクティベーションボタン)の作動もまた必要である。
【0090】
図9もまた、例としてあり得る工作機械Wの制御装置の別の概略的な構造を示し、ここでは、様々な運転モード及び工作機械Wの作業領域の選択のためにイネーブルキーMB1(アクティベーションキー)もまた必要とされている。工作機械Wの異なる領域の保守モードにするための選択もまた、例えば、通常のスイッチI~IIII(参照符号1を参照)を介して可能である。この選定に加えて、既に記載したように、操作ユニットBを用いる画面を介して選定することも可能である。可動操作ユニットMBを設けることができ、その場合、それはまた、アクセスキーと通信する受信ユニットも備える。工作機械W自体は、安全コントローラーSを介して制御される。
【0091】
図10は、操作ユニットを備えた制御装置の構造と操作ユニットの画面上の入力及び出力との一例を示し、図11は、回路概念の別の例の概略的な構造の一例を示す。
【0092】
図10及び図11では、操作ユニットBを例として概略的に示し、操作ユニットBは安全コントローラーSに接続され、安全コントローラーSは、工作機械WのNC軸及び/又はスピンドルSPの駆動装置に、且つ、例えば、保守ドアの開閉を検知するセンサーTSにも接続されている。イネーブルスイッチMB1(許可ユニット)は、安全コントローラーSに直接接続され、同様に安全コントローラーSに直接接続されている制御スイッチAS(アクティベーションボタン)も同様に設けられている。
【0093】
オペレーターの資格及び必要な行為に応じて、現場での移動は異なるように許可されなければならない。好ましくは、機械ユーザーのオペレーターと機械製造業者のオペレーターとが区別される。保護装置が閉鎖されロックされるか、又は非分離保護装置がアクティ
ブである場合、許可ユニットなしに且つ速度を低下させることなく、移動が許可される。機械の組立段階中、キャビン及びドア、したがって安全スイッチは存在しないため、別個の運転モードがある。この期間、例えば、バイパスプラグ又は同等の装置が使用される。しかしながら、それぞれの機械領域がしかるべく制御される場合、これらは不要となる。
【0094】
ハンドシェイクは、シリアルインターフェースを介するデータ転送のための通信プロトコルである。このプロトコルにより、関与する当事者は、認証の後にデータ伝送のためにパラメーターをネゴシエートする。受信側は、送信側にデータの受信を確認し、更なるデータの受信の用意ができていることを送信側に通知する。
【0095】
電子アクセスキーが接続されると、保守モードを自動的にアクティベートすることができ、ユーザーにより、保守モードで運転する機械領域Mを選択することができる。
【0096】
本特徴、構成要素及び具体的な詳細は、意図される用途に応じて、更なる実施形態を作成するために交換し及び/又は組み合わせることができる。当業者の知識の範囲内のいかなる変更も、本明細書に暗黙的に開示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11