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特許7213328品質判定装置、品質判定方法、下地処理装置及び下地処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】品質判定装置、品質判定方法、下地処理装置及び下地処理方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 7/00 20060101AFI20230119BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230119BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B08B7/00
B23K26/00 Q
B23K26/00 P
B23K26/00 N
G01N21/27 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021184839
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2022-07-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203910
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 健弘
(72)【発明者】
【氏名】藤井 茂登
(72)【発明者】
【氏名】春名 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 浩
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-224875(JP,A)
【文献】特開平06-092100(JP,A)
【文献】特開2018-065171(JP,A)
【文献】特開2001-232315(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113578871(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 7/00~ 7/04
B08B 9/00~ 9/46
B23K 15/00~37/08
C23G 5/00
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光照射装置により対象物にレーザー光を照射して下地処理を行う下地処理装置において使用される品質判定装置であって、
レーザー光を対象物である下地に照射した際に該下地が発する光を含むカラー画像を取得する画像取得部と、
上記画像取得部により取得された画像のうち上記下地が発する光が位置するとみなされた領域に存在する各画素の色情報と予め設定された閾値を比較して対象物の品質を判定する判定部と、
を備え、
上記判定部は、上記画像取得部により取得されたカラー画像のRGB成分を他の色空間の画像情報に変換し、
上記他の色空間における明度又は輝度が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置する領域とみなし、
上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色情報が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であると判定する
ことを特徴とする品質判定装置。
【請求項2】
上記判定部は、上記画像取得部により取得されたカラー画像のRGB成分をHSV空間の画像情報(色相H、彩度S、明度V)に変換し、
上記HSV空間における明度V値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置するとみなし、
上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色相H値が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であると判定することを特徴とする請求項に記載の品質判定装置。
【請求項3】
上記判定部は、上記画像取得部により順次取得された複数のカラー画像のうち品質が良好であると判定された複数の画像を用いて機械学習する機械学習部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の品質判定装置。
【請求項4】
レーザー光照射装置と、
上記レーザー光照射装置を保持し、対象物の処理対象領域を含む作業領域内で上記レーザー光照射装置を移動させる移動装置と、
レーザー光を対象物である下地に照射した際に該下地が発する光を含むカラー画像を取得する画像取得部と、
上記画像取得部により取得された画像のうち上記下地が発する光が位置するとみなされた領域に存在する各画素の色情報と予め設定された閾値を比較して対象物の品質を判定する判定部と、
上記レーザー光照射装置と上記移動装置の動作を制御する制御装置と、
を備え、
上記判定部は、上記画像取得部により取得されたカラー画像のRGB成分を他の色空間の画像情報に変換し、上記他の色空間における明度値又は輝度値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置する領域とみなし、上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色情報が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であるとして、所定品質以上であるか否を判定し、
上記制御装置は、上記判定部により処理品質が不十分と判定された部分において、上記レーザー光照射装置により再度レーザー照射を実施することで、対象物全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を行うことを特徴とする下地処理装置。
【請求項5】
上記制御装置は、上記画像取得部により取得された上記対象物の表面の画像から得られた色情報に基づいて、上記レーザー光照射装置により上記対象物に照射するレーザー密度を修正することを特徴とする請求項に記載の下地処理装置。
【請求項6】
レーザー光照射装置により対象物にレーザー光を照射して下地処理を行う下地処理方法において使用される品質判定方法であって、
レーザー光を対象物である下地に照射した際に該下地が発する光を含むカラー画像を取得する画像取得工程と、
上記画像取得工程において取得された画像のうち上記下地が発する光が位置するとみな
された領域に存在する各画素の色情報と予め設定された閾値を比較して対象物の品質を判定する判定工程と、
を有し、
上記判定工程では、上記画像取得工程において取得されたカラー画像のRGB成分を他の色空間の画像情報に変換し、
上記他の色空間における明度値又は輝度値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置する領域とみなし、
上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色情報が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であると判定する
ことを特徴とする品質判定方法。
【請求項7】
上記判定工程では、上記画像取得工程において取得された取得されたカラー画像のRGB成分をHSV空間の画像情報(色相H、彩度S、明度V)に変換し、
上記HSV空間における明度V値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置するとみなし、
上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色相H値が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であると判定することを特徴とする請求項に記載の品質判定方法。
【請求項8】
上記判定工程は、上記画像取得工程において順次取得された複数のカラー画像のうち品質が良好であると判定された複数の画像を用いて機械学習する機械学習工程を備えることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の品質判定方法。
【請求項9】
対象物の付着物を除去あるいは対象物表面の状態を変化させる下地処理方法であって、
上記対象物にレーザー光照射装置によりレーザー光を照射して下地処理を行う下地処理工程と、
画像取得部により取得された、レーザー光を対象物である下地に照射した際に該下地が発する光を含むカラー画像のうち上記下地が発する光が位置するとみなされた領域に存在する各画素の色情報と予め設定された閾値を比較して対象物の品質を判定する処理品質判定工程と、
を有し、
上記処理品質判定工程では、上記画像取得部において取得されたカラー画像のRGB成分を他の色空間の画像情報に変換し、
上記他の色空間における明度値又は輝度値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置する領域とみなし、
上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色情報が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であるとして、所定品質以上であるか否を判定し、
処理品質が不十分と判定された処理対象領域に対し、上記レーザー光照射装置により再度レーザー照射を実施することで、対象物全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を行うことを特徴とする下地処理方法。
【請求項10】
上記下地処理工程では、上記対象物にレーザー光を照射するレーザー光照射装置を移動装置により保持して、上記対象物の処理対象領域を含む作業領域内で移動させ、上記レーザー光照射装置により上記対象物にレーザー光を照射して下地処理を行うことを特徴とする請求項載の下地処理方法。
【請求項11】
上記処理品質判定工程において上記画像取得部により取得された上記対象物のカラー画像に基づいて、上記対象物に照射するレーザー密度を修正することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の下地処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質判定装置、品質判定方法、下地処理装置及び下地処理方法に関し、特にレーザー照射によって対象物の付着物を除去する下地処理方法において使用する品質判定装置及び品質判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、橋梁等の鋼構造物の表面には、用途や機能に応じて、塗装、舗装、ライニング、樹脂シート等、種々の被膜が形成される。かかる被膜は、風雨に晒されることが多く、時間の経過とともに、劣化したり酸化物や汚れ等が付着したりすることとなる。鉄部に付着している汚れやさびを確実に落とさずに、塗料を塗布しても確実に塗料が付着しない場合があるので、すぐに剥がれてしまうなど、本来の耐久性を発揮することができない。その為、下地処理作業を行い、確実に汚れやさびを除去して密着性を向上させる必要がある。そこで、かかる被膜等を有する構造物等では、定期的に洗浄や剥離(下地処理作業を含む)等の除去作業を行い、必要に応じて、被膜の塗り替えや張り替え等の処理を行っている。
【0003】
従来、対象物表面のさびや塗膜を除去する処理では、塗膜剥離剤やショトブラストによる塗膜剥離処理が行われていたが、作業環境及び作業効率が悪いばかりでなく、大量の除去物の回収・廃棄処理に問題があることから、レーザー照射によるさびの除去や塗膜剥離処理が提案されている。
【0004】
例えば、化学薬品を用いることなく、塗装膜の除去が可能な塗装膜除去方法、及びその塗装膜除去に適したレーザー処理装置として、レーザー光を集光し処理対象物の表面に照射するレンズと、レンズを支持し、処理対象物表面からレンズまでの高さを調節可能なレンズ支持機構と、処理対象物の表面のレーザー光照射部分にガスを吹き付けるガス噴出手段とを有し、ガスを吹き付けることにより、処理対象物の表面温度の上昇を抑制することができるようにしたレーザー処理装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
特許文献1は、母材表面に付着物が付着している対象に対してレーザー光を照射することで、その付着物のみを除去するレーザークリーニング装置に関するものである。予め詳細な材料の分析・調査・施工の条件だしをすることなしに最適な付着物の除去施工を行うために、レーザー光にて対象物の母材の付着物を除去する除去過程を監視手段8で監視し、監視手段の出力信号から状況判断手段で除去状況を判断する。そして、制御手段は、状況判断手段の判断結果からレーザー光の照射条件を制御する。
【0006】
また、特許文献2は、例えば火力発電プラントの主蒸気管、再熱蒸気管等の内面に水蒸気酸化によって発生するスケールをレーザ光照射により効率よく剥離除去する配管内表面処理方法に関するものである。パルスレーザ光を用いて配管内表面に形成されているスケールを遠隔操作により、短期間で能率よく、確実に除去するために、処理対象となる金属性配管の内面にパルスレーザ光を照射し、その配管の内表面に形成されているスケールに熱変化を与えることにより、スケールを配管の内表面から剥離させる。パルスレーザ光としてNd・YAGレーザ光の基本波もしくは2倍波以上の逓倍波、または銅蒸気レーザ光を適用する。照射ヘッドは、処理対象となる配管内で自走する自走ロボット7に搭載する。自走ロボットは、配管内で走行および停止可能な匍匐装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-232315号公報
【文献】特開2002-224875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1、2に記載の処理方法に基づいて、色センサによりレーザー光を対象物に照射した場合に、この対象物が発する線状の光部分の品質を判定しようとしても、色センサが取得した色情報が合算され、平均化処理されてしまう為、正確な品質の判定結果を得ることが難しい。即ち、色センサは対象物が発した光部分から一定の距離離れて配置されているが、離れて配置されていればそれだけ対象とする領域が対象物が発した光部分の周辺の領域まで広がってしまう。その結果、対象物が発した光部分のみならずその周辺の領域も含めた品質の判定結果が得られることになるため、対象物が発した光部分の正確な品質の判定結果が得られないという不都合があった。
【0009】
そこで、上述の如き従来の実情に鑑み、対象物のうちレーザー光を照射した部分の品質の正確な判定結果を得ることができる品質判定装置、品質判定方法、下地処理装置及び下地処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レーザー光照射装置により対象物にレーザー光を照射して下地処理を行う下地処理装置において使用される品質判定装置であって、レーザー光を対象物である下地に照射した際に該下地が発する光を含むカラー画像を取得する画像取得部と、上記画像取得部により取得された画像のうち上記下地が発する光が位置するとみなされた領域に存在する各画素の色情報と予め設定された閾値を比較して対象物の品質を判定する判定部と、を備え、上記判定部は、上記画像取得部により取得されたカラー画像のRGB成分を他の色空間の画像情報に変換し、上記他の色空間における明度又は輝度が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置する領域とみなし、 上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色情報が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であると判定することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る品質判定装置において、上記判定部は、上記画像取得部により取得されたカラー画像のRGB成分をHSV空間の画像情報(色相H、彩度S、明度V)に変換し、上記HSV空間における明度V値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置するとみなし、上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色相H値が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であると判定するものとすることができる。
【0013】
また、本発明に係る品質判定装置において、上記判定部は、上記画像取得部により順次取得された複数のカラー画像のうち品質が良好であると判定された複数の画像を用いて機械学習する機械学習部を備えるものとすることができる。
【0014】
また、本発明は、下地処理装置であって、レーザー光照射装置と、上記レーザー光照射装置を保持し、対象物の処理対象領域を含む作業領域内で上記レーザー光照射装置を移動させる移動装置と、レーザー光を対象物である下地に照射した際に該下地が発する光を含むカラー画像を取得する画像取得部と、上記画像取得部により取得された画像のうち上記下地が発する光が位置するとみなされた領域に存在する各画素の色情報と予め設定された閾値を比較して対象物の品質を判定する判定部と、上記レーザー光照射装置と上記移動装置の動作を制御する制御装置と、を備え、上記判定部は、上記画像取得部により取得されたカラー画像のRGB成分を他の色空間の画像情報に変換し、上記他の色空間における明度値又は輝度値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置する領域とみなし、上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色情報が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であるとして、所定品質以上であるか否を判定し、上記制御装置は、上記判定部により処理品質が不十分と判定された部分において、上記レーザー光照射装置により再度レーザー照射を実施することで、対象物全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る下地処理装置において、上記制御装置は、上記画像取得部により取得された上記対象物の表面の画像から得られた色情報に基づいて、上記レーザー光照射装置により上記対象物に照射するレーザー密度を修正するものとすることができる。
【0016】
本発明は、レーザー光照射装置により対象物にレーザー光を照射して下地処理を行う下地処理方法において使用される品質判定方法であって、レーザー光を対象物である下地に照射した際に該下地が発する光を含むカラー画像を取得する画像取得工程と、上記画像取得工程において取得された画像のうち上記下地が発する光が位置するとみなされた領域に存在する各画素の色情報と予め設定された閾値を比較して対象物の品質を判定する判定工程と、を有し、上記判定工程では、上記画像取得工程において取得されたカラー画像のRGB成分を他の色空間の画像情報に変換し、上記他の色空間における明度値又は輝度値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置する領域とみなし、上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色情報が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であると判定することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る品質判定装置において、上記判定工程では、上記画像取得工程において取得された取得されたカラー画像のRGB成分をHSV空間の画像情報(色相H、彩度S、明度V)に変換し、上記HSV空間における明度V値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置するとみなし、上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色相H値が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であると判定するものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る品質判定方法では、上記判定工程は、上記画像取得工程において順次取得された複数のカラー画像のうち品質が良好であると判定された複数の画像を用いて機械学習する機械学習工程を備えるものとすることができる。
【0020】
本発明は、対象物の付着物を除去あるいは対象物表面の状態を変化させる下地処理方法であって、上記対象物にレーザー光照射装置によりレーザー光を照射して下地処理を行う下地処理工程と、画像取得部により取得された、レーザー光を対象物である下地に照射した際に該下地が発する光を含むカラー画像のうち上記下地が発する光が位置するとみなされた領域に存在する各画素の色情報と予め設定された閾値を比較して対象物の品質を判定する処理品質判定工程と、を有し、上記処理品質判定工程では、上記画像取得部において取得されたカラー画像のRGB成分を他の色空間の画像情報に変換し、上記他の色空間における明度値又は輝度値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置する領域とみなし、上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色情報が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であるとして、所定品質以上であるか否を判定し、処理品質が不十分と判定された処理対象領域に対し、上記レーザー光照射装置により再度レーザー照射を実施することで、対象物全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る下地処理方法では、上記下地処理工程では、上記対象物にレーザー光を照射するレーザー光照射装置を移動装置により保持して、上記対象物の処理対象領域を含む作業領域内で移動させ、上記レーザー光照射装置により上記対象物にレーザー光を照射して下地処理を行うものとすることができる。
【0022】
また、本発明に係る下地処理方法では、上記処理品質判定工程において上記画像取得部により取得された上記対象物のカラー画像に基づいて、上記対象物に照射するレーザー密度を修正するものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、画像取得部において取得されたカラー画像のRGB成分を他の色空間の画像情報に変換し、上記他の色空間における明度値又は輝度値が所定値以上を示す画素の領域を上記下地が発する光が位置する領域とみなし、 上記下地が発する光が位置するとみなされた領域内における色情報が上記下地の色を示す所定範囲内にある画素の領域が占める割合が所定値を超えた場合に対象物の品質が良好であると判定するので、対象物の品質の判定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係る下地処理装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2(a)は、対象物の分割の例を示す模式図であり、図2(b)は、対象物の一の領域の画素を示す模式図である。
図3】上記下地処理装置に備えられた2軸のガルバノミラー機構の構造を模式的に示す斜視図である。
図4】この下地処理装置により実行される3次元近似された分割要素に対して順番にレーザー照射する様子を示す模式図である。
図5】品質判定作業の手順を示すフローチャートである。
図6】判定結果の一例を示す図であり、図6(a)は、判定結果が不良な例を示した図であり、図6(b)は、判定結果が良好な例を示した図である。
図7】対象物を分割した全ての要素に対して、品質判定を行う上記下地処理装置により実行される下地処理作業の手順を示すフローチャートである。
図8】対象物を分割した全ての要素において、集約した要素群に対して、上記下地処理装置により実行される下地処理作業の手順を示すフローチャートである。
図9】上記下地処理装置による下地処理作業における処理品質とレーザー密度(スポット径)の関係を示す模式図である。
図10】作業者がレーザーヘッド部を手に持って行う下地処理作業の手順を示すフローチャートである。
図11】本発明の第2の実施形態に係る下地処理装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施形態>
まず本発明の第1の実施形態に係る品質判定装置、品質判定方法、下地処理装置及び下地処理方法について説明する。なお、共通の構成要素については、共通の指示符号を図中に付して説明する。また、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0026】
本発明は、例えば図1のブロック図に示すように、移動装置により下地処理作業を行う下地処理装置100に適用される。なお、下地処理作業には品質判定作業が含まれていてもよい。
【0027】
下地処理作業用の移動装置は、多関節リンクから構成されるマニピュレータロボット、3軸(X,Y,Z)から構成される3軸ロボット、搬送ライン方向を1軸としそれ以外の2方向の2軸からなるロボット、あるいは移動台車による搬送装置なども含めたものであり、この下地処理装置100では、ロボットアーム21とロボット制御部22からなるマニピュレータロボット20が採用されている。なお、移動装置は、ロボット及びレーザー光照射部の保持部が機械的に移動する設備でも適用可能である。
【0028】
この下地処理装置100は、レーザー光照射装置10をマニピュレータロボット20に持たせてレーザー光の照射によって対象物1からスケール、錆等の付着物を除去する下地処理作業を行うとともに、レーザー光を対象物1に照射した場合に対象物1である下地が発する線状の光(アブレーション光)の部分の色を判定することにより付着物が十分に除去されたかどうか、即ち対象物1の品質を判定するもので、レーザー光照射装置10、マニピュレータロボット20、画像取得部30、統括制御装置50、記憶部54、品質判定装置60などからなる。
【0029】
レーザー光照射装置10は、レーザー発振部11と、このレーザー発振部11に光ファイバー12を介して接続されたレーザーヘッド部13からなる。このレーザー光照射装置10は、統括制御装置50に備えられたレーザー制御部51により動作が制御され、レーザー発振部11によりレーザー光を発生し、レーザーヘッド部13から出射して、対象物1に照射する。
【0030】
また、マニピュレータロボット20は、多関節のロボットアーム21を備え、ロボットアーム21の先端部21Aに上記レーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13とともに画像取得部30が取り付けられている。
【0031】
ここで、画像取得部30は、ロボットアーム21の先端部21Aにレーザーヘッド部13とともに取り付けられている場合を示しているが、本ケースのみに限定されるものではない。例えば、画像取得部30は、上記対象物1の処理対象領域内にあって、上記対象物1の表面状況を示すカラー画像(RGB画像)を取得することができる位置であれば、マニピュレータロボット20とは別の位置に独立して設置し、対象物1の表面状況を示すカラー画像を取得する方法もある。
【0032】
このマニピュレータロボット20は、ロボット制御部22による制御によって、上記ロボットアーム21の先端部21Aを、所定の作業範囲内を自由に移動させ、前方の実質的な立体角で任意の方向に向けることができるようになっている。
【0033】
即ち、マニピュレータロボット20は、上記ロボットアーム21の先端部21Aに取り付けられた上記画像取得部30とともに上記レーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13を保持し、対象物1の処理対象領域を含む上記ロボットアーム21による作業領域内で上記画像取得部30とともに上記レーザーヘッド部13を移動させ、作業範囲内の任意の位置において、上記レーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13により前方の任意の方向に向けてレーザー光を照射して対象物1の下地処理を行うとともに品質判定を行う際、下地処理中の対象物1の表面状況を示すカラー画像を画像取得部30により取得することができるようになっている。ここで、上記レーザーヘッド部13は、対象物1の表面から所定のレーザー密度を得るスポット径を決める照射距離だけ離れた位置に移動する。
【0034】
記憶部54には、画像取得部30により取得されたカラー画像のHSV色空間における色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value)の値が記憶されている。なお、記憶部54には、カラー画像のRGB成分により求められる輝度の値が記憶されてもよい。
【0035】
HSV色空間における色相の値(HSV色相判定値)を取得する手法について、図2を用いて説明する。図2(a)は、対象物1の全体領域を示した図であり、図2(b)は画像取得部30により取得された対象物1の一部のカラー画像の模式図である。
【0036】
図2(a)に示すように、下地処理作業はいくつかの領域に分けて行われることが一般的である。例えば、領域A1の下地処理が終了したら領域B1の下地処理を行う、というように、対象物1において順次複数の領域について下地処理を行う。なお、図2(a)には対象物1が25個の領域に分割される例を示しているが、領域の分割の手法については特に限定されるものではなく、対象物1のサイズにより適宜決定されればよい。品質判定処理は、下地処理中の対象物1にレーザー光を照射して下地が発する光を含む画像を取得して分析することにより行う。
【0037】
図2(b)に、画像取得部30により取得されたカラー画像P1の一例を示す。カラー画像P1は、領域A1を対象としてレーザー光を対象物1に照射することにより下地が発する光を含むカラー画像である。カラー画像P1は、画像取得部30により所定のフレームレート(例えば、30フレーム/秒、60フレーム/秒等)で取得された画像である。
【0038】
図2(b)に示すように、カラー画像P1は、複数の画素(a、1),(b、1),(c、1)…(m、n)により構成されている。データ処理部52は、カラー画像P1の全領域に亘って、各画素(a、1),(b、1),(c、1)…(m、n)のHSV色相判定値を取得する。同様に、データ処理部52は、カラー画像P1以外の他のカラー画像についても、各画素のHSV色相判定値を取得する。
【0039】
更に、記憶部54には、対象物の品質が良好であるか否かの基準に用いられる閾値(HSV色相判定値)が記憶されている。閾値は、品質判定(色判定)のための所定の値であり、例えば赤・緑・青の面積の合計を100%とした場合に、(赤、緑、青)=(15%、15%、70%)のように青の値が全体に占める割合の値のことである。図2(b)において、下地が発する光部分は、(a、7)と(m、6)を結ぶ線上に位置しており、この下地が発する光部分に含まれる各色の面積の割合の合計値を100%とした場合、青色の面積の割合が70%となるように閾値を設定すればよい。ここでいう「青色の面積」とは、例えばカラー画像のRGB成分をHSV空間に変換することによって得られた色相値で180~240の範囲内にある領域のことである。なお、赤は色相値で-60~60の範囲を示し、緑は色相値で60~180の範囲を示す。
【0040】
対象物へのレーザー光の照射回数が少ない状態では、下地が発する光部分は赤色が中心であるが、対象物へのレーザー光の照射回数が20回あるいは30回と増加するにつれて、即ち、試験片から付着物が除去されるにつれて、下地が発する光部分は青寄りの色へと変化する。そのため、下地が発する光部分に含まれる青色の面積割合が一定の値を超えると、スケール、錆等の付着物が除去されたとみなし、その時の値を閾値に設定すればよい。
【0041】
なお、青色の面積の割合が70%となるような閾値は一例に過ぎず、閾値は任意の基準により設定することができる。例えば、閾値の値は、下地が発する光部分に含まれる色のうち青色が主となる色であると判断できる任意の値である。閾値は70%以下の値であってもよいが、青色の面積の割合が70%よりも大きければ大きいほど、それだけ対象物の品質の信頼性を向上させることができる。あるいは、カラー画像における付着物に相当する箇所の画素について、赤の面積の割合が高いことを考慮すると、閾値は、例えば赤の面積の割合が所定の割合(例えば20%)以下であるように設定してもよい。更に、赤、緑、青のうち、いずれか2以上の色の面積の値を基に閾値を設定してもよい。
【0042】
また、このレーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13には、図3に示すように、2つのモータ131X、131Yと2つのミラー132X、132Yからなる2軸のガルバノミラー機構130が設けられている。
【0043】
この2軸のガルバノミラー機構130は、レーザー発振部11から光ファイバー12を介して供給されるレーザー光LをX軸方向とY軸方向に独立してレーザーの反射角度を変更させて走査することができるようになっている。
【0044】
2軸のガルバノミラー機構130は、対象物1の処理対象領域内でレーザー光Lの照射位置を移動させるスキャン手段として機能する。
【0045】
即ち、ミラー132Xは、モータ131XによりZ軸周りに回転することにより、対象物1に照射するレーザー光LをX軸方向に走査する。
【0046】
また、ミラー132Yは、モータ131YによりX軸周りに回転することにより、対象物1に照射するレーザー光LをY軸方向に走査する。
【0047】
なお、上記2軸のガルバノミラー機構130における二つのミラー132X、132Yは、それぞれポリゴンミラーに置き換えることができる。
【0048】
即ち、レーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13の位置を固定した状態で、所定の範囲内を照射することができるようになっている。
【0049】
なお、ガルバノミラーやポリゴンミラーによる走査では光軸が法線方向と一致するのは一点のみで、レーザー光Lの焦点位置は円弧状に位置することになるので、この2軸のガルバノミラー機構130は、テレセントリックf-θレンズ(あるいはテレセントリックf-θレンズと同等の光学特性を有するテレセントリック光学系)133を介してレーザー光Lを対象物1に照射するようになっている。即ち、カルバノミラー走査によるレーザー照射では、対象物1まで焦点距離が変化するので、レーザー処理能力の低下幅が小さい範囲内でレーザー光Lの照射位置を走査するように、レーザー照射範囲を制約する必要がある。
【0050】
また、上記ロボットアーム21の先端部21Aに上記レーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13とともに取り付けられた画像取得部30は、例えば上記対象物1の表面状況を示すカラー画像を取得する撮像手段である。
【0051】
ここでは、上記画像取得部30として、ビデオカメラが上記マニピュレータロボット20の上記ロボットアーム21の先端部21Aにレーザー光照射装置10とともに取り付けられ、上記レーザー光照射装置10によるレーザー光照射中の上記対象物1の表面状況を示すカラー画像を取得できるようになっている。具体的には、画像取得部30は、所定のフレームレート(例えば、30フレーム/秒、60フレーム/秒等)で、下地が発する光を含むカラー画像(RGB画像)を取得する。
【0052】
そして、統括制御装置50は、上記ロボットアーム21の先端部21Aに取り付けられたレーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13が予め設定したマニピュレータロボット20による下地処理作業軌道を通過するように、軌道制御データ演算処理部53によりロボット制御部22を制御するとともに、レーザー光照射装置10の動作を制御して、この下地処理装置100による一連の下地処理作業動作を自動制御する。
【0053】
この下地処理装置100において、マニピュレータロボット20の制御は、基本的には、ロボット制御部22を用いて事前にティーチングにより動作軌道がプログラミングされる
【0054】
即ち、統括制御装置50は、この下地処理装置100による一連の下地処理作業動作を自動制御するにあたり、上記対象物1の処理対象領域の3次元曲面を表す3次元曲面形状データとして、上記対象物1の3次元CADで設計した3次元CADデータを予め取得しておき、マニピュレータロボット20の動作を対象物1の形状に基づき初期ティーチングして軌道制御データ演算処理部53によりロボット制御部22に登録する。
【0055】
ただし、ロボットの制御方法は、本方法に限定するものではない。例えば、図示していないが、下地処理の作業領域内に対象物1の3次元形状を測定するカメラを設けるか、あるいはロボットアーム21の先端部21Aに3次元形状を測定するカメラを設けるかし、前記3次元カメラの測定結果を3次元データとして取得しても良い。
【0056】
そして、この下地処理装置100において、統括制御装置50は、予め取得した3次元CADデータに基づき、データ処理部52において、上記処理対象領域の3次元曲面を多角形近似する分割要素データを作成し、作成した分割要素データに基づき、各分割要素の頂点、重心及び法線ベクトルを演算して、レーザー照射パターンを決定し、軌道制御データ演算処理部53により上記マニピュレータロボット20のロボット制御により分割要素間の移動を行い、レーザー制御部51により上記レーザー光照射装置10のガルバノミラー制御で分割要素内のレーザー照射を行うことにより、図4に示すように、最初の要素から最後の要素まで、それぞれの要素の重心を目標地点として移動し、順番にレーザー照射される。ここで、図4は、簡単のために3次元近似されたそれぞれの分割要素三角形△1、△2、△3・・・に対してのレーザー照射の一部に対するロボット軌道の動きを示すものである。
【0057】
即ち、この下地処理装置100では、統括制御装置50の軌道制御データ演算処理部53により、決定された照射パターンに基づき、上記マニピュレータロボット20のロボット制御で分割要素間の移動を行い、上記マニピュレータロボット20のロボット制御部22からレーザー照射すべき所定の位置に到着した信号を受け取り、レーザー制御部51からレーザー光照射装置10のレーザー発振部11にレーザー照射開始の指令を送り、レーザー制御部51により上記ガルバノミラー制御で分割要素内のレーザー光の走査を行い、レーザー制御部51からレーザー照射完了の信号を受け取り、ロボット制御部22に次の照射位置に移動する開始指令を送ることにより、あらかじめ設定した処理範囲毎に、レーザー照射開始位置から終了位置までレーザー光照射装置10による繰り返しレーザー光を照射することにより、対象物1の処理対象領域全体の下地処理作業を実施する。
【0058】
このように、この下地処理装置100では、軌道制御データ演算処理部53により上記マニピュレータロボット20のロボット制御で分割要素間の移動を行い、レーザー制御部51により上記レーザー光照射装置10のガルバノミラー制御で分割要素内のレーザー光の走査を行うことにより、上記対象物1が複雑な形状や大面積形状を有する3次元曲面処理対象物であっても、レーザー照射により確実に且つ効率よく表面処理を行うことができるようになっている。
【0059】
また、この下地処理装置100では、品質判定装置60の画像取得部30により対象物のうちレーザー光が照射された被照射領域の画像を順次取得し、対象物1の品質判定処理を行う。図5のフローチャートに示す手順にしたがって本発明に係る品質判定処理が実行される。
【0060】
先ず、カラー画像取得工程ST01において、画像取得部30によりカラー画像が取得される。具体的には、図2(b)に示すように、対象物1のうち下地処理作業中の領域を対象とした、下地が発する光を含むカラー画像P1を取得する。画像取得部30によりカラー画像を取得する際には、HSV空間が飽和状態とならないよう、撮像条件を制御すればよい。
【0061】
次のHSV色相判定値取得工程ST02において、データ処理部52により取得されたカラー画像のHSV色相判定値が取得される。具体的には、図2(b)に示すように、カラー画像P1を構成する各画素(a、1),(b、1),(c、1)…(m、n)のHSV色相判定値を取得する。
【0062】
次の明度算出工程ST03において、HSV空間における、各画素(a、1),(b、1),(c、1)…の明度の値(明度値)を算出する。具体的には、カラー画像P1を色相H、彩度S、明度Vを有するHSV空間の画像情報に変換することにより、明度値を算出する。
【0063】
次の色判定工程ST04において、算出された明度値を基に、一定以上の明度を有する画素の色判定処理を行う。即ち、一定以上の明度を有する画素に対応する領域とは、下地が発する光に相当する領域であると考えられる。例えば、図2(b)のうち、一定以上の明度を有する領域が(a、7)、(b、7)、(c、7)、(d、7)、…(m、6)の各領域であった場合、これらの領域に下地が発する光が存在するとみなすことができる。品質判定処理に利用するために、下地が発する光に相当する領域のHSV色相判定値を求めることとする。
【0064】
次の品質判定工程ST05において、下地が発する光に相当する領域の色(HSV色相判定値)を基準に品質を判定する。例えば、赤の面積が多い場合には、錆等の付着物が残っていると考えられるため品質が不良であるとの判定結果が得られ、青の面積が多い場合には、錆等の付着物は除去されたと考えられるため、品質が良好であるとの判定結果が得られる。
【0065】
なお、下地が発する光に相当する領域の一部の領域の色を基準に品質を判定してもよい。例えば、図2(b)に示す例では、(b、7)、(c、7)、(d、7)のように、対象物1の中で下地が発する光が照射された領域全体の一部の画素(領域)のみのHSV色相判定値を基準に品質を判定してもよい。このように、品質判定処理の領域を限定することで、処理負荷を軽減することができる。更に、対象物1全体の色を基準に品質を判定してもよい。
【0066】
図6に判定結果の一例を示す。図6(a)は、例えば対象物1にレーザー光を20回照射した場合に得られた下地が発する光を含む画像を概念的に示した図である。図中の直線部分は下地が発する光を示し、この下地が発する光の周囲に存在するスケールを「×」印にて示す。レーザー光を20回照射した段階では、スケールが十分に除去されず、図6(a)において下地が発する光上及び周囲には多くの「×」印が存在することとなる。スケールは、カラー画像において赤(R)を示すものであり、スケールが多く残っている場合、各画素においてHSV色相判定値のうち赤の割合が比較的高いものとなる。例えば、ある画素のHSV色相判定値は「赤:30%、緑:20%、青:50%」であるとする。この場合、閾値の青の値が青70%であることと比較して、青の値が50%であるため、スケールが除去されていないと判定される。
【0067】
図6(b)は、対象物1にレーザー光を30回照射した場合に得られた下地が発する光を含む画像を概念的に示した図である。レーザー光を30回照射した段階では、スケールが十分に除去されており、図6(b)における下地が発する光上及び周囲に存在する「×」の割合は、図6(a)の場合と比較して減少している。例えば、ある画素のHSV色相判定値は「赤:10%、緑:10%、青:80%」である。この場合、閾値の青の値が青70%であることと比較して、青の値が80%であるため、スケールが除去されたと判定することができる。
【0068】
この下地処理装置100における統括制御装置50では、下地処理後の対象物1に対しても品質判定処理を適用することができる。具体的には、統括制御装置50では、軌道制御データ演算処理部53によりマニピュレータロボット20のロボット制御で分割要素間の移動を行い、レーザー制御部51により上記レーザー光照射装置10のガルバノミラー制御で分割要素内のレーザー光の走査を行うに当たり、対象物1の最初の処理範囲(分割要素)内のレーザー照射による下地処理が完了したところで、対象物1のカラー画像を画像取得部30により取得し、データ処理部52において、取得したカラー画像のHSV空間における明度を算出する。算出された明度の値を参照し、一定以上の明度の値を有する領域について、HSV色相判定値を求め、予め設定された閾値と比較することにより、所定の処理品質以上であるか否か判定する処理品質判定処理を行い、処理品質が不十分と判定された場合には、処理品質が不十分と判定された処理範囲(分割要素)に対して、レーザー光照射装置10により再度レーザー照射を実施することで、レーザー照射により確実に下地処理を行うようになっている。
【0069】
即ち、この下地処理装置100では、図7のフローチャートに示す手順にしたがって本発明に係る下地処理方法が自動的に実行される。
【0070】
初期要素設定工程ST1において、下地処理の初期設定として、対象物1を撮像したカラー画像の分割数の設定、各要素に対するレーザー照射条件(例えば、レーザー密度を決める照射距離やレーザーの走査速度など)や品質判定条件、閾値などを設定する。ここで、レーザー密度の設定方法としては、レーザー照射距離に基づき決まるレーザースポット径とレーザー1パルス当たりのレーザースポットの移動距離である走査速度を上記スポット径から決定することができる。つまり、レーザー照射距離が決まれば、それに基づきレーザースポット径とレーザー走査速度が決まるという事である。たとえば、レーザースポット径がd(μm)と決まれば、レーザー走査速度はd×(1/√2~1)の範囲内となるように決定する。したがって、以下では、レーザー密度は、レーザー照射距離に基づき決まるものとして表現する。
【0071】
初期要素設定工程ST2は、第1の要素に処理要素カウンターを設定し、処理要素決定工程ST3では、処理要素カウンターKに該当する要素に対しマニピュレータロボット20を移動させ、ロボットアーム21の先端部21Aに取り付けられたレーザー光照射装置10の照射スタンバイを行う。
【0072】
次の下地処理ST4では、初期要素設定工程ST1にて設定された条件で当該要素に対する下地処理を行う。
【0073】
次の色情報取得工程ST5では、対象物1の表面状況を示す分割後の各領域におけるカラー画像に含まれる色情報(HSV色相判定値)を画像取得部30により取得する。
【0074】
そして、次の処理品質判定工程ST6では、統括制御装置50のデータ処理部52において、カラー画像からHSV色相判定値を取得する。この結果、青の値が閾値以上である場合には、対象物1の品質が良好であると判定する。
【0075】
この処理品質判定工程ST6における判定結果がNG、即ち、当該処理範囲(分割要素)の下地処理が所定の処理品質に達していない場合には、照射距離修正工程ST7にて、どの程度レーザー照射密度が不足していたかを判定し、適切なレーザー密度となるように不足分だけレーザー照射距離を修正する。
【0076】
照射距離修正工程ST7では、画像取得部30により得られる下地処理中の処理範囲(分割要素)におけるカラー画像に基づいて、レーザー光照射装置10により当該処理範囲(分割要素)および/または次の処理範囲(分割要素)に照射するレーザー密度を修正する。
【0077】
即ち、当該処理範囲の品質結果が目標レベルより低い場合には、当該処理範囲および/または続く処理範囲に対しては、レーザー密度を高くして目標とする品質レベルが得られるように照射距離を修正し、反対に、品質判定結果が、目標レベルより高い場合には、必要以上のレーザー密度を投入していることとなり、エネルギーコストや処理時間の関係で無駄となるので、この場合は、当該処理範囲および/または続く処理範囲に対しては、レーザー密度低くして目標とする品質レベルが得られるように照射距離を修正する。
【0078】
そして、上記処理要素決定工程ST3に戻って、再度、処理範囲(分割要素)に対してレーザー光照射装置10によりレーザー光を照射して下地処理を行う。レーザーによる再下地処理の回数は特に限定されるものではなく、対象物1の品質の良好な判定結果が得られるまで繰り返されてもよい。
【0079】
この下地処理装置100における統括制御装置50では、要求される対象物の材質、処理要求品質、および処理時間の少なくとも1つに応じて必要なレーザー密度を得るためのレーザー照射距離を設定する関数あるいはテーブル値を設け、当該関数あるいはテーブル値に基づき品質レベルに応じたレーザー密度を得るためのレーザー照射距離を設定するようになっている。
【0080】
上記処理品質判定工程ST6における判定得結果がOK、即ち、当該処理範囲(分割要素)の下地処理が所定の処理品質に達していた場合には、次の要素に移るべくST8に移る。
【0081】
次の処理終了判定工程ST8では、全ての処理範囲(分割要素)の下地処理が完了したか否かを判定する。
【0082】
この処理終了判定工程ST8において、処理要素カウンターKが分割要素数であるNより小さい場合は、即ち、下地処理を行う処理範囲(分割要素)が残っている場合には、ST9において、処理要素カウンターKを1つカウントアップし、上記下地処理工程に戻って、次の処理範囲(分割要素)に対してマニピュレータロボット20を移動させレーザー光照射装置10によりレーザー光を照射して下地処理を行う。また、処理要素カウンターKが分割要素数Nに等しくなったとき、即ち、全ての処理範囲(分割要素)の下地処理が完了したら、この下地処理装置100による対象物1に対する下地処理は終了となる。
【0083】
ここで、レーザー密度の不足分は、HSV空間において求められた明度のレベル、あるいは、カラー撮像手段により得られるカラー画像情報に応じて、例えば、要求レベルがレベルIVに対して、測定結果がレベルIIである場合は、このレベル差を補正する分だけレーザー密度高めるべく照射距離の修正を行う。
【0084】
そして、照射距離修正工程ST7における分割要素毎の照射距離の不足分の修正は、次のような一時平滑式に基づいて決定することが望ましい。
【0085】
<不足分修正量>=<前回の修正量>×(1-α)+<今回修正量>×α
【0086】
ここで、α(0≦α≦1)は重み係数であり、今回要素での結果に基づく修正効果をどの程度反映するかを決めるものであり、α=0の場合は従来のままであり、α=1の場合は、今回要素の修正分をそのまま使用するという事である。通常は、0≦α≦1の範囲内で実際の品質結果を確認しながら決定する。この様にすることにより、ある特定の要素のデータに大きく影響されることなく平均化された修正量を得ることが可能となる。
【0087】
なお、第1要素K=1における<現時点の修正量>に関しては、0からスタートする場合もあるが、過去の同一あるいは類似の対象物の最終分割要素における<不足分修正量>を統括制御装置50のレーザー制御部51に装備された記憶装置に対象物の種類や品質レベル毎に設定したテーブルを設け、当該テーブルに記憶しておき、今回の対象物の種類と品質レベルに応じて記憶された数値を前記テーブルから引用して初期値として使用する方法が有効である。
【0088】
上記図7のフローチャートに示した下地処理方法においては、全ての分割要素に対してカラー画像を取得し品質判定する場合を示したが、当該方法は、非常に品質レベルの高い対象物の場合には有効であるが、品質レベルが比較的低い対象物の場合には、全ての分割要素に対して品質判定することは非効率となる場合がある。
【0089】
このような対象物に対しては、全ての分割要素に対して品質判定するのではなく、分割された領域をあらかじめ指定した個数あるいは範囲に基づいて大括りして集約し、大括りして集約された分割要素群内の下地処理が完了したところで、代表要素(要素群の中央の要素あるいは最後の要素など)における上記画像取得部により取得されたカラー画像に基づいて、次の集約された分割要素群に対するレーザー照射距離を修正し照射する。
【0090】
分割要素を大括して集約された分割要素群内の下地処理を行うようにした下地処理方法について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0091】
図8のフローチャートに示す下地処理方法では、分割要素を大括して集約するために処理フローを図7に記載した処理工程ST2,ST3、ST9の変更および処理工程ST10、ST11、ST12の追加を行う。集約する要素群の個数をm個とすると共に、集約する要素数をカウントするために、ST2において集約に関連した新たな集約カウンターJと要素群カウンターLを導入し、ST3において、処理要素カウンターKをK=m(L-1)+1として計算する。
【0092】
ST4により集約したm個の要素群の下地処理を実施し、ST10により下地処理数が集約数mと等しいかどうか判定し、mより少ない場合は、ST11により処理数Jを1つカウントアップしてST3に戻り、mに等しくなった場合は、集約分の下地処理が完了となる。
【0093】
上記集約したm個の要素群に対して、あらかじめ設定した代表要素(要素群の中央の要素あるいは最後の要素など)においてST5でカラー画像を取得し、ST6で品質判定する。ここで、例えば、代表要素が中間要素場合は、要素番号K=m(L-1)+m/2(四捨五入)を選択し、最終要素の場合はK=m(L-1)+mの要素を選択する。
【0094】
この処理品質判定工程ST6における判定結果がNG、即ち、当該処理範囲の下地処理が所定の処理品質に達していない場合には、照射距離修正工程ST7にて、どの程度レーザー照射密度が不足していたかを判定し、適切なレーザー密度となるように不足分だけレーザー照射距離を修正する。
【0095】
照射距離修正工程ST7では、画像取得部30により得られる下地処理中の処理範囲(分割要素群)におけるカラー画像に基づいて、レーザー光照射装置10により当該処理範囲(分割要素群)および/または次の処理範囲(分割要素群)に照射するレーザー密度を修正する。
【0096】
ST12において、集約したm個の要素群(K=m(L-1)+1~mL)に対し再度、下地処理を実施する。ここで、レーザーによる再下地処理は1回のみとする。これは、上記説明した様に、品質結果が目標レベルに入るようにレーザー密度を修正しているので、当該1回の再処理で品質目標を満足する。再処理回数は、当然、1回に限定したものではないが処理回数が増加することで能率が低下するため適切な回数に制約することが望ましい。
【0097】
そして、ST9において、処理要素群カウンターLを1つカウントアップすると共に集約カウントJをJ=1に初期化し、上記下地処理工程に戻って、次の処理範囲(分割要素群)に対してマニピュレータロボット20を移動させレーザー光照射装置10によりレーザー光を照射して下地処理を行う。これを全領域にわたって実施する。
【0098】
このように、この下地処理装置100では、対象物1の表面状況を示すカラー画像を画像取得部30により取得し、統括制御装置50のデータ処理部52により取得したカラー画像に基づいて所定の処理品質以上であるか否か判定して、品質判定レベルが目標とする品質レベルより低い(劣る)場合には、レーザー光照射装置10により再度レーザー照射を実施することで目標とする品質レベルを確保することができる。
【0099】
即ち、この下地処理装置100では、従来定性的に評価していた品質レベルを定量的に評価することにより、要求された品質レベルに応じて、レーザー照射条件を適切に設定して、下地処理の品質を向上させることができる。
【0100】
また、この下地処理装置100における統括制御装置50では、最初の処理範囲の品質結果が目標レベルより低い場合には、レーザー光照射装置10により再度レーザー照射するとともに、続く処理範囲に対しては、レーザー密度を高くして目標とする品質レベルが得られるように照射距離を変更してレーザー照射を実施する。反対に、品質判定結果が、目標レベルより高い場合には、必要以上のレーザー密度を投入していることとなり、エネルギーコストや処理時間の関係で無駄となるので、この場合は、続く処理範囲に対しては、レーザー密度低くして目標とする品質レベルが得られるように照射距離を変更してレーザー照射を実施する。この下地処理装置100では、上記照射距離修正工程ST7において、処理品質判定工程ST6における画像取得部30によるカラー画像に基づく処理品質の評価結果に応じて、レーザー光照射装置10によるレーザー光の照射距離を対象物1の表面において適正なレーザー密度になるように修正することにより、図9に示すように、下地処理性能として品質および作業効率に優れた最適条件を確保するようにレーザー密度(スポット径および当該スポット径に基づき決定するレーザー走査速度)が設定できる。
【0101】
ここで、レーザー光照射装置10のレーザー発振部11が発生するレーザー光は、対象物1の付着物(例えば表面に塗布された塗料膜など)をレーザーアブレーションにより除去するのに必要なパワーを有するものであれば、連続光あるいはパルス光の何れであってもよく、統括制御装置50により、対象物1の処理対象領域の表面形状や下地処理品質などに応じてレーザー光の照射条件を適切に設定したレーザー照射によって対象物1の付着物を除去する下地処理作業を行うことができる。
【0102】
したがって、この下地処理装置100では、上記レーザー光照射装置10を用いたレーザー照射による下地処理を最初の処理範囲から、最後の処理範囲まで自動化して実施することで、対象物1の処理領域全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を確実に且つ効率よく行うことができる。
【0103】
ここで、この下地処理装置100における統括制御装置50のデータ処理部52では、上記画像取得部30として、上記マニピュレータロボット20の上記ロボットアーム21の先端部21Aにレーザー光照射装置10とともに取り付けられたビデオカメラにより、上記レーザー光照射装置10によるレーザー光照射中の上記対象物1の表面状況を示すカラー画像を取得して、HSV色相判定値により処理品質を判定するようにしたが、その他の基準(例えばHLS成分値)により処理品質を判定してもよい。
【0104】
また、上記実施例では、カラー画像をHSV空間に変換することにより得られた色相の値を閾値として用いたが、これに限定されず、HLS空間、Lab空間、YIQ空間、YUV空間等の他の色空間に変換することにより得られた色相等の値を閾値として用いることにより対象物1の品質を判定してもよい。
【0105】
また、本実施例において、画像取得部30は、ロボットアーム21の先端部21Aにレーザーヘッド部13とともに取り付けられている場合を示しているが、本ケースのみに限定されるものではない。例えば、画像取得部30は、上記対象物1の処理対象領域内にあって、上記対象物1の表面状況を示すカラー画像を取得することができる位置であれば、マニピュレータロボット20とは別の位置に独立して設置し、対象物1の表面状況を示すカラー画像を取得する方法もある。
【0106】
上記実施例では、上記対象物1にレーザー光を照射するレーザー光照射装置10をマニピュレータロボット20により保持して、上記対象物1の処理対象領域を含む作業領域内で移動させ、上記レーザー光照射装置10により上記対象物1にレーザー光を照射して下地処理する方法について詳細に説明した。上記方法によれば、対象物1を所定の下地処理品質を確保する最適なレーザー条件により自動にて下地処理を実施することができる。
【0107】
しかし、本発明は、上記方法に限定するものではなく、下地処理装置100における、レーザー発振部11と、このレーザー発振部11に光ファイバー12を介して接続されたレーザーヘッド部13からなるレーザー光照射装置10を取り出し、作業者がレーザーヘッド部13を手で持ち、携帯型の画像取得部30を携帯して作業することも可能である。
【0108】
上記作業者がレーザーヘッド部13を手に持って作業する方法は、図10のフローチャートに示すST20~ST25の手順に従って実行される。
【0109】
ST20では、作業者により下地処理の初期設定として、対象物1のレーザー照射条件(例えば、レーザー密度を決める照射距離やレーザーパワーなど)をレーザー発振部11に直接入力して設定する。
【0110】
ST21では、作業者が手に持ったレーザーヘッドを動かすことで照射可能な範囲に対するレーザー照射を実施する。ここで、対象材が小規模な場合は、1回の動作で全体を下地処理することが可能であるが、大規模な対象材の場合は、複数回に分けて下地処理をすることとなる。また、レーザー照射距離の保持は、レーザーヘッド13に照射距離が許容範囲にあることを示すガイド光(LEDなどを用いる)を設け、当該ガイド光が所定内(照射距離の許容範囲内)に入るように作業者が目視確認しながら実施することになる。
【0111】
ST22では、携帯用の画像取得部30を用いて、対象物1のレーザー照射が完了した部位における代表カ所の表面状況を示すカラー画像のHSV色相判定値を取得し、取得したHSV色相判定値に基づき下地処理判定基準に応じて処理品質を評価する。
【0112】
ST23では、上記処理品質判定工程ST22における判定結果がNG、即ち、最初の処理範囲(分割要素)の下地処理が所定の処理品質に達していない場合には、必要なレーザー照射条件(レーザー照射距離など)を作業者の判断に基づいて修正し、再度、レーザー照射を実施する。
【0113】
そして、上記処理品質判定工程ST22における判定結果がOK、即ち、最初の処理範囲(分割要素)の下地処理が所定の処理品質に達している場合には、ST24において、次の処理対象部分の有無を判断する。
【0114】
ST25では、上記ST24における判断結果がYES、即ち、次の処理対象部分がある場合には、ST25にて、上記レーザー照射条件の修正量を加味した新たなレーザー照射条件を設定し、次の処理対象部分に対するレーザー照射による下地処理を実施する。
【0115】
上記ST20~25のステップを対象物1の全ての処理部分に対して順次実施することで、対象物1全体の下地処理を完成する。
【0116】
上記方法によれば、前述のマニピュレータロボット20を用いた自動処理に比べ、高い品質の下地処理を実施することは難しいが、マニピュレータロボット20や統括制御装置50が不要なことから設備費を大きく抑制することが可能となる。
【0117】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る品質判定装置、品質判定方法、下地処理装置及び下地処理方法について説明する。なお、以下に記載する第2の実施形態の説明においては、上述した第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、第1の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0118】
第2の実施形態は、機械学習を用いて、対象物1の品質の判定処理を行う形態である。図11に示すように、データ処理部52は機械学習部52aを有する。第1の実施形態では、閾値は予め記憶部54に記憶されていたが、第2の実施形態では、機械学習により算出されあるいは更新された閾値が記憶部54に記憶される。具体的には、機械学習部52aは、対象物1にレーザー光を照射した結果品質が良好であると判定された複数のカラー画像のHSV色相判定値と判定結果との関係を機械学習する。対象物1のカラー画像のHSV色相判定値と判定結果との関係を機械学習することにより閾値を生成し、生成された閾値に基づいて品質を判定する。機械学習の結果、生成あるいは更新された閾値は、記憶部54に記憶される。なお、機械学習には、例えばニューラルネットワークによるディープラーニング等の手法が用いられる。
【0119】
第2の実施形態によれば、既存の閾値では判定結果が不正確であった場合であっても、機械学習を行うことにより閾値を正確な値に更新することができる。これにより、レーザー光を照射した結果、対象物から付着物を除去することができたか否かを正確に判定することができる。即ち、品質判定処理の精度を向上させることができる。
【0120】
なお、上記のように本発明の一実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0121】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、品質判定装置及び下地処理装置の構成も本発明の一実施形態及び実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0122】
1 対象物、10 レーザー光照射装置、11 レーザー発振部、12 光ファイバー、13 レーザーヘッド部、20 マニピュレータロボット、21 ロボットアーム、21A 先端部、22 ロボット制御部、23 、30 画像取得部、35 カラーチャート、50 統括制御装置、51 レーザー制御部、52 データ処理部、52a 機械学習部、53 軌道制御データ演算処理部、54 記憶部、60 品質判定装置、100 下地処理装置、130 ガルバノミラー機構、131X、131Y モータ、132X、132Y ミラー、133 テレセントリックf-θレンズ
【要約】      (修正有)
【課題】対象物のうちレーザー光を照射した部分の品質の正確な判定結果を得ることができる品質判定装置、品質判定方法、下地処理装置及び下地処理方法を提供する。
【解決手段】レーザー光照射装置10により対象物1にレーザー光を照射して下地処理を行う下地処理装置100において使用される品質判定装置60であって、レーザー光を対象物1である下地に照射した際に該下地が発する光を含むカラー画像を取得する画像取得部30と、上記画像取得部30により取得された画像のうち上記下地が発する光が位置するとみなされた領域に存在する各画素の色情報と予め設定された閾値を比較して対象物の品質を判定する判定部52と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
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図11