(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】燃料電池の圧縮機構、及びそれを具備する燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/248 20160101AFI20230119BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230119BHJP
【FI】
H01M8/248
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021136039
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐貴
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-004299(JP,A)
【文献】特開2021-180133(JP,A)
【文献】特開2007-095578(JP,A)
【文献】特開2009-181723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルを配列することで形成されたセル群を収容するスタックケースの端部に設けられるプレートと、
前記プレートに設けられ、前記セル群を配列方向に圧縮するように付勢するための付勢部と、を具備する燃料電池の圧縮機構であって、
前記プレートには、エンドプレートと、当該エンドプレートと前記セル群との間に配置されるプレッシャプレートと、が含まれ、
前記エンドプレート及び前記プレッシャプレートのうち少なくとも一方のプレートに
係止され、前記
少なくとも一方のプレートに設けられた前記付勢部
に他方のプレート側から密着して当該付勢部を当該少なくとも一方のプレートへ押し付けた状態とし、当該付勢部と当該
少なくとも一方のプレートの一部とを覆うように設けられる被覆部材と、
を具備する燃料電池の圧縮機構。
【請求項2】
前記付勢部は、
前記プレッシャプレートの前記エンドプレート側を向く第一面に設けられる第一付勢部を有し、
前記被覆部材は、
前記第一付勢部及び前記第一面を覆うと共に、前記プレッシャプレートの前記セル群を向く第二面の少なくとも一部を露出させるように前記プレッシャプレートに設けられる第一被覆部材を有する、
請求項1に記載の燃料電池の圧縮機構。
【請求項3】
前記第二面を覆うように前記プレッシャプレートに設けられる絶縁プレートを具備し、
前記第一被覆部材は、
前記第一付勢部と、前記プレッシャプレートと、前記絶縁プレートと、を一体的に固定すると共に、前記絶縁プレートの前記第二面を覆う部分を露出させるように設けられる、
請求項2に記載の燃料電池の圧縮機構。
【請求項4】
前記第二面を覆うように前記プレッシャプレートに設けられる絶縁プレートを具備し、
前記絶縁プレートは、
前記第一被覆部材により第一付勢部と一体的に固定された前記プレッシャプレートに対して、前記第一被覆部材を挟んで設けられる、
請求項2に記載の燃料電池の圧縮機構。
【請求項5】
前記付勢部は、
前記エンドプレートの前記プレッシャプレート側を向く第三面に設けられる第二付勢部を有し、
前記被覆部材は、
前記第二付勢部及び前記第三面を覆うと共に、前記エンドプレートの反プレッシャプレート側を向く第四面の少なくとも一部を露出させるように前記エンドプレートに設けられる第二被覆部材を有する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の燃料電池の圧縮機構。
【請求項6】
前記エンドプレートは、
前記スタックケースの端部との固定に用いられる止具が設けられる固定部を有し、
前記第二被覆部材は、
前記固定部を露出させるように、前記エンドプレートに設けられる、
請求項5に記載の燃料電池の圧縮機構。
【請求項7】
前記エンドプレートの前記第三面は、
前記スタックケースの端部と通電可能に接触する接触部を有し、
前記第二被覆部材は、
前記接触部を露出させるように、前記エンドプレートに設けられる、
請求項5又は請求項6に記載の燃料電池の圧縮機構。
【請求項8】
前記エンドプレートの前記第三面は、
前記第二被覆部材の端部が係止される係止部を有する、
請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載の燃料電池の圧縮機構。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の燃料電池の圧縮機構を具備する、
燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料電池セルを配列したセル群を圧縮する燃料電池の圧縮機構、及びそれを具備する燃料電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の燃料電池セルを配列したセル群を圧縮する燃料電池の圧縮機構、及びそれを具備する燃料電池の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、複数のセルを積層したセル積層体を有し、セル積層体の積層方向両端にエンドプレートを配置すると共に、両エンドプレートを締結部材により締結した燃料電池(燃料電池スタック)が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の燃料電池は、セル積層体の積層方向一端と、上記積層方向一端と対向するエンドプレートと、の間にプレッシャプレートが配置されている。また、燃料電池のプレッシャプレート及びエンドプレートには、セル積層体を積層方向に押圧(付勢)する皿ばね(荷重変動低減機構)が設けられている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料電池では、搬送時や燃料電池を構成する各部材を組み付ける際に、プレッシャプレートやエンドプレートから皿ばね(荷重変動低減機構)が脱落するおそれがあった。そこで、セル積層体を付勢する部材(皿ばね)の脱落を抑制することができる燃料電池が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、セル群を付勢する付勢部の脱落を抑制することができる燃料電池の圧縮機構、及びそれを具備する燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、複数の燃料電池セルを配列することで形成されたセル群を収容するスタックケースの端部に設けられるプレートと、前記プレートに設けられ、前記セル群を配列方向に圧縮するように付勢するための付勢部と、を具備する燃料電池の圧縮機構であって、前記プレートには、エンドプレートと、当該エンドプレートと前記セル群との間に配置されるプレッシャプレートと、が含まれ、前記エンドプレート及び前記プレッシャプレートのうち少なくとも一方のプレートに係止され、前記少なくとも一方のプレートに設けられた前記付勢部に他方のプレート側から密着して当該付勢部を当該少なくとも一方のプレートへ押し付けた状態とし、当該付勢部と当該少なくとも一方のプレートの一部とを覆うように設けられる被覆部材と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記付勢部は、前記プレッシャプレートの前記エンドプレート側を向く第一面に設けられる第一付勢部を有し、前記被覆部材は、前記第一付勢部及び前記第一面を覆うと共に、前記プレッシャプレートの前記セル群を向く第二面の少なくとも一部を露出させるように前記プレッシャプレートに設けられる第一被覆部材を有するものである。
【0011】
請求項3においては、前記第二面を覆うように前記プレッシャプレートに設けられる絶縁プレートを具備し、前記第一被覆部材は、前記第一付勢部と、前記プレッシャプレートと、前記絶縁プレートと、を一体的に固定すると共に、前記絶縁プレートの前記第二面を覆う部分を露出させるように設けられるものである。
【0012】
請求項4においては、前記第二面を覆うように前記プレッシャプレートに設けられる絶縁プレートを具備し、前記絶縁プレートは、前記第一被覆部材により第一付勢部と一体的に固定された前記プレッシャプレートに対して、前記第一被覆部材を挟んで設けられるものである。
【0013】
請求項5においては、前記付勢部は、前記エンドプレートの前記プレッシャプレート側を向く第三面に設けられる第二付勢部を有し、前記被覆部材は、前記第二付勢部及び前記第三面を覆うと共に、前記エンドプレートの反プレッシャプレート側を向く第四面の少なくとも一部を露出させるように前記エンドプレートに設けられる第二被覆部材を有するものである。
【0014】
請求項6においては、前記エンドプレートは、前記スタックケースの端部との固定に用いられる止具が設けられる固定部を有し、前記第二被覆部材は、前記固定部を露出させるように、前記エンドプレートに設けられるものである。
【0015】
請求項7においては、前記エンドプレートの前記第三面は、前記スタックケースの端部と通電可能に接触する接触部を有し、前記第二被覆部材は、前記接触部を露出させるように、前記エンドプレートに設けられるものである。
【0016】
請求項8においては、前記エンドプレートの前記第三面は、前記第二被覆部材の端部が係止される係止部を有するものである。
【0017】
請求項9においては、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の燃料電池の圧縮機構を具備するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、セル群を付勢する付勢部の脱落を抑制することができる。
【0020】
請求項2においては、第一被覆部材により、プレッシャプレートに対する第一付勢部の脱落を抑制することができる。
【0021】
請求項3においては、第一被覆部材を用いて、第一付勢部と、プレッシャプレートと、絶縁プレートと、を一体的に固定することができる。
【0022】
請求項4においては、第一付勢部及びプレッシャプレートを被覆する第一被覆部材を絶縁プレートによって押さえることができる。
【0023】
請求項5においては、第二被覆部材により、エンドプレートに対する第二付勢部の脱落を抑制することができる。
【0024】
請求項6においては、固定部を露出させることで、エンドプレートとスタックケースとの組付け性を向上させることができる。
【0025】
請求項7においては、接触部を露出させ、エンドプレートとスタックケースとを通電可能に接触させることで、エンドプレートにアースを接続し易くすることができる。
【0026】
請求項8においては、第二フィルムの端部を係止部に収容することで、第二被覆部材をエンドプレートに固定し易くすることができる。
【0027】
請求項9においては、付勢部の脱落を抑制することができる燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る燃料電池スタックを示す平面断面図。
【
図3】プレッシャプレート、第一付勢部及び第一フィルムを示す正面図。
【
図4】(a)
図3のA1-A1断面図。(b)
図4(a)のB1-B1断面図。
【
図5】(a)第一フィルムを基材に被覆する前の状態を示す模式図。(b)第一フィルムを基材に被覆した状態を示す模式図。
【
図6】エンドプレート、第二付勢部及び第二フィルムを示す背面図。
【
図7】(a)
図6のA2-A2断面図。(b)
図7(a)のB2-B2断面図。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る燃料電池スタックのプレッシャプレート、絶縁プレート及び第一付勢部を示す平面断面図。
【
図9】本発明の第三実施形態に係る燃料電池スタックのエンドプレート、第二付勢部及び第二フィルムを示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明する。
【0030】
まず、
図1から
図7までを用いて本発明に係る燃料電池の第一実施形態に係る燃料電池スタック1について説明する。
【0031】
図1及び
図2に示す燃料電池スタック1は、燃料電池の最小単位である燃料電池セルを配列して結合したものであり、電気化学反応により発電を行うものである。燃料電池スタック1は、例えば車両に搭載されたモータ等を駆動させる電源として用いられる。燃料電池スタック1としては、例えば高分子電解質型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)等を採用可能である。燃料電池スタック1は、主としてスタックケース10、セル群20、プレッシャプレート30、絶縁プレート40、第一付勢部50、第一フィルム60、エンドプレート70、第二付勢部80及び第二フィルム90を具備する。
【0032】
スタックケース10は、後述するセル群20(配列された燃料電池セル)を収容するものである。スタックケース10は、後述するセル群20を収容可能な略直方体形状の箱状(又は枠状等)に形成される。スタックケース10の一端部11(図例では、前端部)は開放され、後述するエンドプレート70によって閉塞される。
【0033】
一端部11は、側面視において略矩形状(四方枠形状)に形成される。一端部11には、ねじ穴11aが形成される。ねじ穴11aは、スタックケース10に対するエンドプレート70の固定に用いられるボルト12が螺合されるものである。ねじ穴11aは、側面視における一端部11の四隅に位置するように設けられる。
【0034】
図1及び
図2に示すセル群20は、燃料電池セルを所定の配列方向(図例では、前後方向)に沿って配列して形成されるものである。燃料電池セル(単セル)は、固体高分子膜(電解質膜)を電極板で挟み、それをさらにガス流路が形成されたセパレータで挟むことで形成される。セル群20は、スタックケース10の内側に配置される。セル群20の両端(燃料電池セルの配列方向の両端)には、セル群20と共にスタックケース10に収容されると共に、セル群20で発電された電力を外部に取り出すターミナルプレート(不図示)が設けられる。
【0035】
図1から
図4までに示すプレッシャプレート30は、セル群20を配列方向に圧縮するものである。プレッシャプレート30は、厚さ方向を前後方向に向けた略矩形板形状に形成される。プレッシャプレート30は、例えばアルミダイカストにより形成される。プレッシャプレート30は、セル群20と共にスタックケース10の内側に配置される。プレッシャプレート30は、セル群20の前側(エンドプレート70側)に位置するように配置される。プレッシャプレート30は、エンドプレート70側(前側)を向くエンドプレート側面30aと、セル群20側(後側)を向くセル群側面30bと、を有する。また、プレッシャプレート30は、第一部分31及び第二部分32を具備する。
【0036】
図3及び
図4に示す第一部分31は、プレッシャプレート30におけるエンドプレート70側(前側)の部分である。
【0037】
第二部分32は、プレッシャプレート30におけるセル群20側(後側)の部分である。第二部分32は、第一部分31に対して段差(段差部33)が形成されるように、背面視における外郭形状が、第一部分31の背面視(正面視)における外郭形状よりも小さく形成される。
【0038】
段差部33は、第一部分31の後面と、第二部分32の側面(前後方向に直交する方向に向く面)と、から成る。段差部33は、セル群側面30bにおいて、前方に凹むように形成される。段差部33は、第一部分31及び第二部分32の全周に亘って形成される。
【0039】
図1、
図2及び
図4に示す絶縁プレート40は、プレッシャプレート30とセル群20(ターミナルプレート)とを絶縁する(絶縁性を有する)ものである。絶縁プレート40は、厚さ方向を前後方向に向けた略矩形板形状に形成される。絶縁プレート40の背面視(正面視)における外郭形状は、プレッシャプレート30の正面視における外郭形状と概ね同じに形成される。絶縁プレート40は、プレッシャプレート30の第二部分32の後面及び段差部33を覆うようにプレッシャプレート30に設けられる。絶縁プレート40は、本体部41、第一延出部42及び第二延出部43を具備する。
【0040】
図4に示す本体部41は、絶縁プレート40の主たる構造体を成すものである。本体部41は、第二部分32の後面(セル群側面30b)を覆う。
【0041】
第一延出部42は、本体部41の外縁から前方に立ち上がるように延出する部分である。第一延出部42は、段差部33(第二部分32)の側面(前後方向に直交する方向に向く面)を覆う。
【0042】
第二延出部43は、第一延出部42の延出方向先端部から径方向外側に延出する部分である。第二延出部43は、段差部33(第一部分31)の後面を覆う。
【0043】
上述の如き絶縁プレート40は、第一延出部42及び第二延出部43がプレッシャプレート30の段差部33にはめ込まれる。
【0044】
図3及び
図4に示す第一付勢部50は、プレッシャプレート30に設けられ、セル群20を配列方向に圧縮するようにプレッシャプレート30を付勢するものである。より詳細には、第一付勢部50は、プレッシャプレート30を介して、セル群20を後方へ付勢する。第一付勢部50は、第一部分31(エンドプレート側面30a)に設けられる。第一付勢部50は、エンドプレート側面30aの正面視における中央に配置される。
【0045】
第一付勢部50は、後述する第一フィルム60によりプレッシャプレート30の一部と共に覆われることで、プレッシャプレート30に対して固定される。第一付勢部50は、皿ばね51及び伝達部52を具備する。
【0046】
皿ばね51は、付勢力を付与するものである。皿ばね51は、円盤状の部材の中央を前方に膨出させた形状に形成される。すなわち、皿ばね51は、後方に向かうに従い徐々に拡径する円錐台形状に形成される。皿ばね51は、前後方向に弾性変形可能に形成される。皿ばね51は、後端部がエンドプレート側面30aに当接するように配置される。皿ばね51は、中心に孔51aが形成されている。
【0047】
伝達部52は、皿ばね51の付勢力を後述するエンドプレート70側の部材(第二付勢部80)に伝達するものである。伝達部52は、軸線方向を前後方向に向けた略円柱形状に形成される。伝達部52は、軸部52a及び拡径部52bを具備する。
【0048】
軸部52aは、皿ばね51の孔51aに挿通される部分である。軸部52aの外径は、孔51aの内径よりも小さく形成される。
【0049】
拡径部52bは、軸部52aの前側端部において、軸部52aに対して拡径する部分である。拡径部52bの外径は、孔51aの内径よりも大きく形成される。
【0050】
第一付勢部50は、皿ばね51の弾性変形に伴い伝達部52が前後方向に移動することで、全体として前後方向に伸縮する。
【0051】
図3及び
図4に示す第一フィルム60は、基材である第一付勢部50、プレッシャプレート30及び絶縁プレート40の一部を覆うものである。より詳細には、第一フィルム60は、
図4に示すように、第一付勢部50、プレッシャプレート30の第一部分31及び段差部33、絶縁プレート40の第一延出部42及び第二延出部43を覆う。また、第一フィルム60は、絶縁プレート40の本体部41(第二部分32)を露出させる(覆わない)ように設けられる。第一フィルム60は、熱可塑性の樹脂により形成される。
【0052】
第一フィルム60の端部61は、プレッシャプレート30のエンドプレート側面30a側から、段差部33(絶縁プレート40の第一延出部42及び第二延出部43)側に回り込むように設けられる。これにより、第一フィルム60は、プレッシャプレート30に対して固定される。
【0053】
また、端部61は、絶縁プレート40の第一延出部42及び第二延出部43を覆うように設けられる。これにより、端部61によって、段差部33にはめ込まれた絶縁プレート40の第一延出部42及び第二延出部43が押さえられ、プレッシャプレート30に対する絶縁プレート40の脱落が抑制される。
【0054】
第一フィルム60は、上述したように第一付勢部50、プレッシャプレート30及び絶縁プレート40一部を覆うことで、上記各部材を一体的に固定することができる。第一フィルム60は、基材である上記第一付勢部50、プレッシャプレート30及び絶縁プレート40の各部材に対するラミネート加工(ラッピング)が施されることで、上記基材を被覆するように設けられる。
【0055】
上記第一フィルム60による被覆の方法としては、例えばTOM(三次元表面加飾)成形等の真空ラミネーション(真空ラッピング)を採用可能である。以下では、
図5を用いて、真空ラミネーションによって基材を第一フィルム60で被覆する様子について説明する。
【0056】
真空ラミネーションには、
図5(a)に示す真空ラミネーション装置2が用いられる。真空ラミネーション装置2としては、TOM成形機(布施真空株式会社製)等を採用可能である。
【0057】
チャンバ3は、第一フィルム60により、上チャンバ3aと下チャンバ3bとに仕切られる。上チャンバ3aには、第一フィルム60を加熱するヒータ4が設けられ、下チャンバ3bには、基材が配置されるテーブル5が設けられている。テーブル5は、チャンバ3に対して昇降可能である。
【0058】
真空ラミネーションを実行する際には、まず、
図5(a)に示すように、下チャンバ3bのテーブル5に、基材(第一付勢部50、プレッシャプレート30及び絶縁プレート40)を配置する。ここで、基材は、第一付勢部50がプレッシャプレート30の第一部分31に設けられ、絶縁プレート40の第一延出部42及び第二延出部43が、プレッシャプレート30の段差部33にはめ込まれた状態で配置される。また、基材は、第一付勢部50側が上方を向くように配置される。
【0059】
次に、上チャンバ3a及び下チャンバ3bを真空状態にする。次に、上チャンバ3aのヒータ4により加熱することで第一フィルム60を軟化させる。次に、
図5(b)に示すように、テーブル5を上昇させると共に、上チャンバ3aに空気を導入し、基材の表面に第一フィルム60を密着させることで基材を第一フィルム60で被覆する。なお、この後に必要に応じて上チャンバ3aに更に空気を導入して加圧することで、更に基材の表面に第一フィルム60を密着させ易くすることも可能である。
【0060】
次に、下チャンバ3bから第一フィルム60で被覆された基材を取り出し、不要な第一フィルム60をトリミングにより除去する。これにより、第一フィルム60により基材の一部を被覆する成形が完了する(
図4(a)を参照)。
【0061】
このように、第一付勢部50をプレッシャプレート30の第一部分31に設け、絶縁プレート40の第一延出部42及び第二延出部43を、プレッシャプレート30の段差部33にはめ込んだ状態で、基材である上記各部材を第一フィルム60で被覆することで、上記各部材を一体的に固定することができる。
【0062】
なお、第一フィルム60により基材を被覆する方法としては、上述したTOM成形に限られず、適宜の方法を採用可能である。
【0063】
図1、
図2、
図6及び
図7に示すエンドプレート70は、スタックケース10の一端部11(前端部)を閉塞するものである。エンドプレート70は、厚さ方向を前後方向に向けた略矩形板形状に形成される。エンドプレート70の正面視(背面視)における外郭形状は、スタックケース10(一端部11)の正面視における外郭形状と概ね同じに形成される。エンドプレート70は、導電性を有する材料で形成される。エンドプレート70は、例えばアルミダイカストにより形成される。
【0064】
エンドプレート70は、プレッシャプレート30の前側に配置される。エンドプレート70は、ボルト12により締結されることで、スタックケース10の一端部11に固定される。エンドプレート70は、プレッシャプレート30側(後側)を向くプレッシャプレート側面70aと、反プレッシャプレート30側(前側)を向く反プレッシャプレート側面70bと、前後方向に直交する方向を向く側面70cと、を有する。また、エンドプレート70は、挿通孔71、係止溝部72及び中央部73を具備する。
【0065】
図6及び
図7(a)に示す挿通孔71は、ボルト12が挿通されるものである。挿通孔71は、エンドプレート70を前後方向に貫通するように形成される。挿通孔71は、一端部11の各ねじ穴11aに対応するように、側面視におけるエンドプレート70の四隅に設けられる。反プレッシャプレート側面70bにおける挿通孔71の周囲の部分は、ボルト12の座面が当接する(
図1を参照)。
【0066】
図6及び
図7に示す係止溝部72は、後述する第二フィルム90の端部91が係止される部分である。係止溝部72は、プレッシャプレート側面70aにおいて前方に凹むように形成される。
図6に示すように、係止溝部72は、エンドプレート70(プレッシャプレート側面70a)の背面視における中央を囲むように四方枠形状に形成される。係止溝部72は、挿通孔71よりもエンドプレート70の背面視中央側に位置する。
【0067】
図7に示すように、係止溝部72は、断面視(平面断面視又は側面断面視)において略L字形状に形成される。より詳細には、係止溝部72は、プレッシャプレート側面70aから前方へ凹むように延出する部分と、上記前方へ延出した部分の前端部から、エンドプレート70の背面視における中央側へ向けて凹むように延出する部分と、から成る。このように、係止溝部72はアンダーカット形状に形成される。係止溝部72は、エンドプレート70に、切削加工等を施すことで形成される。
【0068】
図6及び
図7に示す中央部73は、係止溝部72により囲まれた部分である。
図7に示すように、中央部73は、断面視において略T字形状に形成される。中央部73は、第一部分73a及び第二部分73bを具備する。
【0069】
第一部分73aは、中央部73における後側の部分である。
【0070】
第二部分73bは、中央部73における前側の部分である。第二部分73bは、第一部分73aに対して段差が形成されるように、背面視における外郭形状が、第一部分73aの背面視における外郭形状よりも小さく形成される。
【0071】
図1、
図2、
図6及び
図7に示す第二付勢部80は、エンドプレート70に設けられ、セル群20を配列方向に圧縮するように付勢するものである。より詳細には、第二付勢部80は、プレッシャプレート30及び第一付勢部50を介して、セル群20を前方へ付勢する(
図1を参照)。第二付勢部80は、中央部73(第一部分73a)に設けられる。
図1に示すように、第二付勢部80は、第一付勢部50と対向するように設けられる。
【0072】
第二付勢部80は、後述する第二フィルム90によりエンドプレート70の一部と共に覆われることで、エンドプレート70に対して固定される。第二付勢部80は、皿ばね81及び伝達部82を具備する。なお、第二付勢部80の構成は第一付勢部50の構成と概ね同様であるので、以下では、第二付勢部80の詳細な説明を適宜省略する。
【0073】
皿ばね81は、付勢力を付与するものである。皿ばね81は、中心に孔81aが形成された略皿形状(円錐台形状)に形成される。皿ばね81は、前端部がプレッシャプレート側面70aに当接するように配置される。
【0074】
伝達部82は、皿ばね81の付勢力をプレッシャプレート30側の部材(第一付勢部50)に伝達するものである。伝達部82は、第一付勢部50の軸部52a及び拡径部52bと概ね同様な軸部82a及び拡径部82bを具備する。
【0075】
図6及び
図7に示す第二フィルム90は、基材である第二付勢部80及びエンドプレート70の一部を覆うものである。より詳細には、第二フィルム90は、第二付勢部80及び中央部73(中央部73の第一部分73a)を覆う。また、第二フィルム90は、エンドプレート70のプレッシャプレート側面70aにおける係止溝部72よりも外側の部分と、反プレッシャプレート側面70bと、側面70cと、を露出させる(覆わない)ように設けられる。
【0076】
第二フィルム90は、第一フィルム60と同様な材料により形成される。
図7に示すように、第二フィルム90の端部91は、係止溝部72に係止される。端部91は、中央部73の第一部分73aに回り込むように設けられる。これにより、第二フィルム90は、エンドプレート70に対して固定される。
【0077】
第二フィルム90は、上述したように第二付勢部80及びエンドプレート70の一部を覆うことで、上記各部材を一体的に固定することができる。なお、基材(第二付勢部80及びエンドプレート70)に対する第二フィルム90の被覆は、第一フィルム60の場合と同様、
図5に示す真空ラミネーションにより行うことができる。
【0078】
上述の如き燃料電池スタック1は、燃料電池の圧縮機構を備えている。燃料電池の圧縮機構は、第一付勢部50及び第二付勢部80の付勢力により、セル群20を配列方向(前後方向)に圧縮するものである。燃料電池の圧縮機構は、燃料電池スタック1を構成する各部材のうち、プレッシャプレート30、絶縁プレート40、第一付勢部50、第一フィルム60、エンドプレート70、第二付勢部80及び第二フィルム90を含む。
【0079】
次に、
図1及び
図2を用いて、燃料電池スタック1を構成する各部材の組み付けの様子について説明する。
【0080】
ここで、各部材の組み付けに先立って、プレッシャプレート30、絶縁プレート40及び第一付勢部50は、第一フィルム60により被覆され、互いに一体的に固定されているものとする(
図5を参照)。また、エンドプレート70及び第二付勢部80は、第二フィルム90により被覆され、互いに一体的に固定されているものとする(
図5を参照)。
【0081】
まず、
図2に示すように、スタックケース10に、セル群20と、第一付勢部50により絶縁プレート40及び第一付勢部50が固定されたプレッシャプレート30と、を収容する。次に、
図1及び
図2に示すように、スタックケース10の一端部11を、第二付勢部80により第二付勢部80が固定されたエンドプレート70で閉塞する。次に、エンドプレート70の挿通孔71にボルト12を挿通すると共に、ボルト12を一端部11のねじ穴11aに螺合することで、エンドプレート70をスタックケース10に固定する。
【0082】
上述のようにエンドプレート70をスタックケース10に固定した状態では、
図1に示すように、第一付勢部50の伝達部52と、第二付勢部80の伝達部82と、が第一フィルム60及び第二フィルム90を介して当接する。また、第一付勢部50及び第二付勢部80の皿ばね51及び皿ばね81が圧縮される。この状態では、第一付勢部50及び第二付勢部80の付勢力により、プレッシャプレート30を介してセル群20が配列方向に圧縮される。このようにして、燃料電池スタック1を構成する各部材の組み付けが完了する。
【0083】
以上の如き燃料電池スタック1(燃料電池の圧縮機構)は、搬送時や燃料電池スタック1を構成する各部材を組み付ける際に、セル群20を付勢する第一付勢部50及び第二付勢部80の脱落を抑制することができる。すなわち、第一付勢部50及び第二付勢部80を、第一フィルム60及び第二フィルム90で覆うことで、第一付勢部50及び第二付勢部80の脱落を抑制することができる。また、第一フィルム60及び第二フィルム90により、第一付勢部50及び第二付勢部80が摩耗することで発生する異物(摩耗粉)を捕集することができる。
【0084】
また、本実施形態では、プレッシャプレート30及び絶縁プレート40のうち、不要な箇所(第一付勢部50の脱落の抑制や絶縁プレート40の固定等に寄与しない箇所)は覆わないように第一フィルム60を設けることができる。具体的には、絶縁プレート40の本体部41(プレッシャプレート30の第二部分32)を露出させる(覆わない)ように第一フィルム60を設けている。これにより、絶縁プレート40とセル群20(ターミナルプレート)の間に第一フィルム60を介在させずに、上記各部材を組み付けることができる。
【0085】
また、本実施形態では、エンドプレート70のうち、不要な箇所(第二付勢部80の脱落の抑制等に寄与しない箇所)は覆わないように第二フィルム90を設けることができる。具体的には、エンドプレート70のプレッシャプレート側面70aにおける係止溝部72よりも外側の部分と、反プレッシャプレート側面70bと、側面70cと、を露出させる(覆わない)ように第二フィルム90を設けている。
【0086】
上記構成としたことで、エンドプレート70の挿通孔71が形成された部分が露出するように、第二フィルム90を設けることができる。これにより、反プレッシャプレート側面70bにおいてボルト12の座面と当接する部分に第二フィルム90を介在させずにボルト12を締結することができ、エンドプレート70とスタックケース10との組付け性を向上させることができる。
【0087】
また、上記構成としたことで、スタックケース10の一端部11と接触する、プレッシャプレート側面70aの外側の部分(係止溝部72よりも外側の部分)が露出するように、第二フィルム90を設けることができる。これにより、プレッシャプレート側面70aの外側の部分と一端部11との間に第二フィルム90を介在させずに、上記各部材を通電可能に接触するように組み付けることができ、エンドプレート70にアースを接続し易くすることができる。
【0088】
以上の如く、本実施形態に係る燃料電池の圧縮機構は、
複数の燃料電池セルを配列することで形成されたセル群20を収容するスタックケース10の端部(一端部11)に設けられるプレート(エンドプレート70及びプレッシャプレート30)と、
前記プレートに設けられ、前記セル群20を配列方向に圧縮するように付勢するための付勢部(第一付勢部50及び第二付勢部80)と、を具備する燃料電池の圧縮機構であって、
前記プレートには、エンドプレート70と、当該エンドプレート70と前記セル群20との間に配置されるプレッシャプレート30と、が含まれ、
前記エンドプレート70及び前記プレッシャプレート30のうち少なくとも一方のプレートに設けられ、前記プレートに設けられた前記付勢部(第一付勢部50及び第二付勢部80)と当該プレートの一部とを覆うように設けられる被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、燃料電池スタック1の搬送時や燃料電池スタック1を構成する各部材を組み付ける際に、セル群20を付勢する付勢部(第一付勢部50及び第二付勢部80)の脱落を被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)により抑制することができる。また、被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)により覆うことで、付勢部(第一付勢部50及び第二付勢部80)が摩耗することで発生する異物(摩耗粉)を被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)により捕集することができる。また、付勢部(第一付勢部50及び第二付勢部80)が設けられた前記エンドプレート及び前記プレッシャプレートの少なくとも一方のプレートの不要な箇所(第二付勢部80の脱落の抑制等に寄与しない箇所)は覆わないように被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)を設けることができる。
【0089】
また、前記付勢部は、
前記プレッシャプレート30の前記エンドプレート70側を向く第一面(エンドプレート側面30a)に設けられる第一付勢部50を有し、
前記被覆部材は、
前記第一付勢部50及び第一面(エンドプレート側面30a)を覆うと共に、前記プレッシャプレート30の前記セル群20を向く第二面(セル群側面30b)の少なくとも一部を露出させるように前記プレッシャプレート30に設けられる第一被覆部材(第一フィルム60)を有するものである。
このように構成することによって、第一被覆部材(第一フィルム60)により、プレッシャプレート30に対する第一付勢部50の脱落を抑制することができる。また、第一被覆部材(第一フィルム60)による被覆が不要な第二面(セル群側面30b)側の少なくとも一部を露出させることができる。
【0090】
また、燃料電池の圧縮機構は、
前記第二面(セル群側面30b)を覆うように前記プレッシャプレート30に設けられる絶縁プレート40を具備し、
前記第一被覆部材(第一フィルム60)は、
前記第一付勢部50と、前記プレッシャプレート30と、前記絶縁プレート40と、を一体的に固定すると共に、前記絶縁プレート40の前記第二面(セル群側面30b)を覆う部分を露出させるように設けられるものである。
このように構成することにより、絶縁プレート40の組付け性を向上させることができる。
【0091】
また、前記付勢部は、
前記エンドプレート70の前記プレッシャプレート30側を向く第三面(プレッシャプレート側面70a)に設けられる第二付勢部80を有し、
前記被覆部材は、
前記第二付勢部80及び前記第三面(プレッシャプレート側面70a)を覆うと共に、前記エンドプレート70の反プレッシャプレート30側を向く第四面(反プレッシャプレート側面70b)の少なくとも一部を露出させるように前記エンドプレート70に設けられる第二被覆部材(第二フィルム90)を有するものである。
このように構成することにより、第二フィルム90により、エンドプレート70に対する第二付勢部80の脱落を抑制することができる。また、第二フィルム90による被覆が不要な第四面(反プレッシャプレート側面70b)側の少なくとも一部を露出させることができる。
【0092】
また、前記エンドプレート70は、
前記スタックケース10の端部(一端部11)との固定に用いられる止具(ボルト12)が設けられる固定部(反プレッシャプレート側面70bにおける挿通孔71が形成された部分)を有し、
前記第二被覆部材(第二フィルム90)は、
前記固定部を露出させるように、前記エンドプレート70に設けられるものである。
このように構成することにより、固定部(反プレッシャプレート側面70bにおける挿通孔71が形成された部分)を露出させることで、エンドプレート70とスタックケース10との組付け性を向上させることができる。
【0093】
また、前記エンドプレート70の前記第三面は、
前記スタックケース10の端部と通電可能に接触する接触部(プレッシャプレート側面70aの外側の部分)を有し、
前記第二被覆部材(第二フィルム90)は、
前記接触部(プレッシャプレート側面70aの外側の部分)を露出させるように、前記エンドプレート70に設けられるものである。
このように構成することにより、接触部を露出させ、エンドプレート70とスタックケース10とを通電可能に接触させることで、エンドプレート70にアースを接続し易くすることができる。
【0094】
また、前記エンドプレート70の前記第三面(プレッシャプレート側面70a)は、
前記第二フィルム90の端部91が係止される係止部(係止溝部72)を有するものである。
このように構成することにより、第二フィルム90の端部91を係止部(係止溝部72)に係止させることで、第二フィルム90をエンドプレート70に固定し易くすることができる。
【0095】
また、本実施形態に係る燃料電池(燃料電池スタック1)は、本実施形態に係る燃料電池の圧縮機構を具備するものである。
このように構成することにより、付勢部(第一付勢部50及び第二付勢部80)の脱落を抑制することができる燃料電池(燃料電池スタック1)を提供することができる。
【0096】
なお、本実施形態に係る燃料電池スタック1は、本発明に係る燃料電池の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一付勢部50及び第二付勢部80は、本発明に係る付勢部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一フィルム60及び第二フィルム90は、本発明に係る被覆部材(第一被覆部材及び第二被覆部材)の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る一端部11は、本発明に係るスタックケースの端部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るエンドプレート側面30aは、本発明に係る第一面の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るセル群側面30bは、本発明に係る第二面の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る段差部33は、本発明に係る凹部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一延出部42及び第二延出部43は、本発明に係る絶縁プレートの外縁の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るプレッシャプレート側面70aは、本発明に係る第三面の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る反プレッシャプレート側面70bは、本発明に係る第四面の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る反プレッシャプレート側面70bにおける挿通孔71が形成された部分は、本発明に係る固定部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るプレッシャプレート側面70aの外側の部分は、本発明に係る接触部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る係止溝部72は、本発明に係る係止部の実施の一形態である。
【0097】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0098】
例えば、本実施形態では、
図4に示すように、第一フィルム60の端部61により、絶縁プレート40の第一延出部42及び第二延出部43を覆う例を示したが、本発明はこれに限るものではない。端部61により絶縁プレート40をどこまで覆うか(第一フィルム60を基材に被覆した際にどの位置でトリミングを行うか)は、適宜設定可能であり、例えば、端部61により絶縁プレート40の第二延出部43のみを覆うようにしてもよい。
【0099】
また、本実施形態では、
図7に示すように、第二フィルム90の端部91により、エンドプレート70(中央部73)の第一部分73aを覆う例を示したが、本発明はこれに限るものではない。端部91によりエンドプレート70をどこまで覆うか(第二フィルム90を基材に被覆した際にどの位置でトリミングを行うか)は、適宜設定可能であり、例えば、端部91により第二部分73bを覆うようにしてもよく、また、端部91により係止溝部72の概ね全体を覆うようにしてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、第一フィルム60によって、第一付勢部50、プレッシャプレート30及び絶縁プレート40を一体的に固定する例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、
図8に示す第二実施形態に係る燃料電池の圧縮機構(燃料電池スタック1)のようにしてもよい。
【0101】
図8に示す例では、第一付勢部50及びプレッシャプレート30のみを第一フィルム60によって一体的に固定している。この場合、第一フィルム60の端部61は、段差部33を覆うように設けられる。本実施形態においては、第一付勢部50を設けたプレッシャプレート30を基材として、第一フィルム60が被覆される。
【0102】
また、
図8に示す例では、第一付勢部50及びプレッシャプレート30を第一フィルム60で被覆した後に、プレッシャプレート30に絶縁プレート40を取り付ける。この際には、絶縁プレート40の第一延出部42及び第二延出部43が、第一フィルム60により覆われた段差部33にはめ込まれる。このように、絶縁プレート40は、第一フィルム60を挟んでプレッシャプレート30に設けられる。このため、本実施形態では、絶縁プレート40は、第一フィルム60によって覆われず、全体が露出している。
【0103】
本実施形態によれば、第一付勢部50及びプレッシャプレート30を被覆する第一フィルム60を、絶縁プレート40によって押さえることができる。これにより、各部材を強固に固定することができる。また、第一フィルム60により被覆された第一付勢部50及びプレッシャプレート30に対して、絶縁プレート40を着脱可能に取り付けることができる。これにより、絶縁プレート40を交換したり、絶縁プレート40を厚さや性能等、仕様の異なるものに取り替えることができ、燃料電池スタック1の利便性を向上させることができる。
【0104】
以上の如く、本実施形態に係る燃料電池の圧縮機構は、
前記第二面(セル群側面30b)を覆うように前記プレッシャプレート30に設けられる絶縁プレート40を具備し、
前記絶縁プレート40は、
前記第一被覆部材(第一フィルム60)により第一付勢部50と一体的に固定された前記プレッシャプレート30に対して、前記第一被覆部材(第一フィルム60)を挟んで設けられるものである。
このように構成することにより、第一付勢部50及びプレッシャプレート30を被覆する第一被覆部材(第一フィルム60)を、絶縁プレート40によって押さえることができる。これにより、各部材を強固に固定することができる。また、第一被覆部材(第一フィルム60)により被覆された第一付勢部50及びプレッシャプレート30に対して、絶縁プレート40を着脱可能に取り付けることができ、燃料電池スタック1の利便性を向上させることができる。
【0105】
また、例えば、本実施形態では、
図6及び
図7に示すように、エンドプレート70に係止溝部72を設けた例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、
図9及び
図10に示す第三実施形態に係る燃料電池の圧縮機構(燃料電池スタック1)のようにしてもよい。
【0106】
第三実施形態に係る燃料電池の圧縮機構(燃料電池スタック1)は、エンドプレート70Aの形状が、第一実施形態に係るエンドプレート70と異なる。なお、以下の説明では、エンドプレート70Aのうち、エンドプレート70と同様な点は適宜省略する。エンドプレート70Aは、本体部74、第一部分75及び第二部分76を具備する。
【0107】
本体部74は、エンドプレート70Aの主たる構造体を成すものである。本体部74は、厚さ方向を前後方向に向けた略矩形板形状に形成される。本体部74の背面視における四隅には、挿通孔71が形成される。
【0108】
第一部分75は、本体部74のプレッシャプレート30側(後側)の面において、後方に向けて突出する部分である。第一部分75は、本体部74の背面視における中央に形成される。第一部分75は、本体部74に対して段差(段差部77)が形成されるように、背面視における外郭形状が、本体部74の背面視(正面視)における外郭形状よりも小さく形成される。
【0109】
第二部分76は、第一部分75の後端部において拡径する部分である。第二部分76のプレッシャプレート30側(後側)の面(プレッシャプレート側面70a)には、第二付勢部80が設けられる。第二部分76は、第一部分75に対して段差(段差部77)が形成されるように、背面視における外郭形状が、第一部分75の背面視における外郭形状よりも大きく形成される。
【0110】
段差部77は、本体部74の後面と、第一部分75の側面(前後方向に直交する方向に向く面)と、第二部分76の前面と、から成る。段差部77は、側面70cにおいて凹むように形成される。段差部77は、第一部分75の全周に亘って形成される。
【0111】
本実施形態においては、第二付勢部80を設けたエンドプレート70Aに対して第二フィルム90を被覆した状態で、段差部77に第二フィルム90の端部91が収容される。この場合、第二フィルム90は、エンドプレート70Aの第一部分75及び第二部分76を覆う。また、第二フィルム90は、エンドプレート70の本体部74を露出させる(覆わない)ように設けられる。
【0112】
本実施形態においても、エンドプレート70Aのうち、挿通孔71や、スタックケース10の一端部11と接触する部分を露出させるように、第二フィルム90を設けることができる。また、本実施形態によれば、ダイカストによる成形後の素材に切削加工により係止溝部72を形成するようなものとは異なり、ダイカストによる成形だけで第二フィルム90の端部91が収容される部分(段差部77)を有するエンドプレート70Aを形成することができる。
【0113】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0114】
例えば、上記各実施形態では、被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)の端部を、基材側に回り込ませて固定する例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)の端部を、基材側に回り込ませないように形成してもよい。この場合は、接着剤を用いて被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)を基材に固定するようにしてもよい。
【0115】
また、上記各実施形態では、第一付勢部50及び第二付勢部80を、平坦な面であるエンドプレート側面30a(プレッシャプレート30)及びプレッシャプレート側面70a(エンドプレート70)に設けた例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、エンドプレート側面30a及びプレッシャプレート側面70aに、正面視(背面視)において各付勢部よりも一回り大きく形成された凹部を設けてもよい。より詳細には、エンドプレート側面30a及びプレッシャプレート側面70aに、第一付勢部50及び第二付勢部80の伸縮を許容すると共に、前後方向に直交する方向への移動を規制するように上記各付勢部を収容する凹部を設けてもよい。
【0116】
また、上記各実施形態では、被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)を樹脂製のフィルムとした例を示しているが、このような態様に限られない。被覆部材としては、基材を被覆可能な種々の膜状の部材を採用可能である。
【0117】
また、上記各実施形態では、プレッシャプレート30及びエンドプレート70にそれぞれ単一の付勢部材(第一付勢部50及び第二付勢部80)を設けた例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、プレッシャプレート30及びエンドプレート70にそれぞれ複数の付勢部材(第一付勢部50及び第二付勢部80)を設けてもよい。
【0118】
また、上記各実施形態では、付勢部材(第一付勢部50及び第二付勢部80)が皿ばね51及び皿ばね81を備えるものとした例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、付勢部材(第一付勢部50及び第二付勢部80)をコイルばねや板ばね等を備えるものとしてもよい。
【0119】
また、上記各実施形態では、燃料電池の圧縮機構を、プレッシャプレート30、絶縁プレート40、第一付勢部50、第一フィルム60、エンドプレート70、第二付勢部80及び第二フィルム90を含むものとした例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、燃料電池の圧縮機構を、上記各部材に加えて、スタックケース10やセル群20、ボルト12等の部材を含むものとしてもよい。
【0120】
また、上記各実施形態では、付勢部材(第一付勢部50及び第二付勢部80)及び被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)を、プレッシャプレート30及びエンドプレート70の両方に設けた例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、プレッシャプレート30及びエンドプレート70の一方に付勢部材及び被覆部材を設けてもよい。換言すれば、プレート、付勢部材及び被覆部材を備える燃料電池の圧縮機構を、プレッシャプレート30側と、エンドプレート70側と、のうちの一方に設けてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 燃料電池スタック
10 スタックケース
20 セル群
30 プレッシャプレート
40 絶縁プレート
50 第一付勢部
60 第一フィルム
70 エンドプレート
80 第二付勢部
90 第二フィルム
【要約】
【課題】セル群を付勢する付勢部の脱落を抑制することができる燃料電池の圧縮機構、及びそれを具備する燃料電池を提供する。
【解決手段】複数の燃料電池セルを配列することで形成されたセル群20を収容するスタックケース10の一端部11に設けられるプレートと、前記プレートに設けられ、前記セル群20を配列方向に圧縮するように付勢するための付勢部(第一付勢部50及び第二付勢部80)と、を具備する燃料電池の圧縮機構であって、前記プレートには、エンドプレート70と、当該エンドプレート70と前記セル群20との間に配置されるプレッシャプレート30と、が含まれ、前記エンドプレート70及び前記プレッシャプレート30のうち少なくとも一方のプレートに設けられ、前記プレートに設けられた前記付勢部と当該プレートの一部とを覆うように設けられる被覆部材(第一フィルム60及び第二フィルム90)と、を具備する。
【選択図】
図1